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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】電極シート、電気化学装置及びその装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240205BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20240205BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240205BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20240205BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20240205BHJP
   H01M 50/595 20210101ALI20240205BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240205BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M50/536
H01M4/66 A
H01M50/591 101
H01M50/586
H01M50/595
H01M10/0566
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021577837
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2020072145
(87)【国際公開番号】W WO2020258860
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】201910580214.3
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】李▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】李静
(72)【発明者】
【氏名】薛▲慶▼瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲揚▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼子格
(72)【発明者】
【氏名】王▲鵬▼翔
(72)【発明者】
【氏名】▲陸▼▲陽▼
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208507818(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第108598491(CN,A)
【文献】特開2019-102426(JP,A)
【文献】特開2003-132875(JP,A)
【文献】特開2010-055906(JP,A)
【文献】特開2018-056017(JP,A)
【文献】特開2012-204179(JP,A)
【文献】特開2003-282064(JP,A)
【文献】特開2019-096591(JP,A)
【文献】特開2016-058247(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108682788(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/84
H01M50/50-50/598
H01M10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、前記集電体の少なくとも1つの表面に設けられる電極活性材料層、及び前記集電体に電気的に接続される電気接続部材を備える電極シートであって、
前記電極活性材料層は、前記集電体の本体部に設けられ、当該領域はフィルム領域と呼ばれており、前記電気接続部材と前記集電体とは、前記集電体の縁端部において溶接接続され、当該溶接領域は中継溶接領域と呼ばれており、前記フィルム領域と中継溶接領域との間の集電体における電極活性材料層が塗布されていない遷移領域は、延在領域と呼ばれており、
前記集電体は、支持層、及び前記支持層の少なくとも1つの表面に設けられる導電層を備え、前記導電層の片面の厚さD2は、30nm≦D2≦2μmを満たし、前記支持層は、高分子材料層又は高分子複合材料層であり、
前記電極シートは、内部短絡防止保護層をさらに備え、前記内部短絡防止保護層は、有機絶縁層であり、且つ、前記中継溶接領域における電気接続部材及び前記延在領域の少なくとも一部を覆い、
前記延在領域における複合集電体の表面には、さらに、支持保護層が設けられており、 前記電極シートの塗布された表面の幅方向から見ると、電極活性材料層は、圧密度を基に、2n+1個の領域を含み、且つ、中間領域の圧密度が両側領域の圧密度より高く、ここで、n=1、2又は3である、
電極シート。
【請求項2】
前記内部短絡防止保護層は、透明絶縁テープ、有色絶縁テープ、透明絶縁性接着剤塗布層、有色絶縁性接着剤塗布層から選択される少なくとも1種類である、
請求項1に記載の電極シート。
【請求項3】
前記透明絶縁性接着剤塗布層又は有色絶縁性接着剤塗布層は、スチレンアクリルエマルジョン、フェノール樹脂層、ポリ塩化ビニル層、ポリスチレン層、ポリエチレン樹脂層、エポキシ樹脂層、ポリアニリン層、ポリピロール層、ポリアセチレン層及びポリイミド層から選択される少なくとも1種類である、
請求項2に記載の電極シート。
【請求項4】
前記有色絶縁テープ又は有色絶縁性接着剤塗布層は、着色剤を含有し、
前記着色剤は、カーボンブラック、コバルトブルー、群青、酸化鉄、カドミウムレッド、クロムオレンジ、モリブデンオレンジ、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ニッケルチタンイエロー、チタンホワイト、リトポン、亜鉛華、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴイド顔料及び金属錯体顔料から選択される1種類又は複数種類である、
請求項2又は3に記載の電極シート。
【請求項5】
前記支持保護層は、有機絶縁層又は無機絶縁層である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電極シート。
【請求項6】
前記有機絶縁層は、絶縁テープ層又は絶縁性接着剤塗布層から選択されており、及び/又は、
前記無機絶縁層は、酸化アルミニウム層、酸化マグネシウム層、酸化亜鉛層、酸化ケイ素層、酸化チタン層、酸化ジルコニウム層、窒化アルミニウム層、窒化ケイ素層、フッ化カルシウム層、フッ化バリウム層から選択される少なくとも1種類である、
請求項5に記載の電極シート。
【請求項7】
前記絶縁性接着剤塗布層は、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene Fluoride)層、ポリジフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride)層、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体層、スチレンブタジエンゴム層、カルボキシメチルセルロースナトリウム層、ポリアクリル酸層、ポリアクリル酸ナトリウム層、ポリエチレンオキシド層、ポリビニルアルコール層から選択される少なくとも1種類である、
請求項6に記載の電極シート。
【請求項8】
前記無機絶縁層は、無機絶縁粒子及び接着剤を含有し、
前記無機絶縁粒子は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化カルシウム、フッ化バリウムのうちの少なくとも1種類であり、及び/又は、
前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリジフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールのうちの少なくとも1種類である、
請求項5に記載の電極シート。
【請求項9】
前記無機絶縁粒子の含有率は、前記無機絶縁層の総重量に対して、50wt%~98wt%であり、及び/又は、
前記接着剤の含有率は、前記無機絶縁層の総重量に対して、2wt%~50wt%である、
請求項8に記載の電極シート。
【請求項10】
前記導電層は金属導電層であり、前記金属導電層の材料は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル銅合金、アルミニウムジルコニウム合金のうちの少なくとも1種類であり、及び/又は、
前記支持層の材料は、絶縁高分子材料、絶縁高分子複合材料、導電性高分子材料、導電性高分子複合材料から選択される少なくとも1種類である、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電極シート。
【請求項11】
前記集電体には、さらに、保護層が設けられており、前記保護層は、前記集電体の導電層の1つの表面又は前記集電体の導電層の2つの表面に設けられ、前記保護層は、金属保護層又は金属酸化物保護層である、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電極シート。
【請求項12】
前記支持層の厚さD1は、1μm≦D1≦15μmを満たし、及び/又は、
前記支持層の常温ヤング率Eは、20GPa≧E≧1.9GPaを満たし、及び/又は、
前記導電層には、亀裂がある、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電極シート。
【請求項13】
電気接続部材の厚さと導電層の片面の厚さD2との間の差は、15μm以下である、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電極シート。
【請求項14】
正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を含む電気化学装置であって、
前記正極シート及び/又は前記負極シートは、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電極シートである、
電気化学装置。
【請求項15】
請求項14に記載の電気化学装置を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年6月28日に提出された「電極シート及び電気化学装置」という発明名称の中国発明特許出願201910580214.3の優先権を主張し、その全ての内容は本文に援用される。
【0002】
本願は、電池分野に関し、具体的に、電極シート、電気化学装置及びその装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高出力電力、長いサイクル寿命、少ない環境汚染等の利点を有するため、電気自動車及び消費系電子製品に広く適応されている。リチウムイオン電池の適応範囲が拡大し続けるに従い、リチウムイオン電池の重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度に対する要求もますます高くなっている。
【0004】
高い質量エネルギー密度及び体積エネルギー密度のリチウムイオン電池を得るために、一般的に、リチウムイオン電池に対して、(1)高い放電比容量の正極材料又は負極材料を選択することと、(2)リチウムイオン電池の機械設計を最適化して、その体積を最小化することと、(3)高い圧密度の正極シート又は負極シートを選択することと、(4)リチウムイオン電池の各部材を軽量化することのような改善を行う。
【0005】
集電体に対する改善は、一般的に、軽い重量又は薄い厚さの集電体を選択し、例えば、穴あき集電体又は金属層メッキのプラスチック集電体等を使用することができる。
【0006】
金属層メッキのプラスチック集電体(複合集電体)を使用した電極シート及び電池は、エネルギー密度が向上されるが、加工性能及び電気化学的性能等に関するいくつかの問題又は性能劣化をもたらす可能性がある。良好な電気化学的性能の電極シート及び集電体を取得するために、より多くの方面の改善が必要となっている。
【0007】
従来技術の不足を克服するために、本願を特に提出する。
【発明の概要】
【0008】
上記に鑑み、本願の一部の実施例は、電極シート、電気化学装置及びその装置を提供する。
【0009】
第1の態様において、本願は、電極シートを提供し、それは、集電体、前記集電体の少なくとも1つの表面に設けられる電極活性材料層、及び前記集電体に電気的に接続される電気接続部材を備え、そのうち、前記電極活性材料層は、前記集電体の本体部に設けられ、当該領域はフィルム領域と呼ばれており、前記電気接続部材と前記集電体とは、前記集電体の縁端部において溶接接続され、当該溶接領域は中継溶接領域と呼ばれており、前記フィルム領域と中継溶接領域との間の集電体における電極活性材料層が塗布されていない遷移領域は、延在領域と呼ばれており、前記集電体は、支持層、及び支持層の少なくとも1つの表面に設けられる導電層を備え、前記導電層の片面の厚さD2は、30nm≦D2≦2μmを満たし、前記支持層は、高分子材料層又は高分子複合材料層であり、前記電極シートは、内部短絡防止保護層をさらに備え、前記内部短絡防止保護層は、有機絶縁層であり、且つ、前記中継溶接領域における電気接続部材及び前記延在領域の少なくとも一部を覆う。
【0010】
第2の態様において、本願は、電気化学装置を提供し、それは、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を含み、そのうち、前記正極シート及び/又は負極シートは、本願の第1の態様に記載の電極シートである。
【0011】
第3の態様において、本願は、本願の第2の態様に記載の電気化学装置を備える装置をさらに提供し、前記電気化学装置は、前記装置の電源、又は前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられることが可能である。
【0012】
本願の技術案は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
第一、本願の電極シートは、複合集電体を使用し、当該複合集電体がを薄い導電層を有し、且つ支持層が高分子材料又は高分子複合材料であるため、電気化学装置のエネルギー密度、例えば重量エネルギー密度を顕著に改善することが可能である。
第二、当該複合集電体は、薄い導電層を有するため、釘刺し等の異常の場合、生成される金属バリが小さく、支持層として高分子材料又は高分子複合材料を有するため、釘刺し等の異常の場合、短絡抵抗が従来の金属集電体より大きく、これにより、電気化学装置の釘刺しの安全性能が大幅に改善される。
第三、複合集電体の導電層が薄い(例えば、アルミニウム箔又は銅箔のような従来の一般的な金属箔集電体に比べる場合)ため、中継溶接領域において、導電層が溶けて落ちやすく、電池の加工及び使用過程において金属粒子が生成されやすい。金属粒子がフィルム領域に落ちる場合、電池の自己放電が発生され、内部短絡さえ発生される。本願の電極シートは、前記中継溶接領域における電気接続部材及び前記延在領域の少なくとも一部を覆う有機絶縁頂部塗布層、即ち内部短絡防止保護層を備える。当該内部短絡防止保護層の存在は、金属粒子がフィルム領域に落ちることを防止し、複合集電体を使用する電気化学装置の安全性を大幅に改善する。
【0013】
したがって、本願の電極シート、及び当該電極シートを備える電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)は、良好なエネルギー密度及び高い安全性能を兼ね備える。
【0014】
本願の装置は,本願に係る電気化学装置を備えるため、少なくとも前記電気化学装置と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照して、本願の電極シート、電気化学装置及びその装置を詳細に説明する。
【0016】
図1】本願の1つの具体的な実施形態の正極集電体の構成断面概略図である。
図2】本願の別の具体的な実施形態の正極集電体の構成断面概略図である。
図3】本願の別の具体的な実施形態の正極集電体の構成断面概略図である。
図4】本願の別の具体的な実施形態の正極集電体の構成断面概略図である。
図5】本願のいくつかの具体的な実施形態の負極集電体の構成断面概略図である。
図6】本願の別の具体的な実施形態の負極集電体の構成断面概略図である。
図7】本願の別の具体的な実施形態の負極集電体の構成断面概略図である。
