(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】カウルトップカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240205BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2020130531
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】平井 穂
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-125991(JP,A)
【文献】特開2009-154811(JP,A)
【文献】特開2017-178225(JP,A)
【文献】特開2016-011056(JP,A)
【文献】特開2016-049791(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014105829(DE,A1)
【文献】特開2005-014677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/01-13/04
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフードとフロントウインドシールドとの間の領域に少なくとも配されており、前記フロントフードから衝撃荷重を受けたときに高さ方向の寸法を減少させる変形を生じさせて衝撃エネルギーを吸収する第1変形部を有するカウルトップカバーであって、
前記フロントフードが接するシール部材を支持するシール支持部と、前記シール支持部の前端部に配されるとともに前記フロントフードの裏面に向けて突出する突出リブと、前記シール支持部の前端部又は後端部に隣接して配される第2変形部とが設けられ、
前記第2変形部は、前記第1変形部の前記変形が生じる前に、前記フロントフードが前記突出リブに衝突して加えられる衝撃荷重により変形する形状を有する
ことを特徴とするカウルトップカバー。
【請求項2】
前記突出リブは、閉じられた位置の前記フロントフードの裏面から離間して配され、
前記第2変形部は、前記シール支持部に対して段差を設ける段差部により形成され、
前記第1変形部は、前記第2変形部から屈曲部を介して連続して形成されている
請求項1記載のカウルトップカバー。
【請求項3】
前記段差部は、前記シール支持部から屈曲して延在する段差縦壁部と、前記段差縦壁部から屈曲して前記シール支持部から離れる方向に延在する段差横壁部とを有し、
前記段差横壁部の厚さが、前記段差縦壁部の厚さよりも薄くされている
請求項2記載のカウルトップカバー。
【請求項4】
前記カウルトップカバーは、前記フロントウインドシールドを保持する後端保持部と、前記後端保持部から前記フロントフードの下方位置まで延在するカバー本体部と、前記カバー本体部の前端部から上下に分岐して延在する上側縦壁部及び下側縦壁部とを有し、
前記上側縦壁部は、前記カバー本体部の前端部から前記第2変形部に向けて上り傾斜して配され、
前記下側縦壁部は、前記カバー本体部の前端部から下り傾斜して配され、
前記第1変形部は、前記上側縦壁部及び前記下側縦壁部により形成されている
請求項1~3のいずれかに記載のカウルトップカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のカウルトップカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントウインドシールドと、エンジンルームを覆うフロントフードとの間には、カウルトップカバーが配されている。カウルトップカバーの後端部には、フロントウインドシールドの前端部を保持する後端保持部が配されている。また、カウルトップカバーは、フロントフードの下に配置されるシール支持部を有しており、このカウルトップカバーのシール支持部には、フロントフードの裏面を当接させてフロントフードとカウルトップカバーの間をシールするシール部材が固定されている。
【0003】
カウルトップカバーは、フロントフードに衝撃が加えられたときに、その衝撃を緩和する衝撃吸収構造を有することが知られている。例えば特開2005-14677号公報(特許文献1)には、フロントフードに上方から衝撃が加えられた際に、フロントフードから衝撃荷重を受けて容易に変形可能な変形部を有するカウルトップカバーが記載されている。
【0004】
この特許文献1の実施形態に記載されているカウルトップカバーは、フロントフードの下方に配されるカウルトップロワーフロントを有しており、そのカウルトップロワーフロントは、車両前側に配されるとともに上下方向に長い縦板部と、縦板部の下端部から横方向に延びる細長い水平板部とを有する。また、縦板部の下端部には、断面形状がクランク状に曲折されたステップ部が変形部として形成されている。
