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特許7430727架橋可能な液体シリコーン組成物による可撓性支持体のコーティング中のロールを含む装置におけるミスト形成の防止のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】架橋可能な液体シリコーン組成物による可撓性支持体のコーティング中のロールを含む装置におけるミスト形成の防止のための方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20240205BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240205BHJP
   C08G 77/20 20060101ALI20240205BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20240205BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20240205BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C09D183/04
C08L83/04
C08G77/20
C08G77/26
B05D1/28
B05D7/24 302Y
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021536304
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2019086436
(87)【国際公開番号】W WO2020127818
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】18306764.4
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ピブレ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ベニートウ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・プジェ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/220871(WO,A1)
【文献】特開2005-343974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08G 77/00-77/62
C09D
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能であり、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xでの可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセスであって、次のステップI)及びII)を含み:
I)前記液体シリコーン組成物Xを調製すること、
II)ロールコーティング装置を使用して、前記液体シリコーン組成物Xを可撓性支持体上にコーティングすること、
前記プロセスは、ステップI)において、前記液体シリコーン組成物Xがミスト防止添加剤Eと混合され、
前記ミスト防止添加剤Eは、以下を10℃~100℃の温度で反応させることによって得られることを特徴とし:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~1重量部の、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
・オルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートよりなる群から選択される有機化合物H、
・それらの混合物、及び
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である、
プロセス。
【請求項2】
前記ミスト防止添加剤Eは、前記化合物F、G、H及びNを30分~12時間反応させることによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセス。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンNは、以下の式のシロキシ単位(I.1)及び(I.2)を含むオルガノポリシロキサンから選択され:
【化1】
【化2】
式中、
-a=1又は2であり、b=0、1又は2であり、a+b=1、2又は3であり、
-c=1、2又は3であり、
-同一又は異なり得る記号Yは、式(I.3)の官能基を表し、
-E1-(NH-G)h-(NH2i (I.3)
-h=0又は1であり、
-i=0又は1であり、
-h+i=1又は2であり、
-E1は、1~30個の炭素原子を含む2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素ラジカルを表し、
-Gは(存在する場合)1~10個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素ラジカルを表し、i=0の場合Gは1価、i=1の場合Gは2価であり、
-同一又は異なり得る記号Z1及びZ2は、1~30個の炭素原子を有する1価の炭化水素ラジカルを表し、任意選択で、1つ又は複数の不飽和基及び/又は1つ又は複数のフッ素原子、ヒドロキシル基又はラジカル-OR1(R1は線状、環状、又は分岐状C1~C10炭化水素ラジカルを表す)を含み、
前記オルガノポリシロキサンNは、分子あたり、式(I.3)の少なくとも1つの官能基を有する少なくとも2つのシロキシ単位(I.1)を含む、請求項1に記載の、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセス。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンNは、以下の式のシロキシ単位(I.1)及び(I.2)を含むオルガノポリシロキサンから選択され:
【化3】
【化4】
式中、
-Y及びZ1及びZ2は、請求項3に記載の定義を有し、
-a=1又は2であり、b=0、1又は2であり、a+b=2又は3であり、
-c=2又は3である、請求項3に記載の、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセス。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサンF及びGが以下を含む、請求項1に記載の、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセス:
a1)次の式(VI.1)の少なくとも1つの単位:
6 a3 bSiO(4-a-b)/2 (VI.1)
式中、
-同一又は異なり得る記号R6は、それぞれ、線状又は分岐状のC1~C18アルキル基、又はC6~C12アリール若しくはアラルキル基を表し、任意選択で置換され、
-記号Z3は、式-y-(Y’)nの1価のラジカルであり、ここで、
・yは、任意選択で2価のC1~C4のオキシアルキレン又はポリオキシアルキレンラジカルによって延長された、線状又は分岐状のC1~C18多価アルキレンラジカルを表し、任意選択でヒドロキシラジカルにより置換され、
・Y’は1価のアルケニルカルボニルオキシラジカルを表し、
・nは1、2、又は3に等しく、
-aは0、1、又は2に等しい整数であり、bは1又は2に等しい整数であり、合計a+b=1、2、又は3である;
a2)次の式(VI.2)の単位:
8 aSiO(4-a)/2 (VI.2)
式中、
-同一又は異なり得る記号R8は、それぞれ、線状又は分岐状のC1~C18アルキル基、又はC6~C12アリール若しくはアラルキル基を表し、任意選択で置換され、
-aは0、1、2、又は3に等しい整数である。
【請求項6】
前記有機化合物Hは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートである、請求項1に記載の、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセス。
【請求項7】
前記初期モル比Ri=nAcr/nHが4.5~7である、請求項1に記載の、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセス。
【請求項8】
シリコーンコーティングの前駆体である前記液体シリコーン組成物Xは、以下を含む、請求項1又は3に記載の、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセス:
-ラジカル経路で架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、
-少なくとも1つのラジカル光開始剤C1、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK、ここで、接着モジュレーターシステムKは、
-式MDViQ、MMViQ、MMViViQ、MMViDDViQ、MDHQ又はMMHQのポリオルガノシロキサン樹脂(Vi=ビニル基)、
-式MOHQのポリオルガノシロキサン樹脂、又は
-式MDHQ又はMMHQのポリオルガノシロキサン樹脂であり、
式中:
-記号「D」は、式(CH32SiO2/2のシロキシ単位を示し、
-記号「DVi」は、式(CH3)(ビニル)SiO2/2のシロキシ単位を示し、
-記号「DH」は、式(CH3)HSiO2/2のシロキシ単位を示し、
-記号「M」は、式(CH33SiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「MVi」は、式(CH32(ビニル)SiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「MH」は、式(CH32HSiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「MOH」は、式(CH32(OH)SiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「Q」は、式SiO4/2のシロキシ単位を示す。
【請求項9】
以下を10℃~100℃の温度で反応させることにより、ミスト防止添加剤Eを調製するためのプロセスであって:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~1重量部の、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
・オルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートよりなる群から選択される有機化合物H、
・それらの混合物、及び
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である、
プロセス。
【請求項10】
前記化合物F、G、H及びNを30分~12時間反応させることによって前記ミスト防止添加剤Eを調製することを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
以下を10℃~100℃の温度で反応させてなるミスト防止添加剤E:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~1重量部の、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
・オルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートよりなる群から選択される有機化合物H、
・それらの混合物、及び
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。
【請求項12】
前記化合物F、G、H及びNを30分~12時間反応させてなる、請求項11に記載のミスト防止添加剤E。
【請求項13】
重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能であり、請求項11に記載のミスト防止添加剤Eを含む、液体シリコーン組成物X。
【請求項14】
シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xで可撓性支持体をコーティングする際のミストの出現を低減するための、請求項11に記載のミスト防止添加剤Eの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙のシート又は合成ポリマー(ポリオレフィン、ポリエステルなど)、あるいは織物のような様々な可撓性支持体の高速ロール上のシリコーンコーティングの一般的な分野に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、特に剥離及び/又は疎水性を有する保護コーティング又はフィルムを形成するために、重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能な1つ又は複数のオルガノポリシロキサンを含む液体組成物による可撓性材料のコーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
可撓性支持体は、紙、ボール紙、プラスチックフィルム、金属フィルム又は織物であり得る。これらのシリコーンコーティングされた支持体の用途の例には、食品用の紙(調理、包装)、ラベル及び粘着テープ、コンベヤーベルトなどが含まれる。
【0004】
これらの可撓性支持体の架橋可能な液体シリコーンによるコーティングは、連続的かつ非常に高速で動作するコーティング装置上で実行される。これらの装置は、いくつかのロールで形成されたコーティングヘッドを含み、特にプレスロール及び互いに隣接する一連のロールによって架橋可能な液体シリコーン組成物が連続的に供給されるコーティングロールを含む。可撓性支持体ストリップは、プレスロールとコーティングロールとの間を高速で循環し、コーティングヘッドの下流に配置された架橋手段によって架橋されることを意図したシリコーンフィルムにより、その面の少なくとも1つがコーティングされる。これらの架橋手段は、例えば、熱、放射線(例えば、紫外線)又は電子ビームのエミッターであり得る。
【0005】
生産性の追求において、剥離シリコーンでコーティングされた可撓性支持体の製造業者は、可撓性支持体ストリップのこれまで以上に速い線形走行速度に適した液体シリコーンコーティング配合物を要求している。高速コーティング用の新しいシリコーン配合物のこの探索において、経済的要因は明らかに重要ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、連続コーティング機の高速は、液体シリコーンフィルムをコーティングロールから走行中の可撓性支持体ストリップに転写する問題と同義であることが知られている。これらの転写の問題(「分裂」)は、特にコーティングヘッドの周囲、より具体的には、回転ロール間及び/又はコーティングロールとコーティングされる可撓性支持体との間の接触点において、ミスト又はエアロゾル(「ミスト」又は「曇り」)が現れることによって明らかになる。このミスト又はこのエアロゾルの密度は、線形走行速度、ひいてはロールの回転速度が増加するにつれて増加する。
【0007】
この現象の結果は、まず、消耗品の損失であり、特に、コーティングの品質に有害である、下流の支持体(例えば、オーブン)へのコーティング液の液滴の堆積である。
【0008】
さらに、この望ましくないミストの形成は、産業衛生、及びロールコーティング装置の近くで高レベルのエアロゾルにさらされるオペレーターの安全に関して有害な結果をもたらす。これは有害であることが判明する可能性がある。
【0009】
さらに、ミストはロールコーティング装置の急速な汚れを引き起こし、メンテナンスの制約と早期の摩耗につながる。
【0010】
このミストの結果を防ぐために、前記ミストの捕捉を可能にする吸引システムは、一般に、コーティングヘッドの周りに配置される。
【0011】
さらに、当業者は、この現象に対処するためのコーティングヘッドに対するいくつかの調整を知っている。そのいくつかの例が挙げられる:
A.生産性を犠牲にして速度を下げる。
B.得ようとしている可撓性シリコーンコーティング支持体の特性(外観、被覆率、剥離特性、機械的特性)を犠牲にして、シリコーン堆積の速度を低下させる。
C.コーティングロールの接線速度と紙の線速度の差を大きくする。ただし、特定の差を超えると、コーティングされた層の均一性が大幅に損なわれる。さらに、これにより、ミストの密度を下げることができるが、コーティング速度を大幅に上げるのに十分な程度までミストを除去することはできない。
D.コーティングロールとプレスロールの間の圧力を上げる。こちらでも、一定の限界があり、ミスト形成現象を有利に排除することはできない。
【0012】
ロールコーティング機におけるミストの形成に対処するための別のアプローチは、液体シリコーン組成物の配合を工夫することにある。
【0013】
このアプローチによれば、シリコーンコーティング液を構成するオルガノポリシロキサンの数平均重合度を低下させ、その結果、シリコーンコーティング浴の粘度を低下させ、ミストの密度を制限することが知られている。
【0014】
これらの既知の方法は、特性、特に得ようとしているシリコーンコーティング可撓性支持体の剥離特性を実質的に改変するという重大な不利益を受ける。
【0015】
シリコーン配合物によるこのアプローチの実例として、国際特許出願WO2004/046248を挙げることができ、これは、可撓性支持体上のコーティング用途のためのミスト防止添加剤として使用される星型分岐シリコーンポリマーの使用を記載している。これらの星型分岐シリコーンポリマーを調製するプロセスは、部分的に置換されたポリヒドロオルガノシロキサンを得るために、反応性≡SiH単位を含むオルガノポリシロキサンを長鎖オレフィンと不完全に反応させること(ヒドロシリル化による)からなる。部分的に置換されたポリヒドロオルガノシロキサンは次に、MQタイプのビニルシリコーン樹脂と長鎖ジオレフィンとのヒドロシリル化によって反応される。そのような組成物は比較的複雑であり、用意するのに費用がかかることは明らかである。さらに、高速ロールのシリコーンコーティングでのミストの形成に対処することに関して、それらに改善の余地がある。
【0016】
欧州特許EP0716115は、シリコーンコーティング組成物を製造するためのプロセスを記載しており、この組成物は、ミスト密度の低減を可能にするものとして提示されている。このプロセスでは、重合度が12に等しいトリメチルシリル末端基を持つポリジメチルメチルヒドロシロキサン、及びペルフルオロエチルブチルとメチルビニル官能基で置換された0.01%のポリジメチルシロキサン(その末端はジメチルビニルシロキシルタイプであり、重合度が300に等しい。)、及びポリプロピレングリコール、及び任意選択でステアリル若しくはオレイルアルコールを使用している。これにより、ポリオキシプロピレン基で官能化されたポリジメチルシロキサンが得られる。これらの官能化ポリジメチルシロキサンは、例えばヘキセニル単位で官能化された他のポリジメチルシロキサンと組み合わされ、また白金ベースのヒドロシリル化触媒と組み合わされてシリコーンコーティング組成物を形成し、ミストの形成の低減を可能にする。官能化単位は、ステアリン酸又はオレイン酸残基などの疎水性残基であり得る。
【0017】
米国特許US4806391は、シリコーンをベースにしたインクとワニス、より正確には、高速で動作するロールコーティング機を使用してこれらのインク/ワニスを基材に塗布するプロセスに関するものである。この特許は、特に、ビニル末端基を有し、25℃で15000~50000mPa・sの粘度を有する、ポリジメチルシロキサンを含む組成物を開示している。これらの液体コーティング組成物はまた、白金ベースの触媒と、比表面積の高いシリカ、特にヒュームドシリカからなるレオロジー添加剤とを含む。
【0018】
米国特許US6057033は、UV下でカチオン経路によって架橋した後、剥離コーティングを形成するための可撓性支持体上にコーティングされることを意図したシリコーン組成物を開示している。オルガノポリシロキサンに加えて、これらの組成物は、平均長さ15~100μm、平均厚さ5~40μmのセルロース繊維を含む。使用されるオルガノポリシロキサンは、アクリロキシ又はメタクリロキシタイプの架橋基で官能化されたオルガノポリシロキサンであり、UV下でのラジカル経路による架橋を可能にする。組成物に組み込まれたセルロース繊維は、非脆性の架橋シリコーン剥離コーティングを得るという技術的問題に対する解決策を提供することを可能にする。セルロース繊維は、支持体へのシリコーンコーティングフィルムの転写、切断に対する耐性、機械的特性(引張強度及び引裂強度)、紙へのコーティングの固定、紙へのコーティング液の吸収の減少、及び二次的にミストの形成の減少に関して、改善を提供するものとして提示されている。
【0019】
後者の点に関して、US6057033は、セルロース繊維によってもたらされるミストの減少を評価するための定量的要素を提供していない。この低減が完全に不十分なままであると信じる十分な理由がある。
【0020】
より最近では、特許US8344089及びWO2017220871は、ミスト防止添加剤として有用な分岐オルガノポリシロキサンを記載している。
