(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】12誘導心電図の電極の位置決め用具
(51)【国際特許分類】
A61B 5/25 20210101AFI20240205BHJP
【FI】
A61B5/25
(21)【出願番号】P 2020522608
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2019021638
(87)【国際公開番号】W WO2019230921
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018106546
(32)【優先日】2018-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513249851
【氏名又は名称】サナメディ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(72)【発明者】
【氏名】内田 毅彦
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206197144(CN,U)
【文献】特表2005-521458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0066809(US,A1)
【文献】特開2018-068596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A41B 1/00-17/00
A41C 1/00-5/00
A41D 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図の位置決め用具(1)であって,
前記用具(1)は,
後身頃部のない前身頃部(19)のみの形態のものであり,
前記前身頃部(19)は,胸部電極位置に相当する複数の穴部(3,5,7,9,11,13)と,前記複数の穴部を取り囲むように存在する複数の切り取り穴(45)を有し,
前記前身頃部(19)のうち,前記複数の穴部(3,5,7,9,11,13)及び鎖骨を覆う領域のいずれか又は両方が透明である,
用具。
【請求項2】
請求項1に記載の用具であって,
前記用具(1)は,鎖骨部に相当する部位に存在する鎖骨目印(15a,15b)及び乳首部に相当する部位に存在する乳首目印(17a,17b)のいずれか又は両方を更に有する,用具。
【請求項3】
請求項1に記載の用具であって,
前記複数の穴部を連結する切り取り部(47)をさらに有する用具。
【請求項4】
請求項1に記載の用具であって,
前記複数の穴部は,直径が1mm以上15mm以下の円形状であり,前記複数の穴部の周辺には穴部の目印を有する,用具。
【請求項5】
請求項1に記載の用具であって,
前記複数の穴部は,それぞれに対応する胸部電極よりも小さく,
それぞれの穴部を通じて体表に前記それぞれに対応する胸部電極の目印を描画するために用いられる,用具。
【請求項6】
請求項1に記載の用具であって,
前記複数の穴部は,直径が30mm以上60mm以下の円形状である,用具。
【請求項7】
請求項1に記載の用具であって,
前記複数の穴部は,それぞれに対応する胸部電極よりも大きく,
それぞれの穴部を通じて体表に前記それぞれに対応する胸部電極を設置するために用いられる,用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,心電図測定用の電極の位置決め用具に関する。より詳しく説明すると,本発明は,患者個人に合わせた心電図の電極の位置を迅速に決められるようにするための用具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-158709号公報には,心電計測布が記載されている。この文献の心電計測布は,複数の計測電極を所定の位置に配置する電極配置部を有し(請求項1)、電極配置部が,標準12誘導法による6個の胸部電極に相当する計測電極を含むとされている(請求項6)。しかしながら、この文献の心電計測布は,救急現場での迅速性を優先しており,電極位置が固定されているので,患者の個人差に対応できないという課題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は,患者個人に合わせた心電図の電極の位置を迅速に決めることができる,心電図測定用の電極の位置決め用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は,心電図測定用の電極の位置決め用具1であって,胸部電極位置に相当する複数の穴部3,5,7,9,11,13を有する,用具により解決できる。つまり,電極の位置を固定するのではなくて,電極を設置するための穴部をあけて置き,その穴部を目印として電極を設置することで,患者個人に合わせた電極の位置を迅速に決めることができる。この目的のため,それぞれの穴部は,用いる心電図の電極と同じかそれより大きい直径を有するものであることが好ましい。もっとも,穴部が電極よりも小さくても構わない。この場合,例えば,用具1を用いて,患者の体表に電極位置の目印をマーキング(描画)し,その目印を用いて,電極を設置できるようにしてもよい。
