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▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】多重遷移監視のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240202BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240202BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
G01N27/62 X
G01N27/62 D
G01N30/72 C
G01N30/86 F
G01N30/86 P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022536943
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2020086476
(87)【国際公開番号】W WO2021122784
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】19216968.8
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】シュバインベルガー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ドールン,アールト・ピーテル
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-053004(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149794(WO,A1)
【文献】特開2015-021739(JP,A)
【文献】特開2014-206497(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0141164(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0371586(US,A1)
【文献】特開2012-132799(JP,A)
【文献】LANGE, Vinzenz,Selected reaction monitoring for quantitative proteomics: a tutorial,Molecular Systems Biology,2008年,4,Article number 222,doi:10.1038/msb.2008.61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 30/00 - G01N 30/96
H01J 49/00 - H01J 49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィ質量分析装置(111)を使用する多重遷移監視のための方法であって、
a)少なくとも1つのデータベース(114)から少なくとも1つのデータセット(112)を決定するステップであって、前記データセット(112)が、前記液体クロマトグラフィ質量分析装置(111)による少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値(116)を含み、複数の先行する測定値の平均値または移動平均のうちの一方または両方が基準測定値(116)として使用される、少なくとも1つのデータセット(112)を決定するステップと、
b)測定窓(120)の初期設定を使用して前記少なくとも1つの基準測定値を評価することによって前記分析物の前記遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するステップであって、前記評価することは、少なくとも1つのピーク発見アルゴリズムを実行することおよび/または少なくとも1つのピークフィッティングアルゴリズムを実行することを含む少なくとも1つのデータ分析を実行することを含み、前記初期設定が、前記基準ピーク情報を決定するために使用される前記測定窓(120)の設定であり、前記測定窓(120)が、保持時間の時間フレームによって規定される、少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するステップと、
c)前記基準ピーク情報を考慮して前記測定窓(120)の実際の設定を決定するステップであって、前記決定するステップが、前記時間フレームを調整することを含み、前記実際の設定が、ステップb)において決定された前記基準ピーク情報を考慮することによって決定された前記測定窓(120)の設定である、前記測定窓(120)の実際の設定を決定するステップと、
d)前記液体クロマトグラフィ質量分析装置(111)によって前記分析物の前記遷移を測定し、前記測定窓(120)の前記実際の設定を使用して前記分析物の前記遷移の測定されたピーク情報を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップd)によって得られた前記分析物の前記遷移の測定値を前記データセット(112)に追加することによって前記データセット(112)を更新するステップ(124)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法ステップa)からd)が繰り返し実行され、ステップa)において、最新の測定値が基準測定値(116)として使用され、ステップb)において、前記分析物の前記遷移の前記基準ピーク情報が、最新の決定された実際の設定を初期設定として使用して決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのインサイチュ調整ステップ(136)をさらに含み、前記インサイチュ調整ステップ(136)が、ステップd)の間に実行され、前記インサイチュ調整ステップ(136)において、前記分析物の前記遷移の強度が前記測定中に監視され、少なくとも1つの所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルと比較され、前記強度が前記閾値レベルを下回る場合、前記遷移の取得が停止される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基準ピーク情報または前記測定されたピーク情報のうちの一方または両方が、ピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、ピーク形状、テーリング係数、または任意の種類のピークフィッティングおよびフィルタリングのうちの1つ以上を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基準ピーク情報または前記測定されたピーク情報のうちの一方または両方が半値全幅を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの初期較正ステップを含み、前記初期較正ステップにおいて、前記基準測定値または前記初期設定のうちの一方または両方が決定される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記初期較正ステップが、前記液体クロマトグラフィ質量分析装置(111)の少なくとも1回の品質管理運転の間もしくは後に実行され、および/または少なくとも1回の内部標準試料運転の間もしくは後に実行される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記初期較正ステップの開始が、前記液体クロマトグラフィ質量分析装置(111)のカラムの変更、事前規定された時間もしくは所定の時間の後、事前規定された運転回数もしくは所定の運転回数の後、または他の適切なカウンタ、のうちの1つ以上によってトリガされる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記初期設定が、前記実際の設定と比較して保持時間の広い時間フレームを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
方法ステップa)からd)を繰り返すことを含み、前記測定窓(120)の幅が、繰り返しの回数とともに狭くなる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基準測定値を得るための測定および前記分析物の前記遷移の前記測定が、実質的に同じ条件下で実行される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法ステップb)からc)が、およびステップd)において、前記分析物の前記遷移の前記測定されたピーク情報を決定することが、少なくとも1つのコンピュータによって実行される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
試料中の少なくとも1つの分析物の多重遷移監視のための装置(110)であって、
多重遷移監視用に構成された少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析装置(111)と、
少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値(116)を含む少なくとも1つのデータセット(114)を記憶するように構成された、少なくとも1つのデータベース(112)であって、複数の先行する測定値の平均値または移動平均のうちの一方または両方が基準測定値(116)として使用される、少なくとも1つのデータベース(112)と、
少なくとも1つの評価装置(148)であって、前記評価装置(148)が、測定窓(120)の初期設定を使用して前記少なくとも1つの基準測定値を評価することによって前記分析物の前記遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するように構成され、前記評価することは、少なくとも1つのピーク発見アルゴリズムを実行することおよび/または少なくとも1つのピークフィッティングアルゴリズムを実行することを含む少なくとも1つのデータ分析を実行することを含み、前記初期設定が、前記基準ピーク情報を決定するために使用される前記測定窓(120)の設定であり、前記測定窓(120)が、保持時間の時間フレームによって規定され、前記評価装置(148)が、前記基準ピーク情報を考慮して前記測定窓(120)の実際の設定を決定するように構成され、前記決定することが、前記時間フレームを調整することを含み、前記実際の設定が、決定された前記基準ピーク情報を考慮することによって決定された前記測定窓(120)の設定であり、前記評価装置(148)が、前記測定窓(120)の前記実際の設定を使用して、前記液体クロマトグラフィ質量分析装置(111)による前記分析物の前記遷移のその後の測定の前記分析物の前記遷移の測定ピーク情報を決定するように構成されている、少なくとも1つの評価装置(148)と
