IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中外炉工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-浸炭処理装置 図1
  • 特許-浸炭処理装置 図2
  • 特許-浸炭処理装置 図3
  • 特許-浸炭処理装置 図4
  • 特許-浸炭処理装置 図5
  • 特許-浸炭処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】浸炭処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/22 20060101AFI20240205BHJP
   C21D 1/06 20060101ALI20240205BHJP
   C21D 1/76 20060101ALI20240205BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20240205BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C23C8/22
C21D1/06 A
C21D1/76 R
C21D1/76 Q
C21D1/76 H
F27D7/06 C
F27D19/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023015056
(22)【出願日】2023-02-03
(65)【公開番号】P2023131113
(43)【公開日】2023-09-21
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2022034916
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】吉井 聡一
(72)【発明者】
【氏名】中津 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田中 潤也
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193393(JP,A)
【文献】特開2009-179816(JP,A)
【文献】特開2002-363727(JP,A)
【文献】特開昭50-041730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/22
C21D 1/06
C21D 1/76
F27D 7/06
F27D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、前記の浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給管と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給管とを備えた浸炭処理装置において、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる第1循環路に、前記の雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを分離させて取り出す水素ガス分離装置を設ける一方、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる第2循環路を設け、前記の浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器を設けると共に、前記のCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度測定器によって検知されたCOガス濃度及び/又は水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを前記の第1循環路と第2循環路の何れに導くかを制御することを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第2循環路に導いて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環させる一方、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第1循環路に導き、雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを前記の水素ガス分離装置により分離させて取り出し、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すことを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の浸炭処理装置において、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第2循環路に導いて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環させる一方、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第1循環路に導き、雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを前記の水素ガス分離装置により分離させて取り出し、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すことを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項4】
処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、前記の浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給管と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給管とを備えた浸炭処理装置において、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる循環路に、前記の雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを分離させて取り出す水素ガス分離装置を設け、前記の水素ガス分離装置によって分離された水素ガスを案内する水素ガス案内管に排気制御バルブを設けると共に、前記の浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器を設け、前記のCOガス濃度測定器によって検知されたCOガス濃度及び/又は前記の水素ガス濃度測定器によって検知された水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた前記の排気制御バルブの開閉を制御することを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを閉じて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して前記の循環路を通して循環させる一方、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを開け、前記の水素ガス分離装置によって前記の雰囲気ガスから分離された水素ガスを、水素ガス案内管を通して排出させて、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すことを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の浸炭処理装置において、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを閉じて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して前記の循環路を通して循環させる一方、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを開け、前記の水素ガス分離装置によって前記の雰囲気ガスから分離された水素ガスを、水素ガス案内管を通して排出させて、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すことを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項7】
処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、前記の浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給管と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給管とを備えた浸炭処理装置において、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる循環路に、前記の雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを分離させて取り出す水素ガス分離装置を設け、前記の水素ガス分離装置によって分離された水素ガスを案内する水素ガス案内管を設けると共に、前記の浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器を設け、前記のCOガス濃度測定器によって検知されたCOガス濃度及び/又は前記の水素ガス濃度測定器によって検知された水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御することを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置により、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置によって雰囲気ガスから分離させる水素ガスの量を増加させることを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の浸炭処理装置において、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置により、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置によって雰囲気ガスから分離させる水素ガスの量を増加させることを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項10】
請求項7に記載の浸炭処理装置において、前記の制御装置により、前記の循環路を通して循環させる雰囲気ガスの量を制御するにあたり、前記の雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる循環路において、前記の水素ガス分離装置よりも上流側の位置に流量調整バルブを設け、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度に基づいて、前記の制御装置により、前記の流量調整バルブを調整して、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御することを特徴とする浸炭処理装置。
【請求項11】
