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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】設備支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 5/02 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
E04H5/02 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020195087
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083652
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土居 靖
(72)【発明者】
【氏名】西 謙一
(72)【発明者】
【氏名】落合 徹
(72)【発明者】
【氏名】小牧 勇太
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057944(JP,A)
【文献】特開平05-079093(JP,A)
【文献】実開昭61-197371(JP,U)
【文献】特開2019-027144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 5/02
E04B 1/24
F16L 3/22,3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状またはケーブル状の長尺設備を支持する設備支持構造であって、
屋外に立設された一対の支柱と、
前記一対の支柱に両端が剛接合されて前記一対の支柱間に架け渡される梁部材と、
前記梁部材に沿って前記梁部材の上方に設けられ、前記長尺設備を保持する水平トラス構造部と、
前記水平トラス構造部と前記梁部材とを連結することにより鉛直面内において鉛直トラス構造を形成する方杖材と、を備え、
前記梁部材は、一対のフランジ部と前記一対のフランジ部に挟まれたウェブ部とを有するH形鋼材であり、強軸方向が鉛直方向に沿うように設けられ、
前記水平トラス構造部は、
前記梁部材に直交し前記梁部材に沿って所定間隔で設けられることにより、前記梁部材に沿って配置される前記長尺設備を支持可能な複数の設備支持部材と、
前記梁部材と平行に延び、前記設備支持部材の両端が接合される一対の弦材と、
前記一対の弦材を斜めに連結する斜材と、を有し、
前記一対の支柱の少なくとも一方には、前記梁部材に直交する方向に延びるブラケット部が設けられ、
前記水平トラス構造部は、前記一対のフランジ部のうち上方に配置される上側フランジに前記設備支持部材が接合され、前記一対のフランジ部のうち下方に配置される下側フランジに前記方杖材を介して前記設備支持部材が接合されることによって前記梁部材に組み付けられ、前記ブラケット部に前記弦材が接合されることによって前記支柱に組み付けられ、
前記設備支持部材、前記ウェブ部及び前記方杖材によって前記鉛直トラス構造が形成される、
設備支持構造。
【請求項2】
前記方杖材は、前記梁部材の前記ウェブ部を挟んで対称的に設けられる、
請求項1に記載の設備支持構造。
【請求項3】
前記水平トラス構造部は、前記長尺設備とは別の長尺設備を支持可能な増設架台部を前記水平トラス構造部の上方に組み付けるためのガセットプレートをさらに有する、
請求項1または2に記載の設備支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備を支持する設備支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配管等の設備を支持する設備支持構造が開示されている。特許文献1に記載の設備支持構造では、一対の上弦材と、一対の下弦材と、これらを接続する複数の束材及び斜材と、により構成されたトラス梁に配管等の設備が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-27144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の設備支持構造のように、比較的多くの部材によって設備支持構造が構成される場合、各部材の製作費用や現地への部材の運搬費用が嵩むとともに、組立工場または現地での組み立て作業に多大な時間を要することから、結果として、施工コストが増大するおそれがある。また、施工コストを低減させるには、部品点数を少なくすることが考えられるが、安易に部材を削減してしまうと、設備支持構造の強度や剛性が低くなり、許容荷重の低下や耐震性の低下を招くことになる。