【0021】
そのような最新技術に対して、本発明の1つの本質的な目的は、架橋コーティングの前駆体である、液体シリコーン組成物による可撓性支持体のコーティング(このコーティングは、高速で動作するロールコーティング装置を使用して実行される)中のミストの出現に対処するための効率的なプロセスを提案することである。
【0022】
本発明の別の本質的な目的は、架橋されることを意図したシリコーン組成物での可撓性支持体のコーティング(このコーティングは、高速で動作するロールコーティング装置を使用して実行される)中のミストの出現に対処するための経済的で単純なプロセスを提案することである。
【0023】
本発明の別の本質的な目的は、シリコーンコーティングの前駆体であり、ロールへの高速コーティング中にミストのわずかな形成のみを示しながら、非常に高品質(特に、支持体への結合及び接着、及び経時的に非常に良好な安定性を有する剥離プロファイルに関して)の架橋シリコーンコーティングをもたらす、新規の液体シリコーン組成物Xを提供することである。
【0024】
本発明の別の本質的な目的は、ロールコーティング装置を使用して、架橋して剥離コーティングを与えることができるシリコーン組成物を用いて、可撓性支持体のコーティングに際して、ミストの出現に対処するためのプロセスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
これらの目的のすべては、とりわけ、本発明によって達成され、これは、まず、重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能であり、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xでの可撓性支持体のコーティング中のミストの出現に対処するためのプロセスに関し、このプロセスは、次のステップI)及びII)を含み:
I)前記液体シリコーン組成物Xを調製すること、
II)ロールコーティング装置を使用して、前記液体シリコーン組成物Xを可撓性支持体上にコーティングすること、
前記プロセスは、ステップI)において、前記液体シリコーン組成物Xがミスト防止添加剤Eと混合され、
前記ミスト防止添加剤Eは、以下を10℃~100℃の温度で、好ましくは30分~12時間反応することによって得られることを特徴とし:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~1重量部の、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
・オルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
・有機化合物Hであって、100gの有機化合物Hあたり、300~1000ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む有機化合物H、
・それらの混合物、及び
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。
【0026】
本発明の範囲を限定することを意図しないが、化合物F、G、H及びNの接触は、(メタ)アクリレート官能基とアミン官能基のNH基との間のマイケル反応と呼ばれる重付加反応を介して「分岐」構造を得ることを可能にする。「アミン官能基」という用語は、第1級及び第2級アミンを示すことを意図している。「NH基」という用語は、第1級及び第2級アミン官能基に含まれるNH基の合計を意味することを意図している。したがって、1モルの第1級アミン官能基は、窒素原子に結合した2モルの水素原子を含み、1モルの第2級アミン官能基は、窒素原子に結合した1モルの水素原子を含むことを理解されたい。
【0027】
(メタ)アクリレート官能基は、本明細書を通じて、アクリレート官能基とメタクリレート官能基を含むと理解すべきである。それらは有利にはアクリレート官能基である。
【0028】
分岐構造は、使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であるときに得られる。ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHはオルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。ミスト防止添加剤Eに、高速で作動するロールコーティングシステムにおけるミストの出現に対処するのに有用な粘弾性特性を付与する。これらの粘弾性特性は、ミスト防止添加剤Eのロープ状の外観によって特徴付けられる。
【0029】
「ロープ状の外観」という用語は、本発明の目的のために、化合物Eが特定のひずみを受けたときに糸又はフィラメントを形成する能力を意味すると理解される。糸は一定のひずみを超えると切れる。
【0030】
「高速コーティング」という用語は、100m/分以上、好ましくは300m/分を超える速度(例えば、500~1000m/分)を意味すると理解される。
【発明の効果】
【0031】
このプロセスの1つの利点は、可撓性支持体をシリコーン組成物でコーティングするためのシステムにおけるミストの出現を大幅に減らすことである。特に効果的なミスト防止添加剤Eを選択したことは、発明者の功績によるものである。
【0032】
本発明による方法におけるこのミスト防止添加剤Eの使用の別の利点は、可撓性支持体上にコーティングした後の重合による架橋の品質である。具体的には、シリコーンコーティングの架橋の品質又は架橋の程度の評価は、コーティングの表面の油性を評価すること(「スミア」テストとして知られるトレードテストによって、コーティング機を出るときに、このコーティングの上に指を通すこと)によって行われる。さらに、得られる抽出物の含有量が少ないことによって示されるように、架橋速度論は絶対的に有利である。
【0033】
本発明による方法におけるこのミスト防止添加剤Eの使用の別の利点は、特に支持体への接着及び剥離プロファイルに関して、可撓性支持体上の架橋シリコーンコーティングの特性が影響を受けず、長期にわたる良好な安定性を有することである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ミスト防止添加剤Eを得るための化合物F、G、H及びN間の反応の持続時間は、化合物F、G、H及びNの性質及び温度に依存する。当業者は、ミスト防止添加剤Eを得るために温度及び反応持続時間を適応させる方法を知っているであろう。指標として、室温での反応持続時間は、30分~12時間であり得る。この反応を加速するために、0.1%~2%の量のイソプロパノールを反応混合物に加えることが可能である。
【0035】
1つの特定の実施形態によれば、上記のミスト防止添加剤Eは、10~90℃、好ましくは10~75℃、さらにより好ましくは15~50℃の反応温度で得られる。
【0036】
有利には、本発明による方法において、ミスト防止添加剤Eは、以下を10℃~100℃の温度で、好ましくは30分~12時間反応することにより得られる:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~0.6重量部の、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
・オルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
・有機化合物Hであって、100gの有機化合物Hあたり、300~1000ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む有機化合物H、
・それらの混合物、及び
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。
【0037】
さらにより有利には、本発明による方法において、ミスト防止添加剤Eは、以下を10℃~100℃の温度で、好ましくは30分~12時間反応することにより得られる:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~0.3重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
-0.01~0.3重量部の、少なくとも1つの有機化合物Hであって、100gの有機化合物Hあたり、300~1000ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む有機化合物H、
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。
【0038】
したがって、好ましい実施形態によれば、前記オルガノポリシロキサンNは、以下の式のシロキシ単位(I.1)及び(I.2)を含むオルガノポリシロキサンから選択される:
【化1】
【化2】
式中、
-a=1又は2であり、b=0、1又は2であり、a+b=1、2又は3であり、
-c=1、2又は3であり、
-同一又は異なり得る記号Yは、式(I.3)の官能基を表し、
-E1-(NH-G)h-(NH2i (I.3)
-h=0又は1であり、
-i=0又は1であり、
-h+i=1又は2であり、
-E1は、1~30個の炭素原子を含む2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素ラジカルを表し、好ましくは脂肪族でかつ1~10個の炭素原子を含み、
-Gは(存在する場合)1~10個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素ラジカルを表し、i=0の場合Gは1価、i=1の場合Gは2価であり、
-同一又は異なり得る記号Z1及びZ2は、1~30個の炭素原子を有する1価の炭化水素ラジカルを表し、任意選択で、1つ又は複数の不飽和基及び/又は1つ又は複数のフッ素原子、ヒドロキシル基又はラジカル-OR1(R1は線状、環状、又は分岐状C1~C10炭化水素ラジカルを表す)を含み、好ましくは、Z1及びZ2は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される1価の炭化水素基を表し、任意選択で、1つ又は複数のフッ素原子、ヒドロキシル基又はラジカル-OR1(R1は線状、環状、又は分岐状C1~C10炭化水素ラジカルを表す)を含み、さらにより好ましくは、Z1及びZ2は、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、ビニル、ヒドロキシル、エトキシル、メトキシル、キシリル、トリル及びフェニル基からなる群から選択され、
前記オルガノポリシロキサンNは、分子あたり、式(I.3)の少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのシロキシ単位(I.1)を含む。