請求項7に記載の浸炭処理装置において、前記の制御装置により、前記の循環路を通して循環させる雰囲気ガスの量を制御するにあたり、循環路を通して雰囲気ガスを循環させる循環ポンプの出力を調整する出力調整装置を設け、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度に基づいて、前記の制御装置により、前記の出力調整装置を調整して、前記の循環ポンプにより前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御することを特徴とする浸炭処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材部品等の処理材を浸炭処理室内において浸炭処理する浸炭処理装置に関するものである。特に、処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、この浸炭処理室内に、COガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給管と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給管とを備えた浸炭処理装置において、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、循環路を通して循環させるにあたり、雰囲気ガスに含まれる水素ガスの排気を適切に制御して、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼材部品等の処理材の強度等を向上させるため、これらの処理材の表面から内部に炭素を浸炭させて拡散させる浸炭処理が行われている。
【0003】
そして、従来においては、処理材の内部に炭素を浸炭させて拡散させるにあたり、処理材を浸炭処理室内に導入させ、この浸炭処理室内に、COガスと水素ガスとを含むキャリアガスと、メタンガスやプロパンガスやブタンガス等の炭化水素ガスC2n+2を主成分とするエンリッチガスとを供給し、浸炭処理室内に導かれた前記の処理材を加熱させて、この処理材の表面に炭素を付与し、このように処理材の表面に付与された炭素を処理材の内部に拡散させて浸炭させるようにしている。
【0004】
ここで、前記のキャリアガスとエンリッチガスとが供給された浸炭処理室内において処理材に炭素を付与して浸炭させる場合、一般に、2CO→CO+(C)、C2n+2+nCO2→2nCO+(n+1)Hの反応が生じ、そのうちの炭素成分が処理材の表面に付与された結果、浸炭処理室内に水素ガスが残存し、そのように発生した水素ガスにより浸炭処理室内のCO濃度が相対的に減少する。それによって浸炭雰囲気のカーボンポテンシャル(炭素当量)の正しい制御が困難になり、処理材を目標どおりの表面炭素濃度や浸炭深さにできなくなるという問題があった。
【0005】
このため、浸炭処理室内には過剰な量のキャリアガスを供給するようにしており、その場合は、特許文献1のような構造によって、浸炭処理室内において発生した水素ガスを前記のキャリアガスと一緒にして、扉の隙間等を通して隣室内に導き、このように隣室内に導かれたガスを隣室に設けた排気路に導いて外部で燃焼させるようにしている。
【0006】
しかし、その場合は、COガスと水素ガスとを含むキャリアガスを過剰に浸炭処理室内に供給するため、キャリアガスの多くが浸炭に用いられずに排気路から導かれて外部で燃焼されてしまい、ランニングコストが高くつくと共に、COが多く発生して環境を害するという問題があった。
【0007】
また、特許文献2においては、浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる循環路を設けると共に、この循環路に導かれた雰囲気ガスを冷却させる冷却装置を設け、この冷却装置により冷却された雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを、水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを通して雰囲気ガスから分離させて水素ガス案内管を通して排気させ、水素ガスを排気させた後の雰囲気ガスを、前記の循環路を通して浸炭処理室内に戻して再利用するようにしたものが示されている。
【0008】
しかし、特許文献2に示されるように、浸炭処理室内から循環路に導かれた雰囲気ガスに含まれる水素ガスを、常に水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを通して雰囲気ガスから分離させて水素ガス排気路を通して除去させ、水素が取り出された後の雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すようにした場合、雰囲気ガス水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するため、高価な水素透過フィルターの劣化が早く、その清掃や交換に費用と手間がかかるという問題があり、また前記のように水素を分離させて除去した後の雰囲気ガスを浸炭処理室内に単に戻しただけでは、戻された雰囲気ガスにより、浸炭処理室内における雰囲気ガス中のCOガス濃度が変化し、浸炭処理室内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持させることが困難になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3においては、処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、この浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給手段とを備えた浸炭処理装置において、前記のキャリアガス供給手段に、キャリアガス中における水素ガスを分離させて水素ガス案内管を通して除去させる水素ガス分離除去装置を設け、浸炭処理室内の雰囲気ガス中におけるCOガスと水素ガスとから選択される少なくとも一方のガス濃度に応じて、前記の水素ガス分離除去装置によってキャリアガスから分離させて除去する水素ガスの量を制御装置によって制御するようにしたものが示されている。
【0010】
しかし、特許文献3に示されるように、浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段に、キャリアガス中における水素ガスを分離させて水素ガス案内管を通して除去させる水素ガス分離除去装置を設け、浸炭処理室内の雰囲気ガス中におけるCOガスと水素ガスとから選択される少なくとも一方のガス濃度に応じて、前記の水素ガス分離除去装置によってキャリアガスから分離させて除去する水素ガスの量を制御し、キャリアガス供給手段によって浸炭処理室内に供給するキャリアガスにおけるCOガスと水素ガスの割合を制御して、浸炭処理室内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持させることは十分には行えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2001-214255号公報
【文献】特開2009-179816号公報
【文献】特許第5615212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、COガスと水素ガスとを含むキャリアガスと、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスとを浸炭処理室内に供給して、鋼材部品等の処理材を浸炭処理する浸炭処理装置における前記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0013】
すなわち、本発明は、処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、この浸炭処理室内に、COガスと水素ガスとを含むキャリアガスと、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスとを供給するガス供給装置とを備えた浸炭処理装置において、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、循環路を通して循環させるにあたり、雰囲気ガスに含まれる水素ガスの除去を適切に制御して、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明における第1の浸炭処理装置においては、前記のような課題を解決するため、処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、前記の浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給管と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給管とを備えた浸炭処理装置において、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる第1循環路に、前記の雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを分離させて取り出す水素ガス分離装置を設ける一方、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる第2循環路を設け、前記の浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器を設けると共に、前記のCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度測定器によって検知されたCOガス濃度及び/又は水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを前記の第1循環路と第2循環路の何れに導くかを制御するようにした。
【0015】
そして、前記の第1の浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第2循環路に導いて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環させる一方、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第1循環路に導き、雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを前記の水素ガス分離装置により分離させて取り出し、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すようにした。
【0016】
また、前記の第1の浸炭処理装置において、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第2循環路に導いて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環させる一方、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第1循環路に導き、雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを前記の水素ガス分離装置により分離させて取り出し、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すようにした。
