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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス用プロテクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240205BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20240205BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20240205BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H02G3/04 037
H02G3/32
F16B19/00 N
B60R16/02 623T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020113667
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012103
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平沢 均
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-308231(JP,A)
【文献】特開2004-196296(JP,A)
【文献】特開2019-110617(JP,A)
【文献】特開2002-276633(JP,A)
【文献】特開2014-171275(JP,A)
【文献】実開平5-79162(JP,U)
【文献】米国特許第6087593(US,A)
【文献】特開2014-96880(JP,A)
【文献】特開平10-257652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/32
H02G 3/30
F16B 19/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部壁面と、前記内部壁面とは反対側の外部壁面とを貫通する少なくとも1つの嵌合孔を有するプロテクタ本体と、
前記嵌合孔に対して前記外部壁面の平面方向に移動可能に嵌合する少なくとも1つの可動クリップ部材と、を備え、
前記可動クリップ部材は、
当該可動クリップ部材が前記嵌合孔に嵌合した嵌合状態において、被係止部材に対して係止される係止部と、
前記嵌合状態において前記嵌合孔に挿通される挿通部と、
前記挿通部と前記内部壁面側で連結され、前記平面方向と直交する軸方向から見た場合の外縁の中心が前記嵌合孔の中心と一致する位置で、前記外縁の少なくとも一部が前記嵌合孔よりも外側に位置する内部壁面側板部と、
前記挿通部と前記外部壁面側で連結され、前記軸方向から見た場合の外縁の中心が前記嵌合孔の中心と一致する位置で、前記外縁の少なくとも一部が前記嵌合孔よりも外側に位置する外部壁面側板部と、を有し、
前記内部壁面側板部は、
前記外縁から内側に向かって切り欠かれて形成された一対の切り欠き端部を有し、
前記嵌合孔は、
前記嵌合状態にて前記挿通部が挿通される孔本体部と、
前記孔本体部と連通し、かつ前記孔本体部から外側に向けて延在して形成され、前記挿通部が前記孔本体部に挿通される前に、一対の前記切り欠き端部の一方が挿通される孔延在部と、を有する、
ことを特徴とするワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項2】
前記孔本体部の前記平面方向の最小幅は、
前記孔延在部の延在方向及び前記軸方向と直交する幅方向の幅よりも広く、
前記孔延在部の前記幅方向の幅は、
前記挿通部の前記平面方向の最小幅よりも狭い、
請求項1に記載のワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項3】
前記外部壁面側板部は、
前記軸方向から見た場合の外縁に少なくとも1つの角部を有する、
請求項1または2に記載のワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項4】
一対の前記切り欠き端部の少なくとも一方は、
前記内部壁面側板部から前記軸方向における前記外部壁面側板部と反対側に向けて屈曲する屈曲部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項5】
前記孔延在部は、
幅方向に対向する一対の端部の一方が、前記外部壁面から前記内部壁面に向けて前記幅方向に広がるように傾斜する傾斜面を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用プロテクタ。
【請求項6】
前記プロテクタ本体は、
