(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】連続流マイクロバイオリアクター
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240205BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240205BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240205BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/071
C12Q1/02
C12M1/34 A
(21)【出願番号】P 2021520128
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(86)【国際出願番号】 US2019055231
(87)【国際公開番号】W WO2020076852
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521145749
【氏名又は名称】シュタム ヴェーグ コーポレーション
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】リャマサーレス,ヴェーグ フアン フランシスコ
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/192717(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0248361(US,A1)
【文献】特開2006-189426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0173033(US,A1)
【文献】国際公開第2017/103863(WO,A1)
【文献】特開2019-155279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-1/42
C12Q 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクターであって、
前記バイオリアクターは、
複数の細胞を受け入れるように構成された入口と、
前記入口と流体連通する複数のミニモジュールであって
、複数の
前記ミニモジュールの1つのミニモジュールが、ダブルジャイロイド構造または改良型ダブルジャイロイド構造を含み
、複数の
前記ミニモジュールが前記複数の細胞を流すように構成された少なくとも1つのマイクロチャネルを提供するために流体的に相互接続する、複数の
前記ミニモジュールと、
複数の
前記ミニモジュールと流体連通する出口であって、前記出口が前記複数の細胞またはその誘導体を前記少なくとも1つのマイクロチャネルから外部に導くように構成された、出口と、
を備える、バイオリアクター。
【請求項2】
複数の
前記ミニモジュールは、各々が一定の平均曲率を有する少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルを提供するように相互接続する、請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項3】
前記少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルの第1のマイクロチャネルは液体培地を流すように構成され、および、前記少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルの第2のマイクロチャネルはガス組成物を流すように構成される、請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項4】
前記少なくとも2つの重ならないマイクロチャネル
の前記第1のマイクロチャネルおよび前記第2のマイクロチャネルは、多孔質膜によって分離される、請求
項3に記載のバイオリアクター。
【請求項5】
前記第1のマイクロチャネルの面積は前記第2のマイクロチャネルの面積と同等であり、および、前記多孔質膜の面積は、前記第1のマイクロチャネルと前記第2のマイクロチャネルの面積の和である、請求項4に記載のバイオリアクター。
【請求項6】
複数の
前記ミニモジュールは、ピラミッド、中空のピラミッド、ラメラピラミッド、ラメラ、チェス盤配置、およびログからなる群から選択されるマクロ構造へ組み立てられる、請求項1-5のいずれか1つに記載のバイオリアクター。
【請求項7】
複数の
前記ミニモジュールは前記マクロ構造内において層で構成され、および、前記層は、各層の液体培地の速度が実質的に同じになるように構成される、請求項6に記載のバイオリアクター。
【請求項8】
前記少なくとも1つのマイクロチャネルを流れる液体培地は、前記少なくとも1つのマイクロチャネルを流れる細胞の自由落下速度よりも大きな速度を有する、請求項1-7のいずれか1つに記載のバイオリアクター。
【請求項9】
前記マクロ構造内において前記層の各層に液体培地を流すように構成された液体培地入力装置をさらに備え、前記液体培地
入力装置によって各層に提供される液体培地の量は、
前記層のそれぞれにおいて細胞密度を実質的に一定に維持する、請求項7に記載のバイオリアクター。
【請求項10】
各
前記ミニモジュールを通る液体培地の速度は、細胞が単一の
前記ミニモジュールまたは
前記ミニモジュールの層を横断する時間が、細胞分裂速度と実質的に同じであるように、細胞分裂速度によって決定される、請求項7に記載のバイオリアクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年10月10日に出願された米国仮特許出願62/743,974号の利益を主張するものであり、この文献は全体として参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞、タンパク質、大小の化学分子を含む生物学的製品の生産は、医療、食品、工業、およびその他の製品形態の提供において、ますます注目されている。製品の一貫性と生産規模の拡大、さらには異なる場所や環境条件に合わせて製造を行う柔軟性は、生産のための重要な要素である。
【0003】
バイオリアクターは、細胞を大規模に生産し、そのような細胞からタンパク質や他の分子を製造するための環境を提供する。多くのバイオリアクターは、莫大な資本投資を必要とするだけでなく、大きな物理的スペースを必要とする。さらに、大規模なバイオリアクターの環境は、小規模な成長チャンバーとは環境が異なり、それによって最適ではない成長および生産条件になることがある。同様に、バイオリアクターの規模が大きくなると、個々の細胞レベルで成長条件を調べることが難しくなる。これは、細胞の集団的不均一性を生じさせるだけではなく、細胞によって生成されるバイオ製品の品質、純度、および収率にも影響を与える。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、細胞を生成および維持するためのシステム、コンポーネント、および方法、ならびに細胞とそのような細胞によって作られた製品を製造および単離するためのシステム、コンポーネント、および方法を提供する。本明細書のシステム、コンポーネント、および方法は、スケール、コスト、効率、および一貫性に対処する。
【0005】
一様相では、本開示はバイオリアクターを提供し、上記バイオリアクターは、複数の細胞を受け入れるように構成された入口と、上記入口と流体連通する複数のミニモジュールであって、上記複数のミニモジュールの1つのミニモジュールが、ダブルジャイロイド構造または改良型ダブルジャイロイド構造を含み、上記複数のミニモジュールが、上記複数の細胞を流すように構成された少なくとも1つのマイクロチャネルを提供するために流体的に相互連通している、ミニモジュールと、上記複数のミニモジュールと流体連通する出口であって、上記出口が上記複数の細胞またはその誘導体を上記少なくとも1つのマイクロチャネルから外部に導くように構成された、出口とを備える。
【0006】
いくつかの実施形態では、ミニモジュールは、各々が一定の平均曲率を有する少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルを提供するように相互接続する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルの第1のマイクロチャネルは液体培地を流すように構成され、および、少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルの第2のマイクロチャネルはガス組成物を流すように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルは液体を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの重ならないマイクロチャネルは、多孔質膜によって分離される。いくつかの実施形態では、第1のマイクロチャネルの面積は第2のマイクロチャネルの面積と同等であり、および、多孔質膜の面積は、第1のマイクロチャネルと第2のマイクロチャネルの面積の和である。いくつかの実施形態では、複数のミニモジュールはマクロ構造へ組み立てられる。いくつかの実施形態では、マクロ構造は、ピラミッド、中空のピラミッド、ラメラピラミッド、ラメラ、チェス盤配置、およびログからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、複数のミニモジュールはマクロ構造内において層で配置され、および、層は、各層の液体培地の速度が実質的に同じになるように構成される。いくつかの実施形態では、複数のミニモジュールはマクロ構造内において層で構成され、および、層は、液体培地の速度が層全体にわたって変化するように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマイクロチャネルを通って流れる液体培地は、少なくとも1つのマイクロチャネルを流れる細胞の自由落下速度よりも大きな速度を有する。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、マクロ構造の底部にあるガス入力部と、マクロ構造の頂部にあるガス出力部とをさらに備える。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、複数の細胞を提供するように構成されたマクロ構造の頂部にある細胞入力部と、複数の細胞を収集するように構成されたマクロ構造の底部にある細胞収集装置とをさらに備える。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、複数のミニモジュールの各層に液体培地を流すように構成された液体培地入力装置をさらに備える。いくつかの実施形態では、液体培地装置によって各層に提供される液体培地の量は、層のそれぞれにおいて細胞密度を実質的に一定に維持する。いくつかの実施形態では、各ミニモジュールを通る液体培地の速度は、細胞が単一のミニモジュールまたはミニモジュールの層を横断する時間が、細胞分裂速度と実質的に同じであるか、または細胞分裂速度に比例するように、細胞分裂速度によって決定される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、サンドボックスモジュールに相互接続される。いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、細胞チップモジュールに相互接続される。
【0007】
別の態様では、本開示は細胞産生ためのシステムを提供し、上記システムは、複数の細胞を含むように構成された細胞チップを備える第1のモジュールと、第1のモジュールと流体連通する第2のモジュールであって、第2のモジュールは、(i)細胞チップとインターフェース接続すること、(ii)複数の細胞からの細胞のサブセットを様々なセグメントに導くことであって、ここで、様々なセグメントにおける細胞成長条件は個々に設定可能である、こと、および、(iii)複数の細胞のための成長条件のセットを反復して生成することを、を行うように構成されたサンドボックスバイオリアクターを備える、第2のモジュールと、第1のモジュールと第2のモジュールと流体連通する第3のモジュールであって、第3のモジュールは、(i)第2のモジュールとインターフェース接続し、(ii)細胞のサブセットを収容し、および(iii)成長条件のセット下で細胞のサブセットのコピーを生成するように構成されたバイオリアクターを備える、第3のモジュールを備える。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1のモジュール、第2のモジュール、および第3のモジュールは流体的に相互接続する。いくつかの実施形態では、システムは各モジュールに対応するポンプをさらに備え、ここで、ポンプは対応するモジュールのための流速または圧力で液体培地を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、ポンプは、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、または圧力ポンプである。いくつかの実施形態では、システムは、培養培地フォーミュレーター(formulator)、エレクトロポレーター(electroporator)、リザーバー、ポンプ、気泡センサー、気泡トラップ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されたコンポーネントをさらに備える。いくつかの実施形態では、システムは少なくとも1つのセンサーをさらに備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサーはインラインセンサーである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサーは生物学的パラメーター、物理学的パラメーター、または化学的パラメーターを測定する。いくつかの実施形態では、生物学的パラメーターは、細胞分裂速度、細胞成長速度、細胞ストレス応答、細胞タンパク質含有量、細胞炭水化物含有量、細胞脂質含有量、および細胞核酸含有量からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、物理学的パラメーターは、細胞サイズ、細胞密度、細胞流速、液体培地流速、混合割合、混濁度、温度、および圧力からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、化学的パラメーターは、pH、液体培地組成物、個々の液体培地成分の濃度、ガス組成とガス濃度、および溶解ガス濃度からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、システムはカメラ装置をさらに備える。いくつかの実施形態では、カメラ装置は、サンドボックスバイオリアクターまたはバイオリアクターの出力部からの細胞を数えるように構成される。いくつかの実施形態では、カメラ装置は、少なくとも1つのバイオリアクターモジュールの出力部からの個々の細胞に関連する少なくとも1つの追加のパラメーターを捕捉するように構成され、追加のパラメーターは、細胞の生物学的、化学的、または物理学的な特徴である。
【0009】
別の態様では、本開示は細胞チップモジュールを提供し、上記細胞チップモジュールは、少なくとも1つの流体回路を含む層状構造と、少なくとも1つの流体回路と流体連通する細胞保持領域であって、細胞保持領域は、複数の細胞を保持するように構成された少なくとも1つの第1のトラップを備える、細胞保持領域と、層状構造と流体連通するとともに、細胞保持領域へ液体培地を入力するように構成された入口ポートと、層状構造と流体連通するとともに、使用済みまたは余分な媒体と細胞を集めるように構成された出口ポート、を備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの流体回路は、細胞保持領域へガスを流すように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの流体回路は、細胞保持領域へ液体培地を流すように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのトラップは吸引トラップを備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのトラップはゲートトラップを備える。いくつかの実施形態では、細胞保持領域は第2のトラップをさらに備える。いくつかの実施形態では、第2のトラップはオーバーフロートラップである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのトラップと第2のトラップは互いに直列である。いくつかの実施形態では、細胞保持領域は少なくとも1つのゲートトラップと2つ以上のオーバーフロートラップを備える。いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールは、保存モードの1つ以上の細胞を備える。いくつかの実施形態では、保存モードは、乾燥しているか、凍結乾燥しているか、凍結しているか、または液体中で懸濁されている細胞から選択される。いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールは、細胞チップモジュールを通って流れる細胞を分布させるための1つ以上の物理的障壁をさらに備える。
【0011】
別の態様では、本開示は、一連のセグメントを備えるサンドボックスバイオリアクターモジュールを提供し、ここで、一連のセグメントの1つのセグメントは少なくとも2つのマイクロチャネルを備え、上記少なくとも2つのマイクロチャネルは、上記少なくとも2つのマイクロチャネルの1つのマイクロチャネルの1つの端部から、上記少なくとも2つのマイクロチャネルの上記1つのマイクロチャネルのもう1つの端部まで少なくとも1つの細胞を輸送するように構成され、ここで、マイクロチャネルの1つの端部は、液体培地と少なくとも1つの細胞を入力するように構成され、ここで、マイクロチャネルのもう1つの端部は、液体培地と少なくとも1つの細胞を出力するように構成され、ここで、一連のセグメントにおける成長条件は個々に設定可能である。
【0012】
いくつかの実施形態では、一連のセグメントの第1のセグメントと第2のセグメントは、細胞が第1のセグメントのマイクロチャネルから第2のセグメントのマイクロチャネルまで移動するように、直列に配置される。いくつかの実施形態では、第1のセグメントのマイクロチャネルは、出力端部で第2のセグメントからの少なくとも2つのマイクロチャネルへ分岐し、ここで、少なくとも2つのマイクロチャネルは、第1のセグメントから出力された細胞が少なくとも2つのマイクロチャネルの1つに入力され、第1のセグメントから出力された別の細胞が少なくとも2つのマイクロチャネルの別の1つに入力されるように、並列に配置される。いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターは、一連のセグメントに液体培地を提供するように構成された第1の入口をさらに備える。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルの長さは、細胞がマイクロチャネルの1つの端部からマイクロチャネルのもう1つの端部に移動する間に、0回、1回、2回、3回、4回、5回、または5回よりも多く分裂するような細胞分裂の速度によって決定される。いくつかの実施形態では、マイクロチャネルの直径は、細胞サイズ、輸送用液(transiting liquid)の混合割合、またはこれらの組み合わせによって決定される。いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターは、サンドボックスバイオリアクターの細胞環境のパラメーターを測定するための少なくとも1つのセンサーをさらに備える。いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターは、少なくとも1つのセンサーからの測定値に応じて、サンドボックスバイオリアクターへの入力を変更するように構成されたコントローラをさらに備える。いくつかの実施形態では、パラメーターは、生物学的パラメーター、物理学的パラメーター、および化学的パラメーターからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、パラメーターは、ガス含有量、ガス濃度、pH、光学濃度、および温度からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、パラメーターは、細胞分裂速度、細胞密度、細胞ストレス応答、または細胞代謝物質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターは、一連のセグメント中の最後のセグメントのマイクロチャネルの出口に試料収集チャンバーをさらに備える。いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターは細胞チップモジュールに相互接続される。
【0013】
