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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】バレル槽のバレル蓋着脱構造
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/02 20060101AFI20240205BHJP
   F16J 13/04 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
B24B31/02 Z
F16J13/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020027998
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021130181
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年(令和1年)10月2日~10月4日、 第22回関西機械要素技術展にて、河原 達樹が発明した「バレル槽のバレル蓋着脱構造」を展示した。
(73)【特許権者】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 達樹
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-175955(JP,U)
【文献】特開平05-253764(JP,A)
【文献】特開平03-019736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 31/00
F16J 13/04
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル本体と、
前記バレル本体の上面開口部を開閉し、バレル槽を構成するバレル蓋と、
軸線を上下方向に向けて前記バレル蓋に回転可能に支持されたボルトと、
前記ボルトの正逆両方向への回転により、前記バレル蓋を前記バレル本体に固定するロック位置と、前記バレル本体に対する前記バレル蓋の固定を解除するロック解除位置との間で変位するロック部材と、
下向きに突出する駆動軸を有し、昇降可能なナットランナーと、
前記駆動軸に取り付けられ、前記駆動軸の回転力を前記ボルトに伝達可能なソケットとを備え、
前記ソケットは、前記駆動軸に対して水平方向への揺動が可能であり、
前記駆動軸の外周面が、前記駆動軸を貫通する揺動軸と平行な一対の第1嵌合面と、前記揺動軸と交差する一対の第2嵌合面とを備えており、
前記ソケットには、前記一対の第1嵌合面及び前記一対の第2嵌合面と嵌合する方形断面の嵌合孔が形成され、
前記第1嵌合面と前記第2嵌合面は、前記ソケットの揺動時における干渉を回避可能なテーパ状に形成され、
前記ボルトの上端部と前記ソケットの下端部のうち少なくとも一方の端部には、前記ソケットと前記ボルトを嵌合状態に誘導するテーパ面が形成されているバレル槽のバレル蓋着脱構造。
【請求項2】
前記ソケットに形成され、前記揺動軸の両端部を上下方向への相対変位可能に嵌合させる長孔とを有している請求項1記載のバレル槽のバレル蓋着脱構造。
【請求項3】
前記ソケットの下端部と前記ボルトの上端部には、互いに嵌合することで前記ソケットの回転力を前記ボルトに伝達する非円形の連結部が形成され、
前記ソケットは、前記駆動軸に対して上下方向へ相対変位可能に取り付けられている請求項1又は請求項2記載のバレル槽のバレル蓋着脱構造。
【請求項4】
前記ナットランナーと前記ソケットとの間には、前記ソケットを下方へ付勢可能な連結用弾性部材が設けられている請求項3に記載のバレル槽のバレル蓋着脱構造。
【請求項5】
前記ナットランナーは、昇降部材と一体に昇降可能であり、
前記昇降部材は、前記バレル蓋を支持することが可能な支持部材を有している請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のバレル槽のバレル蓋着脱構造。
【請求項6】
前記支持部材は、前記バレル蓋を支持可能な支持位置と、前記バレル蓋を支持しない支持解除位置との間で変位可能であり、
前記昇降部材には、前記ソケットが前記ボルトに嵌合している状態において、前記支持部材を前記支持位置と前記支持解除位置との間で変位させる支持用駆動装置が設けられている請求項5に記載のバレル槽のバレル蓋着脱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレル槽のバレル蓋着脱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バレル研磨装置に用いるバレル槽において、容器の上面開口部に対して蓋を着脱する容器蓋の開閉装置が開示されている。蓋の上面には、軸線を上下方向に向けた螺杆が設けられ、螺杆には緊締杆がねじ込まれている。開閉装置は、昇降可能なナットランナーを有する。螺杆をナットランナーによって回転させると、緊締杆が上昇して容器に係止し、蓋が容器に固定される。蓋を容器から外す際には、ナットランナーを下降させて螺杆に嵌合し、螺杆を固定時とは逆方向に回転させ、緊締杆を容器から解離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-175954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓋を容器から外すためにナットランナーを下降させたときに、ナットランナーの軸線と螺杆の軸線が芯ずれしていると、ナットランナーが螺杆に嵌合できない虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バレル蓋の着脱動作の信頼性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバレル槽のバレル蓋着脱構造は、
バレル本体と、
前記バレル本体の上面開口部を開閉し、バレル槽を構成するバレル蓋と、
軸線を上下方向に向けて前記バレル蓋に回転可能に支持されたボルトと、
前記ボルトの正逆両方向への回転により、前記バレル蓋を前記バレル本体に固定するロック位置と、前記バレル本体に対する前記バレル蓋の固定を解除するロック解除位置との間で変位するロック部材と、
下向きに突出する駆動軸を有し、昇降可能なナットランナーと、
