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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】眼科用製剤のための薬剤パッケージ
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/08 20060101AFI20240205BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240205BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240205BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240205BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A61K9/08
A61J1/06 G
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/26
A61M5/28
A61P27/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018524228
(86)(22)【出願日】2016-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 US2016062885
(87)【国際公開番号】W WO2017087871
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】62/257,208
(32)【優先日】2015-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512082716
【氏名又は名称】エスアイオーツー・メディカル・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】2250 Riley Street,Auburn,Alabama 36832 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ヴァイカルト
(72)【発明者】
【氏名】マリー・スティーブン・ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ピエール・ジロー
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】渕野 留香
【審判官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/164928(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/054282(WO,A2)
【文献】特開2006-167110(JP,A)
【文献】特開2005-73930(JP,A)
【文献】特開2004-321614(JP,A)
【文献】特開2009-84203(JP,A)
【文献】特表2006-519070(JP,A)
【文献】特表2016-504496(JP,A)
【文献】特開2014-28114(JP,A)
【文献】特開2012-210315(JP,A)
【文献】ノバルティスファーマ株式会社,医薬品インタビューフォーム「ルセンティス(R)硝子体内注射液10mg/mL、ルセンティス硝子体内注射用キット10mg/mL」,2014年11月改訂(改訂第10版))(当審注:上記(R)は、原文は上付きで○の中にR)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-47/69
A61J 1/00-1/22
A61M5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
●内腔の少なくとも一部を囲む内部表面と、外部表面と、壁の少なくとも前記内部表面上の皮膜セットとを有する熱可塑性の壁を有する容器、例えば、シリンジバレル、又は、カートリッジ、であって、前記皮膜セットは、以下:
○SiOxyz(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を含み、壁に面する対向面を有し、また、前記壁と反対の方向に面する反対面を有する、前記内部表面又は前記外部表面上のタイコート皮膜又は層と;
○SiOx(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5~約2.9である)のバリア皮膜又は層であって、前記タイコート皮膜又は層の前記反対面に面する対向面と、前記タイコート皮膜又は層と反対の方向に面する反対面とを有する、前記バリア皮膜又は層と;
○SiOxyz(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)のpH保護皮膜又は層であって、前記バリア層の前記反対面に面する対向面と前記バリア層と反対の方向に面する反対面を有する、前記pH保護皮膜又は層とを含み;
●前記内腔内に、VEGF阻害薬を含み、且つ、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤、ここで、前記液体製剤が、25℃かつ相対湿度60%、又は40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間保管した後、(i)10μm以上のサイズを有する粒子を50個/165μl未満、(ii)25μm以上のサイズを有する粒子を5個/165μl未満、又は、(iii)(i)と(ii)の両方を含む;及び
●前記液体製剤に面した前面を有する前記内腔内に配置されたクロージャ、例えば、プランジャ又はストッパ
を含む、プレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項2】
液体製剤を保存するためのシリンジの使用であって、前記シリンジは、シリンジバレルとクロージャとを含み、
前記シリンジバレルは、内腔の少なくとも一部を囲む内部表面と、外部表面と、壁の少なくとも前記内部表面上の皮膜セットとを有する熱可塑性の壁を有するシリンジバレル、であって、前記皮膜セットは、以下:
○SiOxyz(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を含み、壁に面する対向面を有し、また、前記壁と反対の方向に面する反対面を有する、前記内部表面又は前記外部表面上のタイコート皮膜又は層と;
○SiOx(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5~約2.9である)のバリア皮膜又は層であって、前記タイコート皮膜又は層の前記反対面に面する対向面と、前記タイコート皮膜又は層と反対の方向に面する反対面とを有する、前記バリア皮膜又は層と;
○SiOxyz(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)のpH保護皮膜又は層であって、前記バリア層の前記反対面に面する対向面と前記バリア層と反対の方向に面する反対面を有する、前記pH保護皮膜又は層とを含み;及び
前記クロージャは、前記液体製剤に面した前面を有する前記内腔内に配置されたクロージャ、例えば、プランジャ又はストッパであり
前記シリンジは、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤を前記内腔内に保存するための、プレフィルドシリンジとして使用するための物であり、前記液体製剤はVEGF阻害薬を含み、前記シリンジは、硝子体内注射に適した前記眼科用薬剤が、25℃かつ相対湿度60%、又は40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間保管した後、(i)10μm以上のサイズを有する粒子を50個/165μl未満、(ii)25μm以上のサイズを有する粒子を5個/165μl未満、又は、(iii)(i)と(ii)の両方を含むことを達成することができる、シリンジの使用。
【請求項3】
前記pH保護皮膜又は層と前記内腔との間に配置された滑性皮膜又は層を更に含み、前記滑性皮膜又は層がSiOxyzの原子割合を有し、xが、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yが、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zが、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である、請求項1に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項4】
前記pH保護皮膜又は層と前記内腔との間に配置された滑性皮膜又は層を更に含み、前記滑性皮膜又は層がSiOxyzの原子割合を有し、xが、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yが、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zが、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である、請求項2に記載のシリンジの使用。
【請求項5】
前記滑性皮膜又は層が、有機ケイ素化合物前駆体からPECVDによって調製される、請求項1、3のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項6】
前記滑性皮膜又は層が、前記有機ケイ素前駆体としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)から、PECVDによって調製される、請求項5に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項7】
前記内腔内に配置された前記クロージャの前記前面が、フルオロポリマー皮膜又は層で被覆され、前記前面が前記液体製剤に面している、請求項1、3、5~6のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項8】
0.2ml~10mL、あるいは0.2~1.5mL、あるいは0.5ml~1.0ml、あるいは0.5ml、1.0ml、3mL又は5mLの公称最大充填容量を有する、請求項1に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項9】
前記プランジャの前記前面が、フルオロポリマー表面、任意選択的に成形フルオロポリマー表面、又はフルオロポリマー皮膜若しくは層、例えば、積層フルオロポリマーフィルム、例えばポリテトラフルオロエチレン若しくはテトラフルオロエチレンとエチレンのコポリマー、又はフルオロポリマー皮膜、を有する、請求項1又は3に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項10】
前記VEGF阻害薬が、ラニビズマブを含む、請求項1、3、5~9のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項11】
前記VEGF阻害薬が、抗VEGF抗体又はそのような抗体の抗原結合断片を含む、請求項5に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項12】
硝子体内注射に適した眼科用薬剤の前記液体製剤の濃度が、1mlの前記液体製剤あたり1~100mgの薬物活性剤(mg/ml)、あるいは2~75mg/ml、あるいは3~50mg/ml、あるいは5~30mg/ml、あるいは6mg/ml又は10mg/mlである、請求項1、3、5~11のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項13】
硝子体内注射に適した眼科用薬剤の前記液体製剤が、6mg/mL、あるいは10mg/mLの前記眼科用薬剤を含む、請求項1、3、5~12のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項14】
硝子体内注射に適した前記眼科用薬剤が、
●約5~約7の範囲の前記液体製剤のpHを提供するのに有効な量の緩衝液;
前記液体製剤の0.005~0.02%mg/mLの範囲の、あるいは0.007~0.018%mg/mLの範囲の、あるいは0.008~0.015%mg/mLの範囲の、あるいは0.009~0.012%mg/mLの範囲の、あるいは0.009~0.011%mg/mLの範囲の、あるいは0.01%mg/mLの非イオン性界面活性剤;及び
●注射用水
を更に含む、請求項1、3、5~13のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項15】
硝子体内注射に適した前記眼科用薬剤が、注射用水中、6mg/mL、あるいは10mg/mLの前記活性薬剤;100mg/mLのα,α-トレハロース二水和物、1.98mg/mLのL-ヒスチジン;及び0.1mg/mLのポリソルベート20を含む、請求項1、3、5~14のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項16】
5℃の温度、あるいは25℃の温度で測定して、少なくとも6ヶ月、あるいは少なくとも12ヶ月、あるいは少なくとも18ヶ月、あるいは24ヶ月の保管寿命を有する、請求項1、3、5~15のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項17】
前記プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面上にシリコーンオイルを有しない、請求項1、3、5~16のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項18】
前記プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面上に焼付シリコーンを有しない、請求項1、3、5~17のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項19】
前記皮膜セットを有する前記熱可塑性の壁を有する前記容器がシリンジバレルであり、前記内腔内に配置された前記クロージャがプランジャであり、前記薬剤パッケージが前記バレルと前記プランジャとを含むシリンジであって、前記シリンジは前記プランジャを前記内腔内で前進させるために10N以下のプランジャ摺動力を有する、請求項1、3、5~18のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項20】
前記皮膜セットを有する前記熱可塑性の壁を有する前記容器がシリンジバレルであり、前記内腔内に配置された前記クロージャがプランジャであり、前記薬剤パッケージが前記バレルと前記プランジャとを含むシリンジであって、前記シリンジは前記内腔内での前記プランジャの移動を開始させるために15N以下、任意選択的に10N以下のブレークアウト力を有する、請求項1、3、5~19のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項21】
前記熱可塑性の壁が、ポリオレフィン、例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、若しくはポリプロピレン;ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;又はこれらのうちいずれか2つ以上の任意の組合せ若しくはコポリマー、任意選択的に、環状オレフィンポリマー(COP)樹脂を含む、請求項1、3、5~20のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項22】
●前記タイコート皮膜又は層が、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、5~200nm(ナノメートル)、あるいは5~100nm、あるいは5~50nm、あるいは約38nmの厚さのSiOxyzを含み;
●SiOxの前記バリア皮膜又は層が、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、2~1000nm、あるいは4nm~500nm、あるいは10~200nm、あるいは20~200nm、あるいは30~100nm、あるいは約55nmの厚さであり;及び
●SiOxyzの前記pH保護皮膜又は層が、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、約10~1000nm、あるいは20nm~800nm、あるいは50nm~600nm、あるいは100nm~500nm、あるいは200nm~400nm、あるいは250nm~350nm、あるいは約270nm、あるいは約570nmの厚さである、
請求項1、3、5~21のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項23】
前記皮膜セットを有する前記熱可塑性の壁を有する前記容器が0.5mL又は1mL容積を有するシリンジバレルであり、前記熱可塑性の壁が環状オレフィンポリマー(COP)から製造され、前記内腔内に配置された前記クロージャが、フルオロポリマーで被覆されたプランジャ前面を有するプランジャである、請求項1、3、5~22のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項24】
前記熱可塑性の壁の前記内部表面上に前記皮膜セットを、前記熱可塑性の壁の前記外部表面上に耐擦傷性皮膜を含む、請求項1、3、5~23のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項25】
前記耐擦傷性皮膜が、
●XPSで測定した以下のSi、O、及びCの原子比を有するPECVD塗布皮膜:
○Si=1、
○O=0.7~1、及び
○C=1.1~1.5;
●固体皮膜又は層を形成するために湿式化学で塗布されたフィルム;
●又はその両方
を含む、請求項24に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項26】
眼疾患を有する患者に硝子体内注射によって眼科用薬剤の液体製剤を投与する際に使用するための、請求項1、3、5~25のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤であって、前記眼疾患が、任意選択的に、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害からなる群から選択される、プレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【請求項27】
前記液体製剤の容量30~100μlが前記患者に投与される、請求項26に記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年11月18日出願の米国仮特許出願第62/257,208号明細書の優先権を主張する。開示の連続性を提供するために、米国仮特許出願第62/257,208号明細書及び以下の特許出願それぞれの明細書全体及び全図面が参照により本明細書に援用される:2013年3月11日出願の米国仮特許出願第61/776,733号明細書;2013年3月15日出願の米国仮特許出願第61/800,746号明細書;米国特許第7,985,188号明細書;2014年3月11日出願のPCT国際出願第PCT/US14/23813号パンフレット;及びPCT国際公開第2014085348(A2)号パンフレット、第2014164928(A1)号パンフレット、第2014/005728A1号パンフレット、及び第2015/071,348号パンフレット。開示の連続性を提供するために、これらの特許出願のそれぞれの明細書全体及び全図面が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、一般に、硝子体内注射(眼の硝子体への薬剤の注射)のための、プレフィルド薬剤パッケージ、例えばプレフィルドシリンジにおけるVEGF阻害薬の液体製剤に関する。そのような薬剤パッケージは、薬物の液体製剤、例えば、VEGF阻害薬、例えばラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの保管及び硝子体内投与に適している。
【背景技術】
【0003】
加齢性黄斑変性症及び糖尿病性黄斑浮腫などの眼疾患は、眼の血管の成長が制御されないことによって引き起こされる。したがって、これら及び類似の疾患を処置するための1つの選択肢は、眼の血管新生を阻害することである。VEGFは、血管新生の刺激における重要な因子であるため、血管新生を減少させるための魅力的な標的である。これら及び他の眼疾患の多くの処置は、液体医薬製剤の硝子体内注射を必要とする。
【0004】
「硝子体内注射」という用語は、物質が眼に直接注射される医薬組成物の投与を指す。より具体的には、物質は、ヒト及び他の脊椎動物の眼球のレンズと網膜との間の空間を満たす透明なゲルである硝子体液(硝子体(vitreous body)又は単に硝子体(vitreous)とも呼ばれる)に注入される。
【0005】
国際公開第2014/005728A1号パンフレットは、VEGF阻害薬を含有するプレフィルドシリンジを開示する。シリンジは低いシリコーンオイル含量を有する。本文書の開示全体は、ガラスシリンジの使用に焦点を当てており、したがって、少量のシリコーンオイルがシリンジ内に存在しなければならないことを教示する。
【0006】
現在、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ注射)は、米国及び欧州で承認された、例えば、糖尿病性黄斑浮腫の処置のための、硝子体内注射のための薬剤である。これは、ガラス製のバイアルにパッケージされた状態で入手可能である。最近では、プレフィルドラニビズマブシリンジが欧州医薬品庁(EMA)によって承認された。シリンジバレルは、シリコン水中油エマルジョンでスプレーコートされ、続いて熱固定された(いわゆる「焼付シリコーン」)ホウケイ酸ガラスからなる(Clunasらによる第5回World Congress on Controversies in Ophthalmologyでのポスター発表、2014年3月20~23日;ARVO年次総会2014でのMichaudらのポスター発表)。
【0007】
プレフィルドシリンジは、利便性、手頃な価格、精度、無菌性、及び安全性の向上など、バイアル及び別個に提供されるシリンジと比較して多くの利点を有する。プレフィルドシリンジの使用は、より高い用量精度、バイアルから薬剤を引き出す間に起こりうる針刺し事故の可能性の低減、薬剤をシリンジ内へ再構成及び/又は引き出す必要があることで生じる投与エラーを減少させる予め測定された用量、及び薬剤の浪費を最小限に抑えることでコスト削減に役立つ、より少ないシリンジの過充填をもたらす。
【0008】
従来のガラス薬剤パッケージ(プレフィルドシリンジを含む)は、製造、充填作業、発送及び使用中に破損又は劣化しやすく、これはガラス微粒子が薬物に入る可能性があることを意味する。
【0009】
更に、ガラスプレフィルドシリンジは、シリコーン化として一般に知られるプロセスによりシリコーンで処理されて、ガラスバレル内のクロージャの正確な移動を可能にし、それによって効果的かつ正確な薬物送達を可能にする。従来のガラス薬剤パッケージのシリコーン化は、クロージャをパッケージ内に挿入すること、又は薬物を分注するためにシリンジを通してプランジャを前進させることを容易にするために使用されてきた。しかしながら、シリコーン化は、シリコーン粒子の薬物への導入をもたらし得る。この問題は、従来のシリコーンオイルの皮膜を用いるか焼付シリコーン皮膜を用いるかにかかわらず観察されてきた。また、認可されたラニビズマブ・プレフィルド・シリンジのようなガラスシリンジは、プラスチックシリンジに比べて比較的大きな重量を有する。
【0010】
硝子体内に薬物を投与する場合、飛蚊症として見えるか、そうでなければ患者の視力を妨げる、眼の硝子体内への粒子の導入を最小限に抑えることが非常に重要である。硝子体内注射のための製剤中の粒子の量及びサイズを制限する基準(例えば、USP789又はPh.Eur 5.7.1)は、厳格である。それにもかかわらず、VEGF阻害薬の硝子体内投与後に硝子体腔にシリコーン液滴が生じることが示され、シリコーンは注射に使用される針及びシリンジに由来すると仮定された(Bakri and Ekdawi(2008)Retina 28: 996-1001)。
【0011】
更に、ガラスシリンジにステッチイン針を取り付けるために必要な接着剤は、不純物やタンパク質酸化の増加につながり得る(2011 PDA Europe The Universe of Pre-Filled Syringes and Injection DevicesでのAdlerの発表、バーゼル、2011年11月7日~11日;PDA Single Use Systems WorkshopでのMarkovicの発表、ベセスダ、2011年6月22日~23日)。
【0012】
更に、ガラスプレフィラブルシリンジの製造中、通常はタングステンピンが使用される。プレフィルドガラスシリンジ中に見られる可溶性タングステンは、タンパク質凝集及びタンパク質酸化につながることが示されてきた(Liuら(2010)PDA J.Pharm.Sci.Technol.64(1):11-19;Seidlら(2012)Pharm.Res.29:1454-1467)。
【0013】
幾つかの非ガラスプレフィルドシリンジが記載されてきた。国際公開第2011/117878A1号パンフレットは、ポリカーボネートシリンジを開示している。国際公開第2009/099641A2号パンフレットは、環状オレフィンポリマーシリンジを開示している。
【0014】
硝子体内注射のためのプレフィルドシリンジは、通常、目の微生物感染の危険性を低減するために、エチレンオキシドなどの酸化性ガスを使用して最終的に滅菌される。プラスチックは滅菌のために使用されるガスの透過性があるため、プラスチック製のシリンジバレルは、典型的には最終滅菌に適さない。プレフィルドシリンジに入るガスは、シリンジに収容される薬物と化学的に反応して、薬物の安定性を著しく低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、内腔を有する容器、内腔内の硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤、及び内腔内に配置されたクロージャ、例えば、プランジャ又はストッパ、を含む、プレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0016】
容器は、例えば、シリンジバレル、カートリッジ、又はバイアルであり得る。容器は、内腔の少なくとも一部を囲む内部表面と、外部表面と、壁の内部表面及び外部表面の少なくとも一方上の皮膜セットとを有する熱可塑性の壁を有する。皮膜セットは、タイコート皮膜又は層、バリア皮膜又は層、任意選択的にpH保護皮膜又は層、及び任意選択的に滑性皮膜又は層を含み得る。
【0017】
タイコート皮膜又は層は、内部表面又は外部表面上に形成することができる。これはSiOxyz組成物(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を有する。タイコート皮膜又は層は、壁に面する対向面と、壁と反対の方向に面する反対面とを有する。
【0018】
バリア皮膜又は層は、SiOx組成物(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5~約2.9である)を有する。バリア皮膜又は層は、タイコート皮膜又は層の反対面に面する対向面と、タイコート皮膜又は層と反対の方向に面する反対面とを有する。
【0019】
pH保護皮膜又は層は、存在する場合、SiOxyz組成物(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を有する。pH保護皮膜又は層は、存在する場合、バリア皮膜又は層の反対面に面する対向面と、バリア皮膜又は層と反対の方向に面する反対面とを有する。
【0020】
クロージャ、例えば、プランジャ又はストッパ、が内腔内に配置される。これは、液体製剤に面する前面を有する。
【0021】
本発明の別の態様は、封止された外側パッケージに収容された、上記で特定される1つ以上のプレフィルド薬剤パッケージを含むキットである。プレフィルド薬剤パッケージは無菌であり、熱可塑性の壁は残留エチレンオキシドを含む。任意選択的に、封止された外側パッケージは、エチレンオキシド滅菌剤に対して透過性である。任意選択的に、内腔は、エチレンオキシドを実質的に含まず、好ましくは含まない。
【0022】
本発明の更に別の態様は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法であって、上記プレフィルド薬剤パッケージに収容される眼科用薬剤の液体製剤の硝子体内注射の投与を含む。
【0023】
本発明の更に別の態様は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上の処置のための上記プレフィルド薬剤パッケージの製造における眼科用薬剤の液体製剤の使用である。
【0024】
本発明の更に別の態様は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法における使用のための上記のようなプレフィルドシリンジである。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態は、以下の項目のいずれか一項に関し、アラビア数字を用いて表される数は、ここにローマ数字で表される対応する数と任意選択的に置換することができ、同じ意味を有する。
【0026】
項目Iは、以下を含むプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である:
●内腔の少なくとも一部を囲む内部表面と、外部表面と、壁の内部表面及び外部表面の少なくとも一方上の皮膜セットとを有する熱可塑性の壁を有する容器、例えば、シリンジバレル、カートリッジ、又はバイアル、であって、皮膜セットは、以下を含む:
○SiOxyz(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を含み、壁に面する対向面を有し、また、壁と反対の方向に面する反対面を有する、内部表面又は外部表面上のタイコート皮膜又は層と;
○SiOx(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5~約2.9である)のバリア皮膜又は層であって、タイコート皮膜又は層の反対面に面する対向面と、タイコート皮膜又は層と反対の方向に面する反対面とを有する、バリア皮膜又は層と;
○任意選択的に、SiOxyz(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)のpH保護皮膜又は層であって、存在する場合、バリア層の反対面に面する対向面とバリア層と反対の方向に面する反対面を有する、pH保護皮膜又は層とを含み;
●内腔内に、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤;及び
●液体製剤に面した前面を有する内腔内に配置されたクロージャ、例えば、プランジャ又はストッパ。
【0027】
項目IIは、0.2ml~10ml、あるいは0.2~1.5ml、あるいは0.5ml~1.0ml、あるいは0.5ml、1.0ml、3mL又は5mLの公称最大充填容量を有する、項目Iに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0028】
項目IIIは、プランジャの前面が、フルオロポリマー表面、任意選択的に成形フルオロポリマー表面、又はフルオロポリマー皮膜若しくは層、例えば、積層フルオロポリマーフィルム又はフルオロポリマー皮膜、を有する、項目I又はIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0029】
項目IVは、硝子体内注射に適した眼科用薬剤が、VEGF阻害薬を含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0030】
項目Vは、VEGF阻害薬が、抗VEGF抗体又はそのような抗体の抗原結合断片を含む、項目IVに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0031】
項目VIは、VEGF阻害薬が、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ベバシズマブ、又はこれらの2種以上の組合せ、任意選択的にラニビズマブ、を含む、項目IVに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0032】
項目VIIは、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤の濃度が、1mlの液体製剤あたり1~100mgの薬物活性剤(mg/ml)、あるいは2~75mg/ml、あるいは3~50mg/ml、あるいは5~30mg/ml、あるいは6mg/ml又は10mg/mlである、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0033】
項目VIIIは、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤が、6mg/mL、あるいは10mg/mLのラニビズマブを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0034】
項目IXは、硝子体内注射に適した眼科用薬剤が、更に以下を含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である:
●約5~約7の範囲の液体製剤のpHを提供するのに有効な量の緩衝液;
●0.005~0.02%mg/mLの完全製剤、あるいは0.007~0.018%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.008~0.015%mgの完全製剤、あるいは0.009~0.012%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.009~0.011%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.01%mg/mLの完全製剤の非イオン性界面活性剤;及び
●注射用水。
【0035】
項目Xは、硝子体内注射に適した眼科用薬剤が、1.0mLにメスアップした注射用水中、6mg/mL、あるいは10mg/mLのラニビズマブ;100mg/mLのα,α-トレハロース二水和物、1.98mg/mLのL-ヒスチジン;及び0.1mg/mLのポリソルベート20を含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0036】
項目XIは、5℃の温度、あるいは25℃の温度で測定して、少なくとも6ヶ月、あるいは少なくとも12ヶ月、あるいは少なくとも18ヶ月、あるいは24ヶ月の保管寿命を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0037】
項目XIIは、プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面上にシリコーンオイルを有しない、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0038】
項目XIIIは、プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面上に焼付シリコーンを有しない、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0039】
項目XIVは、バレルとプランジャとを含むシリンジであって、シリンジはプランジャを内腔内で前進させるために10N以下のプランジャ摺動力を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0040】
項目XVは、バレルとプランジャとを含むシリンジであって、シリンジは内腔内でのプランジャの移動を開始させるために10N以下のブレークアウト力を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0041】
項目XVIは、硝子体内注射に適した眼科用薬剤が、プレフィルドシリンジの充填時、あるいはプレフィルドシリンジを4~8℃で3ヶ月間保管した後、あるいはプレフィルドシリンジを25℃、相対湿度60%で3ヶ月間保管した後、あるいはプレフィルドシリンジを40℃、相対湿度75%で3ヶ月保管した後に、2015年11月1日に効力を有するUSP789若しくは2015年11月1日に効力を有するPh.Eur5.7.1のいずれか、又はその両方の、眼科用溶液中の粒子状物質の粒子数基準に合致する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0042】
項目XVIIは、熱可塑性の壁が、ポリオレフィン、例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、若しくはポリプロピレン;ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;又はこれらのうちいずれか2つ以上の任意の組合せ若しくはコポリマー、任意選択的に、環状オレフィンポリマー(COP)樹脂を含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0043】
項目XVIIIは、
●タイコート皮膜又は層が、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、5~200nm(ナノメートル)、あるいは5~100nm、あるいは5~50nm、あるいは約38nmの厚さのSiOxyzを含み;
●SiOxのバリア皮膜又は層が、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、2~1000nm、あるいは4nm~500nm、あるいは10~200nm、あるいは20~200nm、あるいは30~100nm、あるいは約55nmの厚さであり;及び
