(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】遺伝子サンプルを識別且つ区別するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6837 20180101AFI20240205BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240205BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALN20240205BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALN20240205BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20240205BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
C12Q1/6837 Z ZNA
G01N33/53 M
C12Q1/6883 Z
C12Q1/6888 Z
C12M1/34 Z
C12N15/09 200
(21)【出願番号】P 2019561279
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(86)【国際出願番号】 US2018031636
(87)【国際公開番号】W WO2018208804
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518173090
【氏名又は名称】リヴィア バイオセンサーズ,エルエルシー
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ケイン,ロバート チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】コツェログロウ,セオフィロス
(72)【発明者】
【氏名】バシキーロフ,ウラジーミル アイ.
(72)【発明者】
【氏名】シェン,リチャード
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/079446(WO,A1)
【文献】米国特許第08105471(US,B1)
【文献】特表2005-509127(JP,A)
【文献】特表2006-524319(JP,A)
【文献】国際公開第2007/027495(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/187234(WO,A1)
【文献】Adv. Funct. Mater.,2015年,vol.25, p.6725-6732
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.1つ以上の分析物を含むサンプルを提供する工程、及び
b.チャネル中の等速電気泳動(ITP)によって前記1つ以上の分析物を濃縮する又は輸送する工程を含む方法であって、
前記チャネルの表面は、シリコン基板と前記表面に結合するアレイに配置される複数のプローブからなる工程と、
前記アレイの単一特徴におけるプローブは、当該プローブに少なくとも2つの種を含むと共に、前記シリコン基板は絶縁層からなる工程を含み、
c.前記アレイの前記単一特徴に関連したシグナルを単一の解像度要素に統合するため
、前記1つ以上の分析物の少なくとも一部の
、前記プローブへの結合に関連したシグナルを検出する工程、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記絶縁層は酸化ケイ素を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記絶縁層は少なくとも約250ナノメートルの厚さである、ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記表面は少なくとも1つのウェルを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのウェルはマイクロウェルである、ことを特徴とする請求項4に記
載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのウェルはウェルのアレイを含む、ことを特徴とする請求項4に記
載の方法。
【請求項7】
前記プローブの少なくとも2つの種は各々、同じ被験体に特異的である、ことを特徴と
する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体は、有機体の種、有機体の株、有機体の分岐群、遺伝学的変異体、病原体の
形質、抵抗性の形質、および有機体の種の個々のメンバーからなる群から選択される、こ
とを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ITPは、約800ボルト以下の電圧で実施される、ことを特徴とする請求項1に
記載の方法。
【請求項10】
前記チャネルは、100マイクロメートル以下の高さを持つ、ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記チャネルは、狭窄部分又はテーパー状部分を含まない、ことを特徴とする請求項1
に記載の方法。
【請求項12】
前記チャネルは、2000マイクロメートル以下の幅を持つ、ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記分析物は核酸を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程を更に含む、ことを特徴とする請求
項1に記載の方法。
【請求項15】
前記分析物を検出する工程を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程、及び前記分析物を検出する工程を
更に含み、ここで、前記方法は約60分以下で実施される、ことを特徴とする請求項1に
記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年5月9日出願の米国仮特許出願第62/503,502号、2017年8月17日出願の米国仮特許出願第62/546,929号、及び2017年11月15日出願の米国仮特許出願第62/586,760号の利益を主張するものであり、これらの各々は全ての目的のためにその全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
DNAマイクロアレイ(又はバイオチップ)は、標的核酸の存在に対しサンプルをプローブで探すために頻繁に使用される。マイクロアレイは、固形支持体に固定されたプローブのアレイを含んでいる。プローブのアレイは、プローブのクラスタとして構築することができ、各々が個々に対処可能である。各クラスタは複数のプローブを含むことができ、各プローブは各クラスタ中の他のプローブと同一であり、各々が同じ標的核酸配列に結合することができる。サンプルがマイクロアレイにハイブリダイズされた後、プローブに結合される標的核酸の存在が判定され得る。マイクロアレイは、コスト効率が良く、サンプル中の何千~何百万もの配列の存在を判定することができるという点で非常にスケーラブルであり、且つ他の同様に調整した(scaled)手法よりも早い時間での返答を提供するという利点を提供することができる。
【0003】
標準マイクロアレイは、検出電位を最大化するためにアレイ上の特定位置のプローブの編成を必要とすることから、慎重に設計されなければならない。それ故に、環境サンプルなどの複合サンプル、即ち遺伝物質の1より多くのソースを含むものを調べる時に、検出が問題となり得る。プローブの統合(Poolong)は、特異的なプローブ編成の要件により制限されることなく、使用可能な検出プラットフォームの型に適応性を提供する。本明細書中の方法とシステムは、統合プローブ(pooled probes)を使用した複合サンプル中の被験体の識別と区別のための新たな検出システムを記載する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書には、特定の実施形態において、(a)分析物を含むサンプルを提供する工程;及び(b)チャネル中の等速電気泳動(ITP)によって前記分析物を濃縮する又は輸送する工程を含む方法が開示され、前記チャネルの表面はシリコン基板を含む。場合によっては、前記シリコン基板は絶縁層を含む。場合によっては、前記絶縁層は酸化ケイ素を含む。場合によっては、前記絶縁層は少なくとも約250ナノメートルの厚さである。場合によっては、前記絶縁層は少なくとも約500ナノメートルの厚さである。
【0005】
幾つかの実施形態において、前記表面は少なくとも1つのウェルを含む。場合によっては、前記少なくとも1つのウェルはマイクロウェルである。場合によっては、前記少なくとも1つのウェルはウェルのアレイを含む。場合によっては、プローブは前記表面に結合される。場合によっては、前記プローブはアレイに配置される。場合によっては、前記アレイの単一特徴におけるプローブは、プローブの少なくとも2つの種を含む。
【0006】
幾つかの実施形態において、前記プローブの少なくとも2つの種は各々、同じ被験体に特異的である。場合によっては、前記被験体は有機体の種を含む。場合によっては、前記被験体は有機体の株を含む。場合によっては、前記被験体は有機体の分岐群を含む。場合によっては、前記被験体は遺伝学的変異体を含む。場合によっては、前記被験体は病原性の形質を含む。場合によっては、前記被験体は抵抗性の形質を含む。場合によっては、前記被験体は有機体の種の個々のメンバーを含む。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記ITPは、約800ボルト以下の電圧で実施される。幾つかの実施形態において、前記ITPは、約400ボルト以下の電圧で実施される。幾つかの実施形態において、前記ITPは、約200ボルト以下の電圧で実施される。幾つかの実施形態において、前記チャネルは100マイクロメートル以下の高さを持つ。幾つかの実施形態において、前記チャネルは75マイクロメートル以下の高さを持つ。幾つかの実施形態において、前記チャネルは50マイクロメートル以下の高さを持つ。幾つかの実施形態において、前記チャネルは25マイクロメートル以下の高さを持つ。幾つかの実施形態において、前記チャネルは狭窄部分又はテーパー状部分を含まない。幾つかの実施形態において、前記チャネルは2000マイクロメートル以下の幅を持つ。幾つかの実施形態において、前記チャネルは1000マイクロメートル以下の幅を持つ。幾つかの実施形態において、前記チャネルは500マイクロメートル以下の幅を持つ。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記分析物は核酸を含む。場合によっては、前記分析物はDNAを含む。場合によっては、前記分析物はRNAを含む。場合によっては、前記方法は、前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程を更に含む。場合によっては、前記方法は、前記分析物を検出する工程を更に含む。場合によっては、前記方法は、前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程、及び前記分析物を検出する工程を更に含み、ここで、前記方法は約60分以下で実施される。場合によっては、前記方法は、前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程、及び前記分析物を検出する工程を更に含み、ここで、前記方法は約45分以下で実施される。場合によっては、前記方法は、前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程、及び前記分析物を検出する工程を更に含み、ここで、前記方法は約30分以下で実施される。場合によっては、前記方法は、前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程、及び前記分析物を検出する工程を更に含み、ここで、前記方法は約15分以下で実施される。場合によっては、前記方法は、前記分析物を前記表面上のプローブに結合する工程、及び前記分析物を検出する工程を更に含み、ここで、前記方法は約5分以下で実施される。
【0009】
本明細書には、特定の実施形態において、検出装置が開示され、該検出装置はプローブの1つ以上のセットを含み、前記プローブの1つ以上のセットの各セットは複数のプローブを含み、前記複数のプローブの各々は1つ以上の被験体に特異的な特徴を含み、前記プローブの1つ以上のセットの各セットは、複数の異なる被験体のうち1人の異なる被験体の標的核酸に結合し、プローブの1つ以上のセットは統合される(pooled)。
【0010】
幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも2つが同一である。幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも2つが異なっている。幾つかの実施形態において、前記複数のプローブの各セットは複数の固有のプローブを含む。幾つかの実施形態において、前記複数のプローブの各セットは、前記複数の固有のプローブの平均表示を含む。幾つかの実施形態において、前記複数の固有のプローブの平均表示は、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセット内のプローブの総数を制限することにより、予め定めた比率で前記複数の固有のプローブを混合することにより、或いはその両方の組み合わせにより、制御される。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つは、約2-1000の固有のプローブを含む。幾つかの実施形態において、前記平均表示は、前記プローブのセット内に前記複数の固有のプローブの少なくとも1つの約2-1000の表示を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、プローブの少なくとも1つのセット内の被験体に特異的な特徴は同一である。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、異なる被験体に特異的な特徴を含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、個々に対処可能である。幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも1つは、前記標的核酸上に存在する同一の核酸配列に相補的である。幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも2つは、前記標的核酸上に存在する異なる核酸配列に相補的である。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、被験体のゲノムの固有領域に相補的である。幾つかの実施形態において、前記被験体のゲノムの固有領域は、異なる被験体のゲノムには表わされない。幾つかの実施形態において、前記複数の異なる被験体は、複数の異なる細胞型を含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、前記複数の異なる細胞型の1つの異なる細胞型からの標的核酸に結合する。幾つかの実施形態において、前記複数の異なる被験体は、複数の異なる遺伝子、ゲノム領域、有機体、個体、或いは株を含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、前記複数の異なる有機体のうち1つの異なる有機体の標的核酸に結合する。幾つかの実施形態において、前記複数のプローブは核酸分子を含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定される。幾つかの実施形態において、前記表面はビーズである。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定されない。幾つかの実施形態において、前記被験体に特異的な特徴は1つ以上の遺伝子特徴を含む。幾つかの実施形態において、前記1つ以上の遺伝子特徴は、以下から成る群から選択される:ゲノム、染色質、染色体、染色体座、染色体材料、対立遺伝子、遺伝子、遺伝子群、遺伝子座、遺伝的多型、遺伝子突然変異、ヌクレオチド、一塩基多型(SNP)、制限断片長多型(RFLP)、可変タンデムリピート(VTR)、コピー数多型(CNV)、マイクロサテライト配列、遺伝子マーカー、配列マーカー、配列でタグ付けされた部位(STS)、プラスミド、転写単位、転写生成物、遺伝子発現状態、保存領域、病原性遺伝子島(PIA)、及びそれらの任意の組み合わせ。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、100を超えるセットのプローブを含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、約50-1000のプローブを含む。幾つかの実施形態において、複数のプローブの少なくとも1つは、標的特異的ガイド核酸(gNA):核酸に誘導されたヌクレアーゼシステム複合体を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、プローブの1つ以上のセットは反応チャンバに統合される。幾つかの実施形態において、反応チャンバは、PCRウェル、アレイスポット、ドロップレット、電極、又はマイクロ流体チャネルである。幾つかの実施形態において、検出装置は更に複数の反応チャンバを含む。幾つかの実施形態において、電極は、金、イリジウム、白金、銅、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、反応チャンバは少なくとも1つの孔を含む。幾つかの実施形態において、複数のプローブの少なくとも1つは検出可能なラベルで標識される。幾つかの実施形態において、検出可能なラベルは、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、発色団、ルミフォア、フルオロフォア、クロモゲン、ハプテン、抗原、放射性同位体、磁性粒子、ナノ粒子、量子ドット、バーコード、活性部位、結合部位、酸化還元反応活性マーカー群、アプタマー、疎水性種(specie)、親水性種、結合対の1つのメンバー、ドナー染料(レポーター)、アクセプター染料(クエンチャー)、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0013】
幾つかの実施形態において、検出装置は第2のプローブの1つ以上のセットを更に含み、前記第2のプローブの1つ以上のセットの各セットは複数の第2のプローブを含み、前記第2のプローブの1つ以上のセットの各セットは、標的核酸付近の核酸の領域に結合する。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸の上流又は下流にある。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸から10bp未満分離される。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸から10bp未満、20bp未満、30bp未満、40bp未満、50bp未満、又は100bp未満分離される。幾つかの実施形態において、前記第2のプローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定されない。幾つかの実施形態において、前記第2のプローブの1つ以上のセットの少なくとも1つは、検出装置の表面上に固定される。幾つかの実施形態において、前記第2のプローブの1つ以上のセットの少なくとも1つは、検出可能なラベルにより標識される。幾つかの実施形態において、ラベルは、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、発色団、ルミフォア、フルオロフォア、クロモゲン、ハプテン、抗原、放射性同位体、磁性粒子、ナノ粒子、量子ドット、バーコード、活性部位、結合部位、酸化還元反応活性マーカー群、アプタマー、疎水性種(specie)、親水性種、結合対の1つのメンバー、ドナー染料(レポーター)、アクセプター染料(クエンチャー)、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。幾つかの実施形態において、複数の第2のプローブの少なくとも1つは、標的特異的ガイド核酸(gNA):核酸に誘導されたヌクレアーゼシステムタンパク質複合体である。幾つかの実施形態において、第2のプローブの1つ以上のセットは、捕捉プローブの1つ以上のセットである。幾つかの実施形態において、検出装置は単回用装置である。
【0014】
