IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スターエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-モバイルコンポスト 図1
  • 特許-モバイルコンポスト 図2
  • 特許-モバイルコンポスト 図3
  • 特許-モバイルコンポスト 図4
  • 特許-モバイルコンポスト 図5
  • 特許-モバイルコンポスト 図6
  • 特許-モバイルコンポスト 図7
  • 特許-モバイルコンポスト 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】モバイルコンポスト
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/907 20200101AFI20240205BHJP
   C05F 9/02 20060101ALI20240205BHJP
   C05F 3/06 20060101ALI20240205BHJP
   A01K 23/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C05F17/907
C05F9/02 Z
C05F3/06 H
A01K23/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023149292
(22)【出願日】2023-09-14
【審査請求日】2023-09-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 PRTIMES 2023年9月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594133858
【氏名又は名称】スターエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】西野 徳三
(72)【発明者】
【氏名】荻山 将也
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-124386(JP,A)
【文献】特開2001-80983(JP,A)
【文献】特開平5-221765(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104102167(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F17/907
C05F9/02
C05F3/06
A01K23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撹拌棒が付いた回転軸が長手方向に通った内部に有機性廃棄物を収納するための水筒型の収納容器と、
前記収納容器をヒータで加熱しながらモータを前記回転軸に連結して前記撹拌棒を回転させ前記有機性廃棄物から発生した気体を消臭して排気するベース本体と、を有し、
前記ベース本体から取り外した前記収納容器で前記有機性廃棄物を回収した後に、前記収納容器を装着した前記ベース本体で前記収納容器内が乾燥するまで前記有機性廃棄物を発酵分解させる、
ことを特徴とするモバイルコンポスト。
【請求項2】
前記ベース本体に前記収納容器を着脱する収容部は、前記収納容器が回転しないように上部を支持する押さえと、モータにより回転し前記収納容器の回転軸と連結可能な伝達軸を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイルコンポスト。
【請求項3】
前記伝達軸は、前記収納容器の装着に伴いバネで圧縮され、前記回転軸と回転角度が合うと前記バネが伸長して、前記回転軸に嵌合されて前記モータの回転力を伝達する、
ことを特徴とする請求項2に記載のモバイルコンポスト。
【請求項4】
前記ベース本体に前記収納容器を着脱する収容部を、前記収納容器の下部より上部が高くなるように傾斜させた、
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイルコンポスト。
【請求項5】
前記ベース本体は、前記ヒータの温度を制御するための温度センサと、前記収納容器内の水分を検出するための湿度センサを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイルコンポスト。
【請求項6】
前記収納容器の位置を固定するために、前記湿度センサを前記収納容器の下部に中心からずらして設けた端子に接続されるように突出させた、
ことを特徴とする請求項5に記載のモバイルコンポスト。
【請求項7】
前記ベース本体は、蓋体を閉じると前記モータ及び前記ヒータが駆動し、前記温度センサで検出した温度が所定以下となるまで前記蓋体が開かないようにロックする、
ことを特徴とする請求項5に記載のモバイルコンポスト。
