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▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】電気機械用の絶縁物体
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240205BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K3/34 C
【請求項の数】 27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019207203
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2020089261
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】10 2018 219 820.9
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルマイダ イー シルバ ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ブランケンバッハ ベルント
(72)【発明者】
【氏名】コックス テリー
(72)【発明者】
【氏名】グラープヘア フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クル ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】メイル ティム
(72)【発明者】
【氏名】ピーセク ピーター
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ マーティン
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-135818(JP,A)
【文献】特開2011-182573(JP,A)
【文献】特開2003-070199(JP,A)
【文献】特開2003-111319(JP,A)
【文献】国際公開第2018/007071(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/162348(WO,A1)
【文献】特開2018-133983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0090549(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300220(US,A1)
【文献】特開平10-271738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動車両のための電気機械(1)であって、
前記電気機械(1)の軸方向(A)を定義する回転軸(D)に関して回転するロータ(3)と、導電性のステータ巻き線(6)を有するステータ(2)と、
前記ステータ巻き線(6)を冷却する冷却剤(K)が流通する少なくとも1つの冷却流路(10)とを備え、
前記ステータ(2)は、前記軸方向(A)に延びると共に、前記ロータ(3)における外周方向(U)に沿って互いに間隔をおいて配置されたステータ歯(8)を有し、前記ステータ歯(8)は、前記ステータ(2)のステータ本体(7)から径方向の内側に突き出すと共に、前記ステータ巻き線(6)を支持し、
前記外周方向Uに隣接する2つのステータ歯(8、8a、8b)の間に、各々の場合に、中間スペース(9)が形成され、
少なくとも1つの中間スペース(9)に絶縁物体(100)が配置されると共に、該絶縁物体(100)は、プラスチック(11)からなる外壁(101a、101b、101c、101d)を有し、前記ステータ巻き線(6)を収容する少なくとも1つの巻き線ゾーン(106a、106b)と、冷却流路(10)を収容する少なくとも1つの流路ゾーン(107a、107b)とが設けられた本体内部(104)を区画し、
前記ステータ巻き線(6)は、前記絶縁物体(100)における少なくとも1つの前記巻き線ゾーン(106a、106b)に配置されると共に、前記冷却流路(10)は、前記絶縁物体(100)の少なくとも1つの前記流路ゾーン(107a、107b)に配置されており、
前記プラスチック(11)からなる熱移動層(112c)は、前記絶縁物体(100)と、前記外周方向(U)に隣接する2つの前記ステータ歯(8a、8b)を持つ前記ステータ本体(7)との間に配置され、
支持構造(120)は、2つの前記ステータ歯(8a、8b)若しくは前記中間スペース(9)と対向する前記ステータ本体(7)又はその両方における表面部に設けられており、
前記絶縁物体(100)の前記外壁(101b~101d)は、該外壁(101b~101d)が前記ステータ歯(8a、8b)から、若しくは前記ステータ本体(7)から、又はその両方から、それぞれ間隔をおいて配置されるように、前記支持構造(120)に支持され、
前記支持構造(120)は、前記ステータ歯(8a、8b)から、若しくは前記ステータ本体(7)から、又はその両方から、前記熱移動層(112c)にそれぞれ突き出し、前記外壁(101b~101d)に至る突き出し部(121)によって形成されている、電気機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械において、
前記絶縁物体(100)は、電気絶縁性のプラスチックからなる、少なくとも1つの分離壁(105a、105b、105c)を有し、
少なくとも1つの前記分離壁(105a、105b、105c)は、前記本体内部(104)を、少なくとも1つの前記巻き線ゾーン(106a、106b)と、少なくとも1つの前記流路ゾーン(107a、107b)とに、さらに分割することを特徴とする電気機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気機械において、
第1冷却流路(10)及び第2冷却流路(10)を収容する、2つの前記流路ゾーン(107a、107b)があり、
軸方向(a)に垂直な断面において、少なくとも1つの前記巻き線ゾーン(106a、106b)は、2つの前記流路ゾーン(107a、107b)の間に配置され、2つの分離壁(105a、105b)によって、前記流路ゾーン(107a、107b)から分離されていることを特徴とする電気機械。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気機械において、
2つの前記巻き線ゾーン(106a、106b)は、軸方向(a)に垂直な断面において、互いに隣接して配置されて設けられ、
前記巻き線ゾーン(106a、106b)は、プラスチック(11)により成り立つ位相絶縁(108)によって、互いに分離されていることを特徴とする電気機械。
【請求項5】
請求項4に記載の電気機械において、
前記位相絶縁(108)は、前記絶縁物体(100)からなる分離壁(105c)によって形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記絶縁物体(100)は、射出成形部品であり、
及び/又は前記絶縁物体(100)は、モノリシック体であり、
及び/又は前記絶縁物体(100)は、押し出し成形体であることを特徴とする電気機械。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記絶縁物体(100)は、前記電気機械(1)の前記軸方向(A)に垂直な断面にお
いて、前記中間スペース(9)における径方向の内側及び径方向の外側の各端部に配置された2つの前記流路ゾーン(107a、107b)を含み、
第1冷却流路は、第1流路ゾーン(107a)に形成され、第2冷却流路は、第2流路ゾーン(107b)に形成されることを特徴とする電気機械。
