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  • 特許-同軸型マイクロ波プラズマトーチ 図1
  • 特許-同軸型マイクロ波プラズマトーチ 図2
  • 特許-同軸型マイクロ波プラズマトーチ 図3
  • 特許-同軸型マイクロ波プラズマトーチ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】同軸型マイクロ波プラズマトーチ
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/30 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
H05H1/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023002372
(22)【出願日】2023-01-11
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】392036326
【氏名又は名称】株式会社アドテックプラズマテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高原 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】浦山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 嘉信
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-163207(JP,A)
【文献】特開2003-164723(JP,A)
【文献】特開2005-129484(JP,A)
【文献】特表2008-506235(JP,A)
【文献】特開2017-073365(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102958265(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115315055(CN,A)
【文献】国際公開第2021/244981(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側の放電アンテナおよび外側の対向電極からなる同軸構造を有する本体と、前記本体における前記放電アンテナの基端側に設けられたマイクロ波入力部と、前記本体における前記放電アンテナの先端側に設けられ、プラズマ出口に連通したプラズマ生成部と、前記プラズマ生成部にガスを供給するガス供給部と、を備えた同軸型マイクロ波プラズマトーチにおいて、
前記放電アンテナの先端が半球状に形成され、前記対向電極における前記放電アンテナの先端に対向する部分が、前記プラズマ出口に向けて先細り状に形成されていることを特徴とする同軸型マイクロ波プラズマトーチ。
【請求項2】
前記放電アンテナの先端が誘電体によってコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の同軸型マイクロ波プラズマトーチ。
【請求項3】
前記対向電極における前記放電アンテナに対向する面が誘電体によってコーティングされていることを特徴とする請求項2に記載の同軸型マイクロ波プラズマトーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧中においてプラズマを発生し得るマイクロ波プラズマトーチ、とりわけ、同軸型マイクロ波プラズマトーチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の同軸型マイクロ波プラズマトーチとしては、例えば、特許文献1、2に記載されたものがある。
これらの同軸型マイクロ波プラズマトーチは、内側の放電アンテナと外側の対向電極とからなる同軸構造を有していて、この同軸構造における放電アンテナの基端側にマイクロ波入力部を備える一方、同軸構造における放電アンテナの先端側にはプラズマ生成部を備えている。
【0003】
同軸型マイクロ波プラズマトーチは、さらに、同軸構造の内部空間を通じてプラズマ生成部にガスを供給するためのガス供給部を備えている。
【0004】
こうして、ガス供給部から同軸構造の内部空間を通じてプラズマ生成部にガスが供給されるとともに、マイクロ波入力部にマイクロ波が供給されると、マイクロ波の電界が放電アンテナの先端に集中して当該先端が高電界となり、それによって放電アンテナの先端からプラズマが発生する。
【0005】
しかしながら、従来の同軸型マイクロ波プラズマトーチにおいては、放電アンテナの先端が尖った形状、あるいは放電アンテナをその中心軸を横切る平面でカットした形状を有しており、前者においては放電アンテナの尖った先端に、後者においては放電アンテナの先端のエッジに電界が局所集中する。
【0006】
そのため、放電アンテナの先端または先端のエッジ部分がスパッタリングによって浸食され、または加熱されて融解し、生成されたプラズマが不安定化する、あるいは放電アンテナの寿命が短くなるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-188094号公報
【文献】特開2005-293955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、同軸型マイクロ波プラズマトーチのプラズマの安定性を向上させるとともに、放電アンテナの寿命を延ばすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によれば、内側の放電アンテナおよび外側の対向電極からなる同軸構造を有する本体と、前記本体における前記放電アンテナの基端側に設けられたマイクロ波入力部と、前記本体における前記放電アンテナの先端側に設けられ、プラズマ出口に連通したプラズマ生成部と、前記プラズマ生成部にガスを供給するガス供給部と、を備えた同軸型マイクロ波プラズマトーチにおいて、前記放電アンテナの先端が半球状に形成され、前記対向電極における前記放電アンテナの先端に対向する部分が、前記プラズマ出口に向けて先細り状に形成されていることを特徴とする同軸型マイクロ波プラズマトーチが提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、前記放電アンテナの先端が誘電体によってコーティングされている。
