(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】診療支援システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20240205BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G16H50/20
A61B5/00 G
(21)【出願番号】P 2019208686
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】319004663
【氏名又は名称】株式会社Smart119
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】山尾 恭生
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508532(JP,A)
【文献】特開2017-102797(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111618(WO,A1)
【文献】特開2019-021179(JP,A)
【文献】特開2019-170851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療を支援する診療支援システムであって,
前記診療支援システムは,
生理学的情報モニタの画面を撮影した画像情報および/または血液検査結果を撮影した画像情報と,医療従事者の発話音声情報との入力を受け付ける情報入力受付処理部と,
前記入力を受け付けた画像情報
と発話音声情報
とをテキスト化するテキスト化処理部と,
前記テキスト化したテキストデータに基づいて,あらかじめ定められた二以上の重症度評価スコアリング手法を用いてスコアを算出するスコアリング処理部と,
前記算出したスコアを出力する出力処理部と,を有
しており,
前記スコアリング処理部は,
前記テキストデータから,前記重症度評価スコアリング手法における指標を意味するテキストを特定し,前記特定した指標を意味するテキストに対応する値のテキストを特定し,
前記特定した指標を意味するテキストに対応する値を用いてスコアを算出する,
ことを特徴とする診療支援システム。
【請求項2】
前記情報入力受付処理部は,
前記医療従事者が発話すべき音声情報のうち
,前記重症度評価スコアリング手法で用いる指標であって,前記生理学的情報モニタおよび/または前記血液検査結果にはない指標について問いかける音声を出力する,
ことを特徴とする請求項1に記載の診療支援システム。
【請求項3】
前記スコアリング処理部は,
SOFA,Quick SOFA,EWSのうちいずれか二以上の重症度評価スコアリング手法を用いる,
ことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の診療支援システム。
【請求項4】
コンピュータを,
生理学的情報モニタの画面を撮影した画像情報および/または血液検査結果を撮影した画像情報と,医療従事者の発話音声情報との入力を受け付ける情報入力受付処理部,
前記入力を受け付けた画像情報
と発話音声情報
とをテキスト化するテキスト化処理部,
前記テキスト化したテキストデータに基づいて,あらかじめ定められた二以上の重症度評価スコアリング手法を用いてスコアを算出するスコアリング処理部,
前記算出したスコアを出力する出力処理部,
として機能させる診療支援プログラムであって,
前記スコアリング処理部は,
前記テキストデータから,前記重症度評価スコアリング手法における指標を意味するテキストを特定し,前記特定した指標を意味するテキストに対応する値のテキストを特定し,
前記特定した指標を意味するテキストに対応する値を用いてスコアを算出する,
ことを特徴とする診療支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,医療現場における診療を支援する診療支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場,とくに救急医療の現場では,患者の重症度を評価するため,重症度評価スコアリングと呼ばれる指標値がある。この重症度評価スコアリングは複数提唱されており,たとえば,「SOFA(sequntial organ failure assessment score)」,「Quick SOFA」,「EWS(Early Warning Score)」がある。
【0003】
これら重症度評価スコアリングを用いることで,そのスコアリングの観点からの患者の重症度の評価をすることができる。重症度評価スコアリングについては,たとえば下記非特許文献1に記載されている。
【0004】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】金子貴久,”重症度スコアの評価”,[online],インターネット<URL:https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/170221.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
