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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】到来角推定のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/46 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
G01S3/46
【請求項の数】 28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019109172
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020095006
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】16/220,371
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・フォート
(72)【発明者】
【氏名】ブラム・ファン・デン・ボッシュ
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194454(JP,A)
【文献】特開昭52-106292(JP,A)
【文献】特開2005-065010(JP,A)
【文献】特開2010-096646(JP,A)
【文献】特開2009-244243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0269389(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0267131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00-3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線受信部を動作させるための方法であって、
第1のアンテナ及び第2のアンテナにおいて送信部からの無線信号を受信することであって、前記無線信号は、信号キャリアと前記信号キャリア上で変調された1つ以上のデータシンボルとを含み、前記1つ以上のデータシンボルはそれぞれ、異なるシンボル時間の間に前記信号キャリア上で変調される、前記受信することと、
前記無線信号の第1の部分における前記1つ以上のデータシンボルをデコードしてシンボル位相寄与を決定することであって、前記シンボル位相寄与は、前記1つ以上のデータシンボルの変調に起因する前記信号キャリアの位相の変化である、前記決定することと、
1つ以上のシンボル時間を含む前記無線信号の第2の部分内での前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の位相を推定して、第1の位相測定値の組を得ることであって、前記無線信号の前記第2の部分は前記無線信号の前記第1の部分とは不連続である、第1の位相測定値の組を得ることと、
1つ以上のシンボル時間で前記無線信号の前記第2の部分内での前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の位相を推定して、第2の位相測定値の組を得ることと、
前記第1の位相測定値の組から前記シンボル位相寄与を取り除いて、第1の補正位相測定値の組を得ることと、
前記第2の位相測定値の組から前記シンボル位相寄与を取り除いて、第2の補正位相測定値の組を得ることと、
前記第1の補正位相測定値の組と前記第2の補正位相測定値の組とを分析して、前記無線信号の到来角を推定することと、を含む方法。
【請求項2】
前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定することは、前記無線信号の前記第1の部分内での前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定することを含み、
前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定することは、前記無線信号の前記第1の部分内での前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のデータシンボルはデータパケットの一部であり、
前記方法はさらに、前記無線信号が当初のデータパケットと1つ以上の再送信データパケットとを含むように前記送信部からの前記データパケットの再送信をリクエストすることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無線信号の前記第1の部分は、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの第1の1つにおける前記1つ以上のデータシンボルを含み、
前記無線信号の前記第2の部分は、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの第2の1つにおける前記1つ以上のデータシンボルを含み、前記第2の1つは、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの前記第1の1つとは異なる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記無線信号の前記第1の部分をデコードして、前記1つ以上のデータシンボルを含む前記データパケットの長さを決定することをさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記無線信号の前記第2の部分をデコードして、前記1つ以上のデータシンボルを含む前記データパケットの長さを決定することをさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記無線信号の第3の部分をデコードして、前記1つ以上のデータシンボルを含む前記データパケットの長さを決定することをさらに含み、
前記無線信号の前記第3の部分は、前記無線信号の前記第1の部分及び前記無線信号の前記第2の部分とは不連続であり、
前記無線信号の前記第3の部分は、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの第3の1つにおける前記1つ以上のデータシンボルを含み、前記第3の1つは、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの前記第1の1つ、及び前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの前記第2の1つとは異なる請求項4に記載の方法。