別の態様では、本開示は、細胞を成長させて保存する方法を提供し、上記方法は、少なくとも1つの細胞を細胞チップモジュールに播種する工程であって、細胞チップモジュールが、少なくとも1つの流体回路を有する層状構造、少なくとも1つの流体回路と流体連通する細胞保持領域、層状構造と流体連通する入口ポート、および層状構造と流体連通する出口ポートを含む、工程と、少なくとも1つの細胞が細胞保持領域の第1のトラップに留まるように、入口ポートに液体培地を提供する工程と、分裂した細胞が第1のトラップに留まるような細胞分裂を許容するのに十分な条件下で一定期間、細胞チップを培養する工程と、細胞分裂の期間の後に、細胞を保存モードに置く工程とを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、保存モードは、乾燥、凍結乾燥、凍結、または液体中での懸濁からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本方法は、新しい液体培地を入口に提供する工程と、細胞分裂を再活性化するために細胞分裂を許容する条件下で一定期間、細胞チップを培養する工程とを含む。いくつかの実施形態では、細胞分裂の期間は、相当数の細胞が第1のトラップを出て、細胞チップモジュールの第2のトラップに入るように、十分な細胞を生成する。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞分裂のための第2の期間、さらに培養され、ここで、第2の期間は、相当数の細胞が第2のトラップから出て、細胞チップモジュールの出口に流れて収集されるように、十分な数の細胞を生成する。いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールの出口からの細胞は、相互接続されたサンドボックスまたはバイオリアクターモジュールに提供される。いくつかの実施形態では、第2のトラップは吸引トラップまたはオーバーフロートラップである。いくつかの実施形態では、第1のトラップはゲートトラップまたは吸引トラップである。
【0015】
別の態様では、本開示は、細胞成長条件を選択するための方法を提供し、上記方法は、一連のセグメントを備えるサンドボックスバイオリアクター中へ細胞の第1の群を導入する工程であって、一連のセグメントの1つのセグメントが個々に設定可能である、工程と、一連のセグメントの第1のセグメント中の成長条件の第1のセット下で細胞の第1の群を培養する工程と、第1のセグメント中の細胞の第1の群の第1のパラメーターをモニタリングする工程と、第1のセグメントにおける第1のパラメーターのモニタリングに応じて、一連のセグメントの第2のセグメントにおける第2の成長条件を作成するために、成長条件のセットを変更する工程とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、細胞の第1の群が第2のセグメントに移動し、細胞の第2の群が第1のセグメントに導入される。いくつかの実施形態では、細胞の第1の群は、細胞チップモジュールからサンドボックスバイオリアクターに導入される。いくつかの実施形態では、サンドボックスリアクターは、バイオリアクターモジュールに相互接続される。いくつかの実施形態では、成長条件の第2のセットがバイオリアクターに適用される。いくつかの実施形態では、各セグメントの1つの端部からもう1つの端部への細胞の流速は、細胞分裂速度によって決定される。いくつかの実施形態では、細胞は、セグメントの1つの端部からもう1つの端部まで移動する期間に、1回分裂する。いくつかの実施形態では、一連のセグメントの各セグメントを通る液体培地の流れは層流である。
【0017】
別の態様では、本開示は、細胞の産生をスケーリングするための方法を提供し、上記方法は、バイオリアクターの入口へ複数の細胞を導入する工程であって、バイオリアクターは、ダブルジャイロイド構造または改良型ダブルジャイロイド構造のミニモジュールの集合体を備え、ミニモジュールは、入口と出口を備えるマクロ構造内の層に配置される、工程と、バイオリアクターへ液体培地を流す工程と、バイオリアクターへガス組成物を供給する工程と、出口から複数の細胞を集める工程を含み、複数の細胞がミニモジュール間を移動し、複数の細胞がマクロ構造の入口端部からマクロ構造の出口端部まで移動する。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の細胞は、ミニモジュールの1つの層からミニモジュールの次の層まで移動する間に、平均して1回分裂する。いくつかの実施形態では、ミニモジュールの各層に流れる液体培地の量は、各層で細胞の実質的に同じ密度を維持する。いくつかの実施形態では、バイオリアクターを通って流れる液体培地の速度は、細胞の自由落下速度を超える。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、細胞チップまたはサンドボックスモジュールからバイオリアクターに導入される。いくつかの実施形態では、複数の細胞の一部はマクロ構造の出口端部から集められる。いくつかの実施形態では、複数の細胞は少なくとも1つのバイオ製品を生成し、バイオ製品はマクロ構造の出口端部から集められる。いくつかの実施形態では、バイオ製品は、小分子、タンパク質、抗体、大きな高分子、および代謝物質からなる群から選択される。
【0019】
別の態様では、本開示は、特注の細胞の産生のための方法を提供し、上記方法は、選択された細胞のタイプを細胞チップモジュールへ導入する工程と、細胞チップモジュール中で細胞を成長させる工程と、細胞チップモジュールからサンドボックスバイオリアクターまで細胞を移動させる工程と、成長条件の第2のセットを生成するために、サンドボックスバイオリアクター中の成長条件の第1のセットから少なくとも1つの成長条件を選択する工程とを含む。
【0020】
別の態様では、本開示は、細胞を培養するための方法を提供し、上記方法は、少なくとも1つのチャネルと微多孔性膜を備える接着性バイオリアクターに、複数の細胞を提供する工程と、少なくとも1つのチャネルの表面へ複数の細胞の少なくとも一部が付着することを可能にする工程であって、複数の細胞の少なくとも一部が少なくとも1つのチャネルの表面で複製して、結合した細胞を生成する、工程と、(i)結合した細胞を洗浄するために、(ii)懸濁細胞を生成するために結合した細胞を分離させるために、(iii)懸濁した細胞を洗浄するために、少なくとも1つのチャネルから微多孔性膜を通って液体培地を流す工程と、随意に、懸濁細胞を集める工程、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのチャネルは、複数の細胞の少なくとも一部の付着に適切な材料を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、(i)複数の細胞の少なくとも一部の成長および/または複製を可能する培養培地を提供するために、(ii)少なくとも1つのチャネルから結合細胞を分離させるために、または(iii)少なくとも1つのチャネルから収集領域へ懸濁細胞を流すために、少なくとも1つのチャネルを通って追加の液体培地を流す工程を含む。いくつかの実施形態では、接着性バイオリアクターは、細胞チップモジュールと流体連通しており、細胞チップモジュールは、接着性バイオリアクターに複数の細胞を提供する。いくつかの実施形態では、接着性バイオリアクターはバイオリアクターと流体連通しており、接着性バイオリアクターは、バイオリアクターに懸濁細胞を提供する。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、真核細胞、植物細胞、および藻細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、複数の細胞は組換え細胞である。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、成長条件の第2のセットでバイオリアクター中の選択されたタイプの細胞の試料を成長させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、選択されたタイプの細胞またはその一部は、バイオリアクターから集められる。いくつかの実施形態では、選択されたタイプの細胞は、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞、幹細胞、または分化細胞である。いくつかの実施形態では、選択されたタイプの細胞は少なくとも1つのバイオ製品を生成し、バイオ製品はバイオリアクターから集められる。
【0023】
別の態様では、本開示は、実質的に一定の断面を有する複数の流体流路を備えるシステムを提供し、複数の流体流路の第1の流体流路は、複数の流体流路の第2の流体流路と流体連通することで、第1の流体流路に沿って実質的に一定の速度で、第1の流体流路から第2の流体流路へのガスの流れを可能にし、ここで、第1の流体流路は細胞培養を可能にするように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、複数の流体流路は、ジャイロイド構造、ダブルジャイロイド構造、改良型ダブルジャイロイド構造、三重周期極小曲面(triply periodic minimal surface)、またはこれらの組み合わせを備える。
【0025】
別の態様では、本開示は、複数の細胞を処理する方法を提供し、上記方法は、(a)(i)入口と、(ii)入口と流体連通する複数のミニモジュールであって、上記複数のミニモジュールの1つのミニモジュールが、ダブルジャイロイド構造または改良型ダブルジャイロイド構造を含み、複数のミニモジュールが少なくとも1つのマイクロチャネルを提供するために流体的に相互接続する、複数のミニモジュールと、および、(iii)複数のミニモジュールと流体連通する出口とを備えるバイオリアクターを提供する工程と、(b)複数の細胞を入口へ導く工程であって、複数の細胞またはその誘導体が入口から少なくとも1つのマイクロチャネルを通って出口へと導かれる、工程とを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、少なくとも2つのマイクロチャネルを備える。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのマイクロチャネルの第1のマイクロチャネルは、液体培地を流す。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのマイクロチャネルの第2のマイクロチャネルは、ガス組成物を流す。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのマイクロチャネルは多孔質膜によって分離される。いくつかの実施形態では、複数のミニモジュールはマクロ構造へ組み立てられる。
【0027】
別の態様では、本開示は、バイオリアクターを生成する工程を含む方法を提供し、上記バイオリアクターは、複数の細胞を受け入れるように構成された入口と、上記入口と流体連通する複数のミニモジュールであって、上記複数のミニモジュールの1つのミニモジュールが、ダブルジャイロイド構造または改良型ダブルジャイロイド構造を含み、複数のミニモジュールが複数の細胞を流すように構成された少なくとも1つのマイクロチャネルを提供するために流体的に相互接続する、複数のミニモジュールと、上記複数のミニモジュールと流体連通する出口であって、上記出口が上記複数の細胞またはその誘導体を上記少なくとも1つのマイクロチャネルから外部に導くように構成された、出口とを備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターは、複数のミニモジュールの三次元(3D)印刷を使用して生成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、細胞産生のためのシステムが提供され、上記システムは、複数の細胞を含むように構成された細胞チップを備える第1のモジュールと、第2のモジュールであって、(i)細胞チップとインターフェース接続すること、(ii)複数の細胞から様々なセグメントまで細胞を導くことであって、ここで、様々なセグメントにおける細胞成長条件は個々に設定可能である、こと、および、(iii)複数の細胞のための成長条件のセットを反復して生成することを、を行うように構成されたサンドボックスバイオリアクターを備える、第2のモジュールと、(i)第2のモジュールとインターフェース接続し、(ii)細胞を収容し、および、(iii)成長条件のセット下で細胞のコピーを生成するように構成された産生バイオリアクターを含む、第3のモジュールとを備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、システムの第1のモジュール、第2のモジュール、および第3のモジュールは機能的に相互接続する。いくつかの実施形態では、システムは各モジュールに対応するポンプをさらに備え、ポンプは、対応するモジュールに、ある流速または圧力で液体培地を提供する。いくつかの実施形態では、ポンプは、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、または圧力ポンプである。
【0031】
本明細書には、培養培地フォーミュレーター、エレクトロポレーター、リザーバー、ポンプ、気泡センサー、気泡トラップ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されたコンポーネントをさらに備えるこうしたシステムも提供される。いくつかの実施形態では、システムは、インラインセンサーなどの少なくとも1つのセンサーも備える。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサーは、生物学的パラメーター、物理学的パラメーター、または化学的パラメーターを測定し、これらは、例えば、細胞分裂速度、細胞成長速度、細胞ストレス応答、細胞タンパク質含有量、細胞炭水化物含有量、細胞脂質含有量、および細胞核酸含有量からなる群から選択された生物学的パラメーターと、細胞サイズ、細胞密度、細胞流速、液体培地流速、混合割合、混濁度、温度、および圧力からなる群から選択された物理学的パラメーターと、pH、液体培地組成、個々の液体培地成分の濃度、ガス組成とガス濃度、および溶解ガス濃度からなる群から選択された化学的パラメーターと、これらの組み合わせとを含む。
【0032】
本明細書では、カメラ装置をさらに備えるそのようなシステムが提供される。いくつかの実施形態では、カメラ装置は、サンドボックスバイオリアクターまたは産生バイオリアクターの出力部からの細胞を数える。いくつかの実施形態では、カメラ装置は、少なくとも1つのバイオリアクターモジュールの出力部からの個々の細胞に関連する少なくとも1つの追加のパラメーターを捕捉し、追加のパラメーターは、細胞の生物学的、化学的、または物理学的な特徴である。
【0033】
いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールも本明細書で提供され、上記細胞チップモジュールは、細胞を保持するための少なくとも1つの第1のトラップと、随意に細胞を保持するための少なくとも1つの第2のトラップとを含む細胞保持領域と、細胞保持領域へ液体培地を入力するように構成された入口ポートと、使用済みまたは余分な媒体と細胞を集めるように構成された出口ポートとを備える。いくつかの実施形態では、第1のトラップは、吸引トラップ、ゲートトラップ、オーバーフロートラップ、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、第1のトラップと第2のトラップは互いに直列である。いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールは少なくとも1つのゲートトラップと2以上のオーバーフロートラップを備える。いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールはモジュールを通って流れる細胞を分布させるための1つ以上の物理的障壁を備える。
【0034】
いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールは保存モードの1つ以上の細胞を備え、これは、例えば、乾燥しているか、凍結乾燥しているか、凍結しているか、または液体中で懸濁されている細胞であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、一連のセグメントを備えるサンドボックスバイオリアクターモジュールが本明細書で提供され、一連のセグメントの1つのセグメントは、マイクロチャネルの1つの端部からマイクロチャネルのもう1つの端部まで細胞を輸送するように構成された少なくとも1つのマイクロチャネルを備え、マイクロチャネルの1つの端部は、液体培地と少なくとも1つの細胞を入力するように構成され、マイクロチャネルのもう1つの端部は、液体培地と少なくとも1つの細胞を出力するように構成される。
【0036】
サンドボックスバイオリアクターのいくつかの実施形態では、細胞が第1のセグメントのマイクロチャネルのうちの1つから第2のセグメントのマイクロチャネルのうちの1つまで移動するように、直列に配置される。いくつかの実施形態では、第1のセグメントのマイクロチャネルは、出力端部で第2のセグメントからの少なくとも2つのマイクロチャネルへ分岐し、ここで、2つのマイクロチャネルは、第1のセグメントから出力された細胞が少なくとも2つのマイクロチャネルの1つに入力され、第1のセグメントから出力された別の細胞が少なくとも2つのマイクロチャネルの別の1つに入力されるように、並列に配置される。
【0037】
いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターは、セグメントに液体培地を提供するのに適した第1の入口をさらに備える。いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターの各マイクロチャネルの長さは、マイクロチャネルの1つの端部からもう一方の端部に移動する間に細胞が0回、1回、2回、3回、4回、5回、または5回よりも多く分裂するような細胞分裂の速度によって決定される。いくつかの実施形態では、各マイクロチャネルの直径は、細胞サイズ、輸送用液の混合割合、またはこれらの組み合わせによって決定される。
【0038】
いくつかの実施形態では、サンドボックスバイオリアクターは、バイオリアクター細胞環境のパラメーターを測定するための少なくとも1つのセンサーと、随意に、少なくとも1つのセンサーからの測定値に応じてバイオリアクターへの入力を変更するためのコントローラとを備える。いくつかの実施形態では、センサーは、生物学的パラメーター、物理学的パラメーター、および/または、化学的パラメーターなどのパラメーター、例えば、ガス含有量、ガス濃度、pH、光学濃度、温度、細胞分裂速度、細胞密度、細胞ストレス応答、細胞代謝物質、またはこれらの組み合わせを測定する。
【0039】
いくつかの実施形態において、サンドボックスバイオリアクターは、一連のセグメントの最終セグメントのマイクロチャネルの出口に試料収集チャンバーを備える。いくつかの実施形態において、サンドボックスバイオリアクターは、本明細書に記載される細胞チップモジュールのいずれかなどの細胞チップモジュールと相互接続する。
【0040】
いくつかの実施形態では、複数のミニモジュールを含む産生バイオリアクターが本明細書で提供され、ここで、上記複数のミニモジュールの各々は、ダブルジャイロイドの形状または構造を含み、ここで、上記複数のミニモジュールは、マイクロチャネルを提供するために相互接続する。いくつかの実施形態において、ミニモジュールの相互接続は、各々が一定の平均曲率を有する、2つの重ならないチャネルを作成する。いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターの1つのマイクロチャネルは、液体培地を提供し、ここで、第2のマイクロチャネルはガス組成物を提供する。いくつかの実施形態において、両方のマイクロチャネルは液体を提供する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルは多孔質膜によって分離される。いくつかの実施形態において、第1のマイクロチャネルの面積は、第2のマイクロチャネルの面積と同等であり、上記膜の面積が、第1および第2のマイクロチャネルの面積の和である。
【0041】
いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターは、マクロ構造へと構築されるミニモジュールを含み、上記マクロ構造は、例えば、ピラミッド、中空のピラミッド、ラメラピラミッド、ラメラ、チェス盤配置、またはログであってもよい。いくつかの実施形態において、ミニモジュールはマクロ構造内のレベルに配置され、ここで、各レベルの液体培地の速度は実質的に同じである。いくつかの実施形態において、液体培地の速度はレベルの全体にわたって変動する。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルを流れる液体培地は、マイクロチャネルを流れる細胞の自由落下速度よりも大きい速度を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターは、マクロ構造の底部にあるガス入力部と、マクロ構造の頂部にあるガス出力部とを備える。いくつかの実施形態において、マクロ構造の頂部に細胞入力部があり、マクロ構造の底部に細胞収集装置がある。
