(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】光制御装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240205BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1347
(21)【出願番号】P 2020010235
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 多惠
(72)【発明者】
【氏名】三井 雅志
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0196318(US,A1)
【文献】特表2010-525388(JP,A)
【文献】特開2019-086539(JP,A)
【文献】特開2018-106142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0204709(US,A1)
【文献】特開昭61-138922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13-1/1335
G02F 1/13363,1/1339-1/135
G02F 1/1347
G02F 1/137-1/141
G02B 27/00-30/60
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に第1液晶層を備える第1液晶セルと、
一対の基板間に第2液晶層を備える第2液晶セルと、
前記第1液晶セルと前記第2液晶セルとの間に配置された偏光変換素子と、を備え、
前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々の一方の基板は、
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された平板状の第1電極と、
前記第1電極を覆う第1無機絶縁膜と、
前記第1無機絶縁膜上において同心円状に配置され、前記第1電極に重畳する複数の第2電極と、を備えている、光制御装置。
【請求項2】
前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々は、一対の垂直配向膜を備えている、請求項
1に記載の光制御装置。
【請求項3】
前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々の他方の基板は、前記複数の第2電極のうち、中央部に位置する前記第2電極に重畳する配向核を備えている、請求項
2に記載の光制御装置。
【請求項4】
前記偏光変換素子は、一対の基板間に第3液晶層を備え、
前記第3液晶層は、ツイスト配向した液晶分子を含んでいる、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の光制御装置。
【請求項5】
光源と、
前記光源から出射された光を制御するように構成された請求項1乃至
4のいずれかに記載の光制御装置と、
を備えた照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光制御装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶セルを用いた光制御装置が提案されている。このような光制御装置は、主として、一偏光成分を集束させたり発散させたりするものである。一例では、2つの液晶セルを積層し、一方の液晶セルにおいて一方の偏光成分を変調し、他方の液晶セルにおいて他方の偏光成分を変調する光制御装置が開示されている。他の例では、複数の液晶レンズが重なり、一方の液晶レンズの帯状電極と、他方の液晶レンズの帯状電極とがずれて重なり、疑似的に帯状電極を微細配置する技術が知られている。
液晶層を挟んで対向する電極が配置される構成においては、一対の基板を貼り合わせる際に高い精度が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/0025657号明細書
【文献】特開2010-230887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、製造コストを低減することが可能な光制御装置及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の光制御装置は、