【0039】
オルガノポリシロキサンNは、線状、分岐状又は環状構造を有し得る。線状オルガノポリシロキサンが関係する場合、これらは本質的に「D」シロキシ単位(特に、Y2SiO2/2、YZ1SiO2/2、及びZ2 2SiO2/2シロキシ単位からなる群から選択される)及び「M」シロキシ単位(特に、Y3SiO1/2、YZ1 2SiO1/2、Y21SiO1/2、及びZ2 3SiO1/2シロキシ単位からなる群から選択される)から構成され、Y、Z1、及びZ2は上記で定義された通りである。オルガノポリシロキサンNは、分子あたり、上で定義された式(I.3)の少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのシロキシ単位を含むことが理解される。
【0040】
特に好ましい実施形態では、前記オルガノポリシロキサンNは、以下の式のシロキシ単位(I.1)及び(I.2)を含むオルガノポリシロキサンから選択される:
【化3】
【化4】
式中、
-Y及びZ1及びZ2は、上記の定義を有し、
-a=1又は2であり、b=0、1又は2であり、a+b=2又は3であり、
-c=2又は3である。
【0041】
特に好ましくは、オルガノポリシロキサンNは、YZ1SiO2/2及びYZ1 2SiO1/2からなる群から選択される単位(I.1)並びにZ2 2SiO2/2及びZ2 3SiO1/2からなる群から選択される単位(I.2)を含むオルガノポリシロキサンから選択され、Y、Z1、及びZ2は上記で定義された通りである。オルガノポリシロキサンNは、分子あたり、上で定義された式(I.3)の少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのシロキシ単位を含むことが理解される。
【0042】
好ましくは、オルガノポリシロキサンNは、2~5000、好ましくは2~1500、より好ましくは2~500の重合度を示す。
【0043】
好ましくは、オルガノポリシロキサンNは、1~80、好ましくは2~50、より好ましくは2~20の数のシロキシ単位(I.1)を含む。
【0044】
好ましくは、オルガノポリシロキサンNは、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~60ミリモルのアミン官能基を含み、より好ましくは、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~50ミリモルのアミン官能基を含む。
【0045】
好ましくは、オルガノポリシロキサンNは、以下の式(II)、(III)、(IV)及び(V)の化合物から選択される:
【化5】
式中、k=1~1000、好ましくは1~800であり、
【化6】
式中、l=1~1000、好ましくは1~800であり、m=1~150、好ましくは1~100であり、
【化7】

式中、n=1~800、好ましくは1~400であり、o=1~100、好ましくは1~50であり、
【化8】
式中、p=1~1000、好ましくは1~500である。
【0046】
オルガノポリシロキサンNを定義するすべての好ましい特性は、互いに組み合わせることができることが理解される。
【0047】
好ましくは、オルガノポリシロキサンNは、1~100,000mPa・s、好ましくは100~50,000mPa・sの動粘度を有する。さらにより好ましくは、オルガノポリシロキサンNは、1,000~20,000mPa・sの動粘度を有する。
【0048】
本開示に言及されるすべての粘度は、「ニュートニアン」と呼ばれる25℃での動粘度の大きさに対応する。すなわち、それ自体が知られている方法で、測定された粘度が速度勾配に依存しないのに十分に低いせん断速度勾配でブルックフィールド粘度計を用いて測定される動粘度である。
【0049】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサンF及びオルガノポリシロキサンGは、以下を含むオルガノポリシロキサンである:
a1)次の式(VI.1)の少なくとも1つの単位:
6 a3 bSiO(4-(a+b))/2 (VI.1)
式中、
-同一又は異なり得る記号R6は、それぞれ、線状又は分岐状のC1~C18アルキル基、又はC6~C12アリール若しくはアラルキル基を表し、任意選択で置換され、好ましくはハロゲン原子、又はアルコキシラジカル-OR7(R7は水素原子、又は1~10個の炭素原子を含む炭化水素ラジカルである)により置換され、
-記号Z3は、式-y-(Y’)nの1価のラジカルであり、ここで、
・yは、任意選択で2価のC1~C4のオキシアルキレン又はポリオキシアルキレンラジカルによって延長された、線状又は分岐状のC1~C18多価アルキレンラジカルを表し、任意選択でヒドロキシラジカルにより置換され、
・Y’は1価のアルケニルカルボニルオキシラジカルを表し、
・nは1、2、又は3に等しく、好ましくは、nは1に等しく、
-aは0、1、又は2に等しい整数であり、bは1又は2に等しい整数であり、合計a+b=1、2、又は3である;
a2)次の式(VI.2)の単位:
8 aSiO(4-a)/2 (VI.2)
式中、
-同一又は異なり得る記号R8は、それぞれ、線状又は分岐状のC1~C18アルキル基、又はC6~C12アリール若しくはアラルキル基を表し、任意選択で置換され、好ましくはハロゲン原子により置換され、
-aは0、1、2、又は3に等しい整数である。
【0050】
一実施形態によれば、上記の式(VI.1)において、上記のアルケニルカルボニルオキシラジカルY’は、アクリロキシラジカル[CH2=CH-CO-O-]及びメタクリロキシラジカル([(CH3)CH=CH-CO-O-]及び[CH2=C(CH3)-CO-O-])からなる群から選択される。
【0051】
式(VII.1)の単位の記号yは、以下からなる群から選択されることが好ましい:
-CH2-;
-(CH22-;
-(CH23-;
-CH2-CH(CH3)-CH2-;
-(CH23-O-CH2-;
-(CH23-O-CH2-CH(CH3)-;
-(CH23-O-CH2-CH(OH)-CH2-;及び
-(CH23-O-CH2-C(CH2-CH3)-(CH22-。
【0052】
オルガノポリシロキサンF及びオルガノポリシロキサンGは、線状又は分岐状の構造を有し得、(メタ)アクリレート官能基のそれらの含有量は異なり得る。オルガノポリシロキサンFは、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含み、より好ましくは、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、20~60ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む。オルガノポリシロキサンGは、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含み、より好ましくは、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、150~250ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む。
【0053】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサンF及びオルガノポリシロキサンGは、以下の式(VII)、(VIII)及び(IX)の化合物から選択される:
【化9】

式中、x=1~1000であり、n=1~100であり、
【化10】
式中、y=1~1000であり、
【化11】
式中、z=1~1000であり、m=1~100である。
【0054】
一実施形態によれば、有機化合物Hは、少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む。有機化合物Hは、2~5のアクリレート官能基を含み得る。化合物Hは、好ましくは、以下からなる群から選択される:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリイソプロレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート。
【0055】
より好ましくは、化合物Hは、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
さらにより好ましくは、有機化合物Hは1,6-ヘキサンジオールジアクリレートである。
【0057】
好ましい実施形態によれば、前記初期モル比Ri=nAcr/nHが4.5~7であり、より好ましくは5~7であり、さらにより好ましくは5.3~6.8である。
【0058】
1つの特定の実施形態によれば、化合物間の反応は、イソプロパノールの存在下で行われる。この場合、使用されるイソプロパノールの量は、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、0.1~2重量部である。
【0059】
本発明によるミスト防止添加剤Eは、コーティング中のミストの量を低減するのに十分な量で使用される。もちろん、当業者は、ルーティンな試験によって容易にこれらの量を決定することができる。好ましくは、本発明によるミスト防止添加剤Eは、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xの総重量に対して、1.5重量部より多く、好ましくは2~15重量部、さらにより好ましくは2.5~7重量部の量で使用される。
【0060】
架橋可能な組成物
シリコーンコーティングの前駆体であって、本発明によるプロセスで使用される液体シリコーン組成物Xは、重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能である。
【0061】
それは、その様々な成分を混合することによって調製される。好ましくは、混合は室温で行われる。
【0062】
本発明によるプロセスの一実施形態によれば、液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
-任意選択で、少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B、
-任意選択で、前記オルガノポリシロキサンAについて想定される反応のタイプに従って選択される性質を有する少なくとも1つの触媒又は光開始剤C、
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK、及び
-任意選択で、少なくとも1つの架橋抑制剤D。
【0063】