【0005】
本発明は、設備支持構造の強度や剛性を確保しつつ施工コストを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、管状またはケーブル状の長尺設備を支持する設備支持構造であって、屋外に立設された一対の支柱と、前記一対の支柱に両端が剛接合されて前記一対の支柱間に架け渡される梁部材と、前記梁部材に沿って前記梁部材の上方に設けられ、前記長尺設備を保持する水平トラス構造部と、前記水平トラス構造部と前記梁部材とを連結することにより鉛直面内において鉛直トラス構造を形成する方杖材と、を備え、前記梁部材は、一対のフランジ部と前記一対のフランジ部に挟まれたウェブ部とを有するH形鋼材であり、強軸方向が鉛直方向に沿うように設けられ、前記水平トラス構造部は、前記梁部材に直交し前記梁部材に沿って所定間隔で設けられることにより、前記梁部材に沿って配置される前記長尺設備を支持可能な複数の設備支持部材と、前記梁部材と平行に延び、前記設備支持部材の両端が接合される一対の弦材と、前記一対の弦材を斜めに連結する斜材と、を有し、前記一対の支柱の少なくとも一方には、前記梁部材に直交する方向に延びるブラケット部が設けられ、前記水平トラス構造部は、前記一対のフランジ部のうち上方に配置される上側フランジに前記設備支持部材が接合され、前記一対のフランジ部のうち下方に配置される下側フランジに前記方杖材を介して前記設備支持部材が接合されることによって前記梁部材に組み付けられ、前記ブラケット部に前記弦材が接合されることによって前記支柱に組み付けられ、前記設備支持部材、前記ウェブ部及び前記方杖材によって前記鉛直トラス構造が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設備支持構造の強度や剛性を確保しつつ施工コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る設備支持構造の側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る設備支持構造の平面図である。
図3図1のA-A線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る設備支持構造の第1変形例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る設備支持構造の第2変形例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る設備支持構造の第3変形例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る設備支持構造の第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る設備支持構造について説明する。
【0010】
図1~3を参照して、本実施形態に係る設備支持構造100について説明する。設備支持構造100は、工場等の屋外において、圧力配管やダクト、電源ケーブル、通信ケーブルといった管状またはケーブル状の長尺設備2を、例えば、道路や通路等を跨ぐようにして配置する際に、これらの長尺設備2を地上高くで保持する高架構造体である。図1は、設備支持構造100の側面図であり、図2は、図1を上方から見た設備支持構造100の平面図であり、図3は、図1のA-A線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように設備支持構造100は、屋外において地面1に立設された支柱10と、一対の支柱10に両端が剛接合され一対の支柱10間に架け渡される梁部材20と、梁部材20に沿って梁部材20の上方に設けられ管状またはケーブル状の長尺設備2を保持する水平トラス構造部30と、水平トラス構造部30と梁部材20とを連結することにより鉛直面内において鉛直トラス構造を形成する方杖材40と、を備える。
【0012】
支柱10は、断面が略矩形状の角形鋼管であり、地中に埋設された図示しないRC構造体に基端部が接合されることによって鉛直方向に沿って立設される。なお、支柱10は、角形鋼管に限定されず、断面が略円形状の円形鋼管であってもよい。
【0013】
支柱10の先端部側面には、梁部材20が剛接合される第1ブラケット部11と、梁部材20に直交する方向に延び、支柱10の上方に設置される水平トラス構造部30を支持する一対の第2ブラケット部12(ブラケット部)と、がそれぞれ水平方向に沿って設けられる。第1ブラケット部11及び第2ブラケット部12は、梁部材20と断面形状が同じH形鋼によりそれぞれ形成されており、強軸方向が鉛直方向に沿うようにして支柱10に対して突き合わせ溶接により接合されている。
