IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ YKK AP株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-止水構造、及び、止水方法 図1
  • 特許-止水構造、及び、止水方法 図2
  • 特許-止水構造、及び、止水方法 図3
  • 特許-止水構造、及び、止水方法 図4
  • 特許-止水構造、及び、止水方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】止水構造、及び、止水方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
E04B1/684 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020071937
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167550
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135369(JP,A)
【文献】特開平08-042701(JP,A)
【文献】特開平05-186751(JP,A)
【文献】特開2007-270532(JP,A)
【文献】特開2017-014827(JP,A)
【文献】特開2000-234415(JP,A)
【文献】実開昭62-045000(JP,U)
【文献】特開2017-193920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0049462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04B 1/58
E04B 1/62-1/99
E04B 2/56
E04D 3/40
E04D 13/18
E04F 13/08
F16B 33/06
F16B 35/00
F16B 43/00
F16J 15/06
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部が設けられており、前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水構造であって、
前記仕切り部、前記防水シート、及び、前記木質部に各々設けられ、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし当該ねじが螺合可能な内面を有する下孔に、
前記ねじが各々の前記下孔に螺合されており、
前記ねじの谷と前記内面との間の空隙に、水を吸収して膨潤する水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が設けられていることを特徴とする止水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の止水構造であって、
前記仕切り部と、前記防水シートとの間に、他の部材が存在する場合には、前記他の部材に、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし当該ねじが螺合可能な前記下孔が設けられていることを特徴とする止水構造。
【請求項3】
請求項1に記載の止水構造であって、
前記木質部は、前記仕切り部側に当該仕切り部とは反対側に窪み、前記ねじ山の外径よりも大きな内径をなし、前記木質部の前記下孔と繋がる凹部を有し、
前記凹部内に前記不定型止水材が設けられていることを特徴とする止水構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の止水構造であって、
前記木質部は建物の躯体であり、
前記仕切り部は前記建物の外壁であり、
前記ねじにより前記建物に付設物が取り付けられることを特徴とする止水構造。
【請求項5】
防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側と、を仕切る仕切り部の前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水方法であって、
前記仕切り部、前記防水シート、及び、前記木質部に、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし、内面に前記ねじが螺合される下孔を形成する第一ステップと、
水を吸収して膨潤する水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が先端側に設けられた前記ねじを、各々の前記下孔に螺合して、前記ねじの谷と前記内面との間の空隙に前記水吸収性膨潤樹脂を備える第二ステップと、