一対の基板間に第1液晶層を備える第1液晶セルと、一対の基板間に第2液晶層を備える第2液晶セルと、前記第1液晶セルと前記第2液晶セルとの間に配置された偏光変換素子と、を備え、前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々の一方の基板は、絶縁基板と、前記絶縁基板上において一方向に並び、帯状に形成された複数の第1電極と、前記複数の第1電極を覆う第1無機絶縁膜と、前記第1無機絶縁膜上において前記第1電極と交差し、帯状に形成された複数の第2電極と、を備えている。
本実施形態の光制御装置は、
一対の基板間に第1液晶層を備える第1液晶セルと、一対の基板間に第2液晶層を備える第2液晶セルと、前記第1液晶セルと前記第2液晶セルとの間に配置された偏光変換素子と、を備え、前記第1液晶セル及び前記第2液晶セルの各々の一方の基板は、絶縁基板と、前記絶縁基板上に配置された平板状の第1電極と、前記第1電極を覆う第1無機絶縁膜と、前記第1無機絶縁膜上において同心円状に配置され、前記第1電極に重畳する複数の第2電極と、を備えている。
本実施形態の照明装置は、
光源と、前記光源から出射された光を制御するように構成された上記の光制御装置と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態の照明装置100の一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、光制御装置200の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した第1液晶セル10のA-B線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、第1液晶セル10における光学的作用を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1液晶セル10の第2構成例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した第1液晶セル10のA-B線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、第1液晶セル10における光学的作用を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1液晶セル10の第3構成例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した第1液晶セル10のA-B線に沿った断面図である。
【
図10】
図10は、第1液晶セル10の第4構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
図1は、本実施形態の照明装置100の一構成例を示す図である。一例では、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第1方向X及び第2方向Yは、照明装置100に含まれる基板に平行な方向に相当し、また、第3方向Zは、照明装置100の厚さ方向に相当する。本実施形態においては、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面を見ることを平面視という。
【0009】
照明装置100は、光源LSと、光源LSから出射された光を制御するように構成された光制御装置200と、制御部CTと、を備えている。光源LSは、第3方向Zに沿って光を出射する。光源LSから出射される光は、例えば、自然光である。光制御装置200は、第3方向Zにおいて光源LSに重畳している。光制御装置200は、第1液晶セル10と、第2液晶セル20と、偏光変換素子PCと、を備えている。第1液晶セル10及び第2液晶セル20は、実質的に同一の構成要素を有するものであるが、異なる構成要素を有するものであってもよい。偏光変換素子PCは、第1液晶セル10と第2液晶セル20との間に配置されている。
【0010】
第1液晶セル10は、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、第1液晶層LC1と、を備えている。第1基板SUB1は、絶縁基板11と、第1配向膜AL1と、を備えている。光源LSは、第3方向Zにおいて絶縁基板11と対向するように配置されている。第2基板SUB2は、絶縁基板12と、絶縁基板12を覆う第2配向膜AL2と、を備えている。第1液晶層LC1は、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持され、第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2に接触している。第1液晶層LC1は、シールSE1によって封止されている。