●SiOxyzのpH保護皮膜又は層が、存在する場合、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、約10~1000nm、あるいは20nm~800nm、あるいは50nm~600nm、あるいは100nm~500nm、あるいは200nm~400nm、あるいは250nm~350nm、あるいは約270nm、あるいは約570nmの厚さである、
先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0044】
項目XIXは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層に関して、存在する場合、xが、XPSにより測定した場合、約1~約2であり、yが、XPSにより測定した場合、約0.6~約1.5であり、zが、RBS又はHFSにより測定した場合、約2~約5である、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0045】
項目XXは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層に関して、存在する場合、xが、XPSにより測定した場合、約1.1であり、yが、XPSにより測定した場合、約1であり、zが、RBS又はHFSにより測定した場合、約2~約5である、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0046】
項目XXIは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層が、存在する場合、X線反射率(XRR)により決定した場合、1.25~1.65g/cm3、あるいは1.35~1.55g/cm3、あるいは1.4~1.5g/cm3、あるいは1.44~1.48g/cm3の密度を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0047】
項目XXIIは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層が、存在する場合、約5~約9、あるいは約6~約8、あるいは約6.4~約7.8のRMS表面粗さ値(AFMで測定)を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0048】
項目XXIIIは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層が、存在する場合、約4~約6、あるいは約4.6~約5.8の、AFMで測定したpH保護皮膜又は層のRa表面粗さ値を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0049】
項目XXIVは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層が、存在する場合、約70~約160、あるいは約84~約142、あるいは約90~約130の、AFMで測定したpH保護皮膜又は層のRmax表面粗さ値を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0050】
項目XXVは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層が、存在する場合、ASTM D7334-08「前進接触角測定による皮膜、基板及び顔料の表面濡れ性に関する標準的技法(Standard Practice for Surface Wettability of Coatings, Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement)」に準拠して、pH保護面上の水滴のゴニオメーター角度測定により測定した場合、90°~110°、あるいは80°~120°、あるいは70°~130°の(蒸留水との)接触角を有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0051】
項目XXVIは、SiOxyzのpH保護皮膜又は層が、存在する場合、通常、約1000~1040cm-1に位置するSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と、通常、約1060~約1100cm-1に位置するSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅との間において、0.75を超え1.7まで、あるいは0.9~1.5、あるいは1.1~1.3の比率を有するFTIR吸光度スペクトルを有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0052】
項目XXVIIは、SiOxyzのpH保護被覆又は層が、存在する場合、注射用水で希釈され、濃縮硝酸でpH8に調整され、0.2wt.%ポリソルベート80界面活性剤を含有する(VEGF阻害薬の液体製剤のない状態、40℃で測定した)、50mMリン酸カリウム緩衝液によるケイ素溶解速度170ppb/日未満を含有する、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ内の眼科用薬剤である。
【0053】
項目XXVIIIは、フルオロポリマーで被覆されたプランジャ前面を有する0.5mL又は1mL容積のCOPシリンジを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0054】
項目XXIXは、容器が、前面分注開口部及び背面開口部を有するシリンジバレルであり、クロージャが、シリンジバレル中で前面分注開口部へ軸方向に摺動可能なプランジャである、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤であり、プランジャは、以下を含む:
●前面分注開口部に面する前端及び背面開口部に面する後端を有するスリーブ、
○スリーブ内の第1のキャビティ、
○第1のキャビティから軸方向に離間して第1のキャビティと連通するスリーブ内の第2のキャビティ、及び
●第1のキャビティ内に最初に配置され、第1のキャビティから第2のキャビティまで軸方向に変位するように構成されたインサートであって、インサートは任意選択的に部分的に略球形の形状であり、インサートはインサートに隣接するスリーブの少なくとも一部を、バレルに対し半径方向外側に押圧する第1の付勢力を提供するように構成され、及び、インサートが第2のキャビティにあるときに、任意選択的にスリーブをバレルから離間させる、第1の付勢力よりも小さい、第2のそのような付勢力を提供するように構成された、インサート。
【0055】
項目XXXは、容器が、前面分注開口部及び背面開口部を有するシリンジバレルであり、クロージャが、前面分注開口部へ軸方向に摺動可能な、シリンジバレル中で軸方向に延びるプランジャである、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤であり、プランジャは、以下を含む:
●ストレージ直径を有するストレージ封止部、及びストレージ封止部から軸方向に離間し、ストレージ直径より小さい分注直径を有する分注封止部を有する、軸方向に延びる中心コア、並びに
●中心コアを包囲し、シールリングが中心コアとバレルとの間のストレージ封止力で圧縮される第1の位置をストレージ封止部に有し、シールリングがストレージ封止力よりも小さい分注封止力でバレルに対し圧縮される又はシールリングがバレルから離間している第2の位置を分注封止部に有する、シールリング。
【0056】
項目XXXIは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤であって、以下を含む:
●容器として、前面分注開口部と背面開口部とを有するシリンジバレル、
●クロージャとして、前面分注開口部に向かって軸方向に摺動可能な、シリンジバレル内の軸方向に伸張可能なプランジャであって:側壁及び前面分注開口部に面する前面を有し、側壁は、プランジャをストレージモードから分注モードに変換する軸方向伸張を受けるように適合された伸縮ゾーンを備え、伸張により、側壁の少なくとも一部の外側プロファイルが減少し、したがってプランジャを収縮状態へと縮める、任意選択的に熱可塑性エラストマで作製された、エラストマスリーブを含むプランジャ。
【0057】
項目XXXIIは、容器がシリンジバレルであり、クロージャが、シリンジバレル内に配置され、シリンジバレルとの接触領域を有するプランジャであり、プレフィルド薬剤パッケージが、シリンジバレルとプランジャとの間の接触領域において、シリンジバレル及びプランジャの一方に配置された、架橋シリコーン潤滑剤、任意選択的にプラズマ架橋シリコーン潤滑剤の、皮膜又は層を更に含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0058】
項目XXXIIIは、タンパーエビデント針シールドを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0059】
項目XXXIVは、シリンジバレル上にルアーロックを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0060】
項目XXXVは、ルアーロックを通る分注開口部を含み、分注開口部の直径が0.05mm~1.8mm未満、あるいは0.1mm~1.5mm、あるいは0.4mm~0.8mm、あるいは0.5mm~0.7mm、あるいは約0.6mmである、項目XXXIIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0061】
項目XXXVIは、壁の内部表面上にpH保護皮膜又は層を含む皮膜セットを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0062】
項目XXXVIIは、壁の外部表面上に皮膜セットを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0063】
項目XXXVIIIは、皮膜セットがpH保護皮膜又は層を含まない、項目XXXVIに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0064】
項目XXXIXは、皮膜セットの上に耐擦傷性皮膜を含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0065】
項目XLは、熱可塑性の壁の内部表面上に皮膜セットを、熱可塑性の壁の外部表面上に耐擦傷性皮膜を含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0066】
項目XLIは、項目XXXVI又はXXXVIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤であって、耐擦傷性皮膜は、以下を含む:
●XPSで測定した以下のSi、O、及びCの原子比を有するPECVD塗布皮膜:
○Si=1、
○O=0.7~1、及び
○C=1.1~1.5;
●固体皮膜又は層を形成するために湿式化学で塗布されたフィルム;
●又はその両方。
【0067】
項目XLIIは、皮膜セットが、熱可塑性の壁の外部表面上の接着性皮膜又は層、接着性皮膜又は層上のバリア皮膜又は層、及びバリア皮膜又は層上の湿式化学によって塗布されたトップコートを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0068】
項目XLIIIは、インサート成形された固定針及び針シールドを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0069】
項目XLIVは、滅菌ガス、任意選択的にエチレンオキシドEOガスによる、任意選択的に、16.6インチHg(=42.2cmHg、56キロパスカル、560mbar)の圧力、120°F(49℃)で10時間での、あるいは、気化過酸化水素(VHP)による、最終滅菌に適した、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0070】
項目XLVは、眼疾患を有する患者に硝子体内注射によって眼科用薬剤の液体製剤を投与する際に使用するための、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤であって、眼疾患は、任意選択的に、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害からなる群から選択される。
【0071】
項目XLVIは、液体製剤の容量30~100μlが患者に投与される、項目XLIVに記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0072】
項目XLVIIは、最終的に滅菌された、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0073】
項目XLVIIIは、エチレンオキシドで最終的に滅菌された、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0074】
項目XLIXは、プレフィルド薬剤パッケージが無菌であり、熱可塑性の壁が残留エチレンオキシドを含有し、任意選択的に、封止された外側パッケージがエチレンオキシド滅菌剤に対して透過性であり、任意選択的に、内腔がエチレンオキシドを本質的に含まない、好ましくは含まない、封止された外側パッケージに含有された、先の項目のいずれか一項に記載の1つ以上のプレフィルド薬剤パッケージを含むキットである。
【0075】
項目Lは、封止された外側パッケージに任意選択的に含有される針を更に含み、任意選択的に、ルアー針、あるいは固定針を含む、項目XLIXに記載のキットである。
【0076】
項目LIは、薬剤パッケージの少なくとも一部に取り付けられ、薬剤パッケージの少なくとも一部を包囲する針シールドを更に含む、項目Lに記載のキットである。
【0077】
項目LIIは、針シールドが針を覆って設置される場合、任意選択的に、薬剤パッケージが封止された外側パッケージに封入される場合、16.6インチ(42.2cm)Hgの圧力、120°F(49℃)で10時間でのエチレンオキシドEOガスによる薬剤パッケージ全体のエチレンオキシド最終滅菌を可能にするよう、針シールドが十分にエチレンオキシド透過性である、項目LIに記載のキットである。
【0078】
項目LIIIは、封止された外側パッケージ内に任意選択的に含有される、プランジャロッドを更に含む、先の項目XLIX~LIIのいずれか一項に記載のキットである。
【0079】
項目LIVは、封止された外側パッケージ内に任意選択的に含有される、使用説明書を更に含む、先の項目XLIX~LIIIのいずれか一項に記載のキットである。
【0080】
項目LVは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに収容される眼科用薬剤の液体製剤の硝子体内注射の投与を含む、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法である。
【0081】
項目LVIは、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上の処置のための、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ、任意選択的にシリンジ、入りの眼科用薬剤の製造における眼科用薬剤の液体製剤の使用である。
【0082】
項目LVIIは、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法における使用のための、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルドシリンジである。
【0083】
項目LVIIIは、ISO7886-1:1993試験を用いてプランジャブレークアウト力が決定される、請求項19~71のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0084】
項目LIXは、ISO7886-1:1993試験を用いてプランジャブレークアウト力が決定される、本明細書の先の項目XV~LVIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入りVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0085】
項目LXは、本明細書で定義される滑性試験のプロトコルを用いてプランジャの摺動力が決定される、請求項18~71のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージである。
【0086】
項目LXIは、本明細書で定義される滑性試験のプロトコルを用いてプランジャ摺動力が決定される、本明細書の先の項目XIV~LVIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入りVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0087】
本発明の多くの追加の及び代替の態様及び実施形態も考えられ、以下の明細書及び特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】詳細を示すためにクロージャを取り除いた、薬剤パッケージの概略断面図である。
図2図1に示された部分の拡大詳細図であり、内部皮膜セットを示す。
図3】本開示の一実施形態によるキャップが嵌められた組立品としても知られる、医療用バレル、皮下注射針、及びキャップの、キャップが嵌められた組立品の正面図である。
図4図1のキャップが嵌められた組立品の縦断面図であり、三層PECVDセットを拡大詳細図、図4Aに示す。
図5図3のキャップが嵌められた組立品の拡大部分図である。
図6】は、化学蒸着被覆台に配置された、図3及び図4のキャップが嵌められた組立品の概略縦断面図である。
図7】回転可能な四極磁石アレイを示す、図6の断面線A-Aに沿った断面図である。
図8図6図8に示す化学蒸着被覆台のさらなる詳細を示す概略図である。
図9】製剤40で満たされ、プランジャ先端部、ピストン、ストッパ、又はシールが取り付けられた、図1図5のキャップが嵌められた組立品の図4と同様の図であり、プレフィルドシリンジとして具現化されるプレフィルド薬剤パッケージ210を定義する。示されるオプションでは、プランジャ先端部、ピストン、ストッパ、又はシール及びプランジャロッドが取り付けられている。
図10】クロージャ(セプタム及びクリンプ)が取り付けられ、同じバリア皮膜又は層、不動態化層又はpH保護皮膜、及び他の共通の特徴を有するバイアルとして具現化された薬剤パッケージ210の縦断面図である。
図11】皮膜の化学的性質を特徴付ける実施例A及びCで適用されたタイコート皮膜又は層を表すフーリエ変換赤外スペクトルである。
図12】皮膜の化学的性質を特徴付ける実施例A及びCで適用されたバリア皮膜又は層を表すフーリエ変換赤外スペクトルである。
図13】皮膜の化学的性質を特徴付ける実施例A及びCで適用されたpH保護皮膜又は層を表すフーリエ変換赤外スペクトルである。
図14】実施例Aで適用された皮膜の断面のTEM画像であり、タイコート皮膜又は層、バリア皮膜又は層、及びpH保護皮膜又は層の相対的な厚さ及び明確な遷移を示す。
図15図1に示された部分の代替的な拡大詳細図であり、接着皮膜又は層、バリア皮膜又は層、保護皮膜又は層、及び耐擦傷皮膜又は層を含む外部皮膜セット(皮膜積層体1)を示す。
図16図1に示された部分の代替的な拡大詳細図であり、接着皮膜又は層、バリア皮膜又は層、保護皮膜又は層、及び耐擦傷皮膜又は層を含む外部皮膜セット(皮膜積層体2)を示す。
図17図1に示された部分の代替的な拡大詳細図であり、耐擦傷皮膜又は層を含む外部皮膜セット、並びに接着皮膜又は層、バリア皮膜又は層、及び保護皮膜又は層を含む内部皮膜セットを示す。
図18】キットの概略図である。
図19】代替的なプランジャ組立品の斜視図を示す。
図20】図示の実施形態によるプランジャ組立品の軸方向断面図を示す。
図21】内部構造を明らかにするためにコネクタ本体を透明にした、図20に示すプランジャの分離部分断面図を示す。
図22】シリンジのバレル内に位置する図21のプランジャの部分断面図を示す。
図23】図示の実施形態によるプランジャ組立品の軸方向断面図を示す。
図24】シリンジのバレル内に位置する図23に示すプランジャの部分断面図である。
図25】1つの例示的なシリンジの軸方向断面図である。
図26図25に示されるシリンジの一部を形成するコンバーチブルプランジャの一部分の拡大軸方向断面図であり、シリンジの係合位置にプランジャが示されており、そのストレージ封止部は、シリンジの内壁と液密かつ気密な界面を形成し、その液体封止部は、シリンジの内壁と液密な界面を形成する。
図27図26と同様の拡大断面図であるが、コンバーチブルプランジャがその係合位置から、そのストレージ封止部がもはや内部と液密かつ気密な界面を形成しなくなるが液体封止部はなおシリンジの内壁と液密な界面を形成する、リリース位置に移動するときのコンバーチブルプランジャを示す。
図28】本発明にしたがって構成された1つの例示的なプランジャの軸方向断面図である。
図29】プランジャロッドが取り付けられ、シリンジバレル内に配置された、図1のプランジャの拡大軸方向断面図である。
図30】本発明にしたがって構成されたプランジャの別の例示的な実施形態の軸方向断面図である。
図31】プランジャロッドが取り付けられ、シリンジバレル内に配置された、図3のプランジャの拡大軸方向断面図である。
図32】本開示にしたがって構成され、プランジャロッドが取り付けられた、プランジャの更に別の例示的な実施形態の拡大軸方向断面図である。
図33】遠位端で液体封止部に固定され、近位端で中心コアに固定されたコネクタを含む、代替的なコンバーチブルプランジャの実施形態の軸方向断面図である。
図34A-B】図33のコンバーチブルリングが組み立てられる様子を示す概略図である。
図35A-C】図33のコンバーチブルプランジャ構成部分がシリンジバレル内にロードされ、シリンジバレル内で組み立てられる様子を示す概略図である。
図36】実施例Dにつき、試験前の保管時間に対するブレーク力及び滑動力の3つのプロットを示す。
図37】実施例Eにつき、試験前の保管時間に対するブレーク力及び滑動力の3つのプロットを示す。
図38A-B】図38Aは、図38Bの拡大詳細図であり、任意選択的に本発明の任意の実施形態で使用することができる、低いデッドボリュームを有する内径0.4mmのルアー毛細管を備えたルアーロックシリンジを示す。
図39A-B】図39Aは、図39Bの拡大詳細図であり、任意選択的に本発明の任意の実施形態で使用することができる、標準的なデッドボリュームを有する内径1.8mmのルアー毛細管を備えたルアーロックシリンジを示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図面では以下の参照符号を使用する。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
本発明の文脈においては、以下の定義及び略語を使用する。
【0095】
「プレフィルドシリンジ」は、製造者によって充填された状態で供給される従来のシリンジ又はカートリッジであり、すなわち、投与されるべき薬物の測定された用量は、購入時にすでにシリンジ内に存在し、投与の準備ができた状態である。特に、薬物を含有する医薬組成物は、空のシリンジを使用することによって組成物を含有するバイアルから引き出す必要がない。本発明の意味におけるプレフィルドシリンジという用語は、再パッケージプロセスにおいてその内容物がバイアルから引き出されたものであるシリンジを意味するものではない。「プレフィルド薬剤パッケージ」は、プレフィルドシリンジ又はカートリッジを含むが、より広義には、たとえ投与のために薬物をシリンジ又は他の中間デバイスに移さなければならない場合であっても、充填された状態で製造業者によって供給される、薬剤の1回又は複数回用量を含有するバイアル又は他のタイプの保管容器をも含むよう定義される。
【0096】
用語「少なくとも(at least)」は、本発明の文脈においては、同用語に続く数字と「等しいかそれを超える(equal or more)」ことを意味する。「を含む(comprising)」という語は他の要素又はステップを排除するものではなく、また、不定冠詞「a」又は「an」は別段の定めがなければ複数形を排除するものではない。パラメータ範囲が示される場合、範囲の限界として提供するパラメータ値及び前記範囲内にあるパラメータの全ての値を開示することを意図する。
【0097】
例えば、皮膜又は層に対する「第1の」及び「第2の」又は類似の言及は、存在する最小数の、皮膜又は層などの物を意味するものであり、必ずしも皮膜又は層の順序又は総数を示すものとは限らず、又は記載された数を超える追加の皮膜又は層を要求するものではない。例えば、「第1の」皮膜又は層は、本明細書の文脈においては、限定されることなく、唯一の皮膜若しくは層であっても、又は複数の皮膜若しくは層のいずれか1つであってもよい。換言すれば、「第1の」皮膜又は層という記載は、第2の又は他の皮膜又は層も有する実施形態を可能にするが、必要とするわけではない。
【0098】
本発明の目的においては、「有機ケイ素化合物前駆体」は、酸素原子及び有機炭素原子(有機炭素原子は少なくとも1個の水素原子と結合した炭素原子である)に結合した四価ケイ素原子である、以下の結合の少なくとも1つを有する化合物である。
【化1】
揮発性の有機ケイ素化合物前駆体は、PECVD装置に蒸気として供給されうる前駆体と定義され、任意の有機ケイ素化合物前駆体である。任意選択的に、有機ケイ素化合物前駆体は、直鎖シロキサン、単環シロキサン、多環シロキサン、ポリシルセスキオキサン、アルキルトリメトキシシラン、及びこれら前駆体のいずれか2つ以上の複合体からなる群から選択される。
【0099】
明細書及び特許請求の範囲において、PECVD前駆体、気体反応物又はプロセスガス及びキャリアガスの供給量は「標準体積(standard volumes)」で表される場合がある。チャージガス又は他の一定量のガスの標準体積は、(実際の送達温度及び圧力を考慮しない)標準温度及び圧力において占める一定量のガスの体積である。標準体積は異なる体積の単位を使用して測定することができるが、それでもなお本開示及び特許請求の範囲の範囲内とされうる。例えば、同じ一定量のガスを、標準立方センチメートルの数値、標準立方メートルの数値、又は標準立方フィートの数値として表すことができる。標準体積もまた異なる標準温度及び圧力を使用して定義することができるが、それでもなお本開示及び特許請求の範囲の範囲内とされうる。例えば、標準温度が0℃、標準圧力が760トル(従来のまま)である可能性も、標準温度が20℃、標準圧力が1トルである可能性もある。しかし、特定の場合においてどのような標準を使用したとしても、2つ以上の異なるガスの相対体積を特定のパラメータを明示せずに比較する場合、特に明示しない限りは、各ガスに対して同じ体積、標準温度及び標準圧力の単位が使用される。
【0100】
本明細書においては、PECVD前駆体、気体反応物又はプロセスガス及びキャリアガスの対応する供給速度は単位時間あたりの標準体積で表される。例えば、流量は標準立方センチメートル/分として表され、sccmと略される。他のパラメータと同様、秒又は時間などの他の時間単位を使用できるが、2つ以上のガスの流量を比較する場合、特に明記されない限りは一貫したパラメータが使用される。
【0101】
「容器」は、本発明の文脈においては、薬剤パッケージ又は他の容器とすることができる。薬剤パッケージの幾つかの例としては、バイアル、カートリッジ、又はシリンジが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
実験組成物Siwxyz又は均等な組成物SiOxyz若しくはSiOxyにおいて、この明細書全体を通じて使用されるw、x、y及びzの値は、分子中の原子の数又は種類を限定するものではなく(例えば、皮膜又は層の)比率又は実験式と理解すべきである。例えば、分子組成Si44824を有するオクタメチルシクロテトラシロキサンは、分子式のw、x、y及びzそれぞれを最大公約数である4で割ることにより得た以下の実験式、Si1126、によって記載されうる。w、x、y及びzの値は、また、整数に限定されない。例えば、(非環式)オクタメチルトリシロキサンの分子組成Si32824はSi10.672.678に可約である。
【0103】
また、SiOxyzはSiOxyの均等として記載されるが、SiOxyの存在を示すために任意の割合の水素の存在を示す必要はない。特に明記しない限り、wの値は1に正規化され、その場合、下付き文字wは好都合には省略される。したがって、皮膜又は層は、一態様においては、式Siwxyzを有し得、例えば、式中、wは1であり、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、zは約2~約9である。したがって、w、x及びyの規定が同じである同皮膜又は層は、別の態様において、式SiOxyを有し得、例えば、式中、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、w及びzは省略される。
【0104】
ケイ素、酸素、及び炭素の原子比率は、XPSにより求めることができる。H原子の原子比率は、水素を検出しないXPSにより測定することができない。任意選択的に、H原子の割合は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)、好ましくは前者により、別々に求めることができる。
【0105】
「シリンジ」という用語は、カートリッジ、「ペン」型注射器、及び他の1つ又は複数の構成要素と共に組み立てられて機能的なシリンジを提供するようになっている他の種類のバレル又はリザーバを含むように広く定義される。「シリンジ」はまた、内容物を分注するための機構を提供する、オートインジェクタなどの関連物品を含むように広く定義される。
【0106】
皮膜若しくは層又は処理は、それが表面のぬれ張力を、対応する非被覆面又は非処理面と比較して低下させる場合、「疎水性」と定義される。従って、疎水性は非処理基板と処理の両方の機能である。
【0107】
本発明による「滑性層」は、被覆されていない表面よりも低い摩擦抵抗を有する皮膜である。換言すれば、これは、被覆されていない基準面と比較して、被覆された面の摩擦抵抗を低減する。本発明の滑性層は、被覆されていない表面より低い摩擦抵抗及び被覆されていない表面より低い摩擦抵抗を提供するプロセス条件によって主に定義される。
【0108】
「摩擦抵抗」は、静止摩擦抵抗及び/又は運動摩擦抵抗とすることができる。
【0109】
本発明の任意選択的な実施形態の1つは、滑性層で被覆されたシリンジ部、例えば、シリンジバレル又はプランジャである。この企図される実施形態では、本発明の文脈における関連する静止摩擦抵抗は、本明細書で定義されるブレークアウト力であり、本発明の文脈における関連する運動摩擦抵抗は、本明細書で定義されるプランジャ摺動力である。例えば、本明細書で定義及び決定されるプランジャ摺動力は、皮膜が任意のシリンジ又はシリンジ部品、例えば、シリンジバレルの内壁、に適用されるときはいつでも、本発明の文脈における滑性層又は皮膜の存在又は不在及び滑性特性を決定するのに適している。ブレークアウト力は、プレフィルドシリンジ、すなわち被覆後に充填され、プランジャが再び動かされるまで(「ブレークアウト」される必要がある)、しばらくの間、例えば、数ヶ月又は数年でも、保管することができるシリンジ、における被覆効果の評価に特に関連する。
【0110】
「プランジャ摺動力」(「滑動力」、「維持力」、Fmと同義語であり、これらも本明細書で使用される)は、本発明の文脈においては、シリンジバレル内で、例えば吸引又は分注の間に、プランジャの移動を維持するのに必要な力である。これは、当技術分野で知られているISO 7886-1:1993試験を用いて有利に決定することができる。当該技術においてしばしば使用される「プランジャ摺動力」の同義語は、「プランジャ力」又は「押し込み力」である。
【0111】
「プランジャブレークアウト力」(「ブレークアウト力」、「解放(break loose)力」、「開始(initiation)力」、F.sub.iと同義語であり、これらも本明細書で使用される)は、本発明の文脈においては、プランジャをシリンジ内、例えばプレフィルドシリンジ内、で移動させるために必要な初動力である。
【0112】
「プランジャ摺動力」及び「プランジャブレークアウト力」並びにそれらの測定方法は、本明細書の以下の部分でより詳細に記載される。これらの2つの力は、N、lbs又はkgで表すことができ、3つ全ての単位が本明細書で使用される。3つの単位は、以下の通り相関する:1N=0.102kg=0.2248lbs(ポンド)。
【0113】
摺動力及びブレークアウト力は、医療用サンプルチューブ又はバイアルなどの容器内に、ストッパ又は他のクロージャを進め、容器を閉鎖するクロージャを容器内に配置するために必要な力を説明するために、本明細書においてしばしば使用される。その使用は、シリンジ及びそのプランジャの文脈における使用に類似しており、容器及びそのクロージャに対するこれらの力の測定は、少なくともほとんどの場合においてクロージャを配置位置へ前進させるときに液体が容器から排出されないことを除いて、シリンジに対するこれらの力の測定に類似することが企図される。
【0114】
「摺動可能」とは、プランジャ、クロージャ、又は他の取り外し可能な部品がシリンジバレル又は他の容器内で摺動することを可能にすることを意味する。
【0115】
「クロージャ」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、内腔を閉鎖する、薬剤パッケージ若しくは容器の任意の部分若しくはサブ組立品、又は容器内腔を閉鎖するために使用することができ、除去し、移動し、破壊し、再形成し、穿孔することができ、他には、これを操作してパッケージ若しくは容器を開き、その内容物を分注し、若しくは内容物へのアクセスを提供することができる、薬剤パッケージ若しくは容器の任意の部分若しくはサブ組立品を意味する。クロージャは、クリンプ、セプタム、ストッパ、プランジャ、プランジャ先端部、キャップ、ピストン、シール、若しくは針シールドなどの分離可能な部品;又は、内容物を放出するために破壊されるか分断されるアンプル又はフィルムパケットの壁部分、若しくはノズルを通じて内容物を放出するために穿孔される前のチューブのノズルを閉塞するウェブなどの一体化された部分若しくは結合された部分、又は開くことのできる閉じられたバルブとすることができる。用語「クロージャ」は、プランジャ先端、プランジャピストン、プランジャピストンとプランジャ先端との組立品;プランジャロッドと更に組み立てられる、これらのいずれか;又はプランジャロッドが存在しない、これらのいずれかに等しく適用される。
【0116】
プレフィルドシリンジの文脈においては、クロージャは、典型的には、しばしばプランジャストッパ又は単にプランジャとも称される、ストッパである。したがって、プレフィルドシリンジの文脈においては、「ストッパ」、「プランジャストッパ」及び「プランジャ」という用語は本明細書中で交換可能に使用される。プランジャストッパは、プランジャロッドによってシリンジバレル内で移動することができ、プランジャストッパとプランジャロッドは機械的に接続されていてもよい。非格納式ストッパの場合、プランジャロッドはプランジャストッパに機械的に接続されていない。したがって、非格納式ストッパは、プランジャロッドをシリンジバレルに出口に向かって押し込むことによって、シリンジバレル内に押し込むことができるが、プランジャロッドをシリンジバレルの後方に向かって引っ張ることによって格納することができない。
【0117】
「含む(comprising)」という語は他の要素又は工程を排除するものではない。
【0118】
ここで、いくつかの実施形態を示す添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具現化することができ、ここで説明する実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これら実施形態は本発明の例であり、特許請求の範囲の文言により示される全範囲を有する。全体にわたり同様の数は同様の要素又は対応する要素を意味する。以下の開示は、特定の実施形態に特に限定されない限りは全実施形態に関連する。
【0119】
硝子体内注射用VEGF阻害眼用薬
「眼内新生血管疾患」は、眼の血管新生を特徴とする疾患である。眼内血管新生疾患の例としては、例えば、増殖性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞(CRVO)、網膜分岐静脈閉塞(BRVO)、角膜血管新生、及び網膜血管新生が挙げられるが、これらに限定されるものではない。用語「加齢性黄斑変性症」は、通常、高齢者に影響を及ぼし、網膜の損傷のため、視野の中心の視力を失う(黄斑)病状を意味する。これらの病状の一部又は全ては、VEGF阻害薬の硝子体内注射によって処置することができる。
【0120】
用語「VEGF阻害薬」は、VEGFと特異的に相互作用し、その生物学的活性の1つ以上、例えばその分裂促進性、血管新生性及び/又は血管透過性活性を阻害する分子を意味する。それは、抗VEGF抗体及びその抗原結合フラグメント、並びに非抗体VEGF阻害薬の両方を含むことが意図される。
【0121】
非抗体VEGF阻害薬としては、アフリベルセプト、ペガプタニブ、及び抗体模倣物が挙げられる。Eylea(登録商標)の名称で現在市販されているアフリベルセプト(Aflibercept)は、ヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメインの一部がヒトIgG1のFc部分に融合した、組換えヒト可溶性VEGF受容体融合タンパク質である(Holashら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(17):11393-11398;国際公開第00/75319A1号パンフレット)。Macugen(登録商標)の名称で現在市販されているペガプタニブは、ペグ化抗血管内皮成長因子(VEGF)アプタマーである(Bellら(1999)In Vitro Cell Dev Biol Anim.35(9):533-42)。VEGF阻害薬である抗体模倣物は、VEGFに結合し、DARPin(登録商標)MP0112などの、VEGFの受容体への結合を阻害するアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質を含む(国際公開第2010/060748号パンフレット及び国際公開第2011/135067号パンフレットも参照)。
