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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】模型玩具、及び関節構造体
(51)【国際特許分類】
   A63H 3/36 20060101AFI20240202BHJP
   A63H 3/46 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A63H3/36 D
A63H3/36 G
A63H3/46 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023025497
(22)【出願日】2023-02-21
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 慶太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和貴
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-023831(JP,A)
【文献】特開2023-021401(JP,A)
【文献】特開2021-061957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 3/00-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型玩具であって、
凹部を有する第1パーツと、
円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと
を備え、
前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、
前記円筒形状の軸の側面には、外周に沿って溝が形成され、
前記第2パーツは、前記凹部の開口部から前記溝が嵌まるように挿入され、該凹部の奥部である前記第1領域まで挿入されるように組み付けられることを特徴とする模型玩具。
【請求項2】
前記円筒形状の軸が前記第1領域において回転することにより、前記軸の端部に形成されたカムが前記第1パーツに形成されたリブに当接し、
前記カムが前記リブに当接することによって、前記円筒形状の軸が所定方向の力を受け、前記第2パーツを前記第1領域から前記第2領域へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の模型玩具。
【請求項3】
前記リブは、前記凹部の前記第1領域の近傍に形成されることを特徴とする請求項2に記載の模型玩具。
【請求項4】
前記第2パーツには、側面の一部に制限部が形成され、
前記円筒形状の軸が前記第1領域において所定角ほど回転すると、前記制限部が他のパーツに衝突して前記円筒形状の軸の回転を制限することを特徴とする請求項2に記載の模型玩具。
【請求項5】
前記第2領域は前記凹部の前記開口部の付近に形成され、
前記第2パーツは、前記第1領域から前記第2領域へ移動することにより、前記模型玩具の中心から外側へ移動することを特徴とする請求項1に記載の模型玩具。
【請求項6】
前記第2パーツに対して連結される第3パーツをさらに備え、
前記第3パーツは、前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、隣接する他のパーツとの間に空間が確保される位置に移動することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の模型玩具。
【請求項7】
前記第2パーツには突起部が形成され、
前記第3パーツに形成された凹部に前記突起部が嵌め込まれることにより前記第2パーツと前記第3パーツとが連結されることを特徴とする請求項6に記載の模型玩具。
【請求項8】
前記第3パーツに対して回動可能に連結される第4パーツとをさらに備え、
前記第4パーツは前記模型玩具の腕部であり、
前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、前記腕部が前記模型玩具の中心から外側に開くことを特徴とする請求項6に記載の模型玩具。
【請求項9】
前記第3パーツに対して回動可能に連結される第4パーツとをさらに備え、
前記第4パーツは前記模型玩具の脚部であり、
前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、前記脚部が前記模型玩具の中心から外側に開くことを特徴とする請求項6に記載の模型玩具。
【請求項10】
模型玩具であって、
凹部を有する第1パーツと、
円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと、
前記第2パーツに対して連結される第3パーツと
を備え、
前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、
前記第3パーツは、前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、隣接する他のパーツとの間に空間が確保される位置に移動することを特徴とする模型玩具。
【請求項11】
前記第2パーツには突起部が形成され、
前記第3パーツに形成された凹部に前記突起部が嵌め込まれることにより前記第2パーツと前記第3パーツとが連結されることを特徴とする請求項10に記載の模型玩具。
【請求項12】
前記第3パーツに対して回動可能に連結される第4パーツとをさらに備え、
前記第4パーツは前記模型玩具の腕部であり、
前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、前記腕部が前記模型玩具の中心から外側に開くことを特徴とする請求項10に記載の模型玩具。
【請求項13】