前記駆動軸に取り付けられ、前記駆動軸の回転力を前記ボルトに伝達可能なソケットとを備え、
前記ソケットは、前記駆動軸に対して水平方向への揺動が可能であり、
前記駆動軸の外周面が、前記駆動軸を貫通する揺動軸と平行な一対の第1嵌合面と、前記揺動軸と交差する一対の第2嵌合面とを備えており、
前記ソケットには、前記一対の第1嵌合面及び前記一対の第2嵌合面と嵌合する方形断面の嵌合孔が形成され、
前記第1嵌合面と前記第2嵌合面は、前記ソケットの揺動時における干渉を回避可能なテーパ状に形成され、
前記ボルトの上端部と前記ソケットの下端部のうち少なくとも一方の端部には、前記ソケットと前記ボルトを嵌合状態に誘導するテーパ面が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
バレル本体に対するバレル蓋の固定を解除する際には、ナットランナーを下降させてソケットをボルトに嵌合し、駆動軸の回転力をソケットを介してボルトに伝達し、ロック部材をロック解除位置へ変位させる。ボルトと駆動軸が芯ずれしていても、テーパ面の傾斜とソケットの揺動によって、ソケットをボルトに嵌合させることができる。また、駆動軸の回転力は、一対の第1嵌合面と一対の第2嵌合面との境界の角稜部が方形断面の内周面を押圧することによって、ソケットに伝達される。駆動軸の回転力をソケットに伝達するための別部材が不要なので、部品点数を削減することができる。さらに、駆動軸の外周面と嵌合孔の内周面との間のクリアランスを小さくすることができるので、駆動軸とソケットとの間のガタ付きを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のバレル蓋着脱構造を構成するバレル槽を用いた遠心バレル研磨機の側面図
図2】バレル槽の側断面図
図3】バレル槽の正面図
図4】バレル槽の平面図
図5】着脱装置の正面図
図6】着脱装置の底面図
図7】ロック用駆動装置の正断面図
図8】着脱装置が上昇した状態をあらわす部分拡大正面図
図9】着脱装置が上昇した状態をあらわす部分拡大側面図
図10】スタビライザがロック部材に嵌合した状態をあらわす部分拡大正面図
図11】ボルトとソケットが連結を開始した状態をあらわす部分拡大正断面図
図12図11のX-X線断面図
図13】ボルトとソケットが連結した状態をあらわす部分拡大正断面図
図14図13のY-Y線断面図
図15】ソケットの平面図
図16】着脱装置がバレル蓋を持ち上げた状態をあらわす部分拡大正面図
図17】ストッパが保持解除位置へ変位した状態をあらわす部分拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記駆動軸を貫通する揺動軸と、前記ソケットに形成され、前記揺動軸の両端部を上下方向への相対変位可能に嵌合させる長孔とを有していてもよい。この構成によれば、ソケットは、揺動軸を支点とすることにより、揺動軸と直交する鉛直面に沿って揺動することができる。また、ソケットは、揺動軸の両端部を長孔内でシーソー状に昇降させることにより、揺動軸と平行な鉛直面に沿って揺動することができる。互いに交差する2つの鉛直面に沿った揺動動作を、1本の揺動軸だけで実現できるので、部品点数を削減することができる。
【0012】
本発明は、前記ソケットの下端部と前記ボルトの上端部には、互いに嵌合することで前記ソケットの回転力を前記ボルトに伝達する非円形の連結部が形成され、前記ソケットは、前記駆動軸に対して上下方向へ相対変位可能に取り付けられていてもよい。この構成によれば、ソケットとボルトの連結部同士が整合しない状態でナットランナーが下降したときには、ソケットが駆動軸に対して上方へ相対変位する。この状態で駆動軸とソケットを相対回転させると、連結部同士が整合したところで、ソケットが下降し、連結部同士が嵌合する。連結部同士を嵌合させる過程で、ナットランナーの高さを調節する必要がないので、ナットランナーを駆動させる機構を簡素化することができる。
【0013】
本発明は、前記ナットランナーと前記ソケットとの間には、前記ソケットを下方へ付勢可能な連結用弾性部材が設けられていてもよい。この構成によれば、ソケットの連結部とボルトの連結部を確実に嵌合させることができる。
【0014】
本発明は、前記ナットランナーは、昇降部材と一体に昇降可能であり、前記昇降部材は、前記バレル蓋を支持することが可能な支持部材を有していてもよい。この構成によれば、昇降部材の昇降に伴って、バレル蓋をバレル本体に対して着脱することができるので、手動によるバレル蓋の着脱作業が不要である。
【0015】
本発明は、前記支持部材は、前記バレル蓋を支持可能な支持位置と、前記バレル蓋を支持しない支持解除位置との間で変位可能であり、前記昇降部材には、前記ソケットが前記ボルトに嵌合している状態において、前記支持部材を前記支持位置と前記支持解除位置との間で変位させる支持用駆動装置が設けられていてもよい。この構成によれば、バレル蓋を支持部材によって支持することにより、ソケットをボルトに嵌合させたままで、バレル蓋をバレル本体に対して着脱できる。これにより、バレル蓋をバレル本体に固定する工程において、ソケットとボルトとの干渉を回避できる。
【0016】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図17を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1,2,9,17における右方を前方と定義する。上下の方向については、図1~3,5,7~11,13,16,17にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、図3~6,8,16にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0017】
図1に示すのは、本実施例1のバレル蓋着脱構造を構成するバレル槽Bを用いた遠心バレル研磨機Aの側面図である。バレル蓋着脱構造は、ターレットTに取り付けられて遊星回転する複数のバレル槽Bと、1基の着脱装置Mとを備えて構成されている。
【0018】
<バレル槽B>
バレル槽Bは、図1~3に示すように、バレル本体10と、バレル本体10に対して着脱されるバレル蓋15とを有する。バレル本体10の側面視形状は正六角形であり、バレル本体10の平面視形状は方形である。図2に示すように、バレル本体10には、バレル本体10の上面を開放させた形態の上面開口部11が形成されている。上面開口部11の平面視形状は、左右方向の寸法が前後方向の寸法よりも大きい方形である。バレル本体10に対するマス(ワーク、研磨石等)の投入と、バレル本体10からのマスの排出は、上面開口部11において行われる。バレル本体10の外面上端部には、フランジ部12が形成されている。フランジ部12は、上面開口部11の開口縁に沿うように形成され、バレル本体10の前後両面及び左右両側面から水平方向へリブ状に張り出している。
