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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240205BHJP
   H01R 13/6581 20110101ALI20240205BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALI20240205BHJP
   H01R 13/74 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/6581
H01R13/6592
H01R13/74 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022021924
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119194
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】植田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義直
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-54145(JP,A)
【文献】特開2014-26761(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108539447(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0134093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 13/6581
H01R 13/6592
H01R 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のシールド材が設けられているシールド電線と、
筒内が前記シールド電線を挿通させる電線挿通路となり、かつ、金属製のシールドケースにおける外壁体の貫通孔に挿通させる筒体、及び、前記筒体を前記外壁体に固定させる被固定部を有する金属製のハウジングと、
前記シールド材に対して物理的且つ電気的に接続させる筒状のシールド端子と、
前記筒体の内周面と前記シールド電線の外周面との間の環状の隙間を埋めるものとして前記電線挿通路に配置され、前記シールドケースの外から前記電線挿通路に入り込んだ液体の前記隙間を介した前記シールドケースの室内への浸入を抑止する環状のシール部材と、
を備え、
前記シールド端子は、前記電線挿通路における前記シール部材よりも前記シールドケースの室内側の圧入完了位置で前記筒体に圧入固定させる圧入部と、前記圧入完了位置のまま前記電線挿通路における前記シール部材よりも前記シールドケースの室内側で前記筒体の被係止部に係止させる係止部と、を有することを特徴としたワイヤハーネス。
【請求項2】
前記圧入部は、前記シールド端子の外周面から周方向に亘って環状に突出させた突出部として形成され、
前記筒体は、前記圧入部を嵌め込んで圧入固定させる環状の溝部を有することを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記圧入部は、前記シールド端子の外周面から周方向に亘って環状に突出させた突出部として形成され、
前記筒体は、前記シールドケースの室内側に配置される第1開口と、前記シールドケースの外側に配置される第2開口と、前記圧入部を前記第1開口から嵌め込んで圧入固定させる環状の溝部と、を有し、
前記係止部は、前記シールド端子における前記シールドケースの外側の端部をフレア形状に拡げ、前記圧入完了位置の前記シールド端子の前記第2開口側から前記第1開口側への動きを前記被係止部に係止させるフレア部として形成されることを特徴とした請求項1に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスとしては、シールドケースの貫通孔を通すシールド電線に対してシールドコネクタを組み付けたものが知られている。そのシールドコネクタは、シールド電線を挿通させるフランジ付きのハウジングと、シールド電線のシールド材(編組等)を金属製のシールドケースに電気接続させるシールド端子と、を備える。このシールドコネクタにおいては、シールド端子の一部をハウジングのフランジとシールドケースの外壁体とで挟み込み、これらを共締め固定することによって、シールド端子を介してシールド材をシールドケースに電気接続させる。この種のワイヤハーネスについては、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、シールドコネクタにおいては、ハウジングをシールドケースと同じ金属材料で成形するが、シールド端子がシールドケースとは別のイオン化傾向の異なる異種金属材料で成形されることもある。