IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サフラン・エアクラフト・エンジンズの特許一覧 ▶ サフランの特許一覧

特許7430647航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法
<>
  • 特許-航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法 図1
  • 特許-航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法 図2
  • 特許-航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法 図3
  • 特許-航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法 図4
  • 特許-航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法 図5
  • 特許-航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法 図6
  • 特許-航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】航空機のターボ機械用の金属ブレード要素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20240205BHJP
   F01D 5/14 20060101ALI20240205BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240205BHJP
   C23F 1/04 20060101ALI20240205BHJP
   B22C 9/04 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F01D5/14
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F01D25/00 X
C23F1/04
B22C9/04 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020556753
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 FR2019050948
(87)【国際公開番号】W WO2019202281
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】1853476
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】306047664
【氏名又は名称】サフラン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソワソン,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ブーケルマ,サイード
(72)【発明者】
【氏名】リソワスキー,ヤヌシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジメル,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】サブンジ,アマール
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0299990(US,A1)
【文献】特開2002-371863(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102817034(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 5/14
F01D 25/00
C23F 1/04
B22C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機タービンエンジン用の金属ブレード要素(1)を製造するための方法であって、このブレード要素は、ブレードの前縁(16)と後縁(18)との間に延びる正圧側面(12)および負圧側面(14)を含む少なくとも1つのブレード(2)を含み、後縁は厚さX1を有する必要があり、この方法は、以下のステップ:
a)ロストワックス鋳造によりブレード要素を製造するステップであって、後縁が(18)がステップa)の間に厚さX2を有する、ステップと、
b)ブレード要素を仕上げるステップであって、
ステップb)が、ステップa)によって直接得ることができない前記厚さX1を得るように、ブレードまたは各ブレードの少なくとも後縁を化学ミリングするステップを含み、厚さX1が厚さX2未満であることを特徴とする、ステップと、
を含み、
化学ミリングが、ブレード要素を10~300分間化学ミリング浴に浸漬することによって実行され、浴の温度が、20~70℃である、方法。
【請求項2】