【請求項8】
無線受信部であって、
第1のアンテナ及び第2のアンテナであって、それぞれ送信部から無線信号を受信するように構成され、前記無線信号は、信号キャリアと前記信号キャリア上で変調された1つ以上のデータシンボルとを含み、前記1つ以上のデータシンボルはそれぞれ、異なるシンボル時間の間に前記信号キャリア上で変調される、前記第1のアンテナ及び第2のアンテナと、
前記第1のアンテナ、前記第2のアンテナ、及びデコーダ回路に結合された位相推定回路であって、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナから前記無線信号の少なくとも一部を受信することと、
前記無線信号内の第1の部分における前記1つ以上のデータシンボルをデコードして、シンボル位相寄与を決定することであって、前記シンボル位相寄与は、前記1つ以上のデータシンボルの変調に起因する前記信号キャリアの位相の変化である、前記決定することと、
1つ以上のシンボル時間を含む前記無線信号の第2の部分内での前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の位相を推定して、第1の位相測定値の組を得ることであって、前記無線信号の前記第2の部分は前記無線信号の前記第1の部分とは不連続である、第1の位相測定値の組を得ることと、
1つ以上のシンボル時間で前記無線信号の前記第2の部分内での前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の位相を推定して、第2の位相測定値の組を得ることと、
前記第1の位相測定値の組から前記シンボル位相寄与を取り除いて、第1の補正位相測定値の組を得ることと、
前記第2の位相測定値の組から前記シンボル位相寄与を取り除いて、第2の補正位相測定値の組を得ることと、を行うように構成された前記位相推定回路と、
前記位相推定回路に結合された到来角推定回路であって、前記第1の補正位相測定値の組と前記第2の補正位相測定値の組とに基づいて、前記無線信号の到来角を推定するように構成された、前記到来角推定回路と、を含む無線受信部。
【請求項9】
前記位相推定回路は、
前記無線信号の前記第1の部分における、前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定し、前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定することと、を行うように構成されている請求項8に記載の無線受信部。
【請求項10】
アンテナ切替回路をさらに含み、前記アンテナ切替回路は、
前記位相推定回路の入力を前記第1のアンテナに選択的に結合して、前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を測定することと、
前記位相推定回路の前記入力を前記第2のアンテナに選択的に結合して、前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を測定することと、を行うように構成されている請求項9に記載の無線受信部。
【請求項11】
前記アンテナ切替回路は、前記データシンボルのうちの各1つの境界において、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で前記位相推定回路の前記入力を切り替えるように構成されている請求項10に記載の無線受信部。
【請求項12】
アンテナ切替回路をさらに含み、前記アンテナ切替回路は、
前記位相推定回路の入力を前記第1のアンテナに選択的に結合して、前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を測定することと、
前記位相推定回路の前記入力を前記第2のアンテナに選択的に結合して、前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を測定することと、を行うように構成されている請求項8に記載の無線受信部。
【請求項13】
前記アンテナ切替回路は、前記データシンボルのうちの各1つの境界において前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で前記位相推定回路の前記入力を切り替えるように構成されている請求項12に記載の無線受信部。
【請求項14】
前記1つ以上のデータシンボルはデータパケットの一部であり、
前記無線受信部は、前記無線信号が当初のデータパケットと1つ以上の再送信データパケットとを含むように前記送信部からの前記データパケットの再送信をリクエストするように構成されている請求項8に記載の無線受信部。
【請求項15】
前記無線信号の前記第1の部分は、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの第1の1つにおける前記1つ以上のデータシンボルを含み、
前記無線信号の前記第2の部分は、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの第2の1つにおける前記1つ以上のデータシンボルを含み、前記第2の1つは、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの前記第1の1つとは異なる請求項14に記載の無線受信部。
【請求項16】
前記デコーダ回路はさらに、前記無線信号の前記第1の部分をデコードして、前記1つ以上のデータシンボルを含む前記データパケットの長さを決定するように構成されている請求項15に記載の無線受信部。
【請求項17】
前記デコーダ回路はさらに、前記無線信号の前記第2の部分をデコードして、前記1つ以上のデータシンボルを含む前記データパケットの長さを決定するように構成されている請求項15に記載の無線受信部。
【請求項18】
前記デコーダ回路はさらに、前記無線信号の第3の部分をデコードして、前記1つ以上のデータシンボルを含む前記データパケットの長さを決定するように構成され、
前記無線信号の前記第3の部分は、前記無線信号の前記第1の部分及び前記無線信号の前記第2の部分とは不連続であり、
前記無線信号の前記第3の部分は、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの第3の1つにおける前記1つ以上のデータシンボルを含み、前記第3の1つは、前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの前記第1の1つ、及び前記当初のデータパケットと前記1つ以上の再送信データパケットとのうちの前記第2の1つとは異なる請求項15に記載の無線受信部。
【請求項19】
