IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイエスティーイーキュー ビー.ヴィー.の特許一覧 ▶ アイエスティーイーキュー グループ ホールディング ビー. ヴィー.の特許一覧

特許7430364レーザー励起プラズマ光源および光生成方法
<>
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図1
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図2
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図3
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図4
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図5
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図6
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図7
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図8
  • 特許-レーザー励起プラズマ光源および光生成方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】レーザー励起プラズマ光源および光生成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/04 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
H01J65/04 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2023506539
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 RU2021050241
(87)【国際公開番号】W WO2022031190
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】2020126279
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】521466910
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー ビー.ヴィー.
(73)【特許権者】
【識別番号】323002842
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー グループ ホールディング ビー. ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】ガヤソフ・ロベルト・ラフィレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】グルシュコフ・ヂェニース・アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】キリューヒン・ユーリィ・ボリソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリフツン・ヴラジミル・ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ラシ・アレクサンドル・アンドレーエヴィチ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519211(JP,A)
【文献】特表2018-528568(JP,A)
【文献】特開2010-170994(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0044774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が光学的に透明であるガス充填チャンバ,プラズマ点火手段,連続波(CW)レーザーの集束ビームによって上記チャンバ内に維持されるプラズマを放射する領域,および上記チャンバを出るプラズマ放射の少なくとも一つの出力ビームを含み,
上記プラズマ放射の出力ビームの最適連続生成が,上記チャンバ内のガス粒子の密度が90・1019cm-3未満であり,かつ上記チャンバの内面の温度が600K以上であることによって達成される,
レーザー励起プラズマ光源。
【請求項2】
上記最適連続生成が,50mW/(mm/nm・sr)を超える高スペクトル輝度の光源,および0.1%未満の輝度の低相対標準偏差σによって特徴付けられる,
請求項1に記載の光源。
【請求項3】
約50バール以上のチャンバ内のガス圧力の提供の下,ガス粒子の密度が可能な限り低く,かつ作動中の上記チャンバの内面の温度が可能な限り高い,
請求項1または2に記載の光源。
【請求項4】
上記ガス粒子の密度が45・1019cm-3以上であり,16.5バール以上の室温におけるガス圧力に対応する,
請求項1から3のいずれかに記載の光源。
【請求項5】
上記チャンバの内面の温度が900K以下である,
請求項1から4のいずれかに記載の光源。
【請求項6】
上記ガスが,キセノン,クリプトン,アルゴン,ネオン,および/またはそれらの混合物を含む,
請求項1から5のいずれかに記載の光源。
【請求項7】
上記ガスがキセノンであり,上記CWレーザーの波長が808nmである,
請求項1から6のいずれかに記載の光源。
【請求項8】
上記プラズマの出力ビームの出口に配置される上記チャンバの少なくとも一部が球状であり,プラズマを放射する領域が上記チャンバの上記球状部分の中心に位置する,
請求項1から7のいずれかに記載の光源。
【請求項9】
上記チャンバの球状部分の内面の半径が5mm未満,好ましくは3mm以下である,
請求項8に記載の光源。
【請求項10】
上記CWレーザーの集束ビームが,上記チャンバ内に下から上に方向づけられ,上記集束ビームの軸が垂直にまたはほぼ垂直に方向づけられている,
請求項1から9のいずれかに記載の光源。
【請求項11】