厚さX1が、1mm未満、0.5mm以下、または0.2~0.45mmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学ミリングが、0.05~0.5mm、または0.05~0.15mmの表面の材料厚さを除去する、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
ブレード要素が、ニッケル、コバルト、またはクロムベースの金属合金で構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
材料の正常性を検査するステップ、最終寸法を検査するステップ、摩擦仕上げによる表面処理のステップ、から選択される少なくとも1つの後続のステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ブレード要素が、部分的に浴に浸漬され、ブレード要素が、浴と接触してミリングされないようにマスクされた領域を含み得る、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ブレード要素が、完全に浴に浸漬され、ブレード要素が、浴と接触してミリングされないようにマスクされた領域を含み得る、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
浴が、水ベースであり、25~300g/Lの濃度のHClを含み、さらに、浴は、以下の成分:
- 100~500g/Lの濃度のFeCl
- 10~40g/Lの濃度のHNO
- 100~200ml/Lの濃度のH
のうちの少なくとも1つをさらに含み得る、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)が、ブレード要素をエッチング浴に浸漬することによってブレード要素の少なくとも一部をエッチングする、前のステップを含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機タービンエンジン用の金属ブレード要素を製造するための一般的な分野に関するものであり、これらのブレード要素は、ステータまたはロータ要素であり得る。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンのブレード要素は、1つ以上のブレードで構成される。例えば、タービン移動ベーンなどのロータベーンは、ロータディスクの相補的な形状の凹部に取り付けられることを意図した根元に接続された単一のブレードを含む。例えば、タービンノズルは、内側のプラットフォームと外側のプラットフォームとの間に延びるいくつかのブレードで構成されている。
【0003】
ロストワックス鋳造によるブレード要素の製造は、航空分野でよく知られている手法である。そのような技術は、例えば、文献仏国特許出願公開第2985924号明細書に記載されている。念のため確認しておくと、ロストワックス鋳造は、型に注入することにより、目的のブレード要素のそれぞれのワックスモデルを作成することで構成される。これらのモデルを同じくワックス製の鋳造アームに組み立てると、それ自体がワックス金属ディスペンサに接続され、その結果、クラスタを形成してさまざまな物質に浸漬されて、そのクラスタの周りに実質的に均一な厚さのセラミックシェルを形成することができる。この方法は、ワックスを溶かし、金属ディスペンサに組み立てられた注入カップを介して溶融金属が注入されるセラミックに、正確なかたどりを残すことによって続行される。金属が冷えた後、シェルが破壊され、金属部分が分離されて仕上げられる。この技術は、寸法精度と非常に優れた表面外観の利点を提供する。
【0004】
しかしながら、この技術の難しさの1つは、緻密なプロファイル、特に緻密な後縁を得ることである。ブレードは空気力学的プロファイルを有し、タービンエンジン内のガスの前縁と後縁との間に延びる正圧側面および負圧側面を含む。ブレードの後縁は、ベーンの下流のガス流の空気力学的擾乱を制限するために、理想的には可能な限り薄い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】仏国特許出願公開第2985924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ロストワックス鋳造によって正確な寸法のブレード要素を得ることができたとしても、この技術では非常に小さな寸法を得ることができず、したがって、特に小さな寸法のブレード要素に対して十分に緻密な後縁を実現できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この問題に対する単純で効果的かつ経済的な解決策を提供する。
【0008】
本発明は、航空機タービンエンジン用の金属ブレード要素を製造するための方法を提供し、このブレード要素は、ブレードの前縁と後縁との間に延びる正圧側面および負圧側面を含む少なくとも1つのブレードを含み、後縁は厚さX1を有する必要があり、この方法は、以下のステップ:
a)ロストワックス鋳造によりブレード要素を製造するステップと、
b)ブレード要素を仕上げるステップであって、