図8】本願の別の具体的な実施形態の負極集電体の構成断面概略図である。
図9】本願の1つの具体的な実施形態の正極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図10】本願の別の具体的な実施形態の正極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図11】本願の別の具体的な実施形態の正極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図12】本願の別の具体的な実施形態の正極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図13】本願の1つの具体的な実施形態の負極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図14】本願の別の具体的な実施形態の負極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図15】本願の別の具体的な実施形態の負極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図16】本願の別の具体的な実施形態の負極シートのフィルム領域の構成断面概略図である。
図17A】本願の1つの具体的な実施形態の正極シートの構成上面概略図である。
図17B】本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成上面概略図である。
図17C】本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成上面概略図である。
図17D】本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成上面概略図である。
図18A図17A乃至図17Dに示すいくつかの具体的な実施形態(例えば図17C)の正極シートの構成断面概略図である。
図18B】本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図である。
図18C】本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図である。
図18D】本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図である。
図18E】本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図である。
図19】本願のいくつかの具体的な実施形態の正極シートの構成上面概略図である。
図20】本願の一実施形態に係る電気化学装置をリチウムイオン二次電池とする斜視図である。
図21図20に示すリチウムイオン二次電池の分解図である。
図22】本願の一実施形態に係る電池モジュールの斜視図である。
図23】本願の一実施形態に係る電池パックの斜視図である。
図24図23に示す電池パックの分解図である。
図25】本願の1つの具体的な実施形態に係る装置の概略図である。
【0017】
ここで、図面符号の説明は以下である。
1 電池パック
2 上部筐体
3 下部筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 外装
52 電極アセンブリ
53 トップカバーアセンブリ
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体的な実施形態を参照して、本願をさらに説明する。理解すべきことは、これらの具体的な実施形態は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するためのものではない。
【0019】
本願の第1の態様は、電極シートに関し、それは、集電体、前記集電体の少なくとも1つの表面に設けられる電極活性材料層、及び前記集電体に電気的に接続される電気接続部材を備え、前記電極活性材料層は、前記集電体の本体部に設けられ、当該領域はフィルム領域と呼ばれており、前記電気接続部材と前記集電体とは、前記集電体の縁端部において溶接接続され、当該溶接領域は中継溶接領域と呼ばれており、前記フィルム領域と中継溶接領域との間の集電体における電極活性材料層が塗布されていない遷移領域は、延在領域と呼ばれており、前記集電体は、支持層、及び支持層の少なくとも1つの表面に設けられる導電層を備え、前記導電層の片面の厚さD2は、30nm≦D2≦2μmを満たし、前記支持層は、高分子材料層又は高分子複合材料層であり、前記電極シートは、内部短絡防止保護層をさらに備え、前記内部短絡防止保護層は、有機絶縁層であり、且つ、前記中継溶接領域における電気接続部材及び前記延在領域の少なくとも一部を覆う。
【0020】
当然のことながら、前記電極シートは、正極シート又は負極シートであってもよい。電極シートが正極シートである場合、それに応じて、当該電極シートの集電体及び電極活性材料層は、それぞれ、正極集電体及び正極活性材料層である。電極シートが負極シートである場合、それに応じて、当該電極シートの集電体及び電極活性材料層は、それぞれ、負極集電体及び負極活性材料層である。
【0021】
本願の第1の態様に記載の前記電極シートに用いられる集電体は、複合集電体であり、それは、少なくとも2種類の材料の複合により形成される。構造から見ると、前記集電体は、支持層、及び支持層の少なくとも1つの表面に設けられる導電層を備え、前記導電層の片面の厚さD2は、30nm≦D2≦2μmを満たす。したがって、前記集電体において、導電作用を果たすものは、導電層である。当該導電層の厚さD2が、従来技術の常用のAl箔又はCu箔等のような金属集電体の厚さ(常用のAl箔、Cu箔の金属集電体の厚さは一般的に12μm及び8μmである)よりはるかに小さいため、当該電極シートを使用する電気化学装置(例えば、リチウム電池)の重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を向上させることができる。なお、当該複合集電体は、薄い導電層を有するため、電極シートの釘刺しの安全性能を大幅に改善することができ、釘刺し等の異常の場合、生成される金属バリが小さく、また、支持層として高分子材料又は高分子複合材料を有するため、釘刺し等の異常の場合、短絡抵抗が従来の金属集電体より大きく、これらの要因が共に作用を果たして、電気化学装置の釘刺しの安全性能が大幅に改善される。
【0022】
しかしながら、複合集電体の導電層が薄い(例えば、アルミニウム箔又は銅箔のような従来の一般的な金属箔集電体に比べる場合)ため、中継溶接領域において、導電層が溶けて落ちやすく、電池の加工及び使用過程において金属粒子が生成されやすい。金属粒子がフィルム領域に落ちる場合、電池の自己放電が発生され、内部短絡さえ発生される。これらの問題を解決するために、本願の電極シートは、前記中継溶接領域における電気接続部材及び前記延在領域の少なくとも一部を覆う有機絶縁頂部塗布層、即ち内部短絡防止保護層を備える。当該内部短絡防止保護層の存在は、金属粒子がフィルム領域に落ちることを防止し、複合集電体を使用する電気化学装置の安全性を大幅に改善する。
【0023】
本願の電気化学装置は、上記電極シートを備えるため、良好なエネルギー密度及び良好な安全性を有することができ、これにより、優れた総合性能の電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の提供が可能になっている。
【0024】
また、このような複合集電体は、導電層が薄いため、従来の金属集電体(Al箔又はCu箔)に比べて、導電性が低く、導電層が電極シートの加工過程において破損されやすく、さらに電気化学装置の電気化学的性能に影響を及ぼす。したがって、本願のいくつかの好ましい実施形態に係る電極シートは、複合集電体の導電層の1つの表面又は複合集電体の導電層の2つの表面に、保護層が設けられており、即ち、導電層における支持層から離れる表面又は/及び支持層に対向する表面に、保護層が設けられている。保護層は、金属保護層又は金属酸化物保護層であってもよい。保護層は、集電体の導電層が化学的腐食又は機械的損傷により破損されることを防止することができ、また、集電体の機械的強度を向上させることができる。複合集電体の導電層の表面に保護層が設けられている場合、中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することができる。
【0025】
また、本願のいくつかの好ましい実施形態に係る電極シートは、複合集電体の延在領域に、支持保護層が設けられており、前記支持保護層は、有機絶縁層又は無機絶縁層である。支持保護層の設置は、複合集電体の延在領域の機械的強度及び硬度(本願に係る複合集電体は、従来の金属集電体に比べて、機械的強度が低く、湾曲、変形等が発生されやすい)を改善できるため、中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することができる。また、延在領域に支持保護層が配置されているため、タブの根部において発生しやすい電池内短絡による自己放電又は故障を防止することも可能である。
【0026】
また、複合集電体は、支持層(高分子材料又は高分子複合材料)のリバウンド程度が従来の金属集電体より大きいため、若し従来のプロセスに従って、複合集電体の表面を塗布した後にロールプレスプロセスにより圧密を行う場合、一連の他の問題を引き起こす可能性もある。支持層のリバウンドにより、電極シートの両側の縁端部が浮き上がってしまい、電極シート全体が湾曲されるため、電極シートが変形されてしまう。電極シートの変形は、電極活性材料層と複合集電体との分離、導電層の破損、導電層の支持層からの剥離等を引き起こし、さらに電極シートの電気化学的性能が劣化される可能性がある。一方で、電極シートの変形により、正極シートと負極シートとを正確に位置合わせることもできない。したがって、複合集電体により製造される電極シートは、内部抵抗が大きく、分極が大きい等の技術的問題を容易に生じる。また、電極シートの変形は、中継溶接領域の溶接品質の低下を生じる。従来技術において、複合集電体による電極シートの変形の問題を解決するために、一般的に、活性材料のスラリーの乾燥過程又はロールプレス過程において、いくつかの特別な技術手段を使用して応力を解放し、或いは、従来のプロセスを使用して歩留まりを犠牲にしなげればならない。これに鑑み、本願の好ましい実施形態において、電極シートの厚さ方向の材料分布を設計する以外にも、電極シートの活性材料層の横方向(即ち、電極シートの表面に平行な方向)の材料分布を特別に設計する。本願の当該好ましい実施形態によれば、電極シートの電極活性材料層は、圧密度を基に、電極シートの幅方向(即ち、塗布方向に対して垂直な方向)に沿って分布される2n+1個(例えば、3個)の領域を含み、且つ、中間領域の圧密度が両側領域の圧密度より高く、このような特殊な区画設計は、ロールプレス等による複合集電体及び電極シートの湾曲及びエッジ反りを効果的に抑制できるため、電極シートがロールプレスされた後に依然として良好な電極シートの平坦度を保持できるようにし、電極シートの内部抵抗が大きく、分極が大きい等の技術的問題を解消又は減少させ、且つ導電層が破損されにくく、これにより、電極シート及び電気化学装置が良好な電気化学的性能を有するようにする。また、中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することも可能である。
【0027】
以下、本願の第1の態様に係る電極シート(及びその集電体)の構造、材料及び性能等を詳細に説明する。
【0028】
集電体の導電層
本願の一実施形態に係る集電体は、従来の金属集電体に比べて、導電層が、導電及び集電の作用を果たし、電極活性材料層のために電子を提供する。
【0029】
導電層の材料は、金属導電性材料、炭素系導電性材料から選択される少なくとも1種類である。
【0030】
前記金属導電性材料は、好ましくは、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、銀、ニッケル銅合金、アルミニウムジルコニウム合金のうちの少なくとも1種類である。
【0031】
前記炭素系導電性材料は、好ましくは、黒鉛、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの少なくとも1種類である。
【0032】
導電層の材料は、好ましくは、金属導電性材料であり、即ち、導電層は、好ましくは、金属導電層である。そのうち、集電体が正極集電体である場合、一般的に導電層の材料としてアルミニウムを使用し、集電体が負極集電体である場合、一般的に導電層の材料とて銅を使用する。
【0033】
導電層の導電性が低い又は導電層の厚さが小さ過ぎると、電池の内部抵抗が大きく、分極が大きくなってしまい、導電層の厚さが大き過ぎると、電池の重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を改善するという効果を発揮することができない。
【0034】
前記導電層の片面の厚さは、D2であり、D2は、好ましくは、30nm≦D2≦2μmを満たし、より好ましくは、300nm≦D2≦2μmを満たし、最も好ましくは、500nm≦D2≦1.5μmを満たし、これにより、集電体の軽量性能及び良好な導電性能を兼ね備えることをよりよく保証することができる。
【0035】
本願の好ましい実施形態において、導電層の片面の厚さD2の上限は、2μm、1.8μm、1.5μm、1.2μm、1μm、900nmであってもよく、導電層の片面の厚さD2の下限は、800nm、700nm、600nm、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、100nm、50nm、30nmであってもよく、導電層の片面の厚さD2の範囲は、上限又は下限の任意の数値で構成されてもよい。好ましくは、300nm≦D2≦2μmであり、より好ましくは、500nm≦D2≦1.5μmである。
【0036】
本願において、導電層の厚さが小さいため、電極シートの製造等の過程において、亀裂等の破損が発生されやすい。一般的に、本願に記載の電極シートの導電層には亀裂が存在する。導電層中の亀裂は、一般的に導電層に不規則に存在し、それは、長帯状の亀裂であってもよく、クロス型の亀裂であってもよく、発散状の亀裂等であってもよく、導電層全体を貫通する亀裂であってもよく、導電層の表層に形成される亀裂であってもよい。導電層中の亀裂は、一般的に、電極シートの加工過程でのロールプレス、タブを溶接する際の振幅が大き過ぎること、基材の巻取の張力が大き過ぎること等に起因する。
【0037】
導電層は、機械的ロールプレス、接着、気相蒸着法(vapor deposition)、化学めっき(Electroless plating)、電気めっきのうちの少なくとも1種類により支持層上に形成されることができ、気相蒸着法は、好ましくは、物理気相蒸着法(Physical Vapor Deposition、PVD)であり、物理気相蒸着法は、好ましくは、蒸発法、スパッタリング法のうちの少なくとも1種類であり、蒸発法は、好ましくは、真空蒸着法(vacuum evaporating)、熱蒸着法(Thermal Evaporation Deposition)、電子ビーム蒸発法(electron beam evaporation method、EBEM)のうちの少なくとも1種類であり、スパッタリング法は、好ましくは、マグネトロンスパッタ法(Magnetron sputtering)である。
【0038】
支持層と導電層との間の結合をより強くするように、気相蒸着法、電気メッキ又は化学めっきのうちの少なくとも1種類が好ましい。
【0039】
集電体の支持層
本願の実施形態の集電体において、支持層は、導電層に対して、支持及び保護の役割を果たす。支持層が一般的に有機高分子材料又は高分子複合材料を使用するため、支持層の密度は一般的に導電層の密度より小さく、これにより、従来の金属集電体に比べて、電池の重量エネルギー密度を顕著に向上させることができる。
【0040】
金属層として、比較的薄い厚さの金属層を使用するため、電池の重量エネルギー密度をさらに向上させることができる。また、支持層は、その表面に位置する導電層に対して、良好な支持及び保護作用を果たすことができるため、従来の集電体においてよく見られる電極シートの断裂現象が発生しにくい。
【0041】
前記支持層の材料は、絶縁高分子材料、絶縁高分子複合材料、導電性高分子材料、導電性高分子複合材料から選択される少なくとも1種類である。
【0042】
