(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20240205BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240205BHJP
B23B 49/00 20060101ALI20240205BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240205BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240205BHJP
B23Q 11/00 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
B23Q17/22 D
B23Q3/155 D
B23B49/00 Z
B23Q17/24 B
B23Q17/00 F
B23Q11/00 D
(21)【出願番号】P 2020040260
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000149505
【氏名又は名称】大同マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健司
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-275855(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056264(WO,A1)
【文献】実開平06-066943(JP,U)
【文献】特開2003-311570(JP,A)
【文献】実開昭59-090807(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107655383(CN,A)
【文献】特開昭64-016354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155
B23Q 17/22
B23B 49/00
B23Q 17/24
B23Q 17/00
B23Q 11/00
G01B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材料(11)を切削加工する工作機械であって、
主軸(29)に装着した工具(13)を回転しつつ、該工具(13)を前記被加工材料(11)に対して相対的に移動して切削加工する加工機(15)と、
前記工具(13)が着脱自在に保持される複数の保持部(44)を有し、該保持部(44)に保持されている工具(13)が前記主軸(29)に装着可能な工具マガジン(16)と、
前記主軸(29)に装着した工具(13)における加工部(39)の長さ寸法を測定する長さ測定手段(46)と、
前記主軸(29)に装着した工具(13)における加工部(39)の径寸法を測定する径測定手段(47)と、
前記長さ測定手段(46)および径測定手段(47)で長さ寸法および径寸法を測定した工具(13)の測定値を、当該工具(13)が保持される前記保持部(44)を特定する情報に対応付けて記憶可能な記憶部(67)と
、
音または光により異常報知が可能な異常報知手段とを備え
、
前記保持部(44)に保持する各工具(13)に対して加工部(39)の正しい長さ寸法および径寸法を対応付けた工具データベースが予め登録されており、測定した工具(13)の長さ寸法および径寸法の測定値が工具データベースに登録されている値と一致しない場合には、当該測定値を前記記憶部(67)に記憶することなく前記異常報知手段により異常報知するよう構成されていると共に、
前記被加工材料(11)が載置される載置テーブル(12)および前記加工機(15)の一方と他方とを相対的に移動可能に構成し、
前記載置テーブル(12)および前記加工機(15)の一方に前記工具マガジン(16)を配設すると共に、該工具マガジン(16)に前記長さ測定手段(46)および径測定手段(47)を備えた測定手段(17)を配設し、
前記工具マガジン(16)の保持部(44)に保持した工具(13)に対して、前記長さ測定手段(46)で長さ寸法を測定可能な位置および前記径測定手段(47)で径寸法を測定可能な位置に、前記測定手段(17)を移動可能に構成した
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
被加工材料(11)を切削加工する工作機械であって、
主軸(29)に装着した工具(13)を回転しつつ、該工具(13)を前記被加工材料(11)に対して相対的に移動して切削加工する加工機(15)と、
前記工具(13)が着脱自在に保持される複数の保持部(44)を有し、該保持
部(44)に保持されている工具(13)が前記主軸(29)に装着可能な工具マガジン(16)と、
前記主軸(29)に装着した工具(13)における加工部(39)の長さ寸法を測定する長さ測定手段(46)と、
前記主軸(29)に装着した工具(13)における加工部(39)の径寸法を測定する径測定手段(47)と、
前記長さ測定手段(46)および径測定手段(47)で長さ寸法および径寸法を測定した工具(13)の測定値を、当該工具(13)が保持される前記保持部(44)を特定する情報に対応付けて記憶可能な記憶部(67)と、
異常報知が可能な異常報知手段とを備え、
前記保持部(44)に保持する各工具(13)に対して加工部(39)の正しい長さ寸法および径寸法を対応付けた工具データベースが予め登録されており、測定した工具(13)の長さ寸法および径寸法の測定値が工具データベースに登録されている値と一致しない場合には、当該測定値を前記記憶部(67)に記憶することなく前記異常報知手段により異常報知するよう構成されていると共に、
前記径測定手段(47)は、前記主軸(29)の軸方向と平行な軸回りに回転可能に支持され、前記工具(13)の加工部(39)における外周に当接可能な当接部材(61)と、
回転していない前記加工部(39)の外周に前記当接部材(61)を当接させた状態で当該加工部(39)を回転させた際に、当該当接部材(61)が径方向に変位する変位量を検出する径検出部(62)とを備え、
前記径検出部(62)で検出された変位量に基づいて、前記加工部(39)の径寸法を算出するよう構成した
ことを特徴とする工作機械。
【請求項3】
前記被加工材料(11)が載置される載置テーブル(12)および前記加工機(15)の一方と他方とを相対的に移動可能に構成し、
前記載置テーブル(12)および前記加工機(15)の一方に前記工具マガジン(16)を配設すると共に、該工具マガジン(16)に前記長さ測定手段(46)および径測定手段(47)を配設した請求項
2記載の工作機械。
【請求項4】
前記当接部材(61)に当接する加工部(39)を回転する際には、前記被加工材料(11)を切削加工する場合とは逆方向に回転するよう構成した請求項
2または3記載の工作機械。
【請求項5】
前記工具マガジン(16)に前記長さ測定手段(46)および径測定手段(47)を備えた測定手段(17)を配設し、
