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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】車両用充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240205BHJP
   B60L 53/35 20190101ALI20240205BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20240205BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H02J7/00 301B
H02J7/00 P
B60L53/35
B60L53/16
H01M10/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020090282
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021185726
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄一
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-514176(JP,A)
【文献】特開平09-215211(JP,A)
【文献】特開2019-075916(JP,A)
【文献】特表2009-504115(JP,A)
【文献】特開2011-050177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0066515(US,A1)
【文献】特表平08-502640(JP,A)
【文献】特表2005-525705(JP,A)
【文献】特開2020-078138(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/121050(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0101856(US,A1)
【文献】米国特許第05821731(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0102419(US,A1)
【文献】米国特許第05654621(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 53/35
B60L 53/16
H01M 10/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、第1電極部材を保持する第1嵌合体と、
前記第1嵌合体と嵌合した状態で前記第1電極部材に接続される第2電極部材を保持する第2嵌合体と、
前記車両が停止した停車状態で、前記第1嵌合体に対して前記第2嵌合体を水平方向に相対移動させる第1移動機構と、
前記停車状態で、前記第1嵌合体に対して前記第2嵌合体を前記水平方向と直交する方向である嵌合方向に相対移動させる第2移動機構と、
前記第1嵌合体及び前記第2嵌合体のうち、一方の嵌合体において、前記嵌合方向から見た場合に、前記電極部材を囲んで配置され、通電に応じて磁界を発生させるコイルと、
他方の前記嵌合体に配置され、前記コイルが発生する前記磁界を検出する少なくとも1つのセンサと、
前記センサにより検出される磁界の強さの変化に基づいて、前記第1嵌合体と前記第2嵌合体との相対的な位置ずれを特定する制御部と、を備え、
前記センサのうち主センサは、
前記第1嵌合体及び前記第2嵌合体が嵌合した嵌合状態において、前記コイルの中心軸上に位置し、
前記制御部は、
前記第1移動機構により前記第1嵌合体と前記第2嵌合体とが前記水平方向の一方から他方に相対移動することで、前記センサにより検出される前記磁界の強さの変化に基づいて、前記第1嵌合体と前記第2嵌合体とが前記第2移動機構により嵌合可能となる嵌合位置を特定し、
前記嵌合位置は、
前記主センサにより検出される磁界の強さが、前記磁界の強さが最も高い2点間における前記磁界の強さであると前記制御部により判断された際の位置である、
ことを特徴とする車両用充電システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1嵌合体と前記第2嵌合体とを前記水平方向のうち前回とは異なる方向に相対移動させたときに得られた第2推定嵌合位置と、前回の相対移動時に得られた第1推定嵌合位置とに基づいて前記嵌合位置を特定する、
請求項1に記載の車両用充電システム。
【請求項3】
