(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】液検知センサ
(51)【国際特許分類】
G01M 3/16 20060101AFI20240205BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G01M3/16 Z
H01M12/06 A
(21)【出願番号】P 2020055491
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 真弘
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124163(JP,A)
【文献】特開2016-148576(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180680(JP,U)
【文献】特開2009-032400(JP,A)
【文献】米国特許第10119884(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
H01M 12/00-16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極とを有し、前記正極と前記負極との間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、
開口部を有し、前記開口部を通して前記液体を収容可能な収容容器と、を具備し、
前記金属空気電池は、前記収容容器内に所定量以上収容された前記液体と接触可能に、前記収容容器に保持されて
おり、
前記収容容器には、前記液体を、前記収容容器内から外部に放出可能な孔が設けられており、前記孔の開口面積は、前記開口部の開口面積よりも小さく形成されており、
前記収容容器は、上部、底部、及び、前記上部と前記底部間を繋ぐ側部、を有し、
前記側部には、前記金属空気電池が前記液体と接触可能な液接触部が設けられており、
前記開口部は、前記上部に設けられ、前記孔は、前記液接触部よりも下方に設けられる、
ことを特徴とする液検知センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池を備えた液検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の作業現場等で、液漏れ検知システムが使用される。液漏れ検知システムでは、液漏れ箇所に、液検知センサを配置する。液検知センサでは、外部から液体が接触した際の電気的な変化を捉え、液漏れを検知する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、液検知センサの近傍に漏液があったときに、導液路を通して、液体が液検知センサに運ばれて、液体を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-133075号公報
【文献】国際公開第2012/020507号
【文献】特開2017-148332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献に記載の発明では、結露と漏水を適切に区別することができない問題があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、結露等の微量な液体は検知せず、誤検知を抑制することができる液検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における液検知センサは、正極と、負極とを有し、前記正極と前記負極との間に液体が浸透することで発電する金属空気電池と、開口部を有し、前記開口部を通して前記液体を収容可能な収容容器と、を具備し、前記金属空気電池は、前記収容容器内に所定量以上収容された前記液体と接触可能に、前記収容容器に保持されており、前記収容容器には、前記液体を、前記収容容器内から外部に放出可能な孔が設けられており、前記孔の開口面積は、前記開口部の開口面積よりも小さく形成されており、前記収容容器は、上部、底部、及び、前記上部と前記底部間を繋ぐ側部、を有し、前記側部には、前記金属空気電池が前記液体と接触可能な液接触部が設けられており、前記開口部は、前記上部に設けられ、前記孔は、前記液接触部よりも下方に設けられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液検センサによれば、金属空気電池とは別に、液体を収容可能な収容容器を備え、金属空気電池は、収容容器内に所定量以上の液体が収容されたときに、液体と接触するように保持されている。これにより、結露程度の少量では、金属空気電池が液体と接触しないように制御することができるので、結露と漏水を適切に区別する液検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、第1の実施の形態における液検知センサの斜視図であり、
図1Bは、
図1Aの斜視図をA-A線に沿って高さ方向に切断し矢印方向から見た断面図である。
【
図2】
図2Aは、第2の実施の形態における液検知センサの斜視図であり、
図2Bは、
図2Aの斜視図をB-B線に沿って高さ方向に切断し矢印方向から見た断面図である。
【
図3】
図3A及び、
図3Bは、液検知センサを構成する金属空気電池の一例を示す拡大断面図である。
【
図4】本実施の形態における液検知センサを備えた液検知装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本実施の形態における液検知センサ1は、金属空気電池2と、金属空気電池2を保持する収容容器7と、を具備する。
図4に示すように、液検知センサ1は、更に、送信部8を備えている。
【0014】
金属空気電池2は、例えば、