本明細書には、特定の実施形態において、(a)複数の異なる被験体に由来する複数の核酸を含むサンプルを提供する工程;(b)前記複数の核酸を検出装置にハイブリダイズする工程であって、前記検出装置はプローブの1つ以上のセットを含み、前記プローブの1つ以上のセットは統合され、前記プローブの1つ以上のセットの各セットは複数のプローブを含み、前記複数のプローブの各々は1つ以上の被験体に特異的な特徴を含み、前記プローブの1つ以上のセットの各セットは、前記複数の異なる被験体のうち少なくとも2つからの前記少なくとも1つの標的核酸に結合する、工程;(c)前記複数のプローブの1つのプローブへの前記少なくとも1つの標的核酸の結合に関連したシグナルを検出する工程;及び(d)前記サンプル中の前記少なくとも1つの標的核酸の存在に基づいて前記複数の異なる被験体を識別する工程を含む方法が開示される。幾つかの実施形態において、前記方法は、工程a)の前に、前記複数の異なる被験体から前記複数の核酸を抽出する工程を更に含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、工程b)の前に、前記複数の核酸を断片化する工程を更に含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、工程b)の前に、前記複数の核酸を増幅する工程を更に含む。幾つかの実施形態において、前記複数の核酸は増幅されない。幾つかの実施形態において、前記方法は、前記複数の異なる被験体を識別する1つ以上のレポートを提供する工程を更に含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記複数の異なる被験体は、複数の異なる細胞型を含む。幾つかの実施形態において、前記複数の異なる被験体は、複数の異なる有機体を含む。幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも2つが同一である。幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも2つが異なっている。幾つかの実施形態において、前記複数のプローブの各セットは複数の固有のプローブを含む。幾つかの実施形態において、前記複数のプローブの各セットは、前記複数の固有のプローブの平均表示を含む。幾つかの実施形態において、前記複数の固有のプローブの平均表示は、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセット内のプローブの総数を制限することにより、予め定めた比率で前記複数の固有のプローブを混合することにより、或いはその両方の組み合わせにより、制御される。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つは、約2-1000の固有のプローブを含む。幾つかの実施形態において、前記平均表示は、前記プローブのセット内に前記複数の固有のプローブの少なくとも1つの約2-1000の表示を含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、プローブの少なくとも1つのセット内の被験体に特異的な特徴は同一である。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、異なる被験体に特異的な特徴を含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、個々に対処可能である。幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも1つは、前記標的核酸上に存在する同一の核酸配列に相補的である。幾つかの実施形態において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも1つは、前記標的核酸上に存在する異なる核酸配列に相補的である。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、被験体のゲノムの固有領域に相補的である。幾つかの実施形態において、前記被験体のゲノムの固有領域は、異なる被験体のゲノムには表わされない。幾つかの実施形態において、前記複数のプローブは核酸分子を含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定される。幾つかの実施形態において、前記表面はビーズである。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定されない。幾つかの実施形態において、前記被験体に特異的な特徴は1つ以上の遺伝子特徴を含む。幾つかの実施形態において、前記1つ以上の遺伝子特徴は、以下から成る群から選択される:ゲノム、染色質、染色体、染色体座、染色体材料、対立遺伝子、遺伝子、遺伝子群、遺伝子座、遺伝的多型、遺伝子突然変異、ヌクレオチド、一塩基多型(SNP)、制限断片長多型(RFLP)、可変タンデムリピート(VTR)、コピー数多型(CNV)、マイクロサテライト配列、遺伝子マーカー、配列マーカー、配列でタグ付けされた部位(STS)、プラスミド、転写単位、転写生成物、遺伝子発現状態、保存領域、病原性遺伝子島(PIA)、及びそれらの任意の組み合わせ。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、100を超えるセットのプローブを含む。幾つかの実施形態において、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、約50-1000のプローブを含む。幾つかの実施形態において、前記少なくとも1つの標的核酸は、検出可能なラベルで標識される。幾つかの実施形態において、検出可能なラベルは蛍光染料を含む。幾つかの実施形態において、前記少なくとも1つの標的核酸は、前記検出可能なラベルを含む検出プローブの前記少なくとも1つの標的核酸へのハイブリダイゼーションにより標識される。幾つかの実施形態において、前記複数のプローブの第1のプローブは第1の被験体に特異的な特徴を含み、前記複数のプローブの第2のプローブは第2の被験体に特異的な特徴を含み、前記第1のプローブと前記第2のプローブは、前記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズする。幾つかの実施形態において、複数のプローブの少なくとも1つは検出可能なラベルで標識される。幾つかの実施形態において、検出可能なラベルは、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、発色団、ルミフォア、フルオロフォア、クロモゲン、ハプテン、抗原、放射性同位体、磁性粒子、ナノ粒子、量子ドット、バーコード、活性部位、結合部位、酸化還元反応活性マーカー群、アプタマー、疎水性種(specie)、親水性種、結合対の1つのメンバー、ドナー染料(レポーター)、アクセプター染料(クエンチャー)、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。幾つかの実施形態において、複数のプローブの少なくとも1つは、標的特異的ガイド核酸(gNA):核酸に誘導されたヌクレアーゼシステムタンパク質複合体である。
【0017】
幾つかの実施形態において、プローブの1つ以上のセットは反応チャンバに統合される。幾つかの実施形態において、反応チャンバは、PCRウェル、アレイスポット、ドロップレット、電極、又はマイクロ流体チャネルである。幾つかの実施形態において、前記方法の検出装置は更に複数の反応チャンバを含む。幾つかの実施形態において、電極は、金、イリジウム、白金、銅、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、反応チャンバは少なくとも1つの孔を含む。幾つかの実施形態において、ハイブリダイズの前に、多数の核酸が濃縮される。幾つかの実施形態において、複数の核酸は、等速電気泳動を使用して濃縮される。
【0018】
幾つかの実施形態において、検出装置は第2のプローブの1つ以上のセットを更に含み、前記第2のプローブの1つ以上のセットの各セットは複数の第2のプローブを含み、前記第2のプローブの1つ以上のセットの各セットは、標的核酸付近の核酸の領域に結合する。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸の上流又は下流にある。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸から10bp未満分離される。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸から10bp未満、20bp未満、30bp未満、40bp未満、50bp未満、又は100bp未満分離される。幾つかの実施形態において、前記第2のプローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定されない。幾つかの実施形態において、前記第2のプローブの1つ以上のセットの少なくとも1つは、検出装置の表面上に固定される。幾つかの実施形態において、第2のプローブの1つ以上のセットの少なくとも1つは、ラベルを含む。幾つかの実施形態において、ラベルは、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、発色団、ルミフォア、フルオロフォア、クロモゲン、ハプテン、抗原、放射性同位体、磁性粒子、ナノ粒子、量子ドット、バーコード、活性部位、結合部位、酸化還元反応活性マーカー群、アプタマー、疎水性種(specie)、親水性種、結合対の1つのメンバー、ドナー染料(レポーター)、アクセプター染料(クエンチャー)、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。幾つかの実施形態において、複数の第2のプローブの少なくとも1つは、標的特異的ガイド核酸(gNA):核酸に誘導されたヌクレアーゼシステム複合体である。幾つかの実施形態において、第2のプローブの1つ以上のセットは、捕捉プローブの1つ以上のセットである。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記方法は更に、検出装置を光源に晒す工程を含む。幾つかの実施形態において、前記方法は更に、標的核酸を含む核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実行する工程を含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、検出装置に電圧をかける工程を含む。幾つかの実施形態において、信号は、蛍光信号、電気化学式信号、又は電流インピーダンスの尺度(measure)である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】バイオチップシステムの実施形態を例示する。
図1Aは4つの典型的な特徴を示し、各特徴は、サンプル中に同一のプローブ、及び1つの被験体からの4つの未結合の標識された標的を含む。
【
図1B】バイオチップシステムの実施形態を例示する。
図1Bは、サンプル中の単一の被験体からの4つのプローブ、及び4つの未結合の標識された標的を備えた、被験体に特異的な特徴を図示する。
【
図1C】バイオチップシステムの実施形態を例示する。
図1Cは、4つの異なる特徴に結合された4つの標的を示す。
【
図1D】バイオチップシステムの実施形態を例示する。
図1Dは、1つの被験体に特異的な特徴に結合された4つの標的を示す。
図1Cを
図1Dと比較すると、複数の被験体標的に配向された複数の異なるプローブを使用した時に1つの特徴に生じ得るシグナル増幅が実証される。
【
図1E】バイオチップシステムの実施形態を例示する。
図1Eは、1つの異なる特徴内での固有のプローブの順序付けた統合を含む特徴を示す。
【
図1F】バイオチップシステムの実施形態を例示する。
図1Fは、特徴の中に固有のプローブの無作為統合を含む特徴を示す。
【
図2】1つの特徴ごとに結合するフルオロフォアの数の増大により得ることができる相対的なシグナルを示す。
【
図3】本明細書に開示される方法を実行するのに適切な、典型的なコンピュータシステムを示す。
【
図4】M13mp18ファージベクター配列上で識別された22の固有領域を示す。
【
図5】本明細書に記載される方法を使用してM13mp18ファージベクター配列に対して設計された固有のプローブの例を示す。
【
図6】トランスポソーム複合体を使用した二本鎖DNAの一工程の(one-step)断片化及び標識化の典型的な図を示す。
【
図7A】別個の捕捉配列及び検出配列でのハイブリダイゼーションを介した標的核酸のハイブリダイゼーション及び検出を示す。
【
図7B】別個の捕捉配列及び検出配列でのハイブリダイゼーションを介した標的核酸のFRETシグナル検出を示す。
【
図7C】多数のハイブリダイゼーション配列を介した標的核酸のアレイへのハイブリダイゼーションを表す。
【
図8】フィルタ基板(filter substrate)上のオリゴヌクレオチドアレイにおいて濃縮される核酸の典型的な概要を表す。
【
図9B】コンピュータシステムの典型的な構造を表す。
【
図9C】コンピュータシステムの典型的なネットワークを表す。
【
図9D】典型的なマルチプロセッサーコンピュータシステムを表す。
【
図10】ウイルス性結核対非ウイルス性結核に関するアッセイの結果を示す。
【
図11】4つのプローブを含む反応チャンバを表し、各プローブはレポーター及びクエンチャーを含んでいる。光源への曝露に際し、後のPCRはプローブを加水分解し、レポーターが蛍光信号を発することを可能にする。
【
図12】ブドウ球菌のMRSE又はMSSAの菌株を検出するときの信号増加を例示する。Y軸は、「バックグラウンドの標準偏差で割られる信号」として定めされる、信号対雑音比(SNR)を示す。この例において、SNR>3のバックグラウンドを持つ信号の可能性が<0.3%であるので、株は、SNR>3を有する時に検出されると定められる(帰無仮説試験)。
図12はまた、2つのブドウ球菌株を区別する能力を例示する。
【
図13】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンドの画像を示す。
【
図14A】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Aは、入口ポートを出る蛍光標識されたサンプルDNAを示す。
【
図14B】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Bは、フローセルチャネルに集中し始めるDNAバンドを示す。
【
図14C】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Cは、フローセルチャネルに形成される、集中したDNAバンドを示す。
【
図14D】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Dは、フローセルチャネルのテーパー状部分の「咽喉部」に進入するDNAバンドを示す。
【
図14E】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Eは、咽喉部を通って移動するDNAバンドを示す。
【
図14F】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Fは、咽喉部の端部に近づくDNAバンドを示す。
【
図14G】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Gは、フローセルチャネルのアレイハイブリダイゼーション領域に進入するDNAバンドを示す。
【
図14H】フローセルを通ってITPの下に遊走するDNAバンド拡大画像を示す。
図14Hは、フローセルチャネルのハイブリダイゼーション領域におけるDNAバンドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
下記の用語は、当業者によるこれら用語の理解に加えて、本明細書に使用されるような用語の意味を示すために議論される。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、「a」、「and」、及び「the」は、内容が他に明確に示していない限り、複数の参照を含む場合がある。例えば、用語「細胞」は、複数の細胞、そしてその混合物も含み得る。
【0022】
本明細書で使用されるように、用語「エピゲノム」は、遺伝子材料の変化、又は遺伝子材料のタンパク質発現を指し、これらは、DNAメチル化、染色質の再構成又は再形成などの配列レベルでは反映されない。「トランスクリプトーム」は、特定環境条件下で有機体によって合成される遺伝子転写産物(mRNA)の全体を指す。トランスクリプトームのデータセットは、限定されないが、目的の遺伝子の発現の活性化又は不活性化に関する質的且つ量的な情報を含む。トランスクリプトームはまた、microRNAs、piwiRNA、構造的RNA、タンパク質に結合するRNA、テロメラーゼRNA、及びトランスポゾンRNAを含むタンパク質に対してコードしないRNA転写物(非コードRNA又はncRNA)を含む。「エクソーム」は、エクソンによって形成されたゲノムの部分を指し、これは転写時に、成熟RNA内にとどまる配列である。「マイクロバイオーム」は、種、通常は起源となる微生物にかかわらず、生体サンプル内のゲノムの全体を指す。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「遺伝学的特徴」は、任意のゲノム、遺伝子型、ハプロタイプ、染色質、染色体、染色体遺伝子座、染色体材料、デオキシリボ核酸(DNA)、対立遺伝子、遺伝子、遺伝子クラスタ、遺伝子座、遺伝的多型、遺伝子突然変異、遺伝子突然変異速度、ヌクレオチド、ヌクレオチド塩基対、一塩基多型(SNP)、制限酵素断片長多型(RFLP)、可変タンデムリピート(VTR)、コピー数多型(CNV)、マイクロサテライト配列、遺伝マーカー、配列マーカー、配列タグ付き部位(STS)、プラスミド、転写ユニット、転写産物、遺伝子発現レベル、遺伝子発現(例えば転写)状態、リボ核酸(RNA)、相補的DNA(cDNA)、保存領域、及び病原性島を指し、これらは上述の何れかに関連付けられるヌクレオチド配列及びコードされたアミノ酸配列を含む。後成的な特徴は、遺伝子材料の任意の特徴、即ち、全てのゲノム、ベクター及びプラスミドDNA並びに染色質であり、これは、体細胞分裂中に遺伝性であり且つ生殖細胞系列伝達において時折遺伝性であるが、DNA配列に非変異的であり、且つそれ故に基本的に可逆的である様式で、遺伝子発現に影響を及ぼすものであり、DNAヌクレオチドのメチル化及び染色質に関連するヒストンタンパク質のアセチル化を含むがこれらに限定されない。それ故、本明細書で使用されるように、遺伝子配列データは、限定されないが、ヌクレオチド配列、デオキシリボ核酸(DNA)配列、及びリボ核酸(RNA)配列を含み得る。
【0024】
用語「被験体に特異的な特徴」は、本明細書で使用されるように、被験体を互いに区別可能な任意の特徴又は特質を指す場合がある。場合によっては、被験体に特異的な特徴は遺伝学的特徴である。遺伝学的特徴は、上述のように、被験体から単離された核酸上に存在し得る。場合によっては、被験体に特異的な特徴は、一連の機能を区別する特徴に関連し得る。このことは、例えば、プローブを、単一の遺伝子、複数の遺伝子、又はプロモーター領域などの既知のエピゲノム機能を持つゲノム領域に対し設計することにより達成することができる。被験体に特異的な特徴は、検出装置上でプローブとして表わすことができる。被験体に特異的な特徴を表わすプローブは、被験体から得られた1つ以上の標的核酸配列に結合することができる。場合によっては、被験体に特異的な特徴は、複数の同一でないプローブを含み、各々が被験体を互いに区別することができる。場合によっては、プローブの少なくとも2つの種は各々、同じ被験体に特異的である。場合によっては、微生物の株などの特異的な被験体は、検出装置上で1つ又は複数の特徴により区別することができ、この特徴は、標的株に固有である、株を含む種に固有である、株に存在する保存領域に含まれる、或いは、株内に含まれる病原性島を認識する特徴を含む。場合によっては、被験体により更に多くの試験が必要とされることを示すことができるため、単に病原性島を識別することは、有用なものであり得る。
【0025】
用語「アセンブリ」は、一連の全ての配列ストリングが由来する元の配列ストリングを再構成する目的のために、シーケンサー又は質量分析計によってもたらされた配列ストリングが互いに統合される、任意の計算プロセスであり得る。幾つかの例において、アセンブリは個別の有機体に由来する。幾つかの例において、多数の個体がアセンブリを作成するために使用され得る。幾つかの例において、アセンブリは、基準配列を使用することなく新規に作成される。幾つかの例において、アセンブリは基準配列を使用して作成される。基準配列は同じ種のゲノムであり得る。基準ゲノムは、密接に関連する種のゲノムであり得る。
【0026】
用語「被験体」は、本明細書で使用されるように、通常は遺伝子材料の特異的なソースを指す。被験体は生物学的実体であり得る。生物学的実体は、例えば、細菌、ウイルス、真菌類、及び原生動物を含む、植物、動物、又は微生物であり得る。被験体は臓器、組織、又は細胞であり得る。被験体はインビボで得られる、又はインビトロで培養することができる。被験体は細胞株であり得る。被験体は培養物中で伝播され得る。被験体は罹患細胞であり得る。被験体は癌細胞であり得る。被験体は哺乳動物であり得る。哺乳動物はヒトであり得る。被験体は、遺伝子材料の特異的なソースの個別の表示を意味し得る(例えば、被験体は特定の個々のヒト又は特定の菌株であり得る)。代替的に、被験体は、遺伝子材料の一種の特異的なソースの一般的な表示であり、例えば、被験体は単一の種の全てのメンバーであり得る。例えばサンプルが完全なゲノムを含んでいない場合、被験体はゲノムの一部であり得る。
【0027】
本明細書で使用されるように、用語「統合された」は、サンプルへのハイブリダイゼーション前に同一でないプローブのグループ化又は混合を指す場合がある。同一でないプローブは、プローブの同じセットの一部であり得る。代替的に、プローブの2つ以上のセットからのプローブが統合され得る。統合プローブは、均等又は不均等な量で混合することができる。
【0028】
「サンプル」又は「核酸サンプル」は、核酸を含有する、又は核酸を含有すると推定される、任意の物質を指す場合がある。サンプルは被験体から得た生体サンプルであり得る。核酸は、RNA、DNA、例えばゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、ウイルスDNA、合成DNA、又はRNAから逆転写されたcDNAであり得る。核酸サンプル中の核酸は、ハイブリダイズされたプライマーの伸長部に対する鋳型として機能することができる。場合によっては、生体サンプルは液体サンプルである。液体サンプルは、例えば全血、血漿、血清、腹水、精液、脳脊髄液、汗、尿、涙、唾液、頬側サンプル、腔洗浄水、又は臓器洗浄水であり得る。液体サンプルは、実質的に細胞を含まない液体サンプル(例えば血漿、血清、汗、尿、涙など)であり得る。他の場合、生体サンプルは、固形生体サンプル、例えば糞便、毛髪、爪、又は組織生検、例えば腫瘍生検であり得る。サンプルはまた、インビトロの細胞培養成分(細胞培養培地における細胞、組み換え型細胞、及び細胞構成体の増殖から結果として生じる調整培地を含むがこれらに限定されない)を含み得る。サンプルは癌細胞を含むか、又はそれに由来し得る。サンプルはマイクロバイオームを含み得る。
【0029】
「複合サンプル」は、本明細書で使用されるように、2つ以上の被験体を含む、又は2つ以上の被験体の材料(例えば核酸)を含む、サンプルを指す。複合サンプルは、2つ以上の被験体の遺伝子材料を含み得る。複合サンプルは、2つ以上の被験体の核酸分子を含み得る。複合サンプルは、細菌、ウイルス、真菌類などの2つ以上の菌株の核酸を含み得る。複合サンプルは、2つ以上の分解可能な被験体(即ち、互いに区別可能な2つ以上の被験体)を含み得る。場合によっては、複合サンプルは環境から得ることができる。例えば、複合サンプルは、空気サンプル、土壌又は汚物サンプル、又は水サンプル(例えば川、湖、海、廃水など)であり得る。環境サンプルは、細菌、ウイルス、原生動物、藻類、真菌類などの1つ以上の種を含み得る。複合サンプルは無細胞DNAを含み得る。
【0030】
「ヌクレオチド」は核酸を形成可能な生体分子であり得る。ヌクレオチドは、既知のプリン及びピリミジンの塩基だけでなく、修飾されている他の複素環式塩基を含む部分を有し得る。そのような修飾は、メチル化プリン又はピリミジン、アシル化プリン又はピリミジン、アルキル化リボース、又は他の複素環式化合物を含む。加えて、用語「ヌクレオチド」は、ハプテン、ビオチン、又は蛍光標識を含み、且つ従来のリボース及びデオキシリボース糖類だけでなく他の糖類も同様に含み得る、部分を備えている。修飾されたヌクレオシド又はヌクレオチドはまた、糖部分の修飾を含み、例えば、ヒドロキシル基の1つ以上がハロゲン原子又は脂肪族基で置換され、エーテルやアミンなどとして官能化される。
【0031】
「ヌクレオチド」はまた、ロックド核酸(LNA)又は架橋核酸(BNA)を含み得る。BNA及びLNAは通常、修飾リボヌクレオチドを指し、リボース部分は、2’酸素及び4’炭素を接続する架橋により修飾される。通常、架橋は、多くの場合A型二本鎖に見られる3’-エンド(North)立体構造中のリボースを「ロック」する。用語「ロックド核酸」(LNA)は通常、BNAのクラスを指し、リボース環は、2’-O原子を4’-C原子に接続するメチレン架橋により「ロック」される。DNA及びRNAに現われる6つの一般的な核酸塩基(T、C、G、A、U、及びmC)を含むLNAヌクレオシドは、標準のワトソン-クリック型塩基対の規則に従い、それらの相補的ヌクレオシドとの塩基対を形成することができる。従って、BNA及びLNAヌクレオチドは、必要な時は常に、オリゴヌクレオチド中のDNA又はRNA塩基と混合可能である。ロックドリボース立体構造は、塩基の積み重ねと骨格の事前の編成を増強する。塩基の積み重ねと骨格の事前の編成は、重複部位の熱安定性の増加(例えばTmの増加)及び弁別力を生じさせることができる。LNAは、他の核酸では可能でない条件下で単一塩基のミスマッチを弁別することができる。
【0032】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用することができる。これらは、任意の長さのヌクレオチドの重合体形態、即ち、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドの何れか、或いはそのアナログを指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造も有し、既知又は未知の任意の機能を実行することができる。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子フラグメントのコード領域又は非コード領域、連鎖解析から定められた遺伝子座(遺伝子座)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチドアナログなどの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾はポリマーのアセンブリの前又は後に与えられ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分によって妨げられ得る。ポリヌクレオチドは、標識化成分との抱合によってなど、重合の後に更に修飾され得る。