【請求項8】
請求項7に記載の電気機械において、
前記第1冷却流路(10)を持つ前記第1流路ゾーン(107a)は、前記中間スペース(9)における径方向内側端部(56a)に配置され、前記第2冷却流路(10)を持つ前記第2流路ゾーン(107b)は、前記中間スペース(9)における径方向外側端部(56b)に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記巻き線ゾーン(106a、106b)双方の前記巻き線ゾーン(106a、106b)は、前記ステータ(2)の径方向に沿って、2つの前記流路ゾーン(107a、107b)に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記絶縁物体(100)は、前記軸方向(A)に垂直な断面において互いに隣接して配置された2つの前記巻き線ゾーン(106a、106b)を含み、
2つの前記巻き線ゾーン(106a、106b)は、前記プラスチック(11)により成り立つ位相絶縁(108)によって互いに分離されていることを特徴とする電気機械。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記ステータ巻き線(6)は、分配巻き線の一部であることを特徴とする電気機械。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記ステータ巻き線(6)は、第1導体要素(60a)及び第2導体要素(60b)を含み、
前記第1導体要素(60a)は、第1巻き線ゾーン(106a)に配置され、且つ、電源の第1同位相との接続のために、互いに電気的に接続され、
前記第2導体要素(60b)は、第2巻き線ゾーン(106b)に配置され、且つ、前記電源の第2同位相との接続のために、互いに電気的に接続されることを特徴とする電気機械。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記プラスチック(11)からなる第1熱移動層(112a)は、前記ステータ巻き線(6)と前記絶縁物体(100)との間に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項14】
請求項13に記載の電気機械において、
前記第1熱移動層(112a)は、互いに隣接して配置された少なくとも2つの導体要素(60a、60b)の間にさらに存在することを特徴とする電気機械。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記プラスチック(11)からなる第2熱移動層(112b)は、前記冷却流路(10)と前記絶縁物体(100)との間に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電気機械において、
軸留め(109)は、絶縁物体(100)における4つの外壁(101a~101d)の軸端部(111)に形成され、
前記軸留め(109)は、外側に突き出す外周壁襟(110)の一部として又は全部として形成され、
前記外周壁襟(110)は、絶縁物体100における全4つの外壁(101a~101d)と一体に成形されることを特徴とする電気機械。
【請求項17】
請求項12~16のいずれか1項に記載の電気機械において、
第1導体要素(60a)は、径方向の内側の前記巻き線ゾーン(106a)に配置され、且つ、電源の第1同位相との接続のために互いに電気的に接続され、
第2導体要素(60b)は、径方向の外側の前記巻き線ゾーン(106b)に配置され、且つ、前記電源の第2同位相との接続のために互いに電気的に接続されることを特徴とする電気機械。
【請求項18】
請求項12~17のいずれか1項に記載の電気機械において、
第1導体要素(60a)は、位相絶縁(108)によって、第2導体要素(60b)と電気的に絶縁されていることを特徴とする電気機械。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の電気機械において、
さらなる冷却流路(10’)が、中間スペース(9)の径方向の内側に隣接するステータ本体(7)に形成され配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記冷却流路(10’)は、孔部又は貫通孔の形で実現されていることを特徴とする電気機械。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記突き出し部(121)は、前記ステータ歯(8a、8b)若しくはステータ本体(7)又はその両方に、それぞれ一体に形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の電気機械において、
第1熱移動層を構成する前記プラスチック(11)は電気絶縁性の第1プラスチック材料(K1)によって形成され、
第2熱移動層を構成する前記プラスチック(11)は電気絶縁性の第2プラスチック材料(K2)によって形成され、
第3熱移動層を構成する前記プラスチック(11)は電気絶縁性の第3プラスチック材料(K3)によって形成され、
前記絶縁物体(100)を構成する前記プラスチック(11)は、電気絶縁性の第4プラスチック材料(K4)によって形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項23】
請求項22に記載の電気機械において、
第1プラスチック材料(K1)、第2プラスチック材料(K2)、第3プラスチック材料(K3)及び第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも1つは、熱可塑性プラスチックであり、
前記第1プラスチック材料(K1)、前記第2プラスチック材料(K2)、前記第3プラスチック材料(K3)及び前記第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも1つは、熱硬化性プラスチックであることを特徴とする電気機械。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の電気機械において、
第1プラスチック材料(K1)、第2プラスチック材料(K2)、第3プラスチック材料(K3)及び第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも2つは、同一の熱伝導度を有し、
及び/又は前記第1プラスチック材料(K1)、前記第2プラスチック材料(K2)、前記第3プラスチック材料(K3)及び前記第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも2つは各々、異なる熱伝導度を有しており、
前記第1プラスチック材料(K1)、前記第2プラスチック材料(K2)、前記第3プラスチック材料(K3)及び前記第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも1つは、異なる熱伝導度を有していることを特徴とする電気機械。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか1項に記載の電気機械において、
第1プラスチック材料(K1)、第2プラスチック材料(K2)、第3プラスチック材料(K3)及び第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも2つは、同一の材料であり、
及び/又は前記第1プラスチック材料(K1)、前記第2プラスチック材料(K2)、前記第3プラスチック材料(K3)及び前記第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも1つは、異なる材料であることを特徴とする電気機械。
【請求項26】