上記チャンバの一部または細部が,プラズマを放射する領域の上にそこから3mm以下の距離に配置されている,
請求項1から10のいずれかに記載の光源。
【請求項12】
上記チャンバがヒータを備えている,
請求項1から11のいずれかに記載の光源。
【請求項13】
上記チャンバの透明部分が,サファイア,ロイコサファイア(Al),溶融石英(fused quartz),結晶石英(SiO),結晶フッ化マグネシウム(MgF)のグループに属する材料から作られている,
請求項1から12のいずれかに記載の光源。
【請求項14】
上記プラズマ点火手段が,Qスイッチングモードのパルスレーザービームおよびフリーランニングモードのパルスレーザービームを生成する個体レーザーシステムを備え,上記2つのパルスレーザービームが上記チャンバ内に集束される,
請求項1から13のいずれかに記載の光源。
【請求項15】
上記CWレーザーのビームおよび上記チャンバから外に出るプラズマ放射の出力ビームのそれぞれが,上記プラズマを放射する領域の外において互いに交差しない,
請求項1から14のいずれかに記載の光源。
【請求項16】
3つ以上のプラズマ放射の出力ビームを有している,
請求項1から15のいずれかに記載の光源。
【請求項17】
ガス充填チャンバ内でプラズマ点火し,CWレーザーの集束ビームによって維持されるプラズマを放射して上記チャンバの光学的に透明な部分を通じてプラズマを放射する領域から外に出る少なくとも一つのプラズマ放射の出力ビームを生成する光生成方法であって,
上記チャンバが90・1019cm-3未満の粒子密度のガスによって満たされており,
上記プラズマが600K以上の上記チャンバの内面の温度においてCWレーザーの集束ビームによって維持される,
方法。
【請求項18】
50mW/(mm/nm・sr)を超える高スペクトル輝度の光源を提供するために,作動中の上記チャンバのガス圧が約50バール以上である,
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
0.1%未満の輝度の低相対標準偏差σを提供するために,上記チャンバの内面の温度が,可能な限り低いガス粒子の密度の下で,可能な限り高くされる,
請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
上記チャンバが45・1019cm-3以上のガス粒子の密度の粒子密度を持つガスによって満たされており,上記チャンバの内面の温度が900K以下の温度に維持されている,
請求項17から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
上記CWレーザーの上記集束ビームが下から上に垂直に上記チャンバ内に向けられている,
請求項17から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
上記チャンバ内の対流の乱れが,上記チャンバの上壁または一部を,プラズマを放射する領域の上にそこから3mm以下の距離に配置することによって抑制される,
請求項17から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
上記チャンバにキセノンが充填されており,上記放射プラズマが808nmの波長のCWレーザーの集束ビームによって維持される,
請求項17から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
上記プラズマ点火が,フリーランニングモードおよびQスイッチモードの固体レーザーシステムによって生成される2つのパルスレーザービームを上記チャンバ中に集束させることによって生成される,
請求項17から23のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,紫外(UV),可視および近赤外(NIR)のスペクトル帯域の高輝度光を生成するレーザー励起プラズマ光源,および連続光放電(COD)(continuous optical discharge)のプラズマから広帯域放射を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続光放電(continuous optical discharge)は,事前に作られた比較的高密度のプラズマ中のレーザー放射によって維持される定常ガス放電である。約15,000Kのプラズマ温度のCODベースの光源は約0.1μmから1μmの広スペクトル範囲における最も輝度の高い連続光源に属する(Raizer,“Optical Discharges”,Sov.Phys.Usp.23(11),1980年11月,789~806頁)。アークランプと比較してレーザー励起プラズマ光源は輝度が高いだけでなく寿命も長く,多くの用途に適するものである。
【0003】
上述の約15,000Kの放射プラズマの温度は実質的に固定されている。これは,連続波(CW)レーザーの出力を(2~10倍以内。数桁ではない)増加させることによって温度をあげようとすると,プラズマの体積が増加し,プラズマガス界面の体積と表面の増加による放射と熱伝導によって,追加出力が解放されるからである。換言すると,プラズマ温度は,CODそれ自体によって,その存在条件により非常に安定化される。これに関して,輝度を増加して上記CODを維持するために,CWレーザーの使用と組み合わせられ,上記CODを維持するために必要な閾値以上の高繰り返し率のパルスレーザーが使用されることが,たとえば2015年12月20日発行のロシア特許第2571433号から知られている。
【0004】
しかしながら,このアプローチは,高輝度のレーザー励起プラズマ光源が不安定になるという問題がある。
【0005】
この欠点は,2016年6月14日発行の米国特許第9368337号から知られる広帯域光源において大幅に克服される。この特許では,光学的に透明なCODプラズマがCWレーザービームの軸に沿って細長い形状を有している。プラズマ放射が長手方向に集められ,これによって高輝度の光源がもたらされる。
【0006】
しかしながら,プラズマ放射の長手方向の収集では,プラズマ放射の出力ビームにおけるレーザー放射のブロックという問題が発生する。輝度の増加,プラズマによるレーザー放射の吸収係数の増大,およびプラズマを通過したブロックされた発散レーザービームの開口数の大幅な減少という問題を解決するが,このデバイスは光源の輝度安定性の課題を完全には解決しない。