前記センサのうち、前記主センサとは異なる複数の従センサは、
前記第1嵌合体及び前記第2嵌合体が嵌合した嵌合状態において、前記コイルの中心軸を中心として、前記電極部材を保持する外周壁に沿って一定の間隔をあけて配置され、
前記制御部は、
複数の前記従センサの検出結果に基づいて、他方の前記嵌合体から見た一方の前記嵌合体の相対的な方向を特定する、
請求項1または2に記載の車両用充電システム。
【請求項4】
他方の前記嵌合体は、
前記第1電極部材及び前記第2電極部材のうちの他方の前記電極部材を内側に保持し、かつ前記嵌合方向における一方の前記嵌合体側に突出して形成された凸部を有し、
一方の前記嵌合体は、
一方の前記電極部材を内側に保持し、かつ前記凸部が嵌入する凹部と、
前記凹部と連結し、前記嵌合方向に前記凹部から他方の前記嵌合体側に向かうにつれて、水平方向における前記凹部側と反対側に傾斜する案内面と、を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車等の車両に搭載された受電側のインレットに対して、無人または自動で送電側のカプラを嵌合させて充電を行う車両用充電システムがある。例えば、特許文献1では、非接触充電において、車両側、地上側コイル相互の位置合わせを行う際に、磁力を発生させつつ地上側コイルを移動し、車両側コイルとの間の電磁誘導作用により生じる地上側コイルの電流変動を測定することで、相互の相対位置を測定し位置合わせを行っている。例えば、特許文献2では、地上側コイルの周辺に複数の磁気センサを配置し、車両側コイルが発生する磁界の強さを複数の磁気センサで検出し、磁界の強さの差を用いて相対位置を測定し位置合わせを行っている。例えば、特許文献3では、給電カプラ、受電カプラ相互の位置合わせを光学的に行う技術であり、受電カプラ付近にリフレクタを設け、給電カプラに設置した発光素子からリフレクタへ光を照射し、リフレクタからの反射光を受光素子で測定することで、相互の相対位置が所定の位置にあるか判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-182212号公報
【文献】特開平9-215211号公報
【文献】特開2000-92619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1は、非接触充電を前提としており、接触自動充電に適用することが困難な技術である。特許文献2は、非接触充電を行う車両側コイルにより磁界を発生させていることから、非接触充電でなければ成立しない技術である。特許文献3は、受光素子が相互の位置関係によりリフレクタを検出できないと、相互の相対位置を検出することができず、嵌合動作を継続できない、という課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水平方向に離間する2つの嵌合体を、水平方向と直交する嵌合方向にて嵌合可能となる嵌合位置に精度よく移動させることができる車両用充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用充電システムは、車両に搭載され、第1電極部材を保持する第1嵌合体と、前記第1嵌合体と嵌合した状態で前記第1電極部材に接続される第2電極部材を保持する第2嵌合体と、前記車両が停止した停車状態で、前記第1嵌合体に対して前記第2嵌合体を水平方向に相対移動させる第1移動機構と、前記停車状態で、前記第1嵌合体に対して前記第2嵌合体を前記水平方向と直交する方向である嵌合方向に相対移動させる第2移動機構と、前記第1嵌合体及び前記第2嵌合体のうち、一方の嵌合体において、前記嵌合方向から見た場合に、前記電極部材を囲んで配置され、通電に応じて磁界を発生させるコイルと、他方の前記嵌合体に配置され、前記コイルが発生する前記磁界を検出する少なくとも1つのセンサと、前記センサにより検出される磁界の強さの変化に基づいて、前記第1嵌合体と前記第2嵌合体との相対的な位置ずれを特定する制御部と、を備え、前記センサのうち主センサは、前記第1嵌合体及び前記第2嵌合体が嵌合した嵌合状態において、前記コイルの中心軸上に位置し、前記制御部は、前記第1移動機構により前記第1嵌合体と前記第2嵌合体とが前記水平方向の一方から他方に相対移動することで、前記センサにより検出される前記磁界の強さの変化に基づいて、前記第1嵌合体と前記第2嵌合体とが前記第2移動機構により嵌合可能となる嵌合位置を特定し、前記嵌合位置は、前記主センサにより検出される磁界の強さが、前記磁界の強さが最も高い2点間における前記磁界の強さであると前記制御部により判断された際の位置である、ことを特徴とする。
【0007】
