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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】導波路を設計する方法、及び導波路
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/22 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
G10K11/22
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020169666
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2021060581
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】1914596.0
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320014112
【氏名又は名称】ジーピー アコースティックス インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】オクリー―ブラウン、 ジャック アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ドッド、 マーク アレクサンダー
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0033841(US,A1)
【文献】特開平11-220784(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169886(WO,A1)
【文献】特表2019-525552(JP,A)
【文献】中国実用新案第206302548(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/22
H04R 1/20-1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路入口から導波路出口まで導波路を通る波伝播経路に沿って音響波を搬送する導波路を設計する方法であって、
前記導波路は境界を与え、前記境界は、前記波伝播経路に沿って進行するときに当該音響波を閉じ込め、前記音響波の一次元のサイズを高周波数音響波の波長よりも小さい距離まで制限するように構成され、
前記方法は、
前記導波路入口及び前記導波路出口において前記境界の形状を画定するとともに、前記導波路入口前記導波路出口との間の距離及び相対的配向を、所定のフレア及び導波路入力インピーダンスに応じて画定するステップ(1)と、
境界の形状及び/又は前記伝播経路の方向における任意のバリエーションが、前記伝播経路に沿って進展するように、前記導波路入口を前記導波路出口に接合させる概念的導波路の形状を画定するステップ(2)と、
前記伝播経路に沿って延びて前記一次元に平行な方向において前記導波路を分割する理論的設計表面を、前記導波路の概念的形状から導出するステップ(3)と、
前記導波路を通過する波伝播経路に沿って一連の3つ以上の離間点を画定するステップ(4)と、
前記一連の点のそれぞれにおいて前記導波路内の複数の均一な波面表面及びそれらの形状を導出するステップ(5)と、
2つの離間点において導出された波面表面間の伝播距離が実質的に一定となるように、離間点の各連続ペア間の設計表面の形状を、前記設計表面に垂直に一定距離だけ変形させるステップ(6)と、
前記一次元に平行な方向において前記概念的導波路の形状を、前記離間点において前記一定距離だけ変形された設計表面を一波長未満ずらすことによって、調整するステップ(7)と、
各離間点において導出された波面表面のフレアを計算し、導出された連続する波面表面に対するフレアが所定の音響負荷に適切となるように、かつ、
(i)導出された波面表面のフレアが前記導出された波面表面の全体にわたって一定となるか、又は
(ii)前記フレアが前記導出された波面表面にわたって滑らかかつ次第に変化するかのいずれかとなるように、前記一次元に平行な方向において局所的な境界寸法を調整するステップ(8)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記導波路入口及び前記導波路出口における前記境界の形状は、所望の波形を参照して画定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一次元における波の拡大を制限する一次表面と、第2の次元における波の拡大を制限する二次表面とを有する導波路に対し、前記方法は
(i)各波面が一定のフレアを有することと、
(ii)各波面が伝播経路に沿って進行するときに一次表面及び二次表面と接触する場所で各波面が垂直であることと
を仮定することによって、前記一連の点のそれぞれにおける均一な波面の形状を導出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一次元における波の拡大を制限する一次表面と、第2の次元における波の拡大を制限する二次表面とを有する導波路に対し、前記方法は、前記一連の点のそれぞれにおける均一な波面の形状を、前記波長が前記一次表面間の距離よりも少なくとも1オーダー、好ましくは2オーダー大きな程度となるのに十分低い周波数において計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一連のそれぞれの点における均一な波面の形状は、ラプラス方程式を解いてその解かれたパラメータが前記一連の点を通して一定値となる均一表面を見出すことによって導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記変形された設計表面をさらにずらすべくステップ(7)及び(8)を繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記導波路出口における伝達関数のバリエーションを最小にするべく前記ステップのうちの一つ以上を繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
波伝播経路に沿って音響波を搬送する導波路であって、前記波伝播経路は、導波路入口から導波路出口までの前記導波路を通過し、前記導波路は、前記波伝播経路に沿って進行するときに音響波を閉じ込める境界を与え、高周波数音響波の波長未満の距離だけ離間された2つの実質的に平行な一次表面を有し、前記導波路は、前記導波路入口から前記導波路出口まで前記導波路を通る前記波伝播経路に沿って前記音響波を搬送する前記導波路を設計する方法に従って設計され、
前記導波路は境界を与え、前記境界は、前記波伝播経路に沿って進行するときに当該音響波を閉じ込め、前記音響波の一次元のサイズを高周波数音響波の波長よりも小さい距離まで制限するように構成され、
前記方法は、
前記導波路入口及び前記導波路出口において前記境界の形状を画定するとともに、前記導波路入口と前記導波路出口との間の距離及び相対的配向を、所定のフレア及び導波路入力インピーダンスに応じて画定するステップ(1)と、
境界の形状及び/又は前記波伝播経路の方向における任意のバリエーションが、前記波伝播経路に沿って進展するように、前記導波路入口を前記導波路出口に接合させる概念的導波路の形状を画定するステップ(2)と、
前記波伝播経路に沿って延びて前記一次元に平行な方向において前記導波路を分割する理論的設計表面を、前記導波路の概念的形状から導出するステップ(3)と、
前記導波路を通過する波伝播経路に沿って一連の3つ以上の離間点を画定するステップ(4)と、
前記一連の点のそれぞれにおいて前記導波路内の複数の均一な波面表面及びそれらの形状を導出するステップ(5)と、
2つの離間点において導出された波面表面間の伝播距離が実質的に一定となるように、離間点の各連続ペア間の設計表面の形状を、前記設計表面に垂直に一定距離だけ変形させるステップ(6)と、