【0033】
「変異体」は、核酸配列(例えば遺伝子)の正常な配列における改質であり得る。幾つかの例において、遺伝子型及び相当する表現型は、変異体に関連付けられる。他の例において、変異体の既知の機能は存在しない。変異体はSNPであり得る。変異体はSNVであり得る。変異体は複数のヌクレオチドの挿入であり得る。変異体は複数のヌクレオチドの欠失であり得る。変異体は突然変異であり得る。変異体はコピー数変異であり得る。変異体は構造変異であり得る。変異体は、集団における2以上の個体間の核酸偏差であり得る。
【0034】
用語「標的ポリヌクレオチド」又は「標的核酸」は、本明細書で使用されるように、通常は試験中の目的のポリヌクレオチドを指す。特定の場合、標的ポリヌクレオチドは、対象であり且つ研究中の1つ以上の配列を含み得る。標的ポリヌクレオチドは例えば、ゲノム配列を含み得る。標的ポリヌクレオチドは標的配列を含む場合があり、その存在、量、及び/又はヌクレオチド配列、或いはそれらの変化は決定されることが望ましい。標的ポリヌクレオチドはゲノムの非コード領域を含み得る。
【0035】
用語「ゲノム」は、生物学的有機体の遺伝学的補体を指し、用語「ゲノムデータ」及び「ゲノムデータセット」は、生物学的有機体の染色体、遺伝子、又はDNAの配列情報を含む。
【0036】
用語「ゲノムのデータ」は、本明細書で使用されるように、1つ以上のミトコンドリア、細胞、卵子及び精子、組織、新生物、腫瘍、臓器、有機体、微生物、ウイルス、個体、又は無細胞DNAのゲノム又はエクソーム配列、或いは任意の組み合わせ又は混合物のうち1つ以上であるデータを指し、及び更には、核酸配列情報、遺伝子型情報、遺伝子発現情報、遺伝子データ、DNAメチル化、アセチル化、又は同様のDNAの修飾データを含む後成的な情報、RNA転写、スプライシング、編集、又は処理の情報、或いは医療、健康、又は表現型のデータ、或いは栄養上、食事上、又は環境条件或いは曝露の情報、又は、任意の微生物、ウイルス、細胞、組織、新生物、腫瘍、臓器、臓器系、無細胞サンプル(例えば血清又は媒体)、個体、或いはサンプル又は個体の群の他の特質データが挙げられるが、これらに限定されない。従って、用語「ゲノム配列」は、本明細書で使用されるように、ゲノムに現われる配列を指す。RNAがゲノムから転写されるので、この用語は、有機体の核ゲノムに存在する配列の他、そのようなゲノムから転写されたRNA(例えばmRNA)のcDNA複製に存在する配列も包含する。「ゲノム配列」はまた、細胞質上、又はミトコンドリア中に現われる配列であり得る。
【0037】
用語「判定すること(determining)」、「測定すること(measuring)」、「評価すること(evaluating)、「評価すること(assessing)」、「アッセイすること(assaying)」、及び「分析すること(analyzing)」は、測定の任意の形態を指すように本明細書で交換可能に使用され、且つ、1つの要素の存在の有無を判定することを含み得る。このような用語は、定量的及び/又は定質的両方の判定を含み得る。評価は相対的又は絶対的な場合がある。「~の存在を評価すること」は、何らかの存在の量を判定することの他、その存在の有無を判定することを含み得る。
【0038】
用語「ゲノムフラグメント」は、本明細書で使用されるように、ゲノム、例えばヒト、サル、ラット、魚類、昆虫類、又は植物のゲノムなどの動物又は植物のゲノムの領域を指す場合がある。ゲノムフラグメントは、連結されたアダプターであり、又はそうでない場合がある。ゲノムフラグメントは、連結されたアダプター(その場合、フラグメントの一端又は両端、或いは分子の少なくとも5’末端に連結されたアダプターを有する)、又は連結された非アダプターであり得る。
【0039】
用語「バーコード」は、本明細書で使用されるように、一般的にはアッセイに関する情報をコード可能なヌクレオチドの配列を指す。幾つかの例において、バーコードは固有である。バーコード配列は、調べられた(interrogated)対立遺伝子の同一性、標的ポリヌクレオチド又はゲノム遺伝子座の同一性、サンプル、被験体又はそれらの任意の組み合わせの同一性に関連する情報をコードすることができる。バーコード配列は、プライマー、レポータープローブ、又はその両方の部分であり得る。バーコード配列は、オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端であり、或いは、オリゴヌクレオチドの任意の領域に位置し得る。バーコード配列は、非天然型、例えば試験中のサンプルに現われない配列であり得る。他の例において、自然発生の配列は、バーコード又はバーコード配列の一部として使用される。幾つかの例において、核酸が結合された結合部はバーコードとして機能し得る。幾つかの例において、配列決定アダプターは、バーコード又はバーコードの一部として機能し得る。幾つかの例において、バーコードは、過剰な標的分子、例えば目的のゲノム配列である。幾つかの例において、バーコードは、無作為に、又は半無作為に標的分子に関連付けられる。幾つかの例において、バーコードは、設計により標的分子に関連付けられる。
【0040】
用語「突然変異」は、本明細書で使用されるように、一般的にゲノムのヌクレオチド配列の変化を指す。突然変異は、DNA(例えばコピー数変形)の大きな部分を含み得る。突然変異は染色体全体(例えば異数性)を含み得る。突然変異は、DNAの小さな部分を含み得る。DNAの小さな部分を含む突然変異の例は、例えば、点変異又は一塩基多型、多数の一塩基多型、挿入(例えば、座における1つ以上のヌクレオチドの挿入)、多数のヌクレオチドの変化、欠失(例えば、座における1つ以上のヌクレオチドの欠失)、及び逆転(例えば、1つ以上のヌクレオチド配列の逆転)を含む。
【0041】
本明細書に使用されるように、用語「遺伝子座」は、遺伝子、ヌクレオチド、又は染色体上の配列の位置を指し得る。本明細書に使用されるように、遺伝子座の「対立遺伝子」は、遺伝子座におけるヌクレオチド又は配列の代替的な形態を指し得る。「野生型対立遺伝子」は一般的に、被験体集団において最も高い頻度を有する対立遺伝子を指す。「野生型」対立遺伝子は一般的に疾患に関連しない。「変異対立遺伝子」は一般的に、より低い頻度の「野生型対立遺伝子」を有し、且つ疾患に関連付けられ得る対立遺伝子を指す。「変異遺伝子」は疾患に関連付けられる必要のない場合もある。用語「調べられた対立遺伝子」は、一般的に、アッセイで検出するように設計された対立遺伝子を指す。
【0042】
本明細書に使用されるように、用語「一塩基多型」又は「SNP」は、ある配列内での単一のヌクレオチドの置換によってもたらされる、一種のゲノム配列変種を一般的に指す。「SNP対立遺伝子」又は「SNPの対立遺伝子」は、一般的に特定の遺伝子座におけるSNPの代替的な形態を指す。用語「調べられたSNP対立遺伝子」は、一般的に、アッセイで検出するように設計されたSNP対立遺伝子を指す。
【0043】
本明細書には、サンプル中の1つ以上の被験体を識別する能力、或いは、例えば病原性、毒性、抗生物質耐性などの、被験体に関する重要な特徴を識別する能力を持つ、新規な検出装置に関する方法及びシステムが、開示される。検出装置は、1つ以上の被験体に特異的な特徴を含む複数のプローブを備え得る。用語「被験体に特異的な特徴」は、本明細書で使用されるように、被験体を互いに区別及び識別可能な複数のプローブを指す。本発明の幾つかの態様において、被験体に特異的な特徴は、複合サンプル中の被験体を識別するために利用され得る。
【0044】
被験体は、有機体の種、有機体の株、有機体の分岐群、遺伝学的変異体、病原性形質、抵抗性形質、又は有機体の種の個々のメンバーであり得る。複合サンプルは、1より多くの被験体(即ち、2つ以上の被験体)の材料を含む、生物学的又はその他の任意のサンプルであり得る。場合によっては、被験体は、ウイルス、細菌、原生動物、真菌類などの有機体である。他の場合、被験体は、組織、臓器、又はそこから由来する細胞である。組織、臓器、又は細胞は、ヒトなどの動物に由来し得る。複合サンプルは複数の細胞型を含み得る。場合によっては、複合サンプルは、腫瘍生検などの組織生検を含み得る。幾つかの例において、複合サンプルは、微生物(例えば細菌、ウイルス、真菌類など)の2つ以上の株を含む。他の例において、複合サンプルは有機体の2つ以上の種を含む。有機体は微生物であり得る。場合によっては、複合サンプルは、2つ以上の被験体の、核酸などの材料を含む。被験体に特異的な特徴は、複合サンプルに存在する1つ以上の被験体の同一性を決定するために使用することができる。本明細書中の方法及びシステムは、一種の複合サンプルに限定されない。重要な態様は、複合サンプルが少なくとも1つの区別可能な特徴を持つ、1より多くの被験体を含むということである。
【0045】
複合サンプルは核酸の混合物を含み得る。核酸は1つを超える被験体に由来し得る。核酸のサンプルを生成するあらゆる方法が、本開示によって許容可能である。場合によっては、生体細胞を含む複合サンプルが得られ、生体細胞はその後、溶解されて細胞から核酸を放出する。核酸は物理的方法でも生体細胞から放出することができる。他の場合、無細胞核酸が得られる。無細胞核酸は、ヒト又は動物から、例えば血液から得ることができる。無細胞核酸は、環境からも得ることができ、例えば、核酸は生物から環境へと放出される。無細胞核酸は、例えば、ウイルスのカプシド、或いは胞子内に含まれる病原体に由来し得る。幾つかの実施形態において、複合サンプルは、臨床サンプル、法医学サンプル、環境サンプル、メタゲノムサンプル、及び食物サンプルから成る群から選択される。幾つかの実施形態において、複合サンプルはヒト由来である。
【0046】
複合サンプル内の核酸は標的核酸配列を含むことができる。標的核酸配列は被験体を互いに区別する核酸配列であり得る。例えば、標的核酸配列は、被験体Bで見られない被験体Aの複数のゲノムの配列であり得る。こうした標的核酸配列は、被験体Aと被験体Bを含む複合サンプル中で被験体Aの存在を識別するために利用できる。同様に、標的核酸配列は、被験体Aで見られない被験体Bの複数のゲノムの配列であり得る。こうした標的核酸配列は、被験体Aと被験体Bを含む複合サンプル中で被験体Bの存在を識別するために利用できる。場合によっては、検出装置は、被験体Bから被験体Aを識別することができる(即ち、被験体Aのみを認識するプローブを有する)、被験体Aから被験体Bを識別することができる(即ち、被験体Bのみを認識するプローブを有する)、或いは、被験体Aと被験体Bの両方を識別することができる(即ち、被験体Aを認識するプローブと被験体Bを認識するプローブを有する)。
【0047】
場合によっては、本明細書の方法とシステムは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、10000、又は10000を超える被験体を区別することができる。場合によっては、検出装置は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、10000、又は10000を超える被験体に特異的な特徴を含む。場合によっては、本明細書の方法とシステムは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、10000、又は10000を超える被験体を区別することができる。場合によっては、検出装置は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、10000、又は10000を超える被験体に特異的な特徴を含む。
【0048】
標的核酸配列は、複合サンプル内に含まれる核酸に存在する1つ以上の核酸配列であり得る。標的配列は、サンプル内のその遺伝的補体に結合する(例えば、化学的に結合する)ように設計可能である。1つ以上の核酸配列は互いに区別可能であり、それによって、サンプル内の核酸の起原を解決する能力を与える。例えば、複合サンプルは2つを超える被験体を含み得る。個々の被験体はそれぞれ核酸を含むことがあり、それ故、複合サンプルは個々の被験体の核酸を含み得る。場合によっては、本明細書の方法とシステムは、サンプルに存在する個々の被験体を識別するために使用される。例えば、被験体Aと被験体Bを含むサンプルを例に取る。サンプルは、被験体Aと被験体Bの両方を起源とする核酸を含み得る。核酸は、被験体Aと被験体Bを、或いはその逆を区別する少なくとも1つの標的核酸配列を含み得る。本明細書の方法とシステムは、少なくとも1つの標的核酸配列を識別するために使用可能である。この情報は、複合サンプルが被験体Aと被験体Bの両方を含んでいたと判定するために使用可能である。
【0049】
標的核酸
標的核酸配列は、被験体を互いに識別する、或いは抗生物質耐性又は病原性などの標的の属性を区別する、任意の核酸配列であり得る。場合によっては、複合サンプルに存在する1つを超える被験体は、実質的に同一であり、且つ標準的なマイクロアレイ技術を駆使しても解決するのが難しい場合もある、ゲノムを有する。場合によっては、1つを超える被験体は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.99%、99.999%同一であるゲノムを有する。場合によっては、1つを超える被験体は、微生物の1つ以上の異なる菌株、例えば、細菌、ウイルス、真菌などの1つ以上の菌株である。
【0050】
標的核酸配列は1つを超える遺伝的特徴を含み得る。1つを超える遺伝的特徴は、被験体を互いに区別することができる。遺伝的特徴は、ゲノム、遺伝子型、ハプロタイプ、染色質、染色体、染色体座、染色体材料、対立遺伝子、遺伝子、遺伝子群、遺伝子座、遺伝的多型、遺伝子突然変異、一塩基多型(SNP)、制限断片長多型(RFLP)、可変タンデムリピート(VTR)、コピー数多型(CNV)、マイクロサテライト配列、遺伝子マーカー、配列マーカー、配列でタグ付けされた部位(STS)、プラスミド、転写単位、転写生成物、遺伝子発現レベル、遺伝子発現状態を含み得る。標的核酸配列は任意の既知の遺伝的特徴も本質的に含むことができる。
【0051】
標的核酸はデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)を含み得る。DNAはゲノムDNA又はcDNAであり得る。cDNAは、当業者に知られるようなRNAの逆転写によって生成可能である。標的核酸は一本鎖又は二本鎖であり得る。場合によっては、標的核酸は修飾可能である。核酸修飾は当該技術分野で知られているものを含み、標的核酸は本質的にあらゆる修飾を含み得る。有用な修飾は、限定されないが、ビオチン又はジゴキシゲニンなどのアンカーリガンドと同様に、放射標識と蛍光標識を含む。修飾は、標的の内部に、或いは5’又は3’のいずれかの末端に置くことができる。標的修飾は、ライゲーション又はポリメラーゼによる伸長などの化学反応又は酵素反応のいずれかによって、合成後に行うことができる。
【0052】
標的核酸の長さは変動し得る。標的核酸は、数十から数百、又は数千もの塩基対、或いは数万又は数十万の塩基対のサイズで変動し得る。幾つかの例において、標的核酸は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、又は10000より多くの塩基対の長さである。幾つかの例において、標的核酸は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、又は10000より多くの塩基対の長さである。幾つかの例において、標的核酸は、多くとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、又は10000より多くの塩基対の長さである。
【0053】
検出装置への適用の前に、標的核酸は任意の数のサンプル調製工程を受ける場合がある。こうした工程は、当業者に知られる任意の数の断片化、増幅、修飾、或いは調製の工程を含み得る。
【0054】
標的核酸は、化学溶解、超音波処理、均質化などを含む任意の技術によって生体サンプルから放出可能である。標的核酸は、更なる処理工程の前に、当該技術分野で知られる(例えば、細胞残屑、汚染物質、又は他の材料を除去するための)任意の数の精製工程を受ける場合がある。
【0055】
場合によっては、標的核酸は、検出装置への適用前に標識可能である。場合によっては、標的核酸は検出装置への適用後に標識可能である。標的核酸は多重ラベルで標識可能である。核酸ラベルは核酸の検出を可能にする任意のタグであり得る。放射標識、フルオロフォア、染料、ビオチン、酵素(例えば、ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP))などを含む任意の数のラベルを用いることができる。標的核酸は5’末端、3’末端、又はその両方で標識可能である。場合によっては、標的核酸は身体標識される。末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)、T4 RNAリガーゼ、tポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼなどの酵素的技術;或いは、過ヨウ素酸酸化、5’リン酸塩の1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)活性化、又は化学的な無作為標識(例えば、光反応性標識システム、Kreatech Diagnosticsにより市販されているUniversal Linkage System)などの化学的技術を含む、核酸を標識する任意の方法が使用可能である。場合によっては、いかなるラベルも必要とされず、標的の結合は、陽子の放出、表面上の化学組成の変化、光路の屈折率の変化、又は、ハイブリダイゼーション事象の直接的で電気的な検出を介して、検知可能である。
【0056】
標的核酸は染料又はステインで標識可能である。核酸を標識するのに適切な染料は当該技術分野で知られるものを含み得る。染料は蛍光染料であり得る。場合によっては、緩衝液はCy3である。場合によっては、緩衝液はCy5である。
【0057】
標的核酸は5’末端、3’末端にて標識可能であるか、又は身体標識可能である。どの方法を使用するべきかに関する決定は、必要とされる標識化の程度と、ラベルが立体障害を引き起こしてプローブとの相互作用を防ぐことができるか否かに、部分的に依存することがある。
【0058】
場合によっては、核酸ラベルは核酸分子の全体にわたって無作為に組み込まれる(即ち、身体標識される)。様々な方法を用いて標的核酸を身体標識することができる。身体標識プロトコルは、標識されたヌクレオチドを標的核酸に組み込むための酵素の使用を含み得る。場合によっては、身体標識された核酸は標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法で生成される。この方法は2つの目的に役立つことができる:1)成長している核酸鎖へと標識されたヌクレオチドを無作為に取り込むこと;及び2)鋳型核酸を増幅させること。この方法は、標的に特異的なプライマー又は無作為のプライマーの使用を含み得る。場合によっては、標的核酸は検出装置への適用前にPCRによって増幅される。
【0059】
場合によっては、標識されたヌクレオチドは無作為のプライマー伸長によって無作為に組み込まれる。この例において、複数の無作為のプライマー(例えば、ヘキサヌクレオチド)を用いて、一本鎖DNA鋳型上で第1のDNA合成を無作為に刺激する。標識されたヌクレオチドのDNA合成と無作為な取り込みは、DNAポリメラーゼI、又はDNAポリメラーゼIのクレノウ断片の使用を含み得る。場合によっては、標識化は、例えば、二本鎖DNA標識プロトコルを使用することにより、標的核酸のプローブへのハイブリダイゼーションの後に生じることがある。
【0060】
他の場合、標識されたヌクレオチドはローリングサークル増幅によって無作為に組み込まれる。この方法は、標的核酸分子が環状であるとき(例えば、プラスミド、バクテリオファージの環状ゲノム、ウイロイドの環状RNAゲノムなど)に、特に十分に適切であり得る。ローリングサークル増幅において、ニック(nick)は、不連続鎖と連続鎖を作成する環状核酸分子の一本鎖において生成される。環状ベクターの連続鎖は、等温の増幅反応を用いて増幅される。場合によっては、ローリングサークル増幅は、高い鎖置換活性を呈するΦ29DNAポリメラーゼを使用する。
【0061】
場合によっては、標的核酸は、検出装置のプローブへのハイブリダイゼーション前には増幅されない。
【0062】
場合によっては、標的核酸は検出システムへの適用前に剪断されるか、又は断片化される。剪断方法は、当該技術分野で知られるものを含み、且つ、超音波処理、針剪断、フレンチプレッシャーセル(French pressure cell)の通過、ポイント-シンク(point-sink)剪断、音響剪断、制限消化、断片化酵素、又はトランスポソーム媒介性の断片化を含み得る。場合によっては、標的核酸は剪断又は断片化の前に標識される。この方法は、標識法が例えば、ローリングサークル増幅を含む場合、適切であり得る。他の場合、標的核酸の剪断は標識の前に生じる。
【0063】
トランスポソームを媒介とする断片化を利用して、同時に断片を生成し、且つ検出のためにその断片を標識することができる。トランスポサーゼ(Tn5など)は、合成DNA配列を切断して、これを他のDNA分子の5’末端へ共有結合することができる。例えば、5’標識されたフルオロフォアを合成DNAに結合することにより、DNAを同時に断片化して標識することが可能である。変性後のこの断片化及び標識された(例えば、蛍光標識された)DNAは、アレイへのハイブリダイゼーションに備えることができる。例えば、
図6は、ラベル(603)(例えば、蛍光標識)を伴うオリゴヌクレオチドを含むトランスポソーム複合体(602)と相互作用する二本鎖DNA(dsDNA)(601)の典型的な概略図を示す。インキュベーション(604)の後、ラベル(605)を備えた断片化dsDNAは、トランスポソーム複合体によって生成される。その後、変性(606)を用いて、ハイブリダイゼーション用の標識された一本鎖DNA(ssDNA)(607)を生成することができる。トランスポソーム媒介性の断片化を利用して、ラベルとトランスポソームからの合成DNAの小片も含有する、二本鎖又は一本鎖(例えば、変性後)の断片化DNAを生成することができる。こうした技術は、2工程プロセスの断片化及び標識と比較して、収率と効率を増加させることができる。
【0064】
核酸などのサンプル材料が濃縮及び/又は精製可能である。これにより、サンプル材料の解析が補助され得る。例えば、核酸を通過させないが、イオン、タンパク質、及び他の細胞残屑を通過させる膜(例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)セルロース紙などの分子量遮断膜(molecular weight cutoff membrane))を用いて、核酸を濃縮することができる。この膜上でオリゴヌクレオチド捕捉アレイをスポットし且つ固定することで、捕捉プローブ付近の標的の濃度を増加させ、標的を捕捉プローブに持ち込むことにより、アレイへのハイブリダイゼーションを加速させることができる。電場又は流量の方向は一時的に反対にされ、又はパルスされることで、表面に平行な面の流れを助長し、ハイブリダイゼーション速度を更に改善し、ハイブリダイゼーション時間を短くすることができる。例えば、
図8は、フィルタ基質(801)上のオリゴヌクレオチドアレイに近づけたサンプルDNA(800)の例を示す。電場が適用されると(負(802)、正(803))、サンプルDNAは電気泳動を受け、アレイに集まる。代替的に、電流を(例えば、単純な分子量遮断フィルタ膜を用いて)簡単に反対にすると、核酸を膜から溶液へ移動させることができ、これを用いて、例えば、シリカ、プラスチック、ガラス、又は別の基質上に固定されたアレイにハイブリダイズすることができる。電気泳動運動の代わりに、又は電気泳動運動に加えて、膜に対して核酸を移動させるために流量を適用することにより、濃縮を行うこともできる。
