(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 65/00 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
B62D65/00 Z
(21)【出願番号】P 2020164648
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】宮内 博克
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隆太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 団
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-127764(JP,A)
【文献】特開2016-064836(JP,A)
【文献】特開平05-201499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/00
B67D 7/04, 7/42
B60K 15/04
B60S 5/02
F16K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ライン上で車両の製造を行う車両の製造方法において、
前記製造ラインから離れた位置に、前記車両の給油口に給油ノズルを挿入して自動的に給油を行う給油工程を設けると共に、
前記給油工程の前に、前記給油ノズルの挿入を許容しかつ前記給油ノズルを挿入していない状態で前記給油口を閉じた状態とする蓋状治具を前記車両に取付ける治具取付け工程を前記製造ライン上に設けて、かつ
前記給油工程の後に、前記蓋状治具と前記給油口の蓋部材とを交換する交換工程を前記製造ライン上に設けたことを特徴とする車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の製造方法に関し、特に車両に対する給油工程の前後の工程における作業環境を改善するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の製造工場では、所定の製造ライン上を搬送される車両又は車両部品に対して種々の作業が順次行われることにより、自動車が組み立てられる。また、組み立て後 の自動車にガソリンを供給する工程が設けられる。
【0003】
例えば特許文献1には、製造ライン上の車両と同期して移動しながら、当該車両のガソリン注入口にガソリン注入ノズルを自動的にセットして給油を行うことのできる自動給油装置が開示されている。また、特許文献1には、給油時に発生するガソリン蒸気を回収するための回収ダクトの吸引口を、ガソリン注入口の近くに配置し、給油時に回収ダクトに接続された吸引装置で真空引きを行うことにより、ガソリン注入口から漏れ出たガソリン蒸気を回収し、工場の外に排出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の如き自動車の製造ラインでは、多くの作業者が製造ライン上又は製造ラインの側方に配置され、所定の作業を行っている。そのため、特許文献1に記載のように、製造ライン上を搬送される自動車に対して給油作業を行ったのでは、給油中の自動車の周囲に発生するガソリン臭により作業環境が悪化するといった問題が生じる。
【0006】
ここで、例えば
図4に示すように、ガソリンの注入を自動的に行う装置を、製造ラインから離れた位置に設置することが考えられる。すなわち、
図4に示す製造設備100では、上流側の製造ライン101と下流側の製造ライン102の何れからも離れた位置に、給油工程としての給油ブース103を配設すると共に、この給油ブース103内に給油用ロボットなどの自動給油装置104を設置して、例えば上流側の製造ライン101の終端101aから給油ブース103内に移載された車両1に対して自動的に給油を行うことができる。また、給油後の車両1を給油ブース103内から下流側の製造ライン102の始端102aに移載することで、検査工程などの後工程を下流側の製造ライン102上で実施することができる。
【0007】
上述した製造設備100により給油を行う場合、給油後に車両1の給油口1aを閉口する蓋部材2を車両1に取付ける必要がある。しかしながら、製造設備100が
図4に示す如き構成をとる場合、給油工程(給油ブース103)から直後の製造ライン102上の蓋部材取付け工程105まで離れているため、給油完了直後から蓋部材取付け工程105に至るまでの間、多くのガソリン蒸気が給油口1aから漏れ出る事態を招き得る。
【0008】