【0005】
特許文献1のカウルトップカバーによれば、縦板部に変形部としてステップ部が設けられているため、フロントフードが上方から衝撃を受けてカウルトップカバーに衝撃荷重が作用した際に、カウルトップカバーの縦板部(ステップ部)を変形させることができる。これにより、フロントフードがカウルトップカバーに妨げられることなく塑性変形するため、衝撃エネルギーを吸収することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているカウルトップカバーでは、フロントフードが衝撃を受けたときに、カウルトップカバーを縦板部に設けたステップ部(変形部)で変形させる一段階の変形によって衝撃エネルギーの吸収が行われる。
【0008】
一方、自動車等の車両における安全性をより一層高めるために、カウルトップカバーには衝撃エネルギーの吸収特性を更に向上させることが期待されている。例えばカウルトップカバーについては、小さい衝撃エネルギー(例えば、衝撃荷重の印加初期段階における衝撃エネルギー)を受け止めて吸収可能であることが求められている。
【0009】
それとともに、大きな衝撃エネルギーが加えられたときには、例えばカウルトップカバーが部分的に突っ張ることや他の構造体等に当接すること等に起因してカウルトップカバーの変形が妨げられないようにすることが求められている。また、カウルトップカバーの衝撃を受ける部分に破断を生じさせ難くすることが求められている。
【0010】
例えば、カウルトップカバーが他の構造体等に当接して変形が妨げられるといったカウルトップカバーの底付きが生じる場合、カウルトップカバー以外の部材や構造、例えばエクステンションパネルその他のフロントフードの下方に配される車体構造(フロントエンジンの車両の場合はエンジンルーム構造)に衝撃エネルギーが加えられる。この場合、反力の上昇を回避するために、上述したようなカウルトップカバー以外の部材や構造に衝撃エネルギーを吸収可能な特性を付与する必要が生じ、その結果、コストの増大や設計自由度の低下を招く。一方、カウルトップカバーの変形部分に破断が生じると、その破断時にカウルトップカバーで衝撃エネルギーを吸収できずに逃がしてしまい、カウルトップカバーのエネルギー吸収力が一時的に低下することが考えられる。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、フロントフードに衝撃荷重が加えられる場合に、小さい衝撃エネルギーを吸収可能であり、且つ、大きな衝撃エネルギーが加えられたときに変形を円滑に生じさせて衝撃エネルギーを安定して吸収可能なカウルトップカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるカウルトップカバーは、フロントフードとフロントウインドシールドとの間の領域に少なくとも配されており、前記フロントフードから衝撃荷重を受けたときに高さ方向の寸法を減少させる変形を生じさせて衝撃エネルギーを吸収する第1変形部を有するカウルトップカバーであって、前記フロントフードが接するシール部材を支持するシール支持部と、前記シール支持部の前端部に配されるとともに前記フロントフードの裏面に向けて突出する突出リブと、前記シール支持部の前端部又は後端部に隣接して配される第2変形部とが設けられ、前記第2変形部は、前記第1変形部の前記変形が生じる前に、前記フロントフードが前記突出リブに衝突して加えられる衝撃荷重により変形する形状を有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明のカウルトップカバーにおいて、前記突出リブは、閉じられた位置の前記フロントフードの裏面から離間して配され、前記第2変形部は、前記シール支持部に対して段差を設ける段差部により形成され、前記第1変形部は、前記第2変形部から屈曲部を介して連続して形成されていることが好ましい。
【0014】
この場合、前記段差部は、前記シール支持部から屈曲して延在する段差縦壁部と、前記段差縦壁部から屈曲して前記シール支持部から離れる方向に延在する段差横壁部とを有し、前記段差横壁部の厚さが、前記段差縦壁部の厚さよりも薄くされていることが好ましい。
【0015】
