(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】撮像ユニット、内視鏡、および、撮像ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/50 20230101AFI20240202BHJP
H04N 23/40 20230101ALI20240202BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240202BHJP
A61B 1/04 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
H04N23/50
H04N23/40 300
A61B1/00 731
A61B1/04 530
(21)【出願番号】P 2023529405
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024119
(87)【国際公開番号】W WO2022269901
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳也
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-282227(JP,A)
【文献】特開2007-142194(JP,A)
【文献】特開2013-130689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/50
H04N 23/40
A61B 1/00
A61B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面に凹部を有し、前記凹部の壁面は上領域の傾斜角度が下領域の傾斜角度よりも小さい立体配線板と、
前記凹部に配設された光学系と撮像素子とを有する積層素子と、
前記凹部と前記積層素子との間の隙間に配設された樹脂と、を具備することを特徴とする撮像ユニット。
【請求項2】
前記上領域は、前記第1の主面から、前記凹部の深さの25%以下の領域であることを特徴とする請求項1に記載の撮像ユニット。
【請求項3】
前記壁面は、前記上領域と前記下領域との間に、前記凹部の底面に平行または略平行な少なくとも1つの中間領域を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像ユニット。
【請求項4】
前記壁面は、前記中間領域の前記積層素子を囲む位置に、突出部を有することを特徴とする請求項3に記載の撮像ユニット。
【請求項5】
前記壁面は、前記中間領域に、切り欠きを有することを特徴とする請求項3に記載の撮像ユニット。
【請求項6】
前記壁面は、前記上領域と前記下領域との間に、前記凹部の底面に略平行な複数の中間領域を有することを特徴とする請求項2に記載の撮像ユニット。
【請求項7】
第1の主面に凹部を有し、前記凹部の壁面は上領域の傾斜角度が下領域の傾斜角度よりも小さい立体配線板と、
前記凹部に配設された光学系と撮像素子とを有する積層素子と、
前記凹部と前記積層素子との間の隙間に配設された樹脂と、を具備することを特徴とする内視鏡。
【請求項8】
前記立体配線板が、挿入部の先端部に配設されている円筒形の硬質部材であることを特徴とする請求項7に記載の内視鏡。
【請求項9】
第1の主面に凹部を有し、前記凹部の壁面は上領域の傾斜角度が下領域の傾斜角度よりも小さい立体配線板と、光学系と撮像素子とを有する積層素子と、を作製する工程と、
前記凹部に前記積層素子を配設する工程と、
前記凹部の壁面と前記積層素子との間に樹脂を注入する工程と、を具備し、
前記樹脂を注入するときに、前記第1の主面の方向から観察した、前記樹脂の面積の増加速度を基に前記樹脂の注入を終了することを特徴とする撮像ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層素子を含む撮像ユニット、および、積層素子を含む撮像ユニットが先端硬性部に配設された内視鏡、および、積層素子を含む撮像ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部の先端部に配設される撮像ユニットは低侵襲化のため細径化が重要である。
【0003】
日本国特開2012-18993号公報には、細径の撮像ユニットを効率良く製造するために、ウエハレベル法で製造された積層素子が開示されている。ウエハレベル法では、積層素子は、それぞれが複数のレンズを含む複数のレンズウエハと、複数の撮像素子とを接着した積層ウエハを切断することで作製される。
【0004】
