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特許7430303電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0536 20210101AFI20240205BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20240205BHJP
【FI】
A61B5/0536
A61B5/256 210
A61B5/256 110
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022538885
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 CN2020106754
(87)【国際公開番号】W WO2021135211
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】201911424085.5
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521441032
【氏名又は名称】北京華睿博視医学影像技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HUARUI BOSHI MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 10, 2nd Floor, Room 213 No.9 Tianfu Street, Daxing District Beijing 102609 China
(73)【特許権者】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】1 Qinghuayuan, Haidian District, Beijing 100084, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 可
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲キン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 誼冰
(72)【発明者】
【氏名】于 洋
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109864712(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0123617(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104582566(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102688041(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106264524(CN,A)
【文献】国際公開第2018/078540(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0536
A61B 5/256
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法であって、
3次元空間内に分布する電極アレイを利用して、測定対象の人体領域に対して電気インピーダンス測定を行い、電気インピーダンス測定信号を得るステップと、
前記電気インピーダンス測定信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより3次元差分画像を再構成するステップと、
前記3次元差分画像から前記電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記電極アレイは、電極が3次元の分布を呈するように、一本又は複数本のインピーダンスベルト、電極ベスト又は電極ヘッドカバーに設けられている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3次元差分画像から電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出するステップは、さらに、
3次元差分画像における画素の時間周波数特性により3次元血液灌流画像を抽出するステップを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
記3次元差分画像における画素の時間周波数特性により3次元血液灌流画像を抽出するステップは、さらに、
3次元差分画像における各画素の時間領域信号に対して、バンドパスフィルタを用いて特定の周波数範囲の信号を分離することにより、3次元血液灌流画像の該当画素の時間領域信号を形成するステップを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成装置であって、
測定対象の人体領域に対して電気インピーダンス測定を行い、電気インピーダンス測定信号を得るための3次元空間内に分布する電極アレイと、
前記電気インピーダンス測定信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより3次元差分画像を再構成し、前記3次元差分画像から前記電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出するように、メモリデバイスに記録されたプログラムを実行する画像再構成プロセッサと、を含む、
装置。
【請求項6】
前記電極アレイは、電極が3次元の分布を呈するように、一本又は複数本のインピーダンスベルト、電極ベスト又は電極ヘッドカバーに設けられている、
請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は2019年12月31日、中国国家知識産権局宛て、特許出願名称「電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像の生成方法及び装置(CN201911424085.5)」に基づく優先権を有することを主張するものであり、本開示の全内容は当該出願における照会に基づき、援用されるものとする。
