(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】N-アルキルアミノ酸、およびN-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/02 20060101AFI20240202BHJP
C07C 227/00 20060101ALI20240202BHJP
C07C 227/18 20060101ALI20240202BHJP
C07K 7/64 20060101ALI20240202BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240202BHJP
【FI】
C07K1/02
C07C227/00
C07C227/18
C07K7/64
C07B61/00 A
(21)【出願番号】P 2023568520
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2022048135
(87)【国際公開番号】W WO2023127869
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021214900
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022168608
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】小宮 志央
(72)【発明者】
【氏名】侯 増▲華▼
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/015656(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/090855(WO,A1)
【文献】SAJIKI H. et al.,Reductive and Catalytic Monoalkylation of Primary Amines Using Nitriles as an Alkylating Reagent,ORGANIC LETTERS,2004年,Vol.6, No.26,pp.4977-4980
【文献】IKAWA T. et al.,Selective N-alkylation of amines using nitriles under hydrogenation conditions: facile synthesis of secondary and tertiary amines,Org. Biomol. Chem.,2012年,Vol.10,pp.293-304
【文献】HAN Y. et al.,A Novel, One-Pot Reductive Alkylation of Amines by S-Ethyl Thioesters Mediated by Triethylsilane and Sodium Triacetoxyborohydride in the Presence of Palladium on Carbon,J. Org. Chem.,1999年,Vol.64,pp.1972-1978
【文献】CHEN D. et al.,Selective N-terminal functionalization of native peptides and proteins,Chem. Sci.,2017年,Vol.8,pp.2717-2722
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
C07C227/00-229/76
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルの製造方法であって、
水素の存在下、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
前記C
1
-C
6
一級アルキル化剤が、C
1
-C
5
アルキルニトリルまたはC
1
-C
5
アルキルアルデヒドであり、
前記置換メチルハライドが、メトキシメチルクロリド(MOM-Cl)、エトキシメチルクロリド(EOM-Cl)、2-メトキシエトキシメチルクロリド(MEM-Cl)、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(SEM-Cl)からなる群から選択される1つであり、
前記触媒が、遷移金属を含む不均一系水素化触媒であり、
前記溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含み、
前記アルキル化工程が、1気圧以上の圧力下で行われ、かつ、前記出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基に前記C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
【請求項2】
N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルの製造方法であって、
出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、ヒドリド還元剤および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
前記C
1
-C
6
一級アルキル化剤が、C
1
-C
5
アルキルニトリルまたはC
1
-C
5
アルキルアルデヒドであり、
前記置換メチルハライドが、メトキシメチルクロリド(MOM-Cl)、エトキシメチルクロリド(EOM-Cl)、2-メトキシエトキシメチルクロリド(MEM-Cl)、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(SEM-Cl)からなる群から選択される1つであり、
前記触媒が、遷移金属を含む不均一系水素化触媒であり、
前記溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含み、
前記アルキル化工程が、前記出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基に前記C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
【請求項3】
前記ヒドリド還元剤が、トリアルキルシランである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不均一系水素化触媒が、Pd、RhおよびPtからなる群から選択される遷移金属を含む触媒である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記不均一系水素化触媒が、Pd、RhおよびPtからなる群から選択される遷移金属を含む触媒である、請求項
2に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項
2に記載の方法。
【請求項8】
前記エーテル系溶媒が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、4-メチルテトロヒドロピラン、ジオキサンおよびジエチルエーテルからなる群から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記エーテル系溶媒が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、4-メチルテトロヒドロピラン、ジオキサンおよびジエチルエーテルからなる群から選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびペンタノールからなる群から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびペンタノールからなる群から選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルからなる群から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項13】
前記エステル系溶媒が、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルからなる群から選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項14】
前記アルキル化工程における反応混合物に、追加の水素を接触させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基が、加水素分解条件で除去可能な保護基と結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基が、加水素分解条件で除去可能な保護基と結合している、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記保護基が、アリールメチルオキシカルボニル基である、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記保護基が、アリールメチルオキシカルボニル基である、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記保護基の除去が、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸水素ナトリウム、トリエチルアミン塩酸塩およびプロピルホスホン酸からなる群から選択される添加剤の存在下で行われる、請求項
15に記載の方法。
【請求項20】
前記アルキル化工程における反応混合物が、塩基を更に含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項21】
前記アルキル化工程における反応混合物が、塩基を更に含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項22】
前記保護基の除去と前記アルキル化工程とが、ワンポットで行われる、請求項
15に記載の方法。
【請求項23】
前記保護基の除去と前記アルキル化工程とが、ワンポットで行われる、請求項
16に記載の方法。
【請求項24】
前記保護基の除去と前記アルキル化工程とが、ワンポットで行われる、請求項
19に記載の方法。
【請求項25】
前記保護基の除去と前記アルキル化工程とが、ワンポットで行われる、請求項
20に記載の方法。
【請求項26】
前記保護基の除去と前記アルキル化工程とが、ワンポットで行われる、請求項
21に記載の方法。
【請求項27】
前記出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基が、一級アミノ基であり、
前記アルキル化工程における反応混合物が、塩基を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記塩基が、三級アミンである、請求項
20に記載の方法。
【請求項29】
前記塩基が、三級アミンである、請求項
21に記載の方法。
【請求項30】
前記塩基が、三級アミンである、請求項
27に記載の方法。
【請求項31】
前記三級アミンが、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、N-メチルモルホリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよびコリジンからなる群から選択される、請求項
28に記載の方法。
【請求項32】
前記三級アミンが、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、N-メチルモルホリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよびコリジンからなる群から選択される、請求項
29に記載の方法。
【請求項33】
前記三級アミンが、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、N-メチルモルホリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよびコリジンからなる群から選択される、請求項
30に記載の方法。
【請求項34】
以下の工程を含む、少なくとも4個のアミノ酸より構成される環状部を有するペプチドもしくはそのエステルの製造方法:
(a) 請求項1~
33のいずれか一項に記載の方法に従いN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを得る工程、
(b) 前記N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルに対し、任意で1つまたは複数のアミノ酸またはペプチドを結合形成反応によって伸長させて、ペプチドもしくはそのエステルを得る工程、および
(c) 前記ペプチドもしくはそのエステルのC末端側の基とN末端側の基とで環化して前記環状部を形成する工程。
【請求項35】
前記工程(c)におけるペプチドもしくはそのエステルが、直鎖状のペプチドもしくはそのエステルである、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
前記直鎖状のペプチドもしくはそのエステルが、下記式:
【化1】
で表される直鎖状のペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、請求項
35に記載の方法。
【請求項37】
前記環状部が、少なくとも8個のアミノ酸により構成されており、
前記環状部を有するペプチドもしくはそのエステルが、8~15個のアミノ酸により構成されるペプチドもしくはそのエステルである、請求項
34に記載の方法。
【請求項38】
前記環状部を有するペプチドが、下記式:
【化2】
で表される環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、環状部を有するペプチドの溶媒和物である、請求項
38に記載の方法。
【請求項40】
前記環状部を有するペプチドの溶媒和物が、環状部を有するペプチドの水和物である、請求項
39に記載の方法。
【請求項41】
前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、環状部を有するペプチドである、請求項
38に記載の方法。
【請求項42】
前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を晶析により単離および/または精製して、前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶を得る工程をさらに含む、請求項
37に記載の方法。
【請求項43】
前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶が、下記式(1):
【化3】
で表される環状部を有するペプチドの非溶媒和物結晶、または溶媒和物結晶である、請求項
42に記載の方法。
【請求項44】
前記環状部を有するペプチドの結晶が溶媒和物結晶である、請求項
43に記載の方法。
【請求項45】
前記環状部を有するペプチド溶媒和物結晶が水和物結晶である、請求項
44に記載の方法。
【請求項46】
出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのN-モノアルキル化反応において、前記出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基がジアルキル化された化合物の生成を抑制する方法であって、
水素の存在下、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
前記C
1
-C
6
一級アルキル化剤が、C
1
-C
5
アルキルニトリルまたはC
1
-C
5
アルキルアルデヒドであり、
前記置換メチルハライドが、メトキシメチルクロリド(MOM-Cl)、エトキシメチルクロリド(EOM-Cl)、2-メトキシエトキシメチルクロリド(MEM-Cl)、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(SEM-Cl)からなる群から選択される1つであり、
前記触媒が、遷移金属を含む不均一系水素化触媒であり、
前記溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含み、
前記アルキル化工程が、1気圧以上の圧力下で行われ、かつ、前記出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基に前記C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
【請求項47】
出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのN-モノアルキル化反応において、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基がジアルキル化された化合物の生成を抑制する方法であって、
出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、ヒドリド還元剤および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
前記C
1
-C
6
一級アルキル化剤が、C
1
-C
5
アルキルニトリルまたはC
1
-C
5
アルキルアルデヒドであり、
前記置換メチルハライドが、メトキシメチルクロリド(MOM-Cl)、エトキシメチルクロリド(EOM-Cl)、2-メトキシエトキシメチルクロリド(MEM-Cl)、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(SEM-Cl)からなる群から選択される1つであり、
前記触媒が、遷移金属を含む不均一系水素化触媒であり、
前記溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含み、
アルキル化工程が、出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基にC
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
【請求項48】
N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのペプチド鎖を、結合形成反応によって伸長する工程と、
伸長されたペプチドを酸性水溶液で処理し、前記ジアルキル化された化合物を除去する工程をさらに含む、請求項
46または47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アルキルアミノ酸、およびN-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分子量が500を超える化合物が、従来の低分子化合物では相互作用することが困難なターゲットタンパクの表面での相互作用、すなわちタンパク-タンパク相互作用の阻害等に寄与しうることが知られるようになってきた。これらの分子は、経口薬として用いられてきた低分子(分子量が500以下である)や抗体医薬品のような高分子(分子量が100000を超える)と区別され、中分子化合物(分子量が500~2000である)と呼ばれる。中分子化合物は、タフターゲットに対する創薬を実現しうる、新たなモダリティとして注目されている。中分子化合物の中でも、ペプチド医薬品は、すでに40種類以上が上市されており、例えば、シクロスポリンは免疫抑制剤として使用されている(非特許文献1)。
【0003】
ペプチド医薬品の有効成分であるペプチドの多くは、分子内にN-アルキルアミノ酸等の非天然アミノ酸を含むことが知られている。とりわけ非天然アミノ酸としてN-アルキルアミノ酸を有するペプチドは、医薬品の有効成分として必要な代謝安定性や膜透過性が向上することが知られている(特許文献1、2)。
【0004】
医薬品として供給するためには、効率的で大量合成に適した化学合成法の確立が必須である。その配列中に非天然アミノ酸を含むペプチド、とりわけ、N-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造においては、アミノ基の窒素原子上のアルキル基の立体障害に起因する縮合反応の低反応性、およびアミノ酸残基のα位のラセミ化などにより、目的物の収率が低下することが課題であった(非特許文献2)。また、アミノ基のアルキル化反応による、N-アルキルアミノ酸やN-アルキルアミノ酸残基を含むペプチドの製造においては、アルキルアルデヒドやアルキルニトリルをアルキル化剤として用い、水素雰囲気下でアミノ酸やペプチド構造中の脂肪族第一級アミノ基をアルキル化する方法が知られている(特許文献3、非特許文献3、4)。また、アルキルニトリルをアルキル化剤として用い、水素雰囲気下で脂肪族第一級アミノ基を選択的アルキル化により第二級アミノ基に変換する手法が知られている(非特許文献5、6)。ペプチドのN-アルキル化法としては、例えば、2-ニトロベンゼンスルホニル基で保護された第一級アミンを硫酸ジアルキル等のアルキル化剤でN-アルキル化し、その後に脱保護する方法が知られている(非特許文献7)。水素化ホウ素試薬を還元剤として用いてペプチドをN-アルキル化する合成法も知られている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/225864号
【文献】国際公開第2020/122182号
【文献】国際公開第2000/015656号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Future Med. Chem., 2009, 1, 1289-1310.
【文献】J. Peptide Res., 2005, 65, 153-166.
【文献】J. Med. Chem. 1992, 35, 4195-4204.
【文献】J. Org. Chem. 1984, 49, 5269-5271.
【文献】Org. Lett. 2004, 6, 4977-4980.
【文献】Org. Biomol. Chem. 2012, 10, 293-304.
【文献】Acc. Chem. Res. 2008, 41, 1331-1342.
【文献】Chem. Sci. 2017, 8, 2717-2722.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アミノ酸およびペプチドのN末端のアミノ基を効率的にN-アルキル化するためには、アミノ酸およびペプチドの構造中に含まれる脂肪族第一級アミノ基を高い選択性でモノアルキル化し第二級アミノ基に変換可能な合成法が必要である。また、N-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造では、N末端のアミノ基の脱保護、N末端のアミノ基のN-アルキル化、次いでアミノ酸の伸長反応と複数ステップを要する。そこで、本発明は、N-モノアルキルアミノ酸またはN-モノアルキルアミノ酸残基を含むペプチドの効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
従来のN-アルキル化法では、基質の第一級アミノ基がモノアルキル化された第二級アミンだけでなく、ジアルキル化された第三級アミンが多く副生し、これらを分離することが困難となることがある。一般的に、基質となるアミノ基及び導入するアルキル基の嵩高さがともに小さいと、ジアルキル化に対するモノアルキル化の選択性を高めることは困難である。非特許文献3~6および特許文献3では、立体障害の大きな基質のアミノ基に立体障害の大きなアルキル基を導入する方法に言及しているが、高選択的なモノアルキル化には言及していない。実際に、非特許文献5および6の開示にしたがい、アルキルニトリルをアルキル化剤として用い、水素雰囲気下で脂肪族第一級アミンを選択的に第二級アミンに変換する方法をペプチドの製造に適用したところ、アミノ基の立体障害の影響で反応性が低く、目的物を効率よく得ることが困難であった。
【0009】
一方、液相法によるペプチド製造では、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基ともいう。)でN末端のアミノ基が保護されたアミノ酸が汎用されている。このような保護されたアミノ酸を用いてN-アルキルアミノ酸を含む配列のペプチド鎖の伸長反応を行う場合には、Cbz基の除去工程、N末端のアミノ基のアルキル化工程、ペプチド鎖の伸長反応工程のそれぞれで、溶媒、反応液の液性などの反応条件が異なることがある。さらに、各工程での後処理操作、および目的物の単離操作を含め、複数の作業工程を要し、煩雑である。非特許文献7で用いられている保護基と次工程のアルキル化反応は、N末端のアミノ基への特定の保護基の導入、アルキル化、脱保護工程の3ステップを要する製法である点から、実用的な方法とは言い難い。非特許文献8に記載の水素化ホウ素試薬を還元剤として用いる方法では、立体障害の大きなベンズアルデヒドによる、N-置換ペプチドの製造が例示されているにすぎない。また、水素化ホウ素試薬に例示されるヒドリド試薬は、基質化合物に対して等量以上の試薬が必要であり、過剰試薬を含む反応液の後処理工程の操作が煩雑である。また、これらの方法をペプチド合成に適用する場合、ペプチドのN末端の保護基の除去反応およびN末端のアミノ基のアルキル化反応が異なるために、それぞれ別の工程として行う必要があり、脱保護反応とN-アルキル化反応をワンポットで行うことも難しい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、N-アルキルアミノ酸およびN-アルキルアミノ酸を含むペプチドの製造方法に関する。発明者らは、基質や導入するアルキル基の嵩高さに依存しない効率的なアミノ酸、またはペプチドのN-アルキル体の製法の確立を目的とし、アルキル化剤、還元剤、触媒、および添加剤を中心にN-アルキル反応の条件を検討した。アルキル化剤としてアルキルニトリルまたはアルキルアルデヒドを用い、常圧(1気圧)以上の水素雰囲気下、遷移金属触媒の存在下、添加剤として有機塩基を加えてアルキル化を検討したところ、アミノ酸のN-アルキル化反応に加え、ペプチドのN-アルキル化反応にも適用可能であることを見出した。N末端に加水素分解条件で除去可能な保護基をもつ、アミノ酸またはペプチドを本発明の条件に付したところ、脱保護反応とN-アルキル化反応をワンポットで行うことができることを見出した。ワンポットで反応を行う場合は、添加剤として酸を加えて反応を行うと、効率よく目的とするN-アルキル体が得られることを見出した。
【0011】
例えば、本発明は、以下の(1)~(35)を提供する。
【0012】
(1)
N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルの製造方法であって、
水素の存在下、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
アルキル化工程が、1気圧以上の圧力下で行われ、かつ、出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基にC
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
(1.1)
N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルの製造方法であって、
出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、ヒドリド還元剤および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
アルキル化工程が、出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基にC
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
(1.2) C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドが、C
1-C
6一級アルキル化剤である、(1)または(1.1)に記載の方法。
(2) C
1-C
6一級アルキル化剤が、C
1-C
5アルキルニトリルまたはC
1-C
5アルキルアルデヒドである、(1)~(1.2)のいずれか一項に記載の方法。
(2.1) 置換メチルハライドが、メトキシメチルクロリド(MOM-Cl)、エトキシメチルクロリド(EOM-Cl)、2-メトキシエトキシメチルクロリド(MEM-Cl)、2-(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(SEM-Cl)からなる群から選択される1つである、(2)に記載の方法。
(2.2) ヒドリド還元剤が、トリアルキルシランである、(1.1)~(2.1)のいずれか一項に記載の方法。
(2.3) トリアルキルシランが、トリエチルシランである、(2.2)に記載の方法。
(3) 触媒が、遷移金属を含む不均一系水素化触媒である、(1)~(2.2)のいずれか一項に記載の方法。
(4) 不均一系水素化触媒が、Pd、RhおよびPtからなる群から選択される遷移金属を含む触媒である、(3)に記載の方法。
(5) 不均一系水素化触媒が、Pd-C、Pd(OH)
2-C、Rh-C、およびアダムス触媒からなる群から選択される触媒である、(3)または(4)に記載の方法。
(6) 溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、(1)~(5)のいずれか一項に記載の方法。
(7) 溶媒が、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)~(6)のいずれか一項に記載の方法。
(8) 溶媒が、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、4-メチルテトロヒドロピラン、ジオキサンおよびジエチルエーテルからなる群から選択されるエーテル系溶媒である、(1)~(7)のいずれか一項に記載の方法。
(9) 溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびペンタノールからなる群から選択されるアルコール系溶媒である、(1)~(7)のいずれか一項に記載の方法。
(10) 溶媒が、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチルからなる群から選択されるエステル系溶媒である、(1)~(7)のいずれか一項に記載の方法。
(11) アルキル化工程における反応混合物に、追加の水素を接触させる工程をさらに含む、(1)~(10)のいずれか一項に記載の方法。
(12) 出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基が、加水素分解条件で除去可能な保護基と結合している、(1)~(11)のいずれか一項に記載の方法。
(12.1) 前記保護基を除去する工程(保護基の除去)を含む、(12)に記載の方法。
(13) 保護基が、アリールメチルオキシカルボニル基である、(12)または(12.1)に記載の方法。
(14) 保護基の除去が、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸水素ナトリウム、トリエチルアミン塩酸塩およびプロピルホスホン酸からなる群から選択される添加剤の存在下で行われる、(12)または(13)に記載の方法。
(14.1) 前記アルキル化工程における反応混合物が、塩基を更に含む、(12)~(13)のいずれか一項に記載の方法。
(14.2) 前記保護基の除去と前記アルキル化工程とが、ワンポットで行われる、(12)~(14.1)のいずれか一項に記載の方法。
(15) 出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基が、一級アミノ基であり、