前記工具マガジン(16)の保持部(44)に保持した工具(13)に対して、前記長さ測定手段(46)で長さ寸法を測定可能な位置および前記径測定手段(47)で径寸法を測定可能な位置、および、当該測定可能な位置から退避した退避位置に前記測定手段(17)を移動可能に構成し、
前記測定手段(17)の移動を許容するよう
前記測定手段(17)の上部および側部を覆うカバー(63)を設けた請求項1~4の何れか一項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材料を切削加工する工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主軸に装着したタップやドリル等の工具によって、被加工材料に対して「ネジ切り」、「孔あけ」、「座ぐり」等の切削加工を施す工作機械は、各種の工具が着脱自在に保持される保持部が複数設けられた工具マガジンを備えている(例えば、特許文献1参照)。工具マガジンを備える工作機械では、工具マガジンの各保持部に個別の番地(番号)が付されると共に、工具マガジンに保持されている全ての工具に関するデータが、保持部の番地に対応付けて登録されている。そして、工作機械は、制御装置において実行される加工プログラムの指示(工具交換指令)に従い、工具マガジンに保持されている複数の工具の中から、次に使用する工具を選択し、該選択した工具を、主軸に装着されている工具と交換することで、被加工材料に対して複数種類の切削加工を自動的に行うよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記工具マガジンの各保持部に対して工具を保持させる取付け作業は、作業者の人手によって行われており、作業者は保持部に工具を取り付けると、その工具の種類を保持部の番地に対応付けて制御装置に登録している。また、工具は、切削加工を続けると摩耗や折損等の寿命により、目的とする寸法通りの切削加工を施し得なくなる。従って、工具マガジンに保持されている工具において、寿命により切削加工に適さなくなった工具は新しい工具と取り換える必要があり、この作業についても作業者が人手によって行っている。
【0005】
前記工具マガジンへの工具の取付け作業は人手によって行われているため、作業者が保持部に誤った種類の工具を取り付けたり、登録する工具の種類を間違えたりする人為的ミスが発生する可能性がある。そして、人為的ミスによって保持部の番地と工具の種類とが異なっている場合は、被加工材料に誤った種類の切削加工が施されてしまったり、工具が破損してしまったりする等の事態を招く問題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の技術に内在する前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、被加工材料に対する誤加工や工具破損を防止することができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
被加工材料を切削加工する工作機械であって、
主軸に装着した工具を回転しつつ、該工具を前記被加工材料に対して相対的に移動して切削加工する加工機と、
前記工具が着脱自在に保持される複数の保持部を有し、該保持部に保持されている工具が前記主軸に装着可能な工具マガジンと、
前記主軸に装着した工具における加工部の長さ寸法を測定する長さ測定手段と、
前記主軸に装着した工具における加工部の径寸法を測定する径測定手段と、
前記長さ測定手段および径測定手段で長さ寸法および径寸法を測定した工具の測定値を、当該工具が保持される前記保持部を特定する情報に対応付けて記憶可能な記憶部とを備えることを要旨とする。
請求項1の発明では、保持部に保持される工具における加工部の長さ寸法および径寸法を測定するよう構成したので、保持部に保持されるべき工具の種類が正しいか否かを判別することができ、適正な種類と異なる工具によって被加工材料が加工されてしまったり、工具が破損してしまう事態を防ぐことができる。すなわち、作業者の人為的ミスに起因して、誤った加工や不適切な加工が施された被加工材料が製造されてしまうのを防止できる。また、主軸に工具を装着した状態で寸法測定を行うので、寸法測定を行うために工具を保持する手段を別途設ける必要はなく、機械が複雑となるのを抑制することができる。
【0008】
第2の手段は、
前記被加工材料が載置される載置テーブルおよび前記加工機の一方と他方とを相対的に移動可能に構成し、
前記載置テーブルおよび前記加工機の一方に前記工具マガジンを配設すると共に、該工具マガジンに前記長さ測定手段および径測定手段を配設したことを要旨とする。
これによれば、相対的に移動する載置テーブルおよび加工機の一方に、工具マガジン、長さ測定手段および径測定手段を配設したので、工具交換と寸法測定とを略同じ位置で行うことができる。また、加工機に、長さ測定手段および径測定手段を配設した工具マガジンを配設した場合は、工具交換や寸法測定に際して加工機を工具マガジンの配設位置まで移動する必要はなく、サイクルタイムを短縮することができる。
【0009】
第3の手段は、
前記長さ測定手段は、前記主軸の軸方向に進退移動可能に支持され、前記工具の加工部における軸方向の先端が当接可能な測長部材と、
前記測長部材が工具によって押された際に、該測長部材が軸方向に変位する変位量を検出する長さ検出部とを備え、
前記長さ検出部で検出された変位量に基づいて、前記加工部の長さ寸法を算出するよう構成したことを要旨とする。
これによれば、工具の加工部で測長部材を直接押して長さ寸法を測定するので、該長さ寸法を精度よく測定することができる。
【0010】
第4の手段は、
前記径測定手段は、前記主軸の軸方向と平行な軸回りに回転可能に支持され、前記工具の加工部における外周に当接可能な当接部材と、
前記加工部の外周に当接する当接部材が、加工部を回転した際に径方向に変位する変位量を検出する径検出部とを備え、
前記径検出部で検出された変位量に基づいて、前記加工部の径寸法を算出するよう構成したことを要旨とする。
これによれば、工具の加工部に当接部材を直接当接して径寸法を測定するので、該径寸法を精度よく測定することができる。また、加工部を回転しつつ径寸法を測定するので、加工部の外周形状に影響されることなく適正な径寸法を測定することができる。
【0011】
第5の手段は、
前記当接部材に当接する加工部を回転する際には、前記被加工材料を切削加工する場合とは逆方向に回転するよう構成したことを要旨とする。
これによれば、加工部に設けられた刃によって当接部材が切削されてしまうのを防ぐことができる。また、当接部材が、加工部における外周に存在する凹部に嵌まり込んで回転が阻害されるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る工作機械によれば、工具を寸法測定して種類を特定することができるので、被加工材料に誤った切削加工を施してしまったり、工具が破損してしまったりするのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】実施例に係る工具マガジンの概略平面図である。
【
図4】実施例に係る工具マガジンの概略側面図である。
【