前記第3パーツに対して回動可能に連結される第4パーツとをさらに備え、
前記第4パーツは前記模型玩具の脚部であり、
前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、前記脚部が前記模型玩具の中心から外側に開くことを特徴とする請求項10に記載の模型玩具。
【請求項14】
関節構造体であって、
凹部を有する第1パーツと、
円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと
を備え、
前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、
前記円筒形状の軸の側面には、外周に沿って溝が形成され、
前記第2パーツは、前記凹部の開口部から前記溝が嵌まるように挿入され、該凹部の奥部である前記第1領域まで挿入されるように組み付けられることを特徴とする関節構造体。
【請求項15】
前記関節構造体は模型玩具の肩関節又は股関節を形成することを特徴とする請求項14に記載の関節構造体。
【請求項16】
関節構造体であって、
凹部を有する第1パーツと、
円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと、
前記第2パーツに対して連結される第3パーツと
を備え、
前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、
前記第3パーツは、前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、隣接する他のパーツとの間に空間が確保される位置に移動することを特徴とする関節構造体。
【請求項17】
前記関節構造体は模型玩具の肩関節又は股関節を形成することを特徴とする請求項16に記載の関節構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型玩具、及び関節構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
人間や動物の動きに近い動作やポージングを実現すべく、人形玩具(模型玩具)には種々の関節や可動部が含まれる。これらの機構により様々なポージングを実現することができる。しかし、人形玩具に人間等と同数の関節等を設けることは、多数の部材が必要となり、精巧な人形玩具であってもその数には限りがあり実現は困難である。従って、上述のような動作やポージングを実現するためには、より少ない関節や部材で構成しつつ、関節やそれに連結される部位の可動域を拡大させることが重要である。可動域を拡大させることによって、より自由度の高い動作や多彩なポージングを行うことができる。特許文献1には、現実の動物と同様なリアルな動きを可能とした関節構造を有している四足動物人形が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-17264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人間の四肢のような自然な動作を実現するには、種々の方向に回動可能であることが望ましい。一方で、肩関節や股関節、腰関節などは人間と同様に体の内部に設けられることによって、それらの関節に連結されたパーツの自然な動作を実現することができるが、その可動域は隣接するパーツによって制限されてしまう。したがって、可動域を拡大させるためには、隣接するパーツとの間に空間を確保することが重要となる。
【0005】
本発明は、例えば模型玩具において、可動域を拡大させるための新規な構造を実現する仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、模型玩具であって、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツとを備え、前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行うことを特徴とする。
また、本発明は、例えば、模型玩具であって、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツとを備え、前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、前記円筒形状の軸の側面には、外周に沿って溝が形成され、前記第2パーツは、前記凹部の開口部から前記溝が嵌まるように挿入され、該凹部の奥部である前記第1領域まで挿入されるように組み付けられることを特徴とする。
また、本発明は、例えば、模型玩具であって、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと、前記第2パーツに対して連結される第3パーツとを備え、前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、前記第3パーツは、前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、隣接する他のパーツとの間に空間が確保される位置に移動することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、例えば、関節構造体であって、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツとを備え、前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行うことを特徴とする。
また、本発明は、例えば、関節構造体であって、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツとを備え、前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、前記円筒形状の軸の側面には、外周に沿って溝が形成され、前記第2パーツは、前記凹部の開口部から前記溝が嵌まるように挿入され、該凹部の奥部である前記第1領域まで挿入されるように組み付けられる。