請求項22~25のいずれか1項に記載の電気機械において、
記第1プラスチック材料(K1)、第2プラスチック材料(K2)、第3プラスチック材料(K3)及び第4プラスチック材料(K4)のうち少なくとも1つの熱伝導度は、少なくとも0.5W/mKあることを特徴とする電気機械。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1項に記載の電気機械(1)を備えている自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械に関し、特に、絶縁物体を含む自動車両のための電気機械に関する。本発明は、また、このような電気機械を含む自動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この型の電気機械は、一般に、電気モータ又は発電機であってもよい。この電気機械は、外部ロータ又は内部ロータとして実現されてもよい。
【0003】
一般的な型の電気機械は、例えば、以下の特許文献1に知られている。この電気機械は、内部を囲むハウジングを含み、該ハウジングは、その外周方向において、外周に延び、且つ、内部を径方向に限定するケースと、一方の軸方向で内部を軸方向に限定する後部側壁と、他方の軸方向で内部を軸方向に限定する前部側壁とを有する。該電気機械のステータは、ケースと固定して結合されている。該電気機械のロータはステータ内に配置され、ロータのロータ軸は、前部軸受によって前部側壁に回転可能に搭載されている。
【0004】
従来の電気機械のステータは、典型的には、該電気機械の作動中に電圧が印加されるステータ巻き線を含む。これには、過熱及びこれに関連する損傷、さらにはステータの破壊を避けるために、消失しなければならない熱が生じる。このため、従来の電気機械は、ステータを冷却する、特に上記ステータ巻き線を冷却する冷却装置を該電気機械に備える構成が知られている。このような冷却装置は、冷却剤を流通し、且つ、ステータ内のステータ巻き線の近傍、典型的にはステータスロット内、すなわち、ステータ巻き線をも収容するステータの外周方向に隣接する2つのステータ歯同士の間の中間スペースに配置された1つ又はそれ以上の冷却流路を含む。ステータ巻き線から冷却剤への熱の移動は、該熱のステータからの消失を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5214325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この場合、ステータから個々の冷却流路を流通する冷却剤への効率的な熱の移動は、看過できない構造的複雑さでしか実現され得ないということが不利であることを証明する。とはいえ、これは、電気機械における製造コストに不利な結果をもたらす。
【0007】
さらに、従来の電気機械の場合に、ステータ巻き線と冷却流路を流通する冷却剤との間、及びステータ巻き線とステータのステータ歯との間の望まない電気的短絡(以下、単に短絡と呼ぶ。)が、ある情況下で生じ得るということが問題となることを証明する。この情況とは、ステータ巻き線における巻き線の絶縁が、例えば製造により又は組み立て工程中に生じる損傷を受け、ステータ巻き線が中間スペースに導入された後に、該ステータ巻き線が、例えば組み立てにより、冷却流路、冷却剤又はステータ歯に触れる等の情況である。
【0008】
従って、本発明の目的は、この不利を大きく、さらには、完全に排除されるように、電気機械の改善された実施形態を提供することにある。特に、この目的は、ステータにおけるステータ巻き線の改善された冷却によって特徴付けられる電気機械のための、改善された実施形態を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項における主題によって達成される。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0010】
従って、電気機械のステータにおける2つのステータ歯同士の間の中間スペース(いわゆるステータスロット)に、予め製造された構造ユニット(プレハブユニット)として挿入され得る電気的絶縁物体を提供することが、本発明の基本的な概念である。該絶縁物体が中間スペース又はステータスロットに挿入された後に、ステータ巻き線が、該中間スペースに導入される。この場合、該絶縁物体がそこに存在することにより、第1に、個々の中間スペース内へのステータ巻き線の位置決めが容易となる。第2に、冷却流路と相対して、又は該電気機械の作動中に、すなわち特に熱の移動媒体として供給される、冷却流路を流通する冷却剤に相対し、ステータ巻き線に要求される電気絶縁性を確実とすることができる。この後者の手段により、ステータ巻き線によって生じる無駄な熱(以下、排熱と呼ぶ。)が、中間スペースに存在し且つ電気機械の作動中に流れる冷却剤が流通する冷却流路に、プラスチックを介して移動できる。この効果は、高熱伝導度を有する適当なプラスチックを選択することにより改善できる。プラスチックは、典型的には、電気絶縁特性を有するため、ステータ歯から電気的に絶縁された絶縁物体の内部に配置されたステータ巻き線が、付加的に可能となる。このように、ステータ巻き線の導体要素同士の望まない短絡が、巻き線の絶縁性が損傷を受けた場合でさえも排除される。
【0011】
本発明に係る電気機械は、該電気機械の軸方向を定義する回転軸に関して回転可能なロータと、導電性のステータ巻き線を有するステータとを含む。さらに、該電気機械は、ステータ巻き線を冷却する冷却剤が流通可能な少なくとも1つの冷却流路を含む。この場合、ステータは、軸方向に延びると共に、ロータの外周方向に沿って互いに間隔をおいて配置されたステータ歯を有する。上記ステータ歯は、ステータのステータ本体から、好ましくは径方向の内側に突き出し、且つ、ステータ巻き線を支える。中間スペースは、各々の場合、外周方向に隣接する2つのステータ歯同士の間に形成される。本発明によると、絶縁物体は、少なくとも1つの中間スペースに配置され又は収容される。このような絶縁物体は、ステータの複数の中間スペースに配置されることが好ましく、全ての中間スペースに配置されることが、とりわけ好ましい。上記絶縁物体は、その本体内部を部分的に区画するプラスチックからなる外壁を含む。好ましくは、該プラスチックは、電気絶縁性を持つように実現される。さらに、該プラスチックも熱の移動に用いられてもよい。ステータ巻き線を収容する少なくとも1つの巻き線ゾーンと、冷却流路を収容する少なくとも1つの流路ゾーンとが、絶縁物体の本体内部に存在する。本発明によると、ステータ巻き線は、絶縁物体における少なくとも1つの巻き線ゾーンに配置される。同様に、冷却剤を流通する冷却流路は、絶縁物体における少なくとも1つの流路ゾーンに配置される。
【0012】
好ましい一実施形態において、絶縁物体は、プラスチックからなる、好ましくは電気絶縁性プラスチックからなる、少なくとも1つの分離壁を有する。この少なくとも1つの分離壁は、絶縁物体の本体内部を、少なくとも1つの巻き線ゾーンと、少なくとも1つの流路ゾーンとに分ける。絶縁物体が、ステータスロットに搭載された後であって、ステータの組み立て工程中に、ステータ巻き線は、絶縁物体の巻き線ゾーンに配置され、冷却流路は、絶縁物体の流路ゾーンに配置される。従って、このように、ステータ巻き線の絶縁性が損傷した場合でさえ、該ステータ巻き線と冷却剤を伴う冷却流路との望まない短絡が排除される。
【0013】
さらに好ましい一展開において、第1冷却流路及び第2冷却流路を収容する2つの流路ゾーンは、絶縁物体の本体内部に設けられる。この展開において、少なくとも1つの巻き線ゾーンは、(軸方向に垂直な断面において)2つの流路ゾーン同士の間に配置されており、且つ、2つの分離壁によって、これら2つの流路ゾーンから分離される。このようなステータ巻き線の2つの冷却流路と関連する幾何学的配置は、ステータ巻き線から両側の冷却流路への排熱の移動を可能にする。このように、ステータ巻き線における、特に集中的な冷却が達成される。
