(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20240205BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20240205BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240205BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240205BHJP
B01J 23/02 20060101ALI20240205BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C01F11/18 H
B01J35/39
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J23/02 M
B01J21/06 M
(21)【出願番号】P 2023124499
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504383531
【氏名又は名称】株式会社宇宙環境保全センター
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】立石 一郎
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特許第7193192(JP,B1)
【文献】特開2014-161798(JP,A)
【文献】特開2002-212461(JP,A)
【文献】Green synthesis of CaCO3 nanoparticles for photocatalysis and cytotoxicity,Bioprocess and Biosystems Engineering,2023年03月22日,46,p.727-734
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01F 1/00 - 17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含まず、Caイオン、Mgイオンの一つ以上、および金属イオンを含む陽イオン溶液(以下、「陽イオン溶液」という。)に炭酸カルシウムを配合し、炭酸カルシウムの一部、または全部が溶解して生成する炭酸カルシウム配合金属イオン化合物に、Caイオン
およびMgイオンを含まず、ケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液(以下、「ケイ酸溶液」という。)を混合することにより、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物を多孔性ケイ酸カルシウム、またはケイ酸マグネシウム、またはケイ酸カルシウムマグネシウムで被覆することを特徴とする炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法であって、前記陽イオン溶
液は、さらに繊維状物質を含有
し、
前記陽イオン溶液は、Feイオン、Agイオン、Cuイオ
ンから選ばれる1つ以上の金属イオ
ン(以下、「該金属イオ
ン」という。)を、炭酸カルシウムに対して0.001~20重量部含
み、
前記陽イオン溶液は、該金属イオ
ンを混合することにより炭酸カルシウムを溶解する酸性度を有することを特徴とする炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法。
【請求項2】
前記繊維状物質は、絹由来のセリシン、またはフィブロインの繊維状タンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム、および該金属イオ
ンの配合量は、前記炭酸カルシウムが化石サンゴ単独、または炭酸カルシウム単独、もしくはそれらの混合物からなり、炭酸カルシウムに対し、該金属イオ
ンが0.001~20重量部、残部が炭酸カルシウムと多孔性ケイ酸塩からなる、請求項1に記載の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の高度な技術や高価な材料を用いず、また、光触媒金属として二酸化チタンを使わずに、より簡易な方法、かつ安価で安心安全な材料を活用して光触媒効果を高め、食品、飼料、肥料、化粧品または医薬部外品の成分あるいはコーティング剤の成分として配合可能である、炭酸カルシウムを応用した炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンは光触媒としては言うまでもなく、塗料、着色料、食品添加物などの種々の用途に使用されており、特に酸化チタンをアパタイトで被覆した光触媒機能を有する素材を環境浄化化粧料素材として用いることが特開2007-169164号公報(特許文献1参照)において提案されている。化粧品として酸化チタン光触媒を配合した場合、光エネルギーによる活性・分解力を基材である皮膚に直接及ぼさないためには光触媒金属へのアパタイト等の被覆構造が必要不可欠であるが、ナノサイズの酸化チタンが化粧品素材として使用される場合の皮膚浸透性などの健康への影響について、酸化チタンの粒径までは言及されていない。
【0003】