図6】実施例に係る測定装置を、工具の長さ寸法を測定する状態で一部破断して示す概略側面図である。
【
図7】実施例に係る測定装置を、工具の径寸法を測定する状態で一部破断して示す概略側面図である。
【
図8】実施例に係る工作機械の制御ブロック図である。
【
図9】実施例に係る測定装置で工具の長さ寸法を算出する方式を説明する図である。
【
図10】実施例に係る測定装置で工具の径寸法を算出する方式を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る工作機械につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では工作機械として、被加工材料に孔あけ加工(切削加工)を施す穿孔装置を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、マシニングセンタ等、その他の工作機械であってもよい。
【実施例】
【0015】
図1、
図2は、実施例に係る穿孔装置10を示すものであって、該穿孔装置10は、被加工材料11が位置決め可能に載置される載置テーブル12と、ドリル等の工具13が装着された主軸頭14を平面座標のX-Y軸方向および上下方向(Z軸方向)に移動可能に備え、工具13を回転しつつ該工具13を移動して被加工材料11を切削加工する加工機15と、複数の工具13を保持する工具マガジン16と、工具13における加工部39の長さ寸法および径寸法を測定する測定装置17と、を備える。実施例の加工機15は、所謂「ガントリータイプ」の加工機であって、載置テーブル12を挟む両側に配設されて夫々が互いに平行な一対の第1ガイドレール(レール)18,18に移動可能に載架されたガントリーユニット19と、ドリルユニット20と、を備える。実施例では、第1ガイドレール18の延在方向をX軸方向、これと水平面で直交する方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向の夫々と垂直面で直交する方向をZ軸方向と指称する。
【0016】
図1、
図2に示す如く、前記ガントリーユニット19は、前記第1ガイドレール18,18の夫々に移動可能に支持される一対の台車基部21a,21aからなる台車21と、台車基部21a,21aに立設された一対の脚部22,22と、該一対の脚部22,22の間に架設されてY軸方向に延在するガーダー23と、を備え、ガントリーユニット19は、前記載置テーブル12および被加工材料11の上方を跨いだ状態のゲート状(門状)に構成される。また、加工機15は、各台車基部21aに配設された第1駆動モータ24、該第1駆動モータ24により回転駆動されるピニオンおよび該ピニオンが噛合するよう各第1ガイドレール18に配設されたラック等からなるX軸駆動機構25を備え、該X軸駆動機構25によってガントリーユニット19を、第1ガイドレール18,18に沿ってX軸方向に水平に移動するよう構成される。第1駆動モータ24には、該モータ24の回転量を検出するエンコーダ等の第1位置検出手段26が設けられており(
図8参照)、該第1位置検出手段26の検出値に基づいてガントリーユニット19(主軸頭14)のX軸方向の移動量を検出し得るようになっている。
【0017】
図1、
図2に示す如く、前記ガーダー23の前面(
図1における紙面前側)に、Z軸方向に離間する一対の第2ガイドレール27,27が、Y軸方向に沿って平行に配設され、該第2ガイドレール27,27に、前記ドリルユニット20が移動可能に配設される。ドリルユニット20は、第2ガイドレール27,27に移動可能に支持されるサドル28と、該サドル28に配設されてZ軸方向に沿って上下に移動可能な前記主軸頭14と、該主軸頭14にZ軸回りに回転可能に支持された主軸29と、を備え、該主軸29の下端部に工具13が着脱自在に装着される。なお、主軸頭14は、Y軸方向に離間してサドル28に配設されてZ軸方向に沿って平行に延在する一対の第3ガイドレール30,30に移動可能に支持されている。前記加工機15は、第2駆動モータ31、該第2駆動モータ31により回転駆動されるピニオンおよび該ピニオンが噛合するようガーダー23に配設されたラック等からなるY軸駆動機構32を備え、該Y軸駆動機構32によってドリルユニット20を、第2ガイドレール27,27に沿ってY軸方向に水平に移動するよう構成される。また、加工機15は、第3駆動モータ33と、該第3駆動モータ33により回転駆動されるボールネジおよび該ボールネジに螺合するナットを組み合わせたボールネジ機構からなるZ軸駆動機構34を備え、該Z軸駆動機構34によって主軸頭14を、第3ガイドレール30,30に沿ってZ軸方向に鉛直に移動するよう構成される。第2駆動モータ31には、該モータ31の回転量を検出するエンコーダ等の第2位置検出手段35が設けられており(
図8参照)、該第2位置検出手段35の検出値に基づいてサドル28(主軸頭14)のY軸方向の移動量を検出し得るようになっている。また、第3駆動モータ33には、該モータ33の回転量を検出するエンコーダ等の第3位置検出手段36が設けられており(
図8参照)、該第3位置検出手段36の検出値に基づいて主軸頭14のZ軸方向の移動量を検出し得るようになっている。
【0018】
図1に示す如く、前記主軸頭14に主軸モータ37が配設され、該主軸モータ37によって前記主軸29が回転駆動される。なお、実施例では、主軸29の回転方向について、工具13によって被加工材料11に孔あけ加工を施す場合の回転方向を正転と指称し、それとは逆方向を逆転と指称する。
図4に示す如く、工具13は、前記主軸29に装着される部分であるホルダ38と、該ホルダ38に配設されて刃を有する加工部39とを備える。ホルダ38は、主軸29のテーパ孔(図示せず)に嵌合するシャンク部38aと、該シャンク部38aにおける軸方向の一端側に設けられたフランジ部38bと、シャンク部38aの軸方向の他端側に設けられたプルスタッド38cとを有する。また、加工部39は、フランジ部38bから軸方向の一端側に向けて延在するように設けられた軸部39aと、該軸部39aの端部に配設された刃部39bとを備える。
【0019】
図1、
図2に示す如く、前記一方の台車基部21aに、前記工具マガジン16が配設されて、該工具マガジン16は、前記ガントリーユニット19と一体でX軸方向に移動するよう構成される。
図3、
図4に示す如く、工具マガジン16は、略円板状に形成されたベース板40が、支持体41に対して水平回転可能に支持されている。ベース板40の径方向の中心には、割出しモータ42を備える回転駆動機構43が連結され、該回転駆動機構43によってベース板40は回転される。また、ベース板40の外周部には、工具13を着脱自在に保持する複数(実施例では12個)の保持部44が、略等角度ピッチで形成されている。この保持部44は、ベース板40の径方向外側端から回転中心に向かって窪むように切欠き形成されたものであって、該保持部44における上下方向および径方向の開口寸法は、工具13の前記加工部39における軸部39aの上下方向(Z軸方向)および外径方向への移動は許容するが、前記ホルダ38におるフランジ部38bの上下方向の移動は規制する寸法に設定される。そして、各保持部44には、ベース板40の上面にフランジ部38bが載置され、加工部39がベース板40から垂下した状態で保持される。