【0017】
なお、前記の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度による浸炭適正濃度は、浸炭処理する処理材の材料や、処理材に対する浸炭処理する程度や、ガス供給装置によって浸炭処理室に供給するキャリアガスやエンリッチガスに用いる炭化水素ガスの種類等によって変化する。
【0018】
例えば、鋼材からなる処理材に対して、一般的な浸炭処理を行うにあたり、エンリッチガスやキャリアガスの生成に使用する炭化水素ガスとして、メタンを主成分とする都市ガス(13A)を用いる場合には、雰囲気ガスに含まれるCOガスの濃度が21%程度になるように制御し、前記の炭化水素ガスとして、プロパンガスやブタンガスを用いる場合には、雰囲気ガスに含まれるCOガスの濃度が23.5%程度になるように制御する。
【0019】
ここで、前記の第1の浸炭処理装置において、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合や、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合に、前記の制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第1循環路に導き、雰囲気ガスに含まれる水素ガスを前記の水素ガス分離装置によって分離させて除去させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すと、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0020】
また、このようにして浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加し、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記のように制御装置により、浸炭処理室内における雰囲気ガスを第2循環路に導いて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環させるようにする。
【0021】
そして、前記の第1の浸炭処理装置のように、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、制御装置により第1循環路と第2循環路とを適切に選択して循環させ、雰囲気ガスに含まれる水素ガスを必要なときだけ除去させるようにすると、従来のように、水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するのに比べ、高価な水素透過フィルターの劣化が遅くなり、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0022】
また、COガス濃度や水素ガス濃度を測定して制御するため、浸炭処理室内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度や水素ガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0023】
そして、雰囲気ガスから水素成分を除去して炭素成分を再利用するため、高価なキャリアガスとエンリッチガスを供給する量や、浸炭に寄与しないまま排気路から燃焼させて排出する量が削減でき、ランニングコストや環境汚染が低減できる。
【0024】
本発明における第2の浸炭処理装置においては、前記のような課題を解決するため、処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、前記の浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給管と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給管とを備えた浸炭処理装置において、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる循環路に、前記の雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを分離させて取り出す水素ガス分離装置を設け、前記の水素ガス分離装置によって分離された水素ガスを案内する水素ガス案内管に排気制御バルブを設けると共に、前記の浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器を設け、前記のCOガス濃度測定器によって検知されたCOガス濃度及び/又は前記の水素ガス濃度測定器によって検知された水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた前記の排気制御バルブの開閉を制御するようにした。
【0025】
そして、前記の第2の浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを閉じて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して前記の循環路を通して循環させる一方、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを開け、前記の水素ガス分離装置によって前記の雰囲気ガスから分離された水素ガスを、水素ガス案内管を通して排出させて、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すようにした。
【0026】
また、前記の第2の浸炭処理装置において、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを閉じて、浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して前記の循環路を通して循環させる一方、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置により、前記の水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを開け、前記の水素ガス分離装置によって前記の雰囲気ガスから分離された水素ガスを、水素ガス案内管を通して排出させて、残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すようにした。
【0027】
ここで、前記の第2の浸炭処理装置において、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合や、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合に、制御装置により、水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを開け、水素ガス分離装置によって雰囲気ガスから分離された水素ガスを前記の水素ガス案内管を通して排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すと、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0028】
また、このようにして浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加し、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の制御装置により、水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを閉じて、雰囲気ガスに含まれる水素ガスを排出させないようにし、循環路を通して浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環させるようにする。
【0029】
そして、前記の第2の浸炭処理装置のように、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、循環路を通して循環させるにあたり、前記の制御装置により、水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを適切に開閉させて、水素ガス分離装置により雰囲気ガスから分離された水素ガスを必要なときだけ除去させるようにすると、従来のように、水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するのに比べ、高価な水素透過フィルターの劣化が遅くなり、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0030】
また、COガス濃度や水素ガス濃度を測定して制御するため、浸炭処理室内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度や水素ガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0031】
そして、雰囲気ガスから水素成分を除去して炭素成分を再利用するため、高価なキャリアガスCGとエンリッチガスEGを供給する量や、浸炭に寄与しないまま排気路から燃焼させて排出する量が削減でき、ランニングコストや環境汚染が低減できる。
【0032】
本発明における第3の浸炭処理装置においては、前記のような課題を解決するため、処理材を浸炭処理させる浸炭処理室と、前記の浸炭処理室内にCOガスと水素ガスとを含むキャリアガスを供給するキャリアガス供給管と、炭化水素ガスを主成分とするエンリッチガスを供給するエンリッチガス供給管とを備えた浸炭処理装置において、前記の浸炭処理室内における雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる循環路に、前記の雰囲気ガス中に含まれる水素ガスを分離させて取り出す水素ガス分離装置を設け、前記の水素ガス分離装置によって分離された水素ガスを案内する水素ガス案内管を設けると共に、前記の浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器及び/又は水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器を設け、前記のCOガス濃度測定器によって検知されたCOガス濃度及び/又は前記の水素ガス濃度測定器によって検知された水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御するようにした。
【0033】
そして、前記の第3の浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置により、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置によって雰囲気ガスから分離させる水素ガスの量を増加させるようにした。
【0034】
また、前記の第3の浸炭処理装置において、前記の水素ガス濃度測定器によって検知された浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置により、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置によって雰囲気ガスから分離させる水素ガスの量を増加させるようにした。
【0035】
