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特許7430365ペダル装置、及びペダル装置を具備する自動車
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  • 特許-ペダル装置、及びペダル装置を具備する自動車 図1
  • 特許-ペダル装置、及びペダル装置を具備する自動車 図2
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  • 特許-ペダル装置、及びペダル装置を具備する自動車 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】ペダル装置、及びペダル装置を具備する自動車
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
B60K26/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024000006
(22)【出願日】2024-01-02
【審査請求日】2024-01-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593012963
【氏名又は名称】村上 博
(74)【代理人】
【識別番号】100205626
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博
(72)【発明者】
【氏名】村上 博
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229162(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103597420(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116215228(CN,A)
【文献】特開2021-8252(JP,A)
【文献】特開2018-203163(JP,A)
【文献】特開2023-75958(JP,A)
【文献】特開2012-183870(JP,A)
【文献】特開昭61-23837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が動力出力調整装置に連結する第1リンクと、
一端が前記第1リンクの他端に取り付けられ、前記第1リンクに対して踏み込み方向に回動可能に、かつ前記第1リンクに対する接続部分の位置が前記第1リンクの延伸方向に沿って変位可能に連結される第2リンクと、
一端が前記第2リンクの他端に取り付けられ、前記第2リンクに対して踏み込み方向とは逆方向に回動可能に連結される第3リンクと、
前記第2リンクを踏み込み方向とは逆方向に付勢する第1弾性部と、
付勢される前記第2リンクが初期状態を超えて前記第1弾性部の付勢方向に回動することを規制する第1ストッパと、
前記第3リンクを踏み込み方向に付勢する第2弾性部と、
付勢される前記第3リンクが初期状態を超えて前記第2弾性部の付勢方向に回動することを規制する第2ストッパと、
を備えるペダル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のペダル装置を具備する自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の運転者は高齢者が多くなり、特にアクセルペダルとブレーキペダルとを踏み間違えることにより、重大な事故が起きている。このため、アクセルペダルとブレーキペダルとの踏み間違えによる事故を防止するために様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1。)
【0003】
しかしながら、これらの技術は構造が複雑であったり、エンジンやモータの出力などを電子制御する自動車にしか適用できないものであったりするため、そのコストや導入対象につき種々の困難があり、広く実用化されるに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6592642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、踏み間違えや過剰な力による踏み込みによる事故を安価に防止できるペダル装置を提供することである。
【0006】
なお、上記の「背景技術」、および「発明が解決しようとする課題」に記載した内容は、本発明をするに至った契機(きっかけ)を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、また、本発明の技術的範囲の限定解釈を許容するものでもない(平成17年(行ケ)第10042号、及び出願日における特許庁審査基準第II部第2章 第2節3.2.1参照。)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一端が動力出力調整装置に連結する第1リンクと、一端が前記第1リンクの他端に取り付けられ、前記第1リンクに対して踏み込み方向に回動可能に、かつ前記第1リンクに対する接続部分の位置が前記第1リンクの延伸方向に沿って変位可能に連結される第2リンクと、一端が前記第2リンクの他端に取り付けられ、前記第2リンクに対して踏み込み方向とは逆方向に回動可能に連結される第3リンクと、前記第2リンクを踏み込み方向とは逆方向に付勢する第1弾性部と、付勢される前記第2リンクが初期状態を超えて前記第1弾性部の付勢方向に回動することを規制する第1ストッパと、前記第3リンクを踏み込み方向に付勢する第2弾性部と、付勢される前記第3リンクが初期状態を超えて前記第2弾性部の付勢方向に回動することを規制する第2ストッパと、
を備えるペダル装置を提供する。