アルキル化工程における反応混合物が、塩基を更に含む、(1)~(11)のいずれか一項に記載の方法。
(16) 塩基が、三級アミンである、(14.1)または(15)に記載の方法。
(17) 三級アミンが、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、N-メチルモルホリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよびコリジンからなる群から選択される、(16)に記載の方法。
(18) 以下の工程を含む、ペプチドもしくはそのエステルの製造方法:
(a)(1)~(17)のいずれか一項に記載の方法に従いN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを得る工程、および
(b)前記N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルに対し、任意で1つもしくは複数のアミノ酸またはペプチドを結合形成反応によって伸長させて、ペプチドもしくはそのエステルを得る工程。
(18.1) 前記工程(a)および(b)を所望のペプチドを得るまで複数回繰り返す、(18)に記載のペプチドもしくはそのエステルの製造方法。
(18.2) 以下の工程を含む、少なくとも4個のアミノ酸より構成される環状部を有するペプチドもしくはそのエステルの製造方法:
(c)(18)または(18.1)に記載の方法に従いペプチドもしくはそのエステルを得る工程、および
(d)前記ペプチドもしくはそのエステルのC末端側の基とN末端側の基とで環化して前記環状部を形成する工程。
(18.3) 前記工程(d)におけるペプチドもしくはそのエステルが、直鎖状のペプチドもしくはそのエステルである、(18.2)に記載の方法。
(18.4) 前記直鎖状のペプチドもしくはそのエステルが、下記式:
【化1】
で表される直鎖状のペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、(18.3)に記載の方法。
(19) 環状部を形成する工程が、ペプチドもしくはエステルのC末端のカルボキシル基とN末端のアミノ基との結合形成によって行われる、(18.2)または(18.3)に記載の方法。
(20) 環状部が、少なくとも8個のアミノ酸により構成されており、
環状部を有するペプチドもしくはそのエステルが、8~15個のアミノ酸により構成されるペプチドもしくはそのエステルである、(18.2)~(19)のいずれか一項に記載の方法。
(20.1) (18)~(20)のいずれか一項に記載の方法を含む、N-アルキルアミノ酸残基を5個以上、6個以上または7個以上含むペプチドもしくはそのエステルの製造方法。
(20.2) 前記環状部を有するペプチドもしくはそのエステルが、下記式(1):
【化2】
で表される環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である、(18)~(20)のいずれか一項に記載の方法。
(20.3) 前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される環状部を有するペプチドの溶媒和物である、(20.2)に記載の方法。
(20.4) 前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される環状部を有するペプチドの水和物である、(20.2)に記載の方法。
(20.5) 前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物が、式(1)で表される環状部を有するペプチドである、(20.2)に記載の方法。
(20.6) 前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の単離および/または精製にカラムクロマトグラフィーを用いない、(18)~(20.5)のいずれか一項に記載の方法。
(20.7) 前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物を晶析により単離および/または精製して、前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶を得る工程をさらに含む、(18)~(20.6)のいずれかに一項記載の方法。
(20.8) 前記環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶が、下記式(1):
【化3】
で表される環状部を有するペプチドの非溶媒和物結晶、または溶媒和物結晶である、(20.7)に記載の方法。
(20.9) 前記環状部を有するペプチドの結晶が溶媒和物結晶である、(20.8)に記載の方法。
(20.10) 前記環状部を有するペプチド溶媒和物結晶が、水和物結晶である、(20.9)に記載の方法。
(21) 出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのN-モノアルキル化反応において、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基がジアルキル化された化合物の生成を抑制する方法であって、
水素の存在下、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
アルキル化工程が、1気圧以上の圧力下で行われ、かつ、出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基にC
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
(21.1) 出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのN-モノアルキル化反応において、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基がジアルキル化された化合物の生成を抑制する方法であって、
出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、ヒドリド還元剤および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、
アルキル化工程が、出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基にC
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法。
(21.2) C
1-C
6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドが、C
1-C
6一級アルキル化剤である、(21)または(21.1)に記載の方法。
(22) N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのペプチド鎖を、結合形成反応によって伸長する工程と、
伸長されたペプチドを酸性水溶液で処理し、ジアルキル化された化合物を除去する工程をさらに含む、(21)~(21.2)のいずれか一項に記載の方法。
(23) N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルが、式Cで表される化合物である、(1)~(22)のいずれか一項に記載の方法。
【化4】
[式中、R
1はアミノ酸の側鎖を表わし、R
2は水素原子またはC
1-C
6アルキル基を表わす。]
(24) 出発アミノ酸もしくはそのエステルが、式Aで表される化合物である、(1)~(11)および(15)~(23)のいずれかに一項に記載の方法。
【化5】
[式中、R
1はアミノ酸の側鎖を表わし、R
2は水素原子またはC
1-C
6アルキル基を表わす。]
(25) 出発アミノ酸もしくはそのエステルが、式Bで表される化合物である、(1)~(14)および(18)~(23)のいずれか一項に記載の方法。
【化6】
[式中、PG
1はアミノ基の保護基であり、R
1はアミノ酸の側鎖を表わし、R
2は水素原子またはC
1-C
6アルキル基を表わす。]
(26) N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルが、式Fで表される化合物である、(1)~(22)のいずれか一項に記載の方法。
【化7】
[式中、R
3はアミノ酸残基の側鎖を表わし、R
4はペプチド残基を表わす。]
(27) 出発アミノ酸を含むペプチド(以下、「出発ペプチド」ともいう。)もしくはそのエステルが、式Dで表される化合物である、(1)~(11)、(15)~(22)および(26)のいずれか一項に記載の方法。
【化8】
[式中、R
3はアミノ酸残基の側鎖を表わし、R
4はペプチド残基を表わす。]
(28) 出発アミノ酸を含むペプチドが、式Eで表される化合物である、(1)~(14)、(18)~(22)、(26)および(27)のいずれか一項に記載の方法。
【化9】
[式中、PG
2はアミノ基の保護基であり、R
3はアミノ酸残基の側鎖を表わし、R
4はペプチド残基を表わす。]
(29) R
2のC
1-C
6アルキル基が、加水素分解条件で除去されない基である、(21)~(26)のいずれか一項に記載の方法。
(30) R
2のC
1-C
6アルキル基が、t-ブチル基、n-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、n-プロピル基、イソプロピルメチル基およびエチル基より選択される、(23)~(25)のいずれか一項に記載の方法。
(31) PG
1およびPG
2が、加水素分解条件で除去可能な保護基である、(25)および(28)~(30)のいずれか一項に記載の方法。
(32) PG
1およびPG
2が、ベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシメチル基、およびベンジル基からなる群から選択される保護基である、(25)および(28)~(31)のいずれか一項に記載の方法。
(33) R
1およびR
3が、アルキル化工程の条件により意図しない構造変換を受けうる基でない、(23)~(32)のいずれか一項に記載の方法。
(34) R
1およびR
3が、それぞれ独立して、水素原子、C
1-C
6アルキル基、ハロC
1-C
6アルキル基、C
3-C
6シクロアルキル基、C
3-C
6シクロアルキルC
1-C
6アルキル基、カルボキシC
1-C
6アルキル基、アリール基上に置換基を有していてもよいC
6-C
10アリールC
1-C
6アルキル基、ヘテロアリール基上に置換基を有していてもよい5員~10員ヘテロアリールC
1-C
6アルキル基、ヘテロシクリル基上に置換基を有していてもよい5員~10員ヘテロシクリルC
1-C
6アルキル基、C
3-C
6シクロアルコキシC
1-C
6アルキル基、ハロC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル基、保護されたアミノC
3-C
6アルキル基、保護されたヒドロキシC
1-C
6アルキル基、またはC
1-C
6アルコキシC
1-C
6アルキル基から選択される、(21)~(31)のいずれか一項に記載の方法。
(35) R
1およびR
3が、それぞれ独立して、水素原子、C
1-C
6アルキル基、またはアリール基上に置換基を有していてもよいC
6-C
10アリールC
1-C
6アルキル基から選択される、(23)~(34)のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、N-アルキルアミノ酸、およびN-アルキルアミノ酸を含むペプチドを選択的なN-アルキル化反応により製造することが可能である。また、本発明の一実施形態にかかる製造方法は、既存の製造方法と比較し、精製操作を含む反応操作の簡略化、ワンポット反応による工程の短縮化により、コスト削減が可能であり、安価で大量の医薬品としての有効性成分やその中間体の供給が可能となる。
【0014】
特に、N-アルキル化反応は、一級アルキル基の導入反応に適用可能であることも見出した。さらに、従来は、N末端の保護基の除去反応とその後のアルキル化反応の二工程を通じて目的物を得ていたところ、本発明の一実施形態によれば、所望のN-モノアルキル化体をワンポットで得ることができる。そして、本発明のワンポット反応において、有機酸を添加することにより、脱保護工程におけるジケトピペラジンの生成をさらに抑制し、目的物をより効率よく得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、「1つ又は複数の」とは、1つ又は2つ以上の数を意味する。「1つ又は複数の」が、ある基の置換基に関連する文脈で用いられる場合、この用語は、1つからその基が許容する置換基の最大数までの数を意味する。「1つ又は複数の」として具体的には、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、及び/又はそれより大きい数が挙げられる。
【0017】
本明細書において、範囲を示す「~」とはその両端の値を含み、例えば、「A~B」は、A以上であり、かつB以下である範囲を意味する。
【0018】
本明細書において、「約」という用語は、数値と組み合わせて使用される場合、その数値の+10%及び-10%の値範囲を意味する。
【0019】
本明細書において、「及び/又は」との用語の意義は、「及び」と「又は」が適宜組み合わされたあらゆる組合せを含む。具体的には、例えば、「A、B及び/又はC」には、以下の7通りのバリエーションが含まれる;(i)A、(ii)B、(iii)C、(iv)A及びB、(v)A及びC、(vi)B及びC、(vii)A、B及びC。
【0020】
本明細書における「アミノ酸」には、天然アミノ酸、及び非天然アミノ酸(アミノ酸誘導体ということがある)が含まれる。また本明細書において「アミノ酸」はアミノ酸残基を意味することがある。本明細書における「天然アミノ酸」とは、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、ヒスチジン(His)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン(Gln)、アスパラギン(Asn)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、プロリン(Pro)を指す。非天然アミノ酸(アミノ酸誘導体)は特に限定されないが、β-アミノ酸、D型アミノ酸、N置換アミノ酸、α,α-ジ置換アミノ酸、側鎖が天然アミノ酸と異なるアミノ酸、ヒドロキシカルボン酸などが例示される。本明細書におけるアミノ酸としては、任意の立体配置が許容される。アミノ酸の側鎖の選択は特に制限を設けないが、水素原子の他にも例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基、シクロアルキル基、スピロ結合したシクロアルキル基から自由に選択される。それぞれには置換基が付与されていてもよく、それら置換基も制限されず、例えば、ハロゲン原子、O原子、S原子、N原子、B原子、Si原子、又はP原子を含む任意の置換基の中から独立して1つ又は2つ以上自由に選択されてよい。すなわち、置換されていてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基など、または、オキソ、アミノカルボニル、ハロゲン原子などが例示される。非限定の一態様において、本明細書におけるアミノ酸は、同一分子内にカルボキシル基とアミノ基を有する化合物であってよい(この場合であっても、プロリン、ヒドロキシプロリンのようなイミノ酸もアミノ酸に含まれる)。
【0021】
本明細書においてペプチドを構成する「アミノ酸残基」を単に「アミノ酸」ということがある。
【0022】
本明細書における「アミノ酸の側鎖」とは、α-アミノ酸の場合、アミノ基とカルボキシル基が結合した炭素(α-炭素)に結合した原子団を意味する。例えば、Alaのメチル基はアミノ酸の側鎖である。β-アミノ酸の場合、α-炭素、および/またはβ-炭素に結合した原子団がアミノ酸の側鎖となり、γ-アミノ酸の場合、α-炭素、β-炭素、および/またはγ-炭素に結合した原子団がアミノ酸の側鎖となり得る。
【0023】
本明細書における「ハロゲン」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が例示される。
【0024】
本明細書における「アミノ酸」には、それぞれに対応する全ての同位体を含む。「アミノ酸」の同位体は、少なくとも1つの原子が、原子番号(陽子数)が同じで、質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子で、天然の存在比とは異なる存在比で置換されたものである。本明細書の「アミノ酸」に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。全ての割合の放射性または非放射性の同位元素を含有する本明細書の化合物は、本発明の範囲に包含される。
【0025】
本明細書に記載された化合物は、このような化合物を構成する1個以上の原子に、非天然割合の同位体原子を含みうる。化合物中の任意の原子を、原子番号(陽子数)が同じで、質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる別の同位体原子で置換することにより、天然中の同位体の存在比とは異なる存在比の同位体で置換した化合物、すなわち同位体原子で標識された化合物も本発明に含まれる。本明細書の化合物に含まれる同位体元素の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。同位体原子で標識された化合物は、治療または予防剤、研究試薬(例えば、アッセイ試薬)、および診断剤(例えば、インビボ画像診断剤)として有用である。全ての割合の放射性または非放射性の同位体元素を含有する本明細書の化合物は、本発明の範囲に包含される。同位体原子で標識された化合物は、非標識化合物の製造方法と同様の手法で、対応する同位体原子を含む試薬や溶媒を用いることで製造することができる。
【0026】
本明細書において「N-保護アミノ酸」とは、アミノ基が保護された天然または非天然のアミノ酸を意味し、「N-保護ペプチド」とは、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護されたペプチドを意味する。該ペプチドは、天然アミノ酸残基のみから構成されていても、非天然アミノ酸残基のみから構成されていても、天然アミノ酸残基と非天然アミノ酸残基の任意の組合せから構成されていてもよい。
【0027】
本明細書における「ペプチド」は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸が2以上連結された化合物であれば特に限定されない。アミノ酸残基間の結合は、例えばアミド結合のみであってもよく、または、一部がアミド結合でありかつ残りがエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、スルホキシド結合(-S(=O)-)、スルホン結合(-S(=O)2-)、ジスルフィド結合、炭素-炭素結合または複素環構築による結合などのアミド結合以外の結合であってもよい。アミノ酸残基の結合に関与する基は、アミノ酸の主鎖同士の基、アミノ酸の主鎖と側鎖の基、アミノ酸の側鎖同士の基が例示され、これらの基が前記アミノ酸残基の結合の態様の例示にしたがって結合したものも本明細書の「ペプチド」に含まれる。本明細書では、これらアミノ酸が連結された鎖状の「ペプチド」を「ペプチド鎖」とも呼ぶ。「ペプチド」に含まれるアミノ酸の残基数は、好ましくは5~30残基、より好ましくは8~15残基、さらに好ましくは9~13残基である。本発明において合成されるペプチドは、1つのペプチド中に少なくとも3つのN置換アミノ酸を含むことが好ましく、少なくとも5つ以上のN置換アミノ酸を含むことがより好ましい。これらのN置換アミノ酸は、ペプチド中に連続して存在していても、不連続に存在していてもよい。本発明におけるペプチドは、直鎖状でも環状でもよく、環状ペプチドが好ましい。
【0028】
本明細書における「ペプチドの主鎖」、および「環状ペプチドの主鎖」とは、上記「アミノ酸の主鎖」がアミド結合で複数連結することによって形成された構造を意味する。
【0029】
本明細書に記載の化合物(ペプチドを含む)は、その塩またはそれらの溶媒和物であることができる。化合物の塩には、例えば、塩酸塩;臭化水素酸塩;ヨウ化水素酸塩;リン酸塩;ホスホン酸塩;硫酸塩;メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩などのカルボン酸塩;または、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩などが含まれる。これらの塩は、例えば、化合物と、酸または塩基とを接触させることにより製造される。本明細書において溶媒和物とは、化合物が溶媒とともに、一つの分子集団を形成したものをさし、医薬の投与に付随して摂取が許容される溶媒により形成された溶媒和物であれば特に限定されない。その例としては、水和物、アルコール和物(エタノール和物、メタノール和物、1-プロパノール和物、2-プロノール和物など)、ジメチルスルホキシドなどの単独の溶媒との溶媒和物だけでなく、化合物1分子に対して複数個の溶媒と溶媒和物を形成したもの、または化合物1分子に対して複数種類の溶媒と溶媒和物を形成したものなどが挙げられる。溶媒が水であれば水和物と言う。本発明の化合物の溶媒和物としては、水和物が好ましく、そのような水和物として具体的には1~10水和物、好ましくは1~5水和物、さらに好ましくは1~3水和物が挙げられる。本発明の化合物の溶媒和物には、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなど)、ジメチルホルムアミドなどの単独の溶媒との溶媒和物だけでなく、複数の溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0030】
本発明に係る化合物がフリー体として得られる場合、当該化合物は、その水和物もしくは溶媒和物の状態に、常法に従って変換することができる。また、本発明に係る化合物がフリー体として得られる場合、当該化合物は、当該化合物が形成してもよい塩またはその水和物もしくは溶媒和物の状態に、常法に従って変換することができる。例えば、式(1)で表される化合物もしくはその塩の水和物、エタノール和物等が挙げられる。具体的には、式(1)で表される化合物の半水和物、1水和物、2水和物、3水和物、4水和物、5水和物、6水和物、7水和物、8水和物、9水和物、10水和物もしくは1エタノール和物、または式(1)で表される化合物のナトリウム塩の半水和物、1水和物、2水和物、3水和物、4水和物、5水和物、6水和物、7水和物、8水和物、9水和物、10水和物もしくは1エタノール和物、または式(1)で表される化合物の塩酸塩の水和物もしくはエタノール和物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。水和物または溶媒和物は、結晶形または非結晶形で製造されてもよく、結晶形の場合、結晶多形をとりうる。水和物または溶媒和物の製造方法として、例えば、式(1)で表される化合物や本明細書に記載のペプチド化合物に、エタノール等の溶媒および/または水を加え、攪拌、冷却、濃縮、および/または乾燥を行うなど、常法によって水和物または溶媒和物を得ることができる。
【化10】
【0031】
また、本発明に係る化合物が、当該化合物の塩、水和物、または溶媒和物として得られる場合、当該化合物は、そのフリー体に常法に従って変換することができる。
【0032】
本明細書に記載の化合物の製造において、定義した基が実施方法の条件下で望まない化学的変換を受けてしまう場合、例えば、官能基の保護、脱保護等の手段を用いることにより、該化合物を製造することができる。ここで保護基の選択および脱着操作は、例えば、「Greene’s,“Protective Groups in Organic Synthesis”(第5版,John Wiley & Sons 2014)」に記載の方法を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。
【0033】
本発明の第一実施形態は、その一局面において、N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルの製造方法であって、水素の存在下、出発アミノ酸もしくはそのエステル、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、該アルキル化工程が、1気圧以上の圧力下で行われ、かつ、該出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基に該C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルを生成させる、方法である。
【0034】
本発明の別の第一実施形態は、その一局面において、N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルの製造方法であって、出発アミノ酸もしくはそのエステル、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、ヒドリド還元剤および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、該アルキル化工程が、出発アミノ酸もしくはそのエステルのアミノ基にC1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステルまたは前記N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法である。
【0035】
本実施形態に係る方法により、N-モノアルキルアミノ酸またはそのエステル、塩もしくは溶媒和物を効率的に得ることができる。
【0036】
本実施形態に係るアルキル化工程は、式Aで表されるアミノ酸またはそのエステル(出発アミノ酸Aともいう。)を選択的にN-モノアルキル化することにより、式Cで表されるN-モノアルキルアミノ酸またはそのエステルを得る方法と、式Bで表されるN-保護アミノ酸またはそのエステル(出発アミノ酸Bともいう。)の脱保護反応とN-アルキル化反応をワンポットで行うことにより、式Cで表されるN-モノアルキルアミノ酸またはそのエステルを得る方法を包含する。以下に、本実施形態に係る方法の概要を示す。
【化11】
【0037】
出発アミノ酸AおよびBは、遊離体の形態で使用してもよく、対応する塩または溶媒和物の形態で使用してもよい。
【0038】
上記の化学式中、R1はアミノ酸の側鎖を表わし、PG1はアミノ基の保護基を表わし、R2は水素原子またはカルボキシル基の保護基を表わす。カルボキシル基の保護基は、例えば、C1-C6アルキル基である。便宜上、上記の反応式では、出発アミノ酸AおよびBをα-アミノ酸の形態で例示しているが、β-アミノ酸またはγ-アミノ酸であってもよい。また、上記の反応式において、アミノ酸の側鎖R1は、好ましくは、アルキル化工程の条件によりアルキル化反応または還元反応などにより、意図しない構造変換を受けうる官能基を有しない。R1がアルキル化工程の条件により意図しない構造変換を受けうる官能基を有する場合には、該官能基にあらかじめ保護基を導入してからアルキル化工程を行うことで、目的物を製造することができる。
【0039】
R1は、例えば、水素原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルキル基、C3-C6シクロアルキルC1-C6アルキル基、カルボキシC1-C6アルキル基、アリール上に置換基を有していてもよいC6-C10アリールC1-C6アルキル基、ヘテロアリール上に置換基を有していてもよい5~10員ヘテロアリールC1-C6アルキル基、ヘテロシクリル上に置換基を有していてもよい5~10員ヘテロシクリルC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルコキシC1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルコキシC1-C6アルキル基、保護されたアミノC3-C6アルキル基、保護されたヒドロキシC1-C6アルキル基、またはC1-C6アルコキシC1-C6アルキル基から選択される。
【0040】
本明細書において「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素-炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。アルキルは直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。C1-C6アルキルとして、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、n-ペンチル、s-ペンチル(1-メチルブチル)、t-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(3-メチルブチル)、3-ペンチル(1-エチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0041】
アミノ酸の側鎖(R1またはR3)がC1-C6アルキル基であるアミノ酸としては、たとえば、アラニン(Ala)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、バリン(Val)、2-アミノブタン酸(Abu)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、tert-ロイシン(Tle)が挙げられる。
【0042】
本明細書における「ハロアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がハロゲンで置換された基を意味する。ハロアルキルとして、ハロC1-C6アルキルが好ましく、フルオロC1-C6アルキルがより好ましい。ハロC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、4,4-ジフルオロブチル、5,5-ジフルオロペンチルなどが挙げられる。
【0043】
アミノ酸の側鎖(R1またはR3)がハロC1-C6アルキル基であるアミノ酸としては、たとえば、5-ジフルオロノルバリン(Nva(5-F2))、2-アミノ-4-トリフルオロブタン酸(Abu(4-F3))が挙げられる。
【0044】
本明細書において「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和した環状の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、単環、ビシクロ環、スピロ環を含む。シクロアルキルとして好ましくはC3-C6シクロアルキルが挙げられる。C3-C6シクロアルキルとして、具体的には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0045】
アミノ酸の側鎖(R1またはR3)がC3-C6シクロアルキル基であるアミノ酸としては、たとえば、α-シクロプロピルグリシン(Gly(cPr))、α-シクロブチルグリシン(Gly(cBu))、α-シクロペンチルグリシン(Gly(cPent))、α-シクロヘキシルグリシン(Chg)が挙げられる。
【0046】
本明細書における「シクロアルキルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルキル」で置換された基を意味する。C3-C6シクロアルキルC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0047】
本明細書における「カルボキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がカルボキシで置換された基を意味する。カルボキシC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、カルボキシメチルなどが挙げられる。
