IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソーク インスティテュート フォー バイオロジカル スタディーズの特許一覧

特許7430395複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物
<>
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図1
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図2
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図3
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図4
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図5
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図6
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図7A
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図7B
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図8
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図9
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図10
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図11
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図12
  • 特許-複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】複製特質が増強された腫瘍溶解性アデノウイルス組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20240205BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240205BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240205BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240205BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20240205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
A61K35/761
A61P35/00
A61P35/02
C12N15/34
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
A61K38/16
A61K39/395 L
【請求項の数】 56
(21)【出願番号】P 2020555043
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019026626
(87)【国際公開番号】W WO2019199859
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】62/655,009
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513037649
【氏名又は名称】ソーク インスティテュート フォー バイオロジカル スタディーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】オシェア, クローダ
(72)【発明者】
【氏名】ライマン, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パルトロー, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ミヤケ-ストーナー, シゲキ
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534263(JP,A)
【文献】特表2016-516407(JP,A)
【文献】特表2003-504052(JP,A)
【文献】国際公開第2005/107474(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/147269(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221031(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変されたE1aタンパク質をコードするE1A領域であって、前記改変されたE1aタンパク質が、
LXCXEモチーフの欠失、
残基2~11の欠失、
C124G置換、
Y47H置換、
Y47H置換およびC124G置換、または
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失
を含む、E1A領域と、
アデノウイルス死タンパク質(ADP)をコードし、E3遺伝子12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7kの各々のコード配列中に改変を含み、前記改変が、前記コードされるタンパク質の発現を妨げる、E3領域と、
E4orf6/7コード配列の改変または欠失を含むE4領域であって、前記改変が、そのE2F結合部位を無効にするかもしくは損なう、および/またはE2F相互作用を損なう、および/または核局在化シグナルを欠失するかもしくは損なう、E4領域と
を含む、組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項2】
前記改変されたE1aタンパク質が、LXCXEモチーフの欠失を含む、請求項1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項3】
前記12.5k、6.7kおよび19k遺伝子が欠失している、請求項1または2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項4】
前記12.5k、6.7kおよび19k遺伝子が、開始コドンの変異、未熟停止コドンを導入する変異、または両方を含む、請求項1または2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項5】
前記RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が欠失している、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項6】
前記RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が、開始コドンの変異、未熟停止コドンを導入する変異、または両方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項7】
前記12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が欠失している、請求項1または2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項8】
前記12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が、開始コドンの変異、未熟停止コドンを導入する変異、または両方を含む、請求項1または2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項9】
前記12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が欠失しているか、または、開始コドンの変異、未熟停止コドンを導入する変異、もしくは両方を含む、請求項1または2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項10】
E4orf3の欠失をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項11】
FK506結合タンパク質(FKBP)に融合された標的化リガンドと、野生型FKBP-ラパマイシン結合(FRB)タンパク質またはラパログに結合可能な変異体FRBタンパク質に融合されたアデノウイルスファイバータンパク質とをさらにコードする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項12】
前記標的化リガンドが、単一ドメイン抗体である、請求項11に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項13】
前記単一ドメイン抗体が、EGFRに対して特異的である、請求項12に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項14】
肝臓からアデノウイルスを脱標的化するための少なくとも1つの改変を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項15】
ヘキソンタンパク質中に変異を含む、請求項14に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項16】
前記ヘキソン変異が、E451Q変異である、請求項15に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項17】
肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位をさらに含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項18】
前記肝臓特異的マイクロRNAのための前記1つまたは複数の結合部位が、E1Aの3’-UTR中に位置する、請求項17に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項19】
前記肝臓特異的マイクロRNAがmiR-122である、請求項17または請求項18に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項20】
キメラファイバータンパク質をコードする、請求項1から19のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項21】
前記キメラファイバータンパク質が、第1のアデノウイルス血清型由来のファイバーシャフトと、第2のアデノウイルス血清型由来のファイバーノブとを含む、請求項20に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項22】
前記第1のアデノウイルス血清型がAd5であり、前記第2のアデノウイルス血清型が、Ad3、Ad9、Ad11、Ad12、Ad34またはAd37である、請求項21に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項23】
前記第1のアデノウイルス血清型がAd5であり、前記第2のアデノウイルス血清型がAd34である、請求項21に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項24】
前記Ad34ファイバーノブが、CD46との結合を妨げる、または阻害する改変を含む、請求項23に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項25】
RGDペプチドを含むように改変されたファイバータンパク質をコードする、請求項1から23のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項26】
異種オープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項27】
前記異種ORFが、レポーター遺伝子を含む、請求項26に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項28】
前記異種ORFが、治療用遺伝子を含む、請求項26に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項29】
前記異種ORFが、自己切断ペプチドコード配列および前記ADPコード配列と同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結している、請求項26から28のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項30】
前記自己切断ペプチドが、2Aペプチドである、請求項29に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項31】
前記2Aペプチドが、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)2A(P2A)ペプチド、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチドまたはThosea asignaウイルス(TaV)2A(T2A)ペプチドを含む、請求項30に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項32】
前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質をコードする、請求項27および29から31のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項33】
前記改変されたE1aタンパク質が、LXCXEモチーフの欠失を含み;および
前記ゲノムが、自己切断ペプチドコード配列および前記ADPコード配列と同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結している異種ORFを含む、請求項1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項34】
前記E3領域が、E3遺伝子12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7kの各々の欠失を含む、請求項33に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項35】
前記E4orf6/7コード配列の欠失を含む、請求項33から34のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項36】
YPet-P2A-ADP融合タンパク質をコードする、請求項33から35のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項37】
肝臓からアデノウイルスを脱標的化するための少なくとも1つの改変を含む、請求項33から36のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項38】
ヘキソンタンパク質中に変異を含む、請求項37に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項39】
前記ヘキソン変異が、E451Q変異である、請求項38に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項40】
前記ゲノムが、キメラファイバータンパク質をコードし、前記キメラファイバータンパク質が、第1のアデノウイルス血清型由来のファイバーシャフトと、第2のアデノウイルス血清型由来のファイバーノブとを含む、請求項33から39のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項41】
第1のアデノウイルス血清型が、Ad5であり、前記第2のアデノウイルス血清型が、Ad3、Ad9、Ad11、Ad12、Ad34またはAd37である、請求項40に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項42】
前記第1のアデノウイルス血清型が、Ad5であり、前記第2のアデノウイルス血清型が、Ad34である、請求項41に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項43】
キャプシド交換型アデノウイルスをコードする、請求項1から42のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項44】
前記組換えアデノウイルスゲノムが、Ad5ゲノムである、請求項1から43のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項45】
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59に対して少なくとも95%同一である、請求項1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項46】
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59に対して少なくとも99%同一である、請求項1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項47】
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59を含む、請求項1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
【請求項48】
請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムを含む、単離された細胞。
【請求項49】
請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムまたは請求項48に記載の単離された細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項50】
請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムを含む単離されたアデノウイルス。
【請求項51】
請求項50に記載の単離されたアデノウイルスと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項52】
腫瘍細胞の生存度を阻害する方法における使用のための、請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムもしくは請求項50に記載の単離されたアデノウイルスを含む組成物、または請求項49もしくは請求項51に記載の組成物であって、前記方法は、前記腫瘍細胞を、請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム、請求項50に記載の単離されたアデノウイルスまたは請求項49もしくは請求項51に記載の組成物と接触させることを含む、組成物。
【請求項53】
前記方法が、in vitro法である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記方法が、in vivo法であり、前記腫瘍細胞を接触させることが、治療有効量の、前記組換えアデノウイルスゲノム、前記アデノウイルスまたは前記組成物を、腫瘍を有する被験体に投与することを含む、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
被験体における腫瘍の進行を阻害するかまたは腫瘍の体積を低減させる方法における使用のための、請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムもしくは請求項50に記載の単離されたアデノウイルスを含む組成物、または請求項49もしくは請求項51に記載の組成物であって、前記方法は、前記被験体に、請求項1から47のいずれか一項に記載の前記組換えアデノウイルスゲノム、請求項50に記載の単離されたアデノウイルスまたは請求項49もしくは請求項51に記載の組成物を投与し、それによって、前記被験体における腫瘍の進行を阻害するか、または腫瘍の体積を低減させることを含む、組成物。
【請求項56】
被験体におけるがんを処置する方法における使用のための、請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムもしくは請求項50に記載の単離されたアデノウイルスを含む組成物、または請求項49もしくは請求項51に記載の組成物であって、前記方法は、前記被験体に、請求項1から47のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム、請求項50に記載の単離されたアデノウイルスまたは請求項49もしくは請求項51に記載の組成物を投与し、それによって、前記被験体におけるがんを処置することを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年4月9日に出願された米国仮出願第62/655,009号(その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、ウイルス複製を増強する、E3領域中の欠失またはその他の改変を有する腫瘍選択的組換えアデノウイルスに関する。本開示は、がん処置のための組換えアデノウイルスの使用にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
がんは、毎年50万人超の死亡の主な原因である複合な、衰弱性疾患である。がんのためのより有効な、選択的な、安全な処置が大いに必要である。化学療法および手術などの既存の処置は、すべての悪性細胞を排除することはまれであり、治療利益を上回り得る有害な副作用を示すことも多い。
【0004】
現在のがん処置の欠点の多くに対処する可能性を有する1つのアプローチとして、腫瘍溶解性アデノウイルス療法がある(Pesonen et al., Molecular Pharmaceutics 8(1):12-28, 2010)。アデノウイルス(Ad)は、自己複製性生物学的機械である。アデノウイルスは、タンパク質コートで覆われた直鎖二本鎖36kb DNAゲノムからなる。アデノウイルスは、細胞の複製機構に侵入し、乗っ取って複製し、組み立てられると、溶解性細胞死を誘導して、周囲の細胞に広がる。これらの極めて同一の細胞制御が、がんでは変異による標的とされる。この知見を利用して、誘導ミサイルのように働く、腫瘍細胞に特異的に感染し、複製し、細胞を溶解して、可能性ある耐性を克服しながら遠位転移を見つけ出し、破壊できる数千のウイルス後代を放出する合成ウイルスを作出できる。したがって、腫瘍溶解性ウイルス設計の目的は、がん細胞において特異的に複製するが、正常細胞は無傷のまま残すウイルスを作製することである。しかし、がん細胞において選択的に複製し得るウイルスの設計には大きな課題があった。したがって、高効率でがん細胞において選択的に複製するウイルスが依然として必要である。さらに、多数の腫瘍溶解性ウイルスが、臨床試験においてヒトがん患者で安全が証明されているが、ほとんどは、進行がんの処置における有効性で欠けていた。そのようなものとして、依然として、現在の最先端技術と比較して増強された効力を有するウイルスを開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pesonen et al., Molecular Pharmaceutics 8(1):12-28, 2010
