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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】嵌合具及び嵌合具付き袋体
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/16 20060101AFI20240205BHJP
   B65D 33/25 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D33/25 A BRA
B65D33/25 BSF
B65D33/25 BSQ
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020072966
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021168783
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】中島 正義
(72)【発明者】
【氏名】和田 佳典
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0174386(US,A1)
【文献】特開2017-114495(JP,A)
【文献】特開2016-140629(JP,A)
【文献】特開2011-167260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/16
B65D33/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1嵌合部材と、
前記第1嵌合部材と対になる帯状の第2嵌合部材と、を備え、
前記第1嵌合部材は、帯状の第1基材と、
前記第1基材の一方の面において、前記第1基材の長手方向に沿って設けられた第1嵌合部と、を有し、
前記第2嵌合部材は、帯状の第2基材と、
前記第2基材の一方の面において前記第2基材の長手方向に沿って設けられ、前記第1嵌合部と着脱自在に嵌合可能な第2嵌合部と、を有し、
前記第1基材及び前記第2基材は、樹脂組成物(A)を形成材料として含み、
前記樹脂組成物(A)は、化石燃料由来のプロピレンを含むモノマーを重合させて得られる化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合させて得られるバイオマス由来のポリエチレン系樹脂とを含み、
前記樹脂組成物(A)における前記化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率は、前記樹脂組成物(A)の全体量に対して55質量%以上90質量%以下である嵌合具。
【請求項2】
前記第1基材の他方の面において、前記第1基材と重なって設けられた第1シール層を有し、
前記第1シール層の形成材料は、樹脂組成物(B)であり、
前記樹脂組成物(B)は、化石燃料由来のエチレンの単独重合体と、化石燃料由来のエチレンと化石燃料由来のα-オレフィンとの共重合体との少なくとも一方を含む請求項に記載の嵌合具。
【請求項3】
前記第2基材の他方の面において、前記第2基材と重なって設けられた第2シール層を有し、
前記第2シール層の形成材料は、前記樹脂組成物(B)である請求項に記載の嵌合具。
【請求項4】
前記嵌合具における前記化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率が60質量%以上90質量%以下である請求項1からのいずれか1項に記載の嵌合具。
【請求項5】
前記嵌合具における前記化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率が60質量%以上80質量%以下である請求項4に記載の嵌合具。
【請求項6】
前記バイオマス由来のポリエチレンは、ASTM D6866-11に準拠して測定される植物度が70%以上である請求項1から5のいずれか1項に記載の嵌合具。
【請求項7】
前記ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレートが1.0g/分以上15g/分である請求項1から6のいずれか1項に記載の嵌合具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の嵌合具と、
内容物を収容する袋本体と、を備え、
前記嵌合具は、前記袋本体の内面に取り付けられている嵌合具付き袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合具及び嵌合具付き袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、薬品、雑貨等の様々な分野において、袋本体の開口部近傍の内面に、開口部を開閉自在に封じる嵌合具が取り付けられた嵌合具付き袋体が広く用いられている。嵌合具としては、一対の帯状の基材のそれぞれの対向面に、互いに着脱自在に嵌合する第1嵌合部と第2嵌合部が、それら基材の長手方向に沿ってそれぞれ設けられたものが挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-160147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているような従来の嵌合具は、樹脂材料として化石燃料由来のポリエチレン等を用いており、環境負荷や枯渇資源の節約に対応できていない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、環境負荷の低減が可能な嵌合具を提供することを目的とする。また、このような嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の態様を採用することができる。
【0007】
[1]帯状の第1嵌合部材と、前記第1嵌合部材と対になる帯状の第2嵌合部材と、を備え、前記第1嵌合部材は、帯状の第1基材と、前記第1基材の一方の面において、前記第1基材の長手方向に沿って設けられた第1嵌合部と、を有し、前記第2嵌合部材は、帯状の第2基材と、前記第2基材の一方の面において前記第2基材の長手方向に沿って設けられ、前記第1嵌合部と着脱自在に嵌合可能な第2嵌合部と、を有し、前記第1嵌合部材は、樹脂組成物(A)を形成材料として含み、前記樹脂組成物(A)は、化石燃料由来のプロピレンを含むモノマーを重合させて得られる化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂と、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合させて得られるバイオマス由来のポリエチレン系樹脂とを含む嵌合具。
【0008】
[2]前記第2嵌合部材は、前記樹脂組成物(A)を形成材料として含む[1]に記載の嵌合具。
【0009】