【請求項8】
前記有機性廃棄物から発生した気体が前記ベース本体内を折り返して排気されるように通気路を形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイルコンポスト。
【請求項9】
複数の前記撹拌棒は、前記回転軸に対する角度が異なるように、上部から下部まで間欠的に垂立させており、
前記収納容器の開口部以外の位置では途中で折曲させ、開口部の位置では短くして本数を減らす、
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイルコンポスト。
【請求項10】
前記収納容器の蓋材は、取り外したときに前記有機性廃棄物を掬い上げられるようにスコップ状にし、前記収納容器に嵌め込むための差込溝に詰まった前記有機性廃棄物を内部に押し出す、
ことを特徴とする請求項1に記載のモバイルコンポスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの糞などの有機性廃棄物を堆肥化するモバイルコンポストに関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物には、家庭から排出される生ゴミや、ペット等の動物から排出される糞尿や、工場等から排出される産業廃棄物などがある。主に成分が動植物に由来する有機物であり、水分を多く含み、腐敗しやすい。放置すると悪臭を放つため、微生物によって有機物の分解を促進させて堆肥化する等の処置を施している。
【0003】
堆肥化は、主に酸素を大量に消費する好気性微生物によって行われる。好気性発酵は、空気、水分および温度を適切に制御する必要がある。堆肥化が良好に進むと、タンパク質がアンモニアに分解される等によりアルカリ性に傾くが、酸素が供給されないと嫌気性微生物が増殖して悪臭源となる。
【0004】
アンモニアやその他の悪臭源の発生を抑制するために、弱酸性で堆肥化を進行させる方法もある。特許文献1に記載されているように、処理過程が酸性で推移し、臭気発生が格段に少ない有機性廃棄物の堆肥化プロセスの発明も開示されている。
【0005】
一般的に、微生物を担持させた基材に有機性廃棄物を混合して堆肥化処理を行うが、微生物が好アルカリ菌の場合、基材が酸性に傾くと処理が停滞してしまい、処理槽内の基材を入れ替える必要が生じる。しかし、特許文献1に記載の発明においては、微生物が好酸性菌であり、有機性廃棄物に含まれている乳酸菌などによって微生物を担持させた基材が酸性のまま維持されるので、有機性廃棄物を継続的に追加投入しても処理可能となっている。
【0006】
また、好気性微生物に酸素を供給し、発酵熱で水分を蒸発させるために、通気性が重要となる。特許文献2に記載されているように、排出口が詰まり攪拌モータが異常停止したり、発酵槽(処理槽)内の好気性微生物を培養した基材が空気循環経路に詰まって泥状化したりすることを抑え、虫や異臭の発生を防止する有機廃棄物処理装置の発明も開示されている。
【0007】
有機性廃棄物が堆肥化されると水分の蒸発などにより処理槽内の分量も減少するが、有機性廃棄物を追加していけば、いずれは処理槽の容量をオーバーすることになるため、定期的に堆肥化された有機性廃棄物を排出する必要がある。
【0008】
処理槽内で攪拌棒を回転させることで、好気性微生物を担持させた基材と有機性廃棄物とを混合するとともに、好気性微生物に酸素を供給している。処理槽の収容量を増やしたとしても、有機性廃棄物を入れ過ぎれば十分に攪拌することができず、通気口を塞いで酸素の供給を遮断してしまうおそれがある。
【0009】
また、有機性廃棄物にそれ以外の堅いものが混在していると、それに引っ掛かった攪拌棒が折れて、さらにそれが攪拌されることで処理槽の内壁を突き破るなど、様々な異常が発生する。そのまま使用を継続することで、より深刻な故障に繋がる場合もあり、初期段階で早期に対処することが望まれる。なお、特許文献3に記載しているように、処理槽内の有機性廃棄物の量及び含有物の異常を検知し故障を抑制する有機性廃棄物処理装置の発明も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5249567号公報
【文献】特開2006-137643号公報
