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特許7430705発泡体用のブレンド、それから製造された発泡体およびそれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】発泡体用のブレンド、それから製造された発泡体およびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240205BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240205BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240205BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20240205BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C08L23/08
C08L23/26
C08L33/08
C08L53/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021510164
(86)(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2018103480
(87)【国際公開番号】W WO2020042140
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ハイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジンリャン
(72)【発明者】
【氏名】フェン、シャンシャン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、リチャード ティエンファ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-145258(JP,A)
【文献】国際公開第2018/058422(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/121069(WO,A1)
【文献】特開2006-008777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B29C 44/00-44/60、67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性組成物であって、
エチレンおよびα-オレフィンを含むオレフィンコポリマーであって、オレフィンブロックコポリマーであり、前記発泡性組成物の総重量に基づいて、60~90重量%の量で前記発泡性組成物中に存在する、前記オレフィンコポリマーと、
中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーであって、前記発泡性組成物中の樹脂の総重量に基づいて、5~20重量%の量で前記発泡性組成物中に存在する、前記カルボキシル化オレフィンコポリマーと、
架橋剤と、
発泡剤と、
酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、またはそれらの組み合わせを含む活性化剤と、を含み、前記中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーに対する前記活性化剤の重量比が0.4より大きく、0.8未満である、発泡性組成物。
【請求項2】
前記α-オレフィンが、オクテンである、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル化オレフィンコポリマーが、カルボン酸を含み、前記カルボン酸が、アクリル酸またはメタクリル酸である、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項4】
前記架橋剤が、過酸化物であり、前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドである、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項5】
前記発泡性組成物から製造された発泡体が、0.15~0.20g/ccの密度、ASTM D2240に従って測定したときの40~60のアスカーC硬度、ASTM D3574に従って測定したときの2.4N/mmを超えるスプリット引裂きを有する、請求項1に記載の発泡性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の発泡体組成物から製造された物品。
【請求項7】
前記物品が、履物の靴底である、請求項に記載の物品。
【請求項8】
発泡性組成物を製造する方法であって、
エチレンおよびα-オレフィンを含むオレフィンコポリマーであって、オレフィンブロックコポリマーであり、前記発泡性組成物の総重量に基づいて、60~90重量%の量で前記発泡性組成物中に存在する、前記オレフィンコポリマーと、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーであって、前記発泡性組成物中の樹脂の総重量に基づいて、5~20重量%の量で前記発泡性組成物中に存在する、前記カルボキシル化オレフィンコポリマーと、架橋剤と、発泡剤と、発泡性組成物を形成するための活性化剤であって、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、またはそれらの組み合わせを含む活性化剤と、を一緒にブレンドすることと、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーに対する活性化剤の重量比が0.4より大きく、0.8未満であり
前記発泡性組成物を加熱して前記発泡剤および架橋剤を活性化し、架橋発泡体を形成することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記発泡性組成物を成形することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、発泡体用のブレンド、それから製造された発泡体、およびそれを含む物品に関する。
【0002】
ポリマー発泡体は、断熱、遮音、緩衝、フィルタ、振動および衝撃の減衰などとして、様々な異なる用途においてしばしば使用される。このようなポリマー発泡体を使用する用途は、電子デバイス、食品包装材料、衣類材料、建材、自動車および家電製品の内外部品、履物などを含む。
【0003】
多くの市販の発泡体の中で、ポリオレフィン発泡体およびポリエチレンビニル/アセテート発泡体は、緩衝作用および可撓性等の特性が望ましい履物においてしばしば使用される。ポリオレフィン発泡体は、ポリ(エチレン/ビニルアセテート)(EVA)発泡体と比較して、高温でより低い圧縮永久歪みを有する。この差は、多くの場合、他の要因の中で、ポリオレフィン発泡体の融点および硬化の程度に起因する。
【0004】
したがって、ポリ(エチレン/ビニルアセテート)発泡体と比較して、より良好な圧縮永久歪み抵抗を示すポリオレフィン発泡体を製造することが望ましく、これらの発泡体を使用する製品は、ポリ(エチレン/ビニルアセテート)発泡体を使用する製品と比較して優れた特性を有することになる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示されるのは、エチレンおよびα-オレフィンを含むオレフィンコポリマーと、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーと、架橋剤と、発泡剤と、および活性化剤と、を含む、発泡性組成物であり、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーに対する活性化剤の重量比が0.3より大きい。
【0006】
同様に本明細書に開示されるのは、エチレンおよびα-オレフィンを含むオレフィンコポリマーと、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーと、架橋剤と、発泡剤と、発泡体を形成するための活性化剤と、を一緒にブレンドすることと、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーに対する活性化剤の重量比が0.3より大きく、発泡性組成物を加熱して発泡剤および架橋剤を活性化し、架橋発泡体を形成することと、を含む発泡性組成物を製造する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】オレフィンブロックコポリマーの融点/密度の関係を示す。
図2】同じ架橋剤レベルでのE-MAAコポリマーがある場合(IE-1およびIE-4)またはない場合(CE-3)のOBC系のMDR(移動ダイレオメータ)硬化トルクを示すグラフ。
図3】同じ架橋剤レベルでの(CE-5~CE-7)E-MAAコポリマーがある場合とない場合のEVA系のMDR硬化トルクを示すグラフ。
図4】E-MAAがある場合とない場合のOBC発泡体の様々な発泡体密度での発泡体硬度のグラフ。
図5】E-MAAがある場合とない場合のOBC発泡体の様々な発泡体密度での発泡体圧縮強度のグラフ。
図6】E-MAAがある場合とない場合のOBC発泡体の様々な発泡体密度でのスプリット引裂きに対して設定された発泡体圧縮のグラフ。
図7】E-MAAがある場合とない場合のOBCおよびEVA発泡体の異なる発泡体密度で設定された発泡体圧縮のグラフ。
図8】CE-2(OBC中0重量%E-MAA)とIE-6(OBC中10重量%E-MAA)発泡体の性能を比較したレーダーチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「組成物」およびその類似の用語は、2つ以上の物質の混合物、例えば他のポリマーとブレンドされているか、または添加剤、充填剤などを含有するポリマーを意味する。組成物には、予備反応、反応および反応後混合物が含まれ、後者には、反応生成物および副生成物ならびに存在する場合には、予備反応または反応混合物の1つ以上の成分から形成された、反応混合物の未反応成分および分解生成物が含まれる。
【0009】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、および同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野で知られている任意の他の方法から決定される、1つ以上のドメイン構成を含有しても、そうでなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層がブレンドを含有してもよい。
【0010】
「ポリマー」は、同一であるか、または異なる種類のモノマーであるかに関わらず、モノマーを重合することによって調製された化合物を意味する。したがって、ポリマーという一般的な用語は、通常、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために使用されるホモポリマーという用語および、以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。ポリマーという用語はまた、インターポリマーのすべての形態、例えば、ランダム、ブロックなども包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、以下に記載されるようなインターポリマーを示す。ポリマーはしばしば、モノマーで「作られている」もの、特定のモノマーもしくはモノマーの種類に「基づく」ものまたは、特定のモノマー含有率を「含有する」ものを指すが、これは特定のモノマーの重合した残遺物を指し、非重合種ではないことは明らかであると理解されることが留意される。
【0011】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。この一般用語は、2つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指すのに通常用いられるコポリマーを含み、2つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
【0012】
「ポリオレフィン」、「ポリオレフィンポリマー」、「ポリオレフィン樹脂」およびそれらの類似の用語は、単純オレフィン(一般式C2nを有するアルケンとも呼ばれる)をモノマーとして生成されるポリマーを意味する。ポリエチレンは、1つ以上のコモノマーを使用して、または使用せずにエチレンを重合することによって製造される。したがって、ポリオレフィンは、エチレン-α-オレフィンコポリマーなどのインターポリマーを含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、「融点」(プロットされたDSC曲線の形状に関する溶融ピークとも呼ばれる)は、USP5,783,638に記載されているように、典型的にはポリオレフィンの融点またはピークを測定するためのDSC(示差走査熱量測定)技術によって測定される。融点測定中の加熱速度は、10℃/分から20℃/分まで変化し得る。加熱伝導中の雰囲気は、窒素またはアルゴンのような不活性ガスであり得る。2つ以上のポリオレフィンを含む多くのブレンドは、1つ以上の融点またはピークを有し、多くの個々のポリオレフィンは1つの融点またはピークのみを含むことに留意されたい。
【0014】