【0014】
さらに有利な一展開において、ただ1つの巻き線ゾーンでなく、2つの巻き線ゾーンが設けられる。この2つの巻き線ゾーンは、軸方向に垂直な断面において互いに隣接して配置される。この有利な展開において、巻き線ゾーンは、プラスチックにより成り立つ位相絶縁によって互いに分離される。このように、2つの異なる巻き線ゾーンに配置された導体要素同士の間の望まない短絡が排除される。これは、分離壁の材料として電気絶縁性プラスチックが選択される場合に、特に当てはまる。これは、互いに電気的に絶縁されるように、電源の異なる電気的位相と接続され得る2つの巻き線ゾーンへの導体要素の配置を可能にする。これは、例えば、該電気機械が二位相マシンとして操作される可能性がある場合に必要となる。
【0015】
好都合に、上記位相絶縁は、絶縁物体のさらなる分離壁によって形成されてもよい。上記分離壁は、絶縁物体の外壁の上に一様な材料により、さらには一体にさえ形成されることが、特に好ましい。この変形は、とりわけ低い製造費用を伴う。
【0016】
好ましい一実施形態において、外壁及び少なくとも1つの分離壁は、軸方向に延びる。この実施形態において、少なくとも1つの巻き線ゾーン及び少なくとも1つの流路ゾーンは、軸方向に垂直な断面において互いに隣接して配置される。これは、ステータ巻き線と該ステータ巻き線を冷却する冷却流路とが、互いに直接に隣接して配置することを可能とする。このように、ステータ巻き線から冷却流路への、特に効果的な熱の移動が達成される。同時に、ステータ巻き線と冷却流路との間の望ましい電気的絶縁が、この分離壁によって確実となる。
【0017】
好都合に、絶縁物体は、平行六面体形状であってもよい。軸方向に垂直な断面において、絶縁物体は、同様に好都合に、不等辺四辺形状、好ましくは長方形状であってもよい。この手段により、絶縁物体は、該電気機械におけるステータの組み立て工程中に、絶縁物体が挿入されるステータスロットの形状と、典型的には一致する形状に設けられる。種々の変形において、他の形状も考えられる。すなわち、このような代替の形状の場合に、後者の形状が、特に好ましくは、絶縁物体が挿入されるステータスロットに関連する形状と実質的に一致することに該当する。
【0018】
他の有利な展開において、軸留めは、軸方向に関して少なくとも1つの外壁上の、絶縁物体における軸端部に形成されてもよい。このような軸留めは、軸方向に沿って個々の中間スペースへの絶縁物体の挿入を容易にする。特に、中間スペース内の絶縁物体における正しい軸の位置決めが確実となる。
【0019】
特に好ましい一展開において、軸留めは、技術的に簡単な方法で実現できるため、外側に突き出す壁襟形状として形成されてもよい。該軸留めは、絶縁物体の少なくとも1つの外壁の上に、好ましくは一体として形成される。この実施形態は、とりわけ低い製造費用に結び付く。
【0020】
有利な一実施形態において、空間構造は、外壁が電気機械のステータにおけるステータスロット内に所定の間隔で挿入可能なことにより、少なくとも2つの外壁の上に設けられる。このように、絶縁物体の、ステータスロットを形成する個々の中間スペースへの挿入が容易となる。従って、絶縁物体は、特に中間スペース内に、とりわけ正確に位置決めされる。外壁と、ステータ歯若しくはステータ本体又はその両方(「ステータ歯及び/又はステータ本体」と同義。)との間の空隙、すなわち、2つのステータ歯から、若しくはステータ本体から、又はその両方から、間隔をおいて配置された絶縁物体によって生じる空隙の可能性は、冷却流路を流通する冷却剤への熱の移動を容易にする、プラスチックからなる熱移動層によって充填されてもよい。
【0021】
特に好ましくは、上記空間構造は、本体内部から離れるように、個々の外壁の外側に配置される突き出し部によって形成される。この実施形態は、その実現が技術的に極めて容易であり、製造中の有利な費用に結び付く。
【0022】
有利な一展開において、上記突き出し部は、外壁の上に一体に形成されてもよい。この実施形態は、また、とりわけ費用効果があることを証明する。
【0023】
好都合に、絶縁物体は、射出成形部品であってもよい。このような射出成形部品は、技術的に製造を簡単に行え、従って、顕著な費用効果で特に大量に製造し得る。これに替えて又はこれに加えて、絶縁物体は、モノリシック体であってもよい。同様に、これにより製造費用に有利な効果がもたらされる。これに替えて又はこれに加えて、絶縁物体は、押し出し成形体であってもよい。
【0024】
好ましい一実施形態において、絶縁物体は中間スペースに挿入される。このような、絶縁物体の中間スペースへの挿入は、個々の中間スペースへの、予め製造された絶縁物体の搭載を簡単化し、従って、該電気機械のステータの組み立てを簡単化する。
【0025】
好都合に、絶縁物体の軸方向は、該電気機械の軸方向に平行に延びる。
【0026】
特に好都合には、中間スペースに配置された絶縁物体は、該電気機械の軸方向に沿って計られた、中間スペースの全長にわたって延びる。
【0027】
特に好ましくは、絶縁物体は、軸方向に垂直な断面において、中間スペースにおける径方向の内側及び径方向の外側の各端部に配置された2つの流路ゾーンを含む。この変形において、第1冷却流路は第1流路ゾーンに配置され、第2冷却流路は第2流路ゾーンに配置される。このように、多数の導体要素を持つステータ巻き線を収容するのに十分な構造スペースが、2つの流路ゾーン同士の間又は上記端部同士の間の一領域に利用できる。同時に、これらステータ巻き線の効果的な冷却が、2つの冷却流路によって確実となる。
【0028】
好都合に、第1冷却流路を持つ第1流路ゾーンは、中間スペースにおける径方向の内側の端部に配置されてもよく、第2冷却流路を持つ第2流路ゾーンは、中間スペースにおける径方向の外側の端部に配置されてもよい。径方向に関し、ステータ巻き線は、2つの冷却流路同士の間に配置され、その結果、ステータ巻き線から2つの冷却流路に流通する冷却剤への効果的な熱の移動が可能となる。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つの巻き線ゾーンは、2つの流路ゾーン同士の間のステータの径方向に沿って配置されている。特に好ましくは、双方の巻き線ゾーン、すなわち、第1巻き線ゾーン及び第2巻き線ゾーンは、径方向に沿って、好ましくは2つの流路ゾーンの間で互いに直接に続いて配置される。従って、この変形において、第1流路ゾーン、第1巻き線ゾーン、第2巻き線ゾーン及び第2流路ゾーンは、径方向の内側から径方向の外側に互いに続いて配置される。
【0030】
さらに有利な一展開において、絶縁物体は、軸方向に垂直な断面において互いに隣接して配置された2つの巻き線ゾーンを含む。この展開において、2つの巻き線ゾーンは、プラスチックにより成り立つ位相絶縁によって互いに分離される。これにより、中間スペース内に設けられたステータ巻き線の導体要素の、電源の異なる電気的位相と接続されようとする2つの巻き線ゾーンへの配置が可能となる。これは、該電気機械が二位相マシンとして操作されようとする場合に要求される。
【0031】
他の好ましい実施形態において、ステータ巻き線は、分配巻き線の一部である。この変形において、絶縁物体は、径方向の内側に、すなわち、中間スペースの開口部又はステータスロットの開口部に向かって開放されるように形成されている。このため、絶縁物体と対応する外壁を省略することができる。
【0032】
有利な一展開において、ステータ巻き線は、第1導体要素及び第2導体要素を含む。この展開において、第1導体要素は、第1巻き線ゾーンに配置され、且つ、電源の第1同位相との接続のために、互いに電気的に接続される。類似的に、この展開において、第2導体要素は、第2巻き線ゾーンに配置され、且つ、電源の第2同位相との接続のために、互いに電気的に接続される。これにより、操作上の高い信頼性を持つ二位相電気機械として、該電気機械を操作することが可能となる。
