(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】静電チャック、静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240205BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2019005052
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】598123150
【氏名又は名称】セメス株式会社
【氏名又は名称原語表記】SEMES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】77,4sandan 5-gil,Jiksan-eup,Seobuk-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do,331-814 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】森谷 義明
(72)【発明者】
【氏名】李 相 起
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-524247(JP,A)
【文献】特開2002-170871(JP,A)
【文献】特開2002-170872(JP,A)
【文献】特開2014-198662(JP,A)
【文献】特開2010-42967(JP,A)
【文献】特開平6-291175(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052115(WO,A1)
【文献】特開2009-272646(JP,A)
【文献】特開2017-206436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電気力によってワーク基板を固定する静電チャックであって、
前記ワーク基板が載置される誘電板と、
前記誘電板を支持するベース板と、
前記誘電板と前記ベース板との間に配設され前記ワーク基板を吸着する静電気力を生じさせるための吸着電極と、
を備え、
前記誘電板はサファイア基板であり、
前記ベース板はアルミナセラミックスであり、
前記誘電板と前記ベース板とが前記吸着電極を介して一体接合されており、
前記吸着電極は、アルミナセラミックス、導電材料及び酸化物系共晶点材料からなる複合セラミックスであり、
前記誘電板及び前記ベース板は、前記吸着電極と再焼結して
おり、
前記吸着電極は、-200℃以上、400℃以下の範囲において抵抗変化率が20%以下であり、
前記導電材料は、アルミナチタンカーバイト材からなる、
静電チャック。
【請求項2】
前記ベース板は、厚さ方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔に配設されて前記吸着電極に電気的に接続される給電電極とを有し、
前記給電電極は、前記吸着電極と同じ材料にて形成されている、
請求項
1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記誘電板、前記吸着電極、及び前記ベース板の線熱膨張率は8.0×10
-6/K以下である、請求項1
または請求項
2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記誘電板の上面の表面粗さは、表面粗さRaで0.05μm以下である、請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記誘電板は、上面から突出する凸部を有し、前記凸部の直径は0.3mm以上、3.0mm以下であり、前記凸部の高さは0.05mm以下であり、前記凸部の上面端部は前記凸部の側面にかけて湾曲した稜線部であり、前記稜線部の半径は0.03mm以下である、請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記誘電板の上面の表面粗さは、表面粗さRaで0.3μm以下である、請求項
5に記載の静電チャック。
【請求項7】
請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の静電チャックと、
前記静電チャックを冷却する冷媒が流れる流路を有する支持台と、
前記静電チャックを前記支持台に接合する接合剤と、
を有する静電チャック装置。
【請求項8】
請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の静電チャックと、
前記静電チャックを冷却する冷媒が流れる流路を有する支持台と、
を備え、
前記静電チャックは、前記支持台と直接接合されている、
静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電チャック、静電チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置の工程チャンバー内には、静電気力を利用してウェハを固定する静電チャックが設けられる。静電チャックにおいて、ウェハを固定する吸着板に、サファイア基板を用いることが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-291175号公報