国際公開第2015/082328号(特許6533787号)には、積層素子を立体配線板の凹部に収容した撮像ユニットが開示されている。
【0005】
積層素子を保護するために、凹部と積層素子との隙間には樹脂が注入される。しかし、超小型の撮像ユニットでは、凹部と積層素子との隙間は極めて小さい。このため、注入する樹脂の量を適正化することは容易ではない。樹脂の量が少ないと、積層素子の保護が不十分となり、撮像ユニットの信頼性が低下する。樹脂の量が多いと、積層素子の受光面の一部が樹脂によって覆われるため、撮像ユニットの性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-18993号公報
【文献】国際公開第2015/082328号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、信頼性および性能が優れた撮像ユニット、信頼性および性能が優れた内視鏡、および、信頼性および性能が優れた撮像ユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の撮像ユニットは、第1の主面に凹部を有し、前記凹部の壁面は上領域の傾斜角度が下領域の傾斜角度よりも小さい立体配線板と、前記凹部に配設された光学系と撮像素子とを有する積層素子と、前記凹部と前記積層素子との間の隙間に配設された樹脂と、を具備する。
【0009】
別の実施形態の内視鏡は、撮像ユニットを含み、前記撮像ユニットは、第1の主面に凹部を有し、前記凹部の壁面は上領域の傾斜角度が下領域の傾斜角度よりも小さい立体配線板と、前記凹部に配設された光学系と撮像素子とを有する積層素子と、前記凹部と前記積層素子との間の隙間に配設された樹脂と、を具備する。
【0010】
別の実施形態の撮像ユニットの製造方法は、第1の主面に凹部を有し、前記凹部の壁面は上領域の傾斜角度が下領域の傾斜角度よりも小さい立体配線板と、光学系と撮像素子とを有する積層素子と、を作製する工程と、前記凹部に前記積層素子を配設する工程と、前記凹部の壁面と前記積層素子との間に樹脂を注入する工程と、を具備し、前記樹脂を注入するときに、前記第1の主面の方向から観察した、前記樹脂の面積の増加速度を基に前記樹脂の注入を終了する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、信頼性および性能が優れた撮像ユニット、信頼性および性能が優れた内視鏡、および、信頼性および性能が優れた撮像ユニットの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の撮像ユニットの斜視図である。
【
図2】第1実施形態の撮像ユニットの
図1のII-II線にそった断面図である。
【
図3A】第1実施形態の撮像ユニットの製造方法を説明するための断面図である。
【
図3B】第1実施形態の撮像ユニットの製造方法を説明するための上面図である。
【
図4A】第1実施形態の撮像ユニットの製造方法を説明するための断面図である。
【
図4B】第1実施形態の撮像ユニットの製造方法を説明するための上面図である。
【
図5A】第1実施形態の撮像ユニットの製造方法を説明するための断面図である。
【
図5B】第1実施形態の撮像ユニットの製造方法を説明するための上面図である。
【
図6】従来の撮像ユニットの製造方法を説明するための断面図である。
【
図7】従来の撮像ユニットにおける樹脂注入を説明するためのグラフである。
【
図8】第1実施形態の撮像ユニットにおける樹脂注入を説明するためのグラフである。
【
図9】第1実施形態の変形例1の撮像ユニットの部分断面図である。
【
図10】第1実施形態の変形例1の撮像ユニットにおける樹脂注入を説明するためのグラフである。
【
図11】第1実施形態の変形例2の撮像ユニットの部分断面図である。
【
図12】第1実施形態の変形例2の撮像ユニットにおける樹脂注入を説明するためのグラフである。
【
図13】第1実施形態の変形例3の撮像ユニットの部分断面図である。
【
図14】第1実施形態の変形例3の撮像ユニットにおける樹脂注入を説明するためのグラフである。
【
図15】第1実施形態の変形例4の撮像ユニットの製造方法を説明するための部分断面図である。
【
図16】第1実施形態の変形例4の撮像ユニットにおける樹脂注入を説明するためのグラフである。
【
図18】第2実施形態の変形例の内視鏡の先端硬性部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1および
図2に示すように、本実施形態の撮像ユニット1は、立体配線板10と、積層素子20と、樹脂30と、を具備する。