「および/または」という用語は、「および」ならびに「または」の両方を含む。例えば、用語Aおよび/またはBは、A、BまたはAとBを意味すると解釈される。
【0015】
「低結晶化度」、「高結晶化度」および同様の用語は、絶対的な意味ではなく相対的な意味で使用される。しかしながら、結晶化度の低い成分は、発泡体の総重量に基づいて、1~25、好ましくは1~20、より好ましくは1~15重量パーセントの結晶化度を有する。高結晶化度の成分は、発泡体の総重量に基づいて、25重量パーセント以上の結晶化度を有する。
【0016】
高結晶性ポリマーは多くの場合、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、LLDPE/LDPEブレンド、高密度ポリエチレン(HDPE)、実質的に線状のエチレンポリマー(SLEP)、ランダムコポリマー(RCP)など、およびそれらの様々なブレンドを含む。特に興味のある低結晶性ポリマーは、好ましくは、2004年3月17日に出願された米国仮出願第60/553,906号に対する優先権を主張する、2005年3月17日に出願され、2005年9月29日にWO/2005/090427として公開された、同時係属中のPCT出願第PCT/US2005/008917号にて定義され議論された、エチレン/α-オレフィンマルチブロックインターポリマーを含み、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。低結晶性ポリマーは、プロピレン/エチレンも含む。
【0017】
用語「ポリマー」は、一般にホモポリマー、コポリマー例えばブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマー、ターポリマーなど、ならびにこれらのブレンドおよび改質物を含むが、これらに限定されない。さらに、特に制限しない限り、用語「ポリマー」は、物質のすべての可能な幾何学的立体配置を含むものとする。これらの立体配置は、アイソタクチック、シンジオタクチックおよびランダム対称を含むが、これらに限定されない。
【0018】
特に定めのない限り、本明細書に記載されたパーセンテージはすべて重量パーセントである。
【0019】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。一般用語「インターポリマー」は、用語「コポリマー」(通常は2つの異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために使用される)ならびに用語「ターポリマー」(通常は3つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すために使用される)を包含する。それはまた、4つ以上のタイプのモノマーを重合することによって作製されたポリマーも包含する。
【0020】
本明細書に開示されているのは、履物用途に使用される他の市販の発泡体と比較してより低い圧縮永久歪みを保証する気泡サイズおよび架橋密度を有する発泡体を製造するために使用することができる発泡体組成物である。発泡体は、0.23g/cc以下、好ましくは0.22g/cc以下、より好ましくは0.20g/cc以下の密度を有する。圧縮永久歪み抵抗および圧縮強度は、発泡体の支持能力を反映する。優れた圧縮永久歪および抵抗と圧縮強度により、靴の耐久性が向上する。
【0021】
発泡体組成物は、ポリオレフィンエラストマー、カルボキシル化オレフィンコポリマー、発泡剤、触媒パッケージ、および架橋剤を含む。発泡性組成物は、発泡前にアイオノマー(中和されたカルボキシル化オレフィンコポリマー)を含まない。一実施形態では、結果として得られる発泡体は、発泡または架橋のプロセス中に形成されるアイオノマー(中和されたカルボキシル化オレフィンコポリマー)を含み得る。
【0022】
一実施形態では、架橋および発泡の前に、発泡体組成物にアイオノマーが添加されず、発泡およびアイオノマーは、架橋または発泡の間に発泡体組成物の成分(例えば、ポリオレフィンエラストマー、カルボキシル化オレフィンコポリマー、発泡剤、触媒パッケージ、および架橋剤)間の反応の結果としてその場で形成され得る。
【0023】
例示的な実施形態において、ポリオレフィンエラストマーは、オレフィンブロックコポリマー(OBC)および/またはオレフィンランダムコポリマーを含むことができる。ポリオレフィンエラストマーは、エチレンおよびα-オレフィンを含むコポリマーであってもよい。ポリオレフィンエラストマーは、均一または不均一に分岐していてもよい。
【0024】
エチレンおよびα-オレフィンを含むコポリマーは、エチレン/α-オレフィンインターポリマーとしても知られている。用語「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」は、一般に、エチレンおよび3個以上の炭素原子を有するα-オレフィンを含むポリマーを指す。好ましくは、エチレンはポリマー全体の大部分のモル分率を含み、すなわちエチレンは全ポリマーの少なくとも50モルパーセントを構成する。より好ましくは、エチレンは少なくとも60モルパーセント、少なくとも70モルパーセント、または少なくとも80モルパーセントを、好ましくは3つ以上の炭素原子を有するα-オレフィンである、少なくとも1つの他のコモノマーを含むポリマー全体の実質的な残部と共に含む。多くのエチレン/オクテンコポリマーについて、好ましい組成物は、ポリマー全体の80モルパーセントを超えるエチレン含量およびポリマー全体の10~20、好ましくは15~20モルパーセントのオクテン含量を含む。いくつかの実施形態では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、低収率、または少量、または化学プロセスの副生成物として生成されるものを含まない。エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、1つ以上のポリマーとブレンドすることができるが、生成したままのエチレン/α-オレフィンインターポリマーは実質的に純粋であり、しばしば重合プロセスの反応生成物の主要成分を含む。
【0025】
エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合したモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントを特徴とする、重合形態のエチレンおよび1つ以上の共重合可能なα-オレフィンコモノマーを含む。すなわち、エチレン/α-オレフィンインターポリマーはブロックインターポリマー、好ましくはマルチブロックインターポリマーまたはコポリマーである。「インターポリマー」および「コポリマー」という用語は、本明細書では互換的に使用される。いくつかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、以下の式によって表すことができる:
(AB)
式中、nが、少なくとも1であり、好ましくは1より大きい整数、例えば、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、またはそれ以上であり、「A」が、ハードブロックまたはセグメントを表し、「B」が、ソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分岐した形態または実質的に星形の形態とは対照的に、実質的に線状に連結される。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。
【0026】
さらに他の実施形態では、ブロックコポリマーは、異なるコモノマー(複数可)を含む第3のタイプのブロックを通常有さない。なお他の実施形態では、ブロックAおよびブロックBの各々は、ブロック内に実質的にランダムに分布したモノマーまたはコモノマーを有する。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、残りのブロックとは実質的に異なる組成を有する先端セグメント等の別個の組成の2つ以上のサブセグメント(またはサブブロック)を含まない。
【0027】
マルチブロックポリマーは、通常は、種々の量の「ハード」および「ソフト」セグメントを含む。「ハード」セグメントは、エチレンが重合体の重量を基準にして95重量パーセントを超える量、好ましくは98重量パーセントを超える量で存在する重合単位のブロックを指す。換言すれば、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマー含量)は、ポリマーの重量を基準にして5重量パーセント未満、好ましくは2重量パーセント未満である。いくつかの実施形態では、ハードセグメントは、すべてまたは実質的にすべてのエチレンを含む。一方、「ソフト」セグメントは、コモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)がポリマーの重量を基準にして5重量パーセントを超え、好ましくは8重量パーセントを超え、10重量パーセントを超え、または15重量パーセント超える重合単位のブロックを指す。いくつかの実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、20重量パーセントを超え、25重量パーセントを超え、30重量パーセントを超え、35重量パーセントを超え、40重量パーセントを超え、45重量パーセントを超え、50重量パーセントを超え、または60重量パーセントを超えてよい。
【0028】
ソフトセグメントは、しばしば、ブロックインターポリマーの総重量の1重量パーセント~99重量パーセントで、好ましくは、ブロックインターポリマーの総重量の5重量パーセント~95重量パーセント、10重量パーセント~90重量パーセント、15重量パーセント~85重量パーセント、20重量パーセント~80重量パーセント、25重量パーセント~75重量パーセント、30重量パーセント~70重量パーセント、35重量パーセント~65重量パーセント、40重量パーセント~60重量パーセント、または45重量パーセント~55重量パーセントで、存在できる。逆に、ハードセグメントは同様の範囲で存在することができる。ソフトセグメントの重量パーセントおよびハードセグメントの重量パーセントは、DSCまたはNMRから得られたデータに基づいて計算することができる。このような方法および計算は、Colin L.P.Shan、Lonnie Hazlittらの名義で2006年3月15日に出願され、同時にDow Global Technologies社に譲渡された「Ethylene/α-Olefin Block Interpolymers」と命名された米国特許出願第11/376,835号に開示され、その開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
一実施形態では、実施形態で使用されるエチレン/α-オレフィンインターポリマー(「インターポリマー」または「ポリマー」とも呼ばれる)は、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合したモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントを特徴とする、エチレンと1つ以上の共重合可能なα-オレフィンコモノマーとを重合形態で含み(ブロックインターポリマー)、好ましくはマルチブロックコポリマーを含む。エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、以下に記載される態様のうちの1つ以上を特徴とする。
【0030】
一態様では、本発明の実施形態で使用されるエチレン/α-オレフィンインターポリマーは、1.7~3.5のM/Mおよび少なくとも1つの融点T(摂氏温度)および密度d(グラム/立方センチメートル)を有する。変数の数値は以下の関係に対応する。
>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)、および好ましくは
≧-6288.1+13141(d)-6720.3(d)、およびより好ましくは
≧858.91-1825.3(d)+1112.8(d)
【0031】
そのような融点/密度の関係を図1に示す。密度が減少するにつれて融点が低下するエチレン/α-オレフィンの従来のランダムコポリマーとは異なり、インターポリマー(菱形で表される)は、特に密度が0.87g/cc~0.95g/ccの間では密度とは実質的に無関係な融点を示す。例えば、このようなポリマーの融点は、密度が0.875g/cc~0.945g/ccの範囲である場合、110℃~130℃の範囲にある。いくつかの実施形態では、このようなポリマーの融点は、密度が0.875g/cc~0.945g/ccの範囲である場合、115℃~125℃の範囲にある。
【0032】
別の態様では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、重合形態でエチレンおよび1つ以上のα-オレフィンを含み、これらは最も高い示差走査熱量測定(「DSC」)ピーク温度引く最も高い結晶化分析分別(「CRYSTAF」)ピーク温度として定義される摂氏温度でのΔTおよびJ/gでの融解熱ΔHを特徴とし、ΔHが最大130J/gまでである場合、ΔTおよびΔHは以下の関係を満たす:
ΔT>-0.1299(ΔH)+62.81、および好ましくは
ΔT≧-0.1299(ΔH)+64.38、およびより好ましくは
ΔT≧-0.1299(ΔH)+65.95。