[3]前記第1基材の他方の面において、前記第1基材と重なって設けられた第1シール層を有し、前記第1シール層の形成材料は、樹脂組成物(B)であり、前記樹脂組成物(B)は、化石燃料由来のエチレンの単独重合体と、化石燃料由来のエチレンと化石燃料由来のα-オレフィンとの共重合体との少なくとも一方を含む[1]又は[2]に記載の嵌合具。
【0010】
[4]前記第2基材の他方の面において、前記第2基材と重なって設けられた第2シール層を有し、前記第2シール層の形成材料は、前記樹脂組成物(B)である[3]に記載の嵌合具。
【0011】
[5]前記嵌合具における前記化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率が50質量%以上90質量%以下である[1]から[4]のいずれか1項に記載の嵌合具。
【0012】
[6]前記バイオマス由来のポリエチレンは、ASTMD6866-11に準拠して測定される植物度が70%以上である[1]から[5]のいずれか1項に記載の嵌合具。
【0013】
[7]前記ポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレートが1.0g/分以上15g/分である[1]から[6]のいずれか1項に記載の嵌合具。
【0014】
[8][1]から[7]のいずれか1項に記載の嵌合具と、内容物を収容する袋本体と、を備え、前記嵌合具は、前記袋本体の内面に取り付けられている嵌合具付き袋体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境負荷の低減が可能な嵌合具を提供できる。また、このような嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態の嵌合具を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1のII-IIにおける矢視断面図である。
図3図3は、本実施形態の嵌合具付き袋体100を示す概略正面図である。
図4図4は、袋体100を開口した様子を示す概略斜視図である。
図5図5は、シール温度の評価方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態に係る嵌合具及び嵌合具付き袋体について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0018】
《嵌合具》
図1は、本実施形態の嵌合具を示す概略斜視図である。図2は、図1のII-IIにおける矢視断面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の嵌合具1は第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを備える。第1嵌合部材10及び第2嵌合部材20は、それぞれ帯状の部材である。第1嵌合部材10及び第2嵌合部材20は、対で用いられる。
【0020】
[第1嵌合部材]
第1嵌合部材10は、第1基材11と、第1嵌合部12と、第1シール層15とを有する。
【0021】
(第1基材)
第1基材11は、帯状の部材であり、第1嵌合部12及び第1シール層15を支持する。
【0022】
第1基材11の厚さT1は、0.06mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましい。また、第1基材11の厚さT1は、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。厚さT1の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0023】
第1基材11の厚さT1が下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具1を袋体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られる。第1基材11の厚さT1が上限値以下であれば、本実施形態の嵌合具が柔軟となり、使用感に優れる。
【0024】
第1基材11の幅W1は、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。また、第1基材11の幅W1は、60mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましい。幅W1の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0025】
第1基材11の幅W1が下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具1を袋体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られる。第1基材11の幅W1が上限値以下であれば、取り扱いが容易であり、流通及び保管時に嵌合具1の変形が生じにくい。
【0026】
(樹脂組成物(A))
第1基材11の形成材料は、樹脂組成物(A)である。樹脂組成物(A)は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合させて得られるバイオマス由来のポリエチレン系樹脂と、化石燃料由来のプロピレンを含むモノマーを重合させて得られる化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂とを含む。
【0027】
本明細書において、「バイオマス由来」とは、化石燃料由来と区別するために用いる記載であり、「生物由来の有機性資源であって化石燃料を除いたもの」を意味する。化石燃料とは、石炭、石油及び天然ガスが該当する。
【0028】
「バイオマス由来のエチレン」は、例えばバイオマスである糖を発酵させて得られたエタノールから得られる。バイオマス由来のエチレンとしては、バイオマスから得られたエチレンであれば、製造方法を問わず用いることができる。
【0029】
「バイオマス由来のポリエチレン系樹脂」とは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーを重合させて得られる重合体を意味する。以下の説明では、「バイオマス由来のポリエチレン系樹脂」のことを「ポリエチレン(A)」と略称することがある。
【0030】
「ポリエチレン系樹脂」とは、構成単位としてエチレン由来のポリエチレン構造を有する重合体を意味する。
【0031】
ポリエチレン系樹脂がバイオマス由来であることについては、ASTM D6866-11に準拠して測定される「植物度」によって判断することができる。
【0032】
バイオマス由来のモノマーを構成する炭素は、放射性同位体である放射性炭素(炭素14、14C)を含む。一方、化石燃料由来のモノマーを構成する炭素は、放射性崩壊によって炭素14が減衰し、検出限界以下まで減少している。ASTM D6866-11に準拠した測定では、バイオマス由来の放射性炭素から放出される放射線を検出する。バイオマス由来のモノマーに含まれる炭素14の濃度が既知であれば、測定対象に含まれる炭素14の濃度を測定することによって、バイオマス由来炭素の含有率を算出可能である。算出される「バイオマス由来炭素の含有率」を「植物度」とする。