絶縁性高分子材料は、例えば、ポリアミド、ポリテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アラミド、ポリフタルアミド、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、エチレンプロピレンゴム、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、シリコーンゴム、ポリカーボネート、セルロース及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその架橋物、ポリエチレングリコール及びその架橋物から選択される少なくとも1種類である。
【0043】
絶縁高分子複合材料は、例えば、絶縁高分子材料及び無機材料で形成される複合材料から選択され、そのうち、無機材料は、好ましくは、セラミック材料、ガラス材料、セラミック複合材料のうちの少なくとも1種類である。
【0044】
導電性高分子材料は、例えば、ポリ窒化硫黄系高分子材料又はドーピングされた共役系高分子材料から選択され、例えば、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等のうちの少なくとも1種類である。
【0045】
導電性高分子複合材料は、例えば、絶縁高分子材料及び導電性材料で形成される複合材料から選択され、そのうち、導電性材料は、導電性炭素材料、金属材料、複合導電性材料から選択される少なくとも1種類であり、導電性炭素材料は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、アセチレンブラック、グラフェンから選択される少なくとも1種類であり、金属材料は、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム又は上記金属の合金から選択される少なくとも1種類であり、複合導電性材料は、ニッケルで被覆される黒鉛粉、ニッケルで被覆されるた炭素繊維から選択される少なくとも1種類である。
【0046】
当業者は、適応環境の実際の需要及びコスト等の要因に基づいて、支持層の材料を合理的に選択して決定することができる。本願において、前記支持層の材料は、好ましくは、絶縁高分子材料又は絶縁高分子複合材料であり、特に、集電体が正極集電体である場合、前記支持層の材料は、絶縁高分子材料又は絶縁高分子複合材料であることが好ましい。
【0047】
集電体が正極集電体である場合、絶縁層により支持され且つ特定の厚さを有する導電層を備えた複合集電体を使用することにより、電池の安全性を明らかに改善することができる。絶縁層が非導電性であるため、その抵抗が大きく、異常の場合、電池において短絡が発生される際の短絡抵抗を向上させて、短絡電流を大幅に低減させることができ、これにより、短絡時の発生熱量を大幅に低減させることができ、電池の安全性能を改善させることができる。また、導電層が薄いため、釘刺し等の異常の場合、局所的な導電ネットワークが切断され、電気化学装置の大面積ひいては電気化学装置全体に内部短絡が発生されることを防止し、また、これは、釘刺し等による電気化学装置の損傷を刺し通す部位に限定することができ、「点遮断」のみを形成し、電気化学装置の一定時間内の正常な動作に影響を及ぼさない。
【0048】
支持層の厚さは、D1であり、D1は、好ましくは、1μm≦D1≦20μmを満たし、より好ましくは、1μm≦D1≦15μmを満たす。
【0049】
支持層の含有量が適切であるため、支持層の機械的強度は、電極シートの加工プロセスに適し、集電体の電池の体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0050】
支持層の厚さD1は、上限が、20μm、15μm、12μm、10μm、8μmであってもよく、下限が、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmであってもよく、支持層の厚さD1の範囲は、上限又は下限の任意の数値で構成される。好ましくは、1μm≦D1≦15μmであり、より好ましくは、2μm≦D1≦10μmであり、最も好ましくは、3μm≦D1≦8μmである。
【0051】
同時に、本願の特定の厚さは、当該集電体が大きな抵抗を有することをさらに保証することができ、電池に内部短絡が発生される際の電池の昇温を顕著に低減させ、導電層がアルミニウムである場合、正極集電体のテルミット反応を顕著に減少又は防止することができるため、電池が良好な安全性能を有することを保証することができる。
【0052】
なお、導電層が金属導電層である場合、好ましくは、支持層の常温ヤング率は、20GPa≧E≧1.9GPaを満たす。
【0053】
本願において、前記支持層の常温ヤング率の測定方法は、以下の通りである。
支持層のサンプルを15mm×200mmに切断し、マイクロメータによりサンプルの厚さh(μm)を測定し、常温常圧下で高速レールテンショナにより引張試験を行い、初期位置を設定し、治具間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が50mm/minであり、破断になるまで引張った際の負荷L(N)、装置の変位y(mm)を記録すると、応力 ε=L/(15×h)×1000、ひずみ η=y/50×100であり、応力-ひずみ曲線を描き、初期線形領域の曲線を取ると、当該曲線の勾配がヤングEである。
【0054】
金属が高分子又は高分子複合材料より剛性が高く、即ち電極シートの加工のロールプレス等の過程において変形が小さいため、支持層と導電層との間の変形の差の大き過ぎによる導電層の破裂を防止するために、前記支持層の常温ヤング率は、20GPa≧E≧1.9Gpaであることが好ましく、好ましくは、20GPa≧E≧4Gpaであり、これにより、支持層が一定の剛性を有するようにし、且つ支持層と導電層との間の剛性整合性をさらに向上させることができ、集電体、電極シートの加工過程において、支持層と導電層との変形量の差が大きくならないよう保証することができる。
【0055】
支持層が一定の剛性(20GPa≧E≧1.9GPa)を有するため、集電体、電極シートの加工過程において、集電体が変形しにくいか又は延伸し過ぎず、これにより、支持層と導電層との間の結合をより強くして、離脱しにくくし、且つ導電層が「強制的」に広がって破損されることを防止することができる。また、本願の集電体は、一定の靭性を有するため、集電体及び電極シートが一定の変形に耐える能力を有するようにして、断裂しにくくすることができる。
【0056】
しかしながら、支持層は、ヤング率が大き過ぎになってはいけない。ヤング率が大き過ぎる場合、剛性が強過ぎ、巻き取り及び巻回しが困難になり、加工性が悪くなる。20GPa≧Eである場合、支持層が一定の柔軟性を有するよう保証することができ、さらに電極シートが一定の変形に耐える能力を有するよう保証することができる。
【0057】
なお、90℃での支持層の熱収縮率は、1.5%以下であることが好ましいため、電極シートの加工過程において、集電体の熱安定性をよりよく保証することができる。
【0058】
集電体の保護層
本願のいくつかの好ましい実施形態において、前記集電体には、さらに、保護層が配置されており、前記保護層は、前記集電体における導電層の1つの表面に設けられるか前記集電体における導電層の2つの表面に設けられており、即ち、導電層における支持層から離れる表面及び支持層に対向する表面に設けられている。
【0059】
保護層は、金属保護層又は金属酸化物保護層であってもよい。保護層は、集電体の導電層が化学的腐食又は機械的損傷によって破損されることを防止することができ、また、集電体の機械的強度を向上させることができるため、集電体及び電極シートの電流通過能力を改善することができ、さらに、中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することができる。
【0060】
保護層は、集電体における導電層の2つの表面に設けられることが好ましい。導電層の下部保護層(即ち、導電層における支持層に対向する表面に設けられる保護層)は、導電層が損傷されることを防止し、集電体の機械的強度を向上させることができるだけでなく、支持層と導電層との間の結合力を向上させ、フィルム分離(即ち、支持層と導電層との分離)を防止することができる。
【0061】
導電層の上部保護層(即ち、導電層における支持層から離れる表面に設けられる保護層)の技術的効果とは、主に、加工過程において導電層の破壊や腐食等(例えば、電解液浸漬、ロールプレス等はいずれも導電層の表面に影響を及ぼす)を防止することである。本願の好ましい電極シートは、導電性下塗り層によって、ロールプレス、巻回し等の過程において起こり得る導電層の亀裂を修復し、導電性を向上させ、当該複合集電体が集電体としての不足を補うため、導電層の上部保護層は、導電性下塗り層と協働してさらに導電層に対する保護作用を提供することができ、複合集電体を集電体とする導電効果を共に改善することができる。
【0062】
金属保護層は、良好な導電性を有するため、導電層の機械的強度及び耐食性をさらに改善できるだけでなく、電極シートの分極を低減することができる。前記金属保護層の材料は、例えば、ニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金から選択される少なくとも1種類であり、好ましくは、ニッケル又はニッケル系合金である。
【0063】
そのうち、ニッケル系合金は、純ニッケルをベースとして、1種類又は複数種類の他の元素を添加して構成される合金である。好ましくは、ニッケルクロム合金であり、ニッケルクロム合金は、金属ニッケル及び金属クロムで形成される合金であり、選択的に、ニッケル元素とクロム元素とのモル比は、1:99~99:1である。
【0064】
銅系合金は、純銅をベースとして、1種類又は複数種類の他の元素を添加して構成される合金である。好ましくは、銅ニッケル合金であり、選択的に、銅ニッケル合金において、ニッケル元素と銅元素とのモル比は、1:99~99:1である。
【0065】
保護層に金属酸化物が用いられる場合、金属酸化物の延性が小さく、比表面積が大きく、硬度が大きいため、同じく、導電層に対して効果的な支持及び保護を形成することができ、支持層と導電層との間の結合力の改善に対して良好な技術的効果を有することができる。金属酸化物保護層の材料は、例えば、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケルから選ばれる少なくとも1種類である。
【0066】
本願の複合集電体は、正極集電体とされる場合、保護層に金属酸化物を使用することが好ましく、これにより、良好な支持及び保護の技術的効果を達成すると同時に、正極シート及び電池の安全性能をさらに改善する。本願の複合集電体は、負極集電体とされる場合、保護層に金属を使用することが好ましく、これにより、良好な支持及び保護の技術的効果を達成すると同時に、電極シートの導電性及び電池の動力学的性能をさらに改善し、電池の分極を低減させる。本願の複合集電体は、負極集電体とされる場合、保護層が金属保護層及び金属酸化物保護層の二層保護層を含むことがより好ましく、好ましくは、導電層の表面に金属保護層を配置し、金属保護層の表面にさらに金属酸化物保護層を配置し、当該二層保護層は、負極集電体の導電性能、耐腐食性能及び機械的破壊防止等の作用をよりよく果たすことができる。
【0067】
前記保護層の厚さは、D3であり、D3は、D3≦1/10×D2、且つ、1nm≦D3≦200nmを満たすことが好ましい。保護層が薄過ぎると、導電層を保護する作用を果たすことができず、保護層が厚過ぎると、電池の重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を低下させる。より好ましくは、5nm≦D3≦500nmであり、より好ましくは、10nm≦D3≦200nmであり、最も好ましくは、10nm≦D3≦50nmである。
【0068】
導電層の2つの表面に位置する保護層の材料は、同じであってもよく、異なってもよく、厚さは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0069】
好ましくは、下部保護層の厚さは、上部保護層の厚さより薄く、これにより、電池の重量エネルギー密度の改善に有利である。
【0070】
さらに好ましくは、下部保護層の厚さD3”と上部保護層の厚さD3’との比率関係は、1/2×D3’≦D3”≦4/5×D3’である。
【0071】
集電体が正極集電体である場合、一般的にアルミニウムを導電層の材料として使用し、下部保護層は、好ましくは、金属酸化物材料を使用する。下部保護層の材料は、金属酸化物材料を使用する場合、金属を使用する場合に比べて、大きな抵抗を有するため、当該種類の下部保護層は一定の程度で正極集電体の抵抗をさらに増大させることができ、これにより、異常の場合、電池において短絡が発生される際の短絡抵抗をさらに向上させ、電池の安全性能を改善することができる。また、金属酸化物の比表面積がより大きいため、金属酸化物材料の下部保護層と支持層との間の結合力が向上される。同時に、金属酸化物の比表面積がより大きいため、下部保護層は、支持層の表面の粗さを増加させることができ、導電層と支持層との間の結合力を向上させる作用を果たし、これにより、集電体全体の強度を向上させ、さらに中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することができる。
【0072】
集電体が負極集電体である場合、一般的に銅を導電層の材料として使用し、保護層は、金属材料を使用することが好ましい。より好ましくは、少なくとも一層の金属保護層を備えた上で、上部保護層及び下部保護層のうちの少なくとも1つが金属酸化物保護層をさらに備え、これにより、負極複合集電体の導電性及び界面結合力を同時に改善し、さらに中継溶接領域での溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することができる。
【0073】
集電体
図1乃至図8は、本願のいくつかの実施形態に係る電極シートに用いられる集電体の構造概略図を示す。
【0074】
正極集電体の概略図は、図1乃至図4に示す通りである。。
【0075】
図1において、正極集電体10は、正極集電体支持層101、及び正極集電体支持層101における対向する2つの表面に設けられる正極集電体導電層102を備え、さらに、正極集電体導電層102の下面(即ち、正極集電体支持層101に面する面)に設けられる正極集電体保護層103、即ち下部保護層を備える。
【0076】
図2において、正極集電体10は、正極集電体支持層101、及び正極集電体支持層101における対向する2つの表面に設けられる正極集電体導電層102を備え、さらに正極集電体導電層102における対向する2つの表面に設けられる正極集電体保護層103、即ち下部保護層及び上部保護層を備える。
【0077】
図3において、正極集電体10は、正極集電体支持層101、及び正極集電体支持層101の1つの表面に設けられる正極集電体導電層102を備え、さらに正極集電体導電層102における正極集電体支持層101に面する面に設けられる正極集電体保護層103、即ち下部保護層を備える。
【0078】
図4において、正極集電体集電体10は、正極集電体支持層101、及び正極集電体支持層101の1つの表面に設けられる正極集電体導電層102を備え、さらに正極集電体導電層102における対向する2つの表面に設けられる正極集電体保護層103、即ち下部保護層及び上部保護層を含む。
【0079】
同様に、負極集電体の概略図は、図5乃至図8に示す通りである。
【0080】
図5において、負極集電体20は、負極集電体支持層201、及び負極集電体支持層201における対向する2つの表面に設けられる負極集電体導電層202を備え、さらに負極集電体導電層202における負極集電体支持層201に面する面に設けられる負極集電体保護層203、即ち下部保護層を備える。
【0081】
図6において、負極集電体20は、負極集電体支持層201、及び負極集電体支持層201における対向する2つの表面に設けられる負極集電体導電層202を備え、さらに負極集電体導電層202における対向する2つの表面に設けられる負極集電体保護層203、即ち下部保護層及び上部保護層を備える。
【0082】
図7において、負極集電体20は、負極集電体支持層201、及び負極集電体支持層201の1つの表面に設けられる負極集電体導電層202を備え、さらに負極集電体導電層202における負極集電体支持層201に面する方向に設けられる負極集電体保護層203、即ち下部保護層を備える。
【0083】
図8において、負極集電体20は、負極集電体支持層201、及び負極集電体支持層201の1つの表面に設けられる負極集電体導電層202を備え、さらに負極集電体導電層202における対向する2つの表面に設けられる負極集電体保護層203、即ち下部保護層及び上部保護層を備える。