【0065】
酸化的損傷の遊離ラジカル又は他の供給源の核酸への濃縮が減少するように、電極(例えば、
図8の(802)と(803))を互いに一定の間隔で配置することができる。この種の設計は、核酸が、例えば濃縮工程の間に経験する酸化的損傷の量を減らすことができる。
【0066】
等速電気泳動(ITP)も、電気泳動の他の形態に加えて、サンプル材料中の核酸などの分析物を濃縮及び/又は精製するために使用することができる。分析物は核酸(DNA又はRNAなど)、タンパク質、代謝産物、又はそれらの組み合わせであり得る。これにより、分析物材料の解析が補助され得る。ITPにおいて、先行電解質(分析物材料よりも高いイオン移動度を持つ)及び後端電解質(trailing electrolyte)(分析物材料未満のイオン移動度を持つ)は、電気泳動区域において分析物材料を挟むために使用することができる。例えば、等速電気泳動はサンプル中の核酸を濃縮するために使用することができる。その後、濃縮核酸は、オリゴヌクレオチドアレイなどの検出装置、又は統合プローブを利用するアレイなどの本明細書で議論される他の検出装置を通過し、或いはその他に接触することができる。この濃縮工程は、検出のパフォーマンス(例えば感度、特異性)を改善することができる。等速電気泳動は検出装置に分析物を送達するためにも使用することができ;等速電気泳動は、分析物を検出装置又はその付近へと移動させることができる。場合によっては、先行電解質及び後端電解質には、一般的な対イオンであるが異なる共イオンがある。プラトーモード、ピークモード、及び一時的なITP(tITP)を含むがこれらに限定されない、ITPの様々なモード及び形態が利用され得る。プラトーモードにおいて、分離は階段のようなプロファイルにより特徴づけることができ、各段は、電場の増加及び導電性の減少を伴う電解質又は分析物の区域を表わす。ピークモードにおいて、分析物の量は、プラトー濃度に達するために必要な量未満であり、そのような分析物は、鮮明なガウス様ピーク分布へと濃縮することができる。ピークモードにおいて、中間体イオン移動度を持つスペーサー化合物は、隣接する分析物区域を分離するために使用することができる。一時的なITPは、ゾーン電気泳動などの方法によって後に分離可能な分析物を濃縮するために使用することができる。一時的なITPは、サンプルを後端電解質と混合し、混合物を先行電解液区域で囲むことにより、又はその逆により、達成することができる。
【0067】
核酸(例えばDNA、RNA)を含むサンプル材料は、約0.0001ナノモル(nM)、0.0002nM、0.0005nM、0.001nM、0.002nM、0.005nM、0.01nM、0.02nM、0.05nM、0.1nM、0.2nM、0.5nM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1マイクロモル(μM)、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μM、500μM、1000μM、又はそれ以上を含む入力濃度(input concentrations)の範囲で処理され得る。場合によっては、サンプル材料は、少なくとも約0.0001ナノモル(nM)、0.0002nM、0.0005nM、0.001nM、0.002nM、0.005nM、0.01nM、0.02nM、0.05nM、0.1nM、0.2nM、0.5nM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1マイクロモル(μM)、2μM、5μM、10μM、20μM、μM、100μM、200μM、500μM、1000μM、又はそれ以上の入力濃度で処理され得る。場合によっては、サンプル材料は、多くとも約0.0001ナノモル(nM)、0.0002nM、0.0005nM、0.001nM、0.002nM、0.005nM、0.01nM、0.02nM、0.05nM、0.1nM、0.2nM、0.5nM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1マイクロモル(μM)、2μM、5μM、10μM、20μM、μM、100μM、200μM、500μM、1000μMの入力濃度で処理され得る。
【0068】
ITP区域動作のモニタリング及び制御
【0069】
ITPによって濃縮及び/又は制御された核酸の区域は、様々な方法によって視覚化され、又はその他にモニタリングされ得る。ITP区域は、例えば染料(例えば蛍光染料)で核酸を標識するによって視覚的にモニタリングされ得る。染料は、特異的に標的を標識することにより(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用により、蛍光ハイブリダイゼーションプローブにより)、或いは、一般的に標的を標識することにより(例えば、YOYO-1などの挿入染料(intercalating dye)により、DNAなどの核酸を広く標識する他のラベルにより)核酸に加えられ得る。
【0070】
蛍光シグナルなどの視覚信号は、様々な手法によって検出することができる。装置の一部又は全ては、部分的に又は完全に半透明又は透明であってもよく、それにより視覚信号の観察又は画像化を可能にする。CCDなどの視覚的検出器も、画像化を可能とする装置に連結され得る。1つ以上の個々の検出器は、例えば、ITP区域の位置をモニタリングするために、及び/又は本明細書で議論されるようなアレイ上でハイブリダイゼーションを検出するために、装置に連結され得る。検出器は、直接的、又は1つ以上の導波管などを介して間接的に装置に連結され得る。
【0071】
ITP区域は非視覚的手段によっても検出することができる。電気センサ(例えば電圧センサ、電流センサ)は、ITP区域における材料(例えばDNA)の帯域を検出するために使用することができる。例えば、ITP帯域がセンサを通過した時の電圧降下の変化を検出することができる。他の電子的及び/又は表面検出方法は、ITP帯域の位置をモニタリングする、及び/又は本明細書に議論されるようなアレイ上のハイブリダイゼーションを検出するために使用することができる。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)はアレイ特徴へのサンプル核酸のハイブリダイゼーションを検出するために使用することができる。
【0072】
ITP区域の位置は前述の較正に基づいても評価する又は仮定することができる。例えば、与えられた条件下のITP区域の動作を観察することができ(例えば視覚的に)、その後、ITP区域の後の動作及び制御は、(例えば視覚的に密封した装置における)以前に観察された動作の較正に基づいて評価又は仮定され得る。
【0073】
微小流体フローセル
【0074】
サンプル材料の濃縮に加えて、ITPは、サンプル材料をプローブ(例えばアレイ上)に接触させるために使用することができる。幾つかの例において、ITP帯域の幅は、ITP帯域がアレイの長さに沿って進行した時にアレイの幅全体と接触するほど十分な幅である。他の例では、ITP帯域はアレイほど幅広くなく、ITP帯域は、アレイの大半又は全てと接触させられるパターンでアレイにわたってスイープされ得る。場合によっては、前記方法は、サンプル材料中の分析物をプローブに結合する工程、分析物を検出する工程、又はそれらの組み合わせを含み得る。前記方法は、前記分析物を結合及び検出する工程を含むとき、約5分、10分、15分、20分、30分、45分、又は60分未満で実施され得る。
【0075】
様々な基板が、本明細書に開示される解析及びサンプル処理のために使用され得る。典型的な基板は、ガラス、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及び他のポリマーを含むが、これらに限定されない。フローセル及び他の流体構造はITPに適合可能な寸法を有し得る。
【0076】
場合によっては、チャネル又はフローセルの高さは、約100マイクロメートル(μm)、90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、5μm、2μm、又は1μm以下であり得る。場合によっては、チャネル高さは、大量の流体(例えばITP帯域の中)からプローブ(例えばアレイ表面上)までの拡散距離を減らすために選択され得る。他の場合、プローブ及びサンプルは、ITP帯域において一緒にされ、プローブに結合したサンプルはその後、捕捉及び/又は解析され得る。
【0077】
場合によっては、チャネル又はフローセルの幅は、約1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、200μm、500μm、1ミリメートル(mm)、2mm、5mm、10mm、20mm、50mm、100mm、200mm、500mm、1000mm、又はそれ以上であり得る。場合によっては、チャネル又はフローセルの幅は、多くとも約1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、200μm、500μm、1ミリメートル(mm)、2mm、5mm、10mm、20mm、50mm、100mm、200mm、500mm、又は1000mmであり得る。場合によっては、チャネル又はフローセルの幅は、少なくとも約1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、200μm、500μm、1ミリメートル(mm)、2mm、5mm、10mm、20mm、50mm、100mm、200mm、500mm、1000mm、又はそれ以上であり得る。
【0078】
場合によっては、チャネル又はフローセルの長さは、約1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、200μm、500μm、1ミリメートル(mm)、2mm、5mm、1センチメートル(cm)、2cm、5cm,10cm、20cm、50cm、100cm、又はそれ以上であり得る。場合によっては、チャネル又はフローセルの長さは、多くとも約1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、200μm、500μm、1ミリメートル(mm)、2mm、5mm、1センチメートル(cm)、2cm、5cm,10cm、20cm、50cm、100cm、又はそれ以上であり得る。場合によっては、チャネル又はフローセルの長さは、少なくとも約1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、200μm、500μm、1ミリメートル(mm)、2mm、5mm、1センチメートル(cm)、2cm、5cm,10cm、20cm、50cm、100cm、又はそれ以上であり得る。
【0079】
チャネル及びフローセルは異なる幾何学的形状を有し得る。例えば、チャネル又はフローセルは直線であり、1つ以上の曲がり又は湾曲を含み、1つ以上の狭窄又はテーパーを含み、1つ以上の拡張又は拡大を含み、及び1つ以上の蛇行状の領域を含み得る。場合によっては、チャネル又はフローセルは、狭窄、テーパー、拡張、又は拡大を含まない(随意に、チャネル入口及び出口の領域は除く)。
【0080】
上流及び下流での操作のITP制御
【0081】
サンプル濃縮及びプローブとの接触に加えて、ITPは、他の上流及び/又は下流での操作のために使用することができる。典型的な操作は、限定されないが、サンプル採取、細胞溶解、入力材料(例えば細胞溶解物)からのサンプル材料(例えば核酸)の精製、サンプル濃縮、サンプル標識(例えば蛍光標識)、サンプルとプローブとの接触(例えばアレイ上)、プローブからの未結合材料の除去、プローブからのサンプル材料の回復(例えばアレイから)、及びサンプル材料の他の解析及び取扱い(例えば追加のアッセイ、及び材料の保管)を含む。
【0082】
ITP操作パラメータ
ITPは、異なる電圧、電界強度、電流、サンプル入力濃度、及び演算時間を含む様々な異なる操作パラメータで実施することができる。
【0083】
ITPは、約10ボルト(V)、20V、30V、40V、50V、60V、70V、80V、90V、100V、150V、200V、250V、300V、350V、400V、450V、500V、550V、600V、650V、700V、750V、800V、850V、900V、950V、1000V、又はそれ以上の電圧で実施することができる。場合によっては、ITPは、多くとも約10ボルト(V)、20V、30V、40V、50V、60V、70V、80V、90V、100V、150V、200V、250V、300V、350V、400V、450V、500V、550V、600V、650V、700V、750V、800V、850V、900V、950V、1000V、又はそれ以上の電圧で実施することができる。場合によっては、ITPは、少なくとも10ボルト(V)、20V、30V、40V、50V、60V、70V、80V、90V、100V、150V、200V、250V、300V、350V、400V、450V、500V、550V、600V、650V、700V、750V、800V、850V、900V、950V、1000V、又はそれ以上の電圧で実施することができる。
【0084】
ITPは、1センチメートル当たり約10ボルト(V/cm)、20V/cm、30V/cm、40V/cm、50V/cm、60V/cm、70V/cm、80V/cm、90V/cm、100V/cm、200V/cm、300V/cm、400V/cm、500V/cm、600V/cm、700V/cm、800V/cm、900V/cm、1000V/cm、又はそれ以上の電界強度で実施することができる。場合によっては、ITPは、多くとも1センチメートル当たり約10ボルト(V/cm)、20V/cm、30V/cm、40V/cm、50V/cm、60V/cm、70V/cm、80V/cm、90V/cm、100V/cm、200V/cm、300V/cm、400V/cm、500V/cm、600V/cm、700V/cm、800V/cm、900V/cm、1000V/cm、又はそれ以上の電界強度で実施することができる。場合によっては、ITPは、少なくとも1センチメートル当たり約10ボルト(V/cm)、20V/cm、30V/cm、40V/cm、50V/cm、60V/cm、70V/cm、80V/cm、90V/cm、100V/cm、200V/cm、300V/cm、400V/cm、500V/cm、600V/cm、700V/cm、800V/cm、900V/cm、1000V/cm、又はそれ以上の電界強度で実施することができる。
【0085】
ITPは、約1マイクロアンペア(μA)、2μA、3μA、4μA、5μA、6μA、7μA、8μA、9μA、10μA、20μA、30μA、40μA、50μA、60μA、70μA、80μA、90μA、100μA、110μA、120μA、130μA、140μA、150μA、160μA、170μA、180μA、190μA、200μA、250μA、300μA、350μA、400μA、450μA、500μA、550μA、600μA、650μA、700μA、750μA、800μA、850μA、900μA、950μA、1アンペア(A)、又はそれ以上の電流で実施することができる。場合によっては、ITPは、多くとも約1マイクロアンペア(μA)、2μA、3μA、4μA、5μA、6μA、7μA、8μA、9μA、10μA、20μA、30μA、40μA、50μA、60μA、70μA、80μA、90μA、100μA、110μA、120μA、130μA、140μA、150μA、160μA、170μA、180μA、190μA、200μA、250μA、300μA、350μA、400μA、450μA、500μA、550μA、600μA、650μA、700μA、750μA、800μA、850μA、900μA、950μA、1アンペア(A)、又はそれ以上の電流で実施することができる。場合によっては、ITPは、少なくとも約1マイクロアンペア(μA)、2μA、3μA、4μA、5μA、6μA、7μA、8μA、9μA、10μA、20μA、30μA、40μA、50μA、60μA、70μA、80μA、90μA、100μA、110μA、120μA、130μA、140μA、150μA、160μA、170μA、180μA、190μA、200μA、250μA、300μA、350μA、400μA、450μA、500μA、550μA、600μA、650μA、700μA、750μA、800μA、850μA、900μA、950μA、1アンペア(A)、又はそれ以上の電流で実施することができる。場合によっては、電流は定電圧での操作中に変動する。他の場合、電圧は定電流での操作中に変動する。
【0086】
ITPは、約1秒、2秒、5秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、26分、27分、28分、29分、30分、31分、32分、33分、34分、35分、36分、37分、38分、39分、40分、41分、42分、43分、44分、45分、46分、47分、48分、49分、50分、51分、52分、53分、54分、55分、56分、57分、58分、59分、60分、70分、80分、90分、100分、110分、120分、又はそれ以上の期間にわたり実施することができる。場合によっては、ITPは、多くとも約1秒、2秒、5秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、26分、27分、28分、29分、30分、31分、32分、33分、34分、35分、36分、37分、38分、39分、40分、41分、42分、43分、44分、45分、46分、47分、48分、49分、50分、51分、52分、53分、54分、55分、56分、57分、58分、59分、60分、70分、80分、90分、100分、110分、120分、又はそれ以上の期間にわたり実施することができる。場合によっては、ITPは、少なくとも約1秒、2秒、5秒、10秒、20秒、30秒、40秒、50秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分、25分、26分、27分、28分、29分、30分、31分、32分、33分、34分、35分、36分、37分、38分、39分、40分、41分、42分、43分、44分、45分、46分、47分、48分、49分、50分、51分、52分、53分、54分、55分、56分、57分、58分、59分、60分、70分、80分、90分、100分、110分、120分、又はそれ以上の期間にわたり実施することができる。
【0087】
基板及びコーティング
【0088】
様々な基板が、本明細書に開示される解析及びサンプル処理のために使用され得る。典型的な基板は、ガラス、シリコン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及び他のポリマーを含むが、これらに限定されない。基板は、チャネル、フローセル、バルブ、ウェル、トラップ、他の流体構造、導波路、電気及び電子回路、金属構造、パターン化されたドーピング(例えば半導体ドーピング)、及び他の構造を含むように、(例えば石版印刷で)改変され得る。
【0089】
基板は、例えば本明細書に議論されるようなアレイに、テザー分子(tethered molecule)(例えばヌクレオチド)を含み得る。分子は、基板に直接的又は間接的(例えば、後にウェルのアレイへと堆積されるビーズなどにより第1の基板に堆積又は関連付けられる、第2の基板に取り付けることによって)に結合され得る。
【0090】
そのような基板はITPのようなプロセスに適合可能である。場合によっては、基板は、ITPなどの導電性プロセスに対し本質的に導電性である。他の場合、コーティング又は他の処理が、プロセスを可能とする又は改善するために提供され得る。例えば、コーティングは、電気的な故障を減らし、及び/又はIPを改善するために基板に堆積され得る。絶縁体を使用して、電場から基板(例えば、導電性又は半導電性基板)を絶縁し、それら基板上のITPを可能とする又は改善することができる。絶縁体は、二酸化ケイ素、サファイア、インジウムスズ酸化物(ITO)、他の酸化物、ポリマー、プラスチック、セラミック、セルロース、紙、及びテフロン(登録商標)を含むがこれらに限定されない。一例において、絶縁体層は、ビーズの充填前にビーズアレイのウェル上に堆積され、それにより絶縁破壊又は電気的な短絡を予防又は減らすことができる。コーティング(例えば絶縁体)は、約1ナノメートル(nm)、2nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、5μm、100μm、又はそれ以上などの様々な厚みの基板に堆積され得る。コーティング(例えば絶縁体)の厚みは、約1ナノメートル(nm)、2nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1マイクロメートル(μm)、2μm、5μm、10μm、20μm、5μm、又は100μm未満であり得る。コーティング(例えば絶縁体)の厚みは、約1ナノメートル(nm)、2nm、5nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1マイクロメートル(μmm)、2μm、5μm、10μm、20μm、5μm、100μm、又はそれ以上であり得る。
【0091】
一例において、ITPは、ビーズマイクロウェルアレイ(例えばIllumina BeadArray)上で実施される。化学蒸着法を使用して、ビーズアレイ表面上に酸化ケイ素層を作成することができ、その厚みは約500ナノメートル(nm)である。フローセルは、再び拡張する前に、長さ約4cm、幅800μm、及び高さ75μmの寸法、及び、約200μmの幅へと狭まるフローセル中央にテーパー状部分を備えて、PDMSにおいて製造される。PDMSフローセルの下部表面は、放電棒を使用して起動され、酸化ケイ素表面へのPDMSの結合を可能とする。フローセルの入口及び出口の端部にある2つのポートにおける白金ワイヤーは、200Vの電圧に設定される。DNAの充填、濃縮、ハイブリダイゼーション、及び検出に対する総時間は、約25分である。他の例において、フローセル寸法は、長さ約0.5~8cm、幅約200~2000μmに及ぶ場合があり、酸化ケイ素の厚みは>250nmであり、作動電圧は約50~400ボルトであり、ターンアラウンド・タイム(TAT)は約5~45分であり得る。電流は、例えば10~200μAの範囲で変動し得る。サンプル調製(prep)からの核酸サンプル(例えばゲノムDNA)の長さは、約0.0001nM~約100μMの入力濃度で、約10ベース~10kbの範囲であり得る。他の場合、核酸の長さは、約100bp~500bp(例えば300bp+/-200bpの平均)である。
【0092】
ITPは、本明細書に議論されるように、表面(例えばAffymetrix, Agilent)上に印刷され又は結合され、或いはビーズ(例えばIllumina)に付けられたDNAオリゴヌクレオチドを有する、マイクロアレイなどのプローブを含む、様々な基板上で利用することができる。多くの市販のマイクロアレイが、非常に高い処理能力での適用のために設計され;従って、これらのアレイは、多くの別個の特徴(例えばプローブスポット、ビーズ)を含み、且つ、少なくとも数ミリメートル×数ミリメートルなどの領域においてかなり大きい場合があり、多くの場合、多数のそのようなアレイは、与えられたマイクロアレイチップ上にある。そのようなアレイに従来から利用されるフローセルは一般的に、約10マイクロリットルの大きな容積、及び大きな表面積を有している。そのようなフローセルでのITPの実施は、1kV以上の電圧を必要とする場合がある。そのような電圧での動作は、絶縁破壊などの問題を生じさせる場合があり、更には非常に厚みのある絶縁(例えばSiO2)がシリコンウェハ上に存在する。更に、大きなフローセルに関して、より大きなゲノムDNAサンプルが、数マイクログラムなどの入力として要求され得る。従って、ITPは通常、そのようなシリコンベースのアレイ、又は、DNAの入力量に対するそれらの適用と共には利用されない。一方、本明細書に記載される統合プローブ手法を利用する装置は、ITPとの使用に十分に適している場合がある。本明細書に記載される統合プローブ手法などの、少量のサンプルの識別を可能にする技術は、アレイの表面上での一部のプロセスによる濃縮から、利益を得ることができる。更に、そのような手法は、上述の市販のマイクロアレイに関して、>100,000のプローブと比較して少数のプローブ(例えば、~100標的に対して~1000の異なるプローブ)を利用することができる。この少数のプローブは、より小さなフローセル(例えば、幅<1mm、長さ1mm、高さ<75μm)に適切に適合し得る。作動電圧が更に低くなる(例えば200V)場合があるので、これら設計パラメータは、(例えばシリコン表面にわたり絶縁体を介した)絶縁破壊などの問題に遭遇することなくITPの使用を可能とする。