【0033】
(ポリエチレン(A))
ポリエチレン(A)は、バイオマス由来のエチレンに由来する構成単位に加えて、化石燃料由来のエチレンに由来する構成単位や、α-オレフィンに由来する構成単位をさらに有していてもよい。α-オレフィンは、バイオマス由来であってもよく、化石燃料由来であってもよい。
【0034】
α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン及び4,4-ジメチル-1-ペンテンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。すなわち、ポリエチレン(A)がエチレンに由来する構成単位と、α-オレフィンに由来する構成単位とを有する重合体である場合、ポリエチレン(A)は、エチレンと1種のポリオレフィンとの二元共重合体であってもよく、エチレンと2種のポリオレフィンとの三元共重合体であってもよく、エチレンと3種以上のポリオレフィンとの共重合体であってもよい。
【0035】
さらにポリエチレン(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、エチレン及びα-オレフィン以外の他の単量体に由来する構成単位を有してもよい。
【0036】
他の単量体としては、
酢酸ビニル等のビニルエステル;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;
無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸の無水物;
マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和ジカルボン酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0037】
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを意味する。
【0038】
ポリエチレン(A)の植物度は、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン(A)の植物度は、100%以下であってもよく、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
植物度の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
【0039】
ポリエチレン(A)の植物度が前記範囲の下限値以上であれば、化石燃料由来の単量体の使用量が減るため、環境負荷を低減できる。一方、植物度が高いポリエチレン(A)を多く用いると、嵌合具の表面にべたつきが生じる傾向がある。ポリエチレン(A)の植物度を低くするほど、嵌合具の表面のべたつきを抑制することが容易になる。
【0040】
ポリエチレン(A)の具体例としては、例えば、バイオマス由来のエチレンを用いた極低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。また、ポリエチレン(A)の具体例としては、エチレン-α-オレフィン共重合体である線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。
【0041】
ポリエチレン(A)の市販品としては、例えば、Braskem社製の商品名「SHC7260」、「SHD7255LSL」、「SLH218」、「SLL118」等が挙げられる。
【0042】
樹脂組成物(A)に含まれるポリエチレン(A)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0043】
(ポリエチレン(A)の物性値)
樹脂組成物(A)に含まれるポリエチレン(A)は、以下のような物性値を有することが好ましい。
【0044】
(メルトフローレート)
ポリエチレン(A)のメルトフローレート(MFR)は、0.5g/10分以上が好ましく、1.0g/10分以上がより好ましく、1.5g/10分以上がさらに好ましい。また、樹脂組成物(A)に含まれるポリエチレン(A)のMFRは、15g/10分以下が好ましく、12g/10分以下がより好ましく、10g/10分以下がさらに好ましい。
【0045】
ポリエチレン(A)のMFRの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(A)のMFRは、例えば、0.5g/10分以上15g/10分以下が好ましい。
【0046】
ポリエチレン(A)のMFRが前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。ポリエチレン(A)のMFRが前記範囲の上限値以下であれば、取り扱いが容易となる。
【0047】
なお、本実施形態において樹脂のMFRは、JIS K 7210-1に準拠して、温度:190℃、荷重:2.16kgの条件で測定される値である。
【0048】
(密度)
ポリエチレン(A)の密度は、ポリエチレン(A)がポリエチレンである場合、900kg/m以上が好ましく、905kg/m以上がより好ましい。また、ポリエチレン(A)の密度は、0.960kg/m以下が好ましく、950kg/m以下がより好ましく、940kg/m以下がさらに好ましく、935kg/m以下が特に好ましい。
【0049】
ポリエチレン(A)の密度の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(A)の密度は、例えば、900kg/m以上940kg/m以下が好ましい。
【0050】
ポリエチレン(A)の密度が前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。ポリエチレン(A)の密度が前記範囲の上限値以下であれば、本実施形態の嵌合具が柔軟となり、使用感に優れる。
【0051】
なお、本実施形態において樹脂の密度は、JIS K7112:1999(ISO 1183:1987)に準拠して測定される値である。
【0052】
(融点)
ポリエチレン(A)の融点は、95℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。またポリエチレン(A)の融点は、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。
【0053】
ポリエチレン(A)の融点の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(A)の融点は、例えば、95℃以上140℃以下が好ましい。
【0054】
ポリエチレン(A)の融点が前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。また、ポリエチレン(A)の融点が前記範囲の上限値以下であれば、嵌合具を具備する嵌合具付き袋体を製袋する際、ヒートシールしやすく製造が容易となる。
