(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】茶葉熱風処理装置
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
A23F3/06 E
A23F3/06 F
A23F3/06 H
A23F3/06 L
(21)【出願番号】P 2019186191
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000145116
【氏名又は名称】株式会社寺田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康哲
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-089043(JP,A)
【文献】特開2016-192947(JP,A)
【文献】特開平04-251183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を茶葉の投入口、他端を茶葉の排出口として円筒状の処理胴と、該処理胴を回転させる駆動手段と、前記処理胴の内側に備えた桟と、前記処理胴の一端より熱風を吹き込むための熱風供給手段とより構成する茶葉熱風処理装置において、茶葉排出口側の上部に排気量を調節できる排気口と茶葉排出口に茶葉排出弁を備え、処理胴を略密閉できるようにし、排気量を
大きくすることで、茶葉から蒸発した水分により高湿度になった熱風を速やかに排出し茶葉に低湿度の熱風を供給することができる一方、排気量を抑えることで前記処理胴内に前記高湿度になった熱風を維持できるように処理胴内部の熱風気流を調節可能としたことを特徴とする、茶葉熱風処理装置。
【請求項2】
前記排気口に風量を調節可能な排気ファン、茶葉排出弁にロータリーバルブを備えたことを特徴とする、請求項1記載の茶葉熱風処理装置。
【請求項3】
前記投入口から蒸熱工程後の茶葉が投入されるものであることを特徴とする、請求項1または2記載の茶葉熱風処理装置。
【請求項4】
製茶工程中に複数台連続で設置されるものであることを特徴とする、請求項1、2または3記載の茶葉熱風処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉の温度を短時間で上昇させ、且つ効率よく水分を除去する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の製茶ラインでは、緑茶製造の場合を例に取ると、蒸機で殺青処理を行った後、茶葉の水分や性状に応じた粗揉機、揉捻機、中揉機、精揉機、乾燥機といった揉乾装置を使用して、茶葉温度を35~36℃に保ちながら、時間をかけて製造する必要があった。これにより、煎茶としての旨みや風味、荒茶の針状の形状などの特徴を有していた。
【0003】
近年、ドリンク用原料やティーバッグ用原料など形状にとらわれずに、味や水色、香りを重視する茶葉の利用が多くなり、製茶コストの低減も関心が高まる中、短い製茶時間で水色や味、香りに特徴のある製造方法が模索されてきた。茶葉を高水分時に短時間で効率よく乾燥させることでその後の揉乾工程の負荷を抑える製法が試みられている。茶葉を高水分時に高温で効率よく水分を除去することで、余分な香気が揮発し夏茶などに特有の香りを抑え、さっぱりとした香気に仕上がり、葉色の色落ちが少ないお茶を作ることができる。
【0004】
上記のような製法に、高温熱風処理装置が使用されるが、従来の装置は供給熱風の制御だけで、茶葉投入量や茶葉の含水率に応じて熱風温度や熱風量を調節することが難しく、特に水分を多く除去したい場合には葉肉の薄い茶葉は過乾燥になったり、焦げが生じたりして、茶の品質を落とすことにつながる場合があった。製造中の茶葉投入量の変化によっても水分の除去程度に変化を生じることもあり、安定的に乾燥程度を調節できる茶葉熱風処理装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-34405号公報
【文献】特開2016-152774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2では、供給される熱風温度はその殆どは排出口側で自然に排気として放出される。処理胴内の熱量を制御することはできず、茶葉の投入量や熱風の気流の変化により、処理胴内の熱量が絶えず変化し、過乾燥になったり、乾燥不足を生じたりしていた。
