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特許7430232グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法
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  • 特許-グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法 図1
  • 特許-グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法 図2
  • 特許-グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240202BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240202BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240202BHJP
【FI】
G01T1/161 A
A61B6/03 350T
A61B6/03 360T
G01T1/161 C
G06T7/00 C
G06T7/00 350B
G06T7/00 612
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022162854
(22)【出願日】2022-10-10
(65)【公開番号】P2023078074
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2022-10-10
(31)【優先権主張番号】202111413375.7
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521162399
【氏名又は名称】之江実験室
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲聞▼▲タオ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲徳▼富
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲海▼亮
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 宝
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0134587(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0080775(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111260583(CN,A)
【文献】篠原広行他,圧縮センシングによる少数投影からの画像再構成,断層映像研究会雑誌,2014年,Vol.40, No.3,31-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14、
G01T 1/161-1/166、
G06T 1/00-19/20、
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法であって、具体的には、以下の通りであり、
投影撮像装置により収集された生データを、対応するシステムの応答行列と組み合わせてスパース投影再構成を行い、グラフ学習に基づいて毎回のスパース投影により取得された画像の中の各画素点の画素値を補正し、後に、反復収束の条件を満たす又は所定の反復回数に達するまで、スパース投影再構成を行うこと及びグラフ学習に基づいて毎回のスパース投影により取得された画像の中の各画素点の画素値を補正することを繰り返し行い、最終的な形状アーチファクトなしの再構成画像を取得し、
投影撮像装置により収集された生データを、対応するシステムの応答行列と組み合わせてスパース投影を行う過程は、具体的には以下の通りであり、
システムの応答行列cijによって現在の画像 に対して投影演算を行い、投影データを取得し、ここで、システムの応答行列はcijであり、j番目の画素点が投影撮像装置のi番目の検出器によって検出される確率を表し、 は収集された生データにおいて検出器によって収集されたデータがk回目の反復を経て得られた再構成画像であり、現在の画像 の初期値はすべてが1である行列であり、上付き文字kは反復回数を表し
取得された投影データを収集された生データと比較して逆投影係数を得て、逆投影係数を利用して投影データを画像空間に逆投影し、逆投影画像 k′ を得て、
逆投影画像とシステムの応答行列との比に基づき逆投影の補正係数αを取得し、補正係数αを現在の画像 と組み合わせて新たな実際の画像 (k+1)′ を得て、
グラフ学習に基づいて毎回のスパース投影により取得された画像の中の各画素点の画素値を補正することは、以下の通りであり、
毎回のスパース投影によって取得された画像 (k+1)′ 中の各画素点jに対して、点を中心としてl×l×l個の画素点の画素値を選択して、対応する画素点の固有ベクトルを構成し、
各画素点jに対してグローバルランダムサンプリングを行い、複数個のランダム点を、対応する画素点jのランダム点集合Ωとして選択し、
各画素点jの固有ベクトルとその対応するランダム点集合Ωにおける各ランダム点の固有ベクトルとのユークリッド距離dj,rを取得し、r∈Ωであり、
ユークリッド距離に基づき非線形ゲート関数を利用して各画素点jのランダム点集合に対して類似度スクリーニングを行い、n個の最も類似するランダム点を保留し、
保留されたランダム点に基づきグラフ学習の方法で各画素点の新たな画素値を取得し、
【数7】
ここで、Ij,mはj番目の画素点の対応するランダム点集合をスクリーニングして保留されたm番目の画素点の画素値を表し、nは最終的に保留されたランダム画素点の数であり、Iは更新後の該点の画素値を表し、gj,mはj番目の画素点と対応するランダム点集合をスクリーニングして保留されたm番目の画素点との非線形ゲート関数の出力である