ここで、前記の第3の浸炭処理装置において、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合や、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合に、制御装置により、循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置によって雰囲気ガスから分離させる水素ガスの量を増加させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室内に戻すと、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加して、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度に調整される。
【0036】
そして、前記の第3の浸炭処理装置のように、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、循環路を通して循環させるにあたり、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度未満になった場合や、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合のときだけ、前記の制御装置により、循環路を通して水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置によって雰囲気ガスから分離させる水素ガスの量を増加させようにすると、従来のように、水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するのに比べ、高価な水素透過フィルターの劣化が遅くなり、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0037】
また、COガス濃度や水素ガス濃度を測定して制御するため、浸炭処理室内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度や水素ガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0038】
そして、雰囲気ガスから水素成分を除去して炭素成分を再利用するため、高価なキャリアガスCGとエンリッチガスEGを供給する量や、浸炭に寄与しないまま排気路から燃焼させて排出する量が削減でき、ランニングコストや環境汚染が低減できる。
【0039】
また、前記の第3の浸炭処理装置において、前記の制御装置により、前記の循環路を通して循環させる雰囲気ガスの量を制御するにあたっては、前記の雰囲気ガスを浸炭処理室内から取り出して循環させる循環路において、前記の水素ガス分離装置よりも上流側の位置に流量調整バルブを設け、前記の制御装置により、前記の流量調整バルブを調整して、前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御させるようにする他、循環路を通して雰囲気ガスを循環させる循環ポンプの出力を調整する出力調整装置を設け、前記の制御装置により、前記の出力調整装置を調整して、前記の循環ポンプにより前記の循環路を通して前記の水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明における第1の浸炭処理装置、第2の浸炭処理装置及び第3の浸炭処理装置のように構成すると、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、前記の各循環路を通して循環させるにあたり、雰囲気ガスに含まれる水素ガスの除去を適切に制御することができ、浸炭処理室内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度を浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0041】
さらに、水素ガス分離装置の保守時間を少なくでき、浸炭ガス(キャリアガスやエンリッチガス)の使用量を減らすことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施形態1A,1Bに係る浸炭処理装置において、処理材を浸炭処理室内に導入させて浸炭処理を行うにあたり、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、制御装置により第2循環路に導いて循環させる状態を示した概略説明図である。
図2】前記の実施形態1Aに係る浸炭処理装置において、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度未満になった場合、及び実施形態1Bに係る浸炭処理装置において、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合に、浸炭処理室内における雰囲気ガスを、制御装置により第1循環路に導いて循環させる状態を示した概略説明図である。
図3】本発明の実施形態2A,2Bに係る浸炭処理装置において、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環路に導いて循環させるにあたり、水素ガス分離装置によって分離された水素ガスを案内する水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを制御装置によって閉じた状態を示した概略説明図である。
図4】前記の実施形態2Aに係る浸炭処理装置において、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度未満になった場合、及び実施形態2Bに係る浸炭処理装置において、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭処理に適した浸炭適正濃度を超えた場合に、水素ガス分離装置によって分離された水素ガスを案内する水素ガス案内管に設けた排気制御バルブを制御装置によって開けて、分離された水素ガスを、水素ガス案内管を通して排出させる状態を示した概略説明図である。
図5】本発明の実施形態3A,3Bに係る浸炭処理装置において、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環路に導いて循環させるにあたり、循環路に設けられた水素ガス分離装置よりも上流側の位置に流量調整バルブを設け、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、前記の流量調整バルブを調整して、循環路を通して水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御する状態を示した概略説明図である。
図6】本発明の実施形態4A,4Bに係る浸炭処理装置において、浸炭処理室内における雰囲気ガスを循環路に導いて循環させるにあたり、循環路を通して雰囲気ガスを循環させる循環ポンプの出力を調整する出力調整装置を設け、浸炭処理室内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度や水素ガス濃度に基づいて、制御装置により、前記の出力調整装置を調整して、循環ポンプにより循環路を通して水素ガス分離装置に導く雰囲気ガスの量を制御する状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態に係る浸炭処理装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る浸炭処理装置は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0044】
[実施形態1A]
実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、図1及び図2に示すように、処理材Wを、第1扉1aを通して導入室2内に導いた後、導入室2内に導かれた処理材Wを、第2扉1bを通して浸炭処理室3内に導入させて、処理材Wを浸炭処理室3内において浸炭処理するようにしている。
【0045】
ここで、この実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、前記の浸炭処理室3内に、COガスと水素ガスHとを含むキャリアガスCGを流量調整弁4aにより流量を調整しながらキャリアガス供給管4を通して供給すると共に、都市ガスやプロパンガスやブタンガス等の炭化水素ガスC2n+2を主成分とするエンリッチガスEGを流量調整弁5aにより流量を調整しながらエンリッチガス供給管5を通して供給するようにしている。なお、COガスと水素ガスHとを含む前記のキャリアガスCGとしては、一般に、前記の都市ガスやプロパンガスやブタンガス等の炭化水素ガスC2n+2を空気と混合させて変成させたものが用いられる。
【0046】
そして、この実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、前記の浸炭処理室3に設けた攪拌ファン3aにより、浸炭処理室3内に供給された前記のキャリアガスCGとエンリッチガスEGとを攪拌させると共に、浸炭処理室3内に導かれた前記の処理材Wを加熱させて、処理材Wの表面に炭素を付与し、このように処理材Wの表面に付与された炭素を処理材Wの内部に拡散させて浸炭させるようにする。
【0047】
なお、このようにキャリアガスCGとエンリッチガスEGとが供給された浸炭処理室3内において、処理材Wの表面に炭素を付与して浸炭させるようにした場合、前記のように2CO→CO+(C)、C2n+2+nCO2→2nCO+(n+1)Hの反応が生じ、そのうちの炭素成分が処理材Wの表面に付与された結果、浸炭処理室3内に水素ガスが残存し、そのように発生した水素ガスHにより浸炭処理室3内におけるCOガス濃度が次第に減少するようになる。
【0048】
ここで、この実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、図1及び図2に示すように、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを浸炭処理室3内から取り出して循環させる第1循環路10と第2循環路20とを設けている。
【0049】
そして、前記の第1循環路10においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを吸引して循環させるための第1循環ポンプ11を設け、浸炭処理室3内から取り出した雰囲気ガスを導く上流側の部分に、雰囲気ガスを冷却させる冷却装置13と第1取出しバルブ12を設け、この第1取出しバルブ12より下流側の位置に、この冷却装置13によって冷却させた雰囲気ガスから水素ガスHを分離させる水素ガス分離装置14とを設け、この水素ガス分離装置14によって水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、前記の第1循環ポンプ11により吸引して浸炭処理室3内に戻すようにする一方、水素ガス分離装置14によって分離させた水素ガスHを水素ガス吸引ポンプ14aにより吸引して水素ガス案内管14bに導き、この水素ガス案内管14bを通して水素ガスHを排出させるようにしている。なお、このように水素ガス案内管14bを通して排出させる水素ガスについては、これを燃焼させるようにしたり、水素ガス原料として用いるようにしたりすることができる。
【0050】