【0048】
本明細書において「アリール」とは1価の芳香族炭化水素環、および芳香族炭化水素環基を意味する。アリールとして好ましくはC6-C10アリールが挙げられる。具体的には、たとえば、フェニル、ナフチル(たとえば、1-ナフチル、2-ナフチル)などが挙げられる。
【0049】
本明細書において「アリールアルキル(アラルキル)」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「アリール」で置換された基を意味する。アリールアルキルとして、C6-C10アリールC1-C6アルキルが好ましい。C6-C10アリールC1-C6アルキルとして、具体的には、たとえば、ベンジル、フェネチル、3-フェニルプロピルなどが挙げられる。
【0050】
アミノ酸の側鎖(R1またはR3)がアリール上に置換基を有していてもよいC6-C10アリールC1-C6アルキル基であるアミノ酸としては、たとえば、フェニルアラニン(Phe)、4-メチルフェニルアラニン(Phe(4-Me))、4-トリフルオロメチル‐3,5-ジフルオロホモフェニルアラニン(Hph(4-CF3-35-F2))が挙げられる。
【0051】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、芳香族性の環状の1価の基、および芳香族複素環基を意味する。環は単環でも、他の環との縮合環でもよく、部分的に飽和されていてもよい。ヘテロアリールの環を構成する原子の数は好ましくは5~10(5~10員ヘテロアリール)であり、より好ましくは5~7(5~7員ヘテロアリール)である。ヘテロアリールとして具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、アザインドリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、インドリジニル、イミダゾピリジル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、ピロロピラジニル、フロピリジルなどが挙げられる。
【0052】
本明細書において「ヘテロアリールアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「ヘテロアリール」で置換された基を意味する。ヘテロアリールアルキルとして、5~10員ヘテロアリールC1-C6アルキルが好ましく、5~10員ヘテロアリールC1-C2アルキルがより好ましい。5員~10員ヘテロアリールC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、3-チエニルメチル、4-チアゾリルメチル、2-ピリジルメチル、3-ピリジルメチル、4-ピリジルメチル、2-(2-ピリジル)エチル、2-(3-ピリジル)エチル、2-(4-ピリジル)エチル、2-(6-キノリル)エチル、2-(7-キノリル)エチル、2-(6-インドリル)エチル、2-(5-インドリル)エチル、2-(5-ベンゾフラニル)エチルなどが挙げられる。
【0053】
アミノ酸の側鎖(R1またはR3)がヘテロアリール上に置換基を有していてもよい5~10員ヘテロアリールC1-C6アルキル基であるアミノ酸としては、たとえば、2-アミノ-4-(ピリジン-2-イル)-ブタン酸(Abu(4-Pyr))、3-(6-トリフルオロメチルピリジン-3-イル)アラニン(Ala(3-Pyr-4-CF3))が挙げられる。
【0054】
本明細書において「ヘテロシクリル」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、非芳香族の環状の1価の基、および複素環基を意味する。ヘテロシクリルは、飽和複素環でも、環中に二重およびまたは三重結合を有していてもよく、環中の炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよく、単環でも縮合環でもよい。縮合環の場合は、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環などの芳香環と縮合環を形成してもよい。シクロペンタン環、シクロヘキサン環などの飽和脂環式環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環、ピロリジン環などの飽和複素環と縮合環を形成してもよい。
【0055】
ヘテロシクリルの環を構成する原子の数は、好ましくは4~10(4~10員ヘテロシクリル)であり、より好ましくは4~7(4~7員ヘテロシクリル)である。ヘテロシクリルとしては具体的には、たとえば、アゼチジニル、オキソアゼチジニル、オキシラニル、オキセタニル、アゼチジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロピリミジル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、オキソピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,2-チアジナン、チアジアゾリジニル、オキサゾリドン、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリル、ジオキソラニル、ジオキサニル、テトラヒドロピロロ[1,2-c]イミダゾール、チエタニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、スルタム、2-オキサスピロ[3.3]ヘプチル、6,7-ジヒドロ-ピロロ[1,2-a]イミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジニル、アゼパニル、ジオキセパニル、5,9-ジオキサスピロ[3.5]ノナニルなどが挙げられる。
【0056】
本明細書における「ヘテロシクリルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「ヘテロシクリル」で置換された基を意味する。ヘテロシクリルアルキルとして、5~10員ヘテロシクリルC1-C6アルキルが好ましく、4~7員ヘテロシクリルC1-C6アルキルがより好ましく、4~7員ヘテロシクリルC1-C2アルキルがさらに好ましい。5~10員ヘテロシクリルC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)エチル、2-(アゼチジン-3-イル)エチル、4-(オキソラン-2-イルメチル)ピペラジン-1-イル、2-(1-ピペリジル)エチル、3-(1-ピペリジル)プロピルなどが挙げられる。
【0057】
本明細書において「シクロアルコキシ」とは、前記定義の「シクロアルキル」が結合したオキシ基を意味する。シクロアルコキシとして、好ましくはC3-C8シクロアルコキシが挙げられる。シクロアルコキシとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシなどが挙げられる。
【0058】
本明細書における「シクロアルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルコキシ」で置換された基を意味する。シクロアルコキシアルキルとして、C3-C8シクロアルコキシC1-C6アルキルが好ましく、C3-C6シクロアルコキシC1-C6アルキルがより好ましく、C3-C6シクロアルコキシC1-C2アルキルがより好ましい。C3-C6シクロアルコキシC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシメチル、シクロブトキシメチルなどが挙げられる。
【0059】
本明細書において「アルコキシ」とは、前記定義の「アルキル」が結合したオキシ基を意味する。アルコキシとして、好ましくはC1-C6アルコキシが挙げられる。アルコキシとして具体的には、たとえば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、3-メチルブトキシなどが挙げられる。
【0060】
本明細書における「アルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルコキシ」で置換された基を意味する。アルコキシアルキルとして、C1-C6アルコキシC1-C6アルキルが好ましく、C1-C6アルコキシC1-C2アルキルがより好ましい。C1-C6アルコキシC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、メトキシメチル、エトキシメチル、1-プロポキシメチル、2-プロポキシメチル、n-ブトキシメチル、i-ブトキシメチル、s-ブトキシメチル、t-ブトキシメチル、ペンチルオキシメチル、3-メチルブトキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチルなどが挙げられる。
【0061】
本明細書における「ハロアルコキシ」とは、前記定義の「アルコキシ」の1つまたは複数の水素がハロゲンで置換された基を意味する。ハロアルコキシとして、ハロC1-C6アルコキシが好ましく、フルオロC1-C6アルコキシがより好ましい。
【0062】
本明細書における「ハロアルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「ハロアルコキシ」で置換された基を意味する。ハロアルコキシアルキルとして、好ましくはハロC1-C6アルコキシC1-C6アルキルが挙げられる。ハロC1-C6アルコキシC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、ジフルオロメトキシメチル、トリフルオロメトキシメチル、2,2-ジフルオロエトキシメチル、2,2,2-トリフルオロエトキシメチル、3,3-ジフルオロプロポキシメチル、4,4-ジフルオロブトキシメチル、5,5-ジフルオロペントキシメチルなどが挙げられる。
【0063】
上記C6-C10アリールC1-C6アルキルのアリール、上記5~10員ヘテロアリールC1-C6アルキルのヘテロアリール、および上記5~10員ヘテロシクリルC1-C6アルキルのヘテロシクリルは、さらに置換基で置換されていてもよい。
【0064】
本明細書において「置換されていてもよい」とは、ある基が任意の置換基によって置換されていてもよいことを意味する。さらにこれらそれぞれに置換基が付与されていてもよく、それら置換基も制限されず、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、又はリン原子を含む任意の置換基の中から独立して1つ又は2つ以上自由に選択されてよい。
【0065】
その置換基としては、例えば、アルキル、アルコキシ、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ、オキソ、アミノカルボニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ハロゲン、ニトロ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミルなどが例示される。
【0066】
本明細書における「アミノアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アミノ」で置換された基を意味する。アミノアルキルとして、アミノC3-C6アルキルが好ましい。アミノアルキルとして具体的には、たとえば、アミノメチル、アミノエチル、4-アミノブチル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、メチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル、などが挙げられる。
【0067】
本明細書における「ヒドロキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つ、または複数の水素が水酸基で置換された基を意味する。ヒドロキシアルキルとして、好ましくはヒドロキシC1-C6アルキルが挙げられる。ヒドロキシC1-C6アルキルとして具体的には、たとえば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、5-ヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
【0068】
本明細書における「ハロゲン由来の置換基」とは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、ヨウド(-I)などが挙げられる。
【0069】
本明細書における「酸素原子由来の置換基」として、ヒドロキシ(-OH)、オキシ(-OR)、カルボニル(-C(=O)-R)、カルボキシル(-CO2H)、オキシカルボニル(-C=O-OR)、カルボニルオキシ(-O-C=O-R)、チオカルボニル(-C(=O)-SR)、カルボニルチオ基(-S-C(=O)-R)、アミノカルボニル(-C(=O)-NHR)、カルボニルアミノ(-NH-C(=O)-R)、オキシカルボニルアミノ(-NH-C(=O)-OR)、スルホニルアミノ(-NH-SO2-R)、アミノスルホニル(-SO2-NHR)、スルファモイルアミノ(-NH-SO2-NHR)、チオカルボキシル(-C(=O)-SH)、カルボキシルカルボニル(-C(=O)-CO2H)が例示される。
【0070】
オキシ(-OR)の例としては、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシなどが挙げられる。
【0071】
カルボニル(-C(=O)-R)の例としては、ホルミル(-C(=O)-H)、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アラルキルカルボニルなどが挙げられる。
【0072】
オキシカルボニル(-C(=O)-OR)の例としては、アルキルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0073】
カルボニルオキシ(-O-C(=O)-R)の例としては、アルキルカルボニルオキシ、シクロアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アルキニルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アラルキルカルボニルオキシなどが挙げられる。
【0074】
チオカルボニル(-C(=O)-SR)の例としては、アルキルチオカルボニル、シクロアルキルチオカルボニル、アルケニルチオカルボニル、アルキニルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、ヘテロアリールチオカルボニル、アラルキルチオカルボニルなどが挙げられる。
【0075】
カルボニルチオ(-S-C(=O)-R)の例としては、アルキルカルボニルチオ、シクロアルキルカルボニルチオ、アルケニルカルボニルチオ、アルキニルカルボニルチオ、アリールカルボニルチオ、ヘテロアリールカルボニルチオ、アラルキルカルボニルチオなどが挙げられる。
【0076】
アミノカルボニル(-C(=O)-NHR)の例としては、アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニルなどが挙げられる。これらに加えて、-C(=O)-NHR中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0077】
カルボニルアミノ(-NH-C(=O)-R)の例としては、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アルケニルカルボニルアミノ、アルキニルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて-NH-C(=O)-R中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0078】
オキシカルボニルアミノ(-NH-C(=O)-OR)の例としては、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルコキシカルボニルアミノ、アルケニルオキシカルボニルアミノ、アルキニルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-C(=O)-OR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0079】
スルホニルアミノ(-NH-SO2-R)の例としては、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、アルケニルスルホニルアミノ、アルキニルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-SO2-R中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0080】
アミノスルホニル(-SO2-NHR)の例としては、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、アルケニルアミノスルホニル、アルキニルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、アラルキルアミノスルホニルなどが挙げられる。これらに加えて、-SO2-NHR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0081】
スルファモイルアミノ(-NH-SO2-NHR)の例としては、アルキルスルファモイルアミノ、シクロアルキルスルファモイルアミノ、アルケニルスルファモイルアミノ、アルキニルスルファモイルアミノ、アリールスルファモイルアミノ、ヘテロアリールスルファモイルアミノ、アラルキルスルファモイルアミノなどが挙げられる。さらに、-NH-SO2-NHR中のN原子と結合した2つのH原子はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびアラルキルからなる群より独立して選択される置換基で置換されていてもよく、またこれらの2つの置換基は環を形成しても良い。
【0082】
本明細書における「窒素原子由来の置換基」として、アジド(-N3、「アジド基」ともいう)、シアノ(-CN)、1級アミノ(-NH2)、2級アミノ(-NH-R)、3級アミノ(-NR(R’))、アミジノ(-C(=NH)-NH2)、置換アミジノ(-C(=NR)-NR’R’’)、グアニジノ(-NH-C(=NH)-NH2)、置換グアニジノ(-NR-C(=NR’’’)-NR’R’’)、アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR’R’’)が例示される。
【0083】
2級アミノ(-NH-R)の例としては、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノなどが挙げられる。
【0084】
3級アミノ(-NR(R’))の例としては、例えばアルキル(アラルキル)アミノなど、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択される、任意の2つの置換基を有するアミノ基が挙げられ、これらの任意の2つの置換基は環を形成しても良い。
【0085】
置換アミジノ(-C(=NR)-NR’R’’)の例としては、N原子上の3つの置換基R、R’、およびR’’が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、例えばアルキル(アラルキル)(アリール)アミジノなどが挙げられる。
【0086】
置換グアニジノ(-NR-C(=NR’’’)-NR’R’’)の例としては、R、R’、R’’、およびR’’’が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらが環を形成した基などが挙げられる。
【0087】
アミノカルボニルアミノ(-NR-C(=O)-NR’R’’)の例としては、R、R’、およびR’’が、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらは環を形成した基などが挙げられる。
【0088】
本明細書における「硫黄原子由来の置換基」として、チオール(-SH)、チオ(-S-R)、スルフィニル(-S(=O)-R)、スルホニル(-S(=O)2-R)、スルホ(-SO3H)、ペンタフルオロスルファニル(-SF5)が例示される。
【0089】
チオ(-S-R)の例としては、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオなどの中から選択される。
【0090】
スルフィニル(-S(=O)-R)の例としては、アルキルスルフィニル、シクロアルキルスルフィニル、アルケニルスルフィニル、アルキニルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アラルキルスルフィニルなどが挙げられる。
【0091】
スルホニル(-S(=O)2-R)の例としては、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アルキニルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アラルキルスルホニルなどが挙げられる。
【0092】
本明細書における「ホウ素原子由来の置換基」は、ボリル(-BR(R’))、ジオキシボリル(-B(OR)(OR’))、およびトリフルオロボレート塩(-BF3
-)などが例示される。具体的には、これらの2つの置換基RおよびR’が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択される置換基である「ホウ素原子由来の置換基」であるか、あるいはこれら2つの置換基RおよびR’が、RおよびR’がそれぞれ結合している原子と一緒になって環を形成した「ホウ素原子由来の置換基」、即ち環状ボリル基が例示される。
【0093】
好ましい「ホウ素原子由来の置換基」は、環状ボリル基が例示される。
【0094】
環状ボリル基として、より具体的には、ピナコラートボリル基、ネオペンタンジオラートボリル基、カテコラートボリル基、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン-9-イル基などが挙げられる。
【0095】
本明細書において「保護されていてもよい」とは、ある基が任意の保護基によって保護されていてもよいことを意味する。
【0096】
本明細書における「アミノ基の保護基」には、カルバメート型の保護基、アミド型の保護基、アリールスルホンアミド型の保護基、アルキルアミン型の保護基、イミド型の保護基などが挙げられる。具体的には、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、t-ブトキシカルボニル(Boc)基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)基、トリエチルシリルオキシカルボニル(Teoc)基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、フタロイル基、ベンゼンスルホニル基、トシル基、ノシル基、ジニトロノシル基、t-ブチル基、トリチル基、クミル基、ベンジリデン基、4-メトキシベンジリデン基、ジフェニルメチリデン基などが例示される。
【0097】
本明細書において「ヒドロキシの保護基」には、アルキルエーテル型の保護基、アラルキルエーテル型の保護基、シリルエーテル型、炭酸エステル型の保護基などが挙げられる。ヒドロキシの保護基として具体的には、メトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基、アリル基、2,2,2-トリクロロエチル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基、メトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基などが例示される。
【0098】
保護基の選択および脱着操作は、当業者であれば適宜行うことができる。保護基の選択および脱着操作は、例えば、「Greene’s,“Protective Groups in Organic Synthesis”(第5版,John Wiley & Sons 2014)」に記載の方法を参照し、反応条件に応じて適宜採用すればよい。
【0099】
化合物の構造変換反応は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure(第8版、John Wiley & Sons, Inc. 2019年)やR. C. Laroch著、Comprehensive Organic Transformations(第3版、John Wiley & Sons, Inc. 2018年)に記載の方法を参照し、反応条件に応じて適宜採用すればよい。
【0100】
C1-C6一級アルキル化剤は、1~6個の炭素原子を有し、ホルミル基またはシアノ基がC1-C5アルキル基に結合したアルキル化剤であればよく、好ましくはC1-C5アルデヒドまたはC1-C5アルキルニトリルが例示される。C1-C5アルデヒドの具体例は、アセトアルデヒド、プロパナール、1-ブタナール、1-ペンタナール、3-メチルブタナール、1-ヘキサナール、4-メチルペンタナール、および3,3-ジメチルブタナールである。C1-C5アルキルニトリルの具体例は、アセトニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリル、n-ペンチルニトリル(1-シアノペンタン)、3-メチルブチロニトリル、バレロニトリル(1-シアノブタン)、イソバレロニトリル(1-シアノ-2-メチルプロパン)が挙げられる。
【0101】
本明細書において、「置換メチルハライド」とは、メチルハライド(ハロゲン化メチル)の炭素上の水素の1つが、他の原子あるいは官能基で置換されたメチルハライドを意味する。置換メチルハライドとして、アルコキシメチルハライド、アルコキシアルコキシメチルハライド、トリアルキルシリルアルコキシメチルハライドが例示される。好ましくは、置換メチルクロリドが例示される。置換メチルクロリドの具体例は、MOM-Cl(メトキシメチルクロリド)、EOM-Cl(エトキシメチルクロリド)、MEM-Cl(2-メトキシエトキシメチルクロリド)、SEM-Cl(2―(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド)が挙げられる。
【0102】
C1-C6一級アルキル化剤または置換メチルハライドの使用量は、出発アミノ酸またはそのエステル1モルに対して、1.0~20.0モルの範囲、1.5~15.0モルの範囲、2.0~10.0モルの範囲、または2.5~5.0モルの範囲であってよい。
【0103】
ヒドリド還元剤は、基質に対してヒドリド(H-)を供与し、カルボニル基やニトリル基などを還元させるものであればよい。ヒドリド還元剤は、ケイ素を含むヒドリド還元剤が好ましく、トリアルキルシランがより好ましく、トリエチルシランが最も好ましい。
【0104】
ヒドリド還元剤の使用量は、出発アミノ酸またはそのエステル、もしくは出発ペプチドまたはそのエステル1モルに対して、1.0~20.0モルの範囲、1.0~15.0モルの範囲、1.0~10.0モルの範囲、または1.2~5.0モルの範囲であってよい。
【0105】
触媒は、一級アミノ基のアルキル化を促進し、反応速度を向上させるものであればよい。触媒は、遷移金属を含む不均一系水素化触媒が好ましく、適当な担体に担持された遷移金属がより好ましい。遷移金属は、好ましくは、Pd、RhおよびPtからなる群から選択される少なくとも1つを含む。担体に担持された遷移金属を含む触媒の具体例としては、パラジウム炭素(Pd-C)、水酸化パラジウム炭素(Pd(OH)2-C)、ロジウム炭素(Rh-C)、およびアダムス触媒が挙げられる。触媒が担体に担持された遷移金属を含むと、取り扱いやすく、より簡便な条件で反応を実施できる。
【0106】
触媒の使用量は、出発アミノ酸またはそのエステル、もしくは出発ペプチドまたはそのエステル1モルに対して、0.001~0.5モルの範囲、0.005~0.4モルの範囲、0.01~0.4モルの範囲、または0.03~0.1の範囲モルであってよい。
【0107】
上記工程は、密閉された反応容器内で行われる。上記工程において、反応容器内の気相は、水素ガスのみで構成されていてもよく、所望の反応を抑制しない範囲で不活性ガスが混じっていてもよい。反応容器内の水素ガスの圧力(分圧)は、1気圧以上、1気圧以上10気圧以下の範囲、1気圧以上7気圧以下の範囲、1気圧以上6気圧以下の範囲、または1気圧以上5気圧以下の範囲であってよい。約1気圧の圧力下で反応を行う場合には、例えば、ゴムまたはビニール製の風船を反応容器に取り付けて、風船内を水素ガスで置換して行う方法がよく知られている。本工程において、反応液を激しく撹拌させると、気相の水素ガスとの接触頻度が増加し、反応速度が向上し得る。
【0108】
出発アミノ酸またはそのエステル、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、触媒、ならびに水素を溶媒中で接触させた後の混合物に、追加の水素ガスを接触させてもよい。反応混合物に追加の水素ガスを接触させる方法は、反応容器に水素を送気して追加する方法、反応容器内を減圧下で脱気後に反応容器内に水素を加える方法、反応容器内を減圧下で脱気後に反応容器内を窒素で置換し再び減圧下で脱気後に反応容器内を水素で置換する方法などにより、追加の水素を反応容器内に加えることで行うことができる。追加の水素ガスを接触させる回数は、反応の進行具合に依存し、1回~10回の範囲、1回~5回の範囲、1回~3回の範囲で行うことができる。反応開始から、追加の水素ガスを接触させるまでの時間は、10分~5時間の範囲、20分~3時間の範囲、10分~2時間の範囲で行うことができる。追加の水素ガスを接触させるために、反応容器を開けた際に反応を効率よく制御する目的で追加の試薬を加えることもできる。追加する試薬は、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、触媒、溶媒、酸、塩基などが例示される。
【0109】
水素ガスの代替として、ヒドリド還元剤を用いることができる。また、反応の進行具合により、ヒドリド還元剤を追加して反応容器に加えることができる。
【0110】
溶媒は、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびエステル系溶媒からなる群から選択される少なくとも1つの溶媒を含む。溶媒は、好ましくは、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、およびこれらの混合溶媒からなる群から選択される。
【0111】
エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン(DME)、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジイソプロピルエーテル(IPE)、4-メチルテトロヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、およびこれらの組合せが挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、およびこれらの組合せが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、およびこれらの組合せが挙げられる。本工程では、上記の溶媒を適宜組み合せて、任意の割合で混合して用いてもよい。
【0112】
溶媒の使用量は、出発アミノ酸またはそのエステル1モルに対して、1~100mLの範囲、3~75mLの範囲、5~50mLの範囲、または7~25mLの範囲であってよい。