【0020】
前記割出しモータ42には、該モータ42の回転量を検出するエンコーダ等の第4位置検出手段45が設けられ(
図8参照)、該第4位置検出手段45は、後述する制御装置64に接続される。そして、制御装置64は、割出しモータ42によりベース板40を回転した際の第4位置検出手段45の検出値に基づいて、工具マガジン16において設定されている工具交換位置Pに、各保持部44を位置決めし得るよう構成される。
【0021】
図3~
図5に示す如く、前記工具マガジン16に、前記測定装置17が配設されている。測定装置17は、前記工具13における加工部39の長さ(軸方向の長さ)を測定する長さ測定手段46と、前記加工部39における刃部39bの直径(径寸法)を測定する径測定手段47とを備える。測定装置17は、前記支持体41に対してリニアガイド48を介して水平に移動可能に配設された移動体49と、該移動体49を移動する移動手段50と、を備え、移動体49は、工具マガジン16に設定された前記工具交換位置Pに位置決めした保持部44に保持されている工具13の軸心と直交する方向に水平に移動するよう構成される。前記リニアガイド48は、支持体41に配設された支持ブロック51と、移動体49に配設されて支持ブロック51に対して摺動可能に支持されたリニアレール52とから構成される。支持ブロック51およびリニアレール52としては、LMブロックおよびLMレールが用いられて、移動体49の精度のよい移動を図り得るよう構成される。また、前記移動手段50としては、支持ブロック51に配設したシリンダ本体50aと、該シリンダ本体50aに伸縮可能に配設したピストンロッド50bとを備えるエアシリンダ50が用いられ、ピストンロッド50bが移動体49に連結されている。
【0022】
図6に示す如く、前記移動体49の先端部に支持部材53が配設され、円盤状の受け部54aの中心から支持軸54bが下方に延出する測長部材54が、支持軸54bを介して支持部材53にZ軸方向(主軸29の軸方向)に沿って進退移動可能に支持されている。そして、測定装置17では、前記エアシリンダ50を付勢してピストンロッド50bを伸縮することで移動体49を、測長部材54の受け部54aの中心(支持軸54bの軸心)が、前記工具交換位置Pに位置決めした保持部44に保持されている工具13の軸心と一致する測定位置(
図5の実線位置)と、受け部54aが測定位置から退避した退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で移動するよう構成される。実施例では、
図5に示す如く、前記支持ブロック51を支持体41に配設する取付部材55に、移動体49に設けたストッパ56a,56bが当接することで、移動体49(測長部材54)を測定位置と退避位置とに位置決めするよう構成してある。
【0023】
図6に示す如く、前記支持部材53に、前記支持軸54bにおける支持部材53から下方に延出する端部を検出可能な長さ検出センサ57がブラケット58を介して配設されている。また、前記測長部材54は、支持部材53に対して圧縮バネ等の弾性部材59によって常に上方に向けて付勢されて、支持軸54bにおける支持部材53から下方に延出する部分に設けた規制部54cが支持部材53の下面に当接する長さ測定開始位置に位置付けられるよう構成される。前記長さ検出センサ57は、長さ測定開始位置の測長部材54における支持軸54bの下端より下方に位置して、該長さ測定開始位置では支持軸54bを検出しないよう設定される。そして、後述する長さ測定に際し、工具13の加工部39における軸方向の先端が受け部54aに当接して測長部材54が押し下げられることで、長さ検出センサ57が支持軸54bを検出し得るよう構成される。実施例では、長さ検出センサ57と、長さ測定に際して主軸頭14の後述する実下降量Kを検出する第3位置検出手段36とから、測長部材54が軸方向に変位する変位量を検出する長さ検出部が構成され、該長さ検出部としての長さ検出センサ57および第3位置検出手段36と、主軸29の軸方向に進退移動可能な測長部材54とから長さ測定手段46が構成される。なお、前記支持部材53に、支持軸54bを検出可能な下限検出センサ60がブラケット58を介して配設されており、該下限検出センサ60は、前記長さ検出センサ57より下方で支持軸54bを検出可能に位置している。
【0024】
図7に示す如く、前記測長部材54における前記支持部材53より上方に延出する部分に、環状の当接部材61が、主軸29の軸方向と平行なZ軸回りに回転可能に支持されている。この当接部材61の外周面は、前記受け部54aより径方向の外方に位置して、後述する径測定に際して径測定位置に位置決めされた工具13の加工部39における刃部39bの外周に径方向から当接可能に構成される。前記エアシリンダ50には、前記ピストンロッド50bの移動量を検出する移動量検出手段62が設けられる。実施例では、移動量検出手段62として、シリンダ本体50aに配設されて、磁力により抵抗値が変化するMR素子(磁気抵抗素子)からなる検出部62aと、ピストンロッド50bに一定ピッチで磁性部と非磁性部とを設けた目盛部(図示せず)とからなる磁気式のリニアスケールが用いられ、ピストンロッド50bの移動によって検出部62aが磁性部を検出する検出信号(パルス信号)によってピストンロッド50bの移動量を検出する。実施例では、エアシリンダ50に設けられた移動量検出手段62が、径測定に際し、工具13の刃部39b(加工部39)に当接する当接部材61が径方向に変位するのに伴うピストンロッド50bの移動量(当接部材61の径方向の変位量)を検出する径検出部として機能し、該径検出部としての移動量検出手段62と当接部材61とから径測定手段47が構成される。また、径測定に際し、当接部材61の回転中心(支持軸54bの軸心)は、前記径測定位置に位置決めされた工具13の軸心と前記移動体49の移動方向において整列した状態で、当接部材61が径方向に変位するよう構成されている。なお、径測定に際し、当接部材61が工具13の刃部39bにおける外周に当接した状態で、前記移動体49が当接部材61の径方向の前後に移動可能なように、該移動体49は、前記ストッパ56a,56bが取付部材55に当接しない領域に位置するよう構成される。また、径測定に際して、当接部材61を工具13の刃部39bに当接するエアシリンダ50におけるピストンロッド50bの付勢力は、刃部39bの外周形状に倣って当接部材61が変位するのを許容する値に設定されている。すなわち、エアシリンダ(移動手段)50は、径測定に際して当接部材61を、径方向に変位可能に刃部39bの外周に当接するよう付勢する付勢手段として機能するよう構成される。
【0025】
前記支持体41には、
図5に示すように、前記移動体49を退避位置に位置させた測定装置17の上部および側部を覆うカバー63が設けられ、孔あけ加工時に発生する切り屑等が測定装置17に付いて測定精度が低下するのを防止するよう構成される。なお、カバー63は、移動体49の退避位置と測定位置との間の移動は許容するよう、側定位置側は開口している(