ここで、水素ガス分離装置14の構造としては、例えば筒状に設けられた水素透過フィルター15の内側に雰囲気ガスを流通させ、水素ガス吸引ポンプ14aによって水素だけをその外側に吸引させるようなものが考えられる。
【0051】
一方、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを浸炭処理室3内から取り出して循環させる前記の第2循環路20においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを吸引して循環させるための第2循環ポンプ21を設け、浸炭処理室3内から取り出した雰囲気ガスを導く上流側の部分に雰囲気ガスを冷却させる冷却装置23と第2取出しバルブ22を設けている。
【0052】
また、この実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器6を設け、このCOガス濃度測定器6によって検知された雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を制御装置7に出力し、この制御装置7により、前記の第1循環路10に設けた第1取出しバルブ12と、第2循環路20に設けた第2取出しバルブ22との開閉を制御するようにしている。
【0053】
また、この実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスの量が過剰になった場合に、この浸炭処理室3内における雰囲気ガスの一部を外部に排出させるように、この浸炭処理室3に排気調整弁8aが途中に設けられた排気管8を設け、この排気管8に導かれた雰囲気ガスを外部で燃焼させるようにしている。なお、この実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内における過剰になった雰囲気ガスを外部に排出させる排気管8を浸炭処理室3に設けるようにしたが、排気管8を設ける位置は限定されず、図示していないが、浸炭処理室3内における過剰になった雰囲気ガスを第2扉1bの隙間等を通して前記の導入室2に導くようにし、この導入室2に前記の排気管8を設けるようにすることもできる。
【0054】
そして、この実施形態1Aにおける浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器6によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内における雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、図1に示すように、前記の制御装置7により、前記の第1循環路10に設けた第1取出しバルブ12を閉じて、浸炭処理室3内における雰囲気ガスが水素ガス分離装置14に導かれないようにする一方、前記の第2循環路20に設けた第2取出しバルブ22を開け、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを前記の第2循環ポンプ21により吸引し、第2循環路20を通して循環させるようにして、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0055】
そのようにすると、前記の浸炭処理室3に設けた攪拌ファン3aの攪拌効果に相乗して浸炭処理室3内の雰囲気が攪拌され、より均一な浸炭処理ができる。なお、第1取出しバルブ12や第2取出しバルブ22は、閉の状態を黒塗りで、開の状態を白抜きで図示する。(以後、他のバルブも同様。)
【0056】
ここで、このように浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させると、前記のように浸炭処理室3内において水素ガスHが発生し、この水素ガスHにより浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が次第に減少するようになる。
【0057】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が次第に減少し、前記のCOガス濃度測定器6によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が前記の浸炭適正濃度未満になった場合には、図2に示すように、前記の制御装置7により、第2循環路20に設けた前記の第2取出しバルブ22を閉じる一方、第1循環路10に設けた前記の第1取出しバルブ12を開け、第1循環路10に設けた前記の第1循環ポンプ11により、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを第1循環路10に吸引して、前記の雰囲気ガスを冷却装置13に導いて冷却させた後、このように冷却させた雰囲気ガスを水素ガス分離装置14に導き、この水素ガス分離装置14において雰囲気ガス中に含まれる水素ガスHを分離させるようにする。
【0058】
そして、前記の水素ガス分離装置14によって雰囲気ガスから分離させた水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ14aにより吸引して水素ガス案内管14bに導き、この水素ガス案内管14bを通して水素ガスHを排出させるようにする一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、前記の第1循環ポンプ11により吸引して浸炭処理室3内に戻し、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0059】
ここで、前記のように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置14によって分離させて排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0060】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の図1に示すように、制御装置7により、第1循環路10に設けた第1取出しバルブ12を閉じて、浸炭処理室3内における雰囲気ガスが水素ガス分離装置14に導かれないようにする一方、第2循環路20に設けた第2取出しバルブ22を開け、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを前記の第2循環ポンプ21により吸引し、第2循環路20を通して循環させるようにする。
【0061】
この実施形態1Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを循環させるにあたり、雰囲気ガスを循環させる経路を、前記のように制御装置7により第1循環路10と第2循環路20とを適切に切り換えるようにして、雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを必要なときだけ除去させるようにしたため、従来のように水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するのに比べ、高価な水素透過フィルター15の劣化が遅くなり、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0062】
また、COガス濃度を測定して制御したことにより、浸炭処理室3内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0063】
そして、雰囲気ガスから水素成分を除去して炭素成分を再利用したため、高価なキャリアガスCGとエンリッチガスEGを供給する量や、浸炭に寄与しないまま排気管8から燃焼させて排出する量が削減でき、ランニングコストや環境汚染が低減できる。
【0064】
[実施形態1B]
実施形態1Bにおける浸炭処理装置においては、前記の実施形態1Aにおける浸炭処理装置において、図1及び図2にかっこ書き()で示すように、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器6に代えて、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器9を設け、それ以外は、前記の実施形態1Aにおける浸炭処理装置と同様に構成した。
【0065】
ここで、この実施形態1Bにおける浸炭処理装置においては、前記の水素ガス濃度測定器9によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内における雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、図1に示すように、前記の制御装置7により、前記の第1循環路10に設けた第1取出しバルブ12を閉じて、浸炭処理室3内における雰囲気ガスが水素ガス分離装置14に導かれないようにする一方、前記の第2循環路20に設けた第2取出しバルブ22を開け、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを前記の第2循環ポンプ21により吸引し、第2循環路20を通して循環させるようにして、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0066】
そして、このように浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させると、前記のように浸炭処理室3内において水素ガスHが発生し、この水素ガスHにより浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が次第に増加するようになる。
【0067】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が次第に増加し、前記の水素ガス濃度測定器9によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が前記の浸炭適正濃度を超えた場合には、図2に示すように、前記の制御装置7により、第2循環路20に設けた前記の第2取出しバルブ22を閉じる一方、第1循環路10に設けた前記の第1取出しバルブ12を開け、第1循環路10に設けた前記の第1循環ポンプ11により、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを第1循環路10に吸引して、前記の雰囲気ガスを冷却装置13に導いて冷却させた後、このように冷却させた雰囲気ガスを水素ガス分離装置14に導き、この水素ガス分離装置14において雰囲気ガス中に含まれる水素ガスHを分離させるようにする。
【0068】
そして、前記の水素ガス分離装置14によって雰囲気ガスから分離させた水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ14aにより吸引して水素ガス案内管14bに導き、この水素ガス案内管14bを通して水素ガスHを排出させるようにする一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、前記の第1循環ポンプ11により吸引して浸炭処理室3内に戻し、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0069】