本発明によるプロセスの1つの特定の実施形態によれば、ステップI)において、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物XのオルガノポリシロキサンAは、ラジカル経路によって架橋可能なオルガノポリシロキサンである。その場合、オルガノポリシロキサンAは、(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含むオルガノポリシロキサンA1である。好ましくは、オルガノポリシロキサンA1は、以下を含む:
a1)次の式(VI.1)の少なくとも1つの単位:
6 a3 bSiO(4-(a+b))/2 (VI.1)
式中、
-同一又は異なり得る記号R6は、それぞれ、線状又は分岐状のC1~C18アルキル基、又はC6~C12アリール若しくはアラルキル基を表し、任意選択で置換され、好ましくはハロゲン原子、又はアルコキシラジカル-OR7(R7は水素原子、又は1~10個の炭素原子を含む炭化水素ラジカルである)により置換され、
-記号Z3は、式-y-(Y’)nの1価のラジカルであり、ここで、
・yは、任意選択で2価のC1~C4のオキシアルキレン又はポリオキシアルキレンラジカルによって延長された、線状又は分岐状のC1~C18多価アルキレンラジカルを表し、任意選択でヒドロキシラジカルにより置換され、
・Y’は1価のアルケニルカルボニルオキシラジカルを表し、
・nは1、2、又は3に等しく、好ましくは、nは1に等しく、
-aは0、1、又は2に等しい整数であり、bは1又は2に等しい整数であり、合計a+b=1、2、又は3である;
a2)次の式(VI.2)の単位:
8 aSiO(4-a)/2 (VI.2)
式中、
-同一又は異なり得る記号R8は、それぞれ、線状又は分岐状のC1~C18アルキル基、又はC6~C12アリール若しくはアラルキル基を表し、任意選択で置換され、好ましくはハロゲン原子により置換され、
-aは0、1、2、又は3に等しい整数である。
【0064】
一実施形態によれば、上記の式(VI.1)において、上記のアルケニルカルボニルオキシラジカルY’は、アクリロキシラジカル[CH2=CH-CO-O-]及びメタクリロキシラジカル([(CH3)CH=CH-CO-O-]及び[CH2=C(CH3)-CO-O-])からなる群から選択される。
【0065】
式(VII.1)の単位の記号yは、以下からなる群から選択されることが好ましい:
-CH2-;
-(CH22-;
-(CH23-;
-CH2-CH(CH3)-CH2-;
-(CH23-O-CH2-;
-(CH23-O-CH2-CH(CH3)-;
-(CH23-O-CH2-CH(OH)-CH2-;及び
-(CH23-O-CH2-C(CH2-CH3)-(CH22-。
【0066】
オルガノポリシロキサンA1は、線状又は分岐状の構造を有する。オルガノポリシロキサンA1は、100gのオルガノポリシロキサンA1あたり、10~400ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含み、より好ましくは、100gのオルガノポリシロキサンA1あたり、20~300ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む。
【0067】
一実施形態によれば、オルガノポリシロキサンA1は、上記のように式(VII)、(VIII)及び(IX)の化合物から選択される。
【0068】
本発明のこの変形によれば、オルガノポリシロキサンA1と共に組成物Xに使用される光開始剤Cは、芳香族ケトンから選択することができるラジカル光開始剤C1であり、これは、紫外線(UV)放射に曝露された後に:
-カルボニル官能基(アシルホスホネート誘導体、アシルホスフィンオキシド誘導体、ベンゾインエーテルの誘導体、アセトフェノン誘導体など)に関してα位でホモリティック開裂を起こし、2つのラジカルフラグメントを形成し、そのうちの1つはベンゾイルラジカルである(タイプI光開始剤);又は、
-水素供与体分子から水素を引き抜くことによって励起状態に促進されるとフリーラジカルを形成し(より一般的には「共開始剤」と呼ばれる)、それにより、不活性なケチルラジカル、及び対応するドナーに由来する開始剤ラジカルの形成をもたらす(タイプII光開始剤)。
【0069】
好ましくは、ラジカル光開始剤C1は、α-ヒドロキシケトン、ベンゾインエーテル、芳香族α-アミノケトン及びアシルホスフィンオキシドからなる群から選択される。好ましくは、ラジカル光開始剤C1は、アシルホスフィンオキシドであり、より好ましくは、ラジカル光開始剤C1は、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(CAS番号84434-11-7)である。
【0070】
本発明の別の実施形態によれば、ステップI)において、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物XのオルガノポリシロキサンAは、重付加によって架橋可能なオルガノポリシロキサンである。その場合、オルガノポリシロキサンAは、式(X.1)の少なくとも2つのシロキシ単位を含むオルガノポリシロキサンA2であり、任意選択で、他の単位の少なくともいくつかは、式(X.2)のシロキシ単位である。
【化12】
【化13】
式中、
-Wはアルケニル、好ましくはビニル又はアリル基であり、
-同一又は異なり得る記号Z4は、以下を表し:
・1~20個の炭素原子を含み、任意選択で少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素で置換された線状又は分岐状アルキルラジカル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3-トリフルオロプロピル、
・任意選択で置換される、5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキルラジカル、
・任意選択で置換される、6~12個の炭素原子を含むアリールラジカル、及び/又は
・5~14個の炭素原子を含むアルキル部分と、6~12個の炭素原子を含むアリール部分とを有するアラルキルラジカル、任意選択で、アリール部分がハロゲン及び/又はアルキルで置換される;
-aは1又は2であり、好ましくは1に等しく、bは0、1又は2であり、a+b=1、2又は3であり、
-c=0、1、2、又は3である。
【0071】
重付加により架橋可能なオルガノポリシロキサンA2の例は、ジメチルビニルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマーである。
【0072】
この変形によれば、架橋性有機ケイ素化合物Bは、式(XI.1)の少なくとも3つのシロキシ単位を含む化合物B2であり、任意選択で、他の単位の少なくともいくつかは式(XI.2)のシロキシ単位である。
【化14】
【化15】
式中、
-Hは水素原子であり、
-同一又は異なり得る記号Lは、以下を表し:
・1~20個の炭素原子を含み、任意選択で少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素で置換された線状又は分岐状アルキルラジカル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3-トリフルオロプロピル、
・任意選択で置換される、5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキルラジカル、
・任意選択で置換される、6~12個の炭素原子を含むアリールラジカル、及び/又は
・5~14個の炭素原子を含むアルキル部分と、6~12個の炭素原子を含むアリール部分とを有するアラルキルラジカル、任意選択で、アリール部分がハロゲン及び/又はアルキルで置換される;
-c=0、1、又は2であり、
-g=0、1、2、又は3である。
【0073】
架橋性有機ケイ素化合物B2の例は、例えば以下である:
-ヒドロジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサンポリマー、
-ポリ(ジメチルシロキシ)(メチルヒドロシロキシ)α,ω-ジメチルヒドロシロキシポリマー、
-MDDH:トリメチルシリル末端基を持つ(ジメチルシロキシ)(ヒドロメチルシロキシ)単位を持つコポリマー、
-MHDDH:ヒドロジメチルシリル末端基を有する(ジメチルシロキシ)(ヒドロメチルシロキシ)単位を有するコポリマー、
-MDH:トリメチルシリル末端基を持つヒドロメチルポリシロキサン。
【0074】
さらにこの変形によれば、触媒Cは重付加触媒C2である。重付加触媒C2は、白金族に属する少なくとも1つの金属から構成することができる。この触媒は、特に、白金及びロジウムの化合物から選択することができるが、特許出願WO2015004396及びWO2015004397に記載されているようなシリコン化合物、特許出願WO2016075414に記載されているようなゲルマニウム化合物、又は特許出願WO2016071651、WO2016071652及びWO2016071654に記載されているような、ニッケル、コバルト若しくは鉄の錯体からも選択することができる。一般的に好ましい触媒は白金である。この場合、白金金属の重量として計算される重付加触媒C2の重量による量は、一般に2~400ppmである。
【0075】
本発明の別の実施形態によれば、ステップI)において、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物XのオルガノポリシロキサンAは、重縮合によって架橋可能なオルガノポリシロキサンである。その場合、オルガノポリシロキサンAは、ヒドロキシル基又は加水分解性基、例えばアルコキシ基を有する線状又は分岐状オルガノポリシロキサンA3であり、これらは、一般に触媒C3の存在下で、水分の作用下で重縮合反応を介して室温で架橋する。触媒C3は重縮合反応の触媒である。重縮合触媒は当業者に広く知られている。本発明を限定することを意図しないが、触媒C3は、とりわけ、当業者に広く知られているスズベースの化合物から、又は特許出願EP2268743及びEP2367867に記載されているグアニジンなどの有機触媒から、又は特許出願EP2222626、EP2222756、EP2222773、EP2935489、EP2935490及びWO2015/082837に記載されているZn、Mo、Mgなどをベースとする金属錯体から選択することができる。さらにこの変種によれば、架橋性有機ケイ素化合物Bは、少なくとも3つの加水分解性基、好ましくはアルコキシ基を有する化合物である化合物B3であり、例えば、ケイ酸塩、アルキルトリアルコキシシラン又はアミノアルキルトリアルコキシシランなどである。
【0076】