前記一次元に平行な方向において前記概念的導波路の形状を、前記離間点において前記一定距離だけ変形された設計表面を一波長未満ずらすことによって、調整するステップ(7)と、
各離間点において導出された波面表面のフレアを計算し、導出された連続する波面表面に対するフレアが所定の音響負荷に適切となるように、かつ、
(i)導出された波面表面のフレアが前記導出された波面表面の全体にわたって一定となるか、又は
(ii)前記フレアが前記導出された波面表面にわたって滑らかかつ次第に変化するかのいずれかとなるように、前記一次元に平行な方向において局所的な境界寸法を調整するステップ(8)と
を含む、導波路。
【請求項9】
前記境界の形状は前記波伝播経路に沿って徐々に変化する、請求項8に記載の導波路。
【請求項10】
前記境界は、前記伝播経路において一以上の局所的な変形を形成するべく前記一次表面に垂直な方向にずらされる、請求項8に記載の導波路。
【請求項11】
前記ずらされる程度が、前記一次表面に平行な方向に変化する、請求項10に記載の導波路。
【請求項12】
前記一次表面間の距離は実質的に一定である、請求項8に記載の導波路。
【請求項13】
前記一次表面は実質的に平坦である、請求項8に記載の導波路。
【請求項14】
前記境界の形状が前記導波路入口と前記導波路出口とで異なる、請求項8に記載の導波路。
【請求項15】
前記境界の断面積が最初の点と後続の点において異なる、請求項8に記載の導波路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路装置を設計する方法に関し、かかる方法を使用して製造される導波路に関し、詳しくは、ただし排他的ではなく、音響波のための導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的のために、導波路との用語は、音響波を搬送又は放射するべく動作する任意の装置を包含すると解釈されるべきである。これは、非直線的な経路に沿って音響波を搬送する装置と、拡声器、ホーン等とを含む。これにより、音響波は一般に、当該拡声器の長さに沿って、聴者が聞くべく音響波が環境空気の中に放射される出口アパチャへと向けられる。本発明が特に意図するのは、一定の定義されたエリアにわたって元の音源に極めて類似する音スペクトルを与えるべく、すなわち、「高忠実度」人工音すなわち実際の音に極めて近い品質の音を生成するべく、空間スペクトル歪みが極めて小さい電気機械ドライバのような人工音源によって再生される音を搬送/放射することであるが、排他的というわけではない。
【0003】
典型的には、人間の可聴範囲は20Hzと20kHzとの間であるとみなされ、ここで使用される低周波数(「LF」)及び高周波数(「HF」)という用語は、高周波数を高忠実度で処理する装置が貧弱な低周波数忠実度を有し、又は低周波数を高忠実度で処理する装置が貧弱な高周波数忠実度を有するというように、この音スペクトルの一端に存在すると解釈するべきである。地表では、20Hzの音響波は近似的に17mの波長を有し、20kHzの音響波は近似的に17mmの波長を有する。
【0004】
導波路及び拡声器には多くの異なる設計が存在する。拡声器の指向特性を制御することは、聴衆エリア全体にわたって良好な音質を得るべく、及び部屋の壁からの反射の程度を制御するべく必要である。大きな部屋では、十分な音響レベルの達成、及び音の空間分散の制御双方のために、ホーンを使用することができる。
【0005】
理想的な源の一つの共通認識は、点音源が音響波を全方向に放射することである。このような配列において生成される音響波は球状であり、周波数による又は音源圧力からの角度もしくは方向による圧力バリエーションが存在しない。このような波を我々は、単一パラメータ波と称する。点源により生成される球状音響波に加え、線状音源による円筒状音響波も単一パラメータ波の理論例である。これらの波は双方とも、音源から直線状に放射される粒子速度を有するので、源から放射される直線壁管によるその挙動を変化させることなく「誘導」され得る。これらの「導波路」の最も単純な形態は、球面波を誘導する円錐又は直線壁ピラミッド、及び円筒波を誘導するプリズム形状の導波路である。
【0006】
あまり知られていない波のタイプが、円錐フレアの断面を、頂点後方の軸点まわりに回転させることによって構築される幾何学的形状を有するホーンによって生成される。このようなホーンは、トロイド(環状体)が円形回転図形まわりに形成される回転面となるところにトロイダル波を生成する。トロイダル波は単一パラメータ波ではないが、その対称性ゆえに極めて密接するように近似できる。トロイダル波は周波数による波面形状のバリエーションがほとんどなく、極めて密接にトロイダル形状に近くなるが、圧力は回転軸近傍で増加する。このようなホーンに使用されるアークの角度が限られるので、この圧力バリエーションはほとんど実用的な影響とならず、多くの実用的なデバイスがトロイダル波を生成する。
【0007】
湾曲壁を有するホーンは、単一パラメータ伝播を許容しない。波長がホーンセクションの寸法よりもかなり大きな、例えば10倍となる低周波数に対し、挙動は境界によって決定される。これらの低周波数において、波面全体に一定の局所フレアを与えるべく、波面はホーン壁に対して垂直とし、一定の平均曲率を有する必要がある。波面の一定のフレアにより圧力は、連続波面にわたって一定のままとなり得る。実際、低周波数において、波面は、まるで単一パラメータ波であるかのように振舞う。しかしながら、波長がホーン寸法に比べて小さい高周波数においては、境界が影響するのは、境界の波長内の波にのみとなる。その結果、一定の自由空間伝播速度では、波の複雑な形状及び圧力分布を与える回折がもたらされる。
【0008】
フレアとの用語は、波が伝播するときの波面の又は波面の任意の部分若しくはセクションの面積変化を記述するために適用され得る。この意味でフレアは、伝播される距離に伴う面積変化率となる。この計量は、自由空間における球面波と円筒波の面積拡大を記述するのにも適用できる。いずれの場合も、フレアは源の近くで最も高くなり、その結果、小さな源にとって低周波数の放射が低減する。球面波源からのフレアは波が二次元湾曲しているために高くなるが、円筒波は線状波源に垂直な面内でのみ湾曲しているのでフレアは低くなる。
【0009】
また、低周波数においてホーン入口アパチャの高音響インピーダンスを必要とする広い帯域幅をカバーするべく、低周波数で高出力を達成することが望ましい。これは、対応する曲線状壁が波の拡大率ひいてはフレアを制限する細長いホーンを必要とする。指数関数状ホーンがそのようなホーンの一例であるが、異なるフレア則を有する多数のバリエーションが存在する。しかしながら、これらの拡大則を用いた単純なホーンは単一パラメータ波伝播を許容せず、位置に伴い変化する応答スペクトルを有する。有限ホーンの出口アパチャにおいてのようなホーンのフレアの不連続性は、縦方向の反射及び対応する共振をもたらし得る。ホーンの口における波はまた回折して、当該口のサイズによって主に決定される指向特性を強制する。
【0010】
従来型の拡声器及び導波路は多くが球面波を生成するように設計されているが、これらは、取り扱うことが意図される周波数の広いバリエーションに応じた可変の結果を有する。広い分散を達成する球面波理論アプローチ及び方法論を採用する一つのタイプの拡声器は、特許文献1に開示されるようなマルチセルホーンである。この設計は、出口アパチャにおいて近似的に球面の波を与えるように配列された一アレイの指数関数状ホーンによって形成される。この配列はHF音の広い分散を与えるにもかかわらず、波面形状の不完全性及び出口アパチャにおける回折に起因して、角度に伴う応答のバリエーションが存在する。しかしながら、低周波数においては、入口での高音響インピーダンスが良好な低周波数出力を与える。
【0011】
