(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】電圧ゼロ化圧力センサプリアンプ
(51)【国際特許分類】
G01L 7/00 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
G01L7/00 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020089299
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-02-14
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513204665
【氏名又は名称】シリコン マイクロストラクチャーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILICON MICROSTRUCTURES, INC.
【住所又は居所原語表記】1701 McCarthy Boulevard, Milpitas, California 95035 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,クレーグ エー.
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-055855(JP,A)
【文献】特開2013-174514(JP,A)
【文献】特開平02-210272(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104075841(CN,A)
【文献】特開2013-156171(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22
G01L 1/26
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサシステム(21、220、230)用のプリアンプ回路(220、230)であって、
前記プリアンプ回路(220、230)は、
- 反転入力部、非反転入力部、ならびに正の出力部(SIP)および負の出力部(SIN)を備える差動出力部を有する、差動出力オペアンプ(U1、U3)と、
- 前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記正の出力部(SIP)に連結されている第1の端子(C)であって、第1の外部感圧素子(B1)の第1のノードに接続するように構成されている、前記第1の端子(C)と、
- 前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記負の出力部(SIN)に連結されている第2の端子(B)であって、第2の外部感圧素子(B2)の第1のノードに接続するように構成されている、前記第2の端子(B)と、
- 保護回路(220)と、を備える
とともに、
前記保護回路(220)は、
- 前記第1の端子(C)と前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記反転入力部の間に連結されている、第1の直列の抵抗器群(R9~R12)と、
- 前記第2の端子(B)と前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記非反転入力部の間に連結されている、第2の直列の抵抗器群(R13~R16)と、を備える、
圧力センサシステム(21、220、230)用のプリアンプ回路(220、230)。
【請求項2】
- 前記第1の外部感圧素子(B1)の第2のノードおよび前記第2の外部感圧素子(B2)の第2のノードに接続するように構成されている、第3の端子(A)と、
- 前記第1の端子(C)および前記第2の端子(B)にコモンモードの電圧を設定するための、前記第3の端子(A)に連結されている第1の増幅器(U2)と、を更に備える、
請求項1に記載のプリアンプ回路。
【請求項3】
- 前記第3の端子(A)に連結されている入力部、および出力部を有する、第2の増幅器(U4)と、
- 前記第2の増幅器(U4)の前記出力部に連結されている第4の端子(T)と、を更に備える、
請求項2に記載のプリアンプ回路。
【請求項4】
- 前記第1の端子(C)に連結されている第1の抵抗器(R19)と、
- 前記第2の端子(B)に連結されている第2の抵抗器(R20)と、を更に備え、