前記外部壁面側に形成された非可動の非可動クリップ部材を少なくとも1つ有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用プロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス用プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車内の各種電装品を相互に接続するためのワイヤハーネスが配索されている。ワイヤハーネスには、ワイヤハーネスを構成する配索材を保護し、車体に取り付けることが可能なワイヤハーネス用プロテクタを有するものがある。ワイヤハーネス用プロテクタは、例えば、車体に取り付けるためのクリップを備え、当該クリップが車体側に形成された貫通孔に挿入されることで、車体に固定される。
【0003】
このようなワイヤハーネス用プロテクタでは、複数のクリップにより車体に固定する場合、車体側の貫通孔とプロテクタ本体側のクリップとの寸法誤差を吸収するために、一部のクリップをプロテクタ本体の長手方向にスライド可能に構成している(例えば、特許文献1-6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-274533号公報
【文献】特開2006-6087号公報
【文献】特開2013-162542号公報
【文献】特開2014-96880号公報
【文献】特開2016-59101号公報
【文献】特開2019-110617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クリップをプロテクタ本体と別体に構成したワイヤハーネス用プロテクタでは、プロテクタ本体に対するクリップの相対移動を確保しつつ、プロテクタ本体に対する組付性の点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、プロテクタ本体に対する可動クリップ部材の相対移動を確保しつつ、可動クリップ部材のプロテクタ本体に対する組付性を向上することができるワイヤハーネス用プロテクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネス用プロテクタは、内部壁面と、前記内部壁面とは反対側の外部壁面とを貫通する少なくとも1つの嵌合孔を有するプロテクタ本体と、前記嵌合孔に対して前記外部壁面の平面方向に移動可能に嵌合する少なくとも1つの可動クリップ部材と、を備え、前記可動クリップ部材は、当該可動クリップ部材が前記嵌合孔に嵌合した嵌合状態において、被係止部材に対して係止される係止部と、前記嵌合状態において前記嵌合孔に挿通される挿通部と、前記挿通部と前記内部壁面側で連結され、前記平面方向と直交する軸方向から見た場合の外縁の中心が前記嵌合孔の中心と一致する位置で、前記外縁の少なくとも一部が前記嵌合孔よりも外側に位置する内部壁面側板部と、前記挿通部と前記外部壁面側で連結され、前記軸方向から見た場合の外縁の中心が前記嵌合孔の中心と一致する位置で、前記外縁の少なくとも一部が前記嵌合孔よりも外側に位置する外部壁面側板部と、を有し、前記内部壁面側板部は、前記外縁から内側に向かって切り欠かれて形成された一対の切り欠き端部を有し、前記嵌合孔は、前記嵌合状態にて前記挿通部が挿通される孔本体部と、前記孔本体部と連通し、かつ前記孔本体部から外側に向けて延在して形成され、前記挿通部が前記孔本体部に挿通される前に、一対の前記切り欠き端部の一方が挿通される孔延在部と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
また、上記ワイヤハーネス用プロテクタにおいて、前記孔本体部の前記平面方向の最小幅は、前記孔延在部の延在方向及び前記軸方向と直交する幅方向の幅よりも広く、前記孔延在部の前記幅方向の幅は、前記挿通部の前記平面方向の最小幅よりも狭い、ものである。
【0009】
また、上記ワイヤハーネス用プロテクタにおいて、前記外部壁面側板部は、前記軸方向から見た場合の外縁に少なくとも1つの角部を有する、ものである。
【0010】
また、上記ワイヤハーネス用プロテクタにおいて、一対の前記切り欠き端部の少なくとも一方は、前記内部壁面側板部から前記軸方向における前記外部壁面側板部と反対側に向けて屈曲する屈曲部を有する、ものである。
【0011】
また、上記ワイヤハーネス用プロテクタにおいて、前記孔延在部は、幅方向に対向する一対の端部の一方が、前記外部壁面から前記内部壁面に向けて前記幅方向に広がるように傾斜する傾斜面を有する、ものである。
【0012】
また、上記ワイヤハーネス用プロテクタにおいて、前記プロテクタ本体は、前記外部壁面側に形成された非可動の非可動クリップ部材を少なくとも1つ有する、ものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るワイヤハーネス用プロテクタによれば、プロテクタ本体に対する可動クリップ部材の相対移動を確保しつつ、可動クリップ部材のプロテクタ本体に対する組付性を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係るワイヤハーネス用プロテクタの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るワイヤハーネス用プロテクタの概略構成を示す部分分解斜視図である。
