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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】グレリン受容体の活性化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/23 20060101AFI20240205BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 5/00 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
A61K31/23
A23L33/10
A61P43/00 111
A61P5/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019239495
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107358
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(74)【代理人】
【識別番号】100174849
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 理生
(72)【発明者】
【氏名】乾 明夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼峯 和則
(72)【発明者】
【氏名】上園 保仁
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼ 由美子
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-035755(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104839540(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104839409(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106318799(CN,A)
【文献】特開2018-062488(JP,A)
【文献】国際公開第2002/060472(WO,A1)
【文献】特開2012-121846(JP,A)
【文献】国際公開第2004/014412(WO,A1)
【文献】Composition of the essential oil and petroleum ether extract of Lycium chinense Miller fruits and antioxidant activity of its several extracts,Journal of Medicinal Plants Research,2011年,Vol. 5(25),pp. 5973-5981,DOI: 10.5897/JMPR11.285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A23L 33/00-33/29
A61P 43/00
A61P 5/00- 5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を有効成分として含有する、グレリン受容体の活性化剤。
【化1】
・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載のグレリン受容体の活性化剤を含有する医薬組成物。
【請求項3】
摂食を促進させるための、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
下記式(1)で表される化合物を有効成分として30μM以上または0.6mg/100g以上含有する、グレリン受容体の活性化を介して摂食を促進させるための食品組成物。
【化2】
・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレリン受容体を活性化させる薬剤、医薬組成物および食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グレリンは、強力な摂食促進作用を持つペプチドホルモンであり、胃や視床下部に存在するグレリン分泌細胞と、その受容体を持つ細胞群によって、摂食意欲や行動、消化酵素や胃酸の分泌など、摂食行動に向けた様々な段階が統合的に制御されている。またグレリンは、典型的なGタンパク質共役受容体であるグレリン受容体(GHS-R)の活性化を介して下垂体からの成長ホルモン(GH)分泌を促進する作用も報告されており、摂食促進だけではなく、高齢者の運動能力を担保するための筋肉の維持にも重要であると考えられている。
【0003】
また、グレリンは、摂食促進やGH分泌促進作用以外にも多彩な生理作用を有しており、カヘキシア(悪液質)を呈する心不全および慢性閉塞性肺疾患(COPD)、メタボリックシンドローム、認知症、機能性胃腸症、神経性食思不振症、胃全摘手術並びに癌などに対する改善効果が報告されている。
【0004】
グレリンは、ラット、マウスおよびヒトなどにおいて、中枢および末梢投与すると、摂食を亢進することがわかっている。この作用は、健常人のみならず、食欲が低下している悪性腫瘍、機能性胃腸症、胃全摘後および新形成食思不信症患者などでも認められている(非特許文献1)。
【0005】
摂食障害には、主に神経性食欲不振症と神経性過食症とがあり、これらは摂食調節ネットワークの乱れによって惹起されることが示唆されている。神経性食欲不振症の場合、生理的には飢餓状態であるにもかかわらず摂食行動が抑制されていることがある。その理由として、グレリンなどの摂食亢進ペプチドの分泌量が少なかったり、分泌されるグレリンが、摂食亢進作用に必須の脂肪酸修飾を受けていないデスアシルグレリンであることなどが考えられる(非特許文献2)。
【0006】
摂食行動を促進させるため、たとえば特許文献1には、脱脂乳を有効成分とするホルモン分泌促進剤が開示されている。このホルモン分泌促進剤は、グレリン分泌促進作用を有し、摂食亢進に有用であることが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、グレリンまたはグレリン類似体を有効成分として含有する低栄養症状を示す疾患の治療剤が開示されている。