【0007】
2016年5月31日発行の米国特許第9357627号から知られる広帯域光源では,プラズマ放射がレーザービームの伝播方向以外の方向に集められる。これに伴い,レーザービームがカメラ軸に沿って垂直に上向きに向けられ,かつプラズマを放射する領域がチャンバの上部のすぐ近くにあるという光源構成の最適化に起因して,ガス充填チャンバ内の対流の乱れを抑制することによって,広帯域プラズマ光源のエネルギーと空間安定性が向上する。
【0008】
乱流が光源の明るさの不安定性につながる対流ガス流の安定性と制御を高めるという課題も,2018年6月26日発行の米国特許第10008378号,2018年10月23日発行の米国特許第10109473号,2018年2月6日発行の米国特許第9887076号,2019年3月26日発行の米国特許第1024461号といった多くの特許において,カメラと光源の全体としての形状を最適化することによって解決されている。
【0009】
しかしながら,このタイプの光源で達成可能な最大値に近い,50mW/(mm・sr・nm)を超える高いスペクトル輝度,および0.1%未満の低い相対輝度不安定性(low relative brightness instability)σを備えるプラズマ放射の連続生成を得るための最適条件は決定されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明によって解決されるべき技術的課題は,上記CODプラズマからの広帯域放射の最適生成のための装置および方法の作成,およびレーザー励起を備える高安定高輝度プラズマ光源の開発に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の本質は,高温(~15000K)CODプラズマの高密度化により可能な限り最高の輝度の光源を提供することであり,上記プラズマ密度が,50-100バール以上の周囲ガスの高圧によって提供される。際立つ特徴は,このような高圧pが(比p ∝ nTにしたがって)ガス原子の最小密度nにおいて提供されるが,可能な限り高いガス温度T(600~900Kまたはそれ以上の範囲)を使用することである。次に,ガス密度およびこの密度に関連する屈折を最小限に抑えることによって,ガス充填チャンバ内の対流ガス流の乱流に関連する光源輝度の不安定性が非常に効率的に抑制される。したがって,この発明は,輝度の超低不安定性を有するプラズマ光源の超高輝度化の達成を提供する。
【0012】
この発明の技術的な結果は,放射プラズマの高安定性および高輝度を達成するために最適なCOD維持条件を提供することにあり,超高輝度および安定性を備える広帯域光源をこれに基づいて作成することにある。
【0013】
上記目的は,少なくとも一部が光学的に透明であるガス充填チャンバ,プラズマ点火手段,連続波(CW:continuous wave)レーザーの集束ビーム(focused beam)によって上記チャンバ内に維持される(sustained in the chamber)プラズマを放射する領域,および上記チャンバを出るプラズマ放射の少なくとも一つの出力ビームを含む,上記提案されるレーザー励起プラズマ光源によって達成可能である。
【0014】
上記光源は,上記チャンバ内のガス粒子の密度(density of gas particles)が90・1019cm-3未満であり,かつ上記チャンバの内面の温度が600K以上である事実によってプラズマ放射の出力ビームの最適連続生成が達成されるという特徴を持つ。
【0015】
この発明の好ましい実施態様では,上記最適連続生成が,50mW/(mm/nm・sr)を超える高スペクトル輝度の光源,および0.1%未満の輝度の低相対標準偏差σ(low relative standard deviation of the brightness σ less than 0.1%)によって特徴付けられる。
【0016】
この発明の好ましい実施態様では,約50バール以上の上記チャンバ内のガス圧の提供下において,上記ガス粒子の密度が可能な限り低く,かつ作動時の上記チャンバの内面の温度ができるだけ高いものである。
【0017】
この発明の好ましい実施態様では,上記チャンバの内面の温度が900K以下であり,ガス粒子の密度が45・1019cm-3以上であり,これは16.5バール以上の室温におけるガス圧力に対応する。
【0018】
この発明の一実施態様では,上記チャンバの内面の温度が900K以下である。
【0019】
この発明の一実施態様では,上記ガスは,キセノン,クリプトン,アルゴン,ネオン,またはそれらの混合物を含む不活性ガスのグループに属するものである。
【0020】
この発明の一実施態様では,上記ガスはキセノンであり,上記CWレーザーの波長が808nmである。
【0021】
この発明の一実施態様では,上記プラズマの出力ビームの出口に配置されるチャンバの少なくとも一部が球状であり,プラズマを放射する領域が上記チャンバの上記球状部分の中心に位置する。
【0022】
この発明の一実施態様では,上記チャンバの球状部分の内面の半径が5mm未満,好ましくは3mm以下である。
【0023】
この発明の好ましい実施態様では,上記CWレーザーの集束ビームが,上記チャンバ内に下から上向きに方向づけられ,上記集束ビームの軸が垂直にまたはほぼ垂直に方向づけられる。
【0024】
この発明の好ましい実施態様では,上記チャンバの一部または細部(a detail)が,プラズマを放射する領域の上に上記領域から3mm以下の距離に配置される。
【0025】
この発明の好ましい実施態様では,上記チャンバがヒータを備えている。
【0026】
この発明の一実施態様では,上記チャンバの透明部分が,サファイア,ロイコサファイア(Al),溶融石英(fused quartz),結晶石英(SiO),結晶フッ化マグネシウム(MgF)のグループに属する材料から作られている。
【0027】
この発明の一実施態様では,上記プラズマ点火手段が,Qスイッチングモードのパルスレーザービームおよびフリーランニングモード(free-running mode)のパルスレーザービームを生成する固体レーザーシステムを備え,上記2つのパルスレーザービームがチャンバ内に集束される。
【0028】
この発明の一実施態様では,上記CWレーザーのビームおよび上記チャンバから外に出るプラズマ放射の出力ビームのそれぞれが,プラズマを放射する領域の外において互いに交差しない。
