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特許7430269温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造
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  • 特許-温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/20 20210101AFI20240202BHJP
【FI】
G01K13/20 361K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022547990
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021104295
(87)【国際公開番号】W WO2022142237
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202011598885.1
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522312355
【氏名又は名称】華潤微集成電路(無錫)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】李芳
(72)【発明者】
【氏名】沈天平
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-275924(JP,A)
【文献】特開昭61-167827(JP,A)
【文献】米国特許第4602871(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/22 - 7/25
G01K 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造であって、
補償モジュールと、温度測定発振回路及び実測モジュールを含む体温計回路と、LCD駆動モジュールとを含み、
前記補償モジュールと前記実測モジュールとは、前記温度測定発振回路と前記LCD駆動モジュールとの間に並列接続され、
前記回路構造は、組み合わせ論理制御スイッチによって前記補償モジュール及び前記実測モジュールの導通及び遮断をそれぞれ実現し、前記補償モジュールが遮断された場合、前記実測モジュールが導通し、実測データが出力され、前記実測モジュールが遮断された場合、前記補償モジュールが導通し、予測補償された温度値が出力され、
前記補償モジュールは、温度補償小数分周器、温度補償カウンタ及び温度補償分周係数ルックアップテーブルROMユニットを含み、前記温度補償小数分周器の入力端は前記温度測定発振回路に接続され、前記温度補償カウンタの入力端は前記温度補償小数分周器に接続され、出力端は前記組み合わせ論理制御スイッチを通じて前記LCD駆動モジュールに接続され、前記温度補償分周係数ルックアップテーブルROMユニットの入力端は前記温度補償カウンタに接続され、出力端は前記温度補償小数分周器に接続され、
前記補償モジュールは、測定温度と実際温度Tとの間の誤差▽Tを統計して発振数XRSを算出し、温度上昇時に増加する発振数Nzを算出し、小数分周器を通じて分周係数ルックアップテーブル出力Routを算出し、前記温度補償分周係数ルックアップテーブルROMユニットが、現在の温度値に応じて、対応する分周係数を前記温度補償小数分周器に出力し、分周後に100個のパルス信号を前記温度補償カウンタに出力し、LCD駆動回路を通じて温度値を表示することを特徴とする温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造。
【請求項2】
前記温度測定発振回路は、パルス発生制御回路、基準電圧REF、温度センサNTC及びコンデンサを含み、前記基準電圧REF及び前記温度センサNTCはいずれも前記パルス発生制御回路に並列接続され、前記基準電圧REFは前記温度センサNTCの一端に接続され、かつ、前記コンデンサを通じて接地され、前記基準電圧REFは所定値の抵抗RFを通じて前記パルス発生制御回路に接続され、前記温度センサNTCは所定値の抵抗RSを通じて前記パルス発生制御回路に接続され、前記コンデンサは発振器SCを通じて前記パルス発生制御回路に接続されることを特徴とする請求項1に記載の温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造。
【請求項3】
前記補償モジュールは、以下(1)の式に基づいて発振数XRSを算出し、
【数1】
・・・(1)
