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特許7430710高い近赤外透過率及び非常に低い可視透過率を有するガラスシート
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  • 特許-高い近赤外透過率及び非常に低い可視透過率を有するガラスシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】高い近赤外透過率及び非常に低い可視透過率を有するガラスシート
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/087 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
C03C3/087
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021513782
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019072990
(87)【国際公開番号】W WO2020057926
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】18194808.4
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ボゲルト, ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ボラン, フランソワ
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-193983(JP,A)
【文献】特開平07-242440(JP,A)
【文献】特表2017-526602(JP,A)
【文献】米国特許第06001494(US,A)
【文献】国際公開第98/028236(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/078629(WO,A2)
【文献】特開2011-251882(JP,A)
【文献】特表2016-520503(JP,A)
【文献】特開2006-056727(JP,A)
【文献】国際公開第2018/015395(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108059341(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 - 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩タイプのガラスシートであって、前記ガラスシートが、
(i)ガラスの全重量による、重量パーセンテージとして表される含有量において、
- 全鉄(Feとして表される)0.002~1.1%、
- マンガン(MnOとして表される)≧0.005%、
び、
- クロム(Crとして表される)0.0005~1.3%、
- SiO 40~78%
を含み、且つ
(ii)
- 重量パーセンテージとして表される、全鉄、マンガン及びクロムの含有量の合計(Fe+MnO+Cr)≧1%、
- Fe*/(49+0.43(Cr*-MnO*))として定義される比R1<1、及び
- Fe*/(34+0.3(Cr*-MnO*))として定義される比R2<1の組成物を有し、ただし、Fe*、MnO*及びCr*は、合計(Fe+MnO+Cr)に対する相対的なパーセンテージであ前記組成物はMnO/(MnO+Cr )として定義される比R3>0.7を有する、ガラスシート。
【請求項2】
前記組成物がマンガン(MnOとして表される)≦4%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のガラスシート。
【請求項3】
前記組成物がマンガン(MnOとして表される)≦3%を含むことを特徴とする、請求項2に記載のガラスシート。
【請求項4】
前記組成物が合計(Fe+MnO+Cr)≧1.1%を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項5】
前記組成物が:
- マンガン(MnOとして表される)>1%、及び
- クロム(Crとして表される)0.0005~0.15%を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項6】
前記組成物が全鉄(Feとして表される)0.002~0.1%を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項7】
前記組成物がクロム(Crとして表される)0.0005~0.1%を含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載のガラスシート。
【請求項8】
前記組成物が:
- マンガン(MnOとして表される)0.005~1%、及び
- クロム(Crとして表される)0.2~1.3%を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項9】
前記組成物がマンガン(MnOとして表される)0.03~1%を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項10】
前記組成物がR3>0.9を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項11】