上記車両用充電システムにおいて、前記制御部(40)は、前記第1嵌合体(10)と前記第2嵌合体(30)とを前記水平方向のうち前回とは異なる方向に相対移動させたときに得られた第2推定嵌合位置と、前回の相対移動時に得られた第1推定嵌合位置とに基づいて前記嵌合位置を特定する、ものである。
【0008】
上記車両用充電システムにおいて、前記センサのうち、前記主センサとは異なる複数の従センサは、前記第1嵌合体及び前記第2嵌合体が嵌合した嵌合状態において、前記コイルの中心軸を中心として、前記電極部材を保持する外周壁に沿って一定の間隔をあけて配置され、前記制御部は、複数の前記従センサの検出結果に基づいて、他方の前記嵌合体から見た一方の前記嵌合体の相対的な方向を特定する、ものである。
【0009】
上記車両用充電システムにおいて、他方の前記嵌合体は、前記第1電極部材及び前記第2電極部材のうちの他方の前記電極部材を内側に保持し、かつ前記嵌合方向における一方の前記嵌合体側に突出して形成された凸部を有し、一方の前記嵌合体は、一方の前記電極部材を内側に保持し、かつ前記凸部が嵌入する凹部と、前記凹部と連結し、前記嵌合方向に前記凹部から他方の前記嵌合体側に向かうにつれて、水平方向における前記凹部側と反対側に傾斜する案内面と、を有する、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用充電システムによれば、接触自動充電方式において、第1嵌合体と第2嵌合体の相互の位置合わせを精度よく行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る車両用充電システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、車両充電システムにおける第1嵌合体の概略構成を示す斜視図である。
図3図3は、車両充電システムにおける第2嵌合体の概略構成を示す斜視図である。
図4図4は、第1嵌合体の概略構成を示す模式図である。
図5図5は、第2嵌合体の概略構成を示す模式図である。
図6図6は、水平方向の一方から他方に相対移動した際の第1嵌合体及び第2嵌合体の位置と磁気センサにより検出される磁界の強さとの関係を示す模式図である。
図7図7は、コイルが発生する磁界と水平方向に移動する磁気センサとの関係を示す模式図である。
図8図8は、実施形態の変形例に係る第2嵌合体の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る車両用充電システムの実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0013】
[実施形態]
実施形態に係る車両用充電システムについて図1図7を参照して説明する。以下の説明において、特に記載しない限り、図1図3図5図8におけるX方向は、本実施形態における車両の幅方向である。Y方向は、本実施形態における車両の前後方向であり、幅方向と直交する方向である。Z方向は、本実施形態における車両の上下方向であり、幅方向及び前後方向と直交する方向である。X方向、Y方向、及びZ方向は、相互に直交するものとする。なお、便宜的に、Z方向のうち、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向とする。Z方向は、例えば、車両の鉛直方向に従う。
【0014】
図1に示す車両用充電システム1は、車両100に対して充電装置300から充電を行うものである。車両100は、充放電可能な蓄電池であるバッテリ(不図示)から供給される電力を利用しモータ(不図示)を駆動することで、当該モータを動力源の一部または全部として走行するものである。車両100は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等である。車両用充電システム1は、第1嵌合体10と、第2嵌合体30と、第1移動機構50と、第2移動機構51と、制御部40とを備える。第1嵌合体10は、車両100側に設けられている。第2嵌合体30、第1移動機構50、第2移動機構51、及び制御部40は、充電装置300側に設けられている。
【0015】
充電装置300は、例えば、車両100を使用する使用者の駐車場等に設けられており、駐車場の停車位置に停車した車両100に対して、人手を介することなく自動で充電を行うものである。停車位置は、例えば、車両100側の第1嵌合体10と、充電装置300側の第2嵌合体30とが上下方向に略対向するように設定されている。充電装置300は、地上面200よりも下方側に設置されている。充電装置300は、商用電源等を含む外部電源(不図示)に接続されており、外部電源から供給される交流電力を車両100内のバッテリの充電に適した直流電力に変換し、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合した嵌合状態において、当該バッテリへの充電を行う。