RFは参考抵抗値であり、以下(2)式は、実際温度Tが対応するNTCの抵抗値であり、XRFは、前記所定値の抵抗RFが導通されたときの発振器SCの発振数であり、XRSは、前記所定値の抵抗RSが導通されたときの発振器SCの発振数であることを特徴とする請求項に記載の温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造。
【数2】
・・・(2)
【請求項4】
前記補償モジュールは、以下(3)の式に基づいて温度上昇時に増加する発振数Nzを算出し、
【数3】
・・・(3)
▽Tは補償値であり、Tは実際温度であることを特徴とする請求項に記載の温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造。
【請求項5】
前記補償モジュールは、以下(4)の式に基づいて分周係数ルックアップテーブル出力Routを算出し、
【数4】
・・・(4)
Nzは温度上昇時に増加する発振数であることを特徴とする請求項に記載の温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年12月29日に出願された中国発明特許出願第202011598885.1号の優先権を主張するものであり、その内容は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は電子体温計分野に関し、具体的には、温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造である。
【背景技術】
【0003】
現在、一般的な体温計には主に水銀体温計、電子体温計及び赤外線体温計の3種類がある。
【0004】
水銀体温計は従来の体温計であり、価格が安く、使用しやすい。通常は、検査する必要のある部位において5分程度停留させてから、読み取り値を取り出すことができる。電子体温計を使用するとき、測定する必要のある部位に体温計を入れておおよそ30秒後、ブザー通知が聞こえれば読み取り値を取り出すことができる。更に、赤外線体温計については、測定の時間がより短く、一般的には数秒間で体温をモニタリングすることができ、接触式と非接触式の2種類がある。赤外線体温計は価格が非常に高く、携帯に不便であるため、現在、一般的な家庭用体温計は主に水銀体温計と電子体温計である。
【0005】
水銀体温計には、測定時間が長い、ガラス材質で割れやすい、割れた後に漏れる水銀が環境を汚染し、不健康である等の欠点が存在するため、欧州議会では2007年に法案が可決され、欧州連合各国において水銀を含む温度計を使用することが禁止された。米国では2007年末時点で13の州において法案が可決されており、水銀を含む温度計を使用することが禁止されている。水銀体温計が淘汰されるのは必然的な傾向であり、電子体温計は水銀体温計に代わる製品の第一候補である。
【0006】
赤外線体温計と比べると、電子体温計においても同様に測定時間がやや長いという欠点が存在し、メーカーによって要する時間が30秒から3分以上と異なっている。測定時間の短縮による欠点は、測定が不正確になるということである。
【0007】
現在の電子体温計製品は、スクリーン表示温度が所定の時間内において変化しないとき、温度はすでに安定していると認識され、測定は終了し、ブザーで通知される。安定時間はピンの結合を制御することによって選択でき、一般的なものには4s/8s/16s/32sの4つのモードがある。多くの企業では、測定時間を短縮して、速やかに温度を測定するという効果に達するために、できる限り短い安定時間が選択される。このようにして、測定時間が短縮されるが、測定誤差が大きくなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、以上に述べた従来技術の欠点を克服し、簡便な操作、速やかな温度測定、高い正確性を満たす、温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を実現するために、本発明における温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造を以下に説明する。
【0010】
該温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造の主な特徴として、前記回路構造は、補償モジュールと、温度測定発振回路及び実測モジュールを含む体温計回路と、LCD駆動モジュールとを含み、前記補償モジュールと実測モジュールとは、温度測定発振回路とLCD駆動モジュールとの間に並列接続され、前記回路構造は、組み合わせ論理制御スイッチによって補償モジュール及び実測モジュールの導通及び遮断をそれぞれ実現し、補償モジュールが遮断された場合、実測モジュールが導通し、実測データが出力され、実測モジュールが遮断された場合、補償モジュールが導通し、予測補償された温度値が出力される。
【0011】