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
腫瘍細胞において増強された複製動態を示す組換えアデノウイルスが開示される。腫瘍細胞において複製が増強された組換えアデノウイルスをコードする組換えアデノウイルスゲノムも記載される。
【0007】
改変されたE1Aタンパク質をコードするE1A領域と、アデノウイルス死タンパク質(ADP)をコードし、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7kから選択される少なくとも3つのE3遺伝子のコード配列中に改変を有し、改変が、コードされるタンパク質の発現を妨げるE3領域と、E4orf6/7コード配列の改変(欠失など)を含むE4領域とを含む組換えアデノウイルスゲノムが、本明細書において提供される。
【0008】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、標的化リガンドをさらにコードする、キメラファイバータンパク質をさらにコードする、肝臓からアデノウイルスを脱標的化するための少なくとも1つの改変をさらに含む、異種オープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含む、E4orf3の欠失をさらに含む、またはそれらの任意の組合せである。
【0009】
本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノムを含む単離された細胞が、さらに提供される。また、組換えアデノウイルスゲノムを含む組成物も提供される。
【0010】
本明細書において開示される組換えアデノウイルスを含む組成物と同様に、組換えアデノウイルスゲノムによってコードされる組換えアデノウイルスが、さらに提供される。
【0011】
腫瘍細胞を、本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノム、組換えアデノウイルスまたは組成物と接触させることによって、腫瘍細胞の生存度を阻害する方法が、さらに提供される。
【0012】
また、被験体に、治療有効量の、本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノム、組換えアデノウイルスまたは組成物を投与することによって、被験体における腫瘍の進行を阻害するかまたは腫瘍の体積を低減させる方法および被験体におけるがんを処置する方法も提供される。
【0013】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58および59のうちいずれか1つに対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有する組換えアデノウイルスゲノムも記載される。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58および59のうちいずれか1つに対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列によってコードされる組換えアデノウイルスが、さらに記載される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
改変されたE1aタンパク質をコードするE1A領域と、
アデノウイルス死タンパク質(ADP)をコードし、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7kから選択される少なくとも3つのE3遺伝子のコード配列中に改変を含み、前記改変が、前記コードされるタンパク質の発現を妨げる、E3領域と、
E4orf6/7コード配列の欠失を含むE4領域と
を含む、組換えアデノウイルスゲノム。
(項目2)
前記改変されたE1aタンパク質が、
LXCXEモチーフの欠失、
残基2~11の欠失、
C124G置換、
Y47H置換、
Y47H置換およびC124G置換、または
Y47H置換、C124G置換および残基2~11の欠失
を含む、項目1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目3)
前記少なくとも3つのE3遺伝子が、12.5k、6.7kおよび19kを含む、項目1または項目2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目4)
前記12.5k、6.7kおよび19k遺伝子が欠失している、項目3に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目5)
前記12.5k、6.7kおよび19k遺伝子が、開始コドンの変異、未熟停止コドンを導入する変異、または両方を含む、項目3に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目6)
前記少なくとも3つのE3遺伝子が、RIDα、RIDβおよび14.7kを含む、項目1または項目2に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目7)
前記RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が欠失している、項目6に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目8)
前記RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が、開始コドンの変異、未熟停止コドンを導入する変異、または両方を含む、項目6に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目9)
前記少なくとも3つのE3遺伝子が、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7kを含む、項目1から8のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目10)
前記12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が欠失している、項目9に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目11)
前記12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が、開始コドンの変異、未熟停止コドンを導入する変異、または両方を含む、項目9に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目12)
E4orf3の欠失をさらに含む、項目1から11のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目13)
FK506結合タンパク質(FKBP)に融合された標的化リガンドと、野生型FKBP-ラパマイシン結合(FRB)タンパク質またはラパログに結合可能な変異体FRBタンパク質に融合されたアデノウイルスファイバータンパク質とをさらにコードする、項目1から12のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目14)
前記標的化リガンドが、単一ドメイン抗体である、項目13に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目15)
前記単一ドメイン抗体が、EGFRに対して特異的である、項目14に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目16)
肝臓からアデノウイルスを脱標的化するための少なくとも1つの改変を含む、項目1から15のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目17)
ヘキソンタンパク質中に変異を含む、項目16に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目18)
前記ヘキソン変異が、E451Q変異である、項目17に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目19)
肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位をさらに含む、項目16から18のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目20)
前記肝臓特異的マイクロRNAのための前記1つまたは複数の結合部位が、E1Aの3’-UTR中に位置する、項目19に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目21)
前記肝臓特異的マイクロRNAがmiR-122である、項目19または項目20に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目22)
キメラファイバータンパク質をコードする、項目1から21のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目23)
前記キメラファイバータンパク質が、第1のアデノウイルス血清型由来のファイバーシャフトと、第2のアデノウイルス血清型由来のファイバーノブとを含む、項目22に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目24)
前記第1のアデノウイルス血清型がAd5であり、前記第2のアデノウイルス血清型が、Ad3、Ad9、Ad11、Ad12、Ad34またはAd37である、項目23に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目25)
前記第1のアデノウイルス血清型がAd5であり、前記第2のアデノウイルス血清型がAd34である、項目23に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目26)
前記Ad34ファイバーノブが、CD46との結合を妨げる、または阻害する改変を含む、項目25に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目27)
RGDペプチドを含むように改変されたファイバータンパク質をコードする、項目1から25のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目28)
異種オープンリーディングフレーム(ORF)をさらに含む、項目1から27のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目29)
前記異種ORFが、レポーター遺伝子を含む、項目28に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目30)
前記異種ORFが、治療用遺伝子を含む、項目28に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目31)
前記異種ORFが、自己切断ペプチドコード配列および前記ADPコード配列と同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結している、項目28から30のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目32)
前記自己切断ペプチドが、2Aペプチドである、項目31に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目33)
前記2Aペプチドが、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)2A(P2A)ペプチド、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチドまたはThosea asignaウイルス(TaV)2A(T2A)ペプチドを含む、項目32に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目34)
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59に対して少なくとも95%同一である、項目1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目35)
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59に対して少なくとも99%同一である、項目1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目36)
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59を含む、項目1に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目37)
項目1から36のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムを含む、単離された細胞。
(項目38)
項目1から36のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムまたは項目37に記載の単離された細胞と、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
(項目39)
項目1から36のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムを含む単離されたアデノウイルス。
(項目40)
項目39に記載の組換えアデノウイルスと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
(項目41)
腫瘍細胞の生存度を阻害する方法であって、前記腫瘍細胞を、項目1から36のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム、項目39に記載のアデノウイルスまたは項目38もしくは項目40に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
(項目42)
in vitro法である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記方法が、in vivo法であり、前記腫瘍細胞を接触させることが、治療有効量の、前記組換えアデノウイルスゲノム、前記アデノウイルスまたは前記組成物を、腫瘍を有する被験体に投与することを含む、項目41に記載の方法。
(項目44)
被験体における腫瘍の進行を阻害するかまたは腫瘍の体積を低減させる方法であって、前記被験体に、治療有効量の、項目1から36のいずれか一項に記載の前記組換えアデノウイルスゲノム、項目39に記載のアデノウイルスまたは項目38もしくは項目40に記載の組成物を投与し、それによって、前記被験体における腫瘍の進行を阻害するか、または腫瘍の体積を低減させることを含む、方法。
(項目45)
被験体におけるがんを処置する方法であって、前記被験体に、治療有効量の、項目1から36のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノム、項目39に記載の組換えアデノウイルスまたは項目38もしくは項目40に記載の組成物を投与し、それによって、前記被験体におけるがんを処置することを含む、方法。
(項目46)
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号2、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号45、配列番号46、配列番号55、配列番号56または配列番号58に対して少なくとも95%同一である、組換えアデノウイルスゲノム。
(項目47)
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号2、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号45、配列番号46、配列番号55、配列番号56または配列番号58に対して少なくとも99%同一である、項目46に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目48)
前記ゲノムの前記ヌクレオチド配列が、配列番号2、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号45、配列番号46、配列番号55、配列番号56または配列番号58を含む、項目46に記載の組換えアデノウイルスゲノム。
(項目49)
項目46から48のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスゲノムを含む単離されたアデノウイルス。
【0014】
本開示の上述およびその他の目的および特性は、以下の詳細な説明、続いて添付の図面への参照により、さらに明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、A549肺がん細胞におけるWT Ad5レポーターウイルスAdSyn-CO421およびE3欠失AdSyn-CO874の複製を比較する一対のグラフである。AdSyn-CO874の7つのE3遺伝子のうちの6つの欠失は、WTウイルスと比較して強化された複製をもたらした。
【0016】
図2図2は、腫瘍溶解性ウイルスAdSyn-CO821(E3遺伝子RIDα、RIDβおよび14.7kを欠く)の複製動態を、6つのE3遺伝子(RIDα、RIDβ、4.7k、12.5k、6.7kおよび19.k)を欠いている対応するウイルスAdSyn-CO819と比較する一対のグラフおよび表である。AdSyn-CO819は、試験した全てのがん細胞株において優れた複製を示した。
【0017】
図3図3は、コクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)陰性細胞におけるWTAd5レポーターウイルスAdSyn-CO421の複製動態をAdSyn-CO964と示す一対のグラフである。AdSyn-CO964は、Ad5シャフトおよびAd34ノブで構成されるキメラファイバータンパク質を発現する合成Ad5ウイルスである。Ad34ノブドメインの発現は、CAR陰性細胞におけるウイルス複製の強化につながった。
【0018】
図4図4は、CAR陰性細胞における、E3欠失腫瘍溶解性のAd5(AdSyn-CO1000)の複製を、Ad34ノブドメイン(AdSyn-CO1042)を発現する、対応するE3欠失腫瘍溶解性ウイルスと比較する一対のグラフである。AdSyn-CO1042は、複数の細胞株においてAd5ノブ発現ウイルスと比較して強化された複製動態を示した。
【0019】
図5図5A~5Bは、A549肺腫瘍異種移植モデルにおけるAdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042のin vivo効能を示す一対のグラフである。乳房皮下脂肪に5×10細胞を注入することによって、ヒトA549腫瘍細胞をヌードマウスに接種した。腫瘍が約164mmの平均体積に到達したとき(0日目)、マウスを異なる処置群(1群につきn=8マウス)に無作為化した。マウスに、PBS(食塩水)の単一の腫瘍内(IT)注射または示したウイルスの8×10PFUの単一の注射を与えた。AdSyn-CO421はYPet-P2A-ADP融合としてYPet蛍光団をコードするが、さもなければ野生型Ad5である。AdSyn-CO1000(図5A)およびAdSyn-CO1042(図5B)の両方は、「野生型」AdSyn-CO421と比較して強化された抗腫瘍活性を示した。
【0020】
図6図6は、正常位HS578Tトリプルネガティブ乳がんモデルにおけるAdSyn-CO1042のin vivo効能を示すグラフである。右の乳房皮下脂肪に100μlのHBSS中の5×10細胞を注入することによって、ヒトHS578T腫瘍細胞を7週齢NSGマウスに接種した。腫瘍が約168mmの平均体積に到達したとき(0日目)、マウスを異なる処置群(1群につきn=8マウス)に無作為化した。マウスに、0、7および14日目に50μlの全体積のPBS(食塩水)またはAdSyn-CO1042(2×10PFU)の3用量を与えた。食塩水処置群の全ての動物は、腫瘍負荷のために30日目以前に屠殺しなければならなかった。
【0021】
図7A図7A~7Bは、C57BL/6マウスにおける組換えアデノウイルスの安全性および毒性の研究の結果を示すグラフである。0日目および再び7日目に異なる群のマウス(1群につきn=5マウス)に、200μlの体積の4つの異なるウイルスを示した用量で静脈内投与した。肝臓毒性を調査するために、生存(図7A)および上昇した肝酵素(図7B)についてマウスを次に分析した。(図7A)生存および毒性の肉眼的徴候について、マウスを14日目までモニタリングした。WT Ad5は4×10PFUの用量で致死性の毒性を引き起こしたが、AdSyn-CO181およびAdSyn-CO331はこの用量で許容された。AdSyn-CO1042は、2×1010PFUのさらにより高い用量でも許容された。(図7B)血液試料を-2日目(投与前)、2日目(投与1の48時間後)および9日目(投与2の48時間後)に全てのマウスから採取し、以降の分析のために冷凍した。血液試料は、様々な肝酵素、例えばアラニントランスアミナーゼ(ALT)およびアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の存在について調査した。示す結果は、様々な処置群からの2日目の出血からの平均ASTおよびALTレベルである。全てのマウスからのASTおよびALTの平均投与前レベルも示す。
図7B図7A~7Bは、C57BL/6マウスにおける組換えアデノウイルスの安全性および毒性の研究の結果を示すグラフである。0日目および再び7日目に異なる群のマウス(1群につきn=5マウス)に、200μlの体積の4つの異なるウイルスを示した用量で静脈内投与した。肝臓毒性を調査するために、生存(図7A)および上昇した肝酵素(図7B)についてマウスを次に分析した。(図7A)生存および毒性の肉眼的徴候について、マウスを14日目までモニタリングした。WT Ad5は4×10PFUの用量で致死性の毒性を引き起こしたが、AdSyn-CO181およびAdSyn-CO331はこの用量で許容された。AdSyn-CO1042は、2×1010PFUのさらにより高い用量でも許容された。(図7B)血液試料を-2日目(投与前)、2日目(投与1の48時間後)および9日目(投与2の48時間後)に全てのマウスから採取し、以降の分析のために冷凍した。血液試料は、様々な肝酵素、例えばアラニントランスアミナーゼ(ALT)およびアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の存在について調査した。示す結果は、様々な処置群からの2日目の出血からの平均ASTおよびALTレベルである。全てのマウスからのASTおよびALTの平均投与前レベルも示す。
【0022】