を有することを特徴とする止水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじが螺合される螺合部の止水構造及び止水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ねじが螺合される螺合部の止水構造として、建物の床と壁との入隅となる隅角部において、床の上面に敷設された防水シートが壁の下部を覆うように立ち上げられた立上げ部の上縁とその上方の壁面とに跨って防水テープを配置し、立上げ部及び防水テープを覆う水切り材を、防水テープを貫通する固定ねじにより壁に取り付ける水切り構造は知られている(例えば、特許文献1参照)。この水切り構造では、水切り材を取り付ける際に、固定ねじの先端にコーキング材などの不定型止水材を塗布してねじを締め込むことにより、固定ねじに塗布されていた不定型止水材が水切り材の貫通孔や防水テープの上縁付近に広がって、防水処理が施されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-193920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにねじの先端に塗布したコーキング材など不定型止水材は、ねじを締め込む際にねじが螺合される部材により刮ぎ取られる。このとき、刮ぎ取られる不定型止水材は、防水シートやねじが螺合される部材の周囲に残存するが、ねじの全周に確実に残存するとは限らず、不定型止水材が偏ってしまう虞がある。このとき、ねじが螺合されている部材が外部に露出している場合には、不定型止水材がいき渡っていない箇所に追加の不定型止水材を補充すればよいが、たとえば、外壁に部材を取り付ける際などに、外壁の内側に設けられている躯体などに、ねじを螺合する場合には、外壁に遮られて不定型止水材を追加補充することができず、確実に止水することができない虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、仕切り部により遮られて露出していない部位に螺合されるねじの螺合部をより確実に止水することが可能な止水構造、及び、止水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部が設けられており、前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水構造であって、前記仕切り部、前記防水シート、及び、前記木質部に各々設けられ、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし当該ねじが螺合可能な下孔に、前記ねじが各々の前記下孔に螺合されており、前記ねじの谷に、水を吸収して膨潤する水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が設けられていることを特徴とする止水構造である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、仕切り部により遮られて露出していない部位に螺合されるねじの螺合部をより確実に止水することが可能な止水構造、及び、止水方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る止水構造を示す断面の模式図である。
図2】本発明の止水方法を示す断面の模式図である。
図3】不定型止水材に含まれている水吸収性膨潤樹脂が膨潤した状態を示す模式図である。
図4】躯体に凹部が設けられている止水構造において不定型止水材に含まれている水吸収性膨潤樹脂が膨潤した状態を示す模式図である。
図5】胴縁を有していない場合における止水構造を示す断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る止水構造について図面を参照して説明する。
本実施形態の止水構造は、例えば、建物の屋外に設けられるバルコニーの手すりや、サンルームなどの屋根の建物側を支持する垂木掛け、アウターシェードや壁付け面格子など、種々の建物付設物を構成する部材を建物に取り付けるねじが躯体などに螺合されている螺合部の止水構造である。このため、以下の説明では、外壁1に取り付けられる部材を、取付部材2と称し、図面上では、外壁1に当接されてねじ3により取り付けられる取付部材2の断面を矩形にて模式的に示して説明する。
【0010】
まず、取付部材2が取り付けられる外壁1を有する建物の構造について説明する。
図1に示すように、建物の木質部としての躯体4は、屋外側の面4aが透湿防水シート(防水シート)5に覆われており、透湿防水シート5の屋外側には、上下方向に沿って設けられた複数の胴縁6を介してサイディング材などでなる外壁1が設けられている。すなわち、透湿防水シート5に覆われた躯体4の屋外側に、防水シート5と間隔を空けて外壁1が設けられており、複数の胴縁6は、外壁1と透湿防水シート5との間に、水平方向に互いに適宜間隔を空けて設けられている。
【0011】