【0011】
第2液晶セル20は、第3基板SUB3と、第4基板SUB4と、第2液晶層LC2と、を備えている。第3基板SUB3は、絶縁基板21と、第3配向膜AL3と、を備えている。第4基板SUB4は、絶縁基板22と、絶縁基板22を覆う第4配向膜AL4と、を備えている。第2液晶層LC2は、第3基板SUB3と第4基板SUB4の間に保持され、第3配向膜AL3及び第4配向膜AL4に接触している。第2液晶層LC2は、シールSE2によって封止されている。このような第2液晶セル20において、第3基板SUB3は第1基板SUB1と同一の構成要素を有し、第4基板SUB4は第2基板SUB2と同一の構成要素を有し、第2液晶層LC2の構成は第1液晶層LC1の構成と同一である。
【0012】
偏光変換素子PCは、第5基板SUB5と、第6基板SUB6と、第3液晶層LC3と、を備えている。第5基板SUB5は、絶縁基板31と、絶縁基板31を覆う第5配向膜AL5と、を備えている。第6基板SUB6は、絶縁基板32と、絶縁基板32を覆う第6配向膜AL6と、を備えている。第3液晶層LC3は、第5基板SUB5と第6基板SUB6との間に保持され、第5配向膜AL5及び第6配向膜AL6に接触している。第3液晶層LC3は、シールSE3によって封止されている。第5配向膜AL5及び第6配向膜AL6は、X-Y平面に略平行な配向規制力を有する水平配向膜であり、所定の方向に配向処理されている。なお、配向処理とは、ラビング処理であってもよいし、光配向処理であってもよい。第5配向膜AL5の配向処理方向は、第6配向膜AL6の配向処理方向に交差している。第3液晶層LC3は、第5配向膜AL5と第6配向膜AL6との間でツイスト配向した液晶分子LM3を含んでいる。このような偏光変換素子PCは、電極を備えていない。したがって、第3液晶層LC3には電界は形成されず、液晶分子LM3の配向状態は、第5配向膜AL5及び第6配向膜AL6の配向規制力によって維持される。
【0013】
絶縁基板11及び12、絶縁基板21及び22、及び、絶縁基板31及び32は、例えばガラス基板や樹脂基板などの透明基板である。
【0014】
偏光変換素子PCは、第3方向Zにおいて第1液晶セル10の上に重畳している。絶縁基板12と絶縁基板31とは、透明な接着層AD1によって互いに接着されている。接着層AD1の屈折率は、絶縁基板12及び31の屈折率と同等である。
第2液晶セル20は、第3方向Zにおいて偏光変換素子PCの上に重畳している。絶縁基板32と絶縁基板21とは、透明な接着層AD2によって互いに接着されている。接着層AD2の屈折率は、絶縁基板32及び21の屈折率と同等である。
【0015】
制御部CTは、光源制御部LCTと、電圧制御部DCT1及びDCT2と、を備えている。光源制御部LCTは、例えば光源LSを駆動する電流値を制御する。電圧制御部DCT1は、第1液晶層LC1に印加すべき電圧を制御する。電圧制御部DCT2は、第2液晶層LC2に印加すべき電圧を制御する。
【0016】
ここで偏光変換素子PCの役割について説明する。
偏光変換素子PCにおいて、例えば、第5配向膜AL5の配向処理方向AD5は第2方向Yに平行であり、第6配向膜AL6の配向処理方向AD6は第1方向Xに平行である。つまり、配向処理方向AD5は、配向処理方向AD6に直交している。液晶分子LM3は、第5配向膜AL5及び第6配向膜AL6の配向規制力により、第5配向膜AL5と第6配向膜AL6との間で90°ツイスト配向している。このような構成の偏光変換素子PCは、入射光の偏光成分(直線偏光)の偏光面を90°回転させる旋光能を有している。例えば、偏光変換素子PCは、入射光のうちの第1偏光成分を第2偏光成分に変換し、入射光のうちの第2偏光成分を第1偏光成分に変換する。第1偏光成分の偏光面は、第2偏光成分の偏光面と直交するものである。光の進行方向が第3方向Zに沿う場合に、第1方向Xに沿った偏光面を有する偏光成分を第1偏光(P偏光)POL1と称し、第2方向Yに沿った偏光面を有する偏光成分を第2偏光(S偏光)POL2と称する。例えば、第1偏光成分は第1偏光POL1であり、第2偏光成分は第2偏光POL2である。