前記第1の外部感圧素子(B1)、前記第2の外部感圧素子(B2)、前記第1の抵抗器(R19)、および前記第2の抵抗器(R20)はホイートストンブリッジを形成している、
請求項3に記載のプリアンプ回路。
【請求項5】
前記第1の端子(C)は、第3の抵抗器(R17、R18)を介して前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記正の出力部(SIP)に連結されており、
前記第2の端子(B)は、第4の抵抗器(R22、R23)を介して前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記負の出力部(SIN)に連結されている、
請求項4に記載のプリアンプ回路。
【請求項6】
- 前記第1の端子(C)に連結されている第1の抵抗器(R19)と、
- 前記第2の端子(B)に連結されている第2の抵抗器(R20)と、を更に備え、
前記第1の外部感圧素子(B1)、前記第2の外部感圧素子(B2)、前記第1の抵抗器(R19)、および前記第2の抵抗器(R20)はホイートストンブリッジを形成している、
請求項1に記載のプリアンプ回路。
【請求項7】
前記第1の直列の抵抗器群(R9~R12)と前記第2の直列の抵抗器群(R13~R16)の間に連結されている複数のダイオード(D1~D4)を更に備える、
請求項
1に記載のプリアンプ回路。
【請求項8】
前記複数のダイオード(D1~D4)はバックツーバック(back-to-back)構成で配置されている、
請求項7に記載のプリアンプ回路。
【請求項9】
圧力検知システムであって、
前記圧力検知システムは、
- 入力部(A)、第1の出力部(C)、および第2の出力部(B)を有するホイートストンブリッジ(B1、B2、R19、R20)であって、
前記入力部(A)と前記第1の出力部(C)の間に連結されている、第1の感圧素子(B1)、
前記入力部(A)と前記第2の出力部(B)の間に連結されている、第2の感圧素子(B2)、
前記第1の出力部(C)とグランドの間に連結されている、第1の抵抗器(R19)、および
前記第2の出力部(B)とグランドの間に連結されている、第2の抵抗器(R20)、を備える、前記ホイートストンブリッジ(B1、B2、R19、R20)と、
- 前記第1の出力部(C)と前記第2の出力部(B)の間の結果的な電圧が最小になるように、第1の電流を前記第1の出力部(C)に、および第2の電流を前記第2の出力部(B)に提供するための、差動出力オペアンプ(U1、U3)と、を備える、
圧力検知システム。
【請求項10】
圧力センサシステム用のプリアンプ回路であって、
前記プリアンプ回路は、
- 差動出力オペアンプ(U1、U3)と、
- 第1の端子(C)と前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の反転入力部の間に連結されている、第1の直列の抵抗器群(R9~R12)、および
第2の端子(B)と前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の非反転入力部の間に連結されている、第2の直列の抵抗器群(R13~R16)
を備える、保護回路(220)と、
- 前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の正の出力部(SIP)と前記第1の端子(C)の間に連結されている、第3の直列の抵抗器群(R17、R18)と、
- 前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の負の出力部(SIN)と前記第2の端子(B)の間に連結されている、第4の直列の抵抗器群(R22、R23)と、
- 前記第1の端子(C)とグランドの間に連結されている、第1の抵抗器(R19)と、
- 前記第2の端子(B)とグランドの間に連結されている、第2の抵抗器(R20)と、を備える、
プリアンプ回路。
【請求項11】
前記第1の直列の抵抗器群(R9~12)と前記第2の直列の抵抗器群(R13~R16)との間に連結されている、複数のバックツーバック接続(back-to-back)したダイオード(D1~D4)を更に備える、
請求項10に記載のプリアンプ回路。
【請求項12】
前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記正の出力部(SIP)は第3の端子(SIP)に連結されており、