【0014】
第1ブラケット部11及び第2ブラケット部12は、設備支持構造100を構成する各部材を製造する製造工場において予め支柱10に接合され、支柱10に接合された状態で施工現場へと運搬される。このため、第1ブラケット部11及び第2ブラケット部12の長さは、運搬車両等の荷台に積載可能な長さに設定される。
【0015】
また、一対の第2ブラケット部12の先端部上面と支柱10の上端を閉塞するダイアフラム10aの上面とには、水平トラス構造部30を支持するガセットプレートである第1支持プレート13及び第2支持プレート14がそれぞれ設けられる。第1支持プレート13及び第2支持プレート14は、高力ボルトが挿通する挿通孔が形成された平板材であり、第1支持プレート13は、梁部材20の延在方向に沿って第2ブラケット部12に溶接固定され、第2支持プレート14は、梁部材20の延在方向に直交する方向に沿ってダイアフラム10aに溶接固定される。
【0016】
梁部材20は、図3に示すように、一対のフランジ部21,22と、一対のフランジ部21,22に挟まれたウェブ部23と、を有するH形鋼材である。梁部材20は、強軸方向が鉛直方向に沿うようにして、添え板24を介して支柱10の第1ブラケット部11に剛接合される。つまり、梁部材20は、その両端が一対の支柱10に剛接合された状態において、上方に配置された上側フランジ21と下方に配置された下側フランジ22とに挟まれたウェブ部23が鉛直方向に沿って配置された状態となっている。
【0017】
また、梁部材20には、上側フランジ21の上方に設置される水平トラス構造部30を支持するガセットプレートである支持プレート25と、水平トラス構造部30と梁部材20とを連結する方杖材40の一端がピン接合されるガセットプレートである連結プレート26と、が設けられる。
【0018】
支持プレート25及び連結プレート26は、高力ボルトが挿通する挿通孔が形成された平板材であり、支持プレート25は、上側フランジ21の上面21aに梁部材20の延在方向に直交する方向に沿って溶接固定され、連結プレート26は、下側フランジ22とウェブ部23とに跨って梁部材20の延在方向に直交する方向に沿って溶接固定される。
【0019】
水平トラス構造部30は、図2に示すように、梁部材20に直交し梁部材20に沿って所定間隔で設けられる複数の束材33(設備支持部材)と、梁部材20と平行に延び複数の束材33の両端が接合される一対の弦材31と、一対の弦材31を斜めに連結する複数の斜材32と、を有する。複数の束材33は、梁部材20に沿って所定間隔で設けられることにより、梁部材20に沿って配置される長尺設備2を支持する設備支持部材としての役割を担っている。
【0020】
これら弦材31、斜材32及び束材33の各部材は、それぞれ等辺山形鋼(等辺L形アングル鋼)により形成されており、弦材31に設けられたガセットプレート31a,31bを介して互いに連結されている。
【0021】
具体的には、各弦材31には、斜材32がピン接合されるガセットプレートである第1連結プレート31aと、束材33がピン接合されるガセットプレートである第2連結プレート31bと、が溶接固定されており、水平方向に並んで配置された一対の弦材31が、第1連結プレート31a及び第2連結プレート31bを介して複数の斜材32と複数の束材33とにより連結されることによって、図2に示すように、複数のトラス構造が水平面内に形成される。
【0022】
なお、図2では、一対の支柱10間の一部が図示省略されているが、省略された部分においても同様に、一対の弦材31と、一対の弦材31を連結する複数の斜材32及び束材33が配置されており、これらにより水平面に沿って水平トラス構造が形成される。
【0023】
また、これら弦材31、斜材32及び束材33は、一方の辺が水平面に平行となり、他方の辺が鉛直方向下方を向いた状態で互いに連結される。これにより、梁部材20の上方に水平トラス構造部30が取り付けられることによって、設備支持構造100の上面には、配管や電源ケーブルといった長尺設備2を安定して保持可能な平坦部が形成されることになる。特に、長尺設備2の延在方向に直交して配置される束材33を、梁部材20に沿って所定の間隔、例えば2m間隔で3つ以上設けておくことによって、長尺設備2を3点以上の複数の平坦部により安定して支持することができる。
【0024】
このように構成される水平トラス構造部30は、支柱10の一対の第2ブラケット部12に設けられた第1支持プレート13に高力ボルトを介して一対の弦材31がそれぞれ接合され、支柱10の上端に設けられた第2支持プレート14に高力ボルトを介して束材33が接合され、梁部材20の上側フランジ21に設けられた支持プレート25に高力ボルトを介して束材33が接合されることによって、支柱10及び梁部材20に組み付けられた状態、すなわち、支柱10及び梁部材20によって下方から支持された状態となる。