また、特開2014-184349(特許文献2参照)、段落番号0021には、金属イオンと炭酸カルシウムを配合した化粧品や食品添加物としての酸化チタンの活性を向上させる製造方法について開示されているが、食品添加物として摂取される酸化チタンがナノサイズである場合の、ヒトの健康への影響については言及されていない。
【0004】
特許7193192号(特許文献3参照)には、金属イオン配合ケイ酸塩を被覆した酸化チタンの製造方法が開示されているが、光触媒機能を有する基材として従来の酸化チタンを配合する製造方法であり、酸化チタン不使用の本願とは根本的な違いがある。一方で、酸化チタンを使用しない高活性光触媒として、特開2015-54299(特許文献4参照)には酸化鉄、特開2016-10750(特許文献5参照)にはオキシ水酸化鉄粒子が銅酸化物粒子の表面及び内部に結合した、酸化チタン不使用の光触媒製造方法も開示されている。
【0005】
さらに近年は、オキシ水酸化鉄を応用した酸化チタンを凌駕する光触媒性能を実現する技術(非特許文献6参照)や、酸化チタンの代替品として二核鉄イオンを多孔質シリカで安定化させた酸化鉄系材料(非特許文献7参照)の開発も進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-169164号公報
【文献】特開2014-184349号公報
【文献】特許第7193192号公報
【文献】特開2015-54299号公報
【文献】特開2016-10750号公報
【文献】東京理科大学、“プレスリリース”、[online]、2020年2月27日、[2023年1月6日検索]、インターネット<URL:https://www.tus.ac.jp/today/archive/20200227001.html>
【文献】広島大学、“研究成果”、[online]、2022年5月26日、[2023年1月6日検索]、インターネット<URL:https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/71669>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
着色料や光触媒金属でもある酸化チタンは、食品添加物や化粧品・医薬品原料、塗料、工業材料として世界中で多く利用されている。特にその抗菌・除菌性は、建築材や除菌フィルターなどの用途で昨今の新型ウィルスの脅威に立ち向かう有効な手段の一つとして注目され、技術開発が盛んである。
【0008】
しかしながら、酸化チタンがナノ粒子に調製されている場合、酸化チタンの粉塵の舞う作業場などで長期間粉塵を吸い込むことによる肺がんのリスクや、動物実験において遺伝毒性が生じる懸念のあることが近年国際機関から報告され、殊にEUヨーロッパ連合では食品安全上の懸念から食品添加物である酸化チタンの使用が2022年1月に禁止される事態とまでなっている。このようなナノサイズの原料も含めた酸化チタンのナノマテリアルとしての健康への懸念を背景に、より安心安全な光触媒材料の開発が急がれている。
【0009】
本発明は、光触媒ナノマテリアルが人の健康に及ぼすかもしれない影響についてのこのような世情を背景にして考案されたものである。つまり光触媒性金属として代表される酸化チタンを用いず、酸化チタンと同等の効果を持つより安心安全な光触媒材料の開発に着手し、Feイオン、Mgイオン、Agイオン、Cuイオンなどの金属イオンの存在下で、CaCO3、CaOなどのカルシウム化合物とカルシウムイオン、マグネシウムイオンを含む陽イオン溶液、およびケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液を高度に配合した複合組成物を考案した。
【0010】
CaCO3は化石サンゴに代表されるように多孔質材料であり、Fe系酸化物は可視光応答性光触媒材料として期待される材料である。Fe系酸化物の光触媒材料への応用技術も発展し、酸化チタンに引けを取らない材料も開発されているが、Fe系酸化物を活用した高活性光触媒材料の製造には高度な技術と多額なコストがかかり実質的に汎用化まではまだ至っていない。これらの課題を鑑み、光触媒金属として酸化チタンを基材とするのではなく、炭酸カルシウム等のカルシウム化合物と金属イオン、ケイ酸塩をハイブリットに配合することにより、酸化チタンを使用しない光触媒材料の開発を試み、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、Feイオン、Cuイオン、Agイオンから選ばれる1つ以上の金属イオン(以後、まとめて「該金属イオン」という)と、ケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含まず、Caイオン、Mgイオンの一つ以上、および金属イオンを含む陽イオン溶液(以下、「陽イオン溶液」という。)、およびCaイオンおよびMgイオンを含まず、ケイ酸化合物、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液(以下、「ケイ酸溶液」という。)、および化石サンゴ等の天然素材を含む炭酸カルシウムを簡易な方法で融合させた炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を製造し、酸化チタンに依らない光触媒材料の製造方法の提供を目的として開発したのがこの発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法である。