【文献】特許第6739851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献3に記載の有機性廃棄物処理装置は、家庭又は工場に据え置くもので、持ち込んだ廃棄物を処理槽に投入して処理するものである。犬の散歩などの途中で拾った糞を処理する際は、一旦、ゴミ袋などで回収したまま持ち運び、帰ってから廃棄物を処理槽に移し替える手間が掛かってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、有機性廃棄物を堆肥化するための容器を持ち運び、拾ったペットの糞などを直接その容器で回収することができるモバイルコンポストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明であるモバイルコンポストは、複数の撹拌棒が付いた回転軸が長手方向に通った内部に有機性廃棄物を収納するための水筒型の収納容器と、前記収納容器をヒータで加熱しながらモータを前記回転軸に連結して前記撹拌棒を回転させ前記有機性廃棄物から発生した気体を消臭して排気するベース本体と、を有し、前記ベース本体から取り外した前記収納容器で前記有機性廃棄物を回収した後に、前記収納容器を装着した前記ベース本体で前記収納容器内が乾燥するまで前記有機性廃棄物を発酵分解させる、ことを特徴とする。
【0014】
前記モバイルコンポストにおいて、前記ベース本体に前記収納容器を着脱する収容部は、前記収納容器が回転しないように上部を支持する押さえと、モータにより回転し前記収納容器の回転軸と連結可能な伝達軸を有する、ことを特徴とする。
【0015】
前記モバイルコンポストにおいて、前記伝達軸は、前記収納容器の装着に伴いバネで圧縮され、前記回転軸と回転角度が合うと前記バネが伸長して、前記回転軸に嵌合されて前記モータの回転力を伝達する、ことを特徴とする。
【0016】
前記モバイルコンポストにおいて、前記ベース本体に前記収納容器を着脱する収容部を、前記収納容器の下部より上部が高くなるように傾斜させた、ことを特徴とする。
【0017】
前記モバイルコンポストにおいて、前記ベース本体は、前記ヒータの温度を制御するための温度センサと、前記収納容器内の水分を検出するための湿度センサを備える、ことを特徴とする。
【0018】
前記モバイルコンポストにおいて、前記収納容器の位置を固定するために、前記湿度センサを前記収納容器の下部に中心からずらして設けた端子に接続されるように突出させた、ことを特徴とする。
【0019】
前記モバイルコンポストにおいて、前記ベース本体は、蓋体を閉じると前記モータ及び前記ヒータが駆動し、前記温度センサで検出した温度が所定以下となるまで前記蓋体が開かないようにロックする、ことを特徴とする。
【0020】
前記モバイルコンポストにおいて、前記有機性廃棄物から発生した気体が前記ベース本体内を折り返して排気されるように通気路を形成した、ことを特徴とする。
【0021】
前記モバイルコンポストにおいて、複数の前記撹拌棒は、前記回転軸に対する角度が異なるように、上部から下部まで間欠的に垂立させており、前記収納容器の開口部以外の位置では途中で折曲させ、開口部の位置では短くして本数を減らす、ことを特徴とする。
【0022】
前記モバイルコンポストにおいて、前記収納容器の蓋材は、取り外したときに前記有機性廃棄物を掬い上げられるようにスコップ状にし、前記収納容器に嵌め込むための差込溝に詰まった前記有機性廃棄物を内部に押し出す、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、有機性廃棄物を堆肥化するための収納容器を持ち運び、拾ったペットの糞などを直接その収納容器で回収しておき、帰ってから収納容器をベース本体に装着することで、中身を移し替えることなく有機性廃棄物を堆肥化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明であるモバイルコンポストの全体外観を示す図である。
図2】本発明であるモバイルコンポストの蓋体を開いた状態を示す図である。
図3】本発明であるモバイルコンポストから収納容器を取り外した状態を示す図である。
図4】本発明であるモバイルコンポストのベース本体の内部構造を示す図である。
図5】本発明であるモバイルコンポストの収納容器を示す図である。
図6】本発明であるモバイルコンポストの収納容器の蓋材を外した状態を示す図である。
図7】本発明であるモバイルコンポストの収納容器の内部構造を示す図である。
図8】本発明であるモバイルコンポストのベース本体と収納容器の連結構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0026】
まず、本発明であるモバイルコンポストについて説明する。なお、収納容器は、ベース本体に横向きで装着されるが、ベース本体から取り外したときは縦置きされることから、蓋材がある側を上部とする。
【0027】
図1は、モバイルコンポストの全体外観を示す(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図、(f)右側面図である。図2は、モバイルコンポストの蓋体を開いた状態を示す(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図、(f)右側面図である。図3は、(a)モバイルコンポストに収納容器が装着された状態、(b)モバイルコンポストから収納容器を取り外した状態を示す図である。図4は、モバイルコンポストのベース本体の内部構造を示す図である。