【0025】
また、このように支柱10及び梁部材20によって支持された水平トラス構造部30は、図3に示されるように、方杖材40によって梁部材20とさらに連結される。
【0026】
方杖材40は、弦材31等と同様に、等辺山形鋼により形成された部材であり、ウェブ部23及び束材33に対して所定の角度だけ傾けられた状態で、水平トラス構造部30と梁部材20とを連結する。
【0027】
具体的には、方杖材40は、一端が、第2連結プレート31bの下方に膨出して形成された連結部31cに高力ボルトを介してピン接合され、他端が、下側フランジ22とウェブ部23とに跨って設けられた連結プレート26に高力ボルトを介してピン接合される。
【0028】
なお、方杖材40の一端がピン接合される連結部31cは、弦材31に設けられた第2連結プレート31bのうち、梁部材20の上方に配置される束材33の端部がピン接合される第2連結プレート31bのみに形成されており、支柱10及び第2ブラケット部12の上方に配置される束材33の端部がピン接合される第2連結プレート31bには形成されていない。
【0029】
このように方杖材40を介して、水平トラス構造部30と梁部材20とが連結されることで、束材33とウェブ部23と方杖材40とによって鉛直面内に鉛直トラス構造が形成される。なお、束材33は、上述のように、梁部材20に沿って、例えば2m間隔で設けられることから、鉛直トラス構造もこれと同じ間隔で形成されることになる。
【0030】
ここで、上述のように設備支持構造100の梁部材20として1本のH形鋼材を用いた場合、強軸方向を鉛直方向に沿わせることで鉛直方向における荷重を梁部材20によって十分に支えることが可能となる。さらに、従来技術としての一般的なトラス梁と比べて構成が簡素化されることから、製造工数や組立工数が大幅に低減され、結果として、製造コストを低減させることも可能である。
【0031】
一方で、屋外に設置される設備支持構造100には、風圧や地震力等により水平方向の荷重が頻繁に作用することから、水平方向が弱軸方向となる梁部材20において、風圧や地震力等の水平方向の荷重の影響により横座屈が起こり、梁部材20全体が捩じれ挙動するおそれがある。梁部材20が捩じれてしまえば、長尺設備2を安定して保持することは当然困難となる。
【0032】
これに対して、本実施形態では、束材33とウェブ部23と方杖材40とにより鉛直面内において鉛直トラス構造が形成されるように方杖材40を設けることによって、ウェブ部23の下方に位置する下側フランジ22の水平方向(図3上での左右方向)における移動を抑制している。
【0033】
換言すると、上側フランジ21から見て、下側フランジ22がウェブ部23を弱軸方向に曲げつつ相対的に回転移動しようとしても、連結プレート26介して下側フランジ22に接合された方杖材40の突っ張り作用によって、その移動は抑制される。
【0034】
特に、図3に示される実施形態では、梁部材20の延在方向に直交する方向において下側フランジ22を挟むようにして一対の方杖材40が設けられていることから、下側フランジ22は水平方向ないし上側フランジ21を中心として回転する方向において一対の方杖材40により拘束された状態となっている。
【0035】
このように下側フランジ22の動きが拘束されることで、風圧や地震力等の水平方向の荷重に起因して梁部材20が捩じれてしまうことが抑制される。
【0036】
また、弦材31付近に作用する鉛直方向の荷重は、方杖材40を介して梁部材20の下側フランジ22によって支持されることから、水平トラス構造部30が鉛直方向において変形してしまうことも抑制される。
【0037】
したがって、梁部材20としてH形鋼材を用いた場合であっても、上述のように鉛直面内において鉛直トラス構造を形成する方杖材40を設けることによって、鉛直面における設備支持構造100の強度や剛性が確保され、設備支持構造100により長尺設備2を安定して保持することができる。
【0038】
また、風圧や地震力等の水平方向の荷重は、水平トラス構造部30に対して面外力として作用する。水平トラス構造部30は、上述のように水平面内において複数のトラス構造を有することから面外力に対して変形しにくい構成となっているものの、比較的大きな面外力が作用した場合、水平トラス構造部30全体が少なからず変形するおそれがある。
【0039】