上述の如き事態を回避するため、例えば給油ブース103内に、蓋部材2を自動で車両1の給油口1aに取付けるための装置(蓋部材取付け専用ロボットなど)を自動給油装置104と並べて配置することも考えられる。しかしながら、そのような構成だと、蓋部材2を取付けるためだけに専用の装置が必要となり、設備投資の高騰を招く。
【0009】
以上の事情に鑑み、本明細書では、ガソリン臭による作業環境の悪化を低コストに防止して車両の製造工程における注油作業を実施することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題の解決は、本発明に係る車両の製造方法によって達成される。すなわち、この製造方法は、製造ライン上で車両の製造を行うものにおいて、製造ラインから離れた位置に、車両の給油口に給油ノズルを挿入して自動的に給油を行う給油工程を設けると共に、給油工程の前に、給油ノズルの挿入を許容しかつ給油ノズルを挿入していない状態で給油口を閉じた状態とする蓋状治具を車両に取付ける治具取付け工程を製造ライン上に設けて、かつ給油工程の後に、蓋状治具と給油口の蓋部材とを交換する交換工程を製造ライン上に設けた点をもって特徴付けられる。
【0011】
上述したように、本発明に係る車両の製造方法では、車両の製造ラインから離れた位置に給油工程を設けるとした場合に、給油工程の前に、給油ノズルの挿入を許容しかつ給油ノズルを挿入していない状態で給油口を閉じた状態とする蓋状治具を車両に取付ける治具取付け工程を製造ライン上に設けるようにした。これにより、給油工程で給油ノズルが挿入されて給油作業が行われ、給油ノズルが引き抜かれた際に、蓋状治具により給油口が閉じた状態となる。そのため、給油工程を終えた車両が再び製造ライン上に移載されて蓋部材により給油口が閉口されるまでの間、蓋状治具により給油口からのガソリン蒸気の漏れ出しを確実に防止することができる。また、給油工程の前であれば、例えば製造ライン上で他の作業を行う作業者により給油口に蓋状治具を取付けておくだけでよいので、作業者が給油工程に近づくことなく蓋状治具を取付けることができる。また、本発明では、給油工程の後に、蓋状治具と蓋部材とを交換する交換工程を製造ライン上に設けたので、治具取付け工程と同様、作業者が給油工程に近づくことなく蓋状治具の取り外しと蓋部材の取付けとを行うことができる。また、製造ライン上であれば、他の作業に従事する作業者が交換作業を兼務することができるので、余分に作業者が必要になる心配もない。もちろん、治具により給油口に蓋をすることで、蓋部材を給油口に取付けるためだけの専用の装置を設けずに済むので、設備コストの高騰を避けて低コストに作業環境の良好な給油工程を構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、ガソリン臭による作業環境の悪化を低コストに防止して車両の製造工程における注油作業を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の製造設備の要部平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る蓋状治具の断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る車両の製造ラインの要部平面図である。
【
図4】本発明との比較に用いられる一の発明に係る車両の製造ラインの要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の製造方法の内容を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る製造設備の要部平面図を示している。すなわち、本実施形態に係る製造設備10は、車両1を搬送しながら車両1の製造に係る作業を実施可能な製造ライン11と、製造ライン11から離れた位置に設けられる給油工程12と、蓋状治具13を車両1に取付ける治具取付け工程14と、蓋状治具13と車両1の給油口1aを閉口する蓋部材2とを交換する交換工程15とを備える。
【0016】
本実施形態では、製造ライン11は、車両1の組み立てライン16と、組み立てた車両1の検査ライン17とを有する。また、この製造ライン11では、組み立てライン16と、検査ライン17とが互いに平行に配設されており、かつ製造ライン11は全体として、組み立てライン16と検査ライン17との間で折り返した形態をなしている。
【0017】