トロイダル波理論アプローチ及び方法論を採用した拡声器設計は、特許文献2のように異なる軸及び中心を有する回転曲線から形成されるバイラジアルホーンである。この設計は、2つの異なる波面曲率中心を有する2つの異なる半径に沿って等しく開口する一の狭いスロットを有し、これは準円錐状端部セクションに開口する。スロットは近似的にトロイダル源となる。この円錐状セクションは低周波数において高音響インピーダンスを与えることがないので、この設計は、スロットにおける面積拡大の不連続性を被る。この不連続性は、スロットに至るホーン内の定在波、及びホーン入口における不規則な音響インピーダンスをもたらす。一般に、このタイプの設計は、良好な音響指向性又は低周波数出力を与え得るが、双方を与えることはできない。より最近では、トロイダル波を生成するべく、個々のセルを使用する設計が使用されている(Turbosound社によるPolyhorn(Polyhornは現在、英国のBlast Loudspeakers社という名義人のもとの英国登録商標である))。放射される音響波を整形しようと試みる他の設計が、特許文献3~5に開示されているが、これらは、既に説明したような同様の欠点を被り、及び/又は安価な製造が困難な比較的複雑な設計である。
【0012】
代替的なアプローチは、円筒波理論アプローチ及び方法論を採用することである。これは、波形整形器を使用して、指向性制御を与えるべくプリズム形状ホーンにより終端された円筒波を生成することによって達成することができる。プリズムフレアは円錐フレアよりもゆっくりとモードを拡大させるが、波形整形器の端に不連続をもたらす負荷による同様の問題を有する。そのような設計の一つは、VDOSC又はV-DOSC拡声器(V-DOSCは仏国アニエール=シュル=セーヌのL’Acoustics社の商標である)として知られており、球面音響波を近似的に円筒波に変換する。これは、導波路を斜めに横切って角部で接合する円錐セクションと平面セクションとによってなされる。導波路は、拡声器の出力部に、膜の前に、又は圧縮チャンバのオリフィスの前に、考慮対象のトランスデューサの軸に沿って嵌め込まれる。導波路は、その入口から出口へと拡大する導管を含む。導波路の出口オリフィスのエリアは、平面かつ長円形であり、その導管は、入口アパチャと出口エリアとの間の通路を含み、一般的な方向に沿って波を案内するように適合される。その方向から、一つ以上の通路において許容される最短経路は、導管の入口アパチャから出口アパチャまでの実質同一なすべての長さとなる。特許文献6は、矩形入口アパチャを有するプリズムホーンがVDOSCの矩形出口アパチャに整合する直線アレイV-DOSC配列を開示する。この導波路及びホーンの配列は、円筒波の大きな源を形成するべく直線アレイで使用され得る。この設計は、音を広いエリアに与えることを意図する。これらの設計に関して見出されることだが、音響圧力が拡声器の出口にわたって変動し、定在波が所定周波数で導波路内に形成され、全体的な音の忠実度が、特に低周波数において、期待外れとなる。
【0013】
それらが発する音響波を整形しようと試みる他の設計は、特許文献3~5に開示されているが、これらは既に説明したのと同様の欠点を被る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第1,992,268号明細書
【文献】米国特許第4,308,932号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2890481号明細書
【文献】中国特許出願公開第105244019号明細書
【文献】米国特許第9,392,358号明細書
【文献】米国特許第5,163,167号明細書
【発明の概要】
【0015】
ここで使用される以下の用語は、以下の意味を有する。
導波路入口:波が導波路に入るのに通るオリフィス若しくはアパチャのいずれか、又は導波路の(波伝播方向の)上流部分。
導波路出口:ホーン、導波路又は自由空間への新たな波の形を与える導波路入口の導波路下流のオリフィス又は一部分。
導波路一次表面又は壁:通常は最大の壁となる緊密に離間した対向壁。本発明において、これらの壁は、波面の形状及び圧力を制御する特定の幾何学的形状を有する。これらの壁は、平面であってもよいが、必ずしも平面である必要はなく、湾曲していてもよく、又は平面と湾曲との組み合わせであってもよいことも理解されたい。ただし、これらは全体にわたって実質的に平行である(その結果、壁間の距離は、変形を除いて、経路に沿ってゆっくりと変化し、波面にわたって実質的に一定のままとなる(すなわち20%未満のバリエーション)。または、軸対称幾何学形状の場合には、波面にわたって一定の角度となる)。
導波路二次境界:二次壁若しくは表面、対称平面、又は一次壁同士の交差によって形成される。
波面表面:正弦波音圧の位相が一定値を有する表面。
単一パラメータ波:波面表面が周波数に対して不変であり、波面にわたって一定圧力を有する波。波の速度は一定である。
フレア:距離による面積変化率。フレアは、波面の任意部分を言及し得る。
変形:一次表面に加わる隆起又はひだ。変形は同じ方向に加わるので、一次壁間の間隙は変形しない。
概念的導波路:薄い導波路の仮想的又は理論的な初期幾何形状である。その形状はその後、最終的な導波路形状をもたらすべく本発明に従って変更される。
薄い導波路:2つの一次表面が、高周波数音響波の波長よりも小さな距離だけ離間した導波路。
設計表面:単数又は複数の一次表面の形状に追従する一次壁/表面間の中間表面。これらの表面は、導波路形状に変形を生じさせ、ひいては修正された導波路を構築するべく、本発明の方法において使用される。
波面長:波面表面と、複数の導波路一次表面のうちの一つとの曲率交差の長さ。
波面の伸長:一次表面の変形に起因する波面長の増加。
【0016】
単一空間座標により定義できる波は、特に単純な挙動を示し、単一パラメータ波として知られている。単一パラメータ波は、周波数に依存しない指向性を与えることが知られている。これらの波はすべて、一定の伝播速度と、各波面にわたって一定の「移動距離による拡大率」又は「フレア」とを有する。単一パラメータ波はまた、共振又は回折なしに、波面に垂直な表面を有する管として形成された導波路によって搬送することができる。これにより、単一パラメータ波が理想的となって、導波路において搬送され、又は一定の指向性を与えるように放射される。
【0017】
逆に、湾曲した境界を有する導波路内では、波は、このような単純な態様では挙動しない。波面は、非常に長い波長において、当該波面にわたる一定のフレアのみを有し、かかる周波数において、波の速度は、波面にわたって局所的に変化する。短い波長に対して境界は当該境界に最も近い波にのみ影響し、波の速度は波面間の距離を決定する。波面が平坦になるので共振が生じ得る。その結果、波は望ましくない周波数依存の指向性及び圧力を示す。
【0018】
本発明は、経路長を局所的に調整することによって低周波数の局所的な波速度の偏差を修正することが、近似的に単一パラメータ特性を有する波の伝播を許容し得るとの認識に基づく。この方法は、以下に説明されるように、概念的導波路の形状から始まり、それを修正することを含む。
【0019】
これを行うには、導波路は、波が導波路の丸い湾曲部又は角部に追従し得る程度に十分に薄くなければならない。厚さが1/4波長の周波数を超えると、応答の不規則性が生じるが、実際には、大規模な講堂での音響使用に対し、多少の不規則性が許容されてもよく、導波路は、その中で伝播する最短波長波の波長よりも薄いことが好ましい(すなわち音響導波路の場合17mm未満)。
【0020】
修正が必要となる概念的導波路は、緊密に離間した2つの一次表面と2つの二次境界とによって形成される。波状挙動は、一次表面に垂直な方向においては、当該2つの一次表面の緊密な離間ゆえに現れてこない。しかしながら、二次境界は波長よりも広い間隔で離間されているので、キャビティ共振及び回折のような波状挙動が一次表面の接線方向に生じる。
【0021】