図3Aに示す構造を備える。すなわち、金属空気電池2は、負極(負極)3と、正極(正極)5と、負極3及び正極5を支持する筐体6とを有する。
【0015】
筐体6は、空気室6aと、液室6bとの複数の空間を有しており、空気室6aは、例えば、上端が開放されている。空気室6aと液室6bとを隔てる内壁部6cには、空気室6aと液室6bとの間を貫通する窓が設けられており、該窓は、正極5により塞がれている。正極5は、窓枠に接着剤等を介して接合されている。そして、正極5が、空気室6a内にて、内壁部6cにより保持された状態では、正極5の一方の面5aは、空気室6a側に露出している。また、正極5の他方の面5bは、負極3と対向している。このように、空気室6aは、筐体6と正極5の組立により、上端を除いて閉塞空間とされている。したがって、空気は、空気室6a内を満たし、正極5と接触している。
【0016】
図3Aに示すように、負極3は、液室6b内に配置されている。負極3と正極5との間には、間隔が空いており、負極3と正極5との間に、液室6b内に流入した液体を介在させることができる。
図3Aに示すように、負極3の下部は、自由端であることが好ましい。このように自由端とすることで、負極3の下部を揺動させることができる。このため、正極5と負極3との間に生成物が堆積したときに、負極3を撓らせることができ、生成物による押圧力を緩和でき、負極3及び正極5の破損を抑制することが出来る。
【0017】
図3Aに示すように、筐体6には、液室6bに通じる給水口10が設けられている。液体は、この給水口10を通じて、液室6b内に供給される。
【0018】
負極3を構成する金属は、マグネシウム(Mg)、Mg合金、亜鉛(Zn)、Zn合金、アルミニウム(Al)、或いは、Al合金のうちいずれかであることが好ましい。このうち、負極3を構成する金属は、Mg、或いは、Mg合金であることがより好ましい。
【0019】
正極5は、集電体と触媒層(反応部)とを有して構成される。集電体に求められる特性は、負極3から放出される電子を、触媒層へ伝える導電性と、酸素を透過させる通気性である。集電体の構成を限定するものでないが、例えば、金網や発泡金属等、既存のものを用いることができる。また、触媒層に求められる特性は、液体を外部に放出しない疎水性及び、酸素を透過させる通気性である。触媒層には既存の材質を用いることができる。触媒層は、少なくとも集電体の一方の面に形成されている。
【0020】
図1A及び、
図1Bに示すように、収容容器7は、上部7aと、底部7bと、上部7aと底部7bとの間を繋ぐ側部7cと、を有して構成される。上部7aには、開口部11が形成されている。また、
図1Bに示すように、金属空気電池2が保持される収容容器7の側部7cの一部は、開口しており、この開口した部分が、液接触部7dを構成している。
【0021】
図1B及び、
図3Aに示すように、金属空気電池2は、液接触部7dを塞ぐように、側部7cの外面に取り付けられる。これにより、第1の実施の形態における収容容器7は、上部7aに形成された開口部11を除いて密閉された空間を構成している。
図3Aに示すように、金属空気電池2の給水口10は、収容容器7の液接触部7dと対向している(接している)。これにより、収容容器7に収容された液体は、液接触部7dを介して給水口10から金属空気電池2の液室6b内に供給される。
【0022】
水を含有する液体が、液室6bに供給されると、例えば、負極3を構成する金属が、Mgであるとき、負極3側では、下記(1)で示す酸化反応が生じる。また、正極5においては、下記(2)で示す還元反応が生じる。したがって、金属空気電池2の全体としては、下記(3)に示す反応が起こり、発電(放電)が行われる。
(1)2Mg →2Mg2++4e-
(2)O2+2H2O+4e- →4OH-
(3)2Mg+O2+2H2O →2Mg(OH)2
【0023】
本実施の形態では、
図1Bに示すように、収容容器7の液接触部7dは、底部7bから所定高さの位置に設けられている。したがって、開口部11から収容容器7内に供給された液体が液接触部7dの位置まで溜まって初めて、金属空気電池2の液室6bに液体が供給される。このため、結露程度の微量な液体では、液接触部7dまで液体が溜まるほどの液量はなく、上記(3)の電池反応は生じず、発電しない。すなわち、結露が生じても、金属空気電池2は発電せず、液検知センサ1は液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、液接触部7dまで溜まり、液体が、液接触部7dから金属空気電池2内に供給されることで、金属空気電池2が発電し、液検知センサ1により漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサ1では、結露と漏水とを適切に区別した液検知が可能になる。これにより、結露の際に金属空気電池2が発電して誤検知することを防止することができる。また、本実施の形態では、金属空気電池2を収容容器7に保持する簡易な構造で、結露と漏水とを区別可能な液検知センサ1を実現することができる。
【0024】
図2Aは、第2の実施の形態における液検知センサの斜視図であり、
図2Bは、
図2Aの斜視図をB-B線に沿って高さ方向に切断し矢印方向から見た断面図である。
【0025】
図2Bでは、
図1Bと異なって、収容容器7の底部7bに複数の孔7eが形成されている。これら孔7eを合わせた開口面積は、上部7aに形成された開口部11の開口面積より小さい。このように底部7bに孔7eを設けることで、開口部11から収容容器7内に収容される結露程度の少量の液体は、孔7eから外部に放出されて収容容器7内に溜まるのを抑制できる。また、孔7eの開口面積を、開口部11の開口面積より小さくすることで、開口部11から収容容器7内に漏水が収容された際に、孔7eから外部に放出される液量よりも、供給量が上回り、収容容器内に液体を溜めることができ、液検知が可能になる。孔7eの開口面積と開口部11の開口面積との比や、液接触部7dの底部7bからの高さ位置は、検知範囲の漏水量などに応じて適切に調整することができる。孔7eの数は、複数個でなく、1つであってもよい。また、孔7eを形成する位置は、底部7bに限定されるものでなく、液接触部7dより下側の側部7cであってもよい。