本発明の別の実施形態によれば、ステップI)において、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物XのオルガノポリシロキサンAは、脱水素縮合によって架橋可能なオルガノポリシロキサンである。その場合、オルガノポリシロキサンAは、ヒドロキシル基を有する線状、分岐状又は架橋のオルガノポリシロキサンA4である。この変形によれば、架橋性有機ケイ素化合物Bは、ヒドロシリル又はSiH基を有する線状、分岐状又は架橋の有機ケイ素化合物である化合物B4である。オルガノポリシロキサンA4と架橋剤B4との間の脱水素縮合反応は、触媒C4の存在下で起こる。本発明を限定することを意図しないが、触媒C4は、例えば白金又はイリジウムに基づく金属化合物、又は特許出願EP2443207及びEP2443208に記載されているような、例えばグアニジンタイプの有機化合物から選択することができる。
【0077】
本発明の別の実施形態によれば、ステップI)において、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物XのオルガノポリシロキサンAは、カチオン経路によって架橋可能なオルガノポリシロキサンである。その場合、オルガノポリシロキサンAは、エポキシ、アルケニルエーテル、オキセタン及びジオキソランの官能基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性官能基Gを含むオルガノポリシロキサンA5である。これらのオルガノポリシロキサンA5は、有効量の光開始剤Cの存在下で架橋し、光開始剤Cは、化学線(UV)又は電子ビームでの活性化によるオニウム塩タイプのカチオン性光開始剤C5である。好ましくは、光開始剤C5は、例えば、文献EP-562897及びEP-2904021に記載されているような、ホウ酸ヨードニウムである。具体的な例は、次のホウ酸ヨードニウムである:
【化16】
【0078】
エポキシ官能性又はビニルオキシ官能性オルガノポリシロキサンであり得るオルガノポリシロキサンA5は、特に特許DE-4009889、EP-0396130、EP-0355381、EP-0105341、FR-2110115、FR-2526800に記載されている。エポキシ官能性オルガノポリシロキサンは、≡SiH単位を含むオイルと1,2-エポキシ-4-ビニル-4-シクロヘキサン(VCMX)又はアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ官能性化合物との間のヒドロシリル化反応によって調製することができる。ビニルオキシ官能性オルガノポリシロキサンは、SiH単位を含むオイルと、アリルビニルエーテル又はアリルビニルオキシエトキシベンゼンなどのビニルオキシ官能性化合物との間のヒドロシリル化反応によって調製することができる。
【0079】
存在する場合、架橋抑制剤Dは、一般に、すぐに使用できる組成物に特定のポットライフを与えるために使用される。これらの架橋抑制剤は、ステップI)において、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物XのオルガノポリシロキサンAが、重付加又は脱水素によって架橋可能なオルガノポリシロキサンであり、使用される触媒Cが白金に基づく場合に特に存在する。架橋抑制剤Dは、好ましくは、アセチレン系アルコール(エチニルシクロヘキサノール:ECH)、マレイン酸ジアリル、イソシアヌレートトリアリル、マレイン酸ジアルキル(マレイン酸ジエチル又はアルキンジカルボン酸ジアルキル)(アセチレンジカルボン酸ジエチル)から選択され、又は、有利には環状であり、少なくとも1つのアルケニルで置換されているオルガノポリシロキサン(テトラメチルビニルシクロテトラシロキサンが特に好ましく)、又はアルキル化マレイン酸塩から選択される。アセチレンアルコールは、本発明による有用な抑制剤である。例として、以下を挙げることができる:
1-エチニルシクロヘキサン-1-オール;
3-メチルドデカ-1-イン-3-オール;
3,7,11-トリメチルドデカ-1-イン-3-オール;
1,1-ジフェニルプロプ-2-イン-1-オール;
3-エチル-6-エチルノン-1-イン-3-オール;
3-メチルペンタデカ-1-イン-3-オール。
【0080】
シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xにおいて、架橋シリコーンコーティングの剥離特性の制御を可能にするために、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムKを使用することが有利であり得る。例として、接着モジュレーターシステムKは、以下であり得る:
-重付加により架橋する配合物の場合:式MDViQ、MMViQ、MMViViQ、MMViDDViQ、MDHQ又はMMHQのポリオルガノシロキサン樹脂(Vi=ビニル基)、
-重縮合又は脱水素縮合によって架橋する配合物の場合:式MOHQのポリオルガノシロキサン樹脂、
-放射線下で架橋する配合物の場合:式MDHQ又はMMHQのポリオルガノシロキサン樹脂。
ここで:
-記号「D」は、式(CH32SiO2/2のシロキシ単位を示し、
-記号「DVi」は、式(CH3)(ビニル)SiO2/2のシロキシ単位を示し、
-記号「DH」は、式(CH3)HSiO2/2のシロキシ単位を示し、
-記号「M」は、式(CH33SiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「MVi」は、式(CH32(ビニル)SiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「MH」は、式(CH32HSiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「MOH」は、式(CH32(OH)SiO1/2のシロキシ単位を示し、
-記号「Q」は、式SiO4/2のシロキシ単位を示す。
【0081】
本発明によるプロセスの好ましい変形によれば、ステップI)において、ミスト防止添加剤Eが添加される、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-ラジカル経路で架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、
-少なくとも1つのラジカル光開始剤C1、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK。
オルガノポリシロキサンA1及び光開始剤C1は上記で定義された通りである。
【0082】
本発明によるプロセスの好ましい変形によれば、ステップI)において、ミスト防止添加剤Eが添加される、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-重付加により架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA2、
-少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B2、
-少なくとも1つの触媒C2、
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK、及び
-任意選択で、少なくとも1つの架橋抑制剤D。
オルガノポリシロキサンA2、架橋剤B2、触媒C2、接着モジュレーターシステムK及び架橋抑制剤Dは、上記で定義された通りである。
【0083】
本発明によるプロセスの別の変形によれば、ステップI)において、ミスト防止添加剤Eが添加される、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-重縮合によって架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA3、
-上記の少なくとも1つのミスト防止添加剤E、
-少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B3、
-少なくとも1つの触媒C3、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK。
オルガノポリシロキサンA3、架橋剤B3、触媒C3、及び接着モジュレーターシステムKは、上記で定義された通りである。
【0084】
本発明によるプロセスの別の変形によれば、ステップI)において、ミスト防止添加剤Eが添加される、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-脱水素縮合により架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA4、
-少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B4、
-少なくとも1つの触媒C4、
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK、及び
-任意選択で、少なくとも1つの架橋抑制剤D。
オルガノポリシロキサンA4、架橋剤B4、触媒C4、接着モジュレーターシステムK及び架橋抑制剤Dは、上記で定義された通りである。
【0085】
本発明によるプロセスの別の変形によれば、ステップI)において、ミスト防止添加剤Eが添加される、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-カチオン経路で架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA5、
-少なくとも1つの光開始剤C5、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK。
オルガノポリシロキサンA5、光開始剤C5、及び接着モジュレーターシステムKは、上記で定義された通りである。
【0086】
これらの成分に加えて、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xはまた、シリコーン組成物に慣習的な少なくとも1つの添加剤を含み得、これは、重付加、重縮合、脱水素縮合、カチオン経路、又はラジカル経路によって架橋する。例えば、顔料及び充填剤Pを挙げることができる。充填剤Pは、好ましくは鉱物充填剤である。これらの充填剤は、非常に細かく分割された製品の形で提供され得る。これらの充填剤には、ヒュームドシリカと沈降シリカが含まれ、それらの比表面積は、例えば40m2/g以上であり、多くの場合40~300m2/gの範囲内である。これらの充填剤Pはまた、例えば1μmを超える平均粒子径を有する、より粗く分割された製品の形態で提供され得る。そのような充填剤の例として、粉砕石英、珪藻土シリカ、鉄、亜鉛及びマグネシウムの酸化物、様々な形態のアルミナ(水和又は非水和)が挙げられ得る。それらの比表面積は、例えば、30m2/g以下である。充填剤Pは、この用途に通常使用される様々な有機ケイ素化合物で処理することによって表面改質され得る。したがって、これらの有機ケイ素化合物は、オルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザン又はジオルガノシクロポリシラザンであり得る。処理された充填剤は、ほとんどの場合、それらの重量の2%~20%の有機ケイ素化合物を含んでいる。