【0019】
バレル蓋15は、全体として平面視形状が方形をなす平板状の蓋本体16と、外周に雄ネジ部19が形成されたボルト17と、ロック部材25と、二対の係止部材32と、二対のストッパ40と、一対のフック部43とを備えている。蓋本体16は、上面開口部11の開口領域全体を覆い隠す大きさを有する。蓋本体16は左右方向に長い方形をなす。バレル蓋15は、上面開口部11を閉塞する状態でバレル本体10に固定される。バレル蓋15をバレル本体10から取り外すと、上面開口部11が開口し、バレル本体10の内部がバレル槽Bの外部へ開放される。
【0020】
図4に示すように、ボルト17は、蓋本体16の上面における左右方向(バレル蓋15の長辺方向)及び前後方向(バレル蓋15の短辺方向)の中央位置に配置されている。図2に示すように、ボルト17は、蓋本体16の上面から軸線を上下方向に向けて上方へ突出した形態で蓋本体16に支持されている。ボルト17は、蓋本体16に対して軸線周りの相対回転が可能であり、且つ蓋本体16に対して上下方向への相対変位が規制されている。
【0021】
ボルト17は、締結部18と連結軸部20とを有する単一部品である。図11,13に示すように、締結部18の外周には雄ネジ部19が形成されている。連結軸部20は、締結部18の上端から更に上方へ突出した形態である。連結軸部20は、後述するソケット65との連結部として機能する。連結軸部20のうち上端部を除いた領域の外周面は、図12,14に示すように、一対の円弧面21と、一対の平面からなる連結面22とから構成されている。ボルト17を雄ネジ部19の軸線と平行に上から見た平面視において、一対の円弧面21は、締結部18よりも曲率半径が小さく、雄ネジ部19の軸線と同心の円弧形をなす。平面視において、一対の連結面22は雄ネジ部19の軸線に関して対称である。一対の連結面22間の厚さ寸法は、締結部18の直径寸法よりも小さい。連結軸部20の上端部の外周面には、上方に向かって次第に縮径した形態のボルト側テーパ面23が形成されている。つまり、ボルト17の上端部は、上方に向かって次第に縮径するような円錐台形状をなしている。
【0022】
図2に示すように、ロック部材25は、水平に延びるアーム部26と、アーム部26の両端部から下方へ突出した一対の脚部27とを有する。アーム部26の長さ方向中央部には、アーム部26を上下方向に貫通した形態の雌ネジ孔28が形成されている。脚部27の下端部には、相手側の脚部27に向かって突出した形態のロック爪29が形成されている。ロック部材25は、雌ネジ孔28を雄ネジ部19にねじ込んだ状態でボルト17に取り付けられている。図4,10に示すように、アーム部26の上面には、一対の嵌合凹部30が形成されている。
【0023】
一対の脚部27の間隔は、蓋本体16の短辺方向(前後方向)の寸法よりも大きい寸法に設定されている。ロック部材25は、ボルト17を中心として、図4に想像線で示すロック不能位置と、図3及び図4に実線で示すロック可能位置との間で回動可能である。バレル蓋15が、バレル本体10の上面に載置されて上面開口部11を閉塞し、ロック部材25がロック不能位置にある状態では、アーム部26が蓋本体16の長辺に対して直角な向きとなり、ロック爪29がフランジ部12から前後方向へ離隔した位置にある。ロック部材25がロック可能位置へ変位すると、アーム部26が蓋本体16の長辺に対して斜め方向を向き、脚部27がフランジ部12の外面に当接し、ロック爪29がフランジ部12の下面と対向するように位置する。
【0024】
ロック部材25がロック可能位置にある状態で、ボルト17が正方向(例えば、平面視における時計回り方向)に回転すると、ロック部材25が上方へ変位し、図2に実線で示すように、ロック爪29がフランジの下面に当接する。このときのロック部材25の位置を、ロック位置と定義する。ロック部材25がロック位置にある状態でボルト17に正方向の回転力が付与されると、ロック爪29がフランジの下面を押圧し、その反力が、ロック部材25とボルト17を介すことにより蓋本体16に対して下向きの押圧力として作用する。
【0025】
これにより、バレル蓋15が、上面開口部11を閉塞した状態でバレル本体10に強固に固定される。バレル蓋15がバレル本体10に固定されている状態で、ボルト17が逆方向(例えば、平面視における反時計回り方向)に回転すると、ロック部材25が下方へ変位し、図2に想像線で示すように、ロック爪29がフランジ部12から下方へ離隔する。このときのロック部材25の位置を、ロック解除位置と定義する。
【0026】
図3,4に示すように、二対の係止部材32は、蓋本体16の左右両端部に配置されている。蓋本体16の左端部と右端部においては、夫々、2つの係止部材32が対をなして前後方向に並ぶように配置されている。各係止部材32は、前後方向の支持軸33を中心として、係止位置(図3,8を参照)と係止解除位置(図16を参照)との間で揺動可能である。係止部材32は、付勢部材34の弾力によって常に係止位置方向へ付勢されている。図8,16に示すように、係止部材32は、支持軸33に嵌合される軸受部35と、軸受部35から下方へ延出した係止アーム36と、係止爪37と、受圧部38とを有する。係止爪37は、係止アーム36の下端部からフランジ部12側に向かって突出している。受圧部38は、軸受部35から係止アーム36と直角をなすようにボルト17側へ突出している。
【0027】
係止部材32が係止位置にある状態では、係止爪37が、フランジ部12の下面に対して、接近した位置関係で上下方向に対向するように位置する。係止部材32が係止解除位置にある状態では、係止アーム36がフランジ部12から左右方向へ遠ざかり、係止爪37がフランジ部12の下面と対向せずにフランジ部12から左右方向へ外れた位置にある。
【0028】
図3,4に示すように、二対のストッパ40は、蓋本体16の左右両端部に配置されている。蓋本体16の左端部と右端部においては、夫々、2つのストッパ40が対をなして前後方向に並ぶように配置されている。ストッパ40は、左右方向の回動軸41を中心として、図9に示す保持位置と、図17に示す保持解除位置との間で、回動変位可能である。ストッパ40は、左右方向において、係止部材32が係止位置から係止解除位置へ揺動するときに係止アーム36が干渉する位置に配置されている。図9に示すように、ストッパ40は、引張りコイルバネからなる保持用弾性部材42によって、常に保持位置側へ付勢されている。