図8図8は、BALB/cマウスにおけるAdSyn-CO1000の毒性を示す表である。0日目、6日目および12日目に異なる群のマウス(1群につきn=5マウス)に、200μlの体積の2つの異なるウイルスを示した用量で静脈内投与した。毒性を調査するために、マウスを次に生存について分析した。WT Ad5は0.8×10PFUの用量で5匹のマウスのうちの2匹において致死性の毒性を誘導し、3.2×10PFUのより高い用量で全てのマウスを死滅させたのに対して、AdSyn-CO1000は1×10PFUおよび4×10PFUのわずかにより高い用量でより安全であった。
【0023】
図9図9は、A549肺腫瘍異種移植モデルにおける静脈内送達されたAdSyn-CO1042のin vivo効能を示すグラフである。乳房皮下脂肪に5×10細胞を注入することによって、ヒトA549腫瘍細胞をNSGマウスに接種した。腫瘍が約184mmの平均体積に到達したとき(0日目)、マウスを異なる処置群(1群につきn=8マウス)に無作為化した。マウスに、PBS(食塩水)の単一の注射またはAdSyn-CO1042の2×10PFUの単一のIV注射を与えた。食塩水処置群の全ての動物は、腫瘍負荷のために33日目以前に屠殺しなければならなかった。野生型Ad5は2×10PFUの用量で送達できなかったが、その理由は、この用量が死をもたらすからである。
【0024】
図10図10は、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042の腫瘍選択的複製を示すグラフのセットである。ヒトA549細胞(肺腫瘍)またはヒト初代小気道上皮細胞(SAEC-正常肺)を、4つの異なる腫瘍溶解性ウイルスによって1細胞につき0.12ウイルス粒子のMOIで感染させた。全てのウイルスは、ウイルス複製/増大の経時的定量化を可能にするレポーターとして、YPet蛍光団をコードする。ウイルス感染の直後に、6~7日間にわたってYPet+ウイルス感染細胞の数を定量化するために、IncuCyte ZOOM画像化システムにおいて1時間ごとに1回、ウイルス感染細胞を画像化した。データは、経時的なYPet+細胞の数として表される。AdSyn-CO1000が腫瘍選択的複製を付与するΔLXCXEおよびΔE4orf6/7変異ならびに肝臓脱標的化ヘキソン変異を有すること以外は、AdSyn-CO874およびAdSyn-CO1000は同一のウイルスである。同様に、AdSyn-CO1042がΔLXCXEおよびΔE4orf6/7変異ならびに肝臓脱標的化ヘキソン変異を有すること以外は、AdSyn-CO1041およびAdSyn-CO1042は同一のウイルスである。腫瘍細胞では、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042は、AdSyn-CO874およびAdSyn-CO1041とそれぞれ比較してウイルス増大/複製の類似したレベルを示した。しかし正常肺細胞では、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042は、AdSyn-CO874およびAdSyn-CO1041と比較して有意に減弱された増大/複製を示した。
【0025】
図11図11は、アデノウイルス複製に及ぼすE3B領域の欠失または抑止の影響を実証する棒グラフである。ヒトA549肺腫瘍細胞における複製速度を判定するために、蛍光ベースのウイルス動態学的(FBVK)アッセイを使用して4つの異なる組換えウイルスを調査した。グラフは、Ypet蛍光性タンパク質をコードする各組換えアデノウイルスのln-slope値を示す。AdSyn-CO869では、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子(E3B遺伝子)は、全てゲノムから欠失していた。AdSyn-CO996では、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子(E3B遺伝子)の発現は、開始コドンを変異させることによって、または未熟停止コドンをコードするようにゲノムを変異させることによって抑止されていた。AdSyn-CO874では、6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k)は、ゲノムから欠失していた。
【0026】
図12図12は、アデノウイルス複製に及ぼすE3A領域の欠失または抑止の影響を示す棒グラフである。ヒトA549肺腫瘍細胞における複製速度を判定するために、FBVKアッセイで4つの異なるウイルスを調査した。グラフは、Ypet蛍光性タンパク質をコードする各組換えアデノウイルスのln-slope値を示す。AdSyn-CO1002では、12.5k、6.7kおよび19k遺伝子(E3A遺伝子)は、全てゲノムから欠失していた。AdSyn-CO999では、同じE3A遺伝子が欠失し、このウイルスはE1A ΔLXCXE、ΔE4orf6/7およびヘキソン[E451Q]改変をさらに含む。AdSyn-CO1000では、E3AおよびE3B遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k)はゲノムから欠失し、このウイルスはE1A ΔLXCXE、ΔE4orf6/7およびヘキソン[E451Q]改変をさらに含む。
【0027】
図13図13は、E4orf3の欠失がウイルス複製に影響を及ぼさないことを示す棒グラフである。A549ヒト肺腫瘍細胞における複製速度を判定するために、FBVKアッセイで2つのウイルスを調査した。棒グラフは、各組換えアデノウイルスのln-slope値を示す。AdSyn-CO1042およびAdSyn-CO1347は、AdSyn-CO1347におけるE4orf3の欠失を除いて同一である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
配列表
添付の配列表に列挙されている核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R.1.822に定義されるように、ヌクレオチド塩基の標準的な略字およびアミノ酸の3文字コードを使用して示されている。それぞれの核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、相補鎖は、提示された鎖に対する任意の参照により含まれると理解される。配列表は、2019年4月8日に作成された1.36MBのASCIIテキストファイルとして提出されており、参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表においては、以下の通りである。
配列番号1は、合成アデノウイルスAdSyn-CO335のヌクレオチド配列である。
配列番号2は、合成アデノウイルスAdSyn-CO821のヌクレオチド配列である。
配列番号3は、合成アデノウイルスAdSyn-CO820のヌクレオチド配列である。
配列番号4は、合成アデノウイルスAdSyn-CO819のヌクレオチド配列である。
配列番号5は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1020のヌクレオチド配列である。
配列番号6は、合成アデノウイルスAdSyn-CO874のヌクレオチド配列である。
配列番号7は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1000のヌクレオチド配列である。
配列番号8は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1067のヌクレオチド配列である。
配列番号9は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1068のヌクレオチド配列である。
配列番号10は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1069のヌクレオチド配列である。
配列番号11は、合成アデノウイルスAdSyn-CO964のヌクレオチド配列である。
配列番号12は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1041のヌクレオチド配列である。
配列番号13は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1042のヌクレオチド配列である。
配列番号14は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1139のヌクレオチド配列である。
配列番号15は、P2Aのアミノ酸配列である。
配列番号16は、F2Aのアミノ酸配列である。
配列番号17は、E2Aのアミノ酸配列である。
配列番号18は、T2Aのアミノ酸配列である。
配列番号19は、N末端にGSGを含む改変されたP2Aのアミノ酸配列である。
配列番号20は、N末端にGSGを含む改変されたF2Aのアミノ酸配列である。
配列番号21は、N末端にGSGを含む改変されたE2Aのアミノ酸配列である。
配列番号22は、N末端にGSGを含む改変されたT2Aのアミノ酸配列である。
配列番号23は、Ad5 E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号24は、Ad5 E1A ΔLXCXEのアミノ酸配列である。
配列番号25は、Ad5 E1A C124Gのアミノ酸配列である。
配列番号26は、Ad5 E1A Δ2-11のアミノ酸配列である。
配列番号27は、Ad5 E1A Y47H C124Gのアミノ酸配列である。
配列番号28は、Ad5 E1A Δ2-11 Y47H C124Gのアミノ酸配列である。
配列番号29は、Ad5 E4orf6/7のアミノ酸配列である。
配列番号30は、Ad5ファイバーのアミノ酸配列である。
配列番号31は、Ad5 FRB-ファイバーのアミノ酸配列である。
配列番号32は、Ad5 FRB*-ファイバーのアミノ酸配列である。
配列番号33は、EGFRVHH-GS-FKBPのアミノ酸配列である。
配列番号34は、Ad5ヘキソンのアミノ酸配列である。
配列番号35は、Ad5ヘキソンE451Qのアミノ酸配列である。
配列番号36は、種A(Ad12)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号37は、種B(Ad7)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号38は、種C(Ad2)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号39は、種C(Ad5)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号40は、種D(Ad9)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号41は、種E(Ad4)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号42は、種F(Ad40)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号43は、種G(Ad52)E1Aのアミノ酸配列である。
配列番号44は、合成アデノウイルスAdSyn-CO421のヌクレオチド配列である。
配列番号45は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1056のヌクレオチド配列である。
配列番号46は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1250のヌクレオチド配列である。
配列番号47は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1089のヌクレオチド配列である。
配列番号48は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1320のヌクレオチド配列である。
配列番号49は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1321のヌクレオチド配列である。
配列番号50は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1325のヌクレオチド配列である。
配列番号51は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1342のヌクレオチド配列である。
配列番号52は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1362のヌクレオチド配列である。
配列番号53は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1403のヌクレオチド配列である。
配列番号54は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1404のヌクレオチド配列である。
配列番号55は、合成アデノウイルスAdSyn-CO869のヌクレオチド配列である。
配列番号56は、合成アデノウイルスAdSyn-CO996のヌクレオチド配列である。
配列番号57は、合成アデノウイルスAdSyn-CO999のヌクレオチド配列である。
配列番号58は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1002のヌクレオチド配列である。
配列番号59は、合成アデノウイルスAdSyn-CO1347のヌクレオチド配列である。
配列番号60は、Ad34ファイバーのアミノ酸配列である。
【0029】
I.略語
Ad アデノウイルス
ADP アデノウイルス死タンパク質
CAR コクサッキーアデノウイルス受容体
EGFR 上皮増殖因子受容体
ERAV ウマ鼻炎Aウイルス
FBVK 蛍光に基づくウイルス動態
FKBP FK506結合タンパク質
FMDV 口蹄疫ウイルス(food and mouth disease virus)
FRB FKBP-ラパマイシン結合
IV 静脈内
IT 腫瘍内
miR マイクロRNA
MOI 感染多重度
mTOR ラパマイシンの哺乳動物標的
ORF オープンリーディングフレーム
PSA 前立腺特異的抗原
PTV1 ブタテッショウウイルス-1
Rb 網膜芽細胞腫
RGD アルギニン-グリシン-アスパラギン酸
TaV Thosea asignaウイルス
UTR 非翻訳領域
WT 野生型
【0030】
II.用語および方法
別途注記されない限り、技術用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学における一般用語の定義は、Oxford University Pressによって1994年に刊行されたBenjamin Lewin、Genes V(ISBN 0-19-854287-9);Blackwell Science Ltd.によって1994年に刊行されたKendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology(ISBN 0-632-02182-9);およびVCH Publishers, Inc.によって1995年に刊行されたRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference(ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。
【0031】
本開示の様々な実施形態の考察を容易にするために、特定の用語の説明を、以下に提供する。
【0032】
2Aペプチド:一部のRNAウイルス、例えば、ピコルナウイルスによってコードされる自己切断ペプチドの一種である。2Aペプチドは、リボソームが2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするようにし、2A配列の末端と下流のペプチドとの分離をもたらすことによって機能する(Kimら、PLoS One、6巻(4号)、e18556、2011年)。「切断」は、2AペプチドのC末端に見出されるグリシン残基とプロリン残基との間に生じる。例示的な2Aペプチドとしては、本明細書において配列番号15~18として記載されている、Thosea asignaウイルス(TaV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)、および口蹄疫ウイルス(FMDV)によってコードされる2Aペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、2Aペプチドは、切断効率を改善するために、N末端に、Gly-Ser-Glyを含む(配列番号19~22)。
【0033】
アデノウイルス:線形二本鎖DNAゲノムおよび正二十面体キャプシドを有する、非エンベロープ型ウイルスである。ヒトアデノウイルスには、少なくとも68種類の血清型が公知であり、7つの種(種A、B、C、D、E、F、およびG)に分類される。異なる血清型のアデノウイルスは、異なる種類の疾患と関連付けられており、一部の血清型は、呼吸器疾患(主として種BおよびC)、結膜炎(種BおよびD)、ならびに/または胃腸炎(種FおよびG)を引き起こす。
【0034】
アデノウイルス死タンパク質(ADP):他の細胞に感染するために細胞の溶解およびアデノウイルスの放出を媒介する、アデノウイルス感染の後期に合成されるタンパク質である。ADPは、核膜、小胞体、およびゴルジ体に局在化する、101個のアミノ酸の内在性膜糖タンパク質である。ADPは、以前、E3-11.6Kと称されていた)。
【0035】
投与:被験体に、治療剤(例えば、組換えウイルスまたは組換えウイルスゲノム)などの薬剤を、任意の有効な経路によって提供することまたは与えることである。例示的な投与経路としては、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、骨内および静脈内など)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻内、膣、および吸入の経路が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
抗体:抗原のエピトープを認識し、結合する(例えば、特異的に認識し、特異的に結合する)、少なくとも軽鎖および/または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンド。免疫グロブリン分子は、重鎖および軽鎖から構成され、その各々は、重鎖可変(V)領域および軽鎖可変(V)領域と呼ばれる可変領域を有し、それらは一緒になって抗体によって認識される抗原を結合することに関与している。抗体は、無傷の免疫グロブリンおよび抗体のバリアントおよび一部(断片)、例えば、単一ドメイン抗体(例えば、VHドメイン抗体またはラクダ科VHH抗体)、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’断片、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)を含む。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域および免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合されている融合タンパク質であり、一方dsFvでは、鎖の会合を安定化するためにジスルフィド結合を導入するように、鎖が変異されている。「抗体」という用語はまた、遺伝子操作された形態、例えば、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)およびヘテロコンジュゲート抗体も含む(例えば、二重特異性抗体)。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL); Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W. H. Freeman & Co., New York, 1997も参照のこと。
【0037】
化学療法剤:異常な細胞成長によって特徴付けられる疾患の処置において治療的有用性を有する任意の化学薬剤。このような疾患として、腫瘍、新生物およびがんならびに過形成性成長によって特徴付けられる疾患、例えば、乾癬が挙げられる。一実施形態では、化学療法剤は、放射性化合物である。一実施形態では、化学療法剤は、生物製剤、例えば、治療用モノクローナル抗体(例えば、PD-1、PDL-1、CTLA-4、EGFR、VEGFに対して特異的なものなど)である。当業者は、有用である化学療法剤を容易に同定することができる(例えば、Slapak and Kufe, Principles of Cancer Therapy, Chapter 86 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 14th edition; Perry et al., Chemotherapy, Ch. 17 in Abeloff, Clinical Oncology 2nd ed., (C) 2000 Churchill Livingstone, Inc; Baltzer, L., Berkery, R. (eds.): Oncology Pocket Guide to Chemotherapy, 2nd ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1995; Fischer, D.S., Knobf, M.F., Durivage, H.J. (eds): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 1993を参照されたい)。併用化学療法は、がんを処置するための1種を超える薬剤の投与である。
【0038】
キメラ:起源が異なる少なくとも2つの部分から構成されるものである。本開示の文脈において、「キメラアデノウイルス」とは、少なくとも2つの異なる血清型に由来する(例えば、Ad5および第2の血清型のアデノウイルスに由来する)遺伝物質および/またはタンパク質を有するアデノウイルスである。この文脈において、「キャプシド交換型」アデノウイルスとは、キャプシドタンパク質が、1つの血清型のアデノウイルスに由来し、残りのタンパク質が、別のアデノウイルス血清型に由来する、キメラアデノウイルスを指す。同様に、「キメラファイバー」とは、少なくとも2つの異なる血清型のアデノウイルスに由来するアミノ酸配列を有するファイバータンパク質である。例えば、キメラファイバーは、Ad5由来のファイバーシャフトおよび第2の血清型のアデノウイルス(例えば、Ad34)に由来するファイバーノブから構成され得る。
【0039】
接触させること:直接的な物理的会合におくことであり、固体形態および液体形態の両方を含む。
【0040】
欠失:アデノウイルスタンパク質コード配列(例えば、E4orf6/7コード配列)の「欠失」を含むアデノウイルスゲノムとは、タンパク質コード配列の完全欠失またはタンパク質の発現がないことをもたらす部分欠失を有するアデノウイルスを指す。
【0041】
脱標的化された:本開示の文脈では、「脱標的化された」アデノウイルスは、特定の細胞または組織種にもはや感染しない、またはもはや実質的に感染しないような、ウイルスの親和性を変更する1つまたは複数の改変を含む、組換えまたは合成アデノウイルスである。一部の実施形態では、組換えまたは合成アデノウイルスは、キャプシド変異、例えば、肝臓からウイルスを脱標的化するヘキソンタンパク質における変異(例えば、E451Q)を含む。一部の実施形態では、組換えまたは合成アデノウイルスは、特定の細胞または組織種に天然に感染しない、または実質的に感染しないアデノウイルスに由来する天然キャプシドを含む。本明細書における一部の実施形態では、組換えまたは合成アデノウイルスは、肝臓脱標的化される、および/または脾臓脱標的化される。