このようなシールドコネクタにおいては、シールド端子とシールドケースの間に水や電解質溶液が入り込むなどすると、シールド端子とシールドケースの内のイオン化傾向の大きいものの方でガルバニック腐食が発生し、その腐食が進むと、その二者間が固着してしまう可能性がある。よって、このシールドコネクタにおいては、ガルバニック腐食が発生してしまうと、その腐食箇所でシールド性能を低下させてしまう虞がある。このため、従来のシールドコネクタにおいては、シールド端子をハウジングの中に圧入し、このシールド端子をシールドケースに対して直接的に接触させないことによって、異種金属間接触を防ぐものもある(下記の特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-294344号公報
【文献】特開2002-260773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のシールドコネクタは、圧入構造だけでシールド端子をハウジングに固定しているので、経年変化等に伴って、ハウジングとシールド端子との間の保持力を低下させてしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、水等の液体が触れる場所でのシールドコネクタの異種金属間接触を長きに亘り防ぎ得るワイヤハーネスを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為、本発明は、金属製のシールド材が設けられているシールド電線と、筒内が前記シールド電線を挿通させる電線挿通路となり、かつ、金属製のシールドケースにおける外壁体の貫通孔に挿通させる筒体、及び、前記筒体を前記外壁体に固定させる被固定部を有する金属製のハウジングと、前記シールド材に対して物理的且つ電気的に接続させる筒状のシールド端子と、前記筒体の内周面と前記シールド電線の外周面との間の環状の隙間を埋めるものとして前記電線挿通路に配置され、前記シールドケースの外から前記電線挿通路に入り込んだ液体の前記隙間を介した前記シールドケースの室内への浸入を抑止する環状のシール部材と、を備え、前記シールド端子は、前記電線挿通路における前記シール部材よりも前記シールドケースの室内側の圧入完了位置で前記筒体に圧入固定させる圧入部と、前記圧入完了位置のまま前記電線挿通路における前記シール部材よりも前記シールドケースの室内側で前記筒体の被係止部に係止させる係止部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電線挿通路の中でもシールドケースの外から入り込んだ水等の液体がシール部材によって浸入し難くなっている場所で、シールド端子をハウジングに対して圧入固定させるので、ハウジングがシールドケースとイオン化傾向の同じ金属材料で成形され、かつ、シールド端子がハウジングやシールドケースとはイオン化傾向の異なる別の金属材料で成形されていたとしても、液体が触れる場所でのシールドコネクタの異種金属間接触を防ぐことができる。このため、このワイヤハーネスは、シールド端子とハウジングとの間及びシールド端子とシールドケースとの間でのガルバニック腐食の発生を抑えることができる。そして、本発明に係るワイヤハーネスにおいては、ハウジングの被係止部とシールド端子の係止部とを常時接触させている係止構造が設けられている。このため、このワイヤハーネスにおいては、ハウジングとシールド端子との間の圧入構造における互いの保持力が仮に経年変化等で低下したとしても、その係止構造でハウジングとシールド端子の物理的且つ電気的な接続状態を保ちつつ、シールド端子のハウジングからの脱離を抑止することができる。従って、本発明に係るワイヤハーネスにおいては、水等が触れる場所でのシールドコネクタの異種金属間接触を長きに亘り防ぐことができるので、自身や相手方の耐久性を向上させることができ、かつ、シールド性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のワイヤハーネスを示す斜視図である。
図2図2は、実施形態のワイヤハーネスを組み付け前のシールドケースと共に別角度から見た斜視図である。
図3図3は、図1のX-X線断面図である。
図4図4は、図3のA部拡大図である。
図5図5は、実施形態のワイヤハーネスを示す分解斜視図である。
図6図6は、図1のX-X線断面に相当する断面図であり、シールド端子の圧入前の状態を示している。
図7図7は、図1のX-X線断面に相当する断面図であり、シールド端子に対するフレア加工前の状態を示している。
図8図8は、図1のX-X線断面に相当する断面図であり、シールド端子に対するフレア加工後の状態を示している。