前記位相推定回路は、
位相測定回路であって、前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定し、前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を推定するように構成された前記位相測定回路と、
前記無線信号内の前記1つ以上のデータシンボルをデコードして前記シンボル位相寄与を決定するように構成されたシンボル位相寄与キャンセレーション回路と、を含む請求項8に記載の無線受信部。
【請求項20】
前記位相測定回路は、前記無線信号の1つ以上のゼロ交差に基づいて、前記無線信号の前記位相を推定するように構成されている請求項19に記載の無線受信部。
【請求項21】
前記位相測定回路は、前記無線信号と1つ以上のシンボルパターンとの相関に基づいて、前記無線信号の前記位相を推定するように構成されている請求項19に記載の無線受信部。
【請求項22】
前記無線信号における各シンボル時間の間に、
前記位相測定回路は前記無線信号の前記位相を推定して位相測定値を得るように構成され、
前記シンボル位相寄与キャンセレーション回路は、前記1つ以上のデータシンボルのうちの1つをデコードして、前記シンボル位相寄与の更新を、前記シンボル位相寄与が、送信された前記1つ以上の各データシンボルの前記変調に起因する前記信号キャリアの前記位相の前記変化となるように行うように構成され、
前記位相推定回路は、前記位相測定値から前記シンボル位相寄与を差し引いて補正位相測定値を生成するように構成されている請求項19に記載の無線受信部。
【請求項23】
アンテナ切替回路をさらに含み、前記アンテナ切替回路は、
前記位相推定回路の入力を前記第1のアンテナに選択的に結合して、前記第1のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を測定することと、
前記位相推定回路の前記入力を前記第2のアンテナに選択的に結合して、前記第2のアンテナで受信した前記無線信号の前記位相を測定することと、を行うように構成されている請求項8に記載の無線受信部。
【請求項24】
前記アンテナ切替回路は、前記1つ以上のデータシンボルのそれぞれに対して前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で前記位相推定回路の前記入力を切り替えるように構成されている請求項23に記載の無線受信部。
【請求項25】
前記アンテナ切替回路は、前記1つ以上のデータシンボルのそれぞれにおける同じ場所で前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で前記位相推定回路の前記入力を切り替えるように構成されている請求項24に記載の無線受信部。
【請求項26】
前記位相推定回路は、前記1つ以上のデータシンボルのそれぞれにおける同じ場所で前記無線信号の前記位相を推定するように構成されている請求項25に記載の無線受信部。
【請求項27】
前記アンテナ切替回路は、前記位相推定回路が前記無線信号の前記位相を推定するように構成されるより所定の時間前に、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間で前記位相推定回路の前記入力を切り替えるように構成されている請求項24に記載の無線受信部。
【請求項28】
前記位相推定回路は、前記1つ以上のデータシンボルのそれぞれにおけるチップの既知の列の間に前記無線信号の前記位相を測定するように構成されている請求項8に記載の無線受信部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線信号の到来角を推定するためのシステム及び方法に関し、具体的には、到来角推定用に具体的にデザインされた標準化プロトコルまたは信号方式が必要でないという点で標準的非依存型である無線信号の到来角を推定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号の到来角は、無線受信部で測定されると、無線受信部に対して無線信号が送信された方向を示す。到来角によって、送信部と受信部との間の空間的関係についての情報が得られるため、室内の位置特定サービス、資産追跡、及びサービス発見などのいくつかの無線応用例に対して有望である。無線信号の到来角は、異なるアンテナで受信した無線信号間の位相差を検出することによって推定することができる。従来の到来角推定では、無線信号の受信部が、無線信号を異なるアンテナ上で受信したときに無線信号間の位相差を適切に推定できるように、合意された専有のまたは標準化された無線信号(たとえば、連続音)を送信する必要がある。このようなアプローチは、到来角推定に対するこれらの合意された信号方式を有さない旧世代または将来世代の無線システムとの後方互換性がない。このため、これらの有望な応用例が広く採用されることが阻まれている。前述したことを考慮して、到来角推定に対するシステム及び方法の改善が求められている。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、無線受信部を動作させるための方法は、第1のアンテナ及び第2のアンテナにおいて送信部からの無線信号を受信することから始まる。無線信号には、信号キャリアと信号キャリア上で変調された1つ以上のデータシンボルとが含まれる。次に、無線信号内の1つ以上のデータシンボルをデコードしてシンボル位相寄与を決定する。シンボル位相寄与は、1つ以上のデータシンボルの変調に起因する信号キャリアの位相、振幅、周波数、またはこれらの特徴の任意の組み合わせの変化である。1つ以上のデータシンボルはそれぞれ、異なるシンボル時間の間に信号キャリア上で変調される。次に、1つ以上のシンボル時間の間に第1のアンテナにおける無線信号の位相を推定して、第1の位相測定値の組を得る。また1つ以上のシンボル時間の間に第2のアンテナにおける無線信号の位相も推定して、第2の位相測定値の組を得る。第1の位相測定値の組及び第2の位相測定値の組の両方からシンボル位相寄与を取り除いて、第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とを得る。次に第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とを用いて、無線信号の到来角を推定する。シンボル位相寄与を決定して、それを第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とから取り除くことによって、任意のデータパケットに対しても正確な到来角推定を行うことができ、その結果、前述の送信部の専用の合意されたまたは標準準拠の信号方式。