波は、入口アパチャを通って導波路に入り、出口アパチャを通って出る。入口アパチャ及び出口アパチャの形状はそれぞれ、所望の単一パラメータ入力波及び出力波の形状に整合する。例えば、これらのアパチャは、平面状、円筒状又は球状となり得る。アパチャの幾何学形状に整合する単一パラメータ入力波が与えられる場合であっても、導波路内の圧力及び波面形状は、動作帯域幅において周波数依存となる。
【0022】
例えば、厚さをほぼ維持しながら「隆起」又は「リッジ」を形成するべく、概念的導波路の双方の一次表面を、近似的に当該表面に垂直なベクトルによって局所的に変形させることが考えられる。この変形は、波の経路を拡張するので、経路長を導波路内で局所的に修正することが可能となる。選択された位置において経路を拡張するべく一定数のこのような変形を使用して、最終的な導波路を作成する。
【0023】
長い波長に対しては、波面形状は二次境界によって決まり、波の速度は、不均一な波面間隔に起因して変化するように見える。低周波数の波の速度が低い場所に一次表面の変形を加えることが使用されて当該波の速度が増加され、導波路全体にわたって波の速度を同じにすることが許容される。これにより、高周波数の波が低周波数の波と同じ波面形状で伝播し、さらには、波面にわたる圧力が一定になる。実際には、導波路は、単一パラメータ波をサポートするが、波面形状又はプロファイルは、波が導波路を通って伝播するときに変化し得る。
【0024】
波の性質に起因して、境界条件の効果が、周波数上限の波長の4分の1にわたって空間的に平均化される。同様に、幾何学形状に理想からの偏差がある場合はあるが、その偏差が小さければ波は依然として単純な挙動を示し得る。特に、変形のピークにおいては距離が追加されないので、この領域は、周波数上限での波長に比べて小さく保つ必要がある。
【0025】
波が進行する距離を、変形を使用して修正することにより、波面にわたって若干の伸長が生じるので、対応する面積が増加する。例えば、一次表面に沿った波面の長さは、変形した一次壁/表面の領域において増加する。変形領域における一次壁間の局所距離の調整を、波面伸長に起因する局所的な面積の変化を修正するべく使用することができる。
【0026】
本発明は、導波路を設計する方法及び新規な設計の導波路の双方を与える。そこで、第1の側面において与えられるのは、導波路入口から導波路出口まで導波路を通る波伝播経路に沿って音響波を搬送する導波路を設計する方法であり、当該導波路は境界を与え、この境界は、当該波伝播経路に沿って進行するときに当該音響波を閉じ込め、当該波の一次元のサイズを高周波数音響波の波長よりも小さい距離まで制限するように構成される。この方法は、
導波路入口及び導波路出口において境界の形状を画定するとともに、当該導波路入口及び導波路出口間の距離及び相対的配向を、所定のフレア及び導波路入力インピーダンスに応じて画定するステップ(1)と、
境界の形状及び/又は導波路伝播経路の方向における任意のバリエーションが、当該導波路伝播経路に沿って進展するように、当該導波路入口を導波路出口に接合させる概念的導波路の形状を画定するステップ(2)と、
当該導波路伝播経路に沿って延びて当該一次元に平行な方向において当該導波路を分割する理論的設計表面を、当該導波路の概念的形状から導出するステップ(3)と、
当該導波路を通過する波伝播経路に沿って一連の3つ以上の離間点を画定するステップ(4)と、
当該一連の点のそれぞれにおいて当該導波路内の複数の均一な波面表面及びそれらの形状を導出するステップ(5)と、
2つの離間点において導出された波面表面間の伝播距離が実質的に一定となるように、離間点の各連続ペア間の設計表面の形状を、当該設計表面に垂直に一定距離だけ変形させるステップ(6)と、
当該一次元に平行な方向において当該概念的導波路の形状を、当該離間点において当該一定距離だけ変形された設計表面を一波長(すなわち一次表面間距離)未満ずらすことによって、調整するステップ(7)と、
各離間点において導出された波面表面のフレアを計算し、導出された連続する波面表面に対するフレアが所定の音響負荷に適切となるように、かつ、
(i)導出された波面表面のフレアが当該導出された波面表面の全体にわたって一定となるか、又は
(ii)当該フレアが当該導出された波面表面にわたって滑らかかつ次第に変化するかのいずれかとなるように、当該一次元に平行な方向において局所的な境界寸法を調整するステップ(8)とを含む。
【0027】
本発明のアプローチの重要な利点は、一次表面の接線方向の波面曲率が指向性を決定する一方で、フレアもまた一次表面間の間隔次第となることである。したがって、一次表面間の間隔を使用して波面面積及びフレアを、波面曲率ひいては分散から独立して調整することができる。例えば、この方法により、入口アパチャと出口アパチャとの間で指数関数的に拡大する面積を有する出力アパチャにおいて、適切な曲率の近似的な単一パラメータ波を生成することが許容されるので、指数関数ホーンの低周波数出力と単一パラメータ波の有益な特性とを与えることができる。それゆえ、湾曲した二次境界を有する導波路にもかかわらず、本発明の導波路全体の波は、単純な態様で挙動する。
【0028】
導波路入口及び導波路出口における境界の形状は、好ましくは、所望の波形を参照して画定される。当該一次元における波の拡大を制限する一次表面と、第2の次元における波の拡大を制限する二次表面とを有する導波路の場合、この方法は、各波面が一定のフレアを有することと、各波面が伝播経路に沿って進行するときに一次表面及び二次表面と接触する場所で各波面が垂直であることとを仮定することによって、一連の点のそれぞれにおける均一な波面の形状を導出することを含み得る。導波路の構成では、ほとんどの実施形態において、当該一次平面が高周波数音響波の波長未満の距離だけ離間されるようになる。
【0029】
波は、入口アパチャにおいて必要な波面を与えるべく、適切な導波路を介して圧縮ドライバが与えてもよく、又は数値モデルの場合には、入口アパチャにおける振動表面がその表面に垂直に一定速度で動いていてもよい。
【0030】
適切な変形を計算するべく多くの定式化が使用されるにもかかわらず、波面の伸長を最小化しながら波面間の一定の経路長を維持することができるので、波形に基づく簡単な方法は特に有効である。
【0031】
変形に起因する伝播距離の拡大率は、伝播方向の変形勾配によって決まる。変形が方向を変える領域は、傾斜が変化するので、正確に経路全体に沿った波の伝播速度を修正することはできない。しかしながら、1/4波長距離にわたる経路沿いに空間的に平均化された経路長の増加が正確であることを保証することにより、導波路は意図されたように機能する。
【0032】
上記アプローチよりも一般的なアプローチも可能である。伝播速度のバリエーションを低減して近似的に単一パラメータ波を可能にするべく、波面以外のパターンによって画定される変形を使用することができる。このパターンは、導波路内の伝播速度のバリエーションを修正できる程度に十分な経路長の変動を許容するべく、波面の伸長が最小となるように選択されるべきである。波面にわたって多数の変形が存在する場合、波面の伸長は大幅に増加する。かかるアプローチは、当該プロセスの例を経なくても、単に最善の応答を見出すべく変形の高さを繰り返し調整することによって、最適化に適切となり得る。
【0033】
いくつかの場合、フレアを各波面にわたって一定になるように修正することは望ましくなく又は不可能である。この場合、フレアが高い領域においては通常、波の振幅が小さくなり、波は単一パラメータとはならない。しかしながら、振幅低減が小さい(6dB)場合、変形の伝播速度修正に起因して改善された挙動が観察されることが多い。
【0034】
一次表面が導波路と交差する場所では、一つの二次壁及びセグメントタイプの幾何学的形状の結果となるだけである。本発明のこの非理想的なケースは、振幅シェーディングが必要とされる場合、又は円形アレイが使用される場合に有用である。
【0035】