【0042】
E1A:アデノウイルス初期領域1A(E1A)遺伝子およびこの遺伝子から発現されるポリペプチドである。E1Aタンパク質は、細胞を、細胞周期に入れることによって、ウイルスゲノム複製における役割を果たす。本明細書において使用されるとき、「E1Aタンパク質」という用語は、E1A遺伝子から発現されるタンパク質を指し、この用語には、あらゆるアデノウイルス血清型によって産生されるE1Aタンパク質が含まれる。例として、野生型Ad5 E1Aタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号23として本明細書に示されており、改変されたAd5 E1A配列は、配列番号24~28として本明細書において提供される。さらに、様々な異なるアデノウイルス血清型に由来する野生型E1Aタンパク質配列は、配列番号36~43として本明細書において示されている。一部の実施形態では、改変されたE1Aタンパク質は、配列番号24、25、26、27、28、36、37、38、39、40、41、42または43のうちいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含む。本明細書において企図される改変されたE1Aタンパク質は、腫瘍細胞と比較して正常細胞における組換えアデノウイルスの複製欠損に寄与するものである。本明細書において開示される改変されたE1Aタンパク質は、Ad5 E1Aタンパク質である。しかし、任意の所望の血清型において対応する改変を行うことができ、従って、本開示によって包含される。例えば、ヒトアデノウイルスのすべての種が、LXCXEモチーフを含有し、Ad5では、LTCHEに対応する(配列番号23の残基122~126)。同様に、残基2~11の欠失およびY47HおよびC124G置換は、Ad5(例えば、配列番号5)に関して番号付けられているが、任意の他の血清型に導入され得る。
【0043】
E3:アデノウイルス初期領域3(E3)遺伝子および遺伝子から発現されるポリペプチドである。ヒトアデノウイルスでは、7種のE3タンパク質(5’から3’にコードされる):12.5k(gp12.5kDaとしても知られる)、6.7k(CR1αとしても知られる)、19k(gp19kとしても知られる)、ADP(CR1βまたは11.6kとしても知られる)、RIDα(10.4k)、RIDβ(14.9k)および14.7Kがある。RIDα、RIDβおよび14.7kタンパク質は、受容体内部移行分解複合体(receptor internalization and degradation complex)(RID)を成し、これが、核膜に局在化し、感染した細胞を宿主の抗ウイルス応答から保護するように、CD95(FasL受容体)ならびにTNFR1および2(TNF/TRAIL受容体)を含む様々な受容体のエンドサイトーシスおよび分解を引き起こす。6.7kタンパク質は、感染細胞のアポトーシスモジュレーションに関与し、19kタンパク質は、感染宿主細胞膜においてクラスI MHCタンパク質の挿入を阻害することが公知である。ADPは、感染細胞の溶解を媒介する。12.5kタンパク質の機能は、未知である。本明細書で使用される場合、E3A遺伝子は、12.5k、6.7kおよび19k遺伝子を含み、E3B遺伝子は、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子を含む。本明細書において一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、E3A遺伝子の欠失、E3B遺伝子の欠失または両方を含む。他の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、E3A遺伝子もしくはE3B遺伝子、または両方のコード配列中に変異を含み、その結果、変異が、コードされるタンパク質の発現を妨げる。
【0044】
E4:アデノウイルス初期領域3(E4)遺伝子および遺伝子によって発現されるポリペプチドである。ヒトアデノウイルスでは、E4領域は、E4orf1、E4orf2、E4orf3、E4orf4、E4orf6およびE4orf6/7を含む少なくとも6種のタンパク質をコードする。本明細書における一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、E4orf6/7の欠失を含む。一部の例では、組換えアデノウイルスゲノムは、E4orf3の欠失をさらに含む。
【0045】
E4orf6/7:アデノウイルスE4遺伝子によってコードされるタンパク質である。「E4orf6/7タンパク質」という用語は、任意のアデノウイルス血清型に由来するE4遺伝子によって産生されるE4orf6/7タンパク質を含む。例として、野生型Ad5 E4orf6/7タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号29として本明細書に示されている。一部の実施形態では、E4orf6/7タンパク質は、配列番号29のうちいずれか1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質を含む。本明細書において企図される改変されたE4orf6/7タンパク質は、腫瘍細胞と比較して正常細胞において組換えアデノウイルスの複製欠損に寄与するものである。一部の実施形態では、改変されたE4orf6/7タンパク質は、そのE2F結合部位を無効にするかもしくは損なう、および/またはE2F相互作用を損なう変異(例えば、欠失)を含む。他の実施形態では、改変されたE4orf6/7タンパク質は、E2F4の効率的な転座に必要である核局在化シグナルを欠失するかまたは損なう改変を含む。E4orf6/7の例示的改変を、以下の節においてさらに論じる。
【0046】
上皮増殖因子受容体(EGFR):細胞外タンパク質リガンドのEGFファミリーのメンバーの細胞表面受容体である。EGFRは、ErbB-1およびHER1としても公知である。多数の種類のがんが、EGFRの過剰発現につながる変異を含有する。
【0047】
ファイバー:アデノウイルスのファイバータンパク質は、細胞表面受容体への結合を媒介する、三量体タンパク質である。ファイバータンパク質は、長いN末端側のシャフトおよび球状のC末端側のノブから構成される。
【0048】
FK506結合タンパク質(FKBP):タンパク質フォールディングシャペロンとして機能する真核生物において発現されるタンパク質のファミリーである。FKBPは、ラパマイシンと結合するその能力について公知である。例示的FKBP配列は、配列番号33の残基132~238として本明細書において示されている。
【0049】
FKBP-ラパマイシン結合(FRB):ラパマイシンと結合するラパマイシン哺乳動物標的(mTOR)のドメインである。FRBの例示的配列は、配列番号31の残基547~636として本明細書において示されている。ラパマイシンおよびラパログの両方と結合することが可能であるFRBの変異体形態(本明細書において、「FRB*」と呼ばれる)(AP21967としても公知)は、配列番号32の残基547~636として本明細書において示されている。FRB*は、配列番号32の残基620に対応する、ヒトmTORの位置2098でのトレオニンのロイシンへの置換(T2098L)を含有する。
【0050】
蛍光タンパク質:特定の波長の光に曝露したときに、ある特定の波長の光を放出するタンパク質である。蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP、EGFP、AcGFP1、Emerald、Superfolder GFP、Azami Green、mWasabi、TagGFP、TurboGFP、YPetおよびZsGreenなど)、青色蛍光タンパク質(EBFP、EBFP2、Sapphire、T-Sapphire、Azurite、およびmTagBFPなど)、シアン蛍光タンパク質(ECFP、mECFP、Cerulean、CyPet、AmCyan1、Midori-Ishi Cyan、mTurquoise、およびmTFP1など)、黄色蛍光タンパク質(EYFP、Topaz、Venus、mCitrine、YPet、TagYFP、PhiYFP、ZsYellow1、およびmBanana)、橙色蛍光タンパク質(Kusabira Orange、Kusabira Orange2、mOrange、mOrange2、およびmTangerine)、赤色蛍光タンパク質(mRuby、mApple、mStrawberry、AsRed2、mRFP1、JRed、mCherry、HcRed1、mRaspberry、dKeima-Tandem、HcRed-Tandem、mPlum、AQ143、tdTomato、およびE2-Crimson)、遠赤色蛍光タンパク質(例えば、Katushka2S)、橙色/赤色蛍光タンパク質(dTomato、dTomato-Tandem、TagRFP、TagRFP-T、DsRed、DsRed2、DsRed-Express(T1)、およびDsRed-Monomer)、ならびにこれらの修飾されたバージョンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
融合タンパク質:少なくとも2つの異なる(異種)タンパク質またはペプチドに由来するアミノ酸配列を含有するタンパク質である。融合タンパク質は、例えば、2つの異なる(異種)タンパク質の少なくとも一部分をコードする核酸配列から操作された核酸配列の発現によって、生成することができる。融合タンパク質を作出するためには、核酸配列は、同じリーディングフレーム内になければならず、内部終止コドンを含有してはならない。融合タンパク質、特に、短い融合タンパク質は、化学的合成によって生成することもできる。
【0052】
異種:異種タンパク質または異種ポリペプチドとは、異なる供給源または種に由来するタンパク質またはポリペプチドを指す。同様に、異種ORFは、異なる供給源または種に由来するORFである。
【0053】
ヘキソン:主要なアデノウイルスキャプシドタンパク質である。Ad5に由来する例示的ヘキソン配列は、配列番号34として本明細書において示されている。E451Q置換を含む変異体ヘキソン配列は、配列番号35として本明細書において示されている。
【0054】
免疫調節性タンパク質:免疫系を変化させる(例えば、活性化する、強化する、または抑制する)タンパク質である。免疫調節因子としては、サイトカイン(インターロイキン2(IL-2)、IL-7、IL-12、GM-CSF、FLT3リガンド、またはインターフェロンなど)、ケモカイン(CCL3、CCL26、CXCL7、CXCL9、およびCXCL10など)、T細胞活性化リガンド(抗CD3抗体または同種抗原など)、共刺激分子(B7.1/B7.2、OX40L、4-1-BBL、またはCD40Lなど)、チェックポイント遮断阻害剤(抗PD-1抗体または抗CTLA4抗体など)、ならびに小分子免疫調節因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
単離された:「単離された」生物学的構成要素(核酸分子、タンパク質、ウイルス、または細胞など)は、その構成要素が天然に存在する、生物の細胞もしくは組織または生物自体における他の生物学的構成要素、例えば、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質、ならびに細胞から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製されたものが含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク質、ならびに化学的に合成された核酸分子およびタンパク質を包含する。
【0056】
マイクロRNA(miRNAまたはmiR):植物、動物およびウイルスにおける遺伝子発現を調節する一本鎖RNA分子である。マイクロRNAをコードする遺伝子は、転写されて、一次転写物マイクロRNA(プリmiRNA)を形成し、これがプロセシングされて、前駆体マイクロRNA(プレmiRNA)と呼ばれる短いステム-ループ分子を形成し、続いて、ヌクレオチド鎖切断性に切断して、成熟マイクロRNAを形成する。成熟マイクロRNAは、およそ21~23ヌクレオチドの長さであり、1つまたは複数の標的メッセンジャーRNA(mRNA)の3’UTRと部分的に相補的である。マイクロRNAは、標的mRNAの切断を促進することによって、または細胞転写物の翻訳を遮断することによって遺伝子発現をモジュレートする。本開示の文脈では、「肝臓特異的マイクロRNA」は、肝臓において優先的に発現されるマイクロRNA、例えば、肝臓のみにおいて発現されるマイクロRNAまたは他の臓器もしくは組織種と比較して肝臓において有意により多く発現されるマイクロRNAである。
【0057】
修飾:核酸の配列またはタンパク質配列における変化である。例えば、アミノ酸配列の修飾には、例えば、置換、挿入、および欠失、またはそれらの組合せが含まれる。挿入には、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに配列内への単一もしくは複数のアミノ酸残基の挿入が含まれる。欠失は、タンパク質配列からの、1つまたは複数のアミノ酸残基の除去によって特徴付けられる。本明細書における一部の実施形態では、修飾(置換、挿入、または欠失など)は、タンパク質の特定の活性の低減または強化など、機能の変化をもたらす。本明細書において使用されるとき、「Δ」または「デルタ」は、欠失を指す。例えば、E1AΔLXCXEとは、LXCXEモチーフの欠失を有するE1Aポリペプチドを指す。置換修飾は、少なくとも1つの残基が、除去され、その場所に異なる残基が挿入されているものである。アミノ酸置換は、典型的に、単一の残基のものであるが、いくつかの異なる位置で同時に生じてもよい。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組合せを、最終的な変異体の配列に到達するように組み合わせてもよい。これらの修飾は、タンパク質をコードするDNAにおけるヌクレオチドの修飾によって調製することができ、それによって、この修飾をコードするDNAが産生される。公知の配列を有するDNAの所定の部位において、挿入、欠失、および置換の変異を行うための技法は、当該技術分野において周知である。「修飾された」タンパク質、核酸、またはウイルスは、上記に概説された1つまたは複数の修飾を有するものである。
【0058】
新形成、悪性疾患、がん、および腫瘍:新生物は、過剰な細胞分裂の結果として生じる、組織または細胞の異常な増殖である。新生物性増殖により、腫瘍が産生され得る。個体における腫瘍の量は、「腫瘍量」であり、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる。転移しない腫瘍は、「良性」と称される。周囲の組織に侵入する、および/または転移し得る腫瘍は、「悪性」と称される。悪性腫瘍は、「がん」とも称される。
【0059】
血液系がんは、血液または骨髄のがんである。血液系(または造血系)がんの例としては、白血病、例えば、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性(promyelocytic)、骨髄単球性、単球性、および赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ性白血病など)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無痛性および高悪性度形態)、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞性白血病、ならびに脊髄形成異常が挙げられる。一部の事例では、リンパ腫は、固形腫瘍とみなされる。
【0060】
固形腫瘍は、通常は嚢胞も液体区域も含有しない、異常な組織の塊である。固形腫瘍は、良性の場合も悪性の場合もある。異なる種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類に応じて命名される(肉腫、癌腫、およびリンパ腫など)。肉腫および癌腫など、固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭状癌、褐色細胞腫、脂腺癌、乳頭状癌、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染新形成、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーム、胆管癌、絨毛癌、ウイルムス腫瘍、子宮頸がん(cervical cancer)、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(膠腫など(脳幹膠腫および混合性膠腫など)、膠芽腫(多形性膠芽腫としても公知である)星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽細胞腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、および脳転移など)が挙げられる。
【0061】
腫瘍溶解性ウイルス:増殖性障害の細胞、例えば、がん/腫瘍細胞を、選択的に殺滅させるウイルスである。がん細胞の殺滅は、当該技術分野において確立されている任意の方法、例えば、生存細胞数を決定すること、またはがん細胞における細胞変性効果、アポトーシス、もしくはウイルスタンパク質の合成(例えば、複製に必要なウイルス遺伝子の代謝標識、イムノブロット、もしくはRT-PCRによって)または腫瘍のサイズの低減を検出することによって、検出することができる。
【0062】
作動可能に連結した:第1の核酸配列が、第2の核酸配列との機能的関係にある場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列に作動可能に連結している。例えば、プロモーターが、コーディング配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コーディング配列に作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結したDNA配列は、連続的であり、2つのタンパク質コーディング領域を接合する必要がある場合、同じリーディングフレーム内にある。
【0063】
薬学的に許容される担体:本開示において有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は、従来のものである。E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版(1975年)は、1つまたは複数の治療用化合物、分子、または薬剤(例えば、本明細書において開示される組換えウイルスまたは組換えウイルスゲノム)の薬学的送達に好適な組成物および製剤について記載している。一般に、担体の性質は、用いられる具体的な投与様式に依存することになる。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどといった、薬学的および生理学的に許容される流体を含む、注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセルの形態)については、従来の非毒性の固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性な担体に加えて、投与しようとする医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0064】
ポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質:モノマーがアミノ酸残基であり、それらが、アミド結合を通じて一緒に接合された、ポリマーである。アミノ酸が、アルファアミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれも使用することができる。用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換可能に使用される。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー、および天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。「残基」または「アミノ酸残基」という用語には、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに組み込まれているアミノ酸への参照が含まれる。
【0065】
ポリペプチドにおける保存的置換は、タンパク質配列における1つのアミノ酸残基を、類似の生物学的特質を有する異なるアミノ酸残基の代わりに使用することである。典型的に、保存的置換は、結果として得られるポリペプチドの活性にほとんど影響を及ぼさないかまたは全く影響を及ぼさない。例えば、1つまたは複数の保存的置換(例えば、1つを上回らない、2つを上回らない、3つを上回らない、4つを上回らない、または5つを上回らない置換)を含むタンパク質またはペプチドは、野生型のタンパク質またはペプチドの構造および機能を保持する。ポリペプチドは、例えば、部位特異的変異誘発またはPCRなどの標準的な手順を使用して、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することによって、1つまたは複数の保存的置換を含有するように産生させることができる。一実施例では、そのようなバリアントは、抗体の交差反応性または抗体が免疫応答を誘導する能力を試験することによって、容易に選択することができる。保存的置換の例を、以下に示す。
【表3】
【0066】
保存的置換は、一般に、(a)置換の区域における、例えば、シートコンフォメーションもしくはヘリックスコンフォメーションとしての、ポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さを維持する。
【0067】
一般に、タンパク質特質に最も大きな変化をもたらすことが予測される置換は、非保存的なもの、例えば、(a)親水性残基、例えば、セリルもしくはスレオニルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、もしくはアラニルを置換する(もしくはそれらによって置換される)変化、(b)システインもしくはプロリンが、任意の他の残基を置換する(もしくはそれらによって置換される)変化、(c)電気陽性の側鎖を有する残基、例えば、リシル、アルギニル、もしくはヒスタジルが、電気陰性の残基、例えば、グルタミルもしくはアスパルチルを置換する(もしくはそれらによって置換される)変化、または(d)嵩高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を有さないもの、例えば、グリシンを置換する(もしくはそれらによって置換される)変化であろう。
【0068】
疾患を予防、処置、または緩和する(ameliorate)こと:疾患を「予防すること」とは、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「処置すること」とは、疾患または病態の発症が開始された後に、その徴候または症状を緩和する治療的介入を指す。「緩和すること」とは、疾患の徴候または症状の数または重症度の低減を指す。
【0069】
精製された:「精製された」という用語は、絶対的な純度を必要とするものではなく、相対的な用語として意図される。したがって、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物は、天然に会合するタンパク質および他の混入物質から、全体または部分的に単離されているものである。ある特定の実施形態では、「実質的に精製された」という用語は、細胞、細胞培養培地、または他の粗調製物から単離されており、初期調製物の様々な構成要素、例えば、タンパク質、細胞残屑、および他の構成要素を除去するために分画に供されている、ペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物を指す。