【0055】
なお、本実施形態においてポリエチレン(A)の融点は、JIS K7121:2012(ISO 3146)に準拠して測定される値である。
【0056】
(化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂)
第1嵌合部材10の形成材料である樹脂組成物(A)が、植物度の高いポリエチレン(A)のみであると、部材の表面がべたつきやすくなる。樹脂組成物(A)は、化石燃料由来のプロピレンを含むモノマーを重合させて得られる化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂を含む。
【0057】
「化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂」とは、化石燃料由来のプロピレンの単独重合体、及び化石燃料由来のプロピレンを含む共重合体のいずれか一方又は両方を指す。化石燃料由来のプロピレンを含む共重合体は、化石燃料由来のエチレン及び化石燃料由来のα-オレフィンとのいずれか一方又は両方と、化石燃料由来のプロピレンとの共重合体である。
【0058】
化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂には、バイオマス由来のモノマーを含まない。以下の説明では、化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂を「ポリプロピレン(C)」と称することがある。ポリプロピレン(C)の植物度は0%である。
【0059】
樹脂組成物(A)に含まれるポリプロピレン(C)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0060】
樹脂組成物(A)におけるポリプロピレン(C)の含有率は、樹脂組成物(A)の全体量に対して30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、ポリプロピレン(C)の含有率は、樹脂組成物(A)の全体量に対して95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
樹脂組成物(A)におけるポリプロピレン(C)の含有率の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
【0061】
ポリプロピレン(C)の含有率が前記範囲の下限値以上であれば、嵌合具の表面のべたつきを抑制しやすい。ポリプロピレン(C)の含有率が前記範囲の上限値以下であれば、環境負荷の低減が容易になる。
【0062】
(ポリプロピレン(C)の物性値)
ポリプロピレン(C)は、以下のような物性値を有することが好ましい。
【0063】
(メルトフローレート)
ポリプロピレン(C)のメルトフローレート(MFR)は、0.5g/10分以上が好ましく、1.0g/10分以上がより好ましく、1.5g/10分以上がさらに好ましい。また、ポリプロピレン(C)のMFRは、15g/10分以下が好ましく、12g/10分以下がより好ましく、10g/10分以下がさらに好ましい。
【0064】
ポリプロピレン(C)のMFRの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリプロピレン(C)のMFRは、例えば、0.5g/10分以上15g/10分以下が好ましい。
【0065】
ポリプロピレン(C)のMFRが前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。ポリプロピレン(C)のMFRが前記範囲の上限値以下であれば、取り扱いが容易となる。
【0066】
(密度)
ポリプロピレン(C)の密度は、880kg/m以上が好ましく、890kg/m以上がより好ましい。また、ポリプロピレン(C)の密度は、910kg/m以下が好ましく、905kg/m以下がより好ましい。
【0067】
ポリプロピレン(C)の密度の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリプロピレン(C)の密度は、例えば、880kg/m以上910kg/m以下が好ましい。
【0068】
(融点)
ポリプロピレン(C)の融点は、150℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。また、ポリプロピレン(C)の融点は、120℃以上であることが望ましい。
【0069】
ポリプロピレン(C)の融点の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリプロピレン(C)の融点は、例えば、120℃以上150℃以下が好ましい。
【0070】
ポリプロピレン(C)の融点が前記範囲内であれば、嵌合具を具備する嵌合具付き袋体を製袋する際、ヒートシールしやすく製造が容易となる。
【0071】
(その他の樹脂)
樹脂組成物(A)は、化石燃料由来のエチレンを含むモノマーを重合させて得られる化石燃料由来のポリエチレン系樹脂を含んでもよい。
【0072】
「化石燃料由来のポリエチレン系樹脂」とは、化石燃料由来のエチレンの単独重合体、及び化石燃料由来のエチレンと化石燃料由来のα-オレフィンとの共重合体のいずれか一方又は両方を指す。化石燃料由来のポリエチレン系樹脂には、バイオマス由来のモノマーを含まない。以下の説明では、化石燃料由来のポリエチレン系樹脂を「ポリエチレン(B)」と称することがある。ポリエチレン(B)の植物度は0%である。
【0073】
ポリエチレン(B)としては、バイオマス由来のエチレンを用いない以外は、ポリエチレン(A)と同様のポリエチレン系樹脂が挙げられる。
【0074】
ポリエチレン(B)のMFR、密度、融点の好ましい範囲は、ポリエチレン(A)の各物性値の好ましい範囲と同じである。
【0075】
樹脂組成物(A)に含まれるポリエチレン(B)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0076】
樹脂組成物(A)は、発明の効果を阻害しない限り、ポリエチレン(A)及びポリエチレン(B)に加えて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤等の公知の添加剤が添加されていてもよい。
【0077】
(第1嵌合部)
第1嵌合部12は、第1基材11の一方の面11aにおいて、長手方向に沿って設けられている。第1嵌合部12は、第1基材11の一方の面11aから立ち上がる幹部12aと、幹部12aの先端部に設けられた頭部12bを備える。幹部12aの幅Waは、頭部12bの幅Wbよりも狭い(Wa<Wb)。
【0078】
第1嵌合部12の形成材料は、上述の樹脂組成物(A)であると好ましい。
【0079】
(第1シール層)
第1シール層15は、第1基材11の他方の面11bにおいて、第1基材11と重なって設けられている。
【0080】