本発明に係る方法は、初期点における境界の形状が後続点における境界の形状と著しく異なる(この差が著しいほど解の計算が難しくなる)といった多くの他のアプローチ又は仮定を組み入れてよい。他には、1)波面が円筒状、球状若しくはトロイダル状であること、又は波面が2つの直交方向に複合曲率を有することと、2)経路が非直線状の場合に音圧レベルが変化しないとの仮定と、3)波面の各連続ペアの間の距離が一定であるとの仮定と、4)境界の公称形状が当該境界に隣接する個々の経路の少なくともいくつかの長さを変えるように修正されている場合に、各波面上の異なる点が経路の公称形状に沿って異なる個々の経路を有する波面を有するように波を扱うことと、5)好ましくは二次壁間の導波路の幅の少なくとも2倍、又はより好ましくは10倍の波長を有する低音響周波数において音響導波路に対し、波面の形状に関する方法を実行することとが含まれ得る。さらに簡単な方法は、波面表面積が実質的に一定のままとなるケースに存在し、いくつかのアプリケーションにおいて、この面積は(設計プロセスの困難さが増すという代償を払って)変化させる必要がある。例えば、面積にバリエーションがない導波路は「単純な」導波路であると一般的に理解される一方、経路に沿って面積が大きくなるような配列は拡声器ホーンにおけるケースとなる。境界の形状が実質的に一定のままである場合も同様に簡単となるが、この形状が変化するいくつかのアプリケーションも存在する(後者の例は、音響波を環状源(トロイダル波)から直線形態(円筒波)へと、又は円筒形から環状へと変換する導波路である)。実際には、面積及び/又は形状にバリエーションが存在する解は、有用な導波路設計を包含してよい。例えば、導波路は、波面の形状を変化させることを意図したものであってよく、波面は、初期点において平面であってもよく、「ホーン型」導波路によって球状又は円筒状へと変換されてもよい。または、導波路は、「VDOSC型」配列として機能してよく、波形を、平面波、環形状波から球状波へ、その後、平面波へと徐々に変換しよい。代替的に、「角部」型導波路のような導波路は、平面波の配向を簡単に変えることができる。
【0036】
本発明の方法はこれまで使用されていないので、本発明は、他の側面において、かかる方法を使用して設計されている導波路にも及ぶと考えられる。例えば、本発明は、波伝播経路に沿って音響波を搬送する導波路を与える。この波伝播経路は、上述のように設計された導波路入口から導波路出口までの導波路を通過する。この導波路は、波伝播経路に沿って進行するときに音波を閉じ込める境界を与え、高周波数音響波の波長未満の距離だけ離間された2つの実質的に平行な一次表面を有する。
【0037】
境界の形状は、当該経路に沿って徐々に変化してよい。境界は、伝播経路において一つ以上の局所的な変形を形成するべく一次表面に垂直な方向にずらされる。ずれの程度は、一次表面に平行な方向に変化する。一次表面間の距離は、実質的に一定であることが好ましく、導波路に沿って伝播するHF波の波長未満であることが好ましい(音響導波路に対しては、好ましくは、人間の聴者に可聴な最高周波数の波長未満、すなわち2mm~15mmであり、好ましくは5mm~12mmであり、さらに好ましくは約7mmである)。周波数限界が低いアプリケーションに対しては、それに応じて間隔を大きくしてよい。一次表面は、実質的に平面、曲面、又は曲面と平面との組み合わせであってよい。入口及び出口における境界の形状は同じでよく、又は異なってよい。初期点と後続点における波面に沿った境界の断面積は、同じでよく、又は異なってよい。
【0038】
本発明に係る導波路は上述の利点を有し、さらに、波が出口アパチャの幾何学的形状に整合すれば、波が出口に入力される場合に波形整形導波路としても機能するという点で可逆的である。
【0039】
本発明に係る同一又は異なる導波路のアレイを使用して、所望の幾何学的形状を有する大きな波面を形成することができる。2つ以上の音響導波路は、第1の導波路の一次表面がその裏側に第2の導波路の一次表面を形成するように隣接配置することができる。一次表面は二次表面と一体にしてよい。複合拡声器は、2つ以上の導波路を含み得る。これらの導波路の経路は直列及び/又は並列に配置される。すなわち、直列とは、第1の導波路からの音響波が直接第2の導波路へと進行するように直列にということであり、並列とは、拡声器アレイのように一アレイの導波路与えるように並列にということである。
【0040】
このような導波路のための音響源は、好ましくは、一次表面の公称平面を横切る方向に延びる直線状及び/又は曲線状の源である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
ここで、添付の図面を参照して、一例として本発明を説明する。
【0042】
図1】薄い導波路の模式的な斜視図である。
図2a-2b】図2a及び2bは、円筒波を搬送する平坦な平面状導波路の模式的な例示である。
図3a-3b】90度の屈曲を形成する薄い矩形の「角部導波路」30を示す。
図3c-3d】図3aの角部導波路から開始する本発明の設計プロセスにおけるステップを示す。
図3e】本発明に係る導波路を示す。
図4a】先行技術の薄い押出状導波路である。
図4b図4aの導波路に対する変形された設計表面を示す。
図4c図4bの設計表面から形成された導波路の模式的な図である。
図4d】本発明に従って設計された導波路の一部を示す。
図5】本発明に係る導波路の一部の他の実施形態の模式的な図である。
図6】本発明に係る導波路の一部のさらなる実施形態の模式的な図である。
図7】本発明に係る導波路の一部のさらに他の実施形態の模式的な図である。
図8】本発明に係る導波路の一部のもう一つの実施形態の図である。
図9】複合的導波路を形成する本発明に係る一アレイの導波路の模式的な図である。
図10】複合的導波路を形成する図4cに示すタイプの一アレイの導波路の模式的な図である。
図11】他の複合的導波路を形成する図4cに示すタイプの一アレイの導波路の模式的な図である。
図12】さらなる複合的導波路を形成する図4cに示すタイプの一アレイの導波路の模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、同じ要素が異なる図面に示されている場合、これらは同じ参照番号を有する。同様の機能を有するが、先に記載した要素と外観が異なる要素が記載されている場合、後者の要素は同じ参照番号を有するが、文字接尾辞が付加される。以下、図面を参照して、本発明に係る導波路を設計するプロセスを説明する。このプロセスは、以下のステップ(これらのステップはさらに以下に言及される)において設定することができる。
ステップ1.波の形状を画定し、ひいては入口アパチャ及び出口アパチャのための幾何学形状を画定すること。波に対する少なくとも一つのアパチャは、一次方向において一波長より長くなければならず、双方のアパチャは、第2の方向において一波長未満でなければならない。
ステップ2.設計されたフレアひいては導波路入力インピーダンスを許容するべく入口アパチャ及び出口アパチャ間の距離及び配向を画定すること。
ステップ3.入力アパチャ及び出力アパチャ間に概念的導波路を画定し、そこから、通常は当該概念的導波路の一次表面間の中間に、入口表面及び出口表面と、二次表面若しくは対称平面又は一次表面間の交差により境界が示される側面とを有する「設計表面」を画定すること。
ステップ4.波が進行すると予測される一定経路に沿った少なくとも3つの連続点を選択すること。点間の間隔は、一次壁間の間隔よりも大きく、かつ、過剰な波面伸長なしに変形された表面を与える程度に十分に小さい。
ステップ5.以下のような方法を用いて、5で選択した点を通過する導波路内の均一な波面を導出すること。
a)単純な幾何学的形状の場合、波面形状は境界条件から推定できる。例えば、第1に各波面のフレアが一定であること、第2に波面が一次境界表面及び二次境界面に垂直であることを仮定する。
b)波長が好ましくは導波路の幅より10倍又は100倍長くなる程度に十分低い周波数において当該点を通る波面を計算する。
c)ラプラスの方程式を解いて解かれたパラメータの、当該点を通る均一な一定値表面を見つける。
d)実験的方法を使用して波面を測定する。
ステップ6.導出された波面表面の各連続ペア間に、各波面ペア間の伝播距離が一定となるように選択された高さを有して設計表面に垂直な変形を加えること。