これに対して、本実施形態では、図2に示すように、水平トラス構造部30を構成する一対の弦材31が第1支持プレート13にそれぞれ接合されることで第2ブラケット部12によりそれぞれ支持された状態、すなわち、一対の弦材31は、支柱10を中心として一対の第2ブラケット部12により互いに支持された状態となっている。
【0040】
このため、例えば、面外力によって一対の弦材31の一方の弦材31が引張荷重を受けて伸長変形した場合、この変形は、支柱10を中心として一対の第2ブラケット部12が回転するように僅かに変位することによって他方の弦材31に伝達される。このとき、他方の弦材31には圧縮荷重が作用することになるが、この荷重は抗力となって一方の弦材31へと一対の第2ブラケット部12を介して戻されるため、一方の弦材31の伸長変形は他方の弦材31の抗力によって抑制されることになる。なお、面外力によって一方の弦材31が圧縮荷重を受けて収縮変形する際も、同様の作用により一方の弦材31の収縮変形は抑制されることになる。
【0041】
このように、梁部材20の延在方向における一対の弦材31の変形は、一対の弦材31を一対の第2ブラケット部12にそれぞれ接合しておくことによって抑制することが可能となる。なお、抑制効果を向上させるには、支柱10や第2ブラケット部12の剛性を高めることが好ましい。また、一対の弦材31は一対の第2ブラケット部12と一体的な構成となるよう第2ブラケット部12に対し、第1支持プレート13を介してピン接合されている。
【0042】
これにより、面外力によって水平トラス構造部30が梁部材20の延在方向において変形することが抑制されるため、設備支持構造100により長尺設備2を安定して保持することが可能となる。
【0043】
また、一対の上弦材と一対の下弦材とを有する断面が箱型である一般的なトラス梁では、強度や剛性を確保するためには側面に設けられる斜材の角度を45°前後とする必要があることから、側面に設けられる斜材や束材を減らして軽量化や施工コストを低減するには、これらの設置間隔を大きくしなければならず、結果として、梁の高さである梁せいが大きくなり、全体が大型化してしまう。一方で、全体をコンパクト化するために、梁せいを小さくしようとすると、側面に設けられる束材及び斜材の設置間隔が狭くなることで部材点数が増加するとともに組立工数が増加し、結果として、施工コストの増加や重量の増加を招くことになる。
【0044】
これに対して、本実施形態では、梁部材20として1本のH形鋼材を用いることによって一般的なトラス梁よりも部品点数を減らしつつ、上述のように方杖材40を設けることによって設備支持構造100の強度や剛性を確保することが可能である。また、一対の下弦材や上弦材と下弦材とを連結する斜材及び束材が設けられないことで、梁せいを小さくすることが可能であるとともに、設備支持構造100全体がコンパクト化され、見た目にも圧迫感のない軽やかな印象を与えることが可能となる。
【0045】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0046】
上記構成の設備支持構造100において、長尺設備2を保持する水平トラス構造部30は、H形鋼材である梁部材20の上側フランジ21に束材33が接合され、梁部材20の下側フランジ22に方杖材40を介して束材33が接合されることによって梁部材20に組み付けられ、支柱10の第2ブラケット部12に弦材31が接合されることによって支柱10に組み付けられる。そして、水平トラス構造部30が梁部材20に組み付けられることで、水平トラス構造部30と梁部材20とを連結する方杖材40と、水平トラス構造部30の束材33と、梁部材20のウェブ部23と、によって鉛直面内に鉛直トラス構造が形成される。
【0047】
これにより梁部材20の下側フランジ22が水平方向ないし上側フランジ21を中心として回転する方向に変位することは、一対の方杖材40によって抑制されるため、梁部材20としてH形鋼材を用いた場合であっても、鉛直面における設備支持構造100の強度や剛性が確保され、設備支持構造100により長尺設備2を安定して保持することが可能となる。
【0048】
また、梁部材20として1本のH形鋼材を用いることによって、一対の下弦材や上弦材と下弦材とを連結する斜材を要するトラス梁と比較し、部品点数や製造工数、組立工数が大幅に低減されることから、施工コストを低減させることも可能である。
【0049】
このように梁部材20として1本のH形鋼材を用いた本実施形態によれば、設備支持構造100の強度や剛性を確保しつつその施工コストを低減させることができる。
【0050】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0051】