【0016】
第1移動機構50は、車両100が停止した停車状態で、第1嵌合体10に対して第2嵌合体30を前後方向及び/又は幅方向に相対移動させるものである。第1移動機構50は、不図示のアクチュエータやセンサ等を含んで構成され、例えば、制御部40からの制御信号に応じて、第2嵌合体30を移動させる。第1移動機構50は、第2移動機構51ごと第2嵌合体30を移動することができる。
【0017】
第2移動機構51は、車両100が停止した停車状態で、第1嵌合体10に対して第2嵌合体30を水平方向と直交する方向である嵌合方向に相対移動させるものである。第2移動機構51は、不図示のアクチュエータやセンサ等を含んで構成され、例えば、制御部40からの制御信号に応じて、第2嵌合体30を昇降する。第2移動機構51は、例えば、パンタグラフで構成された昇降機構を有し、パンタグラフの伸縮方向の一方の端部に第2嵌合体30が配置されている。
【0018】
第1嵌合体10は、例えばインレットであり、第2嵌合体30と嵌合可能に形成されている。第1嵌合体10は、車両100の底部に設けられ、停車状態において、第2嵌合体30の上方側に位置する。第1嵌合体10は、図2図4に示すように、第1電極部材11と、凹部12と、コイル20とを有する。
【0019】
第1電極部材11は、例えば、雌型電極端子であり、円柱状(または円筒状)に形成されている。第1電極部材11は、嵌合方向に延在して形成されており、嵌合方向の一方が外部に露出し、他方がケーブル等を介して車両100内のバッテリと電気的に接続されている。第1電極部材11は、例えば、導電性を有する金属材料(銅や銅合金等)で構成される。第1電極部材11は、一対の正極、陰極で構成される。
【0020】
凹部12は、第1電極部材11を内側に保持し、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合した嵌合状態において、当該第2嵌合体30側の凸部32が嵌入する部分である。凹部12は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂材料等で形成される。なお、図示例では、凹部12は、接続確認端子(図2の小円筒部分)を内側に保持している。凹部12は、開口部12aと、案内面12bと、底面12cと、内周壁12dとを含んで構成される。
【0021】
開口部12aは、円形状を有し、車両100の底部に連結され、下方向に向けて開口する。案内面12bは、凹部12と連結し、嵌合方向に凹部12から第2嵌合体30側に向かうにつれて、水平方向における凹部12側と反対側に傾斜する部分である。案内面12bは、開口部12aと内周壁12dとを連結する部分に形成される。案内面12bは、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合する際に、第2嵌合体30側の凸部32の嵌合方向先端が当接すると、第2嵌合体30の上昇に応じて凸部32を凹部12に向けて案内する。底面12cは、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合した嵌合状態において、凸部32の底面32cと対向する部分である。底面12cには、複数の第1電極部材11が互いに間隔を空けて立設されている。内周壁12dは、円筒状に形成され、嵌合方向の一方の端部に案内面12bが連結され、他方の端部に底面12cが連結される。内周壁12dの内方向には、一対の第1電極部材11が配置されている。
【0022】
コイル20は、第1嵌合体10において、嵌合方向から見た場合に、第1電極部材11を囲んで配置され、通電に応じて磁界Mを発生させるものである。コイル20は、嵌合方向から見た場合、内周壁12dの径方向外側を巻回するように配置される。コイル20は、水平方向から見た場合、案内面12bと内周壁12dとの嵌合方向の連結部分に配置される。コイル20は、電線21を介して通電部22に電気的に接続され、当該通電部22からの通電により磁界Mを発生させる。磁界Mは、図7に示すように、コイル20を流れる電流を囲むように、コイル20の周囲に円状に発生する。通電部22は、車両100内のMPU(Micro Processing Unit)等に電気的に接続され、当該MPUの制御によりコイル20に対して通電を行う。例えば、通電部22は、充電装置300が設けられた駐車場の所定の停車位置に車両100が停車した際に、コイル20に対して通電を開始する。例えば、通電部22は、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合することで、第1電極部材11と第2電極部材31とが電気的に接続された際に、コイル20に対する通電を終了する。