【0093】
特異的な例において、ITPは、既存のIlluminaフローセルの代わりに新たなフローセル設計を用いて、市販のアレイ(Illumina, 24-sample BeadArray chip)上で実行された。新たなフローセル設計は、フローセルの容積を減らし、且つ、特異的にフローセルの幅と高さを下げるように機能し、低電圧でのITP条件を可能とした。フローセルの領域の制限によりアクセス可能なビーズの数が減り、そのため、アレイ表面上でアクセス可能なプローブ/検出器の数も減る。それにもかかわらず、十分なプローブが、サンプルを調べるのに適切な情報を提供する、本明細書に記載されるプローブセット(例えば、<1,000の標的、及び<100,000のビーズ合計)に対してアクセス可能なままであった。
【0094】
拡散に加えて様々な手段によって、核酸を検出装置に近接させることができる。上記で議論されるように、電気泳動及び/又は流量を用いて、検出装置表面又はその付近で核酸を濃縮することができる。他の手法も使用できる。例えば、検出装置表面は、(例えばプローブ特徴における)その表面の全体又は一部にわたって疎水性表面化学を有する場合があり、標的核酸は疎水性部分でタグ付けされ、核酸が表面の疎水性領域をエネルギー的に優先するようになる。別の例において、標的核酸は磁粉でタグ付け可能であり、磁場を用いてアレイ表面の方へ標的核酸を近づけることができる。
【0095】
容積排除(Volume-excluding)化合物を用いて、サンプルDNAなどのサンプル材料を有効に濃縮することもできる。容積排除剤(volume excluder)は、占有された液体体積からサンプル材料を除外するために使用可能であり、それによって、残りの液体容積中のサンプル材料を濃縮することができる。このメカニズムは、基質へのサンプル核酸のハイブリダイゼーションなどの、サンプル材料の捕捉又は結合の加速を助けることがきる。例えば、容積排除剤はハイブリダイゼーション動力学を改善するために、ハイブリダイゼーション緩衝剤に含めることができる。容積排除剤は、例えば、限定されないが、硫酸デキストラン、フィコール、及びポリエチレングリコールを含む、ビーズ又はポリマーであり得る。容積排除剤は高分子量ポリマーであり得る。容積排除剤は、例えば、核酸の容積排除剤への結合を減らすために負に帯電させることができる。
【0096】
プローブ
本明細書に開示される検出装置は、複数の統合プローブを含み得る。場合によっては、検出装置は反応チャンバを含む。場合によっては、複数のプローブは反応チャンバに統合される。場合によっては、反応チャンバは、PCRウェル、アレイスポット、ドロップレット、電極、又は微小流体チャネルである。場合によっては、電極は、金、イリジウム、白金、銅、又はこれらの組み合わせを含む。場合によっては、反応チャンバは少なくとも1つの孔を含む。他の場合、本明細書に開示される検出装置は更に複数の反応チャンバを含む。場合によっては、複数の反応チャンバは、複数のPCRウェル、複数のアレイスポット、複数のドロップレット、複数の電極、又は複数の微小流体チャネルである。場合によっては、検出装置は単回用装置である。
【0097】
幾つかの例において、複数の反応チャンバの各々は、プローブの1つ以上のセットのうち1つを含む。場合によっては、プローブの1つ以上のセットの各セットは、複数のプローブを含む。場合によっては、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの各々は同一である。幾つかの例において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも2つが同一である。幾つかの例において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの少なくとも2つが異なっている。幾つかの例において、1セットのプローブ内の前記複数のプローブの各々は異なっている。
【0098】
場合によっては、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定される。場合によっては、前記プローブの1つ以上のセットの少なくとも1つのセットは、検出装置の表面上に固定されない。場合によっては、表面に固定されないプローブの少なくとも1つのセットは、溶液中にある。例えば、溶液はPCR溶液であり得る。場合によっては、PCR溶液は複数の小滴の形態である。場合によっては、表面は固形物である。他の場合、表面は半固形物である。場合によっては、表面はガラス又はシリコンである。複数のプローブは表面化学を用いて表面に固定可能である。
【0099】
1つの非限定的な例において、複数のプローブは、1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)化学を用いて、検出装置の表面に固定される。この方法において、検出装置上のカルボキシル基はEDCで活性化される。活性化されたカルボキシル基は第一級アミン基と反応して、安定したアミド結合を形成することができる。この例において、検出装置の表面はビーズ、場合によっては、シリカ又はガラスビーズであり得る。複数のプローブは、5’又は3’の末端でアミノ修飾される。アミノ修飾の非限定的な例としては、5’-アミノアリル-dUTP、5-プロパルギルアミノ-dCTP、N6-6-アミノヘキシル-dATP、及び7-Deaza-7-プロパルギルアミノ-dATPを含む、1つ以上のアミノ修飾されたヌクレオチドが挙げられる。プローブは、この方法を使用して、5’又は3’の末端の何れかにて検出装置に固定可能である。場合によっては、2工程方法が利用される:1)EDCによる活性化と、その後の、2)効率を改善する、又は乾燥して安定している(アミン反応性)中間体を作製するための、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)による処置。幾つかの例において、2工程のEDC処理は、固定効率を改善するために使用される。この例において、EDCの第1の濃度を検出装置に適用可能であり、その後、EDCの後の第2の濃度を適用することができる。場合によっては、EDCの第1の濃度はEDCの第2の濃度よりも低い。場合によっては、この2工程のEDC処置は、プローブ固定の効率を改善する。
【0100】
検出装置は複数のプローブを含み得る。複数のプローブは、検出装置の表面上に分布され得る。検出装置は、単一の固体として物理的に結合される必要のない複数の表面を含み得る。プローブを含む表面は、例えばビーズ又は一連のビーズであり得る。ビーズは同一であり得る。ビーズはマイクロビーズであり得る。ビーズは個別に溶解可能であり得る。ビーズはビーズに特異的なバーコードを含み得る。ビーズはビーズに特異的なラベルを含み得る。ビーズはビーズに特異的な結合部位を含み得る。
【0101】
マイクロアレイの活性領域又はハイブリダイゼーション領域を縮小することにより、マイクロアレイの経済問題、及び必要とされるハイブリダイゼーション時間を改善することができる。この場合、小さなマイクロアレイを製作することでコストを省き、且つ、そのより小さな活性領域によって、より濃縮されたサンプルを使用できるようになり、ハイブリダイゼーション活性を促進せる。
【0102】
プローブは、核酸サンプル中に存在する標的配列を持つワトソン-クリック型塩基対の形成を可能とするオリゴヌクレオチドであり得る。プローブの長さは変動し得る。幾つかの例において、遺伝的特徴内のプローブは、長さが20%、10%、5%、又は1%未満変動する。幾つかの例において、プローブは同じ長さである。プローブは、数十から数百又は数千の塩基対、或いは、数万又は数十万の塩基対のサイズにさえ変動し得る。場合によっては、プローブは、約20塩基長、約25塩基長、約30塩基長、約35塩基長、約40塩基長、約45塩基長、約50塩基長、約55塩基長、約60塩基長、約65塩基長、約70塩基長、約75塩基長、約80塩基長、約85塩基長、約90塩基長、約95塩基長、約100塩基長、約110塩基長、約120塩基長、約130塩基長、約140塩基長、約150塩基長、約200塩基長、約250塩基長、約300塩基長、約350塩基長、約400塩基長、約450塩基長、約500塩基長、約600塩基長、約700塩基長、約800塩基長、約900塩基長、約1000塩基長、又は1000塩基長以上である。
【0103】
プローブは、被験体に特異的な特徴への複数の反応チャンバへと、又は該反応チャンバ上に分配され得る。被験体に特異的な特徴は複数のプローブを含み得る。幾つかの例において、被験体に特異的な特徴は、10、100、1,000、10,000、又は100,000を超える個々のプローブを含む。被験体に特異的な特徴は複数の同一のプローブを含み得る。他の例において、被験体に特異的な特徴は複数の統合された同一でないプローブを含み得る。同一でないプローブは、様々な領域において標的核酸に結合し得る。プローブは非重複領域において標的に結合し得る。場合によっては、同一でないプローブは重複配列を有する。被験体に特異的な特徴は、少なくとも10、100、1,000、10,000、又は100,000以上の同一でないプローブを含み得る。幾つかの例において、検出装置は、10、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000、10,000,000、100,000,000、又は1,000,000,000を超える個々の被験体に特異的な特徴を含む。
【0104】
被験体に特異的な特徴は、別個の反応チャンバなどの中に、個々に対処可能(例えば、検出のために個々に対処可能)となるような様式で、検出装置に分布され得る。被験体に特異的な特徴に対応する複数のプローブは、プローブの1つ以上のセットへと配置され得る。プローブの各セット内では、複数のプローブは同一であってもよく、又は互いに異なってもよい。各セット内では、複数のプローブはそれぞれ被験体に特異的な特徴を含み得る。各セット内の複数のプローブは、被験体を互いに区別する1つ以上の被験体に特異的な特徴を含み得る。場合によっては、被験体に特異的な特徴は、円形、正方形、又は長方形の領域などのアレイ上のスポット又は領域であり得る。場合によっては、被験体に特異的な特徴はビーズであり得る。他の場合、被験体に特異的な特徴はマイクロウェルプレート中のウェルであり得る。他の場合、被験体に特異的な特徴は電極であり得る。場合によっては、被験体に特異的な特徴は、特徴特異的タグにより標識された一連のプローブであり得る。特徴特異的タグは、例えば、特徴特異的バーコード、又は特徴特異的ラベルのための結合部位であり得る。幾つかの例において、特徴は複製特徴を有する。幾つかの例において、複製特徴は同一である。幾つかの例において、複製特徴は、同じ標的ポリヌクレオチドを識別するように設計される。幾つかの例において、複製特徴は、同じゲノムを識別するように設計される。幾つかの例において、複製特徴は、種内のあらゆる株を識別するように設計される。場合によっては、複製特徴は、個体を識別するように設計される。
【0105】
幾つかの例において、複数のプローブの少なくとも1つは、ガイド核酸(gNA)、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質、又はそれらの複合体を含む。場合によっては、gNAは標的核酸に結合する。場合によっては、ガイド核酸(gNA):核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質の複合体は、標的核酸に結合する。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質はCRISPR/Casシステムタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2、及びCm5から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は、死滅した核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は、死滅したCRISPR/Casシステムタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質はdCas9である。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は、核酸誘導ヌクレアーゼシステムニッカーゼタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は、CRISPR/Casシステムニッカーゼタンパク質である。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は、オフターゲット結合の減少を示す。場合によっては、CRISPR/Casシステムタンパク質は二本鎖DNA(dsDNA)を開き、gNAへの標的核酸を含むDNAの結合を可能にする。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は室温でdsRNAを開く。
【0106】
幾つかの実施形態において、gNAはラベルを含む。幾つかの実施形態において、ヌクレイン誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質はラベルを含む。幾つかの実施形態において、gNA及びヌクレイン誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は同じラベルを含む。幾つかの実施形態において、gNA及びヌクレイン誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は異なるラベルを含む。
【0107】
場合によっては、複数のプローブの少なくとも1つは検出可能なラベルで標識される。場合によっては、ラベルは、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、発色団、ルミフォア、フルオロフォア、クロモゲン、ハプテン、抗原、放射性同位体、磁性粒子、ナノ粒子(例えば金ナノ粒子)、量子ドット、バーコード(例えば核酸バーコード)、活性部位、結合部位、酸化還元反応活性マーカー群、アプタマー、疎水性種、親水性種、結合対の1つのメンバー、ドナー染料(レポーター)、アクセプター染料(クエンチャー)、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0108】
場合によっては、検出可能なラベルは、レポーター、クエンチャー、又はそれらの組み合わせである。レポーターの例は、限定されないが、表1に示されるレポーターを含む。幾つかの実施形態において、任意の適切なレポーターが使用される。幾つかの例において、レポーターは、キサンテン、シアニン、スクアライン、ナフタレン、クマリン、オキサジアゾール、アントラセン、ピレン、オキサジン、アクリジン、アクリルメチン(acrylmethine)、テトラピロール、又はそれらの誘導体である。幾つかの例において、キサンテンはローダミン、フルオレセイン、又はそれらの誘導体である。幾つかの例において、複数のレポーターが使用される。幾つかの例において、複数のレポーターが使用されると、複数のレポーターの各々の最大発光は、少なくとも15nm分離される。
【0109】
クエンチャーの例は、限定されないが、表2のクエンチャーを含む。幾つかの実施形態において、任意の適切なクエンチャーが使用される。
【0110】
幾つかの例において、クエンチャーの吸収スペクトルは、レポーターの蛍光スペクトルと重複する。
【0111】
【0112】
【0113】
場合によっては、検出可能なラベルは有機金属化合物である。場合によっては、有機金属化合物はフェロセン又はそのアナログである。
【0114】
ラベルは、それ自体で検出可能であり、又は他の検出可能な種の結合を可能とし得る。それ自体で検出不能なラベルは、後に検出可能な種と接触され得る。例えば、標的核酸をビオチンで標識し、続いて検出のためにストレプトアビジン結合フルオロフォアに結合させることができる。別の例において、標的核酸は核酸バーコードにより標識され;続いて、核酸バーコード配列が増幅且つ検出され得る。検出様式は、限定されないが、光検出(FRET、蛍光寿命及び他の光学的特性を含む)、電気的検出、磁気的検出、放射性標識検出、配列決定、サイズ検出(例えば、電気泳動分離による)、表面プラズモン共鳴(SPR)、ラマン分光法、及び質量分析法を含む。
【0115】
特徴間の相対的なシグナルは、特徴ごとに結合するラベルの数によって判定することができる。例えば、
図2に示されるように、異なる数のフルオロフォアが特徴ごとに結合することができ、結果として相対輝度が異なる。
図2は、特徴ごとに1フルオロフォア(上)、特徴ごとに10フルオロフォア(中)、及び特徴ごとに50フルオロフォア(下)の相対輝度を示す。
【0116】
図1A-Fは、典型的なバイオチップシステムを例示する。
図1Aは、各々が同一のプローブを含む特徴を有する4つの典型的な特徴、及びサンプル中の単一の被験体からの4つの未結合の標識された標的を図示する。故に、プローブに標的を結合することにより、各特徴からの1単位のシグナルが結果として生じる。
図1Bは、サンプル中の単一の被験体からの4つのプローブ、及び4つの未結合の標識された標的を備えた、被験体に特異的な特徴を図示する。故に、プローブに標的を結合することにより、1つの特徴から4単位のシグナルが結果として生じる。
図1Cは、各特徴からの1単位のシグナルを結果としてもたらす、4つの異なる特徴に結合される4つの標的を図示する。
図1Dは、1つの特徴からの4単位のシグナルを結果としてもたらす、単一の被験体に特異的な特徴に結合されている4つの標的を図示する。
図1Cと
図1Dとの比較は、多数の被験体標的を対象とする複数の異なるプローブを使用するときに単一の特徴に存在し得るシグナル増幅を実証する。
図1Eは、
図1A及び
図1Cに示されるもののようなアレイパフォーマンスを結果としてもたらす、別個の特徴における固有のプローブの順序付けられた統合による特徴を図示する。
図1Fは、
図1B及び
図1Dに示されるもののような配置を結果としてもたらす、特徴中の固有のプローブの無作為な統合による特徴を図示する。
【0117】
図11は他の典型的な検出装置を例示する。
図11は、溶液中に遊離した4つのプローブを含む反応チャンバを表し、各プローブはレポーター及びクエンチャーを含んでいる。光源への曝露に際し、後のPCRはプローブを加水分解し、レポーターが蛍光を発することを可能にする。
【0118】
プローブセット又は被験体に特異的な特徴内の多数の固有のプローブは、検出システムの解像度以下の領域内に位置し得る。多数の固有で順序付けられたプローブによって囲まれた領域は、検出システムの解像度未満、又は検出システムの解像度と同等であり、或いは、全ての固有のプローブによって囲まれた領域は、セット中の無作為に順序付けられた固有のプローブの少なくとも2つによって囲まれた領域が検出システムの解像度とほぼ同等又はそれ未満である限り、更に大きくなり得る。この場合、多数の固有のプローブ又は特徴からのシグナルは、1又は少数のピクセル、或いは他の解像度要素において収集又は統合され得る。このような手法は、単一の特徴へと同一でないプローブを統合するものと同様の結果を達成することができる。
【0119】
参考のために、マイクロアレイ光学的検出に使用される画像化システムは、ピクセル又は解像度要素につき1マイクロメートル(μm)~5μmの解像度を有し得る。典型的に、直径又は長さが5である光学的に検出されたマイクロアレイ特徴は、1μm~5μmの光学的解像度が可能な光学システムを用いて画像化される。別の例は、ビーズの中心間の間隔が2μm離れた1μm径のビーズで構成されるマイクロアレイである。このアレイは、0.5~1μmの解像度光学システムを用いて画像化され得る。
【0120】
一例において、個々の固有のプローブ(例えばDNAフラグメント)は、プローブセットとして基板に堆積される前に統合され、個々の固有のプローブは、例えばプローブ中心間の10ナノメートル(nm)~10’sの順で、固有のプローブ間の平均距離を持つ基板に付けることができる。このプローブセットを含む単一の特徴の大きさは、例えば直径約1μm、2μm、3μm、4μm、又は5μmであり得る。その後、例えば約1μmの解像力を持つ画像化システムは、1ピクセル又は最大25ピクセル、或いは他の解像度要素内の多数の個々のプローブから、シグナルを収集又は統合することができる。
【0121】
幾つかの設計において、特徴は、情報を含まない特徴間の空間で配置することができ、或いは、シグナルのない特徴間の領域を含まない特徴の市松模様などの、タッチ境界(touching boundaries)で順序付けることができる。例えば、他の特徴に直接隣接して配置される5μm平方の特徴の場合、特徴を区別するために1μm又は2μmの解像度が必要とされ得る。一方で5μmのビーズが他の5μmのビーズにより中心間で15μmの間隔を空けられる場合、その後、5μm、又は可能なら10μmの分解能の撮像システムが、マイクロアレイ上で異なる特徴からシグナルを区別するよう適合され得る。
【0122】
別の例において、複数の同一のプローブは、撮像システムの分解能よりもサイズが小さな第1の特徴において共にグループ化され、この特徴は、同じ被験体を標的とする他の特徴に隣接して位置付けられ、そこでは、特徴内のプローブは同一であるが、第1の特徴におけるものとは異なっている。全てのプローブが検出システムの解像力により定められる領域にほぼ等しい又はそれ未満の領域内に含まれる場合、検出器は、シグナルを全てのプローブから単一のピクセル又は解像度要素へと一体化することができる。画像化システムの解像度付近又はそれ未満のサイズの領域中の同一のプローブ型の群を統合することによって、プローブのランダムに統合されたセットと同じ恩恵を受けることができる。
【0123】
検出装置は多数の被験体に特異的な特徴を含み得る。幾つかの例において、検出装置は、10、100、1,000、10,000、又は100,000を超える被験体に特異的な特徴を含む。場合によっては、複数の被験体に特異的な特徴は、プローブの1つ以上のセットへと配置され、プローブの各セットは異なる被験体を識別する。
【0124】
プローブは標的を結合することが可能である。プローブは標的に相補的であり得る。プローブは標的に対する親和性を有し得る。プローブは3つ全ての組み合わせであり得る。異なる被験体を対象とした特徴は異なるプローブを含み得る。幾つかの例において、非複製特徴は別の特徴を備えるプローブを共有しない。幾つかの例において、非複製特徴は、別の特徴を備える0.1%、1%、5%、又は10%未満のそのプローブを共有する。
【0125】
場合によっては、プローブの各セットは、固有のプローブ型の平均的な表現を有する。場合によっては、固有のプローブ型の平均的な表現は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、又はそれ以上である。
【0126】
セット内のプローブフラグメントの総数、及びセット内の単一で固有のプローブ型の平均的な表現は、プローブセットの特異性及びプローブセットのダイナミックレンジを制御するために制御され得る。一例において、プローブの総数がおよそ1000に限定され、且つセット中の固有のプローブ型の数が250である場合、個々のプローブ型の平均的な表現は約4である。第1の例において、4つの被験体細胞のDNAがサンプル内に存在し、4つの被験体細胞からのゲノムDNAの約90%がサンプル調製プロセス後にサンプル内にとどまり、実質的にアレイに結合する場合、シグナル強度は最大強度の約95%になる。同様に、2つの被験体細胞からのDNAが存在し、処理され、95%の効率でハイブリダイズされた場合、シグナル強度は最大強度の約50%であり得る。第2の例において、被験体細胞がサンプルに存在しないが、非被験体有機体が1000を超える細胞でサンプル中に非常に豊富であり、非被験体有機体からのDNAが単一のプローブ型に一致する単一の領域を含む場合、シグナルの一致したプローブ型から生成されるシグナルは、平均して最大シグナルの約1%未満であり得る。