【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、踏み間違えや過剰な力による踏み込みによる事故を安価に防止できるペダル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ペダル装置の側面図である。
図2】ペダル装置の分解側面図である。
図3】ペダル装置の平面図である。
図4】ペダル装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係るペダル装置1を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
まず、踏み間違えや過剰な力による踏み込みによる事故について検討する。多くの踏み間違え事故の場合、運転者は自分が運転している自動車を止めようとして、ブレーキペダルと思って踏み間違えたアクセルペダルを思い切り強く踏み込んでいる。このため、踏み間違え事故はかなりの速度やエネルギーによる重大な事故につながっている。
【0012】
一方、運転者は自分が踏んでいるペダルがアクセルペダルであると認識している場合、アクセルペダルを思い切り強く踏み込むことは稀である。
【0013】
この点を考慮すると、ゆるく踏み込んだ場合にはフルスロットル状態にまで踏み込めるが、思い切り強く踏み込んだ場合にはフルスロットル状態にならないような機構をペダル装置に組み込めば、重大な事故はかなり防げることになる。
【0014】
(ペダル装置)
図1は、本実施形態に係るペダル装置1の側面図である。図2は、ペダル装置1の分解側面図である。図3は、ペダル装置1の平面図である。
【0015】
図1から図3に示すように、ペダル装置1は、第1リンク10と、第2リンク20と、第3リンク30と、第1弾性部SP1と、第2弾性部SP2と、を備える。
【0016】
第1リンク10は、一端が自動車等の動力出力を調整する動力出力調整装置に連結し、他端が第2リンク20に連結する。つまり、第1リンク10の一端は、従来アクセルペダルが接続していた機構に、従来のアクセルペダルの代わりに連結される。
【0017】
第1リンク10は、他端に第1リンク10の側面を厚み方向に貫通し、第1リンク10の延伸方向に沿って長く伸びる第1連結孔11を有する。
【0018】
第2リンク20は、両端にそれぞれ第2リンク20の側面を厚み方向に貫通する第1貫通孔23及び第2貫通孔24を有する。第2リンク20は、第1リンク10の他端の第1連結孔11と、第2リンク20の第1貫通孔23に挿通される第1連結ピン21によって、第1リンク10に対して回動可能に、かつ第2リンク20の第1リンク10に対する接続部分である第1連結ピン21の第1連結孔11における位置が第1リンク10の延伸方向に沿って変位可能に連結される。
【0019】
第3リンク30は、一端に第3リンク30の側面を厚み方向に貫通する第2連結孔32を有し、他端に足を載せるフットパッド31を有する。
【0020】
第3リンク30は、第2リンク20の他端の第2貫通孔24と、第3リンク30の第2連結孔32に挿通される第2連結ピン22によって、第2リンク20に対して回動可能に連結される。
【0021】
第1リンク10と第2リンク20とは、第1リンク10と第2リンク20とを直線状になるように、ないしペダル装置1の初期状態になるように、第2リンク20をペダル装置1の踏み込み方向とは逆方向に付勢する第1弾性部SP1と、付勢される第2リンク20がペダル装置1の初期状態を超えて第1弾性部SP1の付勢方向に回動することを規制する第1ストッパST1と、を備える。
【0022】
第1弾性部SP1は、第1リンク10の上面、つまりペダル装置1の踏み込み方向とは逆方向の上端面に設置される第1ストッパST1よりもさらに上方に設置される第1係止部SP11と、第2リンク20の上面に設置される第2係止部SP12と、第1係止部SP11及び第2係止部12にかけ渡され、第1係止部SP11及び第2係止部SP12を近づけるように付勢するスプリングなどの第1弾性体SP13と、を備える。
【0023】
第1弾性体SP13の弾性力は、第1リンク10と第2リンク20とを初期状態、つまり直線状態に保つために必要な強さ以上であり、運転者がペダル装置1を思い切り踏み込んだ時に加わる力の強さより弱い。
【0024】
第1ストッパST1は、第2リンク20の方向の端部と第2連結ピン22における第2リンク20の回動中心BC2との距離L2が、回動中心BC2を回転中心とした場合の回動中心BC2から最も遠い第2係止部SP12の部分までの距離である第2半径D2の長さより大きくなるように設置される。
【0025】
従って、第2係止部SP12が回動中心BC2を回転中心として回動した場合でも、第2係止部SP12と第1ストッパST1とは物理干渉を起こさない。
【0026】
第2リンク20と第3リンク30とは、第2リンク20と第3リンク30とを直線状になるように、ないしペダル装置1の初期状態になるように、第3リンク30をペダル装置1の踏み込み方向に付勢する第2弾性部SP2と、付勢される第3リンク30がペダル装置1の初期状態を超えて第2弾性部SP2の付勢方向に回動することを規制する第2ストッパST2と、を備える。
【0027】
第2弾性部SP2は、第2リンク20の下面、つまりペダル装置1の踏み込み方向の下端面に設置される第2ストッパST2よりもさらに下方に設置される第3係止部SP22と、第3リンク30の下面に設置される第4係止部SP24と、第3係止部SP22及び第4係止部SP24にかけ渡され、第3係止部SP22及び第4係止部SP24を近づけるように付勢するスプリングなどの第2弾性体SP23と、を備える。
【0028】
第2弾性体SP23の弾性力は、第2リンク20と第3リンク30とを初期状態、つまり直線状態に保つために必要な強さ以上であり、運転者がペダル装置1を思い切り踏み込んだ時に加わる力の強さより弱い。
【0029】
第2ストッパST2は、第2リンク20の方向の端部と第1連結ピン21における第2リンク20の回動中心BC1との距離L1が、回動中心BC1を回転中心とした場合の回動中心BC1から最も遠い第3係止部SP22の部分までの距離である第1半径D1の長さより大きくなるように設置される。