【0070】
ラパマイシン:公知の免疫抑制および抗増殖特質を有する小分子である。ラパマイシンは、シロリムスとしても知られる、細菌Streptomyces hygroscopicusの産物として最初に発見されたマクロライドである。ラパマイシンは、mTORと結合し、その活性を阻害する。ラパログ(AP21967としても公知)は、ラパマイシンの類似体である。
【0071】
組換え:組換え核酸分子、タンパク質、またはウイルスは、天然に存在しない配列を有するもの、または他の点で別個である配列の2つのセグメントの人工的な組合せによって作製された配列を有するものである。この人工的な組合せは、化学的合成によって、または単離された核酸分子のセグメントの人工的な操作によって、例えば、遺伝子操作技法によって、達成することができる。「組換え」という用語には、天然の核酸分子、タンパク質、またはウイルスの一部分の付加、置換、または欠失のみによって変化されている、核酸、タンパク質、およびウイルスも含まれる。
【0072】
複製欠損:(腫瘍細胞と比較して)非腫瘍細胞において「複製欠損」を呈するアデノウイルスは、正常細胞において、腫瘍細胞と比較して低減されたウイルス複製を呈するアデノウイルスを指す。複製欠損は、例えば、腫瘍細胞と比較して、正常細胞におけるウイルス後期タンパク質発現の欠如、ウイルスDNA合成の低減、E2F標的遺伝子(例えば、サイクリンAおよびB)を誘導する能力の低減、S期進入を誘起する能力の低減、ならびに/または細胞殺滅を誘導する能力の低減によって、明らかである。
【0073】
RGDペプチド:トリアミノ酸モチーフアルギニン-グリシン-アスパラギン酸を有するペプチドである。RGDモチーフは、多数の基質タンパク質、例えば、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ビトロネクチンおよびオステオポンチンに見出され、細胞外基質との細胞間接着において役割を果たす。
【0074】
自己切断ペプチド:リボソームがC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするように誘導し、そのペプチド配列と下流のポリペプチドとの分離をもたらす、ペプチドである。ウイルスによってコードされる2Aペプチドは、自己切断ペプチドの一種である。ウイルスによってコードされる2Aペプチドとしては、例えば、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、およびThosea asignaウイルス(TaV)に由来する2Aペプチドが挙げられる。
【0075】
配列同一性:2つもしくはそれよりも多い核酸配列間または2つもしくはそれよりも多いアミノ酸配列間における同一性または類似性は、配列間の同一性または類似性として表される。配列同一性は、同一性の割合として測定することができ、割合が高いほど、配列がより同一である。配列類似性は、類似性(保存的アミノ酸置換を考慮に入れる)の割合として測定することができ、割合が高いほど、配列がより類似している。
【0076】
比較のための配列のアラインメント方法は、公知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、説明されている:SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math.、2巻482頁、1981年;NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol.、48巻、443頁、1970年;PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻、2444頁、1988年;HigginsおよびSharp、Gene、73巻、237~44頁、1988年;HigginsおよびSharp、CABIOS、5巻、151~3頁、1989年;Corpetら、Nuc. Acids Res.、16巻、10881~90頁、1988年;Huangら、Computer Appls. in the Biosciences、8巻、155~65頁、1992年;ならびにPearsonら、Meth. Mol. Bio.、24巻、307~31頁、1994年。Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻、403~10頁、1990年は、配列アラインメント方法および相同性の計算に関する詳細な考察を提示している。
【0077】
NCBIのBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻、403~10頁、1990年)が、National Center for Biological Information(NCBI)およびインターネットを含む、複数の供給元から、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと併せて使用するために、入手可能である。追加の情報は、NCBIのウェブサイトにおいて見出すことができる。
【0078】
血清型:特徴的な抗原セットによって区別される緊密に関連する微生物(ウイルスなど)の群である。
【0079】
被験体:ヒトおよび非ヒト哺乳動物、例えば、獣医学被験体(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタおよび非ヒト霊長類)を含むカテゴリーの、生きた多細胞脊椎動物の生物である。
【0080】
合成:研究室において人工的な手段によって産生されたものであり、例えば、合成核酸またはタンパク質は、研究室において化学的に合成され得る。
【0081】
標的化リガンド:本開示の文脈では、「標的化リガンド」は、組換えアデノウイルスを、標的化リガンドに対して特異的な受容体または結合タンパク質を発現する特定の細胞型に向けるタンパク質である。一部の実施形態では、標的化リガンドは、腫瘍において過剰発現される細胞表面タンパク質に対して特異的な抗体である(例えば、EGFR)。
【0082】
治療剤:被験体に適正に投与された場合に、所望の治療または予防効果を誘導することが可能である、化学的化合物、小分子、組換えウイルスまたはその他の組成物、例えば、アンチセンス化合物、抗体(モノクローナル抗体(mAb)、例えば、拮抗性mAbなど)、ペプチドまたは核酸分子である。例えば、がんのための治療剤として、がんの発生または転移を防ぐまたは阻害する薬剤が挙げられる。
【0083】
治療有効量:特定の医薬品または治療剤(例えば、組換えウイルス)で処置されている被験体または細胞において、所望される効果を達成するのに十分なそれらの量である。薬剤の有効量は、処置されている被験体または細胞、ならびに治療用組成物の投与様式を含むがこれらに限定されない、複数の因子に依存し得る。
【0084】
ベクター:宿主細胞において複製し、および/または宿主細胞に組み込まれるベクターの能力を撹乱することなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子である。ベクターは、宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列、例えば、複製起点を含み得る。ベクターはまた、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子およびその他の遺伝要素を含み得る。発現ベクターは、挿入される遺伝子(単数または複数)の転写および翻訳を可能にする必要な調節配列を含有するベクターである。
【0085】
別途説明されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、文脈により別途明確に示されない限り、複数形の参照物を含む。「AまたはBを含む」とは、A、もしくはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドに関して与えられる、すべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量値は、およそのものであり、説明のために提供されることを、さらに理解されたい。本明細書において記載されるものに類似であるかまたはそれと同等である方法および材料を、本開示の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が、以下に記載されている。本明細書において言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾が生じた場合には、用語の説明を含め、本明細書が優先される。加えて、材料、方法、および実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0086】
III.いくつかの実施形態の概要
E3領域中に改変(欠失、置換および/または挿入など)を有する腫瘍選択的組換えアデノウイルスが記載される。特に、本開示は、E3タンパク質発現が無効にされるような少なくとも3つのE3遺伝子(E3A遺伝子またはE3B遺伝子など)の改変(例えば、欠失)または7つのE3遺伝子のうち6つ(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k)の改変(例えば、欠失)が、WT E3領域を有するアデノウイルスに対するウイルス複製の増強(少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも200%または少なくとも500%の増大など)につながるという知見を記載する。組換えアデノウイルスは、腫瘍細胞における選択的複製を可能にし、ウイルスを肝臓から脱標的化する追加の改変をさらに含み得る。がん処置のための組換えアデノウイルスの使用が記載される。また、腫瘍溶解性ウイルスのレポーターウイルスバージョンも記載され、これは、患者の腫瘍細胞が、腫瘍溶解性ウイルスに対して反応性である可能性が高いか否かを決定するためなどに診断用試薬として使用され得る。
【0087】
本明細書において開示される特異的改変は、アデノウイルス5(Ad5)ゲノム配列に関して記載されている。しかし、同一改変および欠失は、任意のヒトアデノウイルス血清型において行うことができる。腫瘍選択性、肝臓脱標的化、誘導可能再標的化、キメラファイバータンパク質を介した再標的化のためのアデノウイルス改変およびその他の改変は、PCT公開番号WO2016/049201(その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)に詳述されている。
【0088】
改変されたE1aタンパク質をコードするE1A領域と、アデノウイルス死タンパク質(ADP)をコードし、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7kから選択される少なくとも3つのE3遺伝子のコード配列中に改変(遺伝子またはその一部の変異、例えば、アミノ酸置換または欠失など)を含み、改変(例えば、欠失)が、コードされるタンパク質の発現を妨げるE3領域と、E4orf6/7コード配列の改変(例えば、欠失)を有するE4領域とを含む組換えアデノウイルスゲノムが、本明細書において提供される。
【0089】
一部の実施形態では、改変されたE1Aタンパク質は、LXCXEモチーフの欠失、残基2~11の欠失、C124G置換、Y47H置換、Y47H置換およびC124G置換またはY47H置換、C124G置換および残基2~11(例えば、番号付けが配列番号23に対してである)の欠失を含む。
【0090】
組換えアデノウイルスゲノムの一部の実施形態では、少なくとも3つのE3遺伝子は、12.5k、6.7kおよび19k(E3A遺伝子)を含む。一部の例では、12.5k、6.7kおよび19k遺伝子が欠失している。他の例では、12.5k、6.7kおよび19k遺伝子は、変異した開始コドン、未熟停止コドンを導入する変異または両方を含む。特定の例では、12.5k遺伝子、6.7k遺伝子および/または19k遺伝子は、M1Sアミノ酸置換をコードする。
【0091】
組換えアデノウイルスゲノムの他の実施形態では、少なくとも3つのE3遺伝子は、RIDα、RIDβおよび14.7k(E3B遺伝子)を含む。一部の例では、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が欠失している。他の例では、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子は、変異した開始コドン、未熟停止コドンを導入する変異または両方を含む。特定の例では、RIDα遺伝子は、M1K置換をコードし、RIDβ遺伝子は、M1K、C30GおよびM60停止置換をコードし、ならびに/または14.7k遺伝子は、M1K、M9停止、M31停止およびM39停止置換をコードする。
【0092】
さらに他の実施形態では、少なくとも3つのE3遺伝子は、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k(ADPを除くすべてのE3遺伝子)を含む。一部の例では、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子が欠失している。他の例では、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子は、変異した開始コドン、未熟停止コドンを導入する変異または両方を含む。特定の例では、RIDα遺伝子は、M1K置換をコードし、RIDβ遺伝子は、M1K、C30GおよびM60停止置換をコードし、ならびに/または14.7k遺伝子は、M1K、M9停止、M31停止およびM39停止置換をコードする。
【0093】
一部の実施形態では、組換えアデノウイルスゲノムは、E4orf3の欠失をさらに含む。
【0094】
一部の実施形態では、ゲノムは、FK506結合タンパク質(FKBP)に融合された標的化リガンドと、野生型FKBP-ラパマイシン結合(FRB)タンパク質またはラパログに結合可能な変異体FRBタンパク質に融合されたアデノウイルスファイバータンパク質とをさらにコードする。一部の例では、標的化リガンドは、単一ドメイン抗体、例えば、EGFRに対して特異的である単一ドメイン抗体である。
【0095】
一部の実施形態では、ゲノムは、肝臓からアデノウイルスを脱標的化するための少なくとも1つの改変をさらに含む。一部の例では、改変は、ヘキソンタンパク質中の変異、例えば、E451Q変異(例えば、番号付けが配列番号34に対してである)である。一部の例では、改変は、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位である。特定の例では、肝臓特異的マイクロRNAのための1つまたは複数の結合部位は、E1Aの3’-UTR中に位置する。肝臓特異的マイクロRNAは、例えば、miR-122、miR-30またはmiR-192であり得る。
【0096】
一部の実施形態、ゲノムは、キメラファイバータンパク質をコードする。一部の例では、キメラファイバータンパク質は、第1のアデノウイルス血清型由来のファイバーシャフトと、第2のアデノウイルス血清型由来のファイバーノブとを含む。特定の例では、第1のアデノウイルス血清型はAd5であり、第2のアデノウイルス血清型は、Ad3、Ad9、Ad11、Ad12、Ad34またはAd37である。非限定的な一例では、第1のアデノウイルス血清型はAd5であり、第2のアデノウイルス血清型はAd34である。一例では、Ad34ファイバーノブは、CD46との結合を妨げる、または阻害する改変、例えば、F242Sを含む(野生型Ad34ファイバー配列は、配列番号60として本明細書において示されている)。
【0097】
一部の実施形態では、ゲノムは、RGDペプチドを含むように改変されたファイバータンパク質をコードする。
【0098】
一部の実施形態では、ゲノムは、異種ORFをさらに含む。一部の例では、異種ORFは、自己切断ペプチドコード配列およびADPコード配列と同じリーディングフレーム内に、それと作動可能に連結している。一部の例では、自己切断ペプチドは、2Aペプチドである。特定の例では、2Aペプチドは、ブタテッショウウイルス-1(PTV1)2A(P2A)ペプチド、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチドまたはThosea asignaウイルス(TaV)2A(T2A)ペプチドを含む。
【0099】
一部の例では、異種ORFは、レポーター遺伝子である。一部の例では、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質または赤色(または近赤外)蛍光タンパク質をコードする。特定の例では、蛍光タンパク質は、YPet、mCherryまたはKatsushka2Sである。他の例では、レポーター遺伝子は、ウイルス複製のバイオマーカーとして血清中で検出され得る可溶性因子をコードする。特定の非限定的な例では、可溶性因子は、PSAである。さらに他の例では、レポーター遺伝子は、画像化プローブ、例えば、ルシフェラーゼ、金属タンパク質、ヨウ化ナトリウム共輸送体またはチミジンキナーゼ、例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)をコードする。
【0100】
他の例では、異種ORFは、例えば、RNAi配列、タンパク質、抗体またはその結合断片、ケモカイン、サイトカイン、免疫調節物質または酵素をコードする治療用遺伝子である。一部の例では、治療用遺伝子は、免疫調節性タンパク質をコードする。
【0101】
特定の非限定的な例では、免疫調節性タンパク質は、サイトカイン(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-9、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-33、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-15、IL-1RA、IFNα、IFNβ、IFNγ、TNFα、TGFβ、リンホトキシンA(LTA)、GM-CSF、HMGB1およびFLT3リガンドであるが、これらに限定されない)である。
【0102】
他の特定の例では、免疫調節性タンパク質は、ケモカイン(例えば、IL-8、CCL5、CCL17、CCL20、CCL22、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL13、CXCL12、CCL19、CCL21、CXCR2、CCR2、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CXCR3、CXCR4、CXCR5およびCRTH2であるが、これらに限定されない)である。
【0103】
他の特定の例では、免疫調節性タンパク質は、T細胞刺激リガンド(例えば、細胞表面抗CD3、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTe)、T細胞刺激性MHC/HLA分子(同種異系の)または腫瘍抗原であるが、これらに限定されない)または共刺激分子(B7.1、B7.2、OX40L、CD40L、CD70、LIGHT、ICOSまたは4-1BBLなど)である。
【0104】
さらに他の例では、治療用遺伝子は、抗体(mAb、例えば、拮抗性mAbなど)、抗体の抗原結合性断片または可溶性アンタゴニストをコードする。このような分子の特定の非限定的な例として、抗VEGF、抗TGF-β、可溶性TGF-β受容体、抗PD-1、PD-ILおよびLAg3が挙げられる
【0105】
一部の実施形態では、ゲノムのヌクレオチド配列は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%同一である。一部の例では、ゲノムのヌクレオチド配列は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号57または配列番号59を含むかまたはそれからなる。
【0106】
また、本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノムを含む単離された細胞(哺乳動物細胞、例えば哺乳動物腫瘍細胞など)が本明細書において提供される。
【0107】
本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノムと、薬学的に許容される担体、例えば、水または生理食塩水とを含む組成物が、さらに提供される。
【0108】
また、本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノムを含む単離されたアデノウイルスが提供される。単離されたアデノウイルスと、薬学的に許容される担体(水または生理食塩水など)とを含む組成物が、さらに提供される。
【0109】
腫瘍細胞を、本明細書において記載される組換えアデノウイルスゲノム、アデノウイルスまたは組成物と接触させることによって、腫瘍細胞の生存度を阻害する方法が、さらに提供される。一部の実施形態では、本方法は、in vitro方法である。他の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、腫瘍細胞を接触させることは、治療有効量の、組換えアデノウイルスゲノム、アデノウイルスまたは組成物を、腫瘍を有する被験体に投与することを含む。
【0110】
また、被験体における腫瘍の進行を阻害するかまたは腫瘍の体積を低減させる方法が提供される。本方法は、被験体に、治療有効量の、本明細書において記載される組換えアデノウイルスゲノム、アデノウイルスまたは組成物を投与することを含む。
【0111】
被験体におけるがんを処置する方法が、さらに提供される。本方法は、被験体に、治療有効量の、本明細書において開示される組換えアデノウイルスゲノム、組換えアデノウイルスまたは組成物を投与することを含む。
【0112】
また、ゲノムのヌクレオチド配列が、配列番号2、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号45、配列番号46、配列番号55、配列番号56または配列番号58に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%同一である組換えアデノウイルスゲノムが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、ゲノムのヌクレオチド配列は、配列番号2、配列番号6、配列番号11、配列番号12、配列番号45、配列番号46、配列番号55、配列番号56または配列番号58を含むかまたはそれからなる。組換えアデノウイルスゲノムを含む単離されたアデノウイルスが、さらに提供される。
【0113】
IV.野生型および変異体ウイルス配列
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58または59のうちいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む組換えアデノウイルスゲノムが開示される。特定の例では、組換え核酸は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58または59のうちいずれか1つのヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。
【0114】