【0008】
一方、高齢者の食欲不振やカヘキシアをきたしたCOPDや癌患者などでは、血中グレリン濃度が高いにもかかわらずグレリン反応性が低下するなど、グレリンの分泌が食欲の促進や筋肉量の上昇に結びつかない、グレリン抵抗性を発現していることが知られている。このようなグレリン抵抗性を発現している場合でも、食欲を促進させることができる薬剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-205829号公報
【文献】特開2010-6823号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】上野浩晶等,「グレリン受容体」,医学のあゆみ(日本),2010年5月29日発行,Vol.233, No.9,725頁
【文献】小木曽和磨等,「NPY受容体」,医学のあゆみ(日本),2010年5月29日発行、Vol.233, No.9,730頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、グレリン受容体を活性化させることができる新たな化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、グレリン受容体活性化作用を有する化合物を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、下記式(1)で表される化合物および薬学的に許容されるその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、グレリン受容体の活性化剤を提供する。
【0014】
【化1】
・・・(1)
また本発明は、上記グレリン受容体の活性化剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0015】
また本発明は、摂食を促進させるための上記医薬組成物を提供する。
【0016】
また本発明は、上記式(1)で表される化合物および薬学的に許容されるその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、摂食を促進させるための食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明であれば、グレリン受容体を活性化させることができる新たな化合物を提供することができる。そのため、本発明を用いれば、グレリン受容体を活性化させることができる医薬組成物および食品組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】グレリンおよび化合物(1)(化合物#7)によるグレリン受容体活性化作用を示すグラフ。
図2】グレリンによるグレリン受容体活性の増加がグレリン受容体阻害剤により抑制されることを示すグラフ。
図3】化合物(1)によるグレリン受容体活性の増加がグレリン受容体阻害剤により抑制されることを示すグラフ。
図4】化合物(1)の酸化物(化合物#7')によるグレリン受容体活性化作用を示すグラフ。
図5】グレリンおよび化合物(1)(化合物#7)によるグレリン受容体活性化作用を示すグラフ。
図6】グレリンによるグレリン受容体活性の増加がグレリン受容体阻害剤により抑制されることを示すグラフ。
図7】化合物(1)によるグレリン受容体活性の増加がグレリン受容体阻害剤により抑制されることを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、グレリン受容体の活性化剤を提供する。本明細書において、「グレリン受容体の活性化」には、グレリン受容体の下流のシグナル伝達の活性化が含まれ、たとえばグレリンの刺激によって増強される各種ホルモンの細胞からの産生などが含まれる。「グレリン受容体活性化」には、グレリンによる細胞応答を増強させ、増加させ、または上昇させること、すなわちグレリン受容体を介したシグナル伝達を増強させ、増加させ、または上昇させることが含まれる。
【0020】
本発明のグレリン受容体の活性化剤は、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう。)および薬学的に許容されるその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する。
【0021】
【化2】
・・・(1)
【0022】
本発明のグレリン受容体の活性化剤は、任意の形態の製剤であることができる。本発明のグレリン受容体の活性化剤は、経口投与製剤として、たとえば糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠およびチュアブル錠等の錠剤;トローチ剤;丸剤;散剤;硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤;顆粒剤;ならびに懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエリキシル剤等の液剤などであることができる。
【0023】
また、本発明のグレリン受容体の活性化剤は、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与および経粘膜投与などの非経口投与製剤であることができる。本発明のグレリン受容体の活性化剤は、たとえば、注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤および坐剤などであることができる。
【0024】
また、本発明のグレリン受容体の活性化剤は、食用に適した形態であることができ、たとえば固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状およびペースト状などであってもよい。
【0025】
本発明はまた、上述したグレリン受容体の活性化剤を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、グレリン受容体の活性化剤の他に、医薬品、医薬部外品および食品に通常用いられる任意の成分をさらに含むことができる。たとえば、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される基剤、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および着色剤などをさらに含んでもよい。