【0087】
本発明の別の主題は、以下を10℃~100℃の温度で、好ましくは30分~12時間反応することにより、ミスト防止添加剤Eを調製するためのプロセスに関する:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~1重量部の、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
・オルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
・有機化合物Hであって、100gの有機化合物Hあたり、300~1000ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む有機化合物H、
・それらの混合物、及び
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。
【0088】
有利には、本発明によるプロセスに従ってミスト防止添加剤Eを調製するために、以下を、好ましくは30分~12時間、10℃から100℃の間の温度で反応させる:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~0.6重量部の、以下からなる群から選択される少なくとも1つの化合物:
・オルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、85~400ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
・有機化合物Hであって、100gの有機化合物Hあたり、300~1000ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む有機化合物H、
・それらの混合物、及び
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。
【0089】
有利には、本発明によるプロセスに従ってミスト防止添加剤Eを調製するために、以下を、好ましくは30分~12時間、10℃から100℃の間の温度で反応させる:
-少なくとも1つのオルガノポリシロキサンFであって、100gのオルガノポリシロキサンFあたり、10~80ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンFの100重量部あたり、
-0.01~0.3重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンGであって、100gのオルガノポリシロキサンGあたり、65~300ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む、オルガノポリシロキサンG、
-0.01~0.3重量部の、少なくとも1つの有機化合物Hであって、100gの有機化合物Hあたり、300~1000ミリモルの(メタ)アクリレート、好ましくはアクリレート官能基を含む有機化合物H、
-5~40重量部の、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンNであって、100gのオルガノポリシロキサンNあたり、10~80ミリモルのアミン官能基を含む、オルガノポリシロキサンN、
使用される前記化合物F、G、H及びNの量は、初期モル比Ri=nAcr/nHが3.8~7であり、ここで、nAcrは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数であり、nHは、前記オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合している水素原子のモル数である。
【0090】
本発明の別の主題は、上記の本発明によるプロセスによって得ることができるミスト防止添加剤Eである。これらのミスト防止添加剤Eは、ミスト防止添加剤として優れた挙動を示すために必要な粘弾性特性を有するという利点を有する。
【0091】
本発明の別の主題は、上記の本発明によるプロセスにより得られたミスト防止添加剤Eを含む、重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能な、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xに関する。
【0092】
本発明の別の主題は、シリコーンコーティングの前駆体であり、以下を含む液体シリコーン組成物Xに関する:
-重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオン経路又はラジカル経路によって架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
-上記のプロセスで得られる少なくとも1つのミスト防止添加剤E、
-任意選択で、少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B、
-任意選択で、前記オルガノポリシロキサンAについて想定される反応のタイプに従って選択される性質を有する少なくとも1つの触媒又は光開始剤C、
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK、及び
-任意選択で、少なくとも1つの架橋抑制剤D。
オルガノポリシロキサンA、ミスト防止添加剤E、触媒又は光開始剤C、接着モジュレーターシステムK及び架橋抑制剤Dは、上記で定義された通りである。
【0093】
本発明の変形によれば、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-ラジカル経路で架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA1、
-上記のプロセスで得られる少なくとも1つのミスト防止添加剤E、
-少なくとも1つのラジカル光開始剤C1、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK。
オルガノポリシロキサンA1、ミスト防止添加剤E、光開始剤C及び接着モジュレーターシステムKは、上記で定義された通りである。
【0094】
本発明の別の変形によれば、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-重付加により架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA2、
-上記のプロセスで得られる少なくとも1つのミスト防止添加剤E、
-少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B2、
-少なくとも1つの触媒C2、
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK、及び
-任意選択で、少なくとも1つの架橋抑制剤D。
オルガノポリシロキサンA2、ミスト防止添加剤E、架橋剤B2、触媒C2、接着モジュレーターシステムK及び架橋抑制剤Dは、上記で定義された通りである。
【0095】
別の好ましい実施形態によれば、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-重縮合による少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA3、
-上記のプロセスで得られる少なくとも1つのミスト防止添加剤E、
-少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B3、
-少なくとも1つの触媒C3、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK。
オルガノポリシロキサンA3、ミスト防止添加剤E、架橋剤B3、触媒C3及び接着モジュレーターシステムKは、上記で定義された通りである。
【0096】
別の好ましい実施形態によれば、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-脱水素縮合により架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA4、
-上記のプロセスで得られる少なくとも1つのミスト防止添加剤E、
-少なくとも1つの架橋性有機ケイ素化合物B4、
-少なくとも1つの触媒C4、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK、及び
-任意選択で、少なくとも1つの架橋抑制剤D。
オルガノポリシロキサンA4、ミスト防止添加剤E、架橋剤B4、触媒C4、接着モジュレーターシステムK及び架橋抑制剤Dは、上記で定義された通りである。
【0097】
別の好ましい実施形態によれば、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xは、以下を含む:
-カチオン経路で架橋可能な少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA5、
-上記のプロセスで得られる少なくとも1つのミスト防止添加剤E、
-少なくとも1つの光開始剤C5、及び
-任意選択で、少なくとも1つの接着モジュレーターシステムK。
オルガノポリシロキサンA5、ミスト防止添加剤E、光開始剤C5、及び接着モジュレーターシステムKは、上記で定義された通りである。
【0098】
本発明の最後の主題は、シリコーンコーティングの前駆体である液体シリコーン組成物Xでの、可撓性支持体のコーティング中のミストの出現を低減するための、上記で定義されたミスト防止添加剤Eの使用に関する。
【0099】
したがって、本発明が、高速で動作するロールコーティング装置における、可撓性支持体(例えば、紙、合成ポリマー(ポリオレフィン、ポリエステルなど)又は織物製)のコーティング中のミストの生成に対処するための独自の、簡単で、経済的で信頼できる手段を提供することは明らかである。実際の工業的結果は、コーティングの品質に有害なこのミスト現象が現れることなく、走行速度を上げることができるということである。本発明によって提供されるミスト形成に対処するための手段はまた、それが得ようとしている、可撓性支持体の面の少なくとも1つにおける、架橋性シリコーンコーティングの外観、被覆率、剥離特性、又は機械的特性(こすり落とし)の品質を損なわないという重要な利点を有する。