【0033】
特に好ましくは、軸方向に垂直な断面において、中間スペースに配置されたステータ巻き線における、少なくとも1つの、第1導体要素若しくは第2導体要素又はその両方は、プラスチックによって囲まれている。このことをステータ巻き線における全ての第1導体要素若しくは第2導体要素又はその両方に当てはめることが、とりわけ好ましい。このようにして、ステータ巻き線の、冷却流路を流通する冷却剤との望まない短絡を生じないことが確実となる。
【0034】
好都合に、第1導体要素若しくは第2導体要素又はその両方は、導電性材料からなる巻き線バーとして形成されてもよい。特に好ましくは、これらの導体要素は、機械的な剛体によって形成されており、巻き線バーとしての導体要素のこのような形態、特に機械的な剛体材料からなる構成は、該電気機械の組み立て中のステータにおける中間スペースに配置された絶縁物体への、該導体要素の導入を容易にする。
【0035】
さらに好ましい実施形態は、軸方向に垂直な断面において、2つの幅狭面及び2つの幅広面を持つ長方形状を有する少なくとも1つ、好ましくは全ての巻き線バーが、特にその構造的スペースが省スペース化であることを証明する。
【0036】
特に好ましくは、第1導体要素は、位相絶縁によって第2導体要素と電気的に絶縁されている。これにより、電源の異なる電気的位相と接続される、又は接続されようとする2つの導体要素同士の望まない短絡が避けられる。
【0037】
さらに有利な一展開において、プラスチックからなる第1熱移動層は、ステータ巻き線と絶縁物体との間に配置される。このようにして、ステータ巻き線からの熱の消失が改善される。特に、ステータ巻き線からの熱の消失を減じる空孔又は混入空気を含む、望まない構成を避けることができる。
【0038】
さらに、第1熱移動層は、少なくとも2つの隣接する導体要素同士の間に配置されてもよい。このようにして、2つの隣接する導体要素同士の望まない短絡を防ぐことができる。
【0039】
さらに好ましい一実施形態において、プラスチックからなる第2熱移動層は、冷却流路と絶縁物体との間に配置される。これにより、冷却流路又は該冷却流路を流通する冷却剤への熱の移動が改善される。特に、冷却流路に対して熱の移動を減少させる空孔又は混入空気の望まない形成を避けることができる。
【0040】
第1熱移動層若しくは第2熱移動層又はその両方に替えて、又はこれに加えて、プラスチックからなる第3熱移動層は、絶縁物体と2つの隣接するステータ歯を有するステータ本体との間に配置されてもよい。このようにして、ステータ歯からの又はステータ本体からの熱の消失が改善される。特に、ステータ巻歯からの又はステータ本体からの熱の移動を減少させる空孔又は混入空気を含む、望まない構成を避けることができる。
【0041】
好都合に、第1導体要素は径方向の内側の巻き線ゾーンに配置されてもよく、電源の第1同位相との接続のために、互いに電気的に接続されてもよい。この変形において、第2導体要素は径方向の外側の巻き線ゾーンに配置されてもよく、電源の第2同位相との接続のために、互いに電気的に接続されてもよい。この変形により、小さい構造的スペースしか要求されない二位相マシンとして、該電気機械を実現又は操作できる。特に、ステータ巻き線の極めて多くの導体要素が、該電気機械の性能を向上する、個々の中間スペースに、このように配置されてもよい。
【0042】
さらに好ましい一実施形態において、少なくとも1つの第1導体要素若しくは第2導体要素又はその両方、好ましくは、全ての第1導体要素若しくは第2導体要素又はその両方は、軸方向に垂直な断面において、プラスチックによって囲まれる。このように、導体要素の電気的絶縁は、特に冷却流路に対してさらに改善される。
【0043】
好都合に、絶縁物体の空間構造は、ステータ歯に支持されてもよく、これに替えて又はこれに加えて、ステータ本体に支持されてもよい。このように、絶縁物体は、中間スペースに機械的に安定して固定される。
【0044】
さらに有利な一展開において、支持構造が、中間スペースと対向する2つのステータ歯若しくはステータ本体又はその両方の表面部に設けられてもよい。このとき、絶縁物体の外壁は、上記支持構造に支持される。これにより、上記外壁は、ステータ歯若しくはステータ本体又はその両方から間隔をおいてそれぞれ配置される。従って、ステータスロットを形成する個々の中間スペースに絶縁物体を挿入することは容易である。特に絶縁物体は、このように、中間スペース内に極めて正確に位置決めされ得る。従って、外壁とステータ歯若しくはステータ本体又はその両方との間の空孔又は混入空気における、該空孔又は混入空気は、2つのステータ歯から若しくはステータ本体から又はその両方から間隔をおいて配置された絶縁物体によって生じる可能性がある空孔又は混入空気は、プラスチックからなる熱移動層によって充填されてもよい。これにより、該電気機械の作動中にステータ歯及びステータ本体に生じる熱の、冷却流路を流通する冷却剤への改善された移動が、結果として生じる。
【0045】
好都合に、該支持構造は、ステータ歯から若しくはステータ本体から又はその両方から、中間スペースにそれぞれ突き出す突き出し部によって形成される。この実施形態は、技術的に極めて容易に実行され、従って、製造時において費用的な有利を伴う。
【0046】
有利な一展開において、該突き出し部は、ステータ歯若しくはステータ本体又はその両方にそれぞれ一体に形成される。この実施形態は、特に費用効果を証明する。
【0047】
他の好ましい実施形態において、付加的な冷却流路が、ステータ本体に、特に、中間スペースを区画する2つのステータ歯同士の間のステータ本体の一領域に形成される。このような付加的な冷却流路は、例えば、個々のステータ本体の貫通孔の形に又は孔部の形に実施されてもよい。特に好ましくは、付加的な冷却流路は、径方向の外側の中間スペースを区画すると共に、上記中間スペースから径方向の内側の中間スペースと隣接するステータ本体の一領域に配置される。このように、中間スペースにおける付加的な冷却効果は、上記中間スペースに配置されたステータ巻き線からの改善された熱の消失と関連して生じさせ得る。
【0048】
他の好ましい実施形態において、第1熱移動層を構成するプラスチックは、好ましくは電気絶縁性の第1プラスチック材料によって形成される。これに替えて又はこれに加えて、この実施形態において、第2熱移動層を構成するプラスチックは、好ましくは電気絶縁性の第2プラスチック材料によって形成されてもよい。これに替えて又はこれに加えて、この実施形態において、第3熱移動層を構成するプラスチックは、好ましくは電気絶縁性の第3プラスチック材料によって形成されてもよい。これに替えて又はこれに加えて、この実施形態において、絶縁物体を構成するプラスチックは、特に該絶縁物体の外壁を構成するプラスチックは、好ましくは電気絶縁性の第4プラスチック材料によって形成されてもよい。
【0049】
好都合に、第1プラスチック材料、第2プラスチック材料、第3プラスチック材料及び第4プラスチック材料のうち少なくとも1つの材料は、熱可塑性であってもよい。これに替えて又はこれに加えて、第1プラスチック材料、第2プラスチック材料、第3プラスチック材料及び第4プラスチック材料のうち少なくとも1つの材料は、熱硬化性であってもよい。この場合、熱硬化性プラスチック及び熱可塑性プラスチックの双方の熱伝導度は、材料組成の選択によって設定可能である。従って、熱可塑性プラスチックの熱伝導度は、熱硬化性プラスチック等の熱伝導度よりも大きいか等しく、この逆も同じである。熱可塑性プラスチックの使用は、熱硬化性プラスチックの使用に関して種々の有利さを持つ。例として、熱可塑性プラスチックは、その処理中に可逆の成形過程の適用によって、熱硬化性プラスチックと比べて、より良い再生利用可能性を示し、また、低脆弱性及び改善された減衰特性を有する。しかしながら、熱可塑性プラスチックは、通常、熱硬化性プラスチックよりも製造において高価であるので、熱可塑性プラスチックの選択的な使用が推奨される。熱の移動に関して重大でないとみなされる、これらの分野に設定され、低減された熱伝導度を持つ熱硬化性プラスチックの使用は、該電気機械の製造費用の低減をもたらす。