図3図3は、実施形態における可動クリップ部材の概略構成を示す斜視図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、実施形態におけるプロテクタ本体の嵌合孔の平面図である。
図5図5(A)は可動クリップ部材の側面図、図5(B)は可動クリップ部材の平面図である。
図6図6(A)及び図6(B)は、ワイヤハーネス用プロテクタの嵌合時の初期状態の一例を示す部分斜視図である。
図7図7(A)及び図7(B)は、ワイヤハーネス用プロテクタの嵌合時の状態に他の部分斜視図である。
図8図8(A)及び図8(B)は、ワイヤハーネス用プロテクタの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るワイヤハーネス用プロテクタ(以下、単に「プロテクタ」と略す。)の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す斜視図である。図2は、実施形態に係るプロテクタの概略構成を示す部分分解斜視図である。図3は、実施形態における可動クリップ部材の概略構成を示す斜視図である。図4(A)及び図4(B)は、実施形態におけるプロテクタ本体の嵌合孔の平面図である。図5(A)は可動クリップ部材の側面図、図5(B)は可動クリップ部材の平面図である。図6(A)及び図6(B)は、プロテクタの嵌合時の初期状態の一例を示す部分斜視図である。図7(A)及び図7(B)は、プロテクタの嵌合時の状態に他の部分斜視図である。図8(A)及び図8(B)は、プロテクタの縦断面図である。
【0017】
なお、図1における車体パネル100及びワイヤハーネスWHについては、破線で記載して省略している。図2は、可動クリップ部材20がプロテクタ本体10から分離した状態を示す。図4(A)及び図4(B)は、嵌合孔14を軸方向の一方及び他方から見たものである。図5(A)は、可動クリップ部材20を平面方向から見たものである。図5(B)は、可動クリップ部材20を軸方向の一方から見たものである。図6(A)及び図6(B)は、可動クリップ部材20を嵌合孔14に嵌合する嵌合開始時の状態を示す。図7(A)及び図7(B)は、可動クリップ部材20を嵌合孔14に嵌合する嵌合終了時の状態を示す。図8(A)は、嵌合状態の可動クリップ部材20が幅方向の一方に移動した状態を示す。図8(B)は、嵌合状態の可動クリップ部材20が幅方向の他方に移動した状態を示す。
【0018】
図示のX方向は、本実施形態におけるプロテクタの長手方向である。Y方向は、本実施形態におけるプロテクタの短手方向または幅方向であり、長手方向と直交する方向である。Z方向は、本実施形態におけるプロテクタの軸方向であり、長手方向及び短手方向と直交する方向である。Z方向のうち、Z1方向を軸方向の一方とし、Z2方向を軸方向の他方とする。
【0019】
図1に示すプロテクタ1は、自動車等の車両(不図示)に搭載され、ワイヤハーネスWHに組み込まれ、導電性を有する配索材(不図示)に外装され、配索材Wを保護するものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材を束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の配索材を各装置に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、導電性の配索材と、配索材に装着され当該配索材を保護するプロテクタ1とを備える。配索材は、例えば、金属棒、電線、電線束等によって構成される。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、電気接続箱、グロメット、固定具、コネクタ等を含んで構成されてもよい。
【0020】
プロテクタ1は、ワイヤハーネスWHに組み込まれた状態で、車両内の車体パネル100に固定される。車体パネル100は、例えば、板状に形成され、長手方向に間隔をおいて設けられた2つの貫通孔100a,100bを有する。ワイヤハーネスWHは、プロテクタ1の可動クリップ部材20、非可動クリップ部材30が貫通孔100a,100bに嵌合することで車体パネル100に固定される。本実施形態のプロテクタ1は、プロテクタ本体10と、可動クリップ部材20と、非可動クリップ部材30とを備える。プロテクタ本体10は、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成され、長手方向から見た形状が凹形状を有する。プロテクタ本体10は、第1壁部11と、一対の第2壁部12,13とを備える。