第1シール層15の厚さTaは、0.01mm以上が好ましく、0.02mm以上がより好ましい。また、第1シール層15の厚さTaは、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましい。厚さTaの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0081】
第1シール層15の厚さTaが下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具1を袋体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られる。第1シール層15の厚さTaが上限値以下であれば、本実施形態の嵌合具が柔軟となり、使用感に優れる。
【0082】
第1シール層15の幅は、第1基材11と同様とすることができる。
【0083】
本実施形態の嵌合具1では、第1基材11は他方の面11bに第1シール層15が設けられており、第1シール層15において袋体等の他の部材に溶着可能である。そのため、本実施形態の嵌合具1では、環境負荷の低減と、作業性の向上とを両立することができる。
【0084】
(樹脂組成物(B))
第1シール層15の形成材料は、樹脂組成物(B)である。樹脂組成物(B)は、化石燃料由来のエチレンの単独重合体と、化石燃料由来のエチレンと化石燃料由来のα-オレフィンとの共重合体との少なくとも一方、すなわち上述のポリエチレン(B)を含む。
【0085】
樹脂組成物(B)に含まれるポリエチレン(B)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0086】
また、樹脂組成物(B)は、上述のポリエチレン(A)を含んでもよい。樹脂組成物(B)に含まれるポリエチレン(B)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0087】
樹脂組成物(B)がポリエチレン(A)とポリエチレン(B)を含む場合、ポリエチレン(B)の含有率は、樹脂組成物(B)の全体量に対して50質量%超が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン(B)の含有率は、樹脂組成物(B)の全体量に対して100質量%未満が好ましい。
樹脂組成物(B)におけるポリエチレン(B)の含有率の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
【0088】
ポリエチレン(B)の含有率が前記範囲の下限値以上であれば、第1シール層15が袋体等の別部材に対する溶着強度を確保することができる。ポリエチレン(B)の含有率が前記範囲の上限値以下であれば、環境負荷の低減が容易になる。
【0089】
さらに、樹脂組成物(B)における共重合体の含有率は、70質量%以上100質量%以下が好ましい。
【0090】
樹脂組成物(B)は、ポリエチレン(B)の中でも、化石燃料由来のエチレンと化石燃料由来のα-オレフィンとの共重合体を含むことが好ましい。以下の説明では、「化石燃料由来のエチレンと化石燃料由来のα-オレフィンとの共重合体」を、単に「共重合体」と称することがある。
【0091】
樹脂組成物(B)に含まれる共重合体のMFRは、0.5g/10分以上が好ましく、1.0g/10分以上がより好ましく、1.5g/10分以上がさらに好ましい。また、樹脂組成物(B)に含まれる共重合体のMFRは、25g/10分以下が好ましく、15g/10分以下がより好ましく、10g/10分以下がさらに好ましい。
【0092】
樹脂組成物(B)に含まれる共重合体のMFRの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
共重合体のMFRは、例えば、0.5g/10分以上15g/10分以下が好ましい。
【0093】
樹脂組成物(B)に含まれる共重合体のMFRが前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。樹脂組成物(B)に含まれる共重合体のMFRが前記範囲の上限値以下であれば、取り扱いが容易となる。
【0094】
樹脂組成物(B)に含まれる共重合体の密度は、850kg/m以上が好ましく、870kg/m以上がより好ましい。また、樹脂組成物(B)に含まれる共重合体の密度は、920kg/m以下が好ましく、900kg/m以下がより好ましい。
【0095】
共重合体の密度の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。
共重合体の密度は、例えば、850kg/m以上920kg/m以下が好ましい。
【0096】
[第2嵌合部材]
第2嵌合部材20は、第2基材21と、第2嵌合部22と、第2シール層25とを有する。
【0097】
(第2基材)
第2基材21は、帯状の部材であり、第2嵌合部22及び第2シール層25を支持する。
【0098】
第2基材21の厚さT2は、第1基材11の厚さT1と同様の構成とすることができる。第1基材11の厚さT1と第2基材21の厚さT2とは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0099】
第2基材21の幅W2は、第1基材11の幅W1と同様の構成とすることができる。第1基材11の幅W1と第2基材21の幅W2は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0100】
第2基材21の形成材料は、上述の樹脂組成物(A)であってもよく、樹脂組成物(B)であってもよい。第2基材21の形成材料は、上述の樹脂組成物(A)であると好ましい。
【0101】
第2基材21の形成材料は、第1基材11の形成材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0102】
(第2嵌合部)
第2嵌合部22は、第2基材21の一方の面21aにおいて、長手方向に沿って設けられている。第2嵌合部22は、第2基材21の一方の面21aから立ち上がる第1アーム部22aと第2アーム部22bとを備える。第2嵌合部22は、第1アーム部22aと第2アーム部22bによって形成された凹部22cを有する。
【0103】
第1アーム部22aと第2基材21とのなす角θaは、第2アーム部22bと第2基材21とのなす角θbよりも小さい(θa<θb)。嵌合具1を袋体に取り付ける場合には、第2嵌合部22の第1アーム部22aが袋体の外側、第2アーム部22bが袋体の内側となる姿勢で取り付ける。
【0104】
凹部22cの入り口の幅Wcは、第1嵌合部12の頭部12bの幅Wbよりも狭い(Wc<Wb)。
【0105】
第1嵌合部材10の第1嵌合部12と、第2嵌合部材20の第2嵌合部22とは、第1嵌合部12を雄型、第2嵌合部22を雌型として、第1嵌合部12の頭部12bを第2嵌合部22の凹部22cに嵌め込むことで、着脱自在に嵌合可能である。
【0106】
詳しくは、第1嵌合部12を第2嵌合部22に押し付けると、第1嵌合部12の頭部12bは、第1アーム部22aと第2アーム部22bとを押し広げながら凹部22cに入り込む。頭部12bが凹部22cに収容されると、頭部12bに押し広げられた第1アーム部22a及び第2アーム部22bが弾性回復して幹部12aを挟み込む。このようにして第1嵌合部12と第2嵌合部22とが嵌合する。