【0113】
アルキル化工程で出発アミノ酸Aを原料として使用する場合、反応液に塩基を添加することが好ましい。反応液に塩基を添加することにより、ジアルキル化体及び副生成物の割合が低下し、モノアルキル化選択性がさらに向上し得る。出発アミノ酸Bを原料として使用する場合、脱保護反応後のN-アルキル化工程で、反応液に塩基を添加することが好ましい。
【0114】
塩基は、有機塩基であっても無機塩基であってもよい。塩基は、好ましくは三級アミンであり、より好ましくは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、N-メチルモルホリン(NMM)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン(TEA)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピリジンおよびコリジンである。
【0115】
塩基の使用量は、出発アミノ酸またはそのエステル1モルに対して、0.01~20.0モルの範囲、0.03~15.0モルの範囲、0.05~10.0モルの範囲、または0.7~5.0モルの範囲であってよい。塩基の使用量が上記範囲であると、モノアルキル化選択性の向上効果がより顕著となる。
【0116】
アルキル化工程で出発アミノ酸Bを原料として使用する場合、反応液に酸を添加することが好ましい。反応液に酸を添加することにより、副生成物の割合が低下し、目的のN-モノアルキルアミノ酸またはそのエステル(C)をより効率よく得ることができる。
【0117】
酸は、一級アミノ基に結合した保護基を効率よく除去できるものであればよい。酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸(TsOH)、メタンスルホン酸(MsOH)、硫酸水素ナトリウム、トリエチルアミン塩酸塩およびプロピルホスホン酸が挙げられる。酸は、水和物または任意の溶液の形態で使用してもよい。
【0118】
酸の使用量は、出発アミノ酸またはそのエステル1モルに対して、0.1~10.0モル、0.3~7.0モル、0.5~5.0モル、または0.7~3.0モルであってよい。
【0119】
反応温度は、-40℃~溶媒の沸点付近の範囲で行うことができ、-20℃~50℃の範囲または0℃~30℃の範囲で行うことができる。
【0120】
反応時間は、5分~72時間の範囲で行うことができ、10分~48時間の範囲または10分~24時間の範囲で行うことができる。
【0121】
アルキル化工程の後、当業者に周知な方法で、得られたN-モノアルキルアミノ酸またはそのエステルを対応する塩または溶媒和物に変換することもできる。
【0122】
本発明の第二実施形態は、一局面において、N-モノアルキルアミノ酸残基を含むペプチドまたはそのエステルの製造方法であって、水素の存在下、出発アミノ酸残基を含むペプチドまたはそのエステル、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、該アルキル化工程が、1気圧以上の圧力下で行われ、かつ、該出発アミノ酸残基のアミノ基にC1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸残基を含むペプチドまたはそのエステルを生成させる、方法である。
【0123】
本発明の別の第二実施形態は、その一局面において、N-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルの製造方法であって、出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、ヒドリド還元剤および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、該アルキル化工程が、該出発アミノ酸残基のアミノ基にC1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルを生成させる、方法である。
【0124】
本実施形態に係るアルキル化工程は、式Dで表されるペプチドまたはそのエステル(出発ペプチドDともいう。)を選択的にN-モノアルキル化することにより、式Fで表されるN-モノアルキルアミノ酸残基を含むペプチドまたはそのエステルを得る方法と、式Eで表されるN-保護ペプチドまたはそのエステル(出発ペプチドEともいう。)の脱保護反応とN-アルキル化反応をワンポットで行うことにより、式Fで表されるペプチドまたはそのエステルを得る方法を包含する。以下に、本実施形態に係る方法の概要を示す。
【化12】
【0125】
上記の化学式中、R3はペプチドのN末端のアミノ酸残基の側鎖を表わし、PG2はアミノ基の保護基を表わし、R4はN末端アミノ酸残基に結合しているペプチド鎖を表わす。便宜上、上記の反応式では、出発ペプチドDおよびEをα-アミノ酸の形態で例示しているが、β-アミノ酸またはγ-アミノ酸であってもよい。また、上記の反応式においては、N末端のアミノ酸残基の側鎖R3およびペプチド鎖R4は、好ましくは、アルキル化工程の条件によりアルキル化反応または還元反応などにより、意図しない構造変換をされうる官能基を有しない。R3および/またはR4がアルキル化工程の条件により意図しない構造変換を受けうる官能基を有する場合には、該官能基にあらかじめ保護基を導入してからアルキル化工程を行うことで、目的物を製造することができる。
【0126】
R3は、例えば、水素原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルキル基、C3-C6シクロアルキルC1-C6アルキル基、カルボキシC1-C6アルキル基、アリール上に置換基を有していてもよいC6-C10アリールC1-C6アルキル基、ヘテロアリール上に置換基を有していてもよい5~10員ヘテロアリールC1-C6アルキル基、ヘテロシクリル上に置換基を有していてもよい5~10員ヘテロシクリルC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルコキシC1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルコキシC1-C6アルキル基、保護されたアミノC3-C6アルキル基、保護されたヒドロキシC1-C6アルキル基、またはC1-C6アルコキシC1-C6アルキル基から選択される。
【0127】
R4は、N-アルキルアミノ酸残基を含んでいてもよい、アミノ酸が2残基以上のペプチド鎖であってよい。R4に含まれるアミノ酸残基の側鎖は、アルキル化工程の条件によりアルキル化反応または還元反応などにより、意図しない構造変換をされうる官能基を有しない側鎖を持つアミノ酸であってもよい。また、R4に含まれるアミノ酸残基の側鎖は、アルキル化工程の条件によりアルキル化反応または還元反応により意図しない構造変換を受けうる官能基を有する場合には、該官能基にあらかじめ保護基が導入された側鎖を持つアミノ酸であってもよい。このような側鎖は、例えば、水素原子、C1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルキル基、C3-C6シクロアルキルC1-C6アルキル基、カルボキシC1-C6アルキル基、アリール上に置換基を有していてもよいC6-C10アリールC1-C6アルキル基、ヘテロアリール上に置換基を有していてもよい5~10員ヘテロアリールC1-C6アルキル基、ヘテロシクリル上に置換基を有していてもよい5~10員ヘテロシクリルC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルコキシC1-C6アルキル基、ハロC1-C6アルコキシC1-C6アルキル基、保護されたアミノC3-C6アルキル基、保護されたヒドロキシC1-C6アルキル基、またはC1-C6アルコキシC1-C6アルキル基から選択される。
【0128】
第二実施形態におけるアルキル化工程の反応条件は、上記第一実施形態に記載の反応条件の「出発アミノ酸」を「出発アミノ酸を含むペプチド」(本明細書において、「出発ペプチド」ともいう。)に読み替えて参照することができる。
【0129】
本発明の第三実施形態は、第一実施形態で得られるN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステル(式C参照)、または第二実施形態で得られるN-モノアルキルアミノ酸残基を有するペプチドもしくはそのエステル(式F参照)を出発物質として使用し、任意で1つまたは複数のアミノ酸を結合形成反応(例えば、ペプチド結合形成反応)によって伸長させて、所望のペプチドまたはそのエステルを得る工程を含む、ペプチドもしくはそのエステルの製造方法である。また、前記製造方法により得られたペプチド(環化前駆ペプチド、すなわち直鎖状のペプチド)またはそのエステルのC末端側の基とN末端側の基とで環化して環状部を形成する工程を追加で含む、少なくとも4個のアミノ酸より構成される環状部を有するペプチドもしくはそのエステルの製造方法も本実施形態に含めることができる。
【0130】
ペプチドの主鎖を伸長させる工程において、第一実施形態で得られるN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステル(式C参照)を出発物質として使用する場合には、環状部を形成するためにペプチドの主鎖の伸長が必須であるが、第二実施形態で得られるN-モノアルキルアミノ酸残基を有するペプチドもしくはそのエステル(式F参照)を出発物質として使用する場合は、必ずしもそのペプチドの主鎖を伸長させる必要はない。目的の環状部を有するペプチドの化学構造に応じて、当業者は本工程を実施するかどうかを適宜選択することができる。
【0131】
本実施形態に係る方法によれば、少なくとも4個のアミノ酸より構成される環状部を有するペプチドもしくはそのエステルを製造することができる。本実施形態に係る方法は、少なくとも8個のアミノ酸により構成される環状部を有し、8~15個のアミノ酸により構成されるペプチドもしくはそのエステルの製造により適している。本実施形態において得られるペプチドもしくはそのエステルは、N-アルキルアミノ酸残基を5個以上、6個以上または7個以上含んでいてよい。
【0132】
ペプチド鎖の結合形成反応による伸長、ペプチド結合形成反応は、例えば、Biopolym. Pept. Sci. 2000, 55, 227-250、またはW. M. Husseinら著、Peptide Synthesis Methods and Protocols (Humana Press、2020年)などを参照し、当業者に周知の方法で実施することができる。
【0133】
環状部を形成する工程では、上記で得られた環化前駆ペプチドまたは第二実施形態で得られるN-モノアルキルアミノ酸残基を有するペプチドもしくはそのエステルにおけるペプチドの主鎖のC末端側の基とN末端側の基とを反応させて、環状部を形成させる工程である。C末端側の基とN末端側の基は、互いに有機結合を形成できる組合せであればよい。
【0134】
好ましい組合せは、C末端側の基がカルボキシ基であり、N末端側の基がアミノ基である組合せである。この場合、環状部を形成させる工程は、縮合反応(ペプチド結合形成反応)であり得る。縮合反応の条件は、当業者に周知の条件を採用することができ、例えば、縮合剤の存在下、溶媒中で撹拌することが挙げられる。環化に用いられるカルボキシル基やアミノ基等の位置は、主鎖上のものでも、側鎖上のものでもよく、環化可能な位置にあれば、特に制限されない。
【0135】
縮合剤としては、カルボキシ基とアミノ基を結合させて、ペプチド結合を形成できるものであればよい。縮合剤として具体的には、たとえば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)等のカルボジイミド系縮合剤、ジフェニルリン酸アジド(DPPA)等のリン酸アジド系縮合剤、BOP試薬、PyBOP試薬等のホスホニウム系縮合剤、TBTU、HBTU、TATU、HATU等のウロニウム系縮合剤、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム テトラフルオロボレート(DMT-MM)、T3P(プロピルホスホン酸無水物)が挙げられる。
【0136】
縮合反応において、反応混合物にさらに添加剤を加えてもよい。添加剤としては、たとえば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3-ヒドロキシ-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(HOOBt)、エチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセタート(Oxyma)などが挙げられる。
【0137】
本発明の第四実施形態は、N-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステル(式C参照)またはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル(式F参照)の製造方法において、水素の存在下、上記出発アミノ酸AもしくはBまたは上記出発ペプチドDもしくはE、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライド、および触媒を溶媒中で混合するアルキル化工程を含み、アルキル化工程が、1気圧以上の圧力下で行われ、かつ、出発アミノ酸AもしくはBのアミノ基に、C1-C6一級アルキル化剤もしくは置換メチルハライドに対応する一級アルキル基が結合したN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステル(式C参照)またはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル(式F参照)を生成させるものであり、出発アミノ酸もしくはそのエステルまたは前記出発アミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルのアミノ基がジアルキル化された化合物の生成の抑制方法である。
【0138】
本実施形態では、第一または第二実施形態に記載した定義を参照することができる。上記アルキル化工程によれば、ジアルキル化体の生成を抑制することができる。
【0139】
さらに、アルキル化工程で得られたN-モノアルキルアミノ酸もしくはそのエステル(式C参照)またはN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステル(式F参照)を出発物質として、追加で結合形成反応を行い、そのペプチドの主鎖を伸長させた後、得られたペプチドを酸性水溶液で処理する工程を行うことにより、生じたジアルキル化された化合物を容易に除去することもできる。
【0140】
ある態様において、直鎖状のペプチドは、
【化13】
で表される直鎖状のペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。
【0141】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状部を有するペプチドは、下記式(1):
【化14】
で表される環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物である。上記式(1)で表される環状部を有するペプチドは、溶媒和物であることが好ましく、水和物、DMSO-水和物、アセトン-水和物、またはDMSO溶媒和物であることがより好ましく、水和物がさらに好ましい。国際公開第2021/090855号にも記載されているように、上記式(1)で表される環状部を有するペプチドは、KRAS阻害剤として有用であり、種々のKRASに関連した疾病、たとえばKRASに関連したがんに使用されうる。
【0142】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の単離および/または精製には、カラムクロマトグラフィーを用いないことが好ましい。
【0143】
本発明の方法により製造される環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、カラムクロマトグラフィーに代えて、例えば、晶析により結晶化することにより、単離および/または精製することができる。具体的には、例えば、縮合反応後の反応溶液を分液操作に供し、必要に応じて有機層を濃縮、および/またはろ過した後、得られた残渣に晶析に適した溶媒を加え、任意で種晶を加えて、必要に応じて攪拌することで、環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶を得ることができる。晶析の際に添加される溶媒は、環状部を有するペプチドが結晶を形成することができる溶媒であれば特に制限はないが、環状部を有するペプチドが溶解した溶液に対し、環状部を有するペプチドの溶解度を低下させる操作を行うことのできる溶媒が好ましい。例えば貧溶媒の添加や溶液の冷却により、環状部を有するペプチドの溶解度を低下させて結晶化が可能な場合は、そのような操作が可能な溶媒が例示される。また、環状部を有するペプチドの粗結晶を懸濁液状態下、任意の時間懸濁状態を保つことで環状部を有するペプチドの結晶を得ることができる場合は、そのような操作が可能な溶媒を、結晶化に用いることができる。晶析の際に添加される溶媒として、具体的には、例えば、アセトン、水、DMSO、アセトニトリル、またはエタノール、およびこれらの混合溶媒などが挙げられる。この晶析はN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドもしくはそのエステルにも適用することができる。
【0144】
ある態様において、本発明の方法により製造される環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶は、上記式(1)で表される環状部を有するペプチドの非溶媒和物結晶、溶媒和物結晶、塩の結晶、または塩の溶媒和物結晶であることができる。ある態様において、非溶媒和物結晶(無溶媒和結晶)は、溶媒和結晶、または水和物結晶でない結晶を指すことがある。上記式(1)で表される環状部を有するペプチド、もしくはその塩またはそれらの溶媒和物の結晶は溶媒和物結晶であることが好ましく、水和物結晶であることがより好ましい。
【実施例】
【0145】
以下に実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。実施例で使用される略語は、有機化学分野における一般的な意味で理解されるべきであり、以下に例を示す。
Bn:ベンジル
Boc:t-ブトキシカルボニル
Cbz:ベンジルオキシカルボニル
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
DABCO:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBN:1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7
DCHA:ジシクロヘキシルアミン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DKP:ジケトピペラジン
DMA:ジメチルアセトアミド
DMI:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン
DMSO:ジメチルスルホキシド
EOM-Cl:エトキシメチルクロリド
HATU:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
1H-NMRスペクトル:プロトン核磁気共鳴スペクトル
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
i-:イソ
LCMS:液体クロマトグラフィー及び質量スペクトル
MEM-Cl:2-メトキシエトキシメチルクロリド
MOM-Cl:メトキシメチルクロリド
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
n-:ノルマル
NMM:N-メチルモルホリン
PFP:ペンタフルオロフェニル
s-:セカンダリー
SEM-Cl:2-(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド
tBu:ターシャリーブチル
TEA:トリエチルアミン
Teoc:2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル
t-:ターシャリー
THF:テトラヒドロフラン
TMSCl:クロロトリメチルシラン
TsOH・H2O:パラトルエンスルホン酸一水和物
Sar:サルコシン
【0146】
1H-NMRスペクトルは核磁気共鳴装置JNM-ECZ500(日本電子社製)を用いて測定し、内部標準物質として用いたテトラメチルシランのケミカルシフトを0ppmとし、サンプル溶媒からの重水素ロック信号を参照した。分析対象化合物のシグナルのケミカルシフトはppmで表記した。シグナルの分裂の略語は、s:シングレット、brs:ブロードシングレット、d:ダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、dd:ダブルダブレット、m:マルチプレットで表記し、シグナルの分裂幅はJ値(Hz)で表記した。シグナルの積分値は各シグナルの面積強度の比をもとに算出した。
【0147】
HPLC分析にはWaters社製H-Classシステムを使用し、PDA検出器を用い、化合物4の検出では220nmの波長で、その他の化合物の検出では210nmの波長で測定した。実施例に用いた各基質の反応性・選択性・純度は以下の表1に示す分析法で評価した。LCMS分析には、化合物3、4、11および12の検出にはSQD2を用い、その他の化合物の検出ではQDa検出器を用いた。
【表1】
【0148】
結晶の融点は、以下の条件で実施した熱分析により測定した。
【0149】
(測定条件1)
測定装置:TGA/DSC3+(Mettler Toledo製)
昇温速度:10℃/分
雰囲気:乾燥窒素
【0150】
(原料合成1)H-Phe-OtBuの調製
【化15】
分液ロート中でt-ブチル L-フェニルアラニネート塩酸塩(15.05g、58.2mmol)を2-メチルテトラヒドロフラン(200mL)に懸濁させ、5%炭酸ナトリウム水溶液(150mL)を加えて混合した。固体は徐々に溶解した。5%食塩水(約10mL)を混合液中に加えた。水層を排出し、有機層を再度5%炭酸ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄した。水層を排出し、得られた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧条件下で重量変化がなくなるまで濃縮してt-ブチル L-フェニルアラニネート(以下、化合物1ともいう。)を得た(12.43g、収率97%)。
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.72分
1H-NMR(500MHz, DMSO-d
6) δ:1.32(9H, s), 1.66(2H, bs),2.79(2H, m), 3.44(1H, t, J=6.9Hz), 7.19-7.21(3H, m), 7.25-7.28(2H, m)
質量分析:m/z 166.17([M-tBu+H]
+)
【0151】
(実施例1)H-Phe-OtBuのモノメチル化反応への塩基の添加効果の評価
【化16】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のメタノール溶液(20mL/g基質、2.0mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、37%ホルムアルデヒド水溶液(33.4μL、0.452mmol、1.0eq.)を加え、塩基を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から3時間後と6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。結果を表2に示す。
【表2】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.82分(化合物1)、2.93分(化合物1-A)、3.05分(化合物1-B)
質量分析:m/z 236.31(化合物1-A、[M+H]
+)、250.30(化合物1-B、[M+H]
+)
【0152】
(実施例2)H-Phe-OtBuのモノメチル化反応
【化17】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のメタノール溶液(20mL/g基質、2.0mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、37%ホルムアルデヒド水溶液(67μL、0.904mmol、2.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から3時間と11時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。また、窒素で置換する前にDBU(6.7μL、0.045mmol、0.1eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表3に示す。
【表3】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.44分(化合物1)、2.54分(化合物1-A)、2.66分(化合物1-B)
質量分析:m/z 236.31(化合物1-A、[M+H]
+)、250.32(化合物1-B、[M+H]
+)
【0153】
(実施例3)H-Phe-OtBuのアセトアルデヒドを用いたモノエチル化反応
【化18】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のエタノール溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、アセトアルデヒド(51μL、0.904mmol、2.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から3時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率及び不純物の量を確認した。また、窒素で置換する前にDBU(6.7μL、0.045mmol、0.1eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表4に示す。
【表4】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.43分(化合物1)、2.63分(化合物1-C)、2.85分(化合物1-D)
質量分析:m/z 250.31(化合物1-C、[M+H]
+)、278.33(化合物1-D、[M+H]
+)
【0154】
(実施例4)H-Phe-OtBuのアセトニトリルを用いたモノエチル化反応
【化19】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のエタノール溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、アセトニトリル(236μL、4.52mmol、10.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換して、30℃で撹拌した。水素置換から5時間後と11時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。また、窒素で置換する前にDBU(6.7μL、0.045mmol、0.1eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表5に示す。
【表5】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.61分(化合物1)、2.83分(化合物1-C)、3.06分(化合物1-D)
質量分析:m/z 250.09(化合物1-C、[M+H]
+)、278.06(化合物1-D、[M+H]
+)
【0155】
(実施例5)H-Phe-OtBuのプロパナールを用いたモノプロピル化反応
【化20】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のエタノール溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、プロパナール(65μL、0.904mmol、2.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から3時間後と6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率及び不純物の量を確認した。また、窒素で置換する前にDBU(6.7μL、0.045mmol、0.1eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表6に示す。
【表6】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.42分(化合物1)、2.82分(化合物1-E)、3.27分(化合物1-F)
質量分析:m/z 264.36(化合物1-E、[M+H]
+)、306.38(化合物1-F、[M+H]
+)
【0156】
(実施例6)H-Phe-OtBuのプロピオニトリルを用いたモノプロピル化反応
【化21】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のエタノール溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、プロピオニトリル(322μL、4.52mmol、10.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から8時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。結果を表7に示す。
【表7】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.69分(化合物1)、3.11分(化合物1-E)、3.58分(化合物1-F)
質量分析:m/z 264.29(化合物1-E、[M+H]
+)、306.31(化合物1-F、[M+H]
+)
【0157】
(実施例7)H-Phe-OtBuのブタナールを用いたモノブチル化反応
【化22】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のエタノール溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、ブタナール(81μL、0.904mmol、2.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から3時間後と6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率及び不純物の量を確認した。また、窒素で置換する前にDBU(6.7μL、0.045mmol、0.1eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表8に示す。
【表8】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.42分(化合物1)、3.04分(化合物1-G)、3.68分(化合物1-H)
質量分析:m/z 278.35(化合物1-G、[M+H]
+)、334.43(化合物1-H、[M+H]
+)
【0158】
(実施例8)H-Phe-OtBuのブチロニトリルを用いたモノブチル化反応