【0023】
第2嵌合体30は、例えばカプラであり、第1嵌合体10と嵌合可能に形成されている。第2嵌合体30は、車両100が停車状態になる前には、地上面200に設けられた凹状部分に収容されており、停車状態において、第1嵌合体10の下方側に位置する。第2嵌合体は、車両100の停車状態において、第2移動機構51の駆動により昇降する。第2嵌合体30は、上昇時には、地上面200から所定の高さ(例えば、上昇時及び水平移動時に車両100の底部等に接触することがない高さ)になるまで上昇する。第2嵌合体30は、第2移動機構51による上昇後、第1移動機構50により前後方向及び幅方向にそれぞれ移動可能となる。第2嵌合体30は、図3図5に示すように、第2電極部材31と、凸部32と、磁気センサS1とを含んで構成される。
【0024】
第2電極部材31は、例えば、雄型電極端子であり、嵌合方向から見た場合、円柱状に形成されている。第2電極部材31は、嵌合方向に延在して形成されており、嵌合方向の一方が外部に露出し、他方がケーブル等を介して充電装置300の電源と電気的に接続されている。第2電極部材31は、例えば、導電性を有する金属材料(銅や銅合金等)で構成される。第2電極部材31は、第1電極部材11に対応して、一対の正極、陰極で構成される。
【0025】
凸部32は、第2電極部材31を内側に保持し、かつ嵌合方向における第1嵌合体10側に突出して形成された部分である。凸部32は、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合した嵌合状態において、当該第1嵌合体10側の凹部12に嵌入する部分である。凸部32は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂材料等で構成される。なお、図示例では、凸部32は、凹部12側の接続確認端子に対応する端子(図3の十字形状部分)を内側に保持している。凸部32は、開口部32aと、外周壁32bと、底面32cと、保護部32dと、基部33とを含んで構成される。
【0026】
開口部32aは、円形状を有し、上方向に向けて開口する。外周壁32bは、円筒状に形成され、嵌合方向の一方の端部に開口部32aが形成され、他方の端部が基部33に連結される。外周壁32bの内方向には、複数の保護部32dと、複数の第2電極部材31とが配置されている。底面32cは、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合した嵌合状態において、凹部12の底面12cと対向する部分である。底面12cには、複数組の保護部32d及び第2電極部材31が互いに間隔を空けて立設されている。保護部32dは、円筒状を有し、内方向に第2電極部材31が配置されている。保護部32dは、各第2電極部材31を保護するものである。
【0027】
磁気センサS1は、第2嵌合体30に配置され、コイル20が発生する磁界Mの強さを検出するものである。磁気センサS1は、第1嵌合体10及び第2嵌合体30が嵌合した嵌合状態において、コイル20の中心軸O1上に位置する。磁気センサS1は、例えば、凸部32の底面32cの中央に配置される。磁気センサS1は、電線35を介して制御部40に電気的に接続されており、検出結果を当該制御部40に出力する。磁気センサS1は、例えば、電線を巻回した小型コイルやホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子等で構成される。
【0028】
制御部40は、充電装置300の各部を制御する部分であり、例えば、第1移動機構50及び第2移動機構51を駆動制御する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路を含んで構成される。制御部40は、第2嵌合体30内の磁気センサS1に電気的に接続されており、当該磁気センサS1により検出される磁界Mの強さの変化に基づいて、第1嵌合体10と第2嵌合体30との相対的な位置ずれを特定する。制御部40は、第1移動機構50により第1嵌合体10と第2嵌合体30とが水平方向の一方から他方に相対移動することで、磁気センサS1により検出される磁界Mの強さの変化に基づいて、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが第2移動機構51により嵌合可能となる嵌合位置を特定する。嵌合位置は、磁気センサS1により検出される磁界Mの強さが、磁界Mの強さが最も高い2点間における磁界Mの強さであると制御部40により判断された際の位置である。制御部40は、嵌合位置にある第2嵌合体30を第2移動機構51により上昇させて、第1嵌合体10と嵌合させる。制御部40は、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合すると、充電装置300による車両100側のバッテリに対する充電を開始させる。