【0107】
また、第1嵌合部12と第2嵌合部22とが嵌合している状態から、第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを離間させることで、第1嵌合部12の頭部12bは、第2嵌合部22の第1アーム部22aと第2アーム部22bとを凹部22cの内側から押し広げながら脱離する。このように、第1嵌合部12と第2嵌合部22とは着脱自在に嵌合する。
【0108】
ここで、第1アーム部22aと第2基材21とのなす角θaは、第2アーム部22bと第2基材21とのなす角θbよりも小さい(θa<θb)。この角度の違いにより、第1アーム部22a側で第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを離間させる場合と、第2アーム部22b側で第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを離間させる場合とは、両部材を離間させるために要する応力が異なる。第1嵌合部12と第2嵌合部22とが嵌合している状態から、第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを離間させるために要する応力を「嵌合強度」と称する。
【0109】
嵌合具1を第1アーム部22a側から開くときの嵌合強度は、3N以上40N以下が好ましく、5N以上30N以下がより好ましい。
嵌合具1を第2アーム部22b側から開くときの嵌合強度は、30N以上が好ましく、35N以上がより好ましい。
【0110】
なお、嵌合強度は、嵌合具1を長さ方向に50mm分切り出した試験片について、引張試験機を用いて第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを離間させるために要する応力を測定して求める。例えば、嵌合具1を第1アーム部22a側から開くときの嵌合強度は、試験片の第1嵌合部材10について、第1アーム部22a側で第1基材11及び第1シール層15を、第2嵌合部材20について、第2アーム部22b側で第2基材21及び第2シール層25を、それぞれ引張試験機の把持部で把持して測定する。
【0111】
測定では、引張試験機において、引張速度50mm/分で引っ張って測定される強度の最大値を求める。嵌合強度は、5つの試験片について測定した測定値の算術平均値とする。
【0112】
なお、図に示す第1嵌合部12及び第2嵌合部22の断面形状は一例である。第1嵌合部12と第2嵌合部22とは、第1嵌合部12と第2嵌合部22を互いに着脱することで、袋本体の開口部の開閉が繰り返し行えるものであればよく、公知の断面形状を採用できる。
【0113】
第2嵌合部22の形成材料は、上述の樹脂組成物(A)であってもよく、樹脂組成物(B)であってもよい。第2嵌合部22の形成材料は、上述の樹脂組成物(A)であると好ましい。
【0114】
第2嵌合部22の形成材料は、第1嵌合部12の形成材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0115】
(第2シール層)
第2シール層25は、第2基材21の他方の面21bにおいて、第2基材21と重なって設けられている。
【0116】
第2シール層25の厚さTbは、第1シール層15の厚さTaと同様の構成とすることができる。第1シール層15の厚さTaと第2シール層25の厚さTbとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0117】
第2シール層25の幅は、第2基材21と同様とすることができる。
【0118】
第2シール層25の形成材料は、上述の樹脂組成物(B)であると好ましい。第2シール層25の形成材料は、第1シール層15の形成材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0119】
本実施形態の嵌合具において、化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。90質量%以下である。また、化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
嵌合具における化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂の含有率は、50質量%以上90質量%以下とすることができる。
【0120】
(製造方法)
嵌合具1の製造方法としては、樹脂組成物(A)、樹脂組成物(B)を使用する以外は特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0121】
例えば、ポリエチレン(A)と化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂とを適宜必要な割合で混合し、口径が40mmφ、L/Dが25の単軸押出機を用いて190℃にて溶融混練することで、樹脂組成物(A)が得られる。
【0122】
また、ポリエチレン(A)とポリエチレン(B)とを適宜必要な割合で混合し、口径が30mmφ、L/Dが25の単軸押出機を用いて190℃にて溶融混練することで、樹脂組成物(B)が得られる。
【0123】
得られた樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)とを、第1嵌合部材、又は第2嵌合部材の複合異形ダイに導き、共押出し成形し、水冷又は空冷にて冷却することで嵌合具を製造することができる。得られた嵌合具は、巻取機にて巻取ることができる。
【0124】
また、第1嵌合部材10は、樹脂組成物(A)を用いて第1基材11と第1嵌合部12とを一体的に押出成形し、得られた成形体の第1基材11の他方の面11bに、樹脂組成物(B)製のラミネートフィルムを熱ラミネートして第1シール層15を設けることで形成してもよい。
【0125】
また、第2嵌合部材20は、樹脂組成物(A)を用いて第2基材21と第2嵌合部22とを一体的に押出成形し、得られた成形体の第2基材21の他方の面21bに、樹脂組成物(B)製のラミネートフィルムを熱ラミネートして第2シール層25を設けることで形成してもよい。
【0126】
以上のような嵌合具1は、形成材料として、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂と、化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂とを含む樹脂組成物(A)を用いる。これにより、化石燃料由来の樹脂の使用量が低減され、環境負荷を低減できる。また、嵌合具の表面のべたつきを抑えることができる。
【0127】
[嵌合具付き袋体]
図3は、本実施形態の嵌合具付き袋体100を示す概略正面図である。以下の説明では、嵌合具付き袋体100を、単に「袋体100」と略称することがある。
【0128】