【0028】
図1に示すように、モバイルコンポスト100は、ペットの糞などの有機性廃棄物を、微生物を担持させた基材と混合させて、微生物の働きによって有機性廃棄物を発酵・分解処理するものである。モバイルコンポスト100は、据え置かれるベース本体200と、携行するためにベース本体200から着脱可能な収納容器300とからなる。
【0029】
ベース本体200は、収容した収納容器300を覆う蓋体210を有し、把手210aで蓋体210を開閉可能である。例えば、正面図において、ベース本体200と蓋体210の奥側を軸で連結し、蓋体210を手前側から奥側に上方へ回動させることで開く。
【0030】
また、手前側にはマグネットスイッチ(電磁接触器)等を設け、蓋体210が開かないようにロック可能である。蓋体210を閉じるとモータ及びヒータが駆動し、温度センサで検出した温度が所定以下となるまで蓋体210が開かないようにロックする。収納容器300がベース本体200にセットされているかどうかをセンサで感知するようにしても良い。
【0031】
動作中は内部が熱くなることがあるので、自動的にロックして使用者が火傷等しないように保護する。例えば、50℃で開閉するバイメタルで制御する。なお、安全な状態になれば解除されるが、手動で強制的に解除しても良い。
【0032】
図2に示すように、蓋体210を開けると、ベース本体200に収納容器300を装着するための収容部230が設けられる。収容部230は、収納容器300の上部320が下部330より高くなるように傾斜(例えば、約10度)しており、収納容器300の下部側の位置(正面図では右側)には制御部200aなども設けられる。
【0033】
制御部200aは、ベース本体200内に設置された電源、モータ、ヒータ、ファン、センサなどの機器を制御するプロセッサやメモリ等を搭載した半導体基板が設けられる。収納容器300をベース本体200に装着して蓋体210を閉じると、電源が入り、各機器を動作させる。
【0034】
図3(a)に示すように、ベース本体200から取り外した状態の収納容器300に有機性廃棄物を投入した後、収納容器300をベース本体200に装着すると、モータによって収納容器300の内部中心を長手方向に通る回転軸340が回転し、収納容器300内の基材及び有機性廃棄物が撹拌され、発酵・分解処理が促進される。
【0035】
図3(b)に示すように、収容部230には、収納容器300を収容部230に載置したときに、収納容器300の底面中心に空けられた軸溝330aに連結可能に伝達軸250が設けられる。伝達軸250は、モータを回転させる軸体から延びており、収納容器300の回転軸340に連結してモータの動力を伝達する。
【0036】
伝達軸250は、バネ等により軸方向に収縮及び伸長可能である。また、収納容器300の軸溝330aと、収容部230の伝達軸250とは、所定の角度で嵌合するようになっている。伝達軸250は、収納容器300の装着に伴いバネで圧縮され、回転軸340と回転角度が合うとバネが伸長する。すなわち、相対的に角度が合っていない場合は、伝達軸250が押し込まれた状態になり、角度が合うと押し出されて軸溝330aと伝達軸250が嵌合する。
【0037】
また、収納容器300の中心位置に合わせた伝達軸250からずらした位置に湿度センサ250aも設けられる。湿度センサ250aは、収納容器300の水分量を検出するが、収納容器300の底面にも位置が合うように端子330bを設けておく。湿度センサ250aを端子330bに向けて突出させて、端子330bとの接続の際に嵌合させることで、収納容器300が常に同じ位置(角度)となるように固定される。
【0038】
ベース本体200に収納容器300を着脱する収容部230において、収納容器300の上部側の位置(正面図では左側)には、収納容器300が回転しないように支持する押さえ240が設けられる。押さえ240は、弾力性のある樹脂等を用いて、収納容器300が周面に沿って回転しないように保持する。
【0039】
収容部230の裏面(正面図では下側)には、ヒータが設けられ、収容部230に装着された収納容器300を加温する。収納容器300内の温度が適正な範囲となるように、バイメタル等の温度センサによってヒータの動作を制御する。
【0040】
収容部230には、収納容器300の通気穴320aの位置に合わせて通気孔230aも空けられる。収納容器300内で有機性廃棄物の発酵・分解に伴い発生した臭いや水蒸気などの気体を下側の通気路270に流す。
【0041】
図4に示すように、有機性廃棄物の発酵・分解に伴い、収納容器300から出た湿気などを含む気体は、消臭剤270a等で悪臭を除去した上でファン260を使用してベース本体200の側面等に設けた排気口220から排出する。
【0042】
ベース本体200の底側に空間を確保し、収容部230の通気孔230aから排気口220に至る通気路270を形成する。通気路270にはサイコロチップ等の消臭剤270aを敷くが、仕切り等を設けて折り返すなど経路が長くなる構造にし、消臭剤270aと接触する時間を長くすることで、消臭効果を向上させる。