【0012】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法において、炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物は、化石サンゴ等の天然由来の炭酸カルシウムを含む炭酸カルシウムを予め混合し、該混合物を、金属イオンの存在下においてケイ酸溶液、および陽イオン溶液で処理することを特徴とするものである。
【0013】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法において、該金属イオンを、陽イオン溶液に配合することにより、金属イオンの存在下において化石サンゴ等の天然由来の炭酸カルシウムを含む炭酸カルシウムを陽イオン溶液、およびケイ酸溶液で処理し、炭酸カルシウム配合金属イオン化合複合組成物を多孔性ケイ酸塩で被覆することを特徴とするものである。
【0014】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法において、前記陽イオン溶液は、該金属イオンを添加することにより化石サンゴ等の天然由来の炭酸カルシウムの一部、あるいは全部を溶解する酸性度を有し、陽イオン溶液に炭酸カルシウムを配合することで溶解した炭酸カルシウムと陽イオン溶液とが反応して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物が生成し、該化合物をさらにケイ酸溶液で処理することで、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物を多孔性ケイ酸塩で被覆した複合組成物であることを特徴とするものである。
【0015】
前記炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物とは、金属イオンを添加した陽イオン溶液に炭酸カルシウムを配合して成した炭酸カルシウム配合金属イオン化合物にケイ酸溶液を混合して生成するケイ酸塩を被覆した複合組成物であり、前記炭酸カルシウム配合金属イオン化合物とは、金属イオンの存在下で陽イオン溶液、およびケイ酸溶液の両方で処理していない(陽イオン溶液、もしくはケイ酸溶液のいずれかでのみ処理をしただけの)未だケイ酸塩を被覆していない化合物をいう。
【0016】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物において、前記炭酸カルシウムに含まれる天然物由来の多孔性炭酸カルシウムである化石サンゴは石灰質の堅い骨格を持ったサンゴの群体の骨格が永い年月の間に風化し、波の作用で浸食され塊または粒状になって海底に沈積・地層化し、多孔質による吸着特性やカルシウムを主とした多くのミネラルを含有し、酸性溶液に良く溶解してイオン化する特徴がある、沖縄本島を含む南西諸島、与那国島において採取される天然物質であり、その多孔質構造により金属・ミネラルの吸着特性が好適で金属イオンを良く吸着する。またその他の天然物由来の多孔性炭酸カルシウムとしては、焼成・粉砕した石灰岩や貝化石、貝殻、カキがら等を粒度分級した粉末を好適に利用することができる。
【0017】
前記陽イオン溶液は、CaイオンとMgイオンの濃度を任意の混合割合で調整することができる。例えば、陽イオン溶液に対してCaイオン90モル%、Mgイオン10モル%を混合したり、あるいはCaイオン10モル%、Mgイオン90モル%を混合したり、Caイオン単独(100モル%)、あるいはMgイオン単独(100モル%)の陽イオン溶液とすることができる。
【0018】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法において、前記ケイ酸溶液、および陽イオン溶液は、シルク等の繊維状タンパク質や細胞壁由来のセルロース、またはセルロースに似た化学構造を有するキチン、およびキトサンをナノファイバー化した繊維状物質であるナノセルロースを含有することをも特徴とするものである。シルク等の繊維状タンパク質やナノセルロース等の繊維状物質の存在下で生成する多孔性ケイ酸塩がより微細化する結果、吸着性や生体適合性が向上し、汚れや臭いの原因物質をより効果的に吸着することができる。
【0019】
前記絹からセリシンを除去して得たフィブロインは、シルク粉末として、絹糸もしくは天然の繭を使用し、シルク繊維に含まれているフィブロインという絹タンパク質を分解抽出したあとに、分子レベルのアミノ酸パウダーに加熱処理したものであり、これらの繊維状物質を前記炭酸カルシウムに対して0.001~数重量部の割合で混合することができる。
【0020】
キチンはエビ、カニをはじめとして、きわめて多くの生物に含まれている天然の素材であり、その構造はセルロースに似ているが、N-アセチル-D-グルコサミンが鎖状に長くつながったアミノ多糖である。また、キチンをアルカリ処理するとアセチル基が除かれ、主としてD-グルコサミン単位からなるキトサンに変換される。アルカリ処理により、D-グルコサミン単位の割合は70-95%程度まであがり、酸の水溶液に溶けるようになる。キチン、キトサンはその生体吸収性,抗菌・抗カビ性,多孔性ゲル形成性が注目され、高度な機能や環境との調和に期待される高分子材料である。
【0021】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物において、前記炭酸カルシウム、および該金属イオン、ケイ酸溶液、陽イオン溶液の配合量は、前記炭酸カルシウムが化石サンゴ単独または炭酸カルシウム単独、もしくはそれらの混合物からなり、炭酸カルシウムに対し該金属イオンが0.001~20重量部、残部が炭酸カルシウムと多孔性ケイ酸塩からなることをも特徴とするものである。