【0014】
なお、実施形態に基づく図面は、模式的なものである。各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる。図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。一部の構成要素の図示、符号の付与を省略する場合がある。光が入射する方向を「上」という。
【0015】
立体配線板10は、例えば、成形回路部品(MID:Molded Interconnect Device)である。立体配線板10は、第1の主面10SAと第1の主面10SAの反対側の第2の主面10SBとを有する直方体である。立体配線板10は、第1の主面10SAに矩形の開口がある凹部H10を有する。凹部H10は、4つの壁面H10SSと底面H10SBとを有する。凹部H10の開口は角が曲線の略矩形でもよい。
【0016】
なお、立体配線板は、MIDに限定されず、例えば、3Dプリンタによる加工または切削加工によって作製してもよい。材質も樹脂には限定されず、セラミックまたはガラスエポキシでもよい。
【0017】
凹部H10の底面H10SBには接合電極11が配設されている。接合電極11は貫通配線12を経由して第2の主面10SBの電極13と電気的に接続されている。図示しないが、電極13には信号ケーブル等が接合される。接合電極11は、壁面配線、上面配線、および側面配線を経由して、電極13と接続されていてもよい。
【0018】
凹部H10に配設されている積層素子20は、受光面20SAと受光面20SAの反対側の裏面20SBとを有する。積層素子20は、複数の光学素子が積層された光学系22と、撮像素子(イメージセンサ)21とを含む。光学素子は、例えば、ガラス板と樹脂レンズとを有するハイブリッドレンズ素子(複合素子)または赤外線カットフィルタ素子等である。なお、
図2等の断面図では、光学系22の光学素子を平板として図示する。
【0019】
光学系22の構成、すなわち、光学素子の構成(厚さ、形状)、種類、数、および積層順序は、仕様に応じて種々の変形が可能である。いずれかの光学素子の主面にパターニングされた遮光膜が絞りとして配設されていてもよい。
【0020】
積層素子20は、それぞれが複数の光学素子を含む複数の光学素子ウエハからなる積層ウエハと、複数の撮像素子を含む複数の撮像素子ウエハとを接合した接合ウエハを切断するウエハレベル法にて作製されている。このため、積層素子20は直方体である。積層素子20は、積層ウエハに複数の撮像素子を接着してから切断することで作製されてもよい。
【0021】
シリコンを母材とする撮像素子21は、CCD、CMOS等からなる受光部を有する。積層素子20(撮像素子21)は、裏面20SBの電極23に半田バンプ24を有する。撮像素子21の下面に撮像信号を処理する半導体素子が積層されていてもよいし、撮像素子21の上面にカバーガラスが配設されていてもよい。電極23は半田バンプ24によって、立体配線板10の凹部H10の底面H10SBの接合電極11と接合されている。すなわち、撮像素子21の受光部は、電極23、半田バンプ24、接合電極11、貫通配線12を経由して電極13と電気的に接続されている。
【0022】
例えば、熱硬化性エポキシ樹脂である樹脂30は、凹部H10と積層素子20のとの隙間を封止している。樹脂30は、積層素子20を封止すると同時に、積層素子20に印加される応力を緩和する。積層素子20の側面から外光が進入するのを防止するため、樹脂30は、遮光粒子を含んでいることなどによって、遮光性を有することが好ましい。
【0023】
樹脂30の厚さ、言い替えれば、凹部H10の壁面H10SSと積層素子20との間の隙間の幅は、例えば、50μm超500μm未満が好ましい。隙間の幅が前記下限超であれば、封止効果および応力緩和効果が顕著である。隙間の幅が前記上限未満であれば、撮像ユニット1の大きさが許容範囲内である。
【0024】
立体配線板10の凹部H10は、第1の主面10SAの開口の面積が底面H10SBの面積よりも広い。すなわち、凹部H10の壁面H10SSは第1の主面10SA、第2の主面10SB、および、凹部H10の底面H10SBに対して垂直ではなく、傾斜している。
【0025】
さらに、撮像ユニット1では、凹部H10の壁面H10SSは上領域UAの傾斜角度θUが下領域LAの傾斜角度θLよりも小さい。すなわち、壁面H10SSの傾斜角度が一定ではない。例えば、上領域UAの傾斜角度θUは、45度であり、下領域LAの傾斜角度θLは、89度である。ここで、傾斜角度とは、底面H10SBに対する壁面H10SSの角度である。