【0002】
本開示は電気インピーダンス・トモグラフィー技術に関する内容、詳細につきましては、「電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法及び装置」に関わるもの。
【背景技術】
【0003】
電気インピーダンス・トモグラフィー(Electrical Impedance Tomography、EIT)は非侵襲的で、人体又は他の生体内部の抵抗率分布を目標とする体内組織画像を再構成する技術である。人体は大きな生体電気伝導体であり、各組織、器官がいずれも一定のインピーダンスを有し、人体の局所器官に病変が発生した際に、局所部位のインピーダンスは必然的に他の部位と異なるようになるため、インピーダンスの測定により、人体器官の病変を診断することが出来る。
【0004】
従来技術による電気インピーダンス・トモグラフィー方法は2次元の血液灌流画像しか再構成できなかった。この2次元画像は測定対象の人体領域のある断面内の血液灌流による電気インピーダンスの変化を反映することが出来るが、一方、2次元の画像にて、3次元空間におけるある体積領域内での血液灌流状況を反映させることが困難であった。
【0005】
したがって、電気インピーダンスによる測定結果に基づいて、血液灌流に関する3次元画像を再構成することができる電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法及び装置の提供が可能となったことが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
前記のように、本開示は従来技術における問題を解決するために、3次元血液灌流画像生成方法及び装置を提供することを目的とする。前記方法及び装置は測定対象の人体領域に対して、電気インピーダンス測定を行うことにより、測定信号から血液灌流信号を抽出し、最後に3次元血液灌流画像を再構成する。又はまず測定信号に基づき、3次元差分画像を再構成し、その後、3次元差分画像から測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出する。前記方法及び装置により、生成された3次元血液灌流画像を表示デバイスを介して表示可能である。
【0007】
本開示の実施例によれば、本開示の第1の態様は電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法を提供することである。前記方法は3次元空間内に分布する電極アレイを利用して、測定対象の人体領域に対して電気インピーダンス測定を行い、電気インピーダンス測定信号を得たステップと、電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより、3次元血液灌流画像を再構成するステップを含んでもよい。
【0008】
本開示の第1の態様の方法によれば、一実施形態において、電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出し、その後、分離された血液灌流信号を利用して、画像再構成アルゴリズムによって3次元血液灌流画像を再構成してもよい。
【0009】
この場合、前記の電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出するステップは、さらに、信号の時間周波数特性により、電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出するステップを含んでもよい。
【0010】
一実施形態において、前記の信号の時間周波数特性により、電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を検出するステップは、バンドパスフィルタを用いて電気インピーダンス測定信号から特定の周波数範囲の信号を分離することにより、血液灌流信号を形成するステップを含んでもよい。
【0011】
本開示の第1の態様の方法によれば、一方、電気インピーダンス測定信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより、3次元差分画像を再構成し、その後、3次元差分画像から電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出してもよい。
【0012】
この場合、前記の3次元差分画像から電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出するステップは、さらに、3次元差分画像における画素の時間周波数特性により3次元血液灌流画像を抽出するステップを含んでもよい。
【0013】
一実施形態において、前記の3次元差分画像における画素の時間周波数特性により3次元血液灌流画像を抽出するステップは、さらに、3次元差分画像における各画素の時間領域信号に対して、バンドパスフィルタを用いて特定の周波数範囲の信号を分離することにより、3次元血液灌流画像の該当画素の時間領域信号を形成するステップを含んでもよい。
【0014】
本開示の第1の態様の方法によれば、一実施形態において、前記電極アレイは、電極が3次元の分布を呈するように、一本又は複数本のインピーダンスベルト、電極ベスト又は電極ヘッドカバーに設けられてもよい。
【0015】
本開示の実施例によれば、本開示の第2の態様は電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成装置を提供することである。前記装置は測定対象の人体領域に対して電気インピーダンス測定を行い、電気インピーダンス測定信号を得るための3次元空間内に分布する電極アレイと、電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより、3次元血液灌流画像を再構成されるように、メモリデバイスに記録されたプログラムを実行する画像再構成プロセッサを含んでもよい。
【0016】
本開示の第2の態様に係る装置によれば、一実施形態において、前記画像再構成プロセッサは電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出することと、分離された血液灌流信号を利用して、画像再構成アルゴリズムにより、3次元血液灌流画像を再構成するように、さらにメモリデバイスに記録されたプログラムを実行してもよい。
【0017】