【0043】
いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターは液体培地入力装置を含み、ここで、液体培地は各レベルのミニモジュールに流入する。いくつかの実施形態において、液体培地装置によって各レベルに提供される液体培地の体積は、レベルのそれぞれにおいて実質的に一定の細胞密度を維持する。いくつかの実施形態において、各ミニモジュールを通る液体培地の速度は、細胞が単一のミニモジュールまたはミニモジュールのレベルを横断する時間が実質的に細胞分裂速度と同じであるか、あるいは細胞分裂速度に比例するように、細胞分裂速度によって決定される。
【0044】
いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターは、サンドボックスモジュール、細胞チップモジュールと相互接続するか、または細胞チップモジュールおよびサンドボックスモジュールの両方を含むシステムに相互接続する。いくつかの実施形態では、実質的に一定の断面を有する複数の流体流路を含むシステムが本明細書で提供され、ここで、上記複数の流体流路の第1の流体流路は上記複数の流体流路の第2の流体流路と流体連通しており、上記第1の流体流路に沿って、実質的に一定速度の第1の流体流路から第2の流体流路へのガスの流れを可能にする。いくつかの実施形態において、複数の流体流路は、ジャイロイドの形状または構造、改良型ジャイロイドの形状または構造、それらの三重周期極小曲面、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0045】
さらに、細胞を成長させて保存する方法が本明細書で提供され、上記方法は、少なくとも1つの細胞を細胞チップモジュールに播種する工程と、上記少なくとも1つの細胞が第1のトラップに残るように、細胞チップの液体入口に液体培地を提供する工程と、分裂したセルが上記第1のトラップに残るように、細胞分裂を可能にする条件下で一定期間にわたって前記細胞チップを培養する工程と、細胞分裂の期間後に、細胞を保存モードに置く工程と、を含む。いくつかの実施形態において、保存モードは、乾燥、凍結乾燥、凍結、または液体中の懸濁からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、上記方法は、細胞チップの液体入口に新しい液体培地を提供し、および、細胞分裂を再活性化するために、細胞分裂が可能な条件下で一定期間にわたって細胞チップを培養する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、相当数の細胞が、細胞チップモジュール内の第1のトラップを出て第2のトラップに入るように、細胞分裂の期間に十分な細胞が産出される。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞分裂の第2の期間にわたってさらに培養され、ここで、相当数の細胞が、第2のトラップを出て、細胞チップの出口へと流れて集められるように、細胞分裂の第2の期間に十分な細胞が産出される。いくつかの実施形態において、細胞チップの出口からの細胞は、相互接続されたサンドボックスまたは産生バイオリアクターモジュールに提供される。上記方法のいくつかの実施形態において、第2のトラップは、吸引トラップまたはオーバーフロートラップである。いくつかの実施形態において、第1のトラップは、ゲートトラップまたは吸引トラップである。
【0046】
細胞環境を最適化する方法が本明細書で提供され、上記方法は、一連のセグメントを備えるサンドボックスバイオリアクターに細胞の第1の群を導入する工程と、第1のセグメント内の第1の環境下で上記第1の群を培養する工程と、上記第1のセグメント内の細胞の第1のパラメーターをモニタリングする工程と、上記第1のパラメーターのモニタリングに応じて、第2の環境を作成するために上記第1の環境を変更する工程と、を含む。上記方法のいくつかの実施形態において、細胞の第1の群は第2のセグメントに移動し、ここで、細胞の第2の群が第1のセグメントに導入される。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞チップモジュールからサンドボックスバイオリアクターに導入される。いくつかの実施形態において、サンドボックスリアクターは、産生バイオリアクターモジュールと相互接続する。上記方法のいくつかの実施形態において、第2の環境は産生バイオリアクターに適用される。
【0047】
方法のいくつかの実施形態において、各セグメントの一方の端部から他方の端部までの細胞の流量は、細胞分裂速度によって決定される。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞がセグメントの一方の端部からセグメントの他方の端部まで通過する期間に1回分裂する。いくつかの実施形態において、各セグメントを通る液体培地の流れは層流である。
【0048】
細胞の産生をスケーリングする方法が本明細書でさらに提供され、上記方法は、産生バイオリアクターに細胞を導入する工程であって、ここで、上記産生バイオリアクターは、ダブルジャイロイドの形状あるいは構造のミニモジュールの集合体を含み、ここで、上記ミニモジュールは、マクロ構造内のレベル内に配置される、工程と、上記産生バイオリアクター内へと液体培地を流す工程と、上記産生バイオリアクター内にガス組成物を供給する工程とを含み、ここで、上記細胞は上記ミニモジュール間を移動し、ここで、上記細胞は、上記マクロ構造の入口端部から上記マクロ構造の出口端部へと移動する。上記方法のいくつかの実施形態において、細胞は、ミニモジュールのあるレベルからミニモジュールの次のレベルへと移動する間に、平均1回分裂する。いくつかの実施形態において、各レベルのミニモジュールへと流れる液体培地の量は、各レベルにおいて細胞の実質的に同じ密度を維持する。いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターを通って流れる液体培地の速度は、細胞の自由落下速度を超える。
【0049】
本明細書における方法のいくつかの実施形態において、細胞は、細胞チップまたはサンドボックスモジュールからバイオリアクターへと導入される。いくつかの実施形態において、細胞の一部は、マクロ構造の出力部端部から集められる。いくつかの実施形態において、細胞は少なくとも1つのバイオ製品を産生し、ここで、例えば、細胞によって産出される小分子、タンパク質、抗体、大きな高分子、代謝物質、またはそれらの組み合わせなどの上記バイオ製品は、マクロ構造の出口端部から集められる。
【0050】
特注の細胞を産生するための方法が本明細書で提供され、上記方法は、選択されたタイプの細胞を細胞チップに導入する工程と、上記細胞チップ中の細胞を成長させる工程と、細胞チップモジュールからサンドボックスバイオリアクターへと上記細胞を移動させる工程と、第2の細胞環境を作成するために、上記サンドボックスバイオリアクター中の第1の細胞環境の少なくとも1つのパラメーターを最適化する工程と、を含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、第2の細胞環境を備えた産生バイオリアクターにおいて、選択されたタイプの細胞の試料を成長させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞またはその一部は、産生バイオリアクターから採取される。いくつかの実施形態において、上記方法で使用される細胞は、CAR-T細胞、幹細胞、または分化細胞、あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、細胞は少なくとも1つのバイオ製品を産生し、ここで、上記バイオ製品は、産生バイオリアクターから集められる。
【0051】
本明細書に記載される細胞チップモジュール内で細胞を成長させる工程を含む、細胞を成長させる方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、細胞を保存モード置く工程をさらに含む。細胞環境条件を最適化する方法が本明細書で提供され、上記方法は、本明細書で記載されるサンドボックスバイオリアクター内で細胞を成長させる工程と、細胞環境の少なくとも1つのパラメーターを最適化する工程と、を含む。本明細書に記載される産生バイオリアクター内で細胞を成長させる工程を含む、細胞を成長させる方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、大規模な細胞産生の方法である。細胞を成長および産出する方法のいくつかの実施形態において、細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、動物細胞、鳥類細胞、哺乳類細胞、ヒト細胞、および遺伝子組換え細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるシステム、デバイス、および方法は、細胞が無重力でまたは微重力条件下で成長するように、無重力でまたは微小重力条件下で使用され得る。
【0052】
本開示のさらなる態様および利点は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明白となり、ここでは、本開示の例示的な実施形態のみが示され、説明されている。理解されるように、本開示は、他の実施形態および異なる実施形態においても可能であり、その様々な詳細は、そのすべてが本開示から逸脱することなく様々な明白な点で修正することができる。したがって、図面および説明は本来、例示的なものとしてみなされ、限定的なものであるとはみなされない。
【0053】
引用による組み込み
本明細書で言及される全ての出版物、特許、および特許出願は、あたかも個々の出版物、特許、または特許出願が引用によって組み込まれるよう具体的かつ個別に示されるかのように、同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる特許公開、特許、または特許出願が本明細書に含まれる開示に矛盾するという範囲で、本明細書は、そのような矛盾のある資料に取って代わる、および/または優先することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の新規な特徴は、とりわけ、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を明記する以下の詳細な説明と、以下の添付図面(本明細書における「図」)とを参照することによって得られる。
【0055】
【
図1】3つのモジュールを備えたシステムの例示的な実施形態を示す。
【
図2A】細胞チップモジュール(201)の例示的な実施形態を示す。
【
図2B】個々の細胞チップの「層」としての、細胞環境(205)、細胞チップ培地回路(230)、および細胞チップガス回路(250)の例示的な実施形態を示す。
【
図2C】細胞チップの層の側面プロファイルを示す。
【
図3A】細胞チップモジュールとともに使用される細胞トラップの例示的な実施形態を提供する。
図3A~3Bは、ゲートトラップの例示的な実施形態を示す。
【
図3B】細胞チップモジュールとともに使用される細胞トラップの例示的な実施形態を提供する。
図3A~3Bは、ゲートトラップの例示的な実施形態を示す。
【
図3C】細胞チップモジュールとともに使用される細胞トラップの例示的な実施形態を提供する。
図3C~3Dは、オーバーフロートラップの例示的な実施形態を示す。
【
図3D】細胞チップモジュールとともに使用される細胞トラップの例示的な実施形態を提供する。
図3C~3Dは、オーバーフロートラップの例示的な実施形態を示す。
【
図3E】細胞チップモジュールとともに使用される細胞トラップの例示的な実施形態を提供する。
図3E~3Fは、吸引トラップの例示的な実施形態を示す。
【
図3F】細胞チップモジュールとともに使用される細胞トラップの例示的な実施形態を提供する。
図3E~3Fは、吸引トラップの例示的な実施形態を示す。
【
図4A】サンドボックスバイオリアクターの例示的な実施形態を示す。
【
図4B】サンドボックスバイオリアクターの例示的な実施形態を示す。
【
図4C】サンドボックスバイオリアクターの例示的な実施形態を示す。
【
図4D】サンドボックスバイオリアクターの例示的な実施形態を示す。
【
図4E】サンドボックスバイオリアクターの例示的な実施形態を示す。
【
図5】産生バイオリアクターの例示的な実施形態を提供する。
【
図6A】産生バイオリアクターのためのマクロ構造の例示的な実施形態を示す。
【
図6B】産生バイオリアクターのためのマクロ構造の例示的な実施形態を示す。
【
図6C】産生バイオリアクターのためのマクロ構造の例示的な実施形態を示す。
【
図7A】改良型ダブルジャイロイドの形状または構造、および、本明細書に記載される産生バイオリアクターで使用するなどのために、重なり合うチャネルへの組み立ての例示的な実施形態を示す。
【
図7B】チャネルの2つの重なるネットワークへと組み立てられた、改良型ダブルジャイロイドの形状または構造の例を提供する。
【
図7C】改良型ダブルジャイロイドのチャネルへの組み立てによって作成された湾曲の例を提供する。
【
図8】細胞成長、保存、環境の最適化、およびスケールアップ産生の例示的な方法の模式図を示す。
【
図9A】ミニモジュールのマクロ構造への組み立てのための例示的な模式図を示す。
図9Aは、ミニモジュールの例を示す。
【
図9B】ミニモジュールのマクロ構造への組み立てのための例示的な模式図を示す。
図9Bは、例示的な三次元マトリックスへのミニモジュールの組み立ての例を示す。
【
図9C】ミニモジュールのマクロ構造への組み立てのための例示的な模式図を示す。
図9Cは、例示的な三次元マトリックスを示す。
【
図9D】ミニモジュールのマクロ構造への組み立てのための例示的な模式図を示す。
図9Dは、三次元マトリックスの例示的な層を示す。
【
図9E】ミニモジュールのマクロ構造への組み立てのための例示的な模式図を示す。複数の三次元の層を備える、例示的なアセンブリを示す。
【
図9F】ミニモジュールのマクロ構造への組み立てのための例示的な模式図を示す。
【
図10A】様々な形状、例えば、正方形および正方形のようなアセンブリ形状の層アセンブリの例を示す。
【
図10B】様々な形状、例えば、正方形および正方形のようなアセンブリ形状の層アセンブリの例を示す。
【
図10C】様々な形状、例えば、正方形および正方形のようなアセンブリ形状の層アセンブリの例を示す。
【
図10D】様々な形状、例えば、正方形および正方形のようなアセンブリ形状の層アセンブリの例を示す。
【
図10E】様々な形状、例えば、正方形および正方形のようなアセンブリ形状の層アセンブリの例を示す。
【
図10F】様々な形状、例えば、正方形および正方形のようなアセンブリ形状の層アセンブリの例を示す。
【
図11A】例示的な供給回路に接続されるモジュール層の例を示す。
【
図11B】例示的な供給回路に接続されるモジュール層の例を示す。
【
図11C】例示的な供給回路に接続されるモジュール層の例を示す。
【
図11D】例示的な供給回路に接続されるモジュール層の例を示す。
【
図11E】例示的な供給回路に接続されるモジュール層の例を示す。
【
図11F】例示的な供給回路に接続されるモジュール層の例を示す。
【
図12】中空のピラミッド形状のための例示的な層を示す。
【
図13】AおよびBは、中空のピラミッド形状の成長の例を提供する。
【
図14】中空のピラミッド形状ための外部供給回路の例を示す。
【
図16】供給回路を備えたラメラマクロ構造の例を示す。
【
図19A】例示的な接続システムを示す。
図19Aは、細胞チップモジュールと流体源との間のコネクタを備えた例示的な接続システムの概観を示す。
【
図19B】例示的な接続システムを示す。
図19Bは、入力針および出力針を備えた例示的な接続システムを示す。
【
図19C】例示的な接続システムを示す。
図19Cは、例示的なコネクタシステムによって行われる例示的な接続を示す。
【
図19D】例示的な接続システムを示す。
図19Dは、例示的な細胞チップモジュール内のチャンバーに貫通する針を備えた接続システムの例示的な実施形態を示す。
【
図19E】例示的な接続システムを示す。
図19Eは、第2のチャンバーに貫通する針を備えた例示的な接続システムを示す。
【
図20】接着細胞の例示的な多層モジュールを示す。
【
図21A】接着細胞の一層モジュールの実施形態を示す。
【
図21C】細胞剥離ためのトリプシン洗浄の例を示す。
【
図22】Aは例示的なミニモジュールの断面図を示し、Bは、混合が増加した例示的なミニモジュールの断面図を示す。
【
図23】Aは10のミニモジュールの例示的な集合体を示し、Bは、混合が増加した10のミニモジュールの例示的な集合体を示す。
【
図24】マクロ構造を備えた例示的なバイオリアクター設計を示す。
【
図25】Aは例示的なマクロ構造の等角図を示し、Bは例示的な印刷されたマクロ構造を示し、Cは、例示的な印刷された、商用樹脂から作られたマクロ構造を示す。
【
図26】Aは、色素を染み込ませた例示的なバイオリアクター回路を示し、Bは、色素を染み込ませたダブルジャイロイド構造の例を示す。
【
図27】例示的なストレイン・オン・チップ(strain on a chip)の例示的な設計を示す。
【
図30】Aは、混合モジュールを備えた例示的なサンドボックスユニットを示し、B~Dは、ポリジメチルシロキサンから形成された例示的サンドボックスユニットを示す。
【
図31】例示的なサンドボックスバイオリアクターのガス回路および培養回路を示す。
【
図32】サンドボックスの例示的な印刷された培養層を示す。
【
図33】例示的なサンドボックスの組み立てられた層を示す。
【
図34】本明細書で提供される方法を実施するようにプログラムされるか、そうでなければ構成されるコンピュータシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の様々な実施形態が本明細書中で示され、かつ説明されているが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者には明らかであろう。多数の変形、変更、および置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって想到され得る。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が利用され得ることを理解されたい。
【0057】
細胞を産出および維持するための、ならびに、細胞および細胞によって製作された産物を産出および単離するための、システム、コンポーネント、および方法が本明細書で提供される。本明細書におけるシステム、コンポーネント、および方法は、様々なタイプの細胞、細胞環境のタイプ、ならびに産出される分子のタイプの産生を調整する柔軟性を提供する。システム、コンポーネント、および方法は、スケールの柔軟性も提供する。例えば、本明細書に記載されるシステム、コンポーネント、および方法は、ベンチスケールの成長条件を変更せずに、または著しく変更せずに、生産をスケールアップするために提供され得る。
【0058】
本明細書に含まれるシステムおよびコンポーネントは、細胞を成長させるための1つ以上のバイオリアクターである。バイオリアクターはマイクロバイオリアクタースケールであり、それにより、システムは、少量ならびに大量の細胞および/または細胞産物を成長ならびに産出する能力を備えたベンチトップバイオリアクターとして構築され得る。このシステムおよび使用方法は、そのスケーラビリティ、柔軟性、ならびに資源の節約において有利である。
【0059】
「細胞チップ」または「細胞チップモジュール」との用語は、本明細書で使用されるように、一般に、細胞を成長させ、培養し、および/または保存するのに適した装置を指し、その装置は、液体培地および他の細胞環境因子を提供するための、1つ以上のチャネルあるいは細胞入力用の他の開口部、ならびに随意に、細胞チップあるいはそのサブセクションの成長環境/培養環内の細胞の流れを捕捉するか、含有するか、あるいは導くための1つ以上の構造体を含み得る。
【0060】
「サンドボックスバイオリアクター」との用語は、本明細書で使用されるように、一般に、細胞を成長させるための装置を指し、サンドボックスバイオリアクターは、1つ以上のタイプの細胞に対する1つ以上の細胞環境条件の影響を反復的に試験することを可能にする。サンドボックスリアクターは、その中の細胞環境および細胞に対するその影響が、細胞環境および細胞とバイオ製品のスケールアップならびに産生への影響と相関的であるような設計を含み得る。サンドボックスリアクターは、単一の試験環境を含み得るか、または、1つ以上の環境条件を試験することができる多数のセグメントで構成され得る。
【0061】
「産生バイオリアクター」または「バイオリアクター」との用語は、本明細書で使用されるように、一般に、細胞および/または細胞によって産生された産物の産生をスケーリングするのに適したバイオリアクター装置を指す。産生バイオリアクターは、液体培地、ガス組成物、および他の細胞環境因子を提供するための、1つ以上のチャネルまたは細胞入力用の他の開口部と、細胞および/または細胞によって産生された産物を採取するための1つ以上のチャネルとを含む。