【0022】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法において、前記炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物は、食品・飼料・肥料・化粧品・医薬部外品・農林漁業資材・水質/環境浄化剤・コーティング剤・ペットフード・消臭剤・塗料・切削油等の成分として配合可能であることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法において、前記炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物は、光が照射された際の酸化還元作用により、多孔性ケイ酸塩や化石サンゴが吸着した汚れや臭い、細菌等を分解除去する作用を有する。ケイ酸塩は汚れや臭い、細菌等を吸着保持する機能を有する。例えば窒素酸化物や過酸化脂質、アンモニアやアルデヒド類、大腸菌等の細菌やウィルスを吸着できる(セラミック)素材である。また、吸着機能のある多孔質材であるゼオライトや珪藻土、炭をさらに配合した複合組成物でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例1における金属イオンの添加効果を示すグラフである。炭酸カルシム(化石サンゴ)の配合のもと、金属イオン化合物に多孔性ケイ酸塩を被覆することで光触媒効果が実現する。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.854になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。
【
図2】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例2における金属イオンの添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.824になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。Feイオン、Mgイオン、ケイ酸イオンのいずれか1つに炭酸カルシウム(化石サンゴ)を配合しても光触媒作用は発現しない。つまり、金属イオンと炭酸カルシウムだけの炭酸カルシウム配合金属イオン化合物では光触媒作用は発現しない。
【
図3】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例3におけるFeイオンとケイ酸溶液、陽イオン溶液の添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル10mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.824になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。Feイオンを含む陽イオン溶液に炭酸カルシウム(化石サンゴ)を配合して生成したFeイオン化合物を、ケイ酸溶液で処理することによって光触媒作用が発現する。
図3にあるように、Feイオンを陽イオン溶液に2重量部(炭酸カルシウム(化石サンゴ)に対して)以上添加することによって、光触媒反応は著しく促進される。
【
図4】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例4におけるMgイオンとケイ酸溶液、陽イオン溶液の添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.824になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。Mgイオンを含む陽イオン溶液に炭酸カルシウム(化石サンゴ)を配合して生成したMgイオン化合物を、ケイ酸溶液で処理することによって光触媒反応が発現する。
図4にあるように、Mgイオンを陽イオン溶液に10重量部(炭酸カルシウム(化石サンゴ)に対して)添加することによって、光触媒反応は最も促進される。
【
図5】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例5におけるFeイオンとケイ酸溶液、陽イオン溶液の添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.824になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。Feイオンを含む陽イオン溶液に炭酸カルシウム(化石サンゴ)を配合して生成したFeイオン化合物を、ケイ酸溶液で処理することによって光触媒反応が発現する。陽イオン溶液にFeイオンを2重量部(炭酸カルシウム(化石サンゴ)に対して)添加した。
図5にあるように、ケイ酸イオンは5重量部以上添加することによって、光触媒作用が発現する。
【