【0012】
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記対向電極における前記放電アンテナに対向する面が誘電体によってコーティングされている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放電アンテナの先端を半球状に形成したので、放電アンテナの先端から均等な電界が放射され、生成されたプラズマの安定性が向上する。
【0014】
さらに、対向電極における放電アンテナの先端に対向する部分をプラズマ出口に向けて先細り状に形成したことで、放電アンテナの半球状の先端からの均一な電界放射がより促進され、プラズマのより安定した生成が可能になる。
【0015】
さらには、放電アンテナの先端および対向電極における放電アンテナに対向する面に誘電体のコーティングを施したことで、プラズマ化したガスによる放電アンテナおよび対向電極のダメージが低減し、それらの寿命が延びる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の1実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの軸方向に沿った断面図である。
図2】本発明の別の実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの図1に類似の図である。
図3】本発明のさらに別の実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの図1に類似の図である。
図4】本発明のさらに別の実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの図1に類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の1実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの軸方向に沿った断面図である。
【0018】
図1を参照して、本発明の同軸型マイクロ波プラズマトーチは、内側の放電アンテナ2および外側の対向電極3からなる同軸構造を有する本体1と、本体1における放電アンテナ2の基端側に設けられたマイクロ波入力部4と、本体1における放電アンテナ2の先端側に設けられ、プラズマ出口5に連通したプラズマ生成部6と、プラズマ生成部6に(プラズマ生成)ガスを供給するガス供給部7とを備えている。
【0019】
なお、図1中、マイクロ波入力部4として、マイクロ波伝送用同軸ケーブルを、放電アンテナ2および対向電極3のそれぞれと接続するための接続部8のみが代表的に描かれ、ガス供給部7として、一端10aが本体1に接続されて同軸構造の内部空間9に開口し、他端10bにおいてガス供給源(図示されない)に接続されたガス管路10のみが代表的に描かれている点に留意されたい。
また、図1中、18は、放電アンテナ2を対向電極3の内側空間内において、対向電極3と同軸に保持する誘電体製の保持部材である。
【0020】
放電アンテナ2の先端2aは半球状に形成され、誘電体によってコーティングされている。
また、対向電極3における放電アンテナ2の先端2aに対向する部分は、プラズマ出口5に向けて先細り状に形成され、対向電極3における放電アンテナ2に対向する面が誘電体によってコーティングされている。
【0021】
本発明の同軸型マイクロ波プラズマトーチは、さらに、プラズマ生成部6においてプラズマを点火させるイグニッション機構11を備えている。
イグニッション機構11は、プラズマ生成部6に点火用プラズマを供給する、誘電体バリヤ放電を用いたプラズマ発生装置からなっている。
【0022】
このプラズマ発生装置は、筒状の誘電体からなり、一端12aが本体1に接続されて同軸構造の内部空間9に開口するとともに、当該一端12aの開口が放電アンテナ2の先端2aに向けられたイグニッションガス管12と、イグニッションガス管12の他端12bに接続されたイグニッションガス供給部13と、イグニッションガス管12の外側に設けられた一対の電極14a、14bと、一対の電極14a、14bに交流の高電圧を印加する電源部15とを備えている。
【0023】
一対の電極14a、14bは、この実施例では、それぞれ絶縁体で被覆された平行な2本の導線16、17をイグニッションガス管12の外側に巻き付けたものからなっている。
そして、2本の導線16、17のうちの一方の導線16の一端16aと、2本の導線16、17のうちの他方の導線17の、一方の導線16の一端16aから遠い方の端17aとの間に電源部15が接続されている。
なお、導線16の他端16bおよび導線17の端17bは開放端となっている。
【0024】
次に、この同軸型マイクロ波プラズマトーチの動作を説明する。
まず、ガス供給部7のガス管路10を通じて、同軸構造の内部空間9に(プラズマ生成)ガスが供給されるとともに、マイクロ波入力部4から放電アンテナ2および対向電極3にマイクロ波が供給される。
【0025】
次いで、イグニッション機構11のイグニッションガス供給部13からイグニッションガス管12にイグニッションガスが供給され、イグニッション機構11の一対の電極14a、14b(2本のコイル状の導線16、17)に交流の高電圧が印加される。
【0026】
こうして、2本のコイル状の導線16、17は陰極と陽極を構成し、イグニッションガス管12の内部における隣り合う導線16、17間のギャップに対応する領域に点火用プラズマが生成される。
【0027】
生成された点火用プラズマは、イグニッションガス管12の一端12aから本体1の内部空間9内に進入して放電アンテナ2の先端2aに達し、プラズマ生成室6においてマイクロ波による大気圧プラズマを点火させる。
【0028】
プラズマ点火後、イグニッション機構の動作が停止せしめられ。生成された大気圧プラズマがプラズマ出口5から外部に照射される。
【0029】
本発明によれば、放電アンテナ2の先端2aを半球状に形成したので、放電アンテナ2の先端2aから均等な電界が放射され、生成されたプラズマの安定性が向上する。
さらに、対向電極3における放電アンテナ2の先端2aに対向する部分をプラズマ出口5に向けて先細り状に形成したことで、放電アンテナ2の半球状の先端2aからの均一な電界放射がより促進され、プラズマのより安定した生成が可能になる。
