(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】二次電池の集電体およびその製造方法、ならびに二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20240205BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20240205BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01G11/70
H01M4/64 A
(21)【出願番号】P 2021081708
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】堀川 大介
(72)【発明者】
【氏名】進藤 洋平
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112397722(CN,A)
【文献】特開2019-033066(JP,A)
【文献】特開2020-126803(JP,A)
【文献】特開2012-155974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/66
H01G 11/70
H01M 4/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートと、2枚の金属箔と、を用意する工程と、
前記樹脂シートを、前記2枚の金属箔で挟み込み、かつ前記2枚の金属箔の端部において2枚の金属箔間に金属粒子を配置する工程と、
前記金属粒子が配置された部分において、前記2枚の金属箔の抵抗溶接を行う工程と、を包含する、二次電池の集電体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂シートが、前記金属粒子を含有し、
前記金属粒子を配置する工程において、前記樹脂シートを前記2枚の金属箔で挟み込むことによって、前記金属粒子の配置が行われる、請求項
1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の集電体およびその製造方法に関する。本発明はまた、当該二次電池の集電体を用いた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
二次電池には、一般的に、活物質を含有する活物質層が、集電体上に設けられた構成の電極が用いられている。活物質は、電荷担体となるイオンを吸蔵した際に体積膨張を起こす。そのため、充放電に伴う活物質の体積変化によって、活物質層と集電体との剥離や電極の変形等が起こり、これにより二次電池のサイクル特性が低下し得ることが知られている。
【0004】
この活物質の体積変化による電極の変形を抑制するために、特許文献1では、粗面化した面を有する金属箔を積層し、その金属箔間の隙間に樹脂を配置したリチウムイオン二次電池用積層金属箔が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、上記従来技術においては、サイクル特性に改善の余地があることを見出した。また、二次電池においては、内部短絡した際の温度上昇が抑制されていることが望まれている。上記従来技術においては、内部短絡した際の温度上昇の抑制(言い換えると、内部短絡耐性)に関し、改善の余地があることを見出した。
【0007】
そこで本発明は、二次電池に優れたサイクル特性と内部短絡耐性とを付与できる集電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される二次電池の集電体は、樹脂層と、前記樹脂層の一方の主面を覆う第1金属層と、前記樹脂層の他方の主面を覆う第2金属層と、を備える。前記第1金属層および前記第2金属層はそれぞれ、前記樹脂層の主面の外側にはみ出している。前記二次電池の集電体は、前記第1金属層と、前記樹脂層と、前記第2金属層と、が積層された樹脂積層部、および前記樹脂積層部の外側に、前記第1金属層と前記第2金属層とが重なり合った金属積層部を有する。前記金属積層部の厚みは、前記樹脂積層部の厚みが最大の部分における第1金属層および第2金属層の合計厚みよりも大きい。このような構成によれば、二次電池に優れたサイクル特性と内部短絡耐性とを付与できる集電体が提供される。
【0009】
ここに開示される二次電池の集電体の好ましい一態様では、前記樹脂層は、前記第1金属層および前記第2金属層の少なくともいずれかを構成する金属と、同じ金属の粒子を含有する。このような構成によれば、二次電池に高い低温出力を付与することができる。
【0010】
ここに開示される二次電池の集電体の好ましい一態様では、前記樹脂積層部の厚みが最大の部分における第1金属層および第2金属層の合計厚みが、3μm以下である。このような構成によれば、二次電池の内部短絡時の発熱をより抑制することができる
【0011】
ここに開示される二次電池の集電体は、好適には、樹脂シートと、2枚の金属箔と、を用意する工程と、前記樹脂シートを、前記2枚の金属箔で挟み込み、かつ前記2枚の金属箔の端部において2枚の金属箔間に金属粒子を配置する工程と、前記金属粒子が配置された部分において、前記2枚の金属箔の抵抗溶接を行う工程と、を包含する方法によって製造することができる。
【0012】