【0122】
用語「抗VEGF抗体」は、VEGFに特異的に結合し、その生物学的活性の1つ以上、例えばその分裂促進性、血管新生性及び/又は血管透過性活性を阻害する、Fab又はscFVフラグメントなどの抗体又は抗体フラグメントを意味する。抗VEGF抗体は、例えば、VEGFの細胞受容体への結合を妨げること、VEGFが細胞受容体に結合した後の血管内皮細胞の活性化を妨げること、又はVEGFによって活性化される細胞を死滅させることによって作用する。抗VEGF抗体としては、例えば、抗体A4.6.1、ベバシズマブ、ラニビズマブ、G6、B20、2C3、並びに、例えば、国際公開第98/45331号パンフレット、米国特許出願公開第2003/0190317号明細書、米国特許第6,582,959号明細書、米国特許第6,703,020号明細書、国際公開第98/45332号パンフレット、国際公開第96/30046号パンフレット、国際公開第94/10202号パンフレット、国際公開第2005/044853号パンフレット、欧州特許第0666868B1号明細書、国際公開第2009/155724号パンフレット、及びPopkovら(2004)J.Immunol.Meth288:149-64に記載の他のVEGF抗体が挙げられる。好ましくは、本発明の医薬組成物中に存在する抗VEGF抗体又はその抗原結合フラグメントは、ラニビズマブ又はベバシズマブである。最も好ましくは、これはラニビズマブ又はその抗原結合フラグメントである。
【0123】
「ラニビズマブ」は、国際公開第98/45331号パンフレットの配列番号115及び116及びChenら(1999)J.Mol.Biol.293:865-81に記載のY0317の軽鎖及び重鎖可変ドメイン配列を有するVEGF-Aに対するヒト化モノクローナルFabフラグメントである。ラニビズマブのCAS番号は347396-82-1である。ラニビズマブは、内皮細胞の増殖及び血管新生を阻害し、血管新生(湿潤)加齢性黄斑変性症(AMD)の処置、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害の処置、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害の処置、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害の処置につき承認されてきた。ラニビズマブは、ベバシズマブに関連し、ベバシズマブと同じ親マウス抗体に由来するが、親分子よりもはるかに小さく、親和性が発達してVEGF-Aとのより強い結合を提供する。ラニビズマブは、例えば国際公開第98/45331A2号パンフレットに記載されているように、大腸菌(Escherichia coli)において組換え生産される。本発明の市販のラニビズマブ製剤は、α,α-トレハロース二水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、ヒスチジン、ポリソルベート20及び注射用水を含有し、10mg/mlの濃度で供給される。特に、これはラニビズマブ6mg又は10mg、α,α-トレハロース二水和物100mg、L-ヒスチジン0.32mg、L-ヒスチジン塩酸塩一水和物1.66mg、0.1mgのポリソルベート20及び1mLにメスアップした注射用水を含有する。現在市販されているラニビズマブ製剤のpHは、pH5.5に調整することができる。
【0124】
「ベバシズマブ」は、VEGFの全てのアイソフォームを認識し、ラニビズマブの親抗体である、全長ヒト化マウスモノクローナル抗体である。ベバシズマブのCAS番号は216974-75-3である。ベバシズマブは、血管新生を阻害し、現在では様々な種類の癌の処置のために承認されている。しかしながら、加齢性黄斑変性症などの眼科疾患では、適応外でも使用されている。本発明の市販のベバシズマブ製剤は、α,α-トレハロース二水和物、リン酸ナトリウム、ポリソルベート20及び注射用水を含有し、濃度25mg/mlの濃縮物として供給される。特に、これは、25mg/mlのベバシズマブ、240mgのα,α-トレハロース二水和物、23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)、4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基性、無水)、1.6mgのポリソルベート20、及び注射用水を含有する(USP)。本発明のプレフィルドシリンジ内の抗体濃度は、典型的には1~100mg/ml、好ましくは2~75mg/ml、より好ましくは3~50mg/ml、更により好ましくは5~30mg/ml、最も好ましくは6mg/ml又は10mg/mlである。ラニビズマブが本発明のプレフィルドシリンジ内に含まれる場合、ラニビズマブ濃度は10mg/mlである。
【0125】
アフリベルセプトは、Eylea(登録商標)の名称で市販されており、ヒトIgG1免疫グロブリンのFc部分に融合されたヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメイン由来のVEGF結合部分からなる組換え融合タンパク質である。これは、湿性黄斑変性症の処置薬として承認されている。アフリベルセプトのCAS番号は862111-32-8である。これは、滲出性加齢性黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)に起因する視覚障害、及び糖尿病性黄斑浮腫患者における糖尿病性網膜症の処置のための販売認可を受けている。本発明のアフリベルセプト製剤は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリソルベート20、スクロース及び注射用水を含有し、40mg/mlの濃度で供給される。特に、これは、40mg/mlのアフリベルセプト、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液、40mMのNaCl、0.03%のポリソルベート20、5%のスクロース;及び注射用水を含有する。別のアフリベルセプト製剤は、ヒスチジン緩衝液、塩化ナトリウム、ポリソルベート20、スクロース及び注射用水を含有してもよく、40mg/mlの濃度で供給される。特に、これは、40mg/mlのアフリベルセプト、10mMヒスチジン緩衝液、40mMのNaCl、0.03%のポリソルベート20、5%のスクロース;及び注射用水を含有する。商業的及び代替的なアフリベルセプト製剤のpHは6.2に調整することができる。
【0126】
本発明のプレフィルドシリンジ内の抗体濃度は、典型的には1~100mg/ml、好ましくは2~75mg/ml、より好ましくは3~50mg/ml、更により好ましくは5~30mg/ml、最も好ましくは6mg/ml又は10mg/mlである。ラニビズマブが本発明のプレフィルドシリンジ内に含まれる場合、ラニビズマブ濃度は10mg/mlである。
【0127】
アフリベルセプトは、Eylea(登録商標)の名称で市販されており、ヒトIgG1免疫グロブリンのFc部分に融合されたヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメイン由来のVEGF結合部分からなる組換え融合タンパク質である。これは、湿性黄斑変性症の処置薬として承認されている。
【0128】
ラニビズマブは、Lucentis(登録商標)の名称で市販されており、VEGFに対するヒト化マウスモノクローナル抗体のFab断片であり、加齢性黄斑変性症及び糖尿病性黄斑浮腫などの眼疾患の処置薬として承認されている。
【0129】
更に、眼疾患の処置のためにVEGFに対しても指向されている、全長抗体ベバシズマブ(Avastin(登録商標))の適応外使用は、一般的である。
【0130】
ラニビズマブ及びベバシズマブは、血管新生加齢性黄斑変性症の処置において類似の有効性プロファイルを有するようであるが、稀な有害事象はベバシズマブでより頻繁に生じるようである(Johnson and Sharma(2013)Curr.Opin.Ophthalmol.:24(3):205-12)。
【0131】
本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体に含まれる薬物は、2~8℃の温度で、少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、より好ましくは少なくとも1年間、特に好ましくは少なくとも18ヶ月間、最も好ましくは約2年間、安定である。本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体、より好ましくはラニビズマブに含まれる薬物は、室温、すなわち20℃~25℃の温度で、少なくとも3日間又は1週間、好ましくは少なくとも2週間又は3週間、より好ましくは約4週間及び最も好ましくは少なくとも3ヶ月間、安定である。本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はVEGF受容体融合タンパク質、より好ましくはラニビズマブ又はアフリベルセプトに含まれる薬物は、約40℃の温度で、少なくとも4時間又は6時間、好ましくは少なくとも10時間又は12時間、より好ましくは少なくとも18時間又は24時間、最も好ましくは1週間又は2週間、安定である。
【0132】
シリンジ内での薬物の安定性は、酸化及び脱アミド化された種などの薬物の修飾を検出することができる、イオン交換クロマトグラフィー、又は薬物の凝集体を検出することができる、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。そのような分析の説明は、実施例のセクションで提供される。
【0133】
凝集物及び化学的に修飾された種を含む全ての不純物の合計が、非修飾、非凝集の薬物の量と比較して、2%未満、好ましくは1.5%未満、より好ましくは1.2%未満、最も好ましくは1%未満である場合、薬物、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体は、安定であるとみなされる。
【0134】
プレフィルドシリンジの構成要素は、当業者に知られており、基本的にシリンジバレル及びプランジャを含む。
【0135】
シリンジバレルは、プランジャがバレル内に押し込まれてバレルに沿って移動するときに、バレルの一端に位置する出口を通ってバレルから排出され得る所定量の液体組成物を含む。シリンジバレルは、典型的には、実質的に円筒状の形状を有する。出口は、出口端からの突起を備え、この突起を介して、シリンジバレルの残りの部分よりも小さな直径を有するチャネルが延びている。出口は、針、又は、バレルを封止することができ、針をシリンジに取り付けられるよう除去することができる、封止デバイスなどの他の付属品、との接続(固定針が使用されていない場合)のために、例えばルアーロック式接続によって適合されてもよい。この封止は、Vetter Pharma International GmbHのOVSTMシステムなどの公知の封止デバイスの使用によって達成することができる。固定針もまた使用可能であり、シリンジバレルの射出成形時に恒久的に組み込まれる成形針、又はシリンジバレルの成形された供給通路に固定される接着針のいずれかである。
【0136】
任意選択的に、プレフィルドシリンジにおいて、シリンジ出口は、固定針と固く接続され、使用前に組み立てる必要はない。この場合、注射前にシリンジを組み立てている間に、針で負傷する危険性が低減される。固定針は、シリンジ内に成形することができるので、接着剤を用いることなく、本発明のプレフィルドプラスチックシリンジに取り付けることができる。対照的に、針をガラスシリンジに取り付けるためには接着剤が必要であり、不純物やタンパク質酸化の増加につながり得る(2011 PDA Europe The Universe of Pre-Filled Syringes and Injection DevicesでのAdlerの発表、バーゼル、2011年11月7日~11日;PDA Single Use Systems WorkshopでのMarkovicの発表、ベセスダ、2011年6月22日~23日)。
【0137】
硝子体内投与の場合、針のサイズは、典型的には29、29 1/2又は30ゲージであるが、31、32、33、及び34ゲージの針も使用することができる。プレフィルドシリンジは、注射後に針が刺さる危険性を更に避けるために、パッシブ型の針安全ガードを備えていてもよい。
【0138】
シリンジ製造プロセスにおいてタングステンを使用する必要がないため、シリンジバレルは、好ましくはタングステンを含まない、すなわち、いかなる微量のタングステンも含まない。したがって、タングステン誘導タンパク質凝集の危険性はない。
【0139】
一実施形態では、シリンジバレルは、シリンジバレルに印刷されたラインのようなマークを含み、そのラインは、液体組成物を注入する人が、クロージャの所定の部分(前面の先端など)又はプランジャを、マークによって調節することを可能にする。これにより、余分な液体組成物及び潜在的な気泡がシリンジバレルから除去され、正確な所定の投与量を患者に安全に投与することが可能になる。
【0140】
プランジャはシリンジバレルの内側に押し込まれ、シリンジは液体製剤を出口から排出することができる。
【0141】
プレフィルドシリンジにおいて、ストッパは液体製剤と接触している。ストッパは、典型的には、圧力がプランジャに加えられたときにシリンジから液体製剤を放出するのを容易にする封止を形成するために、シリンジバレルの内面と係合する、天然又は合成ゴムなどのエラストマ材料で作製される。
【0142】
好ましい実施形態では、プランジャストッパは、非格納式ストッパ、すなわち、プランジャロッドに機械的に接続されていないストッパである。用語「非格納式ストッパ」は、ストッパがシリンジ出口の方向にのみ移動することができ、反対方向、すなわち、シリンジの後方には移動することができないことを意味することが意図される。したがって、シリンジ内の液体組成物の汚染の危険性は最小限に抑えられる。典型的には、非格納式ストッパは、プランジャロッドによってシリンジ出口の方向に押されて液体製剤を放出するが、プランジャロッドがシリンジの後端に向かって後退する場合、その位置にとどまる。
【0143】
シリンジは、0.3ml~1.5ml、好ましくは0.5ml~1.0ml、最も好ましくは0.5ml又は1.0mlの公称最大充填容量、すなわちシリンジが最大取り込み得る容量を有する。約0.05mlの注入量の場合、公称充填容量が0.5mlのシリンジが好ましい。
【0144】
シリンジに充填される液体組成物の容量は、約0.05ml~約1ml、好ましくは約0.1ml~約0.5ml、より好ましくは0.14ml~0.3ml、最も好ましくは0.15ml~0.2mlである。
【0145】
シリンジが、通常、シリンジ及び針内の全てのデッドスペース及び注射用シリンジの準備による損失を考慮に入れて、患者に実際に投与される容量よりも大きな容量で充填されることは、当業者に知られている。したがって、実際に患者に投与される容量は、0.01ml~1ml、好ましくは0.02~0.5ml、より好ましくは0.025~0.5ml、最も好ましくは0.03ml~0.05mlである。
【0146】
ラニビズマブは、典型的には、ラニビズマブ濃度が6mg/ml又は10mg/mlで0.05mlの容量、又はラニビズマブ濃度が10mg/mlで0.03ml又は0.05mlの容量で、送達量は0.3又は0.5mgとなる。アフリベルセプトについて、投与量はアフリベルセプト濃度40mg/mlで典型的に0.05mlであり、送達量は2mgとなる。上記で議論したように、ベバシズマブは、眼疾患の処置のために適応外使用されている。この場合、ベバシズマブの投与量は、ベバシズマブ濃度25mg/mlで0.05mlであり、送達量は1.25mgとなる。
【0147】
したがって、一実施形態では、シリンジは、0.15ml~0.2mlの容量の液体組成物で充填され、0.03ml~0.05mlの液体組成物の容量が患者に投与される。
【0148】
本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくはラニビズマブに含まれる薬物は、2~8℃の温度で、少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、より好ましくは少なくとも1年間、特に好ましくは少なくとも18ヶ月間、最も好ましくは約2年間保管したとき、その生物学的活性を保持している。本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体、より好ましくはラニビズマブに含まれる薬物は、室温、すなわち20℃~25℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、最も好ましくは約24時間、保管したとき、その生物学的活性を保持している。
【0149】
VEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくはラニビズマブの生物学的活性は、上記の条件下で保管された阻害薬をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)及びVEGFと共にインキュベートし、阻害薬の存在下でのVEGF誘発性増殖を測定することによって、すなわち、Promegaから入手可能なCellTiter-Blue(登録商標)細胞生存度アッセイによって、阻害薬とインキュベートされていない細胞と比較して、決定される。VEGF阻害薬はVEGF誘発シグナル伝達を阻害するので、生物学的に活性なVEGF阻害薬がサンプル中に存在する場合、VEGF誘性増殖は減少する。
【0150】
VEGF誘導性増殖が少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%又は60%、より好ましくは少なくとも65%、70%、75%又は80%、更により好ましくは少なくとも85%、87%又は90%、最も好ましくは少なくとも92%、94%、96%、98%又は99%阻害される場合、VEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくは、ラニビズマブは、プレフィルドシリンジ中での保管後にその生物学的活性を保持する。
【0151】
プレフィルドシリンジは、VEGF阻害薬に加えて、1つ以上の薬理学的に活性な薬剤を含み得る。薬理学的に活性な薬剤は、対象に投与された場合に薬理学的効果を発揮することができる。好ましくは、さらなる薬理学的に活性な薬剤は、PDGF阻害薬又はAng2阻害薬である。より好ましくは、PDGF阻害薬は、リヌクマブ(rinucumab)などの抗PDGF抗体、又はFovista(登録商標)として市販されているE10030などのアプタマーである。最も好ましくは、PDGFアンタゴニストは、Greenら(1996)Biochemistry 35:14413;米国特許第6,207,816号明細書;米国特許第5,731,144号明細書;米国特許第5,731,424号明細書;及び米国特許第6,124,449号明細書に記載されているE10030である。また、より好ましくは、Ang2抗体は抗Ang2抗体であり、最も好ましくはネズバクマブである。
【0152】
本発明のプレフィルドシリンジ内の液体組成物は、低い粒子含有量を有する。特に、シリンジを40℃で5分間回転させた後、1分あたり1℃での+5℃~-20℃の3回の凍結-解凍サイクルから2週間若しくは4週間後、又は5℃、25℃かつ相対湿度60%、若しくは40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間保管した後、10μm以上のサイズを有する粒子を50個未満含んでいた。代替的に又は追加的に、液体組成物は、シリンジを40℃で5分間回転させた後、又は1分あたり1℃での+5℃~-20℃の3回の凍結-解凍サイクルから2週間若しくは4週間後、又は5℃、25℃/相対湿度60%、若しくは40℃/相対湿度75%で3ヶ月間保管した後、25μm以上のサイズを有する粒子を5個未満含んでいた。したがって、プレフィルドシリンジは、これらの粒径に関し、眼科用溶液の米国薬局方<789>の要件を満たす。
【0153】
本発明のプレフィルドシリンジは、優れた滑り挙動(ブレークアウト力及びプランジャ摺動力)を更に有する。特に、ブレークアウト力、すなわちプランジャの移動を開始するのに必要な力は、15N未満、10N未満又は9N未満、好ましくは8N未満又は7N未満、より好ましくは6N未満、最も好ましくは5N未満である。シリンジが8週間などの長期間保管された場合、ブレークアウト力は有意に、すなわち10%以上、変化しない。対照的に、シリコーンを含有するシリンジでは、ブレークアウト力は、保管時に少なくとも2倍増加する。
【0154】
更に、プランジャ摺動力、すなわち液体組成物を排出するためにプランジャのシリンジバレルに沿った動きを維持するのに必要な力は、15N未満、10N未満、好ましくは9N未満、より好ましくは8N未満、最も好ましくは7N未満である。特に好ましい実施形態では、ブレークアウト力とプランジャ摺動力との間に有意差は存在しない。
【0155】
本発明はまた、本発明のプレフィルドシリンジの1つ以上を含むキットを提供する。好ましくは、キットは、ブリスターパックを含む。「ブリスターパック」は、熱成形プラスチック及び板紙の裏張り又はアルミニウム箔若しくはプラスチックの蓋シールから通常作製される、キャビティ又はポケットを有する。プレフィルドシリンジが固定針を含まない場合、キットは更に針を含んでもよい。キットは、使用説明書を更に含み得る。好ましくは、キットは、ブリスターパックなどのパッケージ内の酸素レベルを低下させるために典型的に使用される酸素吸収剤を含まない。酸素吸収剤は、通常、炭酸銅又はアスコルビン酸塩などの物質を含み、この物質は、パッケージ内の酸素と高親和性で反応し、それによってパッケージの酸素含有量を減少させる。
【0156】
図1及び図2を参照すると、ここでは分解された薬剤パッケージ210の形態の容器214が示されている。このような薬剤パッケージ210又はその部品の幾つかの非限定的な例は、シリンジバレル、バイアル、カートリッジ、ボトル、クロージャ、針、プランジャ、又はキャップである。
【0157】
図1及び図2の薬剤パッケージ210は、壁15によって少なくとも部分的に画定される内腔18を有する。壁15の少なくとも一部は、任意選択的に環状オレフィンポリマーである、熱可塑性材料を任意選択的に含む。より一般的には、容器14の壁15に適した材料としては、ポリオレフィン(例えば、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、又はポリプロピレン)、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はこれらのいずれかの任意の組合せ若しくは共重合体が挙げられる。この段落中の材料のいずれか2種以上の組合せを使用することもできる。
【0158】
壁15は、内腔に面する内部表面16と、外面216と、内腔18に面する壁15の少なくとも一部上の容器皮膜セット285とを有する。内部表面16は、タイコート皮膜又は層838、バリア皮膜又は層30、pH保護皮膜又は層34、及び任意選択的に滑性皮膜又は層287を含む。容器皮膜セット285のこの実施形態において、タイコート皮膜又は層838、バリア皮膜又は層30、及びpH保護皮膜又は層34の組合せは、「三層皮膜」として知られることもあり、SiOxのバリア皮膜又は層30は任意選択的に、それぞれ本明細書に定義されるSiOxyの有機層であるpH保護皮膜又は層34とタイコート皮膜又は層838との間に挟設されることにより、さもなければそれを除去するほど十分高いpHを有する内容物から保護される。
【0159】
図1及び図2は、少なくとも1つの開口部を有する容器14を示すが、シリンジバレルなどの2つ以上の開口部を有する容器14も含むものと理解されたい。
【0160】
タイコート皮膜又は層
図1及び図2を参照すると、接着皮膜又は層と称されることもある、タイコート皮膜又は層838が設けられている。タイコート皮膜又は層838は、任意選択的に、プラズマ化学気相成長法(PECVD)又は他の化学蒸着プロセスによって、薬剤パッケージ210、例えば熱可塑性薬剤パッケージ、の容器上に堆積させることができる。
【0161】
タイコート皮膜又は層838は任意選択的に、内部表面16などの基板、特に熱可塑性基板へのバリア皮膜又は層30の接着を改善する機能を果たすが、タイコート皮膜又は層838はガラス基板又は別の皮膜若しくは層への接着を改善するのに使用することもできる。
【0162】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、基板又は壁15へのバリア皮膜又は層30への接着を改善する。例えば、タイコート皮膜又は層838を基板に塗布することができ、基板へのバリア皮膜又は層30の接着を改善するタイコート皮膜又は層838にバリア皮膜又は層30を塗布することができる。任意選択的に、タイコート皮膜又は層838はまた、バリア皮膜又は層30にかかる応力を除去し、バリア皮膜又は層30が熱膨張若しくは熱収縮又は機械的衝撃による損傷を受け難くすると考えられる。
【0163】
任意選択的に、バリア皮膜又は層30の下に塗布されるタイコート皮膜又は層838は、バリア皮膜又は層30の上に塗布されるpH保護皮膜又は層34の機能を改善することができる。
【0164】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838はまた、バリア皮膜又は層30と熱可塑性基板、ここでは壁15との間の欠陥を分断すると考えられる。これは、タイコート皮膜又は層838が塗布されるときに形成され得るピンホール又は他の欠陥があっても、バリア皮膜又は層30が塗布されると連続しなくなり、このように1つの皮膜中のピンホール又は他の欠陥は他の皮膜中の欠陥と一列に並ばないため、起こると考えられる。任意選択的に、タイコート皮膜又は層838はバリア皮膜又は層30としての効果が幾らかあり、このように、バリア皮膜又は層30を通って延びる漏れ経路となる欠陥があってもタイコート皮膜又は層838で塞ぐことができる。
【0165】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、SiOxyを含み、好ましくはSiOxyで構成されても、それを含んでも、又はそれから本質的になってもよく、式中、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3である。タイコート皮膜又は層838中のSi、O、及びCの原子比率は任意選択的に:
Si 100:O 50~150:C 90~200(即ち、x=0.5~1.5、y=0.9~2);
Si 100:O 70~130:C 90~200(即ち、x=0.7~1.3、y=0.9~2)
Si 100:O 80~120:C 90~150(即ち、x=0.8~1.2、y=0.9~1.5)
Si 100:O 90~120:C 90~140(即ち、x=0.9~1.2、y=0.9~1.4)、又は
Si 100:O 92~107:C 116~133(即ち、x=0.92~1.07、y=1.16~1.33)、
であってもよい。
【0166】
原子比率は、XPSにより求めることができる。XPSにより測定されないH原子を考慮して、タイコート皮膜又は層838は、従って一態様においては、式Siwxyz(又はその均等のSiOxy)を有してもよく、例えば、式中、wは1であり、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、zは約2~約9である。通常、タイコート皮膜又は層838は、100%の炭素+酸素+ケイ素に対して正規化された場合に36%~41%の炭素を含有する。
【0167】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、本明細書の他の箇所に記載されているpH保護皮膜又は層34と組成が類似していても又は同一であってもよいが、これは必要条件ではない。
【0168】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、平均して厚さ5~200nm(ナノメートル)、任意選択的に5~100nm、任意選択的に5~20nmである。これらの厚さは重要ではない。タイコート皮膜又は層838は、その機能が基板の表面特性を変化させることであるため、一般的に比較的薄いが、必ずしもそうとは限らない。
【0169】
タイコート皮膜又は層838は、内腔18に面する内部表面と、壁15の内部表面16に面する外面とを有する。任意選択的に、タイコート皮膜又は層286は、少なくともバリア皮膜又は層と同一の広がりを有する。任意選択的に、タイコート皮膜又は層は、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を含む前駆体供給物のPECVDにより塗布される。
【0170】
タイコート皮膜又は層838の厚さは、例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)により測定することができ、その組成はX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。
【0171】
バリア皮膜又は層
図1及び図2を参照すると、バリア皮膜又は層30を任意選択的に、薬剤パッケージ210、例えば、熱可塑性薬剤パッケージの容器上にプラズマ化学気相成長法(PECVD)又は他の化学蒸着プロセスにより堆積させて、酸素、二酸化炭素、又は他のガスが容器に入ることを防止することができ、バリア皮膜288は任意選択的に、非被覆薬剤パッケージ210と比較して内腔210内への大気ガスの侵入を低減する、及び/又はパッケージ壁内への若しくはパッケージ壁を通した製剤40の浸出を防止する、及び過酸化水素及びエチレンオキシドなどの滅菌流体が熱可塑性の壁に浸透し、そして容器の内腔へ入ることを防止するのに有効である。
【0172】
充填された薬剤パッケージ又は他の容器210内で、バリア皮膜又は層30が壁15の内面又は内部表面16と、保管される製剤40を収容するようになっている内腔18との間に配置されるように、バリア皮膜又は層30は任意選択的に、熱可塑性の壁15に直接又は間接的に塗布することができる(例えば、タイコート皮膜又は層838をそれらの間に介在させることができる)。SiOxのバリア皮膜又は層30は、熱可塑性の壁15により支持される。本明細書の他の箇所に又は米国特許第7,985,188号明細書に記載されているバリア皮膜又は層30を任意の実施形態で使用することができる。
【0173】
バリア皮膜又は層30は任意選択的に、「SiOx」皮膜と特徴付けられ、ケイ素、酸素、及び任意選択的に他の元素を含有し、式中、酸素原子対ケイ素原子の比率であるxは、約1.5~約2.9、又は1.5~約2.6、又は約2である。1つの好適なバリア組成物は、例えば、xが2.3のものである。
【0174】
任意選択的に、バリア皮膜又は層30は厚さ2~1000nmであり、任意選択的に厚さ4nm~500nmであり、任意選択的に厚さ10~200nmであり、任意選択的に厚さ20~200nmであり、任意選択的に厚さ20~30nmであり、SiOx(式中、xは1.5~2.9である)を含む。SiOxのバリア皮膜又は層30は、内腔18に面する内部表面220と、タイコート皮膜又は層838の内部表面に面する外面222とを有する。例えば、任意の実施形態のバリア皮膜又は層30は、少なくとも2nm、又は少なくとも4nm、又は少なくとも7nm、又は少なくとも10nm、又は少なくとも20nm、又は少なくとも30nm、又は少なくとも40nm、又は少なくとも50nm、又は少なくとも100nm、又は少なくとも150nm、又は少なくとも200nm、又は少なくとも300nm、又は少なくとも400nm、又は少なくとも500nm、又は少なくとも600nm、又は少なくとも700nm、又は少なくとも800nm、又は少なくとも900nmの厚さで塗布されうる。バリア皮膜又は層30は、1000nm以下、又は最大で900nm、又は最大で800nm、又は最大で700nm、又は最大で600nm、又は最大で500nm、又は最大で400nm、又は最大で300nm、又は最大で200nm、又は最大で100nm、又は最大で90nm、又は最大で80nm、又は最大で70nm、又は最大で60nm、又は最大で50nm、又は最大で40nm、又は最大で30nm、又は最大で20nm、又は最大で10nm、又は最大で5nmの厚さとされうる。
【0175】
厚さ4nm~500nm、任意選択的に厚さ7nm~400nm、任意選択的に厚さ10nm~300nm、任意選択的に厚さ20nm~200nm、任意選択的に厚さ20~30nm、任意選択的に厚さ30nm~100nmの範囲が考えられる。前述の最小厚さのいずれか1つと、前述の最大厚さのいずれかの等しい又はより大きいものとで構成される特定の厚さ範囲が特に考えられる。
【0176】
SiOx又は他のバリア皮膜又は層30の厚さは、例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)により測定することができ、その組成はX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。
【0177】
pH保護皮膜又は層
本明細書で定義されるSiOxなどの特定のバリア皮膜又は層30は、本明細書の他の箇所に記載されている被覆容器、特にバリア皮膜又は層30が製剤40又は他の内容物に直接接触する被覆容器の特定の比較的高いpHの内容物により攻撃されると、6ヶ月未満でバリア改善率が測定可能な程度低下するという特徴を有することが判明した。本発明者らは、SiOxのバリア皮膜又は層30が一部の流体、例えば、5より高いpHを有する水性組成物により浸食又は溶解されることを見い出した。化学気相成長法により塗布される皮膜は非常に薄く-厚さ数十~数百ナノメートルになり得るため、浸食速度が比較的遅くても薬剤パッケージ214の所望の保管寿命よりも短い時間でバリア皮膜又は層30の有効性が失われる又は低下するおそれがある。これは、水性製剤40の多くが血液及びヒト又は動物の他の体液のpHと類似のおよそ7のpH、又はより広く4~8、あるいは5~9の範囲のpHを有するため、水性流体医薬組成物では特に問題となる。製剤40のpHが高いほどSiOx皮膜の侵食又は溶解が速くなる。任意選択的に、バリア皮膜若しくは層30、又は他のpH感受性材料をpH保護皮膜又は層34で保護することにより、この問題に対処することができる。
【0178】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、下地バリア皮膜又は層30を、界面活性剤が存在するものを含む4~8のpHを有する薬剤パッケージ210の内容物から保護する。その製造時から使用時まで内腔212の内容物と接触しているプレフィルド薬剤パッケージ210では、pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、プレフィルド薬剤パッケージ210の所期の保管寿命にわたり有効な酸素バリアを維持するのに十分、バリア皮膜又は層30の攻撃を防止又は抑制する。流体が直接接触した場合のpH保護皮膜又は層34の浸食速度、溶解速度又は浸出速度(関連する概念の異なる名称)は、5~9のpHを有する流体が直接接触した場合のバリア皮膜又は層30の浸食速度より小さい。pH保護皮膜又は層34は、プレフィルド薬剤パッケージ210の保管寿命中、バリア皮膜又は層30がバリアとして機能するのに少なくとも十分な時間、5~9のpHを有する製剤40をバリア皮膜又は層30から隔離するのに有効である。
【0179】
本発明者らは、pH保護皮膜又は層がかなりの有機成分を有する、ポリシロキサン前駆体から形成されるSiOxyの特定のpH保護皮膜又は層は、流体に曝露されても急速に浸食せず、実際、流体が4~8又は5~9の範囲内のpHを有するとき、浸食又は溶解が比較的遅いことを更に見い出した。例えば、pH8では、pH保護皮膜又は層34の溶解速度は非常に遅い。したがって、SiOxyのこれらのpH保護皮膜又は層34を、SiOxのバリア皮膜又は層30を被覆するのに使用することができ、それを薬剤パッケージ210内の製剤40から保護することによりバリア皮膜又は層30の利点を保持する。pH保護皮膜又は層34はSiOxバリア皮膜又は層30の少なくとも一部に塗布され、さもなければ内容物がSiOxのバリア皮膜又は層と接触することになる、薬剤パッケージ210内に保管される内容物からバリア皮膜又は層30を保護する。
【0180】
本開示に記載されるように、浸食を回避するための有効なpH保護皮膜又は層34をシロキサンから作製することができる。SiOxy皮膜は、環状シロキサン前駆体、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、又は線状シロキサン前駆体、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)又はテトラメチルジシロキサン(TMDSO)から堆積させることができる。
【0181】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、少なくとも6ヶ月間、製剤40により攻撃されても、バリア皮膜又は層30を少なくとも実質的に非溶解状態に保つのに効果的である。
【0182】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、非被覆面及び/又は前駆体としてHMDSOを用いたバリア被覆面と比較して、pH保護皮膜又は層と接触する化合物又は製剤40(例えば、タンパク質などのポリペプチド、天然又は合成DNAなど)の成分の沈殿を防止又は低減することができる。
【0183】
図1及び図2を参照すると、pH保護皮膜又は層34は、それぞれ前記に定義される、Siwxyz(若しくはその均等のSiOxy)(式中、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3である)で構成されてもよい、それを含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。pH保護皮膜又は層34中のSi、O及びCの原子比率は任意選択的に:
Si 100:O 50~150:C 90~200(即ち、x=0.5~1.5、y=0.9~2);
Si 100:O 70~130:C 90~200(即ち、x=0.7~1.3、y=0.9~2)
Si 100:O 80~120:C 90~150(即ち、x=0.8~1.2、y=0.9~1.5)
Si 100:O 90~120:C 90~140(即ち、x=0.9~1.2、y=0.9~1.4)、又は
Si 100:O 92~107:C 116~133(即ち、x=0.92~1.07、y=1.16~1.33)、又は