このように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置14によって分離させて排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0070】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度になると、図1に示すように、制御装置7により、第1循環路10に設けた第1取出しバルブ12を閉じて、浸炭処理室3内における雰囲気ガスが水素ガス分離装置14に導かれないようにする一方、第2循環路20に設けた第2取出しバルブ22を開け、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを前記の第2循環ポンプ21により吸引し、第2循環路20を通して循環させるようにする。
【0071】
このようにした結果、実施形態1Bにおける浸炭処理装置においても、前記の実施形態1Aにおける浸炭処理装置と同様の効果が得られる。
【0072】
[実施形態2A]
実施形態2Aにおける浸炭処理装置においても、図3及び図4に示すように、前記の実施形態1Aの浸炭処理装置と同様に、処理材Wを、第1扉1aを通して導入室2内に導いた後、導入室2内に導かれた処理材Wを、第2扉1bを通して浸炭処理室3内に導入させて、処理材Wを浸炭処理室3内において浸炭処理するにようにしている。
【0073】
そして、この実施形態2Aにおける浸炭処理装置においても、前記の浸炭処理室3内に、COガスと水素ガスHとを含むキャリアガスCGを流量調整弁4aにより流量を調整しながらキャリアガス供給管4を通して供給すると共に、都市ガスやプロパンガスやブタンガス等の炭化水素ガスC2n+2を主成分とするエンリッチガスEGを流量調整弁5aにより流量を調整しながらエンリッチガス供給管5を通して供給するようにし、浸炭処理室3に設けた攪拌ファン3aにより、浸炭処理室3内に供給された前記のキャリアガスCGとエンリッチガスEGとを攪拌させると共に、浸炭処理室3内に導かれた前記の処理材Wを加熱させて、処理材Wの表面に炭素を付与し、このように処理材Wの表面に付与された炭素を処理材Wの内部に拡散させて浸炭させるようにしている。
【0074】
また、この実施形態2Aにおける浸炭処理装置においても、前記の実施形態1Aにおける浸炭処理装置と同様に、浸炭処理室3内における雰囲気ガスの量が過剰になった場合に、この浸炭処理室3内における雰囲気ガスの一部を外部に排出させるように、この浸炭処理室3に排気調整弁8aが途中に設けられた排気管8を設け、この排気管8に導かれた雰囲気ガスの一部を外部で燃焼させるようにしている。
【0075】
ここで、この実施形態2Aにおける浸炭処理装置においては、図3及び図4に示すように、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを浸炭処理室3内から取り出して循環させる1つの循環路30を設けている。
【0076】
そして、前記の循環路30においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを吸引して循環させるための循環ポンプ31を設け、この循環ポンプ31により、浸炭処理室3内から取り出して循環路30に導かれた雰囲気ガスを冷却装置33に導いて冷却させ、このように冷却装置33によって冷却させた雰囲気ガスを、水素ガスHを雰囲気ガスから分離させる水素ガス分離装置34に導き、この水素ガス分離装置34を通過した雰囲気ガスを、前記の循環ポンプ31により吸引して浸炭処理室3内に戻すようにしている。
【0077】
ここで、この実施形態2Aにおける浸炭処理装置においては、前記の水素ガス分離装置34によって雰囲気ガスから分離させた水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ34aにより吸引して水素ガス案内管34bに導くにあたり、この水素ガス案内管34bに排気制御バルブ34cを設け、この排気制御バルブ34cを閉じた状態では、雰囲気ガスから水素ガスHが分離されて排出されずに、水素ガスHが除去されていない状態で雰囲気ガスが浸炭処理室3内に戻されるようになる一方、排気制御バルブ34cを開いた状態では、水素ガス分離装置34によって分離された水素ガスHが、水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引されて排出されるようになり、水素ガスHが除去された状態で雰囲気ガスが浸炭処理室3内に戻されるようになる。
【0078】
このとき、排気制御バルブ34cを開閉させる代わりに、排気制御バルブ34cを開のままとし、水素ガス吸引ポンプ34aをON/OFFさせてもよい。
【0079】
このように何らかの手段で水素ガス分離装置34の水素透過フィルター35の作用を止めることによっても、前記の実施形態1A,1Bと同様に、高価な水素透過フィルター35の劣化を遅くでき、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0080】
また、この実施形態2Aによれば、実施形態1のような第2循環路20が不要になるため、設備コストや必要スペースが削減できる。
【0081】
また、この実施形態2Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器6を設け、このCOガス濃度測定器6によって検知された雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を制御装置7に出力し、この制御装置7により、前記の水素ガス案内管34bに設けた前記の排気制御バルブ34cの開閉を制御するようにしている。
【0082】
そして、この実施形態2Aにおける浸炭処理装置において、前記のCOガス濃度測定器6によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内における雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、図3に示すように、前記の制御装置7により、前記の水素ガス案内管34bの排気制御バルブ34cを閉じ、雰囲気ガスから水素ガスHが分離されて排出されないようにして、水素ガスHが除去されていない状態で雰囲気ガスを前記の循環ポンプ31により吸引し、前記の循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0083】
ここで、このように浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させると、前記のように浸炭処理室3内において水素ガスHが発生し、この水素ガスHにより浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が次第に減少するようになる。
【0084】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が次第に減少し、前記のCOガス濃度測定器6によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が前記の浸炭適正濃度未満になった場合には、図4に示すように、前記の制御装置7により、前記の水素ガス案内管34bの排気制御バルブ34cを開けて、水素ガス分離装置34によって分離された水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、前記の循環ポンプ31により吸引し、循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0085】
ここで、前記のように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置34によって分離させて排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0086】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の図3に示すように、前記の制御装置7により、前記の水素ガス案内管34bの排気制御バルブ34cを閉じて、雰囲気ガスから水素ガスHが分離させて排出されないようにし、水素ガスHが除去されていない状態で雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0087】
この実施形態2Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを、循環路30を通して循環させるにあたり、前記のように制御装置7により、水素ガス案内管34bに設けた排気制御バルブ34cの開閉を適切に制御して、雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを、水素ガス案内管34bを通して必要なときだけ除去させるようにしたため、従来のように水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するのに比べ、高価な水素透過フィルター35の劣化が遅くなり、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0088】
また、COガス濃度を測定して制御したことにより、浸炭処理室3内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0089】
そして、雰囲気ガスから水素成分を除去して炭素成分を再利用したため、高価なキャリアガスCGとエンリッチガスEGを供給する量や、浸炭に寄与しないまま排気管8から燃焼させて排出する量が削減でき、ランニングコストや環境汚染が低減できる。
【0090】
[実施形態2B]
実施形態2Bにおける浸炭処理装置においては、前記の実施形態2Aにおける浸炭処理装置において、図3及び図4にかっこ書き()で示すように、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器6に代えて、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器9を設け、それ以外は、前記の実施形態2Aにおける浸炭処理装置と同様に構成した。
【0091】
そして、この実施形態2Bにおける浸炭処理装置においては、前記の水素ガス濃度測定器9によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内における雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が、浸炭処理に適した浸炭適正濃度である場合には、図3に示すように、前記の制御装置7により、前記の水素ガス案内管34bの排気制御バルブ34cを閉じ、雰囲気ガスから水素ガスHが分離されて排出されないようにして、水素ガスHが除去されていない状態で雰囲気ガスを前記の循環ポンプ31により吸引し、前記の循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0092】
ここで、このように浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させると、前記のように浸炭処理室3内において水素ガスHが発生し、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガスH濃度が次第に増加して、COガス濃度が減少するようになる。