【0026】
隙間の幅が極めて短いため、隙間に注入する樹脂30の適切な量は極めて微量である。このため、適切な量の樹脂30を注入することは容易ではない。しかし、撮像ユニット1では、後述するように、樹脂30を注入する際に、第1の主面10SAの方向(上方向)から観察された、樹脂30の面積Sの増加量ΔS、または、樹脂30の面積Sの増加速度ΔS/dt、を基に樹脂30の注入を終了するため、適切な量の樹脂30が注入されている。
【0027】
このため、撮像ユニット1は、信頼性および性能が優れている。
【0028】
<製造方法>
図3Aから
図5Bを用いて撮像ユニット1の製造方法を説明する。
【0029】
<立体配線板、および、積層素子の作製>
図3Aおよび
図3Bに示すように、第1の主面10SAに凹部H10を有し、凹部H10の壁面H10SSは上領域UAの傾斜角度θUが下領域LAの傾斜角度θLよりも小さい立体配線板10が作製される。立体配線板10の外形は、円柱形でもよい。また、ウエハレベル法を用いて、外形が直方体の積層素子20が作製される。
【0030】
<積層素子配設>
立体配線板10の凹H10に、積層素子20が配設される。凹H10の底面H10SBの接合電極11に、撮像素子21の電極23が半田バンプ24によって接合される。
【0031】
<樹脂注入>
図4A、
図4Bに示すように、凹部H10の壁面H10SSと積層素子20との間の隙間への樹脂30の注入が開始される。
【0032】
ここで、比較のため、凹部H110の壁面H10SSの傾斜角度が一定の従来の撮像ユニット101(
図6)における樹脂注入について説明する。
【0033】
図7は、横軸が樹脂30の凹部H110への注入量を示し、縦軸が第1の主面10SAの方向(上方向)から観察された、樹脂30の面積Sを示している。面積Sはカメラによって撮影された画像から観察されてもよいし、撮影された画像の画像処理によって数値化されてもよい。
【0034】
面積Sは、注入開始からA点まで短時間で増加する。そして、A点からX点まで、面積Sはほとんど変化しない。これは、凹部H110の壁面の傾斜角度が一定のため、凹部H110の深さ方向において隙間の幅がほぼ同じためである。X点は、樹脂30が積層素子20の受光面20SAに広がりはじめた状態である。
【0035】
すなわち、樹脂30が、注入量の最大量Vmax超注入されるまで、面積Sはほとんど変化しない。このため、樹脂30は、予め推定した最適注入量に基づき注入される。しかし、最適注入量は、例えば、0.1マイクロリットル超10マイクロリットルと微量である。このため、最適注入量の許容誤差は、例えば、0.01マイクロリットルと極微量となる。また、凹部H110の大きさ、および、積層素子20の大きさは、製造誤差によって変化する。さらに、温度による熱膨張/熱収縮によっても、最適注入量は変化する。
【0036】
このため、従来の撮像ユニット101では、樹脂30の注入量が最小量Vmin未満になって信頼性が低下したり、最大量Vmax超になって、性能が低下したりすることがあった。
【0037】
これに対して、すでに説明したように、撮像ユニット1では、凹部H10の壁面H10SSは上領域UAの傾斜角度θUが、下領域LAの傾斜角度θLよりも小さい(
図2)。
【0038】
図4A、
図4Bおよび
図8に示すように、樹脂30が凹部H10の下領域LAに注入されている間は、従来の撮像ユニットと略同じである。すなわち、第1の主面10SAの方向(上方向)から観察された樹脂30(
図4Bのハッチング領域)の面積Sの増加速度はほぼ一定である(
図8)。
【0039】
図5Aに示すように、樹脂30が凹部H10の上領域UA(B点)に達すると、
図5Bに示す樹脂30の面積Sが大きくなる。すなわち、樹脂30の面積Sの増加速度が早くなるため、
図8に示すように、面積Sの傾き(面積Sの微分値)が増加する。面積Sの増加速度が早くなったことが検出されると、樹脂30の注入を終了する。
【0040】
樹脂30は、凹部H10に注入後に、硬化処理される。
【0041】
撮像ユニット1は、樹脂30の注入量を適切に管理できるため、信頼性および性能が高い。
【0042】
上領域UAは、第1の主面10SAから、凹部H10の深さの25%以下の領域であることが好ましく、10%以下の領域であることが特に好ましい。前記範囲以下であれば、最小量Vmin以上の樹脂30の注入が担保される。
【0043】
上領域UAは、第1の主面10SAから、凹部H10の深さの3%以上の領域であることが好ましく、5%以上の領域であることが特に好ましい。前記範囲以上であれば、最大量Vmax超以上の樹脂30が注入される前に、注入を終了できる。