図6参照)。
【0026】
前記加工機15、工具マガジン16および測定装置17を制御する制御装置64は、
図1、
図2に示す如く、前記他方の台車基部21aに配設されて、制御装置64は、前記ガントリーユニット19と一体でX軸方向に移動するよう構成される。制御装置64には、
図8に示す如く、前記第1駆動モータ24,24、第2駆動モータ31、第3駆動モータ33、主軸モータ37、割出しモータ42、エアシリンダ50、長さ検出センサ57、下限検出センサ60および移動量検出手段62の検出部62aが接続される。また、制御装置64には、第1位置検出手段26,26、第2位置検出手段35、第3位置検出手段36、第4位置検出手段45が接続されており、該制御装置64は、第1~第3位置検出手段26,26,35,36の検出値に基づいて、主軸頭14(主軸29)のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の移動量を取得し得ると共に、主軸頭14(主軸29)の現在位置を認識し得るよう構成される。また制御装置64は、第4位置検出手段45の検出値に基づいて、前記工具マガジン16における12個の保持部44の位置を認識すると共に、前記割出しモータ42を駆動制御して任意の保持部44を前記工具交換位置Pに位置決めし得るよう構成される。
【0027】
図8に示す如く、前記制御装置64には、加工機15、工具マガジン16および測定装置17を制御するための各種データ(情報)を入力する操作部65および該操作部65で入力されたデータ等を表示するディスプレイ(表示手段)66が設けられる。また、制御装置64は、各種データを記憶する記憶部67および演算部68を備えている。記憶部67には、前記工具マガジン16の各保持部44を特定する番地(情報)と、該番地の保持部44に保持されている工具13を特定する工具番号とが対応付けられて記憶(登録)されている。記憶部67には、工具13を特定する工具番号に関連付けて、その工具13の種類、加工部39の長さ寸法および径寸法等の工具データが記憶されており、制御装置64は、工具マガジン16に保持されている全ての工具13の種類を認識し得るようになっている。実施例では、工具13の種類を特定する工具データとしての加工部39の長さ寸法は、前記フランジ部38bから刃部39bの先端までの長さであり、工具13の種類を特定する工具データとしての加工部39の径寸法は、加工部39における刃部39bの最大径部分の直径である。また、制御装置64の記憶部67は、各種の工具13の工具番号に対し、正しい加工部39の長さ寸法、刃部39bの径(最大径部分の直径)寸法が対応付けて格納された工具データベースを有している。
【0028】
前記制御装置64の演算部68は、前記長さ測定手段46の長さ検出センサ57による前記支持軸54bの検出信号に基づいて、工具13における加工部39の長さを算出するよう構成される。具体的に、前記記憶部67には、基準工具69(
図9参照)における加工部39の長さ(フランジ部38bの下面から刃部39bの下端(先端)までの長さ)が、基準長さNとして記憶されている。また、記憶部67には、前記主軸29に装着した基準工具69のフランジ部38bが、前記工具マガジン16のベース板40から所定高さだけ上方に離間するように主軸頭14を上昇させた位置が長さ測定基準位置として記憶される。なお、長さ測定基準位置において加工部39の下端は、前記測定位置に位置付けられる測長部材54における受け部54aより上方に位置する。また、長さ測定基準位置の主軸頭14の下降により前記測定位置に位置付けられた測長部材54が工具13によって押し下げられた際に、前記長さ検出センサ57が支持軸54bの下端を検出したときの下降量が、基準下降量Mとして記憶されている。そして、制御装置64では、加工部39の長さ寸法が未知の被測定工具13の長さ寸法を測定する場合は、被測定工具13が主軸29に装着された主軸頭14を長さ測定基準位置に位置させた後に下降し、前記演算部68によって、前記長さ検出センサ57が支持軸54bの下端を検出するまでの主軸頭14の実下降量Kと、前記基準下降量Mとを比較して、被測定工具13における加工部39の長さ寸法を算出する。
図9に示す如く、例えば、実下降量Kが基準下降量Mより短い場合に演算部68は、被測定工具13の加工部39の長さ寸法が基準工具69の加工部39の長さ寸法より長いと判定し、被測定工具13の加工部39の長さ寸法を、N+(M-K)として算出する。また、実下降量Kが基準下降量Mより長い場合に演算部68は、被測定工具13の加工部39の長さ寸法が基準工具69の加工部39の長さ寸法より短いと判定し、被測定工具13における加工部39の長さ寸法を、N-(K-M)として算出する。そして、制御装置64は、演算部68で算出された加工部39の長寸法の算出値(測定値)を記憶部67に、測定した被測定工具13が保持される保持部44を特定する番地(情報)に対応付けて記憶し得るよう構成される。なお、前記実下降量Kは、前記第3位置検出手段36の検出値によって取得する。
【0029】
前記制御装置64は、長さ測定に際して工具13によって押し下げられる測長部材54が、前記長さ検出センサ57による支持軸54bの検出位置を越えて押し下げられたことを前記下限検出センサ60が検出した場合に、前記主軸頭14の下降を停止して測長部材54や工具13が破損等するのを防止するよう構成される。
【0030】
前記制御装置64の演算部68は、前記径測定手段47の移動量検出手段62で検出される前記ピストンロッド50bの移動量に基づいて、工具13の加工部39における刃部39bの径寸法を算出するよう構成される。制御装置64は、加工部39における刃部39bの径(直径)が未知の被測定工具13の径寸法を測定する場合は、
図7に示す如く、被測定工具13が主軸29に装着された主軸頭14を移動して、刃部39bの外周に径測定手段47の前記当接部材61が径方向から当接可能な径測定位置に被測定工具13の刃部39bを位置決めしたもとで、前記エアシリンダ50を付勢して当接部材61を刃部39bの外周に弱い圧力で当接し、この状態で移動量検出手段62による移動量の検出を開始すると共に、前記主軸29を低速で逆転するように前記主軸モータ37を駆動する。なお、径測定に際して主軸モータ37は、主軸29に装着されている工具13を1回転以上回転するよう設定される。また、前記径測定位置は、前記長さ測定によって算出された加工部39の長さ寸法に基づいて算出されて、該算出した径測定位置に被測定工具13の刃部39bが位置付くまで主軸頭14が下降される。
【0031】
ここで、工具13における刃部39bの外周形状は、刃の形状や刃の数等によって真円形状ではなく、
図10に模式的に示すように外周には凹凸があり、工具13を特定する工具データでは、刃部39bにおける最大径部分を刃部39bの直径として特定されている。そこで、径測定に際しては、刃部39bの回転によって当接部材61が、該刃部39bの外周の凹凸に応じて径方向に進退移動するので、演算部68は、径測定位置に刃部39bを位置決めした主軸29(刃部39b)の軸心位置から当接部材61が離間する方向の移動量検出手段62で検出される移動量(変位量)に基づいて、被測定工具13における刃部39bの径(直径)寸法を算出するようにしている。具体的には、