【0029】
対をなす2つのストッパ40が保持位置にある状態では、バレル蓋15を左右方向から見た側面視において、対をなすストッパ40が「逆ハ字形」をなし、両ストッパ40の上端部が、係止アーム36の上端部に対して重なるように位置する。このストッパ40の上端部により、係止部材32は、係止位置に保持されて係止解除位置への揺動が不能となる。対をなすストッパ40が保持解除位置にある状態では、対をなすストッパ40が上下方向を向いて前後に並ぶように配置され、側面視において、両ストッパ40の全体が、対をなす係止アーム36(係止部材32)の間に位置する。ストッパ40が保持解除位置へ変位すると、両ストッパ40の上端部が両係止アーム36から前後方向に外れるので、係止部材32は、係止位置から係止解除位置へ揺動することが可能となる。
【0030】
図3に示すように、一対のフック部43は、蓋本体16の上面に設けられている。一対のフック部43は、左右方向においてボルト17と一対の係止部材32との間に配置されている。フック部43は箱状をなし、フック部43の内部空間は、係止部材32側に向かって開口している。左右方向において、フック部43と係止部材32の受圧部38との間の距離は、フック部43とボルト17との間の距離よりも短い。
【0031】
バレル蓋15をバレル本体10に取り付けてバレル研磨を実行できる状態では、バレル蓋15がバレル本体10に載置されて上面開口部11を閉塞する。ロック部材25は、ロック可能位置及びロック位置にあり、一対のロック爪29がフランジ部12の下面に係止することにより、バレル蓋15がバレル本体10に対して強固に固定される。さらに、二対の付勢部材34の弾力によって係止位置に保持され、係止爪37がフランジ部12の下面に対して接近して対向する。二対のストッパ40は、保持用弾性部材42の付勢により保持位置に保持され、係止位置の係止部材32が係止解除位置へ揺動することを防止する。
【0032】
<着脱装置M>
着脱装置Mは、図5~8に示すように、昇降部材50と、ロック用駆動装置51と、回動装置75と、係止解除装置85とを備えている。昇降部材50は、水平な板状をなし、シリンダ装置52によって昇降するようになっている。ロック用駆動装置51は、昇降部材50に一体的に昇降するように取り付けられたナットランナー53と、ナットランナー53の下端部に取り付けられたソケット65とを有する。図7に示すように、ナットランナー53は、ナットランナー53の下端面から軸線を上下方向に向けて下向きに突出した駆動軸54を有する。駆動軸54は、ナットランナー53により、軸線を中心として正方向と逆方向の両方向へ回転駆動される。
【0033】
駆動軸54を軸線と直角に切断した水平断面の形状は、駆動軸54の上端から下端までの全長に亘って正方形である。水平断面の正方形の中心は、駆動軸54の軸線と一致する。図11,13に示すように、駆動軸54は、水平断面積が上方に向かって次第に小さくなる形状の上側テーパ部55と、水平断面積が下方に向かって次第に小さくなる形状の下側テーパ部56とを有する。上側テーパ部55の下端の水平断面積と下側テーパ部56の上端の水平断面積は同じ面積であり、上側テーパ部55の下端に下側テーパ部56の上端が連なっている。駆動軸の水平断面積は、両テーパ部55,56の境界57の高さにおいて最大である。駆動軸54を水平方向に見た形状は、どの方向から見ても略太鼓形である。
【0034】
上側テーパ部55の軸線と平行な上下方向の寸法は、下側テーパ部56の上下寸法に比べて十分に大きい寸法(例えば4倍の寸法)である。上側テーパ部55の外周面は、駆動軸54の軸線に対して傾斜した4つの平面から構成される。下側テーパ部56の外周面も、駆動軸54の軸線に対して傾斜した4つの平面から構成される。駆動軸54の軸線に対する上側テーパ部55の外周面の傾斜角度は、駆動軸54の軸線に対する下側テーパ部56の外周面の傾斜角度よりも小さい。
【0035】
駆動軸54には、円形断面の揺動軸58が貫通状態で取り付けられている。揺動軸58は、上下方向において上下両テーパ部55,56の境界57と同じ高さに位置する。揺動軸58の軸心は、水平方向に延びており、駆動軸54の軸線と直角に交差し、水平断面(平面視)において駆動軸54の外面と直角をなしている。揺動軸58の長さ方向両端部は、駆動軸54の外周面から駆動軸54の外部へ突出している。駆動軸54の外周面のうち揺動軸58と平行な面を、第1嵌合面59と定義する。駆動軸54の外周面のうち揺動軸58が突出している面、即ち揺動軸58と交差する面を、第2嵌合面60と定義する。駆動軸54の外周面のうち、第1嵌合面59と第2嵌合面60が周方向に隣り合う上下方向の境界部は、角稜部61となっている。
【0036】
ソケット65は、全体として軸線を上下方向に向けた円筒状をなす。ソケット65には、ソケット65の上端面に開口する嵌合孔66が形成されている。図15に示すように、ソケット65の上端面における嵌合孔66の開口形状は、略正方形である。嵌合孔66の水平断面形状と水平断面積は、嵌合孔66の上端から下端までの全長に亘って一定である。嵌合孔66の内周面は、嵌合孔66(ソケット65)の軸線と平行な4つの平面を有する。ソケット65には、ソケット65の軸線を挟んで対称な一対の長孔67が形成されている。長孔67は、ソケット65の軸線と平行なスリット状をなし、嵌合孔66の内周面からソケット65の外周面まで貫通している。
【0037】
ソケット65は、駆動軸54に対し、駆動軸54を同軸状に包囲するように取り付けられている。ソケット65を駆動軸54に取り付けた状態では、嵌合孔66に駆動軸54が挿入され、一対の長孔67が一対の第2嵌合面60と対向し、揺動軸58の両端部が一対の長孔67に嵌合される。駆動軸54の外周面と嵌合孔66の内周面との間の水平方向の間隔は、駆動軸54の上側テーパ部55と下側テーパ部56の境界57において最小である。揺動軸58は駆動軸54と一体に回転可能であり、揺動軸58の両端部は、長孔67に嵌合されることによってソケット65と一体に回転可能である。したがって、駆動軸54とソケット65は、揺動軸58を介すことによって一体的に回転するようになっている。
【0038】