本発明のカウルトップカバーにおいて、前記カウルトップカバーは、前記フロントウインドシールドを保持する後端保持部と、前記後端保持部から前記フロントフードの下方位置まで延在するカバー本体部と、前記カバー本体部の前端部から上下に分岐して延在する上側縦壁部及び下側縦壁部とを有し、前記上側縦壁部は、前記カバー本体部の前端部から前記第2変形部に向けて上り傾斜して配され、前記下側縦壁部は、前記カバー本体部の前端部から下り傾斜して配され、前記第1変形部は、前記上側縦壁部及び前記下側縦壁部により形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカウルトップカバーによれば、フロントフードに衝撃荷重が加えられる場合に、小さい衝撃エネルギーを吸収でき、且つ、大きな衝撃エネルギーが加えられたときに変形を円滑に生じさせて衝撃エネルギーを安定して吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係るカウルトップカバーを備える自動車の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したII-II線におけるカウルトップカバーの断面を自動車のフロントウインドシールド及びフロントフードとともに模式的に示す断面図である。
【
図3】フロントフードに衝撃荷重が加えられた初期段階におけるカウルトップカバーの変形(第2変形部の変形)を模式的に示す断面図である。
【
図4】衝撃荷重が加えられた中期段階におけるカウルトップカバーの変形を模式的に示す断面図である。
【
図5】衝撃荷重が加えられた終期段階におけるカウルトップカバーの変形を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の実施例2に係るカウルトップカバーの断面を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施例3に係るカウルトップカバーの断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0019】
例えば、カウルトップカバーが車体に取り付けられる位置は、車両の前後方向において、フロントフードとフロントウインドシールドとの間の領域を少なくとも含んでいれば特に限定されるものではなく、車両の形状等に応じて変更することが可能である。
【実施例1】
【0020】
図1は、本実施例1に係るカウルトップカバーを備える自動車の一部を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示したII-II線におけるカウルトップカバーの断面を自動車のフロントウインドシールド及びフロントフードとともに模式的に示す断面図である。
【0021】
なお、以下の説明において、前後方向とは、車長方向であり、自動車(車両)が前進する方向を前方とし、後退する方向を後方とする。左右方向とは、車幅方向であり、運転者が前方を向いたときの左側及び右側の方向を、それぞれ左方及び右方とする。上下方向とは、車高方向に沿った方向であり、自動車に対して地面側の方向を下方とし、その反対側の方向を上方とする。
【0022】
図1に示した自動車1では、フロントウインドシールド(フロントガラス)2が車室の前方に配されている。また、フロントフード(ボンネットフード)3が、車体前部に配置されるエンジンルームを上方から覆うようにして開閉可能に設けられている。このフロントフード3は、
図2に示すように、フードアウター部3aとフードインナー部3bとを備えている。
【0023】
本実施例1のカウルトップカバー10は、フロントウインドシールド2とフロントフード3の後述するシール部材4が接する部分との間に挟まれる領域を少なくとも覆うように設けられており、また、車幅方向に沿うように左右方向に長く形成されている。なお、カウルトップカバー10の車体に対する取付構造は、一般的に知られている従来の取付構造を採用できる。
【0024】
本実施例1のカウルトップカバー10は、ポリプロピレン、エラストマー変性ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂により形成されている。なお、本発明において、カウルトップカバー10の材質は特に限定されず、任意に選択することができる。また、カウルトップカバー10は、フロントウインドシールド2の前端部を保持する後端保持部11と、後端保持部11から前方に向けて延びるカバー本体部12と、カバー本体部12の前端部から上下に分岐して延在する上側縦壁部13及び下側縦壁部14と、下側縦壁部14の下端部から延びる車体取付部15と、上側縦壁部13の上端部からフロントフード3の下側で前方に延びる前方延出部20とを有する。
【0025】
カウルトップカバー10における前方延出部20の上面には、シール部材4が固定されている。シール部材4は、フロントフード3が閉じられた状態においてフロントフード3のフードインナー部3bに当接し、またそれによって、上下方向に圧縮されるように弾性変形する。このようにシール部材4が弾性変形することにより、カウルトップカバー10とフロントフード3との間がシールされる。