前記ガラスシートが5%未満のTLD4を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項12】
前記ガラスシートが82%超のT1050を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のガラスシート。
【請求項13】
前記ガラスシートが85%超のT1550を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のガラスシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外域において高い透過率を有するが、可視範囲において非常に低い透過率を有するケイ酸塩ガラスシートに関する。
【0002】
本発明は、自動運転車、特に、LiDARシステムを完全に統合する自動運転車の文脈内で特に適している。
【背景技術】
【0003】
一般にLiDARシステムに依拠する、自動運転車の現在の目覚ましい発展によって、特に、IR用途の需要は絶えず大きくなっている。今日では、市場の動向と要求は、(美的理由及びシステムへの損傷の防止のような多数の明瞭な理由のために)車内で完全に統合され且つ、特に、1つ又は複数のそのグレージング(リアウィンドウ/リアウインドシールド/バックウインドシールド及び/又はガラストリム)の内面の後ろに取り付けられる、それらのLIDARシステムを有することである。自動運転車のLIDAR技術の最新の発展によって、目的の2つの主波長範囲、すなわち1000~1100nm(特に1050nm)及び1500~2000nm(特に1550nm)が使用される。
【0004】
自動車において使用されるレギュラーガラス(クリア、着色、コート等)は、ソーダ石灰ケイ酸塩タイプであり、限られたコストで、とりわけ、高度に機械的、化学的及び老化耐性であるという利点を有する。しかしながら、それらのガラスは不十分な近赤外透過率を示すので、前記ガラスの吸収による高いIR信号損失のために後ろに取り付けられるLIDARシステムの使用は可能でない。
【0005】
近年、車のビジョン・グレージング(リアウィンドウ/リアウインドシールド/バックウインドシールド)のために要求される可視透過率の高いレベルを維持しながら、近IR領域、特に範囲750~1050nmのかなり高い透過(吸収係数<5m-1)を有するグレージングを得ることを可能にする特定のガラス組成物を使用することが提案されている。この解決策は、とりわけPCT国際公開第2018/015312A1号パンフレットに記載されている。しかしながら、これらの記載されたガラス組成物は高い可視透過率を示すので、LIDARシステムのような、後ろに置かれた任意の要素は車の外側から可視的であり、それによってその審美性を大幅に低下させる。
【0006】
最近、国際公開第2018/015313A1号パンフレットにおいて、前記システムの良いレベルの作動性能を確実にしながら、LIDARシステムの美的でない要素を外側から隠すために、公知のIR透過ガラスシートとIR透明着色/不透明色コーティングとを組み合せることが提案されている。このコーティングは、例えば、可視範囲に透過性がないが(又は非常に低い)用途のための目的の赤外範囲に高い透過率を有する黒色インク又は黒色フィルムの層であることができる。このようなインク又はフィルムは一般的に、有機化合物から製造される。残念なことに、「クリア」又は透明なガラスシートと黒色層/フィルムとを組み合せるこの解決策は、(ガラス自体と比較して)層/フィルムの不十分な耐性のようないくつかの欠点を有し、それによって組立体を壊れやすくし、また、それはこのコートされたガラスシートに別のシートを積層することを必要とする。最後に、このような黒色層/フィルムで覆われるガラスシートを様々な形状において湾曲させる/屈曲させることは本当に難しい。
【0007】
自動運転車及びLIDAR技術の文脈から、当技術分野はまた、バルクで高度に着色~不透明色であり、近IR範囲において非常に良い透過性能をも示すいくつかのガラスを提案している:
- カルコゲナイドガラスという名称の特殊ガラスは、カルコゲン(硫黄S、セレンSe又はテルルTe)をベースとしており、酸素を含有しない。カルコゲナイドガラスは、赤外域に大きい透明領域を有することで確かに知られており、いくつかの組成物は、可視線に対して不透明であることができる。しかしながら、このようなガラスは、2つの主な欠点を有する。第一に、カルコゲナイドガラスは、非常に不十分な機械抵抗を有する。例えば、カルコゲナイドガラスの報告された硬度値は、(ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの4.8~5.0GPaと比較して)0.39~2.35GPaの間の範囲である。第二に、カルコゲナイドガラスは、それらが非常に高価であることで知られている:非常に高価な原材料に加えて、カルコゲナイドガラスの合成中に酸素汚染が許容されず、それはガラス部品のサイズ、量及び価格に関して固有の制限を有する複雑な製造炉を必要とする。最後に、カルコゲナイドガラスはまた、いくつかのひどい環境問題を有する。これらの欠点は明らかに、慣例に従って使用されるソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの代用品として、すなわち自動車分野においてそれらを使用するのを妨げる。