【0062】
「培養培地フォーミュレーター」とは、本明細書で使用されるように、一般に、細胞を成長させるための培養培地として使用される成分を混合するためのコンポーネントまたはデバイスを指す。
【0063】
「トラップ」との用語は、本明細書で使用されるように、一般に、物理的領域内の細胞の流れを捕捉する、含有する、および/または導くための構造を指す。トラップとしては、限定されないが、ゲートトラップ、オーバーフロートラップ、吸引トラップ、および多孔質膜トラップ、例えば、限定されないが、本明細書に記載されるものが挙げられる。いくつかの実施形態において、上記トラップが、細胞がある物理的空間から別の物理的空間へと移動するのを遅くするか、妨害するか、あるいは防ぐように、トラップのサイズは、細胞のサイズ、体積、および/または直径によって決定される。いくつかの実施形態において、細胞の数または密度が増加するか、あるいは、細胞または液体培地の流れの速度が増加する場合、トラップが細胞運動を遅くするか、妨害するか、あるいは防ぐ能力は減少するか、または克服される場合がある。
【0064】
「ミニモジュール」との用語は、本明細書で使用されるように、一般に、産生バイオリアクターのセグメントを指し、これは、産生バイオリアクターの少なくとも一部あるいは全体を構成するために、相互に連結し、より大きな構造(例えば、マクロ構造またはマクロ形状)へと組み立てられ得る。
【0065】
「ジャイロイド」との用語は、本明細書で使用されるように、直線を含んでいない接続する周期極小曲面を一般に指す。そのような表面は、数学的に無限数の接続を有し得る。いくつかの例において、ジャイロイドは、Schwarz P曲面およびSchwarz D曲面の会合ファミリーの固有の非自明な埋込部材であり、会合角(angle of association)はおよそ38.01°である。ジャイロイドは、単一のジャイロイドあるいはダブルジャイロイドとして構成され得る。ダブルジャイロイドは、マイクロ流体デバイスにおいて特定の用途向けに適応され、構成され得る。ダブルジャイロイドは、ダブルジャイロイドの結晶構造および空間群などのミニモジュールおよびマクロ構造(例えば、マクロ形状)で観察される、流体の動的性能と関連する幾何学態様の平衝を保つことによって構成され得る。ジャイロイドまたはダブルジャイロイドは、様々な結晶構造において実装されてもよい。
【0066】
「少なくとも(at least)」、「~より大きい(greater than)」、または「~以上(greater than or equal to)」との用語は、一連の2つ以上の数値の第1の数値の前にあるときは常に、「少なくとも」、「~より大きい」、または「~以上」との用語は、上記一連の数値内の数値の各々に適用される。例えば、1、2、または3以上は、1以上、2以上、または3以上と同等である。
【0067】
「以下(no more than)」「未満(less than)」、または「以下(less than or equal to)」との用語が、一連の2つ以上の数値の第1の数値の前にあるときは常に、「以下」「未満」、または「以下」との用語は、上記一連の数値の内の数値の各々に適用される。例えば、3、2、または1以下は、3以下、2以下、または1以下と同等である。
【0068】
バイオリアクターモジュール
一態様では、本開示は、細胞の産生のための、モジュール式で相互に連結されたバイオリアクターコンポーネントのシステムおよび方法を提供する。細胞は、細菌細胞、真菌細胞、酵母菌、真核細胞、植物細胞、または藻類細胞であってもよい。細胞は組換え細胞であってもよい。モジューラシステムは、第1のモジュール、第2のモジュール、および第3のモジュールを備え得る。第1のモジュールは、複数の細胞を含むように構成される細胞チップであり得る。第2のモジュールは、第1のモジュールと流体連通していてもよく、サンドボックスリアクターであってもよい。サンドボックスリアクターは、(i)細胞チップとインターフェース接続し、(ii)複数の細胞からサンドボックスの様々なセグメントまで細胞のサブセットを導き、および(iii)複数の細胞のための成長条件セットを反復して生成するように構成され得る。様々なセグメントは個々に構成可能であり得る。第3のモジュールは、第1および第2のモジュールと流体連通する場合がある。第3のモジュールは、(i)第2のモジュールとインターフェース接続し、(ii)細胞のサブセットを収容し、および(iii)成長条件のセット下で細胞のサブセットのコピーを生成するように構成されるバイオリアクターを備え得る。いくつかの実施形態において、第3のモジュールは、バイオリアクターを備えていてもよく、細胞チップモジュールと流体連通していてもよい。
【0069】
本明細書におけるシステム、コンポーネント、および方法は、モジュール式であり、相互連結可能である。本明細書におけるいくつかの実施形態において、システムは1つ以上のモジュールで構成され、各モジュールは、少なくとも1つのバイオリアクターを含む。いくつかの実施形態において、システムは、少なくとも1つ、2つ、または3つ以上のモジュールを備える。いくつかの実施形態において、システムは3つを超えるモジュールを備える。各モジュールは、液体(培地および/または溶媒を含む)の層流ために、さらに、いくつかの実施形態では、細胞の一方向性の流れのために構成される。いくつかの実施形態において、1つ以上のモジュールは、液体(例えば、培地および/または溶媒)の遷移流あるいは乱流のために構成される。
【0070】
いくつかの実施形態において、システムは、相互に接続する少なくとも1つ、2つ、または3つ以上のモジュールを備える。いくつかの実施形態において、モジュールは、細胞チップモジュール、サンドボックスバイオリアクターモジュール、および産生バイオリアクターモジュールの1つ以上を備える。いくつかの実施形態において、細胞チップモジュールは、最初にサンドボックスリアクターに播種するために細胞チップが細胞を供給するように、サンドボックスバイオリアクターモジュールに相互接続される(例えば、流体接続される)。いくつかの実施形態において、細胞チップモジュールは、最初に産生バイオリアクターに播種するために細胞チップが細胞を供給するように、産生バイオリアクターに相互接続される(例えば、流体接続される)。いくつかの実施形態において、サンドボックスバイオリアクターは、産生バイオリアクターに相互接続され(例えば、流体接続され)、スケールアップのために、サンドボックスバイオリアクターからの細胞が産生バイオリアクター内へと流れる。いくつかの実施形態において、システムは、細胞チップを、サンドボックスバイオリアクターおよび産生バイオリアクターに直列構成で接続する。代替的にまたは加えて、システムは、細胞チップを、サンドボックスバイオリアクターおよび産生バイオリアクターに並列構成で接続する。細胞は、最初に細胞チップ中で成長し、サンドボックスバイオリアクター中の最適な環境条件について試験され、産生バイオリアクター中でスケールアップされ得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、システムは、細胞の保持と保存のチップ(本明細書において細胞チップとも呼ばれる)であるモジュールを備え、そのモジュール内に1つ以上の細胞が入力され、細胞成長および細胞分裂により成長する。細胞チップは、消耗品(例えば、一回または数回使用されて捨てられる)であり得る。細胞チップは、1つ以上の細胞株を備え得る。細胞チップは、液体培地中を流すための入力チャネルと、使用済みの培地を流すための出力チャネルと、任意に、細胞チップを出る細胞とを含む。細胞チップは、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、10、またはそれより多くの入力チャネルを含み得る。細胞チップは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、8、10、またはそれより多くの出力チャネルを含み得る。細胞チップは、等しい数の入力チャネルおよび出力チャネル、または異なる数の入力チャネルおよび出力チャネルを有し得る。各入力チャネルは、単一の成分(例えば、単一の液体培地)を流すことができ、または、各入力チャネルは、様々な成分(例えば、様々なタイプの液体培地)を流すことができる。出力チャネルは、使用済みの培地または過剰な培地、および細胞の両方を流すことができる。代替的にまたは加えて、細胞は、培地の流れから分離され得るか、または1つ以上の出力チャネルによって細胞チップから出力され得る。細胞チップは、モジュール内の細胞を捕捉するための少なくとも1つの機構を備え得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、細胞を捕捉するための機構は、細胞が、細胞チップ内の液体培地の層流とともにトラップ内へと流れる際に、トラップ内の細胞を集めるゲートトラップである。ゲートトラップは、細胞が上記チップ内に自由に流れるのを防ぎ、細胞を遮蔽環境に閉じ込め、流れの慣性力から切り離しながら、栄養素およびガスへの適切なアクセスを可能にする。ゲートトラップは、ゲートトラップの内部空間内に細胞を播種することを可能にする播種ポートを有し得る。ゲートトラップは、流れの慣性力から細胞を切り離すために形成される1つ以上の流れプロテクタを有し得る。1つ以上の流れプロテクタとして使用され得る例示的な形状または構造としては、三角形、正方形、五角形、六角形、円、およびそれらの組み合わせが挙げられる。流れプロテクタを、開口部で中断することで、ガスおよび栄養素のアクセスを可能にし、かつゲートトラップからの細胞の制御された脱出が可能になり得る。いくつかの実施形態において、開口部のサイズは、流れプロテクタ内の細胞の直径より大きい。場合によっては、開口部のサイズは、流れプロテクタ内の細胞の2倍である。場合によっては、開口部は、流れプロテクタ内の細胞の直径より少なくとも2、3、4、5、7、または10倍大きい場合がある。いくつかの実施形態において、開口部は、流れプロテクタの形状または構造の全体にわたって均等に分布している。いくつかの実施形態において、開口部は、予想される流れの向きおよび速度に従って構成される。いくつかの実施形態において、開口部は、流れの一般的な方向に数えて、流れプロテクタ形状の後半側により多く存在する場合がある。いくつかの実施形態において、ゲートトラップの直径は、約20ミクロン~約1000ミクロンである。いくつかの実施形態において、ゲートトラップの直径は、約30ミクロン以上、約40ミクロン以上、約50ミクロン以上、約60ミクロン以上、約70ミクロン以上、約80ミクロン以上、約90ミクロン以上、約100ミクロン以上である。いくつかの実施形態において、ゲートトラップの直径は、約100ミクロン、約200ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約600ミクロン、約700ミクロン、約800ミクロン、約900ミクロン、約1000ミクロン、またはそれより大きい。いくつかの実施形態において、ゲートトラップの直径は、約1000ミクロン以下、約900ミクロン以下、約800ミクロン以下、約700ミクロン以下、約600ミクロン以下、約500ミクロン以下、約400ミクロン以下、約300ミクロン以下、約200ミクロン以下、約100ミクロン以下、約90ミクロン以下、約80ミクロン以下、約70ミクロン以下、約60ミクロン以下、約50ミクロン以下、約40ミクロン以下、約30ミクロン以下であるか、またはそれより小さい。
【0073】
いくつかの実施形態において、細胞を捕捉するための機構は、オーバーフロータイプのトラップである。オーバーフロータイプのトラップは、細胞が逃げるのを物理的に妨害し、流れの慣性力を活用して細胞の閉じ込めを強化することによって、細胞がチップ内を自由に流れないようにし、細胞を遮蔽環境に閉じ込めながら、栄養素およびガスへのアクセスを可能にする。いくつかの実施形態において、オーバーフロートラップの流れプロテクタは、細胞をトラップ内に物理的に閉じ込めるために、1つ以上の方向付けられたボックス壁配置を有する。いくつかの実施形態において、上記方向づけられたボックス壁はそれらの間に開口部を有する。いくつかの実施形態において、開口部は内部の細胞の直径より小さい。いくつかの実施形態において、上記方向づけられたボックス壁はそれらの間に開口部を有しない。いくつかの実施形態において、チップの最高部(roof)と方向づけられたボックス壁の高さとの間に開口部がある。いくつかの実施形態において、方向づけられたボックス壁の高さと最高部との間の開口部は、トラップ内の細胞の直径より小さい。細胞の体積がゲートトラップの体積の容量を超過する場合、細胞はトラップから流出する。いくつかの実施形態において、オーバーフロートラップの直径は、約50ミクロン~約2000ミクロンである。いくつかの実施形態において、オーバーフロートラップの直径は、約180ミクロン以上または約210ミクロン以上である。いくつかの実施形態において、オーバーフロートラップの直径は、約210ミクロン以下または約180ミクロン以下である。いくつかの実施形態において、オーバーフロートラップの直径は、約50ミクロン以上、約100ミクロン以上、約150ミクロン以上、約200ミクロン以上、約250ミクロン以上、約300ミクロン以上、約350ミクロン以上、約400ミクロン以上、約450ミクロン以上、約500ミクロン以上、約600ミクロン以上、約800ミクロン以上、約1000ミクロン以上、約1200ミクロン以上、約1500ミクロン以上、約2000ミクロン以上であるか、またはそれより大きい。いくつかの実施形態において、オーバーフロートラップの直径は、約2000ミクロン以下、約1500ミクロン以下、約1200ミクロン以下、約1000ミクロン以下、約800ミクロン以下、約600ミクロン以下、約500ミクロン以下、約450ミクロン以下、約400ミクロン以下、約350ミクロン以下、約300ミクロン以下、約250ミクロン、約200ミクロン以下、約150ミクロン以下、約100ミクロン以下、約50ミクロン以下であるか、またはそれより小さい。
【0074】
いくつかの実施形態において、細胞トラップは吸引トラップを含む。吸引トラップは、多孔質膜を備えた細胞成長領域から垂直に液体培地領域を分けることにより設計され得る。吸引トラップは、1つ以上のアームを有するように設計されてもよく、そこで細胞が入力され、成長し、分裂する。液体培地はチップを通って移動し、多孔質膜を横切って下部領域へと到達することができるが、細胞は、細胞サイズより小さい孔径のために上部領域に残る。上層から下層への液体培地の移動により、1つ以上のアーム内に細胞を保持する吸引が発生する。特定の数または密度に細胞が分裂すると、吸引により細胞のすべてがアーム内にもはや維持されなくなり、細胞は上層でアームから出て、細胞チップの出力ポートへと流れる可能性がある。吸引トラップは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のアームを有し得る。いくつかの実施形態において、使用される多孔質膜は、細胞型によって変わり得る。いくつかの実施形態において、多孔質膜は、細胞の直径より小さい孔径を有し得る。いくつかの実施形態において、多孔質膜の孔径は、0.22ミクロン以上、1ミクロン以上、3ミクロン以上、5ミクロン以上、7ミクロン以上であるか、またはそれより大きい。いくつかの実施形態において、孔径は、約7ミクロン以下、約5ミクロン以下、約3ミクロン以下、約1ミクロン以下、約0.22ミクロン以下であるか、またはそれより小さい。いくつかの実施形態において、使用される多孔質膜は、選択された特定の孔径の別々の穴を有する;これは、トラックエッチング技術(track-etched techniques)の実施によって達成することが可能である。いくつかの実施形態において、多孔質膜の細孔は無作為に分布している。代替的にまたは加えて、上記細孔は配置されるか、またはパターン化され得る。いくつかの実施形態において、多孔質膜に使用される物質は、高品質のポリカーボネートフィルムである。いくつかの実施形態において、多孔質膜に使用される物質は、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ニトロセルロース、ナノセルロース、ナイロン、セラミックフォーム、またはカーボンナノチューブである。
【0075】
いくつかの実施形態において、細胞チップ中に細胞を捕捉するための機構は、ゲートトラップ、吸引トラップ、およびオーバーフロートラップを含むトラップタイプの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、トラップタイプは直列であり、その結果、細胞があるタイプのトラップから放されると、その細胞は別のタイプのトラップ内へと流れ、その中に閉じ込められる。代替的にまたは加えて、トラップは並列構成で配置されてもよい。いくつかの実施形態において、トラップは、直列構成および並列構成の両方で配置される。トラップの数および配置は、細胞型、細胞チップのサイズおよび体積、ならびに細胞チップ中の液体流の速度に合わせて調整することができる。いくつかの実施形態において、細胞チップは、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、20以上、50以上、100以上のゲートトラップを単独で、あるいは1つ以上のオーバーフロートラップと組み合わせて、あるいは1つ以上の吸引トラップと組み合わせて含む。いくつかの実施形態において、細胞チップは、約1以上、約2以上、約3以上、約4以上、約5以上、約10以上、約20以上、約50以上、約100以上、約250以上、約300以上、約400以上、約500以上、または約1000以上のオーバーフロートラップを単独で、あるいは1つ以上のゲートトラップもしくは1つ以上の吸引トラップと組み合わせて含む。
【0076】
いくつかの実施形態において、細胞を捕捉するための機構は多孔質膜トラップである。このタイプのトラップは、多孔質膜の上部側で液体培地を流れさせ、細胞は、多孔質膜より下のチャンバーに入力されて成長する。培地が細胞チャンバー内へと流れ、細胞密度が増加して、細胞が細胞膜により近づくようになると、細胞が細胞膜の細孔を通って上部の培地レーン内へと引き込まれ、そこで、細胞が液体培地の流れとともに移動し、それにより、トラップを出ることができる。トラップ中の細胞膜の孔径は、細胞のタイプおよびサイズに合わせて調整することができる。いくつかの実施形態において、孔径は、約0.22ミクロン~約5ミクロンである。いくつかの実施形態において、孔径は、約0.22ミクロン以上、約1ミクロン以上、約3ミクロン以上、約5ミクロン以上、約7ミクロン以上であるか、またはそれより大きい。いくつかの実施形態において、孔径は、約7ミクロン以下、約5ミクロン以下、約3ミクロン以下、約1ミクロン以下、約0.22ミクロン以下である。細胞膜より下のチャンバーのサイズおよび体積は、細胞のタイプおよびサイズに合わせて調整することができる。細胞チャンバーの数は、任意のスループットに合わせて調整することができる。いくつかの実施形態において、細胞チャンバーの数は、1、2、3、4、5、10、25、50、100、250、500、または1000以上である。
【0077】