【0029】
この発明の一実施態様では,上記光源が3つ以上のプラズマ放射の出力ビーム(three or more output beams of plasma radiation)を有している。
【0030】
別の観点において,この発明は,ガス充填チャンバ内でプラズマ点火し,CWレーザーの集束ビームによって維持されるプラズマを放射して上記チャンバの光学的に透明な部分を通じてプラズマを放射する領域から外に出る少なくとも一つのプラズマ放射の出力ビーム(at least one output beam of plasma radiation)を生成することを含む光生成方法に関する。
【0031】
上記方法は,上記チャンバが90・1019cm-3未満の粒子密度(particles density)のガスによって満たされており,上記プラズマが600K以上の上記チャンバの内面の温度においてCWレーザーの集束ビームによって維持されることを特徴とする。
【0032】
この発明の実施態様では,50mW/(mm/nm・sr)を超える高スペクトル輝度の光源を提供するために,作動中の上記チャンバ内のガス圧が約50バール以上である。
【0033】
この発明の好ましい実施態様では,上記チャンバの内面の温度が,可能な限り低いガス粒子の密度の下で可能な限り高く,0.1%未満の輝度の低相対標準偏差σを提供するものである。
【0034】
この発明の好ましい実施態様では,上記チャンバが45・1019cm-3以上のガス粒子の密度の粒子密度を持つガスによって満たされており,上記チャンバの内面の温度が900K以下の温度に維持されている。
【0035】
この発明の好ましい実施態様では,上記CWレーザーの集束ビームが下から上に垂直に上記チャンバ内に方向づけられている。
【0036】
この発明の好ましい実施態様では,上記チャンバ内の対流の乱れ(turbulence of convective flows in the chamber)が,上記チャンバの上壁または一部をプラズマ放射領域の上に上記領域から3mm以下の可能な限り最小の距離に配置することによって,抑制される。
【0037】
好ましい実施態様では,上記チャンバがキセノンで満たされており,放射プラズマが808nmの波長のCWレーザーの集束ビームによって維持される。
【0038】
好ましい実施態様では,上記プラズマ点火が,フリーランニングモードおよびQスイッチモードの固体レーザーシステムによって生成される2つのパルスレーザービームを上記チャンバ中に集束させることによって行われる。
【0039】
この発明の利点および特徴は,添付する図面を参照して例として与えられる,例示的な実施形態の非限定的記述からより明らかになろう。
【0040】
この発明の本質は図面によって説明される。
【0041】
図面において,装置の同一部材には同一の符号を付す。
【0042】
図面は,この技術的解決策を実装するためのオプションの全範囲を網羅するものではなく,さらに制限するものでもなく,その実装の特定ケースの例示的な例にとどまるものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】この発明の一実施態様による光源の概略的表現である。
図2】ガス密度に対する輝度の相対標準偏差の依存性を示す。
図3】時間に対するプラズマ光源の輝度の依存性を示す。
図4】CWレーザー波長λcw=976nmおよびλcw=808nmについてのキセノンガス圧の関数としての光源のスペクトル輝度を示す。
図5】この発明の実施形態による光源の概略的表現である。
図6】この発明の実施形態による光源の概略的表現である。
図7】レーザーおよび放電によってプラズマが点火されたときのプラズマ放射の複数のビームを伴う光源の概略図である。
図8】レーザーおよび放電によってプラズマが点火されたときのプラズマ放射の複数のビームを伴う光源の概略図である。
図9図9Aおよび図9Bは光源のスペクトル特性である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
この明細書は,この発明がどのように実行されるかを例示するもので,発明の範囲を示すものではない。
【0045】
図1に示す発明の実施形態例を参照して,レーザー励起プラズマ光源は,一部が光学的に透明である高圧ガス充填チャンバ1を備えている。図1は,光学的に透明な材料,たとえば石英ガラス(fused quartz)から製造される完全に透明なチャンバを備える例を示している。上記光源はまた,パルスレーザーシステム2を用いることができるプラズマ点火手段を含み,これによって少なくとも1つのパルスレーザービーム3が生成され,これがチャンバ1内すなわち放射プラズマ4を維持する(sustaining)ことを意図した領域内に集束される。
【0046】
この発明の他の実施態様では,プラズマ点火手段として点火電極(ignition electrodes)を用いることができる。
【0047】
プラズマ点火後,放射プラズマ4の領域(the region of radiating plasma 4)はCWレーザー6の集束ビーム5によって連続モードにおいてチャンバ内に維持される。プラズマ放射7の少なくとも1つの出力ビーム(または有用なビーム)が光コレクタ8に向かい,その後の使用のためにチャンバ1を出る。光コレクタ8は放射ビーム9を形成し,これが,たとえば光ファイバおよび/またはミラーシステムを介して,広帯域プラズマ放射を使用する一または複数の光消費システム(optical consumer system)10に送られる。
【0048】
この発明によると,プラズマ放射7の出力ビームの最適な連続生成は,チャンバ1内のガス粒子の密度が90・1019cm-3未満であって,かつチャンバの内面の温度が600K以上,好ましくは600から900Kの範囲(またはオプションとしてより高い温度がチャンバの寿命およびその透明度に悪影響を及ぼさない場合はそれより高い温度)であることによって実現される。
【0049】