【0026】
本実施例1において、カウルトップカバー10の後端保持部11は、フロントウインドシールド2の前面(外面)に接する第1保持部11aと、第1保持部11aから略L字状の断面を呈するように延出する第2保持部11bとを有する。この後端保持部11は、フロントウインドシールド2の前端部を第1保持部11a及び第2保持部11bで挟み込んで保持することにより支持している。
【0027】
カバー本体部12は、後端保持部11から連続して一体的に形成されている。このカバー本体部12は、後端保持部11から上側にクランク状に屈曲するクランク部と、クランク部から前方に向けて直線状に下り傾斜する直線部とを有する。なお本実施例1において、カバー本体部12の断面形状は、カウルトップカバー10における左右方向(車幅方向)の切断位置によって変化する。また本発明において、カバー本体部の形状や大きさは、カウルトップカバーが取り付けられる車体に応じて変更可能である。
【0028】
上側縦壁部13は、カバー本体部12の前端部から上側に立ち上がるように設けられている。また、上側縦壁部13は、カウルトップカバー10の左右方向に直交する断面を見たときに(
図2を参照)、上側縦壁部13の上端部が下端部よりも前側に配されるように、カバー本体部12の前端部から前方に向けて直線状に上り傾斜して配されている。下側縦壁部14は、カバー本体部12の前端部から下側に垂れ下がるように設けられている。また、下側縦壁部14は、上述した断面(
図2)を見たときに、下側縦壁部14の下端部が上端部よりも前側に配されるように、カバー本体部12の前端部から前方に向けて直線状に下り傾斜して配されている。
【0029】
このため、上側縦壁部13及び下側縦壁部14は、上述した断面視(
図2)において、くの字状に曲がって形成されており、このような上側縦壁部13と下側縦壁部14とによって、カウルトップカバー10が衝撃荷重を受けたときに大きく変形する第1変形部が形成されている。
【0030】
本実施例1におけるカウルトップカバー10の第1変形部では、例えばカウルトップカバー10がフロントフード3を介して上側から衝撃荷重を受けたときに、後述するように、カバー本体部12の前端部に対し、上側縦壁部13及び下側縦壁部14を上側縦壁部13と下側縦壁部14の間の角度が小さくなる方向に折り曲げて、上側縦壁部13及び下側縦壁部14の高さ方向の寸法を減少させるように変形させることができる(
図3~
図5を参照)。
【0031】
カウルトップカバー10の車体取付部15は、自動車1の車体パネル5に載置されるとともに車体パネル5の一部に引っ掛かるようにして、車体パネル5に固定されている。なお本発明において、車体取付部15を車体パネル5に固定する方法及び手段は特に限定されない。
【0032】
カウルトップカバー10の前方延出部20は、シール部材4を支持するシール支持部21と、シール支持部21の前端部に設けられる突出リブ22と、シール支持部21と上側縦壁部13の間に形成される第2変形部23とを有する。
【0033】
シール支持部21は、平板状に形成されているとともに、フロントフード3のフードインナー部3bに対向して配されている。このシール支持部21の上面に、シール部材4が接着により固定されている。なお、シール部材4をシール支持部21に固定する方法及び手段は特に限定されない。
【0034】
突出リブ22は、シール支持部21の前端部からフロントフード3の裏面(フードインナー部3b)に向けて突出している。この場合、突出リブ22は、シール支持部21に対して直交する方向に突出している。また、突出リブ22は、シール支持部21に固定されたシール部材4の弾性変形を阻害しないように、シール部材4との間に隙間を設けてシール部材4よりも前方に配置されている。
【0035】
本実施例1の突出リブ22は、フロントフード3が閉じられた位置に保持されてシール部材4が弾性変形している状態において、フロントフード3の裏面から離れる大きさで形成されている。すなわち、突出リブ22は、突出リブ22におけるシール支持部21の上面からの高さ寸法(高さ方向又は上下方向の寸法)を、フロントフード3の押圧で弾性変形した状態のシール部材4におけるシール支持部21の上面からの高さ寸法よりも小さくして形成されている。
【0036】
これにより、フロントフード3のフードインナー部3bと突出リブ22との間に空間部を確保でき、それによって、フロントフード3が衝撃荷重を受けたときに、フロントフード3を下方へ容易に移動(変形)させることができる。また、突出リブ22とフロントフード3との間に空間部を設けることによって、フロントフード3が下方へ移動して突出リブ22に衝突したときに、例えば突出リブ22がフロントフード3に接して配される場合に比べて、突出リブ22を強く押圧して前方延出部20の第2変形部23を変形させ易くすることができる。