を備える、装置。
【請求項15】
前記装置(110)が、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されている、請求項14に記載の装置(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、質量分析技術、具体的には液体クロマトグラフィおよび質量分析を使用する多重遷移監視のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
1回の液体クロマトグラフィ実行中の多重遷移監視(MRM)は、観測者MRMの数が増加するにつれて各遷移の滞留時間を短縮する。スケジュールされたMRMなどの既知の方法は、特定の遷移に関連する液体クロマトグラフィ実行の時間フレームのみを使用する。例えば、MRM Yを有する分析物Xは、時間xにピークZをもたらし、したがって、x-15秒からx+15秒などの特定の関連時間のみが記録され得る。通常、特定の時間フレームは、通常は保持時間と呼ばれるピークのピーク最大値の前後の特定の時間に関して規定される。
【0003】
米国特許出願公開第2017/0328874号明細書は、MSn-1分析を実行するための分析実行期間、分析の実行時間およびループ時間を設定するためのMSn-1分析設定部と、同一時間窓内で実行されるMSn-1分析の数または分析条件の変化に応じて、分析期間をセグメントに分割する分析期間分割部と、質量スペクトルデータを得るためにMSn-1分析を実行し、MSn分析をスケジューリングするためのMSn分析設定部であって、設定された条件を満たすピークに対応するイオンを前駆体イオンとするMSn分析設定部と、ループ時間からイベント実行時間を減算して算出されたMSn分析を実行する時間を各セグメントに割り当てるMSn分析実行時間割当部と、各セグメントにおいてMSn-1分析とMSn分析とを繰り返し実行する分析実行部と、を含むクロマトグラフ質量分析装置を記載している。
【0004】
国際公開第2017/216934号パンフレットは、複数の液体クロマトグラムのストリームを並行して動作させることができ、質量分析計が各成分溶出のタイミングでデータを収集することができるように予め作成された分析スケジュールを記載している。制御ユニットは、複数の液体クロマトグラムシステムにおける各試料の分析に要する時間を、捕集前時間、捕集中時間および捕集後時間に分割し、液体クロマトグラムユニットにおける捕集時の時間が重ならない時間位置を探索して割り当て、複数の液体クロマトグラムユニットの開始時間を決定し、それにより分析スケジュールを作成し、その後、分析を実行するように制御する。制御ユニットは、さらに、成分溶出時間を変化させるパラメータセットを記憶し、分析スケジュール作成に適したデータ収集タイミングとなるように分析パラメータを調整し、成分溶出時間を変更する。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0102219号明細書は、多重反応監視測定条件最適化の前に、目的化合物の前駆体イオン毎に、プロダクトイオン選択条件設定画面における2つのリスト、すなわち、最適化を行うべきプロダクトイオンとして優先的に選択されるべきイオンを示すリストと、最適化から除外されるべきイオンを示すリストとを作成する分析オペレータを記載している。測定を行う際には、目的化合物の前駆体イオンのプロダクトイオンスキャン測定が実行され、スペクトルが得られる。このスペクトルから抽出されたイオンのうち、除外可能イオンリストに登録された任意のイオンは除外され、優先イオンリストに登録されたイオンは、優先的にプロダクトイオンとして選択される。こうして決定された前駆体イオンとプロダクトイオンのm/z値の組み合わせ毎に、MRM測定の最適条件が探索される。
【0006】
米国特許第9,040,903号明細書は、動的データ取得/機器制御方法論を利用する質量分析システムおよび方法を記載している。これらのシステムおよび方法は、人工知能アルゴリズムを使用して、データ取得中の定量的および/または識別精度を大幅に向上させる。実施形態では、アルゴリズムは、データ取得中に機器の方法およびシステムを、タンパク質、ペプチド、およびペプチド断片などの標的分析物の定量または識別精度を高めるようにデータ取得リソースに指示するように適合させることができる。
【0007】
国際公開第2018/116039号パンフレットは、試料から目的化合物の実際のXICピークを識別するためのシステムおよび方法を記載している。1つのシステムでは、実際のXICピークが標準試料を使用して識別される。任意の2つの異なる試料中の目的化合物の量の比は既知であるため、この比は、2つの試料において計算されたXICピークの強度と比較されて、実際のXICピークを識別する。別のシステムでは、実際のXICピークは、複数の試料中の他の目的化合物に関する情報を使用して識別される。同じ試料中の目的化合物のXICピークは、それらの試料にわたって保持時間の同様の分布を有することが知られているため、XICピークの保持時間の分布が比較されて実際のXICピークを識別する。
【0008】
日本国特許第05835086号明細書は、質量較正テーブルの作成を記載している。GCの検体気化チャンバに検体が注入された後、カラムから検体溶媒を完全に溶出させる時間が経過するまでは、質量分析も行われず、データも収集されない。したがって、溶媒の分析結果を誤って利用して質量較正が行われることが防止される。その後、スキャン測定によりデータの収集が開始され、TICの信号強度が閾値以上になると、質量較正用成分の溶出が開始されたと認識される。そして、スキャン速度を変化させながらスキャン測定が実行され、質量較正用成分に対する異なるスキャン速度の質量スペクトルが取得され、質量スペクトルに基づいて質量較正テーブルが作成される。
【0009】
V.Langeら「Selected reaction monitoring for quantitative proteomics:a tutorial」,MOLEC-ULAR SYSTEMS BIOLOGY,vol.4,2008年10月14日,XP055033380,ISSN:1744-4292,DOI:10.1038/msb.2008.61は、複雑な混合物中の低存在量の分析物の信頼できる定量化のための選択反応監視(SRM)を記載している。SRM実験では、事前規定された前駆体イオンおよびそのフラグメントの1つが、三連四重極装置の2つの質量フィルタによって選択され、正確な定量のために経時的に監視される。標的ペプチドの保持時間と組み合わせた一連の遷移は、決定的なアッセイを構成することができる。典型的には、多数のペプチドが1回のLC-MS実験中に定量される。V.Langeらは、プロテオタイプペプチドの選択ならびに遷移の最適化および検証を含む、定量的プロテオミクスのためのSRMの適用を説明している。
【0010】
スケジュールされたMRMは、特に、非常に明確な測定および/または高濃度の分析物混合物に対して良好に機能する。しかしながら、スケジュールされたMRMの利点にもかかわらず、カラム寿命を最大化することに対する関心が高まっており、これは、ピーク記録のための固定された時間フレームを有するスケジュールされたMRMが信頼性が低く誤った結果をもたらすことがあるように、有意なピークシフトと連動することがある。
【0011】
解決すべき課題
したがって、本発明の目的は、既知の方法および装置の上述した欠点を回避する、多重遷移監視のための方法および装置を提供することである。特に、方法および装置は、カラムの経年劣化、毛細管交換、溶媒組成の不正確さ、および他の要因による保持時間のずれの場合であっても、信頼性が高く正確な多重遷移監視を可能にするものとする。さらに、方法および装置は、特に重要な分析物の定量限界を下げることを可能にするものとする。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
この課題は、独立請求項の特徴を有する、多重遷移監視のための方法および装置によって解決される。単独で、または任意の組み合わせで実現されてもよい本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
以下において使用される場合、用語「有する」、「備える」もしくは「含む」またはそれらの任意の文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴に加えて、この文脈で説明されているエンティティにさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との双方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独で且つ排他的にBからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素など、1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
【0014】
さらに、以下において使用される場合、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意の特徴であり、決して特許請求の範囲を制限することを意図したものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施されてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関する制限がなく、本発明の範囲に関する制限がなく、およびそのような方法で導入された特徴を、本発明の他の任意または非任意の特徴と組み合わせる可能性に関する制限がない任意の特徴であることを意図する。
【0015】
本発明の第1の態様では、液体クロマトグラフィ質量分析装置を使用する多重遷移監視のための方法が開示される。
【0016】