この発明によって達成される効果は,所定容積のチャンバ内の所定量のガスについて,上記ガス圧がチャンバの内面の温度とともに増加するという事実に起因する。放射プラズマの温度は実質的に固定であり(約15000Kであり,この温度を上げる試みは,プラズマ体積の増加のみを伴うので困難である),プラズマの圧力はチャンバ内の圧力に等しいので,放射プラズマの密度はチャンバ内の圧力の増加,すなわちチャンバ壁の温度の上昇とともに増加する。上記放射プラズマの密度の増加は放射プラズマの体積光度の増加(an increase in the volumetric luminosity)をもたらし,その結果として,放射プラズマが実質的に透明である広い光学範囲における光源の輝度の増加をもたらす。
【0050】
同様の輝度の増加は,上記チャンバの所与の温度のもと,ガス圧を増加させることによって得ることができる。しかしながら,この場合,ガス粒子密度およびこの密度に関連する屈折が増加し,放射プラズマ領域およびその周辺の両方で乱流が発生すると,光源の輝度が著しく不安定(変動的)になる。
【0051】
すなわち,この発明によると,好ましくは,ガスの密度を増加させるのではなく,ガスの温度を上昇させることによってガスの圧力が増加され,これによって光源の輝度の高い安定性を伴う放射線の高輝度化が保証される。
【0052】
チャンバおよびガスの温度の上昇によって,以下の理由によってチャンバ内の対流の乱れも減少することに留意すべきである。第1に,チャンバを加熱すると,チャンバ内の温度勾配(temperature gradients)とガス密度勾配(gas density gradients)が減少し,これがプラズマの高温領域と周囲の低温ガスとの間の対流の抑制をもたらすことである。第2に,気体の流れの性質はレイノルズ数Reによって決定され,レイノルズ数が臨界値よりも小さくなると乱流が抑制されることである。上記レイノルズ数は,ガス密度ρ,ガス流速(gas flow rate)ν,および粘度(dynamic viscosity)ηに依存する。
【0053】
【数1】
【0054】
上記粘度は温度上昇によって増加する。
【0055】
【数2】
【0056】
ここでηは室温T(T≒300K)におけるガスの粘度である。これによれば,レイノルズ数は,以下のようにガスの濃度,その速度および温度に依存する。
【0057】
【数3】
【0058】
式(3)によると,チャンバとガスの絶対温度Tを上げることによってガス流の乱れを抑えることができる。乱流を抑制して光源の安定性を高めるための他の可能性としては,ガスの質量密度ρおよびその速度νを制限することが含まれる。後者は,特には,チャンバの寸法の減少により実現され,これは,プラズマを放射する領域で加熱されてアルキメデス力の作用下で浮上するガスの加速が,上記チャンバの寸法によって制限されるためである。
【0059】
上記(3)によると,ガス密度が低いほど,対流ガス流の乱れが少なくなる。さらに,ガスの質量密度ρが低いほど,その屈折率(its refractive index)が低くなり,かつ対流ガス流内の光の屈折に関連する収差(aberrations)が低くなる。したがって,ガスの密度が低いほど,光源の輝度やその他の出力パラメータの不安定性が少なくなる。これが図2に示されており,図2はガスの質量密度ρおよび数密度nの両方に対する光源輝度σの相対標準偏差(RSD:Relative Standard Deviation)の依存性を実験的に示している。
【0060】
ガスの上記数密度nおよび質量密度ρは,Mをモル質量,Nをアボガドロ定数としたときにn=(N/M)ρの数式によって表されるように,互いに関連する。
【0061】
相対標準偏差は,(データセットの標準偏差)/(データセットの平均)・100%を意味する。輝度データセットは10-3秒の時間間隔で測定中にサンプリングした。これは輝度信号を処理するのに十分であり,プラズマ光源の輝度の時間依存性を示す図3の拡大図に示すように,ガス流の対流に関連する振動周波数は10~15Hzを超えない。
【0062】
図2に示す依存性を得るために,プラズマの点火を開始するための電極を備える4つの同一の密封された石英チャンバを使用し,上記チャンバには,室温で11,17,23および29バールに等しい,さまざまな圧力のキセノンを充填した。図2に示す依存関係は,ガス密度が1/3に減少したことで,約50倍,輝度の相対不安定性σが劇的に低下したことを示している。図2は,ガス密度に対するσの依存性を定性的に示したものと考えられ,輝度の不安定性がさらに数倍,3倍以上減少する可能性があることを意味する。これは,特に,無電極プラズマ点火のプラズマ光源における使用,および負帰還を伴うCWレーザー制御システムによって達成される。
【0063】
図3において,輝度の時間依存性は,室温下で22バールの圧力に相当する60・1019cm-3のキセノンガス密度で満たされたチャンバを備えたプラズマ光源に対してのものである。プラズマ放射線のビームの出口に配置された石英チャンバの球状部分は4mm程の小さい内面の直径を有する。この場合のプラズマ光源輝度の相対標準偏差σは0.04~0.05%の範囲である。
【0064】
一般には,ガス圧が高いほど,したがって放射プラズマの領域の圧力が高いほど,光源の輝度は高くなる。
【0065】
明るさの相対標準偏差を十分に小さいσ≦0.1%にするために,チャンバ内のガス粒子の密度が,室温下で約33.5バールのガス圧に対応する90・1019cm-3を上限としてこれ以下に実験的に決定されて選択される。同時に,達成可能な最大値に近い光源のスペクトル輝度を得るために,600から900Kまたはそれ以上の範囲の温度下において50mW/(mm・sr・nm)以上のガス圧であること,したがって放射プラズマの密度が動作時に約50バール以上の最適なガス圧を提供するのに十分高くなければならない。この目的のために,チャンバ内のガス粒子の密度は,室温下で16.5バール以上のガス圧に相当する,実験的に決定される45・1019cm-3を下限としてこれ以上に選択される。
【0066】
したがって,高いスペクトル輝度および輝度の低い相対標準偏差を提供するために,ガス粒子の密度はできるだけ低くする必要があり,他方において動作中のチャンバの内面の温度は,約50バール以上のチャンバ内のガス圧提供下においてできるだけ高くする必要がある。
【0067】
この発明の一実施態様において,動作中の上記チャンバの内面の温度は600Kであり,かつガス粒子の密度は室温下で24.5バール,作動時で50バールのガス圧に相当する65・1019cm-3である。
【0068】