図6】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例6におけるFeイオン、Cuイオン、Agイオンとケイ酸溶液、陽イオン溶液の添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.886になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。Agイオンを0.2重量部含む陽イオン溶液、Cuイオンを0.6重量部(炭酸カルシウム(化石サンゴ)に対して)含む陽イオン溶液、さらにFeイオンを1重量部(炭酸カルシウム(化石サンゴ)に対して)含む陽イオン溶液のそれぞれに炭酸カルシウム(化石サンゴ)を配合して生成した各金属イオン化合物をケイ酸溶液で処理することで顕著に光触媒効果が発現する。
【
図7】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例7におけるFeイオン、Ptコロイドを添加して生成した金属イオン化合複合組成物とケイ酸溶液の添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.854になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。
【
図8】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例8におけるシルクたんぱく質の添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.854になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。
【
図9】本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例9におけるナノセルロース繊維の添加効果を示すグラフである。なお、測定条件として各サンプル100mgに対してメチレンブルー(660nm波長における吸光度が0.854になる濃度)を10ml混合し、紫外線(2mW/cm
2)を照射した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の実施の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
<本発明の組成物の製造方法>
本発明は酸化チタンを使用せず、炭酸カルシウムに金属イオンを配合して生成した炭酸カルシウム配合金属イオン化合物を、多孔性ケイ酸塩で被覆した複合組成物の製造方法を提供するものである。
【0027】
本発明において、金属イオンと炭酸カルシウムの配合量は、炭酸カルシウムが化石サンゴ単独または炭酸カルシウム単独、もしくはそれらの混合物からなり、炭酸カルシウムに対し金属イオンが0.001~20重量部、残部が炭酸カルシウムと多孔性ケイ酸塩からなる。
【0028】
本実施例における配合例は、前記炭酸カルシウムが化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1からなり、金属イオンとしてFeイオンが炭酸カルシウムに対して1重量部、残部が炭酸カルシウムと多孔性ケイ酸塩からなる。なお、本発明において使用する金属イオンの価数は、他の配合物との関係を見ながら適宜決定することができる。
【0029】
予め炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合しておき、該混合物を、炭酸カルシウムに対してFeイオンを1重量部添加した陽イオン溶液に配合した後、ケイ酸溶液を混合し、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成する。例えば、陽イオン溶液に炭酸カルシウムの粉体を浸漬・乾燥後、ケイ酸溶液に浸漬・乾燥し、しかる後に焼成する。その際、例えば陽イオン溶液やケイ酸溶液には、繊維状たんぱく質、または繊維状セルロースを、炭酸カルシウムに対して0.001~数重量部、添加しておくこともできる。
【0030】
図1は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例1における炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の光触媒効果を示すグラフである。
光触媒金属として一般的に使用される酸化チタンを使わずとも光触媒反応を得る光触媒性複合組成物が得られていることがわかる。
【0031】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=Feイオンを1重量部(炭酸カルシウムに対する)含む、100~300mM(Caイオン90モル%、Mgイオン10モル%)のCaCl2+MgCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=10~1000mMのNa2SiO3溶液
【0032】
本例では、多孔性ケイ酸塩の多孔性や被覆度などは、陽イオン溶液、およびケイ酸溶液の組成や温度、浸漬時間を変えることによって制御することができる。ケイ酸イオンや陽イオンのイオン濃度が低い場合には、多孔性ケイ酸塩の被覆度が低下する傾向にある。また、汚れ物質等の吸着効果は、化石サンゴ等の天然物由来の炭酸カルシウムを含む炭酸カルシウムを配合する陽イオン溶液の酸性度を調整することによって制御することができる。陽イオン溶液の酸性度が低い場合には炭酸カルシウムの溶解量が低減することにより、多く残留する多孔性炭酸カルシウムの吸着性により炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の汚れ等の吸着効果が向上する傾向にある。
【実施例2】
【0033】
<本発明の組成物の製造法>