ここでは、偏光変換素子PCが電極を備えないツイストネマティック液晶素子である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、偏光変換素子PCは、入射光の第1偏光成分を第2偏光成分に変換するとともに、入射光の第2偏光成分を第1偏光成分に変換する機能を有する他の素子であってもよい。
【0017】
《第1構成例》
図2は、光制御装置200の分解斜視図である。なお、
図2においては、主要部のみを図示している。
第1液晶セル10において、第1基板SUB1は、複数の第1電極E1と、複数の第2電極E2と、を備えている。複数の第1電極E1は、第1方向Xに並んでいる。第1電極E1の各々は、第2方向Yに延出し、帯状に形成されている。複数の第2電極E2は、第2方向Yに並び、複数の第1電極E1と交差している。第2電極E2の各々は、第1方向Xに延出し、帯状に形成されている。点線で示す第2基板SUB2は、電極を備えていないが、第1電極E1及び第2電極E2と対向する共通電極を備えていてもよい。
複数の第1電極E1は、電圧供給部VS1と電気的に接続されている。複数の第1電極E1のうち、隣接する第1電極には異なる電圧が供給されてもよいし、すべての第1電極E1に同一の電圧が供給されてもよい。
複数の第2電極E2は、電圧供給部VS2と電気的に接続されている。複数の第2電極E2のうち、隣接する第2電極には異なる電圧が供給されてもよいし、すべての第2電極E2に同一の電圧が供給されてもよい。一例では、電圧供給部VS2は、第2電極E2の各々に対して、第1電極E1とは異なる電圧を供給するが、第1電極E1と同一の電圧を供給する場合もあり得る。電圧供給部VS2による第2電極E2への電圧供給は、電圧供給部VS1による第1電極E1への電圧供給と同時に行われてもよいし、異なるタイミングで行われてもよい。また、第1電極E1への電圧供給と、第2電極E2への電圧供給とが交互に行われてもよい。
【0018】
第2液晶セル20において、第3基板SUB3は、複数の電極E11と、複数の電極E12と、を備えている。複数の電極E11は、第1方向Xに並んでいる。電極E11の各々は、第2方向Yに延出し、帯状に形成されている。複数の電極E12は、第2方向Yに並び、複数の電極E11と交差している。電極E12の各々は、第1方向Xに延出し、帯状に形成されている。一例では、電極E11は第3方向Zにおいて第1電極E1に重畳し、電極E12は第3方向Zにおいて第2電極E2に重畳している。なお、電極E11は第1電極E1に対して第1方向Xにずれて配置されてもよいし、電極E12は第2電極E2に対して第2方向Yにずれて配置されてもよい。また、電極E11の延出方向は第1電極E1の延出方向と平行でなくてもよいし、電極E12の延出方向は第2電極E2の延出方向と平行でなくてもよい。点線で示す第4基板SUB4は、電極を備えていないが、電極E11及び電極E12と対向する共通電極を備えていてもよい。
複数の電極E11は電圧供給部VS11と電気的に接続され、複数の電極E12は電圧供給部VS12と電気的に接続されている。一例では、電圧供給部VS12は、電極E12の各々に対して、電極E11とは異なる電圧を供給するが、電極E11と同一の電圧を供給する場合もあり得る。電圧供給部VS12による電極E12への電圧供給は、電圧供給部VS11による電極E11への電圧供給と同時に行われてもよいし、異なるタイミングで行われてもよい。また、電極E11への電圧供給と、電極E12への電圧供給とが交互に行われてもよい。第1電極E1への電圧供給と、電極E11への電圧供給とが同時に行われ、第2電極E2への電圧供給と、電極E12への電圧供給とが同時に行われてもよい。第1電極E1及び電極E11への電圧供給と、第2電極E2及び電極E12への電圧供給とが交互に行われてもよい。
【0019】
なお、
図2に示す第1構成例において、第1電極E1及び第2電極E2は、互いに直交しているが、90°以外の角度で交差していてもよい。
【0020】
図3は、
図2に示した第1液晶セル10のA-B線に沿った断面図である。
第1基板SUB1において、第1電極E1は、絶縁基板11の上に配置され、絶縁膜IL1によって覆われている。第2電極E2は、絶縁膜IL1の上に配置され、第1配向膜AL1によって覆われている。第1電極E1及び第2電極E2は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極である。絶縁膜IL1は、シリコン酸化物、シリコン窒化物などで形成された透明な第1無機絶縁膜に相当する。なお、絶縁膜IL1は、透明な有機絶縁膜であってもよい。また、絶縁基板11と第1電極E1との間には、無機絶縁膜及び有機絶縁膜の少なくとも一方が配置されてもよい。