【0084】
導電層における2つの対向する表面に位置する保護層の材料は、同じであってもよく、異なってもよく、厚さは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0085】
本願の電極シートに用いられる集電体は、図1図2図5図6に示すように、支持層における対向する2つの表面のいずれにも導電層が設けられてもよく、又は、図3図4図7図8に示すように、支持層の一面のみに導電層が設けられてもよい(図面に下部保護層のみを備える場合が示されているが、理解すべきことは、上部保護層のみを備えてもよい)。
【0086】
また、本願の電極シートに用いられる複合集電体は、図1乃至図8に示すように、集電体保護層を備えることが好ましいが、理解すべきことは、集電体保護層は、集電体の必要構成ではなく、いくつかの実施形態で用いられる集電体は、集電体保護層を備えていなくてもよい。
【0087】
電極シートの電極活性材料層
電極シートの電極活性材料層は、複合集電体の1つ又は2つの表面の主要な部分に設けられている(本願において、当該部分領域は、集電体のフィルム領域と呼ばれる)。また、いくつかの好ましい実施形態において、複合集電体と電極活性材料層との間には、さらに導電性下塗り層(後述する)が設けられている。本願の電極シートに用いられる電極活性材料層は、一般的に、電極活性材料、接着剤及び導電剤を含む。必要に応じて、電極活性材料層は、さらに、選択可能な他の添加剤又は助剤を含むことができる。
【0088】
正極シートは、本分野の常用の様々な電極活性材料(即ち、正極活性材料)を使用することができる。例えば、リチウム電池は、正極活性材料が、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、遷移金属リン酸塩、リン酸鉄リチウム等から選択されることができるが、本願は、これらの材料に限定されず、他のリチウムイオン電池の正極活物質として用いられる従来の周知の材料を用いることができる。これらの正極活性材料は、1種類のみを個別に使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。好ましくは、正極活性材料は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM 333)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM 523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM 622)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM 811)、LiNi0.85Co0.15Al0.05、LiFePO、LiMnPOから選択される1種類または複数種類である。
【0089】
負極シートは、本分野の常用の様々な電極活性材料(即ち、負極活性材料)を使用することができる。例えば、リチウム電池は、負極活性材料が、黒鉛(人造黒鉛又は天然黒鉛)、導電性カーボンブラック、炭素繊維等のような炭素質材料、Si、Sn、Ge、Bi、Sn、In等のような金属又は半金属材料又はその合金、リチウム含有窒化物又はリチウム含有酸化物、リチウム金属、又はリチウムアルミニウム合金等から選択されることができる。
【0090】
本願の電極シートは、電極活性材料層における活性材料の平均粒径D50が5~15μmであることが好ましい。D50が小さ過ぎると、圧密された後、電極シートの空孔率が小さく、電解液の浸潤に不利であり、且つ、その大きな比表面積により、電解液と多くの不良反応を発生しやすく、コアの信頼性を低下させる。D50が大き過ぎると、電極シートの圧密の過程において導電性下塗り層及び複合集電体に大きな損傷を与えやすい。D50とは、活性材料の累積体積百分率が50%に達する際に対応する粒径であり、即ち体積分布のメジアン径である。D50は、例えば、レーザー回折粒度分布測定器(例えば、Malvern Mastersizer 3000)を用いて測定することができる。
【0091】
電極活性材料層における導電剤は、導電性炭素材料、金属材料のうちの少なくとも1種類であってもよく、そのうち、導電性炭素材料は、アセチレンブラックや導電性カーボンブラックのようなゼロ次元導電性炭素、カーボンナノチューブのような一次元導電性炭素、導電性黒鉛やグラフェンのような二次元導電性炭素、還元後の酸化グラフェンのような三次元導電性炭素から選択される少なくとも1種類であり、金属材料は、アルミニウム粉末、鉄粉及び銀粉から選択される少なくとも1種類である。
【0092】
電極活性材料層における接着剤は、スチレンブタジエンゴム、油性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン共重合体(例えば、PVDF-HFP共重合体、PVDF-TFE共重合体)、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、水性PVDF、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸-ポリアクリロニトリル共重合体、ポリアクリル酸エステル-ポリアクリロニトリル共重合体から選択される少なくとも1種類である。
【0093】
当業者によく知られているように、電極活性材料、導電剤及び接着剤等で構成されるスラリーを電極集電体(又は電極集電体に予め塗布される下塗り層)に塗布し、さらに乾燥等の後処理を経て所望の電極活性材料層を得ることができる。
【0094】
従来の電極シートには、一層又は複数層の電極活性材料層が塗布されてもよいが、単層塗布又は多層塗布にかかわらず、電極シート表面全体の塗布領域内に、電極活性材料層が一般的に均一に塗布され、また、冷間圧延(ロールプレス)操作も電極シート表面全体に対して行われており、これにより得られる電極シートの電極活性材料層の圧密度もほぼ一致し、明らかな差がない。
【0095】
本願のいくつかの好ましい実施形態に係る電極シートは、前記電極シートが塗布される表面の幅方向から見ると、電極活性材料層が、圧密度を基に、2n+1(n=1、2又は3)個の領域を含み、且つ中間領域の圧密度が両側領域の圧密度より高く、好ましくは、n=1である。好ましい実施形態を例とすると、電極活性材料層は、圧密度を基に、3個の領域を含み、且つ中間領域の圧密度が両側領域の圧密度より高い。冷間圧延(ロールプレス)等の過程の後に、電極シートは、両側領域の圧密度が低く、中間領域の圧密度が高く、即ち、冷間圧延(ロールプレス)等の過程において電極シートの両側領域に印加される圧力が中間領域よりも小さく、これにより、電極シートの加工過程において複合集電体のリバウンドにより生成される複合集電体及び電極シートのエッジ反り及び湾曲を避けることができ、平坦な表面の電極シートを形成するのに有利であり、電気化学装置の電気化学的性能を保証するのに有利である。また、保護導電層が破損されにくいのに有利であるため、電極シートの良好な電流通過能力を保証し、さらに中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することができる。
【0096】
本願において、電極シートの表面の「長さ方向」及び「幅方向」とは、それぞれ、表面の2つの次元を指し、ここで、長さ方向とは、主要な次元方向(即ちサイズが大きい方向)を指し、幅方向とは、次に主要な次元方向(即ちサイズが小さい方向)を指す。一般的に、長さ方向は、電極シートの加工過程における各材料層(例えば電極活性材料層)の塗布方向と一致し、電気化学装置(例えば電池)の製造過程において電極シートの巻回方向と一致し、幅方向は、長さ方向に対して垂直な方向である。
【0097】
本願に係る圧密度を基にする活性材料層の2n+1個の領域を形成するために、区画塗布の方法を使用して実現することができ、即ち、バリア又はスペーサを利用して電極シートの表面に異なる領域(又は境界)を区画し、各領域に異なる重量の電極活性材料スラリーを塗布し、これにより、ロールプレスした後に異なる圧密度の活性材料層領域が形成される。なお、両側領域の圧密度は、同じであることが好ましく、このような設計は、電極シートの平坦度をよりよく保証するのに有利である。
【0098】
本願のいくつかの好ましい実施形態に係る電極シートは、電極活性材料層の総重量を基に、電極活性材料層における接着剤の含有量が、1wt%以上であることが好ましく、1.5wt%以上であることがより好ましく、2wt%以上であることが最も好ましい。本願の電極シートは、電極活性材料層における接着剤の含有量が高い場合、活性材料層と複合集電体との間の結合力を向上させることができるため、加工過程において支持層の大きなリバウンドにより複合集電体と電極活性材料層との間の結合力が劣化されることを抑制し、これにより、電極活性材料層が複合集電体と分離しにくいよう保証することができる。両者の間の結合力が足りないと、電池の内部抵抗が大きく、分極が大きくなり、電気化学的性能が悪くなる。また、活性材料層は、釘刺し等の異常の場合、高い結合力により、導電層に生成される金属バリを効果的に包んで、電池の釘刺しの安全性能を改善することができる。接着剤の含有量がこの範囲内に保持される場合、活性材料層と集電体との間の結合力が高いため、釘刺し等の異常の場合、活性材料層は導電層に生成される金属バリをより効果的に包み、これにより、電池の釘刺しの安全性能を改善することができる。
【0099】
電極シートの導電性下塗り層
本願において、複合集電体の表面は、塗布材料及び位置の相違に応じて、本体部に位置し且つ電極活性材料層を配置するのに用いられるフィルム領域と、縁端部に位置し且つ電気接続部材(タブとも呼ばれる)を溶接するのに用いられる中継溶接領域と、両者の間の遷移領域としての延在領域と、を含む三つの領域に区画されることができる。
【0100】
本願の好ましい実施形態において、複合集電体の延在領域の集電体の表面又は前記フィルム領域の複合集電体の表面には、接着剤及び導電性材料を含む導電性下塗り層が配置され、好ましくは、前記延在領域の表面及び前記フィルム領域の複合集電体の表面には、いずれにも、接着剤及び導電性材料を含む導電性下塗り層が配置されている。中継溶接領域における集電体の導電層の表面(一般的には溶接痕跡の下方)には、場合によって、導電性下塗り層を配置するか配置しなくてもよく(操作しやすくするために、先にタブを溶接してから材料層を設けると、導電性下塗り層を設置しなくてもよく、逆に、先に材料層を設けてからタブを溶接すると、導電性下塗り層を設けてもよく、導電性下塗り層を設けなくてもよい)。
【0101】
導電性下塗り層は、複合集電体の界面を改善することができ、複合集電体の導電性が低く、電流通過能力が低く、且つ複合集電体の導電層が破損されやすい等の欠点をよく克服することができ、集電体の表面を効果的に修復し、且つ集電体、導電性下塗り層及び活物質との間の導電ネットワークを構築することにより、電子輸送効率を向上させ、集電体及び電極活性材料層の抵抗を低下させ、これにより、コアの直流の内部抵抗を効果的に低下させ、コアの電力性能を向上させ、且つコアの長期間サイクル過程において大きな分極及びリチウム析出等の現象が発生しにくいよう保証し、即ち、コアの長期間信頼性が効果的に改善される。なお、複合集電体のフィルム領域における集電体表面と電極活性材料層との間の導電性下塗り層は、集電体と活物質との間の接着力を向上させることができ、電極活性材料層が複合集電体の表面により強く設けられるよう保証することができる。また、導電性下塗り層は、電極シートの電流通過能力及び電気化学的性能を改善することができ、導電性下塗り層は、導電層の界面を改善することにより、電極シート全体において電子をよりスムーズに伝導させることができ、分極を減少させ、電極シートの電流通過能力を増加させることができ、電極シートにおける電流分布が不均一であり、局所的分極が大きいという問題を良好に解決することができる。
【0102】
前記導電性下塗り層は、導電性材料及び接着剤を含む。前記導電性下塗り層の総重量を基にすると、導電性材料の重量百分率は、10%~99%であり、20%~80%であることが好ましく、50%~80%であることがより好ましい。前記接着剤の重量百分率は、1%~90%であり、20%~80%であることが好ましく、20%~50%であることがより好ましい。この割合は、電極シートの導電性、及び集電体と電極活性材料層との結合力の改善に有利である。前記導電性下塗り層は、導電性材料及び接着剤の以外にも、さらに、選択可能な他の添加剤又は助剤を含むことができる。
【0103】
導電性材料は、導電性炭素材料、金属材料のうちの少なくとも1種類であり、導電性下塗り層における導電性材料と活性材料層における導電剤とは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0104】
導電性炭素材料は、ゼロ次元導電性炭素(例えばアセチレンブラック、導電性カーボンブラック)、一次元導電性炭素(例えばカーボンナノチューブ)、二次元導電性炭素(例えば導電性黒鉛、グラフェン)、三次元導電性炭素(例えば還元後の酸化グラフェン)のうちの少なくとも1種類である。金属材料は、アルミニウム粉末、鉄粉及び銀粉から選択される少なくとも1種類である。
【0105】
好ましい導電性材料は、一次元導電性炭素材料又は二次元導電性炭素材料を含む。二次元導電性炭素材料を添加した後、電極シートの圧密過程において、導電性下塗り層における二次元導電性炭素材料は、「水平スライド」を発生させることができるため、緩衝作用を果たし、圧密過程において集電体の導電層に対する破壊を減少させ、さらに亀裂を減少させることができる。好ましい二次元導電性炭素材料の粒径D50は、0.01~0.1μmである。好ましくは、前記導電性材料における二次元導電性炭素材料の比率は、1wt%~50wt%である。また、一次元導電性炭素材料の形態が特殊であるため、添加後に導電性下塗り層の導電性を改善することができ、特に導電性材料の添加量が一定である場合、一次元導電性炭素材料は、他の種類の導電性材料に比べて、導電性下塗り層の導電性をより良好に改善することができる。カーボンナノチューブであることが好ましく、その長さ径比は、1000~5000であることが好ましい。
【0106】
好ましい導電性材料は、ゼロ次元導電性炭素材料と一次元導電性炭素材料との混合材料、又はゼロ次元導電性炭素材料と二次元導電性炭素材料との混合材料である。
【0107】
導電性下塗り層における接着剤と活性材料層における接着剤とは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0108】
導電性下塗り層における接着剤は、スチレンブタジエンゴム、油性ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン共重合体(例えばPVDF-HFP共重合体、PVDF-TFE共重合体)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、水性PVDF、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリアクリル酸-ポリアクリロニトリル共重合体、ポリアクリル酸エステル-ポリアクリロニトリル共重合体から選択される少なくとも1種類である。
【0109】
導電性下塗り層における接着剤は、水性接着剤であることが好ましく、例えば、水性PVDF、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸-ポリアクリロニトリル共重合体、ポリアクリル酸エステル-ポリアクリロニトリル共重合体のうちの少なくとも1種類であることが好ましく、これにより、電気化学装置のDCR(Direct Current Resistance、直流抵抗)の増加が小さい。
【0110】
本願において、「水性」高分子材料とは、高分子鎖が完全に展開されて水中に分散されることを指し、「油性」高分子材料とは、高分子鎖が完全に展開されて油性溶剤中に分散されることを指す。当業者に理解されるように、適切な界面活性剤を使用することにより、同じ種類の高分子材料をそれぞれ水中及び油中に分散させることができ、即ち、適切な界面活性剤を使用することにより、同じ種類の高分子材料をそれぞれ水性高分子材料及び油性高分子材料とすることができる。例えば、当業者であれば、必要に応じて、PVDFを水性PVDF又は油性PVDFに変性することができる。
【0111】
導電性下塗り層の片面の厚さHは、0.1μm乃至5μmであることが好ましい。好ましくは、H/D2は、0.5:1~5:1である。割合が小さ過ぎると、導電層の亀裂を改善し、電極シートの導電性能を改善する作用を効果的に果たすことができず、割合が大き過ぎると、電池の重量エネルギー密度を低下させるだけでなく、電池のDCRも増大させるため、電池の動力学性能の改善に不利である。