【化23】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、96mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物1のエタノール溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.452mmol)を加えた。得られた混合物に、ブチロニトリル(393μL、4.52mmol、10.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から5時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。結果を表9に示す。
【表9】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.67分(化合物1)、3.32分(化合物1-G)、3.99分(化合物1-H)
質量分析:m/z 278.30(化合物1-G、[M+H]
+)、334.39(化合物1-H、[M+H]
+)
【0159】
(実施例9)H-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2
のプロパナールを用いたモノプロピル化反応
【化24】
撹拌子を入れたバイアルに5%パラジウム炭素(50%wet、48mg、0.011mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物2のエタノール溶液(10mL/g基質、0.75mL、0.228mmol)を加えた。得られた混合物に、プロパナール(82μL、1.138mmol、5.0eq.)を加えた。バイアルを耐圧容器に入れ、バイアル中の反応液を撹拌しながら耐圧容器中の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換してから6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率及び不純物の量を確認した。また、窒素で置換する前にTEA(63.5μL、0.455mmol、2.0eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表10に示す。
【表10】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.06分(化合物2)、2.41分(化合物2-E)、2.77分(化合物2-F)
質量分析:m/z 372.68(化合物2-E、[M+H]
+)、414.65(化合物2-F、[M+H]
+)
【0160】
(実施例10)H-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2
のブタナールを用いたモノブチル化反応
【化25】
撹拌子を入れたバイアルに5%パラジウム炭素(50%wet、48mg、0.011mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物2のエタノール溶液(10mL/g基質、0.75mL、0.228mmol)を加えた。得られた混合物に、ブタナール(103μL、1.138mmol、5.0eq.)を加えた。その後、そのバイアルを耐圧容器に入れ、耐圧容器内で撹拌しながら耐圧容器中の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換してから6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率及び不純物の量を確認した。また、窒素で置換する前にTEA(63.5μL、0.455mmol、2.0eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表11に示す。
【表11】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.06分(化合物2)、2.64分(化合物2-G)、3.22分(化合物2-H)
質量分析:m/z 386.71(化合物2-G、[M+H]
+)、442.87(化合物-H、[M+H]
+)
【0161】
(実施例11)Cbz-Phe-OtBuの脱保護とモノエチル化反応の同one-pot実施
【化26】
撹拌子を入れたフラスコ又はバイアルに5%パラジウム炭素(50%wet、120mg、0.028mmol、5mol%金属Pd基準)とp-トルエンスルホン酸(107mg、0.563mmol、1.0eq.)を加えた。得られた混合物に、化合物P1のTHF溶液(10mL/g基質、2.0mL、0.563mmol)とアセトニトリル(294μL、5.63mmol、10.0eq.)を順次加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換して30℃で撹拌した。水素圧が1気圧の場合、水素を充填した風船を用いて水素を供給した。水素圧が3.5気圧または5.5気圧である条件では、反応液が入ったバイアルを耐圧容器に入れ、耐圧容器内を窒素置換後、水素置換を行った。水素置換してから10時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。結果を表12に示す。
【表12】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:2.61分(化合物1)、2.83分(化合物1-C)、3.06分(化合物1-D)
質量分析:m/z 250.09(化合物1-C、[M+H]
+)、278.06(化合物1-D、[M+H]
+)
【0162】
(原料合成2)Cbz-Asp(OtBu)-NMe
2
の合成
【化27】
窒素置換した200mLフラスコに化合物P4(3.55g、10.4mmol)及び2-メチルテトラヒドロフラン(32mL、30eq.)を加えた。フラスコを氷浴で冷却しながら、得られた混合物に、ジメチルアミンのTHF溶液(2.0M、7.8mL、15.6mmol、1.5eq.)及びDIPEA(6.2mL、36.4mmol、3.5eq.)を順次加えた。その後、プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(1.6M、16.3mL、26.0mmol、2.5eq.)を混合物に滴下した。滴下中の内温は15.0~26.0℃であった。滴下終了後、室温で1.5時間撹拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。フラスコを氷浴で冷却しながら5%硫酸水素ナトリウム水溶液(20mL)をゆっくりと加えた。15分撹拌後、反応液全量を分液ロートに移送し、静置後、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を有機層に加え、よく振った後静置し、水層を除去した。5%炭酸カリウム水溶液(20mL)を有機層に加え、よく振った後静置し、水層を除去した。5%炭酸カリウム水溶液(20mL)による分液洗浄をもう1回繰り返した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、3.9gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物P5を得た(3.48g、収率95%)。
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method A
保持時間:3.83分
質量分析:m/z 295.21([M-tBu+H]
+)
【0163】
(実施例12)Cbz-Asp(OtBu)-NMe
2
の脱保護とモノプロピル化反応のone-pot実施
【化28】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、60mg、0.014mmol、5mol%金属Pd基準)と化合物P5のエタノール溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.285mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して脱保護反応を行った。3時間後に減圧条件で脱気し、プロパナール(41μL、0.571mmol、2.0eq.)を加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換した。水素置換から4時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率及び不純物の量を確認した。また、プロパナールを加える直前にDBU(4.3μL、0.029mmol、0.1eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表13に示す。
【表13】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:3.57分(化合物P5)、1.69分(化合物5)、2.04分(化合物5-E)、2.49分(化合物5-F)
質量分析:m/z 295.23(化合物P5、[M-tBu+H]
+)、259.32(化合物5-E、[M+H]
+)、301.35(化合物5-F、[M+H]
+)
【0164】
(原料合成3)Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化29】
2Lフラスコに化合物P6(30.36g、96mmol)とt-ブチル サルコシネート塩酸塩(20.87g、115mmol、1.2eq.)を加え、フラスコ内の気相を窒素で置換した。2-メチルテトラヒドロフラン(290mL、30eq.)を加え、外温15℃まで冷却し、DIPEA(88mL、517mmol、5.4eq.)を滴下ロートから滴下した。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(1.6M、132mL、211mmol、2.2eq.)を滴下ロートから1時間20分かけて滴下した。滴下中の内温は15.0~17.4℃だった。滴下終了後1時間後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(180mL)を滴下ロートからゆっくりと加えた。滴下時の内温は30.3℃以下を保持した。滴下終了後、外温を23℃に設定した。15分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(180mL)を有機層に加え、10分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(180mL)による分液洗浄をもう1回繰り返した。5%炭酸ナトリウム水溶液(180mL)を有機層に加え、10分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮し、44.93gの粗生成物を得た。得られた粗生成物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物P7を得た。
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:3.80分
質量分析:m/z 385.34([M-tBu+H]
+)
【0165】
(実施例13)Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuの脱保護とモノエチル化反応のone-pot実施:TsOHの添加によるDKP形成の抑制効果
【化30】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50%wet、48mg、0.011mmol、5mol%金属Pd基準)とTsOH・H
2O(43mg、0.227mmol、1.0eq.)を加えた。得られた混合物に、化合物P7の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(10mL/g基質、1.0mL、0.227mmol)とアセトニトリル(119μL、2.27mmol、10.0eq.)を順次加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換し、25℃で撹拌した。水素置換から6時間後又は10.5時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。また、窒素で置換する前にTsOH・H
2O(43mg、0.227mmol、1.0eq.)を添加した以外は同様にして、反応を行った。結果を表14に示す。
【表14】
測定方法:HPLC Method B
保持時間:1.66分(化合物7-DKP)、2.23分(化合物7)、2.32分(化合物7-C)、2.46分(化合物7-D)
質量分析:m/z 233.26(化合物7-DKP、[M+H]
+)、307.26(化合物7、[M+H]
+)、335.34(化合物7-C、[M+H]
+)、363.38(化合物7-D、[M+H]
+)
【0166】
(実施例14)Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuの脱保護とモノエチル化反応のone-pot実施
【化31】
撹拌子を入れたフラスコ又は耐圧反応容器に5%パラジウム炭素(50%wet、97mg、0.023mmol、5mol%金属Pd基準)とp-トルエンスルホン酸(86mg、0.454mmol、1.0eq.)を加えた。化合物P7の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(10mL/g基質、2.0mL、0.454mmol)とアセトニトリル(237μL、4.54mmol、10.0eq.)を順次加えた。撹拌しながらフラスコ内の気相を窒素で置換し、水素で再置換し、30℃で反応を行った。水素圧が1気圧の場合、水素を充填した風船を用いて水素を供給した。水素圧が5.5気圧の場合、反応液が入ったバイアルを耐圧容器に入れ、耐圧容器内を窒素置換後、水素置換を行った。水素置換から10時間後にサンプリングし、HPLC分析によって各化合物の比率を確認した。結果を表15に示す。
【表15】
測定方法:HPLC Method B
保持時間:2.23分(化合物7)、2.32分(化合物7-C)、2.46分(化合物7-D)
質量分析:m/z 307.26(化合物7、[M+H]
+)、335.34(化合物7-C、[M+H]
+)、363.38(化合物7-D、[M+H]
+)
【0167】
(実施例15)Cbz-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化32】
化合物7-C(3.00g、8.97mmol、化合物7-Dを1.6%含む)を200mLフラスコ中で2-メチルテトラヒドロフラン(27.0mL、30eq.)に溶解し、化合物8(3.17g、13.45mmol、1.5eq.)を加え、窒素置換した。外温15℃まで冷却し、DIPEA(9.0mL、53.8mmol、6.0eq.)をシリンジで加えた。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(1.6M、20mL、31.4mmol、3.5eq.)を滴下ロートから17分かけて滴下した。滴下中の内温は15.0~18.0℃だった。滴下終了後5時間後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(27mL)を滴下ロートからゆっくりと加えた。滴下時の内温は28.0℃以下を保持した。滴下終了後、外温を25℃に設定した。10分撹拌した後に静置し、水層を除去した。シクロヘキサン(15mL)と5%硫酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加え、10分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(30mL)による分液洗浄をもう1回繰り返した。5%炭酸ナトリウム水溶液(30mL)を加え、10分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。分液洗浄によって原料に含まれていた化合物7-Dが完全に除去されていることをHPLC分析で確認した。反応前および分液洗浄後の分析結果を表16に示す。
【表16】
測定方法:HPLC Method B
保持時間:2.47分(化合物7-C)、2.61分(化合物7-D)、3.84分(化合物9)
質量分析:m/z 407.36(化合物9、[M-Sar+H]
+)
【0168】
(原料合成4)Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuの50グラムスケール合成
【化33】
2Lフラスコに化合物P6(50.03g、160mmol)とt-ブチル サルコシネート塩酸塩(34.50g、191mmol、1.2eq.)を加え、窒素置換した。2-メチルテトラヒドロフラン(485mL、30eq.)を加え、外温15℃まで冷却し、DIPEA(147mL、862mmol、5.4eq.)を滴下ロートから滴下した。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(1.6M、219mL、2.2eq.)を滴下ロートから1時間20分かけて滴下した。滴下中の内温は15.5~18.5℃だった。滴下終了後1時間後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(300mL)を滴下ロートからゆっくりと加えた。滴下時の内温は22.8℃以下を保持した。滴下終了後、外温を23℃に設定した。15分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(300mL)を加え、10分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(300mL)による分液洗浄をもう2回繰り返した。5%炭酸ナトリウム水溶液(300mL)を加え、10分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。5%塩化ナトリウム水溶液(300mL)を加え、10分以上撹拌した後に静置し、水層を除去した。5%塩化ナトリウム水溶液(300mL)による分液洗浄をもう1回繰り返した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮した。得られた化合物P7の溶液(175.41g)に2-メチルテトラヒドロフラン(229mL)を加え、濃度0.189g/gの溶液を調製した。
HPLC純度:99.37%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:3.78分
質量分析:m/z 385.32([M-tBu+H]
+)
【0169】
(実施例16)Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuの脱保護とモノエチル化反応の30グラムスケールのone-pot実施
【化34】
撹拌翼付き1L耐圧反応容器内を窒素置換し、5%パラジウム炭素(50%wet、20.30g、4.77mmol、7mol%金属Pd基準)とTsOH・H
2O(12.95g、68.1mmol、1.0eq.)を加えた。化合物P7の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(濃度0.189g/g、159.0g溶液、30.0g基質、68.1mmol)を加え、2-メチルテトラヒドロフラン(150mL)とアセトニトリル(35.6mL、681mmol、10.0eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して30℃で反応を行った。反応中の容器内圧は2-4atmを保持するように水素を供給した。反応開始後1時間、2時間、3時間の時点で150-300torrの減圧度で1分間脱気を行った。反応時間5時間の時点で5%パラジウム炭素(50%wet、8.70g、2.04mmol、3mol%金属Pd基準)を追加した。反応時間11時間の時点で窒素置換し、窒素雰囲気下で12時間静置保管した。保管後、水素置換して反応を再開し、再開後7時間後に窒素置換し反応を終了した。パラジウム炭素を減圧吸引で濾別し、濾別したパラジウム炭素を2-メチルテトラヒドロフラン(90mL)で3回洗浄した。ろ液と洗浄液を混合し、分液ロートを用いて5%炭酸ナトリウム水溶液(150mL)で2回分液洗浄した。洗浄後の有機層を減圧条件下で濃縮し、目的物である化合物7-Cを得た。収率は、化合物P6からの2工程を通して93%であった。反応中および反応後の分析結果を表17に示す。
【表17】
測定方法:HPLC Method B
保持時間:2.23分(化合物7)、2.32分(化合物7-C)、2.46分(化合物7-D)
質量分析:m/z 307.26(化合物7、[M+H]
+)、335.34(化合物7-C、[M+H]
+)、363.38(化合物7-D、[M+H]
+)
【0170】
(実施例17)H-Phe-OtBuのモノメチル化反応におけるメチル化試薬の評価
【化35】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、72mg、0.017mmol、5mol% on Pd metal basis)とH-Phe-OtBuのテトラヒドロフラン溶液(20mL/g基質、1.5mL、0.339mmol)を加えた。TEA(71μL、0.508mmol、1.5eq.)とメチル化試薬(0.407mmol、1.2eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して反応を行った。HPLC分析によって原料、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表18】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:H-Phe-OtBu:2.75 min, mono-Me: 2.84 min, di-Me: 2.98 min
質量分析:H-Phe-OtBu:m/z 166.47 ([M-tBu+H]
+), mono-Me: m/z 236.59 ([M+H]
+),di-Me: m/z 250.61 ([M+H]
+)
【0171】
(実施例18)H-Phe-OtBuのSEM-Clをメチル化試薬として用いたモノメチル化反応:1グラムスケール
【化36】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、1.154g、0.271mmol、6mol%on Pd metal basis)とH-Phe-OtBuの2-メチルテトラヒドロフラン溶液(10mL/g基質、10.0mL、4.52mmol)を加えた。TEA(0.945mL、6.78mmol、1.5eq.)とDBU(68μL、0.452mmol、0.1eq.)を順次加え、最後にSEM-Cl(0.96mL、5.42mmol、1.2eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して30℃で反応を行った。8時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表19】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:H-Phe-OtBu:2.82 min, mono-Me: 2.90 min, di-Me: 3.06 min
質量分析:H-Phe-OtBu:m/z 166.42 ([M-tBu+H]
+), mono-Me: m/z 236.53 ([M+H]
+),di-Me: m/z 250.55 ([M+H]
+)
【0172】
(実施例19)H-Phe-OtBuのモノメチル化反応:ホルムアルデヒド水溶液をメチル化試薬として用いた比較実験
【化37】
撹拌子を入れたフラスコにH-Phe-OtBu(75mg、0.339mmol)を加え、テトラヒドロフラン(1.5mL)を加えた。5%パラジウム炭素(50% wet、72mg、0.017mmol、5mol% on Pd metal basis)と37%ホルムアルデヒド水溶液(25.1μL、0.339mmol、1.0eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃で反応を行った。6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表20】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:H-Phe-OtBu:2.75 min, mono-Me: 2.85 min, di-Me: 2.98 min
質量分析:H-Phe-OtBu: m/z 166.47 ([M-tBu+H]
+), mono-Me: m/z 236.59 ([M+H]
+),di-Me: m/z 250.61 ([M+H]
+)
【0173】
(実施例20)H-Phe-OtBuのモノメチル化反応における水素ガス以外の還元剤の評価
【化38】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、231mg、0.054mmol、6mol% on Pd metal basis)とH-Phe-OtBuのテトラヒドロフラン溶液(10mL/g基質、2.0mL、0.904mmol)を加えた。TEA(189μL、1.356mmol、1.5eq.)を加えた。SEM-Cl(192μL、1.085mmol、1.2eq.)と還元剤(1.356mmol、1.5eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し30℃で反応を行った。5時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、モノメチル化体、ジメチル化体の比及び不純物の量を確認した。
【表21】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:H-Phe-OtBu:2.80 min, mono-Me: 2.88 min, di-Me: 3.03 min
質量分析:H-Phe-OtBu: m/z 166.36 ([M-tBu+H]
+), mono-Me: m/z 236.53 ([M+H]
+),di-Me: m/z 250.55 ([M+H]
+)
【0174】
(実施例21)Cbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノメチル化反応のone-pot実施
【化39】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、46mg、0.004mmol、2mol%on Pd metal basis)とCbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、1.5mL、0.216mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃で脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、5%パラジウム炭素(50% wet、46mg、0.011mmol、5mol% on Pd metal basis)、TEA(45μL、0.324mmol、1.5eq.)、SEM-Cl(46μL、0.259mmol、1.2eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して30℃でメチル化反応を行った。8.5時間後と10時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表22】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:NH
2:2.34 min, mono-Me: 2.39 min, di-Me: 2.48 min
質量分析:NH
2: m/z 330.75 ([M+H]
+), mono-Me: m/z 344.94 ([M+H]
+), di-Me: m/z 358.80 ([M+H]
+)
【0175】
(実施例22)Cbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの脱保護とモノメチル化反応のone-pot実施
【化40】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、21mg、0.005mmol、2mol% on Pd metal basis)とCbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuのテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.250mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃で脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、5%パラジウム炭素(50% wet、85mg、0.020mmol、8mol% on Pd metal basis)、TEA(70μL、0.500mmol、2.0eq.)、SEM-Cl(58μL、0.325mmol、1.3eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して30℃でメチル化反応を行った。8時間後と10時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表23】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:mono-Me:3.33 min, di-Me: 3.40 min
質量分析:mono-Me: m/z 420.93 ([M+H]
+), di-Me: m/z 434.89([M+H]
+)
【0176】
(実施例23)Cbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの脱保護とモノメチル化反応のone-pot実施:ホルムアルデヒド水溶液をメチル化試薬として用いた比較実験
【化41】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、53mg、0.013mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuのテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.250mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃で脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、37%ホルムアルデヒド水溶液(22.2μL、0.300mmol、1.2eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃でメチル化反応を行った。7時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表24】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:mono-Me: 3.34 min, di-Me: 3.41 min
質量分析:mono-Me: m/z 420.93 ([M+H]
+), di-Me: m/z 434.84([M+H]
+)
【0177】
(実施例24)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノメチル化反応のone-pot実施