ソケット65は、長孔67によって揺動軸58をガイドすることにより、駆動軸54に対して相対的に上下動することが可能である。ソケット65は、ナットランナー53とソケット65の上端部との間に取り付けられた圧縮コイルバネからなる連結用弾性部材68によって、常に下方へ付勢されている。ソケット65がボルト17と連結していない状態では、連結用弾性部材68の付勢により、ソケット65は、長孔67の上端部が揺動軸58に対して上から当接した最下端位置に保持される。最下端位置のソケット65は、連結用弾性部材68の付勢に抗して、駆動軸54に対し相対的に上方へ変位することが可能である。
【0039】
上側テーパ部55の外周面と嵌合孔66の内周面との間、及び下側テーパ部56の外周面と嵌合孔66の内周面との間には、クリアランスが確保されている。このクリアランスにより、ソケット65は、駆動軸54を支点として、嵌合孔66の内周面を第1嵌合面59に対して接近・離隔させるように揺動することが可能である。また、ソケット65は、揺動軸58の両端部に対して一対の長孔67を相対的に上下動させることにより、嵌合孔66の内周面を第2嵌合面60に対して接近・離隔させるように揺動することが可能である。第1嵌合面59と第2嵌合面60は、平面視において直角をなしているので、ソケット65は、駆動軸54の軸線と直角な二次元方向へ揺動することが可能である。
【0040】
ソケット65には、ソケット65の下端面においてスリット状に開口する連結溝69が形成されている。連結溝69は、ボルト17の連結軸部20との連結部として機能する。連結溝69は、ソケット65の軸線と平行をなし、ソケット65の下端面と外周面とに開口している。連結溝69の溝幅寸法は、ボルト17に形成された一対の円弧面21の直径寸法よりも小さく、且つ一対の連結面22間の厚さ寸法よりも大きい寸法である。
【0041】
連結溝69の下端部には、水平方向の対向間隔が下方に向かって次第に拡大する一対のソケット側テーパ面70(請求項に記載のテーパ面)が形成されている。ソケット側テーパ面70は、ソケット65と同心の円錐形を構成する曲面からなり、ソケット65の軸線に対し下方に向かって拡径するように傾斜している。一対のソケット側テーパ面70によって構成される円錐の最大直径寸法、即ちソケット側テーパ面70の下端の直径寸法は、連結軸部20の外径寸法よりも大きい寸法である。鉛直方向の軸線に対するソケット側テーパ面70の傾斜角度は、鉛直方向の軸線に対するボルト側テーパ面23の傾斜角度よりも大きい。
【0042】
回動装置75は、昇降部材50に取り付けられた筒状部材76と、回動用流体圧シリンダ82と、スタビライザ80とを有する。筒状部材76は、昇降部材50に対してナットランナー53及び駆動軸54と同軸状に相対回転することが可能であり、且つ、昇降部材50に対して上下方向への相対変位を規制されている。回動用流体圧シリンダ82は、昇降部材50に取り付けられ、図6に示すように、回動用リンク部材83を介すことによって、筒状部材76に連結されている。筒状部材76は、回動用流体圧シリンダ82の作動によって正方向と逆方向へ水平に回動する。
【0043】
図7に示すように、筒状部材76は、駆動軸54とソケット65を同軸状に包囲するように配置されている。筒状部材76の下端部には、下向きに突出する一対の挟持部77が、駆動軸54の軸線に関して対称に形成されている。一対の挟持部77には、ソケット65が最下端の連結位置(図7を参照)まで下降したことを検知するセンサ78が取り付けられている。ソケット65が最下端の連結位置にある状態で、一対の挟持部77は、ソケット65の下端よりも下方へ突出している。
【0044】
図5,6に示すように、筒状部材76には、筒状部材76の外周面から水平に且つ互いに反対方向へ突出した一対の回動アーム79が取り付けられている。筒状部材76と一対の回動アーム79は一体的に回転する。一対の回動アーム79の先端部には、下向きに突出した形態の一対のスタビライザ80が取り付けられている。一対のスタビライザ80は、圧縮コイルバネからなる弾性押圧部材81によって下方へ付勢されている。
【0045】
係止解除装置85は、左右一対の係止解除用流体圧シリンダ86と、左右一対の係止解除部材88と、左右一対の支持部材90と、左右一対の保持解除部材92とを有する。係止解除用流体圧シリンダ86は、昇降部材50の下面に一体移動し得るように取り付けられている。係止解除用流体圧シリンダ86のロッド87には係止解除部材88が取り付けられている。係止解除部材88は係止解除用流体圧シリンダ86の駆動により、左右方向へ水平移動する。係止解除部材88は昇降部材50と一体的に上下動する。係止解除部材88の下端部には、前後方向の軸を中心に回転するローラ89が取り付けられている。
【0046】
支持部材90は、係止解除部材88に対し一体的に移動するように取り付けられている。支持部材90は、係止解除部材88の移動に伴い、フック部43を支持可能な支持位置と、フック部43を支持しない支持解除位置との間で左右方向へ移動可能である。支持部材90は、係止解除部材88の下端部から、左右方向においてローラ89とは反対方向へ突出している。保持解除部材92は、係止解除部材88を水平方向にガイドする上下一対のガイドバー91の先端部に取り付けられている。保持解除部材92は、昇降部材50と一体的に上下動する。保持解除部材92は下向きに突出した形態であり、保持解除部材92の下端部は、ローラ89及び支持部材90よりも下方に位置する。
【0047】
<作用及び効果>
次に、バレル本体10に固定されているバレル蓋15を外す工程を説明する。まず、着脱装置Mの昇降部材50が、昇降ストロークの最下端である着脱位置まで下降する。下降の途中で、保持解除部材92が前後方向に並ぶ2つのストッパ40の間に進入し、図17に示すように、両ストッパ40を、保持用弾性部材42の弾力に抗して保持位置から保持解除位置へ変位させる。このストッパ40の変位により、係止部材32が、係止位置から係止解除位置へ揺動することが可能な状態となる。
【0048】
昇降部材50が着脱位置まで下降すると、一対の挟持部77が、ロック部材25のアーム部26を挟み込む。一対のスタビライザ80が、アーム部26の嵌合凹部30内に嵌入され、弾性押圧部材81によって嵌合凹部30へ押し付けられる。係止解除部材88のローラ89が係止部材32の受圧部38に接触可能となり、支持部材90がフック部43の内部空間と同じ高さとなる。
【0049】