図9図9は、図1のX-X線断面に相当する断面図であり、シールド端子の変形形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るワイヤハーネスの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
[実施形態]
本発明に係るワイヤハーネスの実施形態の1つを図1から図9に基づいて説明する。
【0012】
図1から図5に示す符号1は、本実施形態のワイヤハーネスを示す。このワイヤハーネス1は、互いに組み付けられるシールド電線10とシールドコネクタ20とを備える。
【0013】
このワイヤハーネス1は、例えば、車両の電気機器(例えば、回転機やインバータ)500を車両の他の電気機器(図示略)等に電気接続させるために設けられ、その電気機器500における金属製の筐体(以下、「シールドケース」という。)501に取り付けられる(図2及び図3)。シールド電線10は、そのシールドケース501の室内501aで機器本体(図示略)に電気接続させ、そのシールドケース501の外壁体(以下、「シールド壁」という。)501bの貫通孔501cに通して、室内501aからシールドケース501の外に引き出させる(図2及び図3)。シールドコネクタ20は、その内方にシールド電線10を挿通させ、シールドケース501の外でシールド壁501bに固定して、例えば、貫通孔501cからシールドケース501の室内501aへのノイズの侵入を抑制する。
【0014】
シールド電線10は、円柱状の導電性の芯線11と、この芯線11を同心で覆う円筒状の絶縁性の内部被覆(内部シース)12と、この内部被覆12を同心で覆う円筒状の導電性のシールド材13と、このシールド材13を同心で覆う円筒状の絶縁性の外部被覆(外部シース)14と、を備える(図1から図3及び図5)。
【0015】
芯線11とシールド材13は、金属材料で成形される。例えば、芯線11は、1本の円柱状の金属製の線状導体から成るものであってもよく、複数本の金属製の線状導体を撚り合わせるなどして円柱状の1本として束ねたものであってもよい。また、シールド材13は、その芯線11へのノイズの侵入を抑えるべく設けられる。例えば、このシールド材13は、金属製の線状導体を網目状で且つ円筒状に編み上げた編組体であってもよく、円筒状に形成された金属製の箔材(所謂金属箔)であってもよい。
【0016】
シールドコネクタ20は、そのシールド電線10を挿通させる金属製のハウジング30を備える(図1から図5)。更に、このシールドコネクタ20は、シールド電線10のシールド材13をシールドケース501に電気接続させ、そのシールド材13に乗ったノイズをシールドケース501から車体に逃がすシールド端子40を備える(図1から図5)。
【0017】
ハウジング30は、筒内がシールド電線10を挿通させる電線挿通路30aとなり、かつ、シールド壁501bの円形の貫通孔501cに挿通させる筒体31を有する(図1から図8)。更に、このハウジング30は、その筒体31をシールド壁501bの外壁面501bに固定させる被固定部32を有する(図1から図3及び図5から図8)。
【0018】
筒体31は、貫通孔501cを介して内方のシールド電線10をシールドケース501の室内501aと外との間に亘って配索させる。この筒体31は、筒軸方向における一端の第1開口31aと、筒軸方向における他端の第2開口31bと、を有する(図3及び図5から図8)。この筒体31においては、シールドケース501の室内501a側に第1開口31aが配置され、シールドケース501の外側に第2開口31bが配置される。ここでは、シールド壁501bの貫通孔501cが円形状に形成され、かつ、筒体31が円筒状に形成されている。
【0019】
被固定部32は、小径部と大径部とを同一平面上で繋げた水滴形(所謂ティアドロップ形状)の平板状のフランジ部である。この被固定部32は、その大径部が筒体31よりも大きな外径に形成され、この大径部が筒体31における筒軸上の途中で同心上に配置される。この被固定部32においては、その小径部に貫通孔32aが形成されている(図1から図3及び図5)。この被固定部32は、その貫通孔32aに通した雄螺子部材(図示略)をシールド壁501bの雌螺子部501dに螺合させることによって、シールド壁501bの外壁面501bに固定される(図2及び図3)。
【0020】
このハウジング30は、筒体31を第1開口31a側からシールド壁501bの貫通孔501cに差し込み、被固定部32の平面がシールド壁501bの外壁面501bに当接した位置で当該シールド壁501bに螺子止め固定させる。よって、筒体31においては、被固定部32よりも第1開口31a側が貫通孔501cに差し込まれる。このため、この筒体31は、シールド壁501bの貫通孔501cの内径よりも小さい外径の円筒状に形成されている(図3)。
【0021】