給油工程12は、製造ライン11から離れた位置に配設されている。本実施形態では、製造ライン11の断続部分に当たる箇所(いわば製造ライン11の折り返し部11aに相当する箇所)に給油工程12が配設されている。この場合、給油工程12は、組み立てライン16の終端16aに位置する工程(ここでは治具取付け工程14)に従事する作業者L1と、検査ライン17の始端17aに位置する工程(ここでは交換工程15)に従事する作業者L2の何れとも、ガソリン臭を回避し得る十分な距離が保たれている。
【0018】
給油工程12は、給油ブース18と、給油ブース18内に配設される自動給油装置19とを有する。ここで自動給油装置19の構成は任意であり、本実施形態では
図1に示すように、少なくとも給油用ロボット20と、給油用ロボット20のアーム先端に取付けられた給油ノズル21とで自動給油装置19が構成されている。
【0019】
給油工程12と製造ライン11(組み立てライン16、検査ライン17)との間の車両1の搬送手段は、原則として任意であり、例えば図示は省略するが、車両1を搭載した台車をAGV等の自動搬送装置による牽引により搬送してもよい。また、製造ライン11上から搬送装置上への移載や、上記搬送装置上から給油ブース18内の所定位置への移載などに、任意の移載装置(例えばオーバーヘッドコンベアなど)を採用してもよい。
【0020】
治具取付け工程14は、製造ライン11上の所定位置であって、給油工程12よりも前の工程として設けられる。本実施形態では、治具取付け工程14は、組み立てライン16の終端16aに最も近い位置に配設されている。すなわち、組み立てライン16上で行われる一連の組み立て作業に係る複数の工程の後工程として、治具取付け工程14が配設されている。
【0021】
ここで、車両1に取付けられる蓋状治具13は、
図2に示すように、給油口1aへの取付け部22と、取付け部22が軸方向一端に設けられた第一筒部23と、第一筒部23の他端開口部23aを開閉可能とする可動蓋部24とを有する。本実施形態では、この蓋状治具13は、給油ノズル21(
図1を参照)の第一筒部23内への挿入を案内する案内部25をさらに有する。
【0022】
取付け部22は、給油口1aに対する蓋部材2の取付け構造と同一の構造をなしている。すなわち、本実施形態では、取付け部22は、給油口1aの内周に設けられためねじ部(図示は省略)と噛み合うおねじ部22aを外周に有している。もちろん、車両1のうち蓋部材2と異なる部位に取付け可能であれば、取付け部22を、給油口1a以外の部位に取付け可能な構造としてもよい。
【0023】
可動蓋部24は、本実施形態では、ねじりスプリングなどの付勢部26を介して第一筒部23の軸方向他端に取付けられている。この場合、可動蓋部24は、付勢部26側に設定される回転軸まわりに所定の位相範囲を回動可能に構成されており、例えば
図2に示す構成の場合、第一筒部23の他端開口部23aを閉塞可能な位置(
図2中、実線で示す位置)から、給油ノズル21を第一筒部23の所定深さ位置まで挿入可能な位置(
図2中、二点鎖線で示す位置)までの間を回動可能に構成されている。
【0024】
また、この際、可動蓋部24は、付勢部26により常時反時計回りに回動する向きに付勢されている。これにより、給油ノズル21が引き抜かれた状態では、可動蓋部24は、第一筒部23の他端開口部23aを閉塞可能な位置まで復帰するようになっている。なお、この際、可動蓋部24の復帰(回動)動作は、規制部27により所定の位置(
図2でいえば他端開口部23aを隙間なく閉口可能な位置)で規制され得る。
【0025】
また、案内部25は、本実施形態では、第二筒部28の軸方向他端側に設けられており、軸方向一端側から他端側に向かうにつれて内径寸法が拡大するテーパ面形状をなしている。第二筒部28は第一筒部23の外側に取付けられており、第二筒部28のうち第一筒部23に取付けられた状態で可動蓋部24の回動を規制可能な位置に規制部27(ここでは段差部)が設けられている。
【0026】
治具取付け工程14では、上記構成の蓋状治具13を車両1の給油口1aに取付ける。この取付け作業は、所定の作業者L1の手により行われる。なお、治具取付け工程14における作業は比較的短時間で実施可能であるから、タクトタイム等との関連で所定の作業者L1は、他の作業に係る工程と治具取付け工程14とを兼務してもよい。
【0027】
交換工程15は、製造ライン11上の所定位置であって、給油工程12よりも後の工程として設けられる。本実施形態では、交換工程15は、検査ライン17の始端17aに最も近い位置に配設されている。すなわち、検査ライン17上で行われる一連の検査工程の前工程として、交換工程15が配設されている。なお、交換工程15についても比較的短時間で実施可能なことから、交換工程15に従事する所定の作業者L2は、他の作業に係る工程と交換工程15とを兼務してもよい。