【0050】
好都合に、第1プラスチック材料、第2プラスチック材料、第3プラスチック材料及び第4プラスチック材料のうち少なくとも2つは、同一の熱伝導度を有する。これに替えて又はこれに加えて、第1プラスチック材料、第2プラスチック材料、第3プラスチック材料及び第4プラスチック材料のうち少なくとも1つは、異なる熱伝導度を有してもよい。
【0051】
好都合に、第1プラスチック材料、第2プラスチック材料、第3プラスチック材料及び第4プラスチック材料のうち少なくとも2つは、同一の材料であってもよい。しかしながら、また、第1プラスチック材料、第2プラスチック材料、第3プラスチック材料及び第4プラスチック材料のうち少なくとも1つは、異なる材料であってもよい。
【0052】
好都合に、該プラスチックの熱伝導度、特に、第1プラスチック材料、第2プラスチック材料、第3プラスチック材料及び第4プラスチック材料のうち少なくとも1つの熱伝導度は、少なくとも0.5W/mK、好ましくは、少なくとも1W/mKであってもよい。
【0053】
特に好ましい一実施形態において、ステータ巻き線は、分配巻き線の一部である。
【0054】
本発明は、また、上述した電気機械を有する自動車両にも関する。従って、上述した該電気機械の効果は、本発明に係る自動車両にも適用することが可能である。
【0055】
本発明のさらなる重要な特徴及び効果は、従属請求項から、図面から、及び該図面に基づいた関連する図の記述から明白である。
【0056】
上述した特徴及び以下に説明する特徴は、個々に示された組み合わせに用いるだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせ又はそれぞれ単独で使用できないことは言うまでもない。
【0057】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、図面に例示されており、また、以下の記述に、さらに詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は本発明に係る絶縁物体の一例示を示す等角投影図である。
図2図2図1の絶縁物体を示す断面図である。
図3図3図1及び図2の絶縁物体を有する、本発明に係る電気機械の一例を示す断面図である。
図4図4図3に従った電気機械におけるステータの、ロータの回転軸に垂直な方向の断面図である。
図5図5図4のステータの詳細構成であって、外周方向に隣接する2つのステータ歯同士の間の中間スペースの一領域を示す断面図である。
図6図6図5の例示の一変形を示す断面図である。
図7図7図5の例示の他の変形を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1及び図2は、電気機械のステータのための、プラスチック11からなり、本発明に係る絶縁物体100の一例を示している。好都合に、絶縁物体100は射出成形部品である。さらに、絶縁物体100は、モノリシック体であってもよく、これに代えて又はこれに加えて、押し出し成形体であってもよい。
【0060】
図1は絶縁物体100の等角投影表示を示し、図2は断面表示を示す。絶縁物体100は、その本体内部104を区画する。図1において、絶縁物体100は平行六面体形状を有する。この平行六面体形状は、プラスチック11からなる4つの外壁101a、101b、101c及び101dによって形成されている。この4つの外壁101a~101dは、軸方向aに沿って延びる。図2に示すように、軸方向aに垂直な断面において、外壁101a~101dは、2つの幅狭面102a、102bと、2つの幅広面103a、103bとを形成する。2つの幅狭面102a、102bは互いに対向する。類似的に、2つの幅広面103a、103bは互いに対向する。2つの幅狭面102a、102bは、2つの幅広面103a、103bに対して直交して配置されることが好ましい。
【0061】
図1及び図2に示すように、本体内部104は、同様に軸方向aに沿って延びる、プラスチック11からなる分離壁105a、105b及び105cによって、第1巻き線ゾーン106a及び第2巻き線ゾーン106bと、第1流路ゾーン107a及び第2流路ゾーン107bとに分けられている。従って、第1分離壁105aは、第1巻き線ゾーン106aと第1流路ゾーン107aとの間に配置される。第2分離壁105bは、第2巻き線ゾーン106bと第2流路ゾーン107bとの間に配置される。
【0062】
第3分離壁105cは、第1巻き線ゾーン106aと第2巻き線ゾーン106bとの間に配置される。図2に示す断面において、3つの分離壁105a、105b及び105cは、各々の場合に、互いに平行に延び、さらに、外壁101a、101bに平行に延びる。従って、3つの分離壁105a、105b及び105cは、2つの外壁101c、101dに対して直交して延びる。
【0063】
2つの流路ゾーン107a、107bは、第1冷却流路及び第2冷却流路(図1及び図2に図示せず。)を個々に収容するために使える。類似的に、2つの巻き線ゾーン106a、106bは、ステータ巻き線を構成する導体要素(図1及び図2に図示せず。)を収容するために使える。
【0064】
図1及び図2から明らかなように、2つの巻き線ゾーン106a、106bは、互いに、すぐ次に隣接して配置されている。2つの巻き線ゾーン106a、106bは、さらに、2つの流路ゾーン107a、107bの間に配置されている。また、2つの巻き線ゾーン106a、106bは、プラスチック11により成り立つ位相絶縁108によって、互いに電気的に絶縁され且つ空間的に分離されている。該位相絶縁108は、既に存在する分離壁105cによって形成されている。
【0065】
図1によると、軸留め109は、絶縁物体100における4つの外壁101a~101dの軸端部111に形成されてもよい。
【0066】
軸留め109は、外側に突き出す外周壁襟110の一部として又は全部として形成されてもよい。外周壁襟110は、絶縁物体100における全4つの外壁101a~101dと一体に成形される。
【0067】
上記に示した絶縁物体100を含む電気機械1を、図3及び図4に基づいて説明する。該電気機械1は、車両、好ましくは路上走行車に用いられるような寸法を持つ。図3は長軸断面の電気機械1を示し、図4はその断面を示す。
【0068】
電気機械1は、図3にかなり概略的に示されるに過ぎないロータ3を含み、且つ、ステータ2を含む。明瞭にするために、図4は、図3の別図として断面線II-IIに沿うと共に、回転軸Dに対して垂直な断面に示されたステータ2を示している。図3において、ロータ3は、ロータ軸31を含み、図3にはより詳細には示されない、その磁気分極が外周方向Uに沿って交替する複数の磁石を含んでいてもよい。ロータ3は、回転軸Dに関して回転可能であり、該回転軸Dの位置は、ロータ軸31の中心長軸Mによって決定される。この回転軸Dは、該回転軸Dに対して平行に延びる軸方向Aを定義する。径方向Rは、軸方向Aに対して垂直である。外周方向Uは、回転軸Dに関して回転する。
【0069】
図3から認められるように、ロータ3は、ステータ2の中に配置されている。従って、ここに示される電気機械1は、いわゆる内部ロータである。しかしながら、該ロータ3がステータ2の外側に配置される場合、いわゆる外部ロータとしての実現も考えられる。ロータ軸31は、第1軸受32aと該第1軸受32aから軸方向に間隔をおいた第2軸受32bとに、ステータ2の回転軸Dに関して回転可能に搭載されている。
【0070】