【文献】特開平9-82788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サファイア基板は、接着材等の接合剤により絶縁板に接合され、その絶縁板は接着材により支持台に接合される。しかしながら、このような静電チャックは、プラズマ処理する工程に用いることが難しい。これは、サファイア基板を接合する接着材が処理のためのプラズマの影響を受け易く、発塵や放電が生じる虞がある。一方、接合剤を用いない場合、サファイア基板を高温で融着する等の処理を必要とする。この処理によってサファイア基板がダメージを受け、特性が低下する虞がある。また、内部に導電材料を埋設することが困難になり、静電チャックとしての機能を付与できない虞がある。
【0005】
本開示の目的は、耐プラズマ特性を有し、極低温域から高温域において特性の低下が抑制された静電チャック、静電チャック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の静電チャックは、静電気力によってワーク基板を固定する静電チャックであって、前記ワーク基板が載置される誘電板と、前記誘電板を支持するベース板と、前記誘電板と前記ベース板との間に配設され前記ワーク基板を吸着する静電気力を生じさせるための吸着電極と、を備え、前記誘電板はサファイア基板であり、前記ベース板はアルミナセラミックスであり、前記吸着電極は、-200℃以上、400℃以下の範囲において抵抗変化率が20%以下であり、前記誘電板と前記ベース板とが前記吸着電極を介して一体接合されている。
【0007】
上記の静電チャックにおいて、前記吸着電極は、アルミナセラミックス、導電材料及び酸化物系共晶点材料からなる複合セラミックスであり、前記誘電板及び前記ベース板は、前記吸着電極と再焼結していることが好ましい。
【0008】
上記の静電チャックにおいて、前記ベース板は、厚さ方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔に配設されて前記吸着電極に電気的に接続される給電電極とを有し、前記給電電極は、前記吸着電極と同じ材料にて形成されていることが好ましい。
【0009】
上記の静電チャックにおいて、前記誘電板、前記吸着電極、及び前記ベース板の線熱膨張率は8.0×10-6/K以下であることが好ましい。
上記の静電チャックにおいて、前記誘電板の上面の表面粗さは、表面粗さRaで0.05μm以下であることが好ましい。
【0010】
上記の静電チャックにおいて、前記誘電板は、上面から突出する凸部を有し、前記凸部の直径は0.3mm以上、3.0mm以下であり、前記凸部の高さは0.05mm以下であり、前記凸部の上面端部は前記凸部の側面にかけて湾曲した稜線部であり、前記稜線部の半径は0.03mm以下であることが好ましい。
【0011】
上記の静電チャックにおいて、前記誘電板の上面の表面粗さは、表面粗さRaで0.3μm以下であることが好ましい。
本開示の静電チャック装置は、上記の静電チャックと、前記静電チャックを冷却する冷媒が流れる流路を有する支持台と、前記静電チャックを前記支持台に接合する接合剤と、を有する。
【0012】
本開示の静電チャック装置は、上記の静電チャックと、前記静電チャックを冷却する冷媒が流れる流路を有する支持台と、を備え、前記静電チャックは、前記支持台と直接接合されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、耐プラズマ特性を有し、極低温域から高温域において特性の低下が抑制された静電チャック、静電チャック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図6】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図7】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図8】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図9】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図10】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図11】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図12】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図13】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【
図14】一実施形態の静電チャックの製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、断面図では、理解を容易にするために、一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0016】
図1に示す静電チャック装置10は、静電気力を利用してワーク基板Wを吸着保持する。ワーク基板Wは、例えば半導体ウェハである。この静電チャック装置10は、ワーク基板Wを処理する基板処理装置内に設けられる。基板処理装置は、例えば、プラズマを生成してワーク基板Wを処理するものである。
【0017】
本実施形態の静電チャック装置10は、静電チャック(ESC:electrostatic chuck)20と、接合剤30と、支持台40とを有する。