図10に示す如く、演算部68は、回転していない刃部39bの外周に当接部材61が当接した状態で、既知である径測定位置に刃部39bを位置決めした主軸29(刃部39b)の軸心位置Cと、当接部材61が径測定位置の刃部39bに当接して移動が規制されたときの移動量検出手段62で検出されるピストンロッド50bの原位置(例えば退避位置)からの移動量から得られる当接部材61の軸心位置C1とから、当接部材61および刃部39bの軸心間距離Lを算出する。この軸心間距離Lと、既知である当接部材61の半径Rとから、L-Rを刃部39bの仮の半径r’とする。そして、刃部39bの回転により当接部材61が径方向に進退移動する際の移動量検出手段62で検出される、当接部材61が主軸29(刃部39b)から離間する方向の移動量が最大(軸心位置Cから軸心位置C1が最も離間した位置)となったときの、軸心間距離Lと当接部材61の半径Rとから算出される刃部39bの半径rを実半径とする。すなわち、径測定中における(L-R)の最大値を刃部39bの半径rとし、該半径rから被測定工具13における刃部39bの径(直径2r)寸法を算出する。なお、径測定位置は、主軸29や工具13が前記ベース板40と干渉しない位置として設定されている。
【0032】
ここで、
図10における上側の図では、径測定位置に位置決めされた刃部39bの軸心位置Cと、当接部材61の軸心位置C1とが最も接近した位置で刃部39bの外周に当接部材61が当接している状態を示しているが、径測定位置に位置決めされたときの刃部39bにおける当接部材61を向く外周の部位は制御装置64では認識していない。しかし、径測定に際して工具13を1回転以上回転することで、径測定位置に位置決めされたときの刃部39bにおける当接部材61を向く外周がどの部位であっても、当接部材61が刃部39bの軸心位置Cから離間する方向の移動量検出手段62で検出される移動量が最大となったときの、軸心間距離Lと当接部材61の半径Rとから刃部39bの実半径rを算出することができる。例えば、径測定位置に位置決めされたときの刃部39bが、
図10における上側の図の状態であれば、刃部39bの逆転(図の矢印方向の回転)によって当接部材61は刃部39bの軸心位置Cから離間する方向に移動(
図10の二点鎖線参照)し、両者39b,61の軸心位置C,C1が最も離間する
図10における下側の図の位置に至った後に、当接部材61の移動方向が刃部39bの軸心位置Cに近接する方向に切り替わる。そして、工具13が1回転以上回転する間において、移動量検出手段62で検出される当接部材61の刃部39bの軸心位置Cから離間する方向の移動量が最大となったときの、軸心間距離Lと当接部材61の半径Rとから算出される刃部39bの半径rを実半径とする。すなわち、工具13を1回転以上回転すれば、当接部材61は、刃部39bにおける最大径部分(実施例では刃が設けられている部分)に必ず1回は当接するので、そのときの軸心間距離Lと当接部材61の半径Rとから刃部39bの実半径rを算出することができる。
【0033】
前記制御装置64は、前記測定装置17で測定した被測定工具13における長さ寸法や径寸法の算出値(測定値)を、工具マガジン16の保持部44に作業者の手作業によって保持させた際に前記操作部65によって入力された被測定工具13の工具番号に対応する工具データベースにおける加工部39の長さ寸法および刃部39bの径寸法等の寸法データと比較し、一致していれば算出値(測定値)を被測定工具13の正規の工具データとして、保持部44の番地に対応付けて記憶部67に記憶するよう構成される。また、制御装置64は、算出値(測定値)と、工具データベースの寸法データとが一致していない場合は、算出値(測定値)を被測定工具13の正規の工具データとして記憶部67に記憶することなく、警報ブザーや、警報ランプなどにより異常報知を行うよう構成される。
【0034】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された実施例の穿孔装置10の作用につき説明する。
【0035】
前記穿孔装置10では、前記制御装置64において実行される加工プログラムの指示に従い、複数種類の工具13を工具マガジン16と主軸29との間で交換しながら、前記主軸頭14をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動して、前記載置テーブル12に載置されている被加工材料11における穿孔位置に対して適正な種類の孔を切削加工する。
【0036】
ここで、前記工具マガジン16の所定の番地の保持部44に保持されている工具13を、別の種類の工具13と交換したり、または同種で新しい工具13と交換したりする場合、作業者は、前記制御装置64の操作部65を操作して、工具13を交換する番地の保持部44を、前記工具交換位置Pに移動して位置決めする。そして、該工具交換位置Pに位置する保持部44に保持されている工具13を保持部44から取り外し、別の種類の工具13または同種で新しい工具13を当該の保持部44に取り付ける。また、工具13を交換した場合は、工具交換位置Pに位置する保持部44の番地と対応付けられて記憶されている工具データをリセットし、操作部65を操作して交換した工具13の工具番号を入力することで、当該工具番号が工具交換位置Pに位置する保持部44の番地と対応付けて前記記憶部67に記憶される。
【0037】
前記工具マガジン16の保持部44に対する工具13の交換が行われた場合、操作部65に設けられた測定ボタン(図示せず)を操作することで、前記制御装置64は、工具13が交換された番地の保持部44に保持されている工具13の測定作業を行う。すなわち、前記主軸29に工具13が装着されていない場合は、工具13の交換が行われた保持部44に保持された交換済みの工具13を、前記主軸29に装着するべく主軸頭14を移動して、主軸29を工具交換位置Pの真上に位置付ける。なお、主軸29に工具13が装着されている場合は、当該工具13が保持されていた空の保持部44に戻すべく、工具マガジン16のベース板40を回転して空の保持部44を工具交換位置Pに移動し、前記主軸頭14を移動して空の保持部44に工具13を保持させ、該主軸頭14を保持部44に保持されている工具13と干渉しない工具交換位置Pの真上の位置まで上昇した後、工具13の交換が行われた保持部44を工具交換位置Pに移動する。なお、以後、交換された工具13について、被測定工具13と指称する。
【0038】
前記工具交換位置Pの真上に主軸29を位置付けた主軸頭14を下降し、当該工具交換位置Pに位置する保持部44に保持されている被測定工具13のホルダ38を主軸29に挿入し、該被測定工具13を主軸29に装着する。そして、前記制御装置64は、被測定工具13の加工部39の長さ測定を開始する。この長さ測定は、主軸頭14を上昇して前記長さ測定基準位置に位置させることで、被測定工具13を保持部44から所定高さだけ持ち上げる。また、前記測定装置17のエアシリンダ50を付勢し、