重症度評価スコアリングは,患者の重症度を評価する指標値であるため有益ではあるものの,スコアリングをするためには各種の情報を入力しなければならず,多忙な医療現場では,その作業負担から実行されていない。また,保険診療では,一部のスコアリングの記録が要求されているため,その作業負担が必須となる場合もあるが,上述のように,作業負担が懸念されている。
【0007】
また迅速な診療が必要な敗血症,院内急変については,SOFA,Quick SOFA,EWSの3つのスコアが必要となる。これらの各スコアリングでは,共通する患者の情報もあり,それぞれ3つのスコアを別々に算出する場合,それぞれのスコアリングで同一の情報を複数回入力する負担が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は上記課題に鑑み,診療支援システムを発明した。
【0009】
第1の発明は,診療を支援する診療支援システムであって,前記診療支援システムは,生理学的情報モニタの画面を撮影した画像情報および/または血液検査結果を撮影した画像情報と,医療従事者の発話音声情報との入力を受け付ける情報入力受付処理部と,前記入力を受け付けた画像情報と発話音声情報とをテキスト化するテキスト化処理部と,前記テキスト化したテキストデータに基づいて,あらかじめ定められた二以上の重症度評価スコアリング手法を用いてスコアを算出するスコアリング処理部と,前記算出したスコアを出力する出力処理部と,を有しており,前記スコアリング処理部は,前記テキストデータから,前記重症度評価スコアリング手法における指標を意味するテキストを特定し,前記特定した指標を意味するテキストに対応する値のテキストを特定し,前記特定した指標を意味するテキストに対応する値を用いてスコアを算出する,診療支援システムである。
【0010】
本発明のように構成することで,医療従事者などは,生理学的情報モニタや血液検査結果を撮影し,また所定の事項を発話するだけで,複数の重症度評価スコアリング手法によるスコアを認識することができる。また,重症度評価スコアリング手法を算出するための作業負担を軽減し,また重複入力も回避することができる。
重症度評価スコアリング手法におけるスコアの算出には様々な方法があるが,本発明の方法を用いることで,医療従事者に作業負担をかけずにすむ。
【0013】
上述の発明において,前記情報入力受付処理部は,前記医療従事者が発話すべき音声情報のうち,前記重症度評価スコアリング手法で用いる指標であって,前記生理学的情報モニタおよび/または前記血液検査結果にはない指標について問いかける音声を出力する,診療支援システムのように構成することができる。
【0014】
発話音声に基づく発話音声情報のテキスト化は認識精度が課題となる。とくにどの発話音声情報が重症度評価スコアリング手法におけるどの指標に該当するかの対応づけにおいて,正確に対応関係を取れるかが課題となる。そこで,本発明のように問いかけを行うことで,対応関係を正確にとることができる。
【0015】
また,医療従事者は多忙のため,重症度評価スコアリング手法における指標について発話を失念する可能性があるが,本発明のように問いかけを行うことで,失念の可能性も防止できる。
【0016】
上述の発明において,前記スコアリング処理部は,SOFA,Quick SOFA,EWSのうちいずれか二以上の重症度評価スコアリング手法を用いる,診療支援システムのように構成することができる。
【0017】
院内急変,敗血症は,特に迅速な対応が求められる。そのため,これら2つに対応するため,本発明のような重症度評価スコアリング手法を用いることが好ましい。
【0018】
第1の発明の診療支援システムは,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現できる。すなわち,コンピュータを,生理学的情報モニタの画面を撮影した画像情報および/または血液検査結果を撮影した画像情報と,医療従事者の発話音声情報との入力を受け付ける情報入力受付処理部,前記入力を受け付けた画像情報と発話音声情報とをテキスト化するテキスト化処理部,前記テキスト化したテキストデータに基づいて,あらかじめ定められた二以上の重症度評価スコアリング手法を用いてスコアを算出するスコアリング処理部,前記算出したスコアを出力する出力処理部,として機能させる診療支援プログラムであって,前記スコアリング処理部は,前記テキストデータから,前記重症度評価スコアリング手法における指標を意味するテキストを特定し,前記特定した指標を意味するテキストに対応する値のテキストを特定し,前記特定した指標を意味するテキストに対応する値を用いてスコアを算出する,診療支援プログラムのように構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の診療支援システムを用いることで,多忙な医療現場であっても,その作業負担を軽減することができるため,重症度評価スコアリングの活用につなげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の診療支援システムの全体の構成の一例を模式的に示す概念図である。
【
図2】本発明の診療支援システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の診療支援システムにおける全体の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図4】重症度評価スコアリング手法の一つであるSOFAのスコアの算出方法を示す図である。
【