本明細書で使用される場合、多重反応監視(MRM)とも呼ばれる「多重遷移監視」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析、具体的にはタンデム質量分析に使用される方法であって、1つ以上の前駆イオンからの複数のプロダクトイオンが監視される方法を指すことができる。本明細書で使用される場合、「監視される」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、複数のプロダクトイオンの判定および/または検出を指すことができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「液体クロマトグラフィ質量分析装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、液体クロマトグラフィと質量分析との組み合わせを指すことができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置とすることができるか、またはそれを備えることができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、液体クロマトグラフィ(LC)装置および質量分析(MS)装置を備えることができ、LC装置およびMSは、少なくとも1つの界面を介して結合される。
【0018】
本明細書で使用される「液体クロマトグラフィ(LC)装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量分析装置を用いて1つ以上の分析物を検出するために、試料の1つ以上の目的の分析物を試料の他の成分から分離するように構成された分析モジュールを指すことができる。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備えることができる。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよいし、複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、目的の分析物を分離および/または溶出および/または移送するために移動相が圧送される固定相を有することができる。LCカラムは、例えば、事前規定された時間および/もしくは運転回数、または所定の時間および/もしくは運転回数、ならびに/または他の適切なカウンタの後に交換可能であってもよい。例えば、溶媒の体積、弁の切り替えイベントの数、実行の数、注入の数、試料の数、特定の種類の試料の数、LC圧力/曲線のうちの1つ以上の1つ以上の閾値に到達した場合、LCカラムが交換され得る。本明細書でさらに使用される場合、「質量分析装置」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、質量電荷比に基づいて少なくとも1つの分析物を検出するように構成された質量分析器を指すことができる。質量分析装置は、少なくとも1つの四重極質量分析装置とすることができ、またはそれを備えることができる。LC装置とMSとを結合する界面は、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成された少なくとも1つのイオン化源を備えることができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、試験試料、品質管理試料、内部標準試料とも呼ばれる生物学的試料などの任意の試料を指すことができる。試料は、1つ以上の目的の分析物を含むことができる。例えば、試験試料は、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水液、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞などを含む生理学的液からなる群から選択されてもよい。試料は、それぞれの供給源から得られたものとして直接使用されてもよく、または前処理および/または試料調製ワークフローの対象であってもよい。例えば、内部標準を添加することによって、および/または別の溶液で希釈することによって、および/または試薬などと混合することによって試料が前処理され得る。例えば、目的の分析物は、一般に、ビタミンD、依存性薬物、治療薬、ホルモン、および代謝産物とすることができる。品質管理試料は、試験試料を模倣し、1つ以上の品質管理物質の既知の値を含む試料とすることができる。品質管理物質は、目的の分析物と同一であってもよく、または反応もしくは誘導体化によって目的の分析物と同一の分析物を生成する分析物であってもよく、および/または濃度が既知の分析物であってもよく、および/または目的の分析物を模倣するか、そうでなければ目的の特定の分析物と相関があることができる物質であってもよい。内部標準試料は、既知の濃度を有する少なくとも1つの内部標準物質を含む試料とすることができる。試料に関するさらなる詳細については、例えば、その全開示が参照により本明細書に含まれる欧州特許出願公開第3 425 369号明細書を参照されたい。他の目的の分析物も可能である。
【0020】
本方法は、例として、所与の順序で実行されてもよい以下のステップを含む。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、1つ以上の方法ステップを1回または繰り返し実行することも可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを同時にまたは適時に重複して実行することが可能である。本方法は、記載されていないさらなる方法ステップを含むことができる。
【0021】
本方法は、以下のステップを含む:
a)少なくとも1つのデータベースから少なくとも1つのデータセットを決定するステップであって、データセットが、液体クロマトグラフィ質量分析装置を用いて、少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値を含む、少なくとも1つのデータセットを決定するステップ、
b)測定窓の初期設定を使用して分析物の遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するステップであって、測定窓が保持時間の時間フレームによって規定される、少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するステップ、
c)基準ピーク情報を考慮して測定窓の実際の設定を決定するステップであって、決定するステップが、時間フレームを調整することを含む、測定窓の実際の設定を決定するステップ、
d)液体クロマトグラフィ質量分析装置を用いて分析物の遷移を測定し、測定窓の実際の設定を使用して分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定するステップ。
【0022】
本明細書で使用される場合、「データセット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、以前の実行などからの少なくとも1つの以前のMRM測定に関する記憶および/または蓄積された情報を指すことができる。以前のMRM測定に関する情報は、少なくとも1つのクロマトグラムおよび/またはクロマトグラムから評価された少なくとも1つの情報、例えばピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、特に半値全幅、ピーク形状、テーリング係数、および/または任意のタイプのピークフィッティングおよびフィルタリングを含むことができる。テーリング係数Tは、T=W0.05/(2d)によって決定され得、ここで、W0.05は、ピーク高さの0.05におけるピーク幅であり、dは、ピーク最大値を通る垂直線とピーク高さの0.05におけるピークの前縁との間の距離である。本明細書で使用される場合、「データベース」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのデータセットを含むデータの集合を指すことができる。データベースは、少なくとも1つのデータセットが記憶される少なくとも1つのテーブルおよび/または少なくとも1つのルックアップテーブルを含むことができる。データベースは、データセットを記憶するように構成された少なくとも1つの記憶ユニットを備えることができる。本明細書で使用される場合、「少なくとも1つのデータベースから少なくとも1つのデータセットを決定する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、データベースにアクセスし、データベースからデータセットを取り出すことを指すことができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「基準測定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの以前のMRM測定、例えば、以前の実行のMRM測定および/またはMRM測定に関する少なくとも1つの予測を指すことができる。基準測定値は、少なくとも1つの既知のMRM遷移を含んでもよく、または少なくとも1つの既知のMRM遷移であってもよい。基準測定値は、以前の品質管理実行中に取得された少なくとも1つの品質管理試料の少なくとも1つの測定値、および/または以前の内部標準試料実行中に取得された少なくとも1つの内部標準試料の少なくとも1つの測定値、および/または以前の実行中に取得された試験試料の少なくとも1つの測定値とすることができる。基準測定値は、実際の試験試料の測定値と同じまたは少なくとも同様および/または同等の条件下で同じ方法で取得および/または決定および/または測定された少なくとも1つの測定値とすることができる。基準測定および分析物の遷移の測定は、実質的に同じ条件下で実行され得る。例えば、基準測定および分析物の遷移の測定は、一定のクロマトグラフィ条件下で、特に同じLCカラムおよび溶離液を用いて実行され得る。本方法は、既知の化合物および周知の条件に適用され得る。しかしながら、本方法はまた、特に勾配の変化の場合に、少なくとも1つの基準測定値を予測することを含んでもよい。予測は、LCカラムの経年劣化、毛細管交換、溶媒組成の不正確さ、および他の要因を考慮することを含むことができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「基準ピーク情報」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、目的の分析物の測定のための関連する時間フレームを制限するのに適した、基準測定の目的の分析物に対応するおよび/または関連するクロマトグラムのピーク、すなわち極大値の少なくとも1つの情報を指すことができる。基準ピーク情報は、ピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、特に半値全幅、ピーク形状、テーリング係数、および/または任意のタイプのピークフィッティングおよびフィルタリングのうちの1つ以上を含むことができる。基準ピーク情報を決定することは、基準測定値を評価することを含むことができる。評価することは、少なくとも1つのピーク発見アルゴリズムを実行することおよび/または少なくとも1つのピークフィッティングアルゴリズムを実行することを含む少なくとも1つのデータ分析を実行することを含むことができる。評価することは、生データのチェック、前処理、平滑化、バックグラウンド低減または除去、ピーク検出、ピーク積分のうちの1つ以上を含むことができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「測定窓」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、目的の分析物の測定が実行される時間フレームを指すことができる。測定窓は、保持時間の時間フレームによって規定される。目的の分析物の測定を特定の所定の時間フレームに限定することは一般に知られている。本明細書で使用される場合、測定窓の「設定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、測定窓の一方または双方の限界値を指すことができる。具体的には、測定窓の設定は、測定窓の下限の値、すなわち測定を開始する保持時間、および測定窓の上限の値、すなわち測定を停止する保持時間の一方または双方を含むことができる。