【0021】
第1壁部11は、軸方向から見た形状が長方形の板状に形成されている。第1壁部11は、幅方向の一方の端部が第2壁部12の端部に連結され、他方の端部が第2壁部13の端部に連結される。第1壁部11は、図1図2に示すように、ワイヤハーネスWHを支持する内部壁面11aと、内部壁面11aとは反対側の面である外部壁面11bと、可動クリップ部材20を嵌合する嵌合孔14とを有する。
【0022】
一対の第2壁部12,13のうちの第2壁部12は、内部壁面11aにおける幅方向の一端から立設されている。一方、第2壁部13は、内部壁面11aにおける幅方向の他端から立設されている。各第2壁部12,13は、幅方向から見た形状が長方形の板状に形成されている。各第2壁部12,13は、第1壁部11に対して直交している。第2壁部12及び第2壁部13は、幅方向において対向している。
【0023】
嵌合孔14は、内部壁面11aと外部壁面11bとを貫通する貫通孔であり、第1壁部11を貫通している。嵌合孔14は、内部壁面11aにおける内部凹状領域11aaに設けられ(図2図4(A))、かつ外部壁面11bにおける外部凸状領域11baに設けられている(図1図4(B))。内部凹状領域11aaは、図2に示すように、内部壁面11aから軸方向の一方(Z1方向)に凹むように形成される。外部凸状領域11baは、図1に示すように、外部壁面11bから軸方向の一方(Z1方向)に突出するように形成される。内部凹状領域11aaと外部凸状領域11baとの間の(軸方向の)厚みは、第1壁部11の厚み、すなわち内部壁面11aと外部壁面11bとの間の(軸方向の)厚みより薄いことが好ましい。嵌合孔14は、可動クリップ部材20が嵌合した状態で、外部壁面11bの平面方向にスライド移動可能にするものである。ここで平面方向とは、軸方向と直交する方向である。したがって、平面方向には、長手方向及び幅方向(短手方向)が含まれる。嵌合孔14は、図4(A)、図4(B)に示すように、軸方向から見た形状が、円形状の孔と、長方形形状の切り欠き孔と、を連結させた鍵穴形状を有する。嵌合孔14は、孔本体部14Aと、孔延在部14Bとを有する。
【0024】
孔本体部14Aは、円形状の孔である。孔本体部14Aは、可動クリップ部材20が嵌合孔14に嵌合した嵌合状態にて、可動クリップ部材20の挿通部202が挿通される。孔本体部14Aは、平面方向に幅L1を有する。本実施形態の孔本体部14Aは、円形状であり、平面方向の幅L1が孔の内径である。
【0025】
孔延在部14Bは、長方形形状の切り欠き孔である。孔延在部14Bは、孔本体部14Aと連通し、孔本体部14Aから外側に向けて延在して形成される。孔延在部14Bは、挿通部202が孔本体部14Aに挿通される前に、内部壁面側板部203が挿通される。孔延在部14Bは、幅方向に幅L2を有する。ここで孔延在部14Bの幅方向は、孔延在部14Bの延在方向及び軸方向と直交する方向である。孔本体部14Aの幅L1は、孔延在部14Bの幅L2よりも広く形成されている(L1>L2)。
【0026】
孔延在部14Bは、一部が、幅方向に対向する一対の端部15a,15bにより形成される。端部15aは、傾斜面17を有する(図4(B))。傾斜面17は、内部壁面11aから外部壁面11bに向けて幅方向に広がるように傾斜する面である。言い換えると、傾斜面17は、内部凹状領域11aaから外部凸状領域11baに向けて対向方向に広がるように形成される。一方、端部15bは、傾斜面16を有する(図4(A))。傾斜面16は、外部壁面11bから内部壁面11aに向けて幅方向に広がるように傾斜する面である。言い換えると、傾斜面16は、外部凸状領域11baから内部凹状領域11aaに向けて対向方向に広がるように形成される。
【0027】
可動クリップ部材20は、プロテクタ本体10の第1壁部11にあって、外部壁面11b側に配置されている。可動クリップ部材20は、図3図5(A)、図5(B)に示すように、係止部21と、支持部22とを備える。
【0028】
係止部21は、可動クリップ部材20が嵌合孔14に嵌合した嵌合状態において、車体パネル100に対して係止される部分である。係止部21は、車体パネル100の貫通孔100bへの挿入時において一部が弾性変形し、挿入後において弾性復帰して可動クリップ部材20を係止するものである。
【0029】
支持部22は、プロテクタ本体10に対して平面方向に相対移動可能に係止部21を支持するものである。支持部22は、挿通部202と、内部壁面側板部203と、外部壁面側板部204とを備える。
【0030】
挿通部202は、可動クリップ部材20が嵌合孔14に嵌合した嵌合状態において、嵌合孔14に挿通される部分である。挿通部202は、軸方向を中心とする円柱形状を有し、軸方向の一方(Z2方向)の端部に内部壁面側板部203が連結され、他方の端部に外部壁面側板部204が連結されている。挿通部202は、軸方向と直交する平面方向に幅L3を有する(図5(A))。挿通部202の幅L3は、孔本体部14Aの幅L1よりも狭く形成されている(L3<L1)。挿通部202の幅L3は、例えばφ4mmとし、孔本体部14Aの幅L1は、例えばφ7mmとする。また、挿通部202の幅L3は、孔延在部14Bの幅L2よりも広く形成されている(L3>L2)。孔延在部14Bの幅L2は、例えば3mmとする。