【0037】
また、突出リブ22は、シール支持部21の上面からの高さ寸法が、シール部材4の限界まで押し潰された状態の高さ寸法よりも大きくなるように形成されることが好ましい。これにより、フロントフード3が下方へ変形したときに、フロントフード3のフードインナー部3bを、シール部材4に妨げられることなく、突出リブ22に安定して当接させることができる。
【0038】
前方延出部20の第2変形部23は、シール支持部21の後端部に隣接して設けられている。また、第2変形部23は、シール支持部21に対して階段状の段差を設ける段差部によって形成されている。このような第2変形部(段差部)23が設けられていることにより、フロントフード3が変形して突出リブ22に衝突することによって突出リブ22を下方に押圧したときに、前方延出部20を第2変形部23で折り曲げて、前方延出部20(特に、シール支持部21)を、水平な姿勢又は水平に近い姿勢から、前方へ下り傾斜する傾いた姿勢へ容易に変形させることができる。
【0039】
特に、本実施例1の第2変形部(段差部)23は、シール支持部21から屈曲して延在する段差縦壁部23aと、段差縦壁部23aから屈曲してシール支持部21から離れる方向に延在する段差横壁部23bとを有する。また、段差横壁部23bは、段差横壁部23bの厚さ(上下方向の寸法)を、段差縦壁部23aの厚さ(前後方向の寸法)よりも薄くして形成されている。このように第2変形部23が形成されていることにより、例えばフロントフード3が突出リブ22を下方に向けて押圧するときに、比較的小さい押圧力でもシール支持部21を上側縦壁部13に対して傾くように変形させることが可能となる。
【0040】
またこの場合、第1変形部を形成する上側縦壁部13は、第2変形部23の段差横壁部23bから屈曲部を介して連続して形成されている。これにより、前方延出部20が上述したように前方へ下り傾斜するように変形することによって、フロントフード3が下方へ更に変形するときに、上側縦壁部13を、カバー本体部12の前端部を支点として前方に傾倒する方向に変形させ易くすることができる。
【0041】
次に、上述のような本実施例1のカウルトップカバー10が取り付けられた自動車1(
図2を参照)のフロントフード3に対し、落下物により
図3に矢印で示すような衝撃荷重Fが加えられた場合におけるカウルトップカバー10の変形について説明する。
【0042】
図3に示したような衝撃荷重Fが、フロントフード3に前方斜め上側から加えられた場合、フロントフード3は、その衝撃荷重Fによって下方に移動するように変形する。これにより、シール部材4を更に圧縮させるように弾性変形させ、更に、フロントフード3(フードインナー部3b)を前方延出部20の突出リブ22に衝突させて、突出リブ22を下方に向けて押圧する。その結果、カウルトップカバー10では、先ず、前方延出部20が、第2変形部(段差部)23からシール支持部21を前方に下り傾斜させるように変形する(言い換えると、
図3において前方延出部20を、第2変形部23を軸にして反時計回り方向に回転させて前方へ傾倒させるように変形する)。
【0043】
このとき、前方延出部20の後端部に第2変形部23が設けられているため、前方延出部20の前端部に配された突出リブ22が下方に向けて押されることにより、例えばフロントフード3から突出リブ22に加えられる衝撃エネルギーが比較的小さい場合でも(例えば、衝撃荷重Fの印加初期段階でも)、前方延出部20を第2変形部23で折り曲げて容易に変形させることができる。特に、第2変形部23は、上述したように厚い段差縦壁部23aと薄い段差横壁部23bとによって段差状(階段状)に形成されていることにより、前方延出部20(特に、第2変形部23)に破断が生じることを抑制して、前方延出部20の上述した変形を促すことができる。
【0044】
上述のように前方延出部20が変形するとともに、衝撃荷重Fによってフロントフード3が更に下方へ向けて移動する(変形する)ことにより、
図4に示すように、フロントフード3(フードインナー部3b)が上側縦壁部13の上端部に衝突する。このとき、先の段階におけるフロントフード3の突出リブ22への衝突によって前方延出部20が前方に倒れているとともに、フロントフード3の下方への移動によって前方延出部20が前方へ押し出されている。このため、フロントフード3が上側縦壁部13に上方から衝突することによって、上側縦壁部13を、衝撃荷重Fに対して突っ張らせることなく、カバー本体部12と上側縦壁部13の連結部分を軸にして前方へ傾倒させるように(言い換えると、上側縦壁部13の上端部を前方斜め下側に移動させるように)効率的に変形させることができる。またそれによって、フロントフード3の更なる下方への変形を許容することができる。