【0112】
本願の電極シートにおいて、前記集電体のフィルム領域における導電性下塗り層と前記集電体の延在領域における導電性下塗り層との材料の組成は、同じであってもよく、異なってもよく、厚さは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0113】
本願のさらに好ましい実施例において、複合集電体の延在領域における導電性下塗り層の厚さは、フィルム領域における導電性下塗り層の厚さより大きく、或いは、複合集電体の延在領域における導電性下塗り層の導電性材料の含有量は、フィルム領域における導電性下塗り層の導電性材料の含有量より高い。このような構成により、集電体の延在領域における電流通過能力をより良好に改善することができ、電極シート全体が高い重量エネルギー密度を有するよう保証することができる。
【0114】
電極シートの支持保護層
前記電極シートは、延在領域に位置する支持保護層をさらに備えることができる。前記支持保護層は、前記集電体の表面に直接に設けられてもよく、或いは、前記支持保護層は、延在領域の外部に導電性下塗り層が追加的に設けられる場合、導電性下塗り層の表面に設けられてもよい。
【0115】
複合集電体を使用するため、延在領域における集電体は、従来の金属集電体に比べて、導電層が薄く、これにより、例えば導電層の破損、折れによる断裂等のような破壊が発生しやすい。また、有機支持層の存在により、延在領域における集電体には、湾曲、変形等が発生しやすいため、中継溶接領域の溶接品質に影響を及ぼす。したがって、複合集電体の延在領域に支持保護層を配置する場合、複合集電体の延在領域の機械的強度及び硬度を改善し、集電体の延在領域の湾曲、変形の発生を防止し、延在領域の導電層の破損を防止し、中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することができる。
【0116】
前記支持保護層は、有機絶縁層又は無機絶縁層である。
【0117】
有機絶縁層は、絶縁テープ層又は絶縁性接着剤塗布層から選択されることができる。そのうち、絶縁性接着剤塗布層は、例えば、ポリフッ化ビニリデン層、ポリジフッ化ビニリデン層、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体層、スチレンブタジエンゴム層、カルボキシメチルセルロースナトリウム層、ポリアクリル酸層、ポリアクリル酸ナトリウム層、ポリエチレンオキシド層、ポリビニルアルコール層から選択される少なくとも1種類である。
【0118】
無機絶縁層は、酸化アルミニウム層、酸化マグネシウム層、酸化亜鉛層、酸化ケイ素層、酸化チタン層、酸化ジルコニウム層、窒化アルミニウム層、窒化ケイ素層、フッ化カルシウム層、フッ化バリウム層から選ばれる少なくとも1種類であってもよい。
【0119】
前記無機絶縁層は、絶縁性充填剤(好ましくは無機絶縁粒子)及び接着剤を含むことができ、そのうち、好ましい無機絶縁粒子は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化カルシウム、フッ化バリウムのうちの少なくとも1種類であり、好ましい接着剤は、ポリフッ化ビニリデン、ポリジフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールのうちの少なくとも1種類である。無機絶縁層における絶縁性充填剤の含有率は、一般的に50wt%以上であり、50wt%~98wt%であることが好ましくり、80wt%~98wt%であることが最も好ましく、これにより、当該層が一定の硬度及び機械的強度を有するよう保証し、接着剤の含有率は、一般的に50wt%未満であり、2wt%~50wt%であることが好ましく、2wt%~20wt%であることが最も好ましい。
【0120】
電極シートの内部短絡防止保護層
本願の電極シートの1つの重要な特徴として、前記電極シートはさらに内部短絡防止保護層を備え、前記内部短絡防止保護層は、有機絶縁層であり、且つ、前記中継溶接領域における電気接続部材及び前記延在領域の少なくとも一部を覆う。
【0121】
本願において、前記内部短絡防止保護層が「前記延在領域の少なくとも一部」を覆うこととは、延在領域に導電性下塗り層又は支持保護層が形成されている場合、内部短絡防止保護層が、前記延在領域における導電性下塗り層又は支持保護層の少なくとも一部を覆い、延在領域に任意の塗布層が形成されていない場合、内部短絡防止保護層が、前記延在領域における複合集電体の表面の少なくとも一部を覆うことを指す。
【0122】
例えば、前記内部短絡防止保護層は、透明絶縁テープ、有色絶縁テープ、透明絶縁性接着剤塗布層、有色絶縁性接着剤塗布層のうちの少なくとも1種類であってもよい。前記透明絶縁性接着剤塗布層又は有色絶縁性接着剤塗布層は、例えば、フェノール樹脂層、ポリ塩化ビニル層、ポリスチレン層、ポリエチレン樹脂層、エポキシ樹脂層、ポリアニリン層、ポリピロール層、ポリアセチレン層及びポリイミド層から選択される少なくとも1種類である。
【0123】
前述のように、当該内部短絡防止保護層の存在は、中継溶接領域の金属粒子がフィルム領域に落ちることを防止することができ、複合集電体を使用する電気化学装置の電気化学的性能及び安全性が大幅に改善される。
【0124】
好ましくは、前記内部短絡防止保護層は、有色絶縁テープ又は有色絶縁性接着剤塗布層から選択される。
【0125】
前記内部短絡防止保護層が有色絶縁テープ又は有色絶縁性接着剤塗布層である場合、その利点とは、レーザ切断によりタブを形成する際の切断効率を改善できることである。
【0126】
電極シートを加工する時に、製造効率を向上させるために、一般的に、まず複合集電体と電気接続部材とを電気的に接続させ、さらに中継溶接領域において内部短絡防止保護層を塗布し、最後に必要に応じて中継溶接領域、電気接続部材及び選択可能な複合集電体の延在領域に対してレーザ切断を行って、タブの形状を形成する。
【0127】
高分子材料又は高分子複合材料を含有して支持層とする複合集電体は、タブの成形過程において、従来の刃型による成形切断を利用する場合、刃面付着現象が発生しやすく、レーザによる成形切断を利用する場合、低電力レーザを使用すると、接着が発生しやすく且つ切断効率が低く、レーザ電力を向上させると、金属層の焦げ及びポリマー層の溶融のような不良現象が引き起こされる。
【0128】
したがって、前記内部短絡防止保護層が有色絶縁テープ又は有色絶縁性接着剤塗布層から選択される場合、内部短絡防止保護層の透光率が小さいと、より多くのレーザエネルギーを吸収することができるため、複合集電体に対する切断効率の改善に有利である。
【0129】
有色絶縁テープ又は有色絶縁性接着剤塗布層を得るために、好ましくは、絶縁テープ又は絶縁性接着剤塗布層に着色剤を添加して実現することができる。即ち、前記有色絶縁テープ又は有色絶縁性接着剤塗布層に着色剤を含有することが好ましく、前記着色剤は、カーボンブラック、コバルトブルー、群青、酸化鉄、カドミウムレッド、クロムオレンジ、モリブデンオレンジ、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ニッケルチタンイエロー、チタンホワイト、リトポン、亜鉛華、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴイド顔料及び金属錯体顔料から選択される1種類又は複数種類であり、好ましくは、カーボンブラックである。
【0130】
電極シート
本願の電極シートは、本分野の常用の様々な方法により製造することができる。例えば、まず複合集電体を準備し、さらに導電性下塗り層用スラリーを調製し、導電性下塗り層用スラリーを複合集電体の1つ又は2つの表面に塗布する。乾燥させた後、さらに電極活性材料層用スラリーを塗布し、その後に乾燥させる。最後に、後処理、電気接続部材の溶接、及び内部短絡防止保護層の形成を経て、必要な電極シートが得られる。いくつかの実施形態において、まず複合集電体に電気接続部材を溶接した後、導電性下塗り層及び電極活性材料層を形成することができる。
【0131】
図9乃至図16は、本願のいくつかの実施形態に係る電極シートのフィルム領域の構成断面概略図を示す。
【0132】
正極シートのフィルム領域の概略図は、図9乃至図12に示す通りである。
【0133】
図9において、正極シートは、フィルム領域において、正極集電体10、及び正極集電体10における対向する2つの表面に設けられる正極活性材料層11を備え、正極集電体10は、正極集電体支持層101と、正極集電体支持層101における対向する2つの表面に設けられる正極集電体導電層102と、正極導電層102の一側又は両側に設けられる正極保護層103(図示せず)と、を備える。
【0134】
図10において、正極シートは、フィルム領域において、正極集電体10、及び正極集電体10の1つの表面に設けられる正極活性材料層11を備え、正極集電体10は、正極集電体支持層101と、正極集電体支持層101の1つの表面に設けられる正極集電体導電層102と、正極導電層102の一側又は両側に設けられる正極保護層103(図示せず)と、を備える。
【0135】
図11において、正極シートPPは、フィルム領域において、正極集電体10と、正極集電体10における対向する2つの表面に設けられる導電性下塗り層12及び正極活性材料層11と、を備え、正極集電体10は、正極集電体支持層101、及び正極集電体支持層101における対向する2つの表面に設けられる正極集電体導電層102を備える。
【0136】
図12において、正極シートPPは、フィルム領域において、正極集電体10と、正極集電体10の1つの表面に設けられる導電性下塗り層12及び正極活性材料層11と、を備え、正極集電体10は、正極集電体支持層101、及び正極集電体支持層101の1つの表面に設けられる正極集電体導電層102を備える。
【0137】
負極シートのフィルム領域の概略図は、図13乃至図16に示す通りである。
【0138】
図13において、負極シートは、フィルム領域において、負極集電体20、及び負極集電体20における対向する2つの表面に設けられる負極活性材料層21を備え、負極集電体20は、負極集電体支持層201と、負極集電体支持層201における対向する2つの表面に設けられる負極集電体導電層202と、負極導電層202の一側又は両側に設けられる負極保護層203(図示せず)と、を備える。
【0139】
図14において、負極シートは、フィルム領域において、負極集電体20、及び負極集電体20の片面に設けられる負極活性材料層21を備え、負極集電体20は、負極集電体支持層201と、負極集電体支持層201の片面に設けられる負極集電体導電層202と、負極導電層202の一側又は両側に設けられる負極保護層203(図示せず)と、を備える。
【0140】
図15において、負極シートNPは、フィルム領域において、負極集電体20と、負極集電体20における対向する2つの表面に設けられる導電性下塗り層22及び負極活性材料層21と、を備え、負極集電体20は、負極集電体支持層201、及び負極集電体支持層201における対向する2つの表面に設けられる負極集電体導電層202を備える。
【0141】
図16において、負極シートNPは、フィルム領域において、負極集電体20と、負極集電体20の片面に設けられる導電性下塗り層22及び負極活性材料層21と、を備え、負極集電体20は、負極集電体支持層201、及び負極集電体支持層201の片面に設けられる負極集電体導電層202を備える。
【0142】
図9乃至図16に示すように、電極活性材料層は、集電体の1つの表面に設けられてもよく、集電体の2つの表面に設けられてもよい。
【0143】
当業者であれば、以下のことを理解すべきである。両面導電層が設けられている集電体を使用する場合、電極シートは両面塗布(即ち電極活性材料層が集電体の2つの表面に設けられている)であってもよく、片面塗布(即ち電極活性材料層が集電体の1つの表面のみに設けられている)であってもよく、片面のみに導電層が設けられている集電体を使用する場合、電極シートも片面のみに塗布することができ、且つ電極活性材料層(及び導電性下塗り層)は、集電体における導電層が設けられている一面のみに塗布されることができる。
【0144】
必要に応じて、複合集電体の表面における導電性下塗り層、支持保護層及び内部短絡防止塗布層の分布レイアウトは、様々な設計を有することができ、以下に図面17A乃至17D及び図18A乃至18Eを参照して詳細に説明する。
【0145】
図17Aは、本願のいくつかの具体的な実施形態の正極シートの平面図を概略的に示す。図面に示すように、正極シートは、複合集電体10、及び縁端部において溶接により集電体10に電気的に接続されている複数の電気接続部材(タブ)511を備える。集電体10は、その本体部に位置するフィルム領域Aに活性材料層(及び選択可能な導電性下塗り層)が設けられている。集電体10及びタブ511が溶接により重なる領域は、中継溶接領域Cである。フィルム領域A及び中継溶接領域Cの以外の遷移領域は、延在領域Bであり、延在領域Bの表面には、活性材料層が配置されていないが、導電性下塗り層を配置してもよく配置しなくてもよく、支持保護層を配置してもよく配置しなくてもよい。
【0146】
図17Bは、本願の別の具体的な実施形態の正極シートの平面図を概略的に示す。図面に示すように、正極シートは、複合集電体10、及びいくつかの縁端部の突出部において溶接により集電体10に電気的に接続されている複数の電気接続部材(タブ)511を備える。集電体10は、その本体部に位置するフィルム領域Aに活性材料層(及び選択可能な導電性下塗り層)が設けられており、即ち、全ての本体部をフィルム領域Aとする。集電体10のいくつかの突出部を延在領域Bとし、延在領域Bの表面には活性材料層が配置されていないが、導電性下塗り層を配置してもよく配置しなくてもよく、支持保護層を配置してもよく配置しなくてもよく、タブ511と延在領域Bとが重なる領域が中継溶接領域Cである。
【0147】
図17Cは、本願の別の具体的な実施形態の正極シートの平面図を概略的に示す。図面に示すように、正極シートは、複合集電体10、及びいくつかの縁端部の突出部において溶接により集電体10に電気的に接続されている複数の電気接続部材(タブ)511を備える。集電体10の本体部のほとんどの領域をフィルム領域Aとするが、縁端部に残されている帯状領域といくつかの突出部とを共に延在領域Bとする。フィルム領域Aには、活性材料層(及び選択可能な導電性下塗り層)が配置され、延在領域Bの表面には、活性材料層が配置されていないが、導電性下塗り層を配置してもよく配置しなくてもよく、支持保護層を配置してもよく配置しなくてもよい。タブ511と延在領域Bとが重なる領域が中継溶接領域Cである。
【0148】
図17Dは、本願の別の具体的な実施形態の正極シートの平面図を概略的に示す。図面に示すように、正極シートは、複合集電体10、及び縁端部において溶接により集電体10に電気的に接続されている帯状電気接続部材511を備える。集電体10は、その本体部に位置するフィルム領域Aには、活性材料層(及び選択可能な導電性下塗り層)が配置され、集電体10と電気接続部材511とが溶接により重なる領域が中継溶接領域Cである。フィルム領域Aと中継溶接領域Cとの間の遷移領域が延在領域Bであり、延在領域Bの表面には活性材料層が配置されていないが、導電性下塗り層をを配置してもよく配置しなくてもよく、支持保護層をを配置してもよく配置しなくてもよい。
【0149】
図18Aは、図17A乃至図17Dに示すいくつかの具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図(例えば図17CのX-X断面図)を概略的に示す。図面に示すように、正極シートPPは、複合集電体10、及び溶接により集電体10に電気的に接続されている電気接続部材511を備える。正極集電体10は、正極集電体支持層101と、正極集電体支持層101の片面に設けられる正極集電体導電層102と、正極導電層102の一側又は両側に設けられる正極保護層103(図示せず)を、を備える。図17Cに示すように、正極集電体10は、その表面に設けられる材料層の相違に応じて、フィルム領域A、延在領域B及び中継溶接領域Cのような3個の領域に区画することができ、フィルム領域Aは、正極集電体10の表面の主要な部分を占用し、その上には、導電性下塗り層12及び正極活性材料層11が順に形成されており、中継溶接領域Cは、正極集電体10と電気接続部材511との間の電気的接続界面を提供している。正極シートPPは、内部短絡防止保護層15をさらに備え、内部短絡防止保護層15は、中継溶接領域の電気接続部材511及び延在領域Bの導電性下塗り層12の一部を覆う。
【0150】
