(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】パック剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240205BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240205BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240205BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240205BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240205BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240205BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/08
A61K8/73
A61K8/31
A61Q19/00
A61K8/39
A61K8/06
(21)【出願番号】P 2019126409
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391027929
【氏名又は名称】三粧化研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 樹
(72)【発明者】
【氏名】畠中 克人
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193324(JP,A)
【文献】特表2017-537115(JP,A)
【文献】特開2013-121949(JP,A)
【文献】特開2015-196646(JP,A)
【文献】特表2005-535677(JP,A)
【文献】特開平10-245319(JP,A)
【文献】国際公開第2004/045565(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0234153(US,A1)
【文献】米国特許第06391288(US,B1)
【文献】特開2016-000763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増粘剤、油分、界面活性剤および、水からなる乳剤と、
アクリル酸アルキル共重合体エマルションと、
キサンタンガムと、を含有し、
粘度が3000mPa・s~30000mPa・sである、ピールオフタイプのパック
剤であって、
前記増粘剤は、ポリアクリル酸アミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13および、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、からなる群から選択される1以上であり、
前記アクリル酸アルキル共重合体エマルションは、アクリレーツコポリマー、(アクリ
レーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウ
ムからなる群から選択される1以上を含有
し、
前記アクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量は、20重量%~50重量%であることを特徴とするピールオフタイプのパック剤。
【請求項2】
前記油分は、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリイソブテン、イソヘキサデカン、オリーブ油および、ホホバ油からなる群から選択される1以上であることを特徴とする請求項1に記載のピールオフタイプのパック剤。
【請求項3】
前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7モル)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタンおよび、イソステアリン酸ソルビタンからなる群から選択される1以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のピールオフタイプのパック剤。
【請求項4】
前記乳剤の配合量は、2重量%~5重量%であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のピールオフタイプのパック剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パック剤に関する。より詳しくは、ピールオフタイプのパック剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧用、または美容用のパック剤として、顔、または体部の皮膚表面に塗布するものが知られている。
【0003】
このようなパック剤は、皮膚表面に密着させ、一定時間経ることで、保湿成分、美白成分および、薬効成分などを皮膚に浸透させることを目的としている。
【0004】