【0028】
以下、上記構成の製造設備10を用いた車両1の製造方法の一例を説明する。
【0029】
まず製造ライン11上の車両1(組み立て前又は組み立て中の車両を含む)に対して複数の組み立て工程を実施し、車両1を組み立てる。組み立てられた車両1が、組み立てライン16上を搬送され、組み立てライン16の終端16a近傍に配設された治具取付け工程14に到達すると、車両1の給油口1aに所定の作業者L1の手で蓋状治具13を取付ける。なお、蓋状治具13を給油口1aに取付けた時点で、蓋状治具13の可動蓋部24は給油口1aに通じる第一筒部23の他端開口部23aを閉じた状態にある。
【0030】
次に、蓋状治具13が取付けられた車両1を、組み立てライン16外に搬出し、図示しない所定の搬送装置で給油工程12に向けて搬送する。そして、給油工程12に設置された給油ブース18内の所定位置に車両1を搬入した後、自動給油装置19による給油作業を行う。本実施形態では、給油用ロボット20を駆動して、給油用ロボット20のアーム先端に取付けられた給油ノズル21を給油口1aに向けて移動させる。ここで、給油口1aには蓋状治具13が取付けられているので、給油ノズル21を給油口1aに向けて移動させることで、蓋状治具13の可動蓋部24が給油ノズル21の挿入動作によって押し下げられて、給油ノズル21の先端が給油口1aに挿入される。然る後、給油ノズル21からガソリンを供給して給油作業を実施する。この給油作業は、自動給油装置19により自動的に行われるので、作業者は不要である(近くにいる必要はない)。また、給油ブース18は、製造ライン11から離れた位置にあるため、給油時に発生するガソリン臭を、製造ライン11上又はその近傍にいる作業者L1,L2が強く感じる可能性は非常に低い。また、給油ブース18は製造ライン11から完全に独立した状態にあるため、製造ライン11上に給油ブースを設ける場合と比べて、より密閉性の強い構造とすることができ、より一層のガソリン臭の周囲への拡散を防止し得る。
【0031】
上記給油ノズル21からのガソリンの供給作業が完了した後、給油ノズル21を給油口1a(更には蓋状治具13の被挿入部)から引き抜いて、給油作業を完了する。この際、蓋状治具13の可動蓋部24は、給油ノズル21の引き抜き動作に伴い、付勢部26からの付勢力により蓋状治具13の他端開口部23aを閉塞する向きに回動し、他端開口部23aを閉塞する。よって、給油ノズル21を引き抜いた時点で、給油口1a外部へのガソリン蒸気の漏れ出しが防止され得る。
【0032】
以上のようにして給油作業を完了した後、車両1を、図示しない所定の搬送装置で検査ライン17上の交換工程15に向けて搬送する。そして、検査ライン17上の交換工程15の所定位置に車両1を搬入した後、作業者L2の手による蓋状治具13と蓋部材2との交換作業を行う。なお、給油工程12から交換工程15まで搬送される間においても、蓋状治具13の可動蓋部24は給油口1aに通じる他端開口部23aを閉塞した状態を保っている。そのため、作業者L2が交換作業時に感じるガソリン臭はわずかで済む。交換作業を終えた車両1はそのまま検査ライン17上を搬送され、所定の検査工程を実施することにより、出荷可能な車両1が完成する。
【0033】
以上述べたように、本実施形態に係る車両の製造方法では、車両1の製造ライン11から離れた位置に給油工程12を設けると共に、給油工程12の前に、給油ノズル21の挿入を許容しかつ給油ノズル21を挿入していない状態で給油口1aを閉じた状態とする蓋状治具13を車両1に取付ける治具取付け工程14を製造ライン11(16)上に設けるようにしたので、給油工程12で給油ノズル21が挿入されて給油作業が行われ、給油ノズル21が引き抜かれた際に、蓋状治具13が給油口1aを閉じた状態となる。そのため、給油工程12を終えた車両1が再び製造ライン11(17)上に移載されて蓋部材2により給油口1aが閉口されるまでの間、蓋状治具13により給油口1aからのガソリン蒸気の漏れ出しを確実に防止することができる。また、給油工程12の前であれば、製造ライン11(16)上で他の作業を行う作業者L1により給油口1aに蓋状治具13を取付けておくだけでよいので、作業者L1が給油工程12に近づかずに済む。また、給油工程12の後に、蓋状治具13と蓋部材2とを交換する交換工程15を製造ライン11(17)上に設けることで、治具取付け工程14と同様、作業者L2が給油工程12に近づくことなく蓋状治具13の取り外しと蓋部材2の取付けとを行うことができる。また、製造ライン11(17)上であれば、他の作業に従事する作業者L2が交換作業を兼務することができるので、余分に作業者が必要になる心配もない。もちろん、この蓋状治具13により給油口1aに蓋をすることで、蓋部材2を給油口1aに取付けるためだけの装置を設けずに済むので、設備コストの高騰を避けて低コストに作業環境の良好な給油工程12を構築することが可能となる。