【0045】
その後、衝撃荷重Fを受けているカウルトップカバー10は、
図5に示すように、上側縦壁部13及び下側縦壁部14(すなわち、カウルトップカバー10の第1変形部)を、カバー本体部12との連結部分を中心にして折り曲げて、上側縦壁部13及び下側縦壁部14の全体の高さ寸法を減少させるように円滑に変形させることができる。このようなカウルトップカバー10の変形によって、フロントフード3に加えられる大きな衝撃エネルギーを安定して吸収し緩和できるため、優れた衝撃吸収性能を発揮できる。また、
図5に示すような終期段階で生じるカウルトップカバー10の反力の上昇を抑えることができる。
【0046】
以上のように、本実施例1のカウルトップカバー10によれば、
図3に示したような衝撃荷重Fの印加初期段階で比較的小さい衝撃エネルギーを受けた際に、前方延出部20を第2変形部(段差部)23で変形させることによって、その衝撃エネルギーを吸収できる。特にこの場合、フロントフード3をカウルトップカバー10の突出リブ22に直接衝突させることによって、前方延出部20をカウルトップカバー10で最初に効率的に変形させることができる。このため、例えばシール部材4における摩擦、変形、破断等の作用の影響を抑えて、初期段階における衝撃エネルギーの安定的な吸収を実現できるとともに、初期段階の反力の上昇を抑えることができる。
【0047】
また、上述のように前方延出部20を最初に変形させることによって、その後の上側縦壁部13及び下側縦壁部14(すなわち、第1変形部)の円滑な変形を促すことができ、それによって、より高いレベルの衝撃エネルギーが加えられたときに、その衝撃エネルギーを上側縦壁部13及び下側縦壁部14の変形で安定して吸収できる。更に、このように第1変形部の変形が促されることにより、カウルトップカバー10の突っ張り及び底付き等の不具合が生じることを効果的に防止でき、また、カウルトップカバー10の破断に起因するエネルギー吸収力の低下も効果的に抑制又は防止できる。
【実施例2】
【0048】
図6は、本実施例2に係るカウルトップカバーの断面を模式的に示す断面図である。
【0049】
なお、本実施例2及び後述する実施例3において、カウルトップカバー以外の部材については、前述した実施例1と実質的に同様に形成されているため、それらの部材については実施例1の場合と同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略する。
【0050】
本実施例2のカウルトップカバー30は、フロントウインドシールド2を保持する後端保持部31と、後端保持部31から前方に延びるカバー本体部32と、カバー本体部32の前端部から上方に向けて立ち上がる上側縦壁部33と、上側縦壁部33の上端部から前方に延びる前方延出部40とを有する。
【0051】
カウルトップカバー30の後端保持部31は、前述した実施例1におけるカウルトップカバー10の後端保持部11と同様に形成されている。カバー本体部32は、後端保持部31から前方に向けて平板状に延在する第1本体部32aと、第1本体部32aの前端部から上方に向けて略V字状に突出する第2本体部32bと、第2本体部32bの前端部から屈曲部を介して前方に延びる車体取付部32cとを有する。この場合、カバー本体部32の第2本体部32bは、第1本体部32aの前端部から上り傾斜する上り傾斜部と、上り傾斜部の上端部から前方に延びる頂端部と、頂端部から下り傾斜する下り傾斜部とを有する。カバー本体部32の車体取付部32cは、車体パネル5に固定されている。
【0052】
上側縦壁部33は、カバー本体部32の前端部(すなわち、車体取付部32cの前端部)から上側に立ち上がるように設けられている。特に、上側縦壁部33は、上側縦壁部33の上端部が下端部よりも前側に配されるように、カバー本体部32の前端部から前方に向けて直線状に上り傾斜して形成されている。このような上側縦壁部33は、カウルトップカバー30が大きな衝撃荷重を受けたときに変形する第1変形部を形成しており、例えばカウルトップカバー30がフロントフード3を介して衝撃荷重を受けたときに、前方延出部40の第2変形部33が変形した後に、カバー本体部32の前端部を支点として上側縦壁部33を前方に傾倒させるようにカウルトップカバー30を円滑に変形させることができる。
【0053】