【0031】
内部壁面側板部203は、軸方向から見た形状が略円形状を有する。内部壁面側板部203は、挿通部202と内部壁面11a側で連結されている。内部壁面側板部203は、軸方向から見た場合の外縁203aの中心が嵌合孔14の中心と一致する位置で、外縁203aが嵌合孔14よりも外側に位置するように形成される。本実施形態の内部壁面側板部203は、軸方向から見た外縁203aが嵌合孔14よりも外側に位置するように形成される(図8(A)、図8(B))。内部壁面側板部203は、切り欠き部205と、切り欠き端部205a,205bと、屈曲部207とを有する。
【0032】
切り欠き部205は、内部壁面側板部203の外縁203aから内側に向かって切り欠かれた形成された部分である。切り欠き部205は、軸方向から見た形状が四角形形状を有する。
【0033】
切り欠き端部205a,205bは、切り欠き部205の一部を形成する部分であり、外縁203aから内側に向かって切り欠かれて形成される。切り欠き端部205a,205bは、互いに対向して形成される。切り欠き端部205aは、平面方向のうちの切り欠き部205の切り欠き方向から見た形状が湾曲形状を有する。
【0034】
屈曲部207は、内部壁面側板部203の切り欠き端部205bに形成されている。屈曲部207は、内部壁面側板部203から軸方向における外部壁面側板部204と反対側に向けて屈曲し、内部壁面側板部203より突出している。
【0035】
外部壁面側板部204は、軸方向から見た形状が正六角形状を有する。外部壁面側板部204は、外縁204aを有する。外縁204aは、6つの角部204bを有する。外部壁面側板部204は、軸方向にて挿通部202と係止部21とを連結している。外部壁面側板部204は、軸方向から見た場合の外縁204aの中心が嵌合孔14の中心と一致する位置で、外縁204aが嵌合孔14よりも外側に位置するように形成される。本実施形態の外部壁面側板部204は、軸方向から見た外縁204aが嵌合孔14よりも外側に位置するように形成される(図8(A)、図8(B))。
【0036】
非可動クリップ部材30は、プロテクタ本体10の第1壁部11にあって、外部壁面11b側に形成されている。非可動クリップ部材30は、プロテクタ本体10に固定されている。非可動クリップ部材30は、可動クリップ部材20の係止部21と同一形状の係止部31を有する。係止部31は、車体パネル100の貫通孔100aへの挿入時において一部が弾性変形し、挿入後において弾性復帰して車体パネル100に係止するものである。
【0037】
次に、可動クリップ部材20をプロテクタ本体10に取り付ける取付方法について説明する。図6(A)及び図6(B)に示すように、まず、作業者は、可動クリップ部材20の屈曲部207を、プロテクタ本体10の孔延在部14Bに挿入する。次に、作業者は、可動クリップ部材20を軸方向を中心として回動させる。可動クリップ部材20の回動により、屈曲部207が端部15bに引っかかって乗り上げて傾斜面16を摺動し、内部壁面側板部203が回動しながら切り欠き端部205b側から徐々に孔延在部14B、孔本体部14Aに挿入されていく。可動クリップ部材20が一回転程回動すると、内部壁面側板部203のすべてが孔延在部14B及び孔本体部14Aを通過し、内部凹状領域11aa側に内部壁面側板部203全体が現れる(図7(A)、図7(B))。そして、可動クリップ部材20の挿通部202が孔本体部14Aを挿通する状態になる。このように、嵌合孔14に対して軸方向を中心に可動クリップ部材20を回動することで、内部壁面側板部203を孔延在部14B、孔本体部14Aの順に通過させることができ、プロテクタ本体10の嵌合孔14に対して可動クリップ部材20を容易に嵌合させることができる。ここで、嵌合孔14の孔本体部14Aの幅L1を、可動クリップ部材20の挿通部202の幅L3に対して十分に広くとった場合、プロテクタ本体10に対する可動クリップ部材20の相対移動を確保することができる。また、可動クリップ部材20が、軸方向から見た場合の外縁203aの中心が嵌合孔14の中心と一致する位置で、外縁203aが嵌合孔14よりも外側に位置する内部壁面側板部203と、軸方向から見た場合の外縁204aの中心が嵌合孔14の中心と一致する位置で、外縁203aが嵌合孔14よりも外側に位置する外部壁面側板部204とを有する。これにより、可動クリップ部材20のプロテクタ本体10からの外れ難さを向上させることができる。
【0038】