パック剤には、皮膚表面に塗布したあと、乾燥させて被膜化したものを剥がして除去するピールオフタイプと、水で洗い流して除去するウォッシュタイプがある。
【0005】
ピールオフタイプのパック剤は、皮膚に対する密閉性が高いため、発汗作用を利用して効率よく保湿成分などを浸透させることができるという利点がある。
【0006】
また被膜化したパック剤が、皮膚表面から1枚で剥がれることで、使用者は爽快感を得ることができる。
【0007】
このようなピールオフタイプのパック剤として、カルボキシビニルポリマーを配合することで、乾燥して皮膚表面で被膜化させるものが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献1のパック剤は、カルボキシビニルポリマーの配合によって被膜化させるため、パック剤を皮膚表面から剥がす際に、パック剤が皮膚表面と密着したままなので、刺激性を伴うという問題がある。
【0010】
さらにパック剤が皮膚表面と密着しているため、剥がしている途中でパック剤が破れたり、ちぎれたり、あるいはパック剤の一部が皮膚表面に残留したりするため、剥がしにくいという問題がある。そのため、パック剤が、皮膚表面から1枚で剥がれる爽快感を得ることができないことがあった。
【0011】
一方で剥がしやすいパック剤を提供するために、カルボキシビニルポリマーの配合を少なくした場合、塗布前のパック剤の粘度が低下し、皮膚表面からこぼれ落ちてしまうという問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、パック剤を乾燥させた後、水を浸透させることでパック剤と皮膚表面の密着性を低下させ刺激性が少なく、皮膚表面から1枚で剥がしやすい、ピールオフタイプのパック剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの態様に係るパック剤は、増粘剤、油分、界面活性剤および、水からなる乳剤と、アクリル酸アルキル共重合体エマルションと、キサンタンガムと、を含有し、粘度が3000mPa・s~30000mPa・sである、ピールオフタイプのパック剤であって、前記増粘剤は、ポリアクリル酸アミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13および、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、からなる群から選択される1以上であり、前記アクリル酸アルキル共重合体エマルションは、アクリレーツコポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウムからなる群から選択される1以上を含有し、前記アクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量は、20重量%~50重量%であることを特徴とするピールオフタイプのパック剤に関する。
【0014】
本発明の別の態様に係るパック剤は、前記油分は、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリイソブテン、イソヘキサデカン、オリーブ油および、ホホバ油からなる群から選択される1以上であることを特徴とするピールオフタイプのパック剤に関する。
【0015】
本発明の別の態様に係るパック剤は、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7モル)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタンおよび、イソステアリン酸ソルビタンからなる群から選択される1以上であることを特徴とするピールオフタイプのパック剤に関する。
【0016】
本発明の別の態様に係るパック剤は、前記乳剤の配合量は、2重量%~5重量%であることを特徴とするピールオフタイプのパック剤に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の1つの態様に係るパック剤によれば、パック剤は、増粘剤、油分、界面活性剤および、水からなる乳剤と、アクリル酸アルキル共重合体エマルションと、キサンタンガムと、を含有し、粘度が3000mPa・s~30000mPa・sである。よって十分な粘度を有するため、皮膚表面からこぼれ落ちることなく塗布することができる。
【0018】
さらに増粘剤、油分、界面活性剤および、水からなる乳剤を含有するため、パック剤が乾燥し被膜化した後、乳剤が水を吸収してふやけ、パック剤と皮膚表面の密着性を低下させ、剥がすことが容易になる。
【0019】
本発明において増粘剤は、ポリアクリル酸アミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13および、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマーからなる群から選択される1以上であってもよい。この態様によってパック剤が乾燥し被膜化した後、より水の吸収性がよく、ふやけやすいパック剤を提供できる。
【0020】