図3に示すように、本実施形態の袋体100は、袋本体50と、袋本体50内の上部の内面に取り付けられた嵌合具1とを具備している。
【0129】
袋本体50は、正面からの視野において矩形を呈する。嵌合具1は、袋本体50の上部50a側の内面において、袋本体50の短手方向に伸びて設けられている。なお、袋本体50の形状は矩形には限定されない。
【0130】
袋本体50は、不図示の内容物を封入した状態で密封されている。袋本体50は、第1のフィルム材52と第2のフィルム材54を重ね合わせ、四方の周縁部56を全てヒートシールすることで得られる。周縁部56においては、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54と共に、嵌合具1の両端がヒートシールされている。
【0131】
第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54は、ヒートシールにより嵌合具1を溶着できるものであればよく、内面側からシーラント層と基材層を少なくとも有する積層フィルムが好ましい。
【0132】
積層フィルムが有する基材層としては、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレン等が挙げられる。
【0133】
積層フィルムが有するシーラント層としては、直鎖状低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等が挙げられる。
【0134】
積層フィルムには、バリア層等の機能層を設けてもよい。
【0135】
また、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54は、シーラント層のみからなる単層フィルムであってもよい。
【0136】
袋本体50は、嵌合具1よりも上部50aの側に、嵌合具1に沿って切断補助線58が設けられている。
【0137】
切断補助線58は、袋本体50の切断を補助するための加工が線状に施された部分である。切断補助線58としては、例えば、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54における切断補助線58の部分に設けられた弱化線が挙げられる。弱化線は、フィルム材に周囲と比べて薄肉化した部分を設けることで形成することができる。その他、弱化線は、ミシン目や、列状に形成された細孔によっても形成することができる。
【0138】
また、切断補助線58は、弱化線には限定されず、ハサミやカッター等で切断する位置を示す、印刷等で形成した線であってもよい。
【0139】
周縁部56における切断補助線58の端部には、ノッチ60が形成されている。ノッチ60の形状は、特に限定されず、三角状又は半円形状の切り欠きを採用することができる。また、ノッチ60は、周縁部56に設けられた切込みであってもよい。
【0140】
図4は、袋体100を開口した様子を示す概略斜視図である。袋体100は、ノッチ60から切断補助線58に沿って袋本体50の上部を切断して除去することで、上部にヒートシールされていない端部50bを設けることができる。袋体100は、端部50bを開口して開口部62を形成することで、開封することができる。
【0141】
袋体100に形成した開口部62は、嵌合具1の第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とを着脱することで、繰り返し開閉できる。
【0142】
袋体100は、嵌合具1を用いる以外は公知の方法で製造できる。
【0143】
本実施形態の袋体100は、嵌合具1を用いているため、袋本体50の内面に配置される嵌合具においてべたつきが抑制される。
【0144】
また、本実施形態の袋体100は、嵌合具1を用いているため、周縁部56において第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54と、嵌合具1とをまとめてヒートシールした際、シール箇所にシワや穴あき等の不具合が生じにくく、良好な仕上がりとなり易い。
【0145】
以上のような構成の嵌合具1によれば、環境負荷の低減が可能となる。
また、以上のような構成の嵌合具付き袋体100によれば、上述の嵌合具1を用いることで、環境負荷の低減が可能となる。
【0146】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0147】
例えば、本実施形態の嵌合具1は、第1嵌合部材10が第1シール層15を有するとともに、第2嵌合部材20が第2シール層25を有することとしたが、これに限らず、第1嵌合部材10と第2嵌合部材20とのいずれか一方にシール層を有していることとしてもよい。また、第1嵌合部材10及び第2嵌合部材20がシール層を有さないこととしてもよい。
このような構成であっても、嵌合具の形成材料を樹脂組成物(A)とすることで、本発明の効果が得られる。
【0148】
第1嵌合部材と第2嵌合部材とのいずれか一方にのみシール層が設けられている場合、シール層が設けられた嵌合部材が、本発明における「第1嵌合部材」に該当する。本実施形態では、雄型である第1嵌合部12を有する嵌合部材を「第1嵌合部材」と称したが、雌型である第2嵌合部22を有する嵌合部材にのみシール層を有する場合には、第2嵌合部22を有する嵌合部材を「第1嵌合部材」と称することで、発明を理解することができる。
【実施例
【0149】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0150】
本実施例においては、下記表1に記載の樹脂を用いた。
【0151】
【表1】
【0152】
樹脂Aは、Braskem社製の市販品(型番SLH218)を用いた。
樹脂Fは、Braskem社製の市販品(型番SPB681)を用いた。
【0153】
樹脂B、樹脂Eは、本発明における「化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂」に該当する。
【0154】
各樹脂について、MFR、密度、融点及び植物度は、メーカ公称値である。
MFRは、JIS K 7210-1に準拠し、荷重2.16kgで測定した値である。MFRの測定温度は、ポリプロピレン系樹脂は230℃、その他の樹脂は190℃とした。
植物度は、ASTM D6866-11に準拠して求めた値である。
【0155】
(実施例1~5、比較例1,2)
表1に記載の各樹脂を秤量し、下記表2に記載の割合で混合して、樹脂組成物(A)(B)を用意した。
【0156】
得られた樹脂組成物(A)を、口径が40mmφ、L/Dが25の単軸押出機を用いて190℃で溶融混練した。
また、得られた樹脂組成物(B)を、口径が30mmφ、L/Dが25の単軸押出機を用いて190℃にて溶融混練した。
【0157】
実施例2~5については、溶融混練した溶融樹脂を、それぞれ第1嵌合部材、第2嵌合部材に対応したダイ形状を有する複合異形ダイに供給して、共押出成形した。得られた成形体を、水槽にて冷却固化させた後、巻取機にて巻取り、実施例2~5の嵌合具を得た。
【0158】