静電チャック20は、誘電板21と、吸着電極22と、絶縁層23と、ベース板24とを含む。
【0018】
本実施形態において、誘電板21は、サファイア基板である。サファイア基板は、酸化アルミニウム(Al2O3)の単結晶材料であり、粒界がなく、耐プラズマ性にすぐれている。誘電板21は、例えば平面視で円形状である。平面視は、誘電板21の上面21aと垂直な方向から物を視ることをいう。サファイア基板である誘電板21の熱膨張率は、400℃以下の範囲において7.7×10-6/K(毎ケルビン)である。サファイア基板の体積抵抗値は、1.0×1014Ω・cm以上である。この誘電板21の厚さは、0.3mm以上、0.5mm以下であることが好ましい。
【0019】
吸着電極22は、誘電板21とベース板24との間に設けられている。本実施形態において、吸着電極22は、平面視で概略円形状である。なお、吸着電極22は、所定のパターンにて形成することができる。また、吸着方式によって複数の吸着電極22が設けられても良い。
【0020】
吸着電極22は、酸化アルミニウム(Al2O3)及び導電材料を含む複合セラミックスである。導電材料としては、アルミナチタンカーバイト材(AlTiC材)を用いることができる。AlTiC材は、Al2O3に炭化チタン(TiC)を分散させ、反応焼結で得るものである。AlTiC材の熱膨張率は、400℃以下の範囲において7.4×10-6/Kである。AlTiC材の体積抵抗値は、1.0×10-3Ω・cmであり、抵抗変化率は、-200℃以上400℃以下の範囲において20%以下である。酸化物系共晶点材料としては、例えば酸化イットリウム(Y2O3)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)等を用いることができる。吸着電極22は、上記のAl2O3,TiC、又はAlTiC粉末を含む導電ペーストを用いて形成される。
【0021】
絶縁層23は、誘電板21とベース板24との間であって、吸着電極22の周囲に設けられている。本実施形態において、絶縁層23は、平面視で概略円環状である。なお、吸着電極22が所定のパターンや複数設けられている場合には、絶縁層23はそれらを分離するように設けられる。絶縁層23は、少なくとも誘電板21の周縁に沿って設けられる。絶縁層23は、Al2O3を含む。絶縁層23は、上記のAl2O3粉末を含む絶縁ペーストを用いて形成される。
【0022】
ベース板24は、例えば、平面視で円形状である。ベース板24は、ベース板24を厚さ方向に貫通する貫通孔24xを有している。貫通孔24xには、給電電極25が配設されている。給電電極25は、吸着電極22と電気的に接続されている。ベース板24の材料としては、アルミナセラミックス(Al2O3)を用いることができる。このベース板24の熱膨張率は、400℃以下の範囲において7.2×10-6/Kである。ベース板24を構成するAl2O3の体積抵抗値は、1.0×1014Ω・cm以上である。給電電極25の材料としては、例えば、上述の吸着電極22と同様の材料を用いることができる。
【0023】
上記のように、静電チャック20は、サファイア基板からなる誘電板21と、アルミナセラミックスからなるベース板24との間に、AlTiC材を含む吸着電極22が配設された基板である。つまり、本実施形態の静電チャック20は、接着材等の接合剤を用いていない。
【0024】
図2及び
図3に示すように、誘電板21は、上面21aに複数の凸部26を有している。凸部26は、本実施形態では円柱状である。また、各凸部26の上面端部は側面26bにかけて湾曲した稜線部26aである。
【0025】
本実施形態において、誘電板21は、凸部26を含む高さが0.3mmである。なお、凸部26を含まない高さ、つまり誘電板21の下面21bから上面21aまでの高さを0.3mmとしてもよい。凸部26の直径は0.3mm以上、3mm以下であることが好ましい。また、凸部26の高さは、0.03mm以上、0.05mm以下であることが好ましい。上部周縁の円弧の半径は、0.01mm以上、0.03mm以下であることが好ましい。誘電板21の表面粗さは、表面粗さRaで0.05μm以下であることが好ましい。なお、誘電板21の上面21aの表面粗さは、表面粗さRaで0.3μm以下であることがより好ましい。本実施形態において、凸部26の大きさは、直径0.5mm、高さ0.03mm、周縁の円弧の半径0.01mmである。
【0026】
図1に示すように、静電チャック20は、接合剤30を介して支持台40の上面40aに接合されている。接合剤30は、例えば、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する接着性樹脂の接着剤、ロウ材、等を用いることができる。
【0027】
支持台40は、内部に流路41を有している。流路41は、冷媒が流れる流路であり、供給源60から冷媒が流路41に供給される。冷媒としては、ヘリウム(He)や窒素(N2)等のガス、水、専用有機溶剤等を用いることができる。これにより、静電チャック装置10は、静電チャック20に吸着したワーク基板Wを冷却する。
【0028】
支持台40は、取出電極42を有している。取出電極42は、静電チャック20の給電電極25に接続される。取出電極42は、電源70に接続される。電源70は、ワーク基板Wを吸着するために必要な電圧を、取出電極42及び給電電極25を介して吸着電極22に供給する。
【0029】