【0004】
一実施形態では、無線受信部は、第1のアンテナ及び第2のアンテナ、デコーダ回路、位相推定回路、及び到来角推定回路を含む。第1のアンテナ及び第2のアンテナはそれぞれ、送信部から無線信号を受信するように構成されている。無線信号には、信号キャリアと信号キャリア上で変調された1つ以上のデータシンボルとが含まれる。デコーダ回路は第1のアンテナ及び第2のアンテナに結合されていて、第1のアンテナ及び第2のアンテナから無線信号の少なくとも一部を受信して、無線信号内の1つ以上のデータシンボルをデコードしてシンボル位相寄与を決定するように構成されている。シンボル位相寄与は、1つ以上のデータシンボルの変調に起因する信号キャリアの位相、振幅、周波数、またはこれらの特徴の任意の組み合わせの変化である。1つ以上のデータシンボルはそれぞれ、異なるシンボル時間の間に信号キャリア上で変調される。位相推定回路は第1のアンテナ、第2のアンテナ、及びデコーダ回路に結合されていて、1つ以上のシンボル時間に第1のアンテナ及び第2のアンテナで受信した無線信号の位相を推定して、第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とをそれぞれ得るように構成されている。さらに、位相推定回路は、第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とからシンボル位相寄与を取り除いて、第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とをそれぞれ得るように構成されている。到来角推定回路は位相推定回路に結合されていて、第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とに基づいて無線信号の到来角を推定するように構成されている。シンボル位相寄与を決定して、それを第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とから取り除くことによって、任意のデータパケットに対しても正確な到来角推定を行うことができ、その結果、専用の合意されたまたは標準準拠の信号方式が送信部において必要でない。
【0005】
当業者であれば、好ましい実施形態の以下の詳細な説明を添付図面図とともに読んだ後で、本開示の範囲を理解してそのさらなる態様を実現する。
【0006】
本明細書に組み込まれて一部を構成する添付図面図は、本開示のいくつかの態様を例示し、説明とともに本開示の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態による無線受信部を動作させるための方法を例示するフロー図である。
図2】本開示の一実施形態による無線受信部を例示するブロック図である。
図3】本開示の一実施形態によるデータパケットを例示する略図である。
図4】本開示の一実施形態によるデータパケットフローを例示する略図である。
図5】本開示の一実施形態によるデータパケットフローを例示する略図である。
図6】本開示の一実施形態によるデータパケットフローを例示する略図である。
図7】本開示の実施形態による位相推定回路を例示する略図である。
図8】本開示の一実施形態による位相推定回路を例示する略図である。
図9】本開示の一実施形態による到来角推定のためのデータパケットを例示する略図である。
図10】本開示の一実施形態による到来角推定で用いる一連の繰り返しデータシンボルを例示する略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に述べる実施形態は、当業者が実施形態を実施できるために必要な情報を表し、実施形態を実施する最良の形態を例示する。以下の説明を添付図面図を考慮して読めば、当業者であれば本開示の概念を理解して、本明細書では特に扱っていないこれらの概念の応用例が分かる。当然のことながら、これらの概念及び応用例は本開示及び添付の特許請求の範囲に含まれる。
【0009】
本明細書では第1、第2などの用語を用いて種々の要素を説明する場合があるが、これらの用語によってこれらの要素を限定してはならないことを理解されたい。これらの用語は単に1つの要素を別のものと区別するために用いられる。たとえば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と言うことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と言うことができる。本明細書で用いる場合、用語「及び/または」には、関連する列記した事項のうちの任意の、またはすべての組み合わせが含まれる。
【0010】
当然のことながら、層、領域、または基材などの要素が別の要素「上に」あるかまたは別の要素「上に」延びると言うとき、それは他方の要素上に直接あることもまたは他方の要素上に直接延びることもできるし、または介在要素が存在していてもよい。対照的に、要素が別の要素「上に直接」あるかまたは別の要素「上に直接」延びると言うとき、介在要素は存在しない。同様に、当然のことながら、層、領域、または基材などの要素が別の要素の「上方に」あるかまたは別の要素の「上方に」延びると言うとき、それは他方の要素の上方に直接あることもまたは他方の要素の上方に直接延びることもできるし、または介在要素が存在していてもよい。対照的に、要素が別の要素の「上方に直接」あるかまたは別の要素の「上方に直接」延びると言うとき、介在要素は存在しない。また当然のことながら、要素が別の要素に「接続されている」かまたは「結合されている」と言うとき、それは他方の要素に直接接続することもまたは結合することもできるし、または介在要素が存在していてもよい。対照的に、要素が別の要素に「直接接続されている」かまたは別の要素に「直接結合されている」と言うとき、介在要素は存在しない。
【0011】
本明細書では、「下方」もしくは「上方」、または「上部」もしくは「下部」、または「水平方向」もしくは「垂直方向」などの相対語を用いて、図に例示するような要素、層、または領域の、別の要素、層、または領域に対する関係を記述してもよい。当然のことながら、これらの用語及び前述したものは、図に示した方位に加えて、デバイスの異なる方位を包含することが意図されている。
【0012】