本発明において油分は、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリイソブテン、イソヘキサデカン、オリーブ油および、ホホバ油からなる群から選択される1以上であってもよい。これらの油分は、皮膚に対する浸透性が高く、皮膚の保湿性がより向上するパック剤の提供が可能である。加えて保湿性を高めることは、パック剤を皮膚表面から剥がす際の刺激性の低下も可能にする。
【0021】
本発明において界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7モル)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタンおよび、イソステアリン酸ソルビタンからなる群から選択される1以上であってもよい。これらは、優れた乳化効果、および可溶性を有し、かつ人体に対する毒性および、刺激性が極めて少ない物質であるため、好適に使用できる。
【0022】
本発明においてアクリル酸アルキル共重合体エマルションは、アクリレーツコポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウムおよび、(アクリレーツ/VA)コポリマーからなる群から選択される1以上を含有してもよい。これらのアクリル酸アルキル共重合体エマルションは、被膜形成剤として作用し、柔軟な被膜の形成を可能とする。
【0023】
本発明においてアクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量は、20重量%~50重量%であってもよい。この配合量の範囲とすることで、被膜化したときに、ベタツキがなく、皮膚表面と適切な密着性を有するパック剤を提供可能である。
【0024】
またパック剤を皮膚表面から剥がすために、水を吸収させたとき、上記の配合量の範囲であれば、パック剤は適度な強度を保ったままふやけるので、破れたり、ちぎれたり、あるいはパック剤の一部が皮膚表面に残留したりする虞をより低下させることができる。
【0025】
本発明において乳剤の配合量は、2重量%~5重量%である。この配合量の範囲とすることで、パック剤が適度に水を吸収してふやけるため、破れたり、ちぎれたり、あるいはパック剤の一部が皮膚表面に残留したりする虞をより低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るパック剤について詳述する。
【0027】
<1.乳剤>
本実施形態に係るパック剤は、乳剤を含有する。この乳剤は、増粘剤、油分、界面活性剤および、水を含有する。好ましくは、乳剤は、増粘剤、油分、界面活性剤および、水からなる。
【0028】
パック剤は、乳剤を含むことで、皮膚に水分および油分を提供できるものとなる。加えて、皮膚表面からの水分の蒸発を防止する保湿性を有するものとなる。
【0029】
乳剤は増粘剤を含むため、乾燥して被膜化する前のパック剤の粘度が増してクリーム状になる。そのためパック剤を皮膚表面に塗布するときに、溢れたり、垂れたりすることを防止できる。
【0030】
またこの増粘剤は、パック剤が乾燥して被膜化したときに、水を吸収してパック剤がふやけて皮膚表面と密着性を低下させることができる。
【0031】
本実施形態に係るパック剤は、皮膚表面に塗布したあとに、乾燥させて皮膚表面で皮膜させる。つづいてパック剤を皮膚表面から剥がすときに、パック剤に水または湯を吸収させることで破れたり、ちぎれたり、あるいはパック剤の一部が皮膚表面に残留したりすることがない。
【0032】
よって被膜化したパック剤が、皮膚表面から1枚で剥がれるので、使用者は爽快感を得ることができる。
【0033】
乳剤の増粘剤としては、ポリアクリル酸アミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、ポリアクリレート-13および、ポリアクリレートクロスポリマー-6からなる群から選択される1以上を使用することができる。
【0034】
より好ましくは乳剤の増粘剤は、ポリアクリル酸アミド、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、ポリアクリレート-13および、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマーからなる群から選択される1以上であればよい。
【0035】
これらの増粘剤は、パック剤が乾燥し被膜化した後、より水の吸収性がよく、ふやけやすいパック剤を提供できる。
【0036】
また、上記で例示した増粘剤は、皮膚への刺激性が少ないため、皮膚表面と密着するパック剤に好適に使用できる。
【0037】
乳剤は油分を含むため、パック剤が塗布された皮膚表面から水分が蒸発することを防止する。よってパック剤は、保湿性を有することができる。
【0038】
乳剤の油分は、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリイソブテン、イソヘキサデカン、オリーブ油および、ホホバ油からなる群から選択される1以上を使用することができる。
【0039】
これらの油分は、皮膚に対する浸透性が高く、皮膚の保湿性をより向上させるパック剤の提供が可能である。加えて保湿性を高めることは、パック剤を皮膚表面から剥がす際の刺激性の低下も可能にする。