ことを特徴とするグラフ学習に基づくスパース投影再構成方法。
【請求項2】
投影撮像装置により収集された生データはPETデータ又はCTデータである
ことを特徴とする請求項1に記載のスパース投影再構成方法。
【請求項3】
前記非線形ゲート関数はSigmoid、tahn又はReLUである
ことを特徴とする請求項1に記載のスパース投影再構成方法。
【請求項4】
前記非線形ゲート関数は具体的には、以下の通りであり、
【数6】
(6)
ここで、βはゲート関数のパラメーターを調整する変数で、実数であり、gj,rはj番目の画素点と対応するランダム点集合におけるr番目の画素点の間の非線形ゲート関数の出力であり、設定されたgj,rの閾値に基づき各画素点のランダム点集合の類似度をスクリーニングし、dj,rはj番目の画素点とその対応するランダム点集合におけるr番目の画素点とのユークリッド距離を表す
ことを特徴とする請求項3に記載のスパース投影再構成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医用画像の分野に関し、具体的にはグラフ学習に基づくスパース投影再構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療技術の継続的な発展に伴って、撮像装置の撮像品質及び再構成速度に対する要件もますます高くなっており、場合に応じて、システムの設計ニーズ、サンプルへの損傷の軽減、又は迅速撮像の要件のために、撮像装置全体の収集システム又は再構成方法はスパース角度を用いることが多いが、スパース角度を用いて投影再構成を行うと形状アーチファクトが発生し、その結果、画像の撮像品質が大幅に低下し、後続の臨床医師の診断及び治療作業に悪影響を与えてしまう。従って、スパース投影再構成過程によって引き起こされる形状アーチファクトの解決は撮像品質を大幅に向上させることができ、重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の欠陥に対してグラフ学習に基づくスパース投影再構成方法を提案し、グラフ学習の方法によってスパース投影再構成で得られた各画素点を修正し、スパース再構成による形状アーチファクトを除去する目的を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は以下の技術的解決手段によって実現され、
グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法であって、具体的には、
投影撮像装置により収集された生データを、対応するシステムの応答行列と組み合わせてスパース投影を行い、グラフ学習に基づいて補正した後に、反復収束の条件を満たす又は所定の反復回数に達するまで、反復再構成を行い、最終的な形状アーチファクトなしの再構成画像を得て、グラフ学習に基づく補正することは、以下の通りであり、
毎回のスパース投影によって取得された画像中の各画素点jに対して点を中心としてl×l×l個の画素点の画素値を選択して対応する画素点の固有ベクトルを構成し、
各画素点jに対してグローバルランダムサンプリングを行い、複数個のランダム点を、対応する画素点jのランダム点集合Ωとして選択し、
各画素点jの固有ベクトルとその対応するランダム点集合Ωにおける各ランダム点の固有ベクトルとのユークリッド距離dj,rを取得し、r∈Ωであり、
ユークリッド距離に基づき非線形ゲート関数を利用して各画素点jのランダム点集合に対して類似度スクリーニングを行い、n個の最も類似するランダム点を保留し、
保留されたランダム点に基づきグラフ学習の方法で各画素点の新たな画素値を取得し、
【数7】
ここで、Ij,mはj番目の画素点の対応するランダム点集合をスクリーニングして保留されたm番目の画素点の画素値を表し、nは最終的に保留されたランダム画素点の数であり、Iは更新後の該点の画素値を表し、gj,mはj番目の画素点と対応するランダム点集合をスクリーニングして保留されたm番目の画素点との非線形ゲート関数の出力である。
【0005】
さらに、投影撮像装置により収集された生データはPET又はCTデータである。
【0006】
さらに、投影撮像装置により収集された生データを、対応するシステムの応答行列と組み合わせてスパース投影を行う過程は、具体的には以下の通りであり、
システムの応答行列によって現在の画像f に対して投影演算を行い、投影データを取得し、上付き文字kは反復回数、下付き文字iは投影撮像装置のi番目の検出器を表し、現在の画像の初期値はすべてが1である行列であり、
取得された投影データを収集された生データと比較して逆投影係数を得て、逆投影係数を利用して投影データを画像空間に逆投影し、逆投影画像f k′を得て、
逆投影画像とシステムの応答行列との比に基づき逆投影の補正係数αを取得し、補正係数αを現在の画像f と組み合わせて再投影画像f (k+1)′を得る。
【0007】
さらに、前記非線形ゲート関数はSigmoid、tahn又はReLUである。
【0008】
さらに、前記非線形ゲート関数は具体的には、以下の通りであり、
【数6】
(6)
ここで、βはゲート関数のパラメーターを調整する変数で、実数であり、gj,rはj番目の画素点と対応するランダム点集合におけるr番目の画素点の間の非線形ゲート関数の出力であり、設定されたgj,rの閾値に基づき各画素点のランダム点集合の類似度をスクリーニングし、dj,rはj番目の画素点とその対応するランダム点集合におけるr番目の画素点とのユークリッド距離を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有益な効果は以下の通りである。本発明はグラフ学習に基づくスパース投影再構成方法を使用し、本発明に設計されたグラフ学習方法を従来の投影再構成方法に導入することにより条件を満たす最適な画素点を効果的にスクリーニングし、これらの画素点の階調値により、現在の点の画素値を再計算し、スパース投影再構成によって引き起こされる構造的アーチファクトを補正し、それにより、より良好なアーチファクト修正画像を取得し、撮像品質を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はグラフ学習に基づくスパース投影再構成方法のフローチャートである。
