(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】輸送箱
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
B65D77/04 B
(21)【出願番号】P 2019092016
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504416091
【氏名又は名称】ジャパンパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083127
【氏名又は名称】恒田 勇
(72)【発明者】
【氏名】長田 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】長田 光弘
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0210591(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0095711(US,A1)
【文献】特開2008-030776(JP,A)
【文献】実開平07-015564(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 69/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開閉される形式の箱体と、
内容物を、前記箱体の内部で包装するための包装シートと、
前記箱体の内面と前記包装シートとの間に介在して、前記包装シートを前記箱体に取り付ける接着部と、を備え、
前記接着部は、前記箱体の底面から立ち上がった胴部壁の内周面に、前記底面から高さ方向に距離をあけて設けられており、
前記包装シートは、前記接着部を介して、前記箱体の底面から高さ方向に距離をあけて前記箱体に取り付けられており、前記接着部を折り込みの起点として前記底面に置かれた前記内容物を覆
い、
前記接着部は、帯状に形成されており、隣接する複数の前記胴部壁にわたって前記箱体の周方向に延びている、
ことを特徴とする輸送箱。
【請求項2】
前記包装シートは、前記内容物を包む際に、前記箱体の周方向に延びた前記接着部に接着されて筒状に形成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の輸送箱。
【請求項3】
前記包装シートがクラフト紙である、
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の輸送箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、追加の緩衝材無しでも内容物を安全に輸送できるようにした輸送箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンの普及により通販が急激に利用されるようになった。これに伴い通販用の段ボール容器が多く使用されている。通販にはユーザーからの注文に応じ、種類やいろんな組合せが多いため、出荷に当たっては段ボールと内容物の間に隙間が変化して生じることが多いため、その時には隙間を幾つかの緩衝材で埋め、適数の緩衝材で内容物を固定し輸送していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、緩衝材は使用後の廃棄に手間が掛かるとともに、環境汚染等のごみ問題もあることが指摘されている。
【0004】
そこで、この発明は、追加の緩衝材を用いなくても、変化する多様な箱空間としての隙間にも対応でき、安全に内容物を支持して緩衝機能を期待できる輸送箱を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、この発明は、上部が開閉される形式の箱体と、内容物を、前記箱体の内部で包装するための包装シートと、前記箱体の内面と前記包装シートとの間に介在して、前記包装シートを前記箱体に取り付ける接着部と、を備え、前記接着部は、前記箱体の底面から立ち上がった胴部壁の内周面に、前記底面から高さ方向に距離をあけて設けられており、前記包装シートは、前記接着部を介して、前記箱体の底面から高さ方向に距離をあけて前記箱体に取り付けられており、前記接着部を折り込みの起点として前記底面に置かれた前記内容物を覆い、前記接着部は、帯状に形成されており、隣接する複数の前記胴部壁にわたって前記箱体の周方向に延びている、ことを特徴とする輸送箱を提供する。