得られた嵌合具の第1嵌合部材は、第1嵌合部と第1基材とをあわせた構成の樹脂量(樹脂量X)と、第1シール層の樹脂量(樹脂量Y)との比が、[樹脂量X]:[樹脂量Y]=9:1であった。第2嵌合部材についても、第2嵌合部と第2基材とをあわせた構成の樹脂量と、第2シール層の樹脂量との比が第1嵌合部材と同様であった。
【0159】
得られた嵌合具は、第1嵌合部材、第2嵌合部材共に、基材(第1基材、第2基材)の幅13mm、基材の厚さ130μm、シール層の厚さ20μmであった。また、第1基材と第1嵌合部とをあわせた高さ、及び第2基材と第2嵌合部とをあわせた高さは、いずれも1.4mmであった。
【0160】
実施例1、比較例1,2については、表2に示す樹脂組成物(A)を、口径が40mmφ、L/Dが25の押出機を用いて190℃にて溶融混練し、第1嵌合部材、第2嵌合部材に対応したダイ形状を有する複合異形ダイに供給して、共押出成形した。得られた成形体を、水槽にて冷却固化させた後、巻取機にて巻取り、実施例1、比較例1,2の嵌合具を得た。
【0161】
<評価方法>
得られた嵌合具については、以下の方法で評価した。
【0162】
[1.環境負荷低減]
環境負荷の低減について、以下の基準で評価した。
(判断基準)
〇:環境負荷の低減ができる。
×:環境負荷の低減ができない。
【0163】
[2.べたつき評価]
各例で得た嵌合具を30℃の条件下で24時間放置した後、嵌合具の表面を手で触り、以下の判断基準でべたつきの評価をした。
(評価基準)
○:表面にべたつきがない。
△:表面にべたつきがわずかに感じられる。
×:表面にべたつきがある。
【0164】
[3.嵌合部形状保持]
製造した嵌合具を製造の翌日まで室温で保存した後、製造した嵌合具と、嵌合具の設計形状との嵌合部の形状を対比し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇:設計通りの嵌合部形状が得られ、第1嵌合部と第2嵌合部との嵌合が安定している。
△:設計形状から嵌合部形状の変形がみられるが、嵌合具としての機能を有する。
×:設計形状に対し嵌合部形状が大きく変形し、嵌合具として機能しない。
【0165】
[4.剛性]
剛性は、引張応力を測定して評価した。
【0166】
第1嵌合部材を長さ70mmに切り出して試験片とした。
引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、VGS5E)にて、得られた試験片の長手方向の両端を把持し、2%伸長時の引張応力を測定した。5点の試験片について引張応力を測定し、測定値の算術平均値を、求める引張応力として採用した。剥離強度の測定は、チャック間距離50mm、試験速度1mm/分の条件にて行った。
【0167】
5点の試験片について引張応力を測定し、測定値の算術平均値を、求める引張応力として採用した。
【0168】
[5.シール温度]
図5は、シール温度の評価方法を説明する模式図である。
まず、嵌合具の第1嵌合部材から、第1基材と第1シール層とが積層した部分のみを切り出し、第1基材と第1シール層とが積層した幅5mm、長さ300mmの小片Xを得た。
【0169】
一方、ナイロン(厚さ15μm)と、CPP(厚さ40μm)とが積層したラミネートフィルムを切り出し、幅30mm、長さ270mmの小片Yを得た。
【0170】
嵌合具から切り出した小片Xの第1シール層と、ラミネートフィルムから切り出した小片YのLLDPE層とが面するように重ね合わせた。その際、小片Xと小片Yとの長手方向及び短手方向の中心が一致するように配置した。
【0171】
嵌合具の小片Xとラミネートフィルムの小片Yとを、熱傾斜試験機(株式会社東洋精機製作所社製、型番HG-100-2)を用いて、小片Xの両端から等間隔で5箇所、同時に熱シールし試験片を得た。図5では、熱シールした箇所を符号Zで示す。熱シールした箇所について、試験片の短手方向の幅は5mm、試験片の長手方向長さは10mmであった。
【0172】
熱シールした箇所のシール温度を変更した試験片を、シール温度毎に5点ずつ用意した。シール温度は、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃とした。また、試験片は、それぞれのシール温度において、圧力0.08MPaで1秒間圧着して作製した。
【0173】
引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、VGS5E)にて、得られた試験片の一端側の小片Xの端部X1、及び小片Yの端部Y1を把持し、180度剥離強度を測定した。剥離強度の測定は、チャック間距離50mm、試験速度500mm/分の条件にて行った。
【0174】
5点の試験片について剥離強度を測定し、測定値の算術平均値を、平均剥離強度とした。
【0175】
平均剥離強度が10N/5mm幅以上となる試験片のうち、最も低いシール温度で作製した試験片のシール温度を「熱シール可能温度」として求めた。
【0176】
130℃を基準温度とし、以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇:ラミネートフィルムへの熱シール可能温度が、120℃以下である。
△:ラミネートフィルムへの熱シール可能温度が、120℃より高く130℃未満である。
×:ラミネートフィルムへの熱シール可能温度が、130℃以上である。
【0177】
[総合評価]
総合評価について、以下の基準で評価した。〇及び△を良品、×を不良品とした。
(評価基準)
〇:「1.環境負荷低減」の評価が「〇」であり、「2.べたつき評価」「3.爪形状保持」「4.剛性」「5.シール温度」の全てが「〇」評価であるもの。
△:「1.環境負荷低減」の評価が「〇」であり、「2.べたつき評価」が「〇」又は「△」評価であるもの。
×:「1.環境負荷低減」の評価が「×」であるもの。
又は「1.環境負荷低減」の評価が「〇」であっても、「2.べたつき評価」「3.爪形状保持」「4.剛性」「5.シール温度」のいずれにも「〇」評価が無いもの。
【0178】
各評価結果を表2に示す。
【0179】
【表2】
【0180】
評価の結果、実施例1~5の嵌合具は、環境負荷が低減できた。
【0181】
また、実施例1~5の嵌合具は、べたつきが無く、嵌合具付き袋体の内容物の汚染を抑制することができることが分かった。
【0182】
さらに、実施例2~5の嵌合具は、シール温度が低く、嵌合具付き袋体の製造が容易であることが分かった。
【0183】
対して、比較例1の嵌合具は、環境負荷の低減ができなかった。
【0184】
比較例2の嵌合具は、環境負荷は低減できるものの、べたつきがあり、嵌合具付き袋体の製造も困難であった。
【0185】
以上の結果より、本発明が有用であることが分かった。
【符号の説明】
【0186】
1…嵌合具、10…第1嵌合部材、11…第1基材、11a,21a…一方の面、11b,21b…他方の面、12…第1嵌合部、15…第1シール層、20…第2嵌合部材、21…第2基材、22…第2嵌合部、25…第2シール層、50…袋本体、100…袋体
図1
図2
図3
図4
図5