さらに、ΔHが130J/gを超える場合は、ΔTは48℃以上となる。CRYSTAFピークは、累積ポリマー(cumulative polymer)の少なくとも5パーセントを使用して決定され(すなわち、ピークについて累積ポリマーの少なくとも5パーセントを示すことが望ましい)、ポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAFの温度は30℃であり、ΔHはJ/gでの融解熱の数値である。より好ましくは、最も高いCRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも10パーセントを含む。
【0033】
さらに別の態様では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、温度上昇溶出法(Temperature Rising Elution Fractionation(「TREF」))を使用して分別すると40℃~130℃で溶出する分子画分を有し、当該画分はモルでのコモノマー含量がより高い、好ましくは同じ温度間で溶出する同等のランダムエチレンインターポリマー画分のものより少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも10パーセント高く、同等のランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマーを含み、ブロックインターポリマーの値から10パーセント以内のメルトインデックス、密度およびモルでのコモノマー含量(ポリマー全体に基づく)を有する。好ましくは、同等のインターポリマーのMw/MnもブロックインターポリマーのMw/Mnの10パーセント以内であり、および/または同等のインターポリマーはブロックインターポリマーの10重量パーセント以内の全コモノマー含量を有する。
【0034】
さらに別の態様では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、エチレン/α-オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定した300パーセント歪みおよび1サイクルでのパーセントによる弾性回復率Reを特徴とし、グラム/立方センチメートルでの密度dを有し、エチレン/α-オレフィンインターポリマーが実質的に架橋相を含まない場合、Reおよびdの数値は次の関係を満たす:
Re>1481-1629(d)、および好ましくは
Re≧1491-1629(d)、およびより好ましくは
Re≧1501-1629(d)、およびさらにより好ましくは
Re≧1511-1629(d)。
【0035】
いくつかの実施形態では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、10MPaを上回る引張強度、好ましくは引張強度≧11MPa以上、より好ましくは引張強度≧13MPaおよび/または11cm/分のクロスヘッド分離速度で少なくとも600パーセント、より好ましくは少なくとも700パーセント、非常に好ましくは少なくとも800パーセント、最も好ましくは少なくとも900パーセントの破断点伸びを有する。
【0036】
他の実施形態では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、(1)1~50、好ましくは1~20、より好ましくは1~10の貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)、および/または(2)80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満、特に60パーセント未満、50パーセント未満、または40パーセント未満の70℃圧縮永久歪みを0パーセントの圧縮永久歪みまで低下させる、70℃圧縮永久歪みを有する。
【0037】
さらに他の実施形態では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、80パーセント未満、70パーセント未満、60パーセント未満、または50パーセント未満の70℃圧縮永久歪みを有する。好ましくは、インターポリマーの70℃圧縮永久歪みは、40パーセント未満、30パーセント未満、20パーセント未満であり、および0パーセントに低下し得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、85J/g未満の融解熱および/または、100ポンド/フット(4800Pa)以下、好ましくは50lbs/ft(2400Pa)以下、特に5lbs/ft(240Pa)以下、および0lbs/ft(0Pa)と低いペレットブロッキング強度を有する。
【0039】
他の実施形態では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、重合形態で少なくとも50モルパーセントのエチレンを含み、80パーセント未満、好ましくは70パーセント未満または60パーセント未満の、最も好ましくは40パーセントから50パーセント未満の、およびゼロパーセント近くまで低い70℃圧縮永久歪みを有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、ポアソン分布ではなくシュルツ-フローリー分布に適合する多分散指数(PDI)を有する。コポリマーは、多分散ブロック分布およびブロックサイズの多分散分布の両方を有し、ブロック長の最確分布を有することをさらに特徴とする。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含む4つ以上のブロックまたはセグメントを含むものである。より好ましくは、コポリマーは、末端ブロックを含む少なくとも5、10または20ブロックまたはセグメントを含む。
【0041】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定することができ、核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術が好ましい。さらに、比較的広範囲のTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーのブレンドについては、ポリマーは、TREFを使用して、それぞれが10℃以下の溶出温度範囲を有する画分に最初に分画されることが望ましい。すなわち、各溶出画分は、10℃以下の回収温度ウィンドウを有する。この技術を使用して、当該ブロックインターポリマーは、同等のインターポリマーの対応する画分よりも高いモルによるコモノマー含量を有する少なくとも1つのこのような画分を有する。
【0042】
もう1つの態様として、本発明のポリマーは、オレフィンインターポリマーであり、好ましくはエチレンおよび1つ以上の共重合可能なコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロック(例えば少なくとも2つのブロック)またはセグメント(ブロック型インターポリマー)を特徴とし、最も好ましくはマルチブロックコポリマーであり、当該ブロックインターポリマーは、40℃~130℃で溶出するピーク(ただし単なる分子画分ではない)を有し(ただし個々の画分を収集および/または単離することはない)、このピークが、半値全幅(full width/half maximum(FWHM))面積計算を用いて展開した場合に、赤外線分光法によって見積られるコモノマー含量を有し、半値全幅(FWHM)面積計算を用いて展開した同じ溶出温度の比較用ランダムエチレンインターポリマーピークの値よりも、好ましくは少なくとも5パーセント、より好ましくは少なくとも10パーセント高い、平均コモノマーモル含量を有することを特徴とし、該比較用ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマーを有し、かつブロック型インターポリマーの値から10パーセント以内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有する。好ましくは、この比較用のインターポリマーのMw/Mnも、そのブロック型インターポリマーのMw/Mnから10パーセント以内にあり、および/またはこの比較用インターポリマーは、そのブロック型インターポリマーの総コモノマー含量から10重量パーセント以内にある総コモノマー含量を有する。半値全幅(FWHM)計算は、ATREF赤外線検出器から得られるメチル対メチレンの応答面積比[CH/CH]に基づき、ベースラインから最も高い(最高の)ピークを特定してから、そのFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定される分布について、FWHM面積はTとTとの間の曲線下面積と定義され、TおよびTは、ピーク高さを2で割ってからATREF曲線の左部分および右部分と交差する線をベースラインに対して水平に引くことによってATREFピークの左側および右側に決定される点である。コモノマー含量に関する検量線は、ランダムエチレン/α-オレフィンコポリマーを使用し、NMRから得られるコモノマー含量をTREFピークのFWHM面積比に対してプロットすることによって作成される。この赤外法の場合は、関心対象と同じコモノマータイプについて、検量線を生成させる。ポリマーのTREFピークのコモノマー含量は、そのTREFピークのFWHMメチル:メチレン面積比[CH/CH]を用いて、この検量線を参照することにより、決定することができる。
【0043】
コモノマー含量は、任意の適切な技術を用いて測定することができ、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技術が好ましい。この技術を用いた場合、当該ブロック型インターポリマーは、対応する比較用インターポリマーよりも高いコモノマーモル含量を有する。
【0044】
好ましくは、エチレンと1-オクテンとのインターポリマーの場合、ブロックインターポリマーは、(-0.2013)T+20.07以上の量、より好ましくは(-0.2013)T+21.07以上の量である、40~130℃の間で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有し、Tは比較しているTREF画分のピーク溶出温度の数値であって、摂氏温度で測定した値である。
【0045】
本明細書に記載の上記態様および特性に加えて、ポリマーは、1つ以上のさらなる特性によって特徴付けることができる。一態様では、ポリマーは、オレフィンインターポリマーであり、好ましくはエチレンおよび1つ以上の共重合可能なコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック型インターポリマー)を特徴とし、最も好ましくはマルチブロックコポリマーであり、当該ブロックインターポリマーは、40℃~130℃で溶出する分子画分を有し、TREF増分を使用して分画したとき、該画分は、同じ温度間で溶出する比較用のランダムエチレンインターポリマー画分のコモノマーモル含量よりも高い、好ましくは少なくとも5パーセント高い、より好ましくは少なくとも約10、15、20または25パーセント高いコモノマーモル含量を有することを特徴とし、該比較用のランダムエチレンインターポリマーは、上記ブロック型インターポリマーと同じコモノマーを有し、好ましくはそれと同じコモノマーでかつブロック型インターポリマーの値から10パーセント以内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量(ポリマー全体を基準にした値)を有する。好ましくは、この比較用のインターポリマーのMw/Mnも、そのブロック型インターポリマーのMw/Mnから10パーセント以内にあり、および/またはこの比較用インターポリマーは、そのブロック型インターポリマーの総コモノマー含量から10重量パーセント以内にある総コモノマー含量を有する。
【0046】
好ましくは、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンとの上記インターポリマー、特に0.855~0.935g/cmの全ポリマー密度を有するインターポリマーの場合、より特に1モルパーセントより多いコモノマーを有するポリマーの場合、ブロック型インターポリマーは、(-0.1356)T+13.89以上の量、より好ましくは(-0.1356)T+14.93以上の量、最も好ましくは(-0.2013)T+21.07以上の量である、40℃~130℃で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有し、Tは、比較しているTREF画分のピークATREF溶出温度の数値であって摂氏温度で測定した値である。
【0047】
好ましくは、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンとの上記インターポリマー、特に0.855~0.935g/cmの全ポリマー密度を有するインターポリマーの場合、より特に1モルパーセントより多いコモノマーを有するポリマーの場合、ブロック型インターポリマーは、(-0.2013)T+20.07以上の量、より好ましくは(-0.2013)T+21.07以上の量である、40℃~130℃で溶出するTREF画分のコモノマー含量を有し、Tは、比較しているTREF画分のピーク溶出温度の数値であって摂氏温度で測定した値である。
【0048】