【0030】
さらには、放電アンテナ2の先端2aと、対向電極3における放電アンテナ2に対向する面に誘電体のコーティングを施したことで、プラズマ化したガスによる放電アンテナ2および対向電極3のダメージ(酸化やエッチング)が低減し、それらの寿命が延びる。
【0031】
さらに、本発明によれば、イグニッション機構を、誘電体バリヤ放電を用いたプラズマ発生装置から構成し、このプラズマ発生装置で生成した点火用プラズマを、同軸型マイクロ波プラズマトーチの本体1のプラズマ生成部6に供給して、プラズマ点火を行うようにしたので、イグニッション機構11のコンパクト化が実現できるとともに、コンタミの発生も防止することができる。
【0032】
図2は、本発明の別の実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの図1に類似の図である。
図2の実施例は、図1の実施例と、イグニッション機構の一対の電極の構成のみが異なる。よって、図2中、図1に示したものと同じ構成要素には同一番号を付し、以下ではそれらの詳細な説明を省略する。
【0033】
この実施例では、一対の電極14a、14bが、イグニッションガス管12を間に挟んで対向配置された一対の半円筒状電極19a、19bからなっている。
そして、一対の半円筒状電極19a、19bの互いに対向する側縁間にはギャップが形成され、一対の半円筒状電極19a、19b間に電源部15が接続されている。
【0034】
この実施例によれば、イグニッション機構11のイグニッションガス供給部13からイグニッションガス管12にイグニッションガスが供給され、イグニッション機構11の一対の電極14a、14b(一対の半円筒状電極19a、19b)に交流の高電圧が印加されると、イグニッションガス管12の内部における一対の半円筒状電極19a、19bの互いに対向する側縁間のギャップに対応する領域に点火用プラズマが生成される。
【0035】
図3は、本発明のさらに別の実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの図1に類似の図である。
図3の実施例は、図1の実施例と、イグニッション機構の一対の電極の構成のみが異なる。よって、図3中、図1に示したものと同じ構成要素には同一番号を付し、以下ではそれらの詳細な説明を省略する。
【0036】
この実施例では、一対の電極14a、14bが、イグニッションガス管12の外側に嵌め込まれ、イグニッションガス管12の軸方向において対向配置された一対の円筒状電極20a、20bからなり、一対の円筒状電極20a、20bの互いに対向する端縁間には絶縁体21が配置され、一対の円筒状電極20a、20b間に電源部15が接続されている
【0037】
この実施例によれば、イグニッション機構11のイグニッションガス供給部13からイグニッションガス管12にイグニッションガスが供給され、イグニッション機構11の一対の電極14a、14b(一対の円筒状電極20a、20b)に交流の高電圧が印加されると、イグニッションガス管12の内部における一対の円筒状電極20a、20bの互いに対向する端縁間のギャップに対応する領域に点火用プラズマが生成される。
【0038】
図4は、本発明のさらに別の実施例による同軸型マイクロ波プラズマトーチの図1に類似の図である。
図4に示すように、この実施例では、イグニッション機構1がガス供給部7のガス管路10に備えられ、ガス管路10がイグニッション機構11の一部(イグニッションガス管)を構成する。
【0039】
この場合、ガス管路10の少なくともイグニッション機構1を構成する部分は誘電体から形成され、誘電体製のガス管路10の外側に一対の電極14a、14bが設けられ、一対の電極14a、14b間に交流の高電圧を印加する電源部15が接続されている。
この実施例では、一対の電極14a、14bおよび電源部15の構成は、図1の実施例と同じである
【0040】
この実施例は(プラズマ生成)ガスとイグニッションガスが同一種類の場合に有効であり、この実施例によれば、本体2に別途イグニッションガス管を接続する必要がなく、同軸型マイクロ波プラズマトーチの全体をよりコンパクト化することができる。
【0041】
以上、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明したが、本発明の構成は上記実施例に限定されず、当業者が添付の特許請求の範囲に記載した構成の範囲内で種々の変形例を案出し得ることは言うまでもない。
【0042】
例えば、点火用プラズマを生成するイグニッション機構の構成は、上記実施例に限定されず、誘電体バリヤ放電を用いたプラズマ発生装置からなっておればどのような構成であってもよく、より好ましくは、筒状の誘電体からなり、一端が本体に接続されて同軸構造の内部空間に開口するとともに、一端の開口が放電アンテナの先端に向けられたイグニッションガス管と、イグニッションガス管の他端に接続されたイグニッションガス供給部と、イグニッションガス管の外側に設けられた一対の電極と、一対の電極に交流の高電圧を印加する電源部とを備えておればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 本体
2 放電アンテナ
2a 先端
3 対向電極
4 マイクロ波入力部
5 プラズマ出口
6 プラズマ生成部
7 ガス供給部
8 同軸ケーブル接続部
9 内部空間
10 ガス管路
10a 一端
10b 他端
11 イグニッション機構
12 イグニッションガス管
12a 一端
12b 他端
13 イグニッションガス供給部
14a、14b 一対の電極
15 電源部
16 導線
16a 一端
16b 他端
17 導線
17a、17b 端
18 保持部材
19a、19b 半円筒状電極
20a、20b 円筒状電極
21 絶縁体
【要約】
【課題】同軸型マイクロ波プラズマトーチのプラズマの安定性を向上させるとともに、放電アンテナの寿命を延ばす
【解決手段】内側の放電アンテナ2および外側の対向電極3からなる同軸構造を有する本体1と、本体における放電アンテナの基端側に設けられたマイクロ波入力部4と、本体における放電アンテナの先端2a側に設けられ、プラズマ出口5に連通したプラズマ生成部6と、プラズマ生成部にガスを供給するガス供給部7を備える。放電アンテナの先端が半球状に形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4