【0007】
本発明は短時間で効率よく茶葉水分を除去することを目的としており、過乾燥や乾燥不足を防ぎつつ、安定的に茶葉水分を除去する装置を提供することを課題としている。
【0008】
本発明の第1手段は、一端を茶葉の投入口、他端を茶葉の排出口として円筒状の処理胴と、該処理胴を回転させる駆動手段と、前記処理胴の内側に備えた桟と、前記処理胴の一端より熱風を吹き込むための熱風供給手段とより構成する茶葉熱風処理装置において、茶葉排出口側の上部に排気量を調節できる排気口と茶葉排出口に茶葉排出弁を備え、処理胴を略密閉できるようにし、排気量を大きくすることで、茶葉から蒸発した水分により高湿度になった熱風を速やかに排出し茶葉に低湿度の熱風を供給することができる一方、排気量を抑えることで前記処理胴内に前記高湿度になった熱風を維持できるように処理胴内部の熱風気流を調節可能としたことを特徴とする、茶葉熱風処理装置。
本発明の第2手段は、前記第1手段において、前記排気口に風量を調節可能な排気ファン、茶葉排出弁にロータリーバルブを備えたことを特徴とする、茶葉熱風処理装置。
【0009】
本発明の第3手段は、前記第1または前記第2手段において、前記投入口から蒸熱工程後の茶葉が投入されるものであることを特徴とする、茶葉熱風処理装置。
本発明の第4手段は、前記第1、第2または第3手段において、製茶工程中に複数台連続で設置されるものであることを特徴とする、茶葉熱風処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装置により、茶葉熱風処理装置の処理胴内部の熱風の流れを制御することができるようになり、茶葉の投入流量や茶葉の性状による茶葉処理程度の変化を抑え、乾燥不足や過乾燥、焦げなどの品質低下につながる現象を減らすことができ、安定的に良好な茶葉処理状態を保って処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は茶葉熱風処理装置の正面の外観図である。
【
図2】
図2は茶葉熱風処理装置の処理胴の外観図である。
【
図3】
図3は茶葉熱風処理装置の処理胴の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
処理胴1は、茶葉20を一端から投入する投入口2を備えており、、この投入口2には投入装置3によって茶葉20を連続的に投入する。処理胴1は駆動手段5によって回転する。この処理胴の一端には熱風供給手段7として熱風吹出管22が挿入されており、この熱風吹出管22は任意の長さの筒であり、通気性部材で構成され、処理胴内に熱風を供給する。この熱風吹出管22の形状はこの限りではなく、筒の先端から熱風を吹き込むもの、筒の一部を通気性部材で構成するものなど、他の形状でもよい。この熱風吹出管22へ供給する熱風は、熱風発生器21にて発生させている。供給される熱風は、熱風供給管23を通り、熱風吹出管22に接続され、熱風吹出管22の通気性部材を通して処理胴1に放出される。熱風供給管22は留具26により処理胴に固定され、処理胴の回転と一緒に回転する。熱風供給管23の途中に温度計(図示しない)を設け、供給熱風温度を監視し、設定された熱風温度を制御している。熱風発生器21は、150℃~400℃の熱風を発生させることができ、15~24立方メートル/分程度の風量で供給でき、熱風温度、風量ともに調節可能である。熱風温度、風量の調節は茶葉の性状や投入時の茶葉水分、茶葉の重量減を含む、処理程度などに応じて変更する。
【0013】
処理胴1の内面には、長手方向にほぼ直線形状の桟6が複数本取り付けられており、茶葉20が処理胴1内を拡散し、取出口4に向かって移動するようになっている。実施例における処理胴1は直径約1000ミリ、全長約5000ミリ、材質は1.5ミリ程度のSUS製である。処理胴1の回転数は、最高30rpm程度で、無段階に調節でき、茶葉の乾燥度合い(在胴時間)を制御できる。
【0014】
処理胴1の外部は、カバー13、取出口4には排出口カバー14により、保熱及び熱風の自由な放散を防ぐ。
【0015】