また、組換えアデノウイルスゲノムを含むベクター(プラスミドまたはウイルスベクターなど)が提供される。一部の実施形態では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58または59のうちいずれか1つに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である核酸分子を含むベクターが提供される。一部の例では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58または59のうちいずれか1つのヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる核酸分子を含むベクターが提供される。
【0115】
本明細書において開示される組換えアデノウイルスによって発現される、例示的野生型および変異体アデノウイルスタンパク質配列を、以下に提供する。
【0116】
E1AおよびE4orf6/7変異体
以下のE1A配列では、LXCXEモチーフは下線によって示されている。このモチーフは、Ad5 E1A(配列番号23)のアミノ酸122~126に存在する。Y47HおよびC124G置換は、太字で示されている。E1AおよびE4orf6/7の改変(欠失を含む)は、本明細書において開示される組換えアデノウイルスの腫瘍選択的複製に寄与する。
【0117】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0118】
E2Fとの結合を排除するかもしくは損なう、または核局在化シグナルを欠失するかもしくは損なう改変されたE4orf6/7タンパク質をコードするゲノムを有する組換えアデノウイルスが、本明細書において企図される。一部の例では、改変されたE4orf6/7タンパク質は、E2F結合部位を欠失する/損なうためにC末端での約60、約50、約40、約30、約20または約10個のアミノ酸の欠失を含む。他の例では、E4orf6/7タンパク質は、E2F結合を無効にするかまたは損なう、C末端の10個のアミノ酸における欠失、フレームシフトもしくは挿入またはタンパク質のC末端3分の1からの33個のアミノ酸の欠失を含む。一部の実施形態では、変異は、E2F相互作用を損なうアミノ酸81~91を含む。
【0119】
他の例では、改変されたE4orf6/7タンパク質は、E2F4の効率的な転座に必要である核局在化配列を無効にする58個のアミノ酸のN末端欠失を含む。Ad2およびAd5 E4orf6/7のアミノ酸13から38の間に位置する8個のアルギニン残基があり、これはこの領域の25%超のアルギニン含量と一致する。E4orf6のN末端におけるアルギニン残基の全体的なクラスター化は、他のアデノウイルス血清型において維持されている。アルギニン残基16、18、21、22、27および/または29をアラニンと置換する変異(またはこの領域による核局在化を無効にするその他の適当な残基)が企図される。
【0120】
他の例では、改変されたE4orf6/7タンパク質は、E4orf6/7の能力を排除するかまたは阻害して、E2F二重部位占有を誘導する1つまたは複数の改変を含む。特定の非限定的な例として、F125のプロリン、アラニン、リシン、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸への変異またはD121のP、A、K、R、G、Fへの変異(アミノ酸位置は、配列番号29に対してである)が挙げられる。
【0121】
その他のE4orf6/7変異として、T133A、R101A、Q105PまたはE2F単一部位占有を妨げる任意の変異、アルファヘリックスを破壊し、E2F結合を妨げるM84NもしくはP、G、K、L、Hおよび/またはE93AもしくはK、P、G、R、L、M(アミノ酸位置は、配列番号29に対してである)が挙げられる。その他の企図される変異として、T133QもしくはA、K、G、P、L、H、G141L、P、K H、F、AまたはV149N、K、P、H、G、E、D(アミノ酸位置は、配列番号29に対してである)が挙げられる。
【0122】
また、組換えアデノウイルスおよびE4orf6/7の部分または完全欠失を有する組換えアデノウイルスゲノムも企図される。
【0123】
ファイバー配列
以下の組換えAd5ファイバー配列では、FRB配列に下線が引かれている。FRB*中に存在する変異は太字で示されている。
【0124】
【化5】
【化6】
【化7】
【0125】
V.自己切断ペプチド配列
自己切断ペプチドは、リボソームがC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするように誘導し、そのペプチド配列と下流のポリペプチドとの分離をもたらす、ペプチドである。自己切断ペプチドの使用により、単一のORFから、自己切断ペプチドに隣接する複数のタンパク質の発現が可能となる。ウイルスによってコードされる2Aペプチドは、自己切断ペプチドの一種である。
【0126】
他の自己切断ペプチドと同様に、2Aペプチドは、リボソームが2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップするようにし、2A配列の末端と下流のペプチドとの分離をもたらすことによって機能する(Kimら、PLoS One、6巻(4号)、e18556、2011年)。「切断」は、2AペプチドのC末端に見出されるグリシン残基とプロリン残基との間に生じる。例示的な2Aペプチドとしては、TaV、ERAV、PTV1、およびFMDVによってコードされる2Aペプチド、またはそれらの修飾バージョンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
本明細書における特定の実施例では、2Aペプチドは、PTV1 2A(P2A)、FMDV 2A(F2A)、ERAV 2A(E2A)、またはTaV 2A(T2A)を含み、これらの配列は、配列番号15~18として、以下に示され、本明細書に記載されている。
P2A: ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号15)
F2A: VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号16)
E2A: QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号17)
T2A: EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号18)
【0128】
一部の実施例では、2Aペプチドは、切断効率を改善するために、N末端に、Gly-Ser-Glyを含むように修飾される。修飾されたP2A、F2A、E2A、およびT2Aの配列は、配列番号19~22として、以下に示され、本明細書に記載されている。
修飾されたP2A: GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号19)
修飾されたF2A: GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP (配列番号20)
修飾されたE2A: GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGP (配列番号21)
修飾されたT2A: GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP (配列番号22)
【0129】
一部の実施形態では、2Aポリペプチドは、本明細書において開示される2Aポリペプチドのバリアントである。バリアントは、野生型または本明細書において開示される修飾された2Aポリペプチドに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれよりも高い配列同一性を有するポリペプチド配列を含み得る。バリアントは、例えば、配列番号15、16、17、18、19、20、21または22のうちのいずれか1つの2Aポリペプチドから、少なくとも1つのN末端アミノ酸が欠失しているもの、例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸が欠失しているものを含み得る。バリアントは、配列番号15、16、17、18、19、20、21または22のうちのいずれか1つの2Aポリペプチドから、少なくとも1つのC末端アミノ酸が欠失しているもの、例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸が欠失しているものを含み得る。バリアントは、少なくとも1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換も含み得る。
【0130】
IV.医薬組成物
本明細書中に開示される組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノムを含む組成物が、本明細書において提供される。本組成物は、必要に応じて、in vitroまたはin vivoでの製剤化および投与に好適である。必要に応じて、本組成物は、提供される薬剤のうちの1つまたは複数および薬学的に許容される担体を含む。好適な担体およびそれらの製剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Loyd V. Allenら編、Pharmaceutical Press(2012年)に記載されている。薬学的に許容される担体としては、生物学的にもそれ以外にも望ましくないことのない材料が挙げられる。すなわち、この材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こすことも、この材料が含有されている医薬組成物中の他の構成成分と有害な様式で相互作用することもなく、被験体に投与される。被験体に投与される場合、担体は、必要に応じて、活性成分の分解を最小限に抑え、被験体における有害な副作用を最小限に抑えるように選択される。
【0131】
組換えウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノムは、公知の方法に従って、例えば、静脈内投与、例えば、ボーラスまたは長期間にわたる連続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、関節滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、腫瘍内、または吸入の経路によって、投与される。投与は、局所的であっても全身的であってもよい。本組成物は、局所、経口、非経口、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、体腔内(intracavity)、経皮、肝内、頭蓋内、腫瘍内、骨内、噴霧化/吸入、または気管支鏡法を介した設置によるものを含む、複数の投与経路のうちのいずれかを介して投与することができる。したがって、本組成物は、局所的処置が所望されるか全身処置が所望されるかに応じて、また処置しようとする領域に応じて、いくつかの手段で投与される。
【0132】
一部の実施形態では、投与のための組成物は、薬学的に許容される担体、(例えば、水性担体)中に溶解した、本明細書において記載される組換えアデノウイルス(または組換えゲノム)を含む。様々な水性担体、例えば、緩衝食塩水などを、使用することができる。これらの溶液は、滅菌であり、通常、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、滅菌することができる。本組成物は、生理学的条件に近づけるために、必要に応じて、薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有してもよい。これらの製剤における活性な薬剤の濃度は、広範に変動し得、主として、選択された具体的な投与様式および被験体の必要性に応じて、流体の体積、粘度、体重などに基づいて、選択されるであろう。
【0133】
医薬製剤、特に、組換えウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノムの医薬製剤は、所望される度合いの純度を有する組換えアデノウイルス(または組換えアデノウイルスゲノム)を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって、調製することができる。そのような製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液であり得る。
【0134】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投薬量および濃度で、レシピエントにとって非毒性である。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、保存剤、低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミンもしくはゼラチン、または親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;ならびにアミノ酸、単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、もしくはデキストリン;キレート剤;ならびにイオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート);塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤であり得る。組換えアデノウイルス(または組換えアデノウイルスをコードする1つもしくは複数の核酸)は、任意の適切な濃度の感染単位で、製剤化することができる。
【0135】
経口投与に好適な製剤は、(a)液体溶液、例えば、希釈剤、例えば、水、生理食塩水、またはPEG 400中に懸濁させた、有効量の組換えアデノウイルス、(b)それぞれ所定の量の活性成分を液体、固体、顆粒、またはゼラチンとして含有するカプセル、サシェ剤(sachet)、または錠剤、(c)適切な液体中の懸濁物、および(d)好適なエマルジョンからなり得る。錠剤形態には、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微晶質セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、加湿剤(moistening agent)、保存剤、矯味矯臭剤、色素、崩壊剤、ならびに薬学的に適合性のある担体のうちの1つまたは複数が含まれ得る。ロゼンジ形態は、活性成分を、矯味矯臭薬、例えば、スクロース中に、ならびに活性成分に加えて当該技術分野において公知の担体を含有する、活性成分を不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアのエマルジョン、ゲルなどに含む香錠に、含み得る。
【0136】
組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノムは、単独または他の好適な構成成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル製剤にすることができる(すなわち、それらは、「噴霧化」することができる)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴霧体に入れることができる。
【0137】
非経口投与、例えば、例として、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内、および皮下の経路によるものに好適な製剤としては、水性および非水性の等張性滅菌注射溶液(抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張性にするための溶質を含有し得る)、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および保存剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁物が挙げられる。提供される方法において、組成物は、例えば、静脈内注入によって、経口、局所、腹腔内、膀胱内、腫瘍内、または髄腔内に、投与することができる。非経口投与、腫瘍内投与、および静脈内投与が、好ましい投与方法である。化合物の製剤は、単回用量または複数回用量の密封された容器、例えば、アンプルおよびバイアルで提示され得る。
【0138】
注射溶液および懸濁物は、前述の種類の滅菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。アデノウイルスによって形質導入もしくは感染させた細胞、またはex vivo療法については核酸をトランスフェクトした細胞もまた、上述のように静脈内または非経口で投与することができる。
【0139】
医薬調製物は、単位剤形であり得る。そのような形態では、調製物は、適切な量の活性な構成成分を含有する単位用量にさらに分割される。したがって、医薬組成物は、投与の方法に応じて、様々な単位剤形で投与され得る。例えば、経口投与に好適な単位剤形としては、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、およびロゼンジが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
一部の実施形態では、組成物は、少なくとも2種の異なる組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノム、例えば、異なる細胞受容体と結合する組換えアデノウイルスを含む。例えば、組成物中の組換えアデノウイルスのうち少なくとも1種は、キメラファイバータンパク質を発現し得る。あるいは、組換えアデノウイルスは、標的化リガンドが組成物中のウイルス間で異なる標的化リガンド-FKBP融合タンパク質をコードすることによって異なる細胞受容体を標的とし得る。一部の例では、組成物は、2種、3種、4種、5種または6種の異なる組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノムを含む。
【0141】
VII.処置の方法
本明細書において開示される組換えアデノウイルスおよび組換えアデノウイルスゲノム組成物は、治療的または予防的処置のために投与することができる。特に、被験体において腫瘍細胞の生存度を阻害する方法、被験体における腫瘍の進行を阻害する方法、被験体において腫瘍体積を低減させる方法、被験体において転移の数を低減させる方法および/または被験体において癌を処置する方法が、提供される。したがって、一部の例では、本方法は、例えば、処置なし(例えば、本明細書において開示される組換えアデノウイルスおよび組換えアデノウイルスゲノム組成物を用いる処置の前)と比較して少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%まで、腫瘍細胞の生存度を低減し、腫瘍の進行を低減し、腫瘍体積を低減し、腫瘍サイズを低減し、転移の数を低減する、またはそれらの組合せである。
【0142】
本方法は、被験体に、治療有効量の組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノム(またはその組成物)を投与することを含む。全体を通じて記載されるように、アデノウイルスまたは医薬組成物は、静脈内、血管内、髄腔内、筋肉内、皮下、腫瘍内、腹腔内、または経口を含むがこれらに限定されない、任意の多数の方法で投与される。必要に応じて、本方法は、被験体に、1つまたは複数の追加の治療剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、治療剤は、化学療法剤である。他の実施形態では、治療剤は、免疫モジュレーターである。さらに他の実施形態では、治療剤は、CDK阻害剤、例えば、CDK4阻害剤である。
【0143】
一部の実施形態では、がんまたは腫瘍は、肺、前立腺、結腸直腸、乳房、甲状腺、腎臓、もしくは肝臓のがんもしくは腫瘍であるか、または白血病の一種である。一部の事例では、がんは、転移性である。一部の実施例では、腫瘍は、乳腺、下垂体、甲状腺、もしくは前立腺の腫瘍;脳、肝臓、髄膜、骨、卵巣、子宮、もしくは子宮頸部(cervix)の腫瘍;単球性もしくは骨髄性の白血病;腺癌、腺腫、星状細胞腫、膀胱腫瘍、脳腫瘍、バーキットリンパ腫、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、軟骨肉腫、絨毛癌、線維腫、線維肉腫、膠芽腫、膠腫、ヘパトーム、組織球腫、平滑筋芽腫(leiomyoblastoma)、平滑筋肉腫、リンパ腫、脂肪肉腫細胞、乳房腫瘍、髄芽細胞腫、骨髄腫、形質細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、骨原性肉腫、膵臓腫瘍、下垂体腫瘍、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、睾丸腫瘍、胸腺腫、またはウイルムス腫瘍である。腫瘍には、原発性固形腫瘍および転移性固形腫瘍の両方が含まれ、乳房、結腸、直腸、肺、口腔咽頭部、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢および胆管、小腸、尿路(腎臓、膀胱、および尿路上皮を含む)、女性生殖管(子宮頸部、子宮、および卵巣、ならびに絨毛癌および妊娠性絨毛性疾患を含む)、男性生殖管(前立腺、精嚢、精巣、および生殖細胞腫瘍を含む)、内分泌腺(甲状腺、副腎、および下垂体を含む)、および皮膚の癌腫、ならびに血管腫、黒色腫、肉腫(骨および軟組織から生じるもの、ならびにカポジ肉腫を含む)、ならびに脳、神経、眼、および髄膜の腫瘍(星状細胞腫、膠腫、膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫、および髄膜腫を含む)が含まれる。一部の態様では、白血病などの造血系悪性疾患(すなわち、緑色腫、形質細胞腫、ならびに菌状息肉腫のプラークおよび腫瘍、ならびに皮膚T細胞性リンパ腫/白血病)により生じる固形腫瘍、ならびにリンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫の両方)の処置において生じる固形腫瘍が、処置され得る。加えて、処置は、本明細書において記載される腫瘍からの転移の予防に有用であり得る。
【0144】
治療的適用において、組換えアデノウイルスもしくは組換えアデノウイルスゲノムまたはそれらの組成物は、治療有効量または治療有効用量で、被験体に投与される。この使用に有効な量は、疾患の重症度および患者の全般的な健康状態に依存するであろう。本組成物の単回投与または複数回投与が、患者によって必要とされ、許容される、投薬量および頻度に応じて、投与され得る。「患者」または「被験体」には、ヒトおよび他の動物の両方、特に、哺乳動物が含まれる。したがって、本方法は、ヒト治療および獣医学的適用のいずれにも適用可能である。
【0145】
修飾された配列を有するアデノウイルスの有効量は、個体ごとに決定され、少なくとも部分的に、使用される具体的な組換えアデノウイルス、個体のサイズ、年齢、性別、ならびに増殖している細胞のサイズおよび他の特徴に基づく。例えば、ヒトの処置については、少なくとも10プラーク形成単位(PFU)の組換えウイルスが使用され、例えば、増殖している細胞または存在する新生物の種類、サイズ、および数に応じて、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、少なくとも1011、または少なくとも1012PFU、例えば、およそ10~1012PFUの組換えウイルスが使用される。有効量は、約1.0pfu/体重kg~約1015pfu/体重kg(例えば、約10pfu/体重kg~約1013pfu/体重kg)であり得る。
【0146】