図6に示す如く、退避位置の移動体49を測定位置まで移動することで、前記測長部材54を工具交換位置Pの真下に位置付ける。制御装置64は、主軸頭14を微速で下降するように前記第3駆動モータ33を駆動制御し、これにより前記弾性部材59で付勢されて長さ測定開始位置に位置している測長部材54が、主軸29に装着されている被測定工具13により弾性部材59の付勢力に抗して押し下げられる。前記長さ検出センサ57が、測長部材54の支持軸54bの下端を検出すると、制御装置64は第3駆動モータ33を停止すると共に、長さ測定基準位置から長さ検出センサ57が支持軸54bの下端を検出するまでの主軸頭14の実下降量Kを、前記第3位置検出手段36の検出量から取得する。そして、前記演算部68は、前述したように実下降量Kと前記基準下降量Mとを比較し、被測定工具13の加工部39の長さ寸法を算出(N+(M-K)またはN-(K-M))し(
図9参照)、その算出値(測定値)が被測定工具13の加工部39の長さ寸法として前記記憶部67の所定の領域に仮記憶される。
【0039】
次に、前記制御装置64は、被測定工具13の加工部39における刃部39bの径測定を行う。この径測定は、前記主軸頭14を移動して、
図7に示す如く、被測定工具13の刃部39bを、前記長さ測定によって算出した加工部39の長さ寸法に基づいて算出した前記径測定位置に位置付ける。また、制御装置64は、前記エアシリンダ50を付勢するよう制御して、前記当接部材61を刃部39bの外周に弱い圧力で当接し、この状態で移動量検出手段62による移動量の検出を開始すると共に、前記主軸29を逆転するように前記主軸モータ37を駆動制御する。刃部39bの回転によって当接部材61は、該刃部39bの外周の凹凸に応じて径方向に進退移動し、前記演算部68は、径測定位置に刃部39bを位置決めした主軸29(刃部39b)の軸心位置C、当接部材61の軸心位置C1および移動量検出手段62で検出される移動量に基づいて、被測定工具13における刃部39bの最大径部分の径(直径)寸法を算出し(
図10参照)、その算出値(測定値)が被測定工具13の刃部39bの径寸法として前記記憶部67の所定の領域に仮記憶される。
【0040】
前記制御装置64は、前記測定装置17によって測定された測定値(加工部39の長さ寸法および刃部39bの径寸法)と、前記操作部65によって入力された被測定工具13の工具番号に対応する工具データベースにおける加工部39の長さ寸法および刃部39bの径寸法の寸法データとを比較し、一致していれば測定値を被測定工具13の正規の工具データとして、保持部44の番地に対応付けて記憶部67に記憶する。これに対し、測定値と、工具データベースにおける各寸法データとが不一致である場合、制御装置64は、記憶部67に仮記憶した測定値を被測定工具13の正規の工具データとして記憶することなく消去し、警報ブザーや、警報ランプなどにより異常報知を行う。なお、測定値を前記ディスプレイ66に表示し、作業者が確認し得るようにしてもよい。
【0041】
前記測定装置17による長さ測定や径測定は、個別の保持部44に保持する工具13を交換する場合の他に、穿孔装置10を初期起動する場合や、工具マガジン16の全ての保持部44に対して工具13を交換した場合にも実行され、全ての保持部44に保持している工具13の長さ測定および径測定を行う。
【0042】
実施例の穿孔装置10は、作業者が工具マガジン16に対して手作業によって交換した工具13における加工部39の長さ寸法および径寸法を測定装置17によって測定するよう構成したので、保持部44に保持されるべき工具13の種類が正しいか否かを判別することができ、適正な種類とは異なる工具13によって被加工材料11が加工されてしまったり、適正な種類とは異なる工具13での切削加工には適していない部位を切削加工することで該工具13が破損してしまったりする事態を防ぐことができる。すなわち、作業者の人為的ミスに起因して、誤った加工や不適切な加工が施された被加工材料が製造されてしまったり、工具破損を招いてしまうのを防止できる。また、主軸29に工具13を装着した状態で寸法測定を行うので、寸法測定を行うために工具13を保持する手段を別途設ける必要はなく、機械が複雑となるのを抑制することができる。
【0043】
実施例の穿孔装置10は、前記測長部材54に工具13の加工部39を直接当接して押して、該加工部39の長さ寸法を測定するよう構成したので、該長さ寸法を精度よく測定することができる。また、前記当接部材61を、工具13の加工部39における刃部39bに直接当接して径寸法を測定するよう構成したので、該径寸法を精度よく測定することができる。更に、刃部39bを回転しつつ径寸法を測定するので、刃部39bの外周形状に影響されることなく適正な径寸法を測定することができる。更にまた、径測定に際して刃部39bを回転する方向は、被加工材料11を切削加工する場合とは逆方向としたので、刃部39bに当接する当接部材61を刃によって切削してしまったり、刃部39bの外周に存在する凹部に当接部材61が嵌まり込んで回転が阻害されてしまったりするのを防止することができる。また、長さ測定手段46の測長部材54に、径測定手段47の当接部材61を配設したので、測定装置17をコンパクトにすることができる。更に、長さ測定に際して測長部材54を測定位置と退避位置とに移動するエアシリンダ(移動手段)50を、径測定に際して刃部39bの外周に向けて当接部材61を付勢する付勢手段として兼用するよう構成したので、部品点数を低減すると共に構成を簡単化することができる。
【0044】
また、実施例の穿孔装置10は、前記加工機15をX軸方向に移動する前記台車21に前記工具マガジン16を配設するよう構成したので、前記載置テーブル12に載置されている被加工材料11に孔あけ加工するために加工機15をX軸方向に移動する際には工具マガジン16も一体で移動するので、工具交換のために加工機15を工具マガジン16の位置までX軸方向に移動する必要はなく、工具交換に要するサイクルタイムを短縮することができる。また、前記測定装置17を工具マガジン16に配設してあるので、工具マガジン16に保持される工具13の寸法測定についても、サイクルタイムを短縮することができると共に、工具交換と寸法測定とを略同じ位置で行うことができる。
【0045】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.長さ測定手段や径測定手段としては、実施例で説明した接触式の測定手段に限らず、工具に対して非接触で長さ寸法や径寸法を測定可能な各種の非接式の測定手段を採用することができる。非接触式の測定手段としては、例えば、CCD等の撮像手段で撮像した画像を画像処理した画像データに基づいて、工具における加工部の長さ寸法や径寸法を算出する手段、照射部からレーザ光を加工部に向けて照射し、該加工部から反射したレーザ光を受光部で受光することで算出した距離から長さ寸法や径寸法を算出する手段(レーザ式寸法測定器)、発光部からの光線を加工部に照射し、工具からの反射光または工具の周囲を通過した光線を受光部で受光した受光状態(強度等)の違いに基づいて長さ寸法や径寸法を算出する光学式の手段等、公知の各種手段を採用することができる。