【0093】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が次第に増加し、前記の水素ガス濃度測定器9によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が前記の浸炭適正濃度を超えた場合には、図4に示すように、前記の制御装置7により、前記の水素ガス案内管34bの排気制御バルブ34cを開けて、水素ガス分離装置34によって分離された水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、前記の循環ポンプ31により吸引し、循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0094】
ここで、前記のように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置34によって分離させて排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0095】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の図3に示すように、前記の制御装置7により、前記の水素ガス案内管34bの排気制御バルブ34cを閉じて、雰囲気ガスから水素ガスHが分離させて排出されないようにし、水素ガスHが除去されていない状態で雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0096】
このようにした結果、実施形態2Bにおける浸炭処理装置においても、前記の実施形態2Aにおける浸炭処理装置と同様の効果が得られる。
【0097】
[実施形態3A]
実施形態3Aにおける浸炭処理装置においても、図5に示すように、前記の実施形態1A等の浸炭処理装置と同様に、処理材Wを、第1扉1aを通して導入室2内に導いた後、導入室2内に導かれた処理材Wを、第2扉1bを通して浸炭処理室3内に導入させて、処理材Wを浸炭処理室3内において浸炭処理するにようにしている。
【0098】
そして、この実施形態3Aにおける浸炭処理装置においても、前記の浸炭処理室3内に、COガスと水素ガスHとを含むキャリアガスCGを流量調整弁4aにより流量を調整しながらキャリアガス供給管4を通して供給すると共に、都市ガスやプロパンガスやブタンガス等の炭化水素ガスC2n+2を主成分とするエンリッチガスEGを流量調整弁5aにより流量を調整しながらエンリッチガス供給管5を通して供給するようにし、浸炭処理室3に設けた攪拌ファン3aにより、浸炭処理室3内に供給された前記のキャリアガスCGとエンリッチガスEGとを攪拌させると共に、浸炭処理室3内に導かれた前記の処理材Wを加熱させて、処理材Wの表面に炭素を付与し、このように処理材Wの表面に付与された炭素を処理材Wの内部に拡散させて浸炭させるようにしている。
【0099】
また、この実施形態3Aにおける浸炭処理装置においても、前記の実施形態1A等における浸炭処理装置と同様に、浸炭処理室3内における雰囲気ガスの量が過剰になった場合に、この浸炭処理室3内における雰囲気ガスの一部を外部に排出させるように、この浸炭処理室3に排気調整弁8aが途中に設けられた排気管8を設け、この排気管8に導かれた雰囲気ガスの一部を外部で燃焼させるようにしている。
【0100】
ここで、この実施形態3Aにおける浸炭処理装置においては、前記の実施形態2Aにおける浸炭処理装置と同様に、図5に示すように、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを浸炭処理室3内から取り出して循環させる1つの循環路30を設けている。
【0101】
そして、前記の循環路30においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを吸引して循環させるための循環ポンプ31を設け、この循環ポンプ31により、浸炭処理室3内から取り出して循環路30に導かれた雰囲気ガスを冷却装置33に導いて冷却させ、このように冷却装置33によって冷却させた雰囲気ガスを、水素ガスHを雰囲気ガスから分離させる水素ガス分離装置34に導き、この水素ガス分離装置34によって分離された水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ34aによって水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHが除去された雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すようにしている。
【0102】
ここで、この実施形態3Aにおける浸炭処理装置においては、前記のように循環路30に導かれた雰囲気ガスを冷却装置33に導いて冷却させ、このように冷却装置33によって冷却させた雰囲気ガスを前記の水素ガス分離装置34に導くにあたり、水素ガス分離装置34の上流側の位置に流量調整バルブ36を設け、COガス濃度測定器6によって検知された浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度に基づいて、制御装置7により前記の流量調整バルブ36を制御して、前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を調整するようにしている。
【0103】
そして、この実施形態3Aにおける浸炭処理装置において、浸炭処理により、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が次第に減少し、前記のCOガス濃度測定器6によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が前記の浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置7により前記の流量調整バルブ36を調整し、前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を増加させ、分離させた水素ガスHを水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、前記の循環ポンプ31により吸引し、循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0104】
ここで、前記のように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置34によって分離させて排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0105】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の制御装置7により前記の流量調整バルブ36を調整し、前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を減少させて、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を調整し、雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度になるように維持させて、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0106】
ここで、この実施形態3Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを、循環路30を通して循環させるにあたり、前記のように制御装置7により前記の流量調整バルブ36を調整し、前記の水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させて排気させる水素ガスHの量を必要なときだけ制御するようにしたため、従来のように水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するのに比べ、高価な水素透過フィルター35の劣化が遅くなり、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0107】
また、COガス濃度を測定して制御したことにより、浸炭処理室3内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0108】
そして、雰囲気ガスから水素成分を除去して炭素成分を再利用したため、高価なキャリアガスCGとエンリッチガスEGを供給する量や、浸炭に寄与しないまま排気管8から燃焼させて排出する量が削減でき、ランニングコストや環境汚染が低減できる。
【0109】
[実施形態3B]
実施形態3Bにおける浸炭処理装置においては、前記の実施形態3Aにおける浸炭処理装置において、図5にかっこ書き()で示すように、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器6に代えて、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器9を設けるようにし、それ以外は、前記の実施形態3Aにおける浸炭処理装置と同様に構成した。
【0110】
ここで、この実施形態3Bにおける浸炭処理装置において、浸炭処理により、次第に浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が減少する一方、水素ガス濃度が増加して、前記の水素ガス濃度測定器9によって検知されて制御装置7に出力された雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置7により前記の流量調整バルブ36を制御し、前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を増加させ、このように分離させた水素ガスHを水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、前記の循環ポンプ31により吸引し、循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0111】
ここで、前記のように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置34によって分離させて排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加する一方、水素ガス濃度が減少するようになる。
【0112】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が減少して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の制御装置7により前記の流量調整バルブ36を調整し、前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を減少させて、雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を減少させ、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度になった状態で、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0113】
この結果、実施形態3Bにおける浸炭処理装置においても、前記の実施形態3Aにおける浸炭処理装置と同様の効果が得られる。
【0114】
[実施形態4A]