本明細書で用いる術語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、本開示を限定することは意図されていない。本明細書で用いる場合、単数形「a」「an」及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示す場合を除き、複数形もまた含むことが意図されている。さらに当然のことながら、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、及び/または「含んでいる(including)」は、本明細書で用いる場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または部品の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、部品、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0013】
別に定義がない限り、本明細書で用いるすべての用語(技術及び科学用語を含む)は、本開示が属する分野の当業者が広く理解するものと同じ意味を有する。さらに当然のことながら、本明細書で用いる用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と整合する意味を有すると解釈すべきであり、本明細書において明示的にそのように規定される場合を除き、理想的な意味または過度に形式張った意味には解釈されない。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態により無線信号の到来角を推定するための方法を例示するフロー図である。最初に、第1のアンテナ及び第2のアンテナにおいて無線信号を受信する(ステップ100)。無線信号には、信号キャリアと信号キャリア上で変調された1つ以上のデータシンボルとが含まれる。無線信号に1つ以上のデータパケットが含まれるように、1つ以上のデータシンボルは1つ以上のデータパケットの一部であってもよい。次に、1つ以上のデータパケット内の少なくとも1つのデータパケットのパケット長を決定する(ステップ102)。少なくとも1つのデータパケットのパケット長を決定することは、データパケットの少なくとも一部をデコードすることを含んでいてもよい。たとえば、少なくとも1つのデータパケットのパケット長を決定することは、データパケットのヘッダ(データパケット長を含む)をデコードすることを含んでいてもよい。本明細書で述べるように、データパケットまたはその一部をデコードすることは、データパケットまたはその一部からのデータを再生することを含む。当業者であれば、そのように(すなわち、復調、アナログデジタル変換などを)行うために必要なステップを容易に理解するため、本明細書ではこれらのステップについては説明しない。次に、1つ以上のデータシンボルを含む無線信号の一部をデコードしてシンボル位相寄与を決定する(ステップ104)。具体的には、無線信号を、後述するようにデータシンボルを含む多くのシンボル時間の各1つにおいてデコードする。本明細書で述べるように、シンボル位相寄与は、信号キャリア上での1つ以上のデータシンボルの変調に起因する信号キャリアの位相の変化である。シンボル位相寄与を決定するために、1つ以上のデータシンボルをデコードしなければならず、これには、前述で決定したパケット長が必要となり得る。
【0015】
次に、第1のアンテナにおける無線信号の位相を推定して第1の位相測定値の組を得る(ステップ106)。さらに、第2のアンテナにおける無線信号の位相を推定して第2の位相測定値の組を得る(ステップ108)。特に、第1の位相測定値の組及び第2の位相測定値の組の各1つは、データパケットのシンボル時間の間の別個の位相測定値であり、したがって、シンボル位相寄与が含まれる。言い換えれば、また以下に詳細に説明するように、第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とは全般的に、1つ以上のデータシンボルの異なるものの間に順次に推定される。したがって、第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組との間の位相差は、部分的に第1のアンテナと第2のアンテナとの間の空間的関係に起因し、部分的にシンボル位相寄与に起因する。到来角推定では、第1のアンテナと第2のアンテナとの間の空間的関係のみに起因する第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組との間の位相差を知っている必要がある。したがって、シンボル位相寄与を第1の位相測定値の組から取り除いて第1の補正位相測定値の組を得て(ステップ110)、第2の位相測定値の組から取り除いて第2の補正位相測定値の組を得る(ステップ112)。第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とからシンボル位相寄与を取り除くと、結果として得られる第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とはそれぞれ、基本的に、無線信号の信号キャリアの位相測定値である。したがって、第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組との間の位相差は、第1のアンテナと第2のアンテナとの間の空間的関係のみに起因し、シンボル位相寄与には起因しない。最後に、無線信号の到来角を、第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とに基づいて推定する(ステップ114)。第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とを用いて無線信号の到来角を推定することは、当業者が容易に理解する任意の数の方法で行ってもよい。これらはすべて本明細書において企図される。図示しないが、復号データシンボルを、通常行うように上流回路に送って、その後に処置してもよい。
【0016】
図2に示すのは、本開示の一実施形態により無線信号の到来角を推定するための受信部回路10である。受信部回路10は、第1のアンテナ12A、第2のアンテナ12B、アンテナ切替回路14、デコーダ回路16、位相推定回路18、及び到来角推定回路20を含む。第1のアンテナ12Aと第2のアンテナ12Bとは、デコーダ回路16と位相推定回路18とにアンテナ切替回路14を介して結合されている。位相推定回路18はさらに、デコーダ回路16と到来角推定回路20との間に結合されている。デコーダ回路16、位相推定回路18、及び到来角推定回路20を受信部回路10内の別個の部分として示しているが、本開示の原理から逸脱することなく、それらを組み合わせてもよいしまたは任意の数の異なる部品にさらに分離してもよい。図示しないが、受信部回路10はさらに、アンテナ切替回路14、デコーダ回路16、及び位相推定回路18の間に復調回路を含んでいてもよい。
【0017】