いくつかの実施形態において、細胞が細胞チップ中で成長した後に、細胞チップは、後の使用のために、捕捉された細胞をその中で保存する。細胞は、例えば、凍結、乾燥、凍結乾燥、または液体培地、または室温もしくは他の温度での細胞の保存を可能にするように変更された液体培地中の保存を含む、様々な手法によって保存することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、システムはサンドボックスバイオリアクターを含む。サンドボックスリアクターは、消耗品(例えば、一回または数回使用されて捨てられる)であってもよい。代替的にまたは加えて、サンドボックスリアクターは消耗品でなくてもよい。サンドボックスバイオリアクターモジュールは一連のセグメントから構成され、各セグメントは、マイクロチャネルの一方の端部からマイクロチャネルの他方の端部への細胞の移行に適した、少なくとも1つのマイクロチャネルを備える。いくつかの実施形態において、セグメントは、互いに並行して機能する2つ以上のマイクロチャネルを備え、それにより、あるマイクロチャネル中の細胞が同じセグメント内の別のマイクロチャネルへと移行しない場合がある。いくつかの実施形態において、セグメントは、2以上、4以上、8以上、16以上、32以上、64以上、128以上、または2n以上の並行のマイクロチャネルを有する。マイクロチャネルの長さおよび直径は、細胞型、細胞のサイズ、およびマイクロチャネル中の細胞および液体培地の移動速度に合わせて調整することができる。いくつかの実施形態において、チャネルは、約20ミクロン以上、約50ミクロン以上、約70ミクロン以上、約120ミクロン以上、約200ミクロン以上、約600ミクロン以上、約1500ミクロン以上、約2000ミクロン以上の直径、および、1ミリメートル、2ミリメートル、4ミリメートル、10ミリメートル、22ミリメートル、40ミリメートル、120ミリメートル、200ミリメートル、または、約1ミリメートル、約2ミリメートル、約4ミリメートル、約10ミリメートル、約22ミリメートル、約40ミリメートル、約120ミリメートル、約200ミリメートル、あるいはそれを超える長さを有し得る。いくつかの実施形態において、マイクロチャネルの長さは、細胞がマイクロチャネルに入ってから出るまでの移動時間の間に一回分裂するように、マイクロチャネルを通過する細胞の細胞分裂速度に合わせて調整される。各マイクロチャネルの直径は、細胞サイズ、輸送用液の割合、ガス交換率、またはそれらの組み合わせに合わせて調整することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、サンドボックスバイオリアクターのセグメントは、2つ以上のセクションを備える。1つのセクションは混合モジュールを備える場合があり、別のセクションは成長チャンバーを備える場合がある。混合モジュールおよび成長チャンバーは、直列構成または並列構成であってもよい。一実施例では、混合モジュールおよび成長チャンバーは、直列構成である。混合モジュールは、1、2、4、6、8、10以上の入力チャネルと流体接続し得る。入力チャネルは、培地、ガス、および/または細胞を流すチャネルを備え得る。一実施例では、混合モジュールは2つの入力チャネルに流体接続し、1つのチャネルが培地を混合モジュールに、別のチャネルが細胞を混合モジュールに提供する。培地および細胞は、混合モジュール内で混合する場合がある。混合モジュールは、直線のチャネルを備えていてもよく、または、曲がりくねったあるいは蛇行した幾何学的形状を有するチャネルを備えていてもよい。混合モジュールのチャネルの直径は、約20以上、約50以上、約70以上、約120以上、約200以上、約600以上、約1500以上、または約2000ミクロン以上であり得、および、1、2、4、10、22、40、120、200ミリメートル、または、約1、約2、約4、約10、約22、約40、約120、約200ミリメートルの長さであり得る。混合モジュールは、混合された細胞および培地を成長チャンバーに供給し得る。成長チャンバーは、セグメントの直径を増加させる拡大ゾーンを備え得る。成長チャンバーは、20、50、70、120、200、600、1500、または2000ミクロン以上である直径を有し、および、1、2、4、10、22、40、120、または200ミリメートル、あるいは、約1、約2、約4、約10、約22、約40、約120、または約200ミリメートルの長さである直径を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、あるセグメントのマイクロチャネルからの細胞が次のセグメントのマイクロチャネルに流入するように、サンドボックスバイオリアクターは、互いに直列に配置された2つ以上のセグメントを有する。いくつかの実施形態において、第1のセグメントからのマイクロチャネルは、第1のセグメントと直列に配置された第2のセグメント内の2つのマイクロチャネルに相互接続される。細胞が第1のマイクロチャネルに入って出るまでの移動時間中に最大1回分裂するように、および、そのような分裂から産出された2つの細胞が分離され、第2のセグメントの2つマイクロチャネルに別々に流入するように、第1のセグメントのマイクロチャネルの長さが調整される。第2のセグメントの2つのマイクロチャネルは、並列構成で配置され得る。いくつかの実施形態において、第2のセグメントのマイクロチャネルは、同様に、次のセグメントのマイクロチャネルと直列に相互接続する。いくつかの実施形態において、細胞は、各マイクロチャネル中を通過する間に分裂しない。他の実施形態では、細胞は、マイクロチャネルの長さを移動する間に、1、2、3、4、または5回以上分裂し得る。セグメントは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のセグメントが直列に配置されてもよく、各セグメントは1つ以上のマイクロチャネルを含む。マイクロチャネルが1つのセグメントから次のセグメントへと相互接続し、および、細胞が1つのセグメントのマイクロチャネルから次のセグメントのマイクロチャネルへと通過する際に分裂する細胞を分割する場合、マイクロチャネルの数は、2nの倍数で増加する場合があり、ここで、n=1、2、3、4、5、6であるか、または6を超える。
【0081】
サンドボックスバイオリアクターは、細胞に対する様々な環境条件の影響を試験および測定することを可能にし得る。様々な環境条件は、培地の成分、pH、温度、ガス組成、ガス交換、細胞密度、細胞流れ、および/または、液体培地の流速における変化を含み得る。いくつかの実施形態において、サンドボックスバイオリアクターは第1のセグメントへの入口を有しており、この入口を介して、液体培地が提供され、第1のセグメントを通って、直列および/または並列に接続している下流セグメント内へと流れる。培地の成分および/または流速は、経時的に変化し得るか、あるいは一定のままであり得る。
【0082】
サンドボックスバイオリアクターは、1つ以上のセンサーおよび/または1つ以上の試料収集装置を備え得る。センサーおよび/またはサンプル収集装置は、環境の変化に対する細胞の反応をモニタリングするために使用され得る。いくつかの実施形態において、1つ以上のセンサーは、インラインセンサーである。いくつかの実施形態において、センサーはオフラインであり、細胞、培地、またはそれらの組み合わせの試料を受け取る。センサーは、生物学的、物理的、および/または化学的なパラメーターを測定することができる。例示的なパラメーターとしては、pH、細胞分裂速度、細胞成長率、細胞密度、温度、光学濃度、ガス組成、および/またはガス交換率が挙げられる。例示的なパラメーターとしては、細胞代謝産物、タンパク質、核酸、脂質、小分子、または生物学的分子、あるいはそれらの組み合わせの1つ以上のプロファイリング、単一種の同定、および定量化がさらに挙げられる。いくつかの実施形態において、センサーは、環境の変化に対する反応としての細胞ストレス応答および細胞代謝産物を測定する。
【0083】
サンドボックスリアクターは、1つ以上のコントローラをさらに備え得る。コントローラは、サンドボックスバイオリアクターの1つ以上のセグメント中の細胞環境を制御することができる。いくつかの実施形態において、コントローラは、サンドボックスバイオリアクターの1つ以上のセグメント内の細胞、細胞環境、あるいはそれらの組み合わせに関連する1つ以上のセンサーと通信し、および/または、上記1つ以上のセンサーから情報を受け取る。コントローラは、1つ以上のセンサーからの情報に応じて、細胞環境を変更することができる。例示的な変更には、液体培地の流量、液体培地成分の濃度、pH、温度、ガス濃度、ガス含有量、および細胞密度が含まれる。
【0084】
いくつかの実施形態において、システムは、産生バイオリアクターモジュールを含む。産生バイオリアクターは、細胞および/または細胞からのバイオ製品のスケールアップした成長および産生のための環境を提供する。産生バイオリアクターは、複数のミニモジュールからなる3D構造を提供する。産生バイオリアクターは、1以上、2以上、4以上、6以上、8以上、10以上のミニモジュールを含み得る。ミニモジュールは、細胞の成長および移動、ならびに、液体培地、ガス、およびバイオ製品の流れための一連のチャネルおよびチャンバーを作成する。産生バイオリアクターのミニモジュールは、ダブルジャイロイド、改良型ダブルジャイロイド、または、三重周期極小曲面(TPMS)として説明され得る形状などの形状を含み得る。このタイプの表面は、3つの軸(X、Y、Z)すべての上で周期的に成長することができる格子系を形成する。TPMSは、自己交差がなく、所与の体積を2つ(または、それ以上)の独立したサブ体積に分割する場合がある。自己交差は、表面を画定する点ごとに単一の法線ベクトルを有する表面を備え得る。上記表面が、外接する体積を2つの独立および一致するサブ体積に分割する場合、この表面は平衡表面と呼ばれる。TPMSは、全表面がその対称要素によって構築され得る、基本的なパッチまたは非対称的なユニットの点から説明される。ミニモジュールは、ガス、培地、および/または副産物が、1つのミニモジュールから別のミニモジュールまで流れることができるように、互いに流体接続(例えば、相互接続)し得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターのミニモジュールは、ダブルジャイロイドまたは改良型ダブルジャイロイドの形状を含み得る。ダブルジャイロイド(DG)は2つのジャイロイドを含み得、2つの相互に成長する重ならないドメインを含み得る。改良型ダブルジャイロイド(DG)は、2つの相互に成長する重ならないドメインを含んでいてもよく、これらのドメインは、マトリックス相によって分離された2つの一定平均曲率(CMC)表面によって境界づけられ得る。改良型ダブルジャイロイド構造は、上記構造を所与のマクロ構造または機能に適合させるために、改良されていないダブルジャイロイドの接続に対する小さな改良を含み得る。改良には、接続または交差(例えば、「口」)の一部の遮断、構造の1つあるいは両方の相チャネルの直径の変更、またはDG構造中に存在する相チャネルのいずれかの完全な除去または一部の除去が含まれ得る。DGまたは改良型DGは、第2のジャイロイド構造と絡み合った第1のジャイロイド構造を備え得る。2つのチャネルは、多孔質膜(マトリックス相)によって分離され得る。マトリックス相は、特定の圧力およびガス組成物に少なくとも一部分基づき得る方法で、ガス分子を拡散することができる。液体成分およびガス状成分の両方のマイクロチャネルの半径が等しい場合、マトリックス相の表面はこれらの和と等しくなり得る。複数のDGが相互接続する(例えば、組み合わさる)場合、2つのCMC表面は2つの連続するチャネルを作り出す。これらの2つのチャネルは、液体培地および/またはガスの流れための2つの重ならないチャネルを作る。多孔質膜は、ある細胞型が付着して成長することができる表面を提供し得る。いくつかの実施形態において、1つのチャネルは、産生バイオリアクター全体にわたって液体培地を供給する。いくつかの実施形態において、両方のチャネルは液体を供給する。いくつかの実施形態において、1つのチャネルは液体培地を産生バイオリアクターに、もう1つのチャネルはガスを産生バイオリアクターに提供する。いくつかの実施形態において、特定の細胞型、産生条件などの必要に応じて、ミニモジュールのマイクロチャネルの直径は変わる可能性がある。いくつかの実施形態において、ミニモジュールは、その端部の長さ「L」を有する規則的な立方体のラップ構造体を有し得る。Lは、掃引直径(sweeping diameter)に関連し得る。いくつかの実施形態において、Lは、マイクロチャネルの掃引直径の3分の2、2の平方根の倍、3の平方根の倍に等しい。両方の成分の半径がミニモジュール内で同じである場合、液体成分に対応するマイクロチャネルの総面積および総体積は、ガス成分の対応する寸法と等しくなり得る。いくつかの実施形態において、成分の半径は異なる場合がある。いくつかの実施形態において、両方の半径が等しい場合、マイクロチャネルの半径は、掃引半径の0.7倍より大きくなり得ない。2つの異なる面の2つのミニモジュール間の最短距離は、掃引半径に2の平方根をかけて、各成分のチャネルの半径を足した値を引いたものと等しくなる。
【0086】
いくつかの実施形態において、DGを備えた第1のチャネルの面積は、DG内の第2のチャネルの面積と等しく、ここで、マトリックス相の面積は、第1のチャネルの面積と第2のチャネルの面積の和である。
【0087】
チャネルを分離するマトリックス相と各チャネルの中心との間の距離は、一定である。培地およびガスの流れが産生モジュールを通る速度は、選択された細胞型および細胞密度、ならびに細胞上で生成されるストレス条件によって決定され得る。マトリックスを介した液体培地へのガス拡散の速度は、構造によって形成されるガスチャンネル内のガス組成物およびガスの圧力、ならびに、膜の厚さおよびチャネルと周辺地域の製造ために選択された物質によって決定される。ガスの流量および使用圧力は、培養細胞密度に関連し得る。いくつかの実施形態において、ガスの流れは、1分当たりのガス状成分の体積と等しくなり得る。いくつかの実施形態において、ガスの流れは、1分当たりのガス状成分の体積の約2、3、5、または10倍以上である。いくつかの実施形態において、使用圧力は、約1気圧(atm)から5atmまで変化する場合がある。いくつかの実施形態において、使用圧力は、1atm、2atm、3atm、4atm、5atm以上である。
【0088】
DGの1つの利点は、他の構造では不均等な培地への曝露およびガス交換をもたらす可能性のある重力を軽減することである。上記形状は、任意の1つの細胞の構造壁までの距離の変動が平均化され、細胞集団中でより一定で均等な曝露をもたらすように、三次元の(3D)層流力を作り出す。さらに、DG形状は、流れが生じないか、または中断される可能性がある、液体またはガスの停滞した領域を回避する。このことにより、より遅い速度でバイオリアクターによってより高いスループットを使用することができ、結果として、細胞に対するせん断応力を低減させる。いくつかの実施形態において、平均速度は、約1ミクロン/秒以上、約3ミクロン/秒以上、約5ミクロン/秒以上、約10ミクロン/秒以上、約15ミクロン/秒以上、約20ミクロン/秒以上、約50ミクロン/秒以上、約100ミクロン/秒以上、約200ミクロン/秒以上であり得る。他のバイオリアクターシステムと比較して、DG構造は、培地およびガスのより良好な拡散をもたらす。いくつかの実施形態において、DG内のチャネルを流れる液体培地の速度は、同じチャネルを流れる細胞の自由落下速度より大きい。
【0089】
DG構造は、多くの形状オプションと比べて表面積を増加させ、この表面積の増加は、細胞成長ための表面積を提供し、ならびに、液体培地の流れ、混合、およびガス交換を改善する。LがL1と等しい場合、各成分の表面は、Y=3258.6.XE(-1)として示すことができ、ここで、Yは、平方ミリメートル/マイクロリットルであり、Xは、L1によって画定される半径と等しい。
【0090】
ミニモジュールDG構造は、産生バイオリアクターを構成するマクロ構造またはマクロ形状に組み合わされる。いくつかの実施形態において、マクロ構造はピラミッドである。いくつかの実施形態において、マクロ構造は、中空のピラミッド、ラメラピラミッド、チェス盤配置、またはログである。産生バイオリアクター内のミニモジュールのマクロ構造および数は、成長する細胞の細胞分裂速度に合わせて調整することができ、ならびに、液体培地、ガス交換、およびバイオリアクターを通る細胞移動の速度を調節するために調整することができる。各マクロ構造は、細胞と相互作用する様々な可能性を提供することができ、それは、産生バイオリアクターが刺激するように意図される特定のプロセスを考慮して選択され得る。ピラミッドおよび中空のピラミッドのマクロ構造により、一定の速度および細胞密度を維持しながら、成長に適した環境が可能になる。より多くの感受性株が時間の経過とともにより多くの介入を必要とする場合があり、その場合には、中空のピラミッドがその能力を提供することができる。ラメラピラミッドは、速度と密度の両方を一定に保つことによって成長に適した環境を可能にしながら、各時点で各細胞への完全なアクセスを提供し、これにより、直接的な介入および処理が可能になる。チェス盤およびログの配置により、均質な速度および密度に対する制御を可能にしながら、プロセスのすべての時点ですべての細胞への完全なアクセスを提供することができる。いくつかの実施形態において、細胞はマクロ構造の頂部で入力され、マクロ構造の底部には細胞収集装置がある。
【0091】
マクロ構造内にDGミニモジュールを配置すると、バイオリアクター内の液体培地およびガスの流れを決定および最適化するための機構が提供される。いくつかの実施形態において、マクロ構造は、ミニモジュールの層またはレベルで構成される。いくつかの実施形態において、ミニモジュールはレベルまたは層で構成され、各レベルにおける液体培地の速度は実質的に同じである。代替的にまたは加えて、各レベルあるいは層における液体培地の速度は変わり得る。例えば、液体培地の速度は、レベル間または層間で増加または減少し得る。液体培地の速度は、ミニモジュールごとに変わる場合もあれば、ミニモジュール間で実質的に同じである場合もある。いくつかの実施形態において、産生バイオリアクターは、液体培地入力装置をさらに備える。上記液体培地入力装置デバイスは、マクロ構造内の各レベルのミニモジュールに液体培地を供給するように構造化され得る。いくつかの実施形態において、各レベルに供給された液体培地の容積は、レベルの各々で実質的に一定の細胞密度を維持する。マイクロチャネルの半径は、細胞の半径、細胞密度、または他のパラメーター(例えば、フィラメント配置、鎖配置など)に関連し得る。いくつかの実施形態において、細胞密度は、1×106細胞/mlから1×1012細胞/mlまで変わる可能性がある。いくつかの実施形態において、各ミニモジュールを通る液体培地の速度は、細胞が単一のミニモジュールまたはミニモジュールのレベルを横断する時間が細胞分裂速度と実質的に同じになるように、細胞分裂速度によって決定されるか、あるいは、細胞が移動する間に1、2、3、4、5、もしくは5回以上分裂するように、細胞分裂速度に比例する。いくつかの実施形態において、第1のレベルは、所与の数の細胞、Xの密度を有するように、x体積の液体培地を有し、および、第2のレベルは2倍の体積の液体培地を有し、ならびに、細胞が第1のレベルから第2のレベルへと移動する間に、細胞の数が倍になり(例えば、各細胞は平均1回分裂し)、その結果、第2のレベルの密度はXのままである(つまり、レベル間で細胞密度が一定である)。
【0092】
マクロ構造の底部、つまり、細胞および/またはバイオ製品が、収集容器の出力部を通って構造を出る前に到達するマクロ構造の端末側終端における、細胞の予測された数を決定することによって、追加の最適化を達成することができる。予測される細胞の数は、マクロ構造の様々なレベルについて決定することができる。細胞がバイオリアクターを通って構造の底部に向かって進むにつれ、細胞分裂、細胞移動、ならびに細胞蓄積によって細胞の数が増加するため、底部および様々なレベルで予測される細胞数に基づいて、ガスおよび液体培地の流れを各レベルで調節して、増加したガスおよび液体培地の要件を補うことができる。
【0093】
液体培地の供給
いくつかの実施形態において、システムは、液体培地を1つ以上のモジュールに供給する1つ以上のコンポーネントを含む。コンポーネントは、培養培地フォーミュレーター、エレクトロポレーターまたは他の滅菌デバイス、リザーバー、ポンプ、気泡センサー、および気泡トラップの1つ以上を含む。培養培地フォーミュレーターは、培地の成分と、細胞がモジュール中で成長するのに適切な水とを混合することによって、1つ以上のモジュールのための液体培地を生成する。エレクトロポレーターは培地ジェネレーターに相互接続して、培地を清潔し、および、細胞を成長させるための一つ以上のモジュールに供給するための滅菌した出発培地を提供することができる。培地の生成または洗浄の際に導入される液体培地中のいかなるガス泡も検出して取り除くために、気泡センサーおよび気泡トラップが含まれる。
【0094】
システムは、モジュールに供給する前に予備培地を保持するための、1つ以上のリザーバーも含み得る。いくつかの実施形態において、システムは、少なくとも2、3、4、6、8、10、またはそれ以上のリザーバーを含む。リザーバーは非同期的に満たすことができ、その結果、1つのリザーバーが満たされる間に、既に完全に満たされている別のリザーバーが、1つ以上のモジュールに液体培地を供給するために使用される。この様式でのリザーバーの分離は、電流への任意の接続からシステムの細胞成長モジュールを隔離するのにさらに有利である。満たされているリザーバーは、エレクトロポレーターなどの上流のコンポーネントから流れ得る電流にさらされる。満たされたリザーバーは、下流のコンポーネントおよびモジュールに電流を伝達できないように、電流の流れから隔離されている。いくつかの実施形態において、リザーバーの体積は、プロセスのために選択された細胞の分裂時間にわたる産生バイオリアクターのスループットに関連し得る。いくつかの実施形態において、複数のリザーバーが並列に設置され、互いに切り離され得る。いくつかの実施形態において、複数のリザーバーが直列に設置され得る。
【0095】
液体培地供給コンポーネントは、1つ以上のセンサーをさらに備え得る。センサーは、培地のpHおよび温度を含むパラメーターを測定することができる。センサーはインラインセンサーであり得るか、または、液体培地供給部の1つ以上のコンポーネントから培地を断続的にサンプリングするサンプリングデバイスに接続され得る。供給システムは、システムの使用、スケール、および作動に応じて様々な率で、液体培地を提供することができる。いくつかの実施形態において、液体培地供給部は、下流のモジュールの1つ以上に、毎時約100マイクロリットル~約1000リットルを供給することができる。いくつかの実施形態において、液体培地供給部は、下流のモジュールの1つ以上に、毎時約0.5リットル~1000リットルを供給することができる。いくつかの実施形態において、液体培地供給部は、下流のモジュールの1つ以上に、毎時約0.5リットル~5リットルを供給することができる。いくつかの実施形態において、液体培地供給部は、下流のモジュールの1つ以上に、毎時約10リットル~80リットルを供給することができる。いくつかの実施形態において、液体培地供給部は、下流のモジュールの1つ以上に、毎時約100リットル~1000リットルを供給することができる。