【化42】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、12mg、0.003mmol、2mol% on Pd metal basis)とCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.138mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃で脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、5%パラジウム炭素(50% wet、47mg、0.011mmol、8mol% on Pd metal basis)、TEA(39μL、0.276mmol、2.0eq.)、SEM-Cl(39μL、0.276mmol、1.5eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して35℃でメチル化反応を行った。8時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表25】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:NH
2: 4.22 min, mono-Me: 4.28 min, di-Me: 4.40 min
質量分析:NH
2: m/z 843.93 ([M+H]
+), mono-Me: m/z 858.35 ([M+H]
+), di-Me: m/z 872.20 ([M+H]
+)
【0178】
(実施例25)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノメチル化反応のone-pot実施:ホルムアルデヒド水溶液をメチル化試薬として用いた比較実験
【化43】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、29mg、0.007mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.138mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃で脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、37%ホルムアルデヒド水溶液(12.3μL、0.166mmol、1.2eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃でメチル化反応を行った。7時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノメチル化体、ジメチル化体の比を確認した。
【表26】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:Cbz-NHR:6.00 min, NH
2: 4.21 min, mono-Me: 4.29 min, di-Me: 4.38 min
質量分析:Cbz-NHR: m/z 1000.23 ([M+Na]
+), NH
2: m/z 844.16 ([M+H]
+),mono-Me: m/z 858.35 ([M+H]
+), di-Me: m/z 872.43 ([M+H]
+)
【0179】
(実施例26)H-Phe-OtBuのモノプロピル化:還元剤としてトリエチルシランを用いた例
【化44】
撹拌子を入れたフラスコにH-Phe-OtBu(84mg、0.380mmol)を加え、テトラヒドロフラン(2.0mL)を加えた。5%パラジウム炭素(50% wet、82mg、0.015mmol、5mol% on Pd metal basis)を加えた。n-プロパナール(36μL、0.494mmol、1.3eq.)とトリエチルシラン(303μL、1.899mmol、5.0eq.)を順次加え、撹拌しながら窒素置換し25℃で反応を行った。2.5時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノプロピル化体、ジプロピル化体の比を確認した。
【表27】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:H-Phe-OtBu: 2.70 min, mono-Pr: 3.12 min, di-Pr: 3.61 min
質量分析:H-Phe-OtBu: m/z 166.47 ([M-tBu+H]
+), mono-Pr: m/z 264.74 ([M+H]
+),di-Pr: m/z 306.81 ([M+H]
+)
【0180】
(実施例27)Cbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの脱保護とモノプロピル化反応のone-pot実施
【化45】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、53mg、0.013mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuのテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.250mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、n-プロパナール(27μL、0.375mmol、1.5eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換してプロピル化反応を行った。5時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノプロピル化体、ジプロピル化体の比及び不純物の量を確認した。n-プロパナール添加直前のDBU(3.7μL、0.025mmol、0.1eq.)添加有無の2通りの実験を実施し、結果を比較した。
【表28】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:NH
2: 3.30 min, mono-Pr: 3.59 min, di-Pr: 3.95 min
質量分析:NH
2: m/z 406.85 ([M+H]
+), mono-Pr: m/z 449.03 ([M+H]
+), di-Pr: m/z 490.92 ([M+H]
+)
【0181】
(実施例28)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノプロピル化反応のone-pot実施
【化46】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、29mg、0.014mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.138mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、n-プロパナール(13μL、0.180mmol、1.3eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換してプロピル化反応を行った。7時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノプロピル化体、ジプロピル化体の比及び不純物の量を確認した。n-プロパナール添加直前のDBU(2.1μL、0.014mmol、0.1eq.)添加有無の2通りの実験を実施し、結果を比較した。
【表29】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:mono-Pr: 4.47 min, di-Pr: 4.79 min
質量分析:mono-Pr: m/z 886.34 ([M+H]
+), di-Pr: m/z 928.41 ([M+H]
+)
【0182】
(実施例29)Cbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノブチル化反応のone-pot実施
【化47】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、124mg、0.029mmol、10mol% on Pd metal basis)とCbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.291mmol)を加えた。ブチロニトリル(253μL、2.91mmol、10.0eq.)を加え、撹拌しながら窒素置換し、水素置換して30℃で反応を行った。8時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノブチル化体、ジブチル化体の比を確認した。
【表30】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:NH
2:2.28 min, mono-Bu: 2.86 min, di-Bu: 3.49 min
質量分析:NH
2:m/z 330.75 ([M+H]
+), mono-Bu: m/z 386.90 ([M+H]
+), di-Bu: m/z 442.99 ([M+H]
+)
【0183】
(実施例30)Cbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの脱保護とモノブチル化反応のone-pot実施
【化48】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、53mg、0.013mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuのテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.250mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、n-ブタナール(33μL、0.375mmol、1.5eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換してブチル化反応を開始した。5時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノブチル化体、ジブチル化体の比及び不純物の量を確認した。n-ブタナール添加直前のDBU(3.7μL、0.025mmol、0.1eq.)添加有無の2通りの実験を実施し、結果を比較した。
【表31】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:NH
2:3.30 min, mono-Bu: 3.80 min, di-Bu: 4.35 min
質量分析:NH
2: m/z 406.85 ([M+H]
+), mono-Bu: m/z 463.11 ([M+H]
+), di-Bu: m/z 519.03 ([M+H]
+)
【0184】
(実施例31)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノブチル化反応のone-pot実施
【化49】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、12mg、0.003mmol、2mol% on Pd metal basis)とCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.138mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃で脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、5%パラジウム炭素(50% wet、47mg、0.011mmol、8mol% on Pd metal basis)とブチロニトリル(120μL、1.382mmol、10.0eq.)を順次加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して30℃でブチル化反応を行った。10時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノブチル化体、ジブチル化体の比を確認した。
【表32】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:mono-Bu: 4.56 min
質量分析:mono-Bu: m/z 900.31 ([M+H]
+)
【0185】
(実施例32)Cbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノヘキシル化反応のone-pot実施
【化50】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、62mg、0.015mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.291mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、n-ヘキサナール(46μL、0.379mmol、1.3eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換してヘキシル化反応を25℃で行った。6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノヘキシル化体、ジヘキシル化体の比及び不純物の量を確認した。n-ヘキサナール添加直前のDBU(4.4μL、0.029mmol、0.1eq.)添加有無の2通りの実験を実施し、結果を比較した。
【表33】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:NH
2: 2.32 min, mono-Hex: 3.42 min, di-Hex: 4.47 min
質量分析:NH
2: m/z ([M+H]
+), mono-Hex: m/z 415.11 ([M+H]
+), di-Hex: m/z499.02 ([M+H]
+)
【0186】
(実施例33)Cbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノヘキシル化反応のone-pot実施:還元剤としてトリエチルシランを用いた例
【化51】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、62mg、0.015mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.291mmol)を加えた。n-ヘキサナール(46μL、0.379mmol、1.3eq.)とトリエチルシラン(233μL、1.456mmol、5.0eq.)を順次加え、撹拌しながら窒素置換して25℃で反応を行った。7時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノヘキシル化体、ジヘキシル化体の比及び不純物の量を確認した。
【表34】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:mono-Hex: 3.44 min, di-Hex: 4.47 min
質量分析:mono-Hex: m/z 415.00 ([M+H]
+), di-Hex: m/z 499.02 ([M+H]
+)
【0187】
(実施例34)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の脱保護とモノヘキシル化反応のone-pot実施
【化52】
撹拌子を入れたフラスコに5%パラジウム炭素(50% wet、29mg、0.014mmol、5mol% on Pd metal basis)とCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2のテトラヒドロフラン溶液(15mL/g基質、2.0mL、0.138mmol)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して脱Cbz反応を行った。1時間後に減圧条件で脱気し、n-ヘキサナール(22μL、0.180mmol、1.3eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換してヘキシル化反応を25℃で行った。6時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノヘキシル化体、ジヘキシル化体の比及び不純物の量を確認した。n-ヘキサナール添加直前のDBU(2.1μL、0.014mmol、0.1eq.)添加有無の2通りの実験を実施し、結果を比較した。
【表35】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:mono-Hex: 4.87 min, di-Hex: 5.54 min
質量分析:mono-Hex: m/z 928.41([M+H]
+), di-Hex: m/z 1012.54 ([M+H]
+)
【0188】
(実施例35)H-Phe(4-Me)-OHのモノエチル化反応
【化53】
撹拌子を入れたフラスコにH-Phe(4-Me)-OH(100mg、0.558mmol)を加え、エタノール(2.0mL)を加えた。2M NaOH水溶液(0.265mL、0.530mmol、0.95eq.)を加え、基質を溶解して得られた溶液に5%パラジウム炭素(50% wet、119mg、0.028mmol、5mol% on Pd metal basis)とアセトニトリル(0.291mL、5.58mmol、10.0eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して30℃でエチル化反応を行った。7時間後にサンプリングし、HPLC分析によって原料、NH
2体、モノエチル化体、ジエチル化体の比を確認した。
【表36】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:mono-Et: 2.00 min, di-Et: 2.29 min
質量分析:mono-Et: m/z 208.77 ([M+H]
+), di-Et: m/z 236.76([M+H]
+)
【0189】
(実施例36)H-Phe(4-Me)-OHのモノプロピル化反応
【化54】
撹拌子を入れたフラスコにH-Phe(4-Me)-OH(100mg、0.558mmol)を加え、テトラヒドロフラン(2.0mL)を加えた。2M NaOH水溶液(x eq.、表37参照)を加え、基質を溶解して得られた溶液に5%パラジウム炭素(50% wet、119mg、0.028mmol、5mol% on Pd metal basis)を加えた。塩基性添加剤(y eq.、表37参照)及びn-プロパナール(52μL、0.725mmol、1.3eq.)を加えた。撹拌しながら窒素置換し、水素置換して25℃でプロピル化反応を行った。HPLC分析によって原料、NH
2体、モノエチル化体、ジエチル化体の比を確認した。NaOHの当量およびEt
3N(78μL、1.0eq.,0.558mmol)またはDBU(8.3μL、0.056mmol、0.1eq.)の添加の効果を評価した。
【表37】
測定方法:HPLC Method A
保持時間:H-Phe(4-Me)-OH: 1.88 min, mono-Pr: 2.23 min, di-Pr: 3.00 min
質量分析:H-Phe(4-Me)-OH: m/z 180.50 ([M+H]
+), mono-Pr: m/z 222.68 ([M+H]
+), di-Pr: m/z 264.63 ([M+H]
+)
【0190】
(原料合成5)Cbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化55】
実施例49に記載の合成法によって得られたH-MeAsp(OtBu)-NMe2の溶液を減圧濃縮し溶媒を除去し、4.26gのオイルを得た。2-メチルテトラヒドロフラン(43mL)を加え溶液とし、Cbz-Val-OH(5.11g、20.35mmol、1.1eq.)を加えた。フラスコを氷浴で冷却し、DIPEA(12.9mL、74.0mmol、4.0eq.)加えた。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(1.6M、23mL、37.0mmol、2.0eq.)をシリンジで10分かけて滴下した。滴下中の内温は8.0~19.0℃を維持した。滴下終了後1時間後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(34mL)を滴下し撹拌した後に分液ロートに移送して静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(34mL)を加えよく振った後に静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(34mL)による分液洗浄をもう1回繰り返した。5%炭酸ナトリウム水溶液(34mL)を加え、よく振った後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮し、9.0gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、7.0gのCbz-Val-MeAsp(OtBu)-NMe
2を得た。
収率:82%
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method A
保持時間:4.45 min
質量分析:m/z 486.76 ([M+Na]
+)
【0191】
(原料合成6)Cbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化56】
実施例38に記載の合成法によって得られたH-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu塩酸塩(6.0g、16.18mmol)を分液ロート中で2-メチルテトラヒドロフラン(100mL)に懸濁させ、5%炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し水層を除去した。5%炭酸ナトリウム水溶液(100mL)による分液洗浄をもう1回繰り返した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮し、4.81gのH-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを得た。2-メチルテトラヒドロフラン(48mL)を加え溶液とし、Cbz-Ala-OH(3.52g、15.79mmol、1.1eq.)を加えた。DIPEA(10.0mL、57.4mmol、4.0eq.)を加え、プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(1.6M、18mL、28.7mmol、2.0eq.)をシリンジで10分かけて滴下した。滴下終了後3時間室温で撹拌した。5%炭酸ナトリウム水溶液(40mL)を滴下し撹拌した後に分液ロートに移送して静置し、水層を除去した。5%硫酸水素ナトリウム水溶液(40mL)による分液洗浄を4回実施した後、5%炭酸ナトリウム水溶液(40mL)による分液洗浄を2回実施した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮し5.26gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3.14gのCbz-Ala-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを得た。
収率:40%
HPLC純度:99.5%
測定方法:HPLC Method A
保持時間:5.50 min
質量分析:m/z 562.86 ([M+Na]
+)
【0192】
(原料合成7)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2
【化57】
実施例59に記載の合成法によって得られたCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の溶液を減圧濃縮し溶媒を除去し、6.1gのオイルを得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4.4gのCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2を得た。
収率:88%
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method A
保持時間:6.00 min
質量分析:m/z 1000.23 ([M+Na]
+)
【0193】
(実施例37)Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化58】
反応容器にCbz-Phe(4-Me)-OH(17.22g、55.0mmol)、H-Sar-OtBu塩酸塩(11.06g、59.7mmol)、2-メチルテトラヒドロフラン(141g)とDIPEA(37.91g、293mmol)を25℃にて加えた。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(50.4wt%、75.31g、119mmol)を1時間30分かけて滴下した。滴下終了後2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(102g)を40分かけて滴下した。10分撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(102g、2回)、5%炭酸ナトリウム水溶液(102g)、5%塩化ナトリウム水溶液(102g、2回)で分液洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuを含む溶液(38.80g)を得た。
HPLC純度:99.87%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:4.11 min
質量分析:m/z 441([M+H]
+)
【0194】
(実施例38)H-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu塩酸塩の合成
【化59】
反応容器に5%パラジウム炭素(55.31% wet、2.60g、0.546mmol、1mol% on Pd metal basis)、実施例37で得られたCbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuの溶液(38.80g)、2-メチルテトラヒドロフラン(179g)、アセトニトリル(22.29g、543mmol、10.0eq.)、TsOH・H
2O(10.85g、57.0mmol、1.0eq.)と水(1.03g、56.9mmol)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.20MPaG)で2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析でCbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuが消失したことを確認した。反応容器を窒素置換し、5%パラジウム炭素(55.31% wet、15.50g、3.26mmol、6mol% on Pd metal basis)を加えた。反応容器を水素置換した後、33℃に昇温した。水素雰囲気下(0.20MPaG)、33℃にて7時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応率が99%であることを確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(68gで2回、51gで1回)により計3回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を5%炭酸ナトリウム水溶液(119g)で2回分液洗浄した後、得られた有機層を減圧条件下で濃縮した。2-メチルテトラヒドロフラン(27g)を加え、減圧条件下で34mLまで濃縮した後、2-メチルテトラヒドロフラン(12g)を加えた。得られた溶液に、ピリジン塩酸塩(6.27g、54.3mmol、1.0eq.)をアセトニトリル(19g)に溶かした溶液を70分かけて滴下することで、H-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu塩酸塩の結晶を析出させた。アセトニトリル(6.8g)を加えた後、上記と同様の手法で実施した別の実験により取得したH-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu塩酸塩の結晶(17.04mg)を加えた。30分攪拌した後、MTBE(73g)を60分かけて滴下した。60分攪拌した後、MTBE(122g)を60分かけて滴下した。14時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体を2-メチルテトラヒドロフラン(68g)により洗浄した後、2-メチルテトラヒドロフラン(34g)とMTBE(34g)の混合溶液により洗浄した。得られた固体を減圧条件下にて乾燥し、H-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu塩酸塩(16.62g)を得た。
H-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu塩酸塩の融点:196℃
収率:82%(Cbz-Phe(4-Me)-Sar-OtBuから2工程での収率)
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:2.51 min
質量分析:m/z 335([M+H]
+)
【0195】
(実施例39)Cbz-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化60】
反応容器にCbz-Aze-OH(12.94g、55.0mmol)、2-メチルテトラヒドロフラン(132g)、実施例38と同様の手法により合成したH-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu塩酸塩(17.01g、45.9mmol)、DIPEA(47.41g、367mmol)を室温にて加えた。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(50.4wt%、87.00g、137mmol)を25℃にて1時間30分かけて添加した。添加終了後2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(155g)を加え、20分撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を4%硫酸水溶液(156g)、10%硫酸水素カリウム水溶液(155g)、5%炭酸ナトリウム水溶液(155g)により分液洗浄した後、2-メチルテトラヒドロフラン(43g)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を3回繰り返した。得られた残渣に2-メチルテトラヒドロフラン(29g)を加え、Cbz-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含む溶液(78.24g)を得た。
HPLC純度:98.22%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:4.14 min
質量分析:m/z 552([M+H]
+)
【0196】
(実施例40)H-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化61】