図1に示す静電チャック20は、フォーカスリング50を有する。フォーカスリング50は静電チャック20の縁領域に配置される。フォーカスリング50はリング形状を有し、静電チャック20の周縁に沿って配置される。フォーカスリング50の上面は外側部51が内側部52より高くなるように段差を有する。フォーカスリング50の上面の内側部52は静電チャック20の上面と同一高さに位置される。フォーカスリング50の上面の内側部52は静電チャック20の外側に位置されたワーク基板Wの縁領域を支持する。フォーカスリング50の上面の外側部51はワーク基板Wの縁領域を囲むように位置される。フォーカスリング50はプラズマが形成される領域の中心にワーク基板Wが位置するように電気場形成領域を拡張させる。これによって、ワーク基板Wの全体領域に掛けてプラズマが均一に形成され、ワーク基板Wの各領域が均一に処理される。
【0030】
次に、上記の静電チャック20の製造工程を説明する。
なお、説明の便宜上、最終的に静電チャック20の各構成要素となる部材については、最終的な構成要素の符号を付して説明する。
【0031】
図5に示すように、サファイア板からなる基板21を、所望の形状に機械加工する。所望の形状としては、例えば円形板状である。
図6に示すように、Al
2O
3の基板24を所定の形状に機械加工する。所望の形状としては、例えば貫通孔24xを有する円形板状である。
【0032】
図7に示すように、基板24の貫通孔24xに、給電電極25を形成する。給電電極25は、例えば、貫通孔24xに対応する円柱状の部材を貫通孔24xに挿入して形成することができる。また、給電電極25は、貫通孔24xに導電ペーストを充填して形成することができる。
【0033】
図8に示すように、基板24の上面に、導電ペースト22及び絶縁ペースト23を配置する。導電ペースト22及び絶縁ペースト23は、例えばスクリーン印刷法等の塗工法にて塗布することができる。
【0034】
図9に示すように、導電ペースト22及び絶縁ペースト23を配置した基板24の上に、基板21を載置する。
図10に示すように、基板21,24と、基板21,24に挟まれた導電ペースト22及び絶縁ペースト23を、焼成炉にて熱処理を行う。焼成炉としては、加圧焼結装置(ホットプレス)、放電プラズマ焼結炉、等を用いることができる。焼成条件として、プレス圧は例えば10MPaであり、焼成温度は例えば1700℃であり、焼成時間は例えば2時間である。
【0035】
図11に示すように、平面研削及び研磨加工により基板21,24を加工し、所望の厚さの誘電板21及びベース板24を形成する。誘電板21の所望の厚さは、例えば0.3mmである。
【0036】
図12に示すように、加工マスク201を形成する。加工マスク201は、
図2及び
図3に示す凸部26となる部分を覆うように形成され、基板21の上面を露出する開口部201xを有している。
【0037】
図13に示すように、サンドブラスト加工によって、加工マスク201の開口部201xから基板21を部分的に除去し、凸部26を形成する。凸部26の大きさは、例えば、直径が0.5mm、高さが0.03mmである。加工マスク201の形状によって、任意の大きさの凸部26を形成することができる。なお、加工マスク201の形状によって、四角形や六角形等の任意の形状の凸部26を形成することができる。また、加工時間を調整することで、任意の高さの凸部26を形成することができる。その後、加工マスク201を除去する。
【0038】
図14に示すように、凸部26に例えばエッジ研磨を施すことによって、凸部26の上端周縁部を円弧状に形成する。誘電板21の厚さ方向の断面において、円弧状の稜線部26aの半径は、例えば0.01mmとすることができる。
【0039】
以上の工程により、誘電板21、吸着電極22、絶縁層23、ベース板24、及び給電電極25を有する静電チャック20が形成される。
次に、静電チャック20を、
図1に示す接合剤30を介して支持台40に接合する。これにより、静電チャック20と支持台40を有する静電チャック装置10が形成される。
【0040】
次に、静電チャック装置10の評価方法を説明する。
上記のように構成した静電チャック装置10において、静電チャック20にワーク基板Wを吸着固定する。この状態で、環境温度を所定範囲で変化させる。環境温度の範囲としては、例えば、-200℃から200℃までとする。
【0041】
そして、ワーク基板Wに流れる電流値を測定することで、サファイア基板よりなる誘電板21の抵抗値の変化を確認できる。また、ワーク基板Wの表面電位の変化、例えば立ち上がりを測定することで、給電電極25及び吸着電極22の抵抗値の変化を確認できる。
【0042】
(作用)
図4は、比較例の静電チャック装置100を示す。なお、説明の便宜上、この比較例の静電チャック装置100の構成部材について、上記した本実施形態の静電チャック装置100と同様の構成部材には同じ符号を付す。
【0043】
図4に示す比較例の静電チャック装置100の静電チャック110において、誘電板21は、接合剤111を介してベース板24に接合されている。誘電板21は、厚さが薄い(例えば0.3mm)ため、誘電板21をベース板24に接合する接合剤111は、この静電チャック装置100を内包した処理装置、例えばプラズマ処理装置において生成するプラズマの影響を強く受ける。これにより、接合剤111が腐食されて、発塵や放電が発生し易くなる。
【0044】