ステップ7.設計表面を、対応する位置における概念的導波路の厚さだけずらすことにより、本発明に係る導波路を作成すること。
ステップ8.波面フレアを計算し、一次表面間の間隔を以下のように局所的に調整すること。
a)出力における振幅シェーディングが適切な場合を除き、波面全体にわたってフレアが一定となるように。
b)導波路を通って連続する波面のフレアが、所望の音響負荷を与えるのに適切となるように。
c)出力における振幅シェーディングが適切な場合に、例えば非平行一次表面に対し、波面にわたってフレアが滑らかかつ次第に変化するように。
ステップ9.7からのプロセスが、この方法により導出された幾何学的形状と、変形された幾何学的形状に対して導出された波面とを使用して繰り返され、さらなる調整がなされることを可能にすること。
ステップ10.ひだの高さ、ひだ間の間隔、ひだ頂部における二次境界の位置が、導波路の出口における伝達関数のバリエーションを最小にするべく反復プロセスの一部として段階的に調節されてよいこと。
【0044】
図1は、複数の剛性表面からなる薄い音響導波路1の模式的な斜視図であり、これらの剛性表面は、入口アパチャ3を出力アパチャ5に接合して当該入口及び出口間に波伝播経路を画定する。使用時、音響波は、一次表面7と二次境界面9との間において入口アパチャ3を通って導波路1に入り、経路11に沿って出力アパチャ5まで通過する。
【0045】
図2(a)及び2(b)は、複数の円筒波13(そのうちのいくつかを図式的に示す)を搬送するのに適した平坦かつ円筒状の薄い導波路1a又はプリズムホーンの概略図である。円筒波は、入口アパチャ3aにおいて導波路に入り、一次表面7a及び二次表面9aによって出力アパチャ5aまで案内される。図2bにおいて、経路15に沿って進行する波の一部が導波路を直接通過する一方、経路17に沿って進行する波の一部は、波が進行する距離を増加させる変形部19を通過する。
【0046】
図3aは、軸(図示せず)まわりに円形の90度湾曲を形成する薄い矩形の「角部導波路」1bを示す。これは、直線状の入力部分31及び出力ダクト部分33に接合された入口3b及び出口5bを有する。源(図示せず)が平面波を入力ダクト31に与える。平面波は、角部導波路を通って出力アパチャ5bへと伝播して出力ダクト33の中に至る。2つのダクト及び一の角部導波路は、角部まわりに延びる連続一次壁7bを有する。これらの連続一次壁7bは、最大動作周波数である20kHzの音の半波長未満となる5mmだけ離間して配置される。二次壁35間の間隔は50mmであり、20kHzの波長よりも著しく大きい。角部ダクト内側二次壁35の半径は100mmである。波は、出口ダクト33の出口アパチャ37から、まるで出口ダクト33を延ばす整合無限ダクトが存在するかのように出ていくと仮定される。
【0047】
数値シミュレーションにおいて、入口アパチャ39における振動表面は、その表面に垂直に一定速度で動いて平面波を生成し、無限ダクトインピーダンス条件が、出力ダクト33の出力アパチャ37に適用される。
【0048】
導波路性能を評価するべく、3つの点における圧力が計算される。3つの点とは、ダクト1bの出力アパチャ5bにおける一点、二次壁9b双方における一点、及び二次壁9b同士の中間の一点である。3.4kHzにおいて、波長はダクト幅に等しい。この場合、最大20dBの程度の応答不規則性が生じ、導波路を使用して高周波数信号を伝送することができない。
【0049】
図3bは、角部導波路1cを示す。ここで、角部まわりの経路長311、312、313及び314(一つは角部の内側エッジを画定し、残りの3つは幅全体を均等に分割する)は、導波路を徐々に高くすることによって均等化され、最大高さ316が角部まわりの中ほどにある単一の「クレスト」315を有する起伏を形成する。この半径方向の急な傾斜により、ダクト1cの幅は、クレスト315において195%だけ増加する。これにより、(角部まわりに連続する)二次表面9c間の波面伸長が大きくなる。
【0050】
一の波の複数の経路を、計算又は推定することができる。これらの経路は、波面に垂直であり、滑らかな曲線を有する。一次表面間が一定距離だけ離間されている場合、経路は等間隔になる。
【0051】
例示の導波路は、一次表面7c間の間隔を有する。この間隔は、角部導波路1cまわりの3点のそれぞれにおける断面積321、322、323及び324がすべて、入口アパチャ及び出口アパチャ321c、322c、323c及び324cにおける断面積の1/4に等しくなるように調整される(明確性を目的として、出口アパチャのエリアのみが図面上で参照されるが、入口端におけるエリアも明確に図示されており、参照されるエリアと面積が等しい)。
【0052】
数値シミュレーションは、図3bの面積修正された導波路が、恐らくは幅の増加に起因して、面積修正されない導波路(例示せず)の3.4kHzと比べて2.3kHzという低いカットオフ周波数を有することを示す。カットオフ周波数を上回ると、出力アパチャにおける音圧応答はかなり不規則になり、数十dBの応答不規則性を多数伴うようになる。いずれの導波路の設計も、図3aの概念的導波路の出力音圧応答の規則性を著しく改善するものではない。
【0053】
図3cは、図3aの導波路設計を概念的設計形状として使用する本発明の設計プロセスにおける最初のステップを例示する。
【0054】
ステップ1(上記段落0042のとおり).入口アパチャ3b及び出口アパチャ5bは、導波路1bを通過する最初及び最後の波面の表面を与える(留意すべきことだが、図3cは、明確性を目的として、入口ダクト31と出口ダクト33との間に延びる角部導波路を示さない。図示の一部円形の要素は、設計表面340(以下でさらに述べる)となる)。
【0055】
ステップ2.アパチャ3b、5bは、軸331まわり90度に存在し、最大円周距離が、長い方の外側エッジ333の長さによって別に画定され、アパチャ間の最小距離が内側エッジ335によって画定される。
【0056】
ステップ3.設計表面340は、一次壁7c同士の中間に位置し、図3aに示される二次壁9bまで延びる。
【0057】
ステップ4.波が進行すると予測される経路342が、設計表面340上の入口アパチャ3bと出口アパチャ5bとの間に画定される。可能なアプローチとして、波面伸長を低減するべく5つのひだ又は起伏が必要とされることが決定される。経路342上の4つの点343、344、345及び346が、軸331まわりに等間隔となるように選択される。
【0058】
ステップ5a).低周波数の波面は、角部及び設計表面340の回転軸331を通過する平面350、351、352及び353上に存在すると推定されている。(5つのひだを画定するべく4つの点343~346と一緒に使用される)残りの2つの波面表面は、入口アパチャ3b及び出口アパチャ5bと設計表面340との交差部に存在する。わかることだが、波面の連続ペア間の間隔は、外側エッジ333における二次壁よりも、内側エッジ335における二次壁の近くで緊密になり、その結果、内側角部の近くでは波速度が低下する。
【0059】
ステップ6.図3dは、5つのひだ361、362、363、364、365を示す変形された設計表面340dを例示する。表面340dの変形は、波の経路333、376、377、378、379に沿って等しい経路長を与え、ひいては波速度差を最小にするように設計される。
【0060】
この例において経路は、近似的に平坦な表面382を介して接合されたクレスト380及びトラフ381に半径を有する「のこぎり歯」セクション幾何学形状の形態となる。この幾何学形状は、勾配により長い距離にわたって正確な補償が得られるので、断面の直線部分に対して良好な修正を与え得る。それゆえ、半径から形成されるセクションと比べ、必要とされるひだが少なくて済む。
【0061】
等間隔の波面を選択した結果、ひだは同一の単純化された構造となる。波面位置を画定する線の長さと、ひだのクレストに沿った線との差異に起因する波面伸長は、図3bの95%の歪みと比較して5%未満である。
【0062】