図5】重症度評価スコアリング手法の一つであるQuick SOFAのスコアの算出方法を示す図である。
【
図6】重症度評価スコアリング手法の一つであるEWSのスコアの算出方法を示す図である。
【
図7】本発明の診療支援システムを用いることで,情報の重複入力を回避できることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の診療支援システム1の全体の構成の一例を
図1に示す。また,本発明の診療支援システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を
図2に示す。
【0022】
診療支援システム1は,管理コンピュータ2と撮影装置3と音声入力装置4とを用いる。
【0023】
管理コンピュータ2は,サーバやパーソナルコンピュータ,可搬型通信端末などのコンピュータによって実現される。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報の通信を行う通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には,入力装置73と表示装置72とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえばユーザ,救急隊員,医療機関の医師や看護師などの医療従事者,それらの支援者が利用するタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0024】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力が行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0025】
各コンピュータは一台でその機能が実現されていてもよいし,その機能が複数台によって実現されていてもよい。その場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0026】
さらに,本発明の診療支援システム1における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0027】
撮影装置3は,生理学的情報モニタおよび血液検査結果を撮影するデジタルカメラなどであり,たとえばスマートフォンなどの可搬型通信端末のデジタルカメラを用いることができる。
【0028】
生理学的情報モニタとは,患者のバイタルサインをモニタリングする装置であって,心電図,心拍数,脈拍数,血圧(拡張期血圧,収縮期血圧),体温,呼吸数,SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度),などのバイタルサインを継続的に測定し,記録する装置である。生理学的情報モニタは,生体情報モニタなどと呼ばれることもある。
【0029】
血液検査結果は,患者の血液検査結果を表示する装置または印刷物であって,少なくとも,動脈血液ガス分析結果(PaO2/FiO2),血小板数,ビリルビン値,クレアチニン値などが記載されているが,これらに限定するものではない。
【0030】
音声入力装置4は,医師や看護師,救急隊員などの医療従事者による発話音声の入力を受け付ける装置であって,いわゆるマイクである。撮影装置3として可搬型通信端末を用いている場合,音声入力装置4として可搬型通信端末のマイクを用いてもよい。音声入力装置4は,たとえば,医療従事者による患者の意識レベル(GCSなど),酸素投与量などの発話音声を受け付け,それを音声情報として後述する管理コンピュータ2に送る。
【0031】
管理コンピュータ2は,情報入力受付処理部20と入力情報記憶部21とテキスト化処理部22とスコアリング処理部23とスコア記憶部24と出力処理部25とを有する。また,管理コンピュータ2と,撮影装置3,音声入力装置4とが一つのスマートフォンなどの可搬型通信端末で構成されていてもよい。
【0032】
情報入力受付処理部20は,生理学的情報モニタの画面を撮影装置3で撮影した画像情報および/または血液検査結果を表示する画面または印刷物を撮影装置3で撮影した画像情報の入力を受け付ける。受け付けた各画像情報は,患者を識別する患者識別情報(氏名や患者の番号など)に対応づけて,入力情報記憶部21に記憶させる。また,医療従事者の発話音声の発話音声情報を音声入力装置4から入力を受け付ける。たとえば,意識レベル(GCSなど)や酸素投与量の発話音声情報の入力を受け付ける。入力を受け付けた発話音声情報は,患者識別情報に対応づけて入力情報記憶部21に記憶させる。
【0033】
情報入力受付処理部20は,患者識別情報の入力をあらかじめ入力受け付けていてもよいし,たとえば音声入力装置4で入力を受け付けてもよいし,後述するテキスト化処理部22でテキスト化した患者識別情報を用いてもよい。
【0034】
また後述するスコアリング処理部23において重症度評価スコアリング手法でスコアを算出するために必要な指標について,医療従事者が発話を失念する可能性がある。そのため,情報入力受付処理部20は,「患者の意識レベルは?」,「酸素投与しましたか?」のように問いかけの音声を出力し,それに対する発話音声情報を音声入力装置4で集音してもよい。問いかけとして出力する音声は,後述のスコアリング処理部23における重症度評価スコアリング手法で用いる指標であって,生理学的情報モニタ,血液検査結果にはない指標について,問いかけを行うことがよい。