ステップb)が、ステップa)によって直接得ることができない前記厚さX1を得るように、ブレードまたは各ブレードの少なくとも後縁を化学ミリングするステップを含むことを特徴とする、ステップと、
を含む。
【0009】
前述のように、ロストワックス鋳造により、正確な寸法のブレード要素を得ることができる。しかしながら、X1よりも大きいX2と記された最小材料厚さ寸法を有することができる。目標は、後縁が厚さX1のブレード要素、つまりロストワックス鋳造で直接得られるもの(厚さX2)よりも薄いブレード要素を製造することである。本発明によれば、これは、この後縁の化学ミリングによって可能になり、化学ミリングは、X2からX1に変わるのに十分な量の材料を表面上で除去することを可能にする。
【0010】
本出願では、「エッチング」と「化学ミリング」とは区別される。材料の正常性検査作業中に部品のエッチングが行われる。エッチングは、(グレインの接合部を除去することにより)部品の表面に材料のグレインを露出させ、これは部品の材料の正常性を判定するために確認される。この場合、ブレード要素の表面から材料、特に材料厚さを除去するために、化学ミリングが使用される。ミリングの目的は、所望の厚さの材料除去が得られるまで、材料グレイン間の材料だけでなく、グレイン自体も除去することである。したがって、化学ミリングのパラメータおよび条件は、所望の材料厚さを除去できるようなものである。
【0011】
本発明による方法は、以下の特徴および/またはステップのうちの1つ以上を含むことができ、それらは、互いに単独で、または互いに組み合わせて採用される。
-厚さX1は、1mm未満、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2~0.45mmである、
-厚さX1は、ブレード要素を横断する方向で測定される、
-化学ミリングは、0.05~0.5mm、より好ましくは0.05~0.15mmの表面の材料厚さを除去する、
-材料厚さは、グレインと材料の接合部とで構成される、
-ブレード要素は、ニッケル、コバルト、またはクロムベースの金属合金で構成される、
-この方法は、材料の正常性を検査するステップ、最終寸法を検査するステップ、摩擦仕上げによる表面処理のステップ、から選択される少なくとも1つの後続のステップを含む、
-化学ミリングは、ブレード要素を化学ミリング浴に浸漬することによって実行される、
-ブレード要素は部分的に浴に浸漬され、ブレード要素は、浴と接触してミリングされないようにマスクされた領域を含み得る、
-ブレード要素は完全に浴に浸漬され、ブレード要素は、浴と接触してミリングされないようにマスクされた領域を含み得る、
-ブレード要素は10~300分間浴に浸漬され、浴の温度は20~70℃である、
-浴は水ベースであり、25~300g/Lの濃度のHClを含み、浴はさらに、以下の成分のうちの少なくとも1つを含み得る:
・100~500g/Lの濃度のFeCl
・10~40g/Lの濃度のHNO
・100~200ml/Lの濃度のH
-ステップb)は、ブレード要素の少なくとも一部をエッチングする、前のステップを含む、
-エッチングは、ブレード要素をエッチング浴に浸漬することによって実行される、
-エッチング浴と化学ミリング浴は同一であり、エッチングと化学ミリングは、少なくともブレード要素の浴への浸漬時間によって互いに異なる。
【0012】
非限定的な例としてなされた以下の説明を読み、添付の図面を参照すると、本発明はよりよく理解され、本発明の他の詳細、特徴および利点がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】タービンエンジンのブレード要素の概略斜視図である。
図2】タービンエンジンのブレード要素のブレードの概略断面図である。
図3】ロストワックス鋳造によってブレード要素を製造する方法のステップを示すブロック図である。
図4】ブレード要素が完全に浸漬されている化学ミリング浴タンクの非常に概略的な斜視図であり、本発明による方法のステップを示す。
図5】ブレード要素が部分的に浸漬されている化学ミリング浴タンクの非常に概略的な斜視図であり、本発明による方法のステップの代替の実施形態を示す。
図6図3と同様の図であり、化学ミリングによる材料の除去を表す。
図7】本発明による製造方法のステップを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、例えば、航空機タービンエンジンのベーン、整流器、ノズル、可動ベーンなどであるブレード要素に適用される。
【0015】
図1は、タービンエンジンのタービンノズル1、より具体的には、環状でセクタ化され、したがってタービンエンジンの長手方向軸である軸の周りに周方向に端から端まで配置された、いくつかのセクタを含むこのノズルのセクタを示している。
【0016】
このセクタは、第1の端部4と第2の端部6との間に配置された複数のブレード2を含む。2つの端部4、6は、それぞれ、外輪および内輪の角度セクタを形成し、それぞれが、主ガス流ダクト10を区切るプラットフォーム8を含む。空気力学的機能部が取り付けられたプラットフォーム8に加えて、各端部はまた、このブレード要素をタービンエンジンモジュール、この場合はタービンモジュールに取り付けることを可能にする従来の構造を含む。