ステップ6。図3eは、本発明に係る角部「波形整形導波路」1eを示す。図3cの設計表面340が、図3dに示されるように対称的にずらされて一次表面7cがもたらされ、5つのひだを有するダクトが得られる。波形整形角部導波路は、入力ダクト31及び出力ダクト33に接続され、概念的設計として図3aの導波路を用いた先の例と同じ源及び終端を有する。
【0063】
ステップ7(例示せず)
【0064】
経路長を増加させるべく多くの起伏を使用することにより、必要な起伏の高さが低いゆえに予測されるよりもはるかに少ない波面伸長が得られる。勾配が経路長の局所的増加の程度を決定し、交互する勾配が、波の挙動に起因する空間平均化に鑑みて画定される。したがって、経路長の局所的な誤差は、最大周波数の1/4波長より小さい限り、性能に影響することがない。
【0065】
クレスト380の角部における角部幾何学的形状は、反射及び共振が生じ始める周波数を決定する。好ましくは、これらの角部は、勾配誤差の影響を避けるべく半波長だけ経路に沿って延びる。
【0066】
図3eの導波路に対し、5mmの厚さが波長の1/2未満であるから、音圧応答不規則性の程度は、20kHz未満で一dBのオーダーである。
【0067】
図4aは、従来技術の薄い押出状導波路41を示す(導波路は平面401について対称であるから、モデル化及び解析のために考慮する必要があるのは導波路の半分のみとなり、その導波路の半分は、ここでは仮想線でのみ示される)。平面状一次壁同士が5mm離間され、二次壁49が指数関数形状の曲線から形成される。導波路は、設計プロセスの例のための概念的導波路として使用される。
【0068】
ステップ1.幅35.5mmの円筒波が、円周幅35.5mm及び開角18.5度の円筒状である入口アパチャ3に入る。また、出口アパチャ5は、円周幅375mm及び開角60度の円筒状である。
【0069】
ステップ2.入口アパチャと出口アパチャとの間の距離は、220Hzにおいて-6dBポイントの高い通過応答を与える362mmとなるように選択される。500Hzを超えると、周波数の増加に対して対称平面近くの応答が上昇する一方、二次壁近くの出力は下降する。この場合、これら2つの位置間のバリエーションは10kHzにおいて15dBであり、これは、場所によっては音質が極めて悪いことを意味する。
【0070】
ステップ3.導波路は、一次壁(図示せず)、及び二次壁49と対称平面401との二次境界からなる。
【0071】
ステップ4.経路(点線403)は、設計表面440と対称平面401との交差部となるように選択される。経路に沿って等間隔に配置された9つの点405が、これらの点における波面を計算するべく選択される。
【0072】
ステップ5b.ステップ4で選択された点において波面が計算される。2つの波面の例は406及び407で示され、設計表面と波面406、407との交差線を有する。
【0073】
二次壁49における2つの波面406、407間の距離は、対称平面401における当該距離よりも小さくなる。これは、壁49近くでの波の速度が低いことの結果であり、壁の近くでは大きな高さの変形が要求される。
【0074】
図4bは、図4aにおける幾何学形状に対してステップ6の例に従って変形された設計表面416を示す。波面に対する交差曲線が、低周波数波面411すべてについて示される。波面は、ステップ5aにおいて説明したように導出された。波面に沿って延びる波状ひだを形成する変形は、当該ひだに沿って同じ周縁長さを有するように拘束された一連の半径によって形成される。例えば、ひだ412は、経路413、414、415に沿って同じ周縁長さを有する。クレストは、複数の低周波数波面が最も緊密になって波速度が最も低い場所で最も高くなる。
【0075】
図4cは、図4bの設計表面上に、設計プロセスの例のステップ7によって形成された波形整形導波路41aを示す。図4bの設計表面440は、±2.5mmだけ対称的にずらされている。次に、対称平面401に反映された幾何学形状を追加することによって、完全な導波路幾何学形状が形成され得る。入口アパチャ3には、プリズム状の入力導波路421によって円筒波が与えられ、出力アパチャは、プリズム状の出力導波路422へとつながる。二次壁に対する接線方向の壁が、図4aの指数関数状曲線から形成されて波形整形導波路41aを画定する。波長が導波路の厚さ(図面における垂直寸法)の2倍となる周波数まで、出口アパチャ5にわたる圧力は、圧力バリエーションが最小となる。数値シミュレーションによれば、出力アパチャにおける点423、424、425の圧力は、20kHzまで1dB以内であることが示された。導波路が、入口アパチャの幾何学的形状に整合する波面発生源が設けられて整合態様で終端される場合、それによって波は、導波路全体にわたり、非常に緊密した近似で単一のパラメータ波として作用することが許容される。
【0076】
図4dは、対称平面401による方法の例に係る波形整形導波路設計の半分を示す。二次壁49は滑らかな輪郭を有し、入口導波路及び出口導波路の壁に対して接線方向をなす。入口導波路及び出口導波路はプリズム状であり、内側は60度の角度を有し、外側は30度の小さな角度を有する。これにより、軸上の低周波数波の速度の低下がもたらされ、対称平面401に沿った深いひだがもたらされる。方法ステップ6aの例を使用して、33mm間隔の離間点における湾曲波面が推定された。ひだセクションの形状は、5mmの半径がブレンドされた角部を有するのこぎり歯状である。図示の例において概念的幾何学形状における厚さが一定であるにもかかわらず、全体的に指数関数状の又はその他のフレアの法則を、距離のずれを調整することによって達成することができるので、波面面積は所望の法則に従って変化する。数値シミュレーションにより、概念的導波路設計が、周波数範囲の上側部分において数dBの音圧応答不規則性を有する一方、本発明に係る波形整形導波路は1dB未満のバリエーションを有することが示された。
【0077】
図5は、2つの垂直な対称平面501、503が入口アパチャ3eの回転軸と交差する方法の例に従って設計された波形整形導波路の4分の1を示す。入口アパチャ及び出口アパチャは双方とも平面状であり、プリズム形状の導波路505が出口アパチャ5eで終端する。アパチャ3e、5eは異なる輪郭を有し、それぞれが、環状入口アパチャ、及びそれよりも面積が大きな矩形出口アパチャを有する。この例において、波面形状は、その輪郭及び面積が双方とも変化するにもかかわらず、変化しない。
【0078】
設計表面(例示せず)が、各アパチャにわたる中間線同士間の経路長バリエーション及び幅バリエーションを最小にするように選択された。1000Hzの下限動作帯域幅の1/10となる100Hzにおける波面を計算するべく数値法が使用された。波面が、ひだ型変形を一次表面に加えるべく、0.1度の位相増分で計算され、設計手順ステップ6bの例で説明したように使用された。この場合、波速度の所望増加を与えるべく、導波路の始まりと終わりのみが修正を必要とした。この場合、本発明に係る導波路を数値的に解いて、波面が指数関数状に拡大する本発明に係る導波路をもたらすべく、幾何学形状として抽出及び拡大された波面が使用された。
【0079】
図6は、方法の例に従って設計された2つの直交する対称平面602及び604を有する波形整形導波路の4分の1を示す。対称平面が直交してその交差部が、入口環3fの回転軸と同一直線上にある。波形整形導波路は、波の輪郭及び形状を順応させるように、平面状の環状入口アパチャ3fと、円筒状の矩形輪郭出口アパチャ5fとを有する。入口アパチャ3f及び出口アパチャ5f双方の面積は等しい。設計表面が、経路長のバリエーションを最小にして幅を入口アパチャ円周の4分の1に維持するように形成される。0.1度の位相増分で100Hzに対して計算された波面により画定された表面を使用して、ひだ型変形が加えられた。
【0080】