(1)上記実施形態では、長尺設備2を保持する部分は、水平トラス構造部30のみである。設備支持構造100が施工された後、保持すべき設備が増えるといったこともあることから、図4に示す第1変形例のように、水平トラス構造部30に加えて、長尺設備2とは別の長尺設備3を保持可能な増設架台部50を取り付け可能な構成としてもよい。図4は、図3に相当する断面を示した断面図である。
【0052】
図4に示される第1変形例において、水平トラス構造部30は、増設架台部50を水平トラス構造部30の上方に組み付けるためのガセットプレートである増設用ガセットプレート35を有している。増設用ガセットプレート35は、高力ボルトが挿通する挿通孔が形成された平板材であり、弦材31の上面に梁部材20の延在方向に直交する方向に沿って溶接固定されている。
【0053】
増設架台部50は、束材33と平行に配置され長尺設備2とは別の長尺設備3を支持可能な複数の増設束材51と、弦材31と平行に配置され増設束材51の両端が接合される一対の増設弦材52と、水平面内において一対の増設弦材52を斜めに連結する図示しない複数の増設斜材と、鉛直方向に沿って延び一端が弦材31に接続され他端が増設弦材52に接続される鉛直束材53と、鉛直面内において増設弦材52と弦材31とを斜めに連結する図示しない複数の鉛直斜材と、を有する。
【0054】
増設架台部50を構成する各部材は、それぞれ等辺山形鋼(等辺L形アングル鋼)により形成されており、増設弦材52に設けられたガセットプレートである連結プレート52aや弦材31に設けられた増設用ガセットプレート35の他、図示しないガセットプレートを介して互いに連結されている。
【0055】
このように構成される増設架台部50は、鉛直束材53の一端が弦材31に設けられた増設用ガセットプレート35に接合されることにより、水平トラス構造部30の上方に配置された状態となる。
【0056】
これにより設備支持構造100は、長尺設備2に加えて、長尺設備2とは別の長尺設備3を保持することが可能となる。なお、増設架台部50の増設弦材52の上面には、増設架台部50の上方に別の増設架台部50を取り付け可能とするためのガセットプレートである増設用プレート61が溶接固定されている。
【0057】
(2)上記実施形態では、方杖材40が梁部材20のウェブ部23を挟んで対称的に設けられている。これに代えて、長尺設備2を建屋5近傍に沿って配置する必要がある場合などには、図5に示す第2変形例のように、ウェブ部23に対して方杖材40を一方側のみに設けた構成としてもよい。図5は、図3に相当する断面を示した断面図である。
【0058】
図5に示される第2変形例における水平トラス構造部30は、上記実施形態における水平トラス構造部30と同様に、梁部材20に直交し梁部材20に沿って所定間隔で設けられる複数の束材33(設備支持部材)と、梁部材20と平行に延び複数の束材33の両端が接合される一対の弦材31と、一対の弦材31を斜めに連結する図示しない複数の斜材と、を有する。複数の束材33は、梁部材20に沿って所定間隔で設けられることにより、梁部材20に沿って配置される長尺設備2を支持する設備支持部材としての役割を担っている。
【0059】
なお、第2変形例では、一対の弦材31のうち、方杖材40の一端が接合される連結部31cが形成された第2連結プレート31bが溶接固定される弦材31、すなわち、図5において梁部材20から水平方向に離れた位置に設けられる弦材31は、H形鋼材により形成されている。H形鋼材によって形成された弦材31の端部は、図示しない一対の支柱にそれぞれ設けられた第2ブラケット部(ブラケット部)にそれぞれ接合される。
【0060】
一方、一対の弦材31のうち、梁部材20の近傍に設けられる弦材31は、上記実施形態における弦材31と同様に、等辺山形鋼(等辺L形アングル鋼)により形成されている。等辺山形鋼によって形成された弦材31は、上側フランジ21の上面21aに梁部材20の延在方向に沿って溶接固定された支持プレート25を介して梁部材20の上側フランジ21に接合される。
【0061】
このように第2変形例における水平トラス構造部30は、上側フランジ21に束材33が弦材31を介して接合され、下側フランジ22に方杖材40を介して束材33が接合されることによって梁部材20に組み付けられ、支柱に設けられた第2ブラケット部にH形鋼材によって形成された弦材31が接合されることによって支柱に組み付けられる。
【0062】
そして、図5に示されるように、第2変形例においても上記実施形態と同様に、水平トラス構造部30と梁部材20とを連結する方杖材40と、水平トラス構造部30の束材33と、梁部材20のウェブ部23と、によって鉛直面内に鉛直トラス構造が形成される。このため、第2変形例においても、鉛直面における設備支持構造100の強度や剛性が確保されることから、設備支持構造100により長尺設備2を安定して保持することができる。