組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノムは、単回用量または複数回用量(例えば、2回、3回、4回、6回、またはそれよりも多い用量)で、投与される。複数回用量は、同時発生的または継続的に(例えば、数日間もしくは数週間の期間にわたって)投与され得る。
【0147】
一部の実施形態では、提供される方法は、被験体に、1つまたは複数の追加の治療剤、例えば、抗がん剤または他の治療的処置(腫瘍の外科切除など)を投与することを含む。例示的な抗がん剤としては、化学療法剤、例えば、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、挿入抗生物質(intercalating antibiotic)、増殖因子阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生存剤(anti-survival agent)、生物学的応答修飾因子、抗ホルモン剤(例えば、抗アンドロゲン剤)、抗血管新生剤、およびCDK阻害剤などが挙げられるが、これらに限定されない。他の抗がん処置としては、放射線療法およびがん細胞を特異的に標的化する抗体(例えば、治療用モノクローナル抗体)が挙げられる。
【0148】
アルキル化剤の非限定的な例としては、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、ウラシルマスタード、またはクロラムブシルなど)、アルキルスルホネート(ブスルファンなど)、ニトロソ尿素(カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、またはダカルバジンなど)が挙げられる。
【0149】
代謝拮抗物質の非限定的な例としては、葉酸類似体(メトトレキセートなど)、ピリミジン類似体(5-FUまたはシタラビンなど)、およびプリン類似体、例えば、メルカプトプリンまたはチオグアニンが挙げられる。
【0150】
天然産物の非限定的な例としては、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビンデシンなど)、エピポドフィロトキシン(エトポシドまたはテニポシドなど)、抗生物質(ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、またはマイトマイシンCなど)、および酵素(L-アスパラギナーゼなど)が挙げられる。
【0151】
その他の薬剤の非限定的な例としては、白金配位錯体(シスプラチンとしても公知であるシス-ジアミン-ジクロロ白金IIなど)、置換尿素(ヒドロキシ尿素など)、メチルヒドラジン誘導体(プロカルバジンなど)、および副腎皮質抑制剤(ミトタンおよびアミノグルテチミドなど)が挙げられる。
【0152】
ホルモンおよびアンタゴニストの非限定的な例としては、副腎皮質ステロイド(プレドニゾンなど)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール(magestrol acetate)など)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオールなど)、抗エストロゲン薬(タモキシフェンなど)、ならびにアンドロゲン(プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロンなど)が挙げられる。
【0153】
よく使用される化学療法薬の例として、アドリアマイシン、アルケラン、Ara-C、BiCNU、ブスルファン、CCNU、カルボプラチン(Carboplatinum)、シスプラチン(Cisplatinum)、シトキサン、ダウノルビシン、DTIC、5-FU、フルダラビン、ハイドレア、イダルビシン、イホスファミド、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、タキソール(または他のタキサン類、例えば、ドセタキセル)、ベルバン(Velban)、ビンクリスチン、VP-16が挙げられるが、いくつかのより新しい薬物としては、ゲムシタビン(Gemzar)、ハーセプチン、イリノテカン(Camptosar、CPT-11)、ロイスタチン、ナベルビン、リツキサンSTI-571、タキソテール、トポテカン(ハイカムチン)、ゼローダ(カペシタビン)、ゼベリン(Zevelin)およびカルチトリオールが挙げられる。
【0154】
使用することができる免疫調節因子の非限定的な例としては、AS-101(Wyeth-Ayerst Labs.)、ブロピリミン(Upjohn)、ガンマインターフェロン(Genentech)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Genetics Institute)、IL-2(CetusまたはHoffman-LaRoche)、ヒト免疫グロブリン(Cutter Biological)、IMREG(New Orleans、La.のImregより)、SK&F 106528、およびTNF(腫瘍壊死因子、Genentech)が挙げられる。
【0155】
一部の例では、投与される追加の治療剤は、生物製剤、例えば、モノクローナル抗体、例えば、3F8、アバゴボマブ(Abagovomab)、アデカツムマブ(Adecatumumab)、アフツズマブ、アラシズマブ(Alacizumab)、アレムツズマブ、アルツモマブペンテテート(Altumomab pentetate)、アナツモマブマフェナトクス(Anatumomab mafenatox)、アポリズマブ、アルシツモマブ、バビツキシマブ(Bavituximab)、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベリムマブ、ベジレソマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ブレンツキシマブベドチン、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、CC49、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ、クリバツズマブテトラキセタン(Clivatuzumab tetraxetan)、コナツムマブ、ダセツズマブ、デツモマブ(Detumomab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドレコロマブ、エプラツズマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ、ファルレツズマブ(Farletuzumab)、フィギツムマブ(Figitumumab)、ガリキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレムバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ(Imciromab)、インテツムマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ(Iratumumab)、ラベツズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ロルボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ、ミツモマブ(Mitumomab)、モロリムマブ(Morolimumab)、ナコロマブタフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス、ネシツムマブ、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、ノフェツモマブメルペンタン、オファツムマブ、オララツマブ、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ(Oregovomab)、パニツムマブ、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペルツズマブ、ピンツモマブ(Pintumomab)、プリツムマブ(Pritumumab)、ラムシルマブ、リロツムマブ(Rilotumumab)、リツキシマブ、ロバツムマブ(Robatumumab)、サツモマブペンデチド(Satumomab pendetide)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、タカツズマブテトラキセタン、タプリツモマブパプトクス(Taplitumomab paptox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、TGN1412、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ(Tigatuzumab)、TNX-650、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)、ベルツズマブ、ボロシキシマブ(Volociximab)、ボツムマブ(Votumumab)、もしくはザルツムマブ、またはそれらの組合せである。一部の例では、治療用抗体は、PD-1またはPDL-1に対して特異的である(拮抗性mAb、例えば、アテゾリズマブ、MPDL3280A、BNS-936558(ニボルマブ)、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、CT011、AMP-224、AMP-514、MEDI-0680、BMS-936559、BMS935559、MEDI-4736、MPDL-3280AまたはMSB-0010718Cなど)。
【0156】
一部の例では、追加の治療薬は、それぞれ、CTLA-4、LAG-3またはB7-H3アンタゴニスト、例えば、Tremelimumab、BMS-986016およびMGA271である。
【0157】
一部の例では、追加の治療薬は、PD-1またはPDL-1のアンタゴニストである。
【0158】
一部の種類のがんの別の一般的な処置は、外科処置、例えば、がんまたはその一部分の外科切除である。処置の別の例は、腫瘍を根絶させるか外科切除の前にそれを退縮させるのを補助するために、放射線療法、例えば、放射性材料またはエネルギー(外部光線療法など)を、腫瘍部位に投与することである。
【0159】
CDK(サイクリン依存性キナーゼ)阻害剤は、CDKの機能を阻害する薬剤である。提供される方法において使用するためのCDK阻害剤の非限定的な例としては、AG-024322、AT7519、AZD5438、フラボピリドール、インジスラム、P1446A-05、PD-0332991、およびP276-00が挙げられる(例えば、Lapennaら、Nature Reviews、8巻、547~566頁、2009年を参照されたい)。他のCDK阻害剤としては、LY2835219、パルボシクリブ、LEE011(Novartis)、汎CDK阻害剤AT7519、セリシクリブ(seliciclib)、CYC065、ブチロラクトンI、ヒメニアルジシン(hymenialdisine)、SU9516、CINK4、PD0183812、またはファスカプリシン(fascaplysin)が挙げられる。
【0160】
一部の実施例では、CDK阻害剤は、広範囲阻害剤(フラボピリドール、オロモウシン、ロスコビチン、ケンパウロン、SNS-032、AT7519、AG-024322、(S)-ロスコビチン、またはR547など)である。他の実施例では、CDK阻害剤は、特異的阻害剤(ファスカプリシン、リュビジン(ryuvidine)、プルバラノール(purvalanol)A、NU2058、BML-259、SU 9516、PD0332991、またはP-276-00など)である。
【0161】
薬剤および投薬量の選択は、処置されている所与の疾患に基づいて、当業者によって容易に決定することができる。薬剤または組成物の組合せは、並行して(例えば、1つの混合物として)、別個であるが同時に(例えば、別個の静脈ラインを介して)、または順次に(例えば、1つの薬剤がまず投与され、その後に第2の薬剤が投与される)のいずれかで投与され得る。したがって、組合せという用語は、2つまたはそれよりも多い薬剤または組成物の並行投与、同時投与、または順次投与を指して使用される。
【0162】
本明細書において開示される方法によると、被験体には、有効量の、本明細書において提供される薬剤のうちの1つまたは複数が投与される。有効量は、所望される生理学的応答(例えば、がん細胞の殺滅)をもたらすのに必要な任意の量として定義される。治療剤は、典型的に、1日当たり約0.001mg/kg~約1000mg/kgの初回投薬量で投与される。約0.01mg/kg~約500mg/kg、または約0.1mg/kg~約200mg/kg、または約1mg/kg~約100mg/kg、または約10mg/kg~約50mg/kgの用量範囲を、使用することができる。投薬量は、しかしながら、被験体の要件、処置されている状態の重症度、および用いられている化合物に応じて変動し得る。例えば、投薬量は、特定の被験体において診断されたがんの種類およびステージを考慮して、経験的に決定され得る。被験体に投与される用量は、提供される方法の文脈では、患者において経時的に有益な治療応答をもたらすのに十分であるものとする。特定の状況にとって適正な投薬量の決定は、当業者の技能の範囲内である。したがって、薬剤を投与するのに有効な量およびスケジュールは、当業者によって経験的に決定され得る。投薬量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などといった実質的な有害な副作用を引き起こすまでに多量であるべきではない。投薬量は、いずれかの禁忌が生じた場合には、個々の医師によって調整することができる。所与のクラスの医薬品の適切な投薬量についてのガイダンスは、文献において見出すことができる。
【0163】
腫瘍細胞を、本明細書において開示される組換えアデノウイルス、組換えアデノウイルスゲノム、またはその組成物と接触させることによって、腫瘍細胞の生存度または増殖を阻害する方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本方法は、in vitro方法である。他の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、腫瘍細胞を接触させることは、組換えアデノウイルス、組換えアデノウイルスゲノム、または組成物を、腫瘍を有する被験体に投与することを含む。
【0164】
被験体に、治療有効量の、本明細書において開示される組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノム(またはその組成物)を投与することによって、被験体における腫瘍の進行を阻害するか、または腫瘍の体積を低減させる方法が、さらに提供される。
【0165】
被験体に、治療有効量の、本明細書において開示される組換えアデノウイルスまたは組換えアデノウイルスゲノム(またはその組成物)を投与することによって、被験体におけるがんを処置する方法もまた、提供される。
【0166】
以下の実施例は、ある特定の具体的な特性および/または実施形態を例示するために提供される。これらの実施例は、本開示を、記載される特定の特性または実施形態に限定するとみなされるものではない。
【実施例
【0167】
(実施例1)
強化された複製動態を有する合成アデノウイルス
この実施例は、様々な改変を有する合成アデノウイルスを記載する。一部のウイルスは、少なくとも3つのE3遺伝子に1つまたは複数の改変、例えば3つもしくは6つのE3遺伝子の欠失、または、強化されたウイルス複製を可能にした、3つもしくは6つのE3遺伝子の発現を阻止する改変を含む。一部の場合には、組換えウイルスは、他の改変、例えば、肝臓脱標的化変異、腫瘍選択性変異、標的化リガンド、キメラファイバータンパク質および/またはレポーター遺伝子を含む。
【0168】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0169】
ウイルス記載:
AdSyn-CO335(配列番号1)は、E1AΔLXCXE、ΔE4orf6/7、ΔE3-RIDα/β、ΔE3-14.7kの腫瘍溶解性変異および肝臓脱標的化ヘキソン変異E451Qを有する腫瘍選択的ウイルスである。このウイルスは、ラパマイシン依存性またはAP21967依存性のEGFR標的化遺伝子EGFRVHH-FKBPおよびFRB-ファイバーも発現する。AdSyn-CO335の生成および特徴付けは、参照により完全に本明細書に組み込まれる、WO2016/049201に記載される。
【0170】
AdSyn-CO821(配列番号2)は、蛍光性レポータータンパク質(YPet)をコードするAdSyn-CO335の改変バージョンである。YPetは、P2A自己切断ペプチド配列およびADP(YPet-P2A-ADP)による融合タンパク質として発現される。このウイルスはレポーターを発現するので、どの患者がAdSyn-CO335療法に応答する可能性が最も高いか判定するために使用することができる。例えば、生検からの腫瘍細胞においてウイルスが複製することができるかどうか判定するために、がん患者からの腫瘍生検を使用することができた。AdSyn-CO821は、AdSyn-CO335の複製を支持する腫瘍細胞の遺伝子変異または遺伝子発現プロファイルを同定するために、ヒトがん細胞株のパネルをスクリーニングするために使用することもできた。これらのデータは、AdSyn-CO335療法に応答する可能性がある腫瘍の「サイン」を同定するために使用することができた。
【0171】
AdSyn-CO820(配列番号3)は、3つの追加のE3遺伝子(12.5k、6.7kおよび19k)の欠失によってAdSyn-CO335と異なる、腫瘍溶解性ウイルスである。したがって、このウイルスは、12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7Kを欠いている。
【0172】
AdSyn-CO819(配列番号4)は、蛍光性レポータータンパク質(YPet)をコードするAdSyn-CO820の改変バージョンである。YPetレポーターは、YPet-P2A-ADP融合タンパク質としてコードされる。AdSyn-CO820と同様に、このウイルスは6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7K)を欠いている。AdSyn-CO819は強化された効力を示し、腫瘍細胞株においてAdSyn-CO821より速く複製する。どのがんタイプがおよびどの患者がAdSyn-CO820に応答する可能性が最も高いか規定するために、このウイルスは、様々ながん細胞株ならびに患者由来の腫瘍試料を感染させるために使用することができる。したがって、AdSyn-CO819は、処置の開始前にどの患者がAdSyn-CO820療法に応答する可能性があるか特定するために使用することができる。
【0173】
AdSyn-CO1020(配列番号5)は、EGFRVHH-FKBP-P2A-ADP融合としてADP ORFからのEGFRVHH-FKBP融合タンパク質(EGFR腫瘍細胞への再標的化のために)を発現するAdSyn-CO820の改変バージョンである。
【0174】
AdSyn-CO874(配列番号6)は、E3遺伝子のうちの6つ(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7K)が欠失している野生型Ad5のE3欠失バージョンである。AdSyn-CO874は、YPet-P2A-ADP融合タンパク質としてアデノウイルスADP ORFからのYPet蛍光性レポーターを発現する。このウイルスは強化された効力を示し、腫瘍細胞株において野生型Ad5より速く複製する。
【0175】
AdSyn-CO1000(配列番号7)は、肝臓からウイルスを脱標的化する(静脈内送達を可能にするために)ヘキソンE451Q変異も含有し、腫瘍選択的複製を付与するE1A LXCXEおよびE4orf6/7欠失を有する、AdSyn-CO874の改変バージョンである。このウイルスも、YPetレポーターをYPet-P2A-ADP融合タンパク質としてコードする。AdSyn-CO1000は、複製の非常に高い速度を示す。
【0176】
AdSyn-CO1067(配列番号8)は、YPetレポーターを含有しないAdSyn-CO1000のバージョンである。このウイルスは、療法候補である。
【0177】
AdSyn-CO1068(配列番号9)は、ファイバーHIループにRGD含有ペプチドを有することによってAdSyn-CO1067と異なる。この改変は、ウイルスが代替の感染経路としてRGD-インテグリン相互作用を利用することを可能にすることによって、向性を増大させる。
【0178】
AdSyn-CO1069(配列番号10)は、YPet-P2A-ADP融合タンパク質としてYPetレポーターをコードすること以外は、AdSyn-CO1068と同一である。
【0179】
AdSyn-CO964(配列番号11)は、Ad5ファイバーノブがAd34ファイバーノブによって置き換えられた、改変Ad5ウイルスである。このウイルスも、YPetレポーターをYPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現する。AdSyn-CO964は、試験した複数の細胞株、特に低いコクサッキーアデノウイルス受容体(CAR)を有するかまたはそれを有しない細胞株において、WT Ad5およびAdSyn-CO335と比較して強化された複製を示す。これは、Ad34ノブが、全ての有核細胞で発現されるCD46に結合し、したがって、ウイルスがCARを発現しない細胞に入ることを可能にするという事実によるかもしれない。
【0180】
AdSyn-CO1041(配列番号12)は、キメラAd5/Ad34ファイバーもコードするが、6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7K)の欠失によって、AdSyn-CO964と異なる。AdSyn-CO1041も、YPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現されるYPetレポーターを含む。
【0181】
AdSyn-CO1042(配列番号13)は、AdSyn-CO1041の肝臓脱標的化腫瘍選択的バージョンである。具体的には、AdSyn-CO1042は、E1AΔLXCXEおよびΔE4orf6/7の腫瘍溶解性変異、ならびに肝臓脱標的化ヘキソン変異E451Qを含む。AdSyn-CO1042も、YPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現されるYPetレポーターを含む。このウイルスは、CARを発現しない様々な細胞株において強力な複製を示し、WT Ad5よりかなり強力である。Ad34ノブおよび特異的E3遺伝子の欠失の組合せは、広範囲のがん細胞株にわたって強化された効力を有するウイルスをもたらす。
【0182】
AdSyn-CO1139(配列番号14)は、レポーター遺伝子を含有しないこと以外はAdSyn-CO1142と同一である。したがって、AdSyn-CO1139は、AdSyn-CO1142の治療的バージョンである。
【0183】
AdSyn-CO421(配列番号44)は、YPetレポーターをYPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現するWT Ad5である。このウイルスは、本明細書に記載される研究で対照として使用される。
【0184】