その上、公知のように、ステータ2は、磁場を生成するために電圧を印加される複数のステータ巻き線6を含む。ロータ3の磁石によって生成される磁場と、導電性のステータ巻き線6によって生成される磁場との磁気相互作用が、ロータ3を回転させる。
【0071】
図4の断面は、ステータ2が、例えば鉄からなるリング状のステータ本体7を有してもよいことを示している。特に、ステータ本体7は、複数のステータ本体プレート(図示せず。)から形成されてもよい。このステータ本体プレートは、軸方向Aに沿って互いに積層され、且つ、互いに接着されている。複数のステータ歯8が、径方向の内側にステータ本体7と一体に形成されている。複数のステータ歯8は、軸方向Aに沿って延びると共に、ステータ本体7から径方向の内側に突き出し、且つ、外周方向Uに沿って互いに間隔をおいて配置される。各々のステータ歯8はステータ巻き線6を支持する。個々のステータ巻き線6は、共に巻き線の配置をなす。このステータ巻き線6によって形成される磁極の個数に依って、全てのステータ巻き線配置の個々のステータ巻き線6は、共に相応じて電気的に接続されてもよい。
【0072】
電気機械1の作動中に、電圧が印加されるステータ巻き線6は、過熱及びこれによる損傷、さらには、該電気機械1の破壊を防ぐために、該電気機械1から消失されなければならない排熱が発生する。このため、ステータ巻き線6は、ステータ2を通過し、且つ、熱の移動によって該ステータ巻き線6に生じる排熱を吸収する冷却剤Kの助力によって冷却される。
【0073】
ステータ2に冷却剤Kを通すために、電気機械1は、冷却剤Kが冷却剤入口33を介して導入される冷却剤分配スペース4を含む。該冷却剤分配スペース4から軸方向Aに間隔をおいて、冷却剤収集スペース5が配置されている。冷却剤分配スペース4は、複数の冷却流路10によって冷却剤収集スペース5と流体的に連通する。該冷却流路10は、図3の表示から、そのうちの1つに過ぎないことが認められる。図示はしていないが、軸方向Aに垂直な断面において、冷却剤分配スペース4及び冷却剤収集スペース5は、各々リング状を有していてもよい。外周方向Uに沿って、複数の冷却流路10は、互いに間隔をおいて配置されている。各々の場合、冷却流路10は、リング状の冷却剤分配スペース4からリング状の冷却剤収集スペース5に軸方向Aに沿って延びる。従って、冷却剤入口33を介して冷却剤分配スペース4に導入される冷却剤Kは、個々の冷却流路10の中に分配されてもよい。冷却流路10を流通し、ステータ巻き線6から熱を吸収した後、冷却剤Kは、冷却剤収集スペース5に収集され、且つ、ステータ2に設けられた冷却剤出口34を介して、再度、電気機械1から外部に導かれる。
【0074】
図3及び図4から明らかなように、中間スペース9は、各々の場合に、外周方向Uに隣接する2つのステータ歯8同士の間に形成される。上記中間スペース9は、ステータ歯8とまさに同様に軸方向Aに延びる、いわゆる「ステータスロット」又は「ステータ溝」としても当業関係者に知られている。各中間スペース9には、ステータ巻き線6及び冷却流路10を収容する、プラスチック11からなる絶縁物体100が挿入されている。この場合、絶縁物体100は、その軸方向aが、該電気機械1の、すなわちステータ2の軸方向Aに平行に延びるように、個々の中間スペース9に配置されている。
【0075】
好都合に、個々の中間スペース9に配置された絶縁物体100は、該電気機械1の軸方向Aに沿って計られた中間スペースの全長lに沿って延びる(これに関して図3も参照)。
【0076】
以下に、図5の例示を説明する。すなわち、外周方向Uに隣接する2つのステータ歯8(以下の記述では、ステータ歯8a、8bとしても参照する。)同士の間に具体化された中間スペース9の詳細な例示を示す。図5は軸方向Aに垂直な断面における中間スペース9を示す。
【0077】
図5において、中間スペース9は、径方向の内側に開口部52を有している。すなわち、中間スペース9は、径方向の内側が開放されるように形成されている。中間スペース9は、軸方向Aに垂直な断面において、不等辺四辺形状、特に長方形状を有していてもよい。上記断面において、上記の四辺形状は、絶縁物体100の断面形状に適用する。特に好都合には、中間スペース9及び絶縁物体100は、同一の形状又は外形を有する。図5の例において、第1冷却流路10は、中間スペース9又はステータスロット54における径方向内側端部56aの一領域、すなわち開口部52の一領域に配置される。さらに、第2冷却流路10は、中間スペース9における径方向外側端部56bの一領域、すなわち中間スペース9の径方向の外側を限定するステータ本体7の近傍に配置される。
【0078】
図5から明らかなように、中間スペース9に又は本体内部104に配置されたステータ巻き線6は、第1導体要素60a及び第2導体要素60bを含む。第1導体要素60aは、絶縁物体100の第1巻き線ゾーン106aに配置され、且つ、電源(図示せず。)の第1同位相と接続するために、互いに電気的に接続されてもよい。この電気的接続は、中間スペース9又はステータスロット54の軸方向の外側に実施されてもよい。第2導体要素60bは、絶縁物体100の第2巻き線ゾーン106bに配置され、且つ、電源の第2同位相と接続するために、互いに電気的に接続されてもよい。この電気的接続は、また、中間スペース9又はステータスロット54の軸方向の外側に実施されてもよい。従って、第1導体要素60aは、位相絶縁108によって第2導体要素60bから電気的に絶縁される。
【0079】
図5に示すように、第1導体要素60a及び第2導体要素60bは、各々の場合、導電性材料からなる巻き線バー65a、65bとして構成され、その形状がバー状のゆえに、機械的にも剛体に構成される。軸方向Aに垂直な断面において、巻き線バー65a、65bは、各々、2つの幅狭面67及び2つの幅広面68を持つ長方形状66を有する。
【0080】
第1冷却流路10を持つ第1流路ゾーン107aは、径方向Rに関し、中間スペース9における径方向内側端部56aに配置される。これに応じて、第2冷却流路10を持つ第2流路ゾーン107bは、径方向Rに関し、中間スペース9における径方向外側端部56bに配置される。このように、径方向Rに沿った2つの巻き線ゾーン106a、106bは、2つの流路ゾーン107a、107bの間に配置される。従って、第1導体要素60aを持つ第1巻き線ゾーン106aは、径方向の内側から径方向の外側に径方向Rに沿って、第1冷却流路10を持つ第1流路ゾーン107aに続く。この第1巻き線ゾーン106aには、第2導体要素60bを持つ第2巻き線ゾーン106bが続く。今度は、第2巻き線ゾーン106bには、第2冷却流路10を持つ第2流路ゾーン107bが径方向Rに沿って続く。
【0081】
さらに図5から分かるように、プラスチック11からなる第1熱移動層112aは、軸方向Aに垂直な断面において、ステータ巻き線6における第1導体要素60a若しくは第2導体要素60b又はその両方と絶縁物体100との間に配置されてもよい。図5に示すように、また、第1熱移動層112aは、2つの導体要素60a、60bの間に配置されてもよい。好ましくは、全ての第1導体要素60a及び第2導体要素60bは、軸方向Aに垂直な断面において、プラスチック11によって囲まれる。
【0082】
第1熱移動層112aに替えて又はこれに加えて、プラスチック11からなる(第2)熱移動層112bは、軸方向Aに垂直な断面において、個々の冷却流路10と絶縁物体100との間に配置されてもよい。
【0083】
さらに図5から明らかなように、空間構造113は、絶縁物体100の外壁101b、101c及び101dが、ステータ歯8a、8b若しくはステータ本体7又はその両方から間隔をおいた中間スペース9に配置されることによって、外壁101b、101c及び101dに形成されている。空間構造113は、絶縁物体100の本体内部104から外側を向く、個々の外壁101b、101c及び101dの外側面に配置される突き出し部114によって、好都合に形成されている。特に好都合には、突き出し部114は、個々の外壁101b、101c及び101dに一体に形成されてもよい。このように、空間構造113は、ステータ歯8a、8bに、及びステータ本体7に支持される。本例示の簡単化された変形においては、空間構造113はなくてもよい。