前記製造方法においては、前記樹脂シートが前記金属粒子を含有し、前記金属粒子を配置する工程において、前記樹脂シートを前記2枚の金属箔で挟み込むことによって、前記金属粒子の配置を行ってよい。
【0013】
別の側面から、ここに開示される二次電池は、上記の集電体を備える電極と、電解質と、を備える。このような構成によれば、優れたサイクル特性と内部短絡耐性とを有する二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の集電体を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る二次電池の集電体を用いた電極を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る集電体を用いたリチウムイオン二次電池の内部構造を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図3のリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0016】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいい、いわゆる蓄電池、および電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0017】
図1に、本実施形態に係る二次電池の集電体の一例の断面を模式的に示す。
図1に示されるように、本実施形態に係る二次電池の集電体10は、樹脂層13と、第1金属層11と、第2金属層12と、を備える。
【0018】
樹脂層13は、二次電池の内部短絡時の発熱抑制に寄与する。具体的には、樹脂層13は、二次電池が内部短絡により発熱した際に、溶融、熱分解等によって体積変化を起こし、第1金属層11および第2金属層12を破断させ、これにより電流を遮断することができる。集電体として一般的に用いられている、銅箔の溶断温度は1100℃程度であり、アルミニウム箔の溶断温度は660℃程度である。樹脂が体積変化を起こす温度は660℃よりも低いために、樹脂層13の使用により、一般的な集電体であるアルミニウム箔および銅箔よりもはるかに低い温度で集電体10を溶断させる(すなわち、電流を遮断する)ことができ、二次電池の内部短絡時の発熱を高度に抑制することができる。
【0019】
樹脂層13を構成する樹脂は、第1金属層11および第2金属層12を破断させたい温度に応じて、適切な融点または熱分解温度を有するものを適宜選択すればよい。樹脂層13としては、溶融によって体積変化を起こして第1金属層11および第2金属層12を破断するものが好ましい。よって、樹脂層13を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。樹脂層13を構成する樹脂の融点としては、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。また、樹脂層13を構成する樹脂の融点は、80℃以上が好ましい。
【0020】
樹脂層13を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)が特に好ましい。ポリエチレンは、上述の電流遮断を発現するために好適な融点を有している(例、低密度ポリエチレン:95℃~130℃、高密度ポリエチレン:120℃~140℃)。また、ポリエチレンは、シャットダウン機能(二次電池の内部短絡時に発熱が起こった際に溶融してセパレータの微細孔を閉塞し、イオンの透過を防止して電流を遮断する機能)を有することから、一般的に二次電池のセパレータに用いられている。樹脂層13を構成する樹脂がポリエチレンである場合には、セパレータのシャットダウン機能と、集電体10の第1金属層11および第2金属層12の破断による電流遮断とを同時に発動させることができ、二次電池の内部短絡時の温度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0021】
樹脂層13は、金属粒子を含有していてもよい。金属粒子は、第1金属層11および第2金属層12の少なくともいずれかを構成する金属と、同じ金属の粒子であることが好ましい。樹脂層13が金属粒子を含有する場合、樹脂層13の電子伝導度が高くなり、その結果、低温抵抗が小さくなって二次電池に高い低温出力を付与することができる。
【0022】
樹脂層13の厚さは、上記の破断が可能な限り特に限定されず、樹脂の種類、集電体の設計、二次電池の設計等に応じて適宜設定することができる。樹脂層13の厚さは、好ましくは5μm以上60μm以下である。
【0023】
第1金属層11および第2金属層12を構成する金属としては、公知の二次電池の集電体に用いられている金属と同様であってよい。当該金属の具体的な例としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅合金、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等が挙げられる。集電体10が正極集電体である場合、その構成金属としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。集電体10が負極集電体である場合、その構成金属としては、銅または銅合金が好ましい。第1金属層11を構成する金属および第2金属層12を構成する金属は、同じであっても異なっていてもよく、同じであることが好ましい。