【0035】
入力情報記憶部21は,情報入力受付処理部20で入力を受け付けた画像情報,発話音声情報を,患者識別情報に対応づけて記憶する。
【0036】
テキスト化処理部22は,入力情報記憶部21に記憶した画像情報,発話音声情報をそれぞれテキスト化する。テキスト化する場合,画像情報についてはOCR認識処理などを行い,発話音声情報は音声解析処理を行う。また,深層学習(ディープラーニング)を用いてテキスト化する処理を実行してもよい。この場合,中間層が多数の層からなるニューラルネットワークの各層のニューロン間の重み付け係数が最適化された学習モデルに対して,上述の画像情報,発話音声情報を入力し,その出力値としてテキスト化したテキストデータを得る。学習モデルとしては,さまざまな画像情報とそれをテキスト化したテキストデータ,発話音声情報とそれをテキスト化したテキストデータを正解データとして与えたものを用いることができる。深層学習を用いる場合,テキスト化処理部22は,深層学習の処理を実行するサーバに対して画像情報,発話音声情報を送り,当該サーバからテキスト化したテキストデータを受け取ることでテキスト化処理を実行してもよい。
【0037】
スコアリング処理部23は,テキスト化処理部22において画像情報に基づいてテキスト化したテキストデータ,発話音声情報に基づいてテキスト化したテキストデータに基づいて,あらかじめ定めたスコアリングする重症度評価スコアリング手法で用いる指標のテキストに対応する値のテキストを特定し,特定した値に基づいて,それぞれの重症度評価スコアリング手法に基づくスコアリングを実行する。
【0038】
たとえば重症度評価スコアリング手法として,SOFA,Quick SOFA,EWSを用いる場合,以下のような値を特定する。
【0039】
SOFAの場合,動脈血液ガス分析結果(PaO
2/FiO
2),血小板数,ビリルビン値,血圧,意識レベル(GCS),クレアチニン値を用いて,
図4に示すようにスコアリングを実行するので,画像情報に基づいてテキスト化したテキストデータ,発話音声情報に基づいてテキスト化したテキストデータから,それぞれ対応する値を特定する。これは,血液検査結果を撮影した画像情報に基づくテキストデータから,動脈血液ガス分析結果(PaO
2/FiO
2),血小板数,ビリルビン値,クレアチニン値を意味するテキストを特定し,それに対応するテキストをそれぞれの値として特定する。また,生理学的情報モニタを撮影した画像情報に基づくテキストデータから血圧を意味するテキストを特定し,それに対応するテキストを値として特定する。さらに発話音声情報に基づくテキストデータから,意識レベル(GCS)を意味するテキストを特定し,それに対応するテキストを値として特定する。そして,
図4に基づいてスコアリングを実行する。
【0040】
またQuick SOFAの場合,呼吸数,意識レベル(GCS),収縮期血圧を用いて,
図5に示すようにスコアリングを実行するので,画像情報に基づいてテキスト化したテキストデータ,発話音声情報に基づいてテキスト化したテキストデータから,それぞれ対応する値を特定する。これは,生理学的情報モニタを撮影した画像情報に基づくテキストデータから呼吸数,収縮期血圧を意味するテキストを特定し,それらに対応するテキストを値として特定する。さらに発話音声情報に基づくテキストデータから,意識レベル(GCS)を意味するテキストを特定し,それに対応するテキストを値として特定する。そして,
図5に基づいてスコアリングを実行する。
【0041】
また,EWSの場合,呼吸数,経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2),酸素投与の有無,体温,収縮期血圧,心拍数,GCSを用いて,
図6に示すようにスコアリングを実行するので,画像情報に基づいてテキスト化したテキストデータ,発話音声情報に基づいてテキスト化したテキストデータから,それぞれ対応する値を特定する。これは,生理学的情報モニタを撮影した画像情報に基づくテキストデータから呼吸数,経皮的動脈血酸素飽和度(SpO
2),体温,収縮期血圧,心拍数を意味するテキストを特定し,それらに対応するテキストを値として特定する。さらに発話音声情報に基づくテキストデータから,酸素投与の有無,意識レベル(GCS)を意味するテキストを特定し,それに対応するテキストを値として特定する。そして,
図6に基づいてスコアリングを実行する。
【0042】
各スコアリングに必要な情報の種類数は,
図7に示すようになっており,このうち重複は5種ある。そのため,本発明のような処理を用いることで,重症度評価スコアリング手法において共通している情報の重複入力を減らし,入力の手間を削減することができる。
【0043】
スコアリング処理部23で算出した各重症度評価スコアリング手法に基づく各スコアは,患者識別情報に対応づけてスコア記憶部24に記憶させる。
【0044】
なお,上述では,重症度評価スコアリング手法としてSOFA,Quick SOFA,EWSを用いる例を説明したが,それに限定するものではなく,その目的に応じて,適宜,適切な重症度評価スコアリング手法を用いることができる。
【0045】
スコア記憶部24は,スコアリング処理部23で算出した各重症度評価スコアリング手法に基づく各スコアを,患者識別情報に対応づけてスコア記憶部24に記憶する。
【0046】