さらにもう1つの態様として、ポリマーは、オレフィンインターポリマーであり、好ましくはエチレンおよび1つ以上の共重合可能なコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック型インターポリマー)を特徴とし、最も好ましくはマルチブロックコポリマーであり、当該ブロックインターポリマーは、TREF増分を用いて分画した場合に、40℃~130℃で溶出する分子画分を有し、少なくとも約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分がいずれも約100℃より高い融点を有することを特徴とする。約3モルパーセント~約6モルパーセントのコモノマー含量を有する画分については、いずれの画分も約110℃以上のDSC融点を有する。より好ましくは、少なくとも1molパーセントのコモノマーを有する該ポリマー画分が、式に相当するDSC融点を有する:
Tm≧(-5.5926)(分画中のコモノマーのモルパーセント)+135.90。
【0049】
さらに別の態様では、ポリマーは、オレフィンインターポリマーであり、好ましくはエチレンおよび1つ以上の共重合可能なコモノマーを重合された形で含み、化学的または物理的特性が異なる2つ以上の重合されたモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロック型インターポリマー)を特徴とし、最も好ましくはマルチブロックコポリマーであり、ブロックインターポリマーは、TREF増分を用いて分画した場合に、40℃~130℃で溶出する分子画分を有し、約76℃以上のATREF溶出温度を有する画分がいずれも、以下の式に対応する、DSCによって測定される融解エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする:
融解熱(J/gm)≦(3.1718)(摂氏でのATREF溶出温度)-136.58、
【0050】
ブロックインターポリマーは、TREF増分を用いて分画した場合に40℃~130℃で溶出する分子画分を有し、40℃~76℃未満のATREF溶出温度を有する画分がいずれも、式に相当する、DSCによって測定される融解エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする:
融解熱(J/gm)≦(1.1312)(摂氏でのATREF溶出温度)+22.97。
【0051】
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char、Valencia、Spain(http://www.polymerchar.com/)から入手可能なIR4赤外線検出器を用いて測定することができる。
【0052】
検出器の「組成モード(composition mode)」は、2800~3000cm-1領域の固定狭帯域赤外線フィルタである測定センサ(measurement sensor)(CH)および組成センサ(composition sensor)(CH)を装備している。測定センサは、ポリマー上のメチレン(CH)炭素(これは溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出し、一方、組成センサは、ポリマーのメチル(CH)基を検出する。組成シグナル(CH)を測定シグナル(CH)で割った数値比は、溶液中の被測定ポリマーのコモノマー含量に敏感であり、その応答は、既知のエチレンα-オレフィンコポリマー標準を用いて較正される。
【0053】
ATREF機器と共に使用した場合、この検出器は、TREFプロセス中に、溶出されるポリマーの濃度(CH)シグナル応答と組成(CH)シグナル応答の両方を与える。ポリマー特異的な較正は、(好ましくはNMRで測定された)既知のコモノマー含量を有するポリマーについてCH対CHの面積比を測定することによって作成することができる。あるポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、個々のCH応答およびCH応答に関する面積比の参照の較正(すなわちコモノマー含量に対する面積比CH/CH)を適用することによって見積ることができる。
【0054】
ピークの面積は、適切なベースラインを適用してTREFクロマトグラムからの個々のシグナル応答を積分した後、半値全幅(FWHM)計算を用いて算出することができる。この半値全幅計算は、ATREF赤外線検出器からのメチル対メチレンの応答面積比[CH/CH]に基づき、ベースラインから最も高い(最高の)ピークを特定してから、そのFWHM面積が決定される。ATREFピークを用いて測定される分布について、FWHM面積はT1とT2との間の曲線下面積と定義され、T1およびT2は、ピーク高さを2で割ってからATREF曲線の左部分および右部分と交差する線をベースラインに対して水平に引くことによってATREFピークの左側および右側に決定される点である。
【0055】
このATREF赤外法でポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外分光法の適用は、原則として、次の参考文献に記載されているGPC/FTIRシステムの適用と同様であり:Markovich,Ronald P.;Hazlitt,Lonnie G.;Smith,Linley;“Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers”。Polymeric Materials Science and Engineering(1991),65,98-100.;およびDeslauriers,P.J.;Rohlfing,D.C.;Shieh,E.T.;“Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy(SEC-FTIR)”,Polymer(2002),43,59-170、これらは両方とも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
他の実施形態では、本発明のエチレン/α-オレフィンインターポリマーは、ゼロより大きくかつ1.0までの平均ブロックインデックスABIおよび1.3より大きい分子量分布M/Mを特徴とする。平均ブロックインデックスABIは、20℃から110℃まで5℃刻みの分取TREFで得られるポリマー画分のそれぞれについてのブロックインデックス(「BI」)の重量平均であり、
【数1】
式中、BIは、分取TREFで得られたエチレン/α-オレフィンインターポリマーのi番目の画分についてのブロックインデックスであり、wは、i番目の画分の重量百分率である。
【0057】
各ポリマー画分について、BIは、次の2つの式(いずれも同じBI値を与える)のうちの一方によって定義され、
【数2】
式中、Tはi番目の画分についての分取ATREF溶出温度(好ましくはケルビンで表される)であり、Pはi番目の画分についてのエチレンモル分率であり、これは上述のようにNMRまたはIRによって測定することができる。PABは、エチレン/α-オレフィンインターポリマー全体(分画前)のエチレンモル分率であり、これもNMRまたはIRによって測定することができる。TおよびPは、純粋な「ハードセグメント」(これはインターポリマーの結晶性セグメントを指す)についてのATREF溶出温度およびエチレンモル分率である。「ハードセグメント」に関して実際の値を利用できない場合、一次近似として、T値およびP値を、高密度ポリエチレンホモポリマーの値に設定する。本明細書で行われる計算について、Tは372°K、Pは1である。
【0058】
ABは、組成が同じでPABというエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TABは、次の式から算出することができ、
【数3】
式中、αおよびβは2つの定数であり、これらはいくつかの既知ランダムエチレンコポリマーを用いる較正によって決定することができる。αおよびβは機器毎に変動し得ることに注意する必要がある。さらに、目的のポリマー組成を使用し、かつそれらの画分と類似する分子量範囲でそれぞれの検量線を作成する必要がある。わずかな分子量効果が存在する。検量線が類似する分子量範囲から得られる場合、そのような効果は本質的に無視することができるであろう。ある実施形態では、ランダムエチレンコポリマーが次の関係を満たし、
【数4】
XOは、組成が同じでPというエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TXOは、LnP=α/TXO+βから算出することができる。逆に、PXOは、組成が同じでTというATREF温度を有するランダムコポリマーについてのエチレンモル分率であり、これは、Ln PXO=α/T+βから算出することができる。
【0059】
各分取TREF画分についてのブロックインデックス(BI)が得られたら、ポリマー全体についての重量平均ブロックインデックスABIを算出することができる。ある実施形態では、ABIは、ゼロより大きいが0.3よりは小さく、または0.1~0.3である。別の実施形態では、ABIが0.3より大きくかつ1.0までである。好ましくは、ABIは、0.4~0.7、0.5、0.7、または0.6~0.9の範囲にある必要がある。ある実施形態では、ABIが、0.3~0.9、0.3~0.8、または0.3~0.7、0.3~0.6、0.3~0.5、または0.3~0.4の範囲にある。別の実施形態では、ABIが、0.4~1.0、0.5~1.0、または0.6~1.0、または0.7~1.0、0.8~1.0、または0.9~1.0の範囲にある。
【0060】
エチレン/α-オレフィンインターポリマーのもう1つの特徴は、エチレン/α-オレフィンインターポリマーが、分取TREFによって得ることができる少なくとも1つのポリマー画分を含み、その画分が0.1より大きくかつ1.0までのブロックインデックスおよび1.3より大きい分子量分布M/Mを有することである。ある実施形態では、このポリマー画分が、0.6より大きくかつ1.0まで、0.7より大きくかつ1.0まで、0.8より大きくかつ1.0まで、または0.9より大きくかつ1.0までのブロックインデックスを有する。別の実施形態では、このポリマー画分が、0.1より大きくかつ1.0まで、0.2より大きくかつ1.0まで、0.3より大きくかつ1.0まで、0.4より大きくかつ1.0まで、または0.4より大きくかつ1.0までのブロックインデックスを有する。さらに別の実施形態では、このポリマー画分が、0.1より大きくかつ0.5まで、0.2より大きくかつ0.5まで、0.3より大きくかつ0.5まで、または0.4より大きくかつ0.5までのブロックインデックスを有する。さらに別の実施形態では、このポリマー画分が、0.2より大きくかつ0.9まで、0.3より大きくかつ0.8まで、0.4より大きくかつ0.7まで、また約0.5より大きくかつ0.6までのブロックインデックスを有する。
【0061】
エチレンとα-オレフィンのコポリマーの場合、本発明のポリマーは、好ましくは、(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、または少なくとも2.0、最も好ましくは少なくとも2.6、かつ最大値5.0まで、より好ましくは最大値3.5まで、特に最大値2.7までのPDI、(2)80J/g以下の融解熱、(3)少なくとも50重量パーセントのエチレン含量、(4)-25℃未満、より好ましくは-30℃未満のガラス転移温度T、および/または(5)唯一のTを有する。
【0062】
さらに、ポリマーは、log(G’)が温度100℃で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上であるような貯蔵弾性率G’を、単独で、または本明細書に開示する他の任意の性質と組み合わせて有することができる。さらに、このポリマーは、0~100℃の範囲で温度の関数として比較的平坦な貯蔵弾性率を有し、このことは、ブロックコポリマーに特徴的であり、オレフィンコポリマー、特にエチレンと1つ以上のC3~8脂肪族α-オレフィンとのコポリマーについては、今まで知られていない。この文脈において、「比較的平坦な」という用語は、50℃と100℃の間、好ましくは0℃と100℃の間で、logG’(単位:パスカル)の減少が、1桁未満であることを意味する。
【0063】
インターポリマーは、少なくとも90℃の温度で1mmの熱機械分析針入深さ、ならびに3kpsi(20MPa)~13kpsi(90MPa)の曲げ弾性率によって、さらに特徴付けることができる。あるいは、インターポリマーは、少なくとも104℃の温度で1mmの熱機械分析針入深さ、ならびに少なくとも3kpsi(20MPa)の曲げ弾性率を有することができる。それらは90mm未満の耐摩耗性(または容積減少)を有すると特徴付けることができる。ポリマーは、他のポリマーよりも、有意に優れた可撓性-耐熱性バランスを有する。
【0064】
さらに、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、0.01~2000g/10分、好ましくは0.01~1000g/10分、より好ましくは0.01~500g/10分、特に0.01~100g/10分のメルトインデックスIを有することができる。特定の実施形態では、エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、0.01~10g/10分、0.5~50g/10分、1~30g/10分、1~6g/10分または0.3~10g/10分のメルトインデックスIを有することができる。特定の実施形態では、エチレン/α-オレフィンポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分または5g/10分である。
【0065】