取付部材2は、既に設けられている外壁1に当接され、外壁1を貫通するねじ3が躯体4に螺合されて取り付けられる。このため、ねじ3が貫通する位置には、外壁1と透湿防水シート5との間に、胴縁6が存在する場合と、胴縁6が存在しない場合とのいずれの場合もあり得る。ここでは、外壁1と透湿防水シート5との間に胴縁6が存在する位置にねじ3を貫通させる場合を例に挙げて説明する。ここで、外壁1が、防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部に相当し、胴縁6が、仕切り部と防水シートとの間に存在する他の部材に相当する。また、仕切り部に仕切られた外側は屋外側に相当し、内側は屋内側に相当する。
【0012】
取付部材2を固定するねじ3は、躯体4に螺合するねじ部3aと、締め込まれたときに取付部材2の屋外側の面2aに当接されるねじ頭部3bと、を有している。本実施形態においては、図2(b)に示すように、螺合前のねじ3の先端側には、周面にSAPなど水を吸収して膨潤する水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材7が設けられている。
【0013】
外壁1、躯体4、透湿防水シート5、及び、胴縁6には、ねじ3の谷3cの径D1よりも大きな内径D2をなし当該ねじ3が螺合可能な下孔1a、4b、5a、6aが同軸上に設けられている。取付部材2には、ねじ3のねじ頭部3bよりも小さく、ねじ山の外径D3よりも大きな内径D4をなし、ねじ3が貫通する貫通孔2bが設けられている。
【0014】
取付部材2は、取付部材2の貫通孔2bを貫通したねじ3が、外壁1の下孔1a、胴縁6の下孔6a、及び、透湿防水シート5の下孔5aに螺合しつつ屋外側から屋内側に向かって進入し躯体4の下孔4bに螺合されることにより、外壁1とねじ頭部3bに挟持されて固定されている。本実施形態においては、透湿防水シート5の厚みが薄いので、実質的にねじ3は透湿防水シート5を単に貫通しているが、ねじ3は回転しつつ進入するので、透湿防水シート5をねじ3が貫通している状態を螺合と表現する。
【0015】
ねじ3が螺合される際には、ねじ3の先端側に設けられていた不定型止水材7が、外壁1の下孔1aに螺合される際に、外壁1にねじ山の頂部側の部位が外壁1に噛み込むことにより不定型止水材7が刮ぎ取られるとともに、外壁1と接触していないねじ3の谷3cと下孔4bの内面との間に形成される空隙S内に押し込められる。空隙S内に押し込められた不定型止水材7は、空隙S内に残存すると共に、空隙S内に留まりきれず余剰となった不定型止水材7は、ねじ3の谷3cにより形成されているねじ溝3dに沿って、ねじ頭部3b側に順次押し出され、ねじ溝3d内に残存していく。
【0016】
外壁1を貫通しねじ3は、ねじ溝3dに不定型止水材7が残存した状態で、胴縁6の下孔6a、透湿防水シート5の下孔5a、躯体4の下孔4bと順次螺合される。ねじ3が締め込まれて取付部材2が外壁1とねじ頭部3bとの間に挟持された状態で、ねじ3の谷3cには、ほぼ全長に亘って不定型止水材7が設けられている。このとき、ねじ3が螺合されている外壁1、躯体4、透湿防水シート5、及び、胴縁6の各下孔1a、4b、5a、6aの内面とねじ3の谷3cとの間にも不定型止水材7が設けられている。このため、例えば、透湿防水シート5と、躯体4との間に進入した雨水などの水が不定型止水材7に至ると、不定型止水材7に含まれている水吸収性膨潤樹脂が膨潤し、膨潤した不定型止水材7がねじ3の周りを止水し、また、躯体4と透湿防水シート5との間、及び、透湿防水シート5と胴縁6との間に膨出して止水する。
【0017】
取付部材2を取り付けるねじ3の螺合部における止水方法は、は、まず、取付部材2を取り付けたい位置、すなわちねじ止めしたい位置に、ドリル等で、図2(a)に示すように、ねじ3用の下孔1a、4b、5a、6aを形成する(第一ステップ)。このとき、外壁1の屋外側から屋内側に向かって、躯体4に至るように、外壁1の下孔1a、透湿防水シート5の下孔5a、及び、胴縁6の下孔6aを順次形成して躯体4に下孔4bを形成する。
【0018】
次に、図2(b)に示すように、貫通孔2bを設けた取付部材2を、外壁1の下孔1aの位置に合わせて配置し、取付部材2の屋外側から、先端側に不定型止水材7が設けられているねじ3を挿入し、外壁1の下孔1a、透湿防水シート5の下孔5a、胴縁6の下孔6a、躯体4の下孔4bに順次螺合する(第二ステップ)。
【0019】
本実施形態の止水構造によれば、ねじ3が螺合されている各下孔1a、4b、5a、6aは、ねじ3の谷3cの径D1よりも大きな内径D2をなしているので、ねじ3の谷3cと下孔1a、4b、5a、6aの内面との間には空隙Sが存在する。このため、ねじ3の谷3cに設けられている水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材7は、ねじ3が螺合されている箇所の空隙S内及び螺合されていない箇所のねじ3の外周面の、いずれにも存在している。
【0020】