【0096】
液体培地供給コンポーネントは、リザーバーあるいは培地フォーミュレーターから、細胞チップ、サンドボックスバイオリアクター、または産生バイオリアクターなどの下流のコンポーネントへと培地を流すための1つ以上のポンプを含み得る。システムは、1、2、3、4、6、8、10以上のポンプを含み得る。ポンプは、同じタイプのポンプであってもよいし、または異なるタイプのポンプであってもよい。例示的なポンプとしては、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、および圧力ポンプが挙げられる。液体培地供給システムは、下流のコンポーネントに一方向の流れを提供するように構成される。いくつかの実施形態において、ポンプは、細胞チップに培地を供給するために使用されるシリンジポンプである。いくつかの実施形態において、ポンプは、サンドボックスバイオリアクターに培地を供給するために使用されるシリンジポンプである。いくつかの実施形態において、ポンプは、産生バイオリアクターに培地を供給するために使用される蠕動ポンプである。いくつかの実施形態において、システムは、3つのポンプ、すなわち、細胞チップおよびサンドボックスリアクターに供給する2つのシリンジポンプと、産生バイオリアクターに供給する1つの蠕動ポンプとを備え得る。ポンプは、同期的にまたは個々に作動し得る。いくつかの実施形態において、3つのポンプはすべて同期的に作動する。1つ以上のポンプは、高い体積および速度の精度で、下流のモジュールに培地を供給する。いくつかの実施形態において、上記精度は、1、2、3、4、または5ナノリットル以内である。
【0097】
ガスの供給と組成
本明細書中のシステムは、成長と生存に酸素が必要な細胞など、特定のガス組成が必要な細胞への使用に適合するものである。バイオリアクターモジュールの構築に使用される材料として、ガラス、アクリル、コラーゲン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリ(エチレングリコール)(PEGDA)、ポリ(D,L-ラクチド)、および、媒体の酸素化を可能にするその他生体適合性ポリマーを挙げることができる。いくつかの実施形態では、前記システムは、1つ以上のモジュール中で酸素などのガス溶液の拡散を制御する制御装置を備えている。ガス溶液は、ガス貯蔵タンク又はその他供給機構などに由来する純粋なガス成分から調整することができ、これにより様々な濃度と流量で混合物または純粋なガス溶液が確立される。代替的または付加的に、このガス混合物は精製空気混合気体により生成されてもよい。ガス溶液を使用して、曝気環境を提供しpHを調節するとともに、炭素、窒素、リン、および硫黄を液相に提供することができる。いくつかの実施形態では、前記システムは、様々なガス溶液を前記システム内の様々なモジュールに提供できるように、1より多くのガス制御装置または機構を有している。
【0098】
環境に対するセンサーとモニタリング
いくつかの実施形態では、前記1つ以上のバイオリアクターモジュールは、前記環境の1つ以上の特徴をモニタリングする1つ以上のセンサーと相互接続される。前記1つ以上のセンサーは、前記モジュールまたはシステム内の特定部位に配置できる。前記センサーが特定群の細胞をモニタリングするように、特定の時間枠と特定の時点で測定が行われる。いくつかの実施形態では、1つ以上のセンサーは、バイオリアクターモジュールを通過すると特定群の細胞に関する特徴を追跡する。前記センサーは、特定群の細胞に対する最適化条件の測定に応じて特定の処理を生じさせることができる。特徴の測定と最適化の例として、pH、希釈される酸素、ガス組成全体、他のガスの希釈、温度、細胞密度、糖プロファイル、トランスクリプトミクス、標的転写産物のモニタリング、メタボロミクス、およびプロテオミクスが挙げられる。いくつかの実施形態では、前記特徴は、少なくとも1、2、3、4、6、8、10、またはそれ以上の時点で測定される。いくつかの実施形態では、前記特徴は特定群の細胞に対して測定されるとともに、バイオリアクターのモジュールを通過してモジュール間を移動すると前記群をモニタリングするよう時間調整可能である。
【0099】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサーは、バイオリアクターモジュール内の細胞、バイオリアクターモジュールを通過する細胞、バイオリアクターモジュールを出入りする細胞の生物学的パラメーター、物理学的パラメーター、または化学的パラメーターなどのパラメーターを測定する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサーは、バイオリアクターモジュール内の細胞環境の生物学的パラメーター、物理学的パラメーター、または化学的パラメーターなどのパラメーターを測定する。生物学的パラメーターの例として、細胞分裂速度、細胞成長速度、細胞ストレス応答、細胞内タンパク含有量、細胞内炭水化物含有量、細胞内脂質含有量、および細胞内核酸含有量が挙げられる。物理学的パラメーターの例として、細胞サイズ、細胞密度、細胞流量、液体培地流量、混合率、混濁度、温度、および圧力が挙げられる。化学的パラメーターの例として、pH、液体培地組成、個々の液体培地成分の濃度、ガス組成、ガス濃度、および溶解ガス組成が挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記システムまたはモジュールはカメラ装置と通信状態にある。このカメラは、少なくとも1つのバイオリアクターモジュールの出力をモニタリングするものである。前記カメラは、バイオリアクター出力の生化学特徴、物理特徴、化学特徴を捉えることができる。いくつかの実施形態では、前記カメラ装置は、細胞数、細胞速度、および細胞密度などの情報を捉える。いくつかの実施形態では、前記カメラは、一定範囲の波長にわたり情報を捉える逆スペクトルカメラ(inverse spectral camera)である。いくつかの実施形態では、前記カメラ装置は、2つ以上のバイオリアクターモジュールの出力から情報を捉える。
【0101】
使用方法
本明細書中のいくつかの実施形態では、細胞の産生に1つ以上のモジュールが利用される。
図8は、細胞の産生に1つ以上のモジュールを利用する方法の一例を示す。この細胞はモジュールの出力チャネルを介して収集可能である。いくつかの実施形態では、細胞はモジュール内で収集されて、細胞チップモジュール内に細胞を保管するなど前記モジュールに保管される。いくつかの実施形態では、前記モジュール中で成長した細胞により産生される小分子、タンパク質、抗体、代謝産物、または他の産物などの、細胞からのバイオ製品の産生に1つ以上のモジュールが利用される。このバイオ製品は、多孔質膜を通る拡散または濾過などにより、モジュールの出力チャネルを介して集められ、成長細胞から分離することができる。いくつかの実施形態では、前記バイオ製品は細胞の内部にある。前記バイオ製品を採取するべく細胞は収集、溶解され、その後得られたバイオ製品はさらに精製される場合がある。いくつかの実施形態では、前記バイオ製品は細胞から分泌されるので、細胞の採取も溶解も必要とすることなく収集可能である。
【0102】
本明細書中のバイオリアクターモジュールとシステムは、特定の細胞型を産生するために利用可能であり、様々な細胞型の成長に利用可能な適応性を持つ。いくつかの実施形態では、細胞チップモジュールは、特定種類の細胞をサンドボックスバイオリアクター、産生バイオリアクター、またはサンドボックスモジュールへと、産生モジュールと直列して提供するために利用される。前記細胞チップモジュールにより、特注の細胞産生と環境最適化が可能になる。
【0103】
前記細胞チップは、幹細胞の産生、および自己由来産生と同種異系産生を含む他の種類の細胞療法に対応することができる。前記細胞チップは、幹細胞の産生、および自己由来産生と同種異系産生を含む他の種類の細胞療法に対応することができる。いくつかの実施形態では、前記細胞チップは、個別化されたキメラ抗原受容体T細胞(CART)処置に対してt細胞の拡張、遺伝子送達、または活性化を実行可能である。いくつかの実施形態では、幹細胞は分化されない、成長する、および/またはは分化される場合がある。
【0104】
いくつかの実施形態では、前記システム中で成長させられる細胞は、細菌細胞などの原核細胞である。いくつかの実施形態では、前記成長させられる細胞は、酵母菌、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、鳥類細胞、または哺乳動物細胞などの真核細胞である。これら細胞は培養液中で自由に浮遊するか、または、前記バイオリアクター内の1以上の表面に付着する接着細胞であってもよい。前記細胞は、異種タンパク質、小分子、または代謝産物などのバイオ製品を産生するために形質転換、またはその他の方法により操作することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、無重力下、または微重力条件で使用してもよく、そうすることで細胞は無重力あるいは微重力条件で成長する。
【0106】
バイオリアクターモジュールの構築方法
本明細書中のシステム、構成要素、およびモジュールは様々な材料から製造可能であり、この材料は、成長させられる細胞と利用される細胞環境に応じて合わせることができる。いくつかの実施形態では、構成要素とモジュール、またはそれらの一部は3D印刷により製造される。3D印刷は、市販の樹脂と紫外線(UV)硬化性生体適合ポリマーを利用することができる。いくつかの実施形態では、各ミニモジュールの形状は仮想環境で個別に設計される。いくつかの実施形態では、構成要素とモジュールは、本明細書に記載されるように一体的に組み合わせられかつ配置される、市販の構成要素により設けられる。いくつかの実施形態では、使用される生体材料は、3つの下位要素として生体適合ポリマー、光重合開始剤、およびUV吸収材を組み合わせたものを備えていてもよい。
【0107】
本開示の装置とシステムは、例えば光造形法などの3D印刷により形成されてもよい。いくつかの例では、本開示の装置のコンピューター支援製造(CAM)またはコンピューター利用設計(CAD)モデルは、光造形法を利用する3D印刷システムに設けられ、前記光造形法は光重合開始剤と1つ以上のポリマー前駆体とを含む樹脂を含有する容器を提供する工程を含む。事前にプログラムされた設計または構造を、樹脂を有する容器の表面に引き付けるために、紫外線(UV)レーザーを使用してもよい。この樹脂は、光化学的に凝固することで前記UVレーザーとの接触に際し単層を形成するフォトポリマーであってもよい。層ごとの製造プロセスに追加のレジンを追加、かつ凝固させてもよい。光造形法は、付加的なトップダウン製造手法またはボトムアップ製造手法でモジュールを構築するために使用されてもよい。
【0108】
リアクターモジュールを構築する代わりの手法として、3Dジャイロイド構造または除去製造法を形成するための、ポリマー例えばブロックコポリマーの自己集合を挙げることができる。除去製造方法は、犠牲材料の化学除去または機械除去を含む場合がある。例えば、犠牲材料は焼結レーザーによる接着製造を使用して形成されてもよい。犠牲材料は、押浸し、浸漬、またはその他の方法で生体適合ポリマーに被覆されてもよい。次いで犠牲材料が溶解し、または機械的に除去されることで、生体適合ポリマーから3Dジャイロイド構造を形成することができる。
【0109】
特注のバイオリアクターとシステム
本明細書中のバイオリアクターモジュールとシステムは、特異的な細胞型と特異的なバイオ製品を出力するために設計かつ調整可能である。具体的に、産生バイオリアクターは特異的かつ個別用途向けに設計可能である。ミニモジュールの体積、各ミニモジュール内のチャネル、ミニモジュールレベルの数、およびマクロ構造は、所与の細胞密度、細胞分裂速度、液体剪断力を達成し、かつ液体培地、バイオ製品を採取する液体(細胞成分をこじ開ける、および/または分別する溶剤など)、液体流量、ガス組成、および気体流速の選択を調整する細胞環境(例えば成長条件)を提供するべく、選択される場合がある。
【0110】
いくつかの実施形態では、前記システムは、1つ以上の細胞と協働してバイオリアクターモジュールと細胞環境を最適化する機構を備える。この最適化機構は、前記システム内にある1つ以上のセンサーおよびカメラから細胞環境(E)と細胞挙動(B)に関する情報を受け取るデータループを備えていてもよい。加えて、前記細胞を前記システムへ入力するために、細胞型に関する遺伝子情報(G)は、G*E=Bなどの関連性を提供するために前記最適化機構へ入力されてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、前記細胞環境は1つ以上のパラメーター(pH、液体培地成分、ガス組成、流量など)に応じて変更され、細胞環境に関する情報は、各変形(E1-En)および各環境変形下で生じる細胞挙動(B1-Bn)に対して収集される。いくつかの実施形態では、入力された細胞は変更され(様々な遺伝学、例えば分裂率、栄養消費、形態、ストレス耐性で変動する細胞などの)、それぞれに関する情報は、各細胞変形(G1-Gn)、およびバイオリアクター中の環境下で生じる細胞挙動(B1-Bn)に対して収集される。いくつかの実施形態では、変形は細胞環境、細胞遺伝学、および測定される挙動に使用され、そうすることで、各細胞変形(G1-Gn)が多くなれば、最適化機構は1より多くの細胞環境(E1-En)下で挙動(B1-Bn)を測定する。前記最適化機構は、細胞遺伝学と細胞環境全体にわたりG*E=Bの関連性をランク付け、表示、またはその他の方法により比較することで、様々な試験細胞環境下での適合性、最適化、および様々な細胞遺伝学のランキングに関する情報を提供する。これにより最適化機構は、細胞遺伝学、細胞環境、またはその両方に基づき産生を最適化することができる。したがって前記最適化機構は、産生に必要な細胞型と出力のための特注バイオリアクターおよび特注細胞環境条件の設計を含む、産生バイオリアクターを最適化するためのパラメーターを提供することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、前記最適化機構はコンピューター制御装置である。いくつかの実施形態では、前記最適化機構は、1つの変形または一連の変形から得たデータを利用して、試験対象である次の変形または一連の変形を作成する、機械学習アルゴリズムを備えている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、無重力下、または微重力条件で使用してもよく、そうすることで細胞は無重力あるいは微重力条件で成長する。
【0113】
バイオリアクターモジュールとシステムの例
本明細書で提供されるバイオリアクターモジュールは、個別に、または、細胞を産生、最適化、場合により保管するシステムを構築するために組み合わせて使用可能である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、無重力下、または微重力条件で使用してもよく、そうすることで細胞は無重力あるいは微重力条件で成長する。3-モジュールシステムの実施形態の一例を
図1に示す。この実施形態の例では、3つのバイオリアクターとして細胞チップ(200)、サンドボックスバイオリアクター(400)、産生バイオリアクター(800)がシステムに相互接続される。液体培地は培養培地フォーミュレーター(101)内で混合され、清浄のためにエレクトロポレーター(20)に移される。このエレクトロポレーターは、液体培地の温度を前記システムが作動する作業温度にするために冷却装置(21)を備えていてもよい。ポンプ(40)により液体培地はフォーミュレーター(101)からエレクトロポレーター(20)へ移動する。ポンプ(50)により液体培地が気泡トラップ(60)を通過すると、電気穿孔処理により生じた気泡が除去され、気泡センサー(70)により、適切な気泡なしの状態にするべく通過した液体培地がモニタリングされる。その後、液体培地はリザーバー(30)に到着する。いくつかの実施形態では、リザーバー(30)は2つ以上のリザーバーから構成される、そうすることで、満タン時に第1のリザーバー(31)が液体培地をバイオリアクターモジュールに提供しながら、第2のリザーバー(32)が充満する。各バイオリアクターモジュール(200)、(400)、(800)は、それぞれポンプ(100)、(110)、(120)の使用時に前記リザーバーから液体培地を受け取る。ガス供給部(500)を使用してガスがバイオリアクターに供給される。ガス供給部(500)は、各ガス成分に対し1つ以上のガス貯蔵装置を備えていてもよい。ガス供給部は、異なる混合物と各バイオリアクターモジュールへ別々に流れる異なる流量を含むガス組成とバイオリアクターへのガス流を、混合かつ調節する制御装置を備えていてもよい。
【0114】
前記システムとバイオリアクターはさらに、ある種の出力レセプタクルおよび装置を備えていてもよい。入力され通過する液体培地を含むバイオリアクターはそれぞれ、流体廃棄装置を備えていてもよい。全バイオリアクターモジュールから消費済み液体培地を集めるために、共通の流体廃棄(600)を利用することができる。同様に、入力され通過するガスを含む各バイオリアクターでは、ガス廃棄により、消費済みであるとともに細胞分泌されたガス組成を集めることができる。全バイオリアクターモジュールから出力ガスを集めるために、共通のガス廃棄(550)を利用することができる。
【0115】
物理学的パラメーター、生物学的パラメーター、および化学的パラメーターのほか、それらの組み合わせを含む1つ以上のパラメーターをモニタリングするために、バイオリアクターを使用して、または複数のバイオリアクターからなるシステムに、1つ以上のセンサーを備えていてもよい。
図1に示すセンサーの例として、培養培地フォーミュレーターをモニタリングするセンサー(80)、エレクトロポレーターをモニタリングするセンサー(81)、および1つ以上のリザーバーをモニタリングするセンサー(82)が挙げられる。追加のセンサー(83)は、細胞チップモジュールからの出力をモニタリングする。センサー(84)と(85)は、それぞれサンドボックスモジュールからの液体出力とガス出力をモニタリングする。同様にセンサー(86)と(87)は、それぞれ産生バイオリアクターモジュールからの液体出力とガス出力をモニタリングする。
【0116】
1つ以上のバイオリアクターからなるシステムはさらに、バイオリアクターモジュール間に相互接続部を備えていてもよい。
図1のシステムの例に示すように、細胞チップは接続部(280)によりサンドボックスモジュールに相互接続し、細胞が細胞チップの出力部からサンドボックスモジュールへの入力部まで通過するのを可能にするべく調節することができる。コネクタ(380)により、サンドボックスモジュールの出力部からの細胞は産生バイオリアクターモジュールの入力部へ流れることができる。コネクタ(480)は、産生バイオリアクターの出力部から収集レセプタクルまたは装置コレクター(700)までの相互接続部である。前記コレクター(700)は、産生バイオリアクター(800)から細胞、バイオ製品、またはそれらの組み合わせを収集可能である。いくつかの実施形態では、コレクター(700)は、液体培地からの細胞分離、細胞からのバイオ製品分離、および細胞成分の分離あるいは細胞成分間の分離といった分離を行うためのフィルター、膜、またはその他のユニットおよび/あるいはモジュールを備えていてもよい。
【0117】
図2Aには、チップモジュール(201)における細胞環境(205)の例を示す。この例では、前記細胞チップはゲートトラップ(220)と、複数の吸引トラップ(240)と、複数のオーバーフロートラップ(260)とを備えている。入力端には、培地を細胞環境に設けるための培地入力ポート(202)がある。反対端(液体培地が流れる方向にある)には、細胞チップモジュール中で成長した細胞を採取する採取ポート(210)が挙げられる。細胞チップ(201)に対する培地回路(230)の例の詳細は
図2Bに示す。前記培地回路は、培地入力ポート(31)と、培地出力ポート(233)と、培地供給チャネル(235)とを備えていてもよい。細胞チップ(201)に対するガス回路(250)の例の詳細は
図2Bに示す。このガス回路は、ガス入力回路(251)と、ガス出力回路(253)と、ガス分配チャネル(255)とを備えていてもよい。
図2Cは、培地回路(230)、ガス回路(250)、および細胞環境(205)の配置例を伴う細胞チップ(201)の側面図を示す。
【0118】
図3A~3Fは、細胞チップモジュールに使用されるトラップの例を示す。ゲートトラップ(221)の例は
図3A(平面図)と3B(側面図)に図示され、培地入力ポート(202)に近接した状態で示されている。前記ゲートトラップは内部空間を取り囲む流れプロテクタ(225)で構築され、該流れプロテクタ(225)の間には、前記ゲートトラップの内部空間から細胞(203)が流れ出るのを制限する開口部(227)がある。いくつかの実施形態では、前記流れプロテクタ(225)間にある開口部(227)の直径は、細胞チップ上で成長させられる細胞の2倍に調整される。いくつかの実施形態では、開口部(227)の直径は、細胞チップ上で成長させられる細胞の直径より大きく調整される。接種ポート(223)を使用して、細胞はチップ上またはゲートトラップ(221)中に播種されてもよい。
【0119】
図3Cと3Dは、平面(
図3C)と側面(