この発明の好ましい実施態様では,チャンバは,860Kという高い内面温度で動作でき,ガス粒子の密度は,室温下で16.5バール,動作時で50バールのガス圧に相当する45・1019cm-3という低い値を選択することができる。
【0069】
図4を参照して,図4は室温下におけるチャンバ内のキセノンガスの圧力に対する光源のスペクトル輝度の依存性を示している。450Kのチャンバ温度の下,動作定常モードで600-500nmのスペクトル範囲で測定は実行した。指定されたスペクトル範囲では,スペクトル輝度は約400nm付近の波長で観察される最大値よりも約25%低くなる。測定は,波長λcw=976nmおよびλcw=808nmで65Wの放射出力を持つ2つCWダイオードレーザーについて行った。
【0070】
調査結果は,両方の波長のレーザー放射について,室温下で少なくとも25バールのチャンバ内のガス圧において高いスペクトル輝度が達成されることを示している。放射強度の高い安定性σ≦0.1%は,室温下で36バールまでのチャンバ内のガス圧において維持される。
【0071】
測定結果は,チャンバ温度が600K以上に上昇しても,光源の出力パラメータの高い安定性を維持しながら,明るさを増加させる確実な傾向を示すものであった。
【0072】
この発明によると,上記ガスとして不活性キセノンの使用が好ましく,これにより安全な操作と光源の長寿命が保証される。さらに,他の不活性ガスの放射プラズマと比較して,Xeプラズマが,UV,可視,およびIR領域を含む広いスペクトル範囲において最高の光と特徴付けられる。
【0073】
高効率CWダイオードレーザーの好ましい波長の選択は次の要因による。レーザー波長976nm付近ではXeの強い吸収線が存在し,温度が上昇するにつれて低状態(the lower state)が生成される。808nm付近では,このような線は吸収線から離れているので,所定のレーザー出力においては,976nmの場合よりも高いプラズマ密度および温度において連続的な光放電を維持するのに十分な吸収が達成される。
【0074】
したがって,この発明の好ましい実施態様では,上記チャンバに充填するガスはキセノンであり,上記CWレーザーの波長は808nmである。
【0075】
この発明の他の実施形態は,放射プラズマの強度,輝度,スペクトルおよび空間位置を含む光源の出力パラメータの安定性をさらに高め,他方において光源の可能な限り高い輝度を確保することを目的とする。
【0076】
好ましい実施態様では,CWレーザーの集束ビームが下から上に向けてチャンバ内に方向づけられ,上記ビームの軸は重力11(図5)に垂直平行(vertically parallel)に,またはほぼ垂直に向けられます。光源の安定性がさらに向上するのは,通常,プラズマ4を放射する領域が,CWレーザーの集束ビーム5に向かって焦点から集束レーザービームの断面に向けてわずかにシフトする(slightly shifted from the focus towards focused beam 5 of the CW laser to that cross section of the focused laser beam)という事実によるもので,そこでのCWレーザーの集束ビーム5の強度は放射プラズマ4の領域を維持するのに十分である。CWレーザーの集束ビーム5が下から上に向けられると,最も熱くかつ最も低い質量密度のプラズマを含む放射プラズマ4の領域はアルキメデス力の作用下で浮く傾向がある。上昇すると,放射プラズマ4の領域は焦点により近い場所に到達し,そこではCWレーザーの集束ビーム5の断面がより小さくなり,レーザー放射の強度がより高くなる。これにより,一方ではプラズマ放射の輝度が増加し,他方では放射プラズマの領域に作用する力が均衡し,光源の高い安定性が保証される。
【0077】
このようなポジティブな効果を実現するために,好ましくは,チャンバ1は軸対称とされ,CWレーザーの集束ビーム5の軸がチャンバの対称軸と位置合わせされる。
【0078】
光源の出力特性の安定性は,放射プラズマ4の領域において加熱されるガスによるアルキメデス力の作用の下で取得されるパルスの大きさ(magnitude of the pulse)にも影響される。ガスによって獲得されるモーメント(運動量)および対流の乱流は,プラズマ4を放射する領域がチャンバの上壁またはプラズマ4を放射する領域の上に位置するチャンバの部分に近づくほど小さくなる。したがって,図5に示す実施形態における光源の出力特性の安定性を高めるために,チャンバの一部または細部12が,プラズマ4を放射する領域の上に,そこから可能な限り最小の,3mm未満の距離で配置され,これはチャンバの寿命およびその透明性に悪影響を与えることはない。
【0079】
また,チャンバの部分12を,プラズマ放射領域を通過したCWレーザービームおよびプラズマ放射の一部の両方を反射してプラズマ4に集束するように配置することができる。これにより放射損失が減少し,光源の効率が向上する。図5に示すこの発明の実施形態では,プラズマに近いチャンバの部分12は放射プラズマ4の領域に中心を有する凹球面鏡13である表面を含む。
【0080】
好ましい実施態様では,図1および図5に示すように,少なくともプラズマ放射7の出力ビームの出口とされるチャンバ1の部分は球状またはほぼ球状であり,放射プラズマ4の領域はチャンバ1の球状部分の対称中心に位置する。これによりチャンバの透明な壁がプラズマ放射の光線の経路に入るために生じる色収差と球面収差が最小限に抑えられる。
【0081】
対流の乱れに関連する収差の抑制は,特にチャンバサイズを縮小することによって達成される。したがってこの発明の一実施態様では,チャンバの球状部分の内面の半径は5mm未満,好ましくは3mm以下である。
【0082】
図6はこの発明の一実施態様を示すもので,チャンバがヒータを備えている。ヒータは,加熱コイル14と,加熱コイル36と通電母線(バスバー)17との間に温度差を与えることを目的とする温度ブリッジ16を介して上記加熱コイルに接続された電流源15から構成することができる。さらに通電母線17には,たとえば空冷式ラジエータの形態の熱交換器(図示略)を設けることができる。チャンバは球状部分および加熱コイル14が配置された円筒状部分から構成することができる。チャンバにはチャンバの温度を測定する熱電対を装備することもできる。さらに加熱コイル14は断熱ジャケット(図示略)内に収容してもよい。
【0083】