【0040】
乳剤は界面活性剤を含むため、パック剤全体に油分を分散させて、保湿性を高めることができる。
【0041】
乳剤の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7モル)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタンおよび、PEG-7トリメチロールプロパンヤシ油アルキルエーテルからなる群から選択される1以上を使用することができる。
【0042】
さらに乳剤の界面活性剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(7モル)、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタンおよび、イソステアリン酸ソルビタンからなる群から選択される1以上であることがより好ましい。
【0043】
上記例示された界面活性剤は、優れた乳化効果、および可溶性を有するため、保湿性の向上に貢献する。さらに人体に対する毒性および、刺激性が極めて少ない物質であるため、皮膚表面と密着するパック剤に好適に使用できる。
【0044】
乳剤は、増粘剤、油分、および界面活性剤の他に、水を含む。
【0045】
パック剤全体に対する乳剤の配合量は、限定されないが、2重量%~5重量%であることが好ましい。
【0046】
パック剤全体に対する乳剤の配合量が、2重量%より少ない場合は、パック剤が乾燥して被膜化したときの水の吸収性が低下するため、パック剤が十分にふやけず、所望の皮膚表面との密着性の低下が得られない。また、パック剤が潤沢な保湿性を得ることができない。
【0047】
パック剤全体に対する乳剤の配合量が、5重量%より多い場合は、パック剤が乾燥して被膜化したとき、パック剤が過度に水を吸収するため、パック剤が皮膚表面から溢れたり、垂れたりする虞が増す。
【0048】
したがって、パック剤全体に対する乳剤の配合量を上記の範囲とすることで、パック剤が適度に水を吸収してふやけるため、破れたり、ちぎれたり、あるいはパック剤の一部が皮膚表面に残留したりする虞をより低下させることができる。
【0049】
<2.アクリル酸アルキル共重合体エマルション>
本実施形態に係るパック剤は、アクリル酸アルキル共重合体エマルションを含有する。
【0050】
アクリル酸アルキル共重合体エマルションは、アクリル酸アルキル(C1~C4および、C8)、メタクリル酸アルキル(C1~C4および、C8)、アクリル酸、またはメタクリル酸の2以上のモノマーを主として、構成される共重合体のエマルションである。
【0051】
アクリル酸アルキル共重合体エマルションは、水溶性であり乾燥すると被膜化する被膜形成剤である。したがって、パック剤は、皮膚表面に塗布したあと、乾燥させることで被膜化する。
【0052】
アクリル酸アルキル共重合体エマルションは、アクリレーツコポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウム、(アクリレーツ/VA)コポリマーおよび、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマーからなる群から選択される1以上を使用することができる。
【0053】
さらにアクリル酸アルキル共重合体エマルションは、アクリレーツコポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、アクリレーツコポリマーアンモニウムおよび、(アクリレーツ/VA)コポリマーからなる群から選択される1以上を含有することがより好ましい。
【0054】
アクリル酸アルキル共重合体エマルションが、上記で例示された成分を含むことで、皮膚表面で柔らかな被膜を形成することができる。またこれらの成分は、皮膚刺激性、および皮膚感作性が低いため、皮膚表面と密着するパック剤に好適に使用できる。
【0055】
パック剤全体に対するアクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量は、限定されないが、20重量%~50重量%であることが好ましい。
【0056】
パック剤全体に対するアクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量が、20重量%より少ない場合は、被膜の強度が低下する。
【0057】
アクリル酸アルキル共重合体エマルションは、増粘剤としての作用も有する。したがって、パック剤全体に対するアクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量が、50重量%より多い場合は、パック剤の粘度が過度になり、皮膚表面へのパック剤の塗布が困難になる。また乾燥して被膜化したとき、パック剤表面のベタツキが増すため使用感の低下を招く。
【0058】
したがって、アクリル酸アルキル共重合体エマルションの配合量を上記の範囲とすることで、被膜化したときに、ベタツキがなく、皮膚表面と適切な密着性を有するパック剤を提供可能である。
【0059】