前記差動出力オペアンプ(U1、U3)の前記負の出力部(SIN)は第4の端子(SIN)に連結されている、
請求項11に記載のプリアンプ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代に導入されて以来、医療処置中に体内で使用される圧力センサの役割は急激に拡大しており、その終わりは見えていない。この需要の一部は、外科医が治療部位を直接見ることができず代わりにセンサのフィードバックを頼りにして自身の手を導く、低侵襲外科手術の進歩から、ならびにまた、処置の件数が増加の一途を辿る経カテーテル(transcatheter)治療および内視鏡治療の発展から、生じている。これらのセンサの成功は、それらが圧力を正確に読み取れるように較正可能であること、ならびにそれらが患者および医療担当者の両方にとって安全な様式で動作可能であることによって、促進される。最後に、これらのデバイスは大量製造が可能であるべきである。これらの要件は、これらの全てに対応するように設計されているデバイスおよび処置がなければ、互いに対立する可能性がある。
【0003】
より具体的には、需要が増大しているセンサのタイプの1つは、半導体に現れるピエゾ抵抗効果を利用する、ソリッドステートの電子ピエゾ抵抗圧力センサ(または金属ひずみゲージ)である。ピエゾ抵抗効果とは、機械的なひずみが加わったときの半導体の電気抵抗の変化である。膜体は受ける圧力の変化によってその形状および機械的ひずみが変化し、そしてこの変化が、膜体表面の1つまたは複数の抵抗器の電気抵抗の検出可能な変化を生む。
通常、抵抗の変化は、抵抗器に電流を流し電圧の変化を検出することによって、または、抵抗器に電圧を印加し電流の変化を検出することによって、検出される。しかしながら、患者が曝され得る電流の量は、安全規則により制限される。これらの値を上回る電流は、複数の問題の中でもとりわけ、心不整脈を誘発する危険性がある。例えば、医療器具開発協会による米国規格協会仕様書、ANSI/AAMI ES60601-1:2005(r2012)。この規格の表3には、患者にとって安全と考えられる電流限度値が記載されている。
同規格は、患者測定電流(patient auxiliary current)を正常動作中は10μA未満、および単一故障動作中は50μA未満に制限している。典型的な市販のソリッドステート圧力変換器では、この電流は、信号対ノイズの考慮事項および自己発熱限界に基づく最適な電流よりも、はるかに小さい。これにより、センサおよび配線が患者に決して直接接触しないように慎重にシールドしなければならない最終的な医療デバイスの設計者は、いわゆる「リスク電流」を含むという負担を負う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決すべき課題は、デバイスに流れる最大電流を10マイクロアンペア以下、または単一故障状態において50マイクロアンペア未満に制限して、確実に動作できるセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、デバイスに流れる最大電流を10マイクロアンペア以下、または単一故障状態において50マイクロアンペア未満に制限して、確実に動作できるセンサを提供することによって解決される。この場合、この最終的な医療デバイスの設計者が、患者に対する過剰な電流による潜在的なリスクを考慮する必要性が少なくとも低減され、この医療デバイスの設計および製造性が単純化される。追加の利益は、信号対ノイズの問題が解決されれば、抵抗器の自己発熱および寄生リークが低減されるため、センサがより低い電流流量において一般により正確であるということである。
【0006】
図1Aは、本発明の実施形態によって改善可能な圧力センサを示す。このタイプの圧力変換器の抵抗は、環境圧の変化と共に変化する。これらの変換器は通常、ホイートストンブリッジ構成で使用される。この構成の例が
図1Bに示されており、素子B1は圧力に対して負の抵抗係数を有し、素子B2は圧力に対して正の抵抗係数を有する。1つの典型的なホイートストンブリッジ構成では、ブリッジを介してノードAからノードDへと電流が流され(これは励起電流である)、ノードBとノードCの間で圧力依存電圧が読み取られる。 圧力に敏感であることに加えて、感圧素子B1およびB2の抵抗は通常、温度にも敏感である。
図1Aおよび