上記ヒータは,チャンバを動作温度に事前加熱するように設計されており,これによりプラズマの点火が容易になり,600~900Kの範囲のチャンバの事前設定される最適な高温の定常状態動作モードに光源はすばやく移行する。
【0084】
この発明の一実施態様では,上記光コレクタ(集光器)が,放物面鏡(parabolic mirror)8,および好ましくは広帯域プラズマ放射を使用する光学システムに光ファイバによって運ばれるプラズマ放射ビーム9を形成することを意図した偏向鏡(deflecting mirror)18を含む。
【0085】
この発明の好ましい実施態様では,高輝度プラズマ光源は,プラズマ放射7の出力ビームにおける所与の出力(パワー)を自動的に維持する機能を有する制御ユニット19を備えている(図6)。このために,上記光源はパワーメータ20を備え,パワーメータ20には結合器(カプラ)(図示略)によってプラズマ放射線9のビームからの光束の小部分が供給される。好ましくは,上記制御ユニットにはヒータ15,パワーメータ20,およびCWレーザー6の電力供給ユニットが接続される。プラズマ放射9のビームの指定出力の維持が,パワーメータ20とCWレーザー6の電源ユニットとの間のフィードバック回路にしたがって制御ユニット19によって実行される。さらに制御ユニット19は,上記チャンバをその最適な高温で熱的に安定させるように機能させることができる。この発明のこの実施形態は,長期連続動作モードにおけるレーザー励起プラズマ光源の出力および輝度の安定性を改善する。
【0086】
図6に示すように,この発明の好ましい実施態様では,光ファイバ出力を備えるCWレーザー6が用いられる。光ファイバ21の出力において,拡大レーザービームが,たとえば集光レンズの形態のコリメータ22に向けられる。コリメータ22の後,CWレーザーの拡大された平行ビーム23は,偏向ミラー24によって,たとえば非球面レンズの形態の集束光学素子25に向けられ,CWレーザービーム5の鋭い集束が提供される。これは,光源の高輝度を確保するために必要である。
【0087】
この発明の好ましい実施態様では,Qスイッチモードにおいて第1のレーザービーム27を生成する第1のレーザー26を含み,かつフリーランニングモードにおいて(in a free-running mode)第2のレーザービーム29を生成する第2のレーザー28を含む固体レーザーシステム2が,信頼性の高いプラズマ点火のために用いられる。能動素子30,31を有するパルスレーザーは,たとえばフラッシュランプ32の形態の光ポンピング源を備え,好ましくは共通のキャビティミラー33,34を有する。第1のレーザー26はQスイッチ35を備えている。2つのパルスレーザービーム27,29が,放射プラズマ2を維持することを意図した領域においてチャンバ内に集束される(図6)。第1のレーザービーム27は光学的破壊(optical breakdown)を意図したものである。第2のレーザービーム29は,CWレーザーの集束ビーム5によってプラズマを放射する領域4を定常的に維持するために十分な体積および密度のプラズマを生成することを意図している。
【0088】
好ましくは,CWレーザーの波長λcwは,第1および第2のパルスレーザービーム27,29の波長λ1,λ2と異なる。一例として,CWレーザーの波長はλCW=808nmまたは976nmとされ,パルスレーザーはλ1=λ2=1064nmの出射波長を持つ。これによって,ダイクロイックミラー24を用いてCWレーザービーム23およびパルスレーザービーム27,29をチャンバに入力することができる。パルスレーザービーム27,29を搬送するために回転ミラー36を追加的に使用することができる(図6)。
【0089】
図1図5図6は,プラズマ点火のためのパルスレーザーシステム2を用いる場合,チャンバ1がすべての方位角に(in all azimuths)プラズマ放射を出力することができることを示している。一実施態様では,チャンバからのプラズマ放射の出力ビームの出射は,少なくとも9srの空間角度,または全立体角の70%を超える空間角度で実行される。この場合,プラズマ放射の出力ビーム7の開き角(図面の平面に対する平面角)は90°以上である。
【0090】
この発明による光源は,この実施態様のものだけが,プラズマ放射7の出力ビームの光コレクタ8への全方位における出力をするという限定はない。放射プラズマ4の領域を通過する水平面における光源の断面を示す図7に示すように,この発明の他の実施態様では,光源は,プラズマ放射7a,7b,7cの少なくとも3つのホモセントリック出力ビームを有することができる。連続的な光放電を開始し維持する図7のレーザービームは,図面の平面の下に位置している。単一の光源からのプラズマ放射のいくつかの,特に3つのビームの使用は多くの産業用途に必要とされる。この実施形態では,レーザー励起光源チャンバ1は,3つの光コレクタ8a,8b,8cを備えるハウジング37内に収容することができる。3つの光コレクタ8a,8b,8cは,広帯域プラズマ放射を使用して,たとえば光ファイバによって光消費システム10a,10b,10cに運ばれるプラズマ放射9a,9b,9cのビームを形成する。これにより,1つの光源を3つ以上の光消費システムに使用できるようになり,システムのコンパクトさと,すべての光チャネルにおける広帯域放射のパラメータの同一性が保証される。
【0091】
図8は3つの放射出力チャネルを有する光源の別バージョンを示しており,高電圧パルス電源(図示略)に接続されたプラズマ点火手段としての2つの点火電極38,39が使用されている。この実施形態において上述の実施形態(図7)のものと同じ装置の部品は図8において同じ参照番号を付し,それらの詳細な説明は省略する。
【0092】
この発明の好ましい実施態様では,チャンバの透明部分は石英製(quartz)である。他の実施態様では,チャンバの透明部分は,サファイア,ロイコサファイア(leucosapphire),溶融シリカ,結晶シリカ,結晶フッ化マグネシウムのグループに属する光学的に透明な材料で作ることができる。
【0093】