【0063】
また、第2変形例では、支柱に設けられた第2ブラケット部に接合されることにより束材33に作用する長尺設備2の荷重を支柱へと伝達する弦材31は、梁部材20と同様にH形鋼材によって形成されている。このように、束材33に作用する荷重を支柱に伝達する弦材31と梁部材20とを共に比較的剛性の高いH形鋼材によって形成し、強軸方向が鉛直方向に沿うように配置することによって、一対の支柱間において長尺設備2を安定して保持することが可能となる。さらに、弦材31を等辺山形鋼よりも捩じれが生じにくいH形鋼材によって形成することで、水平トラス構造部30全体の捩り変形を抑制され、結果として、長尺設備2を安定して保持することが可能となる。なお、弦材31において捩じれ等の変形が生じるおそれが低い場合には、一対の弦材31の両方を等辺山形鋼により形成してもよい。
【0064】
また、第2変形例では、束材33(設備支持部材)が上側フランジ21に接合された構成として、束材33が弦材31を介して上側フランジ21に接合された構成が示されているが、束材33と上側フランジ21とを接合する部分の構成は、上側フランジ21に対して束材33が接合されることによって、束材33とウェブ部23と方杖材40とが鉛直面内においてトラス状に配置された状態となればどのような構成であってもよく、例えば、上記実施形態と同様に、弦材31を介することなく、上側フランジ21に溶接固定された支持プレート25に束材33を直接的に接合した構成であってもよい。
【0065】
また、第2変形例では、梁部材20において横座屈が生じることを抑制するために、方杖材40及び連結プレート26が設けられていない側に、上側フランジ21とウェブ部23と下側フランジ22とに跨って溶接固定されたリブプレート27を設けておくことが好ましい。また、等辺山形鋼によって形成された弦材31が接合される支持プレート25の倒れを防止するために、上側フランジ21の上面21aと支持プレート25とに跨って溶接固定されたリブプレート25aを設けておくことが好ましい。
【0066】
(3)上記実施形態では、曲がり部のない直線状の長尺設備2が設備支持構造100により支持されている。設備支持構造100により支持される長尺設備2は、図6に示す第3変形例のように、水平方向において何れかの方向に曲げられる曲がり部を有するものであってもよい。図6は、図2に相当する平面図であり、管状またはケーブル状の長尺設備2の延設方向が途中で変更される例を示している。
【0067】
図6に示される第3変形例では、上記実施形態における水平トラス構造部30を基本構成とする2つの水平トラス構造部30が組み合わされることによって、曲がり部を有する長尺設備2が支持されている。このように構成される水平トラス構造部30は、上記実施形態と同様に、複数の箇所において方杖材40により梁部材20と連結されている。
【0068】
したがって、第3変形例においても、上記実施形態と同様に、水平トラス構造部30と梁部材20とを連結する方杖材40と、水平トラス構造部30の束材33と、梁部材20のウェブ部23と、によって鉛直面内に鉛直トラス構造が形成されることから、鉛直面における設備支持構造100の強度や剛性が確保され、設備支持構造100により長尺設備2を安定して保持することができる。
【0069】
なお、図6に示される構成は一例であって、長尺設備2が分岐部を有する場合は、その分岐方向に合わせて、梁部材20及び水平トラス構造部30を支柱10に対してT字状や十字状に組み付けてもよい。特に、長尺設備2の曲がり部や分岐部を支持することになる支柱10の周辺の構成、例えば、弦材31、斜材32及び束材33の配置は、図6に示される構成に限定されるものではなく、長尺設備2を安定して保持することができれば、これらの部材の配置はどのように変更されてもよい。
【0070】
(4)上記実施形態では、鉛直方向における支持高さが変化しない直線状の長尺設備2が設備支持構造100により支持されている。設備支持構造100により支持される長尺設備2は、図7に示す第4変形例のように、支持高さが途中で変化するものであってもよい。この場合、設備支持構造100には、長尺設備2を支持する高さに合わせた架台70が追加される。図7は、図1に相当する側面図であり、建屋5側において長尺設備2が導入ないし導出される位置が比較的高い場合を示している。
【0071】
架台70は、例えば、側面にタイロッド等のブレース材が設けられた一般的なブレース構造体を積み重ねることによって所望の高さに構成されたものである。このような架台70を支柱10上に配置することによって、長尺設備2は、架台70を介して所望の高さで支持された状態となる。なお、架台70は、鉛直方向に沿って設けられた4本の鋼材、例えば、等辺山形鋼を複数の斜材で連結されたトラス構造体であってもよい。