図1Bに示す構成では、温度変化は素子B1およびB2の抵抗のコモンモードでの変化を引き起こし、一方、センサ周囲の周囲圧力の変化はこれら2つの素子を反対方向に変化させ、ノードBとノードCの間に差動電圧を生む。感圧素子の抵抗のコモンモードの変化および差動的な変化の両方を測定することが一般に行われている。これにより、適切な較正後に、感圧素子の圧力および温度を決定することが可能になる。特に、両方の測定を行うことにより、圧力信号の較正によって温度依存性の効果を補償して、任意の温度において圧力測定の精度を高めることが可能になる。
【0007】
励起電流は通常、読み取りの容易な電圧を生じさせるのに十分な大きさで、かつブリッジ中の検知素子の自己発熱を回避するのに十分な小ささになるように、選択される。しかしながら、侵襲的な医療デバイスでは、患者の安全の追加の制約により、センサを流れる電流を制限するための追加の素子(抵抗器)が必要となる。そしてこのことは、ブリッジにおける圧力が誘起した電圧変化(ノードBとノードCの間で測定した信号)が、極めて小さくなることを意味する。同時に、電流を制限するために使用される抵抗器は、電圧および/または電流の変動(典型的にはジョンソンノイズ)をもたらす。これら2つの効果が合わさると、信号対ノイズ比が悪化し得る。
【0008】
本明細書で開示する回路は、電流制限素子として比較的小さい抵抗器を使用できるようにすることによって、および、ブリッジからの信号に対する電圧制限素子(例えばダイオード)の影響を最小限にすることによって、信号対ノイズ比(SNR)を改善する。電圧制限素子は故障状態中に有効になり、患者が曝され得る電流を低減する。正常動作中は、ブリッジの出力電圧、およびしたがって電圧制限素子の電圧は、差動電流をブリッジへと戻すように構成されているフィードバック回路によって、ゼロ近くに保持することができる。ゼロ化電流を生成するために必要な差動電圧は、ゼロ化電流がない場合の電圧ブリッジの出力に比例し得る。この差動電圧は、回路の事前較正圧力出力であり得る。
【0009】
本発明の様々な実施形態には、本明細書に記載されたこれらの及びその他の機構のうちの、1つまたは複数を組み込むことができる。以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって、本発明の性質および利点のより良い理解を得ることができる。
【0010】
ここで本発明について、以下の添付の図面を参照して例示により記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の実施形態を組み込むことによって改善され得る圧力検知回路を示す。
【
図1B】本発明の実施形態を組み込むことによって改善され得る圧力検知回路を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る圧力検知回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示する回路は
図2に示されている。描かれている回路は3つの主要なブロックを有する:圧力および温度検知ブリッジ210、電流制限素子(抵抗器)および電圧制限素子(ダイオード)、の両方を備える患者保護回路構成220、ならびに増幅回路230。増幅回路230はブリッジ210にゼロ化電流を提供して、ブリッジ210の出力電圧(ノードBとノードCの間の電圧)を事実上ゼロに低減する。ゼロ化電流を生成するために使用される差動出力電圧(SIPでの電圧からSINでの電圧を減じたもの)を、次いで圧力を示す解釈可能な信号を提供するために使用することができる。
【0013】
ブリッジ部210:
素子B1およびB2は、圧力および温度検知素子である。典型的には、これらの素子は、医療処置の一部として患者に取り付けられるかまたは挿入される、感圧デバイス用の能動検知素子であり得る。
【0014】
保護回路220は、保護回路220を圧力および温度検知ブリッジ210に接続する3つのリード線の間を流れ得る電流を制限し、その際に、患者に流され得る電流を制限する。
【0015】
増幅器回路230:
増幅器U1およびU3は共に差動出力オペアンプ(differential output operational amplifier)を形成し、この差動出力オペアンプは、ブリッジのノードBおよびCに、抵抗器の対R17およびR18ならびに対R22およびR23を介して平衡差動電流を供給することによって、ブリッジの電圧をゼロ化するように設定される。ゼロ化電流を供給するために使用される、SIPおよびSINにおける差動出力電圧は、ブリッジが生成した信号を増幅したものである。システムの利得は、フィードバック抵抗器R17、R18、R22、およびR23の抵抗によって決定される。抵抗器の値が大きいほど、SIPとSINの間で生じる差動電圧が大きくなる。