【0026】
「初期設定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、基準ピーク情報を決定するために使用される測定窓の設定を指すことができる。初期設定は、予め決定されてもよく、および/または予め規定されてもよい。例えば、LC装置のカラムの変更後の最初の測定の場合、初期設定は、データベースに蓄積され得るデフォルト設定とすることができる。本方法は、少なくとも1つの初期較正ステップを含むことができ、初期較正ステップでは、基準測定値および/または初期設定が決定され得る。初期較正ステップは、液体クロマトグラフィ質量分析装置の少なくとも1つの品質管理の実行中および/または実行後に、および/または少なくとも1つの内部標準試料の実行中および/または実行後に実行され得る。初期較正ステップの開始は、液体クロマトグラフィ質量分析装置のカラムの変更によって、および/または事前規定された時間もしくは所定の時間後に、および/または事前規定された運転回数もしくは所定の運転回数後に、または他の適切なカウンタによってトリガされ得る。本明細書で使用される「トリガ」という用語は、自動的に開始および実行される自動手順、または設定を初期設定に手動で設定するようにユーザに生成および促す警告のいずれかを指すことができる。本方法を繰り返し実行する場合、初期設定は、時間フレームの限界の平均値など、少なくとも1つの以前の実行または複数の以前の実行の測定から決定された測定窓の設定であってもよい。
【0027】
「実際の設定」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、ステップb)において決定された基準ピーク情報を考慮することによって決定された測定窓の設定を指すことができる。さらに、直前の測定のみの基準ピーク情報を考慮するために、直前の測定または複数の直前の測定を考慮して実際の設定が決定されてもよい。実際の設定を決定することは、基準ピーク情報を評価し、それによって測定窓の下限および/または上限を決定することを含むことができる。具体的には、保持時間の少なくとも1つの自動分析が実行され得る。さらに、測定窓は、自動的に再割り当てされてもよい。実際の設定は、予想される保持時間およびテーリング係数に基づいて決定および/または計算され得る。実際の設定は、ピーク、特に信号強度、およびバックグラウンドを比較することによって決定され得る。例えば、ピークが開始する少なくとも1つの閾値および/またはピークが終了する少なくとも1つの閾値を規定および/または使用することによって、信号強度およびバックグラウンドが比較され得る。実際の設定は、複数のデータセットに基づいて予測を行うことによって決定されてもよい。
【0028】
初期設定は、実際の設定と比較して保持時間のより広い時間フレームを含むことができ、および/または実際の設定は、初期設定と比較して保持時間をシフトすることができる。後者の場合、測定窓の幅が維持され得る。具体的には、測定窓の初期設定は、目的の分析物に対応するピークが時間フレーム内にあることが保証されるように、非常に広く選択され得る。その後、測定窓の初期設定は、測定窓の幅を縮小すること、および/または測定窓を位置決めすることを可能にする測定結果を考慮して、特に、経年変化または他の変化などによるLCカラムの変化を考慮に入れることを可能にする測定結果を考慮して最適化され得る。基準測定値は、既知のMRM遷移を含んでもよく、または既知のMRM遷移であってもよく、本方法は、それらの測定を最適化することを含む。「実際の設定を決定する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの後続の測定に応じて測定窓の初期設定を適合および/または変更することを指すことができる。測定のタイミングは、固定されていてもよい。しかしながら、進行中の分析の結果としてのピーク位置の変動に起因して、特に方法ステップa)からd)を繰り返し実行する場合、保持時間は、シフトしてもよく、以前の測定値に基づいて適合されてもよい。本方法は、経時的にパラメータを変更する関数としてMRMスケジュールタイミングを調整することを含むことができる。したがって、最適化された保持時間が使用されて、スケジュールされたMRM測定値を最適化し、したがってより多くのMRM遷移の時間を解放することができる。
【0029】
本方法は、ステップd)において、液体クロマトグラフィ質量分析装置を用いて試料中の分析物の遷移を測定することを含む。測定は、例えば、液体クロマトグラフィ質量分析装置の少なくとも1つのヒューマン-マシンインターフェースに少なくとも1つの入力を入力することによって、ユーザによってトリガされてもよい。
【0030】
測定窓の実際の設定は、分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定するために使用される。本明細書で使用される場合、「測定ピーク情報」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、測定窓の実際の設定を使用して、目的の分析物に対応するおよび/または関連するステップd)において測定されたクロマトグラムのピークの少なくとも1つの情報を指すことができる。測定されたピーク情報は、ピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、特に半値全幅、ピーク形状、テーリング係数のうちの1つ以上を含む。測定されたピーク情報を決定することは、実際の測定値を評価することを含むことができる。評価することは、少なくとも1つのピーク発見アルゴリズムを実行することおよび/または少なくとも1つのピークフィッティングアルゴリズムを実行することを含む少なくとも1つのデータ分析を実行することを含むことができる。
【0031】
本方法は、分析物の遷移の測定をデータセットに追加することによってデータセットを更新することをさらに含むことができる。具体的には、方法ステップa)からd)が繰り返し実行される場合、ステップd)を実行した後にデータセットを更新して、後続のステップa)が更新された初期設定を使用して実行されるようにすることができる。したがって、更新は、恒久的に実行され得る。
【0032】
方法ステップa)からd)は、繰り返し実行されてもよい。ステップa)では、最新の測定値が基準測定値として使用され得る。ステップb)では、最後に決定された実際の設定を初期設定として使用して、分析物の遷移の基準ピーク情報が決定され得る。方法ステップa)からd)を複数回繰り返した後、ステップa)において、複数の先行する測定値の平均値が基準測定値として使用され得る。平均値は、少なくとも5つの先行する測定値を使用することによって決定され得る。追加的または代替的に、特に実行間のより大きな変化の場合、複数の先行する測定値の移動平均が基準測定値として使用され得る。追加的または代替的に、平均値を計算するための先行測定値の最大量が制限されてもよい。2つ以上の測定値を使用することは、基準データが外れ値または試料の影響に関して補正されることを確実にすることができる。
【0033】
測定窓の幅は、繰り返し回数に応じて狭くなってもよい。したがって、測定窓は、より多くのMS検出窓をクリアにするためにさらに良好および/またはより有益になる。検出窓は、質量分析装置が試料の測定を実行しなければならない時間フレームであってもよい。具体的には、検出窓は、LCカラム内の2つの連続する試料入力間で可能な最大時間とすることができる。
【0034】
本方法は、少なくとも1つのインサイチュ調整ステップをさらに含むことができる。インサイチュ調整ステップは、ステップd)の間に実行されてもよい。インサイチュ調整ステップでは、分析物の遷移の強度が測定中に監視され、少なくとも1つの所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルと比較され得る。液体クロマトグラフィ質量分析装置は、閾値レベルおよび/または閾値の少なくとも1つの規定を記憶するように構成された少なくとも1つのさらなるデータベースを含んでもよい。例えば、少なくとも1つの閾値レベルおよび/または少なくとも1つの閾値は、バックグラウンドに対する信号強度のパーセント変化によって規定されてもよい。追加的または代替的に、少なくとも1つの絶対値は、超過または不足を決定するための閾値として使用され得る。さらなるデータベースは、閾値レベルの値などの入力情報をデータベースから受信するように構成されてもよい。したがって、閾値レベルは、データ駆動型とすることができる。強度が所定の閾値レベルを下回る場合、遷移の取得が停止され得る。所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルは、最初から知られている信号対雑音比のX倍の係数によって規定され得る。インサイチュ調整ステップは、測定パラメータの自動ライブ調整を伴うフィードバックループとして実装されてもよい。例えば、測定、すなわち特定のMRMは、以前の測定に基づいて既知の時間に開始することができる。このMRMの実測強度に基づいて、測定の実行時間が決定されてもよい。