外部から進入した水が、不定型止水材7に含まれた水吸収性膨潤樹脂に吸収されると、図3に示すように、ねじ3の外周部にて膨潤した不定型止水材7aが躯体4と透湿防水シート5との間、透湿防水シート5と胴縁6との間、および、胴縁6と外壁1との間、に膨出すると共に、ねじ3の谷3cと下孔1a、4b、5a、6aの内面との間に形成されている空隙S内でも膨潤する。このため、透湿防水シート5の屋外側から躯体4側に水が浸入することを防止することが可能である。よって、外壁1により遮られて露出していない躯体4にねじ3を螺合しつつもより高い止水性を備えることが可能である。
【0021】
また、本実施形態の止水方法によれば、外壁1、躯体4、透湿防水シート5、及び、胴縁6に、ねじ3の谷3cの径D1よりも大きな内径D2をなす下孔1a、4b、5a、6aを形成し、当該下孔1a、4b、5a、6aに先端側に水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材7が設けられたねじ3を螺合するだけで、ねじ3の谷3cと下孔1a、4b、5a、6aの内面との間の空隙Sを含むねじ3全体の谷3cに不定型止水材7を備えることが可能である。このため、躯体4においてねじが螺合されているねじ螺合部への水の浸入を容易に防止することが可能である。また、ねじ3が螺合される躯体4が、外壁1により仕切られていても、ねじ螺合部をより確実に容易に止水することが可能である。すなわち、外壁1により遮られて露出していない躯体4にねじ3を螺合しつつもより高い止水性を備えることが可能な止水方法を提供することが可能である。
【0022】
上記実施形態においては、躯体4に下孔4bのみを形成し、当該下孔4bにねじ3を螺合する例について説明したが、これに限るものではない。例えば、図4(a)に示すように、躯体4の外壁1側に、当該屋内側に窪み、ねじ山の外径D3よりも大きな内径D5をなし、躯体4の下孔4bと繋がる凹部4cが設けられている構成としてもよい。
【0023】
この場合には、躯体4に設けられて外壁1とは反対側となる屋内側に窪み、ねじ山の外径D3よりも大きな内径D5をなす凹部4cは下孔4bと繋がっているので、躯体4の下孔4bに螺合されているねじ3の透湿防水シート5側の周りに存在する凹部4cにも水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材7が存在している。このため、凹部4c内の不定型止水材7に水が至ると、図4(b)に示すように、凹部4c内においても不定型止水材7が膨潤するので、躯体4にねじ3が螺合されている螺合部側への水の浸入をより確実に防止することが可能である。
【0024】
また、この場合には、凹部4cを形成する際に、外壁1の屋外側からドリル等により、外壁1、透湿防水シート5、及び、胴縁6にも、凹部4cの内径D5と同径の貫通孔を形成すると施工が容易である。
【0025】
また、上記実施形態においては、外壁1と透湿防水シート5との間に胴縁6が存在する位置にねじ3を貫通させる場合を例に挙げて説明したが、胴縁が存在しない位置にねじ3を貫通させる場合には、図5に示すように、外部から進入した水が、不定型止水材7に含まれた水吸収性膨潤樹脂に吸収されると、ねじ3の外周部にて膨潤した不定型止水材7aが躯体4と透湿防水シート5との間、透湿防水シート5と外壁1との間に膨出すると共に、ねじ3の谷3cと下孔1a、4b、5aの内面との間に形成されている空隙S内でも膨潤する。このため、透湿防水シート5の屋外側から躯体4側に水が浸入することを防止することが可能である。
【0026】
上記実施形態においては、木質部を躯体4とし、仕切り部を外壁1とした例について説明したが、これに限るものではなく、防水シートで覆われた木質部が設けられている内側と、外側と、を仕切る仕切り部に、木質部に螺合するねじにより部材を取り付ける場合であれば適用可能である。
【0027】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
【0028】
防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側とを仕切る仕切り部が設けられており、前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水構造であって、前記仕切り部、前記防水シート、及び、前記木質部に各々設けられ、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし当該ねじが螺合可能な下孔に、前記ねじが各々の前記下孔に螺合されており、前記ねじの谷に、水を吸収して膨潤する水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が設けられていることを特徴とする止水構造である。
【0029】