【0029】
次に、第1嵌合体10と第2嵌合体30の相対移動時における磁界の強さの変化について図6を参照して説明する。図6に示すグラフは、縦軸が磁気センサS1により検出された磁界Mの強さを表し、横軸が第1嵌合体10と第2嵌合体30との位置ずれ量を表す。
【0030】
車両100が停車位置に停車すると、制御部40は、第2移動機構51を駆動制御し第2嵌合体30を地上面200から所定の高さまで上昇させる。このとき、車両100側のMPUは、車両100の停車に応じてコイル20を通電状態にする。制御部40は、磁気センサS1により磁界Mの強さを検出し、磁気センサS1から受信した検出結果に基づいて、磁界Mの強さをRAM等に記録する。
【0031】
次に、制御部40は、第1移動機構50を駆動制御し第2嵌合体30を水平方向に移動させ、当該移動に合わせて磁気センサS1により検出された磁界Mの強さを記録する。制御部40は、第2嵌合体30の水平方向の移動を複数回行うことで嵌合位置を特定する。例えば、制御部40は、第1嵌合体10に対して第2嵌合体30を、水平方向のうちの一方向において、図6に示す(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の順に相対移動させ、磁界Mの強さを記録する。つづいて、制御部40は、水平方向のうちの一の方向と異なる他の方向における2つの嵌合体10,30の相対移動を複数回行い、その都度、磁界Mの強さを記録していく。制御部40は、2つの嵌合体10,30を相対移動させながら、磁界Mの強さを記録する際、前回の磁界Mの強さと今回の磁界Mの強さとを比較し、それらの差分が正の数か、負の数かに応じて図6に示すグラフの傾き及びピーク(頂点)を特定する。また、制御部40は、前回と今回の磁界Mの強さを比較する際に、上記に加えて、差分の変化に基づいて図6に示すグラフの傾き及びピークを特定する。制御部40は、2つの嵌合体10,30を相対移動させたとき、磁界Mの強さが図6に示すA、B、C、Dの順に変化した場合、磁界Mの強さが最も高いBD間を嵌合位置と判断する。制御部40は、特定した複数の嵌合位置から適正な嵌合位置を特定し、当該嵌合位置に向けて第1移動機構50により第2嵌合体30を移動させる。
【0032】
磁界Mの強さが最も高いDとBとの間、すなわち範囲Cは、2つの嵌合体10,30が相対移動しても磁界Mの強さが略一定となる。範囲Cには、位置ずれ量が0となる嵌合位置が含まれる。2つの嵌合体10,30の相対位置が、(2)、(4)である場合、磁気センサS1とコイル20の周方向の一部とが嵌合方向に沿って磁気センサS1を通る軸O2上で重なっている。2つの嵌合体10,30の相対位置が、(3)である場合、磁気センサS1を通る軸O2がコイル20の中心軸O1と重なっている。すなわち、軸O2と中心軸O1とが重なる位置では、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが嵌合方向において正対する。
【0033】
制御部40は、水平方向のうちの他の方向における相対移動を複数回行う場合、2つの嵌合体10,30を、水平方向のうち前回とは異なる方向に相対移動させたときに得られた第2推定嵌合位置と、前回の相対移動時に得られた第1推定嵌合位置とに基づいて嵌合位置を特定する。ここで、水平方向のうち前回とは異なる方向には、例えば、前後方向と幅方向はもちろん、前後方向であっても幅方向にずれている場合も含まれる。例えば、制御部40は、2つの嵌合体10,30を前後方向に相対移動させたときに得られた第1推定嵌合位置と、当該前後方向と平行かつ幅方向の一方に1~2センチずらした方向に相対移動させたときに得られた第2推定嵌合位置とを比較する。そして、制御部40は、第1推定嵌合位置に対応する範囲Cの長さが、第2推定嵌合位置に対応する範囲Cの長さよりも短くなっている場合、幅方向の一方側よりに嵌合位置があると、推定することができる。このように、相対移動を複数回行う場合、制御部40は、2つの嵌合体10,30の相対移動方向をランダムに決定してもよいが、前回の相対移動時のB,Dの位置や強さ、範囲Cの長さ等を利用して決定するようにしてもよい。
【0034】