【0072】
ここで、架台70だけではなく支柱10の部分もブレース構造体やトラス構造体により構成することで、ブレース構造体やトラス構造体のみからなる支持構造により長尺設備2を所望の高さで支持することも可能であるが、ブレース構造体やトラス構造体のみで構成された支持構造は、一般的に、工場等の建屋5よりも剛性が高く、地震に対する揺れが建屋5よりも小さくなる。
【0073】
一方、ブレース構造体やトラス構造体を用いることなく、鋼管のみで構成された支持構造により長尺設備2を所望の高さで支持することも考えられるが、鋼管として形成可能な長さには限界があることから、鋼管のみで構成された支持構造では長尺設備2を所望の高さで支持することができないおそれがあるとともに、鋼管のみからなる支持構造は、一般的に、工場等の建屋5よりも剛性が低く、地震に対する揺れが建屋5よりも大きくなる。
【0074】
設備支持構造100と建屋5とは、長尺設備2を介して連結された状態になっているともいえることから、設備支持構造100と建屋5とが地震に対して異なる揺れ方をすると、これらの間に配置される長尺設備2に引張力や圧縮力が繰り返し作用し、長尺設備2が破断してしまうおそれがある。このため、長尺設備2には、地震等に起因する変位を吸収可能な変位吸収領域(フレキシブル領域)を十分に設けておく必要がある。
【0075】
しかしながら、例えば、高電圧ケーブルや比較的外径が大きい配管のように、可撓性が低い長尺設備2では、十分な変位吸収領域を設けることが困難な場合がある。
【0076】
このため、建屋5側において長尺設備2が導入ないし導出される位置が比較的高く地震の揺れの影響を受けやすい場合には、長尺設備2を支持する支持構造の剛性を建屋5と同等とすることによって、地震に対する揺れ方が同じになるようにすることが望ましい。
【0077】
具体的には、剛性が高いブレース構造体やトラス構造体と剛性が低い鋼管とを組み合わせることにより支持構造を構成し、支持構造の剛性が建屋5の剛性と同等となるように、支持構造の全体高さに占めるブレース構造体やトラス構造体の高さの割合と鋼管の高さの割合とを最適化すればよい。
【0078】
このように、長尺設備2を介して連結されることとなる設備支持構造100と建屋5との剛性を同等とすることによって、長尺設備2が地震等により破断したり破損したりしてしまうことを抑制することができる。また、長尺設備2を所定の高さで支持する支持構造をブレース構造体やトラス構造体と鋼管とを組み合わせて形成することによって、比較的高い位置であっても長尺設備2を安定して支持することができる。
【0079】
また、地震に対して建屋5と同じような挙動で設備支持構造100を変形させるために、架台70から建屋5側に向かって延び設備支持構造100と建屋5とを連結する連結部材71を設けておくことが好ましい。これにより、設備支持構造100と建屋5とに跨って設けられる部分において長尺設備2が破断してしまうことを防止することができる。なお、連結部材71は、鉛直方向に間隔をあけて複数の個所に設けられていてもよい。また、地震に対する設備支持構造100と建屋5との揺れ方の違いによって長尺設備2に生じると予測される変位を、十分に吸収可能な変位吸収領域(フレキシブル領域)を長尺設備2に設けることができる場合には、連結部材71を設けなくともよい。
【0080】
なお、図7に示す第4変形例では、矢印Bで示される支柱10の第1ブラケット部11及び第2ブラケット部12の部分においても、方杖材40と、水平トラス構造部30の束材33と、第1ブラケット部11及び第2ブラケット部12のウェブ部と、によって鉛直面内に鉛直トラス構造が形成される。したがって、架台70が取り付けられる支柱10の部分においても、鉛直面における設備支持構造100の強度や剛性が確保されることから、設備支持構造100により長尺設備2を安定して保持することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0082】
100・・・設備支持構造
2,3・・・長尺設備
10・・・支柱
11・・・第1ブラケット部
12・・・第2ブラケット部(ブラケット)
20・・・梁部材
21・・・上側フランジ(フランジ部)
22・・・下側フランジ(フランジ部)
23・・・ウェブ部
30・・・水平トラス構造部
31・・・弦材
32・・・斜材
33・・・束材(設備支持部材)
35・・・増設用ガセットプレート(ガセットプレート)
40・・・方杖材
50・・・増設架台部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7