図7は、斜めに接合された環状円錐導波路761及び平面状導波路762から形成された概念的導波路により設計された本発明に係る導波路を示す。幾何学的形状はVDOSCと同様に見えるが、出口アパチャ5gの幅は、環状入口アパチャ3gの円周の4分の1に整合するので、平面セクション762における波伸長が回避される。これにより、円錐セクション及び平面セクションが、中心軸Aに対して異なる角度763、764を有するとともに異なる経路長を有する。2つの対称平面は765及び766である。
【0081】
波面幅は、ダクトにおいてのように、平面セクション762において一定のままなので、平面波の伝播が仮定されて当該設計方法が適用される。これにより、急峻でない角度の円錐セクション763にひだ型変形がもたらされる。円錐セクション内を進行する波は、波が伝播するにつれて環状チャネルの円周が増加することにより、波面伸長を示す。これは、入口及び出口767、768における円錐ひだ状一次表面間の間隔を低減することによって補償することができる。この導波路は、先行技術の3dBと比較して、幅方向にわたって1dBしか変化しない応答を有する。導波路出力アパチャにわたる圧力バリエーションの低減は、予測される挙動を与えるべくコヒーレント波が要求されるこの型の導波路のアレイにとって特に重要である。
【0082】
図8は、入力導波路81及び出力導波路82に接合された本発明に係る波形整形導波路を示す。波形整形導波路のための概念的導波路は、点線83及び84によって示される回転体の4度セグメントであった。入力導波路及び出力導波路はまた、他の二次境界がこの対称軸によって形成される回転体の4度セグメントである。波形整形導波路は、回転軸85上で一つの二次側9hと交差する複数の一次側7hを有する。
【0083】
この例において、入力導波路は、壁186が湾曲しているので、正確な単一パラメータ導波路ではないが、近似的に円錐状であるから波面誤差は最大周波数において波長の4分の1よりも小さく、振幅シェーディングは何分の一かのdBのみとなる。
【0084】
概念的導波路が軸対称である場合、一次表面は互いに平行とならない。低周波数の波速度を満足に修正できるにもかかわらず、フレアを一定にすることはできない。一次壁の間隔のバリエーションゆえに波面面積が軸からの半径方向距離とともに増加するからである。これにより、アプリケーションによっては許容可能な、又は望ましくさえある振幅シェーディングが得られる。
【0085】
図9は、一アレイのプレート90のアレイを示す。プレート間には一定数の導波路のための複数の一次壁が形成される。図8に示すように、複数の二次壁が、プレート90を包囲する一表面を形成する。この表面は、図8の曲線84を軸85まわりに回転させることによって生成される。
【0086】
浅いひだにより、この例における波形整形導波路が、アレイ壁を製造するべく形成される材料シートの使用に適した同一の一次表面で画定されることが許容されている。場合によっては、中実壁とシート壁とを組み合わせることが有利となり得る。
【0087】
プレート間の間隔は、軸85及び入口アパチャ双方の近くで減少するので、一次表面は、一定数の異なる直径91、92、93、及び異なる長さ94、95までトリミングされる。これにより、一次表面から形成される壁の厚さに起因する影響、及びこれらの壁同士の間の非常に小さなギャップによる公差の問題が低減される。これは、一次表面間の距離が1/4波長未満となる領域において導波路が結合される結果を有する。この設計単純化が選択されるのは、対称性ゆえに波の伝播が改変されることがないからである。
【0088】
図10は、複数の平坦要素202が存在する直線状アレイ200の半分を示す。隣接する要素202が、その間に、図4cに示される波形整形導波路120を画定する。よって、アレイ200は、図4cに例示される対称平面に沿って区切られた一アレイの隣接導波路120を含む。使用時、アレイの入口側のアパチャ204に平面波が入力され、先細りセクション206によって波の入力波が、波形整形導波路120に入る前に波形整形導波路入口3jにおいて、複数のセグメントに分割される。波は、導波路120を通過した後、出力アパチャ5jから出て先細りセクション208に入り、平坦要素210の外側エッジ202によって画定される円筒表面において当該セクションが再結合されて大きな円筒波になる。アレイ出力アパチャ205近くの深いひだ212は、異なる幾何学的形状を有する導波路一次表面をもたらすので、部材202は厚さが変化し、中空ではなく中実であることが好ましい。アレイの外側セクションの壁214は、回折のフリンジングを低減するように成形される。
【0089】
図11は、図10のアレイ200と同様の波形整形導波路のアレイ200kの半分を示すが、導波路を画定する個々の要素202kが、これまでのような対称平面による軸220まわりの回転アレイに配列される。使用時、音響波は、当該波を個々の導波路へと分割する第1の導波路セクション222を通過し、次いで、当該導波路の波形整形部分である第2の導波路セクション224に沿って伝播し、次いで、228において当該波を再結合してトロイダル波面にする第3のセクション226を通過する。この要素の外側エッジにおいて形成される表面が導波路を形成する。最終の第4のセクション230の壁が、回折フリンジングを低減するように成形される。
【0090】
第1及び第3のセクション222、226により波は、所望の面積拡大を与えるように形成された壁を有する一次壁から続いている要素202kの平面に垂直に拡大又は収縮することが許容される。
【0091】
図12は、図10及び11と同様の波形整形導波路のアレイ200lを例示するが、ここでは、最終の第4のセクション230lの導波路の壁は、出力アパチャ5lにおいて様々な分散角を与えるべく第2の次元に湾曲している。このような異種の波形整形導波路の配列は、波面形状及び振幅シェーディングの段階的変化をもたらし得る。この場合、振幅シェーディングは角度バリエーションによって与えられる。上側の波形整形導波路は広い分散を有することにより、下側の導波路よりも低い音圧レベルをもたらす。
【0092】
また、図10、11又は12のもののようなアレイの入口アパチャ高さを変化させて、入力エネルギーを調整することも可能である(ただし図示しない)。例えば、入口アパチャを小さくするが出力アパチャは小さくしないことにより、出力圧力が低下する。これにより、調整された形状、輪郭及び振幅シェーディングを波面に与えて特定エリアの均一なカバレッジを与えるように波形整形アレイを設計する機会が得られる。この場合、波形整形要素は、3Dプリントによって生成される可能性が最も高い。
【0093】
もちろん、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に多くのバリエーションを加え得ることが理解される。例えば、本発明の導波路は、高周波数の波に関して画定され、高周波数は、可聴スペクトルの上端に向かうように画定される。所定のアプリケーションにおいて導波路が、可聴高周波数限界を著しく下回る範囲の音響周波数を目的として設計され得ることが理解される(可聴高周波数限界は約20kHzである。例えば、導波路は、100~100Hzの間の音響周波数を搬送することが意図される。この場合、導波路は、導波路が搬送することが意図される最高周波数の波長に関連して設計される)。導波路に沿って複数のひだが存在する複数の例が与えられているが、複合導波路は、直線導波セクションがひだセクション間に存在するようにそれぞれが一つのみのひだを有する一連のセクションを含み得ることを理解すべきである。
【0094】
本発明が、音響装置を参照してここに記載されてきた。しかしながら、上述した原理は、電磁波、特にマイクロ波波長のものに等しく適用可能であり、したがって、本発明は、そのような波とともに使用することを意図した方法及び導波路装置に拡張されることが理解される。
【0095】
異なるバリエーション又は代替配列が上述されている場合、本発明の複数の実施形態は、そのようなバリエーション及び/又は代替例を任意の適切な組み合わせで組み入れることができることを理解されたい。
図1
図2a-2b】
図3a-3b】
図3c-3d】
図3e
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12