- 特殊設計されたソーダ石灰ケイ酸塩ガラス組成物は、国際公開第2015/091106号パンフレットにおいてIRタッチディスプレイの文脈で説明されている。それは、ソーダ石灰ケイ酸塩をベースとした母材中に、クロム及びコバルトを特定の量で含み、近赤外透過率に関して良い性能と共に非常に強い色~不透明度を示す。残念なことに、その赤外透過率は850~950nmの間の限られた波長についてだけ高い値に達し、それは、例えば眼の安全性要件のために、より高い波長、すなわち1000~1100及び/又は1500~2000nm、特に1050nm及び1550nmの高い赤外透過率を求めるLIDAR技術のためのその使用を妨げる。特に、この公知のガラスの組成物は、0.002~0.06wt%の全鉄、0.0015%~1%のクロム(Crとして)及び0.0001%~1%のコバルト(Coとして)を含み、クロム含有量は、Cr>(-17*Co)+0.0535であるような含有量である。
【0008】
したがって、最新技術は、付加的な黒色/不透明色層/フィルムを必要とせずに非常に低いか又はゼロの可視透過率と共に、特に1000~2000nmの範囲において高い近赤外透過率を有する(ソーダ石灰)ケイ酸塩タイプのガラスを提供する解決策を全く提供していない。
【0009】
しかし、美意識に対する消費者の要求の高まりと共に商品化して採算が採れる自動運転車の迅速な開発と市場の強い要望の文脈で、近IR範囲及び特に1000~2000nmにおいて高い透過率を示し、且つ可視範囲において本質的に非常に低いか又はゼロに近い透過率を有する(バルクで高度に着色~不透明色であることを意味する)ケイ酸塩タイプのガラスシートを有する必要が明らかにある。その場合には、車に取り付けられる(すなわちトリムとして)このようなガラスシートは、その内面の後ろにLIDARシステム(例えば、1000~2000nmの範囲を使用する)を置くことを可能にし、同時に:
- LIDARシステムの良い性能を確実にすることができ、
- 前記システムの美的でない要素を車の外側から隠すことができ、及び
- レギュラーガラスの固有の耐性(機械的、化学的、老化)のレベルを保持することができ、及び
- 適度なコストを達成することができる。
【0010】
また、このようなガラスシートは、LIDARセンサー自体のためのカバーレンズとして非常に有用である。従来のカバーレンズは、適した赤外透過を提供するが耐久性に関して非常に不十分であるプラスチックから製造される。プラスチックは全く不十分な機械的及び化学的耐性を提供する。根本的に、ガラスは、その機械的特性、その耐久性、その耐引掻性の結果として且つまた、必要とされるならば、化学的に又は熱的に強化されることができるので、好ましい材料である。さらに、プラスチックと比較して、ガラスは、そのより高い融点及びより低いCTEのために、加熱されるときに、すなわち自動車用途においてデフロストシステムと組み合せられるときに、いっそう適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はとりわけ、先行技術の言及された欠点を克服する目的を有する。
【0012】
より正確には、本発明の1つの目的は、シートの耐性特性を低下させないままで、非常に低いか又はゼロの可視透過率と共に特に1000~2000nmの領域において高い近赤外透過率を有するケイ酸塩タイプのガラスシートを提供することである。
【0013】
特に、本発明の目的は、付加的な黒色/不透明色層/フィルムを必要とせずにそれによってその固有の特性のために、非常に低いか又はゼロの可視透過率と共に、特に1000~2000nmの範囲において高い近赤外透過率を有するケイ酸塩タイプのガラスシートを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、製造が簡単で且つ安価である、先行技術の不利な点に対する解決策を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ケイ酸塩タイプのガラスシートであって、前記ガラスシートが、
(i)ガラスの全重量による、重量パーセンテージとして表される含有量において、
- 全鉄(Feとして表される) 0.002~1.1%、
- マンガン(MnOとして表される) ≧0.005%、
及び任意選択により、
- クロム(Crとして表される) 0~1.3%、
を含み、
(ii)
- 重量パーセンテージとして表される、全鉄、マンガン及びクロムの含有量の合計(Fe+MnO+Cr)≧1%、
- Fe*/(49+0.43(Cr*-MnO*))として定義される比R1<1、
- Fe*/(34+0.3(Cr*-MnO*))として定義される比R2<1の組成物を有し、ただし、Fe*、MnO*及びCr*は、合計(Fe+MnO+Cr)に対する相対的なパーセンテージである、ガラスシートに関する。
【0016】
したがって、本発明は、先行技術の不利な点に対する解決策を見出すことを可能にするので、新規で創意に富んだ方法である。驚くべきことに、特定の比R1及びR2に応えながら低/中鉄ガラス母材(20~1000ppmの全鉄)中に特定の量でマンガンを加えることによって、1000~2000nm領域において、特に1050nm及び1550nmの目的の波長で高い赤外透過率を有すると共に、本質的に非常に低い可視透過率を示すガラスシートに至ることができることを本発明者は確かに見出した。
【0017】