強度が所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルを下回る場合、そのMRMの取得が停止され得、同時に実行されている他のMRMの滞留時間が解放され得る。この手法は、良好にはっきりと表現されたピークに対して信頼性があり得る。しかしながら、信号対雑音が低い場合、例えば、個々の信号の変動が大きい小さなピークの場合に問題が生じる可能性がある。これらの場合、所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルは、ガウス曲線などの適合曲線の端部によって与えられることができることが有利であり得る。適合曲線は、ピークの開始およびピークの終了などのピーク領域を規定することを可能にすることができる。特に、適合曲線の端部として示されるピークの端部における特定のピーク高さは、閾値レベルとして使用され得る。原理的には、この段階では完全な信号が存在しないため、測定中に適合曲線を使用することは問題である。しかしながら、ガウス曲線または他の適合曲線の適合パラメータが1つ以上の先行する測定値から決定され得るため、ガウス曲線などの適合曲線が使用され得る。これは、1回の反復のみで適合曲線の全てのパラメータを決定することを可能にすることができる。追加的または代替的に、適合曲線は、内部標準の測定値から決定されてもよい。これは、フィッティング手順を加速することができる。追加的または代替的に、同じ分析物の異なるピークの適合結果の組み合わせが使用されて、適合結果のロバスト性を高めることができる。特にガウス分布の適合曲線は、バックグラウンドから独立しているか、またはあまり依存せず、したがって高ノイズであっても有利であり得る。
【0035】
方法ステップb)からc)が、およびステップd)において、分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定することが、少なくとも1つのコンピュータによって実行され得る。具体的には、方法ステップb)からc)が、およびステップd)において、分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定することが、完全に自動的に実行され得る。本方法は、具体的には、プロセッサなどの複数の遷移監視のための装置のコンピュータ上で、完全にまたは部分的にコンピュータ実装され得る。
【0036】
本方法は、カラムの経年劣化および/または毛細管交換、溶媒組成の不正確さなどのさらなる影響を補償することを含むことができる。
【0037】
さらなる態様では、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク、具体的には多重遷移監視用の装置のプロセッサ上で実行されると、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つにかかる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令、具体的には方法ステップa)からc)およびステップd)における測定ピーク情報の決定を含むコンピュータプログラムが開示される。
【0038】
したがって、一般的に言えば、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態において、本開示にかかる方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムがさらに開示および提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ媒体に記憶され得る。したがって、具体的には、上述したような方法ステップの1つ、2つ以上、または全ては、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行され得る。コンピュータは、具体的には、複数の遷移監視のための装置に完全にまたは部分的に統合されてもよく、コンピュータプログラムは、具体的には、ソフトウェアとして具現化されてもよい。しかしながら、代替的に、コンピュータの少なくとも一部はまた、複数の遷移監視のために装置の外側に配置されてもよい。
【0039】
例えば、上述した方法ステップのうちの1つ以上など、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態において、本発明にかかる方法を実行するために、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品が本明細書にさらに開示および提案される。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データキャリアに記憶されてもよい。
【0040】
コンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリなどのコンピュータまたはコンピュータネットワークにロードした後、本明細書に開示される1つ以上の実施形態にかかる方法、具体的には上述した方法ステップのうちの1つ以上を実行することができる、データ構造が記憶されたデータキャリアがさらに開示および提案される。
【0041】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されると、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上にかかる方法、具体的には上述した方法ステップのうちの1つ以上を実行するために、機械可読キャリアに記憶されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品が本明細書にさらに開示および提案される。本明細書中で用いられる場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリア上に存在することができる。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0042】
最後に、本明細書に開示および提案されるのは、本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上、具体的には上述した方法ステップのうちの1つ以上を実行するために、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号である。
【0043】
具体的には、本明細書では、さらに以下が開示される:
- プロセッサが、この説明で記載される実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワーク。
【0044】
- データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造。
【0045】
- プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、この明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合されたコンピュータプログラム。
【0046】
- コンピュータプログラムがコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、この明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム。
【0047】
- プログラム手段がコンピュータに読み取り可能な記憶媒体上に記憶された、先行する実施形態にかかるプログラム手段を備えるコンピュータプログラム。
【0048】
- データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークのメイン記憶部および/またはワーキング記憶部にロードされた後、本明細書に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するように適合された、記憶媒体。
【0049】
- コンピュータまたはコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、この説明に記載された実施形態のうちの1つにかかる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体上に記憶され得る、または記憶される、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【0050】
本発明のさらなる態様では、試料中の少なくとも1つの分析物の多重遷移監視のための装置が開示される。装置は、
- 多重遷移監視用に構成された少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析装置と、
- 少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値を含む少なくとも1つのデータセットを記憶するように構成された、少なくとも1つのデータベースと、
- 少なくとも1つの評価装置であって、評価装置が、測定窓の初期設定を使用して分析物の遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するように構成され、測定窓が保持時間の時間フレームによって規定され、評価装置が、基準ピーク情報を考慮して測定窓の実際の設定を決定するように構成され、決定することが、時間フレームを調整することを含み、評価装置が、測定窓の実際の設定を使用して、液体クロマトグラフィ質量分析装置による分析物の遷移の後続の測定の分析物の遷移の測定ピーク情報を決定するように構成されている、評価装置と
を備える。
【0051】
装置は、先行する実施形態のいずれか1つにかかる方法を実行するように構成されてもよい。本明細書で使用されるほとんどの用語および可能な定義については、上記の方法の説明を参照することができる。
【0052】
さらに本明細書で使用される場合、「評価装置」という用語は、一般に、好ましくは少なくとも1つのデータ処理装置を使用することによって、より好ましくは少なくとも1つのプロセッサおよび/または少なくとも1つの特定用途向け集積回路を使用することによって、上述した方法ステップを実行するように適合された任意の装置を指す。したがって、例として、少なくとも1つの評価装置は、いくつかのコンピュータコマンドを含むソフトウェアコードが記憶された少なくとも1つのデータ処理装置を備えることができる。評価装置は、名前付き操作のうちの1つ以上を実行するための1つ以上のハードウェア要素を提供することができ、および/または方法ステップのうちの1つ以上を実行するために実行されるソフトウェアを1つ以上のプロセッサに提供することができる。