2.実施例では、長さ測定手段の測長部材に、径測定手段の当接部材を回転可能に配設したが、該当接部材を別部材に回転可能に配設し、径測定に際して該部材と共に変位する当接部材の変位量を移動量検出手段によって検出する構成を採用することができる。すなわち、長さ測定手段と径測定手段とは別々に設けられる構成を採用することができる。この構成においては、測長部材を測定位置と退避位置とに移動する移動手段を、移動量検出手段を備えるエアシリンダとは別に設ければよい。
3.実施例では、加工部の長さ測定に際し、測定位置に位置付けた移動体に対し、工具を下降して測長部材を押し下げることで長さ寸法を測定するよう構成したが、長さ測定基準位置に位置付けた工具に対し、移動体をエアシリンダ等の昇降手段により上昇し、工具に当接して押し下げられた測長部材を長さ検出センサで検出したときの移動体の上昇量を適宜の検出手段で検出することで、加工部の長さ寸法を測定する構成を採用することができる。
4.実施例では、当接部材を加工部(刃部)の外周に当接するように付勢するエアシリンダに、移動量検出手段を配設するよう構成したが、当接部材を加工部(刃部)の外周に当接するエアシリンダ等の付勢手段とは別に、移動量検出手段を設ける構成を採用することができる。例えば、当接部材と一体で移動する部材に設けた目盛部を、取付部材等の固定部に配設した検出部で読み取って移動量を検出する構成等を採用できる。また、移動量検出手段としては、磁気式のリニアスケールに限らず、赤外線センサ、超音波センサ、過電流式センサ等の検出部と、該検出部で読み取り可能な目盛部とからなる、各種の方式を採用することができる。
【0046】
5.実施例では、ガントリーユニットと一体で移動する台車に工具マガジンを配設したが、該工具マガジンは、固定位置に配設したものであってもよい。また、工具マガジンおよび加工機の夫々を移動可能に構成し、両方を相互に移動して工具交換や寸法測定を行う構成を採用することができる。
6.実施例では、工具マガジンに測定装置を配設したが、該測定装置については、工具マガジンとは別の場所に配設するようにしてもよい。
7.ガントリーユニットをX軸方向に移動するX軸移動機構、ドリルユニットをY軸方向に移動するY軸移動機構については、ラック-ピニオンを用いた機構に限らず、ボールネジ機構、リニアスライド機構等、公知の各種機構を採用することができる。また、主軸頭をZ軸方向に移動するZ軸移動機構については、ボールネジ機構に限らず、ラック-ピニオンを用いた機構、リニアスライド機構等、公知の各種機構を採用することができる。
8. 制御装置は、測定装置により測定した測定値(算出値)と、工具データベースの対応する寸法データとを比較する比較手段と、該比較手段での比較結果から、主軸に装着されている工具(寸法測定した工具)の種別を判定する判定手段とを備えるようにしてもよい。そして、制御装置は、判定手段での判定結果に基づいて、測定値を記憶部に記憶したり、異常を報知するようにすればよい。
9. 被測定工具における刃部の径寸法を算出する方式としては、基準工具の刃部の径寸法を測定した際の当接部材の移動量と、被測定工具の刃部の径寸法を測定した際の当接部材の移動量とを比較し、算出されている基準工具の刃部の径寸法および比較した移動量の差に基づいて、被測定工具の刃部の径寸法を算出するものであってもよい。
10. 径測定位置に位置付けられた工具の刃部を挟んで当接部材とは反対側に、Z軸回りに回転可能で工具の径方向に移動可能な補助ローラを設け、径測定に際して刃部を、補助ローラと当接部材とで回転を許容する状態で挟むようにする構成を採用することができる。この構成によれば、回転時における工具の径方向の振れを抑制して、精度のよい径測定を行うことができる。なお、補助ローラは、工具の軸を径方向に変位させることなく該補助ローラが刃部の外周の凹凸に応じて径方向に変位し得るように、バネ等の付勢手段によって刃部の外周に当接するようになっていればよい。
【0047】
11. 実施例では、制御装置によって、測定装置で測定した工具の長さ寸法や径寸法の算出値(測定値)を、工具データベースにおける対応する寸法データと比較し、一致していれば算出値(測定値)を工具の正規の工具データとして、保持部の番地に対応付けて記憶部に記憶するよう構成したが、ディスプレイに表示した算出値(測定値)を作業者が確認し、該作業者の操作によって正規の工具データとして保持部の番地に対応付けて記憶部に記憶させることができる。また、算出値(測定値)と寸法データとが一致していない場合に、算出値(測定値)の工具が保持されるべき適正な保持部が他にあれば、該適正な保持部の番地と対応付けて算出値(測定値)を記憶部に手動操作によって記憶させることができる。すなわち、測定装置で測定した工具の長さ寸法や径寸法の算出値(測定値)は、自動または手動によって記憶部に記憶させることができる。
12. 実施例では、被加工材料に対して加工機に設けた工具を移動して、被加工材料を切削加工するよう構成したが、切削加工時には加工機を定位置に固定配置し、被加工材料が載置される載置テーブルを、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に、ラック-ピニオンを用いた機構やボールネジ機構によって移動するよう構成し、定位置の工具に対して被加工材料を移動して切削加工する構成を採用することができる。また、載置テーブルをX軸方向およびY軸方向に移動するよう構成すると共に、加工機の工具をZ軸方向に移動するよう構成し、工具と被加工材料とを相互に移動して切削加工を行う構成を採用することもできる。すなわち、工作機械は、工具と被加工材料とを相対的に移動して、該被加工材料に切削加工を施す構成であればよい。なお、加工機を定位置に固定配置したり、工具をZ軸方向にのみ移動したりする構成では、加工機に工具マガジンを配設すると共に、該工具マガジンと主軸との間での工具交換を、公知の自動工具交換装置(ATC)によって行うようにすればよい。
また、被加工材料の切削加工時に加工機を定位置に固定配置したり、工具をZ軸方向にのみ移動したりする構成において、主軸に装着した工具の寸法測定を行う場合は、定位置に配置した測定装置の位置まで加工機を移動機構によって移動したり、あるいは切削加工時における工具の位置に、測定装置を移動機構によって移動する構成を採用することができる。
13. 実施例では、径測定に際して工具(加工部)を逆転するよう構成したが、正転するものであってもよい。径測定に際して工具(加工部)を正転する場合は、工具を、刃によって当接部材が切削されることのない回転速度とすればよい。
14. 実施例および各変更例で説明した各構成については、本発明の主旨の範囲内において適宜に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0048】
11 被加工材料,12 載置テーブル,15 加工機,16 工具マガジン
18 第1ガイドレール(レール),21 台車,29 主軸
36 第3位置検出手段(長さ検出部),39 加工部,44 保持部
46 長さ測定手段,47 径測定手段,54 測長部材
57 長さ検出センサ(長さ検出部),61 当接部材
62 移動量検出手段(径検出部),67 記憶部