Si 100:O 80~130:C 90~150、
であってもよい。
【0184】
あるいは、pH保護皮膜又は層34は、50%未満の炭素及び25%超のケイ素のX線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化した原子濃度を有しうる。あるいは、原子濃度は、25~45%炭素、25~65%ケイ素、及び10~35%酸素である。あるいは、原子濃度は、30~40%炭素、32~52%ケイ素、及び20~27%酸素である。あるいは、原子濃度は、33~37%炭素、37~47%ケイ素、及び22~26%酸素である。
【0185】
任意選択的に、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化したpH保護被膜又は層34における炭素の原子濃度は、有機ケイ素化合物前駆体の原子式における炭素の原子濃度を超えることができる。例えば、炭素の原子濃度が、1~80原子百分率、あるいは10~70原子百分率、あるいは20~60原子百分率、あるいは30~50原子百分率、あるいは35~45原子百分率、あるいは37~41原子百分率だけ増加する実施形態が企図される。
【0186】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34における炭素対酸素の原子比率は有機ケイ素化合物前駆体と比べて増加させることができる、及び/又は、酸素対ケイ素の原子比率は有機ケイ素化合物前駆体と比べて減少させることができる。
【0187】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化したケイ素の原子濃度を有することができ、これは、供給ガスの原子式におけるケイ素の原子濃度よりも小さい。例えば、ケイ素の原子濃度が1~80原子百分率、あるいは10~70原子百分率、あるいは20~60原子百分率、あるいは30~55原子百分率、あるいは40~50原子百分率、あるいは42~46原子百分率だけ減少する実施形態が企図される。
【0188】
別のオプションとして、有機ケイ素化合物前駆体の合計式と比べて、原子比率C:Oを増加することができる、及び/又は原子比率Si:Oを減少することができる合計式を特徴としうるpH保護皮膜又は層34がいずれの実施形態においても企図される。
【0189】
Si:O:Cの原子比率は、XPS(X線光電子分光法)により求めることができる。H原子を考慮して、pH保護皮膜又は層34は、従って一態様においては、式Siwxyz、又はその均等のSiOxyを有してもよく、例えば、式中、wは1であり、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、zは約2~約9である。
【0190】
塗布時のpH保護皮膜又は層34の厚さは任意選択的に、10~1000nm;あるいは10nm~900nm;あるいは10nm~800nm;あるいは10nm~700nm;あるいは10nm~600nm;あるいは10nm~500nm;あるいは10nm~400nm;あるいは10nm~300nm;あるいは10nm~200nm;あるいは10nm~100nm;あるいは10nm~50nm;あるいは20nm~1000nm;あるいは50nm~1000nm;あるいは50nm~800nm;任意選択的に50~500nm;任意選択的に100~200nm;あるいは100nm~700nm;あるいは100nm~200nm;あるいは300~600nmである。厚さは容器全体にわたり均一である必要はなく、通常、容器の部分により好ましい値と異なる。
【0191】
pH保護皮膜又は層34は、X線反射率(XRR)によって決定されるように、1.25~1.65g/cm3、あるいは1.35~1.55g/cm3、あるいは1.4~1.5g/cm3、あるいは1.4~1.5g/cm3、あるいは1.44~1.48g/cm3の密度を有しうる。
【0192】
pH保護皮膜又は層34は、任意選択的に、約5~約9、任意選択的に約6~約8、任意選択的に約6.4~約7.8の(AFMによって測定された)RMS表面粗さ値を有しうる。AFMによって測定されたpH保護皮膜又は層34のRa表面粗さ値は、約4~約6、任意選択的に、約4.6~約5.8とされうる。AFMによって測定されたpH保護皮膜又は層34のRmax表面粗さ値は、約70~約160、任意選択的に、約84~約142、任意選択的に、約90~約130とされうる。
【0193】
pH保護の内部表面は任意選択的に、ASTM D7334-08「前進接触角測定による皮膜、基板及び顔料の表面濡れ性に関する標準的技法(Standard Practice for Surface Wettability of Coatings, Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement)」に準拠して、pH保護面上の水滴のゴニオメーター角度測定により測定した場合、90°~110°、任意選択的に80°~120°、任意選択的に70°~130°の(蒸留水との)接触角を有し得る。
【0194】
任意選択的に、任意の実施形態のpH保護皮膜又は層34のFTIR吸光度スペクトルは、通常、約1000~1040cm-1に位置するSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と、通常、約1060~約1100cm-1に位置するSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅との間において0.75を超える比率を有する。あるいは、任意の実施形態においては、この比率は、少なくとも0.8、又は少なくとも0.9、又は少なくとも1.0、又は少なくとも1.1、又は少なくとも1.2とされうる。あるいは、任意の実施形態においては、この比率は、最大で1.7、又は最大で1.6、又は最大で1.5、又は最大で1.4、又は最大で1.3とされうる。図1~5の本発明の別の実施形態として、ここで記載した任意の最小比率はここで記載した任意の最大比率と組み合わせることができる。
【0195】
任意選択的に、任意の実施形態においては、薬剤のない状態のpH保護皮膜又は層34は非油性の外観を有する。この外観により、場合によっては、効果的なpH保護皮膜又は層34を、場合によっては油性(すなわち、光沢のある)外観を有することが認められている滑性層と区別されることが認められている。
【0196】
任意選択的に、任意の実施形態におけるpH保護被覆又は層34について、注射用水で希釈され、濃縮硝酸でpH8に調整され、0.2wt.%ポリソルベート80界面活性剤を含有し(溶解試薬の変化を回避するために薬剤のない状態で測定した)、40℃である50mMリン酸カリウム緩衝液によるケイ素溶解速度は170ppb/日未満である。(ポリソルベート80は、一般的な製剤の原料であり、例えば、Tween(登録商標)-80としてUniqema Americas LLC,Wilmington Delawareから入手可能である。)
【0197】
任意選択的に、任意の実施形態におけるpH保護被覆又は層34について、る容器からpH8の試験組成物への溶解時のケイ素溶解速度は、160ppb/日未満、又は140ppb/日未満、又は120ppb/日未満、又は100ppb/日未満、又は90ppb/日未満、又は80ppb/日未満である。任意選択的に、任意の実施形態においては、ケイ素溶解速度は、10ppb/日超、又は20ppb/日超、又は30ppb/日超、又は40ppb/日超、又は50ppb/日超、又は60ppb/日超である。任意の実施形態におけるpH保護被覆又は層286について、ここで記載した任意の最低速度はここで記載した任意の最大速度と組み合わせることができる。
【0198】
任意選択的に、任意の実施形態における容器からpH8の試験組成物への溶解時のpH保護皮膜又は層34及びバリア皮膜の総ケイ素含有量は、66ppm未満、又は60ppm未満、又は50ppm未満、又は40ppm未満、又は30ppm未満、又は20ppm未満である。
【0199】
pH保護皮膜又は層34は、内腔18に面する内部表面224と、バリア皮膜又は層30の内部表面に面する外面226とを有する。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、少なくともバリア皮膜又は層30と同一の広がりを有する。あるいは、製剤40が、バリア皮膜又は層30の特定の部分と接触しない、又は稀にしか接触しない場合、pH保護皮膜又は層34はバリア皮膜より範囲が狭くてもよい。あるいは、pH保護皮膜又は層34は、バリア皮膜を設けていない領域を被覆することができる場合、バリア皮膜より広範囲にわたってもよい。
【0200】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、非環状シロキサン、単環式シロキサン、多環式シロキサン、ポリシルセスキオキサン、シラトラン、シルクアシラトラン、シルプロアトラン、又はこれらの前駆体のいずれか2種以上の組合せを含む前駆体供給物のプラズマ化学気相成長法(PECVD)により塗布することができる。このような用途に考えられる幾つかの特定の非限定的な前駆体としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、HMDSO、又はTMDSOが挙げられる。
【0201】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34のFTIR吸光度スペクトルは、約1000~1040cm-1におけるSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と、約1060~約1100cm-1におけるSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅との比率が0.75より大きい。
【0202】
内腔18に収容された、容器中の5~9のpH、任意選択的に8のpHを有する流体組成物の存在下で、薬剤パッケージ210の計算保管寿命は、4℃の保管温度で6カ月超である。任意選択的に、8のpHを有する流体組成物が直接接触した場合のpH保護皮膜又は層34の浸食速度は、同じ条件下で同じ流体組成物が直接接触した場合のバリア皮膜又は層30の浸食速度の20%未満、任意選択的に15%未満、任意選択的に10%未満、任意選択的に7%未満、任意選択的に5%~20%、任意選択的に5%~15%、任意選択的に5%~10%、任意選択的に5%~7%である。任意選択的に、流体組成物は、44時間毎の流体組成物との接触でpH保護皮膜又は層34の厚さ1nm以下の割合でpH保護皮膜又は層34を除去する。
【0203】
任意選択的に、注射用水で希釈され、濃縮硝酸でpH8に調整され、0.2wt.%ポリソルベート80界面活性剤を含有する50mMリン酸カリウム緩衝液による容器からのpH保護皮膜又は層34及びバリア皮膜又は層30のケイ素溶解速度は、170ppb(10億分率)/日未満である。
【0204】
任意選択的に、容器から40℃の0.1N水酸化カリウム水溶液に溶解する場合の、pH保護皮膜又は層34及びバリア皮膜又は層30の総ケイ素含有量は、66ppm未満である。
【0205】
任意選択的に、薬剤パッケージ210の計算保管寿命(総Si/Si溶解速度)は2年超である。
【0206】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は:
【数1】
として測定される、減衰全反射(ATR)FTIRで測定したOパラメータが0.4未満である。
【0207】
Oパラメータは、最も広くは0.4~0.9のOパラメータ値を請求する米国特許第8,067,070号明細書において定義される。1253cm-1において0.0424の吸光度及び1000~1100cm-1において0.08の最大吸光度を得るための波数及び吸光度スケールの補間の結果として計算されたOパラメータの0.53を示すために注釈されること以外は、例えば米国特許第8,067,070号明細書の図5に示すプロットにおいて、Oパラメータは、上記式の分子及び分母を見い出すための、FTIR振幅対波数プロットの物理的分析から測定されうる。Oパラメータは、また、デジタル波数対吸光度データから測定されうる。
【0208】
米国特許第8,067,070号明細書では、請求されるOパラメータ範囲が優れた不活性化皮膜を提供すると主張する。驚くべきことに、本発明者は、米国特許第8,067,070号明細書において請求された範囲外のOパラメータが、米国特許第8,067,070号明細書において得られるものよりも更に良好な結果を提供することができることを発見した。あるいは、図1~5の実施形態においては、Oパラメータは、0.1~0.39、又は0.15~0.37、又は0.17~0.35の値を有する。
【0209】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は減衰全反射(ATR)によって測定される0.7未満のNパラメータを示し、以下のように測定される。
【数2】
【0210】
Nパラメータもまた米国特許第8,067,070号明細書に記載されており、2つの特定波数(これら波数のどちらも範囲ではない)における強度が使用されること以外はOパラメータと同様に測定される。米国特許第8,067,070号明細書は、0.7~1.6のNパラメータを有する不活性化層を請求する。同じく、本発明者は、上述のように、0.7を下回るNパラメータを有するpH保護皮膜又は層34を用いてより良好な皮膜を作製した。あるいは、Nパラメータは、少なくとも0.3、又は0.4~0.6、又は少なくとも0.53の値を有する。
【0211】
Siwxy又はその均等のSiOxyの保護皮膜又は層は、それがpH保護皮膜又は層34としても機能するかどうかに関わらず、疎水性層としての有用性も有し得る。適した疎水性皮膜又は層及びそれらの用途、特性、及び使用については米国特許第7,985,188号明細書に記載されている。本発明の任意の実施形態では、どちらの種類の皮膜又は層の特性も有する二重機能の保護/疎水性皮膜又は層を設けることができる。
【0212】
滑性皮膜又は層
図面を参照すると、薬剤パッケージ210の内部表面16のなどのプラスチック基板上、例えばその壁15上に、滑性皮膜又は層287を作製する方法が示されている。容器14を、PECVDを用いた上記被覆方法で被覆する場合、被覆方法は幾つかの工程を含む。開端、閉端、及び内部表面を有する容器14が提供される。少なくとも1つのガス状反応物が容器14内に導入される。プラズマは、容器14の内部表面上に反応物の反応生成物、すなわち皮膜を形成するのに有効な条件下で容器14内に形成される。
【0213】
この方法を実施するのに適した装置及び一般的な条件は、米国特許第7,985,188号明細書に記載され、これは参照により完全に本明細書に援用される。
【0214】
本方法は、有機ケイ素化合物前駆体、任意選択的に酸化ガス(例えばO2)、及び不活性ガスを含むガスを、基板表面の近傍に供給することを含む。不活性ガスは、任意選択的に、希ガス、例えばアルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、ネオン、又はこれらの不活性ガスの2つ以上の組合せである。プラズマは、プラスチック基板に隣接してプラズマ形成エネルギーを提供することによって、ガス中に生成される。その結果、滑性皮膜又は層287が、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって基板表面16等上に形成される。任意選択的に、プラズマ形成エネルギーは、第1の段階において第1のエネルギーレベルで第1のパルスとして印加され、その後、第2の段階において第1のエネルギーレベルより低い第2のエネルギーレベルで更に処理される。任意選択的に、第2の段階は第2のパルスとして適用される。
【0215】
例えば、滑性皮膜が調製される場合:任意選択的に1~6の標準体積、任意選択的に2~4の標準体積、任意選択的に6以下の標準体積、任意選択的に2.5以下の標準体積、任意選択的に1.5以下の標準体積、任意選択的に1.25以下の標準体積の前駆体;1~100の標準体積、任意選択的に5~100の標準体積、任意選択的に10~70の標準体積のキャリアガス;0.1~2の標準体積、任意選択的に0.2~1.5の標準体積、任意選択的に0.2~1の標準体積、任意選択的に0.5~1.5の標準体積、任意選択的に0.8~1.2の標準体積の酸化剤の標準体積比を有する、ガス反応物又はプロセスガスを用いることができる。
プラズマ形成エネルギーの第1の段階
【0216】
任意の実施形態において、プラズマは、マイクロ波エネルギー又はRFエネルギーで任意選択的に生成され得る。プラズマは、任意選択的に、好ましくは10kHz~300MHz未満の周波数、より好ましくは1~50MHz、更により好ましくは10~15MHz、最も好ましくは13.56MHzの無線周波数で電力供給される電極を用いて、生成することができる。
【0217】
任意の実施形態において、第1のパルスエネルギーは、例えば、21~100ワット、あるいは25~75ワット、あるいは40~60ワットである。
【0218】
任意の実施形態において、第1のパルスにつき、プラズマ容積に対する電極電力の比は、任意選択的に5W/ml以上、好ましくは6W/ml~150W/ml、より好ましくは7W/ml~100W/ml、最も好ましくは7W/ml~20W/mlである。
【0219】
任意の実施形態において、第1のパルスは、任意選択的に、0.1~5秒、あるいは0.5~3秒、あるいは0.75~1.5秒の間、印加することができる。第1の位相エネルギーレベルは、任意選択的に、少なくとも2つのパルスで印加することができる。第2のパルスは、第1のパルスよりも低いエネルギーレベルにある。さらなる選択肢として、第1の位相エネルギーレベルは、任意選択的に、少なくとも3つのパルスで印加することができる。第3のパルスは、第2のパルスよりも低いエネルギーレベルであってもよい。
【0220】
プラズマ形成エネルギーの第2の段階
任意の実施形態において、第2の段階のエネルギーレベルは、任意選択的に0.1~25ワット、あるいは1~10ワット、あるいは2~5ワットとすることができる。
【0221】
第1の段階と第2の段階の関係
任意の実施形態において、プラズマ形成エネルギーは、任意選択的に、第1の段階において第1のエネルギーレベルで第1のパルスとして印加され、その後、第2の段階において第2のエネルギーレベルで更に処理される。
【0222】
滑性プロファイル
滑性皮膜は、解放力(Fi)と滑動力(Fm)との間の差を減少させる一貫したプランジャ力を任意選択的に提供する。これら2つの力は、滑性皮膜の有効性のための重要な性能指標である。FiとFmに関し、低いが低すぎない値を持つことが望ましい。低すぎるFiでは、これは低すぎるレベルの抵抗(極端にはゼロである)を意味するが、早期の/意図しない流れが発生する可能性があり、これは、プレフィルドシリンジの内容物の、意図しない早期の、又は制御されない排出につながる。
【0223】
更に有利なFi及びFm値は、実施例の表に見い出すことができる。上記の範囲よりも低いFi値及びFm値を達成することができる。そのような低い値を有する皮膜も、本発明に包含されると考えられる。
【0224】
解放力及び滑動力は、特に自動インジェクタなどの自動化デバイスでは、デバイスの保管寿命全体にわたって重要である。解放力及び/又は滑動力の変化は、自動インジェクタの失火につながる。
【0225】
本発明による滑性皮膜で被覆された容器(例えば、シリンジバレル及び/又はプランジャ)は、非被覆の容器よりも低いFi及び/又はFm(例えば、Fi及び/又はFmの測定によって決定される)を意味する、より高い滑性を有する。それらはまた、外部表面において、本明細書に記載のSiOx皮膜で被覆された容器よりも高い滑性を有する。
【0226】
本発明の別の態様は、単環式シロキサン、単環式シラザン、多環式シロキサン、多環式シラザン、又はこれらの2つ以上の任意の組合せを含む供給ガスから、PECVDによって堆積された滑性層又は皮膜である。皮膜は、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化した炭素の原子濃度を有することができ、これは、供給ガスの原子式における炭素の原子濃度よりも大きい。
【0227】
任意選択的に、炭素の原子濃度が、滑性皮膜が作製されたときの有機ケイ素化合物前駆体における炭素の原子濃度に対して、1~80原子百分率(欧州特許第2251455号明細書の実施例15のXPS条件を計算し、これに基づいた場合)、あるいは10~70原子百分率、あるいは20~60原子百分率、あるいは30~50原子百分率、あるいは35~45原子百分率、あるいは37~41原子百分率だけ増加する。
【0228】
本発明のさらなる態様は、単環式シロキサン、単環式シラザン、多環式シロキサン、多環式シラザン、又はこれらの2つ以上の任意の組合せを含む供給ガスから、PECVDによって堆積された滑性層又は皮膜である。皮膜は、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化したケイ素の原子濃度を有することができ、これは、供給ガスの原子式におけるケイ素の原子濃度よりも小さい。欧州特許第2251455号明細書の実施例15を参照。
【0229】
任意選択的に、ケイ素の原子濃度が、1~80原子百分率(欧州特許第2251455号明細書の実施例15のXPS条件を計算し、これに基づいた場合)、あるいは10~70原子百分率、あるいは20~60原子百分率、あるいは30~55原子百分率、あるいは40~50原子百分率、あるいは42~46原子百分率だけ減少する。
【0230】
滑性皮膜は、X線反射率(XRR)により決定した場合、1.25~1.65g/cm3、あるいは1.35~1.55g/cm3、あるいは1.4~1.5g/cm3、あるいは1.4~1.5g/cm3、あるいは1.44~1.48g/cm3の密度を有しうる。
【0231】
他のタイプの滑性皮膜又は層287もまた、例示された実施形態で説明したプラズマ印加SiOxyz皮膜又は層の代替物として企図される。1つの例はフッ素化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)皮膜であり、もう1つは架橋フッ素化ポリマー、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)、又はポリシロキサン皮膜、例えば、架橋シリコーンオイルである。
【0232】
フッ素化ポリマー皮膜は、例えばフッ素化前駆体を使用して、流体受容内部表面の上又はその近傍で前駆体を化学的に修飾することによって、適用することができる。
【0233】
任意選択的に、前駆体は、二量体テトラフルオロパラキシリレン;ジフルオロカルベン;モノマーテトラフルオロエチレン;式F2C=CF(CF2xF(式中、xは1~100、任意選択的に2~50、任意選択的に2~20、任意選択的に2~10である)を有するオリゴマーテトラフルオロエチレン;クロロジフルオロ酢酸ナトリウム;クロロジフルオロメタン;ブロモジフルオロメタン;ヘキサフルオロプロピレンオキシド;1H、1H、2H、2H-パーフルオロデシルアクリレート(FDA);アルカン部分が1~6個の炭素原子を有するブロモフルオロアルカン;アルカン部分が1~6個の炭素原子を有するヨードフルオロアルカン;又はこれらのうちの任意の2つ以上の組合せを含む。
【0234】
フッ素化ポリマーは、任意選択的に少なくとも0.01マイクロメートル~最大100マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.05マイクロメートル~最大90マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大80マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大70マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大60マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大50マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大40マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大30マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大20マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大15マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大12マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大10マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大8マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大6マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大4マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大2マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大1マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大0.9マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大0.8マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大0.7マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大0.6マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル~最大0.5マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル~最大5マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル~最大4マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル~最大3マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル~最大2マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル~最大1マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に約10マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に約2マイクロメートルの厚さである。
【0235】
フッ素化ポリマーは、任意選択的に、蒸着、例えば化学蒸着によって適用することができる。任意選択的に、フッ素化ポリマーは、二量体テトラフルオロパラキシリレンの化学蒸着によって適用することができる。好適なフッ素化ポリマーの例は、ポリテトラフルオロパラキシリレンである。任意選択的に、フッ素化ポリマーは、実質的にポリテトラフルオロパラキシリレンからなる。
【0236】
任意選択的に、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、ポリテトラフルオロエチレンを含む。任意選択的に、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、実質的にポリテトラフルオロエチレンからなる。
【0237】
例えば、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、流体受容内部表面上又はその近傍で前駆体を化学的に修飾することによって適用し、流体受容内部表面上にフッ素化ポリマー皮膜又は層を生成することができる。任意選択的に、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、化学蒸着によって適用される。一例として、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、加熱ワイヤ化学蒸着(HWCVD)によって適用することができる。別の例では、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって適用することができる。任意の実施形態において、適切な皮膜を施すための混合プロセス又は他のプロセスも企図される。
【0238】
フッ素化ポリマー皮膜を適用するのに適したHWCVDプロセスの別の例は、Hilton G.Pryce Lewis、Neeta P.Bansal、Aleksandr J.White、Erik S.Handy、HWCVD of Polymers:Commercialization and Scale-up、THIN SOLID FILMS 517(2009)3551~3554;及び2012年1月5日公開の米国特許出願公開第2012/0003497A1号明細書に記載されており、フッ素化ポリマー皮膜及びそれらの用途の説明のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0239】
任意選択的に、任意の実施形態において、前駆体は、パリレンN又はポリ(パラキシリレン);パリレンC又はポリ(2-クロロパラキシリレン);パリレンD又はポリ(2,5-ジクロロパラキシリレン);パリレンHT(登録商標)又はポリ(テトラフルオロパラキシリレン)、又はこれらの二量体、又はこれらの2つ以上の組合せを含む。パリレンは、Specialty Coating Systems, Inc.によって説明され、例えば、Lonny Wolgemuth、Challenges With Prefilled Syringes:The Parylene Solution、www.ongrugdelivery.com、pp.44-45(Frederick Furness Publishing、2012)で議論されるように、基板に適用することができる。この段落で言及された文書は、ここに参照として援用される。
【0240】
架橋ペルフルオロポリエーテル(PFPE)又はポリシロキサン皮膜287は、例えば、液体パーフルオロポリエーテル(PFPE)又はポリシロキサンを表面に塗布し、その後それをエネルギー源に曝露することにより処理することによって適用することができる。任意の追加の工程は、潤滑剤の適用前に、表面をエネルギー源、具体的には大気圧でイオン化ガスプラズマに曝すことを含む。これらの方法の結果として、潤滑剤は、表面からの移動に抵抗し、それによりブレークアウト力及び摺動摩擦力を減少させ、このように潤滑されたプレフィルドシリンジの内容物への潤滑剤の導入を減少させる。
【0241】
潤滑剤は、当該技術分野において知られている多数の方法のいずれかによって対象の表面に適用することができる。例として、適切な適用方法には、スプレー、噴霧、スピンキャスティング、塗布、浸漬、ワイピング、タンブリング、及び超音波が含まれる。潤滑剤を適用する方法は限定されない。潤滑剤は、フルオロケミカル化合物又はポリシロキサン系化合物であってもよい。
【0242】
エネルギー源は、イオン化ガスプラズマとすることができる。ガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、及びクリプトンを含む希ガスであってもよい。あるいは、ガスは、例えば空気、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素及び水蒸気を含む酸化性ガスであってもよい。更に別の代替では、ガスは、例えば、窒素及び水素を含む非酸化性ガスであってもよい。これらのガスの任意の混合物も使用することができる。
【0243】
イオン化ガスプラズマが生成される正確なパラメータは重要でない。これらのパラメータは、例えば、その中でプラズマが生成されるガス、電極の幾何学的形状、電源の周波数、処理される表面の寸法を含む要因に基づいて選択される。処理時間は、約0.001秒~約10分の範囲であり、加えて約0.001秒~約5分の範囲であり、更に約0.01秒~約1分の範囲である。周波数は、約60ヘルツ~約2.6ギガヘルツの範囲であり、加えて約1キロヘルツ~約100キロヘルツの範囲であり、更に約3キロヘルツ~約10キロヘルツの範囲である。電力設定は、例えば、約10キロワット以下であってもよい。
【0244】
潤滑剤で被覆された表面はまた、又は代わりに、潤滑剤を処理するのに必要なエネルギーを提供する電離放射線に曝露され得る。電離放射線源は、ガンマ線又は電子線放射線であり得る。典型的には、市販のガンマ線照射処理システムは、コバルト60をガンマ線源として使用するが、セシウム137又は他のガンマ線源も使用することができる。市販の電子ビーム放射システムは、電子銃組立品を使用して電源から電子を生成し、電子を加速し、電子をビームに集束させる。この電子ビームは、次に、処理される材料に向けられる。潤滑剤で被覆された表面は、約0.1メガラド~約20メガラドの範囲、加えて約0.5メガラド~約15メガラドの範囲、更に約1メガラド~約10メガラドの範囲の電離放射線量に曝露されてもよい。
【0245】
上記プロセス及び得られる滑性皮膜又は層287に関する上記の及びさらなる詳細は、米国特許出願公開第2004/0231926A1号明細書(Sakhraniら)に開示され、これは、参照により本明細書に援用される。
【0246】
滑性皮膜若しくは層又は疎水性皮膜若しくは層は、米国特許第7,985,188号明細書に記載のように適用することができる。
【0247】
段階的複合層(Graded Composite Layer)
バリア皮膜又は層30及び隣接するpH保護皮膜又は層34に関してここで考えられる別の方法は、任意の2つ以上の隣接PECVD層の段階的複合体、例えば、図1に示すように、バリア皮膜又は層30及びpH保護皮膜又は層34及び/又は滑性皮膜又は層287の段階的複合体である。段階的複合物は、それらの間に中間組成物の遷移又は界面を有する別個のpH保護皮膜又は層34及び/又はバリア皮膜又は層30、又は、それらの間に中間組成物の中間にある明確な(intermediate distinct)pH保護皮膜又は層34を有する別個の保護及び/又は疎水性層及びSiOx、又は、バリア皮膜又は層30及び/又は疎水性皮膜又は層から、pH保護皮膜又は層34又は滑性皮膜又は層287に、皮膜セット285への法線方向に連続的に又は段階的に変化させる1つの皮膜又は層とされうる。
【0248】
段階的複合物の段階はどの方向にも進むことができる。例えば、バリア皮膜又は層30は、内部表面16、又はタイコート皮膜若しくは層838などの基板に直接塗布することができ、内部表面16から離れたpH保護皮膜又は層34まで累進することができる。任意選択的に、更に、疎水性皮膜又は層、又は滑性皮膜又は層287などの別の種類の皮膜又は層まで累進することができる。累進的タイコート皮膜又は層838は、ある組成物の層が別の組成物の層に比べて基板に接着するのにより好適である場合に特に企図される。この場合、より良好に接着する組成物は、例えば、基板に直接塗布することができる。段階的タイコート皮膜又は層のより遠い部分は、隣接する段階的タイコート皮膜又は層の部分に比べて基板とあまり融和しないものとなりうることが考えられる。これは、いずれの箇所においてもタイコート皮膜又は層は特性が徐々に変化しうるため、タイコート皮膜又は層のほぼ同じ深さの隣接する部分はほぼ同一の組成物を有し、実質的に異なる深さの物理的により広く分離した部分はより多種多様な特性を有しうることが理由である。また、より劣るバリアを形成する、より離れたタイコート皮膜又は層部分が、バリアによって妨げられるか遮断されることを意図した物質で汚染されることを防止するため、基板への又は基板からの物質の移動に対するより良好なバリアを形成するタイコート皮膜又は層部分を基板に直接設けることができると考えられる。
【0249】
塗布された皮膜又は層は、段階的とされる代わりに、任意選択的に、1つの層と次の層との間における組成物の大きな勾配なしで明確な遷移を有することができる。そのような皮膜又は層は、例えば、層を形成するためのガスを非プラズマ状態における定常状態流として提供し、その後、皮膜又は層を基板上に形成するために短時間のプラズマ放電によりシステムを励起することによって作製することができる。次の皮膜又は層が塗布される場合、前の皮膜又は層用のガスは除去され、次の皮膜又は層用のガスがプラズマを励起する前に定常状態で適用され、再度、基板又はその最も離れた前の皮膜又は層の表面に、存在する場合、界面におけるわずかな徐々の遷移を有して別の層を形成する。
【0250】
一実施形態は、基板上に疎水性pH保護皮膜又は層34を形成するのに有効な条件下で実施することができる。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34の疎水性は、気体反応物中のO2対有機ケイ素化合物前駆体の比を設定することにより、及び/又はプラズマを発生させるために使用される電力を設定することにより調整することができる。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、非被覆面より低いぬれ張力、任意選択的に20~72ダイン/cm、任意選択的に30~60ダイン/cm、任意選択的に30~40ダイン/cm、任意選択的に34ダイン/cmのぬれ張力を有し得る。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は非被覆面より疎水性が高くてもよい。
【0251】
PECVD皮膜又は層を形成するためのPECVD装置
特にタイコート皮膜若しくは層838、バリア皮膜若しくは層30、又はpH保護皮膜若しくは層34を含む、本明細書に記載のPECVD皮膜又は層のいずれかを塗布するのに適したPECVD装置、システム、及び前駆体物質は、PCT出願国際公開第2014085348A2号パンフレット、又は米国特許第7,985,188号明細書に記載されており、この特許は参照により援用される。
【0252】
これらの条件の概要を、このような容器の製造に適合された容器処理システムを示す図6図8に記載する。本発明の目的に適したPECVD装置又は被覆台60は、容器支持体50と、プローブ108によって画定された内側電極と、任意選択的に略円筒状の外側電極160と、電源162とを含む。内側電極108は、PECVD処理中に容器14の内腔内に少なくとも部分的に配置され、外側電極160は、PECVD処理中に容器14の内腔の外側に配置される。容器支持体50上に配置された予めキャップが嵌められた組立品12は、任意選択的に真空チャンバとすることができるプラズマ反応チャンバを画定する容器14を有する。任意選択的に、真空源98、反応ガス源144、ガス供給(プローブ108)、又はこれらの2つ以上の組合せを供給することができる。