【0053】
本発明にかかる方法および装置は、多重遷移監視のための既知の方法および装置を超える多数の利点を提供することができる。したがって、具体的には、以前の実行に基づく動的MRMは、貴重なチャネル時間を解放し、その結果、分析物のサンプリング速度または時間を増加させることができる。これは、高感度で測定されるべき分析物にとって特に有益である。寿命にわたる成分の変化、例えばカラムの経年劣化、および/または毛細管交換、溶媒組成の不正確さ、および他の要因などのさらなる影響、ならびに結果として生じる保持時間のずれまたは変化および噴霧安定化への影響によって引き起こされることがある影響は、利用可能な時間窓の境界内で補償され得る。カラムバッチからバッチへの変動から生じる偏差も補償され得る。本方法は、ハードウェアの変更を必要としないが、高速で強力なインサイチュアルゴリズムとして実装され得る。
【0054】
要約すると、さらに可能な実施形態を除外することなく、以下の実施形態が想定され得る:
【0055】
実施形態1:液体クロマトグラフィ質量分析装置を使用する多重遷移監視のための方法であって、以下:
a)少なくとも1つのデータベースから少なくとも1つのデータセットを決定するステップであって、データセットが、液体クロマトグラフィ質量分析装置を用いて、少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値を含む、少なくとも1つのデータセットを決定するステップと、
b)測定窓の初期設定を使用して分析物の遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するステップであって、測定窓が保持時間の時間フレームによって規定される、少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するステップと、
c)基準ピーク情報を考慮して測定窓の実際の設定を決定するステップであって、決定するステップが、時間フレームを調整することを含む、測定窓の実際の設定を決定するステップと、
d)液体クロマトグラフィ質量分析装置を用いて分析物の遷移を測定し、測定窓の実際の設定を使用して分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定するステップと
を含む、方法。
【0056】
実施形態2:分析物の遷移の測定値をデータセットに追加することによってデータセットを更新するステップをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0057】
実施形態3:方法ステップa)からd)が繰り返し実行され、ステップa)において、最新の測定値が基準測定値として使用され、ステップb)において、分析物の遷移の基準ピーク情報が、最新の決定された実際の設定を初期設定として使用して決定される、実施形態2に記載の方法。
【0058】
実施形態4:ステップa)において、複数の先行する測定値の平均値が基準測定値として使用される、実施形態3に記載の方法。
【0059】
実施形態5:平均値が、少なくとも5つの先行する測定値を使用することによって決定される、実施形態4に記載の方法。
【0060】
実施形態6:平均値を計算するための先行する測定値の最大量が制限される、実施形態4または5に記載の方法。
【0061】
実施形態7:ステップa)において、複数の先行する測定値の移動平均が基準測定値として使用される、実施形態2に記載の方法。
【0062】
実施形態8:少なくとも1つのインサイチュ調整ステップをさらに含み、インサイチュ調整ステップが、ステップd)の間に実行され、インサイチュ調整ステップにおいて、分析物の遷移の強度が測定中に監視され、少なくとも1つの所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルと比較され、強度が事前規定された閾値レベルを下回る場合、遷移の取得が停止される、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
実施形態9:少なくとも1つの閾値レベルおよび/または少なくとも1つの閾値が、バックグラウンドに対する信号強度のパーセント変化によって規定され、および/または少なくとも1つの絶対値が、超過または不足を判定するための閾値として使用される、実施形態8に記載の方法。
【0064】
実施形態10:所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルがガウス曲線などの適合曲線の端部によって与えられ、適合曲線のパラメータが1つ以上の先行する測定値から決定され、および/または適合曲線が内部標準の測定値から決定され、および/または同じ分析物の異なるピークの適合結果の組み合わせが、適合結果のロバスト性を高めるために使用される、実施形態9に記載の方法。
【0065】
実施形態11:基準ピーク情報および/または測定されたピーク情報が、ピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、特に半値全幅、ピーク形状、テーリング係数、および/または任意の種類のピークフィッティングおよびフィルタリングのうちの1つ以上を含む、実施形態1から10のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態12:少なくとも1つの初期較正ステップを含み、初期較正ステップにおいて、基準測定値および/または初期設定が決定される、実施形態1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態13:初期較正ステップが、液体クロマトグラフィ質量分析装置の少なくとも1回の品質管理運転の間および/もしくは後、ならびに/または少なくとも1回の内部標準試料運転の間および/もしくは後に実行される、実施形態12に記載の方法。
【0068】
実施形態14:初期較正ステップの開始が、液体クロマトグラフィ質量分析装置のカラムの変更によって、および/または事前規定された時間もしくは所定の時間の後に、および/または事前規定された時間もしくは所定の運転回数の後に、または他の適切なカウンタによってトリガされる、実施形態12または13に記載の方法。
【0069】
実施形態15:初期設定が、実際の設定と比較して保持時間の広い時間フレームを含む、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
実施形態16:方法ステップa)からd)を繰り返すことを含み、測定窓の幅が、繰り返しの回数とともに狭くなる、実施形態1から15のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態17:基準測定および分析物の遷移の測定が、実質的に同じ条件下で実行される、実施形態1から16のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態18:方法ステップb)からc)が、およびステップd)において、分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定することが、少なくとも1つのコンピュータによって実行される、実施形態1から17のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態19:カラムの経年劣化および/または毛細管交換、溶媒組成の不正確さなどのさらなる影響を補償することを含む、実施形態1から18のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態20:実際の設定が、予想される保持時間およびテーリング係数に基づいて決定および/または計算され、および/または実際の設定が、ピークおよびバックグラウンドを比較することによって決定され、および/または実際の設定が、複数のデータセットに基づいて予測を行うことによって決定される、実施形態1から19のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態21:試料中の少なくとも1つの分析物の多重遷移監視のための装置であって、
- 多重遷移監視用に構成された少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析装置と、
- 少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値を含む少なくとも1つのデータセットを記憶するように構成された、少なくとも1つのデータベースと、
- 少なくとも1つの評価装置であって、評価装置が、測定窓の初期設定を使用して分析物の遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するように構成され、測定窓が保持時間の時間フレームによって規定され、評価装置が、基準ピーク情報を考慮して測定窓の実際の設定を決定するように構成され、決定することが、時間フレームを調整することを含み、評価装置が、測定窓の実際の設定を使用して、液体クロマトグラフィ質量分析装置による分析物の遷移の後続の測定の分析物の遷移の測定ピーク情報を決定するように構成されている、評価装置と
を備える、装置。
【0076】
実施形態22:装置が、実施形態1から20のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成されている、実施形態21に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0077】
さらなる任意の特徴および実施形態は、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてより詳細に開示される。その中で、それぞれの任意の特徴は、当業者が理解するように、独立した方法で、ならびに任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されない。実施形態は、図に概略的に示されている。その中で、これらの図の同一の参照符号は、同一または機能的に匹敵する要素を指す。
【0078】
図は以下のとおりである:
図1A】本発明にかかる方法のフローチャートを示している。
図1B】本発明にかかる方法のフローチャートを示している。
図2A】通常の手法(図2A)と本発明にかかる方法(図2B)との比較を示している。
図2B】通常の手法(図2A)と本発明にかかる方法(図2B)との比較を示している。