図18Bは、本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図を概略的に示す。図面に示すように、正極シートPPは、複合集電体10、及び溶接により集電体10に電気的に接続されている電気接続部材511を備える。正極集電体10は、正極集電体支持層101と、正極集電体支持層101の片面に設けられる正極集電体導電層102と、正極導電層102の一側又は両側に設けられる正極保護層103(図示せず)と、を備える。正極集電体10は、その表面に設けられる材料層の相違に応じて、フィルム領域A、延在領域B及び中継溶接領域Cのような3個の領域に区画することができ、フィルム領域Aは、正極集電体10の表面の主要な部分を占用し、その上には、正極活性材料層11が形成されており、中継溶接領域Cは、正極集電体10と電気接続部材511との間の電気的接続界面を提供しており、延在領域Bの表面には、正極活性材料層11が設けられていない。正極シートPPは、内部短絡防止保護層15をさらに備え、内部短絡防止保護層15は、中継溶接領域の電気接続部材511及び延在領域Bの集電体表面の一部を覆う。
【0151】
図18Cは、本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図を概略的に示す。図面に示すように、正極シートPPは、複合集電体10、及び溶接により集電体10に電気的に接続されている電気接続部材511を備える。正極集電体10は、正極集電体支持層101と、正極集電体支持層101の片面に設けられる正極集電体導電層102と、正極導電層102の一側又は両側に設けられる正極保護層103(図示せず)と、を備える。正極集電体10は、その表面に設けられる材料層の相違に応じて、フィルム領域A、延在領域B及び中継溶接領域Cのような3個の領域に区画することができ、フィルム領域Aは、正極集電体10の表面の主要な部分を占用し、その上には、導電性下塗り層12及び正極活性材料層11が順に形成されており、中継溶接領域Cは、正極集電体10と電気接続部材511との間の電気的接続界面を提供しており、延在領域Bの表面には、正極活性材料層11が設けられていない。正極シートPPは、内部短絡防止保護層15をさらに備え、内部短絡防止保護層15は、中継溶接領域の電気接続部材511及び延在領域Bの集電体表面の一部を覆う。
【0152】
図18Dは、本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図を概略的に示す。当該正極シートPPは、図18Bに示す正極シートの構造と類似し、その相違とは、延在領域Bの集電体の表面には、支持保護層17が設けられており、内部短絡防止保護層15は、中継溶接領域の電気接続部材511及び延在領域Bの支持保護層17の表面の一部を覆うことである。
【0153】
図18Eは、本願の別の具体的な実施形態の正極シートの構成断面概略図を概略的に示す。当該正極シートPPは、図18Dに示す正極シートの構造と類似し、その相違とは、フィルム領域A及び延在領域Bの集電体の表面には、導電性下塗り層12が設けられており、正極活性材料層11及び支持保護層17は、導電性下塗り層12の表面に形成されていることである。
【0154】
図18A~18Eは、1つの導電層を有する片面の複合集電体を使用する正極シートの構造概略図を示す。しかしながら,当業者であれば理解できるように、本願の電極シートは、さらに、2つの導電層を有する両面の複合集電体を使用することができ、この時に、導電性下塗り層、支持保護層、正極活性材料層、内部短絡防止保護層も、複合集電体の2つの表面に設けられている。なお、当業者であれば理解できるように、負極シートに類似の設計を行うこともできる。
【0155】
また、電極活性材料スラリーの塗布は、従来の均一な塗布、又は複合集電体の特性を基にする特殊な区画塗布方式を使用して塗布することができる。本願の好ましい実施形態において、電極シートの電極活性材料層は、圧密度を基に、電極シートの幅方向(即ち塗布方向に対して垂直な方向)に沿って分布する2n+1(n=1、2又は3、好ましくはn=1)領域を含み、且つ中間領域の圧密度が両側領域の圧密度より高く、このような特殊な区画設計は、ロールプレス等による複合集電体及び電極シートの湾曲及びエッジ反りを効果的に抑制することができるため、電極シートがロールプレス後に依然として良好な電極シートの平坦度を保持することができ、電極シートの内部抵抗が大きく、分極が大きい等の技術的問題を解消又は減少させることができ、且つ導電層が破損されにくく、電極シート及び電気化学装置が良好な電気化学的性能を有するのに有利である。また、中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を低減することもできる。
【0156】
図19は、本願のいくつかの実施形態に係る電極シートの構成上面概略図を示す。正極シートPPは、電極シート本体及びそれに電気的に接続される1つ又は複数のタブ511を備える。塗布された電極活性材料層の相違に基づいて、電極シートの本体は、タブ511に直接に接続されている延在領域512、第1の低圧密領域513、高圧密領域514及び第2の低圧密領域515のような4つの領域を含む。即ち、正極シートPPの塗布された表面の幅方向から見ると、電極活性材料層は、圧密度を基に、3個(即ち2n+1個の領域、ここでn=1)の領域を含む。また、中間領域514の圧密度は、両側領域513、515の圧密度より高い。
【0157】
本願において、塗布総領域に対する中間高圧密領域の割合(本例において、514の幅と513の幅+514の幅+515の幅の合計との比)は、例えば20~80%であってもよく、好ましくは30~70%であり、好ましくは40~60%であり、又は、より好ましくは45~55%である。2つの低圧密領域の幅は、同じであってもよく、異なってもよく、好ましくは同じである。
【0158】
本願において、低圧密領域の圧密度は、高圧密領域の圧密度より、約5~30%、例えば7~25%、例えば8~20%、例えば8~18%低い。
【0159】
図19は、正極シートを例として本願の好ましい区画塗布方式を説明し、負極シートも同様の区画塗布を行うことができ、これにより、電極シートの電流通過能力を改善することができ、良好な電極シートの平坦度を保持することができ、電極シートの内部抵抗が大きく、分極が大きい等の技術的問題を解消又は減少させることができ、また、導電層が破損されにくいよう保護するのに有利であるため、電極シート及び電気化学装置は、良好な電気化学的性能を有し、負極シートの中継溶接領域の溶接品質を改善し、金属粒子の生成を減少することができる。
【0160】
また、電極シートの電気接続部材の厚さと集電体の導電層の片面の厚さD2との差が大き過ぎると、中継溶接の加工時に、金属粒子がより発生しやすく、電池コアの自己放電ひいては内部短絡の技術的問題を改善するのに不利である。したがって、好ましい電極シートにおいて、電気接続部材の厚さと導電層の片面の厚さD2との間の差は、15μm以下である。
【0161】
電気化学装置
本願の第2の態様は、電気化学装置に関し、正極シート、負極シート、セパレータ及び電解液を含み、そのうち、前記正極シート及び/又は負極シートは、本願の第1の態様に記載の電極シートである。
【0162】
前記電気化学装置は、キャパシタ、一次電池または二次電池であってもよい。例えば、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン一次電池、又はリチウムイオン二次電池であってもよい。
【0163】
図20は、本発明の1つの具体的な実施形態に係る電気化学装置をリチウムイオン二次電池とする斜視図を示し、図21は、図20に示すリチウムイオン二次電池の分解図である。図20及び図21に示すように、本願によるリチウムイオン二次電池5(以下では電池セル5と略称する)は、外装51、電極アセンブリ52、トップカバーアセンブリ53及び電解液(図示せず)を含む。そのうち、電極アセンブリ52は、外装51内に収納され、電極アセンブリ52の個数は限定されず、1つ又は複数であってもよい。
【0164】
なお、図20に示す電池セル5は、タンク型電池であるが、本願はこれに限定されず、電池セル5は、バッグ型電池であってもよく、即ちケース51は金属プラスチックフィルムにより置き換えられ且つトップカバーアセンブリ53が除去される。
【0165】
本願の正極シート及び/又は負極シートを使用する以外に、これらの電気化学装置の構造及び製造方法自体は周知である。前記電気化学装置は、本願の電極シートを使用するため、改善された安全性(例えば釘刺しの安全性)及び電気的性能を有することができる。また、本願の電極シートは、加工しやすいため、本願の電極シートを用いた電気化学装置の製造コストを低減することができる。
【0166】
本願の電気化学装置において、セパレータ及び電解液の具体的な種類及び組成はいずれも具体的に限定されず、実際の必要に応じて選択することができる。具体的には、前記セパレータは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム及びそれらの多層複合フィルムから選択されることができる。電池がリチウムイオン電池である場合、一般的に電解質として非水電解液を使用する。非水電解液としては、一般的に、有機溶媒により溶解されたリチウム塩溶液が用いられる。リチウム塩は、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機リチウム塩、又は、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n2)(n≧2)等の有機リチウム塩が挙げられる。非水電解液中に使用される有機溶媒は、例えば、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル、γ-ブチロラクトン等の環状エステル、ジメトキシエタンやジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル、テトラヒドロフランや2-メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル、アセトニトリルやプロパンニトリル等のニトリル類、又はこれらの溶媒の混合物である。
【0167】
いくつかの実施形態において、前記リチウムイオン二次電池は、電池モジュールとして組み立てられることができ、電池モジュールに含まれるリチウムイオン二次電池の個数は複数であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの適応及び容量に応じて調整することができる。図22は、一例としての電池モジュール4である。図22を参照すると、電池モジュール4において、複数のリチウムイオン二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列されて設置されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式により配列することができる。さらに、当該複数のリチウムイオン二次電池5は、締結具によって固定されてもよい。選択的に、電池モジュール4は、さらに、収納空間を有するケースを含み、複数のリチウムイオン二次電池5は、当該収納空間に収納されている。
【0168】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックとして組み立てられることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は電池パックの応用及び容量に応じて調整することができる。図23及び図24は、一例としての電池パック1である。図23及び図24を参照すると、電池パック1は、電池箱、及び電池箱に設けられる複数の電池モジュール4を含むことができる。電池箱は、上部筐体2及び下部筐体3を含み、上部筐体2は下部筐体3をカバーするように設けられて、電池モジュール4を収納するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、電池箱内に任意に配置することができる。
【0169】
装置
本願の第3の態様は、装置を提供し、本願の第2の態様に記載の電気化学装置を備え、前記電気化学装置は、前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、移動装置(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等を含むが、それらに限定されない。
【0170】
前記装置は、その使用の必要に応じて、リチウムイオン二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0171】
図25は、本願の1つの具体的な実施形態に係る装置の概略図を示す。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等であってもよい。リチウムイオン二次電池(即ち本願の電気化学装置)の高電力及び高エネルギー密度に対する当該装置の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0172】
他の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、一般的に軽量化及び薄型化が要求され、リチウムイオン二次電池(即ち本願の電気化学装置)を電源として使用することができる。
【0173】
当業者であれば、上記に言及された本願の異なる実施形態における電極シート、電極活性材料層等に対する成分選択、成分含有量及び材料の物理化学的性能パラメータの様々な限定又は好ましい範囲は任意に組み合わせることができ、その組み合わせにより得られる様々な実施形態は依然として本願の範囲内に属し、本明細書に開示の内容の一部と見なされることを理解することができる。
【0174】
特に説明しない限り、本明細書に係る様々なパラメータは本分野の周知の一般的な意味を有し、本分野の周知の方法に応じて測定することができる。例えば、本願の実施例に記載の方法に従って測定することができる。また、様々な好ましい実施形態に記載の様々な異なるパラメータの好ましい範囲及び選択肢は任意に組み合わせることができ、それにより得られる様々な組み合わせはいずれも本願の開示範囲内に属すると見なされる。
【0175】
以下に実施例を参照して本願をさらに説明する。
【0176】
実施例
各実施例及び比較例における電極シートに用いられる集電体の製造方法は、以下の通りである。
【0177】
1.保護層を有しない集電体の製造
一定の厚さの支持層を選択し、以下の条件に従って、それぞれその表面に真空蒸着、機械ロールプレス又は接着の方式により一定の厚さの導電層を形成する。
【0178】
(1)真空蒸着方式の形成条件は、以下の通りである。表面が清浄処理された支持層を真空蒸着室内に置き、1600℃乃至2000℃の高温下で金属蒸発室内の金属線を溶融蒸発させ、蒸発された金属は、真空蒸着室内の冷却システムを通過し、最後に支持層の表面に堆積して、導電層を形成する。
【0179】
(2)機械的ロールプレス方式の形成条件は、以下の通りである。導電層材料の箔シートを機械ロールに置き、20t乃至40tの圧力を印加することによりそれを所定の厚さに圧延し、次にそれを表面が清浄処理された支持層の表面に置き、最後に両者を機械ロールに置き、30t乃至50tの圧力を印加することにより両者を緊密に結合させる。
【0180】
(3)接着方式の形成条件は、以下の通りである。導電層材料の箔シートを機械ローラに置き、20t乃至40tの圧力を印加することによりそれを所定の厚さに圧延し、次に表面が清浄処理された支持層の表面にPVDF及びNMPの混合溶液を塗布し、最後に上記所定の厚さの導電層を支持層の表面に接着し、100℃下で乾燥させる。
【0181】
2.保護層を有する集電体の製造
保護層を有する集電体の製造は、以下のいくつかの方式を有する。
【0182】
(1)まず気相蒸着法又は塗布法により支持層の表面に保護層を配置し、次に真空蒸着、機械ロールプレス又は接着の方式により、上記保護層を有する支持層の表面に一定の厚さの導電層を形成し、これにより、保護層を有する集電体(保護層は支持層と導電層との間に位置する)を製造する。なお、上記を基に、さらに、導電層における支持層から離れる方向の表面に、気相蒸着法、インサイチュ形成法又は塗布法により、別の一層の保護層を形成し、これにより、保護層を有する集電体(保護層は導電層における2つの対向する表面に位置する)を製造することができる。
【0183】