またパック剤を皮膚表面から剥がすために、水を吸収させたとき、上記の配合量の範囲であれば、パック剤は適度な強度を保ったままふやけるので、破れたり、ちぎれたり、あるいはパック剤の一部が皮膚表面に残留したりする虞をより低下させることができる。
【0060】
<3.キサンタンガム>
本実施形態に係るパック剤は、キサンタンガムを含有する。
【0061】
キサンタンガムは人体への毒性がなく、水に溶解すると粘性を示す。よって、パック剤を所望の粘度に調整するために適量を配合する。
【0062】
キサンタンガムの配合量は、限定されないが、0.01重量%~3.0重量%が好ましい。0.01重量%より少ないとキサンタンガムによる粘度の向上が期待できない。3.0重量%より多く配合しても、キサンタンガムによる粘度の向上は、ほぼ頭打ちになる。
【0063】
<4.その他の含有成分>
本実施形態に係るパック剤は、上記構成成分の他に必要に応じて、一般的に化粧料に配合される各種成分等を含み得る。
【0064】
本実施形態に係るパック剤は、美白成分を含んでもよい。美白成分として、限定されないが、ビタミンC及びその誘導体、アルブチン、プラセンタエキス、ハイドロキノン、エラグ酸、ルシノール、リノール酸、コウジ酸、トラネキサム酸等が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係るパック剤は、保湿剤および/またはエモリエント剤をさらに含んでもよい。保湿剤および/またはエモリエント剤として、限定されないが、濃グリセリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、コラーゲン、プラセンタエキス、加水分解コラーゲン、1,3ブチレングリコール、パルミチン酸2-エチルへキシル等が挙げられる。
【0066】
本実施形態に係るパック剤は、アルコールを含んでもよい。アルコールは、親水性および、疎水性の両方の性質を有する。したがって、アルコールを含有することで、親水性および、疎水性の成分を同時に溶解することが可能になる。アルコールとして、限定されないが、エタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコール、無水エタノール等が挙げられる。
【0067】
本実施形態に係るパック剤は、抗炎症剤を含んでもよい。抗炎症剤を含むことで皮膚の炎症を抑えることができ、肌荒れを防止できる。皮膚の炎症および、肌荒れを防止することで、パック剤を剥がすときの刺激性を低下させることができる。抗炎症剤として、限定されないが、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、グリチルレチン酸ステアリル等が挙げられる。
【0068】
その他に、本実施形態に係るパック剤は、抗菌剤、洗浄剤、着色剤、香料、ビタミン類、植物エキスなどを適宜含んでもよい。
【0069】
<4.粘度>
本実施形態に係るパック剤は、粘度が3000mPa・s~30000mPa・sである。
【0070】
粘度が、3000mPa・sより低い場合は、パック剤を塗布したときに、皮膚表面から溢れたり、垂れたりする虞が増す。また粘度が低いと、皮膚表面にパック剤に厚みを持たせて塗布することができない。
【0071】
したがって、皮膚に対する十分な密閉性を有するパック剤を提供することができず、また皮膚表面から剥がすときに、パック剤が薄いため破れたり、ちぎれたり、あるいはパック剤の一部が皮膚表面に残留したりする虞が増す。
【0072】
粘度が、30000mPa・sより高い場合は、皮膚表面に塗布するときに、抵抗が大きくなり使用感が低下する。また厚みにムラができ、例えば、パック剤が美白成分を含有する場合など、肌に色ムラができるなどする虞が増す。
【0073】
さらに粘度の高いパック剤は、水を吸収してふやけたときに、皮膚との密着性が十分に低下せず、剥がすときに刺激性を有する。
【0074】
したがって、パック剤の粘度を上記の範囲とすることで、パック剤を乾燥させた後、水を浸透させることでパック剤と皮膚表面の密着性を低下させ刺激性が少なく剥がしやすいパック剤を提供することが可能となる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明にかかる好適な実施例を例示するが、本発明はこの実施例に限定されて理解されるべきではない。
【0076】
<実施例1>
パック剤の調整
【0077】
(処方例の調整)
以下の表1~8で示される配合例に従い、本発明の実施形態に係る処方例1~8のパック剤を得た。調整したパック剤の粘度を測定し、測定した粘度も表1~8に同時に示す。
【0078】
(処方例1)
処方例1の各成分の配合量は、以下の表1で示されるとおりである。なお処方例1では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表1には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0079】
【0080】
(処方例2)
処方例2の各成分の配合量は、以下の表2で示されるとおりである。なお処方例2では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表2には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0081】