【0026】
また、
図2に示す収容容器7のように、液接触部7dよりも下方に、開口部11よりも小さい面積の孔7eを設けることで、収容容器7を小さい容量としても、結露等の検知範囲外の少量の液体が液接触部7dまで溜まらないように制御することができる。これにより、液検知センサ1の小型化を図ることができる。
【0027】
また、金属空気電池2の構成は、
図3Aに示すように、正極5及び負極3を支持する筐体6内に液室6bとなる空間を設け、この液室6b内に、収容容器7の液接触部7dを通して液体が流れ込む構造としてもよいし、
図3Bに示すように、正極5と負極3の間にセパレータ12を介在させる構成としてもよい。
【0028】
図3Bに示す金属空気電池では、負極(金属極シート)3と、セパレータ12と、正極(空気極シート)5とが、積層されたラミネート構造である。
【0029】
限定するものではないが、各シート間を、粘着層を介して固定することができる。負極3及び正極5の材質は、上記に記載した通りである。セパレータ12は、電気的に絶縁性、イオン透過性、及び、液浸透性を有する材質で形成される。例えば、不織布、織布、多孔性薄膜等である。
【0030】
図3Bに示すように、セパレータ12は、正極5と負極3の間に挟まれた検知領域12´´と、該セパレータ12が折り曲げられて、負極3の外面3bと重なる液吸収領域12´と、を有する。
図3Bに示すように、金属空気電池2を構成するセパレータ12の液吸収領域12´を、収容容器7の側部7cに開口した液接触部7d側に向けて、金属空気電池2が、側部7cの外面に保持される。これにより、セパレータ12の液吸収領域12´と、液接触部7dとが対向した(接した)状態にでき、液接触部7dを通して供給される液体を、セパレータ12の液吸収領域12´から吸収することができる。液体は、液吸収領域12´から検知領域12´´にわたって、浸み込まれることで、上記の電池反応が生じ、金属空気電池2を発電させることができる。
【0031】
図3Bに示したラミネータ構造の金属空気電池2を用いた場合でも、結露程度の微量な液体は、収容容器7の液接触部7dまで溜まらず、したがって、上記の電池反応は生じない。したがって、金属空気電池2は発電せず、液検知センサ1は液検知しない。これに対し、結露よりも液量の多い、例えば、漏水時には、液体が、収容容器7の液接触部7dまで溜まり、したがって、液体は、金属空気電池2のセパレータ12に浸み込まれる。これにより、金属空気電池2が発電し、液検知センサにより漏水を検知することができる。このように、本実施の形態の液検知センサでは、結露と漏水とを適切に区別することができ、したがって、結露の際に金属空気電池2が発電して誤検知することを防止することができる。
【0032】
本実施の形態では、液検知センサ1の金属空気電池2が液体と接触することで発電し、その電力で無線基板を起動させることができ、液体との接触を外部へ報知することができる。
図4に示すように、本実施の形態における液検知センサ1は、金属空気電池2と、送信部8と、を有する。例えば、送信部8が無線基板である。本実施の形態では、無線報知を可能とするが、更に、その機能に付随して次のような機能を持たせることも可能である。すなわち、金属空気電池2では、液漏れに基づく電池反応により電圧値(抵抗値)が変化する。この電圧変化に基づく検知信号を、送信部8から無線で受信部9に送信する。受信部9では受信した検知信号に基づいて、液漏れが発生したことを検知し、自動的に装置等を停止させたり、人に、液漏れが生じたことを報知することができる。このとき、検知信号に対し閾値を用いて、検知信号のレベルが閾値を越えた場合に、液漏れが生じたと判別したり、液漏れのレベルを判断することもできる。一方、結露が生じても、金属空気電池2は電池反応せず、電圧変化は生じない。したがって、検知信号が、送信部8から受信部9に送信されることはなく、誤検知を防止することができる。
【0033】
本実施の形態では、液検知センサ1は、外部電源を必要とせず、無線で、金属空気電池で得られた検知信号を送信部8から受信部9に送ることができる。無線方式を限定するものでなく、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi等、既存の方式を用いることができる。
【0034】
本実施の形態の液検知センサ1は、液体の接触により、自己発電するが、このように、自己発電させるには、必ずしも必要ではないが、液体内に塩が存在している方が望ましい。塩を限定するものではないが、例えば、塩化ナトリウムを挙げることができる。したがって、液体が塩を含まない成分である場合、セパレータや液室内に塩を含ませておくことが好ましい。
本実施の形態の液検知センサ1の使用用途を限定するものではないが、屋内での作業現場等に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の液検知センサによれば、漏水検知センサとして、有効に適用することが出来る。特に、本発明では、小型の液検知センサを実現でき、且つ液検知センサは、外部電源を必要としない。したがって、使い勝手に優れ、対象物や場所を問わず、簡単に使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 :液検知センサ
2 :金属空気電池
3 :負極
5 :正極
6 :筐体
6a :空気室
6b :液室
6c :内壁部
7 :収容容器
7a :上部
7b :底部
7c :側部
7d :液接触部
7e :孔
8 :送信部
9 :受信部
10 :給水口
11 :開口部
12 :セパレータ
12´ :液吸収領域
12´´ :検知領域