使用される出発材料の大部分において不純物となっている本質的に或る量の鉄を含有するソーダ石灰ケイ酸塩ガラスにおいて赤外域の高い透過率を得るために、ガラス中の第一鉄Fe2+イオンの量を最大に低減させることが公知である。確かに、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラス中の第一鉄イオン(酸化物FeOとして表される場合がある)は、1050nmを中心とするそれらの幅の広い吸収バンドのために近赤外域において吸収する。例えば国際公開第2015/091106号パンフレットに記載されているような、公知のクロム含有低鉄ガラスにおいて、高い近赤外透過率を得るために全てのFe2+をFe3+に酸化するように適合された量でクロムを添加する。ガラスのための典型的な強力着色剤としてクロムは何年も前から知られているが、ガラスのクロム含有量を完全に酸化された鉄に必要とされる閾値よりもさらに増加させると、Fe2+がゼロ量であるため且つ850nm超でCr3+又はCr6+イオンの吸収は生じないことが知られているため(Bamford)高いレベルの赤外透過率を維持しながら可視透過率の著しい減少をもたらす。しかしながら驚くべきことに、当技術分野に公知であることに基づいて予想されるこの結果が達せられていないことが本発明者によって観察された。確かに、Fe2+が検出されないクロム含有ガラスから出発して、Crをさらに徐々に添加すると、近赤外透過率(特に1050nm及び1550nmにおける)を減少させる。実例として、このようなクロム含有ガラスにおいて、Crの量>1.3wt%で低い可視透過率が確かに得られるが(TL<10%)、1050nmにおける赤外透過率(T1050)は88%未満に低下する。
【0018】
任意選択によりクロムの或る量と組み合せてかなりの量のマンガンをガラスに添加することによって、高い量のクロムだけを含有するガラスと比較して本発明の目的に達するためにはるかにより良い効率を有することを我々は観察した。酸化数Mn3+のマンガンは、約490nmにおける幅の広い吸収バンドのために可視線を吸収し、1000nm付近で報告された小さな吸収バンドを有する(Bamford)。工業炉内で直面する溶融条件においてガラス中のマンガンの他の報告された原子価は、可視波長及び近IR波長において吸収がほとんどないMn2+である。ガラスをマンガンで着色/不透明にすることによって、同様なレベルの可視透過率に対して、より良い近赤外透過率を生じるという事実は、したがって意外であった。
【0019】
本記載及び請求の範囲において、ガラスシートの可視透過率(視感透過率(luminous transmission)/透過率(transmittance)又はTLとも呼ばれる)を定量化するために、(標準ISO9050に従って)2°の観察立体角で4mmのシートの厚さについてD65光源を使用する可視透過率(TLD4)を考える。可視透過率(TL)は、ガラスシートを通って透過される波長380nm~780nmの間で放射される輻射束のパーセンテージを表わす。
【0020】
本記載及び請求の範囲においてまた、赤外透過率を定量化するために、(標準ISO9050に従って)2°の観察立体角で4mmのシートの厚さについてこの透過率を考え、それは、ガラスシートを通って透過される近IR範囲の特定の波長すなわち1050nm(T1050)及び1550nm(T1550)で放射される輻射束のパーセンテージを表わす。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、簡単な例示的な且つ非制限的な実施例によって与えられる好ましい実施形態及び図面の以下の説明を読むことから明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例3、6及び12について(可視域及び近赤外域を集める)波長300~2000nmの間の波長の透過率の曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書全体にわたって、範囲が示されるとき、別の方法で明示的に示される場合を除いて、端の値が含まれる。さらに、数値の範囲の全ての整数値及びサブドメイン値は、明示的に書かれるかのように明確に含まれる。また、本明細書全体にわたって、含有量の値は、別の方法で明示的に示される場合を除いて(wt%としても言及される)ガラスの全重量に対して表わされる重量パーセンテージ単位である(すなわちppm単位)。さらに、ガラス組成物が与えられるとき、これは、ガラスのバルク組成物に関する。
【0024】
本発明の意味の範囲内で「ガラス」という用語は、完全非晶質材料であることを意味すると理解され、したがって任意の結晶材料、部分的結晶材料(例えば、ガラス-結晶材料又はガラス-セラミック材料など)さえも除外する。
【0025】
本発明のガラスシートは、ガラス原材料のバッチをガラス溶融炉/タンク内で溶融する工程から出発して、次に、フロート法、延伸法、圧延法又は溶融ガラス組成物から出発してガラスシートを製造するための公知の任意の他の方法を使用して、得られた溶融ガラスを所望の形状に形成して製造されることができる。本発明の実施形態において、ガラスシートはフロートガラスシートである。「フロートガラスシート」という用語は、公知のフロートガラス法によって形成されるガラスシートを意味すると理解される。他の形成/加工処理は製造法に従うことができる。
【0026】
本発明において「ガラスシート」とは、フラットガラス、湾曲ガラス、屈曲ガラス、レンズ等のシート状形態のガラス物品を意味する。
【0027】
本発明によるガラスシートは、小さなサイズ(例えば、カバーレンズ)から、中程度のサイズ(例えば、自動車グレージング用)、非常に大きいサイズ(「DLF」又は「PLF」サイズまで)に至るまで様々なサイズを有することができる。また、本発明によるガラスシートは、目標とする用途に応じて、0.1~25mmの厚さを有することができる。好ましくは、本発明によるガラスシートは、1~8mm、より好ましくは、1.5~5mmの厚さを有する。