以上のように、本実施形態のプロテクタ1は、嵌合孔14を有するプロテクタ本体10と、可動クリップ部材20とを備える。可動クリップ部材20は、車体パネル100に係止される係止部21と、嵌合孔14に挿通される挿通部202と、挿通部202と内部壁面11a側で連結される内部壁面側板部203と、挿通部202と外部壁面11b側で連結される外部壁面側板部204とを有する。内部壁面側板部203は、一対の切り欠き端部205a,205bを有する。嵌合孔14は、挿通部202が挿通される孔本体部14Aと、孔本体部14Aと連通し、孔本体部14Aから外側に向けて延在し、挿通部202が孔本体部14Aに挿通される前に、切り欠き端部205bが挿通される孔延在部14Bとを有する。
【0039】
上記構成により、プロテクタ本体10の嵌合孔14に対して軸方向を中心に可動クリップ部材20を回動することで、内部壁面側板部203が回動しながら切り欠き端部205b側から徐々に孔延在部14B、孔本体部14Aに挿入されていく。可動クリップ部材20が一回転程回動すると、内部壁面側板部203のすべてが孔延在部14B及び孔本体部14Aを通過し、挿通部202が孔本体部14Aを挿通する状態になる。この結果、プロテクタ本体10の嵌合孔14に対して、可動クリップ部材20を力ずくで軸方向の一方に押し込みながら回動させることなく、容易に嵌合させることができる。
【0040】
可動クリップ部材20をプロテクタ本体10に取り付ける際に、当該可動クリップ部材20を軸方向において2つに分割し、プロテクタ本体10への組み付け時に結合する構成をとった場合、部品点数が多くなることで部品管理のコストがあがり、可動クリップ部材20の結合作業が追加されるので、作業効率が低下するおそれがある。
【0041】
また、嵌合状態において可動クリップ部材20がプロテクタ本体10に対して平面方向に相対移動可能に構成されるので、車体パネル100の貫通孔100a,100b等の位置と、嵌合孔14の位置との間に生じる長手方向の寸法公差によるズレだけでなく、長手方向と直交する幅方向のズレを容易に吸収することができる。
【0042】
また、本実施形態のプロテクタ1は、孔本体部14Aの平面方向の幅L1が、孔延在部14Bの幅方向の幅L2よりも広く、孔延在部14Bの幅方向の幅L2が、挿通部202の平面方向の幅L3よりも狭く形成されている。これにより、可動クリップ部材20が嵌合孔14に嵌合した嵌合状態において、挿通部202が孔本体部14A内側から孔延在部14B内側に移動してしまうことで、平面方向における幅方向の自由な移動が制限されることを防止することができる。この結果、嵌合状態における可動クリップ部材20の平面方向への自由な移動を確保することができる。
【0043】
また、本実施形態のプロテクタ1は、外部壁面側板部204が、軸方向から見た場合の外縁204aに複数の角部204bを有する。これにより、例えば、特別な治具を必要とせずにレンチ等の工具を用いて、外部壁面側板部204の外縁204aに形成された角部204bを基点として、当該外部壁面側板部204を、軸方向を中心に共回りさせることが可能となり、可動クリップ部材20の嵌合孔14への嵌合を容易にすることができる。
【0044】
また、本実施形態のプロテクタ1は、切り欠き端部205bが屈曲部207を有する。屈曲部207は、内部壁面側板部203から軸方向における外部壁面側板部204と反対側に向けて屈曲し、内部壁面側板部203より突出している。これにより、作業者が可動クリップ部材20をプロテクタ本体10に取り付ける際に、可動クリップ部材20の回動により、屈曲部207が端部15bに容易に引っ掛けることが可能となり、プロテクタ本体10に対する可動クリップ部材20の組付け性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態のプロテクタ1は、孔延在部14Bが傾斜面16を有する。傾斜面16は、幅方向に対向する一対の端部15bが、外部壁面11bから内部壁面11aに向けて幅方向に広がるように傾斜する。これにより、作業者が可動クリップ部材20をプロテクタ本体10に取り付ける際に、可動クリップ部材20の回動により、屈曲部207が端部15bに引っかかって乗り上げて傾斜面16を摺動して内部壁面側板部203を孔延在部14Bに向けて案内することが可能となり、プロテクタ本体10に対する可動クリップ部材20の組付け性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のプロテクタ1は、プロテクタ本体10が、可動クリップ部材20に加えて、非可動クリップ部材30を有する。これにより、例えば、2つのクリップ部材がいずれも可動である場合に較べて、一方が固定されていれば、車体パネル100にプロテクタ1を取り付ける際に、固定されている非可動クリップ部材30を基準に取り付けることが可能となり、プロテクタ1の車体パネル100への取り付けが容易になる。
【0047】