また、本発明は、例えば、関節構造体であって、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと、前記第2パーツに対して連結される第3パーツとを備え、前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行い、前記第3パーツは、前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、隣接する他のパーツとの間に空間が確保される位置に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動域を拡大させるための新規な構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】一実施形態に係る模型玩具の外観正面の一例を示す図。
図1B】一実施形態に係る模型玩具の(a)外観側面及び(b)上体部の分解斜視図。
図2】一実施形態に係る模型玩具の(a)上体部の分解斜視図、及び(b)上体部の組立構成を示す図。
図3】一実施形態に係る模型玩具の肩関節の分解斜視図。
図4】一実施形態に係る模型玩具の肩関節の平面図。
図5】一実施形態に係る模型玩具の肩関節の底面斜視図。
図6】一実施形態に係る模型玩具の肩関節の動作例を示す図。
図7】一実施形態に係る模型玩具のパーツ202の変形例を示す図。
図8】一実施形態に係る模型玩具の肩関節の動作例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1の実施形態>
<模型玩具の外観>
以下では本発明の第1の実施形態について説明する。まず、図1A及び図1Bを参照して、本実施形態に係る模型玩具100の外観構成の一例について説明する。図1Aは模型玩具100の外観正面を示す。図1Bは模型玩具100の(a)外観側面及び(b)上体部の分解斜視図を示す。なお、上下、左右、前後の矢印については図における模型玩具の向きを示し、他の図面についても同様である。
【0012】
模型玩具(人形体)100は、頭部101、胸部102、腕部103a、103b、腹部104、服飾部105、及び脚部106a、106bを備える。模型玩具100は、可動フィギアなどの可動式の模型玩具であり、各パーツは他の部材との関係で生じる制限領域の範囲内で可動させることができる。頭部101は胸部102に球形状の連結部材によって連結される(以下では、ボールジョイントとも称する。)。胸部102には、さらに右腕部103a及び左腕部103bを含む腕部103が球形状の連結部材で連結され、下部において腹部104が連結される。胸部の詳細な構成については後述する。腹部104には服飾部105が連結される。また、腹部104の下部には右脚部106a及び左脚部106bを含む脚部が連結される。
【0013】
なお、以下では、頭部101、胸部102、及び腕部103を含む上半身を上体部と称する。また、服飾部105、脚部106aを含む下半身を下体部と称する。上体部及び下体部は腹部104を介して連結される。また、胸部102、腹部104、及び服飾部105をまとめて胴体部とも称する。以下では、本実施形態に係る可動構造(関節構造体)として、胸部102の胸関節構造と、胸部102に円筒形状の軸を有するパーツによって腕部103bを連結する肩関節構造とについて説明する。しかしながら、本発明を限定する意図はなく、以下で説明する可動構造は、胸関節や肩関節に限らず、他の関節部、例えば頭部を連結する首関節、脚部を連結する股関節部などの関節部に適用することも可能である。
【0014】
図1B(b)は上体部の一部である胸部102と左腕部103bとの分解斜視図を示す。図に示すように、左腕部103bは、球形状の連結部を介して、胸部102に設けられた肩パーツを構成するパーツに対して回動可能に連結される。なお、右腕部103aの構成についても同様であるため説明を省略する。以降の説明においても左腕部103bに関する肩関節の構成について説明するが、右腕部103aに関する肩関節の構成も同様である。
【0015】
<上体部の構成>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る模型玩具100の胸部102及び左腕部103bを含む上体部の詳細構成ついて説明する。図2(a)は上体部の分解斜視図を示す。図2(b)は胸部102を構成する複数のパーツの分解斜視図を示す。図2(a)は図1B(b)と同様の図であるため説明を省略する。
【0016】
図2(b)に示すように、胸部102は、パーツ201~206で構成され、左腕部103bの端部に連結されたパーツ207b(第4パーツ)が回動自在に連結される。パーツ201は、第1のパーツに対応し、胸関節及び肩関節の基部となるパーツである。パーツ202a、202bは、第2パーツに対応し、肩関節の可動軸となるパーツであり、少なくとも一部が回転軸となる円筒形状で形成され、パーツ201に対して回動可能に連結される。パーツ203a、203bは、第3パーツに対応し、それぞれパーツ202a、202bに組み付けられる。パーツ203a、203bには、それぞれ右腕部103a、左腕部103bが回動可能に連結される。
【0017】
パーツ204は、上方からパーツ201に組み付けられ、首関節の一部を構成するパーツ205が回動可能に連結される。パーツ206は、前方からパーツ201に組み付けられ、胸部102の一部を構成する。
【0018】