【0021】
第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、水平配向膜であり、所定の方向に配向処理されている。一例では、第1配向膜AL1の配向処理方向は、第2配向膜AL2の配向処理方向とほぼ平行である。第1液晶層LC1は、第1配向膜AL1と第2配向膜AL2との間でホモジニアス配向(水平配向)した液晶分子LM1を含んでいる。例えば、第1液晶層LC1は、正の誘電率異方性を有するポジ型であるが、負の誘電率異方性を有するネガ型であってもよい。
【0022】
図3においては、第1液晶セル10の断面構造について説明したが、第2液晶セル20も第1液晶セル10と同様の断面構造を有している。
【0023】
ところで、電圧制御部DCT1が第1電極E1及び第2電極E2にそれぞれ所定の電圧を供給した場合、第1液晶層LC1に電界が形成され、液晶分子LM1は、その長軸が電界に沿うように配向する。
【0024】
液晶分子LM1は、屈折率異方性Δnを有している。このため、電界が形成されたオン状態の第1液晶層LC1は、液晶分子LM1の配向状態に応じた屈折率分布を有する。あるいは、第1液晶層LC1は、第1液晶層LC1の第3方向Zに沿った厚さをdとしたとき、Δn・dで表されるリタデーションの分布を有する。このような屈折率分布、または、リタデーションの分布は、液晶レンズを形成する。すなわち、ここでの液晶レンズとは、第1液晶層LC1に形成される屈折率分布型レンズに相当するものである。このような液晶レンズが形成された第1液晶セル10は、入射光を屈折(集束、発散)することによって入射光を散乱する光学的作用を発生する。散乱の度合い(変調率)は、第1液晶層LC1に印加される電圧によって制御される。つまり、第1液晶セル10における変調率は、電圧制御部DCT1によって制御される。
【0025】
ここでは、第1液晶セル10について説明したが、上記の通り、第2液晶セル20は第1液晶セル10と同一の構成要素を有している。このため、第2液晶セル20においても、オン状態では第1液晶セル10と同様の液晶レンズを形成することができる。第2液晶セル20における変調率は、電圧制御部DCT2によって制御される。
【0026】
図4は、第1液晶セル10における光学的作用を説明するための図である。
図4の(A)は、第1方向Xに並んだ複数の第1電極E1による光学的作用を説明するための図である。例えば、隣接する第1電極E1に異なる電圧が供給され、これらの第1電極E1の間の電界が第1液晶層LC1に作用する場合を想定する。第1液晶層LC1には、第1電極E1からの電界による屈折率分布が形成される。このような第1液晶層LC1への入射光のうち、例えば第1偏光POL1は、第1電極E1の延出方向に対してほぼ直交する方向に散乱される。第1電極E1が第2方向Yに延出している場合、第1偏光POL1は、第1方向Xに散乱される。
図4の(B)は、第2方向Yに並んだ複数の第2電極E2による光学的作用を説明するための図である。例えば、隣接する第2電極E2に異なる電圧が供給され、これらの第2電極E2の間の電界が第1液晶層LC1に作用する場合を想定する。第1液晶層LC1には、第2電極E2からの電界による屈折率分布が形成される。このような第1液晶層LC1への入射光のうち、第1偏光POL1は、第2電極E2の延出方向である第1方向Xに対してほぼ直交する第2方向Yに散乱される。
したがって、
図4の(C)に示すように、第1偏光POL1は、X-Y平面において、少なくとも4方位に散乱される。
【0027】
ここでは、第1液晶セル10における光学的作用について説明したが、第2液晶セル20も第1液晶セル10と同様の光学的作用が実現される。
図1に戻って説明すると、光源LSから出射された光は、まず第1液晶セル10への入射光となる。入射光のうち、一部の偏光成分(例えば第1偏光POL1)は、第1液晶セル10において複数の方位に散乱される。入射光のうち、第1液晶セル10においてほとんど散乱されることなく透過した偏光成分(例えば第2偏光POL2)は、偏光変換素子PCにおいて、その偏光面が90度回転される。つまり、第1液晶セル10を透過した第2偏光POL2は、偏光変換素子PCにおいて第1偏光POL1に変換される。偏光変換素子PCの透過光は、第2液晶セル20への入射光となる。偏光変換素子PCにおいて変換された第1偏光POL1は、第2液晶セル20において複数の方位に散乱される。したがって、光源LSから出射された光の第1偏光成分及び第2偏光成分は、いずれも光制御装置200において複数の方位に散乱される。