反応容器に10%パラジウム炭素(55.65% wet、7.76g、3.21mmol、7mol% on Pd metal basis)と2-メチルテトラヒドロフラン(39g)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.40MPaG)で2時間攪拌した。実施例39で得られたCbz-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの溶液(78.24g)、2-メチルテトラヒドロフラン(29g)と水(1.71g、94.9mmol)を加えた。水素雰囲気下(0.20MPaG)で3時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(61g)により2回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で濃縮した後、2-メチルテトラヒドロフラン(34g)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を2回繰り返した。得られた残渣に2-メチルテトラヒドロフラン(34g)を加え、H-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含む溶液(70.59g)を得た。
HPLC純度:96.53%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:2.67 min
質量分析:m/z 418([M+H]
+)
【0197】
(実施例41)Cbz-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化62】
反応容器に実施例40で得られたH-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの溶液(70.59g)、Cbz-MeAla-OH(13.13g、55.0mmol)、2-メチルテトラヒドロフラン(68g)、N-メチルモルホリン(11.60g、115mmol)を25℃にて加えた。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(50.4wt%、69.40g、110mmol)を25℃にて1時間30分かけて添加した。添加終了後5時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(177g)を加えた後、すぐに1-メチルイミダゾール(3.77g、45.9mmol)を加え、2時間撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を4%硫酸水溶液(138g)、10%硫酸水素カリウム水溶液(138g)、5%炭酸ナトリウム水溶液(138g)により分液洗浄した後、2-メチルテトラヒドロフラン(51g)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を3回繰り返した。得られた残渣に2-メチルテトラヒドロフラン(27g)を加え、Cbz-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含む溶液(83.89 g)を得た。
HPLC純度:97.28%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:4.07 min
質量分析:m/z 637([M+H]
+)
【0198】
(実施例42)H-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化63】
反応容器に10%パラジウム炭素(55.65% wet、5.54g、2.29mmol、5mol% on Pd metal basis)と2-メチルテトラヒドロフラン(39g)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.40MPaG)で2時間攪拌した。実施例41で得られたCbz-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの溶液(83.89g)、2-メチルテトラヒドロフラン(27g)と水(2.10g、117mmol)を加えた。水素雰囲気下(0.20MPaG)で3時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(59g)により2回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で濃縮した後、濾過した。得られた濾液にCPME(85g)を加えて減圧条件下で68mLまで濃縮する操作を3回繰り返した。得られた残渣に、40℃で攪拌しながらCPME(15g)、MTBE(26g)とn-ヘプタン(27g)を加えた後、実施例66と同様の手法により取得したH-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶(16.66mg)を加えた。40℃で1時間攪拌した後、2時間かけて20℃まで冷却した。20℃で16時間攪拌した後、n-ヘプタン(241g)を1時間かけて添加した。20℃で4時間攪拌した後、2時間かけて8℃まで冷却した。8℃で16時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体をn-ヘプタン(66g)により洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、H-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶(18.28g)を得た。
H-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの融点:95℃
収率:79%(H-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuから4工程での収率)
HPLC純度:99.76%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:2.62 min
質量分析:m/z 503([M+H]
+)
【0199】
(実施例43)Cbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化64】

反応容器にトルエン(92g)、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(100g)とCbz-Ile-OHジシクロヘキシルアミン塩(21.43g、47.7mmol)を25℃で攪拌しながら加えた。5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(220g)を加え、10分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を、5%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(320g)により3回洗浄した後、5%塩化ナトリウム水溶液(220g)により2回洗浄した。得られた有機層を減圧条件下で26mLまで濃縮した。得られた残渣に、実施例42と同様の方法で取得したH-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu(20.2g、40.2mmol)、2-メチルテトラヒドロフラン(72g)、トルエン(62g)、アセトニトリル(22g)とDIPEA(22.63g、175mmol)を25℃にて攪拌しながら加えた後、HATU(22.69g、59.7mmol)を22℃で攪拌しながら加えた。添加終了後2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析により反応完結を確認した。5%炭酸ナトリウム水溶液(172g)と1-メチルイミダゾール(3.27g、39.8mmol)を加えた。22℃にて2時間攪拌した後、25℃に昇温し、2.5%アンモニア水溶液(172g)を加えた。10分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を2.5%アンモニア水溶液(172g)、4%硫酸水溶液(172g)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(172g)、3%リン酸水素二カリウム水溶液(172g)により洗浄した後、減圧条件下で60mLまで濃縮した。トルエン(52g)を加え、減圧条件下で60mLまで濃縮する操作を2回繰り返した後、得られた残渣を濾過した。濾液にトルエン(66g)を加えた後、22℃で攪拌しながらn-ヘプタン(102g)を10分かけて添加した。実施例67と同様の手法により取得したCbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶(285mg)を加えた後、4時間かけて18℃まで冷却し、さらに4時間かけて10℃まで冷却した。10℃にて18時間攪拌した後、n-ヘプタン(102g)を3時間かけて添加した。添加終了後10℃にてさらに18時間攪拌した後に、スラリーを濾過した。得られた固体をn-ヘプタン(92g)により2回洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、Cbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶(28.08g)を得た。
Cbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの融点:70 ℃
収率:93%
HPLC純度:99.84%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:4.21 min
質量分析:m/z 750([M+H]
+)
【0200】
(実施例44)Teoc-MeLeu-OPFPの合成
【化65】
反応容器にTeoc-MeLeu-OH(19.34g、66.8mmol)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(132g)とペンタフルオロフェノール(15.36g、83.4mmol)を25℃にて加えた。攪拌しながら0℃に冷却した後に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(19.34g、83.7mmol)を加えた。1時間かけて25℃に昇温し、25℃にてさらに1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。酢酸イソプロピル(110g)と0.5M塩酸水溶液(126g)を順次加えた。10分撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を0.5M塩酸水溶液(126g)で洗浄した後、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(22g)を加えた。得られた有機層を5%炭酸カリウム水溶液(126g、2回)、10%塩化ナトリウム水溶液(126g)により分液洗浄した後、減圧条件下で44.4mLまで濃縮した。得られた残渣に酢酸イソプロピル(19g)を加え、Teoc-MeLeu-OPFPを含む溶液(67mL)を得た。
HPLC純度:97.95%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:5.58 min
質量分析:m/z 428([M-CH2=CH2+H]
+)
【0201】
(実施例45)Teoc-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化66】
反応容器に実施例43と同様の手法により得られたCbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu(25.00g、33.3mmol)、実施例44で得られたTeoc-MeLeu-OPFPを含む溶液(67mL)、アセトン(70g)、N-メチルモルホリン(20.22g、200mmol)と10%パラジウム炭素(54.33% wet、7.84g、3.34mmol、10mol% on Pd metal basis)を順次加えた。25℃で攪拌しながら窒素置換し、水素置換した。水素雰囲気下(0.18MPaG)で2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキをアセトン(29g)により3回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で120mLまで濃縮した。得られた残渣に25℃で攪拌しながらトルエン(87g)、5%炭酸カリウム水溶液(110g)と4-ジメチルアミノピリジン(4.07g、33.3mmol)を順次加えた。5時間攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を4%硫酸水溶液(110g)、10%硫酸水素カリウム水溶液(110g)、5%炭酸カリウム水溶液(110g、2回)により分液洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、Teoc-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含む溶液(47.5mL)を得た。
HPLC純度:98.61%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:5.28 min
質量分析:m/z 888([M+H]
+)
【0202】
(実施例46)H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの合成
【化67】
反応容器に、実施例45と同様の手法により得られたTeoc-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含むトルエン溶液(61.47w/w%、4.88g、3.38mmol)と2-メチルテトラヒドロフラン(8.9mL)を加えた。45℃に昇温し、テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(1.2M、7.04mL、8.45mmmol)を20分かけて添加した。添加終了後1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。25℃に冷却し、酢酸イソプロピル(9.0mL)を加えた。反応混合物を5%炭酸ナトリウム水溶液(9.13g、3回)、5%塩化ナトリウム水溶液(9.13g)により分液洗浄した後、得られた有機層を減圧条件下で濃縮した。得られた残渣にエタノール(12.5mL)を加えて濃縮する操作を2回繰り返し、H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含む溶液(6.9mL)を得た。
HPLC純度:98.17%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:3.04 min
質量分析:m/z 743.4([M+H]
+)
【0203】
(実施例47)H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuL-酒石酸塩の合成
【化68】
反応容器に、実施例46と同様の手法により得たH-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含む溶液(38.46w/w%、56.16g、29.1mmol)とエタノール(8.0mL)を加えた。22℃にてL-酒石酸(4.80g、32.0mmol)を加え、MTBE(207mL)を2分かけて加えた。実施例68と同様の手法により取得したH-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu L-酒石酸塩の結晶(108.0mg)をMTBE(1.62mL)に懸濁させたスラリーを加えた後、MTBE(77g)を1時間かけて添加した。18時間攪拌した後、n-ヘプタン(106g)を1時間かけて滴下した。内温を1時間かけて10℃まで冷却した。10℃にてさらに27時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体をMTBE(130mL)により洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu L-酒石酸塩(26.13g、含量92.2w/w%)を得た。含量および収率は標品を用いたHPLC分析により算出した。
H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuL-酒石酸塩の融点:94℃
収率:88%(H-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuから3工程での収率)
HPLC純度:99.38%
測定方法:HPLC Method B
保持時間:3.01 min
質量分析:m/z 743.6([M+H]
+)
【0204】
(実施例48)Cbz-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化69】
反応容器にCbz-MeAsp(OtBu)-OHジシクロヘキシルアミン塩(25.00g、48.2mmol)と2-メチルテトラヒドロフラン(126g)を25℃にて加えた。10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(150g)による分液洗浄を2回繰り返した後、5%塩化ナトリウム水溶液(150g)により洗浄した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮した。得られた残渣に2-メチルテトラヒドロフラン(95g)を加え、減圧条件下で濃縮する操作を2回繰り返した。得られた残渣(47.91g)に2-メチルテトラヒドロフラン(95g)、アセトニトリル(75g)、DIPEA(35.46g、274mmol)、ジメチルアミン塩酸塩(7.88g、96.6mmol)を25℃にて加えた。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(50.4wt%、61.33g、97.1mmol)を1時間30分かけて滴下した。滴下終了後1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。2M水酸化ナトリウム水溶液(150g)を加えた。10分撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を2M水酸化ナトリウム水溶液(150g)、13%硫酸水溶液(150g)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(150g)、5%炭酸ナトリウム水溶液(150g)により洗浄した後、減圧条件下で濃縮した。2-メチルテトラヒドロフラン(125g)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を2回繰り返し、Cbz-MeAsp(OtBu)-NMe
2を含む溶液(42.39g)を得た。
HPLC純度:99.85 %
測定方法:HPLC Method C
保持時間:3.37 min
質量分析:m/z 387([M+Na]
+)
【0205】
(実施例49)H-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化70】
反応容器に10%パラジウム炭素(54.33% wet、3.39g、1.45mmol、3mol% on Pd metal basis)と2-メチルテトラヒドロフラン(75g)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.40MPaG)で2時間攪拌した。実施例48で得られたCbz-MeAsp(OtBu)-NMe
2の溶液(42.39g)と2-メチルテトラヒドロフラン(22g)を加えた。水素雰囲気下(0.20MPaG)で1時間30分攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(75g)により2回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で濃縮し、H-MeAsp(OtBu)-NMe
2を含む溶液(30.76g)を得た。
HPLC純度:98.64%
測定方法:HPLC Method C
保持時間:1.44 min
質量分析:m/z 231([M+H]
+)
【0206】
(実施例50)Cbz-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化71】
反応容器に実施例49で得られたH-MeAsp(OtBu)-NMe
2の溶液(30.76g)、Cbz-MeGcp-OH(16.96g、58.2mmol)、2-メチルテトラヒドロフラン(40g)、アセトニトリル(17g)、DIPEA(27.74g、215mmol)を25℃にて加えた。HATU(27.49g、72.3mmol)を10分かけて添加した。添加終了後3時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。トルエン(30g)、5%炭酸カリウム水溶液(23g)、1-メチルイミダゾール(3.97g、48.4mmol)を加え、30分攪拌した。2.5%アンモニア水溶液(88g)、2-メチルテトラヒドロフラン(25g)を加えた。10分撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を2.5%アンモニア水溶液(113g)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(113g、2回)、5%炭酸カリウム水溶液(113g)により洗浄した後、減圧条件下で濃縮した。2-メチルテトラヒドロフラン(42g)を加えて減圧条件下で濃縮し、Cbz-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2を含む溶液(52.78g)を得た。
HPLC純度:98.59%
測定方法:HPLC Method C
保持時間:4.10 min
質量分析:m/z 526([M+Na]
+)
【0207】
(実施例51)H-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化72】
反応容器に10%パラジウム炭素(54.33% wet、3.39g、1.45mmol、3mol% on Pd metal basis)と2-メチルテトラヒドロフラン(75g)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.40MPaG)で2時間攪拌した。実施例50で得られたCbz-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の溶液(52.78g)と2-メチルテトラヒドロフラン(15g)を加えた後、30℃に昇温した。水素雰囲気下(0.20MPaG)で2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(75g)により2回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で濃縮した後、アセトニトリル(75g)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を2回繰り返し、H-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2を含む溶液(42.5mL)を得た。
HPLC純度:96.86%
測定方法:HPLC Method D
保持時間:2.96 min
質量分析:m/z 370([M+H]
+)
【0208】
(実施例52)H-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2塩酸塩の合成
【化73】
反応容器に実施例51で得られたH-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の溶液(42.5mL)とアセトニトリル(8.0g)を加えた。40℃にてMTBE(65g)を加えた後、ピリジン塩酸塩のアセトニトリル溶液(16.94w/w%、4.50g)を30分かけて滴下した。1時間攪拌した後、ピリジン塩酸塩のアセトニトリル溶液(16.94w/w%、31.34g)を3時間30分かけて滴下し、アセトニトリル(14g)を加えた。1時間攪拌した後、6時間かけて10℃まで冷却した。10℃にてさらに11時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体をMTBE(38g)により2回洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、H-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2塩酸塩(15.68g)を得た。
H-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2塩酸塩の融点:227℃
収率:80% (Cbz-MeAsp(OtBu)-OHジシクロヘキシルアミン塩から5工程での収率)
HPLC純度:99.62%
測定方法:HPLC Method D
保持時間:2.92 min
質量分析:m/z 370([M+H]
+)
【0209】
(実施例53)Cbz-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化74】
反応容器に、実施例52と同様の手法により合成したH-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2塩酸塩(1.00g、2.46mmol)、アセトニトリル(10mL)を加えた。次いで、DIPEA(2.72mL、15.6mmol)、Cbz-cLeu-OH(1.74g、6.61mmol)とHATU(2.75g、7.23mmol)を攪拌しながら順次加え、50℃に昇温した。50℃で6時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。1-メチルイミダゾール(0.78mL、9.78mmol)と水(3.99mL)を加えた。50℃で1時間攪拌した後、25℃まで冷却した。25℃で14時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体をアセトニトリル/水の混合溶媒(8:3(v/v)、5.33mL)で洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、Cbz-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2(1.27g)を得た。
Cbz-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の融点:202℃
収率:84%
HPLC純度:99.86%
測定方法:HPLC Method D
保持時間:6.70 min
質量分析:m/z 637([M+Na]
+)
【0210】
(実施例54)H-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化75】
反応容器に、5%パラジウム炭素(50% wet、0.85g、0.20mmol、3.5mol% on Pd metal basis)とテトラヒドロフラン(14.0mL)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.40MPaG)で2時間攪拌した。実施例53と同様の手法により合成したCbz-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2(3.51g、5.71mmol)をテトラヒドロフラン(42mL)に溶解させた溶液を加えた。水素雰囲気下(0.20MPaG)で2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキをテトラヒドロフラン(14mL)により2回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で濃縮し、H-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2を含む溶液(7.37g)を得た。
HPLC純度:99.98%
測定方法:HPLC Method C
保持時間:2.42 min
質量分析:m/z 503([M+Na]
+)
【0211】
(実施例55)Cbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化76】
反応容器に、実施例54と同様の方法で取得したH-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2(5.00g、10.4mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液(9.63g)、アセトニトリル(25mL)とCbz-Pro-OH(3.37g、13.5mmol)を室温にて加えた。N-メチルモルホリン(3.12g、30.8mmol)とHATU(5.93g、15.6mmol)を25℃で攪拌しながら加えた。添加終了後1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。トルエン(40mL)と1-メチルイミダゾール(0.90g、10.9mmol)を加えた後、5%炭酸カリウム水溶液(10mL)を10℃にて加えた。25℃に昇温し30分攪拌した後、10℃に冷却し2.5%アンモニア水溶液(20mL)を加えた。25℃に昇温し、さらに10分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を2.5%アンモニア水溶液(30mL)、3%硫酸水溶液(30mL)、10%硫酸水素カリウム水溶液(30mL)、5%炭酸ナトリウム水溶液(30mL、2回)により洗浄した後、減圧条件下で25mLまで濃縮した。トルエン(25mL)を加え、減圧条件下で25mLまで濃縮した。得られた残渣にテトラヒドロフラン(15mL)を加えて40~60℃で攪拌し、均一な溶液を調製した。25℃に冷却した後、実施例69と同様の手法により取得したCbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の結晶(49.9mg)をn-ヘプタン(0.16mL)とテトラヒドロフラン(0.04mL)の混合溶液に懸濁させたスラリー、次いでn-ヘプタン(0.32mL)とテトラヒドロフラン(0.08mL)の混合溶液を加えた。25℃で13時間攪拌した後、n-ヘプタン(5mL)を17分かけて添加した。添加終了後1時間攪拌した後に、n-ヘプタン(5mL)を15分かけて添加した。さらに1時間攪拌した後に、n-ヘプタン(25mL)を16分かけて添加した。さらに3時間攪拌した後に、スラリーを濾過した。得られた固体をn-ヘプタン(10mL)とテトラヒドロフラン(2.5mL)の混合溶液により2回洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、Cbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の結晶(6.51g)を得た。
Cbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の融点:178℃
収率:88%
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method D
保持時間:6.54 min
質量分析:m/z 734([M+Na]
+)
【0212】
(実施例56)H-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化77】