<肩関節の詳細な構成>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る模型玩具100の肩関節の詳細構成について説明する。図3(a)は肩関節を構成するパーツの分解斜視図を示す。図3(b)はパーツ202b、203bの組み付け構成を示す。ここでは、胸関節及び肩関節を含む左肩の一部の構成について説明するが、右肩の構成については同様であるため説明を省略する。
【0019】
図3(a)に示すように、パーツ201は、少なくとも円筒部311、凹部312a、312b、及び円筒部313a、313b含んで構成される。円筒部311は、パーツ204が連結される連結部である。凹部312a、312bには、それぞれパーツ202a、202bが点線矢印に示すように奥部まで挿入され、回動可能に連結される。円筒部313a、313bは、パーツ206が連結される連結部である。
【0020】
パーツ202bは、少なくともカム321b、溝322b、円筒部323b、及び突起部324bを含んで構成される。カム321bは、パーツ202bの回転運動を直線運動に変更するためのものであり、後述するパーツ201に形成されたリブのガイドを利用するカム機構を形成する。したがって、カム321bは、円筒形状の軸の下端に設けられ、円形状の一部が突出した形状で形成される。これにより、カム321bの突出部がリブに引っ掛かることにより回転運動が直線運動に変更される。溝322bは、パーツ202bの円筒形状で形成された軸の側面の外周に沿って形成され、パーツ201の凹部312bの奥部まで嵌め込まれる。円筒部323bはパーツ203bに連結される連結部である。突起部324bは、パーツ203bに連結される連結部であり、後述するパーツ203bに形成された凹部に嵌め込まれ、嵌め殺しとして機能する。
【0021】
パーツ203bは、少なくとも凹部331b、332b、333bを含んで構成される。凹部331bには、パーツ202bの円筒部323bが連結される。凹部332bには、左腕部103bの端部に位置するパーツ207bの球形状の連結部が図中左側から回動可能に連結される。また、図3(b)に示すように、凹部333bは、パーツ202bの突起部324bが嵌め込まれる嵌め殺しの窓として機能する。
【0022】
<基部の詳細構成>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る胸部及び肩関節の一部を構成する基部の詳細構成について説明する。図4(a)及び図4(b)はパーツ201の平面図を示し、それぞれパーツ202bを連結した状態を示す。
【0023】
上述したように、パーツ201には、パーツ202a、202bが挿入される凹部312a、312bが形成される。凹部312a、312bは、それぞれ第1領域401a、401b、第2領域402a、402bの2段階の領域で形成される。第1領域401a、401bは、凹部312a、312bの奥部に位置する。一方、第2領域402a、402bは、凹部312a、312bの開口部付近に位置する。従って、第2領域402は、第1領域401よりも模型玩具100の中心から外側に位置する。第1領域401及び第2領域402は連続して形成される。
【0024】
図4(a)に示すように、パーツ202bは、凹部312bの開口部から挿入され第1領域401bである奥部まで挿入される。模型玩具100において左腕部103bが動作していない通常位置に位置する場合は、パーツ202bが第1領域401bに位置している。この通常状態において、パーツ202bが矢印方向に回転することにより、左腕部103bを内側又は外側に回動させることができる。
【0025】
図4(a)の状態からパーツ202bを反時計回りの方向に回転させると、カム機構により回転運動が直線運動に変更され、図4(b)の点線矢印に示すように、パーツ202bが凹部312bの形状に沿って第2領域402bへ移動する。当該移動に連動して、パーツ202b、203bに連結される左腕部103bも同様の方向に移動する。これにより、左腕部103bは模型玩具100の中心から離れる方向に移動する。つまり、左腕部103bが外側に開いた状態となる。この状態においてもパーツ202bは実線矢印の方向に回転可能に連結されている。このように、パーツ202a、202bは、パーツ201に形成された凹部312a、312bの第1領域401a、401bと、第2領域402a、402bとの間で移動可能に連結される。
【0026】
<可動軸の移動>
以下では、図5を参照して、本実施形態に係る肩関節を構成する可動軸の移動動作について説明する。図5(a)及び図5(b)は、パーツ201及びパーツ202bを下方か見た斜視図を示す。
【0027】
図5(a)はパーツ202bが凹部312bの第1領域401bにおいて回転動作を行っている様子を示す。パーツ201には、図3を用いて説明した構成に加えて、さらにリブ314a、314bを備える。リブ314a、314bは、凹部312a、312bの近傍に、その外周に沿って形成され、その一部(壁面)が所定の位置から徐々に凹部312a、312bの外周に近づくように形成されている。パーツ202bは矢印方向に回転動作を行うと、ある程度回転した段階でカム321bがリブ314bの壁面に当接する。カム321bとリブ314bが当接した位置から壁面はさらに凹部312bの外周に近づくように形成されている。
【0028】
図5(b)はパーツ202bを図5(a)の状態からさらに回転させた様子を示す。図5(a)の状態から、さらにパーツ202bを回転させると、カム321bがリブ314bに乗り上げるように動作し、パーツ202bは、回転運動が直線運動に変更され、矢印方向(所定方向)に示すように力を受け、リブ314bに沿って凹部312bの第2領域402bへ移動する。第2領域402bの周辺にはリブ314bは形成されていないため、パーツ202bを回転動作させたとしてもカム321bが当接するパーツは存在しない。つまり、パーツ202bは第2領域402bにおいては回転動作の可動域が他のパーツによって制限されない。つまり、本実施形態によれば、パーツ202bは、回転動作を維持した状態で凹部312bの第1領域401bと第2領域402bとの間で移動可能に設けられる。