図3A】通常の手法(図3A)と本発明にかかる方法(図3B)との測定窓のさらなる比較を示している。
図3B】通常の手法(図3A)と本発明にかかる方法(図3B)との測定窓のさらなる比較を示している。
図4】本発明にかかる多重遷移監視のための装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0079】
例示的な実施形態
図1Aは、本発明にかかる、その実施形態が図4に示されている液体クロマトグラフィ質量分析装置111を使用する多重遷移監視のための方法のフローチャートを示している。
【0080】
本方法は、ステップa)において、少なくとも1つのデータベース114から少なくとも1つのデータセット112を決定することを含む。データセット112は、液体クロマトグラフィ質量分析装置111による少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値116を含む。データセット112は、以前の実行などからの少なくとも1つの以前のMRM測定に関する記憶および/または蓄積された情報であってもよく、および/またはそれを含んでもよい。以前のMRM測定に関する情報は、少なくとも1つのクロマトグラムおよび/またはクロマトグラムから評価された少なくとも1つの情報、例えばピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、特に半値全幅、ピーク形状、テーリング係数、および/または任意のタイプのピークフィッティングおよびフィルタリングを含むことができる。データベース114は、少なくとも1つのデータセット112が記憶される少なくとも1つのテーブルおよび/または少なくとも1つのルックアップテーブルを含むことができる。データベースは、データセットを記憶するように構成された少なくとも1つの記憶ユニットを備えることができる。
【0081】
基準測定値は、少なくとも1つの既知のMRM遷移を含んでもよく、または少なくとも1つの既知のMRM遷移であってもよい。基準測定値は、以前の品質管理実行中に取得された少なくとも1つの品質管理試料の少なくとも1つの測定値、および/または以前の内部標準試料実行中に取得された少なくとも1つの内部標準試料の少なくとも1つの測定値、および/または以前の実行中に取得された試験試料の少なくとも1つの測定値とすることができる。基準測定値は、実際の試験試料の測定値と同じまたは少なくとも同様および/または同等の条件下で同じ方法で取得および/または決定および/または測定された少なくとも1つの測定値とすることができる。基準測定および分析物の遷移の測定は、実質的に同じ条件下で実行され得る。例えば、基準測定および分析物の遷移の測定は、一定のクロマトグラフィ条件下で、特に同じLCカラムおよび溶離液を用いて実行され得る。本方法は、既知の化合物および周知の条件に適用され得る。本方法は、特に勾配の変化の場合に、少なくとも1つの基準測定値を予測することを含んでもよい。予測は、LCカラムの経年劣化、毛細管交換、溶媒組成の不正確さ、および他の要因を考慮することを含むことができる。
【0082】
本方法は、ステップb)(参照符号118によって示される)において、測定窓120の初期設定を使用して分析物の遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定することを含み、測定窓120は、保持時間の時間フレームによって規定される。測定窓120の例を図2Bに示す。
【0083】
基準ピーク情報は、目的の分析物の測定のための関連する時間フレームを制限するのに適した、基準測定の目的の分析物に対応するおよび/または関連するクロマトグラムのピーク、すなわち極大値の少なくとも1つの情報とすることができる。基準ピーク情報は、ピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、特に半値全幅、ピーク形状、テーリング係数、および/または任意のタイプのピークフィッティングおよびフィルタリングのうちの1つ以上を含むことができる。基準ピーク情報を決定することは、基準測定値を評価すること122を含むことができる。評価すること122は、少なくとも1つのピーク発見アルゴリズムを実行することおよび/または少なくとも1つのピークフィッティングアルゴリズムを実行することを含む少なくとも1つのデータ分析を実行することを含むことができる。評価することは、生データのチェック、前処理、平滑化、バックグラウンド低減または除去、ピーク検出、ピーク積分のうちの1つ以上を含むことができる。
【0084】
測定窓120は、保持時間の時間フレームによって規定される。目的の分析物の測定を特定の所定の時間フレームに限定することは一般に知られている。測定窓120の設定は、測定窓120の一方または双方の限界の値を含むことができる。具体的には、測定窓120の設定は、測定窓の下限の値、すなわち測定を開始する保持時間、および測定窓の上限の値、すなわち測定を停止する保持時間の一方または双方を含むことができる。
【0085】
初期設定は、基準ピーク情報を決定するために使用される測定窓120の設定であってもよい。初期設定は、予め決定されてもよく、および/または予め規定されてもよい。例えば、LC装置のカラムの変更後の最初の測定の場合、初期設定は、データベースに蓄積され得るデフォルト設定とすることができる。本方法は、ここでは示されていないが、少なくとも1つの初期較正ステップを含むことができ、初期較正ステップでは、基準測定値および/または初期設定が決定され得る。初期較正ステップは、液体クロマトグラフィ質量分析装置の少なくとも1つの品質管理の実行中および/または実行後に、および/または少なくとも1つの内部標準試料の実行中および/または実行後に実行され得る。初期較正ステップの開始は、液体クロマトグラフィ質量分析装置111のカラムの変更によって、および/または事前規定された時間もしくは所定の時間後に、および/または事前規定された運転回数もしくは所定の運転回数後に、または他の適切なカウンタによってトリガされ得る。本方法を繰り返し実行する場合、初期設定は、時間フレームの限界の平均値など、少なくとも1つの以前の実行または複数の以前の実行の測定から決定された測定窓120の設定であってもよい。
【0086】
本方法は、ステップc)において、基準ピーク情報を考慮して測定窓120の実際の設定を決定することをさらに含み、決定することは、時間フレームを調整することを含む。実際の設定は、ステップb)において決定された基準ピーク情報を考慮して決定された測定窓120の設定であってもよい。さらに、直前の測定のみの基準ピーク情報を考慮するために、直前の測定または複数の直前の測定を考慮して実際の設定が決定されてもよい。実際の設定を決定することは、基準ピーク情報を評価し、それによって測定窓の下限および/または上限を決定することを含むことができる。具体的には、参照符号124によって示される保持時間の少なくとも1つの自動分析が実行され得る。さらに、測定窓は、参照符号126によって示されるように、自動的に再割り当てされてもよい。実際の設定は、予想される保持時間およびテーリング係数に基づいて決定および/または計算され得る。実際の設定は、ピーク、特に信号強度、およびバックグラウンドを比較することによって決定され得る。例えば、ピークが開始する少なくとも1つの閾値および/またはピークが終了する少なくとも1つの閾値を規定および/または使用することによって、信号強度およびバックグラウンドが比較され得る。実際の設定は、複数のデータセットに基づいて予測を行うことによって決定されてもよい。
【0087】
初期設定は、実際の設定と比較して保持時間のより広い時間フレームを含むことができる。具体的には、測定窓120の初期設定は、目的の分析物に対応するピークが時間フレーム内にあることが保証されるように、非常に広く選択され得る。その後、測定窓120の初期設定は、測定窓の幅を縮小すること、および/または測定窓120を位置決めすることを可能にする測定結果を考慮して、特に、経年変化または他の変化などによるLCカラムの変化を考慮に入れることを可能にする測定結果を考慮して最適化され得る。基準測定値は、既知のMRM遷移を含んでもよく、または既知のMRM遷移であってもよく、本方法は、それらの測定を最適化することを含む。実際の設定を決定することは、少なくとも1つの後続の測定に応じて測定窓の初期設定を適合および/または変更することを含むことができる。測定のタイミングは、固定されていてもよい。しかしながら、進行中の分析の結果としてのピーク位置の変動に起因して、特に方法ステップa)からd)を繰り返し実行する場合、保持時間は、シフトしてもよく、以前の測定値に基づいて適合されてもよい。本方法は、経時的にパラメータを変更する関数としてMRMスケジュールタイミングを調整することを含むことができる。したがって、最適化された保持時間が使用されて、スケジュールされたMRM測定値を最適化し、したがってより多くのMRM遷移の時間を解放することができる。
【0088】
本方法は、ステップd)において、参照符号130によって示されるように、液体クロマトグラフィ質量分析装置を用いて試料中の分析物の遷移を測定することを含む。測定は、例えば、液体クロマトグラフィ質量分析装置111の少なくとも1つのヒューマン-マシンインターフェースに少なくとも1つの入力を入力することによって、ユーザによってトリガ128されてもよい。
【0089】
本方法は、ステップd)において、測定窓120の実際の設定を使用して、参照符号132によって示される、分析物の遷移の測定ピーク情報を決定することをさらに含む。測定されたピーク情報は、測定窓120の実際の設定を使用して、目的の分析物に対応するおよび/または関連するステップd)において測定されたクロマトグラムのピークの少なくとも1つの情報とすることができる。測定されたピーク情報は、ピーク最大値、保持時間、ピーク開始時間、ピーク終了時間、ピーク幅、特に半値全幅、ピーク形状、テーリング係数、および/または任意のタイプのピークフィッティングおよびフィルタリングのうちの1つ以上を含む。測定されたピーク情報を決定することは、実際の測定値を評価することを含むことができる。評価することは、少なくとも1つのピーク発見アルゴリズムを実行することおよび/または少なくとも1つのピークフィッティングアルゴリズムを実行することを含む少なくとも1つのデータ分析を実行することを含むことができる。
【0090】
本方法は、分析物の遷移の測定をデータセット112に追加することによってデータセット112を更新すること134をさらに含むことができる。具体的には、方法ステップa)からd)が繰り返し実行される場合、ステップd)を実行した後にデータセット112を更新して、後続のステップa)が更新された初期設定を使用して実行されるようにすることができる。したがって、更新134は、恒久的に実行され得る。