制御部40は、相対移動を複数回行った後に嵌合位置を特定すると、第1移動機構50を駆動制御し第2嵌合体30を当該嵌合位置に移動させる。つづいて、制御部40は、嵌合位置にて第2移動機構51を駆動制御し第2嵌合体30を上昇させる。ここで、第1嵌合体10に対して第2嵌合体30が水平方向において位置ずれしていた場合、第2嵌合体30が上昇すると、凸部32の上方向側の先端が凹部12の案内面12bに当接する。第2嵌合体30がさらに上昇すると、凸部32の上方向側の先端が案内面12bに沿って底面12cに向けて移動する。このとき、第2嵌合体30に与えられた上方向に向かう力のうち、水平方向に向かう分力により凸部32が水平方向に移動する。この結果、凸部32が案内面12bに沿って底面12cに向けて案内され、凸部32が凹部12に嵌入される。
【0035】
凸部32の凹部12への嵌入に応じて、第1電極部材11と第2電極部材31とが接触を開始する。第2嵌合体30の上昇が終了すると、凸部32の凹部12への挿入が完了する。この結果、第1嵌合体10に対して第2嵌合体30が嵌合し、第1電極部材11と第2電極部材31との接続が完了する。制御部40は、第1電極部材11と第2電極部材31との電気的な接続を検知すると、充電を開始する。
【0036】
以上説明した実施形態に係る車両用充電システム1は、第1嵌合体10において、嵌合方向から見た場合に、第1電極部材11を囲んで配置され、通電に応じて磁界Mを発生させるコイル20と、第2嵌合体30に配置され、コイル20が発生する磁界Mを検出する磁気センサS1と、磁気センサS1により検出される磁界Mの強さの変化に基づいて、第1嵌合体10と第2嵌合体30との相対的な位置ずれを特定する制御部40とを備える。磁気センサS1は、第1嵌合体10及び第2嵌合体30が嵌合した嵌合状態において、コイル20の中心軸上に位置する。制御部40は、第1移動機構50により第1嵌合体10と第2嵌合体30とが水平方向の一方から他方に相対移動することで、磁気センサS1により検出される磁界の強さの変化に基づいて、第1嵌合体10と第2嵌合体30とが第2移動機構51により嵌合可能となる嵌合位置を特定する。嵌合位置は、磁気センサS1により検出される磁界Mの強さが、磁界Mの強さが最も高い2点間BDにおける磁界Mの強さであると制御部40により判断された際の位置である。
【0037】
上記構成により、例えば、一方の嵌合体を他方の嵌合体に向けて案内する物理的な案内機構を利用できない位置における2つの嵌合体間の位置合わせを行うことができる。この結果、水平方向に離間する2つの第1嵌合体10、第2嵌合体30を、水平方向と直交する嵌合方向にて嵌合可能となる嵌合位置に精度よく移動させることができる。
【0038】
また、実施形態に係る車両用充電システム1は、制御部40が、第1嵌合体10と第2嵌合体30とを水平方向のうち前回とは異なる方向に相対移動させたときに得られた第2推定嵌合位置と、前回の相対移動時に得られた第1推定嵌合位置とに基づいて嵌合位置を特定する。これにより、例えば、2つの嵌合体の相対移動を、異なる方向での相対移動(同一方向で異なる位置での相対移動を含む)で複数行うことが可能となり、嵌合位置を精度よく特定することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る車両用充電システム1は、第1嵌合体10が、第1電極部材11を内側に保持し、かつ凸部32が嵌入する凹部12と、凹部12と連結し、嵌合方向に凹部12から第2嵌合体30側に向かうにつれて、水平方向における凹部12側と反対側に傾斜する案内面12bとを有する。これにより、一方の嵌合体を他方の嵌合体に向けて案内する物理的な案内機構を利用できる位置における2つの嵌合体間の位置合わせを精度よく、かつ容易に行うことができる。
【0040】
上記実施形態では、第2嵌合体30は、1つの磁気センサS1を備えるが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、複数の磁気センサS1~S5を備えるものであってもよい。磁気センサS2~S5は、磁気センサS1を主センサとすると、当該主センサとは異なる複数の従センサであり、凸部32における基部33に配置されている。磁気センサS2~S5は、第1嵌合体10及び第2嵌合体30が嵌合した嵌合状態において、コイル20の中心軸O1を中心として、外周壁32bに沿って一定の間隔をあけて配置される。磁気センサS2~S5は、磁気センサS1を中心として放射状に配置される。磁気センサS2~S5は、電線(不図示)を介して制御部40に電気的に接続されており、検出結果を当該制御部40に出力する。磁気センサS2~S5は、例えば、電線を巻回した小型コイルやホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子等で構成される。