このような止水構造によれば、ねじが螺合されている各下孔は、ねじの谷の径よりも大きな内径をなしているので、ねじの谷と下孔の内面との間には空隙が存在し、ねじの谷に設けられている水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材は、ねじが螺合されている箇所の空隙及び螺合されていない箇所のねじの外周面の、いずれにも存在している。このため、外部から侵入した水が、不定型止水材に含まれた水吸収性膨潤樹脂に吸収されると、ねじの外周部にて膨潤した不定型止水材が木質部と防水シートとの間、および、仕切り部と防水シートとの間に膨出すると共に、ねじの谷と下孔の内面との間に形成されている空隙内でも膨潤する。このため、防水シートの外部側から木質部側に水が浸入することを防止することが可能である。よって、仕切り部により遮られて露出していない部材にねじを螺合しつつもより高い止水性を備えることが可能である。
【0030】
かかる止水構造であって、前記仕切り部と、前記防水シートとの間に、他の部材が存在する場合には、前記他の部材に、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし当該ねじが螺合可能な前記下孔が設けられていることを特徴とする。
【0031】
このような止水構造によれば、仕切り部と防水シートとの間に存在する他の部材にも、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし当該ねじが螺合可能な下孔が設けられているので、他の部材の下孔の内面とねじの谷との間にも空隙が形成され、空隙内に水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が存在する。このため、外部から侵入した水が、不定型止水材に含まれた水吸収性膨潤樹脂に吸収されると、ねじの外周部にて膨潤した不定型止水材が木質部と他の部材との間、および、他の部材と防水シートとの間に膨出すると共に、ねじの谷と他の部材の下孔の内面との間に形成されている空隙内でも膨潤する。このため、仕切り部と防水シートとの間に他の部材が存在する場合であっても、螺合部をより確実に止水することが可能である。
【0032】
かかる止水構造であって、前記木質部は、前記仕切り部側に当該仕切り部とは反対側に窪み、前記ねじ山の外径よりも大きな内径をなし、前記木質部の前記下孔と繋がる凹部を有し、前記凹部内に前記不定型止水材が設けられていることを特徴とする。
【0033】
このような止水構造によれば、木質部に設けられて仕切り部とは反対側に窪み、ねじ山の外径よりも大きな内径をなす凹部は下孔と繋がっているので、木質部に螺合されているねじの防水シート側の周りに存在する凹部に水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が存在している。このため、凹部内の不定型止水材に水が至ると凹部内においても不定型止水材が膨潤するので、木質部にねじが螺合されている螺合部側への水の浸入をより確実に防止することが可能である。
【0034】
かかる止水構造であって、前記木質部は建物の躯体であり、前記仕切り部は前記建物の外壁であり、前記ねじにより前記建物に付設物が取り付けられることを特徴とする。
【0035】
このような止水構造によれば、ねじが螺合される躯体側と屋外とが外壁により仕切られていても、ねじの螺合部をより確実に且つ容易に止水することが可能である。すなわち、外壁により遮られて露出していない躯体にねじを螺合しつつもより高い止水性を備えて付設物を建物に取り付けることが可能である。
【0036】
また、防水シートで覆われた木質部が設けられた内側と、外側と、を仕切る仕切り部の前記外側から進入するねじが前記木質部に螺合される部位の止水方法であって、前記仕切り部、前記防水シート、及び、前記木質部に、前記ねじの谷の径よりも大きな内径をなし当該ねじを螺合するための下孔を形成する第一ステップと、水を吸収して膨潤する水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が先端側に設けられた前記ねじを、各々の前記下孔に螺合する第二ステップと、を有することを特徴とする止水方法である。
【0037】
このような、止水方法によれば、仕切り部、防水シート、及び、木質部に設けられ、ねじの谷の径よりも大きな内径をなす下孔に、先端側に水吸収性膨潤樹脂を含む不定型止水材が設けられたねじを螺合するだけで、ねじの谷と下孔の内面との間を含むねじ全体の谷に不定型止水材を備えることが可能である。このため、木質部におけるねじ螺合部への水の浸入を容易に防止することが可能である。また、ねじが螺合される木質部側と屋外とを仕切る仕切り部材により仕切られていても、螺合部をより確実に容易に止水することが可能である。すなわち、仕切り部により遮られて露出していない部材にねじを螺合しつつもより高い止水性を備えることが可能な止水方法を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 外壁、1a 外壁の下孔、2 取付部材、2b 貫通孔、3 ねじ、
3c ねじの谷、4 躯体、4b 躯体の下孔、4c 凹部
5 透湿防水シート、5a 透湿防水シートの下孔、6 胴縁、
6a 胴縁の下孔、7 不定型止水材、
D1 ねじの谷の径、D2 下孔の内径、D3 ねじ山の外径、
D4 貫通孔の内径、D5 凹部の内径
図1
図2
図3
図4
図5