受信部回路10は、図1に対して前述した方法により無線信号の到来角を推定するように構成されている。無線信号を第1のアンテナ12Aと第2のアンテナ12Bとにおいて受信する。アンテナ12の各1つに対して、RFフロントエンドハードウェア、デコーダ回路16、位相推定回路18、及び到来角推定回路20を複製することを回避するために、実用的な低電力で低コストなシステムでは、デコーダ回路16及び位相推定回路18に結合されたアンテナ12を切り替えるアンテナ切替回路14が必要である。これによって、第1のアンテナ12A及び第2のアンテナ12Bの両方において位相推定回路18によって無線信号の位相を推定して、第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とをそれぞれ得ることができる。このアンテナ切り替えによって過渡効果が導入されて、位相及びシンボル推定が複雑になる。デコーダ回路16は、パケット長と無線信号内の1つ以上のデータシンボルとをデコードする。これらを位相推定回路18が用いて、第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とを生成する。到来角推定回路20では、第1の補正位相測定値の組と第2の補正位相測定値の組とを用いて無線信号の到来角を推定する。
【0018】
図3に、本開示の一実施形態による典型的なデータパケット22を例示する。データパケット22にはプリアンブル24及びデータ26が含まれる。データ26には多くのデータシンボル(S1~SNとして示す)が含まれる。データシンボルの各1つの境界は、そのデータシンボルに対するシンボル時間を表す。これは、データシンボルが送信される時間を表す。前述した位相測定は、データシンボル時間の1つ以上の間に行われる。データパケット22を伝える無線信号のフォーマットに応じて、データシンボルの各1つが送信される時間または前述したようなシンボル時間は、異なってもよい。たとえば、無線信号がZigbee無線信号である場合、シンボル時間は、無線信号がブルートゥースローエナジー(BTLE)無線信号である場合よりもはるかに長い。前述したように、受信部回路10のアンテナ12間で切り替えて、第1のアンテナ12Aと第2のアンテナ12Bとにおける位相を測定すると、スイッチング過渡現象が導入されて信号が破損する。シンボル時間が十分に長ければ、アンテナ切替回路14は、シンボル間の境界において第1のアンテナ12Aと第2のアンテナ12Bとの間で切り替えることができ、依然として、デコーダ回路16がデータシンボルを信頼性高くデコードすること、位相推定回路18が入ってくる無線信号の位相を信頼性高く推定することに利用できる十分に未破損な信号が存在する。したがって、無線信号の到来角を単一のデータパケットを用いて決定することができる。
【0019】
しかし、シンボル時間が短すぎる(たとえば、スイッチング過渡現象よりも短いかまたはこれに匹敵する)と、デコーダ回路16によるデータシンボルの検出がスイッチング過渡現象によって妨げられる可能性がある。このような場合、無線信号の到来角の推定には1つを超えるデータパケットが必要となる場合がある。到来角推定を容易にするために複数のデータパケットを与える専用の送信部回路を必要とするのではなく、本開示では、到来角推定を実行するのに必要な追加データパケットを得るために良く知られた標準化された再送信プロトコルを用いることを提案する。たとえば、多くの無線標準では、パケットが受信部によって確認応答されない場合にパケットの再送信を命令する。このような再送信プロトコルを利用することによって、送信部を何ら特殊化することなく、到来角推定に必要な多くのデータパケットを受信部によって得ることができる。
【0020】
図4は、本開示の一実施形態による到来角推定のためのデータパケットフローを例示する略図である。データパケットフローは、当初のデータパケットが送信される第1のタイムスロット28から始まる。受信部回路10は、当初のデータパケットをデコードして、パケット長と内部のデータシンボルを決定してもよい。したがって、第1のタイムスロット28の間に、アンテナ切替回路14によってアンテナ12の一方をデコーダ回路16に結合して、スイッチング過渡現象がデータシンボルのデコーディングと干渉しないようにしてもよい。第2のタイムスロット30において、受信部回路10は応答しないため、当初のデータパケットの受信に確認応答しないことによって再送信がリクエスされる。それに応じて、第3のタイムスロット32では再送信データパケットが送信される。受信部回路10は、再送信データパケットを用いて、第1のアンテナ12A及び第2のアンテナ12Bにおける無線信号の位相を推定することを、位相推定回路18に結合されたアンテナ12を切り替えることによって行ってもよい。詳細には、アンテナ切替回路14は、再送信データパケット内のデータシンボルの境界において、位相推定回路18に結合されたアンテナ12を切り替えて、データシンボルの異なるものが送信される間に第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とが生成されるようにしてもよい。アンテナが切り替わる度にスイッチング過渡現象が導入される場合があり、そのため、位相推定を未破損のシンボル境界から始める前、過渡効果が落ち着く間、ある数のデータシンボルが無視される場合がある。最後に、第4のタイムスロット34では、受信部回路10は再送信パケットの受信を確認応答してもよい。
【0021】
図5は、本開示のさらなる実施形態による到来角推定のためのデータパケットフローを例示する略図である。データパケットフローは、図4に示すものと実質的に同様である。ただし、第1のタイムスロット28において受信部回路10が当初のデータパケットの一部をデコードしてパケット長を決定すると同時に、当初のデータパケットを用いて第1のアンテナ12A及び第2のアンテナ12Bにおける無線信号の位相も推定する。こうして、アンテナ切替回路12は、第1のタイムスロット28の第1の部分の間にアンテナ12の一方をデコーダ回路16に結合して、当初のデータパケットのパケット長を正確に決定し、そしてその後に、第1のアンテナ12Aと第2のアンテナ12Bとの間での切り替えを始めて、アンテナ12のそれぞれにおける位相を推定してもよい。受信部回路10はさらに、再送信データパケットからのデータシンボルをデコードし、こうして、第3のタイムスロット32の間は、アンテナ切替回路14はアンテナ12の一方をデコーダ回路16に結合して、この間はアンテナ切り替えを実行しない。
【0022】