【0024】
第1金属層11の主面(すなわち、最も面積の大きい面)の寸法は、樹脂層13の主面の寸法よりも大きい。第1金属層11は、樹脂層13の一方の主面(
図1では、樹脂層13の上側の主面)を覆っており、また、樹脂層13の当該主面の外側にはみ出している。同様に、第2金属層12の主面の寸法は、樹脂層13の主面の寸法よりも大きい。第2金属層12は、樹脂層13の他方の主面(
図1では、樹脂層13の下側の主面)を覆っており、また、樹脂層13の当該主面の外側にはみ出している。第1金属層11および第2金属層12は、これらがはみ出した部分において、直接重なり合っている。
【0025】
図1に示すように、集電体10は、第1金属層11と、樹脂層13と、第2金属層12と、が積層された樹脂積層部10Aを有している。また、樹脂積層部10Aの両外側に、第1金属層と、第2金属層と、が重なり合った金属積層部10Bを有する。
【0026】
金属積層部10Bにおいては、第1金属層11および第2金属層12は、接合されていても、接合されていなくてもよく、接合されていることが好ましい。第1金属層11および第2金属層12の接合方法としては、特に限定されないが、例えば、溶接が挙げられる。当該溶接は、抵抗溶接、レーザー溶接、超音波溶接等であってよく、好適には抵抗溶接である。
【0027】
図示例では、樹脂積層部10Aは、一定厚みの平坦な中央部と、厚みが減少していく端部とを有している。しかしながら、樹脂積層部10Aの形状はこれに限定されない。例えば、樹脂積層部10Aは、断面楕円状であってもよい。図示例では、樹脂積層部10Aの平坦な部分が、樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分となっている。なお、樹脂積層部10Aが、断面楕円状である場合には、当該楕円の短軸部分が、樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分となる。
【0028】
本実施形態においては、金属積層部10Bの厚みが、樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分における第1金属層11および第2金属層12の合計厚みよりも大きい。ここで、一方の金属積層部10Bの厚みのみ、当該合計厚みよりも大きくてよいが、両方の金属積層部10Bの厚みが、当該合計厚みよりも大きいことが好ましい。
【0029】
金属箔間の隙間に樹脂を配置した従来技術においては、金属積層部の厚みは考慮されておらず、よって金属積層部の厚みは、樹脂積層部における2枚の金属箔の合計厚みと同じであるか、または、2枚の金属箔を抵抗溶接等によって接合する場合には、接合操作によって、金属積層部の厚みは薄くなる。このため、従来技術においては、二次電池に充放電を繰り返した際の活物質の膨張/収縮によって金属積層部が応力を受け、この応力によって金属積層部が破断し、容量の低下が起きる。この金属積層部は、集電体において特に応力を受けやすい部分である。
【0030】
これに対し、本実施形態では、金属積層部10Bの厚みを、樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分における第1金属層11および第2金属層12の合計厚みよりも大きくすることによって、活物質の体積変化によって応力を受け易い金属積層部10Bの強度を高めている。その結果、次電池に充放電を繰り返した際の上記の金属積層部の破断を抑制することができ、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。また、本実施形態によれば、集電体10が腐食され難くなり、これも二次電池のサイクル特性の向上に寄与すると考えられる。
【0031】
金属積層部10Bの厚みは、樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分における第1金属層11および第2金属層12の合計厚みよりも大きい限り特に限定されない。金属積層部10Bの厚みは、例えば、0.5μm以上であり、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは4.5μm以上であり、さらに好ましくは5.0μm以上である。一方、金属積層部10Bの厚みは、例えば、15μm以下であり、好ましくは12μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは7.5μm以下である。
【0032】
樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分における第1金属層11および第2金属層12の合計厚みは、例えば、8μm以下であり、好ましくは6μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。当該合計厚みが3μm以下である場合には、二次電池の内部短絡時の発熱をより抑制することができる。当該合計厚みは、好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1.0μm以上である。
【0033】