なお、上記実施形態では、可動クリップ部材20及び嵌合孔14は、プロテクタ本体10に対して1つずつ設けられているが、これに限定されるものでなく、複数ずつ設けられていてもよい。また、上記プロテクタ1は、可動クリップ部材20と非可動クリップ部材30とを1つずつ備えるが、これに限定されず、1以上の可動クリップ部材20のみを備えるものであってもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、非可動クリップ部材30は、プロテクタ本体10に対して1つ設けられているが、これに限定されるものではなく、複数設けられていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、屈曲部207は、切り欠き端部205bに形成されているが、これに限定されるものではなく、切り欠き端部205aに形成されていてもよい。この場合、作業者が可動クリップ部材20をプロテクタ本体10に取り付ける際に、可動クリップ部材20の回動方向を一方から他方にすることで、プロテクタ本体10の嵌合孔14に対して可動クリップ部材20を容易に嵌合させることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、傾斜面16は、図4(B)に示すように、端部15bに形成されているが、これに限定されるものではなく、端部15aに形成されていてもよい。この場合、作業者が可動クリップ部材20をプロテクタ本体10に取り付ける際に、可動クリップ部材20の回動方向を一方から他方にすることで、プロテクタ本体10の嵌合孔14に対して可動クリップ部材20を容易に嵌合させることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、孔本体部14Aは、軸方向から見た形状が円形状を有するが、これに限定されるものではない。例えば、孔本体部14Aは、軸方向から見た形状が楕円形状等であってもよい。この場合、孔本体部14Aの平面方向の幅L1は、例えば、孔延在部14Bの幅方向の幅L2のうちの最小幅よりも広いものとする。
【0052】
また、上記実施形態では、挿通部202は、軸方向からみた断面形状が円形状を有するが、これに限定されるものではない。例えば、挿通部202は、軸方向から見た断面形状が楕円形状等であってもよい。この場合、孔延在部14Bの幅L2は、挿通部202の平面方向の幅L3のうちの最小幅よりも狭いものとする。
【0053】
また、上記実施形態では、内部壁面側板部203は、軸方向から見た形状が略円形状を有するが、これに限定されるものではない、例えば、内部壁面側板部203は、軸方向から見た形状が多角形状であってもよい。この場合、内部壁面側板部203は、軸方向から見た場合の外縁203aの中心が嵌合孔14の中心と一致する位置で、外縁203aの少なくとも一部が嵌合孔14よりも外側に位置するように形成されることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、外部壁面側板部204は、軸方向から見た形状が正六角形状を有するが、これに限定されるものではない。例えば、外部壁面側板部204は、軸方向から見た場合の外縁204aに少なくとも1つの角部204bを有するものであってもよい。つまり、外部壁面側板部204は、軸方向から見た形状が正六角形以外の多角形状であってもよい。この場合、外部壁面側板部204は、軸方向から見た場合の外縁204aの中心が嵌合孔14の中心と一致する位置で、外縁204aの少なくとも一部が嵌合孔14よりも外側に位置するように形成されることが好ましい。
【0055】
また、上記実施形態では、嵌合孔14は、軸方向から見た形状が、円形状の孔と、長方形形状の切り欠き孔と、を連結させた鍵穴形状を有するが、これに限定されるものではない。例えば、嵌合孔14は、可動クリップ部材20の切り欠き部205を残したままで、当該嵌合孔14の内径や板厚(内部凹状領域11aaと外部凸状領域11baとの間の軸方向の厚み)の組み合わせ(寸法設定)により円形状の孔のみで構成されていてもよい。また、嵌合孔14は、可動クリップ部材20の数に合わせて、プロテクタ本体10の複数箇所に設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 プロテクタ
10 プロテクタ本体
11 第1壁部
11a 内部壁面
11aa 内部凹状領域
11b 外部壁面
11ba 外部凸状領域
12,13 第2壁部
14 嵌合孔
14A 孔本体部
14B 孔延在部
15a,15b 端部
16,17 傾斜面
20 可動クリップ部材
21,31 係止部
22 支持部
202 挿通部
203 内部壁面側板部
203a,204a 外縁
204 外部壁面側板部
204b 角部
205 切り欠き部
205a,205b 切り欠き端部
207 屈曲部
30 非可動クリップ部材
100 車体パネル
100a,100b 貫通孔
WH ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8