【0100】
さらに、ミストの低減により、衛生状態、及び高速で動作する工業用シリコーンロールコーティング装置の周囲に配置される人員の安全状態が大幅に改善される。
【0101】
以下の実施例は、本発明の範囲をこれらの単純な実施形態に限定することなく、本発明の特定の実施形態を説明するために提供されている。
【実施例
【0102】
I)ミスト防止添加剤Eの調製:
以下の実施例では、以下の化合物を使用した。
F1:100グラムあたり、31ミリモルのアクリレート官能基を有する次の式のオルガノポリシロキサン。
【化17】
F2:Silmer ACR Di-50(登録商標)、サプライヤーSiltech Corporation、これは鎖末端に2つのアクリレート官能基を持ち、100グラムあたり50ミリモルのアクリレート官能基を持つジメチルポリシロキサンである。
G1:100グラムあたり199ミリモルのアクリレート官能基を有するF1と同じ全体式のオルガノポリシロキサン。
H1:100グラムあたり885ミリモルのアクリレート官能基を持つヘキサンジオールアクリレート。
N1:100グラムあたり43ミリモルのアミン官能基を持つ次の式のオルガノポリシロキサン。
【化18】
イソプロパノール。
【0103】
分岐状ポリマーの合成:
ミスト防止添加剤として試験されたすべての化合物は、同じプロセスによって合成された。
【0104】
化合物F、G、H、及びNを、以下の表1に詳述されている比率でフラスコに投入した。反応を加速するために、0.1~1グラムの少量のイソプロパノールを任意に投入することができる。フラスコを密閉して、密閉したままにし、マット上で室温で2~24時間攪拌した。
【0105】
Riは、化合物F、G及びHの(メタ)アクリレート官能基の総モル数と、オルガノポリシロキサンNの窒素原子に結合した水素原子のモル数との間の初期モル比を表す。次に、得られたポリマーのロープ状の性質の定性的評価を、スパチュラ(糸の形成又はその欠如)を使用して実行した。化合物がシリコーン組成物に添加されたときにミスト防止特性を付与するためには、ロープ状の性質が必要である。
【0106】
【表1】
【0107】
II)ミスト防止添加剤としての試験
ロープ状の性質を有する実施例2及び3の分岐状ポリマーを、ミスト防止添加剤として試験した。
【0108】
テストの説明
高速で動作するロールコーティング装置で生成されたミストを分析及び定量化するために、比濁計(GRIMMのポータブルダストモニターシリーズ1.100)を使用して「パイロットミスト」を実験室規模で実装した。これにより、0.5μmを超えるサイズの粒子、すなわち大気中に放出されたすべての粒子の密度を測定できる。
【0109】
コーティング装置(フランスのErmap社が提供)は2つのロールで構成され、50~920m/minの線速度で紙ウェブを走行させることができる。2つのプレス/コーティングロールの直径は10cmであった。プレスロールはゴムで覆われ、コーティングロールはクロムで覆われている。コーティングロールは、2つのロールの速度が同期するようにダンベルの形をしていた。モーターで駆動できるプレスロールは、一定の圧力下でコーティングロールと接触していた。液体コーティングシリコーンは、2つのロール間のギャップに直接注がれた。使用する液体の量は0.25mlであった。
【0110】
比濁計は、ミスト又はエアロゾル中の粒子の密度をμg/m3として測定した。
【0111】
様々な添加剤のミスト防止性能は、ラジカル経路によって架橋可能であり、95部の化合物A1及び5部の化合物A2から構成され、両方とも以下の式を有するシリコーン組成物で試験された:
【化19】
A1では、x=82、n=7、A2では、x=220、n=4、光開始剤としてエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(CAS No.84434-11-7)を1部含む。
【0112】
表1に従って調製された実施例2及び3から得られた様々な量のポリマーを上記の組成物に添加した。混合物を攪拌して均質化した。
【0113】
ミスト密度測定の結果はμg/m3と表され、以下の表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
製品E2及びE3は、シリコーン組成物において非常に好ましいミスト防止挙動を有する。製品E2及びE3はまた、シリコーン組成物への良好な溶解性を有するという利点を有する。5重量部のミスト防止添加剤E2又はE3を使用すると、600m/minで測定されたミスト密度は少なくとも一桁減少する。
【0116】
II)ポリマー支持体上のシリコーン剥離コーティングの調製
5重量部の添加剤E3を含む表2のシリコーン組成物を、ロトメック(Rotomec)パイロットコーティングシステムを使用してポリエステル支持体上にコーティングした。機械速度は50m/minで、水銀ランプの出力は100W/cmに固定されており、UV下で架橋を行った。堆積は0.9~1.1g/m2であった。機械を出ると、「スミア」、「こすり落とし」、「デウェッティング」のテストを実行し、抽出可能なシリコーンを測定した。
【0117】
シリコーン剥離コーティングでコーティングされた支持体で実行されたテスト:
スミア:フィンガートレース法による表面重合の定性的検査であり、以下からなる:
-検査対象のシリコーンコーティングされた支持体のサンプルを平らな剛性表面に置く;
-適度にしっかりと押しながら、指先で跡を作る;
-このようにして作成された跡を、(好ましくはレーキライトの下で)目で調べる。したがって、表面輝度の違いにより、ごくわずかな痕跡でも存在することがわかる。
【0118】
評価は定性的である。「スミア」テストは、次のグレードを使用して定量化される:
A:非常に良い。指の跡はない。
B:よい。跡はほとんど見えない。
C:明らかな跡。
D:表面にオイリーな外観を伴う非常に明確な跡、製品はほとんど重合していない。すなわち、AからDの順に、最もよい結果から最も悪い結果へと変わる。
【0119】
こすり落とし:指を前後に動かしてカスを作ることによって、シリコーンが可撓性支持体に付着する能力の検査であり、以下からなる:
-検査対象のシリコーンコーティングされた支持体のサンプルを平らな剛性表面に置く(シリコーンを上面に);
-適度にしっかりと押しながら、指先を10回(約10cmの長さで)前後に擦る;
-目でカスの外観を調べる。カスは、指の下を転がる細かい白い粉又は小さなビーズの外観に対応する。
【0120】
評価は定性的である。カスは、次のグレードを使用して定量化される:
10:非常に良好で、10回の往復パス後にカスのような外観はない。
1:非常に貧弱で、最初の擦りでカスができる。
グレードは、カスが現れる時に往復した回数(1から10)に対応する。すなわち、1から10の順に、最も悪い結果から最もよい結果へと変わる。
【0121】
デウェッティング:標準化された表面張力のインクを使用して、コーティングと接触させた接着剤へのシリコーンの移動を評価することによる、シリコーン層の重合度の評価である。この方法は以下の通りである:
-巻き戻し方向(機械方向)で採取した、特性を評価すべきシリコーンコート紙から約20×5cmのサンプルを選択する;
-粘着テープの長さ約15cmを切り取り、粘着テープの長さに沿って指をスライドさせて10回圧力をかけ、折り目がないように粘着面を下にして検査対象の紙に貼り付ける(3Mの「スコッチ」粘着テープ、参照番号610、幅:25mm);
-粘着テープを持ち上げて、粘着部分を上に向けて平らに置く;
-(使い捨ての)綿棒を使用して、テープの接着部分に約10cmの長さのインクの跡をつける(表面張力約30ダイン/cm、粘度2~4MPa/sのSHERMAN又はFERARINI及びBENELIブランドのインク)。すぐにタイマーを開始する;
-デウェッティング現象のフェーズは、インクの線の外観が変化したときに開始されたと見なされる;この時点でタイマーを停止する;
-テープの接着部分へのインクの付着は、シリコーンでコーティングしてから2分以内に終了するはずである;
-得られた結果が10秒未満の場合、シリコーンが接着剤に移行しており、重合が完了していないと考えられる;
-デウェッティング現象が観察されるまでの経過時間(秒単位)に対応して、0~10のグレードを付ける;
-得られた結果が10秒の場合、重合は完了したと見なされる。この場合、10の評点が与えられ、結果が非常に良好であることを示す;
-取得したグレードと使用したインク(名前、ブランド、表面張力、粘度)をメモする。
【0122】
抽出:重合中に形成されたネットワークにグラフトされていないシリコーンの量の測定である。これらのシリコーンは、マシンを離れるときにサンプルをMIBKで最低24時間浸漬することにより、フィルムから抽出される。それは火炎吸収分光法によって測定される。抽出物の含有量は8%未満、できれば6%未満に保つ必要がある。
【0123】
さまざまなトレードテストの結果を次の表に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
5部のミスト防止添加剤E3を含む配合物のトレード試験は満足のいくものであった。得られたコーティングの特性に劣化はなかった。
【0126】
剥離:剥離力の測定は、標準化された接着剤TESA7475を使用して、シリコーンコーティングでコーティングされた支持体上で実行した。多層製品(シリコーン表面に接触する接着剤)の試験片を、23℃で1日、70℃で1日、又は70℃で7日間、必要な圧力条件下で保管し、その後、当業者に知られているFINAT 3(FTM 3)試験に従って、低い剥離速度で試験した。
【0127】
剥離力はcN/インチで表され、サンプルを室温(23℃)又は加速劣化試験(通常70℃)のためにより高い温度のいずれかで、圧力下に置いた後、ダイナモメーターを使用して測定した。
【0128】
結果を以下の表4に示す。
【0129】
【表4】
【0130】
剥離力の増加が確認されるが、それらは実用において完全に満足のいくものであった。
【0131】
継続接着性(表の「継続接着性」):当業者に知られているFINAT 11(FTM 11)試験に従って、シリコーンコーティングと接触させた接着剤(TESA 7475)の接着性の保持を確認する測定である。ここで、参照試験片はPET製であり、接着剤は70℃で1日間、又は70℃で7日間、試験対象のシリコーン表面に接触したままであった。
【0132】
結果は、参照テープの接着力の保存率で示される。CA=(Fm2/Fm1)×100%、式中:
Fm2=シリコーン表面に20時間接触した後の平均テープ剥離力。
Fm1=シリコーン表面と接触していない場合の平均テープ剥離力。
【0133】
結果を次の表5に示す。
【0134】
【表5】
【0135】
剥離力とその後の接着力測定は、エージング後も満足のいくものであった。