【0127】
対照的に、上記2つの例を考慮すると、固有で個々のプローブ型の数が10にセットされ、プローブ断片の総数が10,000である場合、平均プローブ表現は約1000である。このシナリオにおいて、上記例Aを考慮すると、シグナル強度は最大シグナルの1%未満となり、場合によっては偽陰性判定を結果としてもたらす。同じシナリオではあるが上記例Bを考慮すると、シグナル強度は最大シグナルの約10%となり、場合に偽陽性判定を結果としてもたらす。その後、検出の下限は、検出可能な標的細胞に関して、システムの特異性、即ち、セット内のプローブの1つ以上における結合誤差により偽陽性コールを拒絶する能力を増大するために損なわれる場合がある。
【0128】
幾つかの態様において、被験体に特異的な特徴中のプローブの総数は制御される。被験体に特異的な特徴中のプローブの総数を制御する方法は、限定されないが、合計特徴サイズを制御する工程と、被験体に特異的な特徴内の個々のプローブ間隔を制御する工程と、を含む。
【0129】
幾つかの態様において、プローブは、偽陽性を検出するように設計され得る。例えば、プローブはプローブセットを設計することにより設計することができ、プローブセット内の個々のプローブは、他のプローブセット中の個々のプローブにミスマッチする1つ以上の塩基と共に設計される。場合によっては、プローブセットは相補的である。他の場合、プローブセットは相補的ではない。別の例において、プローブセットは、多数の類似した株を有する被験体有機体を探すように設計され得る。この例において、標的でないが1つ以上の個々の固有の特性を備えた標的のゲノムに非常に近いゲノムを有する株内に含まれる、個々の配列を検出するために、プローブセットが追加され得る。
【0130】
プローブセットの設計は、起こり得る偽陽性の挙動についてより多く学ぶために、経験的スクリーニング工程も含み得る。この工程は、自然に見出され且つハイブリダイゼーション活性に含まれる非被験体材料の一部であり得る、様々な型のゲノムDNAに対する制御を追加する工程に基づき得る。これらプローブセットは、別個に又はセットとしてスクリーニングされ得る。
【0131】
検出装置の特徴(例えば、アレイスポット、電極、ウェル)は、それぞれ異なることもあり、限定されないが、異なる数のプローブ、異なる型のプローブ、異なる被験体に特異的な特徴、固有のプローブの異なる平均的な表現などが挙げられる。非限定的な例において、検出装置は、多数の被験体に特異的な特徴を検出するために複数の反応チャンバを含み得る。各被験体に特異的な特徴は、プローブのセットを含む場合があり、各セットが複数の固有のプローブを含む。幾つかの特徴において、プローブのセットは、検出装置の感度を測定するために使用することができる、標的被験体に関する固有のプローブの低い平均的な表現を含み得る。同じ検出装置上の他の特徴において、プローブのセットは、サンプル中の標的核酸の存在量を測定するために使用することができる、同じ標的被験体に関する固有のプローブの高い平均的な表現を含み得る。特徴の任意の数の感度及び/又は存在量が、検出装置へと設計され得る。
【0132】
検出装置は、(例えば2つの異なるマイクロバイオームのサンプルからの)異なるソースのハイブリダイゼーション強度の連続比較のために、多数のプロービング実験を受ける場合がある。例えば、検出装置は多数の連続ハイブリダイゼーション反応、及び随意に多数の読み取り反応(read reaction)を受ける場合があり、各反応は、異なるプローブセットの特性に対して最適化されている。
【0133】
プローブは、ポリヌクレオチド(標的核酸又は標的)を標的とするようハイブリダイズするために設計され得る。標的ポリヌクレオチドはゲノム配列であり得る。標的ポリヌクレオチドはゲノムの非コード領域であり得る。標的はゲノム特徴であり得る。標的はミトコンドリアDNAであり得る。標的はプラスミドからのDNAであり得る。標的は変異体であり得る。標的は、ゲノムの保存領域、又は病原性に関連する領域であり得る。
【0134】
標的は、別のゲノムと区別可能なゲノムの領域であり得る。標的は、被験体の集団内の被験体に固有のポリヌクレオチドであり得る。標的は、そのマイクロバイオーム内に表現された特定の種とは別個の、マイクロバイオーム内のポリヌクレオチドであり得る。
【0135】
プローブ設計の典型的なプロトコルは以下のとおりである。第一に、長さ基準(例えば35塩基)をプローブセットに対して選択する。第二に、選択された長さのk-merのセットは、被験体のゲノムを通って連続して進むことにより、標的ゲノムから作成される。第三に、k-merを、同じ種類の他のゲノムと比較する(例えばBLASTによって)。第四に、ヒト、細菌、ウイルス、及びその他などの公的に入手可能な全ての他のゲノム(即ち、同じ種ではない)と、k-merを比較する(例えばBLASTによって)。場合によっては、第三及び第四の工程は共に実行可能であるが、幾つかの種(例えばE.coli)に対しては非常に小さなセットしか結果としてもたらすことができない。第五に、固有の候補のk-merのショートリストを作成する。加えて、これら固有のプローブの中央の塩基は、各直交塩基(1k-merは結果として3つのミスマッチk-merをもたらす)に変更することができ、ミスマッチk-merはまた、(例えばブラスト(blasting)を介して)公に入手可能な全ての他のゲノム、及び/又は同じ種の他のゲノムと比較することができる。第六に、自己相補性(self complimentarity)(即ち、プローブがそれ自体に結合するかどうか)に関して候補を試験する。第七に、融解温度を一本鎖の自由エネルギーに基づいて評価する。第八に、k-merを、固有性のレベル(例えば固有の配列のパーセント)に基づいてランク付ける。更に、k-merは、GC含量などの他の特徴に関してフィルタリングされ得る。例えば、場合によっては、<60%のGC含量を有するk-merのみが含まれる。第九に、同じ種類の選択されたゲノムへとハイブリダイズすることにより、候補を経験に基づいて試験する。第十に、これら結果に基づいて、最終候補の統合を選択する。
【0136】
プローブは、既知の核酸配列に相補的になるように設計することができる。場合によっては、被験体のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの配列を判定するために、プローブを設計する前に配列決定され得る。一旦、ポリヌクレオチドが配列決定されると、プローブは被験体のポリヌクレオチドを標的とするように設計することができる。場合によっては、被験体のポリヌクレオチドは、被験体のゲノムに見出される配列を含む。この例において、被験体のゲノムは配列決定され、プローブはゲノム内の標的ポリヌクレオチドに対して設計され得る。幾つかの例において、標的のリストは、2人以上の被験体間の非重複ゲノム領域を判定することにより生成され得る。場合によっては、標的はアセンブリを比較することにより識別される。配列決定法は、キャピラリー配列決定、次世代配列決定、サンガー配列決定、合成による配列決定、単一分子ナノポア配列決定、ライゲーションによる配列決定、ハイブリダイゼーションによる配列決定、ナノポアの流動を制限することによる配列決定(sequencing by nanopore current restriction)、又はそれらの組み合わせを含み得る。合成による配列決定は、可逆的な転写終結配列決定、前進的な単一分子配列決定、連続的なヌクレオチドフロー配列決定(sequential nucleotide flow sequencing)、又はそれらの組み合わせを含み得る。連続的なヌクレオチドフロー配列決定は、パイロシークエンシング、pH媒介配列決定、半導体配列決定、又はそれらの組み合わせを含み得る。1つ以上の配列決定反応の実施は、非標的配列決定(untargeted sequencing)(例えばゲノム全体の配列決定)、又は標的配列決定(targeted sequencing)(例えばエクソーム配列決定)を含む。
【0137】
配列決定法は、マクサム-ギルバート法(Maxim-Gilbert)、連鎖停止反応、又はハイスループットシステムを含み得る。代替的に又は付加的に、配列決定法は、Helioscope(商標)単一分子配列決定、ナノポアDNA配列決定、Lynx Therapeuticsの大規模並列シグネチャ配列決定(MPSS)、454パイロシークエンシング、単一分子リアルタイム(RNAP)配列決定、Illumina(Solexa)配列決定、SOLiD配列決定、Ion Torrent(商標)、イオン半導体配列決定、単一分子SMRT(商標)配列決定、ポロニー配列決定、DNAナノボール配列決定、VisiGen Biotechnologies手法、又はそれらの組み合わせを含み得る。代替的又は付加的に、配列決定法は、限定されないが、Illuminaにより提供されたGenome Analyzer IIx、HiSeq、NextSeq、及びMiSeq、Pacific Biosciences(California)により提供されたPacBio RSシステムなどのSingle Molecule Real Time(SMRT(商標))技術、及びSolexa Sequencer、Helicos Inc.(Cambridge, MA)により提供されたHeliScope(商標)シークエンサーなどのTrue Single Molecule Sequencing(tSMS(商標))技術、Genia Technologies, Inc.により開発されたナノポアベースの配列決定プラットフォーム、並びにOxford Nanopore MinIONを含む、1つ以上の配列決定プラットフォームを含む。
【0138】
場合によっては、配列又は遺伝子発現のデータベースをクエリして、標的被験体の既知の核酸配列を識別する。配列又は遺伝子発現のデータベースの非限定的な例は、NCBIのGenBank、the European Molecular Biology Laboratory(EMBL)、the DNA DataBank of Japan(DDBJ)、ENSEMBL、the Ashbya Genome Database(AGD)、BioCyc、CleanEx、CYGD、Dictybase、EchoBase、EcoGene、euHCVdb、EvoTrace、FlyBase、GeneCards、GeneDB、GeneFarm、GenoList、Gramene、HGNC、HInv-DB、HOGENOM、KEGG、MaizeGDB、MEROPS、MGD、NMPDR、NCBI Nucleotide db、NCBI RefSeq、PANTHER、PCCDB、PeroxiBase、Pfam、PhosphoSitePlus、PlasmoDB、PptaseDB、PseudoCap、RGD、SGD、TAIR、TIGR/SCVI、UniGene、VectorBase、WormBase、及びZ-FINを含む。
【0139】
場合によっては、複数のプローブの少なくとも1つはペイロード分子を含む。他の場合、複数のプローブの少なくとも1つは少なくとも2つのペイロード分子を含む。場合によっては、ペイロード分子はポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体である。幾つかの実施形態において、複数のプローブの少なくとも2つは異なるペイロード分子を含む。幾つかの実施形態において、異なるペイロード分子は異なるサイズである。幾つかの実施形態において、複数のプローブの少なくとも2つは、異なる数のペイロード分子を含む。幾つかの実施形態において、プローブは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のペイロード分子を含み得る。例えば、2つのPEG分子が1つのプローブのセットの各プローブに付けられ、3つのPEG分子がプローブの第2のセットの各プローブに付けられる場合がある。
【0140】
場合によっては、プローブは合成核酸スキャホールドに結合される。場合によっては、ペイロード分子は合成核酸スキャホールドに結合される。
【0141】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される検出装置は、第2のプローブの1つ以上のセットを更に含み、前記第2のプローブの1つ以上のセットの各セットは複数の第2のプローブを含み、前記第2のプローブの1つ以上のセットの各セットは、標的核酸付近の核酸の領域に結合する。
【0142】
幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸の上流又は下流にある場合がある。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸から10bp未満分離され得る。幾つかの実施形態において、標的核酸付近の核酸の領域は、標的核酸から10bp未満、20bp未満、30bp未満、40bp未満、50bp未満、又は100bp未満分離され得る。
【0143】
場合によっては、第2のプローブは検出装置の表面に固定される。幾つかの実施形態において、検出装置の表面は電極である。幾つかの例において、電極は、金、イリジウム、白金、銅、又はこれらの組み合わせを含む。幾つかの例において、検出装置は更に複数の電極を含む。場合によっては、検出装置の表面はアレイである。
【0144】
他の場合、第2のプローブは検出装置の表面に固定されない。
【0145】
幾つかの例において、複数の第2のプローブの少なくとも1つは、ガイド核酸(gNA)、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質、又はそれらの複合体を含む。場合によっては、gNAは標的核酸に結合する。場合によっては、ガイド核酸(gNA):核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質の複合体は、標的核酸に結合する。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質はCRISPR/Casシステムタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は、Cas9、CasX、CasY、Cpf1、Cas3、Cas8a-c、Cas10、Cse1、Csy1、Csn2、Cas4、Csm2、及びCm5から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は、死滅した核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は、死滅したCRISPR/Casシステムタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質はdCas9である。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は、核酸誘導ヌクレアーゼシステムニッカーゼタンパク質である。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は、CRISPR/Casシステムニッカーゼタンパク質である。幾つかの実施形態において、核酸誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は、オフターゲット結合の減少を示す。場合によっては、CRISPR/Casシステムタンパク質は二本鎖DNA(dsDNA)を開き、gNAへの標的核酸を含むDNAの結合を可能にする。幾つかの実施形態において、CRISPR/Casシステムタンパク質は室温でdsRNAを開く。
【0146】
幾つかの実施形態において、gNAはラベルを含む。幾つかの実施形態において、ヌクレイン誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質はラベルを含む。幾つかの実施形態において、gNA及びヌクレイン誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は同じラベルを含む。幾つかの実施形態において、gNA及びヌクレイン誘導ヌクレアーゼシステムタンパク質は異なるラベルを含む。
【0147】
場合によっては、複数の第2のプローブの少なくとも1つは、少なくとも1つの検出可能なラベルで標識される。場合によっては、ラベルは、酵素、酵素基質、抗体、抗原結合フラグメント、ペプチド、発色団、ルミフォア、フルオロフォア、クロモゲン、ハプテン、抗原、放射性同位体、磁性粒子、ナノ粒子(例えば金ナノ粒子)、量子ドット、バーコード(例えば核酸バーコード)、活性部位、結合部位、酸化還元反応活性マーカー群、アプタマー、疎水性種、親水性種、結合対の1つのメンバー、ドナー染料(レポーター)、アクセプター染料(クエンチャー)、有機金属化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0148】
方法
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、複数の異なる被験体を含むサンプル中の標的被験体を識別するための方法である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、複数の異なる被験体を含むサンプル中の複数の複数の標的被験体を識別するための方法である。幾つかの実施形態において、標的被験体は少なくとも1つの標的核酸を含む。幾つかの実施形態において、複数の標的被験体は複数の標的核酸を含み、複数の標的被験体の各々は少なくとも1つの標的核酸を含む。
【0149】
幾つかの態様において、本明細書に記載される方法は、複数の異なる被験体を含むサンプルを提供する工程を含む。場合によっては、サンプルは、複数の異なる被験体に由来する複数の核酸を含む。場合によっては、複数の核酸は、複数の異なる被験体の少なくとも2つ以上から得られる少なくとも1つの標的核酸を含む。
【0150】
幾つかの態様において、前記方法は、複数の被験体から核酸を抽出する工程を更に含む。幾つかの態様において、前記方法は、複数の被験体から抽出された核酸を断片化する工程も含む。任意の追加の処理工程が、検出装置への適用前に核酸に対して実行され得る。場合によっては、核酸は、検出装置へのハイブリダイゼーション前に修飾され得る。例えば、本明細書に記載されるように核酸を標識することができる。付加的に、又は代替的に、例えば、捕捉プローブの使用、又は増幅工程によって、標的核酸を富化することができる。他の例において、非標的核酸は、ハイブリダイゼーション前にサンプルから枯渇され得る。
【0151】
更なる態様において、前記方法は検出装置へ複数の核酸をハイブリダイズさせる工程を含む。本明細書に記載されるように検出装置を設計することができる。ハイブリダイゼーション後、前記方法は、任意の数の洗浄工程を更に含み得る。例えば、検出装置のプローブへ核酸をハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズされない核酸を除去するために、例えば緩衝液又は洗浄液で検出装置を1回以上洗浄することができる。ハイブリダイズされない核酸は、更なる工程のために、廃棄又は収集され得る。
【0152】
幾つかの態様において、ハイブリダイズした核酸は、例えば、電気伝導度、容量、又は抵抗の変化を介して検出することができる。場合によっては、検出装置は画像化される。幾つかの例において、検出前に検出装置に読み取り緩衝液(read buffer)を加える。読み取り緩衝液は、ハイブリダイズした核酸に適用すると検出可能なシグナルを生成する試薬を含み得る。他の例において、核酸分子は検出可能に標識される。
【0153】
幾つかの態様において、追加の特異性の工程を追加することができる。一例において、ハイブリダイゼーション後のライゲーション工程は、単一塩基のミスマッチを区別することができる。特異性はまた、捕捉、検出、又はその両方に対する追加のハイブリダイゼーション工程を加えることによって増大され得る。例えば、
図7Aは、捕捉配列(702)、及び、隣接する又は近隣の検出配列(703)を含む標的核酸(701)を示す。捕捉オリゴヌクレオチド(705)(例えば、捕捉配列に相補的な配列)を有するアレイ基板(704)を用いて、標的核酸にハイブリダイズしそれを捕捉(707)することができる。検出オリゴヌクレオチド(706)(例えば、蛍光標識されたもの)を用いて、標的核酸の検出配列にハイブリダイズ(708)させて、標的核酸の検出を可能にすることができる。検出オリゴヌクレオチドは、非標識標的核酸を有する遊離溶液中に存在し得る。標的核酸への検出オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、アレイ上での標的核酸の捕捉の前、最中、又は後に行うことができる。検出オリゴヌクレオチドは、完全に(又はほぼ完全に)相補的配列にハイブリダイズすることができる。検出は、迅速にハイブリダイズすることができるように、比較的高い濃度で存在し得る。捕捉配列及び検出された配列は近くにあるので、これらの2つの配列がDNAの小さな断片上で同時発生する可能性は低くなり、それ故、検出されたシグナルが非特異的である可能性が低くなる。
【0154】
場合によっては、捕捉配列及び検出配列は、それらが標的核酸の別々の断片に位置する可能性を減少させるために十分に密接に配置される。
【0155】
捕捉配列及び検出された配列が隣接している場合、エネルギー移動色素の組合せ(例えばFRET)の使用によりバックグラウンドを減少させることができる。一例において、
図7Bに示されるように、ドナー色素は捕捉オリゴ(715)の3’末端上にあり、アクセプター色素は検出オリゴヌクレオチド(716)の5’末端上にある。捕捉配列(712)及び検出された配列(713)を含む標的核酸(711)は、アレイ基板(714)上で捕捉することができる。捕捉オリゴヌクレオチド(717)及び検出されたオリゴヌクレオチド(718)の両方の標的核酸へのハイブリダイゼーションは、ドナー及びアクセプター色素を互いのFRET距離へと運ぶことができる。一旦、FRET距離内に入ると、励起光(719)はFRETドナーを励起して、次に共鳴エネルギー移動を介してFRETアクセプターを励起し、FRETシグナル(720)の生成を可能にする。ドナー色素及びアクセプター色素の位置及び位置決めは変更可能である。例えば、ドナー色素は検出オリゴヌクレオチド上にあり、アクセプター色素は捕捉オリゴヌクレオチド上にあってもよい。色素は、捕捉オリゴヌクレオチド以外の位置でアレイ表面に結合することができる。これらの考えは、同じ特徴の多数の捕捉遺伝子座に対してスケーラブルである(scalable)。
【0156】
複数の捕捉及び/又は検出配列を単一の標的核酸に用いることができる。例えば、
図7Cは、3つの捕捉配列(732)、(733)、(734)を含む標的核酸(731)の典型的な概略を示す。アレイ基板(735)は同様に、1つの特徴内に3つの捕捉オリゴヌクレオチド(736)、(737)、(738)を含む。ハイブリダイゼーション(739)の後、捕捉配列の各々は、対応する捕捉オリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる。捕捉配列の全てよりも少ない配列のハイブリダイゼーションが、標的核酸をアレイに結合したまま維持して分析の特異性を高めるには不十分となるように、局所条件(例えば、緩衝液組成、温度、pH)を構成することができる。複数の捕捉配列は、正しい標的配列が存在する場合には協調的に作動可能であるが、相互作用が非特異的である場合には独立して作動する。一旦、領域が捕捉されると、他の隣接する領域は迅速に捕捉され、(例えば、捕捉配列の局所的な高濃度により)除去するのが比較的困難となる場合がある。
【0157】