【0006】
用具1は,鎖骨部に相当する部位に存在する鎖骨目印15a,15b及び乳首部に相当する部位に存在する乳首目印17a,17bのいずれか又は両方を更に有するものが好ましい。この目印があれば,患者に対して,用具を適切な位置に設置できることとなる。
【0007】
用具1は,透明な前身頃部19を有することが好ましい。前身頃が透明な部分を有していれば,用具1を患者に合わせた適切な位置に配置できることとなる。前身頃部分を通して身体の部位を確認できればよいので,透明には,完全な透明のみならず,半透明やメッシュ状の繊維が含まれる。
【0008】
前身頃部19は,複数の切り取り穴45を有することが好ましい。複数の切り取り穴45は,例えば,複数の穴部3,5,7,9,11,13を取り囲むように存在し,電極の大きさや電極の設置位置に応じて,切り取りを行って穴を拡大できるものが好ましい。
【0009】
用具1は,複数の穴部を連結する,切り取り部47を有してもよい。切り取り部47があれば,電極を設置し終わった後,切り取り部を用いて,用具1を取り外すことができる。これにより,長時間,用具1が患者に接触する事態を防止できる。例えば,用具1が透明な場合,用具がプラスチックにより製造されることがあり,用具1が長時間患者と密着していると,患者が汗をかいて不快になる。このため,切り取り部47を有することで,容易に,用具を患者から取り外すことができる。これは,例えば,用具1がTシャツ型のように,患者が着るタイプのものであるときに,特に有効である。
【0010】
用具1の例は,複数の穴部のそれぞれの直径が1mm以上15mm以下の円形状であり,複数の穴部の周辺には穴部の目印を有するものである。これは,穴部を取り囲むように,目印が存在していてもよい。穴が視認しにくい場合があるので,目印を有すると,電極を設置等するための穴部を容易かつ迅速に視認できる。例えば,複数の穴部は,それぞれに対応する胸部電極よりも小さく,それぞれの穴部を通じて体表にそれぞれに対応する胸部電極の目印を描画するために用いられるものであってもよい。穴が小さい場合,電極位置を正確に定めることができるという利点がある。
【0011】
用具1の例は,複数の穴部のそれぞれの直径が,30mm以上60mm以下の円形状のものである。この例では,穴部を用いて電極位置をマーキングするように用いることができる。複数の穴部は,それぞれに対応する胸部電極よりも大きく,それぞれの穴部を通じて体表にそれぞれに対応する胸部電極を設置するために用いられるものであってもよい。穴部が胸部電極より大きい場合,この用具をあてがったままで心電図を取ることができるので利便性が高い。
【発明の効果】
【0012】
患者個人に合わせた心電図の電極の位置を迅速に決めることができる,心電図測定用の電極の位置決め用具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は,心電図測定用の電極の位置決め用具の例を示す概念図である。
【
図2】
図2は,12誘導心電図の胸部電極位置を示す概念図である。
【
図3】
図3は,Tシャツ型の用具の例を示す概念図である。
【
図4】
図4は,エプロン型の用具の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0015】
図1は,心電図測定用の電極の位置決め用具の例を示す概念図である。心電図測定用の電極の位置決め用具1であって,胸部電極位置に相当する複数の穴部3,5,7,9,11,13を有する,用具により解決できる。つまり,電極の位置を固定するのではなくて,電極を設置するための穴部をあけて置き,その穴部を目印として電極を設置することで,患者個人に合わせた電極の位置を迅速に決めることができる。この目的のため,それぞれの穴部は,用いる心電図の電極と同じかそれより大きい直径を有するものであることが好ましい。もっとも,穴部が電極よりも小さくても構わない。この場合,例えば,用具1を用いて,患者の体表に電極位置の目印をマーキング(描画)し,その目印を用いて,電極を設置できるようにしてもよい。心電図測定用の電極は,心電図を測定するために用いられる心電図測定装置の要素である。心電図測定装置は,公知である。そして,心電図測定用の電極も公知である。
【0016】
図2は,12誘導心電図の胸部電極位置を示す概念図である。21a及び21bは,鎖骨を示し,23は,右肋骨を示し,25及び27は左肋骨を示し,29は鎖骨中線を示す。33は,右第4助間に相当する第1電極部位を示し,35は左第4助間に相当する第2電極部位を示し,37は第2及び第4電極部位の中間に相当する第3電極部位を示し,39は左第5助間と鎖骨中線上に位置する第4電極部位を示し,41は左第5助間前腋窩線上に位置する第5電極部位を示し,43は左第5助間中腋窩線上に位置する第6電極部位を示す。これらの胸部電極位置に対応した位置に,複数の穴部3,5,7,9,11,13が設けられる。
【0017】