【0028】
本発明によると、本発明の組成物は、全鉄(Feによって表される)を次の通り0.002~1.1wt%含む。本説明において、ガラス組成物中の全鉄含有量について言及するとき、「全鉄」及び「Fe」は同様に使用され、全鉄はFeによって表される。0.002wt%の最小値は、これより低い鉄値はしばしば費用がかかる非常に高純度の出発材料及び/又はそれらの精製を必要とするので、ガラスのコストをあまり損なわないことを可能にする。実施形態によると、組成物は全鉄を次の通り0.002~0.6wt%含む。好ましくは、組成物は全鉄を次の通り0.002~0.4wt%含む。より好ましくは、組成物は全鉄を次の通り0.002~0.2wt%、又はさらに0.002~0.1wt%含む。非常に好ましい実施形態において、組成物は全鉄を次の通り0.002~0.08wt%又はさらに、0.002~0.06wt%含む。最も好ましい実施形態において、組成物は全鉄を次の通り0.002~0.04wt%、又はさらに、0.002~0.02wt%含む。全鉄の最大値の減少は、マンガンの与えられた量に対して、より低い可視透過率に達することを可能にする。
【0029】
本発明の実施形態によると、ガラスシートはマンガン(MnOとして表される)≦5%を含む。好ましくは、組成物はマンガン(MnOとして表される)≦4%を含む。より好ましくは、組成物はマンガン(MnOとして表される)≦3%を含む。
【0030】
本発明によると、組成物は、重量パーセンテージとして表される、全鉄、マンガン及びクロムの含有量の合計(Fe+MnO+Cr)、≧1%を有する。好ましくは、重量パーセンテージとして表される、全鉄、マンガン及びクロムの含有量の合計(Fe+MnO+Cr)、≧1.1%である。より好ましくは、重量パーセンテージとして表される、全鉄、マンガン及びクロムの含有量の合計(Fe+MnO+Cr)、≧1.2%である。これらの実施形態は、可視透過率を減少させる利点を有する。
【0031】
本発明によると、組成物は、Fe*/(49+0.43(Cr*-MnO*))として定義される比R1<1を有する。このようなR1値は、鉄がFe3+に完全に酸化するのを可能にし、それによって、近赤外域において吸収するFe2+種を避けることを可能にする。
【0032】
本発明によると、組成物は、Fe*/(34+0.3(Cr*-MnO*))として定義される比R2<1を有する。このようなR2値は、非常に低い可視透過率を可能にし、さらには不透明をも可能にする。
【0033】
本発明の実施形態によると、ガラスシートは、20%未満及び好ましくは15%未満、又はさらに12%未満の可視透過率TLD4を有する。より好ましくは、ガラスシートは、10%未満、又はさらに8%未満、より良くは6%未満、又はさらにより良くは5%未満の可視透過率TLD4を有する。不透明度は、TLD4がますますいっそう減少するときに高まる。理想的には、ガラスシートは、2%未満、さらに1%未満の可視透過率TLD4を有する。TLD4が0に近づくか又は等しいときに完全な不透明に至る。
【0034】
本発明の別の実施形態によると、ガラスシートは、80%超及び好ましくは82%超の透過率T1050を有する。より好ましくは、ガラスシートは、85%超及び非常に好ましくは87%超の透過率T1050を有する。非常に好ましい実施形態において、ガラスシートは、90%超の透過率T1050を有する。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態によると、ガラスシートは、80%超及び好ましくは85%超の透過率T1550を有する。より好ましくは、ガラスシートは、87%超及び非常に好ましくは90%超の透過率T1550を有する。
【0036】
本発明において、組成物はCrとして表されるクロムを任意選択により、次の通り0~1.3%含む。本明細書において、クロムに関連づけられた「任意選択により」という用語は、(i)Cr中の含有量が0wt%であることができること(ガラス組成物を分析するための一般的に使用される技術の検出限界において、組成物がクロムを含有していないこと)及び(ii)組成物がCrを1.3wt%の量まで含むことができることを意味する。
【0037】
本発明によると、本発明の組成物はマンガン(MnOとして表される)≧0.005%を含む。好ましくは、組成物はマンガン(MnOとして表される)≧0.01%を含む。より好ましくは、組成物はマンガン(MnOとして表される)≧0.02%、又はより良くは≧0.02%を含む。マンガンの最小値の増加は、たとえそれが近赤外透過率にある程度悪影響を与えるとしても、全鉄の与えられた量に対して、より低い可視透過率に達することを可能にする。
【0038】
好ましくは、組成物は、Crとして表されるクロムを任意選択により、次の通り0~0.8%、又はさらに0~0.5%又はさらにより良くは0~0.3%含む。より好ましくは、組成物は、Crとして表されるクロムを任意選択により、次の通り0~0.15%、又はさらに0~0.1%又はさらにより良くは0~0.06%含む。最も好ましい実施形態において、組成物は、Crとして表されるクロムを任意選択により、次の通り0~0.02%、又はさらに0~0.01%含む。Crの上限のこのような減少は、1050nm及び1550nmにおけるより良い透過性能を得ることを可能にする。
【0039】
有利には、ガラスシートの組成物はCrを含有しない。Crを含有しないとは、組成物が<0.0005wt%、好ましくは<0.0003wt%のCr含有量を有することを意味する。この実施形態は、