金属積層部10Bの厚みを、樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分における第1金属層11および第2金属層12の合計厚みよりも大きくする方法は、特に限定されない。部分的に厚みの異なる金属箔を、第1金属層11および第2金属層12に用いる方法や、集電体の製造時に、2枚の金属が重なり合った部分に金属粒子を配置し、金属粒子の量によって金属積層部10Bの厚みを調製する方法が挙げられる。
【0034】
樹脂積層部10Aの厚みが最大の部分における第1金属層11および第2金属層12の合計厚みに対する金属積層部10Bの厚みの比は特に限定されない。当該比は、例えば、1.1以上であり、好ましくは2以上である。また、当該比は、例えば10以下である。
【0035】
本実施形態に係る集電体10は、好適には、次の方法により製造することができる。以下、当該製造方法について説明するが、本実施形態に係る集電体10は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
【0036】
当該製造方法は、樹脂シートと、2枚の金属箔と、を用意する工程(用意工程)と、当該樹脂シートを、当該2枚の金属箔で挟み込み、かつ当該2枚の金属箔の端部において2枚の金属箔間に金属粒子を配置する工程(金属粒子配置工程)と、当該金属粒子が配置された部分において、当該2枚の金属箔の抵抗溶接を行う工程(抵抗溶接工程)と、を包含する。
【0037】
樹脂シートは、上記の樹脂層13に対応し、2枚の金属箔が、上記の第1金属層11および第2金属層12に対応する。以下、当該製造方法の典型的な2つの実施形態について説明する。
【0038】
〔製造方法の第1実施形態〕
第1実施形態では、用意工程において、樹脂シートと、2枚の金属箔を用意する。このとき、2枚の金属箔として、金属粒子配置工程を実施できるように、少なくとも幅方向(すなわち、金属箔の主面の短辺方向)の寸法が、樹脂シートの幅方向の寸法よりも大きい金属箔を用意する。
【0039】
金属粒子配置工程においては、樹脂シートを2枚の金属箔で挟み込む。この挟み込みを、樹脂シートの幅方向(すなわち、樹脂シートの主面の短辺方向)の外側において2枚の金属箔がはみ出すように行う。このようにして、2枚の金属箔の端部において、金属箔同士が重なり合った積層体が得られる。
【0040】
ここで、金属箔と樹脂シートとを密着させるために、積層体に対し、ホットプレス処理を行うことが好ましい。
【0041】
積層体の、金属箔同士が重なり合った部分に、金属粒子を配置する。このとき、金属粒子と樹脂成分とを含有するペーストを使用すると、金属粒子の配置が容易である。具体的には、当該ペーストを金属箔の間(少なくとも一方の金属箔の上)に塗布することにより、容易に金属粒子を配置することができる。
【0042】
金属粒子を構成する金属は、特に限定されないが、金属箔を構成する金属と同じ金属であることが好ましい。ペーストの樹脂成分としては、特に限定されないが、二次電池の電極の活物質層のバインダとして用いられるものを好適に用いることができ、その例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
【0043】
次に、抵抗溶接工程を行う。抵抗溶接工程は、金属箔同士を接合する抵抗溶接の公知方法に従って行うことができ、金属粒子が配置された部分において溶接を行う。なお、溶接後、ペーストの樹脂成分の一部が溶接部に残り得る。
【0044】
このようにして、二次電池の集電体を得ることができる。金属箔同士が重ね合わされた部分においては、金属粒子が添加されることによって、2枚の金属箔の厚みよりも、その厚みを大きくすることができる。この厚みは、金属粒子の添加量によって調整することも可能である。
【0045】
〔製造方法の第2実施形態〕
第2実施形態では、用意工程において、金属粒子を含有する樹脂シートと、2枚の金属箔を用意する。第2実施形態においては、2枚の金属箔は、樹脂シートと同じ寸法であってよい。樹脂シートに含まれる金属粒子は、金属箔を構成する金属と同じ金属の粒子であることが好ましい。
【0046】
金属粒子配置工程においては、樹脂シートを2枚の金属箔で挟み込む。これにより、2枚の金属箔の端部において2枚の金属箔間に、樹脂シートに含有された金属粒子が配置される。ここで、金属箔と樹脂シートとを密着させるために、積層体に対し、ホットプレス処理を行うことが好ましい。
【0047】
次に、抵抗溶接工程を行う。抵抗溶接工程は、金属箔同士を接合する抵抗溶接の公知方法に従って行うことができ、積層体の端部において溶接を行う。なお、溶接後、ペーストの樹脂シートの樹脂成分の一部が溶接部に残り得る。
【0048】
このようにして、二次電池の集電体を得ることができる。金属箔同士が重ね合わされた部分においては、金属粒子が添加されることによって、2枚の金属箔の厚みよりも、その厚みを大きくすることができる。この厚みは、金属粒子の添加量によって調整することも可能である。
【0049】
本実施形態に係る集電体10によれば、二次電池に優れたサイクル特性と内部短絡耐性とを付与することができる。また、本実施形態によれば、集電体10の金属積層部10Bの強度が高いため、二次電池製造時における集電体10と集電端子類との接合の際の集電体10の破断を抑制することができる。また、本実施形態によれば、二次電池使用時における集電体10の破断を抑制することができる。
【0050】
本実施形態に係る集電体10は、公知方法に従い、二次電池(特に、二次電池の電極の集電体)に用いることができる。集電体10は、特に、二次電池の電極の集電体として用いることができる。