図1図5図6図7図8に示す提案のレーザー励起プラズマ光源を使用したCODプラズマからの光生成方法は,次のとおりである。チャンバ1が,室温下35.5バールの圧力に相当する90・1019cm-3未満の粒子密度を有するガスによって充填される。CWレーザー6の集束ビーム5がチャンバ1に向けられる。点火電極またはパルスレーザーシステム2のいずれかとすることができるプラズマ点火手段の助けを借りて,プラズマが点火される。初期プラズマの濃度と体積は,CWレーザー6の集束ビーム5による連続的な光放電を確実に維持するのに十分なものとされる。定常状態の定常動作モードでは,プラズマを放射する領域は,600~900Kの範囲またはオプションでそれ以上のチャンバの内面の温度下で,CWレーザーの集束ビームによって維持される。プラズマ放射の少なくとも一つの出力ビームが,放射プラズマ4の領域から,チャンバ1の光学的に透明な部分を通して,方向付けされる。
【0094】
チャンバの壁を特定の温度に加熱することによって,放射プラズマの領域を取り囲むガスの圧力が倍増し,2倍から3倍またはそれ以上増加する。プラズマ内の圧力はチャンバ内の圧力と等しいので,チャンバ壁の加熱によって放射プラズマの密度が増加し,これは放射プラズマの体積輝度の増加をもたらし,結果として,広い光学範囲における光源の明るさの増加をもたらす。この場合,乱流で光源の輝度の大幅な不安定性につながるガス密度とそれに比例する屈折を増加させることなく,ガス圧力と光源の輝度の増加が達成される。上述したように式(3)を考慮すると,ガスの温度Tを上げ,その密度ρを減少させ,または制限し,ガスの流速νを下げることで対流乱流を抑制することができ,これが提案する光生成方法において実装される。
【0095】
光源の高いスペクトル輝度を達成するために,動作時のチャンバ内のガス圧は50mW/(mm・sr・nm)を超え,50バール近くまたはそれ以上が提供される。
【0096】
0.1%未満の輝度の低い相対的不安定性σを達成するために,可能な限り低いガス粒子の密度において,チャンバの内面の温度が可能な限り高く設定される。
【0097】
プラズマ放射領域から上昇するガス流の速度νは,チャンバの上壁または一部をプラズマ放射領域から3mmを超えない可能な限り最小の距離に配置することによって最小化される。一実施態様では,チャンバのサイズは,チャンバの壁がプラズマを放射する領域から3mmを超えない距離に配置されるように選択され,これはチャンバ内の対流の乱流を抑制するのに役立つ。
【0098】
すなわち,この発明は,このタイプの光源で達成可能な最大値に近い高輝度において,レーザー励起プラズマ光源の高い安定性を提供することを可能にする。
【0099】
この方法の一実施形態では,チャンバは,チャンバに入るCWレーザーの放射出力に起因して,光源を定常動作モードにするプロセスにおいてプラズマの点火後に加熱される。
【0100】
他の実施態様では,プラズマ点火の前に,図6の要素14,15,16,17を含む外部ヒータにより,チャンバ1が600から900Kの範囲の温度まで急速に加熱される。これによりプラズマの点火が容易になり,光源が定常動作モードに達する時間が短縮され,設計が簡素化されて使いやすさが向上する。CWレーザーの放射パワーおよびヒータによって,チャンバ内面が所定の温度に保たれる。
【0101】
光源の安定性をさらに高めるために,CWレーザーの集束ビームがチャンバ内に垂直に沿って下から上に向けられ,これによりプラズマ放射領域の輝度と空間安定性が向上する。この場合,CWレーザービームは,プラズマ放射の出力ビームが通過するチャンバの部分の対称中心に集束されることが好ましい。これにより広帯域プラズマ放射がチャンバの透明な壁を通過するときにビームの経路を歪め,その放射を輸送するときに光源の輝度を低下させる可能性がある光学収差が減少する。
【0102】
光源の可能な最大輝度を達成するためにキセノンガスを使用することが好ましく,レーザーは波長808nmの連続ダイオードレーザーが好ましい(図4)。
【0103】
他の不活性ガスの放射プラズマと比較して,連続光放電(COD)のXeプラズマは,可視および近赤外領域を含む広いスペクトル範囲における最高の光出力によって特徴付けられる。図9Aは,不活性ガスとしてXeを使用した光源の特性スペクトルを示している。
【0104】
他の不活性ガス,特に重い不活性ガスKr,Ar,Neを使用したり,他の不活性ガスをキセノンに20%以下の割合で添加したりしても,CODの光学特性に顕著な影響はない。紫外,可視,近赤外スペクトル領域のCOD放射は黒体放射に近く,主にプラズマ温度によって決定される。同時に,100~200nmの真空紫外(VUV)領域では,キセノンにおける放射線の吸収または自己吸収が観察される。したがって,放射スペクトルをVUV領域に拡張する場合,他の不活性ガス,特にKr,Arまたはそれらの混合物を使用することが好ましい場合がある。図9Bは,比較のためにキセノンガスとKr+Arガス混合物を使用したときの光源のVUVスペクトルを示している。
【0105】
一般には,この発明によると,不活性ガス,好ましくはキセノン,クリプトン,アルゴン,ネオンまたはそれらの混合物が,チャンバに充填されるガスとして使用される。
【0106】
この発明の一実施態様では,プラズマが固体パルスレーザーシステム2の2つのパルスレーザービーム27,29によって点火され,放射プラズマの領域に集束される(図6)。2つのパルスレーザービーム27,29は光誘起ブレークダウンおよび初期プラズマの生成を提供し,その密度は約1018電子/cmの値を有する連続光放電プラズマの閾値密度より高い。この実施形態ではレーザー点火の信頼性と光源の使いやすさが達成される。プラズマ点火を開始するために電極を使用するソースとは対照的に,チャンバの形状を最適化し,チャンバ内の対流ガス流の乱流を減らし,光学収差を最小限に抑え、プラズマ放射収集の空間角度を大きくすることができる。
【0107】
概略的に,特許請求される発明は,レーザー励起プラズマ放射源の輝度を増加させ,高い安定性を確保することを可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0108】
この発明により作られた高輝度で非常に安定したレーザー励起光源は,分光測光法およびその他の目的のためのプロセスのために,分光化学分析,生物学および医学における生物学的対象のスペクトル微量分析,マイクロキャピラリー液体クロマトグラフィー,光リソグラフィーの検査のために、さまざまな投影システムで使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9