【0017】
各ブレード2は、図2に見られる空気力学的プロファイルを有し、それぞれダクト10内を流れるガスの上流または前縁とガスの下流または後縁である、縁16および18の間に延びる正圧側面12および負圧側面14を含む。最も薄い部分、すなわち最も小さい厚さ(厚さX)を備えるものは、ブレード2の後縁18におよびブレード2の後縁18に沿って位置する部分であることが分かる。厚さXは、ブレードを横断する方向で測定される。
【0018】
図2はまた、ここでは、ベーンの質量を軽くするために、したがってタービン全体の質量を軽くするように、および/または部品を冷却するためにエンジン内部へのガスの径方向の流れを可能にするように、ブレード2は、中空であり、その部品の中央にキャビティ22を含むことを示している。
【0019】
本発明は、ロストワックス鋳造のステップを含む製造方法によって、ノズルセクタ1、より一般的には任意のタービンエンジンブレード要素を製造することを目的とし、そのステップは図3に示されている。
【0020】
ロストワックス鋳造ステップは、例えばセラミック製のコアが樹脂射出成形型内に配置される予備サブステップE0を含む、いくつかのサブステップを含み得る。この型は、形成されるキャビティ22の形状に対応する形状を有する。ノズルセクタの場合のように、複数のブレードが同時に製造される場合、このノズルを製造するために複数のコアが同じ型に配置される。
【0021】
次に、型が閉じられ、サブステップE1の間にワックスが注入され、ワックスは、製造されるノズルセクタのワックスモデルを作成するために、特にコアをコーティングする。
【0022】
冷却および凝固後、ワックスモデルを離型するサブステップE2が実行される。次のサブステップE3は、ワックスモデルの周りにセラミックシェル型を作成することを含み、サブステップE4でそのセラミックシェル型の中に溶融金属が注がれる。
【0023】
ワックスは溶融金属の鋳造前または鋳造中に除去され、コアとシェル型との間に生じる凹部が溶融金属で満たされ、ノズルセクタを形成する一方で、コアの固体部分は、サブステップE5で、セラミックコアの除去後にキャビティになる。部品は、等軸鋳造または方向性凝固によって得ることができる。
【0024】
本発明による方法は、ブレード要素の少なくとも部分的な化学ミリングを含む、ブレード要素を仕上げる追加のステップを含む。化学ミリングは、ここでは、化学物質を使用して溶解によって材料を機械加工すること、つまり、所定の量の材料を除去することからなる。実際には、化学ミリングは、ブレード要素を適切な条件下で化学浴に浸漬して、表面の材料を除去し、少なくとも局所的にブレード要素を薄くするという所望の結果を得ることによって実行することができる。
【0025】
上記のように、ロストワックス鋳造は、正確な寸法のブレード要素の製造を可能にするが、例えば1mm未満、より具体的には0.5mm以下の非常に薄い厚さを可能にしない。ロストワックス鋳造によって得られるこの厚さの下限は、X2で示される。
【0026】
したがって、ロストワックス鋳造によって得られるブレードの後縁18の最小厚さはX2であることが理解される。厚さX2は、金属鋳造粗材の考慮された厚さに対応する。
【0027】
この厚さをX1で示される所望の値に減らすために、本発明は化学ミリングを使用する。したがって、ブレードの後縁は、材料を化学的に除去することによって、そのブレードの後縁の厚さをX2からX1に減らすように、ブレードの後縁は化学的にミリングされる。X1は、例えば、1mm未満、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2から0.45mmの間である。
【0028】
図4および図5は、ブレード要素が化学ミリング浴に浸漬される、この化学ミリングステップの実施形態の2つの例を示している。
【0029】
実際には、複数の部品を同時に加工する方がより効率的である。したがって、化学ミリング浴を含み且つ複数のブレード要素を同時に収容することができるタンク20を提供することが可能である。ノズル1などのブレード要素は、ふるい22、すなわち、多数の穴を備えた容器の底部に配置することができる。ふるい22およびブレード要素の両方がタンクの浴に完全に浸漬され、浴は、ふるい22の穴を通過することによってブレード要素と接触する。
【0030】
これにより、浴と接触しているブレード要素のすべての表面、したがって特に正圧側面12および負圧側面14、ならびにブレード2の前縁16および後縁18の化学ミリングが可能になる。局所的なミリングのみが必要な場合、特に厚さを減らすために前縁で、1つ以上のマスク24をブレード要素に使用することができる。これらのマスク24(複数)は、浴のブレード要素の表面(複数)を保護することを意図しており、したがって、それらを化学ミリングの対象にしないことを意図している。マスク24は、ここでは、点線および斜線を有する長方形によって概略的に表されている。
【0031】