【0051】
図2に、集電体10を用いた電極80を模式的に示す。
図2に示す例では、電極80においては、集電体10の両面上に、活物質層84が形成されている。しかしながら、集電体10の片面上のみに、活物質層84が形成されていてもよい。
図2に示す例のように、活物質層84は、樹脂積層部10A上に形成されていることが好ましい。
【0052】
活物質層84が、正極活物質層である場合、正極活物質層は、正極活物質を含有する。正極活物質としては、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等)、リチウムニッケル複合酸化物(例、LiNiO2等)、リチウムコバルト複合酸化物(例、LiCoO2等)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(例、LiNi0.5Mn1.5O4等)などのリチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。正極活物質層は、導電材、バインダ等をさらに含み得る。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等のカーボンブラックやその他(グラファイト等)の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用し得る。
【0053】
活物質層84が、負極活物質層である場合、負極活物質層は、負極活物質を含有する。負極活物質としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素系負極活物質;Si、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のSi系負極活物質;Sn、スズ酸化物、スズ窒化物、スズ含有合金等のSn系負極活物質が挙げられる。負極活物質層は、バインダ、増粘剤等をさらに含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0054】
活物質層84の厚みは、特に限定されず、例えば20μm~300μmである。
【0055】
本実施形態に係る集電体10を備える二次電池は、充放電を繰り返した際の容量劣化が抑制されている。よって当該二次電池はサイクル特性に優れる。また、当該二次電池は、内部短絡(特に、電極体に金属部材が貫通するような甚大な内部短絡)が起きた際の発熱が抑制されている。よって、当該二次電池は、内部短絡耐性に優れる。
【0056】
そこで、別の側面から、ここに開示される二次電池は、上記の二次電池の集電体を備える電極と、電解質と、を備える。そこで以下、当該二次電池を、リチウムイオン二次電池100を例として説明する。しかしながら、ここに開示される二次電池は、以下説明するリチウムイオン二次電池100に限定されるものではない。
【0057】
図3に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解質(図示せず)とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には、外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。正負極端子42,44はそれぞれ正負極集電板42a,44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質には、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。
【0058】
捲回電極体20は、
図3および
図4に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。正極活物質層非形成部分52a(すなわち、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した部分)および負極活物質層非形成部分62a(すなわち、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した部分)は、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0059】
正極シート50および負極シート60の少なくとも一方には、上記の電極80が用いられる。よって、正極シート50の正極集電体52、および負極シート60の負極集電体62の少なくとも一方に、上記の集電体10が用いられる。
【0060】
上記の電極80が正極シート50および負極シート60のいずれかのみに用いられる場合、電極80を用いていない方の電極の構成は、従来のリチウムイオン二次電池と同様であってよい。電極80を用いていない電極が正極50の場合、正極集電体52は、例えば、アルミニウム箔等であってよい。また、電極80を用いていない電極が負極60の場合、負極集電体62は、例えば、銅箔等であってよい。電極80を用いていない正極50および負極60において、正極活物質層54および負極活物質層64については、上記の活物質層84と同様であってよい。
【0061】