出力処理部25は,スコアリング算出処理部で算出した各重症度評価スコアリング手法に基づく各スコアを,所定の表示装置72などで出力をする。たとえば医療従事者が用いる可搬型通信端末などに表示をさせる。この可搬型通信端末は,撮影装置3,音声入力装置4として用いたスマートフォンなどであってもよい。
【0047】
本発明の診療支援システム1は,医療機関の内部,たとえばICU,処置室,病室などで用いられるほか,救急車やドクターカーなどの医療機関の外部で用いられてもよい。また,生理学的情報モニタ,血液検査結果の画面または印刷物の双方を撮影してもよいし,いずれか一方であってもよい。どのような重症度評価スコアリング手法を用いるかによっていずれかまたは双方を用いるかを,適宜,使い分ければよい。たとえば,重症度評価スコアリング手法としてSOFAを用いる場合には,生理学的情報モニタ,血液検査結果の画面または印刷物の双方を撮影して各画像情報を用いればよいし,Quick SOFA,EWSの場合には,生理学的情報モニタのみを撮影してその画像情報を用いればよい。
【0048】
つぎに本発明の診療支援システム1の処理プロセスの一例を
図3のフローチャートを用いて説明する。なお,以下の実施例では,管理コンピュータ2,撮影装置3,音声入力装置4はいずれも同一のスマートフォンで実現している場合であり,管理コンピュータ2における各処理は,スマートフォンにインストールされたアプリケーションソフトウェアにより実現される場合を説明する。
【0049】
本発明の診療支援システム1を用いる医療従事者は,スマートフォンで所定の操作を行うことで,診療支援システム1を実現するアプケーションソフトウェアを起動させる。そしてアプリケーションソフトウェアで所定の操作を行うことで,スマートフォンの撮影装置3で,患者に取り付けられた生理学的情報モニタを撮影し,また血液検査結果の画面または印刷物を撮影する(S100)。
【0050】
生理学的情報モニタを撮影した画像情報,血液検査結果の画面または印刷物を撮影した画像情報を,情報入力受付処理部20で受け付け(S110),患者識別情報に対応づけて入力情報記憶部21に記憶させる。
【0051】
また,医療従事者は,患者の意識レベル(GCSなど),酸素投与の有無などを発話し,それを当該スマートフォンの音声入力装置4で集音し,その発話音声情報を情報入力受付処理部20で受け付ける(S110)。画像情報と同様に,発話音声情報も患者識別情報に対応づけて入力情報記憶部21に記憶させる。
【0052】
なお,患者の意識レベル,酸素投与の有無などは,医療従事者が発話を失念することもあるので,情報入力受付処理部20が音声によって,「患者の意識レベルは?」,「酸素投与しましたか?」のように問いかけをし,それに対する発話音声情報を音声入力装置4で集音してもよい。この場合,意識レベルに対応する発話音声情報,酸素投与の有無に対する発話音声情報のように区別して情報を記憶させることができる。
【0053】
そして,テキスト化処理部22は,情報入力受付処理部20で入力を受け付けた画像情報,音声情報について,テキスト化処理を実行する(S120)。すなわち,テキスト化処理部22は,画像情報を,深層学習の処理を実行するサーバに対して送り,当該サーバからテキスト化したテキストデータを受け取る。また,テキスト化処理部22は,発話音声情報を,深層学習の処理を実行するサーバに対して送り,当該サーバからテキスト化したテキストデータを受け取る。
【0054】
このように算出したテキストデータに基づいて,スコアリング処理部23は,各重症度評価スコアリング手法で用いる値を特定し,特定した値に基づいて,それぞれの重症度評価スコアリング手法におけるスコアを算出する(S130)。たとえば,SOFA,Quick SOFA,EWSで用いる値を,テキスト化処理部22でテキスト化したテキストデータから特定し,特定した値に基づいて,SOFA,Quick SOFA,EWSのそれぞれにおけるスコアを算出する。なお,算出した各重症度評価スコアリング手法におけるスコアは,患者識別情報に対応づけてスコア記憶部24に記憶させる。
【0055】
そして,出力処理部25で,スコアリング処理部23で算出した各スコアを表示させる。たとえば,医療従事者が用いるスマートフォンに表示をさせる。
【0056】
以上のような処理を実行することで,医療従事者は,生理学的情報モニタ,血液検査結果を撮影し,また所定事項を発話するだけで,複数の手法による重症度評価スコアリングによるスコアを視認することができる。
【0057】
とくに重症度評価スコアリングとして,上述のSOFA,Quick SOFA,EWSを用いることで,院内急変,敗血症など,患者に対して迅速な処置をすることが求められる場合にそのスコアを算出することができ,診療の一助とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の診療支援システム1を用いることで,多忙な医療現場であっても,その作業負担を軽減することができるため,重症度評価スコアリングの活用につなげることができる。
【符号の説明】
【0059】
1:診療支援システム
2:管理コンピュータ
3:撮影装置
4:音声入力装置
20:情報入力受付処理部
21:入力情報記憶部
22:テキスト化処理部
23:スコアリング処理部
24:スコア記憶部
25:出力処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置