シールド端子40は、金属材料で成形される。このシールド端子40は、シールド電線10のシールド材13をシールドケース501に対して間接的に電気接続させるものである。よって、このシールド端子40は、少なくともシールド電線10のシールド材13に対して物理的且つ電気的に接続させることによって、そのシールド材13に対して直接的に電気接続させる(図3及び図4)。
【0022】
一方、このシールド端子40は、筒状に成形されて、電線挿通路30aに配置される。このシールド端子40は、その電線挿通路30aの中でハウジング30に対して物理的且つ電気的に接続させることによって、そのハウジング30を介してシールドケース501に対して間接的に電気接続させる。このため、このシールド端子40は、シールドケース501の外から電線挿通路30aに入り込んだ水や電解質溶液に触れない場所でハウジング30に対して物理的且つ電気的に接続させる。例えば、ハウジング30は、電線挿通路30aにおいて、筒体31の内周面とシールド電線10の外周面との間に環状の隙間を形成する。故に、このハウジング30においては、シールドケース501の外の水等の液体が第2開口31bから電線挿通路30aに入り込むと、その液体が筒体31の内周面とシールド電線10の外周面との間の隙間を介して第1開口31a側に流れていく可能性がある。そこで、シールドコネクタ20は、シールドケース501の外から電線挿通路30aに入り込んだ液体のその隙間を介したシールドケース501の室内501aへの浸入を抑止する環状のシール部材(以下、「第1シール部材」という。)51を備える(図3及び図5)。よって、シールドコネクタ20においては、その第1シール部材51よりもシールドケース501の室内501a側がシールドケース501の外から電線挿通路30aに入り込んだ液体に触れない場所となる。シールド端子40は、その第1シール部材51よりもシールドケース501の室内501a側で筒体31に対して物理的且つ電気的に接続させる(図3及び図4)。
【0023】
第1シール部材51は、筒体31の内周面とシールド電線10の外周面(外部被覆14の外周面)との間の環状の隙間を埋めるものとして電線挿通路30aに配置される。この第1シール部材51は、シールド電線10と共に第2開口31bから電線挿通路30aに挿入される円環状の防水部材であり、筒体31の内周面とシールド電線10の外周面との間の円環状の隙間を埋めて防水性を高めている(図3及び図5)。
【0024】
このように、このシールドコネクタ20においては、シールドケース501の外から電線挿通路30aに水等の液体が入ってきたとしても、その液体が第1シール部材51よりもシールドケース501の室内501a側に浸入し難くなっている。そして、このシールドコネクタ20においては、シールドケース501の外から電線挿通路30aに入り込んだ水等の液体が第1シール部材51によって浸入し難くなっている場所で、シールド端子40をハウジング30に対して物理的且つ電気的に接続させ、そのハウジング30を介してシールド端子40をシールドケース501に間接的に電気接続させる。よって、このシールドコネクタ20においては、ハウジング30がシールドケース501とイオン化傾向の同じ金属材料で成形され、かつ、シールド端子40がハウジング30やシールドケース501とはイオン化傾向の異なる別の金属材料で成形されていたとしても、水等の液体が入り込んでこない場所でのシールド端子40とハウジング30との異種金属間接触になる。このため、このシールドコネクタ20においては、シールド端子40とハウジング30との間及びシールド端子40とシールドケース501との間でのガルバニック腐食の発生を抑えることができる。例えば、ハウジング30とシールドケース501は、アルミニウム又はアルミニウム合金で成形されている。そして、シールド端子40は、銅又は銅合金で成形されている。
【0025】
具体的に、シールド端子40は、電線挿通路30aの中で筒体31に圧入固定させ、かつ、その圧入固定箇所とは別の場所で筒体31に係止させる。このシールド端子40は、電線挿通路30aにおける第1シール部材51よりもシールドケース501の室内501a側の圧入完了位置で筒体31に圧入固定させる圧入部41と、その圧入完了位置のまま電線挿通路30aにおける第1シール部材51よりもシールドケース501の室内501a側で筒体31の被係止部31cに係止させる係止部42と、を有する(図3及び図4)。このシールド端子40は、少なくとも圧入部41が筒体31に接触している場所で筒体31に対して物理的且つ電気的に接続させる。そして、このシールド端子40は、被係止部31cと係止部42の係止構造如何で被係止部31cと係止部42とが常に接触しているので、この常時接触状態の係止構造であれば、被係止部31cと係止部42とが接触している場所でも筒体31に対して物理的且つ電気的に接続される。
【0026】
圧入部41は、シールド端子40の外周面から周方向に亘って環状に突出させた突出部として形成される(図3から図8)。ここで示す圧入部41は、シールド端子40の外周面の上に積層させたが如き環状の突出部であり、シールド端子40と同心の円環状に形成されている。