ポリマーは、1,000g/モル~5,000,000g/モル、好ましくは1000g/モル~1,000,000、より好ましくは10,000g/モル~500000g/モル、特に10,000g/モル300,000g/モルである分子量Mを有することができる。ポリマーの密度は、0.80~0.99g/cm、好ましくはエチレン含有ポリマーでは0.85g/cm~0.97g/cmであり得る。特定の実施形態では、エチレン/α-オレフィンポリマーの密度は、0.860~0.925g/cmまたは0.867~0.910g/cmの範囲である。
【0066】
ポリマーを作製する方法は、以下の特許出願に開示されている:2004年3月17日に出願された米国仮特許出願第60/553,906号;2005年3月17日に出願された米国仮特許出願第60/662,937号;2005年3月17日に出願された米国仮特許出願第60/662,939号;2005年3月17日に出願された米国仮出願第60/5662938号;2005年3月17日に出願されたPCT出願第PCT/US2005/008916号;2005年3月17日に出願されたPCT出願第PCT/US2005/008915号;および2005年3月17日に出願されたPCT出願第PCT/US2005/008917号、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
インターポリマーはまた、固有の結晶性および分岐分布関係を示す。すなわち、インターポリマーは、特に同じモノマーおよび同じモノマーレベルを含むランダムコポリマーまたはポリマーの物理的ブレンド例えば高密度ポリマーおよび低密度コポリマーのブレンド、と同等の総合密度において比較した場合、融解熱の関数としてCRYSTAFおよびDSCを用いて測定される最も高いピークの温度の間に、比較的大きな差を有する。インターポリマーのこの固有な特徴は、ポリマー主鎖内のブロックにおけるコモノマーの固有な分布によるものであると考えられる。特に、インターポリマーは、コモノマー含量が異なるブロック(ホモポリマーブロックを含む)を交互に含み得る。このインターポリマーは、密度またはコモノマー含量が異なるポリマーブロックの数および/またはブロックサイズの分布が、シュルツ-フローリー型の分布である分布も含み得る。さらに、インターポリマーはまた、ポリマーの密度、弾性率および形態には実質的に依存しない、固有のピーク融点および結晶化温度プロファイルを有する。好ましい実施形態では、ポリマーの微結晶秩序が、1.7未満、さらには1.5未満、そして下は1.3未満までのPDI値でさえ、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーとは区別することのできる特徴的な球晶およびラメラを示す。
【0068】
さらに、インターポリマーは、ブロック性(blockiness)の程度またはレベルに影響を与えるための技術を用いて調製することができる。すなわち、各ポリマーブロックまたはセグメントのコモノマー量および長さは、触媒およびシャトリング剤の比およびタイプ、ならびに重合温度、および他の重合変数を制御することによって変化できる。この現象の驚くべき利益は、ブロック性の程度が増加するにつれて、得られるポリマーの光学的特性、引裂き強さおよび高温回復特性が改善されるという発見である。特に、ポリマー中の平均ブロック数が増加するにつれて曇りは減少し、その一方で、透明度、引裂き強さおよび高温回復特性は増加する。望ましい連鎖移動能力(高率のシャトリングと低レベルの連鎖停止)を有するシャトリング剤と触媒の組み合わせを選択することにより、他の形態のポリマー停止が、効果的に抑制される。したがって、本発明の実施形態によるエチレン/α-オレフィンコモノマー混合物の重合では、β-ヒドリド脱離が、もしあったとしても、ほぼ観察されず、結果として得られる結晶性ブロックは、高度にまたは実質上完全に線状であり、長鎖分岐をほぼまたは全く持たない。
【0069】
高結晶性鎖末端を有するポリマーを、本発明に実施形態に従って、選択的に調製することができる。エラストマー用途では、非晶質ブロックで終わるポリマーの相対量を減少させると、結晶性領域に対する分子間希釈効果が減少する。この結果は、水素または他の連鎖停止剤に対して適切な応答を有するチェーンシャトリング剤および触媒を選択することによって得ることができる。具体的に述べると、高結晶性ポリマーを生成させる触媒が、(例えば高いコモノマー組み込み率、レジオレギュラー(regio-regular)、またはアタクチックポリマー形成などによって)低結晶性ポリマーセグメントが生成する原因となる触媒よりも、(例えば水素の使用などによる)連鎖停止反応を受けやすい場合、高結晶性ポリマーセグメントがそのポリマーの末端部分を優先的に占めることになる。結果として得られる末端基が結晶性であるというだけでなく、停止の際、高結晶性ポリマーを形成する触媒部位を、ポリマー形成の再開始にもう一度利用することもできる。それゆえ、最初に形成されるポリマーは、別の高結晶性ポリマーセグメントである。したがって、結果として得られるマルチブロックコポリマーの両端は、優先的に高結晶性になる。
【0070】
いくつかの実施形態で使用されるエチレンα-オレフィンインターポリマーは、好ましくは、エチレンと少なくとも1つのC~C20α-オレフィンとのインターポリマーである。エチレンとC~C20α-オレフィンのコポリマーが、特に好ましい。インターポリマーは、C~C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンをさらに含み得る。エチレンとの重合に有用な好適な不飽和コモノマーは、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどを含む。このようなコモノマーの例は、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどのC~C20α-オレフィンを含む。1-ブテンおよび1-オクテンが、特に好ましい。他の好適なモノマーは、スチレン、ハロまたはアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、およびナフテン(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、およびシクロオクテン)を含む。
【0071】
エチレン/α-オレフィンインターポリマーは好ましいポリマーであるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも使用できる。本明細書で使用する場合、オレフィンは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素系化合物のファミリーを指す。触媒の選択に応じて、任意のオレフィンを、本発明の実施形態において使用することができる。好ましくは、好適なオレフィンは、ビニル性不飽和を含有するC~C20脂肪族および芳香族化合物、ならびに環状化合物、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、ならびに5および6位がC~C20ヒドロカルビルまたはシクロヒドロカルビル基で置換されたノルボルネンを含むがこれに限定されないノルボルネンである。このようなオレフィンの混合物、ならびにこのようなオレフィンとC~C40ジオレフィン化合物との混合物も含まれる。
【0072】
オレフィンモノマーの例は、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン、4-ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘサセン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン;1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエンを含むがこれらに限定されないC~C40ジエン、他のC~C40α-オレフィンなどを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、またはそれらの組み合わせである。ビニル基を含有する任意の炭化水素は潜在的に、本発明の実施形態で使用されてもよいが、モノマーの分子量が多くなりすぎるため、モノマーの入手可能性、コスト、および結果として得られるポリマーから未反応モノマーを都合よく除去する能力などの、実用上の課題が大きくなり得る。
【0073】
本明細書に記載の重合プロセスは、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレンなどを含むモノビニリデン芳香族モノマーを含むオレフィンポリマーの生成によく適している。特に、エチレンおよびスチレンを含むインターポリマーは、本明細書の教示に従って調製することができる。任意選択で、エチレン、スチレン、およびC~C20アルファオレフィンを含み、任意選択でC~C20ジエンを含み、向上した性質を有するコポリマーを調製することができる。
【0074】
好適な非共役ジエンモノマーは、6~15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、または環状炭化水素ジエンであり得る。好適なジエンの非限定的な例は、直鎖非環式ジエン、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン;分岐鎖非環式ジエン、例えば、5-メチル-1,4-ヘキサジエン;3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン;3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン;およびジヒドロミリセンとジヒドロオシネンとの混合異性体;単環脂環式ジエン、例えば、1,3-シクロペンタジエン;1,4-シクロヘキサジエン;1,5-シクロオクタジエン、および1,5-シクロドデカジエン;ならびに多環脂環式縮合および架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ-(2,2,1)-ヘプタ-2,5-ジエン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル、およびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB);5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ならびにノルボルナジエンを含むが、これらに限定されない。EPDMを製造するために典型的に使用されるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4-ヘキサジエン(HD)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-ビニリデン-2-ノルボルネン(VNB)、5-メチレン-2(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。特に好ましいジエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)および1,4-ヘキサジエン(HD)である。
【0075】
本発明の実施形態に従って作製することができる望ましいポリマーの一種類は、エチレン、C~C20α-オレフィン、特にプロピレン、および任意選択で1つ以上のジエンモノマーの弾性インターポリマーである。本発明のこの実施形態で使用するのに好ましいα-オレフィンは、式CH=CHR(式中、Rが1~12個の炭素原子の線状または分岐アルキル基である)で示される。好適なα-オレフィンの例は、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテンを含むが、これらに限定されない。特に好ましいα-オレフィンはプロピレンである。プロピレン系ポリマーは、当技術分野では一般的に、EPポリマーまたはEPDMポリマーと呼ばれる。そのようなポリマー、特にマルチブロックEPDM型ポリマー、の調製に使用される適切なジエンは、4~20個の炭素を含有する、共役または非共役、直鎖または分岐鎖の、環状または多環式のジエンを含む。好ましいジエンは、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、および5-ブチリデン-2-ノルボルネンを含む。特に好ましいジエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネンである。
【0076】