【0029】
<肩関節の動作>
以下では、図6を参照して、本実施形態に係る肩関節の動作について説明する。図6(a)及び図6(b)は胸部102及び左腕部103bの平面図を示す。ここでは、パーツ201bが第1領域401b、第2領域402bにそれぞれ位置する場合の左腕部103bの可動域について説明する。
【0030】
図6(a)はパーツ201bが凹部312bの第1領域401bに位置する状態を示す。この場合、左腕部103bは胸部102に当接して閉じた状態となる。したがって、肩関節の一部を構成するパーツ203bが胸部102の前面のパーツ206に当接した状態となる。この状態では、パーツ206などの他のパーツが左腕部103bのパーツ202bを可動軸とした可動域を制限することとなる。
【0031】
図6(b)はパーツ201bが凹部312bの第2領域402bに位置する状態を示す。この場合、点線矢印に示すように左腕部103bは図6(a)の状態から模型玩具100の中心から外側に開くように移動される。したがって、601に示すように、パーツ203bとパーツ206との間に左腕部103bの可動域を拡大するための空間を確保することができる。このように、本実施形態によれば、肩関節において他のパーツによる干渉を低減させるための空間を確保することができ、パーツ202bを可動軸とした可動域を拡大させることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る模型玩具は、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、第1パーツの凹部に対して円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツとを備える。第2パーツは、凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において円筒形状の軸を中心とした回転動作を行う。これにより、模型玩具において、可動域を拡大させるために空間を確保するよう移動可能な関節構造を実現することができる。
【0033】
<第2の実施形態>
以下では本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、肩関節の可動を制限する機構について説明する。上記実施形態では、肩関節を構成するパーツ(第2パーツ)202bの回転動作を、他のパーツの制限の範囲内で自由に動作を許容するものである。この場合、可動域をより広範囲に拡大することができる一方で自然な動作を超えた動作を許容してしまう。例えば、パーツ202bを含む肩関節を内側に回転させると、背中側の肩甲骨辺りのパーツに隙間が生じてしまい、動作時における外観の見栄えを劣化させてしまう。
【0034】
そこで本実施形態では、第2パーツに当該パーツの回転を制限するための制限部材(制限部)を設けて、第2パーツの回転動作を制限する仕組みを提供する。これにより、肩関節の回転動作を維持しつつ、必要以上な可動域を制限することができる。なお、以下では、上記第1の実施形態と同様の構成については同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0035】
<可動軸の構成>
まず図7を参照して、本実施形態に係る第2パーツの構成について説明する。図7(a)は第2パーツであるパーツ700bの斜視図を示す。図7(b)は、パーツ700bを第1パーツであるパーツ201に連結した様子を示す。
【0036】
図7(a)に示すように、パーツ700bは、上記第1の実施形態におけるパーツ202bの構成に加えて、さらに制限部材701bを含む。制限部材701bは、パーツ700bの円筒形状の可動軸の側面の一部に突出して設けられ、カム321bの回転を制限するように機能する。
【0037】
図7(b)は、パーツ201に対してパーツ204が組み付けられた状態において、第2パーツであるパーツ700bを連結させた状態を示す。この状態でパーツ700bを内側に回転(図中時計回り)させると、パーツ700bの制限部材701bがパーツ204の円筒形状の部分702に対して衝突し、それ以上の回転動作が制限される。これにより、カム321bの回転角を10度強(所定角)で制限することができる。なお、制限する回転角(所定角)については採用する模型玩具の仕様に応じて任意に設定することができるものであり、本発明を限定するものではない。
【0038】
<肩関節の動作例>
次に図8を参照して、本実施形態に係る肩関節の動作例について説明する。図8(a)及び図8(c)は上記第1の実施形態における肩関節の平断面を示す。図8(b)及び図8(d)は本実施形態における肩関節の平断面を示す。
【0039】
図8(a)の状態から肩関節を内側に回転させると、即ち、パーツ202bを図中時計回り方向に回転させると、図8(c)に示すように、肩関節を構成するパーツ203bがパーツ201から離れて背中側に隙間801が生じる。このような隙間は違和感を与える要因となりうる。一方で、可動軸となるパーツ202bの可動域を大きくとることができ、様々な動作を実現することができる。
【0040】
一方、図8(b)の状態から本実施形態に係るパーツ700bを図中時計回り方向に回転させると、図8(d)の点線領域803に示すように、パーツ700bの制限部材701bがパーツ204の部分702に衝突してパーツ700bの回転範囲が制限されることとなる。したがって、本実施形態によれば、パーツ700bの回転に従って、肩関節を構成するパーツ203bがパーツ201から若干離れて背中側に多少の隙間802が生じる。しかし、図8(c)に示す隙間801と比較すると、かなり小さくなっていることが分かる。このように、本実施形態によれば、肩関節の一部の動作の可動域を制限することにより、外観の見栄えが劣化するような動作を制限することができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る模型玩具では上記実施形態の構成に加えて、第2パーツには、側面の一部に制限部材がさらに形成される。円筒形状の軸が第1領域において所定角ほど回転すると、制限部材が他のパーツに衝突して円筒形状の軸の回転を制限する。これにより、本実施形態によれば、関節構造における必要以上の可動域を好適に制限し、違和感を与えるような動作を防止することができる。