処理胴1の他端の取出口4の外側には排出口カバー14があり、茶葉20の取出のシュート15とロータリーバルブ17、取出口カバー14の上部には排気ファン16を設け略密閉とし、ロータリーバルブを回転させながら茶葉を取りだし、排気ファンを調節することで、処理胴内の供給熱風の状態を調節できる。排気ファンではなく、段階的に開閉可能な排気ダンパなどを利用しても良い。
【0016】
投入口2から投入された茶葉は、処理胴1の回転と桟6により拡散されながら、供給熱風により茶葉の加熱とそれによる水分蒸発が進み、乾燥を伴う処理が行われる。供給熱風は、茶葉への熱交換により温度低下を伴い、茶葉の蒸発水分により熱風の湿度が上昇する。茶葉の乾燥を進めたい場合には処理後の熱風は速やかに排出し、低湿度の熱風を供給する必要がある。しかしながらこれが過度になると、茶葉の乾燥が進みすぎ、過乾燥になったり、場合によっては焦げが生じてしまい処理茶葉の品質を低下させてしまう。反対に、茶葉加熱を重視したい場合には、処理胴内部の熱風湿度を高めにすることで、即ち排気量を少なくすることで、茶葉水分の蒸発量を抑えつつ、茶葉加熱を進めることができるが、高湿度の排気を処理胴内にこもらせてしまうと、茶葉に蒸れ香がついてしまい品質を落とすので注意が必要である。
【0017】
取出側に即ち排気側に排気ファンやロータリーバルブなどの略密閉装置がない場合、排気は略開放にて排出されてしまうので、茶葉の投入量や投入水分など茶葉の諸条件によって、供給熱風と排気のバランスを保つことが難しい。どちらか一方のみ設置しても同様である。
【0018】
本発明は茶葉排出をロータリーバルブを設けて、茶葉排出口からの排気を防ぐと共に、排気ファンを調節して、処理胴1内で処理に利用された排気熱風の排出量を調節することで、処理胴1内熱風の温度や湿度を制御でき、自然排気よりも安定的に茶葉の処理程度を調節、維持できる。即ち、乾燥重視の処理の場合、排気量を大きくすることで、高湿度になった排気熱風を速やかに排出し、茶葉に低湿度供給熱風を当てることができ、乾燥を進めることができる。加熱重視の場合、排気ファンの回転数を落とし、排気量を抑えることで、高湿度の処理胴内熱風を維持でき、過乾燥や焦げが生じ難い茶葉処理が可能である。
【0019】
本発明の装置は、茶葉乾燥を伴う処理装置であるが、一般的には蒸熱工程後の茶葉処理或いは、蒸熱工程を省いて茶生葉を本発明装置で殺青処理及び乾燥処理する場合もある。どちらの処理にも有用であるが、蒸熱工程の後の処理装置として使用する場合、適切な湿度を持った処理胴内熱風にすることによって、蒸熱工程での殺青ムラを補う処理としても効果がある。また、殺青装置としても茶生葉への十分な加熱効果が得られ、蒸熱工程による殺青とは異なる処理を求める製法にも利用可能である。
【0020】
本発明により、処理胴内熱風の状態を調節できるようになったことから、焦げなどを生じることなく、茶葉乾燥をより進めることが可能になった。従来の茶葉熱風処理装置では取りだしの茶葉水分が高くなる傾向にあり、直接揉捻処理装置に投入するとドリップが生じ、茶葉の内部成分がドリップと一緒に流出してしまうことがあった。そのため、従来の熱風処理装置では、取出後に乾燥を補完する製茶揉乾機を導入する場合もあった。本発明装置では、より乾燥を進めることができるので処理後直接揉捻処理装置に投入してもドリップを生じることなく、揉捻処理を行うことができ、茶葉成分を流出することがなく、茶葉の旨みを損なわない茶葉製造が可能になる。
【0021】
煎茶製造工程では、蒸熱工程の後、揉乾工程があり、茶葉の物理的な揉み込みを伴う乾燥を進めるが、本発明装置は、茶葉の拡散のみで物理的な揉み工程を伴わず揉捻処理操作に適切な水分まで乾燥可能である。そのため、製茶機械に茶渋が付きにくく、機械清掃の負担軽減にもつながり、歩留まりの向上も見込める。
【0022】
本発明装置により、処理胴内熱風の状態を調節可能になったことで、例えば前半加熱重視、次の処理で乾燥重視にするなど、製茶工程中に複数台連続で設置することにより、より自由度の高い処理ラインの構築が可能になる。
【符号の説明】
【0023】
1 処理胴
2 投入口
3 投入装置
4 取出口
5 駆動手段
6 桟
7 熱風供給手段
8 コンベヤ
9 コンベヤ
10 作業者
13 カバー
14 排出口カバー
15 シュート
16 排気ファン
17 ロータリーバルブ
18 機枠
19 点検口
20 茶葉
21 熱風発生器
22 熱風吹出管
23 熱風供給管
24 熱風供給管
26 留め具