本ジエン含有ポリマーは、ジエンの多いまたは少ない量(含有しないものを含む)およびα-オレフィン量の多いまたは少ない量(含有しないものを含む)を含有する交互セグメントまたはブロックを含むので、その後のポリマー特性を失わずに、ジエンおよびα-オレフィンの総量を減らすことができる。すなわち、ジエンモノマーおよびα-オレフィンモノマーは、ポリマーの全体にわたって均一にまたはランダムに組み込まれるのではなく、ポリマーのあるタイプのブロック中に優先的に組み込まれるので、それらはより効率良く利用され、続いて、ポリマーの架橋密度を、より良く制御することができる。そのような架橋可能なエラストマーおよび硬化生成物は、より高い引張強度およびより良い弾性回復率を含む有利な性質を有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、異なる量のコモノマーを組み込む2つの触媒を用いて作製されたインターポリマーが、それらによって形成されるブロックを、95:5~5:95の重量比で有する。弾性ポリマーは、望ましくは、ポリマーの総重量に基づいて、20~90パーセントのエチレン含量、0.1~10パーセントのジエン含量、および10~80パーセントのα-オレフィン含量を有する。さらに好ましくは、マルチブロック弾性ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、60~90パーセントのエチレン含量、0.1~10パーセントのジエン含量、および10~40パーセントのα-オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、10,000~2,500,000、好ましくは20,000~500,000、より好ましくは20,000~350,000の重量平均分子量(Mw)、3.5未満、より好ましくは3.0未満の多分散性、および1~250のムーニー粘度(ML(1+4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。より好ましくは、そのようなポリマーは、65~75パーセントのエチレン含量、0~6パーセントのジエン含量、および20~35パーセントのα-オレフィン含量を有する。
【0078】
エチレン/α-オレフィンインターポリマーは、そのポリマー構造中に少なくとも1つの官能基を組み込むことによって、官能化することができる。例示的官能基は、例えばエチレン系不飽和単官能性および二官能性カルボン酸、エチレン系不飽和単官能性および二官能性カルボン酸無水物、それらの塩およびそれらのエステルを含み得る。そのような官能基は、エチレン/α-オレフィンインターポリマーにグラフトされ得るか、エチレンおよび任意選択の追加コモノマーと共重合させて、エチレン、官能性コモノマー、および任意選択の他のコモノマーのインターポリマーを形成させることができる。ポリエチレンに官能基をグラフトするための手段は、例えば米国特許第4,762,890号、同第4,927,888号および同第4,950,541号に記述されており、これらの特許の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に有用な官能基の1つは、無水リンゴ酸である。
【0079】
官能性インターポリマー中に存在する官能基の量は変化させることができる。官能基は、典型的には、少なくとも1.0重量パーセント、好ましくは少なくとも5重量パーセント、より好ましくは少なくとも7重量パーセントの量で、コポリマー型官能化インターポリマー中に存在することができる。官能基は、典型的には、コポリマー型官能化インターポリマー中に、40重量パーセント未満、好ましくは30重量パーセント未満、より好ましくは25重量パーセント未満の量で存在する。
【0080】
例示的なオレフィンブロックコポリマーは、エチレンおよびオクテンを含む。発泡体に使用できる市販のオレフィンブロックコポリマーは、Dow Chemical社のINFUSE(商標)である。
【0081】
エラストマーとしての別の例示的なエチレンは、均一に分岐したエチレン-α-オレフィンコポリマーである。これらのコポリマーは、メタロセン触媒または拘束幾何触媒などの単一サイト触媒で製造することができ、典型的には105℃未満、具体的には90℃未満、より具体的には85℃未満、さらにより具体的には80℃未満およびなおより具体的には75℃未満である融点を有する。融点は、例えばUSP5,783,638に記載されている示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。α-オレフィンとしては、C3~20の線状、分岐状または環状のα-オレフィンが好ましい。C3~20α-オレフィンは、プロペン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセンおよび1-オクタデセンを含む。α-オレフィンはまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタンなどの環状構造を含有することができ、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサンなどのα-オレフィンをもたらす。
【0082】
例示的な均一に分岐したエチレン-α-オレフィンコポリマーの例は、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、エチレン/スチレンなどを含む。例示的なターポリマーは、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1-オクテン、およびエチレン/ブテン/スチレンを含む。コポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。
【0083】
商業的に入手可能な均一に分岐したエチレン-α-オレフィンインターポリマーの例は、均一に分岐した線状エチレン-α-オレフィンコポリマー(例えば、Mitsui Petrochemicals Company LimitedによるTAFMER(商標)およびExxon Chemical CompanyによるEXACT(商標))、および均一に分岐した実質的線状エチレン-α-オレフィンポリマー(例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(商標)およびENGAGE(商標)ポリエチレン)を含む。
【0084】
エラストマー(すなわち、エチレン/α-オレフィンインターポリマー)は、発泡体組成物中に、発泡体組成物の総重量に基づいて、60~90重量%、好ましくは70~88重量%、より好ましくは80~85重量%の量で使用され得る。
【0085】
組成物は、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーも含む。換言すれば、カルボキシル化オレフィンコポリマー中の酸官能基が金属イオンで中和されていない。中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーは気泡サイズを制御するのに有用な役割を果たす。カルボキシル化オレフィンコポリマーは、架橋反応を行う前には、エラストマー(オレフィンブロックまたはランダムコポリマー)に共有結合またはイオン結合していない。
【0086】
カルボキシル化オレフィンコポリマーは、不飽和カルボン酸またはその無水物、エステル、アミド、またはイミドをグラフト化(またはコポリマー化)したエチレンポリマーを含み、以下「グラフト化合物」と呼ぶ。このグラフト化合物は、好ましくは、脂肪族不飽和ジカルボン酸付加物または無水物である。カルボン酸は、好ましくは最大4個、好ましくは最大5個、より好ましくは6個の炭素原子を含む。不飽和カルボン酸の例は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびシトラコン酸である。不飽和カルボン酸の誘導体の例は、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、モノマレインアミド、N,N-ジエチルマレアミド、N-モノブチルマレアミド、N,N-ジブチルマレアミド、モノフマラミド、ジフマラミド、N-モノエチルフマラミド、N,N-ジエチルフマラミド、N-モノブチルフマラミド、N,N-ジブチルフマラミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウムおよびメタクリル酸カリウムである。
【0087】
カルボキシル化オレフィンコポリマーの例は、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/n-ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/tert-ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸/エチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/マレイン酸およびエチレン/マレイン酸モノエステルコポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/n-ブチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/メチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン/マレイン酸モノエステル/エチル(メタ)アクリレートコポリマー、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0088】
1つ以上、好ましくは1つのグラフト化合物がエチレンポリマーにグラフトされる。無水マレイン酸が好ましいグラフト化合物である。例示的な不飽和カルボン酸はアクリル酸またはメタクリル酸である。一実施形態では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーが好ましい。
【0089】
グラフト化プロセスは、特に、アゾ含有化合物、カルボン酸の過酸およびペルオキシエステル、アルキルヒドロペルオキシド、およびジアルキルおよびジアシルペルオキシドを含むフリーラジカルを形成する開始剤を分解することによって開始することができる。これらの化合物およびそれらの特性の多くが記載されている(参照:J.Branderup,E.Immergut,E.Grulke,eds.“Polymer Handbook,”4th ed.,Wiley,New York,1999,Section II,pp.1-76.)。あるいは、グラフト化合物は、典型的なチューブラープロセスおよびオートクレーブプロセスによってエチレンと共重合させることができる。
【0090】
グラフトされたエチレンポリマー、ならびにグラフトに使用されるエチレンポリマーは、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高溶融強度高密度ポリエチレン(HMS-HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、またはそれらの組み合わせである。
【0091】
一実施形態では、グラフトされたエチレンポリマー、ならびにグラフトに使用されるエチレンポリマーは、好ましくは最大0.94g/cm、より好ましくは0.850~0.935g/cm、最も好ましくは0.860~0.930g/cm、特に0.865~0.930g/cmの密度を有する。しかし、ポリマー密度はグラフト時にわずかに変化することが理解されるべきである。エチレンポリマーの場合、ポリマー密度は、十分な機械的強度および柔軟性を有するプライマーを提供するため、およびグラフトされたエチレンポリマーの有機溶媒への十分な溶解性を達成するために重要であることが分かった。
【0092】
カルボキシル化オレフィンコポリマーは、ASTM D1238に従って2.16kgおよび190℃で測定した場合、5g/10分以下、好ましくは4g/10分以下、より好ましくは3g/10分以下のメルトインデックスを有する。一実施形態では、カルボキシル化オレフィンコポリマーは、ASTM D1238に従って2.16kgおよび190℃で測定した場合、1g/10分以上のメルトインデックスを有する。
【0093】
カルボキシル化オレフィンコポリマーの例は、The Dow Chemical Companyから市販されているエチレン-メタクリル酸コポリマーであるPRIMACOR(商標)、またはDuPont Chemical Companyから市販されているNUCREL(登録商標)である。本明細書で使用するカルボキシル化オレフィンコポリマーは、発泡性組成物中の樹脂の総重量に基づいて、3~20重量%、好ましくは4~15重量%、より好ましくは5~10重量%の量のエチレンメチルアクリル酸コモノマー(E-MAA)である。
【0094】
発泡体組成物は架橋剤も含む。架橋剤は、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシケタール、ジアシルペルオキシド、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む、1つ以上の有機過酸化物を含む。過酸化物の例は、ジクミルペルオキシド(α,α-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(BIPB)としても知られている)、ジ(3,3,5-トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ(sec-ブチル)ペルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシネオデカノエート、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリー-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(ターシャリー-ブチル-ペルオキシル-イソプロピル)ベンゼン、またはそれらの組み合わせを含む。例示的な架橋剤は、Arkemaから商品名Luperox(登録商標)、Arkemaから商品名Peroximon(登録商標)、またはAkzo Nobelから商品名Trigonox(登録商標)で市販されているジクミルペルオキシドである。
【0095】
架橋剤は、発泡体組成物の総重量に基づいて、0.05~10重量%、好ましくは0.3~5重量%、より好ましくは0.5~3重量%の量で使用される。
【0096】