SIPとSINの間の電圧差は、圧力と実質的に比例する。ブリッジの出力部の間の電圧をゼロ化することによって、ダイオードD1からD4の電圧を、ゼロの非常に近くに保つことができる。これにより、測定されるブリッジ信号の誤差の原因となり得る、これらのダイオードを流れるリーク電流が防止される。増幅器U6は、ブリッジノードのうちの1つ(ノードBとして描かれている)に電圧を出力するバッファアンプである。増幅器U2は、増幅器U6の出力(ブリッジの一方側の中心電圧)を基準電圧(SVDD)の2分の1と比較し、これら2つの電圧を等しく保つように、ノードAに入るブリッジ駆動電流を調整する。これにより、ブリッジ回路のコモンモード出力電圧が設定される。増幅器U4は、ブリッジノードAとブリッジノードBの間の電圧差を増幅する。
この電圧は検知素子B1およびB2の並列抵抗と共に実質的に線形に変化し、そしてこれらの抵抗は検知素子の温度と共に変化する。増幅器U4の出力は、センサの温度と実質的に比例する。増幅器U5は、基準電圧SVDDの2分の1をバッファする。
【0016】
SIPとSINの間の差を測定するADC用の基準電圧として基準電圧SVDDも使用される場合には、SIPとSINの間の電圧の差の測定は、電圧SVDDに対して完全にレシオメトリック(ratiometric)なものとなる。これにより電圧SVDDへの依存性のほとんどが事実上除去される。
【0017】
保護回路220:
抵抗器R19およびR20は(圧力または温度検知型ではなく)受動型でありブリッジを完成させるもので、一般にはセンス抵抗器(sense resistor)B1およびB2の範囲中間の圧力条件に適合するように選択することができ、この結果ノードBの電圧とノードCの電圧を、ノードAの電圧とノードDの電圧の間の半ば近くにすることができる。保護回路中の全ての抵抗器は、正常状態または単一故障状態において患者測定電流を制限する。追加の役割または考慮事項のある抵抗器について、以下で述べる。抵抗器R9からR16が増幅器U1への入力経路上にあり、これらは圧力測定におけるノイズ(ジョンソンノイズ)の主な源である。抵抗器R5およびR6が増幅器U4への入力経路上にあり、これらは温度測定におけるノイズ(ジョンソンノイズ)の主要源である。
抵抗器R17、R18、R22、およびR23は、ブリッジの測定ノード(B、C)にゼロ化電流を提供するために使用される、フィードバック抵抗器である。ダイオードD5は、電流をブリッジのノードAに接続されているリード線へと一方向にのみ流れさせる。これにより、保護回路構成の性能が向上する。ダイオード対D1およびD3ならびにダイオード対D4およびD2は、増幅器U1への入力部において差動電圧を重複的に制限する。このことは、ノードBおよびノードCが患者に直接接続されている(例えば、患者に接続されているセンサのリード線が切断され患者と短絡した場合である)故障状態においてBとCの間に流れる電流を、制限する役割を果たす。これらのダイオード間の電圧を制限することにより、抵抗器R9、R10、R13、およびR14を、この制限を行わなかった場合に可能であるよりも小さくすることができる。
このことは、これらの抵抗器が生むノイズ(ジョンソンノイズ)を低減するという非常に重要な目的に役立つ。コンデンサは、フィードバックループの安定性の保証および(例えば偽信号の低減による)出力信号のデジタル化の最適化の両方のために、回路の周波数応答を制御する。
【0018】
要約すれば、増幅器U1、U2、およびU3がノードBおよびCを基準電圧SVDDの2分の1近くの電圧まで駆動し、これによりダイオードD1からD4の電圧が大きく低減される。
【0019】
この例では、ブリッジ210は、カテーテル、または患者に挿入される(例えば、針を通して患者の中の動脈もしくは静脈に通される)他のデバイスの、遠位端に存在し得る。保護回路220および増幅器回路230は、患者の外部にあるカテーテルの近位端に存在し得、他の回路構成および機器と一緒に含めることができる。ノードA、B、およびC用のリード線を、カテーテルの中を保護回路220からブリッジ210まで導くことができる。ノードAが患者を介してノードBおよびCと短絡する(例えば、血流と接触した状態でセンサが切断された)場合、結果的な電流は、基準電圧の約2分の1である1.2ボルトをR21と(互いに並列なR19およびR20)の直列抵抗で割ったものとなり、これは10μA未満となるであろう。