本開示の第2の態様に係る装置によれば、一方、前記画像再構成プロセッサは、画像再構成アルゴリズムにより、3次元差分画像を再構成することと、3次元差分画像から電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出するように、さらにメモリデバイスに記録されたプログラムを実行してもよい。
【0018】
本開示の第2の態様に係る装置によれば、一実施形態において、前記電極アレイは、電極が3次元の分布を呈するように、一本又は複数本のインピーダンスベルト、電極ベスト又は電極ヘッドカバーに設けられてもよい。
【0019】
本開示の実施例に係る血液灌流画像生成方法及び関連装置は血液灌流による電気インピーダンスの変化の3次元画像を生成することができ、従来技術の2次元画像に比べて、人体領域の3次元空間内の一つの体積領域における血液灌流状況をより、直感的に反映することができ、画像の分析比較、疾患の検出及び診断に役立つことである。
【0020】
以下、実施例を組み合わせて本開示を図面の参照を通して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1-1】図1:本開示の実施例に係る電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法の概略的なフローチャートである。
図1-2】図1A:本開示の実施例に係る電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法の二つの好ましい実施例の概略的なフローチャートである。
図1-3】図1B:本開示の実施例に係る電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法の二つの好ましい実施例の概略的なフローチャートである。
図2図1Aの好ましい実施例に基づいて、人体胸腔測定データの実例を説明するものであり、ここで、(a)は時間領域信号であり、(b)は周波数領域信号の図である。
図3図1Aの好ましい実施例に基づいて、フィルタリングにより抽出された灌流関連信号を説明するものであり、ここで、(a)は時間領域信号であり、(b)は周波数領域信号の図である。
図4図1Bの好ましい実施例に基づいて、3次元差分画像及び画素点の時間周波数信号の例を説明するものであり、ここで、(a)は3次元差分画像であり、(b)は例示的な画素の時間領域信号であり、(c)は例示的な画素の周波数領域信号の図である。
図5図1Bの好ましい実施例に基づいて、フィルタリングにより、抽出された例示的な画素の灌流関連信号を説明するものであり、ここで、(a)は時間領域信号であり、(b)は周波数領域信号の図である。
図6】本開示の好ましい実施例に係る人体肺の3次元血液灌流画像の概略図である。
図7】本開示の実施例に係る電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成装置の概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面はあくまで例示であり、本開示を限定するものと理解されるべきではない。以下、図面及び実施例を参照しながら、本開示の技術的解決手段を更に詳しく説明する。
【0023】
図1は、本開示の実施例に係る電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法100の概略的なフローチャートである。
【0024】
図1の方法100はステップ110から始まり、このステップにおいて、人体の電気インピーダンス信号を測定する。一実施形態では、3次元空間内に分布する電極アレイを利用して、測定対象の人体領域に対して電気インピーダンス測定を行い、電気インピーダンス測定信号を検知する。
【0025】
電気インピーダンス測定はまず測定対象の人体領域の周囲に電極アレイを固定する必要がある。前記電極アレイは3次元空間内に分布する電極は複数含まれる。そして、電極アレイを利用して測定対象の人体領域を励起すると共にそれにより発生された応答を測定し、例えば、電極に対して電流励起を交互に印加しつつ、他の電極において、前記の「電流印加」により発生された電圧信号を順次測定する。
【0026】
一実施形態において、電極を含むセンサモジュールを人体の被測定部位、例えば胸腔、脳、腹部又は四肢の周囲に固定し、インピーダンスベルト、電極ベスト、電極ヘッドカバー等の電極アレイの形を用いる。いくつかの実施例において、電極は体内電極の形を用いてもよい。いわゆる体内電極は、該電極を人体食道、気管等の体内位置に配置するものを指す。
【0027】
本開示の好ましい実施例によれば、一本又は複数本のインピーダンスベルト、電極ベスト、電極ヘッドカバー等の形の電極アレイを利用して信号測定を行うことができる。つまり、前記電極アレイは、電極が3次元の分布を呈するように、一本又は複数本のインピーダンスベルト、電極ベスト又は電極ヘッドカバーに設けられている。一実施形態では、再構成画像が3次元解像度を有するため、前記電極アレイは一つの2次元平面又は近似2次元平面内に分布せず、一般的には3次元空間内に分布されている。電極アレイを3次元空間内に分布させるために、複数本のインピーダンスベルトを用いるか又は電極が3次元の分布を呈する電極ベスト、電極ヘッドカバー等の解決手段を用いることができる。
【0028】
測定して得られた電気インピーダンス測定信号は電圧信号であってもよく、複素電圧信号であってもよい。複素電圧信号は振幅及び位相の形で表現することができ、又は実部及び虚部の形で表現することができる。
【0029】
次に、ステップ120において、電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより3次元血液灌流画像を再構成する。
【0030】
ステップ120は二つの形態によって実現することができる。図1A及び図1Bはそれぞれ、本開示の実施例に係る電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法の二つの好ましい実施例100A及び100Bの概略的なフローチャートである。
【0031】
図1Aに示すように、本開示の好ましい実施例100Aによれば、ステップ110の後、ステップ121Aにおいて、電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出する。
【0032】