【0043】
有機性廃棄物の状態については、水分が多いと電流が流れやすく、乾燥すると電流が流れにくくなることを利用して、水分計など水分量を検出可能な湿度センサ250aで収納容器300内の湿度が下がったことを検知する。制御部200aは、有機性廃棄物が分解されて乾燥したらモータ等の動作を停止させ、新たに有機性廃棄物が投入されて水分が多くなったらモータ等を動作させる。
【0044】
図5は、モバイルコンポストの収納容器を示す(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図、(f)右側面図である。図6は、モバイルコンポストの収納容器の(a)蓋材を外した状態、(b)有機性廃棄物を投入する状況を示す図である。図7は、モバイルコンポストの収納容器の(a)内部構造、(b)下部構造を示す図である。図8は、モバイルコンポストの(a)ベース本体と収納容器の連結構造、(b)処理状況を示す図である。
【0045】
図5に示すように、収納容器300は、水筒のような円筒状であり、基材と有機性廃棄物が貯留される。収納容器300の材質には、耐食性のあるステンレス鋼などを用いれば良い。収納容器300の長手方向を縦にしたときに横断面が円形であり、内部中心に回転軸340が縦方向に通る。回転軸340には複数の撹拌棒340aが取り付けられ、回転軸340によって撹拌棒340aが回転することで収納容器300内の基材及び有機性廃棄物が撹拌される。
【0046】
収納容器300内には、予め微生物を担持させた基材を収容しておき、後から収納容器300に投入した有機性廃棄物を基材と混合させることで、有機性廃棄物を微生物によって発酵させる。
【0047】
図6に示すように、収納容器300の蓋材310を取り外すと、開口部310aが現れて、内部に有機性廃棄物を投入可能となる。また、取り外した蓋材310は、有機性廃棄物を掬い上げるスコップとして利用可能である。
【0048】
収納容器300は、横向きにしても内部の基材及び有機性廃棄物が漏れないように開口部310aが上方を向くように収容部230に固定される。また、基材及び有機性廃棄物が撹拌により開口部310aまで上がってくるのを抑止するために収容部230を傾斜させている。さらに、開口部310aから基材及び有機性廃棄物が溢れないように蓋材310で開口部310aを塞ぐ。
【0049】
収納容器300の開口部310aの上側から挿し込めるように上部320に凹みを設け、さらに開口部310aの縁に沿って差込溝を形成する。そして、上方から凹みに沿ってスライドさせるように蓋材310を差込溝に嵌め込む。なお、差込溝に基材又は有機性廃棄物が詰まったとしても蓋材310を差し込むことで差込溝から押し出され内部に落下するようにする。
【0050】
図7(a)に示すように、複数の撹拌棒340aは、回転軸340から垂立する棒状の部材であり、それぞれ回転軸340に対する角度及び長手方向の位置が異なるように上部320から下部330まで間欠的に取り付けられる。例えば、6本の撹拌棒340aを手前から奥に所定の間隔を置いて角度を60°ずらしながら螺旋状に取り付ける。モータで回転軸340に動力を伝達することで撹拌棒340aが正方向又は逆方向に回転する。
【0051】
撹拌棒340aは、途中の中間部で任意の方向及び角度で折曲させることで撹拌時に基材及び有機性廃棄物が引っ掛かるようにする。なお、開口部310aの付近においては、有機性廃棄物の投入を妨げないように、それ以外よりも本数を少なくしたり長さを短くしたり等しても良い。
【0052】
収納容器300の上部320には仕切った空間を設け、背面側に通気穴320aを空ける。収容部230の通気孔230aの位置に合わせて、通気穴320aを空けることで、収納容器300内の空気が排出されるようにする。
【0053】
図7(b)に示すように、収納容器300の底面は、周縁部を残して内部を陥没させる。その上で底面中心に回転軸340に通じる軸溝330aを形成する。周縁部の下端には硬質ゴム等を付けて、収納容器300を立てて置いたときの緩衝材としても良い。
【0054】
また、収納容器300の内部と通電可能な端子330bを設け、ベース本体200の湿度センサ250aを介して有機性廃棄物の乾燥状況を制御部200aで検知可能にする。なお、端子330bは、収納容器300の底面の中心からずれた位置に設ける。突起状の湿度センサ250aを収納容器300の緩衝材に嵌め込ませることで、収納容器300自体が回転するのを抑止しても良い。
【0055】
なお、緩衝材によって収納容器300を十分に保持可能な場合は、上部側の押さえ240を無くすことで、収納容器300をベース本体200に取り付けやすく、且つベース本体200から取り外しやすくなる。保持を確実にするために、収納容器300を緩衝材に押し込む際の目印を付けても良い。