図1に示す本実施形態の静電チャック装置10は、ワーク基板Wを吸着固定する静電チャック20と、静電チャック20を冷却する冷媒が流れる流路を有する支持台40とを有する。静電チャック20は、ワーク基板Wが載置される誘電板21と、誘電板21を支持するベース板24と、誘電板21とベース板24との間に配設され、ワーク基板Wを吸着する静電気力を生じさせるための吸着電極22と、を備える。誘電板21はサファイア基板であり、ベース板24はアルミナセラミックスである。吸着電極22は、-200℃以上、400℃以下の範囲において抵抗変化率が20%以下である。そして、誘電板21とベース板24とが吸着電極22を介して一体接合されている。
【0045】
すなわち、本実施形態の静電チャック装置10では、静電チャック20に接合剤が用いられていないため、発塵や放電の発生が抑制される。なお、本実施形態の静電チャック装置10では、静電チャック20と支持台40との接合に接合剤30を用いている。しかし、この接合剤30は、静電チャック20の上面、つまり誘電板21から離れているためプラズマの影響を受け難く、発塵は発生し難い。
【0046】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)静電チャック20は、ワーク基板Wが載置される誘電板21と、誘電板21を支持するベース板24と、誘電板21とベース板24との間に配設され、ワーク基板Wを吸着する静電気力を生じさせるための吸着電極22と、を備える。誘電板21はサファイア基板であり、ベース板24はアルミナセラミックスである。吸着電極22は、-200℃以上、400℃以下の範囲において抵抗変化率が20%以下である。そして、誘電板21とベース板24とが吸着電極22を介して一体接合されている。サファイア基板は、酸化アルミニウム(Al2O3)の単結晶材料であり、粒界がなく、耐プラズマ性にすぐれている。そして、静電チャック20に接合剤が用いられていないため、発塵や放電の発生を抑制できる。
【0047】
(2)本実施形態の静電チャック20は、サファイア基板よりなる誘電板21と、アルミナセラミックス(Al2O3)のベース板24と、誘電板21とベース板24との間に介在された吸着電極22を有している。吸着電極22は、Al2O3及び導電材料を含む複合セラミックスであり、導電材料は、AlTiC材である。この吸着電極22は、Al2O3、導電材料及び酸化粒系共晶点材料を用いて形成される。このため、吸着電極22を、サファイア基板に対する影響が少ない1750℃以下の低温にて焼結できる。1750℃以上の焼結温度では、サファイア結晶に変質が生じ、特性の低下を招く。したがって、本実施形態では、吸着電極22を低温焼結するため、サファイア基板よりなる誘電板21の耐食性等の特性の低下を抑制できる。
【0048】
(3)吸着電極22の導電材料として用いるAlTiC材は、抵抗値の温度依存性が低い。このため、静電チャック20として、-200℃~400℃の広い温度領域において、抵抗変化率が20%以下に抑えられる。
【0049】
(4)静電チャック20を構成する誘電板21、吸着電極22及び絶縁層23、ベース板24は、熱膨張率が8.0×10-6/Kである。このため、幅広い温度範囲で使用可能であり、種々の処理装置やワーク基板の搬送に用いることができる。
【0050】
(5)誘電板21は、上面21aに凸部26を有している。凸部26の直径は0.3mm以上、3.0mm以下であり、凸部26の高さは0.05mm以下である。凸部26の上面端部は側面26bにかけて湾曲した稜線部26aであり、稜線部26aの半径は0.03mm以下である。このような凸部26により、誘電板21にワーク基板Wを吸着し易くすることができる。また、凸部26により、誘電板21からワーク基板Wを離脱し易くすることができる。
【0051】
<変更例>
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態に対し、静電チャック20を支持台40に直接接合してもよい。
【0052】
図15は、変更例の静電チャック装置10aを示す。この静電チャック装置10aは、支持台40と静電チャック20とを有している。この静電チャック20は、上記実施形態の接合剤30を用いずに、支持台40の上面40aに直接接合されている。静電チャック20と支持台40とを直接接合する方法としては、常温接合を用いることができる。
【0053】
・上記形態に対し、導電ペーストとして、酸化チタン(TiO2)等の他の導電材料を含むものとしてもよい。
・上記実施形態に対し、静電チャック20にヒータが埋め込まれても良い。なお、ヒータは、支持台40に埋め込まれもよい。
【0054】
・上記実施形態では、半導体ウェハをワーク基板Wとしたが、他のワーク基板、例えば液晶表示素子等に用いられる基板としてもよい。
・以上の説明は本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、当業者であれば、本発明の本質から逸脱しない範囲で多様な修正及び変形が可能である。したがって、開示した実施形態は本発明の技術思想を限定するためのものでなく、単に説明するためのものであり、このような実施形態によって本発明の技術思想の範囲は限定されない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈しなければならず、それと同等な範囲内にある全て技術思想は本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10…静電チャック装置、20…静電チャック、21…誘電板、22…吸着電極、24…ベース板、26…凸部、40…支持台、W…ワーク基板。