このステップにおいて、前のステップで得られた電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出する必要がある。本開示の好ましい実施例によれば、信号の時間周波数特性により、前のステップで得られた電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出することができる。一実施形態において、フィルターを用いて、測定された電気インピーダンス信号から血液灌流信号を抽出する。
【0033】
以下、一つの人体胸腔測定信号の例で説明する。
【0034】
図2図1Aの好ましい実施例に基づいて、人体胸腔測定データの実例を説明する図である。図2(a)は、ある測定データの時間領域パターンを示している。図中の曲線は特定の電極が励起する場合、特定の電極で測定して得られた電圧信号を表している。他の励起ー測定状況により得られたデータはそれと同様である。なお、図中の縦座標はデジタル電圧計から直接的に読み取られた数値であり、電圧値に変換されていない。図2(b)は、この測定信号の周波数領域パターンを示している。一実施形態において、図2(a)における信号をフーリエ変換して得ることができる。図2(b)から呼吸による信号成分と灌流による信号成分を判別することができる。灌流信号成分を抽出するために、バンドパスフィルタを設計することが必要である。
【0035】
フィルタリングされた信号を図3に示す。図3図1Aの好ましい実施例に基づいて、フィルタリングにより、抽出された灌流関連信号を説明する図である。ここで、図3(a)はフィルタリングされた信号の時間領域パターンに対応し、図3(b)はフィルタリングされた信号の周波数領域パターンに対応する。
【0036】
上記例において、バンドパスフィルタを用いて電気インピーダンス測定信号から特定の周波数範囲の信号を分離することにより、血液灌流信号を形成する。
【0037】
ステップ122Aにおいて、抽出された血液灌流信号を利用して、画像再構成アルゴリズムにより3次元血液灌流画像を再構成する。
【0038】
一般的には、肺血液灌流画像の再構成を例にすると、その再構成過程は、まず測定データから灌流信号を抽出し、その後、異なる時刻の灌流信号の差によって画像再構成を行うことになる。前記3次元血液灌流画像は血液灌流による測定対象の人体領域内の電気インピーダンスの変化、例えば導電率の変化を反映している。これにより、測定対象の人体領域内の電気インピーダンスの変化に応じて異なる時刻の肺血液含有量の変化を示してくれる。
【0039】
本開示の好ましい実施例において、前記画像再構成アルゴリズムは線形差分トモグラフィアルゴリズムである。以下に線形差分トモグラフィアルゴリズムの例で説明する。
【0040】
【数1】
【0041】
上記例において、具体的には、線形差分トモグラフィアルゴリズムを画像再構成アルゴリズムとして用いて血液灌流の3次元画像を計算して再構成したが、前記のみならず、当業者が理解されているように、本開示の利用可能な画像再構成アルゴリズムは線形又は非線形、反復又は非反復、ランダム又は確実性の画像再構成アルゴリズム等の複数種類の再構成アルゴリズムを含まれるものとする。
【0042】
図1及び図1Bに戻る。図1Bに示すように、図1のステップ120はさらに別の実施形態100Bを含み、すなわち図1のステップ110の後に、ステップ121Bを実行し、すなわち電気インピーダンス測定信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより3次元差分画像を再構成する。
【0043】
このステップにおいて、前記画像再構成アルゴリズムは本開示の1番目の好ましい実施例100Aと同じ画像再構成アルゴリズムを用いることができる。
【0044】
次に、ステップ122Bにおいて、3次元差分画像から電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像をする。本開示の好ましい実施例によれば、画像信号の時間周波数特性により、3次元差分画像から3次元血液灌流画像を抽出することができる。一実施形態において、フィルターを用いて3次元差分画像から3次元血液灌流画像を分離する。
【0045】
以下、上記人体胸腔測定信号の例で説明する。
【0046】
図4図1Bの好ましい実施例に基づいて、再構成された3次元差分画像を説明する図である。図4(a)は、3次元差分画像の概略図である。図4(b)は3次元差分画像から例示的な画素点を選択し、該画素点の時間領域信号を描画されたものである。図4(c)は該画素点の周波数領域信号である。一実施形態において、図4(c)における信号は図4(b)における信号をフーリエ変換して得られたものである。図4(c)より、呼吸による信号成分と灌流による信号成分を判別することができる。その中から灌流信号成分を抽出するために、1つのバンドパスフィルタを設計すればよい。
【0047】
バンドパスフィルタは、上述した3次元差分画像の各画素の時間領域信号に対してフィルター処理を行う。上記例示的な画素点がフィルタリングされた信号は図5に示された通りである。ここで、図5(a)はフィルタリングされた時間領域信号である。図5(b)は、フィルタリングされた周波数領域信号である。
【0048】
上記した3次元差分画像における各画素をフィルタリングしてから、3次元血液灌流画像が得られる。前記3次元血液灌流画像は血液灌流による測定対象の人体領域内の電気インピーダンスの変化、例えば導電率の変化を反映し、これにより、前述の「変化値」に応じて異なる時刻の肺血液含有量の変化を示してくれる。図6は、実施例100A及び実施例100Bを含む上記方法により生成された人体肺の3次元血液灌流画像の概略図を示している。
【0049】
これにより分かるように、図1の方法100のステップ120の二種類の実施形態の間に、まず電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出してから画像再構成を行うか、又はまず測定信号に基づいて3次元差分画像を再構成してから、画像から専門的な灌流画像を抽出することに相違がある。本開示の技術的範囲はこの二つの実施形態を含むこととする。
【0050】
図7は、本開示の実施例に係る電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成装置700の概略的なブロック図である。
【0051】