(2)まず気相蒸着法、インサイチュ形成法又は塗布法により導電層の1つの表面に保護層を形成し、次に機械的ロールプレス又は接着の方式により、上記保護層を有する導電層を支持層の表面に配置し、且つ保護層を支持層と導電層との間に配置し、これにより、保護層を有する集電体(保護層は支持層と導電層との間に位置する)を製造する。なお、上記を基に、さらに導電層における支持層から離れる方向の表面に、気相蒸着法、インサイチュ形成法又は塗布法により、別の一層の保護層を形成し、これにより、保護層を有する集電体(保護層は導電層における2つの対向する表面に位置する)を製造する。
【0184】
(3)まず気相蒸着法、インサイチュ形成法又は塗布法により、導電層の1つの表面に保護層を形成し、次に機械的ロールプレス又は接着の方式により、上記保護層を有する導電層を支持層の表面に配置し、且つ保護層を導電層における支持層から離れた表面に配置し、これにより、保護層を有する集電体(保護層は導電層における支持層から離れる表面に位置する)を製造する。
【0185】
(4)まず気相蒸着法、インサイチュ形成法又は塗布法により、導電層の2つの表面に保護層を形成し、次に機械的ロールプレス又は接着の方式により、上記保護層を有する導電層を支持層の表面に配置し、これにより、保護層を有する集電体(保護層は導電層における2つの対向する表面に位置する)を製造する。
【0186】
(5)上記「保護層を有しない集電体の製造」を基に、さらに、導電層における支持層から離れる方向の表面に、気相蒸着法、インサイチュ形成法又は塗布法により、別の層の保護層が形成し、これにより、保護層を有する集電体(保護層は導電層の支持層から離れる表面)を製造する。
【0187】
製造例において、気相蒸着法は、真空蒸着方式を使用し、インサイチュ形成法は、インサイチュ不動態化方式を使用し、塗布法は、ブレード塗布方式を使用する。
【0188】
真空蒸着方式の形成条件は、以下の通りである。表面が清浄処理されたサンプルを真空蒸着室内に置き、1600℃乃至2000℃の高温下で蒸発室内の保護層材料を溶融蒸発させ、蒸発された保護層材料は、真空蒸着室内の冷却システムを通過し、最後にサンプルの表面に堆積して、保護層を形成する。
【0189】
インサイチュ形成法の形成条件は、以下の通りである。導電層を高温酸化環境に置き、温度を160℃乃至250℃に制御し、同時に高温環境下で酸素供給を維持し、処理時間は30minであり、これにより、金属酸化物系の保護層を形成する。
【0190】
グラビア塗布方式の形成条件は、以下の通りである。保護層材料及びNMPを撹拌混合し、次にサンプルの表面に上記保護層材料のスラリー(固形分は20%乃至75%である)を塗布し、次にグラビアロールで塗布の厚さを制御し、最後に100℃乃至130℃下で乾燥する。
【0191】
3.電極シートの製造
1)導電性下塗り層を有しない正極シートの製造
92wt%の正極活性材料(具体的な材料を示さない場合、デフォルトでNCM 333を使用する)、5wt%の導電剤 Super-P(「SP」と略称する)及び3wt%のPVDFを、NMPを溶媒として、均一に撹拌して、正極活性材料層用スラリーに調製する(いくつかの実施例の活性材料層用スラリーの組成は変化の可能性があり、この場合には当該実施例において特に明記されたものを基準とする)。押出塗布を使用して、正極活性材料層用スラリーを、区画領域に従って、上記方法により製造される複合集電体の2つの表面に塗布し、85℃下で乾燥させた後に、正極活性材料層を取得する。
【0192】
必要に応じて、延在領域における集電体の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0193】
次に各塗布層を有する集電体に対して冷間プレスを行った後に、切断を行い、さらに85℃の真空条件下で4時間乾燥させ、タブを溶接して、正極シートを取得する。
【0194】
2)従来の正極シートの製造
集電体は、12μmの厚さのAl箔であり、上記正極シートの製造方法と類似し、正極活性材料層用スラリーをAl箔の集電体の表面に直接に塗布し、さらに後処理を経て従来の正極シートを取得する。
【0195】
3)延在領域に導電性下塗り層を有する正極シートの製造
一定の配合比率の導電性材料(例えば導電性カーボンブラック)及び接着剤(例えばPVDF又はポリアクリル酸等)、並びに選択可能な活性材料を、適切な溶媒(例えばNMP又は水)により溶解させ、均一に撹拌して、下塗りスラリーに調製する。
【0196】
下塗りスラリーを、複合集電体の両面における延在領域として予め残された集電体の表面に均一に塗布し、塗布速度が20m/minであり、且つ下塗り層を乾燥させ、オーブン温度が70~100℃であり、乾燥時間が5minである。
【0197】
下塗り層が完全に乾燥された後、92wt%の正極活性材料、5wt%の導電剤 Super-P(「SP」と略称する)及び3wt%のPVDFを、NMPを溶媒として、均一に撹拌して、正極活性材料層用スラリーに調製し、押出塗布を使用して、正極活性材料層用スラリーを、区画領域に従って、集電体のフィルム領域として予め残された表面に塗布する。85℃下で乾燥させた後に正極活性材料層を取得し、さらに後処理を経て、延在領域に導電性下塗り層を有する正極シートを取得する。
【0198】
必要に応じて、延在領域の導電性下塗り層の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0199】
4)フィルム領域に導電性下塗り層付きの正極シートの製造
一定の配合比率の導電性材料(例えば導電性カーボンブラック)及び接着剤(例えばPVDF又はポリアクリル酸等)、並びに選択可能な活性材料を、適切な溶媒(例えばNMP又は水)により溶解させ、均一に撹拌して、下塗りスラリーに調製する。
【0200】
下塗りスラリーを、複合集電体の両面の表面に均一に塗布し(縁端部における一部の余白領域は、延長領域として残され、且つタブを溶接するために用いられる)、塗布速度が20m/minであり、且つ下塗り層を乾燥させ、オーブンの温度が70~100℃であり、乾燥時間が5minである。
【0201】
下塗り層を完全に乾燥させた後、92wt%の正極活性材料、5wt%の導電剤 Super-P(「SP」と略称する)及び3wt%のPVDFを、NMPを溶媒として、均一に撹拌して、正極活性材料層用スラリーに調製し、押出塗布を使用して、正極活性材料層用スラリーを、区画領域に従って、下塗り層の表面に塗布し、85℃下で乾燥させた後に正極活性材料層を取得し、さらに後処理を経て、フィルム領域に導電性下塗り層を有する正極シートを取得する。
【0202】
必要に応じて、延在領域の集電体の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0203】
5)フィルム領域及び延在領域の表面のいずれにも導電性下塗り層が設けられている正極シートの製造
「4)フィルム領域に導電性下塗り層を有する正極シート」の製造方法と類似し、その相違とは、下塗りスラリーを塗布する前に、まず延在領域の縁端部において電気接続部材(Al帯)を溶接し、さらに下塗りスラリーを塗布し、また、下塗りスラリーを塗布する際に、集電体全体の表面(フィルム領域及び延在領域を含む)に下塗りスラリーを塗布し、下塗り層が完全に乾燥された後に、92wt%の正極活性材料、5wt%の導電剤 Super-P(「SP」と略称する)及び3wt%のPVDFを、NMPを溶剤として、均一に撹拌して正極活性材料層用スラリーに調製し、押出塗布を使用して、正極活性材料層用スラリーを下塗り層の表面の主要な部分(即ちフィルム領域)に塗布し、下塗り層における縁端部に近接する表面には帯状余白が残され、次に85℃下で乾燥させた後に正極活性材料層を取得し、さらに後処理を経て、フィルム領域及び延在領域の表面のいずれにも導電性下塗り層が設けられている正極シートを取得することである。
【0204】
必要に応じて、延在領域の導電性下塗り層の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0205】
6)導電性下塗り層を有しない負極シートの製造
負極活物質 人造黒鉛、導電剤 Super-P、増粘剤 CMC、接着剤 SBRを、96.5:1.0:1.0:1.5の質量比に従って、溶剤 脱イオン水中に添加し、均一に混合して負極活性材料層用スラリーを調製し、押出塗布を使用して、負極活性材料層用スラリートを、区画領域に従って、上記方法により製造される複合集電体の2つの表面に塗布し、85℃下で乾燥させた後に、負極活性材料層を取得する。
【0206】
必要に応じて、延在領域の集電体の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0207】
次に、各塗布層を有する集電体に対して冷間プレスを行った後に、切断を行い、さらに110℃の真空条件下で4時間乾燥させ、タブを溶接して、負極シートを取得する。
【0208】
7)従来の負極シートの製造
集電体は、8μmの厚さのCu箔であり、上記負極シートの製造方法と類似し、負極活性材料層用スラリーをCu箔集電体の表面に直接に塗布し、さらに後処理を経て従来の負極シートを取得する。
【0209】
8)延在領域に導電性下塗り層を有する負極シートの製造
一定の配合比率の導電性材料(例えば導電性カーボンブラック)及び接着剤(例えばPVDF又はポリアクリル酸等)、並びに選択可能な活性材料を、適切な溶媒(例えばNMP又は水)により溶解させ、均一に撹拌して、下塗りスラリーに調製する。
【0210】
下塗りスラリーを、複合集電体の両面における延在領域として予め残された集電体の表面に均一に塗布し、塗布速度が20m/minであり、且つ下塗り層を乾燥させ、オーブン温度が70~100℃であり、乾燥時間が5minである。
【0211】
下塗り層が完全に乾燥された後、負極活物質 人造黒鉛、導電剤 Super-P、増粘剤 CMC、接着剤 SBRを、96.5:1.0:1.0:1.5の質量比に従って、溶剤 脱イオン水中に添加し、均一に混合して負極活性材料層用スラリーを調製し、押出塗布を使用して、負極活性材料層用スラリーを、区画領域に従って、集電体のフィルム領域として予め残された表面に塗布し、85℃下で乾燥させた後に、負極活性材料層を取得し、さらに後処理を経て延在領域に導電性下塗り層を有する負極シートを取得する。
【0212】
必要に応じて、延在領域の導電性下塗り層の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0213】
9)フィルム領域に導電性下塗り層を有する負極シートの製造
一定の配合比率の導電性材料(例えば導電性カーボンブラック)及び接着剤(例えばPVDF又はポリアクリル酸等)、並びに選択可能な活性材料を、適切な溶媒(例えばNMP又は水)により溶解させ、均一に撹拌して、下塗りスラリーに調製する。
【0214】
下塗りスラリーを、複合集電体の両面の表面に均一に塗布し(縁端部における一部の余白領域は、延長領域として残され、且つタブを溶接するために用いられる)、塗布速度が20m/minであり、且つ下塗り層を乾燥させ、オーブンの温度が70~100℃であり、乾燥時間が5minである。
【0215】
下塗り層を完全に乾燥させた後、負極活物質 人造黒鉛、導電剤 Super-P、増粘剤 CMC、接着剤 SBRを、96.5:1.0:1.0:1.5の質量比に従って、溶剤 脱イオン水中に添加し、均一に混合して負極活性材料層用スラリーを調製し、押出塗布を使用して、負極活性材料層用スラリーを、区画領域に従って、下塗り層の表面に塗布し、85℃下で乾燥させた後に、負極活性材料層を取得し、さらに後処理を経てフィルム領域に導電性下塗り層を有する負極シートを取得する。
【0216】
必要に応じて、延在領域の集電体の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0217】
10)フィルム領域及び延在領域の表面のいずれにも導電性下塗り層が設けられている負極シートの製造
「9)フィルム領域に導電性下塗り層を含む負極シート」の製造方法と類似し、その相違とは、下塗りスラリーを塗布する前に、まず延在領域の縁端部において電気接続部材(Ni帯)を溶接し、さらに下塗りスラリーを塗布し、また、下塗りスラリーを塗布する際に、集電体全体の表面(フィルム領域及び延在領域を含む)に下塗りスラリーを塗布し、下塗り層が完全に乾燥された後に、負極活物質 人造黒鉛、導電剤 Super-P、増粘剤 CMC、接着剤 SBRを、96.5:1.0:1.0:1.5の質量比に従って、溶剤 脱イオン水中に添加し、均一に混合して負極活性材料層用スラリーを調製し、押出塗布をを使用して、負極活性材料層用スラリーを、下塗り層の表面の主要な部分(即ちフィルム領域)に塗布し、下塗り層における縁端部に近接する表面に帯状余白が残され、次に85℃下で乾燥させた後に負極活性材料層を取得し、さらに後処理を経て、フィルム領域及び延在領域の表面のいずれにも導電性下塗り層が設けられている負極シートを取得することである。
【0218】
必要に応じて、延在領域の導電性下塗り層の表面には、支持保護層を形成することができる。
【0219】
上記1)乃至10)の電極シートの形成過程において、いずれも、内部短絡防止保護層の塗布を選択的に含むことができ、即ち、必要に応じて、中継溶接領域及び延在領域の表面には、内部短絡防止保護層を形成することができる。
【0220】
ここで、電気接続部材の厚さは、12μmである。
【0221】
4.電池の製造
従来の電池製造プロセスにより、正極シート(圧密度:3.4g/cm)、PP/PE/PPセパレータ及び負極シート(圧密度:1.6g/cm)を共にベアコアとして巻回し、次に電池ケースに入れ、電解液(EC:EMCの体積比が3:7であり、LiPFが1mol/Lである)を注入し、次に密封、化成等の工程を行い、最終的にリチウムイオン二次電池(以下に電池と略称する)を取得する。
【0222】
5.電池試験方法
1)リチウムイオン電池のサイクル寿命試験方法
方法1:リチウムイオン電池を45℃下で充放電し、即ち、まず1Cの電流により4.2Vまで充電し、次に1Cの電流により2.8Vまで放電し、1回目サイクルの放電容量を記録し、次に電池が1C/1C充放電サイクルを1000回サイクル行うようにして、1000回目サイクルの電池放電容量を記録し、1000回目サイクルの放電容量を1回目サイクルの放電容量で割って、1000回目サイクルの容量保持率を取得する。
【0223】
方法2:リチウムイオン電池を45℃下で充放電し、即ちまず0.3Cの電流により4.2Vまで充電し、次に0.3Cの電流により2.8Vまで放電し、1回目サイクルの放電容量を記録し、次に電池が0.3C/0.3C充放電サイクルを1000回サイクル行うようにして、1000回目サイクルの電池放電容量を記録し、1000回目サイクルの放電容量を1回目サイクルの放電容量で割って、1000回目サイクルの容量保持率を取得する。
【0224】
2)DCR増加率の試験方法
25℃下で、1C電流により二次電池を50%SOCに調整して、電圧U1を記録する。次に、4C電流により30秒放電して、電圧U2を記録する。DCR=(U1-U2)/4Cである。次に電池が1C/1C充放電を500回サイクルうようにして、500回目サイクルのDCRを記録し、500回目サイクルのDCRを1回目サイクルのDCRで割った後に1を減算して、500回目サイクルのDCR増加率を取得する。
【0225】
3).ニードルパンチ試験
二次電池(10個のサンプル)を1Cの電流によりカットオフ電圧まで満充電し、さらに定電圧により電流が0.05Cに下がるまで充電し、充電を停止する。φ8mmの耐高温鋼針を用いて、25mm/sの速度で、電池極板に対して垂直な方向から貫通し、貫通位置は刺された面の幾何学的中心に近く、鋼針は電池に留まり、電池に燃焼、爆発現象があるか否かを観察する。
【0226】
6.試験結果及び検討
6.1 電池の重量エネルギー密度の改善に対する複合集電体の作用
各実施例の集電体及びその電極シートの具体的なパラメータは、表1に示す通りである(表1に列挙された各実施例の集電体のいずれにも保護層が設けられていない)。表1において、正極集電体は、集電体の重量百分率が、単位面積の正極集電体の重量を単位面積の従来の正極集電体の重量で割った百分率であり、負極集電体は、集電体の重量百分率が、単位面積の負極集電体の重量を単位面積の従来の負極集電体の重量で割った百分率である。特に説明しない限り、各集電体に使用されたPIのヤング率は、1.9GPaであり、使用されたPETのヤング率は、4.2GPaである。
【0227】
【表1】
【0228】
表1から分かるように、本願に係る複合正極集電体及び複合負極集電体は、従来の集電体に比べて、重量がいずれも異なる程度に軽減されるため、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。しかしながら、導電層の厚さが1.5μmより大きいと、集電体の重量減少に対する改善程度が小さくなり、特に負極集電体の場合に、改善程度が小さくなる。
【0229】
6.2 複合集電体の電気化学的性能の改善に対する保護層の作用