- クロムが、一般的には医学的及び環境的な理由のための消費財において避けられるのが好ましい化学種であること、及び
- より良い結果が得られること、すなわち、与えられた可視透過率に対して、T1050及びT1550がより高いことにおいて、有利である。
【0040】
本発明の第1の主な代案によると、組成物は:
マンガン(MnOとして表される)>1%、及び
クロム(Crとして表される)0~0.15%を含む。
【0041】
このような実施形態は、低い可視透過率並びに1050nm及び1550nmにおける非常に高い透過率に達することを可能にするので、特に有利である。本発明のこの第1の主な代案によると、好ましくは、組成物は全鉄(Feとして表される)を次の通り0.002~0.2%及びより好ましくは、0.002~0.1%、又はさらに0.002~0.04%含む。本発明のこの第1の主な代案によると、好ましくはまた、組成物はMnOとして表されるマンガンを次の通り≧1.1%又はさらに≧1.2、又はさらにより良くは≧1.3%含む。本発明のこの第1の主な代案によると、好ましくはまた、組成物はCrとして表されるクロムを次の通り0~0.1%、又はさらに0~0.06%又はさらに0~0.02%、又はさらにより良くは0~0.01%含む。この第1の主な代案による最も好ましい実施形態において、組成物はCrを含有しない。或いは、本発明のこの第1の主な代案によると、組成物はCrとして表されるクロムを次の通り0.0005~0.15%、又はさらに0.001~0.15%又はさらに0.002~0.15%含む。
【0042】
本発明の第2の主な代案によると、組成物は:
マンガン(MnOとして表される)0.005~1%、及び
クロム(Crとして表される)0.2~1.3%を含む。
【0043】
このような実施形態は、低い可視透過率並びに1050nm及び1550nmにおける高い透過率に達することを可能にするので特に有利である。本発明のこの第2の主な代案によると、好ましくは、組成物はマンガン(MnOとして表される)を次の通り0.01~1%又はさらに、0.05~1%、又はさらにより良くは0.1~1%含む。より好ましくは、組成物はマンガン(MnOとして表される)を次の通り0.2~1%又はさらに、0.3~1%、又はさらにより良くは0.4~1%含む。本発明のこの第2の主な代案によると、好ましくはまた、組成物はCrとして表されるクロムを次の通り0.2~1.1%、又はさらに0.2~1%又はさらに0.2~0.8%、又はさらにより良くは0.2~0.7%含む。
【0044】
本発明の第1及び第2の主な代案は、両立できる場合は、本明細書で説明される1つ又は複数の特定の実施形態と組み合わせられることができる。
【0045】
有利には、ガラスシートの組成物は、MnO/(MnO+Cr)として定義される比R3>0.3を有し、それぞれの含有量はwt%で表される。好ましくは、比R3>0.5又はより良くはR3>0.7である。より好ましくは、R3>0.9である。R3における低い側の範囲のこのような増加は、TLを非常に低く維持しながら1050nm及び1550nmにおけるより良い透過性能を得ることを可能にする。
【0046】
本発明の有利な実施形態によると、組成物はバナジウム(Vとして表される)を次の通り0.005~0.3%含む。このような実施形態は、ガラスシートにUVカット特性を与えることを可能にし、それは組成物中のバナジウムの存在がUV範囲の放射線の著しい吸収をもたらすことを意味する。
【0047】
本発明によるガラスシートは、フロート法、延伸法、或いは圧延法又は溶融ガラス組成物からガラスシートを製造するための公知の任意の他の方法によって得られるガラスシートであることができる。本発明による好ましい実施形態によれば、ガラスシートはフロートガラスシートである。「フロートガラスシート」という用語は、還元条件下で、溶融スズの槽上に溶融ガラスを流し込むことからなるフロート法によって形成されるガラスシートを意味すると理解される。フロートガラスシートは、公知の方法で、「スズ面」、すなわち、シートの表面に近いガラスの本体のスズが豊富な面を含む。「スズが豊富」という用語は、実質的にゼロ(スズを含有しない)であってもなくてもよい、コアのガラスの組成物と比べたスズの濃度の増加を意味すると理解される。
【0048】
本発明によるケイ酸塩ガラスシートは、様々なカテゴリーに属することができるガラスから製造される。したがってガラスはソーダ石灰ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩又はホウケイ酸塩タイプ等のガラスであることができる。好ましくは、ガラスシートの組成物は、ガラスの全重量に対して表わされる、重量パーセントで以下のものを含む:
SiO 40~78%
Al 0~18%
0~18%
NaO 0~20%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
O 0~10%
BaO 0~5%。
【0049】
実施形態において、ガラスシートの組成物はMgO≧0.1%及び好ましくは、MgO≧0.5%を含む。
【0050】
より好ましくは、とりわけ低い製造コストの理由のために、ガラス組成物はソーダ石灰ケイ酸塩タイプのガラスである。この実施形態によれば、「ソーダ石灰ケイ酸塩タイプのガラス」とは、組成物がガラスの全重量に対して表わされる、重量パーセントで以下のものを含むことを意味する:
SiO 60~78wt%
Al 0~8wt%
0~4wt%
CaO 0~15wt%
MgO 0~10wt%
NaO 5~20wt%
O 0~10wt%
BaO 0~5wt%。
【0051】