昇降部材50が着脱位置まで下降した後、係止解除用流体圧シリンダ86が作動して、係止解除部材88が水平方向へ移動する。係止解除部材88が移動するのに伴い、ローラ89が受圧部38を水平に押すことによって、係止部材32が係止位置から係止解除位置へ揺動し、係止部材32によるバレル本体10への係止状態が解除される。係止部材32の揺動に伴い、支持部材90は、係止解除部材88と一体となって支持解除位置から支持位置へ水平移動し、フック部43の内部空間内に進入する。
【0050】
昇降部材50が着脱位置へ下降する過程では、ソケット65の連結溝69とボルト17の連結軸部20が連結する。このとき、図13,14に示すように、連結溝69の内側面と連結軸部20の連結面22が平面視において同じ向きに揃い、連結軸部20の全体が連結溝69の溝幅内に位置していれば、ソケット65の軸線とボルト17の軸線の位置関係に拘わらず、連結軸部20が連結溝69内に引っ掛かり無く進入して嵌合した状態となり、ソケット65とボルト17が連結される。昇降部材50が最下端の着脱位置まで下降すると、ソケット65も最下端の連結位置まで下降する。ソケット65が連結位置まで下降したことが、センサ78によって検知される。
【0051】
これに対し、ソケット65とボルト17が同軸であっても、連結溝69の内側面と連結軸部20の連結面22が、直角な向きになっている場合(図11,12を参照)や、斜めの向きになっている場合には、昇降部材50が最下端の着脱位置に到達する前に、連結溝69の下端部のソケット側テーパ面70が、連結軸部20のボルト側テーパ面23の上端縁に対して点接触状状態で当接する。このとき、ソケット65の軸線がボルト17の軸線に対して偏心していれば、ソケット65が揺動する。このときのソケット65の揺動形態は、揺動軸58を中心とする揺動、揺動軸58の両端部を長孔67内で昇降させる揺動、揺動軸58を中心とする揺動と揺動軸58の両端部を長孔67内で昇降させる揺動の両方を複合した揺動のうちいずれかの形態である。揺動したソケット65は、駆動軸54及びボルト17に対して斜めを向く。
【0052】
また、連結溝69の内側面と連結軸部20の連結面22が同じ向きに揃っている場合でも、連結軸部20の一部が連結溝69の溝幅の範囲外へはみ出していれば、昇降部材50が着脱位置に到達する前に、ソケット側テーパ面70がボルト側テーパ面23の上端縁に対して点接触状態で当接する。この状態では、ソケット65の軸線がボルト17の軸線に対して偏心しているので、ソケット65は、揺動軸58を中心として揺動し、駆動軸54及びボルト17に対して斜めを向く。
【0053】
ソケット側テーパ面70が連結軸部20の上端に当接した状態で、昇降部材50の下降が進むと、連結用弾性部材68が弾性変形し、ソケット65に付与される下向きの付勢力が強まる。このように連結溝69と連結軸部20が嵌合しない状態で、昇降部材50が着脱位置まで下降した場合は、ナットランナー53が駆動し、駆動軸54とソケット65を正方向へ所定角度だけ回転させる。すると、ソケット側テーパ面70が連結軸部20の上端縁に対して点接触状態で摺接する。点接触により、引っ掛かりを生じることなく、摺接が円滑に進む。ソケット側テーパ面70と連結軸部20の上端縁との摺接により、連結溝69の内側面と連結軸部20の連結面22が平面視において同じ向きに揃い、連結溝69が連結軸部20の全体と対応する位置まで変位したところで、ソケット65が、連結用弾性部材68の弾性復元力によって一気に連結位置まで下降する。ソケット65が連結位置まで下降した状態では、連結軸部20が連結溝69内に進入して嵌合状態となり、ソケット65とボルト17が連結され、ソケット65の位置がセンサ78により検知される。
【0054】
ソケット65が連結位置まで下降したことが、センサ78で検知されると、ナットランナー53が駆動軸54を回転させ、駆動軸54の回転力がソケット65に伝達され、ソケット65の回転力がボルト17に伝達される。駆動軸54の回転力は、駆動軸54の外周面のうち角稜部61がソケット65の嵌合孔66の内周面を押圧することにより、ソケット65に伝達される。回転力が伝達されるとき、ソケット65が駆動軸54及びボルト17に対して斜め姿勢であっても、ソケット65は、駆動軸54に対して水平面上におけるいずれの方向へも揺動できるので、駆動軸54の回転力はソケット65を介して確実にボルト17に伝達される。ボルト17の回転に伴って、ロック部材25がロック位置からロック解除位置へ下降し、ロック爪29が、バレル本体10のフランジ部12から解離してフランジ部12の下方へ離隔する。
【0055】
次に、回動用流体圧シリンダ82によって筒状部材76を回転させると、一対の挟持部77がロック部材25をロック可能位置からロック不能位置へ水平に回動させるので、ロック部材25によるバレル蓋15とバレル本体10とのロック状態が解除される。このとき、ボルト17から偏心した一対のスタビライザ80が、ロック部材25の嵌合凹部30に嵌合されているので、ロック部材25が傾いたり浮き上がったりするおそれがない。
【0056】
この後、昇降部材50を上昇させると、図16に示すように、支持部材90がフック部43に引っ掛かるので、バレル蓋15が、昇降部材50と一体となって上昇し、バレル本体10から取り外される。このとき、ロック爪29と係止爪37はフランジ部12から水平方向へ外れた位置へ退避しているので、ロック部材25と係止部材32のいずれもバレル本体10と干渉することはない。昇降部材50がバレル蓋15を持ち上げた状態では、ソケット65とボルト17が連結した状態に保たれ、係止部材32は係止解除位置に保たれ、ストッパ40は保持解除位置に保たれる。以上により、バレル蓋15をバレル本体10から取り外す工程が完了する。この後は、バレル研磨を行う準備のために、バレル本体10内に、ワーク、研磨石、コンパウンド、水を所定量ずつ投入する。
【0057】
次に、着脱装置Mによってバレル本体10から外して持ち上げたバレル蓋15を、バレル本体10に固定する工程を説明する。まず、バレル蓋15を持ち上げた状態の昇降部材50を下降させ、バレル蓋15をバレル本体10の上面に載置する。これにより、上面開口部11がバレル蓋15によって閉塞される。この後、回動用流体圧シリンダ82が作動して筒状部材76が回動し、ロック部材25がロック不能位置からロック可能位置へ回動する。次に、ナットランナー53が作動して駆動軸54を回転駆動する。着脱装置Mがバレル蓋15を持ち上げている状態では、ソケット65とボルト17の嵌合状態が維持されているので、駆動軸54の回転力がソケット65を介してボルト17に伝達される。