【0044】
また、上領域UAは、光学系22の受光面20SAを構成している最上部の光学素子20A(
図5A)の厚さ未満であることが好ましく、最上部の光学素子20Aの厚さの80%未満であることが特に好ましい。前記範囲未満であれば、樹脂30による封止効果が損なわれることがない。
【0045】
なお、壁面の下領域LAの傾斜角度θLは、撮像ユニット1の細径化、および、金型からの抜去を容易にするため、例えば、85度超89.5度未満が好ましい。これに対して、上領域UAの傾斜角度θUは、例えば、20度超60度未満が好ましい。
【0046】
壁面H10SSの上領域UAの断面は、直線ではなく、上に凸の曲線でもよいし、下に凸の曲線でもよい。上領域UAの断面が曲線の撮像ユニットでは、壁面の傾斜角度の微分値の平均が前記範囲内であればよい。
【0047】
撮像ユニット1では、積層素子20の受光面20SAが、立体配線板10の第1の主面10SAよりも下に位置していた。このため、過剰に注入された樹脂30は、受光面20SAに広がっていた。これに対して、受光面20SAが第1の主面10SAよりも上に位置する撮像ユニットでは、過剰に注入された樹脂30は、第1の主面10SAに広がってしまう。このため、受光面20SAが第1の主面10SAよりも上に位置する撮像ユニットでも、樹脂30の注入量は正確に管理する必要がある。
【0048】
<第1実施形態の変形例>
変形例の撮像ユニット1A―1Dは、撮像ユニット1と類似し同じ効果を有するため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0049】
<変形例1>
図9に示す本変形の撮像ユニット1Aでは、立体配線板10Aの凹部H10Aの壁面H10SSは、上領域UAと下領域LAとの間に、傾斜角度が上領域UAよりも小さい、例えば、底面に平行(傾斜角度0度)または略平行な中間領域MAを有する。すなわち、中間領域MAは、第1の主面10SAおよび第2の主面10SBにも平行または略平行である。「略平行」とは、例えば、一方の面に対して他方の面の傾斜角が10度未満の状態である。額縁状の中間領域MAは外側に向かって下方に傾斜(傾斜角度がマイナス10度未満)していてもよい。
【0050】
図10に示すように、樹脂30が凹部H10Aの下領域LAを満たして中間領域MA(B1点)に達すると、樹脂30の面積Sの増加速度が急激に早くなる。これは、樹脂30が中間領域MAに一気に広がるためである。そして、樹脂30が凹部H10Aの上領域UA(B2点)に達すると、樹脂30の面積Sの増加速度が低下する。
【0051】
樹脂30の面積Sの増加速度が変化するため、撮像ユニット1Aは、樹脂30が最小量Vmin以上注入されたことを、撮像ユニット1よりも容易に検出できる。
【0052】
<変形例2>
図11に示す本変形例の撮像ユニット1Bでは、立体配線板10Bの凹H10Bの壁面
H10SSは、上領域UAと下領域LAとの間に、底面に平行または略平行な複数の中間領域MA1、MA2を有する。
【0053】
図12に示すように、樹脂30が凹部H10Bの下領域LAを満たして中間領域MA1(B1点-B2点)に達すると、樹脂30の面積Sの増加速度が急激に早くなる。これは、樹脂30が中間領域MA2に広がるためである。その後、樹脂30はB2点に達して、樹脂30の面積Sの増加速度は低下する。さらに、樹脂30が中間領域MA1(B3点-B4点)に達すると、樹脂30の面積Sの増加速度が再び急激に早くなる。その後、樹脂30はB4点に達して、樹脂30の面積Sの増加速度が低下する。
【0054】
撮像ユニット1Aは、樹脂30の最小量Vminが注入されたことを中間領域MA1における面積Sの増加速度の増加によって検出され、まもなく、樹脂30の最大量Vmaxまで注入されたことを中間領域MA2における面積Sの増加速度の増加によって検出される。
【0055】
撮像ユニット1Aは、樹脂30が最小量Vmin以上注入されたことを容易に検出できるだけでなく、樹脂30が最大量Vmaxを超えない状態に注入できる。
【0056】
<変形例3>
図13に示す本変形の撮像ユニット1Cでは、立体配線板10Cの凹部H10Cの壁面H10SSは、中間領域MAに、積層素子20を囲む額縁状の突出部15を有する。突出部15の高さは、積層素子20の受光面20SAよりも低くなる状態に設定されている。
【0057】
図14に示すように、樹脂30が凹部H10Cの下領域LAを満たしてから、さらに突出部15に達すると(B1点)、樹脂30が突出部15を覆うことが第1の主面10SAの方向(上方向)から観察できる。更に、樹脂30は突出部15を超えて突出部15の周囲に広がる(B2点)。このため、樹脂30の面積Sの増加速度が急激に早くなる。