【0042】
<変形例>
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。上記実施形態では可動構造を肩関節に適用する例について説明したが、本発明を限定する意図はなく他の部位に利用してもよい。例えば、脚部を連結する股関節部や首関節などの関節部にも利用することができる。また、基部に形成される関節の可動軸を受け容れるための凹部やリブの形状は本発明を適用する位置の形状に合わせて任意の形状とすることができる。
【0043】
また、模型玩具として模型玩具の例を説明したが、模型玩具(人形体)の形状は、特に限定されるものではなく、人、動物、ロボット、昆虫、恐竜、仮想生命体等、様々な形状を含むものである。また、可動部を含む形態であれば、模型玩具の形状は特に限定されるものではない。
【0044】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は以下の模型玩具、及び関節構造体を少なくとも開示する。
(1)模型玩具であって、
凹部を有する第1パーツと、
円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと
を備え、
前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行うことを特徴とする模型玩具。
(2)前記円筒形状の軸の側面には、外周に沿って溝が形成され、
前記第2パーツは、前記凹部の開口部から前記溝が嵌まるように挿入され、該凹部の奥部である前記第1領域まで挿入されるように組み付けられることを特徴とする(1)に記載の模型玩具。
(3)前記円筒形状の軸が前記第1領域において回転することにより、前記軸の端部に形成されたカムが前記第1パーツに形成されたリブに当接し、
前記カムが前記リブに当接することによって、前記円筒形状の軸が所定方向の力を受け、前記第2パーツを前記第1領域から前記第2領域へ移動させることを特徴とする(1)または(2)に記載の模型玩具。
(4)前記リブは、前記凹部の前記第1領域の近傍に形成されることを特徴とする(3)に記載の模型玩具。
(5)前記第2パーツには、側面の一部に制限部が形成され、
前記円筒形状の軸が前記第1領域において所定角ほど回転すると、前記制限部が他のパーツに衝突して前記円筒形状の軸の回転を制限することを特徴とする(1)乃至(4)の何れか1つに記載の模型玩具。
(6)前記第2領域は前記凹部の前記開口部の付近に形成され、
前記第2パーツは、前記第1領域から前記第2領域へ移動することにより、前記模型玩具の中心から外側へ移動することを特徴とする(1)乃至(5)の何れか1つに記載の模型玩具。
(7)前記第2パーツに対して連結される第3パーツをさらに備え、
前記第3パーツは、前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、隣接する他のパーツとの間に空間が確保される位置に移動することを特徴とする(1)乃至(6)の何れか1つに記載の模型玩具。
(8)前記第2パーツには突起部が形成され、
前記第3パーツに形成された凹部に前記突起部が嵌め込まれることにより前記第2パーツと前記第3パーツとが連結されることを特徴とする(7)に記載の模型玩具。
(9)前記第3パーツに対して回動可能に連結される第4パーツとをさらに備え、
前記第4パーツは前記模型玩具の腕部であり、
前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、前記腕部が前記模型玩具の中心から外側に開くことを特徴とする(7)又は(8)に記載の模型玩具。
(10)前記第3パーツに対して回動可能に連結される第4パーツとをさらに備え、
前記第4パーツは前記模型玩具の脚部であり、
前記第2パーツの前記第2領域への移動に伴って、前記脚部が前記模型玩具の中心から外側に開くことを特徴とする(7)乃至(9)の何れか1つに記載の模型玩具。
(11)関節構造体であって、
凹部を有する第1パーツと、
円筒形状の軸を有し、前記第1パーツの前記凹部に対して該円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツと
を備え、
前記第2パーツは、前記凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において前記円筒形状の軸を中心とした回転動作を行うことを特徴とする関節構造体。
(12)前記関節構造体は模型玩具の肩関節又は股関節を形成することを特徴とする(11)に記載の関節構造体。
【符号の説明】
【0045】
100:模型玩具、101:頭部、102:胸部、103a、103b:腕部、104:腹部、105:服飾部、106a、106b:脚部
【要約】
【課題】本発明は、例えば模型玩具において、可動域を拡大させるための新規な構造を実現する仕組みを提供する。
【解決手段】本模型玩具は、凹部を有する第1パーツと、円筒形状の軸を有し、第1パーツの凹部に対して円筒形状の軸が回動可能に連結される第2パーツとを備える。第2パーツは、凹部に形成された第1領域と第2領域との間で移動可能であり、各領域において円筒形状の軸を中心とした回転動作を行う。
【選択図】図3
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8