【0058】
ボルト17の回転に伴って、ロック部材25がロック解除位置からロック位置まで上昇し、ロック爪29が、バレル本体10のフランジ部12に対して下から強く係止する。このロック部材25の係止作用により、バレル蓋15がバレル本体10に固定された状態にロックされる。
【0059】
次に、係止解除用流体圧シリンダ86が作動し、係止解除部材88が、ローラ89による受圧部38への押圧を解除する方向へ水平移動する。受圧部38への押圧が解除されるのに伴い、係止部材32が付勢部材34の付勢によって係止解除位置から係止位置へ揺動し、係止爪37がフランジ部12に対して下から接近して対向するように位置する。係止部材32が係止解除位置から係止位置へ揺動するのに伴い、支持部材90は、フック部43を支持する支持位置から、支持解除位置へ水平移動し、フック部43から解離した状態となる。この後、昇降部材50を上昇させると、バレル本体10に対するバレル蓋15の固定工程が終了する。昇降部材50が上昇を開始すると、対をなす2つのストッパ40の間に割り込んでいた保持解除部材92が、上方へ抜き取られるので、ストッパ40は、保持用弾性部材42の付勢によって、保持解除位置から保持位置へ変位する。
【0060】
本実施例1のバレル槽Bのバレル蓋着脱構造は、バレル本体10と、バレル蓋15と、ボルト17と、ロック部材25と、ナットランナー53と、ソケット65とを備えている。バレル蓋15は、バレル本体10とともにバレル槽Bを構成する部材であり、バレル本体10の上面開口部11を開閉する。ボルト17は、軸線を上下方向に向けた状態で、バレル蓋15に回転可能に支持されている。ロック部材25は、ボルト17の正逆両方向への回転により、バレル蓋15をバレル本体10に固定するロック位置と、バレル本体10に対するバレル蓋15の固定を解除するロック解除位置との間で上下方向へ変位する。ナットランナー53は、下向きに突出する駆動軸54を有し、昇降部材50と一体となって昇降することが可能である。ソケット65は、駆動軸54に取り付けられ、駆動軸54の回転力をボルト17に伝達する部品である。ソケット65は、駆動軸54に対して水平方向への揺動が可能である。ソケット65の下端部には、ソケット65とボルト17を嵌合状態に誘導するためのソケット側テーパ面70が形成されている。
【0061】
バレル本体10に対するバレル蓋15の固定を解除する際には、ナットランナー53を下降させてソケット65をボルト17に嵌合し、駆動軸54の回転力をソケット65を介してボルト17に伝達し、ロック部材25をロック解除位置へ変位させる。ボルト17と駆動軸54が芯ずれしていても、ソケット側テーパ面70の傾斜とソケット65の揺動によって、ソケット65をボルト17に嵌合させることができる。
【0062】
バレル蓋着脱構造を構成する着脱装置Mは、駆動軸54を貫通する揺動軸58と、ソケット65に形成され、揺動軸58の両端部を上下方向への相対変位可能に嵌合させる長孔67とを有している。ソケット65は、揺動軸58を支点とすることにより、揺動軸58と直交する鉛直面に沿って揺動することができる。また、ソケット65は、揺動軸58の両端部を長孔67内でシーソー状に昇降させることにより、揺動軸58と平行な鉛直面に沿って揺動することができる。互いに交差する2つの鉛直面に沿った揺動動作を、1本の揺動軸58だけで実現できるので、部品点数を削減することができる。
【0063】
駆動軸54の外周面は、揺動軸58と平行な一対の第1嵌合面59と、揺動軸58とほぼ直角に交差する一対の第2嵌合面60とを備えている。ソケット65には、一対の第1嵌合面59及び一対の第2嵌合面60と嵌合する方形断面の嵌合孔66が形成されている。この構成によれば、駆動軸54の回転力は、一対の第1嵌合面59と一対の第2嵌合面60との境界の角稜部61が方形断面の内周面を押圧することによって、ソケット65に伝達される。駆動軸54の回転力をソケット65に伝達するための別部材が不要なので、部品点数を削減することができる。
【0064】
第1嵌合面59と第2嵌合面60は、ソケット65の揺動時におけるソケット65との干渉を回避可能なテーパ状に形成されている。この構成によれば、駆動軸54の外周面(第1嵌合面59及び第2嵌合面60)と嵌合孔66の内周面との間のクリアランスを小さくすることができるので、駆動軸54とソケット65との間のガタ付きを低減することができる。
【0065】
ソケット65の下端部には非円形断面の連結溝69が形成され、ボルト17の上端部には非円形断面の連結軸部20が形成されている。連結溝69と連結軸部20が互いに嵌合することで、ソケット65の回転力がボルト17に伝達される。ソケット65は、駆動軸54に対して上下方向へ相対変位可能に取り付けられ、連結用弾性部材68によって下方へ付勢されている。この構成によれば、ソケット65の連結溝69とボルト17の連結軸部20が整合しない状態でナットランナー53が下降したときには、ソケット65が駆動軸54に対して上方へ相対変位し、連結用弾性部材68が弾性変形することによってソケット65が下方へ付勢される。
【0066】
この状態で駆動軸54とソケット65を相対回転させると、連結軸部20と連結溝69が整合したところで、ソケット65が連結用弾性部材68の付勢によって下降し、連結溝69が連結軸部20と嵌合する。連結軸部20と連結溝69を嵌合させる過程で、ナットランナー53の高さを調節する必要がないので、ナットランナー53を駆動させる機構を簡素化することができる。また、連結用弾性部材68の付勢により、ソケット65の連結溝69とボルト17の連結軸部20を確実に嵌合させることができる。
【0067】
昇降部材50は、バレル蓋15を支持することが可能な支持部材90を有している。昇降部材50の昇降に伴って、バレル蓋15をバレル本体10に対して着脱することができるので、手動によるバレル蓋15の着脱作業が不要である。支持部材90は、バレル蓋15を支持可能な支持位置と、バレル蓋15を支持しない支持解除位置との間で変位可能である。昇降部材50には、ソケット65がボルト17に嵌合している状態において、支持部材90を支持位置と支持解除位置との間で変位させる支持用駆動装置としての係止解除装置85が設けられている。バレル蓋15を支持部材90によって支持することにより、ソケット65をボルト17に嵌合させたままで、バレル蓋15をバレル本体10に対して着脱できる。これにより、バレル蓋15をバレル本体10に固定する工程において、ソケット65とボルト17との干渉を回避できる。