この実施形態によると、好ましくは、ガラス組成物は、ガラスの全重量に対して表わされる、重量パーセントで以下のものを含む:
SiO 60~78wt%
Al 0~6wt%
0~1wt%
CaO 5~15wt%
MgO 0~8wt%
NaO 10~20wt%
O 0~10wt%
BaO 0~1wt%。
【0052】
本発明の別の実施形態において、組成物は、ガラスの全重量に対して表わされる、重量パーセントで以下のものを含む:
65≦SiO≦78wt%
5≦NaO≦20wt%
0≦KO<5wt%
1≦Al<6wt%
0≦CaO<4.5wt%
4≦MgO≦12wt%
(MgO/(MgO+CaO))≧0.5。
【0053】
特に、本発明による組成物のための基礎ガラス母材の実施例は、公開PCT特許出願国際公開第2015/150207A1号パンフレット、国際公開第2015/150403A1号パンフレット、国際公開第2016/091672号パンフレット、国際公開第2016/169823号パンフレット及び国際公開第2018/001965号パンフレットに記載されている。
【0054】
ガラスシートの組成物は、特に出発材料中に存在している不純物に加えて、低い比率の添加剤(例えばガラスの溶融又は精製を助ける薬剤)又は溶融炉を構成する耐火物の溶解により生じる成分を含むことができる。
【0055】
本発明のガラス組成物はまた、本発明に関連して記載された着色剤(すなわち鉄、マンガン及びクロム)以外のいくつかの他の着色剤を、主に特定の原材料の汚染に起因して、不純物として含むことができる。このような不純物の例は、モリブデン、コバルト、ニッケル、銅である。
【0056】
有利には、本発明のガラスシートは機械的に又は化学的に強化されることができる。また、それは屈曲/湾曲されるか、又は一般的な方法で、(冷間曲げ、熱成形などによって)変形されて任意の所望の形態になることができる。また、それは積層されることができる。
【0057】
本発明の一実施形態によると、本発明のガラスシートは少なくとも1つのコーティングによって被覆されることができる。このようなコーティングの例は:
- 透明且つ電気導電性薄層(すなわちSnO:F、SnO:Sb又はITO(酸化インジウムスズ)、ZnO:Al又はまたZnO:Gaに基づいた層)、
- 反射防止層、
- 耐指紋層又は指紋が移るのを低減又は防止するように処理されている、
- 審美性及び接合の改良のための黒色エナメルの配置、
- 加熱機能のためのシルバープリントの網目構造、及び/又は
- 防汚及び/又は疎水性層である。
【0058】
望ましい目標用途及び/又は特性によれば、他の層/処理は、本発明によるガラスシートの一方の面及び/又は他方の面上に堆積/実施されることができる。
【0059】
本発明のガラスシートは有利には、自動車グレージングとして、特にトリムとして使用されることができる。このような場合、自動運転車の文脈において、LIDARシステムは車内で完全に統合されることができ(それによって美的及びシステムへの損傷の防止を確実にする)、前記グレージングの内面の後ろに取り付けられる。
【0060】
したがって、本発明はまた、
- 自動車グレージングとして、好ましくはトリム要素として、又は
- LIDARセンサー用のカバーレンズとして
本発明によるガラスシートを使用することに関する。
【0061】
本発明の背景は、車統合LIDARシステムの特定の用途に関して説明されたが、本発明のガラスシートはまた、近IR範囲において、特に1000~1550nmに対して非常に良い性能と共に、ガラスの非常に低い透過率又は非常に強い色を必要とする任意の他の技術において有利に使用されることができる。例えば、それは、前記シートの表面上の1つ又は複数の物体(例えば、指又はスタイラス)の位置を検出するための「平面散乱検出」(PSD)又は「漏れ全内部反射」(FTIR)光学技術において価値が高まることができ、それはそのやや強い色~不透明色のため、それの後ろ/下に見出される物体/部品を部分的に又は完全に隠すことができる。
【0062】
本発明のガラスシートはまた、さらに以下の使用例として価値が高まることができる:
(1)輻射加熱体の前に/周りに配置され、加熱体の美しくない側を(部分的に又は完全に)隠すが赤外線放射を通過させることができ、したがって前記加熱体からの良い出力を可能にする装飾用パネルとして、
(2)建築用又は装飾用スパンドレルガラスとして、
(3)一般的に使用される高価な特殊ガラスの代用品の、クッキングプレートとして(vitroceram又はborofloat又はさらにpyrex)、
(4)赤外線を必要とする技術を使用する場合もある、(「タッチパッド」として一般的に知られている)ポータブルコンピュータのポインティングデバイスとして。この場合、ガラスシートは好ましくは非常に暗色であり、実際にはさらに不透明色であり、したがってその下に置かれる電子部品を隠す、
(5)家具の前面要素として及び特に、遠隔制御可能な電気/電子器具を備え、このような器具の美しくない面を見えなくするが、遠隔制御によって発せられる信号を通過させることを可能にすることが意図される家具の前面要素として。これは、家庭用電気/電子器具(テレビ、ハイファイ、DVDプレーヤー、ゲーム機等)の大部分は、近赤外域の信号を発するハウジングを使用して遠隔制御可能であるからである。しかしながら、この遠隔制御システムは、特に2つの不利な点を示す:(i)信号はしばしば、それをより低感度にする、可視領域(太陽光、照明光)の二次放射線の存在によって乱され、及び(ii)それは電気器具が遠隔制御のIR信号によって到達可能であることを必要とし、したがって需要がやはり美的理由のためにこの方向に進んでいるとしても、これらは家具製品内に見えないようにすることができない。