【0028】
このような光制御装置200を構成する第1液晶セル10及び第2液晶セル20において、各々の一方の基板が複数の電極層を備えており、第1液晶セル10及び第2液晶セル20の各々の他方の基板は電極を備えていない(あるいは、他方の基板は、微細なパターン化がなされていないベタ電極を備えていてもよい)。このため、一方の基板と他方の基板とを貼り合わせる際に、高精度の位置合わせが不要であり、また、高価な装置を必要としない。したがって、製造コストを低減することができる。
また、第1液晶セル10及び第2液晶セル20は、同一の構成要素を有するものであり、第1液晶セル10及び第2液晶セル20が異なる仕様で構成された場合と比較して、製造ラインを一本化することができ、低コストで光制御装置200を製造することができる。
【0029】
《第2構成例》
図5は、第1液晶セル10の第2構成例を示す平面図である。
図5に示す第2構成例は、
図2に示した第1構成例と比較して、第1基板SUB1がさらに第3電極E3を備えた点で相違している。すなわち、複数の第1電極E1は、第1方向Xに並んでいる。第1電極E1の各々は、第2方向Yに延出し、帯状に形成されている。複数の第2電極E2は、第1電極E1とは異なる方向に並んでいる。第2電極E2の各々は、帯状に形成され、第1電極E1と交差している。複数の第3電極E3は、第1電極E1及び第2電極E2とは異なる方向に並んでいる。第3電極E3の各々は、帯状に形成され、第1電極E1及び第2電極E2と交差している。
図5に示す第2構成例では、第1電極E1、第2電極E2、及び、第3電極E3は、X-Y平面において、互いに60°で交差している。なお、第1電極E1、第2電極E2、及び、第3電極E3は、60°以外の角度で交差してもよい。
【0030】
図6は、
図5に示した第1液晶セル10のA-B線に沿った断面図である。第1基板SUB1において、第1電極E1は、絶縁基板11の上に配置され、絶縁膜IL1によって覆われている。第2電極E2は、絶縁膜IL1の上に配置され、絶縁膜IL2によって覆われている。第3電極E3は、絶縁膜IL2の上に配置され、第1配向膜AL1によって覆われている。第3電極E3は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極である。絶縁膜IL2は、シリコン酸化物、シリコン窒化物などで形成された透明な第2無機絶縁膜に相当する。
【0031】
図5及び
図6においては、第1液晶セル10の第2構成例について説明したが、第2液晶セル20も第1液晶セル10と同様の構造を有しており、第2液晶セル20は、第1電極E1に重畳する電極E11、第2電極E2に重畳する電極E12、及び、第3電極E3に重畳する電極E13を備えている。
【0032】
図7は、第1液晶セル10における光学的作用を説明するための図である。ここでは、第1方向Xを基準として、X-Y平面内の方位を規定する。第1電極E1は、第1方向Xに対するなす角度θ1が90°の方位に延出している。第2電極E2は、第1方向Xに対するなす角度θ2が150°の方位に延出している。第3電極E3は、第1方向Xに対するなす角度θ3が30°の方位に延出している。
【0033】
図7の(A)は、複数の第1電極E1による光学的作用を説明するための図である。第1液晶層LC1への入射光のうち、第1偏光POL1は、X-Y平面において、0°-180°方位に散乱される。
図7の(B)は、複数の第2電極E2による光学的作用を説明するための図である。第1液晶層LC1への入射光のうち、第1偏光POL1は、X-Y平面において、60°-240°方位に散乱される。
図7の(C)は、複数の第3電極E3による光学的作用を説明するための図である。第1液晶層LC1への入射光のうち、第1偏光POL1は、X-Y平面において、120°-300°方位に散乱される。
したがって、
図7の(D)に示すように、第1偏光POL1は、X-Y平面において、少なくとも6方位に散乱される。
【0034】
ここでは、第1液晶セル10における光学的作用について説明したが、第2液晶セル20も第1液晶セル10と同様の光学的作用が実現される。したがって、第2構成例においても、第1構成例と同様の効果が得られる。加えて、光制御装置200への入射光がより多くの方位に散乱される。