反応容器に10%パラジウム炭素(54.33% wet、1.36g、0.568mmol、2.2mol% on Pd metal basis)とテトラヒドロフラン(27mL)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.40MPaG)で2時間攪拌した。実施例55と同様の手法により合成したCbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2(18.03g、25.3mmol)とテトラヒドロフラン(52mL)を加えた。水素雰囲気下(0.18MPaG)で1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(38mL)により3回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で81mLまで濃縮した後、2-メチルテトラヒドロフラン(68mL)を加えて81mLまで濃縮する操作を3回繰り返した。得られた残渣に、45℃で攪拌しながらn-ヘプタン(37mL)を加えた後、実施例70と同様の手法により取得したH-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の結晶(40.60mg)をn-ヘプタン(0.75mL)に懸濁させたスラリーとn-ヘプタン(0.75mL)を順次加えた。45℃で2時間攪拌した後、n-ヘプタン(22g)を15分かけて添加した。45℃でさらに18時間攪拌した後、n-ヘプタン(109g)を75分かけて添加した。45℃でさらに2時間攪拌した後、2時間かけて22℃まで冷却し、さらに1時間かけて10℃まで冷却した。10℃で16時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体を2-メチルテトラヒドロフラン/ヘプタンの混合溶媒(1:9(v/w)、47g)、次いで2-メチルテトラヒドロフラン(68mL)により順次洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、H-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の結晶(12.96g)を得た。
H-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の融点:147℃
収率:95.8%
HPLC純度:100%
測定方法:HPLC Method C
保持時間:2.73 min
質量分析:m/z 578.5([M+H]
+)
【0213】
(実施例57-1)Boc-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OBnの合成
【化78】
窒素置換した反応容器に、臭化ニッケル(II)3水和物(1.58g、5.80mmol)を1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(160mL)に懸濁させたスラリーと4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(1.56g、5.80mmol)を加えた。国際公開第2020/189540号に記載の方法で合成したBoc-Glu(NHPI)-OBn(40.0g、83.0mmol)を攪拌しながら加えた後、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(40mL)、5-ブロモ-1,3-ジフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ベンゼン(26.0g、99mmol)とN-メチルモルホリン(22.8mL、207mmol)を順次加えた。10℃に冷却した後、活性亜鉛(16.26g、249mmol)を加えた。TMSCl(21.0mL、166mmol)を1時間かけて滴下しながら,25℃に昇温した。添加終了直後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。15%塩化アンモニウム水溶液(416g)を0℃にて加えた後、25℃に昇温し50分撹拌した。トルエン(200mL)を加え、スラリーをセライトを用いて濾過した後、ケーキをトルエン(200mL)で洗浄した。得られた溶液を20分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層に、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物(31.4g、84.0mmol)を0.1M水酸化カリウム水溶液(600mL)に溶解させた溶液を攪拌しながら加えた。3時間攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を10%塩化ナトリウム水溶液(400mL)により分液洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、Boc-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OBnを含む溶液(90.81g)を得た。
HPLC純度:78.47%
測定方法:HPLC Method E
保持時間:7.40 min
質量分析:m/z 374([M-Boc+2H]
+)
【0214】
(実施例57-1~57-3)Boc-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OBnの合成:塩基性化合物の添加効果の評価
窒素置換した反応容器に、臭化ニッケル(II)3水和物(0.07eq.)を溶媒(4.0 v/w of Boc-Glu(NHPI)-OBn)に懸濁させたスラリーと4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(0.07eq.)を加えた。国際公開第2020/189540号に記載の方法で合成したBoc-Glu(NHPI)-OBn(X g(表38参照)、1.0eq.)を攪拌しながら加えた後、溶媒(1.0 v/w of Boc-Glu(NHPI)-OBn)、5-ブロモ-1,3-ジフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-ベンゼン(1.2eq.)および実施例57-1においてのみNMM(2.5eq.)を順次加えた。10℃に冷却した後、活性亜鉛(3.0eq.)を加えた。TMSCl(Y eq.(表38参照))を1時間かけて滴下しながら,25℃に昇温した。添加終了後Z時間後にサンプリングし、反応率を確認した。反応率はHPLC分析により算出されたBoc-Glu(NHPI)-OBnの面積値とBoc-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OBnの面積値を用いて、以下の計算式により算出した。
反応率(%)=Boc-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OBnの面積値/(Boc-Glu(NHPI)-OBnの面積値+Boc-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OBnの面積値)×100
【表38】
【0215】
(実施例58)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OHジシクロヘキシルアミン塩の合成
【化79】
窒素置換した反応容器に、実施例57-1で得られたBoc-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OBnの溶液(90.81g)とトルエン(135mL)を加えた後、0℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸(22.0mL、249mmol)を17分かけて添加した後、25℃に昇温した。添加終了後1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。水(40mL)を加えて15分攪拌した後、さらに水(160mL)を加えた。さらに1時間攪拌した後に静置し、有機層を除去することで、H-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OHを含む溶液を得た。得られたH-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OHは、精製することなく次の工程に用いた。
【0216】
上記の通りに得たH-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OHを含む溶液に、40%リン酸カリウム水溶液(60mL)を攪拌しながら加えた。アセトニトリル(100mL)と40%リン酸カリウム水溶液(18mL)を加えた後、N-カルボベンゾキシオキシスクシンイミド(16.53g、66.3mmol)を加えた。添加終了後2時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。n-ヘプタン(80mL)とMTBE(80mL)からなる混合溶液を加え、10分攪拌した後に静置し、有機層を除去した。得られた水層にMTBE(200mL)、0.2M水酸化ナトリウム水溶液(80mL)と20%塩化ナトリウム水溶液(80mL)を加え、13分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を0.2M水酸化ナトリウム水溶液(80mL)と20%塩化ナトリウム水溶液(80mL)の混合溶液により2回分液洗浄した後、0.2M水酸化ナトリウム水溶液(80mL)、1M塩酸水溶液(600mL)によりさらに分液洗浄した。得られた有機層にMTBE(80mL)と10%塩化ナトリウム水溶液(214mL)を加え、10分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮した。得られた残渣にトルエン(120mL)を加えて80mLまで濃縮し、Cbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OHを含む溶液(116.07g)を得た。得られたCbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OHは精製することなく次の工程に用いた。
【0217】
窒素置換した反応容器に、上記の通り調製したCbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OHのトルエン溶液(116.07g)とトルエン(188mL)を加え、50℃に昇温した。ジシクロヘキシルアミン(22.4mL、112mmol)とMTBE(94mL)を加えた後、Cbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OHジシクロヘキシルアミン塩(117mg)を加えた。添加終了後3時間攪拌した後、n-ヘプタン(94mL)を攪拌しながら2時間かけて加えた。添加終了後さらに1時間攪拌した後、n-ヘプタン(188mL)を攪拌しながら3時間かけて加えた。添加終了後さらに1時間攪拌した後、20℃に冷却した。20℃にて13時間攪拌した後、スラリーを濾過した。ケーキをMTBE/n-ヘプタンの混合溶媒(1:1(v/v)、94mL)で洗浄した後、得られた湿性末を減圧条件下で乾燥し、Cbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OHジシクロヘキシルアミン塩(31.7g)を得た。
Cbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OHジシクロヘキシルアミン塩の融点:154℃
収率:64%(Boc-Glu(NHPI)-OBnから4工程での収率)
HPLC純度:99.70%
測定方法:HPLC Method F
保持時間:9.73 min
質量分析:m/z 418([M+H]+)
【0218】
(実施例59)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2の合成
【化80】
反応容器に、実施例58と同様の手法により合成したCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OHジシクロヘキシルアミン塩(42.0g、70.2mmol)と2-メチルテトラヒドロフラン(169mL)を加えた。10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(170mL)による分液洗浄を2回繰り返した後、5%塩化ナトリウム水溶液(170mL)により洗浄した。得られた有機層を減圧条件下で濃縮した。得られた残渣を濾過した後、2-メチルテトラヒドロフラン(240mL)を加え、減圧条件下で濃縮し、Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-OH(29.3g、70.2mmol)を含む溶液(70.63g、41.5w/w%)を取得した。
【0219】
別の反応容器に、上記の通り調製したCbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-OH溶液(41.5w/w%、62.7g、62.3mmol)、実施例56と同様の手法により合成したH-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2(30.0g、51.9mmol)、2-メチルテトラヒドロフラン(167mL)とDIPEA(39.9mL、228mmol)を加えた。プロピルホスホン酸無水物の2-メチルテトラヒドロフラン溶液(1.6M、78mL、125mmol)を10℃にて撹拌しながら加えた後、25℃に昇温した。添加終了後1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。5%炭酸カリウム水溶液(180mL)と1-メチルイミダゾール(4.1mL、51.9mmol)を15℃で攪拌しながら加えた後、25℃に昇温した。50分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を4%硫酸水溶液(180mL)、10%硫酸水素ナトリウム一水和物水溶液(180mL)で順次分液洗浄した後、n-ヘプタン(108mL)、MTBE(72mL)とアセトニトリル(69mL)を加えた。2.5%炭酸カリウム水溶液(171mL)により分液洗浄した後、2-メチルテトラヒドロフラン(60mL)とアセトニトリル(102mL)を加え、2.5%炭酸カリウム水溶液(171mL)で分液洗浄した。得られた有機層に2-メチルテトラヒドロフラン(60mL)とアセトニトリル(102mL)を加え、2.5%炭酸カリウム水溶液(171mL)で分液洗浄した後、減圧条件下で濃縮した。得られた残渣に酢酸イソプロピル(210mL)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を2回繰り返し、Cbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2を含む溶液(84.49g、60.0w/w%)を得た。
HPLC純度:97.90%
測定方法:HPLC Method C
保持時間:4.63 min
質量分析:m/z 999([M+Na]+)
【0220】
(実施例60)Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OH)-NMe
2ジエチルアミン塩の合成
【化81】
反応容器に、実施例59で合成したCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2を含む溶液(60.0w/w%、42.25g、26.0mmol)、酢酸イソプロピル(108mL)と1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(13.6mL、65.0mmol)を加えた後、0℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(4.7mL、26.0mmol)を添加した後、20℃に昇温した。添加終了後3時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。2-メチルテトラヒドロフラン(128mL)を加えた後0℃に冷却し、5%リン酸水素二カリウム水溶液(254mL)を加え、25℃に昇温した。20分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(254mL)で洗浄した後、ジエチルアミン(10.8mL、104mmol)を加えて減圧条件下で144mLまで濃縮した。得られた残渣に、酢酸イソプロピル(120mL)とジエチルアミン(2.69mL、26.0mmol)を加えて144mLまで減圧条件下で濃縮する操作を3回繰り返し、スラリー化させた。さらに酢酸イソプロピル(120mL)とジエチルアミン(2.69mL、26.0mmol)を加えて108mLまで減圧条件下で濃縮した後、酢酸イソプロピル(38.2mL)とジエチルアミン(2.18mL、21.1mmol)を25℃にて攪拌しながら添加した。添加終了後4.5時間攪拌した後、MTBE(192mL)を80分かけて添加した。添加終了後2時間攪拌した後に、スラリーを濾過した。得られた固体を酢酸イソプロピル/MTBE/ジエチルアミンの混合溶液(1:5:0.06(v/v)、72mL)により2回洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OH)-NMe
2ジエチルアミン塩(23.23g、含量92.0w/w%)を得た。
収率:83% (H-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe
2より2工程)
HPLC純度:99.85%
測定方法:HPLC Method C
保持時間:4.18 min
質量分析:m/z 921([M+H]
+)
【0221】
(実施例61)化合物11の合成
【化82】
反応容器に、実施例60で得られたCbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OH)-NMe
2ジエチルアミン塩(92.0w/w%、20.78g、19.2mmol)、アセトニトリル(177mL)、ジシクロヘキシルメチルアミン(8.2mL、38.6mmol)とDIPEA(10.1mL、58.0mmol)を加え、減圧条件下で42.5mLまで濃縮した。得られた残渣にアセトニトリル(177mL)とDIPEA(3.4mL、19.5mmol)を加えて減圧条件下で42.5mLまで濃縮する操作を3回繰り返し、Cbz-Hph(3,5-F
2-4-CF
3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OH)-NMe
2(17.70g)を含む溶液(46.76g、37.9w/w%)を得た。
【0222】
別の反応容器に、実施例47と同様の手法により合成したH-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu L-酒石酸塩(93.8w/w%、18.66g、19.6mmol)と2-メチルテトラヒドロフラン(87mL)を加えた。25℃で攪拌しながら5%炭酸ナトリウム水溶液(87mL)を加えた。10分撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を5%炭酸ナトリウム水溶液(87mL)、5%塩化ナトリウム水溶液(87mL)により分液洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu(14.55g)を含む溶液(29.71g、49.0w/w%)を得た。
【0223】
別の反応容器に、上記の通り調製したCbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OH)-NMe2を含むアセトニトリル溶液(37.9 w/w%, 39.0 g, 16.0 mmol)、上記の通り調製したH-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuを含む2-メチルテトラヒドロフラン溶液(49.0w/w%、26.7g、17.6mmol)、2-メチルテトラヒドロフラン(118mL)とアセトニトリル(13.5mL)を加えた。10℃に冷却した後、DIPEA(5.5mL、31.6mmol)とHATU(9.14g、24.1mmol)を攪拌しながら順次加え、25℃に昇温した。添加終了後3時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。2-メチルテトラヒドロフラン(44mL)を加え、10℃に冷却した後、10%アンモニア水溶液(100mL)を加えた。25℃に昇温し、30分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を10%アンモニア水(100mL)、10%クエン酸水溶液(100mL)、5%炭酸ナトリウム水溶液(100mL)、20%塩化ナトリウム水溶液(100mL)により分液洗浄した後、減圧条件下で79mLまで濃縮した。得られた残渣に2-メチルテトラヒドロフラン(45mL)を加えて減圧条件下で濃縮し、化合物11を含む溶液(69.84g、含量37.8w/w%)を得た。
HPLC純度:96.49%
測定方法:HPLC Method G
保持時間:10.27 min
質量分析:m/z 1668([M+Na]+)
【0224】
(実施例62)化合物12の合成
【化83】
反応容器に、実施例61により得られた化合物11を含む溶液(37.8w/w%、69.14g、15.9mmol)と2-メチルテトラヒドロフラン(247mL)を加えた後、0℃に冷却した。1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(22.6mL、108mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(12.0mL、66.4mmol)を添加した後、24℃に昇温した。添加終了後3時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。0℃に冷却し、5%リン酸水素二カリウム水溶液(120mL)を加えた後に、24℃に昇温した。50分攪拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を5%塩化アンモニウム水溶液(131mL、4回)、5%炭酸ナトリウム水溶液(131mL)で分液洗浄した後、減圧条件下で濃縮し、化合物12を含む溶液(54.99g、含量45.8w/w%)を得た。
HPLC純度:95.41%
測定方法:HPLC Method G
保持時間:9.22 min
質量分析:m/z 1612([M+Na]
+)
【0225】
(実施例63)化合物3の合成
【化84】
反応容器に10%パラジウム炭素(54.13% wet、3.97g、1.71mmol、11mol% on Pd metal basis)とテトラヒドロフラン(84mL)を加えた。25℃で窒素置換し、水素置換して水素雰囲気下(0.35MPaG)で2時間攪拌した。実施例62で得られた化合物12を含む溶液(45.8w/w%、53.95g、15.5mmol)とテトラヒドロフラン(84mL)を加えた。水素雰囲気下(0.20MPaG)で1時間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。反応混合物を濾過した後、ケーキをテトラヒドロフラン(57mL)により2回洗浄した。濾液と洗浄液の混合溶液を減圧条件下で濃縮した後、アセトニトリル(226mL)を加えて減圧条件下で90mLまで濃縮する操作を3回繰り返した。得られた残渣を濾過した後、テトラヒドロフラン(47mL)とトルエン(110mL)を加えて減圧条件下で濃縮した。テトラヒドロフラン(224mL)を加えて減圧条件下で134mLまで濃縮し、濃縮液(120.80g)を得た。
【0226】
得られた濃縮液の一部(107.90g)に、テトラヒドロフラン(20mL)を添加し、化合物3を含む溶液を調製した。別の反応容器にn-ヘプタン(240mL)を加え、25℃にて攪拌しながら先に調製した化合物3を含む溶液を1時間かけて滴下した。テトラヒドロフラン(10mL)を添加し、25℃にて1時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体をn-ヘプタン(100mL)により洗浄した後、減圧条件下にて乾燥し、化合物3(19.07g、含量97.06w/w%)を得た。含量および収率は、標品を用いたHPLC分析により算出した。
収率:91.8%(Cbz-Hph(3,5-F2-4-CF3)-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OH)-NMe2ジエチルアミン塩から3工程での収率)
HPLC純度:97.56%
測定方法:HPLC Method G
保持時間:6.57 min
質量分析:m/z 1456([M+H]+)
【0227】
(実施例64)化合物4の合成
【化85】
反応容器にHATU(2.36g、6.21mmol)とアセトニトリル(76mL)を加えた。別の反応容器に、実施例63と同様の手法により合成した化合物3(9.50g、6.53mmol)、DIPEA(2.62mL、15.0mmol)とアセトニトリル(152mL)を加えて溶液を調製し、その半量を先に調製したHATUのアセトニトリル溶液に25℃で攪拌しながら6時間かけて添加した。添加終了後13時間静置保管した後、HATU(2.36g、6.21mmol)をアセトニトリル(11.8mL)に溶解させた溶液、アセトニトリル(3.8mL)を順次加えた。先に調製した化合物3とDIPEAを含むアセトニトリル溶液の残りの半量を6時間かけて添加した。添加終了後30分間攪拌した後にサンプリングし、HPLC分析で反応完結を確認した。MTBE(124mL)、ヘプタン(9.5mL)と2.5%アンモニア水溶液(95g)を加えた。10分撹拌した後に静置し、水層を除去した。得られた有機層を4%硫酸水溶液(133g)、5%リン酸水素二カリウム水溶液(95g)、0.5%塩化ナトリウム水溶液(95g、2回)により洗浄した後、除塵ろ過を行い、得られたろ液を減圧条件下で濃縮した。アセトニトリル(66.5mL)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を2回繰り返した後、アセトン(66.5mL)を加えて減圧条件下で濃縮する操作を6回繰り返した。得られた残渣にアセトン(38mL)を加え、化合物4を含む溶液(54.3g)を取得した。
HPLC純度:90.22%
測定方法:HPLC Method H
保持時間:17.99 min
質量分析:m/z 1439([M+H]
+)
【0228】
(実施例65)化合物4の水和物結晶(C型)の合成
反応容器に実施例64と同様の手法により合成した化合物4(6.00g、4.17mmol)を含むアセトン溶液(33.33g)とアセトン(12.53g)を加えた。40℃に昇温し、撹拌しながら水(19.2mL)を10分かけて添加した。化合物4の水和物結晶(C型)(18mg)をガラスバイアルに加え、アセトン/水の混合溶液(5:4(v/v)、0.24mL)で懸濁させたのち、懸濁液を晶析液に加えた。さらにガラスバイアルにアセトン/水の混合溶液(5:4(v/v)、0.24mL)を加え、得られた懸濁液を晶析液に加えた。2時間攪拌した後、水(4.8mL)を10分かけて添加した。さらに3時間攪拌した後に、水(4.8mL)を10分かけて添加した。さらに1時間攪拌した後に、1時間かけて25℃まで冷却した。25℃にて1時間攪拌した後、懸濁液を13時間静置保管した。25℃でさらに2時間攪拌した後、懸濁液を濾過した。得られた湿性末をアセトン(16.8mL)と水(13.2mL)の混合溶液により洗浄した後、メタノール(15mL)と水(15mL)の混合溶液により洗浄した。さらに得られた湿性末をメタノール(15mL)と水(15mL)の混合溶液に懸濁させ、14時間静置保管した後、懸濁液を濾過した。得られた湿性末を水(30mL)により懸濁し、2時間静置保管した後に濾過した。前述した水による懸濁洗浄を再度実施した後、得られた湿性末を減圧条件下にて乾燥し、化合物4の水和物結晶(C型)(4.97g)を得た。
HPLC純度:99.74 %
測定方法:HPLC Method H
保持時間:17.91 min
質量分析:m/z 1439([M+H]+)
【0229】
(実施例66)H-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶化
アモルファス状態のH-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu(14.82g)とCPME(21.7g)を混合し、H-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuのCPME溶液(含量40.6w/w%)を調製した。調製した溶液を5℃にて1日静置することで、H-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶を得た。
【0230】
(実施例67)Cbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶化
アモルファス状態のCbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu(10mg)とトルエン/ヘプタンの混合溶媒(1:2(v/v)、0.1mL)をバイアルに加えた後、得られた溶液を室温にて2日間振とうすることで、Cbz-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBuの結晶を得た。
【0231】
(実施例68)H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu L-酒石酸塩の結晶化
アモルファス状態のH-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu(600mg、0.808mmol)、L-酒石酸(121mg、0.808mmol)とメタノール(6mL)をガラスバイアルに加え、溶液を調製した。調製した溶液のうち、0.1mLを別のガラスバイアルに加えた後、減圧条件下で濃縮乾固することで溶媒を除去した。酢酸n-ブチル(0.02mL)とガラスビーズをバイアルに加え、25℃で7日間振とうすることで、H-MeLeu-Ile-MeAla-Aze-EtPhe(4-Me)-Sar-OtBu L-酒石酸塩の結晶を得た。
【0232】
(実施例69)Cbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2の結晶化
アモルファス状態のCbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2(1.19g)にCPME(5.94mL)を加え、室温にて4時間攪拌した後、スラリーを濾過した。得られた固体をCPME(2.38mL)により2回洗浄した後、減圧条件下で乾燥し、Cbz-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2の結晶を得た。
【0233】
(実施例70)H-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2の結晶化
アモルファス状態のH-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2(10mg)とテトラヒドロフラン(0.02mL)をバイアルに加えた後、室温にて6日間振とうした。得られた溶液にヘプタン(0.04mL)を加え、さらに室温にて6日間振とうすることで、H-Pro-cLeu-MeGcp-MeAsp(OtBu)-NMe2の結晶を得た。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明により、N-モノアルキルアミノ酸、およびN-モノアルキルアミノ酸を含むペプチドを含む医薬品や中間体とその製造方法が提供される。