【0063】
本発明の実施形態はここで、本発明によらない、いくつかの比較例と一緒に、例としてだけさらに説明される。以下の実施例は、例示目的のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0064】
本発明による及び本発明によらない(比較用)異なったガラスシート/試料は、可変量の全鉄、マンガン及びクロムを用いて、3セットの実施例として調製された。
【0065】
セット#1~2のガラス試料の調製のために、以下の表に明記した同じ基礎組成物により、出発材料を粉末形態で混合し、溶融のためにるつぼ内に置き、最終組成物に目標とされる含有量の関数として可変量の全鉄、マンガン及びクロムを含む出発材料をそれに添加した(鉄はすでに、少なくとも部分的には、基礎組成物の出発材料中に不純物として存在しているということが指摘される)。
【0066】
【0067】
セット#3のガラス試料の調製のために、様々な基礎組成物に従って、出発材料を粉末形態で混合し、溶融のためにるつぼ内に置き、一定量の全鉄、マンガン及びクロムを含む出発材料をそれに添加した。
シートの形態に成形及び加工されたそれぞれの試料の光学的特性は、150mmの直径を有する積分球を備えたPerkin Elmer Lambda950分光光度計で決定され、特に:
- ISO9050標準に従って2°の観察立体角で4mmの厚さについて及び特定の波長、すなわち1050nm(T1050)及び1550nm(T1550)で近赤外透過率を決定した。
- ISO9050標準に従って(D65光源を使用して)2°の観察立体角で4mmの厚さについて及び380~780nmの間の波長範囲について光透過率TLもまた決定した。
【0068】
セット#1
実施例9~13は、本発明によるガラスシートに相当する。実施例1(比較用)は、国際公開第2015/091106号パンフレットに従ってクロム及びコバルトを有する低鉄ガラスに相当する。実施例2~7(比較用)は、本発明によらない、マンガン及びクロムを有するガラスシートに相当する。実施例8(比較用)は、本発明によらない、マンガンを有するガラスシートに相当する。
【0069】
本発明によるそれぞれの実施例9~13は、次のように最適化された:
- 近赤外線の、特に1050nm及び1550nmにおけるその透過率を最大にして、特に80%超及びより良くは85~90%超の値に達すること、
- その可視透過率TLを最小にしながら、特に<20%の値及びより好ましくは10%、5%未満の値に達すること(そのとき良い不透明度に達する)。
【0070】
表1は、実施例1~13の光学的特性、鉄、マンガン及びクロム(並びにコバルト)のそれらのそれぞれの量、それらの合計(「合計」として記載されるFe+MnO+Cr)及びそれらの決定された比R1及びR2を示す。
【0071】
【0072】
表1は、「合計」、R1及びR2に課せられる条件を考慮しながら、本発明による含有量中の全鉄、マンガン及び任意選択によりクロムの存在が、非常に低い可視透過率(11.9~0%)並びに1050nmにおける高い透過率(83~90%)及び1550nmにおける高い透過率(90.9~91.8%)を有するガラスシートを得ることを可能にすることを示す。本発明の条件の1つを達成しない場合、TL又はT1050、1550の少なくとも1つを大幅に低下させることになる。
【0073】
最初に、実施例1について、このガラスが0に非常に近いそのTLのために「不透明色」であるとしても、目的の波長(1050nm及び1550nm)におけるその透過率は十分ではないことを結果は示す:1050nmにおける不十分な性能(T1050=54.8%)及び1550nmにおける放射線のほとんど完全な吸収(T1550=0.1%)。このガラスシートは、850~950nm付近の、より低いIR波長を通過させるのに高性能であるように設計された(実施例1のT850=87.5%)。
【0074】
図1は、実施例3、6及び12について(可視域及び近赤外域を集める)波長300~2000nmの間の波長の透過率の曲線を示す。
【0075】
セット#2
実施例14~23は、本発明によるガラスシートに相当する。
【0076】
表2は、実施例14~23の光学的特性、鉄、マンガン及びクロムのそれらのそれぞれの量、それらの合計(「合計」として記載されるFe+MnO+Cr)並びにまたそれらの決定された比R1、R2及びR3を示す。
【0077】
【0078】
この一組の実施例の結果(表2)は、同様なレベルのTLを有するガラスシートについて、1050及び/又は1550nmにおけるより良い透過性能が比R3の増加によって達せられることができることを示す(R3はMnO/(MnO+Cr)として定義され、それぞれの含有量はwt%として表される)。
【0079】
記載された用途の大部分(すなわちLIDARシステム)においてT1050又はT1550の0.5%増加はすでに重要であり且つ価値があることが指摘されなければならない。
【0080】
セット#3
実施例24~26は、異なった基礎組成物(ガラス母材)及び一定量の全鉄、マンガン及びクロムを使用する、本発明によるガラスシートに相当する。実施例24は、ソーダ石灰ケイ酸塩タイプのガラスに相当し、実施例25は、アルミノケイ酸塩タイプのガラスに相当し、実施例26は、ホウケイ酸塩タイプのガラスに相当する。
【0081】
表3は、実施例24~26の光学的特性、それらのそれぞれの基礎組成物並びに鉄、マンガン及びクロムの量、並びにまたそれらの決定された比R1及びR2を示す。
【0082】
図1