【0035】
《第3構成例》
図8は、第1液晶セル10の第3構成例を示す平面図である。
図8に示す第3構成例は、
図2に示した第1構成例と比較して、第1電極E1及び第2電極E2の形状が相違している。すなわち、第1電極E1は、X-Y平面において、平板状に形成されている。複数の第2電極E2は、同心円状に配置され、第1電極E1に重畳している。隣接する第2電極E2の間隙も、第1電極E1に重畳している。第1電極E1及び第2電極E2の中心Oは、X-Y平面において、重畳している。
図8に示す例では、第1電極E1は、円形状に形成されているが、隣接する第2電極E2の間に配置されていればよく、その形状は図示した例に限らない。例えば、第1電極E1は、四角形状の第1基板SUB1に合わせて、四角形状に形成されてもよいし、他の多角形状に形成されてもよい。
【0036】
図9は、
図8に示した第1液晶セル10のA-B線に沿った断面図である。第1基板SUB1において、第1電極E1は、絶縁基板11の上に配置され、絶縁膜IL1によって覆われている。第2電極E2は、絶縁膜IL1の上に配置され、第1配向膜AL1によって覆われている。
【0037】
図8及び
図9においては、第1液晶セル10の第3構成例について説明したが、第2液晶セル20も第1液晶セル10と同様の構造を有しており、第2液晶セル20は、第1電極E1に重畳する電極E11、及び、第2電極E2に重畳する電極E12を備えている。
【0038】
このような第3構成例においても、第1構成例と同様の効果が得られる。加えて、光制御装置200への入射光がX-Y平面においてほぼ全方位に散乱される。
【0039】
《第4構成例》
図10は、第1液晶セル10の第4構成例を示す平面図である。
図10に示す第4構成例は、
図8に示した第3構成例と比較して、配向核ANが設けられた点で相違している。配向核ANは、複数の第2電極E2のうち、中央部に位置する第2電極E2に重畳するように配置されている。配向核ANは、概ね第2電極E2の中央付近に位置していればよく、高精度の位置合わせを必要としない。
【0040】
図11は、
図10に示した第1液晶セル10のA-B線に沿った断面図である。第1配向膜AL1及び第2配向膜AL2は、第1液晶セル10の法線に沿った配向規制力を有する垂直配向膜である。第1液晶層LC1は、例えばネガ型である。第1液晶層LC1の液晶分子LM1は、電圧が印加されていない状態で、その長軸が第3方向Zに沿うように配向している。
第2基板SUB2は、第4電極E4と、配向核ANと、を備えている。第4電極E4は、絶縁基板12と第2配向膜AL2との間に配置されている。第4電極E4は、微細なパター化がなされていないベタ電極である。第4電極E4は、第1液晶層LC1を挟んで第1電極E1及び第2電極E2と対向しており、第1電極E1との間、及び、第2電極E2との間で電界を形成することができる。
図11に示す第4構成例では、配向核ANは、第2基板SUB2から第1基板SUB1に向かって突出した突起であるが、第4電極E4を貫通する開口であってもよい。
【0041】
図10及び
図11においては、第1液晶セル10の第4構成例について説明したが、第2液晶セル20も第1液晶セル10と同様の構造を有しており、第2液晶セル20は、第1電極E1に重畳する電極E11、第2電極E2に重畳する電極E12、及び、配向核ANを備えている。
【0042】
このような第4構成例においても、第3構成例と同様の効果が得られる。加えて、配向核ANが配置されたことにより、液晶分子の電界に対する応答速度を向上することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、製造コストを低減することが可能な光制御装置及び照明装置を提供することができる。
【0044】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0045】
100…照明装置 200…光制御装置
10…第1液晶セル SUB1…第1基板 E1…第1電極 E2…第2電極 E3…第3電極 AL1…第1配向膜 SUB2…第2基板 AL2…第2配向膜 LC1…第1液晶層
20…第2液晶セル SUB3…第3基板 AL3…第3配向膜 SUB4…第4基板 AL4…第4配向膜 LC2…第2液晶層
PC…偏光変換素子 SUB5…第5基板 AL5…第5配向膜 SUB6…第6基板 AL6…第6配向膜 LC3…第3液晶層