図3D)から見たオーバーフロートラップ(240)の配置例を示す。オーバーフロートラップは、三面で、かつ壁セクション(246)間に開口部(247)を設ける形態で内部空間を取り囲むように配置される方向付けられたボックス壁(245)の配置で構成される。開口部(247)の大きさは、チップ上で成長させられる細胞に合わせてもよい。いくつかの実施形態では、開口部(247)の直径は生細胞よりも小さいが死細胞の直径よりも大きく、そうなることで生細胞(203)は、ボックス配置をあふれさせるほどの数に達するまで方向付けられたボックス壁(245)の内部空間に捕捉されたままとなり、一方で死細胞は開口部(247)を通過して、方向付けられたボックス壁(245)の内部空間内には保持されない。
【0120】
吸引トラップ(260)の例は、
図3Eの平面図と
図3Fの側面図に示される。吸引トラップには多孔フィールド(porous fields)(262)と環境壁(264)がある。多孔フィールドは、細胞の大きさが孔の大きさを超えるように設計される。
【0121】
図4A~4Eは、サンドボックスモジュールとその構成要素の例を示す。
図4Aはサンドボックスセグメント(405)を示す。セグメントの例として、細胞および関連する細胞環境が混合モジュール(420)へと流れるチャネル(445)が挙げられる。混合モジュール(420)では、チャネル(443)から流れた液体培地が細胞と混合し、その後にこの混合物は、細胞成長、および場合により1つ以上のセンサーまたはカメラによる測定のために細胞チャンバ(410)へと流れる。
図4Bはサンドボックスモジュール細胞環境(401)を示しており、該環境は、直列および並列で連結された複数のセグメントと、細胞入力部(440)と、サンドボックスモジュールからの細胞出力部(460)とを備えている。各セグメントの例として、混合モジュール(例えば421、422、423)と細胞チャンバ(例えば411、412、413)が挙げられる。
図4Cは、ガス回路(470)(上部)の一例、例えばサンドボックス細胞環境(401)(下部)を示す。
図4Dは、培地入力部を備えた液体培地回路(480)の一例(上部)と、細胞入力チャネル(490)の一例(下部)を示す。
図4Eは、サンドボックスモジュール(400)を構築するためにサンドボックス細胞環境(401)上に液体培地回路(480)、ガス回路(470)、および細胞入力チャネル(490)を重ねる例を平面図と側面図から示す。
【0122】
図5は、細胞がバイオリアクターに進入する播種ポート(802)と、細胞がバイオリアクターに流れて液体培地および他の細胞環境成分と混合される細胞分配機構(804)とを備える、産生バイオリアクター(800)の一例を示す。液体培地入力部(820)により液体培地を産生バイオリアクターに播種することが可能となり、その後液体培地は、培地接続部(例えば(824))を使用して培地供給システム(822)を通って分配され、未使用の培地は収集される(826)。ガスはガス入力部(810)に進入し、気相チャネル(814)によりバイオリアクター全体に分配され、ガス出力部(818)を通って出ていく。細胞および/または細胞により産生された生成物は、ポート(870)を介して採取可能である。
【0123】
図6A~6Cは、本明細書に記載の産生バイオリアクターに使用されるマクロ構造の例を示す。
図6Aは、錐体マクロ構造(881)と、培地分配システムで覆われた錐体マクロ構造(883)の例を示す。
図6Bは、中空のピラミッドマクロ構造(885)と(887)の例を示す。
図6Aは、ログのマクロ構造(log macrostructure)(889)の例を示す。
【0124】
いくつかの実施形態では、産生バイオリアクター用のマクロ構造はミニモジュールで構成され、ミニモジュールの各々はダブルジャイロイドまたは改良型ダブルジャイロイドなどの所与の形状を呈してもよい。
図7Aは、産生バイオリアクター用の1つ以上のミニモジュールの構築に使用される改良型ダブルジャイロイド形状(841)の実施形態例を示す。
図7A下部に示すように、ダブルジャイロイドミニモジュールは、
図6A~6Cのマクロ構造に示されるものなど、ボックス(841A)として概略的に表わされている。改良型ダブルジャイロイド形状(841)は、相(842)と(844)を備えていても良く、これらは
図7Bに示すように組み立てられると、重なり合うチャネル(843)と(845)へと組み立て可能である。加えて、相(842)と(844)の間には膜間隙(846)がある。
図7Cは、チャネル全体にわたり一定の直径を呈するチャネル(842)の例の一部の湾曲例(example sweep)を示す。
【0125】
マクロ構造へのミニモジュールのアセンブリ
本明細書に記載のミニモジュールは、培地、ガス流、および分配の標的制御をもたらすマクロ構造へと組み立て可能である。いくつかの実施形態では、ミニモジュールは、マクロ構造に組み立てられることで産生バイオリアクターを作成する改良型ダブルジャイロイド(DG)である。
図9A~9Fは、第1のミニモジュール(例えばDG)から始まり、幾可学的形状を繰り返すことで成長が3つの可能な寸法のうち2つに制限される三次元(3D)マトリックスを形成するように追加のミニモジュールを組み立てる、アセンブリを図示する。1つのミニモジュールと他のミニモジュールとの接続点は「口」と呼ばれる。同一に配向される相互接続ミニモジュールの第1のアセンブリは「層」と呼ばれる。この層は、例えば菱形形状で配置することができ、そうすることで、いくつかの実施形態で同数のモジュールが選択方向に接続される場合、結果として生じる成長は比例せず、そのため層の成長は互いに不規則である。いくつかの実施形態では、前記層は、正方形で、または結果として生じる成長が比例するように配置される。
図9D~9Fは、層アセンブリと成長の実施形態例を図示する。
【0126】
各層の縁では、ミニモジュールの接続されていない口は、培地の流れあるいはガスのための入力部、消費済み培地や消費済みガスの出力部、および細胞または細胞により産生されるバイオ製品の出力部などの他の機能に、層を接続するために使用可能である。
【0127】
いくつかの実施形態では、ミニモジュールの層のアセンブリ(「第1のマトリックス」)は、ミニモジュールの層の第2のアセンブリ(「第2のマトリックス」)と同じ場所に置くことができ、それにより第2のマトリックスは第1のマトリックスが残した自由空間を占有し、同じ体積を占めるマトリックスは接触点がなく、一定の最小距離を維持する。2つのマトリックスのアセンブリの例を
図10A~10Fに示す。
図10Aは、立方体形状で刻みをつけたダブルジャイロイドの一部の例を示す。
図10Bは、
図10Aの構造の直交図と切断図を示す。
図10Cと10Dは、第1の層に対する第2の層の成長方向の例を示す。
図10Eは、錐体状かつ左回りの成長から除去された体積の例を示す。
図10Fは、中空のピラミッドの垂直軸に沿ったマクロ構造の時計回り成長方向の例を示す。
【0128】
いくつかの実施形態では、前記ミニモジュールは中空のピラミッドマクロ構造へと組み立てられる。中空のピラミッドには多くの中空中心と増大する横断面(of increasing transverse section)がある。中空のピラミッドマクロ構造を使用すると、供給回路は外周と内周両方として機能することができる。中空のピラミッドの構築では、前記マトリックスは、分配器に接続する初期層、およびコレクターに順に接続する層を有する。前記初期層上方にある口の数は、コレクターに接続する層の下方にある口の数と同様、設定M=2
nに属する場合がある。このように、接続チャネルまたはツリーはバランスのとれた様式で対になって分枝できることが確実となる。ツリーは、気泡のないバイオリアクターの分配構造(入力)と収集構造(出力)であってもよい。入出力の両方において、チャネルは単一チャネルから2
nチャネルに移動する、または分枝してもよい。層間の体積の増加(これは、流れ方向に1つの層と次の層との間に加えられるミニモジュールの数である)はバイオリアクターにより求められ、(i)外周の縁間の成長を交互に感知すること、および(ii)内周(すなわち内部中空中心の周囲)の増加により順を決められる。例えば、Nが中空のピラミッドの外周にある縁のうち1つにおけるモジュールの数であり、nが中空のピラミッドの内周にある縁のうち1つを構築するモジュールの数である場合、1つの層N=(8;8)の場合はn=(4;4)である(
図12を参照)。この論理は、各層の錐体にある外縁間に、右回り感覚(流れ方向を考慮)に交互に繰り返される。その結果、段が切子面のある螺旋を形成する段状錐体となる。内周にはさらにらせん成長部(spiral growth)があるが、回数は外周よりも少なく、内周に対する成長方向は外周の成長方向と反対にある(
図13のAとBを参照)。内部-外部螺旋と流れ方向との相互作用により、中空のピラミッド構造内で媒体は渦を巻くように流れて移動する。
【0129】
いくつかの実施形態では、前記供給システムは1つ以上のサブチャネルを介してバイオリアクターに接続される。供給回路のサブチャネルは、所与の層の各面の上を等距離でバイオリアクター中の1つ以上の層の周囲を取り囲むことができる。このサブチャネルは層の縁としてミニモジュールの1つ以上の口に接続することができる。一組の接続部の例を
図11A~11Fに示す。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記供給回路は、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上の点にてバイオリアクターに接続する。一実施形態では、前記供給回路は中空のピラミッドマクロ構造バイオリアクターに役立ち、5つのサブチャネルが分裂している。これらサブチャネルのうち1つは、錐体内部チャネル、および各層の縁に平行な残りの供給サブチャネル(外部チャネル)の内部へと延在する。供給回路の圧力と流れ平衡は、供給システムの外部チャネルと内部チャネルの釣り合いにより維持される。中空のピラミッド形状に対する供給回路の例を
図14に示す。
【0131】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターのマクロ構造はラメラである。いくつかの実施形態では、前記供給システムは1つ以上のサブチャネルを介してバイオリアクターに接続される。供給回路のサブチャネルは、所与の層の各面の上を等距離でバイオリアクター中の1つ以上の層の周囲を取り囲むことができる。このサブチャネルは層の縁としてミニモジュールの1つ以上の口に接続することができる。一組の接続部の例を
図11A~11Fに示す。
【0132】
いくつかの実施形態では、前記バイオリアクターは、DGなどのミニモジュールで構成されるラメラマクロ構造を利用する。ラメラマクロ構造は、ミニモジュールで構成される、厚みが一定で断面が増大するシート状である。シートの厚みを一定にすることで、供給回路から物質のアクセスが均一になる。層間の体積の増加(これは、流れ方向に1つの層と次の層との間に加えられるモジュールの数である)はバイオリアクターにより求められ、シートの最も短い縁間の成長を交互に感覚することにより順に並べられる(例えば
図15を参照)。ラメラマクロ構造には、1枚より多く、例えば2、3、4、5、6、7、8、または8枚より多くのシートが平行に配置されてもよい。各シート間の空間は、シートにモジュールを供給する供給回路またはその一部を配するために利用可能である(例えば
図16を参照)。
【0133】
いくつかの実施形態では、前記ミニモジュールは、ツリー-チェスマクロ構造へと組み立てられ、このマクロ構造には、ミニモジュールの層を長手方向に通過させる一定の断面形状である少なくとも1つの中空カラムがある。いくつかの実施形態では、ツリー-チェスマクロ構造にはこのようなカラムが1、2、3、4、または4つより多く存在する。このカラムは、長手方向カラムに追従するチャネルを通って液体培地などの物質を運ぶ領域を設けるために使用可能である。消費済み培地、ガス、細胞、およびバイオ製品の収集は、構造の外面のうち1つ以上またはすべての上で行われ、カラム中心と面との間の圧力差により誘導される。ツリー-チェスマクロ構造の例を
図17に、供給・収集構成の例を
図18に示す。
【0134】
バイオリアクター接続システム
前記モジュールは1つ以上の接続システムにより接続され、結合され、または流体連通されてもよい。
図19Aと19Bは、細胞チップモジュールと流体源または流体収集モジュールとの間にコネクタを備える接続システムの例を示す。前記コネクタは、流体および/または細胞を含有する流体の進入と脱出を可能にする、支持部および一組の中空針を備えている。いくつかの実施形態では、前記コネクタは、針を介して細胞チップモジュールなどの第1のモジュールに接続する。前記針は、針の各組が流体入力用の針、および細胞チップモジュールから流体を出力する針を備える場合がある複数組の針として配置されてもよい。針の一端は細胞チップモジュール中のチャンバーまたはチャネルへの進入を目的としており、他端は流体源、収集装置、または他のモジュールに接続可能である。
【0135】
いくつかの実施形態では、一組の針は、少なくとも1本の入力針と1本の出力針を備えている。いくつかの実施形態では、複数組の針がある。各組の針は別個のチャンバーおよび/または別個のチャネルに向けることができ、これらに対して流体が入力のために向けられ、または出力のために除去される。
【0136】
いくつかの実施形態では、前記コネクタは細胞チップモジュールを、培養培地、栄養補助物質、化学入力部、トリプシン、細胞チップモジュールに流体を供給し場合により消費済み流体を除去するために使用可能な洗浄液/緩衝液など、1つ以上の流体源に接続することができる。いくつかの実施形態では、前記コネクタは細胞チップモジュールを、サンドボックスバイオリアクターや、細胞をモジュール間で移動させるためなどの産生バイオリアクターなどの第2のモジュールに接続することができる。
【0137】
一実施形態では、前記接続システムは、針が細胞チップモジュールなどのモジュールに進入する前に清浄および/または滅菌されるように清浄チャンバーを備えている。一実施形態では、前記清浄チャンバーは、細胞チップモジュールの一端にある1つ以上の別個のチャンバーである。前記清浄チャンバーは、環境から清浄チャンバーを包含する隔壁により第1の端部に結合し、これを通って針が一端から清浄チャンバーに貫通することができる。前記清浄チャンバーは、安全フィルムまたは他の境界により第2の端部に結合することができ、清浄チャンバー内に清浄流体または滅菌流体(あるいはガス)を包含することができる。このような実施形態におけるコネクタは、針の他端において清浄剤または衛生化剤となどの流体源、および洗浄溶液に接続される。
【0138】
安全フィルムまたは境界の反対側にはチャネルがある。一旦清浄かつ滅菌されると、針は安全フィルムまたは境界を通ってチャネルへと配置することができる。このチャネルは、培養培地を針から細胞チップ内の他の位置へと流す培養培地チャネルであってもよい。前記チャネルは細胞採取チャネルであってもよく、そこからチップに存在する細胞(チップ中で成長しかつ増加する細胞など)はチャネルに向けられ、針を通って別のモジュールまたは採取コンポーネントに向かうことができる。前記チャネルは廃棄チャネルであってもよく、これを通って消費済みの培地はチップに配向され、チップから除去することができる。
【0139】
図19Cは、コネクタシステムにより作られる接続部が、培養培地、衛生化剤を含有するコンポーネントのほか、廃棄物収集部、およびサンドボックスモジュールに通じている実施形態の例を示す。接続チューブまたはチャネルはコネクタシステムから接続しており、流体をコネクタから適切なソース、コレクター、またはモジュールに配向するためにバルブを利用する。
【0140】
図19Dは、清浄と滅菌などを目的として、細胞チップモジュールの第1のチャンバーを貫通する針を備えた接続システムの実施形態の例を示すとともに、清浄プロセス中の接続システムの実施形態を例示しており、前記接続システムは、衛生化流体を含有するコンポーネントから細胞チップの衛生化チャンバーへと流れる流体、および、消費済みの衛生化流体を除去するための針のセットのうち1つを有している。
【0141】
図19Eは、清浄/滅菌後に第2のチャンバーを貫通する針を備えた接続システムの実施形態の例を示す。第1のセットの針(左)は、入力針が培養培地チャネル/チャンバーに進入し、新たな培養培地が細胞チップモジュールに流れるのを可能にするように、位置決めされる。第2のセットの針は、消費済みの培地と培養廃棄物を細胞チップモジュールのチャネルから出力するために1本の針を位置決めするように、位置決めされる。第3のセットの針(右)は、出力針がチャンバー/チャネルに進入して培地および細胞を細胞チップモジュールから出力するために位置決めされるように、位置決めされる。
【0142】
接着細胞培養のためのモジュール
別の態様では、本開示は細胞を培養する方法を提供する。該方法は、複数の細胞を接着バイオリアクターに提供する工程を含む場合がある。接着バイオリアクターは、少なくとも1つのチャネルと微多孔性膜とを備えていてもよい。前記接着バイオリアクターは、細胞チップモジュールまたはサンドボックスバイオリアクターの一部であってもよい。細胞の少なくとも一部は少なくとも1つのチャネルの表面に接着可能となり、それにより複数の細胞の少なくとも一部が、付着した細胞を生成するチャネルの表面上で成長する、および/または反復する。液体培地は少なくとも1つのチャネルから微多孔性膜を通って流れてもよい。チャネルから微多孔膜を通って液体培地を流すことで、(新たな培地または滅菌洗浄緩衝液などにより)接着細胞が洗浄されるか、チャネルの表面から細胞が剥離される(detached)か、または剥離した細胞が洗浄される場合がある。剥離した細胞(例えば懸濁細胞)は、細胞を含む他の液体培地をチャネルに通して流すことにより収集することができる。前記接着バイオリアクターは、細胞チップモジュール、サンドボックスバイオリアクター、バイオリアクター(例えば産生バイオリアクター)、またはそれらの任意の組み合わせに流体接続されてもよい。前記細胞チップモジュールは、細胞を前記接着バイオリアクターに提供することができる。前記接着バイオリアクターは、細胞をバイオリアクター(例えば産生バイオリアクター)に提供することができる。
【0143】
細胞は、表面または人工基質上の制御条件下で培養、または成長させてもよい。例えば細胞は、単一層、または他の表面成長構成で培養されてもよい。
図20は、接着細胞培養のための層状のモジュールの例を示す。
図21Aは、接着細胞培養に適したモジュールの実施形態を示す。この細胞は、PDMSなどの細胞接着に適した材料に接着可能である。選択した時点、または選択した細胞密度で、接着(例えば付着した)細胞を通って流れる液体にトリプシンなどの酵素を添加するなどにより、接着細胞を接着材料から取り除き、周囲の培養培地へ放出することができ、そうすることで細胞あるいはその一部をモジュールから採取可能となる。
【0144】
いくつかの実施形態では、前記接着材料は1つ以上の開チャネルにより結合され、それにより培養培地は接着された細胞により流れる。前記モジュールはさらに、微細穿孔膜などの境界を包含してもよい。この膜により培養培地または他の流体の通過が可能となるが、微細穿孔の大きさに起因して細胞は通過することができない。
【0145】
いくつかの実施形態では、接着細胞用のモジュールには1つ以上のチャンバーがあってもよい。実施形態の一例を
図20に示す。この図には、細胞をモジュールへ入力するための播種チャンバー、フィルターチャンバ、および取り付けチャンバーがある。前記取り付けチャンバーには、細胞がその表面に接着するように接着材料があってもよい。
【0146】
細胞は、流れる培養培地あるいは他の流体にトリプシンを含める、または接着細胞を播種することにより、接着細胞から除去することができる。一旦、細胞が(PDMS材料などから)除去されると、トリプシンは培養培地または他の流体での洗浄により除去することができ、その後、このような培地または流体は微細穿孔膜を通過して、細胞を残す。次いでこのような細胞は、新たな培地または他の液体中で再懸濁され、前記細胞またはその一部は、チャネルを通って採取チャンバー、または他の収集用の出力チャンバーへと流れる液体を使用して移動させることができる。
【0147】
図21B~21Eは、一連の細胞接着、細胞剥離のためのトリプシン処理、洗浄、および採取の例を示す。いくつかの実施形態では、前記接着細胞モジュールは細胞チップモジュールまたはその一部である。いくつかの実施形態では、前記接着細胞モジュールはサンドボックスモジュールまたはその一部である。いくつかの実施形態では、前記接着細胞モジュールは、1つ以上のミニモジュールなど、サンドボックスモジュールまたはその部分の一部である。
【0148】
コンピュータシステム
本開示は、本開示の方法を実施するようにプログラムされるコンピュータシステムを提供する。