【0084】
外壁101b、101c及び101dと、ステータ歯8若しくはステータ本体7又はその両方との間に生じる空隙は、プラスチック11からなる第3熱移動層112cによって充填されてもよい。第1熱移動層112a若しくは第2熱移動層112b又はその両方の代替手段又は付加的手段である、プラスチック11からなる第3熱移動層112cは、軸方向Aに垂直な断面において、絶縁物体100と、2つの隣接するステータ歯8a、8bを有するステータ本体7との間に配置されてもよい。
【0085】
図5に破線で示されるように、さらなる冷却流路10’が、中間スペース9の径方向の内側に隣接するステータ本体7に形成され配置されてもよい。このような付加的な冷却流路10’は、孔部又は貫通孔の形で実現されてもよい。
【0086】
図6図5に係る例示の一変形を示している。以下に、2つの変形の相違点のみを説明する。図6において、支持構造120は、中間スペース9と対向する2つのステータ歯8a、8bの表面部及びステータ本体7の表面部に形成されてもよい。この支持構造120によって、絶縁物体100の外壁101b、101c及び101dが支持され得る。絶縁物体110の空間構造113と類似するように、支持構造120は、中間スペース9において、ステータ歯8a、8bから若しくはステータ本体7から又はその両方から突き出す突き出し部121によって形成されてもよい。支持構造120の突き出し部121は、2つのステータ歯8a、8b若しくはステータ本体7又はその両方に一体に形成されてもよい。
【0087】
図7は、図5に係る例示のさらなる一変形を示している。以下には、2つの変形の相違点のみを説明する。図7の例示において、絶縁物体100は、軸方向a、Aに垂直な断面において、各々、2つの隣接する外壁101a、101b、101c及び101dの間の直角でない内角を持つ四辺形状を有している。さらに、可撓性導体要素60cを有するステータ巻き線6は、巻き線ゾーン106aにのみ配置されている。図7の例示において、2つの冷却流路10は、中間スペース9の径方向内側端部56aに配置された第1冷却流路10と、中間スペース9の径方向外側端部56bに配置された第2冷却流路10とに設けられている。従って、第1流路10を持つ絶縁物体100の第1流路ゾーン107aは、径方向内側端部56aの一領域に配置される。これに応じて、第2流路10を持つ第2流路ゾーン107bは、中間スペース9における径方向外側端部56bの一領域に配置される。図7の変形において、絶縁物体100は、径方向の内側に向かって、すなわち中間スペース9又はステータスロット54の開口部52に向かって開放されて形成されている。この手段により、絶縁物体100の外壁101aが省略される。
【0088】
図7から明らかなように、分離壁105bは、巻き線ゾーン106aと第2流路ゾーン107bとの間にのみ設けられている。これと対照的に、このような分離壁は、巻き線ゾーン106aと第1流路ゾーン107aとの間には設けられていない。一変形において、このような分離壁は、巻き線ゾーン106aと第1流路ゾーン107aとの間にも設けてもよい。これに応じて、図7に示される分離壁105bは、さらなる変形においては、なくてもよい。さらなる組み合わせの可能性は、関係する当業者にとって図7から直ちに明白であり、従って、正確に説明することなく具現化される。
【0089】
例示のシナリオにおいて、第1熱移動層112aを構成するプラスチック11は、電気絶縁性第1プラスチック材料K1によって形成され、第2熱移動層112bを構成するプラスチック11は、電気絶縁性第2プラスチック材料K2によって形成され、また、第3熱移動層112cを構成するプラスチック11は、電気絶縁性第3プラスチック材料K3によって形成される。絶縁物体100を構成するプラスチック11、特に絶縁物体100の外壁101a~101dを構成するプラスチック11は、同様に、電気絶縁性第4プラスチック材料K4によって形成される。
【0090】
各図の例示において、絶縁物体100を構成する第4プラスチック材料K4は、熱硬化性プラスチックであるのに対し、3つの熱移動層112a、112b及び112cを構成する第1プラスチック材料K1、第2プラスチック材料K2及び第3プラスチック材料K3は、熱可塑性プラスチックである。これに関する種々の変形において、4つのプラスチック材料K1、K2、K3及びK4への、熱可塑性プラスチック及び熱硬化性プラスチックの他の割り当ても可能であることは言うまでもない。例示のシナリオにおいて、第1プラスチック材料K1、第2プラスチック材料K2及び第4プラスチック材料K4は、各々、第3プラスチック材料K3と比べて高い熱伝導度を持つ。これにより、ステータ巻き線6から冷却流路10への効果的な熱の移動が確実となる。各図の例示において、4つのプラスチック材料K1、K2、K3及びK4はそれぞれ異なる材料である。4つのプラスチック材料K1、K2、K3及びK4の熱伝導度は、この場合、少なくとも0.5W/mK、好ましくは少なくとも1W/mKである。
【0091】
以下の記述において、再度、図3を参照する。図3において、ステータ本体7及びステータ歯8を有するステータ2は、第1端面シールド25aと第2端面シールド25bとの間に軸方向に配置される。
【0092】
図3から明らかなように、冷却剤分配スペース4の一部は第1端面シールド25aに配置され、冷却剤収集スペース5の一部は第2端面シールド25bに配置される。従って、冷却剤分配スペース4及び冷却剤収集スペース5は、各々の場合の、プラスチック化合物11に設けられた空洞41a、41bによって部分的に形成される。第1空洞41aは、冷却剤分配スペース4を形成する第1端面シールド25aに具体化された空洞42aによって、ここに補われる。これと対応して、第2空洞41bは、冷却剤収集スペース5を形成する第2端面シールド25bに具体化された空洞42bによって補われる。このように、上述された実施形態の変形において、プラスチック11は、冷却剤分配スペース4及び冷却剤収集スペース5を少なくとも部分的に区画する。
【0093】
さらに、冷却剤供給35は、冷却剤分配スペース4を、第1端面シールド25aの外側に、図3に示すように、特にその外周面上に設けられた冷却剤入口33と、流体的に結合するように、第1端面シールド25aに具体化してもよい。これに応じて、冷却剤吐出36は、冷却剤収集スペース5を、第2端面シールド25bの外側に、図3に示すように、特にその外周面上に設けられた冷却剤出口34と流体的に結合するように、第2端面シールド25bに具体化してもよい。これにより、ステータ巻き線6における第1端部14a若しくは第2端部14b又はその両方の径方向の外側の各々の場合に、且つ、軸方向Aに沿ってこれら端部14a、14bの延長方向にも、冷却剤分配スペース4若しくは冷却剤収集スペース5又はその両方の配置が可能となる。該電気機械1の作動中に、特に熱負荷に曝されたステータ巻き線6における第1端部14a及び第2端部14bは、この手段によっても極めて効果的に冷却される。
【0094】
図3によると、プラスチック11は、ステータ本体7の外周面30の上に配置されてもよく、従って、該外周面30の上にプラスチック被膜11.1を形成してもよい。このように、典型的には導電体ステータプレートから形成されたステータ2のステータ本体7は、その周囲と電気的に絶縁されてもよい。従って、ステータ本体7を収容する別体のハウジングの用意は不要となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7