【実施例2】
【0056】
有機性廃棄物は、主に犬などのペットの糞である。畜糞(豚糞、馬糞、牛糞、鶏糞など)や、家庭から排出される生ゴミ等が含まれても良い。また、基材は、例えば、大鋸屑などであり、微生物として酸性堆肥状種菌が担持される。酸性堆肥状種菌は、種菌に適量のバークと糖類を任意の組合せで混合し、4~10日間放置することで得られる。
【0057】
生ゴミと好酸性微生物を担持させた基材を混在させたものを、撹拌して空気に接触させ、継続的に加温して、乳酸菌を主体とする微生物叢を形成させることで生成された種菌は、酸敗状態とならずにpHが4~7の範囲内に維持される。糖類としては、ブドウ糖、果糖、スクロース、麦芽糖、デンプン、廃糖蜜、乳清、廃糖飼料、ハチミツ、ゼリー、シロップ、パン粉、野菜クズなどを使用すれば良い。好酸性微生物は、スルフォロバスアシドカルダリウス、アリサイクロバチルスセンダイエンシス、バチルス属細菌、乳酸菌などである。
【0058】
酸性堆肥状種菌は、有機性廃棄物に対して、例えば、3~15%の割合で存在すれば良い。発酵により分解された有機性廃棄物は、基材に含有されたまま別の有機性廃棄物を発酵させるための基材として利用しても良いし、基材の量が増え過ぎた場合には、収納容器300から排出して堆肥として利用しても良い。
【0059】
モバイルコンポスト100は、収納容器300をヒータで加熱しながらモータを回転軸340に連結して撹拌棒340aを回転させ有機性廃棄物から発生した気体を消臭して排気するベース本体200を有する。ベース本体200から取り外した収納容器300で有機性廃棄物を回収した後に、収納容器300を装着したベース本体200で収納容器300内が乾燥するまで有機性廃棄物を発酵分解させる。
【0060】
酸性堆肥状種菌を活性化させるために、収納容器300は、ベース本体200に設置されたヒータ440等の加温手段を用いて30~80℃、好ましくは65℃以上の温度に保持される。
【0061】
有機性廃棄物が分解されると発酵熱により水分が蒸発する等して、乾燥後は有機性廃棄物の分量が減少する。基材は、有機性廃棄物に含まれていた乳酸菌などによって酸性のまま維持されるので、酸性堆肥状種菌も活性化された状態が持続する。そのため、有機性廃棄物を追加投入しても処理可能であり、基材を長期間に渡り総入替えしなくても済む。
【0062】
有機性廃棄物は、収納容器300の開口部310aの高さを超えないように収納される。撹拌棒340aは、基材と有機性廃棄物を混合すると共に、酸性堆肥状種菌に空気を供給することで好気性発酵処理を促進させる。
【0063】
制御部200aが有機性廃棄物の乾燥を検知したら、撹拌棒340aを回転させるモータやヒータなどの動作を一時停止する。収納容器300に新たな有機性廃棄物が投入され、収納容器300内の湿度が上がったら、またモータ、ヒータ、ファンなどを再動作させる。湿度は、湿度センサ250a等の水分測定手段で水分量を計測すれば良い。例えば、電流を流したときの抵抗から水分量を検出して湿度に換算すれば良い
【0064】
本発明によれば、有機性廃棄物を堆肥化するための収納容器を持ち運び、拾ったペットの糞などを直接その収納容器で回収しておき、帰ってから収納容器をベース本体に装着することで、中身を移し替えることなく有機性廃棄物を堆肥化することができる。
【0065】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、収納容器は水筒のような円筒形であり、携帯するにあたり高級感を出すなどデザインの良いものにすることができる。
【符号の説明】
【0066】
100:モバイルコンポスト
200:ベース本体
200a:制御部
210:蓋体
210a:把手
220:排気口
230:収容部
230a:通気孔
240:押さえ
250:伝達軸
250a:湿度センサ
260:ファン
270:通気路
270a:消臭剤
300:収納容器
310:蓋材
310a:開口部
320:上部
320a:通気穴
330:下部
330a:軸溝
330b:端子
340:回転軸
340a:撹拌棒
【要約】
【課題】有機性廃棄物を堆肥化するための容器を持ち運び、拾ったペットの糞などを直接その容器で回収することができるモバイルコンポストを提供する。
【解決手段】モバイルコンポストは、複数の撹拌棒が付いた回転軸が長手方向に通った内部に有機性廃棄物を収納するための水筒型の収納容器と、前記収納容器をヒータで加熱しながらモータを前記回転軸に連結して前記撹拌棒を回転させ前記有機性廃棄物から発生した気体を消臭して排気するベース本体と、を有し、前記ベース本体から取り外した前記収納容器で前記有機性廃棄物を回収した後に、前記収納容器を装着した前記ベース本体で前記収納容器内が乾燥するまで前記有機性廃棄物を発酵分解させる、ことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8