【0027】
筒体31は、圧入部41を嵌め込んで圧入固定させる環状の溝部31dを有する(図4から図8)。この溝部31dは、筒体31における第1開口31a側の端部に設ける。このシールドコネクタ20においては、シールド端子40をその第1開口31aから電線挿通路30aに挿入していく(図5から図8)。このため、溝部31dには、圧入部41を第1開口31aから嵌め込んで圧入固定させる。
【0028】
このように、このシールドコネクタ20においては、シールドケース501の外から電線挿通路30aに入り込んだ水等の液体が第1シール部材51によって浸入し難くなっている場所で、シールド端子40をハウジング30に対して圧入固定させる。つまり、このシールドコネクタ20においては、そのシールド端子40が圧入部41によってハウジング30に対して物理的且つ電気的に接続される。このため、このシールドコネクタ20においては、ハウジング30とシールド端子40との間に、その相互間で保持し合うためのロック構造を設ける必要がない。よって、このワイヤハーネス1においては、シールドコネクタ20の体格の小型化が可能になる。
【0029】
係止部42は、シールド端子40におけるシールドケース501の外側の端部をフレア形状に拡げ、圧入完了位置のシールド端子40の第2開口31b側から第1開口31a側への動きを被係止部31cに係止させるフレア部として形成される(図3図4及び図8)。よって、この係止部42においては、その外周面が環状の傾斜面に形成されている。このため、被係止部31cは、このフレア形状の係止部42の外周面(環状の傾斜面)を面接触させる環状の傾斜面に形成される。
【0030】
このシールドコネクタ20においては、係止部42を形作るためのフレア加工をハウジング30の中で行う。このシールドコネクタ20においては、シールド端子40を係止部42の形成されていない状態で第1開口31aから電線挿通路30aに挿入し、圧入部41を溝部31dに圧入固定させる(図5から図7)。このシールドコネクタ20においては、フレア加工用の治具601を第2開口31bから電線挿通路30aに挿入し、その治具601でシールド端子40におけるシールドケース501の外側の端部をフレア形状に拡げる(図7及び図8)。その治具601には、シールド端子40におけるシールドケース501の外側の端部を内周面側からフレア形状に押し広げていく環状の傾斜面601aが形成されている。ここで示す被係止部31cは、そのフレア加工にも利用される。この被係止部31cは、フレア加工に際して、治具601の環状の傾斜面601aによって押し広げられてきたシールド端子40の端部を環状の傾斜面601aとの間で挟み込み、その端部をフレア形状の係止部42として形作る。
【0031】
このように、このシールドコネクタ20においては、ハウジング30の被係止部31cとシールド端子40の係止部42とが互いに係止可能な状態になっており、そのシールド端子40をハウジング30の圧入完了位置に保つことができる。このため、このシールドコネクタ20においては、仮に経年変化等でハウジング30とシールド端子40との間の圧入構造における互いの保持力が低下したとしても、被係止部31cと係止部42とによる係止構造でシールド端子40のハウジング30からの脱離を抑止することができる。更に、このシールドコネクタ20においては、その被係止部31cと係止部42が常時接触状態の係止構造になっており、圧入構造における互いの保持力が低下し、この圧入構造によるハウジング30とシールド端子40の物理的且つ電気的な接続状態が確保し難くなったとしても、被係止部31cと係止部42との間でハウジング30とシールド端子40の物理的且つ電気的な接続状態を維持することができる。
【0032】
このシールドコネクタ20においては、シールド電線10を第2開口31bから電線挿通路30aに挿入し、シールド端子40の内部空間を介して第1開口31aからシールド電線10を外に引き出させる。シールド電線10は、そのシールド端子40の内部空間から引き出された先で、シールド材13を折り返してシールド端子40の外周面に同心上で被せる。このシールドコネクタ20においては、そのシールド材13の折返し部13aの上から円筒状のスリーブ61を同心上で被せて、このスリーブ61と共にシールド材13の折返し部13aをシールド端子40の外周面に圧着させる(図3及び図4)。そのスリーブ61は、例えば、シールド材13と同じ金属材料又はシールド端子40と同じ金属材料で成形される。例えば、ここでは、スリーブ61の外周面を図示しない第1金型と第2金型とでそれぞれに挟み込みながら加圧して、シールド材13の折返し部13aにスリーブ61を加締め圧着させる。
【0033】