AdSyn-CO1056(配列番号45)は、AdSyn-CO964の肝臓脱標的化腫瘍選択的バージョンである。具体的には、AdSyn-CO1056は、E1AΔLXCXEおよびΔE4orf6/7の腫瘍溶解性変異、ならびに肝臓脱標的化ヘキソン変異E451Qを含む。AdSyn-CO1056は、Ad5ファイバーノブがAd34ファイバーノブによって置き換えられた、改変Ad5ウイルスである。それも、YPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現されるYPetレポーターを含む。
【0185】
AdSyn-CO1250(配列番号46)は、AdSyn-CO1056の非レポーターバージョンである。このウイルスは、療法候補である。
【0186】
AdSyn-CO1089(配列番号47)は、推定上のAd34ファイバーDGループにRGD含有ペプチド(RGD4C)を有することによって、AdSyn-CO1042と異なる。RGD4Cは、ファイバーアミノ酸512(ノブアミノ酸112に対応する)の後に挿入される。この改変は、ウイルスが代替の感染経路としてRGD-インテグリン相互作用を利用することを可能にすることによって、向性を増大させる。
【0187】
AdSyn-CO1320(配列番号48)は、AdSyn-CO1000のYPet蛍光団がKatushka2S蛍光団で置き換えられること以外は、AdSyn-CO1000と同一である。
【0188】
AdSyn-CO1321(配列番号49)は、AdSyn-CO1042のYPet蛍光団がKatushka2S蛍光団で置き換えられること以外は、AdSyn-CO1042と同一である。
【0189】
AdSyn-CO1325(配列番号50)は、キメラAd5/Ad34ファイバー、6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7K)の欠失、E1A ΔLXCXEおよびΔE4orf6/7の腫瘍溶解性変異を含む、肝臓脱標的化(ヘキソンE451Q)、腫瘍選択的アデノウイルスである。AdSyn-CO1325も、ヒト前立腺特異抗原(PSA)をPSA-P2A-ADP融合タンパク質として発現する。このウイルスは、AdSyn-CO1042のYPet蛍光団がPSAで置き換えられること以外は、AdSyn-CO1042と同一である。
【0190】
AdSyn-CO1342(配列番号51)は、キメラAd5/Ad34ファイバーをコードし、6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7K)の欠失を含む、肝臓脱標的化、腫瘍選択的アデノウイルスである。AdSyn-CO1342は、E1A ΔLXCXEおよびΔE4orf6/7の腫瘍溶解性変異、肝臓脱標的化ヘキソン変異E451Q、ならびにLuc2:YPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現されるLuc2:YPetレポーターもコードする。このウイルスは、AdSyn-CO1042のYPet蛍光団がホタルルシフェラーゼ2:YPet融合タンパク質で置き換えられること以外は、AdSyn-CO1042と同一である。
【0191】
AdSyn-CO1362(配列番号52)は、F242F変異を有するキメラAd5/Ad34ファイバータンパク質をコードし、6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7K)の欠失を含む、肝臓脱標的化、腫瘍選択的アデノウイルスである。AdSyn-CO1362は、E1A ΔLXCXEおよびΔE4orf6/7の腫瘍溶解性変異、ならびに肝臓脱標的化ヘキソン変異E451Qを含む。このウイルスも、YPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現されるYPetレポーターを含む。AdSyn-CO1362はAdSyn-CO1042とほとんど同一であるが、CD46への結合を抑止する点変異(F242S)をAd34ノブドメインに有することによって異なる。
【0192】
AdSyn-CO1403(配列番号53)は、推定上のAd34ファイバーHIループにRGD含有ペプチド(RGD4C)を有することによって、AdSyn-CO1042と異なる。RGD4Cは、ファイバーアミノ酸547(ノブアミノ酸147に対応する)の後に挿入される。この改変は、ウイルスが代替の感染経路としてRGD-インテグリン相互作用を利用することを可能にすることによって、向性を増大させる。
【0193】
AdSyn-CO1404(配列番号54)は、推定上のAd34ファイバーIJループにRGD含有ペプチド(RGD4C)を有することによって、AdSyn-CO1042と異なる。RGD4Cは、ファイバーアミノ酸569(ノブアミノ酸169に対応する)の後に挿入される。この改変は、ウイルスが代替の感染経路としてRGD-インテグリン相互作用を利用することを可能にすることによって、向性を増大させる。
【0194】
AdSyn-CO869(配列番号55)は、YPet-P2A-ADPレポーターを有することおよびE3B遺伝子の欠失(ΔRIDα、ΔRIDβ、Δ14.7k)によって、WT Ad5と異なる。
【0195】
AdSyn-CO996(配列番号56)は、YPet-P2A-ADPレポーターおよびE3B遺伝子の発現の抑止を有することによって、WT Ad5と異なる。RIDα、RIDβおよび14.7Kの発現は、各遺伝子の開始コドンの変異および1つまたは複数の未熟停止コドンの挿入によって抑止される。
【0196】
AdSyn-CO999(配列番号57)は、腫瘍選択性変異(E1AΔLXCXEおよびΔE4orf6/7)、肝臓脱標的化変異(ヘキソン[E451Q])およびE3A遺伝子の欠失(Δ12.5k、Δ6.7k、Δ19k)を有することによって、WT Ad5と異なる。このウイルスも、YPet-P2A-ADPレポーターを有する。
【0197】
AdSyn-CO1002(配列番号58)は、レポーター(YPet-P2A-ADP)の所有およびE3A遺伝子の欠失(Δ12.5k、Δ6.7k、Δ19k)によって、WT Ad5と異なる。
【0198】
AdSyn-CO1347(配列番号59)は、キメラAd5/Ad34ファイバー、E3遺伝子12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7Kの欠失、E4orf3の欠失、ならびにYPet-P2A-ADP融合タンパク質として発現されるYPetレポーターを有する、肝臓脱標的化、腫瘍選択的ウイルスである。このウイルスは、E4orf3欠失をさらに含むこと以外は、AdSyn-CO1042と同一である。本明細書に記載される研究は、E4orf3の欠失が腫瘍細胞におけるウイルス複製に負の影響を及ぼさないことを示す。
【0199】
(実施例2)
E3欠失アデノウイルスの複製動態
実施例1に記載される組換えアデノウイルスの複製動態は、PCT公開第WO2017/147265(参照により本明細書に完全に組み込まれる)に開示されるように、蛍光ベースのウイルス動態(FBVK)アッセイを使用して判定した。簡潔には、FBVKアッセイは、感染後に発現される蛍光性レポーター(一般的にYPet)をコードするアデノウイルスの動態を判定するために使用することができる。蛍光強度の測定は、いくつかのウイルス生活環の期間にわたる感染細胞の数に比例する読取りを提供する。時間に対する感染細胞内の指数関数的増殖の半対数プロットは、指数関数的増殖速度または複製速度に比例した直線を与える。特定の細胞株における各ウイルスの複製速度は、「ln slope」として報告される。より高いln slopeは、複製のより速い速度を示す。
【0200】
AdSyn-CO421、AdSyn-CO819、AdSyn-CO821、AdSyn-CO874、AdSyn-CO1000、AdSyn-CO1041およびAdSyn-CO1042の複製は、複数の異なるタイプのがん細胞株および正常な小気道上皮細胞(SAEC)におけるFBVKアッセイを使用して試験した。複製速度を、各ウイルスについて判定した(単位=1/日数)。結果は、6つのE3遺伝子を欠くウイルスが、これらの遺伝子を欠かない対応物ウイルスより速く複製することを実証した。
【0201】
図1~4は、下で議論するように、特定の合成アデノウイルスの複製動態の直接比較を示す。
【0202】
6つのE3遺伝子(ADP以外の全てのE3遺伝子)の欠失の複製への影響を試験するために、AdSyn-CO421(WT Ad5)の複製をA549細胞においてAdSyn-CO874と比較した。図1に示すように、AdSyn-CO874のln slopeはAdSyn-CO421のln slopeより大きく、E3遺伝子の欠失が複製を強化することを示した。複数の異なるがん細胞株において、類似した結果が見出された。
【0203】
別の研究では、AdSyn-CO821の複製を、MDA-MB-453乳がん細胞においてAdSyn-CO819と比較した。AdSyn-CO821は、3つのE3遺伝子(RIDα、RIDβおよび14.7K)を欠いている、肝臓脱標的化腫瘍溶解性ウイルスである。AdSyn-CO819は、AdSyn-CO821と同じ変異を含有するが、6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7K)の欠失を有する。図2に示すように、さらなる3つのE3遺伝子の欠失は、複製の強化につながった。複数の他のがん細胞株において、類似した結果が見出された。
【0204】
AdSyn-CO964は、キメラファイバータンパク質(Ad5ファイバーシャフトおよびAd34ファイバーノブ)を発現する、Ad5レポーター発現ウイルスである。このウイルスの複製は、CAR陰性細胞株(HS578T)において試験した。AdSyn-CO421は、対照として使用した。図3に示すように、Ad5ノブドメインを有する対照ウイルスと比較して、AdSyn-CO964はCAR陰性細胞において強化された複製を示す。
【0205】
次に、6つのE3遺伝子を欠いている肝臓脱標的化腫瘍選択的レポーターウイルス(AdSyn-CO1000)の複製を、同じ変異を有するが、キメラファイバータンパク質(Ad5シャフトおよびAd34ノブ)をさらに発現するウイルス(AdSyn-CO1042)と比較した。これらのウイルスの複製は、CAR陰性細胞株HS578Tにおいて試験した。結果は、ウイルスがAd34ノブドメインを有するファイバータンパク質を発現するとき、CAR陰性細胞における複製が強化されることを実証する(図4)。
【0206】
(実施例3)
腫瘍細胞株の一団における組換え腫瘍溶解性アデノウイルスの複製速度
組換えアデノウイルスAdSyn-CO421、AdSyn-CO819、AdSyn-CO821、AdSyn-CO874、AdSyn-CO964、AdSyn-CO1000、AdSyn-CO1041、AdSyn-CO1042、AdSyn-CO1056、AdSyn-CO1069、AdSyn-CO1089、AdSyn-CO1362、AdSyn-CO1320、AdSyn-CO1321およびAdSyn-CO1342を、様々な脳、乳房、結腸、頭頸部、肺、前立腺および皮膚がん細胞株において蛍光ベースのウイルス動態(FBVK)アッセイを使用して、それらの複製速度について調査した。データは、表2Aおよび2Bに示す。
【0207】
【表2A-1】

【表2A-2】

【表2A-3】
【0208】
【表2B-1】

【表2B-2】

【表2B-3】
【0209】
(実施例4)
AdSyn-CO1042およびAdSyn-CO1000のin vivo特徴付け
強化されたウイルス複製を示した組換えアデノウイルスをさらに特徴付けるために、追加の研究を実行した。
【0210】
in vitroのFBVKアッセイによって実証されるように、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042の両方は、WT Ad5と比較して腫瘍細胞において強化された効力/複製を有するE3欠失ウイルスである(上の表2Aおよび2Bを参照する)。A549肺腫瘍異種移植モデルにおいて、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042のin vivo効能を次に試験した。乳房皮下脂肪に5×10細胞を注入することによって、ヒトA549腫瘍細胞をヌードマウスに接種した。腫瘍が約164mmの平均体積に到達したとき(0日目)、マウスを異なる処置群(1群につきn=8マウス)に無作為化した。マウスに、PBSの単一の腫瘍内(IT)注射、またはAdSyn-CO421、AdSyn-1000もしくはAdSyn-CO1042の8×10PFUの単一の注射を与えた。AdSyn-CO421はYPet-P2A-ADP融合としてYPet蛍光団をコードするが、さもなければ野生型Ad5である。AdSyn-CO1000(図5A)およびAdSyn-CO1042(図5B)の両方は、「野生型」AdSyn-CO421と比較して強化された抗腫瘍活性を示した。
【0211】
AdSyn-CO1042は、HS578T正常位トリプルネガティブ乳がん腫瘍モデルにおいても試験した。右の乳房皮下脂肪に100μlのHBSS中の5×10細胞を注入することによって、ヒトHS578T腫瘍細胞を7週齢NSGマウスに接種した。腫瘍が約168mmの平均体積に到達したとき(0日目)、マウスを異なる処置群(1群につきn=8マウス)に無作為化した。マウスに、0、7および14日目に50μlの全体積のPBSまたはAdSyn-CO1042(2×10PFU)の3用量を与えた。
【0212】
図6に示すように、AdSyn-CO1042処置マウスの腫瘍体積は、40日間の研究期間にわたって低いままであった。PBS処置群の全ての動物は、腫瘍負荷のために30日目以前に屠殺しなければならなかった。
【0213】
下記の研究は、腫瘍選択性変異(ΔLXCXEおよびΔE4orf6/7)および肝臓脱標的化ヘキソン変異(E451Q)の組合せが、WT Ad5と比較してAdSyn-CO1042およびAdSyn-CO1000のより良好な安全性/毒性プロファイルをもたらすことを示し、これは、転移がんの処置のために、これらのウイルスのより高い用量の静脈内(IV)安全送達を可能にするために重要である。0日目および再び7日目に、AdSyn-CO102、AdSyn-CO181、AdSyn-CO331およびAdSyn-CO1042を、200μlの体積の8×10、4×10または2×1010の用量で、C57BL/6マウス(1群につきn=5マウス)の異なる群に静脈内投与した。肝臓毒性を調査するために、生存(図7A)および上昇した肝酵素(図7B)についてマウスを次に分析した。
【0214】
生存および毒性の肉眼的徴候について、マウスを14日目までモニタリングした(図7A)。WT Ad5は4×10PFUの用量で致死性の毒性を引き起こしたが、AdSyn-CO181およびAdSyn-CO331はこの用量で許容された。AdSyn-CO1042は、2×1010PFUのさらにより高い用量でも許容された。血液試料を-2日目(投与前)、2日目(投与1の48時間後)および9日目(投与2の48時間後)に全てのマウスから採取し、以降の分析のために冷凍した。血液試料は、様々な肝酵素、例えばアラニントランスアミナーゼ(ALT)およびアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の存在について調査した。示す結果は、様々な処置群からの2日目の出血からのASTおよびALTレベルの平均である(図7B)。全てのマウスからのASTおよびALTの平均投与前レベルも示す。これらのデータは、正常細胞(AdSyn-CO181)におけるウイルス複製を制限するΔLXCXEおよびΔE4orf6/7変異ならびにAdSyn-CO331に存在するヘキソン脱標的化変異の両方が、WT Ad5と比較して低減された毒性につながることを示す。AdSyn-CO1042は、2×1010PFUのより高い用量でさえ低減された肝臓毒性を示し、AdSyn-CO1042に存在するこれらの異なる変異の組合せが毒性のさらなる低減につながることを実証した。
【0215】
図8は、BALB/cマウスにおけるAdSyn-CO1000の毒性を示す表である。0日目、6日目および12日目に異なる群のマウス(1群につきn=5マウス)に、200μlの体積の2つの異なるウイルスを図に掲載した用量で静脈内投与した。毒性を調査するために、マウスを次に生存について分析した。WT Ad5は0.8×10PFUの用量で5匹のマウスのうちの2匹において致死性の毒性を誘導し、3.2×10PFUのより高い用量で全てのマウスを死滅させたのに対して、AdSyn-CO1000は1×10PFUおよび4×10PFUのわずかにより高い用量でより安全であった。これらのデータは、腫瘍細胞におけるその強化された複製および死滅効力にもかかわらず、AdSyn-CO1000は、AdSyn-CO1000に存在する腫瘍選択性変異および肝臓脱標的化ヘキソン変異のために、WT Ad5より良好な安全性プロファイルを実証することを示す。
【0216】
A549肺がん異種移植モデルにおけるAdSyn-CO1042のIV送達の効能を評価するために、別の研究を実行した。乳房皮下脂肪に5×10細胞を注入することによって、ヒトA549腫瘍細胞をNSGマウスに接種した。腫瘍が約184mmの平均体積に到達したとき(0日目)、マウスを異なる処置群(1群につきn=8マウス)に無作為化した。マウスに、PBSの単一の注射またはAdSyn-CO1042の2×10PFUの単一のIV注射を与えた。図9に示すように、AdSyn-CO1042処置動物において、腫瘍体積は33日間の研究期間にわたって低いままであった。対照的に、食塩水処置群の全ての動物は、腫瘍負荷のために33日目以前に屠殺しなければならなかった。野生型Ad5は2×10PFUの用量で送達できなかったが、その理由は、この用量が死をもたらすからである。
【0217】
次に、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042を、正常(非腫瘍細胞)において評価した。ヒトA549細胞(肺腫瘍)またはヒト初代小気道上皮細胞(SAEC-正常肺)を、4つの異なる腫瘍溶解性ウイルス(AdSyn-CO874、AdSyn-CO1000、AdSyn-CO1041およびAdSyn-CO1042)のうちの1つによって1細胞につき0.12ウイルス粒子のMOIで感染させた。全てのウイルスは、ウイルス複製/増大の経時的定量化を可能にするレポーターとして、YPet蛍光団をコードする。ウイルス感染の直後に、6~7日間にわたってYPet+ウイルス感染細胞の数を定量化するために、IncuCyte ZOOM画像化システムにおいて1時間ごとに1回、ウイルス感染細胞を画像化した。データは、経時的なYPet+細胞の数として表される。AdSyn-CO1000が腫瘍選択的複製を付与するΔLXCXEおよびΔE4orf6/7変異ならびに肝臓脱標的化ヘキソン変異を有すること以外は、AdSyn-CO874およびAdSyn-CO1000は同一のウイルスである。同様に、AdSyn-CO1042がΔLXCXEおよびΔE4orf6/7変異ならびに肝臓脱標的化ヘキソン変異を有すること以外は、AdSyn-CO1041およびAdSyn-CO1042は同一のウイルスである。腫瘍細胞では、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042は、AdSyn-CO874およびAdSyn-CO1041とそれぞれ比較してウイルス増大/複製の類似したレベルを示した(図10)。しかし正常肺細胞では、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042は、AdSyn-CO874およびAdSyn-CO1041と比較して有意に減弱された増大/複製を示した。これらのデータは、AdSyn-CO1000およびAdSyn-CO1042は腫瘍細胞において強力な複製を実証するが、それらの複製は正常細胞において有意に減弱されることを示す。
【0218】
(実施例5)
E3A、E3Bおよび/またはE4orf3の欠失または改変
アデノウイルス複製動態に及ぼすE3A遺伝子だけまたはE3B遺伝子だけの抑止の影響を評価するために、研究を実行した。E3B遺伝子の役割を評価するために、ヒトA549肺腫瘍細胞における複製速度を判定するために、蛍光ベースのウイルス動態学的(FBVK)アッセイを使用して、AdSyn-CO421、AdSyn-CO869、AdSyn-CO996およびAdSyn-CO874を調査した(図11)。データは、Ypet蛍光性タンパク質をコードする各組換えアデノウイルスのln-slope値として報告される。AdSyn-CO869では、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子(E3B遺伝子)は、ゲノムから欠失している。AdSyn-CO996では、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子(E3B遺伝子)の発現は、開始コドンを変異させることによって、または未熟停止コドンをコードするようにゲノムを変異させることによって抑止される。このように、遺伝子はゲノムになお存在するが、遺伝子はウイルス感染の間に発現されない。AdSyn-CO874では、6つのE3遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k)は、ゲノムから欠失している。これらのデータは、RIDα、RIDβおよび14.7k遺伝子の欠失または発現の抑止が、ウイルス複製の増加につながることを示す。AdSyn-CO874における追加のE3遺伝子(12.5k、6.7kおよび19k)の欠失は、複製動態のさらなる増加につながる。
【0219】
E3A遺伝子の役割を評価するために、ヒトA549肺腫瘍細胞における複製速度を判定するために、FBVKアッセイにおいて、AdSyn-CO421、AdSyn-CO1002、AdSyn-CO999およびAdSyn-CO1000を調査した(図12)。データは、Ypet蛍光性タンパク質をコードする各組換えアデノウイルスのln-slope値として報告される。AdSyn-CO1002では、12.5k、6.7kおよび19k遺伝子(E3A遺伝子)は、ゲノムから欠失している。AdSyn-CO999では、同じE3A遺伝子が欠失し、このウイルスはE1A ΔLXCXE、ΔE4orf6/7およびヘキソン[E451Q]改変をさらに含む。AdSyn-CO1000では、E3AおよびE3B遺伝子(12.5k、6.7k、19k、RIDα、RIDβおよび14.7k)はゲノムから欠失し、このウイルスはE1A ΔLXCXE、ΔE4orf6/7およびヘキソン[E451Q]改変をさらに含む。これらのデータは、E3A遺伝子の欠失がウイルス複製の軽度の増加につながることを示す。AdSyn-CO1000におけるE3B遺伝子(RIDα、RIDβおよび14.7k)の追加の欠失は、複製動態のさらなる増加につながる。
【0220】
ウイルス複製動態に及ぼすE4orf3の欠失の影響を評価するために、さらなる研究を実行した。A549ヒト肺腫瘍細胞における複製速度を判定するために、FBVKアッセイでAdSyn-CO1042およびAdSyn-CO1347を調査した(図13)。グラフは、各組換えアデノウイルスのln-slope値を示す。AdSyn-CO1042およびAdSyn-CO1347は、AdSyn-CO1347におけるE4orf3の欠失を除いて同一である。これらのデータは、腫瘍細胞におけるウイルス複製に負の影響を及ぼさずにE4orf3をAd5において欠失させることもできることを実証する。
【0221】
本開示の原理を適用することができる多数の可能性のある実施形態を考慮して、例示された実施形態が、本開示の例にすぎず、本開示の範囲を限定するものとして捉えられるものではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および趣旨の範囲内のものすべてに関して、本発明者らの発明として権利を主張する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
0007430395000001.app