図6は、本開示のさらなる実施形態による到来角推定のためのデータパケットフローを例示する略図である。データパケットフローは、当初のデータパケットが送信される第1のタイムスロット36から始まる。受信部回路10は当初のデータパケットの一部をデコードしてパケット長を決定してもよい。第1のタイムスロット36の間に、アンテナ切替回路14はアンテナ12の一方をデコーダ回路16に結合して、パケット長が正確に決定できるようにしてもよい。第2のタイムスロット38において、受信部回路10は応答しないため、当初のパケットの受信に確認応答しないことによって再送信がリクエスされる。それに応じて、第3のタイムスロット40では第1の再送信データパケットが送信される。受信部回路は、第1の再送信データパケットを用いて第1のアンテナ12A及び第2のアンテナ12Bにおける無線信号の位相を推定することを、第3のタイムスロット40の間に、位相推定回路18に結合されたアンテナ12を切り替えることによって行ってもよい。詳細には、アンテナ切替回路14は、第1の再送信データパケット内のデータシンボル間の境界において、位相推定回路18に結合されたアンテナ12を切り替えて、データシンボルの異なるものが送信される間に第1の位相測定値の組と第2の位相測定値の組とが生成されるようにしてもよい。第4のタイムスロット42において、受信部回路10は再び応答しないため、第1の再送信データパケットの受信に確認応答しないことによって再送信をリクエストする。それに応じて、第5のタイムスロット44では第2の再送信データパケットが送信される。受信部回路10は第2の再送信データパケットを用いて、内部のデータシンボルをデコードしてもよい。したがって、第5のタイムスロット44の間は、アンテナ切替回路14がアンテナ12の一方をデコーダ回路16に結合して、スイッチング過渡現象が第2の再送信データパケット内のデータシンボルのデコーディングと干渉しないようにしてもよい。最後に、第6のタイムスロット46では、受信部回路10は第2の再送信データパケットの受信を確認応答してもよい。
【0023】
特に、前述のデータパケットフローは単に例示である。当業者であれば容易に分かるように、前述の考え方は多くの異なる方法で適用してもよく、これらはすべて本明細書において企図される。
【0024】
図7に示すのは、本開示の一実施形態による位相推定回路18の詳細である。位相推定回路18には、位相測定回路48及びシンボル位相寄与キャンセレーション回路50が含まれる。位相測定回路48は、無線信号(前述したように、これは受信部回路10内の復調器(図示せず)によって与えてもよい)の同相成分I_IN及び直交成分Q_INを受信するように構成されたエッジ検出器回路52を含む。受信部回路10がハード制限されると想定して、無線信号の同相成分I_IN及び直交成分Q_INを2値信号として与えて、そのエッジにのみ情報が含まれるようにする。エッジ検出器回路52は、エッジ検出信号E_DETとエッジ補正信号E_CORRとを与える。エッジ検出信号E_DETは、無線信号の同相成分I_INまたは直交成分Q_INのいずれかの立ち上がりまたは立ち下がりエッジの存在を示す。エッジ補正信号E_CORRは、どの成分のどのエッジが検出されたかに依存するエッジオフセット値を与える。
【0025】
検出されたエッジが無線信号の同相成分I_INのポジティブエッジであるとき、エッジ補正信号E_CORRは+180として与えられる。検出されたエッジが無線信号の同相成分I_INのネガティブエッジであるとき、エッジ補正信号E_CORRは0として与えられる。検出されたエッジが無線信号の直交成分Q_INのポジティブエッジであるとき、エッジ補正信号E_CORRは+270として与えられる。検出されたエッジが無線信号の直交成分Q_INのネガティブエッジであるとき、エッジ補正信号E_CORRは+90として与えられる。
【0026】
エッジ検出信号E_DETはサンプラー54に与えられる、それに応じてサンプラー54はトリガされて、鋸歯発振器56の出力をサンプリングする。鋸歯発振器56が与える鋸歯状出力ST_OSCは、シンボル位相寄与キャンセレーション回路50からの動作周波数信号F_OPによって決定される周波数において振幅0~360で変化する。エッジ検出信号E_DETによってトリガされると、サンプラー54は、サンプリングされた鋸歯状出力ST_OSC(t)を加算器58に与える。加算器58はエッジ検出回路52からのエッジ補正信号E_CORRも受信して、これら2つを加算して位相推定値PH_ESTを与える。位相推定信号PH_ESTが平均化回路60に与えられる。平均化回路60は、1つ以上の以前の位相推定信号を用いて位相推定信号PH_ESTを平均化して、平均位相推定値AVG(PH_EST)を与える。平均化回路60には、平均加算器62、ディレイ64、及び分割器66が含まれる。位相推定信号PH_ESTは加算器62に与えられる。ここでは、位相推定信号PH_ESTを、ディレイ64に保持される1つ以上の以前の位相推定に加える。組み合わせた位相推定は分割器66に与えられる。ここでは、それらを位相推定数で割って平均位相推定値AVG(PH_EST)を与える。位相測定回路48に関するさらなる詳細は、同時譲渡されて同時継続中の米国特許出願第16/175,184号に見られる。なお、この文献の内容はその全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0027】
シンボル位相寄与キャンセレーション回路50は周波数セレクタ回路68を含む。周波数セレクタ回路68は、ポジティブ周波数オフセット信号+Δf、ネガティブ周波数オフセット信号-Δf、及びデータシンボルDATA_SYMを受信して、ポジティブ周波数オフセット信号+Δf及びネガティブ周波数オフセット信号-Δfの一方を周波数オフセット値F_OFFとして与える。ポジティブ周波数オフセット信号+Δf及びネガティブ周波数オフセット信号-Δfの一方がデータシンボルDATA_SYMに依存する。当業者であれば分かるように、連続位相周波数シフトキーイング(CPFSK)システムでは、周波数を±Δfによって変調して異なるデータシンボルを伝える。たとえば、BTLEシステムでは周波数は±250kHzによって変調され、Zigbeeシステムの場合は周波数は±500kHzによって変調される。したがって、周波数オフセット値F_OFFはデータシンボルDATA_SYMを示す。
【0028】