【0006】
輸送箱を上記のように構成したから、これを使用するときには、箱体を開いて包装シートを引き出すようにして口開きながらその中に物品を入れて包み込む。この時必要があれば開いた口を閉じて接着し、あるいは粘着テープを張り付けて封じ止める。そうすると、周囲には本来ならば緩衝材を詰めることになる空間が存在するが、包装体で空間が均等に補充されるので内容物が転倒したり移動したりすることはなく、箱体の内面との間に空間が保持されることで、激しい動きの運送中にも内面と衝突することはなく、内容物の破損が安全に防止される。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、この発明の輸送箱によれば、内容物の大きさや形状、個数などに応じて広さと柔軟性で包装シートが対応し、内容物を箱内の空間に保持するので、追加で緩衝材を用いなくても、安全に物品を輸送できるため、追加で緩衝材を用いる費用が削減でき、消費者にとっては追加の緩衝材を処分する手数が省けるので好都合であり、最近多用されるようになった宅配便としての利用も合理的であり簡便となるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の一実施例を示す緩衝材のいらない輸送箱の斜視図である。
【
図2】同輸送箱と包装シートとを同時に開く展開図である。
【
図3】同輸送箱の使用状態を示す正面から見た断面図である。
【
図5】同実施例における包装シートを示す平面説明図である。
【
図6】さらに他の実施例として包装箱と包装シートとを同時に開く展開図である。
【
図7】さらに他の実施例による緩衝材のいらない輸送箱を示す斜視図である。
【
図8】同実施例の輸送箱を示す側面から視た断面図である。
【
図10】さらに他の実施例を示す輸送箱の斜視図である。
【
図11】他の実施例であって、輸送箱と包装シートとを同時に開く展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明において、箱体1の型式および基材の材質などについては、箱として適合できれば特に限定するものではなく、型式では、A式、B式、C式及び打抜き組立箱形状等を適当なものとして挙げることができる。基材については、段ボールはもちろん、合板、プラスチック段ボールなどであり、段ボールとしては、AF,BF,EF,ABFなど、特に段ボールの種類は限定しない。合板では、紙製やプラスチック製がよい。プラスチック段ボール(プラダン)や気泡樹脂ボード(プラパール)、pp発砲ボード(Pボード)など、板状で折り曲がるものであれば特に限定しない。この場合、何回も使用できる通い箱としての使い方ができるのが好ましい。
【0010】
包装シート(被覆材)としては、クラフト紙、自己粘着紙、ストレッチフィルムが挙げられる。発泡ポリエチレンシート(商品名ミラマット等)、アルミ蒸着フィルム/発泡PE,エアーフォーム(商品名ブチブチ)やアルミ蒸着フィルムを張り合わせたもの等、その他シュリンクフィルム等ある。クラフト紙は、特にリサイクル性が優れているので好ましい。自己粘着紙は、粘着面同士が接着するので作業性が良い。ストレッチフィルム、フィルム、カラーフィルムなど、特にストレッチフィルムは包み込むだけで固定できるため粘着テープがいらなく特に好ましい。発泡シートでも蒸着フィルムのラミネート品は、断熱性に優れているので、保冷が必要な内容物に最適である。さらにこれらの素材にエンボス加工したものなど被覆できるものであれば特に限定しない。
【0011】
包装シートは、風呂敷の原理で、内容物の大小や形状に関わらず、自在に包み込むことができ、箱体の底面中央部に固着されているので、緩衝材がなくとも包装体が崩れることはない。そのため例えばA式タイプの小型ではコンパクトのため経済的であり、また、大きな容器サイズにも対応できる。
【0012】
利用分野については、宅配用の輸送箱として、あるいは、少量多品種の内容物の輸送箱として特に有用である。なお、箱体1と包装シート3との接着については、接着剤、粘着剤、ファスナーテープ等を使用できる(そのほか実施例6参照)。
【実施例1】
【0013】
図1ないし
図3は、一実施例を示したもので、緩衝材のいらない輸送箱Pは、段ボール製の箱体1と、風呂敷状に広さをもつ包装シート3との組み合わせとして構成され、両者の間に接着部5が介在している。
【0014】