【0253】
本発明の任意の実施形態では、PECVD装置は、容器14上、特に内腔を画定する略円筒状の内面(例えば、4~15mmの範囲の直径を有するが、これらの限界は重要ではない)を有するその壁上に、1つ以上の皮膜のPECVDセットを適用することが企図される。
【0254】
PECVD装置は、大気圧PECVDのために使用することができ、この場合、予めキャップが嵌められた組立品12によって画定されるプラズマ反応チャンバは真空チャンバとして機能する必要はない。
【0255】
図6図8を参照すると、容器支持体50は、ガスを、開口部82上に配置された予めキャップが嵌められた組立品12内にガスを運ぶためのガス入口ポート104を含む。ガス入口ポート104は、例えば、少なくとも1つのOリング106、又は直列の2つのOリング、又は直列の3つのOリングによって提供される摺動封止を有することができ、これは、プローブ108がガス入口ポート104を通して挿入される場合、円筒状のプローブ108に対して配置され得る。プローブ108は、その遠位端110でガス送達口まで延びるガス入口導管とすることができる。図示された実施形態の遠位端110は、1つ以上のPECVD反応物及び他の前駆体供給物又はプロセスガスを提供するために、予めキャップが嵌められた組立品12内に適切な深さで挿入され得る。プローブ108によって画定された内側電極は、内腔内に延在し、略円筒状の内面と同軸かつ(任意選択的に)半径方向に10.2~6.9mm離間した端部又は遠位部110を含む外面を有する。内側電極108は、ガス状PECVD前駆体を内腔に導入するための少なくとも1つの出口、例えば、任意選択的に1つ以上の穿孔又は送達口110を有する、供給材料を供給するための内部通路又はガス送達口110を有する。電磁エネルギーは、略円筒状の内面上に所望の平均厚さを有するプラズマ化学気相成長法(PECVD)ガスバリア皮膜を形成するのに有効な条件下で、外側電極160に印加することができる。
【0256】
図8は、例えば、図示された全ての実施形態で使用可能な被覆台60の付加的な任意選択的な詳細を示す。被覆台60はまた、その真空ライン576内に、圧力センサ152につながるメイン真空バルブ574を有することもできる。手動バイパスバルブ578をバイパスライン580に設けることができる。ベントバルブ582は、ベント404における流れを制御する。
【0257】
PECVDガス又は前駆体源144からの流れは、主反応物供給ライン586を通る流れを調節する主反応物ガスバルブ584によって制御することができる。ガス源144の1つの成分は、前駆体を含む有機ケイ素液体リザーバ588であってもよい。リザーバ588の内容物は、任意選択的に所望の流量を提供するための適切な長さで提供され得る、有機ケイ素毛細管ライン590を通して引き出すことができる。有機ケイ素蒸気の流れは、有機ケイ素遮断バルブ592によって制御することができる。液体リザーバ588のヘッドスペース614には、大気圧(及びその中の変動)に依存しない反復可能な有機ケイ素液体供給を確立するため、圧力ライン618によって、ヘッドスペース614に接続された加圧空気などの圧力源616から、例えば、0~15psi(0~78cmHg)の範囲の圧力を加えることができる。リザーバ588は封止することができ、(ヘッドスペース614からの加圧ガスではない)純粋な有機ケイ素液体のみが毛細管590を通って流れることを確実にするため、毛細管接続部620はリザーバ588の底部にあってもよい。有機ケイ素液体を蒸発させて有機ケイ素蒸気を発生させることが必要又は望ましい場合、有機ケイ素液体は、任意選択的に周囲温度より高い温度で加熱することができる。この加熱を達成するために、装置は、有利には、前駆体リザーバの出口からシリンジへのガス入口に可能な限り近くへの加熱送達ラインを含むことができる。予熱は、例えばOMCTSを供給する場合に、有用であり得る。
【0258】
酸化剤ガスは、マスフローコントローラ598によって制御され、酸化剤遮断バルブ600を備えた酸化剤ガス供給ライン596を介して、酸化剤ガスタンク594から供給され得る。
【0259】
任意選択的に、任意の実施形態において、他の前駆体、酸化剤及び/又は602などの希釈ガスリザーバを設けて、必要に応じて特定の堆積プロセスのために追加の材料を供給することができる。602などの各リザーバは、適切な供給ライン604及び遮断バルブ606を有し得る。
【0260】
特に図6を参照すると、処理台60は、処理中に予めキャップが嵌められた組立品12内にプラズマを生成するための電界を提供するために高周波電源162によって供給される外側電極160を含み得る。この実施形態では、プローブ108は電気的に導電性であり、接地することができ、したがって、予めキャップが嵌められた組立品12内に対向電極を提供することができる。あるいは、任意の実施形態において、外側電極160を接地することができ、プローブ108を電源162に直接接続することができる。
【0261】
図6図8の実施形態では、外側電極160は、図6及び図7に示すように略円筒状であってもよく、略U字形の細長いチャネルであってもよい。図示された各実施形態は、予めキャップが嵌められた組立品12の周りに近接して配置された164及び166などの1つ以上の側壁と、任意選択的に上端168とを有することができる。
【0262】
任意選択的に、任意の実施形態において、外側電極(160)は、有孔材料、例えば金属ワイヤメッシュ材料で作ることができる。あるいは、外側電極(160)は、金属円筒などの連続的な材料(例えば、穿孔されたもの、織られたもの、編まれたもの、又はフェルト化されたものでないことを意味する)で作ることができる。
【0263】
任意選択的に、任意の実施形態において、内側電極(108)は内腔(18)内に軸方向に延びる。
【0264】
選択的に、任意の実施形態において、ワークピース(12)の表面(16)のプラズマ改質は、化学蒸着、任意選択的にプラズマ化学気相成長法(PECVD)を含む。
【0265】
前述したように、内側電極(108)は、任意選択的に、ガス状材料を内腔(18)に供給するための材料供給チューブ(104)として二重の役割を果たすことができる。任意選択的に、任意の実施形態において、材料供給チューブ(104)は、内腔(18)内に配置された壁を有する。
【0266】
任意選択的に、任意の実施形態において、壁は、ガス材料を内腔(18)に通すための穿孔を有する。
【0267】
任意選択的に、このシステムによりさらなる工程を行うことができる。例えば、被覆容器を、製剤40を流体供給装置から被覆容器の内腔に入れる流体充填装置に搬送することができる。
【0268】
別の例では、充填された容器を、クロージャ、例えば、プランジャ又はクロージャをクロージャ供給装置から取り、それらを被覆容器の内腔に配置するクロージャ取り付け装置に搬送することができる。
【0269】
SiOxバリア皮膜又は層30を形成するための反応条件は、米国特許第7,985,188号明細書に記載されており、この特許は参照により援用される。
【0270】
タイコート又は層(接着皮膜又は層とも呼ぶ)は、例えば、前駆体としてテトラメチルジシロキサン(TMDSO)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を流量0.5~10sccm、好ましくは1~5sccm;酸素流量0.25~5sccm、好ましくは0.5~2.5sccm;及びアルゴン流量1~120sccm、好ましくは1mLシリンジではこの範囲の上部、5mlバイアルではこの範囲の下部で用いて、作製することができる。PECVD中の容器内の全圧は、0.01~10トル、好ましくは0.1~1.5トルとすることができる。印加される電力レベルは、5~100ワット、好ましくは1mLシリンジではこの範囲の上部、5mlバイアルではこの範囲の下部とすることができる。堆積時間(即ち、RF電源の「投入」時間)は0.1~10秒、好ましくは1~3秒である。電源サイクルを任意選択的に、電源投入時に、2秒などの短時間で0ワットから全出力に直線的に上昇させる又は漸次増加させることができ、それによりプラズマの均一性を改善することができる。しかし、一定時間での出力の直線的上昇は任意選択的である。
【0271】
本明細書に記載のpH保護皮膜又は層34皮膜又は層は、多くの異なる方法で塗布することができる。一例では、米国特許第7,985,188号明細書に記載の低圧PECVD法を使用することができる。別の例では、低圧PECVDを使用する代わりに、大気圧PECVDを用いてpH保護皮膜又は層34を堆積させることができる。別の例では、皮膜を単に蒸発させ、保護されるSiOx層上に堆積させることができる。別の例では、皮膜を、保護されるSiOx層上にスパッタリングすることができる。更に別の例では、pH保護皮膜又は層34を、SiOx層のリンス又は洗浄に使用される液体媒体から塗布することができる。
【0272】
薬剤パッケージ
図1図2及び図15図17により最も広く示される薬剤パッケージ210は、任意の実施形態において企図される。
【0273】
図1図5図10、及び図19図32は、内腔18を囲む壁15、内腔18内の製剤40、及び容器皮膜セット285を含む、幾つかの例示的な薬剤パッケージ又は他の容器210を示す。製剤40は内腔18に収容されている。任意選択的に、実施形態のいずれかに関して、製剤40は、5~6、任意選択的に6~7、任意選択的に7~8、任意選択的に8~9、任意選択的に6.5~7.5、任意選択的に7.5~8.5、任意選択的に8.5~9のpHを有する水性流体である。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、製剤40をバリア皮膜288から隔離するのに有効である。任意選択的に、5~9のpHを有する水性製剤40が直接接触した場合のpH保護皮膜又は層34の浸食速度は、5~9のpHを有する水性製剤40が直接接触した場合のバリア皮膜288の浸食速度より低い。任意選択的に、図1図5の実施形態のいずれかに関して、薬剤パッケージ210の保管寿命は、薬剤パッケージ210が組み立てられた後、少なくとも1年、あるいは少なくとも2年であってもよい。
【0274】
任意選択的に、実施形態のいずれかに関して、保管寿命は、3℃で、あるいは4℃以上で、あるいは20℃以上で、あるいは23℃で、あるいは40℃で測定される。
【0275】
図9を参照すると、シリンジとして具現化される薬剤パッケージ210は任意選択的に、バレル14に挿入されるプランジャとして具現化されるクロージャ36と、プランジャロッド38とを含む。プランジャ36は任意選択的に、少なくともバレル内部表面16と接触する表面に滑性皮膜又は層287を備える。プランジャ上の滑性皮膜又は層287は、保管中の「付着摩擦(sticktion)」を防止し、プランジャを前進させるときのプランジャ先端部とバレルとの摩擦を低下させ続けるのに適切な位置にあり、CVDにより塗布されると、従来のシリコンオイル(silicon oil)皮膜又は層と比較して、プランジャ先端部がバレルに及ぼす力による変位を受け難いと考えられ、独立した液滴の場合よりも均一に均一な皮膜として塗布される。
【0276】
プレフィルド薬剤パッケージ210中の眼科用薬剤製剤が提供される。プレフィルド薬剤パッケージ210は、内腔18を有する容器14と、内腔18内の硝子体内注入に適した眼科用薬剤の液体製剤40と、内腔18内に配置されたクロージャ36、例えば、クロージャ又はプランジャ、とを含む。
【0277】
容器14は、例えば、シリンジバレル、カートリッジ、又はバイアルであり得る。容器14は、内腔18の少なくとも一部を囲む内部表面16と、外部表面216と、壁15の内部表面16及び外部表面216の少なくとも一方上の皮膜セット285とを有する熱可塑性の壁15を有する。皮膜セット285は、タイコート皮膜又は層838、バリア皮膜又は層30、及び任意選択的にpH保護皮膜又は層34を含み得る。
【0278】
タイコート皮膜又は層838は、内部表面16又は外部表面216上に形成することができる。これはSiOxyz組成物(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を有する。タイコート皮膜又は層838は、壁15に面する対向面840と、壁15と反対の方向に面する反対面842とを有する。
【0279】
バリア皮膜又は層30は、SiOx組成物(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5~約2.9である)を有する。バリア皮膜又は層30は、タイコート皮膜又は層838の反対面842に面する対向面222と、タイコート皮膜又は層838と反対の方向に面する反対面216とを有する。
【0280】
pH保護皮膜又は層34は、SiOxyz組成物(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を有する。pH保護皮膜又は層34は、存在する場合、バリア皮膜又は層30の反対面216に面する対向面226と、バリア皮膜又は層30と反対の方向に面する反対面224とを有する。
【0281】
クロージャ36、例えばプランジャ又はストッパが内腔18内に配置される。これは、液体製剤40に面する前面35を有する。
【0282】
任意選択的に、任意の実施形態において、0.2ml~10ml、あるいは0.2~1.5ml、あるいは0.5ml~1.0ml、あるいは0.5ml、1.0ml、3ml又は5mlの公称最大充填用量を有するプレフィルド薬剤パッケージ210が提供される。
【0283】
任意選択的に、任意の実施形態において、クロージャ36の前面35は、フルオロポリマー表面、任意選択的に成形フルオロポリマー表面、又はフルオロポリマー皮膜若しくは層、例えば、積層フルオロポリマーフィルム又はフルオロポリマー皮膜、を有する。
【0284】
任意選択的に、任意の実施形態において、硝子体内注射に適した眼科用薬剤は、VEGF阻害薬を含む。
【0285】
任意選択的に、任意の実施形態において、VEGF阻害薬は、抗VEGF抗体又はそのような抗体の抗原結合フラグメントを含む。
【0286】
任意選択的に、任意の実施形態において、VEGF阻害薬は、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ベバシズマブ、又はこれらの2種以上の組合せ、任意選択的にラニビズマブ、を含む。
【0287】
任意選択的に、任意の実施形態において、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤40の濃度は、1mlの液体製剤40あたり1~100mgの薬物活性剤(mg/ml)、あるいは2~75mg/ml、あるいは3~50mg/ml、あるいは5~30mg/ml、あるいは6mg/ml又は10mg/mlである。
【0288】
任意選択的に、任意の実施形態において、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤40は、6mg/mL、あるいは10mg/mLのラニビズマブを含む。
【0289】
任意選択的に、任意の実施形態において、硝子体内注射に適した眼科用薬剤は:約5~約7の範囲の液体製剤40のpHを提供するのに有効な量の緩衝液;0.005~0.02%mg/mLの完全製剤、あるいは0.007~0.018%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.008~0.015%mgの完全製剤、あるいは0.009~0.012%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.009~0.011%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.01%mg/mLの完全製剤の非イオン性界面活性剤;及び注射用水を更に含む。
【0290】
任意選択的に、任意の実施形態において、硝子体内注射に適した眼科用薬剤は、注射用水中、6mg/mL、あるいは10mg/mLのラニビズマブ;100mg/mLのα,α-トレハロース二水和物、1.98mg/mLのL-ヒスチジン;及び0.1mg/mLのポリソルベート20を含む。
【0291】
任意選択的に、任意の実施形態において、5℃の温度、あるいは25℃の温度で測定して、少なくとも6ヶ月、あるいは少なくとも12ヶ月、あるいは少なくとも18ヶ月、あるいは24ヶ月の保管寿命を有する。
【0292】
任意選択的に、任意の実施形態において、プレフィルド薬剤パッケージ210の製品接触表面上にシリコーンオイルを有しない。
【0293】
任意選択的に、任意の実施形態において、プレフィルド薬剤パッケージ210の製品接触表面上に焼付シリコーンを有しない。
【0294】
任意選択的に、任意の実施形態において、容器14としてのバレルと、クロージャ36としてのプランジャとを含む、薬剤パッケージ210としてのシリンジであって、シリンジはプランジャを内腔18内で前進させるために10N以下のプランジャ摺動力を有する。
【0295】
任意選択的に、任意の実施形態において、容器14としてのバレルと、クロージャ36としてのプランジャとを含む、薬剤パッケージ210としてのシリンジであって、シリンジは内腔18内でのプランジャの移動を開始させるために10N以下のブレークアウト力を有する。
【0296】
任意選択的に、任意の実施形態において、硝子体内注射に適した眼科用薬剤は、プレフィルドシリンジの充填時、あるいはプレフィルドシリンジを4~8℃で3ヶ月間保管した後、あるいはプレフィルドシリンジを25℃、相対湿度60%で3ヶ月間保存した後、あるいはプレフィルドシリンジを40℃、相対湿度75%で3ヶ月保存した後に、2015年11月1日に効力を有するUSP789若しくは2015年11月1日に効力を有するPh.Eur5.7.1のいずれか、又はその両方の、眼科用溶液中の粒子状物質の粒子数基準に合致する。
【0297】
任意選択的に、任意の実施形態において、熱可塑性の壁15は、ポリオレフィン、例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、若しくはポリプロピレン;ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;又はこれらのうちいずれか2つ以上の任意の組合せ若しくはコポリマー、任意選択的に、環状オレフィンポリマー(COP)樹脂を含む。
【0298】
任意選択的に、任意の実施形態において、タイコート皮膜又は層838は、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、5~200nm(ナノメートル)、あるいは5~100nm、あるいは5~50nm、あるいは約38nmの厚さのSiOxyzを含む。
【0299】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxのバリア皮膜又は層30は、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、2~1000nm、あるいは4nm~500nm、あるいは10~200nm、あるいは20~200nm、あるいは30~100nm、あるいは約55nmの厚さである。
【0300】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34は、存在する場合、約10~1000nm、あるいは20~800nm、あるいは50~600nm、あるいは100~500nm、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、200nm~400nm、あるいは250nm~350nm、あるいは約270nm、あるいは約570nmの厚さを有する。
【0301】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34に関して、存在する場合、xは、XPSにより測定した場合、約1~約2であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約1.5であり、zは、RBS又はHFSにより測定した場合、約2~約5である。
【0302】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34に関して、存在する場合、xは、XPSにより測定した場合、約1.1であり、yは、XPSにより測定した場合、約1であり、zは、RBS又はHFSにより測定した場合、約2~約5である。
【0303】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34は、存在する場合、X線反射率(XRR)により決定した場合、1.25~1.65g/cm3、あるいは1.35~1.55g/cm3、あるいは1.4~1.5g/cm3、あるいは1.44~1.48g/cm3の密度を有する。
【0304】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34は、存在する場合、約5~約9、あるいは約6~約8、あるいは約6.4~約7.8の(AFMによって測定された)RMS表面粗さ値を有する。
【0305】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34は、存在する場合、約4~約6、あるいは約4.6~約5.8の、AFMによって測定された、pH保護皮膜又は層34のRa表面粗さ値を有する。
【0306】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34は、存在する場合、約70~約160、あるいは約84~約142、あるいは約90~約130の、AFMによって測定された、pH保護皮膜又は層34のRmax表面粗さ値を有する。
【0307】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34は、存在する場合、ASTM D7334-08「前進接触角測定による皮膜、基板及び顔料の表面濡れ性に関する標準的技法(Standard Practice for Surface Wettability of Coatings, Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement)」に準拠して、pH保護面上の水滴のゴニオメーター角度測定により測定した場合、90°~110°、あるいは80°~120°、あるいは70°~130°の(蒸留水との)接触角を有する。
【0308】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護皮膜又は層34は、存在する場合、通常、約1000~1040cm-1に位置するSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と、通常、約1060~約1100cm-1に位置するSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅との間において0.75を超え1.7まで、あるいは0.9~1.5、あるいは1.1~1.3の比率を有するFTIR吸光度スペクトルを有する。
【0309】
任意選択的に、任意の実施形態において、SiOxyzのpH保護被覆又は層34は、存在する場合、注射用水で希釈され、濃縮硝酸でpH8に調整され、0.2wt.%ポリソルベート80界面活性剤を含有する(VEGF阻害薬の液体製剤40のない状態、40℃で測定した)、50mMリン酸カリウム緩衝液によるケイ素溶解速度170ppb/日未満を有する。
【0310】
任意選択的に、任意の実施形態において、先の請求項のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ210は、フルオロポリマーで被覆されたクロージャ前面35を備えた0.5mL又は1mL体積容量のCOPシリンジを含む。
【0311】
任意選択的に、任意の実施形態において、容器14は、前面分注開口部26及び背面開口部32を有するシリンジバレルであり、クロージャ36は、前面分注開口部26に向かって容器14内で軸方向に摺動可能なプランジャである。
【0312】
任意選択的に、任意の実施形態において、プランジャは、スリーブ120、第1のキャビティ122、及び第2のキャビティ124を含む。スリーブ120は、前面分注開口部26に面する前端と、背面開口部32に面する後端とを有し、第1のキャビティ122はスリーブ120内にあり、第2のキャビティ124は第1のキャビティ122から軸方向に離間し、連通してスリーブ120内にあり、インサート126は、第1のキャビティ122内に最初に配置され、第1のキャビティ122から第2のキャビティ124まで軸方向に変位するように構成され、インサート126は任意選択的に部分的に略球形の形状であり、インサート126はインサート126に隣接するスリーブ120の少なくとも一部を、バレルに対し半径方向外側に押圧する第1の付勢力を提供するように構成され、及び、インサート126が第2のキャビティ124にあるときに、任意選択的にスリーブ120をバレルから離間させる、第1の付勢力よりも小さい、第2のそのような付勢力を提供するように構成される。
【0313】
図19図22は、本発明の実施形態による二位置プランジャ組立品310として具現化されたクロージャ36を示す。任意選択的に、任意の実施形態において、クロージャは、前面分注開口部に向かって軸方向に摺動可能な、容器14内の軸方向に伸張可能なプランジャ36であって、クロージャ36は:側壁15及び前面分注開口部26に面する前面35を有し、側壁15は、クロージャ36をストレージモードから分注モードに変換する軸方向伸張を受けるように適合された伸縮ゾーン154を備え、伸張により、側壁15の少なくとも一部の外側プロファイルが減少し、したがってクロージャ36を分注モードにおいて収縮状態へと縮める、任意選択的に熱可塑性エラストマで作製された、エラストマスリーブ120を含む。
【0314】
プランジャ組立品310は、様々な異なる形状及びサイズを有することができる。例えば、図示の実施形態によれば、プランジャ組立品310は、約79ミリメートルの長さであってもよい。プランジャ組立品310は、コンバーチブルプランジャ312及びプランジャロッド314を含む。プランジャロッド314は、内部シャフト316及び外部シャフト318を含んでもよい。内部シャフト316は、遠位端320と、近位端322と、係止タブ324とを含む。特定の実施形態によれば、内部シャフト316の遠位端320は、プランジャ組立品310の使用中に、例えば、ユーザの親指などによって、ユーザに押される、アクチュエータ326を形成するように構成することができる。外部シャフト318は、第1の端部328、第2の端部330、第1の凹部332、第2の凹部334、及び内側部336を含んでもよい。特定の実施形態によれば、第1の端部328は、コンバーチブルプランジャ312とのねじ係合のために構成することができる。例えば、示されるように、第1の端部328は、コンバーチブルプランジャ312の雌ねじ340とかみ合うように構成された雄ねじ338を含んでもよい。
【0315】
内部シャフト316の少なくとも一部は、外部シャフト318の内側部336に沿って摺動可能に変位するように構成される。更に、係止タブ324は、内部シャフト316の少なくとも一部から突出していてもよい。図示の実施形態では、係止タブ324は、外部シャフト318の内側部336に沿った内部シャフト316の変位の方向及びタイミングを制御するのを補助し得るテーパ面325を有する。例えば、少なくとも図20は、外部シャフト318に対して第1の位置にある内部シャフト316を示し、係止タブ324は、外部シャフト318の第1の凹部332の少なくとも一部内に突出している。係止タブ332のテーパ面325の向きによって、アクチュエータ326に十分な力が加えられたとき、係止タブ325が第1の凹部332から第2の凹部334に移動されるときに、係止タブ324が少なくとも一時的に内側部分326に挿入され得るように、係止タブ332を少なくとも一時的に圧縮又はサイズ変形することができる。しかしながら、十分な力が存在しない場合、係止タブ332は第1の凹部332内に留まり、それによって内部シャフト316を第1の位置に維持することができる。
【0316】
係止タブ324が第1の凹部332から第2の凹部334まで移動する距離、したがって第1の位置から第2の位置に移動するときに内部シャフト316が外部シャフト318に対して移動する距離は、異なるプランジャ組立品毎に異なり得る。例えば、特定の実施形態によれば、内部シャフト316は、約3~5ミリメートル変位し得る。更に、図20及び図23に示すように、特定の実施形態によれば、内部シャフト316の近位端322は、内部シャフト316が第1の位置にあるときに、外部シャフト318の内側部336に収容されてもされなくてもよい。
【0317】
更に、係止タブ324のテーパ面325の向き及びサイズは、係止タブ324に、外部シャフト318の第2の端部330の一般的な方向にある内側部336内に係止タブ324が引き込まれるのを防止するために十分な幅を提供し得る。したがって、係止タブ324が第2の凹部334にあり、したがって内部シャフト316が第2の位置にあるとき、係止タブ324のテーパ面325の向き及びサイズは、係止タブ324に、係止タブ324が第1の凹部332に引き戻されるのを防止するために十分な幅を提供し得る。
【0318】
少なくとも図20図22に示すように、コンバーチブルプランジャ312は、バレル356(例えばシリンジ)の内部領域354に収容されるように構成される。内部領域354は、バレル356の側壁358によって一般的に画定され、側壁358は、内面360を有する。更に、内部領域354は、コンバーチブルプランジャ312とバレル356の近位端361との間の領域359を含有する製品を含み得る。
【0319】
特定の実施形態によれば、図21に最も良く示されるように、コンバーチブルプランジャ312は、インサート126、スリーブ120、及びコネクタ本体345を含む。コネクタ本体345は、例えば、オーバー成形、プラスチック溶接、接着剤、及び/又は他の接続の中でも、ねじ、ボルト、ピン、クランプなどの他の機械的ファスナーの使用などを介して、スリーブ120に動作可能に接続されてもよい。前述したように、コネクタ本体345は、例えば、コネクタ本体345の雌ねじ340と外部シャフト318の雄ねじ338とのねじ係合などによって、外部シャフト318に接続されるように構成されてもよい。更に、特定の実施形態によれば、コネクタ本体345は、例えば、他の材料の中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの比較的固い及び/又は剛性の材料から成形されてもよい。
【0320】
スリーブ120は、第1のキャビティ122及び第2のキャビティ124を提供するように構成されてもよい。更に、第1及び第2のキャビティ348、350は、互いに連通しており、インサート126の可動挿入を受けるように構成されている。用語「第1のキャビティ」及び「第2のキャビティ」は、物理的に異なる区画(例えば、図21に示すような中断、遷移領域、それらの間の膜又は幾何学的変化を有する)、あるいは代替的に、インサートを、区画内の第1の位置(例えば、「第1のキャビティ」)に、次いで同じ区画内の第2の位置(例えば、「第2のキャビティ」)に保持するのを容易にするために適合された単一の区画であって、第1のキャビティと第2のキャビティとの間に中断、遷移領域、膜又は幾何学的変化を有しない区画、を意味する。
【0321】
スリーブ120の外側部346は、ノーズコーン392(一般的にシリンジ内容物に面している)と、側壁390(一般的にバレル356の側壁358に面している)とを含む。用語「ノーズコーン」392は、コンバーチブルプランジャ312のシリンジ内容物に面する表面を意味し、任意の適切な幾何学的形状(例えば、丸みを帯びた、円錐状、平坦、等)であり得る。スリーブ120の側壁390は、好ましくは第1のキャビティ122の少なくとも一部に略隣接し及び/又は並んだ、少なくとも1つのリブ352を含むストレージ封止部351を含む。例えば、少なくとも図21に示すように、ストレージ封止部351の単一のリブ352は、第1のキャビティ122に略隣接し、及び/又は並んでいる。しかしながら、第1のキャビティ122と並ぶ及び/又は隣接するストレージ封止部351のリブ352の数は変化してもよい。更に、特定の実施形態によれば、ストレージ封止部351のリブ352は、第2のキャビティ124に隣接して及び/又は並んで位置していなくてもよい。スリーブ120は、他の材料の中でも、良好なガスバリア性を有する熱硬化性ゴム(例えば、ブチルゴム)又は熱可塑性エラストマから構成されてもよい。ストレージ封止部351の目的は、コンバーチブルプランジャ312が「ストレージモード」にあるときにCCI及び任意選択的に1つ以上のガス(例えば酸素)に対するバリアを提供することであり、例えば、プレフィルドシリンジの内容物がストレージ内にある場合、使用前にそれを封止することである。ガスバリアは、製品の所望の保管寿命の間にシリンジ内に収容された製品を劣化させる可能性のあるガスの侵入を効果的に防止すべきである。ガスバリアはまた、好ましくはシリンジの製品収容領域359内にとどまるガスの排出を効果的に防止すべきである。プランジャがストレージモードにあるとき、ストレージ封止部351が任意選択的にバリアを提供する特定のガスは、シリンジ内に収容された製品に依存して変化し得る。任意選択的に(任意の実施形態において)、ガスバリアは酸素バリアである。コンバーチブルプランジャ312が、ストレージモードから分注モードに変換されると、ストレージ封止部351によって最初に提供された封止は、減少するか、完全に(すなわち、ストレージ封止部351がもはやバレル356の側壁358に物理的に接触しないように)除去される。
【0322】
インサート126はまた、インサートがスリーブ120に対してより低い、類似の、又はより高い剛性を有することを可能にする製品を含む、様々な異なる製品から構成されてもよい。好ましくは、任意の実施形態において、インサートは、スリーブよりも高い剛性を有する。更に、インサート126は、様々な形状を有し、第1及び第2のキャビティ348、350の少なくとも1つを占めるように一般的に構成されてもよい。図20図22に示す実施形態によれば、インサート126は、ほぼ球形の形状を有する。代替的なインサートの実施形態及び形状を以下に開示する。
【0323】
スリーブ120、及び特にストレージ封止部351のリブ352、並びにインサート126は、図22に示すように、リブ352をバレル356の側壁358に押し付ける力を提供するように構成される。このようにストレージ封止部のリブ352を側壁358に圧縮することにより、コンバーチブルプランジャ312と側壁358との間に「ストレージモード」での圧縮封止などの封止が提供され、これによりバレル356に含有される注射製品の無菌性及び/又は完全性が保護される。典型的な圧縮は、例えば、コンバーチブルプランジャ312が圧縮されてバレル356内に封止を形成する場合、リブ352及び/又はスリーブ120の全体幅又は直径の10%未満であり、任意選択的に9%未満であり、任意選択的に8%未満であり、任意選択的に7%未満であり、任意選択的に6%未満であり、任意選択的に5%未満であり、任意選択的に4%未満であり、任意選択的に3%未満であり、任意選択的に2%未満であり、任意選択的に3%~7%であり、任意選択的に3%~6%であり、任意選択的に4%~6%であり、任意選択的に4.5%~5.5%であり、任意選択的に4.5%~5.5%であり、任意選択的に約4.8%である。圧縮は、プランジャ及びシリンジバレルの幾何学的公差だけでなく、プランジャの材料特性(例えば、ゴムのデュロメータ)にも依存する。任意選択的に、ストレージ封止部351の付加的なリブ352が含まれてもよく、これは、封止の完全性を増加させ、及び/又はプランジャ312とバレル356の側壁358との間の別個の封止を形成し得る。
【0324】
特定の実施形態によれば、スリーブ120及びインサート126は、プランジャ312がバレル356内にあり、インサート126が第1のキャビティ122内にあるとき、インサート126が第1のキャビティ122のサイズに縮小することを防止する、又は縮小を最小限に抑えるようにサイズ形成される。このような第1のキャビティ122のサイズの縮小を最小限に抑える、又は防止することにより、第1のキャビティ122に略隣接した及び/又は並んだストレージ封止部351のリブ352のサイズが、リブ352とバレル356の側壁358との係合により縮小する程度を最小限に抑え得る。そのような実施形態によれば、リブ352は、第1のキャビティ122内のインサート344の支持によって、リブ352が、スリーブ120と側壁358との間で圧縮されて、プランジャ312のストレージモードのための圧縮封止を形成するのに十分な大きさであるようにサイズ形成される。更に、特定の実施形態によれば、インサート126は、プランジャ312がバレル356内のストレージモード中に封止を形成するために使用されているときに、リブ352及び/又はスリーブ120がスリーブ120の全幅の20%未満に圧縮されるように、リブ352及び/又はスリーブ120の圧縮を制限するように構成されてもよい。任意選択的に、リブ352及び/又はスリーブ120は、プランジャ312が圧縮されてバレル356内に封止を形成する場合、リブ352及び/又はスリーブ120の全体幅又は直径の10%未満、任意選択的に9%未満、任意選択的に8%未満、任意選択的に7%未満、任意選択的に6%未満、任意選択的に5%未満、任意選択的に4%未満、任意選択的に3%未満、任意選択的に2%未満、任意選択的に3%~7%、任意選択的に3%~6%、任意選択的に4%~6%、任意選択的に4.5%~5.5%、任意選択的に4.5%~5.5%、任意選択的に約4.8%、圧縮される。
【0325】
あるいは、他の実施形態によれば、インサート126は、リブ352を側壁358に押し付け又は力を加えて、プランジャ312のストレージモード中に圧縮封止を形成するのに十分な支持を提供するように、第1のキャビティ122及びストレージ封止部351のリブ352を拡張してサイズ形成されてもよい。
【0326】
プランジャ312は、プランジャ312が外部シャフト318に接続される前又は後にバレル356内に配置されてもよい。バレル356の製品収容領域359内などのシリンジバレル内の注射製品がバレル356から分注されるとき、前述したように、ユーザはアクチュエータ26を押し下げて、内部シャフト316を第1の位置から第2の位置に変位させてもよい。図19図22に示す実施形態では、内部シャフト316が第2の位置に変位すると、内部シャフト316の近位端322は、外部シャフト318の第1の端部28を出てプランジャ312に入ることができる。係止タブ324が第2の凹部334へ移動すると、内部シャフト316は、インサート126を第1のキャビティ122から第2のキャビティ124に押し込むことができる。