【0026】
本発明の医薬組成物に使用する担体および賦形剤の例には、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、デキストリン、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび結晶セルロースなどを含む。
【0027】
結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどを含む。
【0028】
崩壊剤の例には、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカルシウムなどを含む。
【0029】
滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルクおよびマクロゴールなどを含む。着色剤は、医薬品、医薬部外品および食品に添加することが許容されている任意の着色剤を使用することができる。
【0030】
また、本発明の医薬組成物は、必要に応じて、白糖、ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレートおよびメタアクリル酸重合体などで一層以上の層で被膜してもよい。
【0031】
また、本発明の医薬組成物は、必要に応じて、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、希釈剤、コーティング剤、甘味剤、香料および可溶化剤などを添加してもよい。
【0032】
本発明のグレリン受容体の活性化剤および医薬組成物に含有される化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の含有量は、グレリン受容体活性化効果を発揮することができる量であればよく、適用する対象、目的および投与方法(摂取方法)に応じて適宜設定することができる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、グレリン受容体活性化のための医薬組成物であることができる。また、本発明の医薬組成物は、摂食を促進させるための医薬組成物であることができる。「摂食を促進させる」ことには、摂食意欲を促進させること、摂食行動を促進させること、および摂食障害を抑制または改善させることなどが含まれる。
【0034】
本発明はまた、ヒトまたは動物においてグレリン受容体活性化用の医薬品の製造のための、化合物(1)および薬学的に許容されるその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の使用を提供する。
【0035】
本発明はまた、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の有効量をヒトまたは動物に投与することを含む、グレリン受容体を活性化する方法を提供する。
【0036】
本発明はまた、化合物(1)または薬学的に許容されるその塩の有効量をヒトまたは動物に投与することを含む、摂食を促進させる方法を提供する。
【0037】
本発明はまた、化合物(1)および薬学的に許容されるその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、グレリン受容体活性化用食品組成物を提供する。本発明の食品組成物は、摂食促進用食品組成物であってもよい。本発明の食品組成物は、上述した医薬組成物と同様に構成することができる。
【0038】
本明細書において「食品組成物」には、一般的な飲食品だけでなく、病者用食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品およびサプリメントなどが含まれる。一般的な飲食品には、たとえば各種飲料、各種食品、加工食品、液状食品(スープ等)、調味料、栄養ドリンクおよび菓子類などが含まれる。本明細書において「加工食品」とは、天然の食材(動物および植物など)に対し加工および/または調理を施したものをいい、たとえば肉加工品、野菜加工品、果実加工品、冷凍食品、レトルト食品、缶詰食品、瓶詰食品およびインスタント食品などが含まれる。
【0039】
本発明の食品組成物は、グレリン受容体を活性化する旨または摂食を促進させる旨の表示を付した食品であってもよい。また、本発明の食品組成物は、袋および容器等に封入された形態で提供されてもよい。本発明において使用する袋および容器は、食品に通常使用される任意の袋および容器であることができる。
【実施例
【0040】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0041】
(統計処理)
以下の各試験において、すべてのデータは、平均値±標準偏差で示した。データのグラフ化および統計解析は、GraphPad Prism6を用いて作成した。統計解析は、one-way ANOVA(one-way analysis of variance;一元配置分散分析)を行い、Tukey’s testを用いて多重比較試験を行った。また、p<0.05を有意な差とした。
【0042】
(試験1)
CellKey(商標) System を用いてグレリン受容体(GHS-R)活性を評価した。CellKey専用96-well plateに、GHS-Rを発現させたHEK293A細胞を播種した(4×104 cells/well)。この細胞に各試験試薬を添加した後、25分間の電気抵抗変化(ΔZ)を検出することにより、GHS-R活性を評価した。試験試薬には、100nMグレリン(Ghrelin;Peptide Institute Inc.)および100μMの化合物(1)(#7;北里大学薬学部生命薬化学研究室にて合成・供与)を用いた。また、ネガティブコントロールとしてassay buffer(vehicle)を用いた。データは、試薬添加後の最大値から試薬添加前の最小値を差し引いた値を定量化することにより評価した。
【0043】