好ましくは、前記補償モジュールは、温度補償小数分周器、温度補償カウンタ及び温度補償分周係数ルックアップテーブルROMユニットを含み、温度補償小数分周器の入力端は前記温度測定発振回路に接続され、温度補償カウンタの入力端は前記温度補償小数分周器に接続され、出力端は組み合わせ論理制御スイッチを通じて前記LCD駆動モジュールに接続され、温度補償分周係数ルックアップテーブルROMユニットの入力端は前記温度補償カウンタに接続され、出力端は前記温度補償小数分周器に接続される。
【0012】
好ましくは、前記補償モジュールは測定温度と実際温度Tとの間の誤差▽Tを統計して、発振数XRSを算出し、温度上昇時に増加する発振数Nzを算出し、小数分周器を通じて分周係数ルックアップテーブル出力Routを算出し、前記温度補償分周係数ルックアップテーブルROMは、現在の温度値に基づいて、対応する分周係数を温度補償小数分周器に出力し、分周後に100個のパルス信号を温度補償カウンタに出力し、LCD駆動回路を通じて温度値を表示する。
【0013】
好ましくは、前記温度測定発振回路は、パルス発生制御回路、基準電圧REF、温度センサNTC及びコンデンサを含み、前記基準電圧REF及び温度センサNTCはいずれもパルス発生制御回路に並列接続され、基準電圧REFは温度センサNTCの一端に接続され、かつ、コンデンサを通じて接地され、基準電圧REFは所定値の抵抗RFを通じてパルス発生制御回路に接続され、温度センサNTCは所定値の抵抗RSを通じてパルス発生制御回路に接続され、コンデンサは発振器SCを通じてパルス発生制御回路に接続される。
【0014】
好ましくは、前記補償モジュールは、発振数XRSを算出する。具体的には、
以下(1)の式に基づいて発振数XRSを算出する。
【数1】
・・・(1)
【0015】
RFは参考抵抗値であり、以下(2)式は実際温度Tが対応するNTCの抵抗値であり、XRF所定値の抵抗RFが導通されたときの発振器SCの発振数であり、XRS所定値の抵抗RSが導通されたときの発振器SCの発振数である。
【数2】
・・・(2)
【0016】
好ましくは、前記補償モジュールは、温度上昇時に増加する発振数Nzを算出する。具体的には、以下(3)の式に基づいて温度上昇時に増加する発振数Nzを算出する。
【数3】
・・・(3)
【0017】
▽Tは補償値であり、Tは実際温度である。
【0018】
好ましくは、前記補償モジュールは分周係数ルックアップテーブル出力Routを算出する。具体的には、以下(4)の式に基づいて分周係数ルックアップテーブル出力Routを算出する。
【数4】
・・・(4)
【0019】
Nzは温度上昇時に増加する発振数である。
【発明の効果】
【0020】
本発明における温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造は、実現方法が簡単であり、速やかに温度を測定することができ、同時に、実測温度に基づいて測定誤差を補償することができる、予測機能を有する電子体温計回路である。本発明はカウントシステムを2つ有し、実測モードと予測モードとの2種類を選択することができ、生産キャリブレーションが便利になる。本発明において述べた電子体温計は温度補償機能を有し、速やかで正確な温度測定機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明における温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造の機能概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の技術内容をより明確に説明するために、以下、具体的な実施例を参照しながら更に説明する。
【0023】
本発明は、実現方法が簡単であり、速やかに温度を測定することができ、同時に、実測温度に基づいて測定誤差を補償することができる、予測機能を有する電子体温計の回路を提供し、本発明は、デュアルカウンタ・デュアルROM方式によって温度補償及び実測の2つの機能を実現する。回路の機能概略図を図1に示す。
【0024】
本発明は、従来の電子体温計をベースに、分周、カウント、ルックアップテーブルROMモジュールを増やし、温度補償機能を実現する。実測モードが選択されるとき、組み合わせ論理制御によってT2がオフし、T1がオンし、LCDスクリーンが実測モジュールのデータを選択して出力するため、体温計生産時の温度キャリブレーションに用いることができる。予測モードが選択されるとき、組み合わせ論理制御によってT1がオフし、T2がオンし、LCDスクリーンが予測モジュールのデータを選択して出力する。表示温度はすなわち、予測補償された温度値である。
【0025】