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種微多孔質シートを用いることができ、その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70は、多孔質PE層を含むことが好ましい。セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0062】
非水電解液は従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用可能であり、典型的には有機溶媒(非水溶媒)中に、支持塩を含有させたものを用いることができる。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解液に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。具体例として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等が例示される。このような非水溶媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4等のリチウム塩(好ましくはLiPF6)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0063】
なお、上記非水電解液は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、例えば、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;ホウ素原子および/またはリン原子を含むオキサラト錯体化合物、ビニレンカーボネート(VC)等の被膜形成剤;分散剤;増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
【0064】
リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0065】
なお、一例として扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明した。しかしながら、リチウムイオン二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、リチウムイオン二次電池は、円筒形リチウムイオン二次電池、ラミネート型リチウムイオン電池等として構成することもできる。また、公知方法に従い、非水電解液の代わりに固体電解質を用いた全固体リチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、公知方法に従い、上記の集電体を用いて、リチウムイオン二次電池以外の二次電池を構成することもできる。
【0066】
以下、本発明に関する実施例を詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0067】
実施例1~8
ポリエチレン製の厚み20μmの樹脂シートを準備した。また、この樹脂シートよりも寸法が大きい2枚の銅箔を用意した。樹脂シートの縁から銅箔の端部がはみ出るように、樹脂シートを2枚の銅箔で挟み込み、これをホットプレスすることにより、樹脂シートと銅箔とを密着させた。樹脂シートの縁から外側にはみ出た2枚の銅箔の端部の間に、銅粒子とポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを混合したペーストを塗布し、再び2枚の銅箔の端部を重ね合わせた。このペーストが塗布された2枚の銅箔の端部を抵抗溶接して、実施例1の集電体を得た。
【0068】
実施例2~8
金属積層部の厚みを変更すべく、銅粒子とPVDFとを混合したペーストの塗布厚みを1μm~10μmの間で変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8の集電体を得た。
【0069】
実施例9
銅粒子を含有する樹脂シートを準備した。また、この樹脂シートと同じ寸法の2枚の銅箔を用意した。樹脂シートを2枚の銅箔で挟み込み、これをホットプレスすることにより、樹脂シートと銅箔とを密着させた。銅箔の端部を抵抗溶接して、実施例9の集電体を得た。
【0070】
比較例1
市販の銅箔をそのまま、比較例1の集電体とした。
【0071】
比較例2
樹脂シートの縁から外側にはみ出た銅箔の間に、銅粒子とPVDFとを混合したペーストを塗布しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2の集電体とした。
【0072】
実施例1~9および比較例2で得られた集電体について、樹脂積層部の厚みが最大の部分における2枚の金属箔(2つの金属層)の合計厚み、および金属積層部の厚みを表1に示す。
【0073】
〔評価用リチウムイオン二次電池の作製〕
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(LNCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、LNCM:AB:PVdF=88:9:3の質量比で、プラネタリーミキサーを用いてN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、正極合材ペーストを調製した。このとき、正極合材ペーストの固形分濃度が56質量%となるようにした。この正極合材ペーストを、ダイコータを用いて長尺状のアルミニウム箔の両面に帯状に塗布して乾燥した後、プレスすることにより正極シートを作製した。