その結果、図1に示すように、グレリン(Ghrelin)および化合物(1)(#7)は、vehicleと比較して有意にGHS-R活性を増加させた。なお、図1において、***および****は、p<0.001、p<0.0001 vs. vehicleを示す。具体的には、vehicleでは電気抵抗変化(ΔZ)が100.0±9.73 (%; mean±S.E.M.)であり、グレリンでは、電気抵抗変化(ΔZ)が1756.7±93.2であり、#7では電気抵抗変化(ΔZ)が461.9±43.68であった。
【0044】
次に、細胞に対して30分間、1μMのGHS-R阻害剤(JMV3002;Cayman Chemical Company)による前処置を行い、各試験試薬添加後15分間の電気抵抗変化を検出した。具体的には、DMSOに溶解したJMV3002 (1mM)溶液をassay bufferにて1μMに溶解し、CellKey 専用96-well plateに播種した細胞 (4×104 cells/well) に30分間の前処置を行った。その後、vehicleならびに100nM グレリンを添加し、ΔZを検出した。データは、試薬添加後の最大値から試薬添加前の最小値を差し引き、vehicleの値を100%とし定量化することにより評価した。
【0045】
その結果、図2および図3に示すように、GHS-R阻害剤(JMV3002)の添加により、グレリンおよび化合物(1)(#7)によるGHS-R活性の増加はそれぞれほぼ完全に抑制された。図2および図3において、****は、p<0.0001 vs. vehicleを示し、####は、p<0.0001 vs. ghrelinまたは#7を示す。具体的には、図2において、vehicleは電気抵抗変化(ΔZ)が113.8±10.74 (%; mean±S.E.M.)であり、グレリンは2693.5±453.3、グレリン+GHS-R阻害剤は105.3±10.88、GHS-R阻害剤は101.9±8.37であった。図3において、vehicleで電気抵抗変化(ΔZ)が100.0±9.73であり、#7は461.9±43.68であり、#7+GHS-R阻害剤は246.2±23.17、GHS-R阻害剤は150.0±26.12であった。
【0046】
(試験1)
化合物(1)の酸化物である、下記式(2)で表される化合物(#7';北里大学薬学部生命薬化学研究室にて合成・供与)について、試験1と同様にグレリン受容体活性化作用を評価した。試験には、100μMの化合物#7'を用いた。具体的には、DMSOに溶解した#7'(100mM)溶液をassay bufferにて100μMに溶解し調整した。CellKey 専用96-well plate に播種した細胞 (4×104 cells/well) にvehicleならびに100μMの化合物#7'を添加し、ΔZを検出した。
【0047】
【化3】
・・・(2)
その結果、図4に示すように、化合物#7'を添加した場合には、vehicleと比較して、GHS-R活性の顕著な増加は認められなかった。図4において、****は、p<0.0001 vs. vehicleを示す。具体的には、図4において、vehicleは電気抵抗変化(ΔZ)が100.0±15.46 (%; mean±S.E.M.)であり、#7は666.7±65.73であり、#7'は155.5±16.47であった。
【0048】
(試験3)
グレリン受容体は、活性化されると細胞内のカルシウムイオン濃度を上昇させる。そこで、Ca2+ Imaging Assayを用いて細胞内Ca2+濃度を測定することによりGHS-R活性を評価した。35mmの4分割ガラスボトムディッシュに細胞(8×104 cells/well)を播種し、蛍光指示薬Fluo-4(5μM)を負荷した。その後、vehicleまたはGHS-R阻害剤(JMV3002)を3分間前処置し、各試験試薬による蛍光強度の変化を共焦点レーザー顕微鏡で5分間測定した。データは試験試薬添加後の最大値から試験試薬添加前の最小値を差し引いた値を定量化することにより評価した。
【0049】
35mmの4分割ガラスボトムディッシュに細胞(8×104 cells/well)を播種し、細胞内Ca2+ Imaging Assayにより評価した。蛍光指示薬Fluo-4(5μM)を処置後、vehicleまたはGHS-R阻害剤(JMV3002)を3分間前処置し、その後各試験試薬による蛍光強度の変化を共焦点レーザー顕微鏡で5分間測定し、細胞内Ca2+濃度上昇を測定した。データは試験試薬添加後の最大値から試験試薬添加前の最小値を差し引いた値を定量化することにより評価した。
【0050】
試験試薬には、100nMグレリン(Ghrelin)および30μMまたは100μMの化合物(1)(#7)を用いた。
【0051】
その結果、図5に示すように、グレリンおよび化合物(1)(#7)は、vehicleと比較して有意にGHS-R活性を増加させた。図5において、****は、p<0.0001 vs. vehicleを示す。具体的には、図5において、vehicleでは細胞内Ca2+濃度変化が0.69±0.08 (mean±S.E.M.)であり、グレリンは98.77±3.74、#7(30μM)は29.94±3.81、#7(100μM)は67.21±4.12であった。また、図6および図7に示すように、GHS-R阻害剤(JMV3002)の添加により、グレリンおよび化合物(1)によるGHS-R活性の増加は有意に抑制された。図6および図7において、****は、p<0.0001 vs. vehicleを示し、####は、p<0.0001 vs. ghrelinまたは#7を示す。具体的には、図6において、vehicleではCa2+濃度変化が0.69±0.08 (mean±S.E.M.)であり、グレリンは98.77±3.74、グレリン+ GHS-R阻害剤は1.09±0.17、GHS-R阻害剤は1.82±0.32であった。また、図7において、vehicleではCa2+濃度変化が0.91±0.08であり、#7(30μM)は29.94±3.81、#7+GHS-R阻害剤は10.06±2.30、GHS-R阻害剤は1.82±0.32であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、グレリン受容体活性化のための医薬品および食品に好適に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7