表1に列挙された各実施例の集電体を基に、さらに保護層を形成して、複合集電体の電気化学的性能の改善に対する保護層の作用を検討する。表2における「正極集電体2-1」は、表1における「正極集電体2」を基に保護層を形成した集電体を示し、他の集電体の番号の意味は類似している。
【0230】
【表2】
【0231】
説明:1)ニッケル系合金:ニッケル 90wt%、クロム 10wt%。
【0232】
2)二層保護層は、導電層における支持層に背向する表面に設けられ、且つ、厚さが20nmであるニッケル金属保護層と、ニッケル金属保護層における支持層に背向する表面に設けられ、且つ、厚さが30nmである酸化ニッケル保護層と、を含む。
【0233】
表3は、表2に列挙された電極シート(導電性下塗り層を含まない)を電池として組み立てられた後に測定されたサイクル性能データを示す。
【0234】
【表3】
【0235】
表3に示すように、複合集電体を使用する電池は、従来の正極シート及び従来の負極シートを使用した電池1に比べて、サイクル寿命が良好であり、従来の電池のサイクル性能に相当する。特に保護層を有する集電体により製造される電池は、保護層を有さない集電体により製造される電池に比べて、その電池の容量保持率をさらに向上させることができ、これは、電池の信頼性がより高いことを説明する。
【0236】
6.3 電池の釘刺しの安全性能の改善に対する複合集電体の作用
以下、正極シートを例として、電池の釘刺しの安全性能の改善に対する複合集電体の作用を説明する。
【0237】
【表4】
【0238】
(表4において、各電極シートには、導電性下塗り層が設けられていない。)
【0239】
【表5】
【0240】
複合集電体を使用するリチウムイオン電池は、導電層が従来の金属集電体に比べて薄く、釘刺し等の異常の場合、生成される金属バリが小さく、且つ複合集電体の支持層が大きな短絡抵抗を有するため、電池の釘刺しの安全性能を改善するのに有利である。上記の表から分かるように、従来の電池は、釘刺しの場合に熱暴走及び破壊が発生され、釘刺しの安全試験に合格することができない。複合集電体を使用したリチウムイオン電池は、いずれも釘さしの安全試験に合格することができる。
【0241】
6.4 電池の電気化学的性能の改善に対する導電性下塗り層の作用
以下、正極シートを例にして、導電性下塗り層、及び導電性下塗り層の組成等の要素が電池の電気化学的性能の改善に対する作用を説明する。表8は、各実施例及び比較例の電池及びそれに使用される電極シート及び集電体の具体的な組成及び関連パラメータを示す(表6において、比較正極シート20以外の他の正極シートのいずれにも導電性下塗り層が設けられている)。表7は、各電池の性能測定結果を示す。特に説明しない限り、各電極シートにおける導電性下塗り層は、フィルム領域のみに設けられている。
【0242】
【表6】
【0243】
【表7】
【0244】
上記の試験データから、以下のことが分かる。
薄い導電層の複合集電体を使用する場合(即ち導電性下塗り層を有さない比較正極シート20)、複合集電体は、導電性が従来の金属集電体より悪く、且つ複合集電体における導電層が破損されやすい等の欠点を有するため、電池のDCRが大きく、サイクル容量の保持率が低い。しかしながら、導電性下塗り層を利用した後、導電性下塗り層は集電体の表面を効果的に修復し、且つ集電体、導電性下塗り層と活物質との間の導電ネットワークを構築し、これにより、電子輸送効率を向上させ、集電体と電極活性材料層との抵抗を低下させ、DCRを効果的に低減することができる。
【0245】
導電性下塗り層における導電剤の含有量の向上(正極シート21乃至26)により、電池のDCRが大幅に改善される。
【0246】
同じ構成下で、水性接着剤の利用は、油性接着剤に比べて、DCRの改善程度をより明らかにすることが可能である(正極シート24 vs.正極シート27及び正極シート25 vs.正極シート28)。
【0247】
4.シート状黒鉛による「水平スライド」の発生により、緩衝作用を果たし、圧密過程において集電体の導電層に対する破壊を減少させ、これにより、亀裂を減少させる。したがって、シート状黒鉛の利用は、電池のDCR(正極シート24 vs.正極シート29)をさらに低減することができる。
【0248】
5.導電性下塗り層の厚さの増大(正極シート30乃至正極シート32)に伴い、電池のDCRもより顕著に改善される。しかしながら、導電性下塗り層の厚さが大き過ぎると、電池のエネルギー密度の改善に不利である。
【0249】
6.5 電池の電気化学的性能の改善に対する電極活性材料層における接着剤の含有量の作用
電極活性材料層における接着剤の含有量が高い場合、活性材料層と集電体との結合力が高く、導電性下塗り層を有する場合、フィルム層全体(即ち活性材料層及び導電性下塗り層の総称)と複合集電体との結合力も高いため、釘刺し等の異常の場合、活性材料層(又はフィルム層)は、導電層中で生成される金属バリを効果的に包み、電池の釘刺しの安全性能を改善することができる。
【0250】
以下、正極シートを例とし、電池の釘刺しの安全の観点から、電池の電気化学的性能の改善に対する電極活性材料層における接着剤の含有量の作用を説明する。
【0251】
前述の実施例の前記方法に従って正極シートを製造するが、正極活性材料層用スラリーの組成を調整して、正極活性材料層における接着剤の含有量が異なる複数の正極シートが製造される。具体的な電極シートの構成は、以下の表に示す通りである。
【0252】
【表8】
【0253】
表9は、上記異なる正極シートを電池として組み立てた時の釘刺しの試験結果を示す。結果は、正極活性材料層における接着剤の含有量が高いほど、対応する電池の釘刺しの安全性能が高いことを示す。好ましくは、正極活性材料層における接着剤の含有量は、1wt%以上であり、より好ましくは、1.5wt%以上であり、最も好ましくは、2wt%以上である。
【0254】
【表9】
【0255】
6.6 電極シート性能に対する電極活性材料層の塗布方式の影響
以下、電極シート上の活性材料層の異なる塗布方式が、電極シートの平坦性に対する影響を説明する。具体的に、以下の3種類の異なる種類の正極シート及び負極シートの平坦度をそれぞれ比較する。影響要因を簡略化するために、比較された各電極シートのいずれにも導電性下塗り層が設けられていないが、得られた結論は、導電性下塗り層が設けられている電極シートに対しても適用される。
【0256】
1)区画塗布の正極シート
使用された複合集電体は、10μmのPETの2つの表面にそれぞれ1μmの厚さのAl金属層が蒸着される。
【0257】
92wt%の正極活性材料 NCM 333、5wt%の導電剤 Super-P(「SP」と略称する)及び3wt%のPVDFを、NMPを溶媒として、均一に撹拌して正極活性材料層用スラリーに調製する。
【0258】
複合集電体の2つの表面には、押出塗布により、区画塗布が行われ、即ち中間が高塗布重量領域であり、両側が低塗布重量領域であり(押圧スペーサ又はバリアにより実現することができる)、85℃下で乾燥させる。そのうち、高塗布重量領域の幅は、4cmであり、低塗布重量領域の幅は、いずれも、2.1cmである。
【0259】
次に、冷間プレス、切断を行い、さらに85℃の真空条件下で4時間乾燥させ、タブを溶接して、正極シートを取得する。
【0260】
高塗布重量領域の圧密度は、3.45g/cmであり、低塗布重量領域の圧密度は、いずれも、3.3g/cmである。
【0261】
圧密度試験方法:まず面積がSの集電体ウェハ30枚を採取してその重量及び厚さを測定し、重量平均値m及び高さの平均値Hを求め、さらに面積がSの電極シートウェハ30枚を採取してその重量平均値m及び高さの平均値Hを求める場合、圧密度は、以下の通りである。
圧密度=(m‐m)/((H‐H)×S)
【0262】
2)均一に塗布された比較正極シート
集電体は、前述と同じく、厚さが10μmのPETめっきAl複合集電体を使用し、上記の正極シートの製造方法と類似に製造されるが、正極活性材料層用スラリーを複合集電体の2つの表面に直接に均一に塗布し、即ち区画処理を行わず、さらに後処理を経て均一に塗布された比較正極シートを取得する。正極活性材料層の圧密度は、3.4g/cmである。
【0263】
3)従来の正極シート
集電体は、厚さが12μmの金属Al箔であり、上記の比較正極シートの製造方法と類似し、正極活性材料層用スラリーをAl箔集電体の2つの表面に直接に均一に塗布し、さらに後処理を経て従来の正極シートを取得する。
【0264】
4)区画塗布の負極シート
使用された複合集電体は、10μmのPETの2つの表面にそれぞれ1μmの厚さのCu金属層が蒸着されている。
【0265】
負極活物質 人造黒鉛、導電剤 Super-P、増粘剤 CMC、接着剤 SBRを、96.5:1.0:1.0:1.5の質量比に従って、溶剤 脱イオン水中に添加し、均一に混合して負極活性材料層用スラリーを調製する。
【0266】
複合集電体の2つの表面には、押出塗布により、区画塗布が行われ、即ち中間が高塗布重量領域であり、両側が低塗布重量領域であり(押圧スペーサ又はバリアにより実現することができる)、85℃下で乾燥させた後に、負極活性材料層を取得する。そのうち、高塗布重量領域の幅は、4.5cmであり、低塗布重量領域の幅は、いずれも、2cmである。
【0267】
次に、各塗布層を有する集電体に対して冷間プレスを行った後、切断を行い、さらに110℃の真空条件下で4時間乾燥させ、タブを溶接して、負極シートを取得する。
【0268】
高塗布重量領域の圧密度は、1.7g/cmであり、低塗布重量領域の圧密度は、いずれも、1.6g/cmである。
【0269】
5)均一に塗布された比較負極シート
集電体は、前述と同じく、厚さが10μmのPETめっきCu複合集電体を使用し、上記の負極シートの製造方法と類似に製造されるが、負極活性材料層用スラリーを複合集電体の2つの表面に直接に均一に塗布し、即ち区画処理を行わず、さらに後処理を経て均一に塗布された比較負極シートを取得する。負極活性材料層の圧密度は、1.65g/cmである。
【0270】
6)従来の負極シート
集電体は、厚さが8μmの金属Cu箔であり、上記の均一に塗布された比較負極シートの製造方法と類似し、負極活性材料層用スラリーをCu箔集電体の2つの表面に直接に塗布し、さらに後処理を経て従来の負極シートを取得する。
【0271】
上記の6種類の異なる電極シートに対して、電極シートの平坦度を測定する。電極シートの平坦度の測定は、電極シートの基準平面に対する弧高さを測定することにより特徴づけられる。弧の高さの具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0272】
長さが2mの電極シートのサンプルを取り、サンプルを基準平面に置き且つ当該平面の幅方向に沿って展開し、当該平面の幅は電極シートサンプルの長さよりわずかに小さく、その後にサンプルの両側にそれぞれ等しい重量(1Kg)の重量物を配置することにより、サンプルを当該平面に密着させる。次に、ソフト定規を利用して、当該平面からのサンプルの中間位置の高さを測定し、当該高さが弧の高さである。実際の製造において、一般的には弧の高さが2mm以下の電極シートは平坦であると考えられ、電池として組み立てられる時に、正負極シートの正確な位置合わせを実現することができる。
【0273】
下表は、具体的な測定結果である。
【0274】
【表10】
【0275】
上表の測定結果から分かるように、金属集電体を使用する従来の正極シート又は負極シートは、いずれも、電極シートの平坦度の要件を満たし(弧の高さが2mm以下である)、電池組立時の正確な位置合わせを実現することができる。従来のプロセスに従って複合集電体を均一に塗布する場合、追加的な処理を行わないと、電極シートの弧の高さが大きく(5mmより大きい)、電極シートの平坦度が低く、電池の組立時に正確な位置合わせを実現することが困難である。しかしながら、本願の区画塗布プロセスを使用すると、弧の高さが明らかに低下し、従来の電極シートと近似する程度に達し、電池の組立時の正確な位置合わせを実現することができる。これは、活性材料層の区画塗布の特別な設計を使用すると、ロールプレス後に起こり得る複合集電体を有する電極シートのエッジ反り及び湾曲を除去又は低減し、電極シートの平坦度を向上させることができるため、電池組立時の正確な位置合わせを実現し、同時に電池が複合集電体を有することによる優れた電気化学的性能及び安全性能を向上させることができる。
【0276】
6.7 切断効率に対する内部短絡防止保護層の材料選択のの影響
以下、正極シートを例として、切断効率に対する内部短絡防止保護層の材料選択のの影響を説明し、特に、着色剤を含有する内部短絡防止保護層が、電極シート加工過程において、中継溶接領域のレーザ切断効率に与える影響を説明する。
【0277】
切断速度の試験方法:
IPG社の型番がYLP-V2-1-100-100-100のファイバーレーザを使用し、電力が100Wであり、周波数が150kHzであるように設定し、活性材料層が形成され且つ電気接続部材が溶接されている集電体をレーザの切断装置に取り付けて、切断を行い、集電体の最大切断可能な速度を測定する。そのうち、集電体の最大切断可能な速度は、レーザーが当該集電体を切断し、接着現象が発生しない場合に達成することができる最大切断速度である。
【0278】
【表11】
【0279】
上記データは、内部短絡防止保護層を形成する場合、内部短絡防止保護層を含まない電極シートに比べて、最大切断可能な速度を改善することができ、電極シートの加工製造の効率を向上させることを示す。特に、着色剤を含有する内部短絡防止保護層を形成した後、最大切断可能な速度をさらに改善することができる。
【0280】
6.8 電極シート性能に対する内部短絡防止保護層のの影響
以下、正極シートを例とし、電池性能、特に電池の自己放電に対する内部短絡防止保護層の影響を説明する。下記表12の配合成分に従って、基本的には前述の「3.電極シートの製造」及び「4.電池の製造」に基づいて前記電極シートを製造するが、電極活性材料層を塗布する時に、「6.6 電極シート性能に対する電極活性材料層の塗布方式の影響」における前記区画塗布方式を使用して塗布する。次に、集電体の延在領域の縁端部に電気接続部材のアルミニウムシート(厚さが12μmである)を溶接し、さらに内部短絡防止保護層用スラリーを塗布し、乾燥させ、最後にレーザ型を用いて複数のタブに切断して、図17Cに示す平面構造を形成する。最後に、電池を構成して、自己放電試験を行う。
【0281】
自己放電試験方法は、以下の通りである。10個の電池を取り、0.5Cにより4.2Vまで満充電し、且つ4.2Vの定電圧により0.05Cにする。この時のコアの電圧をそれぞれ測定して、OCV1と記し、且つ記録する。48h静置した後、この10個のコアの電圧を改めて測定し、OCVBと記し、コアの自己放電性能は、k=(OCV1-OCVB)/48であり、単位がmV/hである。
【0282】
【表12】
【0283】
上記測定データから分かるように、内部短絡防止保護層が設けられている本願の電極シートは、内部短絡防止保護層が設けられていない電極シートに比べて、k値が大幅に低下し、即ち自己放電を減少させる。また、内部短絡防止保護層を設けた上で、支持保護層を設置すると、自己放電性能をさらに改善することができ、これは、支持保護層の設置により延在領域の硬度を改善し、湾曲しにくく、溶接品質を改善することができるからである。また、複合集電体において、導電層保護層の設置も溶接品質を改善して自己放電性能を改善することができる。同時に、区画塗布は、均一な塗布に比べて、電極シートの平坦度を改善することができ、溶接品質及び自己放電性能を改善することができる。
【0284】
当業者であれば理解できるように、上記はリチウム電池のみを例示して本願の電極シートの適応例を示すが、本願の電極シートは同じく他の種類の電池又は電気化学装置に適用することができ、依然として本願の良好な技術的効果を得ることができる。
【0285】
上記説明書の開示及び教示によれば、当業者は上記実施形態に適切な変更及び修正を行うことができる。したがって、本願は上記開示及び説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本願のいくつかの修正及び変更は本願の請求項の保護範囲内に含まれるべきである。また、本明細書においていくつかの特定の用語を使用するが、これらの用語は説明しやすくするためであり、本願に対していかなる制限を構成するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19
図20
図21
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図24
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