本発明における温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造は、補償モジュール、体温計回路及びLCD駆動モジュールを含み、前記体温計回路は温度測定発振回路及び実測モジュールを含み、前記補償モジュールと実測モジュールとは、温度測定発振回路とLCD駆動モジュールとの間に並列接続され、前記回路構造は、組み合わせ論理制御スイッチによって補償モジュール及び実測モジュールの導通及び遮断をそれぞれ実現する。補償モジュールが遮断された場合、実測モジュールが導通し、実測データが出力される。実測モジュールが遮断された場合、補償モジュールが導通し、予測補償された温度値が出力される。
【0026】
補償モジュールは、温度補償小数分周器、温度補償カウンタ及び温度補償分周係数ルックアップテーブルROMユニットを含み、温度補償小数分周器の入力端は前記温度測定発振回路に接続される。温度補償カウンタの入力端は前記温度補償小数分周器に接続され、出力端は組み合わせ論理制御スイッチを通じて前記LCD駆動モジュールに接続され、温度補償分周係数ルックアップテーブルROMユニットの入力端は前記温度補償カウンタに接続され、出力端は前記温度補償小数分周器に接続される。
【0027】
温度測定発振回路は、パルス発生制御回路、基準電圧REF、温度センサNTC及びコンデンサを含み、前記基準電圧REF及び温度センサNTCはいずれもパルス発生制御回路に並列接続され、基準電圧REFは温度センサNTCの一端に接続され、かつ、コンデンサを通じて接地され、基準電圧REFは所定値の抵抗RFを通じてパルス発生制御回路に接続され、温度センサNTCは所定値の抵抗RSを通じてパルス発生制御回路に接続され、コンデンサは発振器SCを通じてパルス発生制御回路に接続される。
【0028】
本発明における補償モジュールの原理は以下の通りである。
【0029】
まず、臨床データに基づいて、電子体温計で温度を測定する際の各測定値と実際温度Tとの間の誤差▽Tを統計する。測定値=実際温度T+▽Tであり、▽Tは補償値である。電子体温計において、RSがオンするたびに、異なるSC発振数XRSは、温度補償分周係数ルックアップテーブルROMを通じて、異なる温度値に対応することが知られている。温度補償機能を実現するには、発振数XRSが対応する温度値Tを、誤差補償を加えた温度値T+▽Tに変換することができる。このようにすることで、実際温度がTであるとき、LCDスクリーンの表示値はT+▽Tになる。温度補償分周係数ルックアップテーブルROMの出力Routを修正することによって実現することができる。
【0030】
SC発振数XRSを計算するとき、XRSが対応する温度Tを予測値T+▽Tに変換する。
【数1】
・・・(1)
【0031】
RF所定値の抵抗RFが導通されたときの、SC発振数である。XRS所定値の抵抗RSが導通されたときの、SC発振数である。RRFは参考抵抗値である。以下(2)式は実際温度Tが対応するNTC抵抗値である。
【数2】
・・・(2)
【0032】
次いで、スクリーン表示値の32℃から43℃まで(補償後の温度)の範囲において温度が1℃上がるごとに、RSで増加する発振数Nzを算出する。
【0033】
式は以下(3)式の通りである。
【数3】
・・・(3)
【0034】
更に、以下(4)式で表される小数分周器式によって、新たな分周係数ルックアップテーブル出力Routを算出する。
【数4】
・・・(4)
【0035】
温度補償分周係数ルックアップテーブルROMは、受信した、カウンタがカウントした現在の温度値に応じて、対応する分周係数を小数分周器に出力する。小数分周器は分周後に100個のパルス信号をカウンタに出力し、カウンタは各パルスに1を加える。表示に対応する温度は0.01℃であり、LCD駆動回路を通じて表示される。
【0036】
RF=6455、RRF=30KΩと選択し、NTC抵抗として503ETを選択し、開始温度として32℃を選択し(電子体温計は32℃以下においてLoが表示され、温度値は表示されない)、温度補償値を下表に示す値を取る場合、温度補償を加えた後、Nzの計算値は以下の通りである。
【0037】
【表1】
【0038】
本発明における温度補償を実現する予測型電子体温計の回路構造は、実現方法が簡単であり、速やかに温度を測定することができ、同時に、実測温度に基づいて測定誤差を補償することができる、予測機能を有する電子体温計回路である。本発明はカウントシステムを2つ有し、実測モードと予測モードとの2種類を選択することができ、生産キャリブレーションが便利になる。本発明において述べた電子体温計は温度補償機能を有し、速やかで正確な温度測定機能を実現することができる。
【0039】
この明細書において、本発明は特定の実施例を参照して説明を行った。しかし、本発明の精神及び範囲を逸脱せずに種々の修正及び変更を行うことができることは明らかである。したがって、明細書及び図面は、説明するためのものであって限定するためのものではないと考えられるべきである。
図1