炭酸カルシウム(化石サンゴ単独)に対して2重量部のFeイオンを含む陽イオン溶液に炭酸カルシウムを配合後に焼成して炭酸カルシウム配合Feイオン化合物を作製した。同様に、10重量部のMgイオンを含む陽イオン溶液に炭酸カルシウムを配合した炭酸カルシウム配合Mgイオン化合物、10重量部のケイ酸イオンを含むケイ酸溶液に炭酸カルシウムを配合した炭酸カルシウム配合ケイ酸化合物を作製した。本実施例で作製した各炭酸カルシウム配合金属イオン化合物は、陽イオン溶液、またはケイ酸溶液のどちらか一つでしか処理していない(ケイ酸塩を被覆していない)、Feイオン、Mgイオン、ケイ酸イオンに炭酸カルシウム(化石サンゴ単独)を配合しただけの単なる炭酸カルシウム配合金属イオン化合物である。
【0034】
図2は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例2における炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の光触媒効果を示すグラフであり、単に炭酸カルシウムをFeイオン、またはMgイオンを含む陽イオン溶液のみ、またはケイ酸イオンを含むケイ酸溶液のみに配合しただけで、陽イオン溶液、またはケイ酸溶液のどちらか一方での処理しかしていない(ケイ酸塩を被覆していない)金属イオン化合物のメチレンブルー分解比較データである。
図2により、Feイオン、Mgイオン、ケイ酸イオンの各1成分のみに炭酸カルシウムを配合しても光触媒作用は発現しない。つまり、炭酸カルシウムに金属イオンを配合しただけの炭酸カルシウム配合金属イオン化合物では光触媒作用は発現しない。
【実施例3】
【0035】
<本発明の組成物の製造法>
図3は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例3における金属イオンの添加効果を示すグラフであり、金属イオンとしてケイ酸イオンの効果と、Feイオン添加量の影響を示したメチレンブルー分解比較データである。
【0036】
実施例1と同様にして、予め炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合しておき、該混合物を、金属イオンを含む陽イオン溶液に配合した後、ケイ酸溶液を添加して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成する。
その際、金属イオンとしてFeイオンを炭酸カルシウムに対してそれぞれ0、1、2、3重量部配合した陽イオン溶液と、ケイ酸イオンを炭酸カルシウムに対して10重量部配合したケイ酸溶液に炭酸カルシウムを配合することで、金属イオン(Feイオン)の存在下において、炭酸カルシウムを陽イオン溶液とケイ酸溶液で処理した炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を得ることができる。
【0037】
図3は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例3における炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の光触媒効果を示すグラフである。
図3により、実施例2において炭酸カルシウムと金属イオンを配合しただけの炭酸カルシウム配合金属イオン化合物だけでは効果が見られなかったところに、ケイ酸溶液と陽イオン溶液の混合を付加して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物にケイ酸塩を被覆することにより、一般的に使用される酸化チタンなどの光触媒金属を使わずとも光触媒反応を得る光触媒性複合組成物が得られていることがわかる。
【0038】
ここで用いられる陽イオン溶液,およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=Feイオンを各0、1、2、3重量部含む、100~300mM(Caイオン90モル%、Mgイオン10モル%)のCaCl2+MgCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=ケイ酸イオンを10重量部含むNa2SiO3溶液
【実施例4】
【0039】
<本発明の組成物の製造法>
図4は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例4における金属イオンの添加効果を示すグラフであり、金属イオンとしてMgイオンを添加し、ケイ酸イオンの効果とMgイオン添加量の影響を示したメチレンブルー分解比較データである。
【0040】
実施例1と同様にして、予め炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合しておき、該混合物を、金属イオンを含む陽イオン溶液に配合した後、ケイ酸溶液を添加して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成する。その際、金属イオンとして、Mgイオンを炭酸カルシウムに対してそれぞれ0、5、10、20重量部配合した陽イオン溶液と、ケイ酸イオンを炭酸カルシウムに対して10重量部配合したケイ酸溶液とで処理することで、金属イオン(Mgイオン)の存在下において、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物を陽イオン溶液とケイ酸溶液で処理した炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を得ることができる。