【0082】
(処方例3)
処方例3の各成分の配合量は、以下の表3で示されるとおりである。なお処方例3では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表3には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0083】
【0084】
(処方例4)
処方例4の各成分の配合量は、以下の表4で示されるとおりである。なお処方例4では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表4には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0085】
【0086】
(処方例5)
処方例5の各成分の配合量は、以下の表5で示されるとおりである。なお処方例5では、乳剤としてSEPIGEL 305(株式会社成和化成製)を使用した。表5には、SEPIGEL 305の組成も同時に記載した。
【0087】
【0088】
(処方例6)
処方例6の各成分の配合量は、以下の表6で示されるとおりである。なお処方例6では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表6には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0089】
【0090】
(処方例7)
処方例7の各成分の配合量は、以下の表7で示されるとおりである。なお処方例7では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表7には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0091】
【0092】
(処方例8)
処方例8の各成分の配合量は、以下の表8で示されるとおりである。なお処方例8では、乳剤としてSEPIPLUS 400(株式会社成和化成製)を使用した。表8には、SEPIPLUS 400の組成も同時に記載した。
【0093】
【0094】
(比較例の調整)
以下の表9~15で示される配合例に従い、比較例1~7のパック剤を得た。調整したパック剤の粘度を測定し、測定した粘度も表9~15に同時に示す。
【0095】
(比較例1)
比較例1の各成分の配合量は、以下の表9で示されるとおりである。なお比較例1では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表9には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0096】
【0097】
(比較例2)
比較例2の各成分の配合量は、以下の表10で示されるとおりである。なお比較例2では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表10には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0098】
【0099】
(比較例3)
比較例3の各成分の配合量は、以下の表11で示されるとおりである。なお比較例3では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表11には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0100】
【0101】
(比較例4)
比較例4の各成分の配合量は、以下の表12で示されるとおりである。なお比較例4では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表12には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0102】
【0103】
(比較例5)
比較例5の各成分の配合量は、以下の表13で示されるとおりである。なお比較例5では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表13には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0104】
【0105】
(比較例6)
比較例6の各成分の配合量は、以下の表14で示されるとおりである。なお比較例6では、乳剤としてSIMULGEL NS(株式会社成和化成製)を使用した。表14には、SIMULGEL NSの組成も同時に記載した。
【0106】
【0107】
(比較例7)
比較例7の各成分の配合量は、以下の表15で示されるとおりである。なお比較例7では、乳剤としてSEPIPLUS 400(株式会社成和化成製)を使用した。表15には、SEPIPLUS 400の組成も同時に記載した。
【0108】
【0109】
<実施例2>
パック剤の使用評価試験
【0110】
被験者3名はパネラーとして評価試験に参加し、上記の処方例1~8および、比較例1~7のパック剤を使用して、その使用感を評価した。
【0111】