発泡体組成物はまた、加熱により発泡体を形成するのに多孔性を生成するために好適な発泡剤を含み得る。架橋剤が分解するほぼ同じ温度で分解する(ガスを放出する)発泡剤を使用することが望ましい。これは、発泡体の多孔性の保持を容易にするその後の架橋を伴う発泡体の形成を可能にする。発泡体にかなり均一な気泡サイズを生成するため有効な量の発泡剤を使用することが一般に望ましい。発泡剤は一般に硬化剤と共に作用して、発泡体の均一な架橋密度ならびに均一な孔サイズを促す。発泡剤は、物理的発泡剤または化学的発泡剤であってもよい。物理的発泡剤はバイノーダル分解(binodal decomposition)の結果として組成物から放出され、発泡プロセス中に膨張して発泡体を形成するのに対し、化学的発泡剤は発泡プロセス中に分解してガス(例えば、アゾ化合物)を遊離させて発泡体を形成する。
【0097】
水素原子含有成分を含む物理的発泡剤は、単独で、または互いの混合物として、またはアゾ化合物のような別の種類の発泡剤(例えば化学的発泡剤)と一緒に使用することができる。物理的発泡剤は、炭化水素、エーテル、エステルおよび部分的にハロゲン化された炭化水素(例えば過フッ素化炭化水素)、エーテルおよびエステルなどを含む広範囲の物質から選択することができる。物理的発泡剤は、窒素、アルゴン、二酸化炭素などの比較的不活性なガスも含み得る。典型的な物理的発泡剤は、-50℃~100℃、好ましくは-50℃~50℃の沸点を有する。使用可能な水素含有発泡剤の中には、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、および1-クロロ-1,1-ジフルオロエタンなどのHCFC(ハロクロロフルオロカーボン);1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2,4,4-テトラフルオロブタン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチルプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,4-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,4,4-ペンタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、およびペンタフルオロエタンなどのHFC(ハロフルオロカーボン);メチル-1,1,1-トリフルオロエチルエーテルおよびジフルオロメチル-1,1,1-トリフルオロエチルエーテルなどのHFE(ハロフルオロエーテル);およびn-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなどの炭化水素、などがある。
【0098】
ガス状の非CFCまたは非HCFC物理的発泡剤は例えば二酸化炭素、窒素、ジニトロソ-ペンタメチレン-テトラミン、SF、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム、希ガス例えばキセノン、空気(窒素および酸素ブレンド)およびこれらのガスのブレンドである。これらの気体は、ガス状態、液体状態または超臨界状態の発泡剤として使用され得る。
【0099】
化学的発泡剤には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾジカルボンアミド、ジニトロソ-ペンタメチレン-テトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシ-ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)または発泡体を生成するために使用できるこれらの組み合わせを含む。例示的なアゾ化合物はアゾビスイソブチロニトリルである。膨張-分解温度および発泡プロセスを調整するために、発泡剤は、発泡剤の混合物または発泡剤と活性化剤との混合物であってもよい。
【0100】
発泡剤は、発泡体組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは2~4重量%の量で使用される。
【0101】
機械的性質を比較することができる同じ発泡体密度に到達するために、中和されたカルボキシル化オレフィンポリマーの発泡剤に対する重量比と比較して、中和されていないカルボキシル化オレフィンポリマーの発泡剤に対する重量比は一般に減少する。一実施形態では、中和されていないカルボキシル化オレフィンポリマーの発泡剤に対する重量比は、0.01~4.0、好ましくは0.2~3.0、より好ましくは1~2である。
【0102】
発泡性組成物はまた、発泡剤の分解温度/プロフィールを低下させるために0.1~10重量%、好ましくは0.2~5重量%、より好ましくは0.3~4重量%の活性化剤を含み得る。活性化剤は、1つ以上の金属酸化物、金属塩、金属水酸化物または有機金属錯体、またはそれらの組み合わせであり得る。活性化剤の例は、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなど、またはそれらの組み合わせである。活性化剤は、発泡体を生成するための反応中のカルボン酸の中和を促進し得る。これは、発泡体の圧縮強度が向上し得る。
【0103】
一実施形態では、カルボキシル化オレフィンコポリマーに対する活性剤の重量比は、0.3以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.45以上である。一実施形態では、カルボキシル化オレフィンコポリマーに対する活性剤の重量比は、0.8未満、好ましくは0.77以下、より好ましくは0.75以下である。
【0104】
組成物中に、組成物の総重量に基づいて、0.1~20または2~12重量%で存在し得る他の添加剤は、顔料(TiOおよび他の適合する着色顔料)、接着促進剤(発泡体の他の材料への接着性を改善するため)、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および/または酸化ケイ素)、核形成剤(純粋な形態または濃縮形態、例えば、CaCO、SiO、またはそれらの2つ以上の組み合わせ)、ゴム(例えば、天然ゴム、SBR、ポリブタジエンおよび/またはエチレンプロピレンジエンターポリマーのようなゴム様弾性を改良するため)、安定剤(例えば酸化防止剤、UV吸収剤および/または難燃剤)、および加工助剤(例えば、Octene Co.,Taiwan製のOctene R-130)を含むことができる。酸化防止剤(臭気または味の低減などの官能特性を改質する)は、Ciba Geigy Inc.(Tarrytown、N.Y.)からのIRGANOXなどのフェノール系酸化防止剤を含めることができる。
【0105】
一実施形態では、発泡性組成物は、ポリ(エチレンビニルアセテート)コポリマーを任意選択で含み得る。ポリ(エチレンビニルアセテート)コポリマーは、ASTM D 1238に従って測定した場合10分当たり2~3グラム(g/10分)のメルトインデックスを有し得、発泡性組成物中に存在するポリ(エチレンビニルアセテート)コポリマーの総重量に基づいて、8~50重量パーセント、好ましくは9~40重量パーセントの量でビニルアセテート(VA)を含み得る。
【0106】
具体的には、樹脂はエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマーの可能性がある。市販されているポリ(エチレンビニルアセテート)コポリマーは、例えば、ATポリマー1070C(9重量%ビニルアセテート(VA))、ATポリマー1710(17重量%VA)、ATポリマー2306(23重量%VA)、ATポリマー2803(28%VA)、ATポリマー2810(28重量%VA)、シェブロン/エースプラスチックTD 3401(9.5重量%VA)、シェブロン/エースプラスチックDS 4089-70(18%VA)、DuPont Elvax(登録商標)40W(40重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)140-W(33重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)250-W(28重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)260(28重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)350(25重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)360(25重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)450(18重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)460(18重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)550(15重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)560(15重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)650(12重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)660(12重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)750(9重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)760(9.3重量%VA)、DuPont Elvax(登録商標)770(9.5重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-740(24.5重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-724(18重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-721.62(19.3重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-721.88(19.3重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-721(19.3重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-740(24.5重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-318(9重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-319.92(9重量%VA)、Exxon Escorene(登録商標)LD-725、Quantum UE 630-000(17重量%VA)、Quantum 637-000(9重量%VA)、Rexene(登録商標)X1903(10重量%VA)、Rexene(登録商標)X0901(12重量%VA)、Rexene(登録商標)X0911(18重量%VA)、Taisox(登録商標)7360M(21重量%VA)、DuPont Chemical Co.,からのElvax(登録商標)2288(21重量%VA)およびRexene(登録商標)X0915(9重量%VA)を含む。
【0107】
ポリ(エチレンビニルアセテート)コポリマーは、発泡体組成物中に、発泡体組成物の総重量に基づいて、20~40重量%、好ましくは25~35重量%、より好ましくは27~33重量%の量が任意選択で存在し得る。
【0108】
発泡体は、圧縮成形、射出成形、または押出と成形の組み合わせなどの多くのプロセスによって生成され得る。発泡性組成物は、エラストマー、カルボキシル化オレフィンコポリマー、架橋剤、発泡剤、および任意の他の所望の添加剤を一緒にブレンドすることによって製造され得る。ブレンドは、押出機または内部ミキサーで行われ得、または、成分は、押出機で押し出すか、または内部ミキサーで混合する前に、ドライブレンダー中で予備ブレンドされ得る。
【0109】
一実施形態では、発泡体の製造は、エラストマー、カルボキシル化オレフィンコポリマー、発泡剤および架橋剤を加熱しながら混合して、溶融物を形成することを含むことができる。これは、バンバリー(Banbury)、インテンシブミキサー、2本ロールミル、または押出機で行われ得る。時間、温度、せん断速度は、時期尚早に架橋または発泡することなく最適な分散を確実にするように調節され得る。高温で混合すると、過酸化物および発泡剤の分解による時期尚早な架橋および発泡が生じ得る。適切な温度は、他の成分の良好な混合および分散を確実にするために望ましい場合がある。安全な運転のための上限温度は、使用される過酸化物および発泡剤の開始分解温度に依存し得る。成分は、60℃~150℃、好ましくは70℃~140℃、より好ましくは80℃~130℃、さらにより好ましくは90℃~120℃の温度でブレンドすると均一な混合物を形成することができる。ポリマーは他の成分と配合する前に溶融ブレンドされ得る。
【0110】
混合後に、成形することができる。シーティングロールまたはカレンダーロールは、発泡のために適切な寸法のシートを作製するためにしばしば使用される。押出機は、組成物をペレットに成形するために使用され得る。
【0111】