【0041】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=Mgイオンを各0、5、10、20重量部含む、100~300mMのCaCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=ケイ酸イオンを10重量部含むNa2SiO3溶液
【0042】
図4により、実施例2において炭酸カルシウムと金属イオンを配合しただけの炭酸カルシウム配合金属イオン化合物では効果が見られなかったところに、ケイ酸溶液と陽イオン溶液の処理を付加してケイ酸塩を被覆することにより、一般的に使用される酸化チタンなどの光触媒金属を使わずとも光触媒反応を得る光触媒性複合組成物が得られていることがわかる。
【実施例5】
【0043】
<本発明の組成物の製造法>
図5は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例5における金属イオンの添加効果を示すグラフである。金属イオンとしてFeイオンを添加し、ケイ酸イオンの効果と、ケイ酸イオン添加量の影響を示したメチレンブルー分解比較データである。
【0044】
実施例1と同様にして予め、予め炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合しておき、該混合物を、金属イオンを含む陽イオン溶液に配合した後、ケイ酸溶液を添加して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成する。その際、Feイオンを、炭酸カルシウムに対して2重量部配合した陽イオン溶液と、ケイ酸イオンを、炭酸カルシウムに対してそれぞれ0、5、10、20重量部配合したケイ酸溶液とで処理することで、金属イオン(Feイオン)の存在下において、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物を陽イオン溶液とケイ酸溶液で処理した炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を得ることができる。
【0045】
ここで用いられる陽イオン溶液およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=Feイオンを2重量部含む、100~300mM(Caイオン90モル%、Mgイオン10モル%)のCaCl2+MgCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=ケイ酸イオンを各0、5、10、20重量部含むNa2SiO3溶液
【0046】
図5により、実施例2において炭酸カルシウムと金属イオンを配合しただけの炭酸カルシウム配合金属イオン化合物では効果が見られなかったところに、ケイ酸溶液と陽イオン溶液での処理を付加して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物にケイ酸塩を被覆することにより、一般的に使用される酸化チタンなどの光触媒金属を使わずとも光触媒反応を得る光触媒性複合組成物が得られていることがわかる。また、ケイ酸イオンの存在がない場合には効果が期待できない。
【実施例6】
【0047】
<本発明の組成物の製造法>
図6は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例6における金属イオンの添加効果を示すグラフであり、金属イオンとしてFeイオン、Cuイオン、およびAgイオンを用いた場合のメチレンブルー分解比較データである。
【0048】
予め炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合し、該混合物を、炭酸カルシウムに対してFeイオンを1重量部、およびAgイオンを0.2重量部配合した陽イオン溶液と混合し、次に、ケイ酸イオンが炭酸カルシウムに対して3重量部となるケイ酸溶液を混合して、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成した炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を得た。同様に、炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合し、該混合物を、炭酸カルシウムに対してFeイオンを1重量部、およびCuイオンを0.6重量部配合した陽イオン溶液と混合し、次に、ケイ酸イオンが炭酸カルシウムに対して3重量部となるケイ酸溶液を混合して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成した炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を得た。
【0049】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=炭酸カルシウム対してFeイオンを1重量部、およびAgイオンを0.2重量部、またはCuイオンを0.6重量部含む100~300mMのCaCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=ケイ酸イオンを3重量部含むNa2SiO3溶液
【実施例7】
【0050】
<本発明の組成物の製造法>