実施形態4Aにおける浸炭処理装置においても、図6に示すように、前記の実施形態1A等の浸炭処理装置と同様に、処理材Wを、第1扉1aを通して導入室2内に導いた後、導入室2内に導かれた処理材Wを、第2扉1bを通して浸炭処理室3内に導入させて、処理材Wを浸炭処理室3内において浸炭処理するにようにしている。
【0115】
そして、この実施形態4Aにおける浸炭処理装置においても、前記の浸炭処理室3内に、COガスと水素ガスHとを含むキャリアガスCGを流量調整弁4aにより流量を調整しながらキャリアガス供給管4を通して供給すると共に、都市ガスやプロパンガスやブタンガス等の炭化水素ガスC2n+2を主成分とするエンリッチガスEGを流量調整弁5aにより流量を調整しながらエンリッチガス供給管5を通して供給するようにし、浸炭処理室3に設けた攪拌ファン3aにより、浸炭処理室3内に供給された前記のキャリアガスCGとエンリッチガスEGとを攪拌させると共に、浸炭処理室3内に導かれた前記の処理材Wを加熱させて、処理材Wの表面に炭素を付与し、このように処理材Wの表面に付与された炭素を処理材Wの内部に拡散させて浸炭させるようにしている。
【0116】
また、この実施形態4Aにおける浸炭処理装置においても、前記の実施形態1A等における浸炭処理装置と同様に、浸炭処理室3内における雰囲気ガスの量が過剰になった場合に、この浸炭処理室3内における雰囲気ガスの一部を外部に排出させるように、この浸炭処理室3に排気調整弁8aが途中に設けられた排気管8を設け、この排気管8に導かれた雰囲気ガスの一部を外部で燃焼させるようにしている。
【0117】
ここで、この実施形態4Aにおける浸炭処理装置においては、前記の実施形態2A,3Aにおける浸炭処理装置と同様に、図6に示すように、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを浸炭処理室3内から取り出して循環させる1つの循環路30を設けている。
【0118】
そして、前記の循環路30においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを吸引して循環させるための循環ポンプ31を設け、循環ポンプ31により、浸炭処理室3内から取り出して循環路30に導かれた雰囲気ガスを冷却装置33に導いて冷却させ、このように冷却装置33によって冷却させた雰囲気ガスを、水素ガスHを雰囲気ガスから分離させる水素ガス分離装置34に導き、この水素ガス分離装置34によって分離された水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHが除去された雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すようにしている。
【0119】
ここで、この実施形態4Aにおける浸炭処理装置においては、前記のように浸炭処理室3内における雰囲気ガスを循環ポンプ31により循環路30を通して循環させるにあたり、循環ポンプ31の出力を調整する出力調整装置32を設け、COガス濃度測定器6によって検知された浸炭処理室3内における雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度に基づいて、制御装置7により前記の出力調整装置32を調整し、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを循環ポンプ31によって循環路30を通して前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を制御するようにしている。
【0120】
そして、この実施形態4Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理によって浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が次第に減少し、前記のCOガス濃度測定器6によって検知されて制御装置7に出力された浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が前記の浸炭適正濃度未満になった場合には、前記の制御装置7により前記の出力調整装置32を調整し、前記の循環ポンプ31により、循環路30を通して前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を増加させ、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を増加させて、分離させた水素ガスHを、水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0121】
ここで、前記のように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置34により分離させて排出させる量が多くなると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加するようになる。
【0122】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の制御装置7により前記の出力調整装置32を調整して、前記の循環ポンプ31により、循環路30を通して前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を減少させて、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を調整し、雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が浸炭適正濃度になるように維持させて、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0123】
この実施形態4Aにおける浸炭処理装置においては、浸炭処理室3内における雰囲気ガスを、循環ポンプ31により循環路30を通して循環させるにあたり、前記のように制御装置7により出力調整装置32を調整して、前記の循環ポンプ31により、浸炭処理室3内から循環路30を通して前記の水素ガス分離装置34に導かれる雰囲気ガスの量を調整し、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させて排気させる水素ガスHの量を必要なときだけ制御するようにしたため、従来のように水素ガス分離装置に設けた水素透過フィルターを常時使用するのに比べ、高価な水素透過フィルター35の劣化が遅くなり、その清掃や交換に必要な費用と手間が削減できる。
【0124】
また、COガス濃度を測定して制御したことにより、浸炭処理室3内の雰囲気ガスにおけるCOガス濃度を、浸炭処理に適した浸炭適正濃度に安定して維持できるようになる。
【0125】
そして、雰囲気ガスから水素成分を除去して炭素成分を再利用したため、高価なキャリアガスCGとエンリッチガスEGを供給する量や、浸炭に寄与しないまま排気管8から燃焼させて排出する量が削減でき、ランニングコストや環境汚染が低減できる。
【0126】
[実施形態4B]
実施形態4Bにおける浸炭処理装置においては、前記の実施形態4Aにおける浸炭処理装置において、図6にかっこ書き()で示すように、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度を検知するCOガス濃度測定器6に代えて、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度を検知する水素ガス濃度測定器9を設けるようにし、それ以外は、前記の実施形態4Aにおける浸炭処理装置と同様に構成した。
【0127】
ここで、この実施形態4Bにおける浸炭処理装置において、浸炭処理により、次第に浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が減少する一方、水素ガス濃度が増加して、前記の水素ガス濃度測定器9によって検知されて制御装置7に出力された雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度を超えた場合には、前記の制御装置7により前記の出力調整装置32を制御し、前記の循環ポンプ31により、循環路30を通して前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を増加させて、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を増加させ、このように分離させた水素ガスHを水素ガス吸引ポンプ34aにより水素ガス案内管34bを通して吸引して排出させる一方、水素ガスHを分離させた後の雰囲気ガスを、循環路30を通して浸炭処理室3内に戻して、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0128】
ここで、前記のように雰囲気ガスに含まれる水素ガスHを水素ガス分離装置34によって分離させて排出させると、残りの雰囲気ガスに含まれるCOガスの割合が多くなり、このようにCOガスの割合が多くなった残りの雰囲気ガスを浸炭処理室3内に戻すと、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれるCOガス濃度が増加する一方、水素ガス濃度が減少するようになる。
【0129】
そして、このように浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が減少して、浸炭処理室3内の雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度になると、前記の制御装置7により前記の出力調整装置32を調整して、前記の循環ポンプ31により、循環路30を通して前記の水素ガス分離装置34に導く雰囲気ガスの量を減少させて、水素ガス分離装置34により雰囲気ガスから分離させる水素ガスHの量を調整し、雰囲気ガスに含まれる水素ガス濃度が浸炭適正濃度になるように維持させて、浸炭処理室3内において処理材Wを浸炭処理させるようにする。
【0130】
この結果、実施形態4Bにおける浸炭処理装置においても、前記の実施形態4Aにおける浸炭処理装置と同様の効果が得られる。
【0131】
なお、前記の各実施形態においては、浸炭に必要なガスをキャリアガスCGとエンリッチガスEGの2種類で説明したが、浸炭に必要な浸炭ガスは1種類でも3種類以上であってもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0132】
1a :第1扉
1b :第2扉
2 :導入室
3 :浸炭処理室
3a :攪拌ファン
4 :キャリアガス供給管
4a :流量調整弁
5 :エンリッチガス供給管
5a :流量調整弁
6 :COガス濃度測定器
7 :制御装置
8 :排気管
8a :排気調整弁
9 :水素ガス濃度測定器
10 :第1循環路
11 :第1循環ポンプ
12 :第1取出しバルブ
13 :冷却装置
14 :水素ガス分離装置
14a :水素ガス吸引ポンプ
14b :水素ガス案内管
15 :水素透過フィルター
20 :第2循環路
21 :第2循環ポンプ
22 :第2取出しバルブ
23 :冷却装置
30 :循環路
31 :循環ポンプ
32 :出力調整装置
33 :冷却装置
34 :水素ガス分離装置
34a :水素ガス吸引ポンプ
34b :水素ガス案内管
34c :排気制御バルブ
35 :水素透過フィルター
36 :流量調整バルブ
CG :キャリアガス
EG :エンリッチガス
:水素ガス
W :処理材
図1
図2
図3
図4
図5
図6