【0041】
制御部40は、第2嵌合体30内の磁気センサS2~S5に電気的に接続されており、各磁気センサS2~S5により検出される磁界Mの強さの変化に基づいて、第1嵌合体10と第2嵌合体30との相対的に位置ずれを特定する。制御部40は、磁気センサS2~S5の検出結果に基づいて、第2嵌合体30から見た第1嵌合体10の相対的な方向を特定する。磁気センサが1つ(磁気センサS1)である場合、初期段階では、位置ずれが図6のグラフのA,E位置にあるのか、B~D位置にあるのか判断するため、第2嵌合体30を異なる方向に複数回相対移動させる必要がある。そこで、磁気センサS1と水平方向において異なる位置に複数の磁気センサS2~S5を配置することで、複数回の相対移動を簡略化することができる。制御部40は、例えば、2つの嵌合体10,30を相対移動させた際に、磁気センサS1により磁界Mが検出されなかった場合、磁気センサS2,S3により磁界Mが検出され、かつ磁気センサS4,S5により磁界Mが検出されなかったとき、第2嵌合体30から見た第1嵌合体10の相対的な方向が幅方向の一方であって磁気センサS2,S3側にあると判定する。このとき、磁気センサS2の検出結果に対して磁気センサS3の検出結果が大きい場合、制御部40は、嵌合位置が磁気センサS3側にあると判定することができる。一方、磁気センサS3の検出結果と磁気センサS3の検出結果が略同一である場合、制御部40は、相対移動方向(例えば前後方向)と直交する方向(例えば幅方向)の一方(磁気センサS2,S3側)に嵌合位置があると判定することができる。つまり、制御部40は、磁気センサS1により磁界Mが検出されなかった場合、磁気センサS2~S5の検出結果を相互に比較し、それら検出結果の大きさや差分から、第2嵌合体30から見た第1嵌合体10の相対的な方向を判定することができる。これにより、制御部40は、第2嵌合体30を異なる方向に複数回相対移動させることなく、容易に嵌合位置を特定することができる。なお、磁気センサS2~S5の検出結果により第2嵌合体30から見た第1嵌合体10の相対的な方向を判定し、当該方向に第2嵌合体30を移動させて相対移動させた際に、磁気センサS1により磁界Mが検出されたときは、以降の磁気センサS2~S5による検出を行わないようにしてもよい。
【0042】
以上説明した実施形態の変形例に係る車両用充電システム1は、磁気センサS1~S5のうち、磁気センサS1とは異なる複数の磁気センサS2~S5が、第1嵌合体10及び第2嵌合体30が嵌合した嵌合状態において、コイル20の中心軸O1を中心として、第2電極部材31を保持する外周壁32bに沿って一定の間隔をあけて配置される。制御部40は、隣り合う磁気センサS2~S5の検出結果に基づいて嵌合位置を特定する。これにより、複数の磁気センサS2~S5間における磁界Mの強さの変化を比較することができ、より精度よく嵌合位置を特定することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、凹部12及び凸部32は、対向方向から視た場合、円形状を有するが、これに限定されるものではなく、楕円(または長円)形状を有するものでもよい。この場合、コイル20は、嵌合方向から見た形状が楕円(または長円)形状を有するものでもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、凹部12が第1電極部材11を内方に配置し、凸部32が第2電極部材31を内方に保持しているが、これに限定されるものではない。例えば、凹部12が第2電極部材31を内方に配置し、凸部32が第1電極部材11を内方に保持していてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、本発明を車両に適用しているが、車両に限定されるものではない。例えば、電動自転車(電動アシスト自転車を含む)であってもよいし、自動走行する電動車両、掃除器、人型や動物型の歩行ロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 車両用充電システム
10 第1嵌合体
11 第1電極部材
12 凹部
12a 開口部
12b 案内面
12c 底面
12d 内周壁
20 コイル
21 電線
22 通電部
30 第2嵌合体
31 第2電極部材
32 凸部
32a 開口部
32b 外周壁
32c 底面
33 基部
40 制御部
50 第1移動機構
51 第2移動機構
100 車両
200 地上面
300 充電装置
M 磁界
O1 中心軸
O2 軸
S1,S2,S3,S4,S5 磁気センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8