図2は、接着部5で一体化した箱体1と包装シート3との同時展開図であって、箱体1は、中央部の底面壁7を中心として左右側壁9,9および前後面壁11,11が連設され、前後面壁11,11の両側に連結片13,13を有する。15,15は内フラップ、17,17は外フラップであって、これで天壁が構成される。底面壁7は展開の中央部に位置し、そのまた中央部に接着部5が位置するので、包装シート3の中心部をここに当てることにより組合せ位置が確定する(
図2)。
【0015】
図示の如く、箱体1と包装シート3とが重なる展開図であるので、組立てが容易であり、接着部5を中心とする均等性から、この状態において、箱体1を普通の手順において組み立てるとともに、包装シート3をその中に納めることができる。使用に供する時点としての商品化時点は、この段階である(
図1)。若しくは展開図の段階である(
図2)。
【0016】
図3は、輸送時の使用形態を示したもので、これを
図1の製品段階から説明すると、図示の如く包装シート3を開放的に開き、中心部に接着部5の位置でシート上に内容物4を置き、周囲の四隅角片3aを折り込んで、重なりを粘着テープ10で止める。ピン止め等でもよく止め方はこれに限らない。
【0017】
粘着テープ10で止めて包装シート3で内容物4が固定されると。箱体1との間に有する空間19が一定に保持される。
【実施例2】
【0018】
図4、
図5はB式段ボール箱について実施したもので、箱体1は、底面壁7および蓋壁8がそれぞれ一枚壁である。包装シート3は、左右に分けて折畳8a,8aとなっており、中央部に底面壁7との接着部5が設けられる。使用においては左右にシートが広がるので(
図5参照)真ん中に内容物を置いて左右交互に閉じられる。
【実施例3】
【0019】
図6はさらに別の実施例を示したもので、実施例1のものとは共通し、底面壁7の上に接着部5を介して包装シート3を保有しているが、包装シート3の上には緩衝床30を敷設した。理由は、機械部品や精密機器、ガラス製品等の壊れやすいものを輸送する際、これらの内容物32の下に緩衝床30が敷かれていると、包装シート3で同じように包む込むことで破損防止に万全を期すことができたことによる。緩衝床30としては、エアーキャップや発泡スチロール等が挙げられる。
【実施例4】
【0020】
図7ないし
図9は、A式段ボール箱において、別の実施例を示したもので、包装シート3を段ボール箱体1の胴部壁1aの内側に回しに形成し、底面壁7よりも上がった個所に沿って帯状に接着部6を設け、包装シート3を底面壁7よりも上げて接着し立ち上がり様に取り付けた(
図7)。なお、こうすると、前記実施例のものに比し立ち上がり分だけシート材料の節約となるとも考えられる。
【0021】
図8は、内容物4を梱包した使用状態を示したもので、全周にわたって包装シート3が折り込まれることにより乱雑な折り曲げの複合形態となり復元力を保有する弾性集合体10が形成されることになり、これが内容物4を包み込む結果、運搬中の衝撃が緩和されることになる。また、上に弾性集合体10と空間42が生じるため、外気の寒暖の差を受けがたい温度安定性がある。
【実施例5】
【0022】
図10は、身2aと蓋2bとからなる輸送箱1において実施したもので、胴体部に置けると同様に包装シート3が接着部6を介して立ち上がりに取り付けられる。
【実施例6】
【0023】
図11は、包装シート3が内容物を中央で包む広さであって、箱底面壁7の中央部に包装シート3の折り込みの起点となる接着部が形成されている場合について工夫したものであって、接着部が前記実施例とは違って、接着剤や粘着剤、ファスナーテープ等によってもよいが、この実施例では底面壁7と包装シート3との構造的結合関係によるものとした。つまり、箱底面壁7の中央には、仮想四角形の隅角に対応しL字型の切込み9,9,9、9を設けてあり、包装シート3の中央部裏面には切込み9に係る接着部片12が固着される。
【0024】
接着部片12は、例えばハガキ大の矩形であって、これは、前記の如く包装シート3の中央部に固着されており、現場において箱1に包装シート3を取りつける際に、接着剤を用いることなく、底面壁7に接着部片12をすり合わせるようにしてワンタッチで底面壁7に固着し接着部5ができるようになっている。なお、この発明においては、接着とは面接合による又はこれに近い固定手段を意味するものとする。
【符号の説明】
【0025】
P 緩衝材のいらない輸送箱
1 箱
1a 胴部壁
3 包装シート
4 内容物
5、6 接着部
7 底面壁
8 定着部
12 接着部片
30 緩衝床