同様に、複数の検出配列及び対応する検出オリゴヌクレオチドは、全ての検出オリゴヌクレオチドの存在が陽性シグナルに対して必要とされるように利用され得る。一例において、各検出オリゴヌクレオチドは異なる発光波長を有し、シグナルは、陽性シグナルを記録するために異なる発光波長ごとに検出される。別の例において、検出オリゴヌクレオチドのFRET対を使用することができ、標的核酸上の検出配列へのハイブリダイゼーションにより、それらを互いのFRET距離内に運ぶことができる。異なる検出オリゴヌクレオチドを使用して異なる特性を認識することができる。例えば、1つの検出オリゴヌクレオチドを用いて被験体の同一性(例えば、種、株、又は個体)を示すことができ、一方、別の検出オリゴヌクレオチドを用いて、被験体の遺伝子、突然変異、又は他の特徴(例えば、抗生物質耐性、ビルレンス)を示すことができる。
【0158】
幾つかの態様において、元のサンプルに存在する被験体の同一性は、サンプル中の核酸の存在の検出に基づいて決定され得る。場合によっては、特定の被験体に対する標的が、特定の株を検出するように設計され得る。場合によっては、標的は、被験体の種に対する、又は、病原性に関連する保存領域を表現するなどの他の方法で固有である被験体内に含まれる他の領域に対する、プローブを含み得る。場合によっては、標的は、特定の個人などの、特定の個体を区別可能なプローブを含み得る。個々のプローブセットは特定の個体を一意的に識別することができる。他の場合、個体の識別は固有ではない場合もあるが、固有性のレベルに基づいて有用なコール信頼水準(call confidence level)を提供することができる。場合によっては、個体コールの信頼水準は、約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、96%、98%、99%、99.9%、99.99%、又は99.999%であり得る。場合によっては、個体コールの信頼水準は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、96%、98%、99%、99.9%、99.99%、又は99.999%であり得る。場合によっては、個体コールの信頼水準は、多くとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、96%、98%、99%、99.9%、99.99%、又は99.999%であり得る。
【0159】
場合によっては、結果がレポートに提供される。そのレポートは、元のサンプル中の複数の被験体から識別された被験体を列挙することができる。被験体が、株特異的特徴、種特異的特徴、及び被験体内に存在する保存領域からなる特徴などの複数の特徴によって表現される場合、レポートはこれら他の特徴も検出されたかどうかを列挙することができる。次いで、最終的な陽性コールは、被験体に関連付けた特徴が全て検出されたか、全く検出されなかったか、一部が検出されたかどうかに基づいて計算された信頼水準に基づき得る。
【0160】
幾つかの態様において、前記方法は、検出後に完全なサンプルを保存する能力を含む。これは、例えば、サンプル調製プロセスの時点でサンプルをAサンプルとBサンプルとに分離することによって達成することができる。Aサンプルは、完全なサンプル調製プロセスを進めることができ、Bサンプルは、後の処理のためにリザーバに転用することができる。別の例において、サンプルのハイブリダイズされない部分は、例えば、ハイブリダイズされない核酸を除去するために検出装置を洗浄することによって、ハイブリダイゼーションプロセス後にリザーバに転用され得る。また別の例において、ハイブリダイズされた核酸は、後のクエリのために、脱ハイブリダイズ(de-hybridized)され、且つリザーバに転用され得る。
【0161】
本開示の技術は、工程の一部又は全部に対して自動化された操作を使用して実施することができる。例えば、場合によっては、ユーザーが行う唯一の工程は、サンプルの充填であり、流体の取り扱い、アッセイ、検出、及び結果の報告などの他の全ての工程は、自動的に行われる。他の場合、サンプルの充填でさえ自動的に行うことができる。例えば、研究所の自動化機器又は環境サンプリング機器を使用して、解析用のデバイスにサンプルを提供することができる。
【0162】
検出
本開示の幾つかの態様において、検出装置のプローブへの標的核酸の結合が検出される。検出は、当業者に既知の任意の方法を包含し得る。場合によっては、検出は、標的核酸分子、プローブ、又はその両方に存在する検出可能なラベルを検出することを含む。他の場合、検出は、標的核酸分子とプローブとの相互作用に基づいて生成されるシグナルを検出することを含む。幾つかの実施形態において、シグナルは、蛍光シグナル、電気化学シグナル、又は一定の電流インピーダンスである。
【0163】
ラベルは、それ自体で検出可能であり、又は他の検出可能な種の結合を可能とし得る。それ自体で検出不能なラベルは、後に検出可能な種と接触され得る。例えば、標的核酸をビオチンで標識し、続いて検出のためにストレプトアビジン結合フルオロフォアに結合させることができる。別の例において、標的核酸は核酸バーコードにより標識され;続いて、核酸バーコード配列が増幅且つ検出され得る。検出様式は、限定されないが、光検出(FRET、蛍光寿命及び他の光学的特性を含む)、電気的検出、磁気的検出、放射性標識検出、配列決定、サイズ検出(例えば、電気泳動分離による)、表面プラズモン共鳴(SPR)、ラマン分光法、及び質量分析法を含む。
【0164】
場合によっては、シグナルは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づくシグナルである。この例において、標的核酸分子及びプローブの両方が1つ以上の蛍光ラベルで標識される。1つ以上の蛍光ラベルは、1つ以上のFRET対であり得る。1つ以上のFRET対は、少なくとも1つのFRETドナー(レポーター)及び少なくとも1つのFRETアクセプター(クエンチャー)を含むことができる。場合によっては、FRETドナーは標的核酸分子に付着し、FRETアクセプターはプローブに付着する。他の場合、FRETアクセプターは標的核酸分子に付着し、FRETアクセプターはプローブに付着する。他の場合、FRETアクセプター及びFRETドナーはプローブに付着する。FRETドナー及びアクセプターは、標的核酸分子及びプローブの何れかの末端(3’又は5’)に付着し得る。場合によっては、FRETドナー(レポーター)は表1に示されるものなどの任意の適切なレポーターである。場合によっては、FRETアクセプター(クエンチャー)は表2に示されるものなどの任意の適切なクエンチャーである。場合によっては、FRETドナーはCy3であり、FRETアクセプターはCy5である。FRET対の他の非限定的な例は、FITC/TRITC、EGFP/Cy3、CFP/YFP、及びEGFP/YFPを含む。
【0165】
場合によっては、前記方法は更に、検出装置を光源に晒す工程を含む。場合によっては、光源は蛍光源である。光源への曝露は結果として、レポーターからクエンチャーへのエネルギー伝達をもたらす。場合によっては、検出は更に、標的核酸を含む核酸配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実行する工程を含む。幾つかの例において、PCRはデジタルPCR(dPCR)である。幾つかの例において、デジタルPCRはデジタルドロップレットPCR(ddPCR)である。場合によっては、PCRの実行は結果として、プローブの1つ以上のセットが標的核酸に結合した時にプローブの1つ以上のセットの加水分解をもたらす。プローブの1つ以上のセットの加水分解は結果として、レポーター及びクエンチャーの分離、更にはレポーターによる蛍光シグナルの放射をもたらす。場合によっては、蛍光シグナルは、CCD、CMOS、又はSPADカメラを使用して光学的に検出される。
【0166】
場合によっては、前記方法は、検出装置に電圧をかける工程を更に含む。場合によっては、シグナルは電気化学シグナルである。この例において、第2(捕捉)のプローブは電極に結合され、これは標的核酸付近の核酸の領域に結合する。標的核酸がフェロセンラベルなどの検出可能なラベルを含む未結合のプローブに結合し、この複合体が続いて、電極に結合される第2のプローブに結合すると、電極への電圧の印加は結果として検出可能な電気化学シグナルをもたらすことができる。
【0167】
場合によっては、反応チャンバは少なくとも1つの孔を含む。場合によっては、反応チャンバは少なくとも2つの孔を含む。場合によっては、反応チャンバは第1の孔及び第2の孔を含む。この例において、第1の孔は、第1の電圧を放射する第1の電極を含み、第2の孔は、第2の電圧を放射する第2の電極を含む。標的核酸がプローブ又はラベルに結合すると、サンプルに対する第1の孔の第1の電圧及び第2の孔の第2の電圧の印加は結果として、検出可能な電流インピーダンスのシグネチャをもたらすことができる。
【0168】
他の場合、検出は、標的核酸に存在する検出可能なラベルを検出することを含む。この例において、検出可能に標識された標的核酸分子がプローブに結合されている場合にのみ、シグナルを検出することができる。場合によっては、標的核酸分子は、Cy5により5’標識される。場合によっては、非標識ハイブリダイゼーション結合は、例えば、インターフェロメトリックオシレータ上の表面状態の差の検出、光路中の屈折率差の指標、又は走査型電子顕微鏡法(SEM)技術を用いた直接検出によって、検出され得る。
【0169】
光検出が利用される場合、検出装置は、CMOSカメラなどの光検出器の表面であり、或いは、外部光学システムによってプローブ探索されるフローセル内にあってもよい。光学的蛍光検出の場合、蛍光共焦点顕微鏡法を含む従来の蛍光光学的検出のアーキテクチャを用いることができる。プローブがCMOS検出器に直接固定されている場合、CMOS検出器は、システムの励起光を遮断し且つ選択された色素からの光の通過を可能にする、CMOS検出器とプローブとの間の層を有することができる。
【0170】
コンピュータシステム
本開示のシステムは1つ以上のコンピュータシステムを含み得る。本開示の技術及びデバイスは、操作、自動化、サンプル処理、データ処理、データの送信、分析、結果の提示、及び他の機能に対してコンピュータシステムを使用することができる。
図3は、データを受信し、サンプル中の被験体の存在又は不在を識別するなど、本開示の方法を実施するようにプログラムされた、又はそうでなければ構成される、コンピュータシステム(301)を示す。コンピュータシステム(301)は、シングルコア又はマルチコアプロセッサ、或いは並列処理のための複数のプロセッサであり得る、中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」及び「コンピュータプロセッサ」)(305)を含む。コンピュータシステム(301)はまた、メモリ(310)(例えば、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、フラッシュメモリ)と、電子記憶装置(315)(例えば、ハードディスク)と、1つ以上の他のコンピュータシステムと通信するための通信インターフェース(320)(例えば、ネットワークアダプタ)と、キャッシュ、他のメモリ、データストレージ、及び/又は電子ディスプレイアダプタなどの周辺装置(125)とを含む。メモリ(310)、記憶装置(315)、インターフェース(320)、及び周辺装置(325)は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU(305)と通信する。記憶装置(315)は、データを記憶するための記憶装置(又はデータリポジトリ)であり得る。コンピュータシステム(301)は、通信インターフェース(320)の助けを借りてコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)(330)に動作可能に連結される。ネットワーク(330)は、インターネット、インターネット及び/又はエクストラネット、或いはインターネットと通信しているイントラネット及び/又はエクストラネットであり得る。ネットワーク(330)は、場合によっては、電気通信及び/又はデータネットワークである。ネットワーク(330)は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にする1つ以上のコンピュータサーバーを含み得る。ネットワーク(330)は、場合によっては、コンピュータシステム(301)の助けを借りて、コンピュータシステム(301)に連結されたデバイスがクライアント又はサーバとして挙動することを可能にする、ピアツーピアネットワークを実装することができる。コンピュータシステムは、物理的にデバイスの近くにある必要はなく;有線又は無線の様式を介してデバイスと通信することができる。
【0171】
コンピュータシステム(301)は、処理システム(335)と通信することができる。処理システム(335)は、1つ以上の標的核酸配列の存在を識別する、又は複数の被験体をレポート上で分類するなど、本明細書に開示される方法を実施するように構成することができる。処理システム(335)は、ネットワーク(330)を通じて、又は直接(例えば、有線、無線)接続によって、コンピュータシステム(301と)通信することができる。処理システム(335)は、核酸配列分析などの分析のために構成することができる。
【0172】
本明細書に記載される方法及びシステムは、例えばメモリ(310)又は電子記憶装置(315)などのコンピュータシステム(301)の電子記憶場所に記憶されたマシン(又はコンピュータプロセッサ)実行可能コード(又はソフトウェア)によって実行され得る。使用中に、コードはプロセッサ(305)によって実行することができる。幾つかの例において、コードは、記憶装置(315)から検索され、プロセッサ(305)による容易なアクセスのためにメモリ(310)に記憶され得る。幾つかの状況において、電子記憶装置(315)を排除することもでき、マシン実行可能命令はメモリ(310)に記憶される。
【0173】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサを有するマシンと共に使用するために予めコンパイルされ且つ構成され、或いは、実行中にコンパイルされ、又は実行中に解釈され得る。コードは、予めコンパイルされ、コンパイルされたまま(as-compiled)、又は解釈された様式でコードを実行できるように選択され得るプログラミング言語で提供され得る。
【0174】
本明細書に提供されるシステムと方法の態様はプログラミングにおいて具体化され得る。この技術の様々な態様は、一種のマシン可読媒体に搭載される又は埋め込まれるマシン(又はプロセッサ)実行可能コード及び/又は関連データの形態で、典型的には「製品」又は「製造品」とみなすことができる。マシン実行可能コードは、メモリ(例えば、リードオンリーメモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)又はハードディスクなどの電子記憶装置に記憶され得る。「記憶」型の媒体は、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータやプロセッサなどの有形のメモリ、或いは、それらの関連するモジュールの何れか又は全てを含むことができ、これは、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的な記憶を提供し得る。ソフトウェアの全て又は一部は、時には、インターネット又は様々な他の電気通信ネットワークを介して通信され得る。このような通信は、例えば、管理サーバ又はホストコンピュータからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへなど、コンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータ又はプロセッサへの、ソフトウェアのローディングを可能にする。故に、ソフトウェア要素を保持できる別のタイプの媒体には、ローカルデバイス間の物理インターフェースにわたり、有線及び光陸上通信線ネットワークを介して、並びに様々なエアリンク上で使用されるような、光波、電波、及び電磁波が含まれる。例えば有線又は無線リンクや光リンクなどの、このような波を運ぶ物理的要素も、ソフトウェアを保持する媒体とみなすことができる。本明細書で使用されるように、非一時的で有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータ又はマシン「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する媒体を指す。
【0175】
従って、コンピュータ実行可能コードなどのマシン可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、又は物理的伝送媒体を含むが、これに限定されない、多くの形態をとることができる。不揮発性記憶媒体には、例えば、データベースなどを実装するために使用され得るものなど、任意のコンピュータなどにおける記憶デバイスの何れかなどの、光学ディスク又は磁気ディスクが含まれる。揮発性記憶媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリなどのダイナミックメモリを含む。有形送信媒体は、同軸ケーブル;コンピュータシステム内のバスを含むワイヤーを含む、銅線及び光ファイバーを含んでいる。搬送波送信媒体は、電気又は電磁信号、或いは無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信中に生成されるものなどの音響波又は光波の形態をとることができる。それ故、コンピュータ可読媒体の共通の形態は、例えば:フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の任意の磁気媒体、CD-ROM、DVD又はDVD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する他の任意の物理記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH-EPROM、他の任意のメモリチップ又はカートリッジ、データ又は命令を搬送する搬送波、そのような搬送波を搬送するケーブル又はリンク、或いは、コンピュータがプログラミングコード及び/又はデータを読み取ることができる他の任意の媒体が、含まれる。これら形態のコンピュータ可読媒体の多くは、実行のために1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサに送ることに関与し得る。
【0176】
コンピュータシステム(301)は、例えば、本開示の方法によって分析され得る遺伝的変異体のカスタマイズ可能なメニューを提供するために、ユーザーインターフェース(UI)を含む電子ディスプレイを含むか、或いは、それと通信することができる。UIの例は、限定されないが、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)及びウェブベースのユーザーインターフェースを含む。
【0177】
場合によっては、コンピュータシステム(301)は、ユーザーに視覚情報を提供するためのディスプレイを含む。場合によっては、ディスプレイは、陰極線管(CRT)である。場合によっては、ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)である。更なる例において、ディスプレイは、薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ(TFT-LCD)である。場合によっては、ディスプレイは、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイである。様々な更なる例において、OLEDディスプレイは、パッシブマトリックスOLED(PMOLED)又はアクティブマトリックスOLED(AMOLED)のディスプレイである。場合によっては、ディスプレイは、プラズマディスプレイである。他の場合、ディスプレイは、ビデオプロジェクターである。また更なる場合、ディスプレイは、本明細書に開示されるものなどのデバイスの組み合わせである。ディスプレイは、本明細書に記載される方法によって生成されるような1つ以上の生物医学的レポートをエンドユーザーに提供することができる。
【0178】
場合によっては、コンピュータシステム(301)は、ユーザーから情報を受信する入力デバイスを含む。幾つかの例において、入力デバイスは、キーボードである。幾つかの例において、入力デバイスは、非限定的な例として、マウス、トラックボール、トラックパッド、ジョイスティック、ゲームコントローラ、又はスタイラスを含む、ポインティングデバイスである。場合によっては、入力デバイスは、タッチスクリーン又はマルタッチスクリーンである。他の場合、入力デバイスは、声又は他の音入力をキャプチャするマイクロフォンである。他の場合、入力デバイスは、動作又は視覚の入力をキャプチャするビデオカメラである。また更なる例において、入力デバイスは、本明細書に開示されるものなどのデバイスの組み合わせである。
【0179】
コンピュータシステム(301)は、1つ以上のデータベースを含む、又はそれらに動作可能に連結され得る。データベースは、ゲノム、プロテオミクス、薬理ゲノミクス、生物医学、及び科学のデータベースを含み得る。データベースは、公共に利用可能なデータベースであり得る。代替的に、又は付加的に、データベースは所有者データベースを含み得る。データベースは市販のデータベースであり得る。データベースは、限定されないが、MendelDB、PharmGKB、Varimed、Regulome、curated BreakSeq junctions、Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)、Human Genome Mutation Database(HGMD)、NCBI dbSNP、NCBI RefSeq、GENCODE、GO(gene ontology)、及びKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)を含む。
【0180】
データは、データのユーザーと同じ国を含む地理的位置において生成及び/又は送信され得る。データは、例えば、1か国の地理的位置から生成及び/又は送信され、データのユーザーは異なる国に存在する場合もある。場合によっては、本開示のシステムによってアクセスされたデータは、複数の地理的位置の1つからユーザーに送信され得る。データは、例えば、ネットワーク、安全なネットワーク、不安定なネットワーク、インターネット、又はイントラネットによって複数の地理的位置の中で往復して送信され得る。
【0181】
トータルシステムは、各々が個別モジュールを有する3つの主要なコンポーネントを使用することができる様々な方法で設計され得る。コンポーネントは、ユーザーインターフェース、ハードウェアプラットフォーム、及び消耗部品(consumable)を含み得る。一例において、ユーザーインターフェースは、システムとの直接的なインタラクションを可能にするハードウェアに組み込まれ、消耗部品は、本開示の方法を実行するのに必要な試薬を含み得る。システムインテリジェンスの全てを含む又は全く含まない遠隔の無線接続されたユーザーインターフェース、自動化又はヒューマンインタラクションを介して接続された1つ以上の複数のハードウェアコンポーネント、並びに、全ての試薬、及びアッセイに存在する生物学的情報を、処理及び報告のためにコンピュータに転送され得るデジタル又はアナログの情報に変換するのに必要とされる検出システムの全て又は一部を含む、完全に内包された消耗部品を使用して、より複雑なアーキテクチャが設計され得る。システムは、限定されないが、システムによって連続的に又は並列して処理される多数のサンプルを制御するスケジューリングモジュール、及び、生物学的制御を使用する内部機能のチェック又は試験を介してシステムが適切に動作していることを確かなものとする品質保証モジュールを含む、複数の追加のモジュールを含み得る。
【0182】