周波数オフセット値F_OFFが、加算器70によって、無線信号の既知の中間周波数F_IFと無線信号の推定されたキャリア周波数オフセットCF_OFFとに加えられて、動作周波数信号F_OPを与える。キャリア周波数オフセットCF_OFFの決定は、たとえば、データパケットの1つのプリアンブルをデコードするときに行ってもよい。動作周波数信号F_OPが位相推定回路50及び乗算器72に与えられる。乗算器72では、動作周波数信号F_OPにシンボル時間P_SYM*2πを乗じて、シンボル位相寄与SYM_PH_CNを与える。シンボル位相寄与SYM_PH_CNは、前述したように、電流データシンボルDATA_SYMの変調に起因する信号キャリアの位相である。シンボル位相寄与SYM_PH_CNを、データパケット内の先行するシンボルに対して以前に決定したシンボル位相寄与とともに蓄積して、蓄積シンボル位相寄与ACC(SYM_PH_CN)を与える。こうする理由は、CPFSKシステムでは、各データシンボルのシンボル位相寄与は、それに先行するデータシンボルのシンボル位相寄与の影響を受けるからである。累算器74には加算器76及びディレイ78が含まれる。シンボル位相寄与SYM_PH_CNを加算器76に与える。ここでは、シンボル位相寄与SYM_PH_CNを、ディレイ78に保持される1つ以上の以前のシンボル位相寄与に加える。
【0029】
蓄積シンボル位相寄与ACC(SYM_PH_CN)が位相測定回路48内の減算器80に与えられる。減算器80では、蓄積シンボル位相寄与ACCを平均位相推定値AVG(PH_EST)から差し引いて、補正位相CORR_PHを与える。前述したように、補正された位相は、シンボル位相寄与の影響を受けないキャリア信号位相だけを示す。特に、位相測定回路48は、パケットのすべてのデータシンボルの間において無線信号の位相を測定しない場合があるが、それでもなお、シンボル位相寄与キャンセレーション回路50は、パケット内の各シンボルに対するシンボル位相寄与を蓄積する。なぜならば、前述したように、各データシンボルのシンボル位相寄与は、すべての先行するデータシンボルのシンボル位相寄与に依存し得るからである。
【0030】
図8に示すのは、本開示のさらなる実施形態による位相推定回路18の詳細である。今度の場合も、位相推定回路18には位相測定回路48及びシンボル位相寄与キャンセレーション回路50が含まれる。シンボル位相寄与キャンセレーション回路50は図7の場合と同じであるが、その代わりに位相測定回路48には、CORDIC82、相関回路84、ARCTAN回路86、及び減算器88が含まれる。CORDIC82は無線信号を受信して、それを同相成分Iと直交成分Qとに分割する。相関回路84は、同相成分I及び直交成分Qを多くの既知のシンボルパターンSYM_PATSと相関づけて、データシンボルDATA_SYMを検出する。ARCTAN回路86はデータシンボルを位相推定値PH_ESTに変換する。減算器回路88は、シンボル位相寄与キャンセレーション回路50から蓄積シンボル位相寄与ACC(SYM_PH_CN)を差し引いて、補正位相CORR_PHを与える。前述したように、補正された位相は、シンボル位相寄与の影響を受けないキャリア信号の位相だけを示す。
【0031】
いくつかの状況では、到来角推定を目的として、特定のデータパケットを送信することがやはり望ましい場合がある。しかし、このパケットがやはり、送信部が用いる無線標準に適合する一方で、到来角推定に対する精度及び性能が向上し得る。最初に、既知の列のデータシンボルを送信してもよい。既知の列のデータシンボルを送信することによって、シンボル位相寄与の検出に関連するオーバーヘッドがなくなる。さらに、そうすることによって、性能の向上が、望ましいシンボル列と到来角推定の精度を向上させるパケット長との選択を可能にすることによって起こり得る。それに応じて、図9に本開示の一実施形態による到来角推定に対するデータパケット90を示す。データパケット90には、プリアンブル、開始フレームデリミタ(SFD)、ヘッダ、いくつかの既知データ、多くの繰り返しデータシンボル、及び巡回冗長検査(CRC)が含まれる。既知データには、最初の時間及び周波数推定を改善するための多くのランダムまたは既知データシンボルが含まれる。繰り返しシンボルには長い列のデータシンボルが含まれる。このデータシンボルによって、受信部が到来角を推定することが容易になる。プリアンブル及びSFDの間、受信部回路10はデータパケットとの同期を、そうするための良く知られたシステム及び方法を用いて行ってもよい。ヘッダ及び既知データの間、受信部回路10は、周波数及びタイミングオフセットを推定する良く知られたシステム及び方法を用いて、周波数トラッキングを実行してもよい。既知データによって、周波数及びタイミングオフセットの信頼性が向上し得る。なぜならば、その長さは、任意のデータパケットにおける周波数トラッキングに対して利用でき得るものよりはるかに長い可能性があるからである。最後に、受信部回路10は繰り返しシンボルの間に無線信号の位相を推定してもよい。繰り返しシンボルは予め分かっていて、繰り返しシンボルの数は制御できるため、位相推定の精度(したがって到来角推定)は、任意のデータパケットを用いる場合よりも改善され得る。さらに、繰り返しシンボルに対して用いるデータシンボルは、1または0チップの長い列を伴うデータシンボルを選択することによって位相推定をより容易にするように選択してもよい。
【0032】
当業者であれば分かるように、最小偏移(MSK)変調方式では、各データシンボルは多くのチップで構成され、チップは、図10に示すように、1または0で表される。図10では、MSKデータシンボル92が3回繰り返される場合を例示している。図示したように、各データシンボルには6つの連続的な0チップの文字列が含まれる。このようなシンボルを選択して、後述するように位相を測定することによって、受信部が行う位相測定(したがって、結果として得られる到来角推定)に対する精度向上が実現され得る。最初に、シンボル毎に1回、シンボル内の同じ位置でアンテナ12を切り替えることによって、位相推定に対するシンボル間干渉(ISI)の影響を小さくしてもよい。なぜならば、このように行うと、ISI寄与は各アンテナ上で同じだからである。次に、示した位相測定時間より数マイクロセカンド前にアンテナを切り替えることによって、位相測定に対するスイッチング過渡現象の影響を回避することができる。最後に、1または0チップ(0チップは図10に示す例にある)の長い列の間に位相測定を行うことによって、位相推定はタイミング同期エラーに対してより堅固になる。位相測定時間が1または0チップの列内に留まる間は、固定のタイミングエラーがあっても到来角推定の精度には影響しない。特に、この最後の測定技術は、データシンボルが前もって分かっているか否かとは関係なく適用してもよい。すなわち、前もって分かっていない場合にデータシンボルを検出してもよく、位相推定をやはり、精度の可能性がより高いシンボル内の好ましい場所で行ってもよい(たとえば、前述したように、1または0チップの長い文字列の間に)。
【0033】
当業者であれば、本開示の好ましい実施形態に対する改善及び変更を理解するであろう。このような改善及び変更はすべて、本明細書で開示した概念及び以下の請求項の範囲内であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10