図34はコンピュータシステム(3401)を示しており、該コンピュータシステムは、培地の調製と滅菌、流れ制御、ガス流の速度、圧力、および調製、内包センサーによるデータ取得(例えば物理データ、化学データ、生物データ)、センサーデータ融合および命令制御ループ、画像処理、ならびに各プロセスに関連付けられるデータセット作成など、プログラムどおりにシステムの全内部プロセスを制御するようプログラム、またはその他の方法で構成されている。コンピュータシステム(3401)は、本開示のシステム内の細胞により証明される微小環境条件の様々な態様を調節することができる。このような態様として例えば培地の流量、サブコンポーネントの濃度、混合時間、リザーバー充填、パルス回数、パルスの電圧、エレクトロポレーターが培地にかける負荷サイクル、ガス流、ガス圧力、差動ガス溶液製剤、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する差動ガス流、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する差動流培地、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する差動pH値、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する差動溶解ガス、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する差動糖プロファイル、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する差動温度、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する差動サンプリング時間、一部あるいはすべてのコンポーネントに対する溶解ガスの温度、pH、量、および種類、流れ、細胞密度、糖プロファイルなどの物理、化学、生物学的パラメーターの解析、ならびにプロテオミクス、メタボロミクス、トランスクリプトミクスなどの生化学解析などがある。コンピューターシステム(3401)は、ユーザーまたはコンピュータシステムの電子装置であり、ユーザーまたはコンピュータシステムは、電子装置に対して遠隔に位置付けられる。電子装置はモバイル電子装置でもよい。
【0149】
コンピューターシステム(3401)は、中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサー」および「コンピュータープロセッサー」とも称す)(3405)を含み、これらはシングルコアあるいはマルチコアプロセッサー、または並列処理のための複数のプロセッサーであってもよい。コンピューターシステム(3401)はさらに、メモリーあるいは記憶場所(3410)(例えばランダムアクセスメモリー、読み取り専用メモリー、フラッシュメモリー)、電子記憶装置(3415)(例えばハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース(3420)(例えばネットワークアダプター)、ならびにキャッシュ、他のメモリー、データストレージ、および/または電子ディスプレイアダプターなどの周辺機器(3425)も具備する。メモリー(3410)、記憶装置(3415)、インターフェース(3420)、および周辺機器(3425)は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU(3405)と通信する。記憶装置(3415)は、データを記憶するためのデータ記憶装置(またはデータレポジトリ)であってもよい。コンピューターシステム(3401)は、通信インターフェース(3420)の補助によりコンピューターネットワーク(「ネットワーク」)(3430)に動作可能につなげることができる。ネットワーク(3430)は、インターネットおよび/あるいはエクストラネット、またはインターネットと通信状態にあるイントラネットおよび/あるいはエクストラネットであってもよい。場合によりネットワーク(3430)は電気通信および/またはデータのネットワークである。ネットワーク(3430)は1つ以上のコンピューターサーバーを備えていてもよく、これによりクラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングが可能になる。ネットワーク(3430)は、場合によりコンピューターシステム(3401)の補助により、ピア・ツーピア・ネットワークを実施することができ、これによりコンピューターシステム(3401)につながった装置はクライアントまたはサーバーとして挙動可能となる。
【0150】
CPU(3405)は一連の機械可読命令を実行することができ、この命令はプログラムまたはソフトウェアに埋め込まれる場合がある。前記命令はメモリー(3410)などの記憶場所に記憶されてもよい。前記命令はCPU(3405)に向けることができ、これは後に、本開示の方法を実施するようにCPU(3405)をプログラム、またはその他の方法により構成することができる。CPU(3405)により実行される動作の例として、フェッチ、デコード、実行、およびライトバックを挙げることができる。
【0151】
CPU(3405)は集積回路などの回路の一部であってもよい。システム(3401)の1つ以上の他のコンポーネントを回路に含めることができる。場合により回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0152】
記憶装置(3415)は、ドライバー、ライブラリ、および保存プログラムなどのファイルを記憶できる。記憶装置(3415)は、ユーザーデータ、例えばユーザーの嗜好性やユーザープログラムを記憶できる。コンピューターシステム(3401)は場合により、イントラネットまたはインターネットを通じてコンピューターシステム(3401)と通信状態にあるリモートサーバー上に位置付けられるなど、コンピューターシステム(3401)の外側にある1つ以上の追加のデータ記憶装置を備えていてもよい。
【0153】
コンピューターシステム(3401)は、ネットワーク(3430)を介して1つ以上の遠隔コンピュータシステムと通信できる。例えばコンピューターシステム(3401)は、ユーザーのリモートコンピューターシステム(例えば、仮想プライベートネットワーク、Amazon(登録商標)ウェブサービス(AWS)などのサービスにホストされたコンピューター、衛星通信など)と通信可能である。リモートコンピューターシステムの例として、パーソナルコンピューター(例えば、持ち運び可能なPC)、スレートあるいはタブレットPC(例えばApple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えばApple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android-enabled device、Blackberry(登録商標))、または携帯情報端末が挙げられる。ユーザーは、ネットワーク(3430)を介してコンピューターシステム(3401)にアクセスできる。
【0154】
本明細書に記載の方法は、コンピューターシステム(3401)の電子記憶場所、例えば、メモリー(3410)または電子記憶装置(3415)などに記憶された機械(例えば、コンピュータ処理装置)実行可能なコードとして実行され得る。機械実行可能または機械可読コードは、ソフトウェアの形で提供できる。使用中、前記コードはプロセッサー(3405)により実行可能である。場合により前記コードは、電子記憶装置(3415)から取得され、メモリー(3410)に記憶されることで、プロセッサー(3405)が容易にアクセス可能となる。いくつかの状況では、電子記憶装置(3415)は除外してもよく、機械実行可能命令はメモリー(3410)に記憶される。
【0155】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサーを有する機械と共に使用するために予めコンパイルかつ構成され、または実行時にコンパイルされてもよい。前記コードは、予めコンパイルされた、またはアズコンパイルされた(as-compiled)様式でコードが実行可能となるよう選択できるプログラミング言語で供給されてもよい。
【0156】
コンピューターシステム(3401)などの本明細書に提供されるシステムと方法の態様は、プログラミングにおいて具体化することができる。この技術の様々な態様は、一種の機械可読媒体上で運ばれるか、またはその中に埋め込まれる機械(またはプロセッサ)実行可能コードおよび/または関連データの形で、「製品」または「製造用品」として考慮され得る。機械実行可能コードは、メモリー(例えば、読み取り専用メモリー、ランダムアクセスメモリー、フラッシュメモリー)またはハードディスクなどの電子記憶装置に記憶することができる。「記憶」型媒体として、様々な半導体メモリー、テープドライブ、ディスクドライブなどのコンピューターやプロセッサーの有形メモリー、またはその関連モジュールのうちいずれかあるいはすべてを挙げることができ、これらはソフトウェアのプログラミングのためにいかなる時も非一時的な記憶を提供する場合がある。ソフトウェアのすべてまたは一部は時折、インターネットなどの様々な電気通信ネットワークを介して通信されてもよい。このような通信により例えば、1つのコンピューターまたはプロセッサーから別のものへの、例えば、管理サーバーまたはホストコンピューターからアプリケーションサーバーのコンピュータープラットフォームへとソフトウェアのローディングが可能になる。ゆえに、ソフトウェア要素を持つ場合がある別のタイプの媒体は、有線および光地上通信線ネットワークを通じた、ならびに様々なエアリンク(air-links)上でのローカル装置間の物理インターフェースにわたって使用されるものなどの光波、電波、および電磁波を含む。有線リンク、無線リンク、光リンクなど、前記波を運ぶ物理要素も、ソフトウェアを持つ媒体と考慮される場合がある。本明細書で使用されるように、非一時的で有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピューターまたは機械「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサーに命令を提供することを必要とする媒体を指す。
【0157】
したがって、コンピューター実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形記憶媒体、搬送波媒体、または物理的伝送媒体を含むがこれらに限定されない、多くの形態を呈してもよい。不揮発性記憶媒体として例えば、図に示されるデータベースなどを実施するために使用され得るものなど、コンピューターなどにおける記憶装置のいずれかといった光ディスクまたは磁気ディスクが挙げられる。揮発性記憶媒体として、そのようなコンピュータープラットフォームのメインメモリーなどのダイナミックメモリーが挙げられる。有形送信媒体として、同軸ケーブル、銅線、光ファイバーが挙げられ、これらにはコンピュータシステム内のバスを含むワイヤーが含まれる。搬送波送信媒体は、無線周波(RF)および赤外線(IR)データ通信中に生成されるものなど、電気信号、電磁気信号、音波、または光波の形態を呈してもよい。ゆえにコンピューター可読媒体に共通する形態として、例えばフロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の磁気媒体、CD-ROM、DVDあるいはDVD-ROM、他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、他のメモリーチップあるいはカートリッジ、データあるいは命令を運ぶ搬送波、このような搬送波を伝達するケーブルあるいはリンク、またはコンピューターがプログラミングコードおよび/あるいはデータを読み取り可能な他の媒体が挙げられる。これらコンピューター可読媒体の形態の多くは、実行のためにプロセッサーへ1つ以上の命令からなる1つ以上のシーケンスを運ぶことを必要とする場合がある。
【0158】
コンピューターシステム(3401)は、電子ディスプレイ(3435)を備えるか、または該電子ディスプレイと通信状態にあってもよく、前記電子ディスプレイは、例えば設定、システムの段階ごとにリアルタイムで測定された変数を列記するバイオプロセスレポート、ファイル(例えば構成ファイル、更新)をエクスポートおよびインポートする性能、較正、アラーム(例えばエラー、メンテナンス、消耗品の交換)を提供するためのユーザーインターフェース(UI)(3440)を備えている。UIの例として、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
本開示の方法とシステムは、1つ以上のアルゴリズムにより実施可能である。アルゴリズムは、中央処理装置(3405)による実行後にソフトウェアにより実施可能である。このアルゴリズムは例えば、フィードバックループを用いて制御システムの変数を調整し、画像認識、パターン解析、ファジー理論、およびハードまたはソフトな閾値実施によりプロセス中の問題を検出し、システム内の作業条件を最適化する機械学習(例えば教師あり、教師なし、および/または強化)を通じて特異的および非特異的データを相関させることで、システム内のプロセス条件、プロセス結果、モデリング挙動、およびシミュレーションを最適化することができる。
【実施例】
【0160】
実施例1:流体流のシミュレーションとミニモジュールの層内での混合
流れが層状であることを考慮し、シミュレーションを2つの例、一方は速度場、他方は別のもので解析される微生物の移流拡散輸送で解くことができる。この場合、モジュールの入口、または異なる結合モジュールの入口の各分岐に対して特定の濃度で進入する2つの種(S1とS2)を使用することを決定した。S1に対する水中のフルオレセインの拡散係数、およびS2に対する2桁低い拡散係数に従い、拡散値を確立させた。
【0161】
このプロセス、およびストリーム間の混合プロセスをシミュレートし、平均流入速度は5マイクロメートル/秒(μm/sec)で考慮され、種の濃度はセクション全体を通じて出口から追跡した。両流入分岐の流れが等しい場合、流入値の50%の濃度を良好な混合から予想できる。
【0162】
図22のAにおける単一のミニモジュールの切断図では、種の拡散係数が低いことで生じる乏しいまたは低い混合状態が示され、
図22のBでは拡散係数が高く、混合の完遂が認識できる。
図23のA~Bは、シミュレーションプロセスにかけた10個のミニモジュールが集合した結果を示す。スカラー分布(細胞を表す)と培養培地濃度(色付き)が示される。一方、このミニモジュールの特定の分布では、細胞は上部から進入し、培養培地は側方を通って進入し、細胞は下方出口から全く出ず、培養培地は均一に分布しない(シミュレーションにおける短い流路に起因)ことを観察できる。
図25のA~Cは、ミニモジュールシミュレーションの別の構成が6レベルのモジュールで実施されたことを示す。この構成では、最初のレベルは多くのモジュールから始まり、そうすることで、各レベルでのモジュールの成長率はさらに小さくなり(1モジュールカラムが行/層ごとに追加)、口が少ない異なる培養培地流入アレイを使用した。この構成では、細胞の分布と培地培養分布の両方は適切に均一である。
【0163】
実施例2:ミニモジュールのマクロ構造の構築
図24に示すマクロ構造を使用してバイオリアクターを設計した。このマクロ構造はDGミニモジュールの層で構成され、示されるように供給回路を有している。商用樹脂を有するSLA 3D Printer(Peopoly Moai)を、全てのシステムと接続部を備える3D印刷に利用した。印刷されたバイオリアクターは断面図として
図23のAとBに示す。
【0164】
追加のバイオリアクターをSLAプリンタと光硬化性樹脂で印刷した。設計には「陽型」で2つの相(膜間腔を設けることなく絡み合わせた両相の体積)が含まれていた。
図25のAは、数層のダブルジャイロイド(直径600マイクロメートル(μm)および操作性を良くするための固形基材を備える、使用される試験ファイルの等角図を示す。各相の供給システムは配置されなかったことに留意されたい。
図25のBはPEGDA光硬化性樹脂への試験ファイル印刷の成功、
図25のCは市販の樹脂による試験ファイル印刷の成功を示す。
【0165】
実施例3:ミニモジュールを通る流体流の実証
商用樹脂を用いるDirect Light Projection型3Dプリンタを使用して、構成された、4つの層と入力/出力接続部を伴う4×2のモジュールの行とで構成されるマトリックスを印刷し、ジャイロイドの直径は500μmであった。印刷したバイオリアクターを赤色染料とともに1つの入力接続部に注入した。
図26のAは、赤色染料を染み込ませた回路を示す。第1と第2のマトリックスで構成される第2の印刷を行い、両ジャイロイドの直径は500μmであった。一方のマトリックスは赤色染料とともに入力接続部に、他方のマトリックスは青色染料とともに注入した。
図26のBは、色ごとに分けられた2つのマトリックスを示す。
【0166】
実施例4:ストレイン・オン・チップ
例示的なストレイン・オン・チップの実施形態を、
図27に示す設計を使用して構築した。
図28は、アッセイ中に得た時間にわたる画像の進行を示す。微生物をシミュレートするために、平均直径約50ミクロンのガラス微粒子を次のように構造に導入した。
【0167】
ポート(2)を閉じると、蒸留水はポート(3)から(1)に流れた。最初の段階で、シミュレーションのため回路に凍結乾燥水を染み込ませる。微生物播種では回路にまず培養培地を染み込ませてもよい。採取出力部(2)を閉じ、チップをガラス微粒子で「播種」して、微生物をシミュレートした。流れの挙動により粒子はチャンバーに運ばれ、ポート(2)が開くと、多孔質膜にわたる吸引作用により大半の粒子が適所にとどまった。
【0168】
前記回路には、入力ポート(3)~(4)と培養培地(1)の出力ポートがある。この構成では、主回路は、入力ポート(4)への液体培地(ここでは水)の導入と共に、ポート(3)を介して播種される。圧力が平衡であることで培養培地は強制的に二次回路を占有し、出力ポート(1)により回路を残す。多孔質膜はフィルターとして機能し、主回路チャンバー内でシミュレート済みの微生物を閉じ込めた。
【0169】
一旦チャンバーが飽和されると、播種ポートは閉じ、採取出力部が使用可能になった。チャンバーを通る流れの原動力に起因して、チャンバー内の粒子に対する速度と影響は、中心軸から離れて移動するにつれて急激に縮小する(
図28を参照)。これにより、二次回路の吸引効果に加えて、(この例で使用されるシミュレーションの代わりに生有機体を使用するときに)室内にある微生物の集団が成長し続ける。その数が増加すると、一部の微生物は、ポート(4)から生じる流れの中心軸に近いある点に変位し、ポート(2)に引き付けられる(
図28を参照)。
図29は経時的な粒子動作を示す。
【0170】
実施例5:サンドボックスバイオリアクターユニットの例
図30のAは、混合モジュール、単一の成長チャンバー、および採取ポートを備えるサンドボックスユニット例の設計を示す。
図30のB~Dは、PDMSから製造した構築済みユニットを示す。
図30のBでは、水(色なし)を985マイクロリットル(μL)/時の流量で中心チャネルへ播種し、青色染料を含む水を985μL/時の流量で側面チャネルの各々に播種した。
図30のCでは、水(色なし)を984μL/時の流量で中心チャネルへ播種し、青色染料を含む水を3335μL/時の流量で側面チャネルの各々に播種した。
図30のCは、側面チャネル間の不均衡な流れで播種されたモジュールを示す。
【0171】
実施例6:複数の相互接続ユニットを伴うサンドボックスバイオリアクターの構築
図31は、サンドボックスバイオリアクターモジュール例のための培養回路とガス回路の設計を示す。モジュール中の3つの層は、漏出を防ぐためにねじ、ワッシャー、ナットが調整される一連の貫通孔を共有している。
【0172】
このモジュール中の培養培地分布層は、ホースで形成された複合分布システムである。該ホースは、直径50~500マイクロメートルであり、生体適合材料から形成されていてもよい。ホースの長さを、培養培地の荷重低下を算出し、それを各混合するモジュール中の圧力と比較することにより調整した。PDMS層によりガス層と培養層が分離される。
図32は、サンドボックスの印刷培養層を示す。
図33は組み立てられた層を示す。青色染料を含む水を使用して、サンドボックスモジュールを入力ポートから播種し、サンドボックスモジュールを通る流れを認めた。
【0173】
本発明の好ましい実施形態を本明細書中で示しかつ記載してきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明白である。本明細書内に提供される特定の例により本発明が制限されることは意図されていない。本発明は前述の明細書に関して記載されているが、本明細書中の実施形態の記載と例示は、限定的な意味で解釈されることを目的としていない。多数の変形、変更、および置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。更に、本発明の全ての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で述べられた特定の描写、構成、又は相対的比率に限定されないことが理解されるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施に利用可能であることを理解されたい。それゆえ本発明は、任意のそのような代替案、修正、変形、または同等物にも及ぶものと考えられる。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定めるものであり、これら特許請求の範囲内にある方法と構造、およびそれらの同等物は、それにより包含されることが意図されている。