また更に、保護回路220は、センサが切断され患者と接触していることに加えて、任意の単一の保護構成要素が短絡状態または開放インピーダンス状態のため機能しないときに、患者を流れる電流を50μA未満に制限するように設計されている。より一般的には、ここに記載する回路を使用して、単に抵抗器の値をスケーリングすることによって、電流を任意の所望のレベルに、および任意の所望の入力電圧(基準電圧および増幅器供給電圧)を用いて、制限することができる。
【0020】
増幅器U1および増幅器U3をまとめて、抵抗器R17およびR18ならびに抵抗器R22およびR23と負のフィードバック構成で接続された、SVDD/2のコモンモード出力電圧を有する差動イン、差動アウトの差動増幅器として構成することができ、この場合、差動増幅器の出力により、差動入力電圧が本質的にゼロに調整される。差動イン/アウト複合増幅器の出力部は、出力ノードSIPおよびSINである。ノードBとノードCの間に差動信号を生成し得る圧力信号が存在しない休止状態は、以下の通りであり得る。増幅器U2は、ノードBの電圧を基準電圧SVDDの2分の1と等しくする。圧力信号がなければ、ノードCはノードBと対称であり、ノードCはノードBと少なくとも近似的に同じ電圧であり得る。ノードBとノードCの間にいかなる入力差もなければ、複合差動アウト増幅器U1/U3は、SIPノードおよびSINノードの両方をSVDD/2にする。
【0021】
圧力信号が適用されるので、検知素子B1およびB2の抵抗は乖離し得る。例えば、B1の抵抗は増加する可能性があり、B2の抵抗は減少する可能性がある。フィードバックが行われない場合、これによりノードBの電圧が増加しノードCの電圧が減少する可能性がある。しかしながら、フィードバックを行うと、複合増幅器U1/U3の結果的な差動出力は、抵抗器R17およびR18ならびに抵抗器R22およびR23を通る電流がノードBおよびCの圧力が誘起した電圧の差をオフセットするのに十分な大きさになるまで増加する。すなわち、フィードバック回路は、抵抗器R19の電圧が抵抗器R20の電圧と確実に等しくなるように、ノードBおよびCに出入りする電流を調整する。これら2つの抵抗器は公称上同じ値を有するので、これら2つの抵抗器を通る電流は公称上等しくなり得る。
ノードSIPとノードSINの間の結果的な電圧は、圧力が誘起した検知素子B1およびB2の抵抗の変化と、公称上比例し得る。生じる電圧と圧力が誘起した抵抗変化の比は、フィードバック抵抗器(R17およびR18)ならびに(R22およびR23)のサイズによって決定され得る。大きいフィードバック抵抗器の場合、抵抗器R17およびR18ならびに抵抗器R22およびR23を通るゼロ化電流は非常に小さくすることができ、一方、出力ノードSIPと出力ノードSINの間で十分な出力信号を生成できる。
【0022】
ブリッジ210の温度が変化するにつれて、ノードAにおけるコモンモードの電圧が変化し得る。増幅器U4はその入力部においてこの変化するコモンモードの電圧および電源電圧の約2分の1を受け、ブリッジ210中の検知素子B1およびB2の温度を解釈するために使用できる出力信号を生成する。
【0023】
与えられた例では、センス抵抗器B1およびB2は、範囲中間の圧力条件において3900オームの値を有し得、基準電圧SVDDは2.4Vであり得る。与えられた例では、抵抗器は、増幅器への供給電圧が3.0V以下であるときに、センス抵抗器B1およびB2を通る、正常な電流の合計を10μA未満に、および単一故障の電流の合計を50μA未満に制限するように、選択できる。残りの構成要素(抵抗器)の適切なスケーリングが行われるのであれば、電圧(SVDDまたは増幅器供給電圧)の他の(より高い)値を使用してもよい。
【0024】
この例ではまた、ダイオードD1~D5はショットキーダイオードとして示されているが、本発明のこれらのおよび他の実施形態において、他のタイプのダイオードを使用できる。ブリッジ210の素子B1およびB2は、圧力センサダイの膜体の近くまたは表面に形成することができる。保護回路220および増幅器回路230の回路は、1つもしくは複数の集積回路上に形成することができるか、またはこれらは、個別の構成要素であり得るかもしくは個別の構成要素を含み得る。