本開示の実施例によれば、図7を参照すると、電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成装置700は、測定対象の人体領域に対して電気インピーダンス測定を行い、電気インピーダンス測定信号を得るための3次元空間内に分布する電極アレイ710と、電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に基づいて、画像再構成アルゴリズムにより、3次元血液灌流画像を再構成するように、メモリデバイスに記録されたプログラムを実行する画像再構成プロセッサ720を含む。
【0052】
本開示の1つの好ましい実施例によれば、前記電極アレイ710は、電極が3次元の分布を呈するように、一本又は複数本のインピーダンスベルト、電極ベスト又は電極ヘッドカバーに設けられてよい。
【0053】
本開示の好ましい実施形態によれば、前記画像再構成プロセッサ720は電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出することと、分離された血液灌流信号を利用して、画像再構成アルゴリズムにより、3次元血液灌流画像を再構成するように、更にメモリデバイスに記録されたプログラムを実行することを含む。
【0054】
一実施形態において、前記画像再構成プロセッサ720は信号の時間周波数特性により、電気インピーダンス測定信号から血液灌流信号を抽出することができる。別の実施形態において、前記画像再構成プロセッサ720はバンドパスフィルタを用いて、電気インピーダンス測定信号から特定の周波数範囲の信号を分離することにより、血液灌流信号を形成することができる。
【0055】
本開示の一つの具体的な実施例において、前記画像再構成アルゴリズムは線形差分トモグラフィアルゴリズムである。ところが、当業者が理解されているように、本開示の利用可能な画像再構成アルゴリズムは線形又は非線形、反復又は非反復、ランダム又は確実性の画像再構成アルゴリズム等の複数種類の再構成アルゴリズムを含まれるものとする。
【0056】
一方、本開示の別の実施形態によれば、前記画像再構成プロセッサ720は画像再構成アルゴリズムにより3次元差分画像を再構成することと、3次元差分画像から電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に反映された3次元血液灌流画像を抽出するように、更に、メモリデバイスに記録されたプログラムを実行することも含まれる。
【0057】
一実施形態において、前記画像再構成プロセッサ720は3次元差分画像を再構成する場合、1番目の実施形態と同じ画像再構成アルゴリズムを用いることができる。前記画像再構成プロセッサ720は前記3次元差分画像における画素の時間周波数特性により3次元血液灌流画像を抽出することができる。別の実施形態において、前記画像再構成プロセッサ720はバンドパスフィルタを用いて、前記3次元差分画像から3次元血液灌流画像を分離することができる。
【0058】
また、図7に示されていないが、当業者が理解されているように、装置700はさらに画像再構成された3次元血液灌流画像を表示するための表示手段、例えばLCDディスプレイを含んでいてもよいとし、その表示の概略は例えば図6に示している通りである。本開示は3次元血液灌流画像の生成によって、注目されるようになっているため、表示手段は本開示の方法又は装置にとっては不可欠な要素ではない。本開示の範囲は特許請求の範囲を基準とすべきであり、本開示の明細書に記載されている又は未記載の如何なる実施例に限定されないものとする。
【0059】
また、当業者に際しては、本開示の方法をコンピュータプログラムとして実現することができると認識すべきである。図1、1A、1Bを参照して説明したように、一つ又は複数のプログラムにより、上記実施例の方法を実行し、プログラムの実行命令も含み、コンピュータ又はプロセッサにて図面を参照した上、説明したアルゴリズムを実行させることが可能である。これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納されており、コンピュータ又はプロセッサに提供してもよい。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、ROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。さらに、これらのプログラムは様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体を用いてコンピュータに提供されることができる。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線や光ファイバという有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに提供することに用いることができる。
【0060】
したがって、本開示によれば、さらにプロセッサにより、実行可能な命令を記録するためのコンピュータプログラム又はコンピュータ可読媒体を提案してもよいとし、前記「命令」がプロセッサにより実行されると、3次元空間内に分布する電極アレイを利用して、測定対象の人体領域に対して電気インピーダンス測定を行い、電気インピーダンス測定信号を得るステップと、電気インピーダンス測定信号における血液灌流信号に基づき、画像再構成アルゴリズムにより3次元血液灌流画像を再構成するステップを含む電気インピーダンス・トモグラフィーによる3次元血液灌流画像生成方法をプロセッサにて実行させられる。
【0061】
以上、本開示の様々な実施例および実施の形態について説明した。しかし、本開示の精神及び範囲はこれに限定されない。当業者は本開示の教示に基づいてより多く広く適用することができると認識しており、これらの適用はいずれも本開示の範囲内に含むものとする。
【0062】
すなわち、本開示の上記実施例は本開示を明瞭に説明するための例に過ぎず、本開示の実施形態を限定するものではない。当業者としては、上記説明に基づき、他の異なる形式の変化又は変動を行うことができる。ここで全ての実施形態を網羅する必要がなく、しようとしても仕方がない。本開示の精神及び原則内で行われるいかなる修正、置換又は改善等は、いずれも本開示の請求項の範囲内に含まれるべきである。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5
図6
図7