用具1は,鎖骨部に相当する部位に存在する鎖骨目印15a,15b及び乳首部に相当する部位に存在する乳首目印17a,17bのいずれか又は両方を更に有するものが好ましい。この目印があれば,患者に対して,用具を適切な位置に設置できることとなる。目印は,例えば,前身頃部19に印刷されたものである。
【0018】
特に鎖骨目印15a,15bは,標準的な鎖骨位置の描画と共に,メモリが描画されていることが好ましい。メモリが描画されていると,標準的な鎖骨位置に比べて対象患者の鎖骨位置がどの程度ずれているかを迅速に把握できるので,電極位置を微調整する際に,役立つこととなる。
【0019】
用具1は,透明な前身頃部19を有することが好ましい。前身頃が透明な部分を有していれば,用具1を患者に合わせた適切な位置に配置できることとなる。前身頃全体が透明であってもよいし,穴の周辺や,穴の位置を確認するために用いる鎖骨部分などが透明であってもよい。
【0020】
図3は,Tシャツ型の用具の例を示す概念図である。
図3に示されるように,前身頃部19は,複数の切り取り穴45を有することが好ましい。複数の切り取り穴45は,例えば,複数の穴部3,5,7,9,11,13を取り囲むように存在し,電極の大きさや電極の設置位置に応じて,切り取りを行って穴を拡大できるものが好ましい。
【0021】
図3に示されるように,用具1は,複数の穴部を連結する,切り取り部47を有してもよい。切り取り部47があれば,電極を設置し終わった後,切り取り部を用いて,用具1を取り外すことができる。これにより,長時間,用具1が患者に接触する事態を防止できる。例えば,用具1が透明な場合,用具がプラスチックにより製造されることがあり,用具1が長時間患者と密着していると,患者が汗をかいて不快になる。このため,切り取り部47を有することで,電極を患者に設置した状態で,用具を患者から容易に取り外すことができる。これは,例えば,用具1がTシャツ型のように,患者が着るタイプのものであるときに,特に有効である。
【0022】
用具1の例は,複数の穴部のそれぞれの直径が1mm以上15mm以下の円形状であり,複数の穴部の周辺には穴部の目印を有するものである。これは,穴部を取り囲むように,目印が存在していてもよい。穴が視認しにくい場合があるので,目印を有すると,電極を設置等するための穴部を容易かつ迅速に視認できる。例えば,複数の穴部は,それぞれに対応する胸部電極よりも小さく,それぞれの穴部を通じて体表にそれぞれに対応する胸部電極の目印を描画するために用いられるものであってもよい。穴が小さい場合,電極位置を正確に定めることができるという利点がある。穴部が対応する胸部電極より小さいとは,胸部電極が対応する穴部を通過できないこと,又は穴部の面積が対応する胸部電極の面積より小さいことを意味する。
【0023】
用具1の例は,複数の穴部のそれぞれの直径が,30mm以上60mm以下の円形状のものである。この例では,穴部を用いて電極位置をマーキングするように用いることができる。複数の穴部は,それぞれに対応する胸部電極よりも大きく,それぞれの穴部を通じて体表にそれぞれに対応する胸部電極を設置するために用いられるものであってもよい。穴部が胸部電極より大きい場合,この用具をあてがったままで心電図を取ることができるので利便性が高い。穴部が対応する胸部電極より大きいとは,胸部電極が対応する穴部を通過できること,又は穴部の面積が対応する胸部電極の面積より大きいことを意味する。
【0024】
図4は,エプロン型の用具の例を示す概念図である。用具の形状は,電極の位置をガイドできれば限定されるものではなく,
図1のようなTシャツ型であっても,
図4のようなエプロン型であっても,それ以外のタイプであっても構わない。また,患者の体躯に合わせて,XS,S,M,L,XL,男性用及び女性用といった複数種類の用具を準備しておき,患者に合あった用具を用いて,さらに電極位置を適宜調整してもよい。いずれにせよ,何もない状態で電極を設置する場合に比べて,迅速かつ正確に,電極を設置できることとなる。
【0025】
心電図測定用の電極の位置決め用具は,例えば,以下のように製造できる。上記の取り複数種類の用具の下地となるTシャツやエプロンを用意する。少なくとも前身頃全体又は前身頃のうち電極の位置,及び鎖骨を覆う領域を透明にする。各サイズに合わせ,標準的な電極位置を求めておき,標準的な電極位置に穴をあける。また,目印となる領域を印刷する。さらに,使用中又は使用後に必要な部分を切断できるように,切断用の線を設ける。なお,上記のような生地を作成しておいて,それをTシャツやエプロンのような用具の最終形態に加工してもよい。この用具は,例えば,心電図を測定する際に,患者に着用させておき,施術者が,穴を目安にして電極を設置する。このようにして,迅速かつ正確に,電極を設置できることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は,医療機器の分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0027】
1 心電図測定用の電極の位置決め用具
3,5,7,9,11,13 穴部
15a,15b 鎖骨目印
17a,17b 乳首目印
19 前身頃部
45 切り取り穴
47 切り取り部