【0091】
方法ステップa)からd)は、繰り返し実行されてもよい。ステップa)では、最新の測定値が基準測定値として使用され得る。ステップb)では、最後に決定された実際の設定を初期設定として使用して、分析物の遷移の基準ピーク情報が決定され得る。方法ステップa)からd)を複数回繰り返した後、ステップa)において、複数の先行する測定値の平均値が基準測定値として使用され得る。平均値は、少なくとも5つの先行する測定値を使用することによって決定され得る。追加的または代替的に、特に実行間のより大きな変化の場合、複数の先行する測定値の移動平均が基準測定値として使用され得る。追加的または代替的に、平均値を計算するための先行測定値の最大量が制限されてもよい。2つ以上の測定値を使用することは、基準データが外れ値または試料の影響に関して補正されることを確実にすることができる。
【0092】
測定窓120の幅は、繰り返し回数に応じて狭くなってもよい。したがって、測定窓120は、より多くのMS検出窓をクリアにするためにさらに良好および/またはより有益になる。検出窓は、質量分析装置が試料の測定を実行しなければならない時間フレームであってもよい。
【0093】
図1Bは、本発明にかかる方法のさらなるフローチャートを示しており、図1Aに示す実施形態に加えて、本方法は、少なくとも1つのインサイチュ調整ステップ136をさらに含むことができる。インサイチュ調整ステップ136は、ステップd)の間に実行されてもよい。インサイチュ調整ステップ136では、分析物の遷移の強度が測定中に監視され、少なくとも1つの所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルと比較され得る。液体クロマトグラフィ質量分析装置111は、閾値レベルおよび/または閾値の少なくとも1つの規定を記憶するように構成された少なくとも1つのさらなるデータベース138を含むことができる。例えば、少なくとも1つの閾値レベルおよび/または少なくとも1つの閾値は、バックグラウンドに対する信号強度のパーセント変化によって規定されてもよい。追加的または代替的に、少なくとも1つの絶対値は、超過または不足を決定するための閾値として使用され得る。さらなるデータベース138は、閾値レベルの値などの入力情報をデータベース114から受信する(参照符号142によって示される)ように構成され得る。したがって、閾値レベルは、データ駆動型とすることができる。強度が所定の閾値レベルを下回る場合、遷移の取得が停止され得る。所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルは、最初から知られている信号対雑音比のX倍の係数によって規定され得る。インサイチュ調整ステップは、測定パラメータの自動ライブ調整を伴うフィードバックループ140として実装されてもよい。例えば、測定、すなわち特定のMRMは、以前の測定に基づいて既知の時間に開始することができる。このMRMの実測強度に基づいて、測定の実行時間が決定されてもよい。強度が所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルを下回る場合、そのMRMの取得が停止され得、同時に実行されている他のMRMの滞留時間が解放され得る。この手法は、良好にはっきりと表現されたピークに対して信頼性があり得る。しかしながら、信号対雑音が低い場合、例えば、個々の信号の変動が大きい小さなピークの場合に問題が生じる可能性がある。これらの場合、所定の閾値レベルまたは事前規定された閾値レベルは、ガウス曲線などの適合曲線の端部によって与えられることができることが有利であり得る。適合曲線は、ピークの開始およびピークの終了などのピーク領域を規定することを可能にすることができる。特に、適合曲線の端部として示されるピークの端部における特定のピーク高さは、閾値レベルとして使用され得る。原理的には、この段階では完全な信号が存在しないため、測定中に適合曲線を使用することは問題である。しかしながら、ガウス曲線または他の適合曲線のパラメータが1つ以上の先行する測定値から決定され得るため、ガウス曲線などの適合曲線が使用され得る。これは、1回の反復のみで適合曲線の全てのパラメータを決定することを可能にすることができる。追加的または代替的に、適合曲線は、内部標準の測定値から決定されてもよい。これは、フィッティング手順を加速することができる。追加的または代替的に、同じ分析物の異なるピークの適合結果の組み合わせが使用されて、適合結果のロバスト性を高めることができる。特にガウス分布の適合曲線は、バックグラウンドから独立しているか、またはあまり依存せず、したがって高ノイズであっても有利であり得る。
【0094】
方法ステップb)からc)が、およびステップd)において、分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定することが、少なくとも1つのコンピュータによって実行され得る。具体的には、方法ステップb)からc)が、およびステップd)において、分析物の遷移の測定されたピーク情報を決定することが、完全に自動的に実行され得る。本方法は、具体的には、プロセッサなどの複数の遷移監視のための装置のコンピュータ上で、完全にまたは部分的にコンピュータ実装され得る。
【0095】
図2Aおよび図2Bは、図1Aおよび図1Bに関して説明したような、図2Aに示す通常の手法と、図2Bに示す本発明にかかる方法との比較を示している。具体的には、秒単位の保持時間RTの関数としての強度I(%)が示されている。図2Aおよび図2Bでは、上のプロットは、新たなLCカラムおよび/または初期条件についてのクロマトグラムを示し、下のプロットは、熟成したLCカラムについてのクロマトグラムおよび/またはシステムの実験性能の潜在的な他の変化を示している。図2Aに示す通常の手法では、LCカラムの寿命にわたる潜在的変化(矢印144によって示される)を補償するために、大きな測定窓が使用される。例えば、測定窓の幅Δtは、Δt=20sであってもよく、測定窓の位置は、20から40sであってもよい。図2Bでは、測定窓120は、図2Aと比較してより狭く選択され得、例えばΔt=10秒である。さらに、測定窓120は、方法ステップa)からd)を繰り返すこと、および以前の測定およびインサイチュ調整に基づく測定窓120の恒久的な再割り当て(矢印146によって示される)により、一定に維持され得、またはさらに狭くされ得る。
【0096】
図3Aおよび図3Bは、図3Aに示す通常の手法と、図3Bに示す本発明にかかる方法との測定窓のさらなる比較を示している。具体的には、秒単位の保持時間RTの関数としての強度I(%)が示されている。さらに、図3Aおよび図3Bでは、クロマトグラムのそれぞれのピークにそれぞれ対応する7つの測定窓およびその幅が示されている。図3Aに示す通常の手法では、LCカラムの寿命にわたる潜在的変化を補償するために、大きな測定窓が使用される。対照的に、図3Bでは、測定窓120は、図3Aと比較して狭くなっている。そのような狭い測定窓の使用は、以前の測定およびインサイチュ調整に基づく測定窓120の恒久的な再割り当てにより可能である。安全マージンは必要ない。測定窓は、より少ないオーバーラップを示す。ピーク当たりのより高いサンプリングレートが可能であり、その結果、ピーク当たりのポイントがより多くなる。
【0097】
図4は、本発明にかかる多重遷移監視のための装置110を非常に概略的に示している。装置110は、多重遷移監視用に構成された少なくとも1つの液体クロマトグラフィ質量分析装置111を備える。液体クロマトグラフィ質量分析装置111は、少なくとも1つの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)装置または少なくとも1つのマイクロ液体クロマトグラフィ(μLC)装置とすることができるか、またはそれを備えることができる。液体クロマトグラフィ質量分析装置111は、液体クロマトグラフィ(LC)装置および質量分析(MS)装置を備えることができ、LC装置およびMSは、少なくとも1つの界面を介して結合される。LC装置は、少なくとも1つのLCカラムを備えることができる。例えば、LC装置は、シングルカラム型のLC装置であってもよいし、複数のLCカラムを有するマルチカラム型のLC装置であってもよい。LCカラムは、目的の分析物を分離および/または溶出および/または移送するために移動相が圧送される固定相を有することができる。LCカラムは、例えば、事前規定された時間および/もしくは運転回数、または所定の時間および/もしくは運転回数、ならびに/または他の適切なカウンタの後に交換可能であってもよい。質量分析装置は、少なくとも1つの四重極質量分析装置とすることができ、またはそれを備えることができる。LC装置とMSとを結合する界面は、分子イオンを生成し、分子イオンを気相に移動させるように構成された少なくとも1つのイオン化源を備えることができる。
【0098】
装置110は、少なくとも1つの分析物の少なくとも1つの遷移の少なくとも1つの基準測定値116を含むデータセット112を記憶するように構成されたデータベース114をさらに備える。データセット112およびデータベース114の説明に関しては、上記の図1Aおよび図1Bの説明を参照する。
【0099】
装置110は、少なくとも1つの評価装置148を備える。評価装置148は、測定窓120の初期設定を使用して分析物の遷移の少なくとも1つの基準ピーク情報を決定するように構成されている。測定窓120は、保持時間の時間フレームによって規定される。評価装置148は、基準ピーク情報を考慮して測定窓120の実際の設定を決定するように構成されている。決定することは、時間フレームを調整することを含む。評価装置148は、測定窓120の実際の設定を使用して、液体クロマトグラフィ質量分析装置111による分析物の遷移のその後の測定の分析物の遷移の測定ピーク情報を決定するように構成されている。
【符号の説明】
【0100】
110 多重遷移監視のための装置
111 CMS装置
112 データセット
114 データベース
116 基準測定値
118 ステップb)
120 測定窓
122 基準測定値の評価
124 自動分析
126 測定窓の再割り当て
128 トリガ
130 測定遷移
132 測定ピーク情報の決定
134 更新
136 インサイチュ調整ステップ
138 さらなるデータベース
140 フィードバックループ
142 入力受信
144 矢印
146 矢印
148 評価装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4