図2図2はゲート関数構造に基づくグラフネットワークである。
図3図3は本発明の再構成方法と従来の再構成方法との効果の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明はグラフ学習に基づくスパース投影再構成方法を提案し、同じ組織・構造の撮像階調値における表現が常に類似するという特性を利用して、各点の非アーチファクトの同じ組織・構造の画素点をスクリーニングするためのゲート関数を構築し、グラフ学習の方法でこれらの点を利用して該点の補正後の画素値を再構築し、それにより補正後の形状アーチファクトなしの再構成画像を得る。本発明に提案された非線形ゲート関数のスクリーニングによって条件を満たす最適な画素点をスクリーニングすることができ、これらの画素点の階調値により、さらにグラフ学習の方法と組み合わせて現在の点の最適な補正値を得て、より良好なアーチファクト修正画像を取得することができる。
【0012】
以下、PET再構成を例として、具体的な実施例及び図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるグラフ学習に基づくスパース投影再構成方法のフローチャートに従ってスパース投影再構成を行い、入力はPET装置により収集された生データP=[p]、及び装置の応答行列cijであり、出力は形状アーチファクトなしの高品質のPET画像である。具体的な再構成のステップは以下の通りである。
【0014】
ステップ1:システムの応答行列cijによって現在の画像に対して投影演算を行い、投影データHijを取得し、これにより、
【数1】
(1)。
ここで、システムの応答行列はcijであり、j番目の画素点がPET装置のi番目の検出器によって検出される確率を表し、固定したハードウェア収集装置に対して定数値であり、f はk回目の反復後に得られたi番目の検出器により検出された再構成画像データを表し、その初期値fはすべてが1である行列である。
【0015】
ステップ2:ステップ1での投影データをセンサにより収集された実際の生データP=[p]と比較し、逆投影係数
を得る。
【0016】
ステップ3:ステップ2で得られた逆投影係数及びシステムの応答行列に基づき、投影データを画像空間に逆投影し、逆投影画像f k′を得て、ここで、kは反復回数を表し、これにより、
【数2】
(2)。
【0017】
ステップ4:逆投影画像に基づき逆投影の補正係数αを取得し、これにより、
【数3】
(3)。
【0018】
ステップ5:逆投影の補正係数αに基づいて、新たな実際の画像f (k+1)′を取得することができ、これにより、
【数4】
(4)。
【0019】
ステップ6:グラフ学習に基づくスパース投影再構成方法で、毎回のスパース投影により取得された画像f (k+1)′の中の各画素点の画素値を補正し、具体的なステップは以下の通りである。
【0020】
(6.1)f (k+1)′の中の各画素点に対して点を中心としてl×l×l個の画素点の画素値を選択して該点の固有ベクトルX=[xj,1,xj,2,…,xj,k,…,xj,l×l×l]を構成する。lは正の整数であり、本実施例では3を選択することが推奨される。
【0021】
(6.2)f (k+1)′の中の各画素点に対してグローバルランダムサンプリングを行い、複数個のランダム点を該点のランダム点集合Ωとして選択し、本実施例では100個のランダム点を選択することが推奨され、各画素点の固有ベクトルXとその対応するランダム点の固有ベクトルXとのユークリッド距離を取得し、これにより、
【数5】
(5)。
ここで、dj,rはj番目の画素点とその対応するランダム点集合におけるr番目の画素点とのユークリッド距離を表す。
【0022】
(6.3)各画素点で取得されたユークリッド距離を非線形ゲート関数に代入し類似度スクリーニングを行う。本発明で使用される非線形ゲート関数は、以下の通りであり、
【数6】
(6)。
ここで、βはゲート関数のパラメーターを調整する変数で、実数であり、値を3にすることが推薦され、gj,rはj番目の画素点と対応するランダム点集合におけるr番目の画素点との非線形ゲート関数の出力であり、関数gの閾値をゲート関数の閾値として設定し、この場合、βが大きいほどウィンドウが小さくなり、逆にβが小さいほどウィンドウが大きくなり、閾値に基づきランダム点が条件を満たすかどうかを順に検証し、条件を満たすランダム点はグラフの構築のために保留され、例えば、図2に示すように、後続のステップ(6.4)のグラフ学習に用いられる。ここでは、関数の閾値として0.5を選択することが推薦され、すなわち、g値が0.5未満であるランダム点が保留される。
【0023】
(6.4)グラフ学習の方法で現在の点の新たな画素値を取得し、これにより、
【数7】
ここで、Ij,mはj番目の画素点の対応するランダム点集合をスクリーニングして保留されたm番目の画素点の画素値を表し、nは最終的に保留されたランダム画素点の数であり、Iは更新後の該点の画素値を表す。gj,mはj番目の画素点と対応するランダム点集合をスクリーニングして保留されたm番目の画素点との非線形ゲート関数の出力である。
【0024】
画像全体のすべての画素点を巡回走査すると、補正された実際の画像を得る。
【0025】
ステップ7:ステップ1~ステップ6を繰り返し、反復収束の条件を満たすか又は所定の反復回数に達するまで画像を継続的で反復補正し、最終的な形状アーチファクトなしの再構成画像fを得る。
【0026】
図3は本発明に係る再構成方法と従来の再構成方法(グラフ学習補正が加えられていない)による再構成後の結果を示しており、本発明に提案された方法は、従来の投影再構成方法に比べて、形状アーチファクトの修正が明らかに改善され、実際のサンプルにより近くなり、撮像品質が効果的に向上することが分かった。
【0027】
明らかなように、上記実施例は明確に説明するために挙げられた例に過ぎず、実施形態を限定するものではない。当業者であれば、上記説明に基づいて他の様々な変化や変更を行うことができる。ここではすべての実施形態を挙げる必要がなく、挙げることもできない。これから派生する自明な変化や変更は依然として本発明の保護範囲に属する。
図1
図2
図3