【0030】
従って、第3係止部SP22が回動中心BC1を回転中心として回動した場合でも、第2係止部SP12と第2ストッパST2とは物理干渉を起こさない。
【0031】
図3に示すように、第1リンク10と第3リンク30とを、1本の第2リンク20をそれぞれ挟むように2本ずつ用いることができる。
【0032】
図4は、ペダル装置1の動作を示す図である。図4においては、見やすくするために第1弾性部SP1及び第2弾性部SP2の図示を省略してある。
【0033】
図4(A)に示すように、ペダル装置1の初期状態であるホームポジションにおいては、ペダル装置1は通常のアクセルペダルと同様に、直線状態となり、端部が踏みしろとして高さH1だけ床面Fより高くなる。
【0034】
図4(B)に示すように、運転者が自身の踏み込んでいるペダル装置がアクセルペダルであることを認識している場合、フルスロットルに踏み込んだ場合でも思いきり強くは踏み込まないため、第1弾性部SP1および第2弾性部SP2にはそれぞれの弾性力を上回る力は加わらない。従って、ペダル装置1はホームポジションと同様に直線状態を維持する。
【0035】
図4(C)に示すように、運転者が自身の踏み込んでいるペダル装置1が、実際はアクセルペダルであるにもかかわらず、ブレーキペダルであること誤認している場合、運転者は自動車を止めようとしてペダル装置1を矢印X1の方向に思い切り強く踏み込む。この場合、第1弾性部SP1および第2弾性部SP2にはそれぞれの弾性力を上回る力が加わる。従って、第2リンク20は折れ曲がるように変形する。
【0036】
そうすると、第1連結ピン21は矢印X1の方向に摺動して変位するとともに、矢印X2の方向に上がる。従って、第1リンク10はフルスロットルの状態よりもホームポジションにより近い状態に変位する。
【0037】
よって、ペダル装置1は、ゆるく踏み込んだ場合にはフルスロットル状態にまで踏み込めるが、思い切り強く踏み込んだ場合にはフルスロットル状態にならない。しかも、運転者がペダル装置1を踏み込む力を弱くすれば、ペダル装置1は初期状態に復元する。
【0038】
(ペダル装置を具備する自動車)
ペダル装置1を具備する自動車は、本実施形態のペダル装置1と、ペダル装置1が連結し、動力出力を調整する動力出力調整装置と、動力出力調整装置によって出力が調整される動力発生装置と、動力発生装置が発生させた動力によって回転する回転軸の回転を減速しながら伝達する動力伝達装置と、動力伝達装置から伝達された動力によって回転し、接地面との摩擦力によって移動力を生成する回転接地部材と、を備える。
【0039】
動力出力調整装置は、例えばキャブレター、電子燃料噴射装置など、エンジンの燃焼室に送り込まれる空気と混合させる燃料の量を調整する装置のほか、電動モータに印加される電圧のON/OFFデューティーを調整することにより、電動モータが生成する回転力を調整する装置などを含む。
【0040】
動力発生装置は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの可燃性液体燃料を用いる発動機のほか、交流電動モータ、直流電動モータなどの電動モータを含む。
【0041】
動力伝達装置は、いわゆる変速ギア装置を含む。
【0042】
回転接地部材は、タイヤ、キャタピラなどを含む。
【0043】
以上述べたように、本実施形態のペダル装置1は、一端が動力出力調整装置に連結する第1リンク10と、一端が第1リンク10に対して回動可能に、かつ第1リンク10に対する接続部分の位置が第1リンク10の延伸方向に沿って変位可能に連結される第2リンク20と、一端が第2リンク20に対して回動可能に連結される第3リンク30と、第2リンク20を踏み込み方向とは逆方向に付勢する第1弾性部SP1と、付勢される第2リンク20が初期状態を超えて第1弾性部SP1の付勢方向に回動することを規制する第1ストッパST1と、第3リンク30を踏み込み方向に付勢する第2弾性部SP2と、付勢される第3リンク30が初期状態を超えて第2弾性部SP2の付勢方向に回動することを規制する第2ストッパST2と、を備える。
【0044】
従って、本発明によれば、踏み間違えや過剰な力による踏み込みによる事故を安価に防止できるペダル装置1を提供することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0045】
1 ペダル装置
10 第1リンク
11 第1連結孔
12 第2係止部
20 第2リンク
21 第1連結ピン
22 第2連結ピン
23 第1貫通孔
24 第2貫通孔
30 第3リンク
31 フットパッド
32 第2連結孔
BC1 回動中心
BC2 回動中心
D1 第1半径
D2 第2半径
F 床面
SP1 第1弾性部
SP2 第2弾性部
SP11 第1係止部
SP12 第2係止部
SP13 第1弾性体
SP22 第3係止部
SP23 第2弾性体
SP24 第4係止部
ST1 第1ストッパ
ST2 第2ストッパ
【要約】
【課題】踏み間違えや過剰な力による踏み込みによる事故を安価に防止できるペダル装置を提供する。
【解決手段】ペダル装置1は、一端が動力出力調整装置に連結する第1リンク10と、一端が第1リンク10に対して回動可能に、かつ第1リンク10に対する接続部分の位置が第1リンク10の延伸方向に沿って変位可能に連結される第2リンク20と、一端が第2リンク20に対して回動可能に連結される第3リンク30と、第2リンク20を踏み込み方向とは逆方向に付勢する第1弾性部SP1と、付勢される第2リンク20が初期状態を超えて第1弾性部SP1の付勢方向に回動することを規制する第1ストッパST1と、第3リンク30を踏み込み方向に付勢する第2弾性部SP2と、付勢される第3リンク30が初期状態を超えて第2弾性部SP2の付勢方向に回動することを規制する第2ストッパST2と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4