【0058】
樹脂30の増加をより段階的に観察することで、撮像ユニット1Cは、樹脂30が最小量Vmin以上注入されたことを、撮像ユニット1Aよりも確実に検出できる。
【0059】
突出部15の高さは、積層素子20の周囲において同じでなくともよい。突出部15は、積層素子20の周囲に一部突出するような形状でもよく、積層素子20を部分的に囲む形状でもよいし、隙間なく囲んでもよい。中間領域MAの積層素子20を囲む位置に突出部15を有している撮像ユニットは、樹脂30の増加を段階的に観察できる。
【0060】
<変形例4>
図15に示す本変形の撮像ユニット1Dでは、立体配線板10Dの凹部H10Dの壁面H10SSは、底面に略平行な中間領域MAの一部に、切り欠きHを有する。
【0061】
図16に示すように、樹脂30が切り欠きHに達すると、樹脂30の面積Sが広くなる(B1点)。樹脂30が切り欠きHを充填するまで、樹脂30の面積Sは略一定である。その後、樹脂30が中間領域MAに達すると、樹脂30の面積Sが広くなる(B2点)。
【0062】
樹脂30の面積Sの増加をより段階的に観察することで、撮像ユニット1Dは、樹脂30が最小量Vmin注入されたことを、撮像ユニット1Cよりも確実に検出できる。
【0063】
<第2実施形態>
図17に示す本実施形態の内視鏡9は、挿入部90と、操作部91と、ユニバーサルコード92と、を具備する。内視鏡9は、プロセッサ80、光源装置81。および、モニタ82とともに内視鏡システム8を構成している。
【0064】
細長管形状の挿入部90は、生体の体腔内に挿入される。挿入部90は、先端側から順に先端部90A、湾曲部90B、可撓管90Cが連設されており、全体として可撓性を備えている。
【0065】
湾曲部90Bは、湾曲操作を行うための操作部91の湾曲ノブの回動操作に応じて、上下左右方向へと湾曲する。
【0066】
可撓管90Cは、受動的に可撓自在である柔軟性を有する管状部材である。可撓管90Cの内部には、処置具挿通チャンネル、各種の電気信号線、ライトガイドファイバー束等が挿通されている。電気信号線は、先端部90Aに内蔵される撮像ユニットから延出され操作部91を経てユニバーサルコード92へと延設される。ライトガイドファイバー束は、光源装置81からの光を先端部90Aの先端面へと導光する。
【0067】
操作部91は、挿入部90の基端部に連設されており、複数の操作部材等を有する。ユニバーサルコード92は、可撓性を有し、操作部91から延出する管状部材である。
【0068】
先端部90Aには、内部に撮像ユニット1(1A-1D)が配設されている円筒形の硬質部材90A1を有している。
【0069】
内視鏡9は、挿入部90の先端部90Aに配設された撮像ユニット1、1A―1Dを具備する。すでに説明したように、撮像ユニット1、1A―1Dは、信頼性および性能が優れているため、内視鏡9は信頼性および性能が優れている。
【0070】
内視鏡は、挿入部が軟性の軟性鏡でも、挿入部が硬性の硬性鏡でもよい。また内視鏡の用途は、医療用でも工業用でもよい。
【0071】
<第2実施形態の変形例>
図18に示す本変形例の内視鏡9Eでは、立体配線板10Eが、硬質部材91A1である。すなわち、撮像ユニット1Eでは、円筒形の立体配線板10Eの先端面(第1の主面10SA)の凹部に、積層素子20、樹脂30が配設されている。硬質部材91A1は、処置具挿通チャンネルの貫通孔H9を有する。硬質部材91A1には、ライトガイドファイバー束が導光した照明光を照射する照明ユニット40が配設されている。なお、照明ユニット40は、先端面に実装されているLED等の発光素子でもよい。
【0072】
撮像ユニット1Eは、撮像ユニット1、1A-1Dのいずれかと同じ構成の凹部に積層素子20が配設されている。このため、撮像ユニット1Eは、撮像ユニット1、1A-1Dのいずれかと同じ効果を有する。また、内視鏡9Eは、撮像ユニット1Eの立体配線板10Eが、硬質部材91A1であるため、先端硬性部91Aが細径であり、かつ、製造が容易である。
【0073】
本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、組み合わせおよび応用が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1、1A-1E・・・撮像ユニット
9・・・内視鏡
10・・・立体配線板
15・・・突出部
20・・・積層素子
21・・・撮像素子
22・・・光学系
H10・・・凹部
H10SS・・・壁面
LA・・・下領域
MA・・・中間領域
UA・・・上領域