【0327】
インサート126が第2のキャビティ124内にある状態で、インサート126がストレージ封止部351のリブ352に提供/作用していた支持及び/又は力は、低減及び/又は除去される。したがって、そのような状況下では、リブ352によってバレル356の側壁358に対して以前に加えられた力も、少なくとも低減されるか、又は好ましくは除去される(すなわち、プランジャ312が「分注モード」にあるとき、封止部351のリブ352とバレル356の側壁358とは接触していない)。更に、特定の実施形態によれば、リブ352は、スリーブ120の第2のキャビティ124に略隣接していなくてもよく、及び/又は並んでいなくてもよく、その結果、第2のキャビティ124内のインサート126の存在は、側壁358に対し、異なるリブ352を支持しない、又は押し付けない。したがって、側壁358に対してリブ352が及ぼしてきた力が、インサート126の第2のキャビティ124への移動によって除去又は低減されることで、プランジャ312をバレル356に沿って変位させるのに要した力は、インサート126を第1のキャビティ122内に残すのに要したであろう力よりも小さい。したがって、プランジャ312によって側壁358に及ぼされた力は調整され、プランジャ312が注射製品の分注のために変位する場合、より具体的に低減される。更に、力の減少の程度は、注入製品の粘度及び/又は針ゲージによって発生する背圧に対抗して注射製品がシリンジから前方に完全に押し出され得るような程度である。第2のキャビティ124内のインサート126及び第2の位置における内部シャフト316によって、プランジャ組立品310は、製品収容領域のサイズを縮小するように、変位し、それによりバレル356から注射製品を分注することができる。
【0328】
更に、特定の実施形態によれば、プランジャ312は、第1のキャビティ122がインサート126によって占有されていないときに、リブ352がバレル356の側壁358との接触をそれでもなお維持するように、任意選択的に構成されてもよい。更に、そのような条件下では、リブ352は、注射製品の投与/分注中にプランジャ組立品310が変位するときに、注射製品をバレル356から取り外すのを補助する、ワイパー面を提供するように構成されてもよい。
【0329】
任意選択的に、スリーブ120の外側部346は、好ましくは、スリーブ120の側壁390上に、任意選択的にノーズコーン392に隣接して、又は遠位に、又はそうでなければ近くに、液体封止部353を含んでもよい。液体封止部353は、液体封止部353の少なくとも1つのリブ355を含む。液体封止部353の目的は、プランジャ312が上記のようなストレージモードにあるときと、プランジャが「分注モード」に移行したとき、すなわち、シリンジの内容物を分注するためのプランジャの前進を容易にするため、ストレージ封止部351がバレル壁358に対する圧縮力を減少させるか又は止めるときと、の両方において液密封止を提供することである。任意選択的に、液体封止部353は、CCIを提供することもできる。好ましくは、ストレージ封止部351と液体封止部353とを分離する谷部357がある。
【0330】
選択的に、任意の実施形態において、容器14は、前面分注開口部26及び背面開口部32を有するシリンジバレルであり、クロージャ36は、前面分注開口部26に向かって軸方向に摺動可能な軸方向に延びるプランジャであり、クロージャ36が:ストレージ直径136を有するストレージ封止部132と、ストレージ封止部132から軸方向に離間し、ストレージ直径136より小さい分注直径138を有する分注封止部134とを有する、軸方向に延びる中心コア130;及び中心コア130を包囲し、シールリング140が中心コア130と壁15との間のストレージ封止力で圧縮される第1の位置をストレージ封止部132に有し、シールリング140がストレージ封止力よりも小さい分注封止力で壁15に対して圧縮されるか、又はシールリング140が壁15から離間している第2の位置を分注封止部134に有する、シールリング140を含む。
【0331】
図25図27には、本発明の一態様にしたがって構成されたプランジャ組立品420を含むシリンジ410の例示的な一実施形態が示される。シリンジ410は、一般的に従来の構造のものであり、中心長手軸Aを有する中空バレル412を含む。バレルは内面414を有し、内部に注射液416を保持するように構成される。針418は、バレルの遠位端に配置され、バレルと流体連通している。プランジャ組立品420は、その遠位部が、バレルの近位部に配置され、そこでシリンジは使用の準備ができた状態である。そのために、プランジャ組立品が作動され、例えば遠位方向に押し込まれると、針418を通ってバレル内の注射液が押し出される。
【0332】
プランジャ組立品420は、基本的に、プランジャロッド422及びコンバーチブルプランジャ424を備える。コンバーチブルプランジャ424は、保管中に、効果的に封止し、バレルの内容物の保管寿命を維持するために、プレフィルドシリンジ又はカートリッジバレルの側壁の内面に対して十分な圧縮力を提供するように構成された構成部品のサブ組立品を構成する。本発明のコンバーチブルプランジャなどのコンバーチブルプランジャが、保管中に、効果的に封止し、バレルの内容物の保管寿命を維持するのに適した容器封止完全性(CCI)を提供する場合、コンバーチブルプランジャ(又は少なくともその外部表面の一部)は、代替的には、拡張状態又はストレージモードにあることを特徴とし得る。拡張状態又はストレージモードは、例えば、プランジャのシリンジバレル接触面の少なくとも一部の拡張された外径又はプロファイル、及び/又はプランジャが、それが配置されるシリンジバレルの内壁に及ぼす垂直力の産物であり得る。コンバーチブルプランジャ(又は少なくともその外部表面の一部)は、代替的に、収縮状態又は分注モードを特徴とするものに縮小可能であり、バレルの側壁に対する圧縮力が低減され、ユーザがより容易にバレル内のプランジャを前進させ、それによりシリンジ又はカートリッジの内容物を分注することが可能となる。収縮状態又は分注モードは、例えば、プランジャのシリンジバレル接触面の少なくとも一部の縮小された外径(拡張状態の外径に対して)及び/又はプランジャによって加えられるシリンジバレルの内壁に対する垂直力の産物であり得る。したがって、一態様では、本発明は、バレル412の中心軸Aと同軸の長手方向軸を有する中心コア130と、ストレージ封止部132と、分注封止部134とを備えるコンバーチブルプランジャである。ストレージ封止部及び液体封止部はそれぞれ、それぞれ略円筒状の外部表面を有する。本明細書で使用される場合、「略円筒状の」外部表面は、液体封止部の他の円筒状形状に対する、(例えば、リブ、谷などによる)幾何学的形状の小さな中断又は変化を含んでもよい。詳細に後述するように、ストレージ封止部の略円筒状の外部表面は、ストレージ封止部が拡張状態にあるときにシリンジバレルの内壁と係合するための1つ以上の環状リブ又は外向きに突出する表面を含む。拡張された状態は、液体封止に対して長手方向軸Aに沿ったストレージ封止部の相対的な動きによって、収縮した状態に縮小可能であり、その逆もまた同様である。本明細書で使用される場合、「拡張状態」及び「収縮状態」は、比較寸法測定値(例えば、拡張状態は、収縮状態よりも広い)及び/又はプランジャの内方圧縮に対する比較耐性(「拡張状態」は内方圧力に対しより耐性が高く、「収縮状態」は内方圧力に対しより耐性が低い)及び/又はプランジャの外部表面の少なくとも一部によって加えられる外向きの径方向比較圧力(「拡張状態」におけるプランジャの外部表面は、より大きい外向きの径方向圧力を加え、「収縮状態」におけるプランジャの外部表面は、より小さい外向きの径方向圧力を加える)を意味し得る。
【0333】
コンバーチブルプランジャ424は、プランジャロッド422の遠位端に取り付けられている。プランジャロッドは、シリンジのバレルの中心軸Aと同軸に延びる中心長手軸を有する細長い部材である。プランジャロッドの遠位端は、ロッドの遠位端から外側に延び、軸Aの中心に位置するねじ付き突起426(図42A)の形態である。ねじ付き突起426は、プランジャロッド422の遠位端にコンバーチブルプランジャを取り付けるために、コンバーチブルプランジャ424の近位端の嵌合するねじ孔又は穴428に螺合されるように構成される。プランジャロッド422の近位端は、シリンジから液体418を排出するためにユーザによって押されるように構成された、拡大フランジ付ヘッド430(図41)の形態である。
【0334】
コンバーチブルプランジャ420は、2つのモードで動作するように構成される。1つのモードは、プランジャのストレージ封止部132がプランジャの中心コアの第1の部分とシリンジのバレルの内壁との間で圧縮され、それらの間に気密で液密な界面を形成する、「係合」位置にある図41及び図42Aに示すような封止モードである。もう1つのモードは、プランジャ組立品がバレル内で摺動して、ストレージ封止部がもはやバレルの内壁と係合しなくなるときに、ストレージ封止部が中心コア上の異なる部分、例えば「解放」位置に移動する滑動モードである。しかしながら、滑動モードでは、プランジャの液体封止部は、バレルの内壁と摺動係合して、その間に液密界面を形成する。更に、液体封止部の固有の滑性のため、バレル内のプランジャの摺動を容易にするためにシリンジ内で液体又は他の流動性潤滑剤を使用する必要はない。この特徴は、プランジャの摺動を容易にする流動性潤滑剤の使用は、潤滑剤がシリンジ又はプランジャからその液体に解離した場合に注射液を汚染するという効果があり得るため、従来技術に対して有意な利点を構成する。
【0335】
ここで図26図27を参照すると、分注封止部134は、プランジャの中心コア130の遠位端に取り付けられ、ストレージ封止部132は、液体封止部の近位に配置されることが分かる。ストレージ封止部132は、中心コアの一部に取り付けられた少なくとも1つのリングの形態であり、プランジャ組立品が図41及び図42Aに示すような係合位置にあるときに、ストレージ封止部132の少なくとも1つのリングは、シリンジのバレル412の内壁414との、上述した液密かつ気密な界面を形成するように構成される。したがって、プランジャ組立品がその位置にあるとき、ストレージ封止部はシリンジにCCIを提供する。図41に示す例示的な実施形態では、ストレージ封止部は、円形断面のシールリング140を担持する。様々な断面形状の他の単一のリングは、ストレージ封止部を形成するために提供され得る。実際に、様々な断面形状の複数のリングは、ストレージ封止部を形成するために提供され得る。例えば、任意選択的に、Oリングは複数のリブ又はローブを有し、例えば、42個のリブ付き又は43個のリブ付きO-リングが企図される。ストレージ封止部のこれらの代替的な実施形態の幾つかについては後で説明する。
【0336】
コンバーチブルプランジャ424の中心コア130は、その遠位端に円筒形状の取付け突起440を有する細長い部材である。突起440は、任意の適切な形状とすることができる。示される例示的な実施形態では、これは半球状である。突起440は、中心コア130の遠位端に分注封止部134を取り付けるための手段として機能する。フランジ442は、突起442のすぐ近位に、中心コアから半径方向外側に突出している。環状の凹部444が、フランジ442のすぐ近位の中心コアに設けられている。凹部444は、プランジャ組立品424がストレージモード、すなわち図25に示される状態にあるときに、少なくとも1つのリング140を「保持」位置に受けて保持するように構成される。そのために、凹部444は、好ましくは、リング140の断面形状と嵌合する形状である。
【0337】
リング140は、弾性材料、又は熱硬化性ゴム(例えばブチルゴム)、熱可塑性エラストマ(TPE)、液状シリコーンゴム及びフルオロ液状シリコーンゴムを含むがこれらに限定されない1以上の弾性材料で形成される。凹部444の位置における中心コア130の直径は、リング140の通常の内径よりも大きい。したがって、リング140が凹部444内に配置されるとき、リング140は、その通常の外径(すなわち、その「収縮」状態)から「拡張」状態まで伸張される。その拡張状態では、リングの外周の最も外側の部分は、バレルの内面414と緊密に係合し、それにより、それらの間に前述の気密かつ液密な界面を形成する。当業者に理解されるように、リング140がバレルの内面と係合すると、結果として「付着摩擦(sticktion)」が生じ得る。このように、本発明のコンバーチブルプランジャは、リング428が中心コア130に対して動くことを可能にし、プランジャ組立品が前述の滑動モードで動作する解放位置に移動することを可能にするように構成される。そのモードにあるとき、リング140は収縮状態であり、リングの外径はバレルの壁412の内部表面414の内径より小さくなり、リングはその内部表面に係合せず、したがって、バレル内へのプランジャ組立品の摺動運動を妨害しない。
【0338】
Oリング140が(環状の凹部444内に保持される)係合位置から(環状の凹部444から移動する)解放位置まで移動することを可能にするために、中心コア130は環状の凹部444にすぐ隣接して位置する円錐状テーパセクション446を有する。円錐状テーパセクション446の近位端は、環状の凹部444の内径よりも小さい外径を有する円筒状セクション448で終わっている。かくして、プランジャ組立品420が押圧されて、バレル412内の図26の矢印によって示される遠位方向に移動すると、Oリングとバレルの内壁との間の摩擦係合は、中心コア130が遠位方向に移動する間に、バレル内のその長手方向位置でOリングを保持する傾向にある。したがって、Oリング140と中心コアとの間の軸方向の相対運動が生じる。この相対的な軸方向の移動により、Oリング140がその保持位置から凹部444を出て、Oリングが中心コアに対して図26の矢印450の方向に近位方向に摺動し、その結果、O-リング半径方向に最も外側の表面は、もはやバレルの内面414と係合しなくなる。このように、プランジャ組立品420は、最小限の力でバレルから滑らかに摺動することができる。プランジャ組立品の継続的な押し込みは、最終的に、Oリングを中心コア130の遠位端を形成する突出フランジ452の下面と係合させる。
【0339】
上述のように、プランジャ組立品が滑動モードにあるとき、分注封止部134は、バレルの内面414と摺動係合して、それらの間に良好な液密界面を生じる。そのために、分注封止部134は、基本的に、内壁414の滑性よりも高い滑性を有する外部表面部を有するエラストマ本体又はヘッド454を含む。第1の表面部分は、ヘッド454の外部表面全体の周りに延びるフィルム456の形態であってもよい。フィルムは、約4100マイクロメートル(μm)未満、任意選択的に425~50μm未満の、任意選択的な厚さを有してもよい。他の皮膜の中でも、例えば、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンパーフルオロエチレンプロピレン(EFEP)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエテン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)を含む、不活性フルオロポリマーなどの様々な異なる材料をフィルムに使用することができる。任意選択的に、CPTフルオロポリマーを使用することができる。CPTはDaikin America、Inc.から市販されている改質パーフルオロアルコキシ(PFA)であり、一般にPCTFE側鎖を重合中にPFA主鎖に加え、それによって標準PFAのガス及び/又は液体バリア特性を高める。任意選択的に、ヘッド454の外部表面は、樹脂と混合してフィルム、型又はキャップに押出成形できる、Daikin America,Inc.から市販されているDEMNUMなどのパーフルオロポリエーテルオイルで形成された剛性キャップ(図示せず)の形態であってもよい。更に、特定の実施形態によれば、フィルム皮膜に使用される材料は、膨張フルオロポリマーでなくてもよい。更に、特定の実施形態によれば、液体封止部を構成するプランジャの基礎部分へのフィルム又はキャップの接着性を改善し、及び/又は液体封止部とバレルの側壁との間の摩擦を低減させる添加剤などの添加剤を、フィルム又はキャップのための材料に加えてもよい。更に、特定の実施形態によれば、例えばコロナ処理などの接着促進皮膜又はプロセスを使用することができる。幾つかの用途では、異なる材料を共押出ししてフィルムを形成することが望ましい場合がある。例えば、同時押出フィルムの組合せは、他の組合せの中でも、Aclarを有する環状オレフィンコポリマー(COC)、Aclarを有するポリエチレン(PE)、及びPEを有するFEPを含み得る。
【0340】
任意選択的に、フィルム材料が型内に挿入された後、プランジャ材料が型内に注入される。したがって、最終製品において、プランジャの液体封止部は、プランジャコアと、プランジャコアの先端に配置されたポリマーヘッドと、ヘッドを覆うフィルムとを含み得る。代替的に、その上にフィルムが配置されていない、高硬度の、滑らかなTPE材料を、液体封止部として使用することができる。
【0341】
フィルム456を使用して液体封止部の滑性外面を提供する場合、フィルムは様々な方法でヘッド454に固定することができる。例えば、図27に示すように、フィルムのシート456をヘッド454の周りに巻き付けることができ、その結果、そのエッジと隣接するフィルムのシートの部分458は、図26図27に示すように、ヘッド454の凹部460内に配置される。凹部460は、突起440の形状と嵌合する形状である。したがって、突起440が凹部に挿入されて、ヘッド454が中心コア130の先端に取り付けられると、フィルム456のエッジ部458がその中に捕捉される。ヘッド454を中心コア130に固定するには、圧入、圧縮リブ、又はヘッドを中心コアに固定するための他の適当な手段を用いて、フィルムのエッジ部をその間に捕捉することによって達成することができる。
【0342】
図23及び図24は、プランジャ組立品310の代替的な実施形態を示しており、特に、代替的なクロージャ36は、側壁15及び前面分注開口部26に面した前面35を有する、任意選択的に熱可塑性エラストマで作られた、エラストマスリーブ120として構成され、側壁15は、クロージャ36をストレージモードから分注モードに変換するために軸方向伸張を受けるように適合された伸縮ゾーン154を含み、伸張により、側壁15の少なくとも一部の外側プロファイルが減少し、したがってクロージャ36は分注モードにおいて収縮状態へと縮小する。
【0343】
クロージャ36は、インサート362と、コネクタ本体363と、スリーブ364とを含む。図23に示すように、特定の実施形態によれば、スリーブ364は、内部シャフト316の近位端22の配置を受けるように構成されたキャビティ366を含む。インサート362はまた、後述するように、インサート362の変位及び/又はクロージャ36の変形を補助する比較的剛性のシャフト368を含み得る。
【0344】
特定の実施形態によれば、コネクタ本体363は、例えばポリエチレン又はポリプロピレンのような比較的固い及び/又は剛性の材料から成形されてもよい。更に、コネクタ本体363は、第1の部分365、第2の部分367、及び第3の部分369を有することができる。コネクタ本体363の第1の部分365は、外部シャフト318と接続可能に係合するように構成されている。例えば、第1の部分365は、外部シャフト318の雄ねじ338とかみ合う雌ねじ340を含むことができる。
【0345】
特定の実施形態によれば、コネクタ本体363の第2の部分367は、クロージャ36がバレル356内に挿入されるときの、スリーブ364の幅などのサイズの縮小を、最小限に抑え、及び/又は防止する、クロージャ36における内部構造を提供し得る。このような実施形態によれば、スリーブ364は、クロージャ36がバレル356内に位置するときに、第2の部分367の支持によって、バレル356の側壁358とコネクタ本体363の第2の部分367との間にスリーブ364が圧縮されるようにサイズ形成される。このようなスリーブ364の圧縮は、バレル356内に保管された注射製品の無菌性及び/又は完全性を維持するために使用され得るクロージャ36とバレル356との間に、例えば圧縮封止などの封止形成を生じ得る。コネクタ本体363の第2の部分367に加えて、特定の実施形態によれば、インサート362は、クロージャ36がバレル356に挿入されたときに、スリーブ364及び/又はコネクタ本体363を支持するように構成することもできる。
【0346】
更に、特定の実施形態によれば、ストレージ封止部351の1つ以上のリブ352がスリーブ364から延びていてもよく、バレル356の側壁358に対して圧縮されて、プランジャが「ストレージモード」にある間にCCIを提供し、例えば、使用前の保管中にプレフィルドシリンジの内容物を封止する。プランジャ312’は、液体封止部353の少なくとも1つのリブ355を含む液体封止部353を更に含むことができる。液体封止部353の目的は、プランジャ312が上記のようなストレージモードにあるときと、プランジャが「分注モード」に移行したとき、すなわち、シリンジの内容物を分注するためのプランジャの前進を容易にするため、ストレージ封止部351がバレル壁358に対する圧縮力又は半径方向の圧力を減少させるか又は止めるときと、の両方において液密封止を提供することである。好ましくは、ストレージ封止部351と液体封止部353とを分離する谷部357がある。
【0347】
あるいは、任意の実施形態によれば、各リブ352、355は、バレル356の側壁358に対して圧縮されたときに別個の封止を形成することができる。例えば、図23図24に示す実施形態では、スリーブ364は、バレル356の側壁358とスリーブ364との間に封止を形成するために使用され得る2つのリブ352、355を含む。更に、特定の実施形態によれば、第2の部分367及び/又はインサート126は、リブ352及び/又はスリーブ364が、クロージャ36が圧縮されてバレル356内にシールを形成するときのリブ352及び/又はスリーブ364の幅又は直径全体の20%を超えて圧縮されないように、リブ352及び/又はスリーブ364の圧縮を制限するように構成されてもよい。任意選択的に、リブ352及び/又はスリーブ364は、クロージャ36が圧縮されてバレル356内に封止を形成する場合、リブ352及び/又はスリーブ364の全体幅又は直径の10%未満、任意選択的に9%未満、任意選択的に8%未満、任意選択的に7%未満、任意選択的に6%未満、任意選択的に5%未満、任意選択的に4%未満、任意選択的に3%未満、任意選択的に2%未満、任意選択的に3%~7%、任意選択的に3%~6%、任意選択的に4%~6%、任意選択的に4.5%~5.5%、任意選択的に4.5%~5.5%、任意選択的に約4.8%、圧縮される。
【0348】
コネクタ本体363の第3の部分369は、インサート362が長さを伸ばすための力を及ぼす表面を提供することができ、それにより、注射製品がバレル356から分注されるときの幅を減少させる。
【0349】
より具体的には、注射製品がバレル356から分注されるとき、内部シャフト316は、図23に示すような第1の位置から第2の位置まで、前述したように変位し得る。内部シャフト316が第2の位置に向かって変位すると、内部シャフト316の近位端22は、例えばインサート362のシャフト368などのインサート362に、押し込み力を加える。内部シャフト316がインサート362に力を加えると、インサート362は、概してバレル356の近位端361の方向に、スリーブ364内で変位し、したがって、インサート362の外面370の少なくとも一部がコネクタ本体363の第3の部分369に押し付けられる。インサート362が変位して第3の部分369を押すと、コネクタ本体363の第2の部分367が伸張し、これにより、第2の部分367の元のアコーディオン形状が概してよりまっすぐ又はより平坦な形状に変化する。更に、スリーブ364は、スリーブ364内でのインサート362のこの変位によっても伸張し、スリーブ364の幅、ひいてはコンバーチブルクロージャ36の幅が減少する。スリーブ364/コンバーチブルクロージャ36の幅の減少は、コンバーチブルクロージャ36とバレル356の側壁358との間に封止を形成するために使用される圧縮力の減少をもたらす。換言すれば、スリーブ364の僅かな軸方向の伸張(インサート362を非作動位置から作動位置へと変位させることによって任意選択的に達成される)は、今度はスリーブ364及びコンバーチブルプランジャ312’の幅を減少させ、したがって、コンバーチブルプランジャ312’とバレル356の側壁358との間に封止を形成するのに使用された圧縮力の減少を生じる。
【0350】
したがって、スリーブ364/コンバーチブルクロージャ36の幅が縮小されると、バレル356のコンバーチブルクロージャ36を変位させるために必要な力も低減され得る。更に、前述したように、内部シャフト316が係止タブ24によって第2の位置に係止され得るので、スリーブ364は、注射製品がバレル356から分注される間に細長い形状を維持することができる。
【0351】
別の伸張プランジャの実施形態を図28図32に示す。
【0352】
ここで図28及び図29を参照すると、本発明にしたがって構成された例示的なプランジャ502が示されている。プランジャ502は、好ましくは熱可塑性エラストマ(TPE)で作られたスリーブ510を含む。このようなTPE材料としては、KRAIBURG TPE GmgH&Co.(例えば、THERMOLAST(登録商標)、HIPEX(登録商標)又はCOPEC(登録商標))、SANTOPRENE、又はPOLYONE GLS(例えば、ONFLEX、VERSAFLEX、DYNAFLEX、DYNALLOY、VERSALLOY、VERSOLLAN又はKRATON(登録商標))からのTPE材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。熱可塑性加硫物(TPV)のTPEサブファミリーは、幾つかの用途に特に好ましい場合がある。
【0353】
スリーブ510は、雌ねじ512を含むことができる。プランジャロッド524の外部シャフト528の第1の端部28は、スリーブ510の雌ねじ512と嵌合するように構成された雄ねじ532を含むことができる。スリーブの側壁142は、プランジャ502がストレージ位置にあるときに医療用バレルに収容された薬物製品に、CCIを提供する、2つのストレージ封止リブ504(追加又はより少ないシール用リブも考えられるが)を含むストレージ封止部Aを任意選択的に備える。プランジャは、1つのリブ506を任意選択的に含む液体封止部Bを更に含む(付加的な封止リブもまた企図される)。液体封止部Bは、プランジャ502がストレージモードにあるとき、及びプランジャが「分注モード」に移行したときに、液密封止を提供するように構成される。シリンジの内容物を分注するためにプランジャがより簡単に前進するのを容易にするため、ストレージ封止部Aがバレル壁58に対して圧縮力を与えるのを減少させるか又は止めるときに、分注モードが開始される。任意選択的に、液体封止部B自体もCCIを提供する。しかしながら、ストレージ封止部Aは、プランジャ502がストレージモードにあるとき、付加的な「無菌ゾーン」を提供すると考えられる。
【0354】
プランジャ502は、液体封止部Bに隣接してノーズコーンを覆うキャップ518を更に備える。任意選択的に、キャップ518は、液体封止部Bの一部又は全部を覆う。キャップ518は、好ましくは、射出成形可能ポリプロピレン(PP)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)ポリオキシメチレンアセタール(POM)又はポリエチレンテレフタレートグリコール変性(PETG)である。任意選択的に、キャップ518は、他の物の中でも、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、又はPTFEなどのフルオロポリマーから製造することができる。任意選択的に、キャップ518は、スリーブ510上に組み立てられる射出成形可能な部品である。任意選択的に、キャップ518及びスリーブ510は、ツーショット成形プロセスによって作られる。
【0355】
キャップ518は、スリーブ510内に延びる細長いステム520を含み得る。任意選択的に、スリーブ510は、ステム520を受けて保持する(例えば、締まり嵌め、接着剤、ツーショット成形、及び/又は他の手段によって)ステムカバー522を含み、それにより、キャップ518をスリーブ510に確実に保持する。
【0356】
スリーブ510は、好ましくは、内部中空部514と、任意選択的に内部中空部514に近接する内部中実部516とを含む。内部中空部514は、以下に更に説明するように、プランジャ502が作動されたときにスリーブ510が軸方向に伸縮するのを容易にするように構成された伸縮ゾーンCを画定する。内部の中実部516は、プランジャ502が作動されたときにスリーブ510の軸方向に伸びるのを阻止するか又は防止するように構成された非伸縮ゾーンDを画定する。
【0357】
プランジャ502を作動させるために、ユーザは、プランジャロッド524の内部シャフト526に下向きの圧力を加えることができる。このような圧力は、ステムカバー522、ステム520及びキャップ518に伝達される。キャップ518がスリーブ510に固定されているか、又はスリーブ510と一体であるため、内部シャフト526の初動は、最初にプランジャ502をバレルの下方に変位させるものではない。むしろ、そのような初動は、キャップ518を引っ張ってスリーブ510の伸縮ゾーンCを軸方向に僅かに伸張させると同時に、非伸縮ゾーンDを伸張させない。そうすることで、プランジャ502の幅は、(非伸縮ゾーンDではなく)伸縮ゾーンC内で僅かに減少して、プランジャ502を拡張状態から収縮状態、又はストレージモードから分注モードに縮小させる。分注モードに入ると、プランジャ502は、好ましくは、上述のように、所望の実質的に一定のプランジャ力、例えば15N未満、を提供するように構成される。
【0358】
ここで図30図31を参照すると、本発明にしたがって構成されたプランジャ538の別の例示的な実施形態が示されている。多くの点で、プランジャ538は、上述のプランジャ502と構造及び動作が類似している。簡潔にするため、両方のプランジャ502、538に共通の特徴はここでは繰り返さない。しかしながら、相違点は強調して表示される。
【0359】
プランジャ538は、上記プランジャ538の液体封止部Bの領域において、スリーブ542のノーズコーン全体及びスリーブ542の側壁540の一部を覆う、キャップ552を含む。キャップ552は、その周囲に環状ギャップ550を含む。液体封止部材544、任意選択的にOリングが、環状ギャップ550内に配置され、そこから僅かに半径方向に延びる。液体封止部材544は、示されるように、2つの環状の小型リブ546、548を含む。これらの小型リブ546、548は十分な封止を提供すると同時に、最小限の表面積を提供して、プランジャ538が分注モードでバレル内を前進するときに低いプランジャ力を可能にすることが企図される。
【0360】
液体封止部材544は、プランジャの非伸縮ゾーンD’の周りに配置されているので、分注モードの間、液体封止部材544は、変換されないか、そうでなければ、直径又は半径方向の圧力が低減されない。換言すれば、プランジャ538がストレージモードであるか分注モードであるかにかかわらず、液体封止部材が同じ直径及び半径外方向の圧力を維持することが企図される。
【0361】
好ましくは、液体封止部材544は、良好な酸素バリアを提供する材料、好ましくは熱硬化性エラストマから作られる。
【0362】
ここで図32を参照すると、ロッドが取り付けられたプランジャ524を有する、本発明にしたがって構成されたプランジャ556の別の例示的な実施形態が示されている。多くの点で、プランジャ556は、上述のプランジャ502と構造及び動作が類似している。簡潔にするため、両方のプランジャ502、556に共通の特徴はここでは繰り返さない。しかしながら、相違点は強調して表示される。
【0363】
プランジャ556は、本明細書で開示される他のキャップの実施形態よりもはるかに厚いキャップ560を含む。キャップ560は、プランジャ556の液体封止部B’として機能する。キャップ560は、好ましくは、円弧状のノーズコーン562及び実質的に円筒状の側壁564を含む。側壁564は、ノーズコーン562に近づくにつれて半径方向に僅かにフランジを形成し、環状キャップリブ558を画定する。キャップリブ558は、好ましくは、バレルの内径との非常に僅かな締まり嵌めを提供する。例えば、バレルの内径が、キャップリブ558の直径よりも15~20マイクロメートル(μm)小さいことが、幾つかの用途にとって望ましい場合がある。キャップ560は剛性ポリマー(他のキャップの実施形態については本明細に記載された材料はいずれも適切であり得る)から作られるので、(ステムとは対照的に)キャップのヘッドはゼロ変形、すなわち、非伸縮ゾーンD”と呼ばれる。したがって、プランジャ556が作動され、ストレージモードから分注モードに変換されるとき、キャップ560は、分注モードの間、直径の減少又は半径方向の圧力を経験しない。環状キャップリブ558は、CCI(無菌性)、酸素バリア及び液密封止を提供することが企図されている。この封止レベルは、分注モード中のキャップリブ558のみによって提供される。しかしながら、ストレージモードの間、プランジャ556のスリーブ上のストレージ封止リブは、図28図29のプランジャ組立品10に関して上述したような方法で、プランジャ556をストレージモードから解放するまで崩壊しない、さらなる無菌ゾーンを提供する。
【0364】
任意選択的に、伸張時にコンバーチブルであるプランジャの代わりに、本発明の幾つかの実施形態は、伸張しないプランジャを含んでもよい。例えば、1つの変形は、TPEスリーブに固定されていないポリマープランジャキャップ560の使用であってもよい。換言すれば、プランジャキャップ560自体は、使用を通じて実質的な変形を受けることなく(すなわち、ストレージモードから分注モードに変換されない)、プランジャとして機能し得る。
【0365】
コンバーチブルプランジャ724の別の実施形態を図33図35Cに示す。プランジャ724は、プランジャ724の構成及び組立品と重要な相違があるが、ある程度、図19図22のプランジャ組立品324と構造的及び機能的に類似している。図19図22の対応物と同様に、コンバーチブルプランジャ724は、実質的に上述したように、封止モード(ストレージ封止部が係止位置にある)及び滑動モード(ストレージ封止部が解放位置に移動する)で動作するように構成されている。また、コンバーチブルプランジャ724は、独立したストレージ封止部のプランジャタイプである。簡潔にするため、2つの実施形態間の類似の特徴(例えば、ストレージリングの材料及び構成、プランジャがプランジャロッドに固定される方法、プランジャの基本機能など)は、ここで深く議論しない。しかしながら、相違点が留意され得る。コンバーチブルプランジャは、剛性中心コア732の形態のリングキャリアを備え、リングキャリアは、シリンジ(例えば、図4のシリンジバレル12)に組み立てられたとき、シリンジバレルの中心軸と同軸である。
【0366】
ストレージ封止部734は、ストレージリング738の形で、任意選択的に、示されるように、2つ、3つ、又はそれ以上のローブ740を含み、中心コア732の一部に取り付けられる。中心コア732は、その近位端から、環状分注プラットフォーム748に隣接するフランジ752(例えば、ねじ係合又はスナップ嵌合を介して、プランジャロッドに固定され得る)を含む、細長い剛性部材である。分注プラットフォーム748の遠位には、環状ストレージプラットフォーム744につながる環状段階的遷移領域746がある。中心コア732の外径は、ストレージプラットフォーム744の遠位で狭まり、環状挿入プラットフォーム770の2つの弾性プロング772を形成し、その機能については後述する。
【0367】
図19図22の実施形態とは異なり、中心コア732は、(ストレージ封止部336の近位端とは反対に)コネクタ本体780の近位端に取り付けられる。コネクタ本体780は、好ましくは剛性の(例えば、ポリマー性の)略円筒状の部材であり、その近位端は、中心コア732の弾力性のあるプロング772を受けてこれに接続する。液体封止部736は、図19図22の中心コア332に液体封止部336が取り付けられるのと本質的に同じ方法で、コネクタ本体780の遠位端に取り付けられる。液体封止部336に関する上記の説明は、同じく対等である図33図35Cのプランジャ724の説明には十分であろう。液体封止部736は、フィルム756が巻かれたヘッド754を任意選択的に含むことが、一時的にのみ留意される。特に、フィルム756は、ヘッド754の周囲に完全に巻き付けられ、ヘッド754の下側に沿って続き、フィルム756は、ヘッド754とコネクタ本体780との間に挟まれている。ヘッド754は、例えば、超音波溶接、接着剤、圧入、スナップ嵌合又はねじ係合によって、コネクタ本体780の中央嵌合凹部760に組み立てられ固定されるステム763を備える。
【0368】
任意選択的に、任意の実施形態において、フィルム756は、Fluro-Tec(登録商標)フィルムラミネートであってもよい。他の選択肢として、フィルム756は、Terumo CorporationによってI-Coating(登録商標)の商標で販売されている皮膜であってもよい。任意選択的に、任意の実施形態において、フィルム75は、「固体微粒子を含まず、ビニル基を有するシリコーンとケイ素原子に結合した水素基を有するシリコーンとが付加反応して生成するシリコーン系樹脂を含む組成物で形成することができる。」「例示的な実施形態において、皮膜層を形成する組成物は、白金族金属系触媒を含有する。」米国特許出願公開第2013/0030380A1号明細書、p.2。
【0369】
コネクタ本体780は、軸方向チャネル784の中心軸に垂直な方向に、コネクタ本体780の中心部全体を通じて任意選択的に貫通する、より広い開口部776につながる軸方向チャネル784を備える。この構成は、コネクタ本体780の射出成形を単純化する。開口部776は、軸方向チャネル784が開口部776と交わるところに隣接するリッジ部782を含む。プロング772は、その遠位端において、半径方向外側に突出したアバットメント774を含む。アバットメント774は、リッジ部782の下に保持され、中心コア732をコネクタ本体780に固定する。
【0370】