図7は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施7におけるPtコロイドの添加効果を示すメチレンブルー分解比較グラフである。
【0051】
実施例6と同様にして、炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合し、該混合物を、炭酸カルシウムに対しFeイオンを1重量部、さらにPtを0.01重量部含むPtコロイド液を添加した陽イオン溶液に配合し、次に、ケイ酸イオンが炭酸カルシウムに対して3重量部となるケイ酸溶液を混合して炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成して炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を得た。
【0052】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=炭酸カルシウムに対してFeイオンを1重量部、およびPtを0.01重量部含む、100~300mMのCaCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=ケイ酸イオンを3重量部含むNa2SiO3溶液
【実施例8】
【0053】
<本発明の組成物の製造法>
図8は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例8におけるシルクタンパク質の添加効果を示すグラフであり、金属イオンとしてFeイオンを用いて、さらにシルクタンパク質を添加した場合のメチレンブルー分解比較データである。
【0054】
実施例1と同様にして、予め炭酸カルシウム(化石サンゴ粉体:炭酸カルシウム粉体=1:1)の粉体を混合しておき、該混合物を、炭酸カルシウムに対してFeイオンを1重量部添加した陽イオン溶液に配合した後、ケイ酸溶液を混合し、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物の表面に多孔性ケイ酸塩を生成させた後、50℃~700℃で10分から480分間焼成する。その際、本実施例では陽イオン溶液に、絹からセリシンを除去して得たフィブロインを炭酸カルシウムに対し0.01重量部添加した。
【0055】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=炭酸カルシウムに対してFeイオンを1重量部、およびシルクタンパク質を0.01重量部含む、100~300mM(Caイオン90モル%、Mgイオン10モル%)のCaCl2+MgCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=ケイ酸イオンを3重量部含むNa2SiO3溶液
【実施例9】
【0056】
<本発明の組成物の製造法>
図9は本発明の炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法の、実施例9におけるナノセルロース植物繊維の添加効果を示すグラフであり、金属イオンとしてFeイオンを用いて、さらにナノセルロース繊維を添加した場合のメチレンブルー分解比較データである。
【0057】
実施例8のシルク繊維をナノセルロース繊維に代え、実施例8と同様にして炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物を得た。その際、ケイ酸溶液には、細胞壁由来のセルロースナノファイバー、およびセルロースに似た化学構造を有するキチンナノファイバーの0.2wt%水溶液を、炭酸カルシウムに対し0.1重量部添加した。
【0058】
ここで用いられる陽イオン溶液、およびケイ酸溶液は例えば以下の組成を有する。
陽イオン溶液=炭酸カルシウムに対してFeイオンを1重量部含む、100~300mM(Caイオン90モル%、Mgイオン10モル%)のCaCl2+MgCl2/Tris-HCl
ケイ酸溶液=炭酸カルシウムに対してセルロースナノファイバー(0.2wt%水溶液)、またはキチンナノファイバー(0.2wt%水溶液)を0.1重量部、およびケイ酸イオンを3重量部含むNa2SiO3溶液
【0059】
以上の様にして得た炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物は、化粧料基材や食品添加物、医薬部外品あるいはコーティング剤としてすでに利用されている酸化チタンに代替することで、安心安全に利用することができ、特に酸化チタンの健康への影響を考慮した酸化チタンに代わる食品添加物として有効である。
【要約】
【課題】本発明は、EUヨーロッパ圏で昨今叫ばれている酸化チタンのナノマテリアルとしての健康への懸念を背景に、既存の高度な技術や高価な材料を用いず、より安全で安心な材料を活用して光触媒効果を高め、食品、飼料、肥料、化粧品または医薬部外品の成分あるいはコーティング剤の成分として配合可能である炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法に関する。
【解決手段】光触媒金属として代表的な酸化チタンを使わず、金属イオンの存在下において化石サンゴ等の天然物を含む炭酸カルシウムを、ケイ酸溶液、および陽イオン溶液で処理することにより、炭酸カルシウム配合金属イオン化合物を多孔性ケイ酸塩で被覆することを特徴とする、炭酸カルシウム配合ケイ酸塩被覆金属イオン化合複合組成物の製造方法。
【選択図】
図1