【0074】
シリコン酸化物の粉末と、黒鉛とを混合した負極活物質を用意した。この負極活物質と、結着剤としてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、活物質:SBR:CMC=84:8:8の質量比で、プラネタリーミキサーを用いてイオン交換水と混合し、負極合材ペーストを調製した。このとき、負極合材ペーストの固形分濃度が66質量%となるようにした。この負極合材ペーストを、ダイコータを用いて各実施例および各比較例の集電体の両面に帯状に塗布して乾燥した後、プレスすることにより負極シートを作製した。
【0075】
また、セパレータとして、PP/PE/PPの三層構造の多孔質ポリオレフィンシートにHRLが設けられたものを用意した。上記で作製した正極シートと、負極シートと、2枚の上記用意したセパレータシートとを積層して電極体を作製した。
【0076】
次に、電極体に正極端子および負極端子を接続し、電池ケースに収容した。続いて、電池ケースに非水電解液を注入し、電池ケースを気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:EMC=1:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させ、さらにビニレンカーボネートを2質量%の濃度で溶解させたものを用いた。このようにして、評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0077】
得られた各評価用リチウムイオン二次電池に対して、25℃の温度環境下で活性化処理として1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。
【0078】
<集電体の強度測定>
各実施例および各比較例の集電体を、引張試験機の試験板に固定した。集電体の先端に引張試験機のアタッチメントを取り付け、集電体が破断するまで試験板に対して180°方向に集電体に引張荷重を印加して、引張強度を測定した。比較例1の集電体の引張強度を1とした場合の、各実施例およびその他の比較例の集電体の引張強度の比を求めた。結果を表1に示す。
【0079】
<サイクル特性評価>
各評価用リチウムイオン二次電池の活性化処理の放電の際の容量を測定し、これを初期容量とした。活性化処理を施した各評価用リチウムイオン二次電池を25℃の温度環境下に置き、1Cで4.2Vまで定電流充電および1Cで3.3Vまで定電流放電を1サイクルとする充放電を500サイクル繰り返した。500サイクル後の放電容量を、初期容量と同様の方法で求めた。サイクル特性の指標として、(充放電500サイクル後の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
【0080】
<内部短絡耐性評価>
各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/10Cになるまで定電圧充電を行った。25℃の温度環境下で、各評価用リチウムイオン二次電池の電池ケースに熱電対を取り付けた。各評価用リチウムイオン二次電池の中央付近に、直径約3mmの鉄製の釘を10mm/秒の速度で差し込んで貫通させ、これにより内部短絡させた。熱電対によって電池の外表面温度を測定し、最高到達温度を求めた。各評価用リチウムイオン二次電池の内部短絡耐性を、以下の基準で評価した。
A:最高到達温度が150℃未満
B:最高到達温度が150℃以上200℃未満
C:最高到達温度が200℃以上250℃未満
D:最高到達温度が250℃以上300℃未満
E:最高到達温度が300℃以上
【0081】
<低温抵抗評価>
活性化した比較例1、実施例3および9の評価用リチウムイオン二次電池を、3.70Vに調製した後、-5℃の環境下に置いた。この各評価用リチウムイオン二次電池に対し、3Cの電流値で25秒間の放電を行った。このときの電圧変化量ΔVを取得し、電流値とΔVを用いて電池抵抗を算出した。比較例1の評価用リチウムイオン二次電池の低温抵抗を1とした場合の、実施例3および9の評価用リチウムイオン二次電池の抵抗の比を求めた。結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
各実施例と各比較例との比較より、金属積層部の厚みを、樹脂積層部の厚みが最大の部分における第1金属層および第2金属層の合計厚みよりも大きくすることにより、容量劣化を抑制することができ、かつ内部短絡時の発熱を高度に抑制できることがわかる。また、実施例3~8の比較より、樹脂積層部の第1金属層および第2金属層の合計厚みが3μm以下の場合に、内部短絡時の発熱をより高度に抑制できることがわかる。また、実施例3および9の比較より、樹脂層に金属粒子を含ませることにより、低温抵抗特性が向上することがわかる。
【0084】
以上のことから、ここに開示される二次電池の集電体によれば、二次電池に優れたサイクル特性と内部短絡耐性とを付与できることがわかる。
【0085】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0086】
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウムイオン二次電池