中心コア732をコネクタ本体780に組み立てるには、2つの構成要素を並べ、軸方向にセンタリングする必要がある。次に、中心コア732のプロング772がコネクタ本体780の軸方向チャネル784に挿入される。軸方向チャネル784は、例えば、軸方向チャネル784の近位端に環状の面取り786を有する、プロング772の挿入を容易にするように構成される。プロング772が面取り786に接触すると、プロング772は弾力性を有するように曲げられ又は半径方向内側に圧縮され、プロング772が軸方向チャネル784の遠位側に移動すると、プロング772及びアバットメント774は軸方向チャネル784内に完全に収まる。アバットメント774が広い開口部776に完全に到達すると、プロング772は圧縮状態から解放され、アバットメント774はリッジ部782の下に保持され、中心コア732がコネクタ本体780から分離するのを防止する。要するに、プロング772は、中心コア732をスナップ嵌合構成でコネクタ本体780に固定する。これは、今説明したように、シリンジバレル内へのプランジャ724の組立てにおいて利点を提供する。
【0371】
図34A及び図34Bは、中心コア732を介したストレージリング738がコネクタ本体780及び液体封止部736のサブ組立品上に組み立てられて完成したコンバーチブルプランジャ724を形成する様子を示す概略図である。図34Aは、それらを完全に組み立ててプランジャ724を形成する直前の構成要素を示す。図示されるように、中心コア732の遠位端は、コネクタ本体780の軸方向チャネル784内に僅かに突出しており、したがって、そこにはまだ固定されていない。特に、この位置では、ストレージリング738は、中心コア732又はリングキャリアの環状挿入プラットフォーム770上に配置される。環状挿入プラットフォーム770は、環状ストレージプラットフォーム744よりも狭い外径を有する。したがって、図34Bに示すように、ストレージリング738の外径は、ストレージプラットフォーム744上に配置されたときのリング738の外径よりも小さい。ストレージリング738の比較的小さい外径は、挿入プラットフォーム770の周りに配置されたときに、リング738がバレル壁に接触しないか、又はバレル壁と最小限のみ接触するようにして、リング738がシリンジバレルに挿入されるのを容易にするように構成される。挿入プラットフォーム770上にあるとき、シールリング738は、「ロード位置」にあり、ここで、リング738は、シリンジバレルの近位端内に容易に摺動する。プロング772がコネクタ本体780の軸方向チャネル784内に下方に押し込まれて最終的に中心コア732を固定すると(図34Bに示すように)、ストレージリング738は挿入プラットフォーム770のロード位置から係合位置に移行し、このリングは、ストレージプラットフォーム744の周りに配置される。
【0372】
特に、上述のプロセスでは、リング738は、リング738を係合モードに設定するために、デバイスに別個に付勢されていないか、又は押し込まれていない。むしろ、リング738は、中心コア732をコネクタ本体780に取り付ける前に、リングを中心コア732上のロード位置に置くことによって、バレル側壁の抵抗がほとんど又は全くない状態でシリンジバレルに挿入される。図34A及び図34Bの両方に見られるように、リング738は、リングがロード位置にあり、係合位置にあるとき、コネクタ本体の近位端に対して面一である。換言すれば、リング738はロード中、固定位置に留まり、中心コア732はリングに対して移動する。リング738とコネクタ本体728との間には、リング738がバレル側壁に対して圧縮する前と後の両方において空間がないので、ストレージリング738と液体封止部736との間に「圧力ゾーン」は存在しない。
【0373】
したがって、この設計は、ストレージリングを歪ませることなく、又は不要な圧力ゾーンを作ることなく、ストレージリングをロードすることで、上記の問題を解決する。
【0374】
図35A図35Cの概略図は、コンバーチブルプランジャ724の構成要素がプレフィルドシリンジにロードされ、組み立てられる方法をより完全に示している。
【0375】
図35Aに示すように、液体封止部736及びコネクタ本体780のサブ組立品は、プランジャをロードする従来の方法によってプランジャにロードされてもよい。これらには、ベントチューブ、真空ローディング及び真空アシストが含まれ、これらは全て以下に記載されている。次に、ストレージリング738及び中心コア732サブ組立品は、中心コア732のプロング772上のロード位置738にリング738を配置することによって生成される。図35Cに示すように、ストレージリング738及び中心コア732サブ組立品は、例えば、組み立てられたプッシュロッド又はプランジャロッドによって、コネクタ本体780とのスナップ嵌合が確立されるまで挿入され、係合モードでロードされた、完全に組み立てられたコンバーチブルプランジャを形成する。バレル内のプレフィルド液体は、中心コア732をコネクタ本体780に組み立てるときに加えられる下向きの力に抗するのに必要な抵抗を提供することが企図される。プランジャ724は、他の実施形態で説明したのと同様に、プランジャ724を係合位置(図35Cに示す)から解除位置(図33に示す)に変換するために使用することができる。
【0376】
任意選択的に、キャップを備える任意のプランジャの実施形態では、キャップは、シリンジの内容物と周囲環境との間にガスバリアを提供するためにバリア皮膜又は層で被覆される。任意選択的に、少なくとも1つの有機シロキサン皮膜又は層をバリア皮膜又は層の上に適用して、バリア層が5~9の範囲内のpHを有するシリンジ内容物によって分解されるのを防ぐことができる。任意選択的に、三層皮膜セットをキャップに適用することができる。これらの皮膜、層及び皮膜セットは、好ましくは、本明細書の他の箇所に記載されているように、化学蒸着、より好ましくはプラズマ化学気相成長法によって適用される。
【0377】
任意選択的に、任意の実施形態において、容器14として、前面分注開口部26及び背面開口部32を有するシリンジバレルを設けることができる。
【0378】
任意選択的に、任意の実施形態において、容器14はシリンジバレルであり、クロージャ36は、容器14内に配置され、容器14と接触する領域を有するプランジャであり、プレフィルド薬剤パッケージ210は、容器14とクロージャ36との間の接触領域で容器14及びクロージャ36の一方に配置された、架橋シリコーン滑性皮膜又は層287、任意選択的にプラズマ架橋シリコーン滑性皮膜又は層287を更に含む。
【0379】
任意選択的に、任意の実施形態において、プレフィルド薬剤パッケージ210は、タンパーエビデント針シールド28を含む。
【0380】
任意選択的に、任意の実施形態において、プレフィルド薬剤パッケージ210は、容器14上のルアーロック788を含む。
【0381】
任意選択的に、任意の実施形態において、図38Aを参照すると、分注部20はルアーロック788を介して提供されてもよく、分注部は、0.05mm~1.8mm未満、あるいは0.1mm~1.5mm、あるいは0.3mm~1.8mm、あるいは0.3mm~1.5mm、あるいは0.4mm~0.8mm、あるいは0.5mm~0.7mm、あるいは0.4mm、0.5mm、又は0.6mmの直径を有する。この小さい分注開口部20は、高価な薬剤にとって重要なルアーロックシリンジからの投与後に残留薬物を含有するシリンジ中の廃棄量を減少させることが企図されている。
【0382】
図5図38A、及び図38Bを参照すると、上記に開示したように、非常に小さな直径の分注部20を形成するための方法が示されている。米国特許第9345846号明細書は、本明細書の図5に示されるように、最初に別個の針を型内に挿入し、針の周囲に熱可塑性材料を形成することにより、皮下シリンジバレルを固定針で作ることができることを示している。本発明者らは、任意選択的に皮下注射針、すなわち中空ピン、又は中実ピンのいずれかであり得るピン790を、型のキャビティに挿入することによって、ルアーロックシリンジバレルの分注部20を同様に作製できることを見い出した。ピン790は、任意選択的に単純な円筒状のピンであってもよく、任意選択的にアンカー部なしで提供されてもよく、任意選択的に鋭利な端部を有しなくてもよく、任意選択的に離型剤で処理されてもよい。ピンは、0.05mm~1.8mm未満、あるいは0.1mm~1.5mm、あるいは0.3mm~1.8mm、あるいは0.3mm~1.5mm、あるいは0.4mm~0.8mm、あるいは0.5mm~0.7mm、あるいは0.4mm、0.5mm、又は0.6mmの直径を有し得る。熱可塑性材料は、ピン790の周りに射出成形されて、分注部20を形成することができる。
【0383】
シリンジバレルが形成された後、最小直径の分注部20を残して、ピン790はバレルの前端22から引き出される。デッドボリュームの縮小されたルアーロックシリンジでは、所望の分注部又は毛細管の内径を達成するために、特定の針ゲージを任意選択的に使用することができる。0.5mlのルアーロックシリンジの場合、任意選択的に27ゲージの針をピン790として使用して、0.4mmの毛細管分注部20を作製することができる。ピン790は、任意選択的に、型内にロボット式に配置することができ、シリンジは、ピンの周りに成形することができる。シリンジは、任意選択的に、ピン790が取り付けられた状態で型からロボット式に取り外すことができる。型の外側の別個の台では、ピン790をシリンジから機械的に取り外して、分注部20を開くことができる。任意選択的に、ピン790は、針を恒久的にシリンジに固定するために従来用いられていた、針先又は基部上の粗面化パターンを有しない。
【0384】
図39A及び図39Bは、別の選択肢として、例えば、約1.8mmの内径を有する、より従来的にサイズ形成され成形された分注部20を有するルアーロックシリンジバレルを示す。
【0385】
この手法を使用して、ルアー分注部20の直径は、異なるサイズの針ゲージを選択することによって、より大きく又はより小さくすることができる。従来のルアー毛細管では、内径(ID)は、型の一体部である従来のコアピンで作ることができる。小さいゲージサイズを有する針(次いで除去される)のこの実施形態による使用は、ISO標準ルアー毛細管サイズよりも小さい毛細管IDを有するルアーロックシリンジを製造するために有利である。
【0386】
選択的に、任意の実施形態において、皮膜セット285は、壁15の内部表面16上に提供され得、皮膜セット285は、pH保護皮膜又は層34を含む。
【0387】
任意選択的に、任意の実施形態において、皮膜セット285は、壁15の外部表面216上に提供され得る。
【0388】
任意選択的に、任意の実施形態において、pH保護皮膜又は層34を含まない皮膜セット285を提供することができる。
【0389】
任意選択的に、任意の実施形態において、皮膜セット285の上に耐擦傷性皮膜33を含むことができる。
【0390】
任意選択的に、任意の実施形態において、熱可塑性の壁15の内部表面16上の皮膜セット285と、熱可塑性の壁15の外部表面216上の耐擦傷性皮膜33とを提供することができる。
【0391】
任意選択的に、任意の実施形態において、耐擦傷性皮膜33は、XPSで測定したSi、O、及びCの以下の原子比を有するPECVD塗布皮膜を含む:
○Si=1、
○O=0.7~1、及び
○C=1.1~1.5。
【0392】
任意選択的に、任意の実施形態において、耐擦傷性皮膜33は、湿式化学によって塗布されて固体皮膜又は層を形成するフィルムを含む。このようなフィルムは、非限定的な例として、任意選択的に1~5μmの厚さであってもよい。湿式化学によって塗布され、PECVDの耐擦傷性皮膜によって覆われた複合耐擦傷性皮膜もまた意図される。
【0393】
湿式化学に適用されるpH保護皮膜の適切な例は、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂を用いてバリア皮膜又は層をコーティングすることである。例えば、バリア皮膜部分は、流体ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂融液、溶液又は分散液(dispersion)中における浸漬皮膜によってディップコーティングされ、高圧蒸気殺菌又は他の60~100℃の温度での加熱によって硬化されうる。pH5~8の水性環境においてはポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂の皮膜が優先的に使用されうることが企図される。これは、そのような樹脂がそのpH範囲内において紙の高い湿潤強度を提供することが公知であることが理由である。湿潤強度は長期間にわたり完全な水の浸漬にさらされた紙が機械強度を維持する能力であり、SiOxバリア層上のポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂の皮膜は水性媒体中の溶解に対して同様の抵抗を有することが考えられる。また、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂は滑性の向上を紙に付与することから、それはまた、例えば、COC又はCOPから作製した、熱可塑性プラスチック表面上の皮膜の形態において滑性を提供することが企図される。
【0394】
SiOx層を保護するための更に別の方法は、pH保護皮膜又は層として、ポリフルオロアルキルエーテルの塗液を塗布した後、pH保護皮膜又は層を大気圧プラズマにより硬化する方法である。例えば、TriboGlide(登録商標)は滑性を提供するのに好都合に使用されるため、本明細書に記載のTriboGlide(登録商標)の商標で実施されるプロセスを使用して、滑性層でもあるpH保護皮膜又は層を設けることができると考えられる。TriboGlide TriboLink(商標)Si架橋シリコーン皮膜は、pH保護皮膜又は層として使用することもできる。
【0395】
任意選択的に、任意の実施形態において、皮膜セット285は、熱可塑性の壁15の外部表面216上のタイコート皮膜又は層838、タイコート皮膜又は層838上のバリア皮膜又は層30、及び耐擦傷性皮膜33として、バリア皮膜又は層30上に湿式化学によって塗布されたトップコートを含む。
【0396】
任意選択的に、任意の実施形態において、インサート成形された固定針156及び針シールド28を使用することができる。
【0397】
任意選択的に、任意の実施形態において、エチレンオキシドEOガスによる、任意選択的に、16.6インチHg(=42.2cmHg、56キロパスカル、560mbar)の圧力、120°F(49℃)で10時間での、あるいは、気化過酸化水素(VHP)による、最終滅菌に適した、プレフィルド薬剤パッケージ210が使用され得る。
【0398】
任意選択的に、任意の実施形態において、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害からなる群から任意選択的に、選択される眼疾患有する患者に硝子体内注射によって眼科用薬剤の液体製剤40を投与する際に使用するための、先の請求項のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ210に入った眼科用薬剤が提供され得る。
【0399】
任意選択的に、任意の実施形態において、プレフィルド薬剤パッケージ210中の眼科用薬剤を上記の使用のために提供することができ、液体製剤40の30~100μlの容量が患者に投与される。
【0400】
任意選択的に、任意の実施形態において、最終的に滅菌されたプレフィルド薬剤パッケージ210を提供することができる。
【0401】
任意選択的に、任意の実施形態において、エチレンオキシドで最終的に滅菌されたプレフィルド薬剤パッケージ210を提供することができる。
【0402】
選択的に、任意の実施形態において、封止された外側パッケージ170内に収容された、上記で特定される1つ以上のプレフィルド薬剤パッケージ210を含むキット158を提供することができる。プレフィルド薬剤パッケージ210は無菌であり、熱可塑性の壁15は残留エチレンオキシドを含む。任意選択的に、封止された外側パッケージ170は、エチレンオキシド滅菌剤に対して透過性である。任意選択的に、内腔18は、エチレンオキシドを本質的に含まず、好ましくは含まない。
【0403】
任意選択的に、任意の実施形態において、請求項49のキット158は、針156を更に含み、これは、任意選択的にルアーニードル156、あるいは固定針156を含む、封止された外側パッケージ170に任意選択的に収容される。
【0404】
選択的に、任意の実施形態において、請求項50のキット158は、薬剤パッケージ210の少なくとも一部分に取り付けられ、封入する針シールド28を更に含む。
【0405】
任意選択的に、任意の実施形態において、針シールド28が針156を覆って設置される場合、任意選択的に、薬剤パッケージ210が封止された外側パッケージ170に封入される場合、16.6インチ(42.2cm)Hgの圧力、120°F(49℃)で10時間でのエチレンオキシドEOガスによる薬剤パッケージ210全体のエチレンオキシド最終滅菌を可能にするよう、針シールド28が十分にエチレンオキシド透過性である、キット158が提供される。
【0406】
任意選択的に、任意の実施形態において、封止された外側パッケージ170に任意選択的に含まれるプランジャロッド38を更に含むキット158を提供することができる。
【0407】
任意選択的に、任意の実施形態において、封止された外側パッケージ170に任意選択的に含まれる使用説明書を更に含むキット158を提供することができる。
【0408】
本発明の更に別の態様は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法であって、上記プレフィルド薬剤パッケージ210に収容される眼科用薬剤の液体製剤40の硝子体内注射の投与を含む。
【0409】
本発明の更に別の態様は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上の処置のための上記プレフィルド薬剤パッケージ210の製造における眼科用薬剤の液体製剤40の使用である。
【0410】
本発明の更に別の態様は、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法における使用のための上記のようなプレフィルドシリンジである。
【0411】
プロトコル及び試験方法
原子組成
タイコート皮膜又は層、バリア皮膜又は層30、及びpH保護皮膜又は層34の原子組成は、ケイ素、酸素、及び炭素の測定にはX線光電子分光法(XPS)、並びに水素の測定にはラザフォード後方散乱(RBS)又は水素前方散乱(HFS)分光法のいずれかを用いてキャラクタリゼーションを行う。XPSは水素を検出しないため、水素含有量を求めるには別の分析方法を使用する。特記しない限り、以下の方法を使用する。
【0412】
XPSプロトコル
XPSデータは、比感度係数及び均質な層を前提とするモデルを用いて定量化される。分析体積は、分析面積(スポットサイズ又は開口サイズ)と情報深さとの積である。光電子はX線侵入深さ(通常、何ミクロン(マイクロメートル)もの深さ)内で発生するが、上部の3つの光電子脱出深さ内の光電子だけが検出される。脱出深さは約15~35Åであり、これにより分析深さは約50~100Åとなる。通常、信号の95%はこの深さから発生する。
【0413】
以下の分析パラメータを使用する。
・機器:PHI Quantum 2000
・X線源:Monochromated Alka 1486.6eV
・取り込み角 ±23°
・取り出し角 45°
・分析面積 600μm
・電荷補正 C1s 284.8eV
・イオン銃条件 Ar+、1keV、2×2mmラスター
・スパッタ速度 15.6Å/分(SiO2当量)
【0414】
値は、検出される元素を用いて100パーセントに正規化されている。検出限界は、約0.05~1.0原子パーセントである。
【0415】
ラザフォード後方散乱分光法(RBS)
RBSスペクトルは、後方散乱角160°及び適切なグレージング角(grazing angle)で(試料を入射イオンビームに垂直な向きに配置して)取得する。入射ビームに対してランダムな配置(geometry)を呈するように、試料を小さい角度で回転又は傾斜させる。これは、フィルムと基板の両方でのチャネリングを回避する。2つの検出角度を使用することにより、薄い表面層を分析する必要がある場合、組成の測定精度を著しく改善することができる。
【0416】
薄い(<100nm)非晶質又は多結晶性フィルムが単結晶基板上に存在するとき、「イオンチャネリング」を使用して基板からの後方散信号を低減することができる。この結果、基板信号と重なる元素、通常、酸素及び炭素などの軽元素を含有する層の組成の精度が改善される。
【0417】
分析パラメータ:RBS
・He++イオンビームエネルギー 2.275MeV
・法線(Normal)検出角度 160°
・グレージング検出角度 約100°
・分析モード CC RR
【0418】
理論層モデルを適用し、理論スペクトルと実験スペクトルとの十分な一致が認められるまで元素濃度と厚さを反復的に調節することにより、スペクトルをフィットさせる。
【0419】
水素前方散乱法分光法(HFS)
HFS実験では、検出器を入射He++イオンビームの前方軌道から30°で配置し、入射ビームが法線から75°で表面に当たるように試料を回転させる。この配置では、プロービングHe++イオンビームとの衝突後に試料から前方に散乱された軽原子、即ち、水素を捕集することが可能である。同様に試料から前方に散乱されるHe++イオンを除去するために、検出器上に薄い吸収箔を配置する。
【0420】
水素濃度は、異なる物質の阻止能により正規化した後、標準試料から得られる水素カウント数を比較することにより求められる。水素注入ケイ素試料及び幾何学的試料、白雲母を標準物質として使用する。水素注入ケイ素試料中の水素濃度は、その表示注入量1.6×1017±0.2×1017atoms/cm2であると測定された。白雲母(MUSC)試料は約6.5±0.5原子パーセントの水素を有することが知られている。
【0421】
試料の分析領域中の水素損失を調べる。これは、異なる取得時間のスペクトルを取得することにより行われる(最初、He++ビームに短時間曝露した後、比較的長時間曝露する)。5μC及び40μCでの電荷蓄積を使用する。40μCスペクトル中の比例信号が比較的低い場合、これは水素損失を示している。そのような場合、スペクトル中のノイズが高くなってしまうが、比較的短い曝露を分析に選択する。残留水分又は炭化水素の吸着による表面水素を明らかにするために、ケイ素対照試料を実際の試料と共に分析し、対照試料からの水素信号を実際の試料から得られる各スペクトルから引く。HFS取得中、後方散スペクトルは160°の角度の検出器(試料は前方散乱の向きに配置する)を用いて取得する。RBSスペクトルを使用して、試料に送出される総電荷を正規化する。
【0422】
分析パラメータ:HFS
・He++イオンビームエネルギー 2.275MeV
・法線検出角度 160°
・グレージング検出角度 約30°
・試料法線に対するイオンビーム 75°
【0423】
総ケイ素測定のためのプロトコル
このプロトコルは、容器壁全体に存在するケイ素皮膜の総量を決定するために使用される。溶液又は成分とガラスとの間の接触を回避するよう留意し、ある供給量の0.1N水酸化カリウム(KOH)水溶液を用意する。使用される水は精製水で、18MΩ品質である。特に定めのない限りは測定にPerkin Elmer Optima Model 7300DV ICP-OES機器が使用される。
【0424】
試験される各デバイス(バイアル、シリンジ、チューブ等)並びにそのキャップ及びクリンプ(バイアルの場合)又は他のクロージャを空~0.001gにおいて計量し、その後、KOH溶液で完全に充填し(ヘッドスペースなしで)、キャップを嵌め、クリンプし、0.001g以下において再計量した。温浸ステップにおいては、121℃のオートクレーブオーブン(液体サイクル)中に各バイアルが1時間配置される。温浸ステップはケイ素皮膜を容器壁からKOH溶液中に定量的に除去するために実施される。この温浸ステップ後、バイアルはオートクレーブオーブンから取り出され、室温まで冷却される。バイアルの内容はICPチューブに移動される。各溶液の総Si濃度がICP/OESによってICP/OESの実施手順に従い実行される。
【0425】
総Si濃度はKOH溶液中のSiの10億分率として報告される。この濃度は、温浸ステップが使用されそれが除去される前に容器壁上にあったケイ素皮膜の総量を示す。
【0426】
総Si濃度は、また、SiOxバリア皮膜又は層30が塗布され、SiOxy第2層(例えば、滑性層又はpH保護皮膜若しくは層34)がその後塗布され、SiOxy層だけの総ケイ素濃度を知りたい場合のように、容器上の全ケイ素層よりも少数の層について決定することができる。この決定は、2セットの容器を用意し、その1つのセットにはSiOx層のみを塗布し、そのもう一方のセットには同じSiOx層、続いてSiOxy層又は関心のある他の層を塗布することによって実施される。各セットの容器の総Si濃度は上に記載したのと同じ手法で決定される。2つのSi濃度間の差がSiOxy第2層の総Si濃度である。
【0427】
容器中の溶解したケイ素を測定するためのプロトコル
実施例のいくつかにおいては、例えば、試験溶液の溶解速度を評価するために、試験溶液によって容器の壁から溶解したケイ素の量が10億分率(ppb)で決定される。この溶解したケイ素の決定は、試験条件下でSiOx及び/又はSiOxy皮膜又は層が提供された容器内に試験溶液を保管し、その後、溶液のサンプルを容器から除去し、サンプルのSi濃度を試験することによって実施される。試験は、総ケイ素測定のためのプロトコルと同じ手法で実施されるが、そのプロトコルの温浸ステップの代わりにこのプロトコルに記載されるような容器内における試験溶液の保管が使用される。総Si濃度は試験溶液中のSiの10億分率として報告される。
【0428】
平均溶解速度を決定するためのプロトコル
実施例から分かるように、ケイ素溶解速度は、容器からその内容物中に浸出される総ケイ素を求めることにより測定され、pH保護皮膜若しくは層34、滑性層281、バリア皮膜若しくは層30、又は存在する他の物質に由来するケイ素を区別するものではない。
【0429】
実施例において報告される平均溶解速度は以下のように決定される。既知の総ケイ素測定値を有する一連の試験容器に、総ケイ素測定のためのプロトコルにおいてバイアルにKOH溶液を充填する手法と類似の手法で所望の試験溶液を充填する。(試験溶液は、本実施例で用いられるような生理的に不活性の試験溶液とすることも、薬剤パッケージ210を形成するために容器内に保管されることを意図した生理的に活性な製剤40とすることもできる)。試験溶液は各々の容器内にいくつかの異なる時間量の間保管され、その後、各保管時間おける試験溶液中のSi濃度を10億分率で分析する。各々の保管時間及びSi濃度は、その後、プロットされる。プロットを分析し、最急勾配を有する実質的に線形の点の列を求める。
【0430】
日数に対する溶解量(ppb Si)のプロットでは、Si層が試験溶液によって完全に温浸されているとは思われないものの、時間とともに勾配が減少する。
【0431】
以下、表10のPC194試験データにおいては、最小二乗線形回帰プログラムを使用し、各実験プロットのうち最初の5つの標本値群に合致する線形プロットを求めることにより溶解対時間のデータの線形プロットを作成する。その後、各線形プロットの勾配が決定され、試験に適用可能な平均溶解速度を示すものとして、単位時間あたりの試験溶液中に溶解したSiの10億分率で報告される。
【0432】
皮膜厚さの測定
pH保護皮膜又は層34、バリア皮膜又は層30、滑性皮膜又は層、及び/又はこれら層のいずれか2つ以上の複合体などのPECVD皮膜又は層の厚さは、例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)により測定することができる。
【0433】
TEMは、例えば、以下のように実施することができる。2方向で断面を加工する集束イオンビーム(FIB)用に試料を準備することができる。K575X Emitechタイコート皮膜又は層システムを使用して、試料にまず炭素の薄層(厚さ50~100nm)を被覆した後、白金のスパッタ皮膜又は層(厚さ50~100nm)を被覆することができる、又は、試料に保護スパッタPt層を直接被覆することができる。被覆された試料をFEI FIB200 FIBシステム内に配置することができる。30kVガリウムイオンビームを対象領域上にラスター走査しながら、有機金属ガスを注入することにより追加の白金皮膜又は層をFIB堆積することができる。各試料の対象領域は、シリンジバレルの長さの半分まで下がった位置になるように選択することができる。長さ約15μm(「マイクロメートル」)、幅2μm及び深さ15μmの薄い断面を、in-situ FIBリフトアウト法を用いてダイ表面から抽出することができる。断面は、FIB堆積白金を用いて200メッシュ銅製TEMグリッドに取り付けることができる。幅約8μmの寸法の、各断面内の1つ又は2つのウィンドウはFEI FIBを、ガリウムイオンビームを用いて電子透過性になるまで薄肉化することができる。
【0434】
準備した試料の断面画像解析は透過電子顕微鏡(TEM)又は走査透過電子顕微鏡(STEM)のいずれか又は両方を利用して実施することができる。全画像化データはデジタル方式で記録することができる。STEM画像化では、薄肉化した箔を有するグリッドをSTEM専用のHitachi HD2300に移すことができる。走査透過電子画像は原子番号コントラストモード(ZC)及び透過電子モード(TE)で、適切な倍率で取得することができる。以下の機器設定を使用することができる。
機器 走査透過電子顕微鏡
製造業者/型式 Hitachi HD2300
加速電圧 200kV
対物絞り 2
コンデンサレンズ1設定 1.672
コンデンサレンズ2設定 1.747
おおよその対物レンズ設定 5.86
ZCモード投影レンズ 1.149
TEモード投影レンズ 0.7
画像取得
画素分解能 1280×960
取得時間 20秒(×4)
【0435】
TEM分析では、試料グリッドをHitachi HF2000透過電子顕微鏡に移すことができる。透過電子画像は適切な倍率で取得することができる。画像取得時に使用される関連機器設定は下記に記載するものとすることができる。
機器 透過電子顕微鏡
製造業者/型式 Hitachi HF2000
加速電圧 200kV
コンデンサレンズ1 0.78
コンデンサレンズ2 0
対物レンズ 6.34
コンデンサレンズ絞り 1
撮影(imaging)用対物レンズ絞り 3
SAD用選択領域絞り N/A
【0436】
SEMの手順
SEMサンプルの調製:各シリンジサンプルをその長さに沿って半分に切断する(内側又は内部表面を露出させるため)。サンプルを小さくするためにシリンジ(ルアー端部)の上部を切り取ってもよい。
【0437】
サンプルを導電性黒鉛接着剤によってサンプルホルダ上に取り付け、その後、Denton Desk IV SEMサンプル調製システム内に配置し、薄い(約50Å)金皮膜をシリンジの内側又は内部表面上にスパッタする。金皮膜は測定中における表面の帯電を除去するのに使用される。
【0438】
サンプルをスパッタシステムから取り出し、Jeol JSM 6390 SEM(走査型電子願徴鏡)のサンプルステージ上に取り付ける。サンプルをサンプル隔室内において少なくとも1x10-6トルまで排気する。サンプルが必要な真空レベルに達したら、スリットバルブを開き、サンプルを分析台に移動させる。
【0439】
サンプルをまずは粗い分解能で画像化し、その後、より高い倍率の画像を蓄積する。SEM画像は、例えば端から端まで(水平及び垂直)が5μmであってもよい。
【0440】
AFM(原子間力顕微鏡法)手順
AFM画像は、NanoScope III Dimension 3000マシン(Digital Instruments,Santa Barbara,California,USA)を使用して収集する。機器はNISTにトレース可能な標準に照らして校正する。エッチングされたシリコン製の走査型プローブ顕微鏡(SPM)チップを使用する。自動平坦化(auto-flattening)、平面フィッティング又は畳み込みを含む画像処理手順を用いる。1つの10μmx10μm面積を画像化する。粗さ分析を実施し、以下において表す。(1)二乗平均粗さ(Root-Mean-Square Roughness)、RMS、2 平均粗さ、Ra、及び(3)最大高さ(山対谷)、Rmax。これらは全てナノメートル(nm)で測定する。粗さ分析のため、各サンプルを10μmx10μm面積上において画像化し、続いて、10μmx10μm画像においてフィーチャを切断する3つの断面を分析者が選択する。フィーチャの垂直深さは断面ツール(cross section tool)を使用して測定する。各断面について、二乗平均粗さ(RMS)をナノメートルで報告する。
【0441】
デジタル機器のNanoscope III AFM/STMは、表面の3次元表示をデジタル形式で取得及び保存する。これら表面は種々の手法で分析されうる。
【0442】
Nanoscope IIIソフトウェアは任意のAFM又はSTM画像の粗さ分析を実行することができる。この分析の産物(product)は選択した画像を上面図で再生する単一ページである。画像は「画像統計」ボックスを含み得、阻止域(それを通過するXを有するボックス)によって除外される任意の面積を差し引いた画像全体の計算した特性を列挙する。画像の選択した部分について類似の更なる統計を計算することができ、これらはページの右下部分の「ボックス統計(Box Statistics)」内に列挙され得る。以下に続くのはこれら統計の記載及び説明である。
【0443】
画像統計:
Z範囲(Rр):画像の最高点と最低点との間の差。この値は画像の平面内の傾きに関して補正されない。したがって、平面フィッティング又はデータの平坦化により値は変化する。
【0444】
平均:画像化された面積内の全Z値の平均。この値は画像の平面内の傾きに関して補正されない。したがって、平面フィッティング又はデータの平坦化によりこの値は変化する。
【0445】
RMS(Rq):これは画像におけるZ値(又はRMS粗さ)の標準偏差である。それは以下の式により計算される。
q={Σ(Z1-Zavg)2/N}
式中、Zavgは画像内の平均Z値であり、Z1はZの現在値であり、Nは画像内における点の数である。この値は画像の平面内の傾きに関して補正されない。したがって、平面フィッティング又はデータの平坦化によりこの値は変化する。
【0446】
平均粗さ(Ra):これは中心平面に対する表面の平均値であり、以下の式を使用して計算される。
a=[1/(Lxy)]∫oyox{f(x,y)}dxdy
式中、f(x,y)は中心平面に対する表面であり、Lx及びLyは表面の寸法である。
【0447】
最大高さ(Rmax):これは平均平面に対する表面の最高点と最低点との間の高さの差である。
【0448】
表面積:(光学的計算):これは画像化された面積の3次元表面の面積である。それは画像全体において3つの隣接する標本値群によって形成された三角形の面積の合計をとることにより計算される。
【0449】
表面積差:(任意の計算)これは表面積が画像化された面積を超過する量である。それは割合として表され、以下の式により計算される。
表面積差=100[(表面積/S1 -1
式中、S1は走査された面積から阻止域によって除外された任意の面積を差し引いた長さ(及び幅)である。
【0450】
中心平面:平均平面に平行する平坦平面である。中心平面の上及び下の画像面によって囲まれた体積は等しい。
【0451】
平均平面:画像データはこの平坦平面に関して最小分散を有する。それはZデータに適合する一次最小二乗による結果である。
【0452】
厚さマッピングのための分光反射プロトコル
Filmetrics Thin-Film Analyzer Model 205-0436 F40分光反射率計を使用した。シリンジは、後端が上を向くホルダ内に配置され、後端のインデックスマークは、円周を8つの等しい45度セグメントに分割する。計器カメラは皮膜又は層に焦点を合わせ、シリンジバレル、バイアル、サンプル収集チューブ、又は他の容器のマッピングされた領域の後端から、円周上で0度及び6mmで厚さ測定値を取得する。次いでシリンジを45度シフトさせ、軸方向に6mmのままにし、別の測定値を得る。このプロセスは6mmでシリンジの周囲に45度の間隔で繰り返される。シリンジは、次に、マッピングされた領域の後端から軸方向に11mmまで前進し、その周りで8回の測定が行われる。シリンジは、マップを完成させるため、軸方向に5mm刻み、円周方向に45゜ずつ順次進めた。データは、Filmetricsソフトウェアを使用してマッピングされる。マップされたデータを統計的に分析して、被覆された容器の平均厚さ及び標準偏差値を決定することができる。
【0453】
滑性試験のプロトコル
以下の材料が、この試験において使用された:[0146]luer-Lok(登録商標)先端部を有する市販の(BD Hypak(登録商標)PRTC)ガラスプレフィルドシリンジ(約1mL)[0147]COCシリンジバレルを形成するためのプロトコルに従って製造されたCOCシリンジバレル;[0148]ベクトン・ディッキンソン社、製品番号306507(生理食塩水プレフィルドシリンジとして取得)から得た、エラストマ製先端部を有する市販のプラスチックシリンジプランジャ;[0149]生理食塩水(ベクトン・ディッキンソン社、製品番号306507のプレフィルドシリンジから取得);[0150]アドバンスト・フォース・ゲージを有するDillonテストスタンド(AFG-50N型)[0151]シリンジホルダ及び排水冶具(Dillonテストスタンドに適合するように製造)
【0454】
この試験では、次の手順が使用される。
【0455】
治具はDillon Test Standに取り付けられている。プラットフォームプローブの動きは6インチ/分(2.5mm/秒)に調整され、上下の停止位置が設定された。停止位置は、空のシリンジ及びバレルを用いて確認した。市販の生理食塩水で充填したシリンジを標識し、プランジャを取り出し、生理食塩水をシリンジバレルの開端から排出して再使用した。余分のプランジャは、COC及びガラスバレルで使用されるのと同じ方法で得られた。
【0456】
シリンジプランジャをCOCシリンジバレルに挿入して、各プランジャの第2の水平成形点がシリンジバレルリップ(先端部から約10mm)で均一になるようにした。別のシリンジ及び針組立品を使用して、試験シリンジを、毛細管末端を介して、毛細管末端を一番上にした状態で、2~3ミリリットルの生理食塩水で満たした。シリンジの側面をタップして、プランジャ/流体界面において、及び壁に沿って、大きな気泡を除去し、プランジャをその垂直方向に維持したまま、全ての気泡を注意深くシリンジから押し出した。
【0457】