本実施例2の前方延出部40は、前述した実施例1におけるカウルトップカバー10の前方延出部20と実質的に同様に形成されている。すなわち、本実施例2の前方延出部40は、シール部材4を支持するシール支持部41と、シール支持部41の前端部に設けられる突出リブ42と、シール支持部41と上側縦壁部33の間に形成される第2変形部43とを有する。
【0054】
また、第2変形部43は、シール支持部41の後端部に隣接する段差部によって形成されている。この第2変形部43は、シール支持部41から屈曲して延在する段差縦壁部43aと、段差縦壁部43aから屈曲して後方に延在するとともに段差縦壁部43aよりも薄く形成される段差横壁部43bとを有する。
【0055】
以上のような本実施例2のカウルトップカバー30においても、前述した実施例1におけるカウルトップカバー10と同様の効果を奏することができる。
【実施例3】
【0056】
図7は、本実施例3に係るカウルトップカバーの断面を模式的に示す断面図である。
【0057】
本実施例3のカウルトップカバー50は、フロントウインドシールド2を保持する後端保持部51と、後端保持部51から前方に向けて延びるカバー本体部52と、カバー本体部52の前端部からクランク状の折れ曲がり部を介して前方に延びる前方延出部60と、前方延出部60の前端部から下方に垂れ下がる下側縦壁部54と、下側縦壁部54の下端部から延びる車体取付部55とを有する。
【0058】
カウルトップカバー50の後端保持部51及び車体取付部55は、前述した実施例1におけるカウルトップカバー10の後端保持部11及び車体取付部15とそれぞれ同様に形成されている。カバー本体部52は、後端保持部51から上側にクランク状に屈曲するクランク部と、クランク部から前方に向けて直線状に延びる直線部とを有する。
【0059】
前方延出部60は、平板状のシール支持部61と、シール支持部61の前端部に設けられる突出リブ62と、シール支持部61と下側縦壁部54の間に形成される第2変形部63とを有する。本実施例3のシール支持部61及び突出リブ62は、前述した実施例1におけるカウルトップカバー10のシール支持部21及び突出リブ22と実質的に同様に形成されている。
【0060】
本実施例3の第2変形部63は、シール支持部61の前端部に隣接して設けられている。また、第2変形部63は、シール支持部61に対して段差を作る段差部によって形成されており、シール支持部61の前端部から屈曲して延在する段差縦壁部63aと、段差縦壁部63aから屈曲して前方に延在するとともに段差縦壁部63aよりも薄く形成される段差横壁部63bとを有する。このような第2変形部63が設けられることによって、突出リブ62がフロントフード3によって下方に押圧されたときに、前方延出部60を下側縦壁部54に対して容易に変形させることができる。
【0061】
本実施例3の下側縦壁部54は、下側縦壁部54の上端部が下端部よりも前側に配されるように傾斜して形成されており、例えばカウルトップカバー50の左右方向に直交する断面を見たときに(
図7)、前方延出部60、下側縦壁部54、及び車体取付部55が反対向きの略Z字状を呈するように設けられている。
【0062】
このような下側縦壁部54は、カウルトップカバー50が大きな衝撃荷重を受けたときに変形する第1変形部を形成しており、例えばカウルトップカバー50がフロントフード3を介して衝撃荷重を受けたときに、上述した第2変形部63が変形した後に、車体取付部55の後端部を支点として下側縦壁部54を前方に傾倒させるようにカウルトップカバー50を円滑に変形させることができる。
【0063】
以上のような本実施例3のカウルトップカバー50においても、前述した実施例1におけるカウルトップカバー10と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 自動車
2 フロントウインドシールド(フロントガラス)
3 フロントフード(ボンネットフード)
3a フードアウター部
3b フードインナー部
4 シール部材
5 車体パネル
10 カウルトップカバー
11 後端保持部
11a 第1保持部
11b 第2保持部
12 カバー本体部
13 上側縦壁部
14 下側縦壁部
15 車体取付部
20 前方延出部
21 シール支持部
22 突出リブ
23 第2変形部(段差部)
23a 段差縦壁部
23b 段差横壁部
30 カウルトップカバー
31 後端保持部
32 カバー本体部
32a 第1本体部
32b 第2本体部
32c 車体取付部
33 上側縦壁部
40 前方延出部
41 シール支持部
42 突出リブ
43 第2変形部
43a 段差縦壁部
43b 段差横壁部
50 カウルトップカバー
51 後端保持部
52 カバー本体部
54 下側縦壁部
55 車体取付部
60 前方延出部
61 シール支持部
62 突出リブ
63 第2変形部
63a 段差縦壁部
63b 段差横壁部
F 衝撃荷重