【0034】
また、給油口1aの位置は、車種により異なるのが一般的であるから、例えば上述したように蓋部材2の取付け動作を専用のロボットで行う場合には、取付け動作のたびに位置補正を行う必要が生じ、その分のコストアップが避けられない。これに対して、本実施形態に係る車両の製造方法によれば、蓋部材2の取付けを作業者L2の手により行うので、車種による給油口1aの位置の違いに起因したコストアップは生じない。
【0035】
また、本実施形態では、給油ノズル21の挿入口となる蓋状治具13の他端開口部23aよりも他端側(給油口1a)に、他端側に向けて内径寸法が拡大する案内部25を設けたので(
図2を参照)、給油口1aの位置にばらつきがある場合であっても、当該ばらつきを吸収して、給油ノズル21を確実にかつ円滑に他端開口部23aひいては給油口1aに導入することが可能となる。また、このように機械的に給油ノズル21の位置補正が行えることで、例えば画像処理による給油用ロボット20の動作補正を給油作業の度に行う手間が省けるので、給油作業の更なる効率化を図ることが可能となる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る車両の製造方法は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態では、製造ライン11を、互いに平行な組み立てライン16と検査ライン17とで構成し、製造ライン11の折り返し部11aに相当する箇所に給油工程12を配置した場合を例示したが(
図1を参照)、給油工程12の配置態様はこれには限定されない。例えば
図4に示す製造設備30のように、所定の方向に沿って伸びる製造ライン31の側方に離れた位置に給油工程12を配置してもよい。この場合、例えば製造ライン31上の給油工程12よりも上流側の製造ライン31aに治具取付け工程14を設けると共に、給油工程12よりも下流側の製造ライン31bに交換工程15を設けてもよい。何れにしても、給油工程12を製造ライン31(31a,31b)から離れた位置に配設することで、ガソリン臭による作業環境の悪化を効果的に防止できる。また、給油工程12の前後で、蓋状治具13の取付け工程14と蓋部材2との交換工程15を設けることにより、簡素な構成で低コストに作業環境の改善を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、蓋状治具13として、取付け部22と、第一筒部23と、可動蓋部24と、案内部25、及び第二筒部28とで構成されたものを例示したが(
図2を参照)、もちろんこれには限定されない。少なくとも可動蓋部24を有し、可動蓋部24により給油口1aを閉塞可能な限りにおいて、各要素の構成は任意であり、あるいは省略可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、治具取付け工程14に従事する作業者L1と、交換工程15に従事する作業者L2とが別人である場合を例示したが(
図1を参照)、もちろんこれ以外の配置態様をとることも可能である。すなわち、例えば
図1のように組み立てライン16と検査ライン17を配置した状態で、組み立てライン16と検査ライン17との間に所定の作業者を配置し、この作業者が治具取付け工程14と交換工程15を担当(兼務)してもよい。
【0040】
また、以上の説明では、給油口1aが車幅方向右側に位置する車両1(
図1等を参照)に本発明に係る製造方法を適用した場合を例示したが、もちろんこれには限られない。給油口1aが車幅方向左側に位置する車両(図示は省略)など、車両1に対する給油口1aの位置に関係なく、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
1a 給油口
2 蓋部材
10,30 製造設備
11,31 製造ライン
11a 折り返し部
12 給油工程
13 蓋状治具
14 治具取付け工程
15 交換工程
16 組み立てライン
17 検査ライン
18 給油ブース
19 自動給油装置
20 給油用ロボット
21 給油ノズル
22 取付け部
22a おねじ部
23 第一筒部
23a 他端開口部
24 可動蓋部
25 案内部
26 付勢部
27 規制部
28 第二筒部
100 製造設備
101,102 製造ライン
103 給油ブース
104 自動給油装置
105 蓋部材取付け工程
L1,L2 作業者