サンプルは、OMCTS滑性層を有するCOCシリンジバレルの内部を皮膜するためのプロトコルにしたがってCOCシリンジバレルを皮膜することによって作成された。本発明の技術の別の実施形態では、SiOxなどの別の薄膜皮膜上に滑性層又は皮膜を適用し、例えば、COCシリンジバレルの内部をSiOxで皮膜するためのプロトコルにしたがって適用される。
【0458】
Dillon Test Stand及び排水治具の代わりに、Genesis Packaging Plunger Force Tester(Model SFT-01 Syringe Force Tester、Genesis Machinery、Lionville、Pa.)も、Fi及びFmを測定するための製造業者の指示にしたがって使用することができる。Genesisテスターで使用されるパラメータは次の通りである:開始:10mm;速度:100mm/分;範囲:20;単位:ニュートン。
【0459】
実施例A~C-ガラス対被覆されたCOP薬剤パッケージ
表1に示されているクロージャを備えたプレフィルドシリンジの形態の3種類の薬剤パッケージを作製し、167μLのラニビズマブ製剤を充填した。
【0460】
【表5】
【0461】
試験に使用されたA型及びC型の薬剤パッケージ(固定針を備えたCOPシリンジ)は、以下のように作製された。図3図5に示される、1mLの公称最大充填容積を有する、硝子体内注射に適したシリンジバレルは、COP樹脂から射出成形した。固定された皮下注射針は、接着剤を使用せずに固定された、成形インサートであった。針シールド28はシリンジバレルに取り付けられ、製造プロセス全体を通して適所に保持された。シールドは、針をシールドの材料に埋め込むことによって針を保護し、かつ針を密封するように機能した。滅菌ガス、特にエチレンオキシドは、滅菌中に針シールドに穿孔して、針の外部及びシールド内に捕捉された空気を効果的に滅菌することができる。
【0462】
図6図8及び上記の付随するテキストによって示されるPECVDコーターを使用して、タイプA及びタイプCシリンジバレルの内側に接着性、バリア、及びpH保護皮膜又は層を塗布した。表2~表4の被覆条件はタイプAのバレルに用いられ、表2~表6の皮膜条件はタイプBのバレルに用いられた。
【0463】
【表6】
【0464】
【表7】
【0465】
【表8】
【0466】
【表9】
【0467】
【表10】
【0468】
代表的なシリンジのそれぞれの接着性、バリア、及びpH保護皮膜又は層は、以下の特性を有していた。代表的なシリンジの接着性皮膜又は層及びpH保護皮膜又は層はそれぞれ、XPS及びラザフォード後方散乱によって測定された経験的組成がSiO1.30.83.6であった。代表的なシリンジのバリア皮膜又は層は、XPSで測定した経験的組成SiO2.0を有していた。図11図13は、それぞれの接着性皮膜又は層(図11)、バリア皮膜又は層(図12)、及びpH保護皮膜又は層(図13)の代表的なFTIRプロットを示す。
【0469】
代表的な被覆タイプAシリンジバレルの長さの半分の一点においてTEM測定を行い、図14に示す画像を生成した。この測定により、その時点で、接着皮膜又は層が38nmの厚さであり、バリア皮膜又は層が55nmの厚さであり、pH保護皮膜又は層が273nmの厚さであることが示された。皮膜の厚さは、典型的であるように、測定点に依存して変化した。シリンジバレルの全皮膜セットを、Filmetrics Thin-Film Analyzer Model 205-0436F40分光反射分析を用いて測定したところ、厚さ572±89nmであり、これは1mLシリンジバレルで非常に一致している。
【0470】
タイプCシリンジバレルについては、最初の3つの層が形成され、タイプAシリンジバレルについて記載された特性を有し、その後、さらなるPECVD滑性皮膜又は層が、表6の特定の皮膜条件を用いて同じ装置に適用された。得られるPECVD滑性皮膜は、滑性が必要とされないシリンジバレルの前面(分注端としても知られている)の近くでの10nm未満から、滑性がプランジャの摺動力を低減するためだけに必要とされるバレルの軸方向長さの約半分の位置での約12nmまで、ブレークアウト力とプランジャ摺動力の両方を低減するために滑性が必要とされるシリンジの背部付近での約80nmまでの、厚さプロファイルを有する。
【0471】
タイプBシリンジバレルは市販のホウケイ酸ガラスシリンジバレルであり、欧州医薬品庁(EMA)によって承認されたプレフィルドラニビズマブシリンジと同様又は同一の1mLの公称最大充填容量を有する。シリンジバレルは、シリコン水中油エマルジョンでスプレーコートされ、続いて熱固定された(いわゆる「焼付シリコーン」)ホウケイ酸ガラスからなっていた(Clunasらによる第5回World Congress on Controversies in Ophthalmologyでのポスター発表、2014年3月20~23日;ARVO年次総会2014でのMichaudらのポスター発表)。
【0472】
3種類のシリンジバレルを以下のように充填した。10mg/mlの抗体及びヒスチジン緩衝液、トレハロース二水和物、ポリソルベート20を含有する、pH5.5の抗VEGF抗体ラニビズマブの溶液165μlを、表1に挙げたようにシリンジに充填し、次いで、異なる温度で異なる期間インキュベートした。
【0473】
試料は、親水性及び疎水性種の存在につきRP-HPLCによって、抗体の酸性及び塩基性変異体の存在につき陽イオン交換クロマトグラフィーによって、及び凝集物の存在につきサイズ排除クロマトグラフィーによって試験することができ、それぞれ2週間から3ヶ月まで、様々な保管時間において測定される。
【0474】
本発明のシリンジタイプA及びCは、これらの試験においてシリンジタイプBと同等以上の性能を示すことが予測される。
【0475】
更に、本発明のシリンジタイプA及びCは、作製時及び保管後に、プランジャの内腔内への移動を開始するための10N以下のブレークアウト力と、内腔内のプランジャを前進させるための10N以下のプランジャの摺動力を有することが予期される。
【0476】
更に、本発明のシリンジタイプA及びCは、製造後及び保管後に、プレフィルドシリンジの充填時、あるいはプレフィルドシリンジを4~8℃で3ヶ月間保管した後、あるいはプレフィルドシリンジを25℃、相対湿度60%で3ヶ月間保存した後、あるいはプレフィルドシリンジを40℃、相対湿度75%で3ヶ月保存した後に、2015年11月1日に効力を有するUSP789若しくは2015年11月1日に効力を有するPh.Eur5.7.1のいずれか、又はその両方の、眼科用溶液中の粒子状物質の粒子数基準に合致することが予期される。
【0477】
実施例D~E-滑性試験
本明細書においてなされる変更を除いては、滑性試験のプロトコルに従い、熱可塑性環状オレフィンポリマー(COP)樹脂から、本明細書中の実施例C(すなわち、タイプC)で実質的に上記されるような、内部三層コーティング及び滑性コーティングを備え、試験溶液又は対照で充填し、クロージャを嵌めた、3ロットの1mL固定針シリンジを製造し(先端面にFluroTec(登録商標)バリアフィルムを有するNovapure(登録商標)プランジャ(West Pharmaceutical Services,Inc.,Weston、Pennsylvania USの商標))、直ちに(T=0日間)又は3日間、7日間、若しくは4週間、4℃、25℃、若しくは40℃で保管した後、試験を行った。シリンジは、解放力(「ブレーク力」)及び摺動力(「滑動力」)の性能について試験された。
【0478】
実施例Dでは、注射用水中、100mg/mLのα,α-トレハロース二水和物、1.98mg/mLのL-ヒスチジン、及び0.1mg/mLのポリソルベート20からなる1.0mLの試験溶液(溶液A)を使用した。これは、以前に定義されたラニビズマブ6mg/ml及び10mg/ml製剤の不活性部分である。実施例Eでは、Milli-q(登録商標)粒子フリー水(Merck KGAA、ダルムシュタット、ドイツ)からなる1.0mLの対照(溶液B)を使用した。シリンジを保管前に電子ビーム滅菌に供した。
【0479】
試験プロトコルは、300mm/分のプランジャ前進速度を用いて行った。
【0480】
結果を図36及び図37に示す。図36に示す試験溶液では、T=0及び3、7、又は28日の保管後、「滑動力」は、全ての試験期間でほぼ一定であり、4℃、25℃、40℃での保管後、約5N(ニュートン)~10N以下の範囲であった。「ブレーク力」もまた、全ての試験期間でかなり一定であり、全てのデータポイントで5N~15N未満の範囲であった。このデータは、ラニビズマブ6mg/ml及び10mg/ml製剤の大部分を構成する不活性成分が、シリンジを作動させるのに必要なブレークアウト力又は滑動力を増加させず、この薬剤パッケージが、ラニビズマブ6mg/ml及び10mg/ml製剤の、商業的に望ましいプランジャ力での封入及び送達に適している可能性を示している。
一側面において、本発明は以下の発明を包含する。
(発明1)
●内腔の少なくとも一部を囲む内部表面と、外部表面と、壁の前記内部表面及び前記外部表面の少なくとも一方上の皮膜セットとを有する熱可塑性の壁を有する容器、例えば、シリンジバレル、カートリッジ、又はバイアル、であって、前記皮膜セットは、以下:
○SiO x y z (式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)を含み、壁に面する対向面を有し、また、前記壁と反対の方向に面する反対面を有する、前記内部表面又は前記外部表面上のタイコート皮膜又は層と;
○SiO x (式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5~約2.9である)のバリア皮膜又は層であって、前記タイコート皮膜又は層の前記反対面に面する対向面と、前記タイコート皮膜又は層と反対の方向に面する反対面とを有する、前記バリア皮膜又は層と;
○任意選択的に、SiO x y z (式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である)のpH保護皮膜又は層であって、存在する場合、前記バリア層の前記反対面に面する対向面と前記バリア層と反対の方向に面する反対面を有する、前記pH保護皮膜又は層とを含み;
●前記内腔内に、硝子体内注射に適した眼科用薬剤の液体製剤;及び
●前記液体製剤に面した前面を有する前記内腔内に配置されたクロージャ、例えば、プランジャ又はストッパ
を含む、プレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明2)
前記pH保護皮膜又は層と前記内腔との間に配置された滑性皮膜又は層を更に含む、発明1に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明3)
前記滑性皮膜又は層がSiO x y z の原子割合を有し、xが、XPSにより測定した場合、約0.5~約2.4であり、yが、XPSにより測定した場合、約0.6~約3であり、zが、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2~約9である、発明1又は2に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明4)
前記滑性皮膜又は層が、有機ケイ素化合物前駆体からPECVDによって調製される、発明1~3のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明5)
前記滑性皮膜又は層が、前記有機ケイ素前駆体としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)から、PECVDによって調製される、発明4に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明6)
前記内腔内に配置された前記クロージャの前記前面が、フルオロポリマー皮膜又は層で被覆され、前記前面が前記液体製剤に面している、発明1~5のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明7)
0.2ml~10mL、あるいは0.2~1.5mL、あるいは0.5ml~1.0ml、あるいは0.5ml、1.0ml、3mL又は5mLの公称最大充填容量を有する、発明1に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明8)
前記プランジャの前記前面が、フルオロポリマー表面、任意選択的に成形フルオロポリマー表面、又はフルオロポリマー皮膜若しくは層、例えば、積層フルオロポリマーフィルム、例えばポリテトラフルオロエチレン若しくはテトラフルオロエチレンとエチレンのコポリマー、又はフルオロポリマー皮膜、を有する、発明1又は2に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明9)
硝子体内注射に適した前記眼科用薬剤が、VEGF阻害薬を含む、発明1~8のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明10)
前記VEGF阻害薬が、抗VEGF抗体又はそのような抗体の抗原結合断片を含む、発明4に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明11)
硝子体内注射に適した眼科用薬剤の前記液体製剤の濃度が、1mlの前記液体製剤あたり1~100mgの薬物活性剤(mg/ml)、あるいは2~75mg/ml、あるいは3~50mg/ml、あるいは5~30mg/ml、あるいは6mg/ml又は10mg/mlである、発明1~10のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明12)
硝子体内注射に適した眼科用薬剤の前記液体製剤が、6mg/mL、あるいは10mg/mLの前記眼科用薬剤を含む、発明1~11のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明13)
硝子体内注射に適した前記眼科用薬剤が、
●約5~約7の範囲の前記液体製剤のpHを提供するのに有効な量の緩衝液;
●0.005~0.02%mg/mLの完全製剤、あるいは0.007~0.018%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.008~0.015%mg/mLの完全製剤、あるいは0.009~0.012%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.009~0.011%mg/mLの範囲の完全製剤、あるいは0.01%mg/mLの完全製剤の非イオン性界面活性剤;及び
●注射用水
を更に含む、発明1~13のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明14)
硝子体内注射に適した前記眼科用薬剤が、注射用水中、6mg/mL、あるいは10mg/mLの前記活性薬剤;100mg/mLのα,α-トレハロース二水和物、1.98mg/mLのL-ヒスチジン;及び0.1mg/mLのポリソルベート20を含む、発明1~13のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明15)
5℃の温度、あるいは25℃の温度で測定して、少なくとも6ヶ月、あるいは少なくとも12ヶ月、あるいは少なくとも18ヶ月、あるいは24ヶ月の保管寿命を有する、発明1~14のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明16)
前記プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面上にシリコーンオイルを有しない、発明1~15のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明17)
前記プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面上に焼付シリコーンを有しない、発明1~16のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明18)
バレルとプランジャとを含むシリンジであって、前記シリンジは前記プランジャを前記内腔内で前進させるために10N以下のプランジャ摺動力を有する、発明1~17のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明19)
バレルとプランジャとを含むシリンジであって、前記シリンジは前記内腔内での前記プランジャの移動を開始させるために15N以下、任意選択的に10N以下のブレークアウト力を有する、発明1~18のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明20)
硝子体内注射に適した前記眼科用薬剤が、前記プレフィルドシリンジの充填時、あるいは前記プレフィルドシリンジを4~8℃で3ヶ月間保管した後、あるいは前記プレフィルドシリンジを25℃、相対湿度60%で3ヶ月間保管した後、あるいは前記プレフィルドシリンジを40℃、相対湿度75%で3ヶ月保管した後に、2015年11月1日に効力を有するUSP789若しくは2015年11月1日に効力を有するPh.Eur5.7.1のいずれか、又はその両方の、眼科用溶液中の粒子状物質の粒子数基準に合致する、発明1~19のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明21)
前記熱可塑性の壁が、ポリオレフィン、例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、若しくはポリプロピレン;ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;又はこれらのうちいずれか2つ以上の任意の組合せ若しくはコポリマー、任意選択的に、環状オレフィンポリマー(COP)樹脂を含む、発明1~20のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明22)
●前記タイコート皮膜又は層が、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、5~200nm(ナノメートル)、あるいは5~100nm、あるいは5~50nm、あるいは約38nmの厚さのSiO x y z を含み;
●SiO x の前記バリア皮膜又は層が、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、2~1000nm、あるいは4nm~500nm、あるいは10~200nm、あるいは20~200nm、あるいは30~100nm、あるいは約55nmの厚さであり;及び
●SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層が、存在する場合、透過型電子顕微鏡法で測定した場合、約10~1000nm、あるいは20nm~800nm、あるいは50nm~600nm、あるいは100nm~500nm、あるいは200nm~400nm、あるいは250nm~350nm、あるいは約270nm、あるいは約570nmの厚さである、
発明1~21のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明23)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層に関して、存在する場合、xが、XPSにより測定した場合、約1~約2であり、yが、XPSにより測定した場合、約0.6~約1.5であり、zが、RBS又はHFSにより測定した場合、約2~約5である、発明1~22のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明24)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層に関して、存在する場合、xが、XPSにより測定した場合、約1.1であり、yが、XPSにより測定した場合、約1であり、zが、RBS又はHFSにより測定した場合、約2~約5である、発明1~23のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明25)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層が、存在する場合、X線反射率(XRR)により決定した場合、1.25~1.65g/cm 3 、あるいは1.35~1.55g/cm 3 、あるいは1.4~1.5g/cm 3 、あるいは1.44~1.48g/cm 3 の密度を有する、発明1~24のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明26)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層が、存在する場合、約5~約9、あるいは約6~約8、あるいは約6.4~約7.8のRMS表面粗さ値(AFMで測定)を有する、発明1~25のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明27)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層が、存在する場合、約4~約6、あるいは約4.6~約5.8の、AFMで測定した前記pH保護皮膜又は層のR a 表面粗さ値を有する、発明1~26のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明28)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層が、存在する場合、約70~約160、あるいは約84~約142、あるいは約90~約130の、AFMで測定した前記pH保護皮膜又は層のR max 表面粗さ値を有する、発明1~27のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明29)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層が、存在する場合、ASTM D7334-08「前進接触角測定による皮膜、基板及び顔料の表面濡れ性に関する標準的技法(Standard Practice for Surface Wettability of Coatings, Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement)」に準拠して、前記pH保護面上の水滴のゴニオメーター角度測定により測定した場合、90°~110°、あるいは80°~120°、あるいは70°~130°の(蒸留水との)接触角を有する、発明1~28のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明30)
SiO x y z の前記pH保護皮膜又は層が、存在する場合、通常、約1000~1040cm -1 に位置するSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と、通常、約1060~約1100cm -1 に位置するSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅との間において、0.75を超え1.7まで、あるいは0.9~1.5、あるいは1.1~1.3の比率を有するFTIR吸光度スペクトルを有する、発明1~29のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明31)
SiO x y z の前記pH保護被覆又は層が、存在する場合、注射用水で希釈され、濃縮硝酸でpH8に調整され、0.2wt.%ポリソルベート80界面活性剤を含有する(VEGF阻害薬の液体製剤のない状態、40℃で測定した)、50mMリン酸カリウム緩衝液によるケイ素溶解速度170ppb/日未満を含有する、発明1~30のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明32)
フルオロポリマーで被覆されたプランジャ前面を有する0.5mL又は1mL容積のCOPシリンジを含む、発明1~31のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明33)
前記容器が、前面分注開口部及び背面開口部を有するシリンジバレルであり、クロージャが、シリンジバレル中で前面分注開口部へ軸方向に摺動可能なプランジャであって、前記プランジャが、
●前記前面分注開口部に面する前端及び前記背面開口部に面する後端を有するスリーブ、
○前記スリーブ内の第1のキャビティ、
○前記第1のキャビティから軸方向に離間して前記第1のキャビティと連通するスリーブ内の第2のキャビティ、及び
●前記第1のキャビティ内に最初に配置され、前記第1のキャビティから前記第2のキャビティまで軸方向に変位するように構成されたインサートであって、前記インサートは任意選択的に部分的に略球形の形状であり、前記インサートは前記インサートに隣接する前記スリーブの少なくとも一部を、前記バレルに対し半径方向外側に押圧する第1の付勢力を提供するように構成され、及び、前記インサートが前記第2のキャビティにあるときに、任意選択的に前記スリーブを前記バレルから離間させる、前記第1の付勢力よりも小さい、第2のそのような付勢力を提供するように構成された、インサート
を含む、発明1~32のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明34)
前記容器が、前面分注開口部及び背面開口部を有するシリンジバレルであり、前記クロージャが、前記前面分注開口部へ軸方向に摺動可能な、前記シリンジバレル中で軸方向に延びるプランジャであって、前記プランジャが、
●ストレージ直径を有するストレージ封止部、及び前記ストレージ封止部から軸方向に離間し、前記ストレージ直径より小さい分注直径を有する分注封止部を有する、軸方向に延びる中心コア、並びに
●前記中心コアを包囲し、シールリング又はスリーブが前記中心コアと前記バレルとの間のストレージ封止力で圧縮される、前記コアに対する第1の位置を前記ストレージ封止部に有し、前記シールリングが前記ストレージ封止力よりも小さい分注封止力で前記バレルに対し圧縮される又は前記シールリングが前記バレルから離間している、前記コアに対する第2の位置を前記分注封止部に有する、シールリング又はスリーブ
を含む、発明1~33のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明35)
●容器として、前面分注開口部と背面開口部とを有するシリンジバレル、
●クロージャとして、前記前面分注開口部に向かって軸方向に摺動可能な、前記シリンジバレル内の軸方向に伸張可能なプランジャであって、側壁及び前記前面分注開口部に面する前面を有し、前記側壁は、前記プランジャをストレージモードから分注モードに変換する軸方向伸張を受けるように適合された伸縮ゾーンを備え、伸張により、前記側壁の少なくとも一部の外側プロファイルが減少し、したがって前記プランジャを収縮状態へと縮める、任意選択的に熱可塑性エラストマで作製された、エラストマスリーブを含むプランジャ
を含む、発明1~34のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明36)
前記容器がシリンジバレルであり、前記クロージャが、前記シリンジバレル内に配置され、前記シリンジバレルとの接触領域を有するプランジャであり、前記プレフィルド薬剤パッケージが、シリンジバレルとプランジャとの間の接触領域において、シリンジバレル及びプランジャの一方に配置された、架橋シリコーン潤滑剤、任意選択的にプラズマ架橋シリコーン潤滑剤の、皮膜又は層を更に含む、発明1~35のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明37)
タンパーエビデント針シールドを含む、発明1~36のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明38)
前記シリンジバレル上にルアーロックを含む、発明1~37のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明39)
前記ルアーロックを通る分注開口部を含み、前記分注開口部の直径が0.05mm~1.8mm未満、あるいは0.1mm~1.5mm、あるいは0.4mm~0.8mm、あるいは0.5mm~0.7mm、あるいは約0.6mmである、発明38に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明40)
前記壁の前記内部表面上に前記pH保護皮膜又は層を含む前記皮膜セットを含む、発明1~39のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明41)
前記壁の前記外部表面上に前記皮膜セットを含む、発明1~40のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明42)
前記皮膜セットが前記pH保護皮膜又は層を含まない、発明41に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明43)
前記皮膜セットの上に耐擦傷性皮膜を含む、発明1~42のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明44)
前記熱可塑性の壁の前記内部表面上に前記皮膜セットを、前記熱可塑性の壁の前記外部表面上に耐擦傷性皮膜を含む、発明1~43のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明45)
前記耐擦傷性皮膜が、
●XPSで測定した以下のSi、O、及びCの原子比を有するPECVD塗布皮膜:
○Si=1、
○O=0.7~1、及び
○C=1.1~1.5;
●固体皮膜又は層を形成するために湿式化学で塗布されたフィルム;
●又はその両方
を含む、発明43又は44に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明46)
前記皮膜セットが、前記熱可塑性の壁の前記外部表面上の接着性皮膜又は層、前記接着性皮膜又は層上のバリア皮膜又は層、及び前記バリア皮膜又は層上の湿式化学によって塗布されたトップコートを含む、発明1~45のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明47)
インサート成形された固定針及び針シールドを含む、発明1~46のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明48)
滅菌ガス、任意選択的にエチレンオキシドEOガスによる、任意選択的に、16.6インチHg(=42.2cmHg、56キロパスカル、560mbar)の圧力、120°F(49℃)で10時間での、あるいは、気化過酸化水素(VHP)による、最終滅菌に適した、発明1~47のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明49)
眼疾患を有する患者に硝子体内注射によって眼科用薬剤の液体製剤を投与する際に使用するための、発明1~48のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤であって、前記眼疾患が、任意選択的に、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害からなる群から選択される、プレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明50)
前記液体製剤の容量30~100μlが前記患者に投与される、発明49に記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明51)
最終的に滅菌された、発明1~50のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明52)
エチレンオキシドで最終的に滅菌された、発明1~51のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明53)
前記プレフィルド薬剤パッケージが無菌であり、前記熱可塑性の壁が残留エチレンオキシドを含有し、任意選択的に、封止された外側パッケージがエチレンオキシド滅菌剤に対して透過性であり、任意選択的に、前記内腔がエチレンオキシドを本質的に含まない、好ましくは含まない、前記封止された外側パッケージに含有された、発明1~52のいずれか1つに記載の1つ以上のプレフィルド薬剤パッケージを含むキット。
(発明54)
前記封止された外側パッケージに任意選択的に含有される針を更に含み、任意選択的に、ルアー針、あるいは固定針を含む、発明53に記載のキット。
(発明55)
前記薬剤パッケージの少なくとも一部に取り付けられ、前記薬剤パッケージの少なくとも一部を包囲する針シールドを更に含む、発明54に記載のキット。
(発明56)
前記針シールドが前記針を覆って設置される場合、任意選択的に、前記薬剤パッケージが封止された前記外側パッケージに封入される場合、16.6インチ(42.2cm)Hgの圧力、120°F(49℃)で10時間でのエチレンオキシドEOガスによる前記薬剤パッケージ全体のエチレンオキシド最終滅菌を可能にするよう、前記針シールドが十分にエチレンオキシド透過性である、発明55に記載のキット。
(発明57)
前記封止された外側パッケージ内に任意選択的に含有される、プランジャロッドを更に含む、発明53~56のいずれか1つに記載のキット。
(発明58)
前記封止された外側パッケージ内に任意選択的に含有される、使用説明書を更に含む、発明53~57のいずれか1つに記載のキット。
(発明59)
発明1~58のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージに収容される眼科用薬剤の液体製剤の硝子体内注射の投与を含む、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法。
(発明60)
加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上の処置のための、発明1~59のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ、任意選択的にシリンジ、入りの眼科用薬剤の製造における眼科用薬剤の液体製剤の使用。
(発明61)
加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害のいずれか1つ以上を処置する方法における使用のための、発明1~60のいずれか1つに記載のプレフィルドシリンジ。
(発明62)
前記滑性皮膜又は層が、フッ素化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、架橋フッ素化ポリマー、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)、ポリシロキサン皮膜、例えば、架橋シリコーンオイル;パリレン、例えばポリ(パラキシリレン);ポリ(2-クロロパラキシリレン);ポリ(2,5-ジクロロパラキシリレン);ポリ(テトラフルオロパラキシリレン)又はこれらの任意の2つ以上の組合せを含む、発明2~62*のいずれか1つに記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明63)
前記滑性皮膜又は層がフッ素化ポリマーを含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明64)
前記滑性皮膜又は層がパーフルオロポリエーテル(PFPE)を含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明65)
前記滑性皮膜又は層がポリシロキサン皮膜を含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明66)
前記滑性皮膜又は層が架橋シリコーンオイルを含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明67)
前記滑性皮膜又は層がパリレンを含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明68)
前記滑性皮膜又は層がポリ(パラキシリレン)を含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明69)
前記滑性皮膜又は層がポリ(2-クロロパラキシリレン)を含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明70)
前記滑性皮膜又は層がポリ(2,5-ジクロロパラキシリレン)を含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明71)
前記滑性皮膜又は層がポリ(テトラフルオロパラキシリレン)を含む、発明62に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤。
(発明72)
小さい直径の分注毛細管部を含むシリンジバレルを成形する方法であって、
●シリンジバレル型のキャビティを含むバレル成形型を提供する工程;
●前記キャビティ内で弛みピンを支持する工程;
●熱可塑性の成形可能な材料を前記キャビティ内に射出し、それによって、前記弛みピンの周りにバレルを成形し、前記バレル内の前記ピンを捕捉する工程;及び
●前記捕捉したピンを前記バレルから取り出して、前記分注毛細管部を開く工程
を含む、方法。
(発明73)
前記弛みピンが、0.05mm~1.8mm、あるいは0.3mm~1.5mm、あるいは0.4mm~0.8mmの直径を有する、発明72に記載の方法。
(発明74)
前記分注毛細管部が、0.05mm~1.8mm、あるいは0.3mm~1.5mm、あるいは0.4mm~0.8mmの直径を有する、発明72又は73のいずれか1つに記載の方法。
(発明75)
前記バレルがルアーロックを含む、発明72~74のいずれか1つに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図21
図22
図23
図24
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図26
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34A
図34B
図35A
図35B
図35C
図36
図37
図38A-B】
図39A-B】