図9Aに例示されるコンピューターシステム(900)は、固定媒体(907)を有しているサーバー(905)に随意に接続され得る媒体(906)及び/又はネットワークポート(903)からの命令を読み取ることができる論理装置として理解され得る。
図9Aに示されるシステムなどのシステムは、CPU(901)、ディスクドライブ(902)、キーボード及び/又はマウスなどの随意の入力デバイス(908)、及び随意のモニター(904)を含み得る。データ通信は、局所又は遠隔の位置でサーバに対して示された通信媒体を通じて達成され得る。通信媒体は、データを送信及び/又は受信する任意の手段を含み得る。例えば、通信媒体は、ネットワーク接続、無線接続、又はインターネット接続であり得る。そのような接続は、ワールド・ワイド・ウェブ上での通信を提供することができる。本開示に関連するデータは、
図9Aに例示されるように当事者(909)による受信及び/又はレビューに対してそのようなネットワーク又は接続を介して送信され得ることが、想定される。
【0183】
図9Bは、本開示の例となる実施形態に関連して使用され得るコンピュータシステム(910)の第1の例となるアーキテクチャを例示するブロック図である。
図9Bで示されるように、例となるコンピュータシステムは、命令を処理するためのプロセッサ(911)を含み得る。プロセッサの非限定的な例は、以下を含む:Intel Xeon(商標)プロセッサ、AMD Opteron(商標)プロセッサ、Samsung 32-bit RISC ARM 1176JZ(F)-S v1.0(商標)プロセッサ、ARM Cortex-A8 Samsung S5PC100(商標)プロセッサ、ARM Cortex-A8 Apple A4(商標)プロセッサ、Marvell PXA 930(商標)プロセッサ、又は機能的に同等なプロセッサ。複数のスレッドの実行が並列処理のために使用され得る。幾つかの実施形態において、複数のプロセッサ、又は複数のコアを持つプロセッサはまた、単一のコンピュータシステム中でも、クラスタの中でも、又は、複数のコンピュータ、携帯電話、及び/又は個人用携帯情報端末装置を含むネットワーク上のシステムにわたって分布されても、使用され得る。
図9Bに例示されるように、近年プロセッサ(911)によって使用されている、又は頻繁に使用される命令又はデータのための高速メモリを提供するために、高速キャッシュ(912)が、プロセッサ(911)に接続される、又はそこに組み込まれ得る。プロセッサ(911)は、プロセッサバス(914)によってノースブリッジ(913)に接続される。ノースブリッジ(913)は、メモリバス(916)によってランダムアクセスメモリ(RAM)(915)に接続され、プロセッサ(911)によってRAM(915)に対するアクセスを管理する。ノースブリッジ(913)はまた、チップセットバス(918)によってサウスブリッジ(917)に接続される。サウスブリッジ(917)は、順に、周辺バス(919)に接続される。周辺バスは、例えばPCI、PCI-X、PCI Express、又は他の周辺バスであり得る。ノースブリッジ及びサウスブリッジは多くの場合、プロセッサチップセットと呼ばれ、プロセッサと、RAMと、周辺バス(919)上の周辺コンポーネントとの間のデータ転送を管理する。幾つかの代替的なアーキテクチャにおいて、ノースブリッジの機能性は、別個のノースブリッジチップを使用する代わりにプロセッサに組み込まれ得る。幾つかの実施形態では、システム(910)は、周辺バス(919)に付けられたアクセラレータカード(922)を含み得る。アクセラレータは、特定の処理を促進するためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は他のハードウェアを含み得る。例えば、アクセラレータは、適応データの再構築のために、又は、拡張設定処理に使用される代数式を評価するために使用され得る。ソフトウェア及びデータは、外部ストレージ(923)に記憶され、プロセッサによる使用のためにRAM(915)及び/又はキャッシュ(912)にロードされ得る。システム(910)は、システムリソースを管理するためのオペレーティングシステムを含み、オペレーティングシステムの非限定的な例は、以下を含む:Linux(登録商標)、Windows(商標)、MACOS(商標)、BlackBerry OS(商標)、iOS(商標)、及び他の機能的に同等なOS、同様に、本開示の実施形態の例に従ってデータの記憶と最適化を管理するためのオペレーティングシステム上で実行するアプリケーションソフトウェア。この例において、システム(910)はまた、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、及び並列処理の分配に使用され得る他のコンピュータシステムなどの、外部ストレージにネットワークインターフェースを提供するために周辺バスに接続されたネットワークインターフェースカード(NIC)(920)及び(921)を含み得る。
【0184】
図9Cは、複数のコンピュータシステム(931)及び(932)、複数の携帯電話及びパーソナルデータアシスタント(933)、並びにネットワーク接続ストレージ(NAS)(934)及び(935)を備えるネットワーク(930)を示す図である。例となる実施形態において、システム(931)、(932)、及び(933)は、データの記憶を管理し、ネットワーク接続ストレージ(NAS)(934)及び(935)に記憶されたデータに対するデータアクセスを最適化することができる。数学的モデルがこのデータに使用され、コンピュータシステム(931)及び(932)、並びに携帯電話及びパーソナルデータアシスタントのシステム(933)にわたる分配された並列処理を使用して評価され得る。コンピュータシステム(931)及び(932)、並びに携帯電話及びパーソナルデータアシスタントのシステム(933)はまた、ネットワーク接続ストレージ(NAS)(934)及び(935)に記憶されたデータの適応データの再構成のために並列処理を提供することができる。
図9Cは、単に一例を例示するものであり、種々様々な他のコンピュータのアーキテクチャ及びシステムが、本開示の様々な実施形態とともに使用され得る。例えば、ブレードサーバーは、並列処理を提供するために使用され得る。プロセッサブレードは、並列処理を提供するためにバックプレーンを通じて接続され得る。ストレージはまた、別個のネットワークインターフェースを通ってバックプレーンに、又はネットワーク接続ストレージ(NAS)として接続され得る。幾つかの実施形態の例において、プロセッサは、別個のメモリ空間を維持し、ネットワークインターフェース、バックプレーン、又は他のプロセッサによる並列処理のための他のコネクターを通じてデータを伝達することができる。他の実施形態において、プロセッサの一部又は全てが、共有仮想アドレスメモリ空間を使用することができる。
【0185】
図9Dは、例となる実施形態に係る共有仮想アドレスメモリ空間を使用したマルチプロセッサコンピュータシステム(940)のブロック図である。システムは、共有メモリサブシステム(942)にアクセス可能な複数のプロセッサ(941a)-(941f)を含む。システムは、複数のプログラム可能なハードウェアメモリアルゴリズムプロセッサ(MAP)(943a)-(943f)を共有メモリサブシステム(942)に組み込む。MAP(943a)-(943f)はそれぞれ、メモリ(944a)-(944f)及び1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)(945a)-(945f)を含み得る。MAPは、設定可能な機能ユニットを提供し、特定のアルゴリズム又はアルゴリズムの一部が、それぞれのプロセッサと密に協働した処理のためにFPGA(945a)-(945f)に提供され得る。例えば、MAPは、データモデルに関する代数式を評価し、且つ例となる実施形態における適応データの再構築を行なうために使用され得る。この例において、各MAPは、このような目的のためにプロセッサ全てによって世界的にアクセス可能である。1つの構成において、各MAPは、関連するメモリ(944a)-(944f)にアクセスするために直接メモリアクセス(DMA)を使用することができ、これにより、各マイクロプロセッサ(941a)-(941f)とは無関係に、及びそれらとは非同期的にタスクを実行することが可能になる。この構成において、MAPは、パイプライン処理(pipelining)及びアルゴリズムの並列の実行のために別のMAPに結果を直接供給することができる。
【0186】
上述のコンピュータのアーキテクチャ及びシステムは単なる例であり、様々な他のコンピュータ、携帯電話、個人用携帯情報端末のアーキテクチャ及びシステムが、一般的なプロセッサ、コプロセッサ、FPGA、及び他のプログラム可能論理回路の任意の組み合わせを使用するシステム、システムオンチップ(SOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び他の処理要素と論理素子を含む実施形態の例と共に使用され得る。幾つかの実施形態において、コンピュータシステムの全て又は一部は、ソフトウェア又はハードウェアに実装され得る。例えばランダムアクセスメモリ、ハードドライブ、フラッシュメモリ、テープドライブ、ディスクアレイ、ネットワーク接続ストレージ(NAS)、及び他のローカル又は分散データ記憶デバイス及びシステムを含む、様々なデータ記憶媒体が、実施形態の例と共に使用され得る。
【0187】
実施形態の例において、コンピュータシステムは、上述の又は他のコンピュータのアーキテクチャ及びシステムの何れかにて実行するソフトウェアモジュールを使用して実施され得る。他の実施形態において、システムの機能は、ファームウェア、
図9Dで言及されるようなフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのプログラマブルロジックデバイス、システムオンチップ(SOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、並びに他の処理素子及び論理素子において、部分的又は完全に実施され得る。例えば、セットプロセッサ(Set Processor)及びオプティマイザー(Optimizer)が、
図9Bに例示されるアクセラレータカード(922)などのハードウェアアクセラレータカードの使用によって、ハードウェアアクセラレーションと共に実施され得る。
【0188】
レポート
前記方法及びシステムはレポートの作成を提供し、ここでレポートは、複合サンプルに存在する1つ以上の被験体を識別することができる。代替的に、レポートは、検出装置に含まれる全ての特徴の読み出しに関する詳細情報を提供することができる。レポートは、本明細書に記載される方法の結果がエンドユーザーに中継される技術であり得る。レポートは、スクリーン又は電子ディスプレイに表示され、或いは例えば1枚の紙に印刷され得る。場合によっては、レポートはネットワークを介して送信される。場合によっては、ネットワークはインターネットである。場合によっては、レポートは手動で作成され得る。他の場合、レポートは自動的に作成され得る。場合によっては、レポートはリアルタイムで作成され得る。場合によっては、レポートは、モバイルデバイス、スマートフォン、タブレット、又は別のネットワーク使用可能なデバイスに提供され得る。
【実施例】
【0189】
実施例1.被験体に特異的なプローブの生成
サンプルを得る。サンプルは複数の被験体を含む。識別されるべき各被験体のゲノムを得る。被験体のゲノムの非重複領域を識別する。非重複領域に特異的なプローブを設計する。
【0190】
実施例2.被験体に特異的な特徴の構築
被験体に特異的な特徴を含むバイオチップを構築する。各特徴は、個々の被験体に特異的な複数のプローブを含む。
【0191】
実施例3.バイオチップを使用する被験体の存在に関する分析
多くのタイプの被験体を含む試験サンプルを得る。サンプルのDNAを一斉に得る。増幅なしで、DNAをバイオチップにハイブリダイズする。複数の標的がバイオチップの表面上のプローブに結合する。十分な数のプローブが特徴内で結合されると、シグナルは検出可能であり、被験体に特異的な特徴は陽性と呼ばれる。陽性の特徴は、サンプル中の被験体の存在を示す。場合によっては、陽性シグナルは、特異的な有機体又は種の存在を示す。別の場合、陽性シグナルは、対象の特異的な遺伝子又は形質の存在を示す。
【0192】
実施例4.2段階EDCプロトコルを使用するプローブの固定化の改善
2段階EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)プロトコルを利用して、シリカビーズへのプローブの固定化を改善した。シリカビーズを、低濃度のEDCで処理し、洗浄し、続いてより高濃度のEDCで処理した。下記の表3は、プローブの固定化の効率に対する異なるEDC濃度の効果を実証している。
【0193】
【0194】
実施例5.M13mp8配列に対するプローブ設計
プローブを、M13バクテリオファージに由来するM13mp8ファージベクターに設計した。簡単に、M13mp8配列を、GenBank Viruses, Bacteria, and Humanのデータベース及び「天然」M13バクテリオファージ配列に対してクエリした。M13mp8が22の固有の領域(例えば
図4を参照)及び380の固有の35-merを有することが判定された。これら配列を使用して、M13mp8を複合サンプルと区別可能な10のプローブを生成した。プローブを、様々なGC含量/T
m及びヘアピンT
mを有するように設計した。場合によっては、プローブを、以下を含むように修飾した:1.修飾なし;2.アミノ修飾(5’);3.アミノ修飾(5’)+Cy5(3’)。場合によっては、標的核酸を、修飾なし又はCy3(5’)修飾のいずれかで生成した。
図5は、本明細書に提供される方法を使用して設計されたプローブの例を示す。
【0195】
実施例6.結核サンプルの分析
ウイルス(TBV)及び非ウイルス(TBA)の結核サンプルの2つのカテゴリーを、ビーズベースのプローブを使用して分析した。プローブを、異なるプールに入れて選択し、様々な多重のプローブを生成した。プローブをその後、1ミクロンのビーズ上に置いた。その後、これらのビーズを、TB株の特異的な標的(TBV)、及びプローブが結合すべきでない非特異的標的(TBA)を使用してハイブリダイズした。
【0196】
アッセイを、以下のプロトコルに従って実行した。ハイブリダイゼーション緩衝液及び洗浄緩衝液を、表4に記載する。10mg/mLのビーズ4μLを、1Xハイブリダイゼーション緩衝液と共に200μLの全容積へと希釈した。その後、ビーズ溶液を超音波処理し(Branson 2510超音波処理器の中で1分間)、10μLのビーズ溶液を最終のハイブリダイゼーション溶液に加えて、0.1mg/mLの終末濃度にした。最終のハイブリダイゼーション溶液は、1Xハイブリダイゼーション緩衝液中に20μLの標識されたDNA及びビーズを含んでいた。10μLのDNAを、1Xハイブリダイゼーション緩衝液中の同等の望ましい細胞において、最終のハイブリダイゼーション溶液に加えた。サンプルを混合し、遠心沈殿させた。その後、温度を、5分かけて最大95℃まで上昇させ、その後、毎分2℃の速度で42℃まで低下させた。その後、サンプルを再び遠心沈殿させ、箔で覆い、下垂(nutate)反応を42℃で一晩(約16時間)実行した。その後、サンプルを100μLの1Xハイブリダイゼーション緩衝液中で2回洗浄し、各洗浄工程において80μLを除去し、各再懸濁後にボルテックスした。その後、洗浄後の残りの最終的な20μLを、ボルテックス及び超音波処理し、全容積をフローセルに加えた。フローセル中のサンプルを10~15分間インキュベートした。その後、各レーンを150μL(3×50μL)の1X洗浄緩衝液で洗浄した。その後、顕微鏡での観察によって結果を集めた。平均シグナル及び平均バックグラウンドを、ハイブリダイゼーション反応ごとに少なくとも30のビーズに対して測定した。
【0197】
【0198】
図10は実験の結果を示す。X軸は、固有のプローブの数を表わすプローブの煩雑性(plexity)(1、4、9、及び12)を示し、y軸はバックグラウンドより上の平均シグナルを示す。特異的な標的シグナル(TBV、右)は、特異的な標的に対するプレックス(plex)因子の各々の増加に対して増加する。加えて、非特異的なシグナル(TBA、左)は、プレックス因子の増加と横ばい状態である(flat)。
【0199】
本発明は,1つ以上の好ましい実施形態の観点から記載されており、当然のことながら、明確に述べられていない限り、多くの同等物、代替案、変更、及び修正が可能であり、本発明の範囲内にあることを、認識されたい。
【0200】
実施例7.マイクロウェル検出装置の構築
384のサンプルウェルを含むマイクロウェルプレートを備えた検出装置を構築し、各ウェルは固有の被験体に特異的な特徴に相当する。各特徴は、個々の被験体に特異的な、複数の未結合の統合プローブを含む。
【0201】
実施例8.マイクロウェル検出システムを使用する被験体の存在に関する分析
多くのタイプの被験体を含む試験サンプルを得る。サンプルのDNAを一斉に得る。増幅なしで、DNAをマイクロウェルプレートの各ウェルに適用し、ここで、ウェルの中の相補的プローブへとハイブリダイズすることが可能であり、各プローブはレポーター及びクエンチャーを含んでおり、続くマイクロウェルプレートのPCTは結果として、標的核酸がその相補的プローブにハイブリダイズするウェルにおいて、FRETにより生成される検出可能な蛍光シグナルをもたらす。このシグナルの検出はサンプル中の被験体の存在を示す。場合によっては、陽性シグナルは、特異的な有機体又は種の存在を示す。別の場合、陽性シグナルは、対象の特異的な遺伝子又は形質の存在を示す。
【0202】
実施例9.電極検出装置の構築
5つの金電極が配置される微小流体チャネルを備えたチップを含む検出装置が構築される。固有の被験体に特異的な特徴の30bp以内の配列に相当する第2(捕捉)のプローブを各電極に固定する。各電極は、異なる被験体に特異的な特徴を検出する。
【0203】
実施例10.電極検出システムを使用する被験体の存在に関する分析
多くのタイプの被験体を含む試験サンプルを得る。サンプルのDNAを一斉に得る。増幅なしで、DNAを、5つの被験体に特異的な特徴を表現する標的核酸に相補的な複数の統合プローブと組み合わせて、微小流体チャネルに適用する。各プローブはフェロセンラベルを含み、その標的で標識されたプローブのハイブリダイゼーションは、標的核酸:フェロセンで標識されたプローブ複合体を生成する。電極上での標的核酸:フェロセンで標識されたプローブ複合体の相補的な第2のプローブへの微小流体チャネルハイブリダイゼーションへの適用後、結果として、電圧の適用後の電極により電気化学シグナルの生成がもたらされる。このシグナルの検出はサンプル中の被験体の存在を示す。場合によっては、陽性シグナルは、特異的な有機体又は種の存在を示す。別の場合、陽性シグナルは、対象の特異的な遺伝子又は形質の存在を示す。
【0204】
実施例11.ナノポア検出装置の構築
2つの孔を更に含む微小流体チャネルを含む検出装置を構築する。この例において、第1の孔は、第1の電圧を放射する第1の電極を含み、第2の孔は、第2の電圧を放射する第2の電極を含む。この二重の孔に基づくシステムを使用した検出を、複数の統合プローブに対して行うことができる。
【0205】
実施例12.ナノポア検出システムを使用する被験体の存在に関する分析
多くのタイプの被験体を含む試験サンプルを得る。サンプルのDNAを一斉に得る。増幅なしで、DNAを、5つの被験体に特異的な特徴を表現する標的核酸に相補的な複数の統合プローブと組み合わせて、微小流体チャネルに適用する。各プローブは、それが5つの被験体に特異的な特徴のどれに対応するかに応じて異なる数のPEG分子を含む。例えば、第1の被験体に特異的な特徴へのプローブは1つのPEG分子を含み、第2の被験体に特異的な特徴へのプローブは2つのPEG分子を含む。孔を通ってその相補的なプローブに結合される標的核酸の継代は結果として、固有の電流インピーダンスシグナルをもたらす。このシグナルの検出はサンプル中の被験体の存在を示す。場合によっては、陽性シグナルは、特異的な有機体又は種の存在を示す。別の場合、陽性シグナルは、対象の特異的な遺伝子又は形質の存在を示す。
【0206】
実施例13.Staphylococcusの株の検出、及びそれらの区別
部分的に組み立てたフローセルを、アミノシランスライドに3つのレーン(20μl/レーン)感圧性接着剤(PSA)のカットアウトを付けることにより、作成した。プローブを各株に対して生成し、プローブは各株に固有の核酸配列を含んでいた。プローブを使用して、Staphylococcus、メチシリン感受性S.aureus(MSSA)、及びメチシリン耐性S.epidermidis(MRSE)の2つの異なる株を区別した。プローブをCOOHシリカビーズに抱合した。標的を、この実験のために別個の反応において、数千もの同一のビーズにハイブリダイズして、プローブの特異性を評価した。ビーズを超音波処理し、1X TEにおいて約1分間希釈した。その後、ビーズをアミノシラン表面上へと堆積させ、少なくとも10分間インキュベートした。この堆積プロセスを、単一レーンの煩雑性及び/又は弁別の研究に対して最大3回実行した。フローセルを、PSAにフローセル上部を取り付けることにより完成させた。1X TEをフローセルに通して時用紙、未結合のビーズをウォッシュアウトした。
【0207】
標的混合物を、所望の標的(Staphylococcusの2つの株)及びAffymetrixハイブリダイゼーション緩衝液により作成した。標的混合物を95℃に加熱し、5分間保持し、その後、氷へと動かして、インキュベートし、フローセルに加えて、一晩インキュベートした(約16時間)。フローセルレーンを最初にAffymetrix緩衝液Aで洗浄し、その後、Affymetrix洗浄緩衝液Bで洗浄した。
【0208】
蛍光シグナルを、共焦点顕微鏡を使用して複数の同一のビーズから記録した。
図12は、StaphのMRSE及びMSSAの菌株の検出時の信号対雑音比(SNR)の増加、加えて、3つの異なるレベルのプローブの煩雑性(即ち、ビーズ1つにつき株1つ当たり1つのプローブ、ビーズ1つにつき株1つ当たり4つのプローブ、ビーズ1つにつき株1つ当たり17のプローブ)において株を区別する能力を示した。異なるレーンを使用して、異なるプローブを区別した。
【0209】
実施例14:シリコン基板上のフローセルにおけるDNAの濃縮及び移動
ITPを、シリコン基板上で実施した(例えば
図13、
図14A-14Hを参照)。化学蒸着法を使用して、ビーズアレイ表面上に酸化ケイ素層を作成し、その厚みは約500ナノメートル(nm)であった。入口(1302)と出口(1303)を持つフローセル(1301)は、再び拡張する前に、長さ約4cm、幅800μm、及び高さ75μmの寸法、及び、約200μmの幅へと狭まるフローセル長さ中央にテーパー状部分(1304)を備えて、PDMSにおいて製造された。PDMSフローセルの下部表面は、放電棒を使用して起動され、酸化ケイ素表面へのPDMSの結合を可能とした。フローセルの入口及び出口の端部にある2つのポートにおける白金ワイヤーを200Vの電圧に設定し、結果として生じる電流は約100μAであった。サンプルを充填し、DNAの濃縮結合(1305)をCy3で蛍光標識し、形成し、チャネルを下って移動させた。DNAの充填、濃縮、ハイブリダイゼーション、及び検出に対する総時間は、約25分であった。Cy3及び標的DNAの濃度は25nMであり、プロセスは0.25nMの濃度で成功裡に繰り返された。
図14Aは、入口ポートを出る蛍光標識されたサンプルDNAを示す。
図14Bは、フローセルチャネルに集中し始めるDNAバンドを示す。
図14Cは、フローセルチャネルに形成される、集中したDNAバンドを示す。
図14Dは、フローセルチャネルのテーパー状部分の「咽喉部」に進入するDNAバンドを示す。
図14Eは、咽喉部を通って移動するDNAバンドを示す。
図14Fは、咽喉部の端部に近づくDNAバンドを示す。
図14Gは、フローセルチャネルのアレイハイブリダイゼーション領域に進入するDNAバンドを示す。
図14Hは、フローセルチャネルのハイブリダイゼーション領域におけるDNAバンドを示す。