図5は、ブレード要素がタンクの浴に部分的にのみ浸漬される代替の実施形態を示している。この場合、マスク24は、所望の局所的な化学ミリングを得るために、部品の形状上の理由で、浸漬されなければならない表面を保護することを除いて、必ずしも必要とされない。
【0032】
図6は、ブレード要素のブレードの表面で想定され得る材料除去Δを概略的に図示している。例えば、化学ミリングは、化学ミリングが実際に生じる領域において、0.05から0.5mmの間、好ましくは0.05から0.15mmの間の表面の材料厚さを除去する。
【0033】
図7は、本発明による方法の一実施形態のいくつかのステップを示している。
【0034】
最初のステップa)は、ロストワックス鋳造によってブレード要素を作成するステップである。次に続くステップ(複数)の中には、ブレード要素の仕上げステップ、特にブレード要素の最終寸法の仕上げステップがある。この仕上げステップb)は、ブレード要素の化学ミリングを含む。この化学ミリングの後または(好ましくは)前に、方法は、材料の正常性状態を検査するステップc)を含み得る。このステップは、材料グレインのマクロ組織検査、浸透探傷検査、放射線検査、目視検査などを含み得、そして上記のように、グレイン間接合部が化学溶解によって除去される、エッチングの予備サブステップを含み得る。エッチング浴は化学ミリング浴に似ているかもしれないが、浸漬時間は一般に、接合部のみの溶解(エッチングの場合)または接合部とグレインの溶解(化学ミリングの場合)のどちらを求めるかによって異なる。例えば、化学ミリング浴への浸漬時間は、エッチング浴への浸漬時間よりも少なくとも3倍長く、好ましくは少なくとも9倍長い。
【0035】
化学ミリングを実行するという事実は、ブレード要素の典型的な製造範囲を変更しない。エッチングと化学ミリングを組み合わせることで、製造範囲を最適化し、時間を節約し、その結果コストを削減することができる。したがって、従来のミリングのようにステップを増やす必要はない。
【0036】
化学ミリングは、ブレード要素の表面仕上げを改善するために、電解ミリング(ステップd))によって補完することができる。この追加のミリングステップは、例えば、硝酸、酢酸、硫酸およびリン酸のうちの1つ以上を含む電解浴にブレード要素を全体的または部分的に浸漬することからなり得る。
【0037】
化学または電解ミリングの後、この方法は、ステップe)最終寸法を検査するためのステップおよび/またはステップf)摩擦仕上げによる表面処理のためのステップを含み得る。方法がステップd)を含む場合には必ずしも必要ではないこの最後のステップは、ブレード要素の表面状態を改善することを可能にし、例えば、1から5μmの間、好ましくは1.6から3.5μmの間の粗さを得ることを可能にする。
【0038】
本発明は、特に、ニッケルベースの金属合金(R125、R77、INCO718、単結晶、DS200など)、クロムベース、またはコバルトベース(MARM509など)で作られたブレード要素の製造に適用されるが、これに限定されない。
【0039】
以下の表1から表3は、化学ミリングステップを実施するための化学浴の組成物の例を示している。各表の左側の列は、金属合金のいくつかの例を示しており、続く列は、一方で、ブレード要素を浴に浸漬する時間(分単位の時間)と浴の温度(温度)のパラメータを示しており、他方で、この浴の化学成分を示している。
【0040】
各浴は水ベースであり、25~300g/Lの濃度の塩酸(HCl)を含む。さらに、浴は、以下の成分:
- 100~500g/Lの濃度のFeCI(塩化鉄)、
- 10~40g/Lの濃度のHNO(硝酸)、
- 100~200ml/Lの濃度のH(過酸化水素)、
のうちの少なくとも1つをさらに含み得る。
【0041】
浴の残りの部分は、1Lに相当する十分な量の水である。
【0042】
より具体的には、表1は、HClが本質的にFeClと関連している浴組成物の例を含む。表2は、HClが主にFeClおよびHNOと関連している浴組成物の例を含む。表3は、HClが主にHと関連している浴組成物の例を含む。他の変形形態によれば、浴は、HCLとHNOの組み合わせ、またはHF-HNOフッ硝酸のみを含むことができる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
浴への浸漬時間は10~300分であり、より具体的には、表1による浴の場合は10~150分であり、表2による浴の場合は1~20分であり、表3による浴の場合は10~300分であることが分かる。
【0047】
浴の温度は20~70℃、より具体的には表1による浴の場合は30~70℃、表2および表3による浴の場合は20~60℃であることが観察された。
【0048】
HClの量は、浴の他の成分の存在および量、ならびに温度および浸漬時間によって変化することが分かる。
【0049】
材料の除去は、例えば、材料、使用される化学物質、浴の経年変化、化学ミリング浴の濃度、浴の温度、浴の攪拌、浴内の加工対象物の位置などに依存する溶解曲線によって特徴づけられる。これらのパラメータが固定されると、材料の除去は、浸漬回数および浴中での処理時間に比例し得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7