【0068】
本実施例1のバレル蓋着脱構造は、バレル本体10と、バレル蓋15と、ロック部材25と、係止部材32とを備えている。バレル蓋15は、バレル本体10とともにバレル槽Bを構成する部材であり、バレル本体10の上面開口部11を開閉する。ロック部材25は、バレル蓋15をバレル本体10に固定した状態にロックするロック位置と、バレル本体10に対するバレル蓋15の固定状態を解除するロック解除位置との間で変位可能である。係止部材32は、バレル蓋15に設けられ、係止位置と係止解除位置との間で変位可能である。ロック部材25がロック解除位置にあり、係止部材32が係止位置にある状態では、係止部材32は、バレル本体10に係止することによって、バレル蓋15がバレル本体10から離脱することを規制する。ロック部材25がロック解除位置にあり、係止部材32が係止解除位置にある状態では、係止部材32は、バレル本体10から解離することによって、バレル蓋15がバレル本体10から離脱することを許容する。
【0069】
上記構成によれば、ロック部材25による固定が不十分であっても、係止部材32がバレル本体10に引っ掛かることによって、バレル蓋15がバレル本体10から離脱することを防止できる。また、係止部材32は、付勢部材34によって係止位置側へ付勢されているので、ロック部材25によってバレル蓋15をバレル本体10に固定したときに、係止部材32がバレル本体10から解離したままになることを回避できる。
【0070】
バレル蓋15には、係止部材32を係止位置に保持する保持位置と、係止部材32が係止位置から係止解除位置へ変位することを許容する保持解除位置との間で変位するストッパ40が設けられている。ストッパ40によって、係止部材32を確実に規制位置に保持することができる。
【0071】
バレル蓋15の上方には、昇降部材50が昇降可能に設けられている。昇降部材50にはロック用駆動装置51が取り付けられている。ロック用駆動装置51は、昇降部材50が下降してバレル蓋15に接近したときに、ロック部材25をロック位置とロック解除位置との間で変位させる。昇降部材50には、昇降部材50がバレル蓋15に接近するのに伴ってストッパ40を保持位置から保持解除位置へ変位させる保持解除部材92が設けられている。この構成によれば、バレル蓋15をバレル本体10から取り外す際には、昇降部材50を下降させ、ロック用駆動装置51によって、ロック部材25をロック位置からロック解除位置へ変位させる。このとき、昇降部材50が下降するのに伴って、保持解除部材92がストッパ40を保持位置から保持解除位置へ変位させるので、ストッパ40を保持位置から保持解除位置へ変位させるための手動操作が不要である。
【0072】
昇降部材50には、係止部材32を係止位置から係止解除位置へ変位させる係止解除装置85が設けられている。バレル蓋15をバレル本体10から取り外す際には、昇降部材50を下降させ、ロック用駆動装置51によって、ロック部材25をロック位置からロック解除位置へ変位させる。このとき、係止解除装置85によって係止部材32を係止位置から係止解除位置へ変位させることができるので、係止部材32を係止位置から係止解除位置へ変位させるための手動による操作が不要である。
【0073】
係止解除装置85は、バレル蓋15を支持する支持位置と、バレル蓋15を支持しない支持解除位置との間で変位可能な支持部材90を有している。係止解除装置85は、係止部材32を係止位置から係止解除位置へ変位させる過程で、支持部材90を支持解除位置から支持位置へ変位させるようになっている。この構成によれば、係止部材32を係止解除位置へ変位させる動作と支持部材90を支持位置へ変位させる動作を、係止解除装置85だけで連動して行うことができる。
【0074】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施例では、互いに交差する2つの鉛直面に沿った揺動動作を、1本の揺動軸だけで行うようにしたが、2つの鉛直面に沿った揺動動作を、夫々、個別の揺動軸を中心して行うようにしてもよい。
上記実施例では、駆動軸の外周面とソケットの嵌合孔の断面形状を方形とすることによって、駆動軸の回転力をソケットに伝達したが、回転力伝達部材を介すことによって駆動軸の回転力をソケットに伝達してもよい。
上記実施例では、駆動軸の外周面とソケットの嵌合孔の断面形状を方形としたが、駆動軸の外周面とソケットの嵌合孔の断面形状は、方形に限らず、非円形であればよい。
上記実施例では、第1嵌合面と第2嵌合面をテーパ状にすることによって、ソケットの揺動時における駆動軸との干渉を回避するようになっているが、駆動軸の外周面とソケットの嵌合孔の内周面との間に充分なクリアランスを確保することによって、ソケットと駆動軸との干渉を回避してもよい。
上記実施例では、ソケットを下方へ付勢するための連結用弾性部材を設けたが、このような連結用弾性部材を設けない形態としてもよい。この場合、例えば、ソケットが自重によって下降することにより、連結部同士が嵌合する。
上記実施例では、昇降部材に、バレル蓋を持ち上げるための支持部材を設けたが、このような支持部材を設けない形態としてもよい。この場合、バレル本体に対するバレル蓋の着脱は、手動で行えばよい。
上記実施例では、ソケットがボルトに嵌合している状態で支持部材をバレル蓋に引っ掛けるようにしたが、ソケットがボルトから離脱した状態で、支持部材をバレル蓋に引っ掛けるようにしてもよい。
上記実施例では、ソケットとボルトを嵌合状態に誘導するためのガイド機能を発揮するテーパ面(ソケット側テーパ面)をソケットのみに形成したが、ガイド機能を発揮するテーパ面は、ボルトのみに形成してもよく、ボルトとソケットとの両方に形成してもよい。ボルトとソケットの両方にテーパ面を形成する場合は、双方のテーパ面の角度を同じ角度又は概ね同じ角度にすればよい。
【符号の説明】
【0075】
B…バレル槽
10…バレル本体
11…上面開口部
15…バレル蓋
17…ボルト
20…連結軸部(連結部)
25…ロック部材
50…昇降部材
53…ナットランナー
54…駆動軸
58…揺動軸
59…第1嵌合面
60…第2嵌合面
65…ソケット
66…嵌合孔
67…長孔
68…連結用弾性部材
69…連結溝(連結部)
70…ソケット側テーパ面(テーパ面)
85…係止解除装置(支持用駆動装置)
90…支持部材
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