この評価試験におけるパック剤の使用方法としては、処方例1~8および、比較例1~7のパック剤を2mlとって、皮膚の上に塗布した。塗布したパック剤を10分間自然乾燥させて、被膜化させた。パック剤が十分に乾燥して被膜化したことを確認した後に、40℃の湯100mlをパック剤に吸収させてから、パック剤を皮膚表面から剥がした。
【0112】
上記のパック剤の使用において、I.パック剤の塗布時の評価、II.パック剤が乾燥して被膜化した時の評価、およびIII.パック剤を皮膚表面から剥がす時の評価、についてパネラーから回答を得た。パネラーが回答した評価結果を以下の表16~18に示す。
【0113】
(I.パック剤の塗布時の評価)
パック剤の塗布時の評価として、(a)皮膚表面からパック剤が溢れたり、垂れたりしないか、および(b)パック剤を塗布したときに、固さ、および/または皮膚表面との間に抵抗を感じないかについてそれぞれ3段階で評価し表16に示した。なお(a)、および(b)の評価基準を以下に示す。
【0114】
(a)皮膚表面からパック剤が溢れたり、垂れたりしないかの評価基準
3:塗布したパック剤の多くが溢れたり、垂れたりした
2:塗布したパック剤の一部が溢れたり、垂れたりした
1:塗布したパック剤はほぼ溢れたり、垂れたりすることはなかった
【0115】
(b)パック剤を塗布したときに、固さ、および/または皮膚表面との間に抵抗を感じないかの評価基準
3:固さ、および/または皮膚表面との間に抵抗を強く感じた
2:固さ、および/または皮膚表面との間に抵抗をやや感じた
1:固さ、および/または皮膚表面との間に抵抗をほぼ感じることはなかった
【0116】
【0117】
(II.パック剤が乾燥して被膜化した時の評価)
パック剤が乾燥して被膜化した時の評価として、(c)ベタツキがないか、および(d)パック剤の厚さおよび、密着性があるかについてそれぞれ3段階で評価し表17に示した。なお(c)、および(d)の評価基準を以下に示す。
【0118】
(c)ベタツキがないかの評価基準
3:パック剤の表面にベタツキを強く感じた
2:パック剤の表面にベタツキを少し感じた
1:パック剤の表面にベタツキはなく、サラサラしていた
【0119】
(d)パック剤の厚さおよび、密着性があるかの評価基準
3:厚みがなく、被膜が形成されたかわかりづらい
2:被膜が形成されたことがわかるが、厚みがない
1:厚みがあり、パック剤と皮膚表面との密着性も良好であった
【0120】
【0121】
(III.パック剤を皮膚表面から剥がす時の評価)
パック剤を皮膚表面から剥がす時の評価として、(e)破れ、ちぎれ、または皮膚表面に残留がないか、および(f)刺激性がないかについてそれぞれ3段階で評価し表21に示した。なお(e)、および(f)の評価基準を以下に示す。
【0122】
(e)破れ、ちぎれ、または皮膚表面に残留がないかの評価基準
3:破れ、ちぎれが多く剥がしにくい、またはバラバラになって剥がれた
2:破れ、ちぎれがやや発生し、パック剤の一部が皮膚表面に残留した
1:破れ、ちぎれがなく、パック剤が1枚で剥がれた
【0123】
(f)刺激性がないかの評価基準
3:剥がす時に強い刺激性があった
2:剥がす時にやや刺激性があった
1:剥がす時に刺激性がほぼなかった
【0124】
【0125】
表16で示す如く、実施例1~8では、パック剤を皮膚表面に塗布するときに溢れたり、垂れたりすることなく、また固さ、および皮膚表面との間に抵抗を感じることなく使用できることがわかった。
【0126】
比較例1、4、6および7のように粘度が低いものは、溢れたり、垂れたりして使用する上で問題があった。一方で、比較例3のように粘度が高いものは、固さ、および/または皮膚表面との間に抵抗を感じ、塗りムラ等の使用感の低下が見られた。
【0127】
表17で示す如く、実施例1~8では、パック剤を被膜化したときにパック剤表面にベタツキがなく、さらにパック剤の厚さおよび、密着性も十分であった。
【0128】
一方で、比較例1、2、3および6ではパック剤表面にベタツキが生じた。それによって衣服の繊維が付着して使用者に不快感を与えることがわかった。また比較例1、4および7では、被膜化したパック剤がどこに塗布されたか分かりづらく、使用実感が得られにくいものであった。さらに湯をすすぎかける際に、パック剤の位置が判別しにくいことがわかった。
【0129】
表18で示す如く、実施例1~8では、パック剤を剥がすときに破れ、ちぎれがなく、パック剤が1枚で剥がれた。また刺激性も少なく剥がしやすいものであった。そのため、パック剤を剥がすときに、使用者は爽快感を得られ好評であった。
【0130】
比較例1、2および、4~7では、剥がしているときに破れたり、ちぎれたりして剥がしにくいものであった。中には剥がす時にバラバラになって、パック剤が1枚でキレイに剥がれたときの爽快感が得られず不評であった。比較例1、2および7では、パック剤を皮膚表面から剥がすときに、指でこすらないと剥がれないため、刺激性および、肌への負担が強く、使用者が剥がすことをためらうものであった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、パック剤を乾燥させた後、水を浸透させることでパック剤と皮膚表面の密着性を低下させ刺激性が少なく、皮膚表面から1枚で剥がしやすい、ピールオフタイプのパック剤を提供することができる。