発泡は、過酸化物および発泡剤の分解を完了させるための温度および時間で圧縮または射出成形で実施することができる。圧力、成形温度、および加熱時間は、制御され得る。発泡は、ペレット状の発泡性組成物を使用することにより、射出成形装置内で実施することができる。結果として得られる発泡体は、熱成形および圧縮成形などの当該技術分野で公知の任意の手段によって、最終製品の寸法にさらに成形することができる。
【0112】
本組成物から生成された発泡体は、実質的に独立気泡であってよく、履物への適用(例えば、ミッドソールまたはインソール)、自動車の座席および内装、家具のアームレスト、鉄道用パッドおよび他の工業用発泡材料用途を含む様々な物品に有用であり得る。
【0113】
発泡性組成物およびその製造方法は、以下の非限定的な実施例によって開示される。
【実施例
【0114】
この実施例は、開示された発泡性組成物の調製およびその性質を示すために行った。実施例および比較例で使用された材料は、以下の表1に詳述されている。
【表1】
【0115】
成分は、インターナルミキサーで一緒に配合された。次いで、調合された化合物は、2本ロールミルで製造され、続いてバン発泡(bun foaming)させた。調製された発泡体プラークは、さらなる試験のために適切な寸法にスライスされた。配合およびバン発泡製造操作は、以下に詳述される。
【0116】
発泡性組成物の配合は、次の通りである。ポリマーペレット(以下の表2および3に示す組成を有する)は、1.5リットルのバンバリーミキサーに添加された。ポリマーが溶融した後(約5分)、酸化亜鉛(ZnO)、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)、およびタルクを含む充填剤は、バンバリーに添加される。充填剤が均一に分散された後、最後に発泡剤および過酸化物を添加し、内容物をさらに3~5分間混合し、合計混合時間15分とした。バッチ温度は、化合物が放出された直後にサーマルプローブ検出器を使用することによって確認された。組成物の実際の温度は、一般に、装置上の表示温度よりも10~15℃高かった(実際の組成物温度は約120℃であった)。したがって、配合プロセスの間、化合物の温度が硬化剤の分解温度および発泡剤の分解温度を超えないことを保証するために、より低い表示装置温度を維持する方が良い。次いで、配合された調合物を2本ロールミル(約120℃の温度に維持)の間に置き、配合された調合物を約5mmの厚さのシート(またはロールミル粉砕ブランケット)に成形した。
【0117】
バン発泡体(bun foam)の製造は以下に詳述される。ロールミル粉砕ブランケットは、正方形(3または4つの「6インチ×6インチ」の正方形)に切断され、約49平方インチの寸法の予熱したバン発泡体型の中に配置された。チェイスの表面は、脱型中に発泡体がチェイスに粘着するのを回避するために離型剤が噴霧された。2つの圧縮成形プロセスが関与した:最初に、硬化前にサンプル内部および積層ブランケット層間の空気ポケットを除去する予熱プロセス、次いで硬化/発泡プロセスを促進するための第2の加熱ステップ。予熱は、110℃(ENGAGE(商標)POEまたはElvax(登録商標)EVAなどの低融点ポリマー)または120℃(INFUSE(商標)OBCなどの高融点ポリマー)で8分間行い、発泡前に金型内で固体塊を形成するために、4分間、10トンでプレスした。予熱された塊は、発泡プレスに移され、100kg/cmおよび180℃で8分間保持された。圧力が解放されたら、バン発泡体は、トレイから迅速に取り出され、いくつかの非粘着シート上の通気フードに配置され、できるだけ早く上面の長さが測定された。発泡体表面は、段ボール箱(cardboard box)を使用してベンチトップから断熱する必要があった。新しく作成されたパン状発泡体の表面を断熱することにより、上面と底面の冷却ムラを防ぐ。発泡体をフード内で40分間冷却し、その後貯蔵容器に移され、24時間冷却された。
【0118】
次の試験は、発泡体組成物について行われた。
発泡体密度:バン発泡体は、0.1gに最も近いように秤量され、体積は、長さ、幅、および厚さを0.01cmに最も近い値に測定することによって決定された。密度は、重量と体積の観点から計算され得た。
圧縮永久歪み:圧縮永久歪み(C-Set)は、50℃で50%圧縮の条件下で6時間ASTM D395方法Bに従って測定された。発泡体につき2つのボタンが試験され、平均値が報告された。圧縮永久歪みは、次の式を使用して計算された。
圧縮永久歪み=(T-T)/(T-T)×100%
は装置の間隔距離、Tは試験前の試料厚さ、Tは試験後の試料厚さである。
アスカーC硬さ:アスカーC硬さ試験は、ASTM D2240に従って行われた。硬度は、試料の表面にわたって測定された5回の読み取り(5秒の待ち時間)の平均であり、70および100℃の両方で40分間熟成した後に再び測定された。
スプリット引裂き抵抗:スプリット引裂き抵抗は、ASTM D3574に従って、寸法6インチ(長さ)×1インチ(幅)×0.4インチ(厚さ)およびノッチ深さ1~1.5インチを有する試験片を用いて、試験速度2インチ/分で測定された。
圧縮強度:圧縮強度は、ASTM D1621に従って実施された。直径29mmの円形発泡体試料は、1mm/分の均一速度でプレスされた。最大25%の圧縮ひずみを生成するために必要な応力が決定された。圧縮強度は、元の発泡体の断面に基づく単位面積あたりの力によって与えられた。
【0119】
表2は、本発明の実施例(IE)および比較例(CE)の組成を列挙する。それぞれの組成のすべての数は百分率である。比較例(CE-1~CE-4)は、カルボキシル化オレフィンコポリマーを含まない。本発明の実施例(IE-1~IE-6)はすべて、発泡性組成物中に存在する樹脂の総重量に基づいて、5重量%または10重量%の量でカルボキシル化オレフィンコポリマーを含む。
【0120】
表2は、本発明に基づく、本発明の実施例ならびに対応する比較例を列挙する。CE-1~CE-4は、酸を含むポリマーを含まないOBCに基づく比較例である。IE-1~IE-3およびIE-4~IE-6は、5(IE-1~IE-3)および10phr(IE-4~IE-6)の酸含有ポリマーを含むことを除いて、CE-1と同様の組成を有する本発明の実施例である。本発明の試料(IE-1~IE-3およびIE-4~IE-6)の実験結果および比較試料(CE-1~CE-4)の実験結果は、以下の表3に列挙される。
【0121】
表3に、INFUSE(商標)オレフィンブロックコポリマーの代わりにポリエチレンビニルアセテートをエラストマーとして使用した、他の比較発泡性組成物(CE-5~CE-7)を列挙する。
【表2】
【表3】
【0122】
図2は、同じ過酸化物レベルでのエチレン-メタクリル酸(E-MAA)コポリマーがある場合とない場合のオレフィンブロックコポリマー(OBC)系について移動ダイレオメーター(MDR)によって測定された硬化曲線を示す。図2は、E-MAAコポリマーがある(IE-1およびIE-4)またはない(CE-3)OBC系のMDR硬化トルクを示すグラフである。E-MAAを添加すると、硬化レベルが大幅に向上する。対照的に、EVA系(図3を参照)では、硬化挙動はOBC系で観察されるものとはかなり異なる。図3は、(CE-5~CE-7)E-MAAコポリマーがある場合とない場合のEVA系のMDR硬化トルクを示すグラフである。EVA/E-MAA系は、最初は低い硬化レベルを示し、5分後にEVA硬化曲線を超える。
【0123】
図4は、異なる発泡体密度でのE-MAAがある場合とないOBC発泡体の発泡体硬度のグラフである。5または10phrのE-MAAを添加すると、同じ密度で発泡体の硬度(図4)が大幅に向上し、これは、硬度が低下してはならない(つまり低下していない)軽量発泡体に特に役立つ。
【0124】
図5は、E-MAAコポリマーがある場合とない場合の異なる発泡体密度でのOBC発泡体の圧縮力を比較する。図5は、E-MAAがある場合とない場合のOBC発泡体の発泡体圧縮強度のグラフである。OBC/E-MAAベースの発泡体は、密度範囲全体(0.15g/cc~0.2g/cc)でより高い圧縮力を示す。圧縮強度の増加は、発泡ミッドソールの人体に対するサポート能力が高いことを示す。発泡体密度が低いほど、発泡体が支持能力を発揮するのが難しくなる。圧縮力の増加は、同じ発泡体変形率でミッドソールがより高い重量を支えることができるか、同じ圧縮力の下で発泡体がより少なく変形する可能性があることを意味する。
【0125】
発泡体の耐久性を反映する特性は、圧縮永久歪みの回復である。図6は、E-MAAがある場合とない場合の異なる発泡体密度でのOBC発泡体の割れ目に対する圧縮永久歪みのグラフである。典型的には、圧縮永久歪みの抵抗は改善されるが(耐久性が向上する)、硬化レベルが上がるとスプリット引裂きが損傷し、軽量発泡体でバランスをとることが困難になる。本発明において、スプリット引裂きに対する圧縮永久歪みのプロットは、E-MAAの添加が、所与のスプリット引裂き強度でより低い圧縮永久歪みを生成する可能性があることを示している。
【0126】
図7は、E-MAAがある場合とない場合のOBCおよびEVA発泡体の発泡体密度に対して設定された圧縮のグラフである。図7は、異なる発泡体密度でのE-MAAがある場合とない場合のOBCまたはEVA系の圧縮永久歪みを要約している。OBC系では、E-MAAを添加すると、純粋なOBC発泡体(E-MAAなし)と比較して、圧縮永久歪みの抵抗が劇的に向上する(すなわち、圧縮永久歪みの割合が低くなる)。しかしながら、EVA系では、圧縮永久歪みの数が多く、硬化レベルの低下によりさらに増加した。
【0127】
図8は、CE-2およびIE-6の発泡性能を比較したスパイダーグラフである。IE-6は、他の性能特性を維持しながら、はるかに低い密度でより高いスプリット引裂き抵抗を提供することは明らかである。
【0128】
これらの実験は、発泡性組成物中のエチレンメタクリル酸の量が増加し、活性化剤とカルボン酸コポリマーの比率が高い場合、発泡体の膨張比は依然として類似しており、対応する発泡体密度は、0.23g/cc以下、好ましくは0.22g/cc以下、より好ましくは0.20g/cc以下であることができる。
【0129】
図から、開示された発泡体は、40~60のアスカーC硬度を有することが分かるかもしれない。一実施形態では、開示された発泡体は、ASTM D2240に従って測定した場合、42を超える、好ましくは43を超える、より好ましくは44を超えるアスカーC硬度を有する。
【0130】
また、発泡体は、ASTM D395メソッドBに従って測定した場合、50%未満の圧縮永久歪みを示す。発泡体は、ASTM D3574に従って測定した場合、2.4N/mmを超えるスプリット引裂きを示す。
【0131】
発泡体の密度は、約0.15g/cc以上、好ましくは約0.16g/cc以上、好ましくは約0.17g/cc以上、好ましくは約0.18g/cc以上である。発泡体は、0.23g/cc以下、および0.22g/cc以下の密度を有し得る。これらの特性により、発泡体は靴底としての履物での使用に適している。
なお、本発明には、以下の実施形態が包含される。
[1]発泡性組成物であって、
エチレンおよびα-オレフィンを含むオレフィンコポリマーと、
中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーと、
架橋剤と、
発泡剤と、
金属酸化物、金属水酸化物、金属塩、またはそれらの組み合わせを含む活性化剤と、を含み、前記中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーに対する前記活性化剤の重量比が0.3より大きい、発泡性組成物。
[2]前記オレフィンコポリマーが、オレフィンブロックコポリマーであり、前記発泡性組成物の総重量に基づいて、60~90重量%の量で前記発泡性組成物中に存在する、前記[1]に記載の発泡性組成物。
[3]前記α-オレフィンが、オクテンである、前記[1]に記載の発泡性組成物。
[4]前記カルボキシル化オレフィンコポリマーが、発泡性組成物中の樹脂の総重量に基づいて、5~20重量%の量で発泡性組成物中に存在する、前記[1]に記載の発泡性組成物。
[5]前記カルボキシル化オレフィンコポリマーが、カルボン酸を含み、前記カルボン酸が、アクリル酸またはメタクリル酸である、前記[1]に記載の発泡性組成物。
[6]前記架橋剤が、過酸化物であり、前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドである、前記[1]に記載の発泡性組成物。
[7]前記発泡性組成物から製造された発泡体が、0.15~0.20g/ccの密度、ASTM D2240に従って測定したときの40~60のアスカーC硬度、ASTM D3574に従って測定したときの2.4N/mmを超えるスプリット引裂きを有する、前記[1]に記載の発泡性組成物。
[8]前記[1]~[7]のいずれか一項に記載の発泡体組成物から製造された物品。
[9]前記物品が、履物の靴底である、前記[8]に記載の物品。
[10]発泡性組成物を製造する方法であって、
エチレンおよびα-オレフィンを含むオレフィンコポリマーと、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーと、架橋剤と、発泡剤と、発泡性組成物を形成するための活性化剤と、を一緒にブレンドすることと、中和されていないカルボキシル化オレフィンコポリマーに対する活性化剤の重量比が0.3より大きく、
前記発泡性組成物を加熱して前記発泡剤および架橋剤を活性化し、架橋発泡体を形成することと、を含む、方法。
[11]前記発泡性組成物を成形することをさらに含む、前記[10]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8