また、このシールドコネクタ20においては、シールド電線10と共に第2シール部材52が第2開口31bから電線挿通路30aに挿入される。このシールドコネクタ20は、その第2シール部材52が第2開口31bから抜け出ぬように止めるリアホルダ71を備える(図3及び図5)。このリアホルダ71は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形され、第2開口31bを塞いだ状態でハウジング30の筒体31に組み付けられている。
【0034】
また、このシールドコネクタ20においては、そのハウジング30の筒体31の外周面とシールド壁501bの貫通孔501cの内周面との間に環状の隙間が形成される。このため、シールドコネクタ20は、シールドケース501の外の水等の液体がその筒体31と貫通孔501cとの間の隙間を介してシールドケース501の室内501aへと浸入せぬように配置された環状のシール部材(以下、「第2シール部材」という。)52を備える(図1から図5)。
【0035】
この第2シール部材52は、筒体31と同心上で被固定部32の大径部の平面とシールド壁501bの外壁面501bとの間に挟み込んで、筒体31とシールド壁501bの貫通孔501cとの間の隙間よりもシールドケース501の外側で防水性を高めるものであってもよい。これに替えて、この第2シール部材52は、筒体31とシールド壁501bの貫通孔501cとの間の環状の隙間を埋めるものとして当該隙間に配置されてもよい。ここで示す第2シール部材52は、筒体31の外周面に設けた環状溝31eに同心上で配置した所謂Oリングであり、その筒体31とシールド壁501bの貫通孔501cとの間の隙間を埋めて防水性を高めている(図3から図5)。ここで示すハウジング30は、筒体31の外周面とシールド壁501bの貫通孔501cの内周面との間に円環状の隙間を形成する。よって、この第2シール部材52は、円環状に成形され、筒体31の外周面に設けた円環状の環状溝31eに組み付けられる。
【0036】
以上示したように、本実施形態のワイヤハーネス1においては、電線挿通路30aの中でもシールドケース501の外から入り込んだ水等の液体が第1シール部材51によって浸入し難くなっている場所で、シールド端子40をハウジング30に対して圧入固定させるので、その液体が触れる場所でのシールドコネクタ20の異種金属間接触を防ぐことができる。このため、このワイヤハーネス1は、シールドコネクタ20においての異種金属間のガルバニック腐食の発生を抑えることができると共に、このシールドコネクタ20と相手方のシールドケース501との間においての異種金属間のガルバニック腐食の発生を抑えることができる。
【0037】
そして、本実施形態のワイヤハーネス1においては、ハウジング30の被係止部31cとシールド端子40の係止部42とを常時接触させている係止構造が設けられている。このため、このワイヤハーネス1においては、ハウジング30とシールド端子40との間の圧入構造における互いの保持力が仮に経年変化等で低下したとしても、その係止構造でハウジング30とシールド端子40の物理的且つ電気的な接続状態を保ちつつ、シールド端子40のハウジング30からの脱離を抑止することができる。よって、このワイヤハーネス1においては、水等が触れる場所でのシールドコネクタ20の異種金属間接触を長きに亘り防ぐことができるので、自身や相手方の耐久性を向上させることができ、かつ、シールド性能の低下を抑制することができる。
【0038】
ところで、このワイヤハーネス1においては、シールド端子40を下記のシールド端子140に置き換えてもよい(図9)。このシールド端子140は、先のシールド端子40において圧入部41を下記の圧入部141に変えたものに相当する。
【0039】
この圧入部141は、先の圧入部41と同じように、電線挿通路30aにおける第1シール部材51よりもシールドケース501の室内501a側の圧入完了位置で筒体31に圧入固定させる部位であり、シールド端子40の外周面から周方向に亘って環状に突出させた突出部として形成される。そして、この圧入部141は、先の圧入部41と同じように、筒体31の環状の溝部31dに嵌め込んで圧入固定させる。但し、ここで示す圧入部141は、シールド端子40の筒軸方向における一部を内周面から押し出して、このシールド端子40の外周面から周方向に亘って環状に膨出させた突出部であり、シールド端子40と同心の円環状に形成される。
【0040】
本実施形態のワイヤハーネス1は、このようなシールド端子140を用いたとしても、シールド端子40を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ワイヤハーネス
10 シールド電線
13 シールド材
20 シールドコネクタ
30 ハウジング
30a 電線挿通路
31 筒体
31a 第1開口
31b 第2開口
31c 被係止部
31d 溝部
32 被固定部
40,140 シールド端子
41,141 圧入部
42 係止部
51 第1シール部材(シール部材)
501 シールドケース
501a 室内
501b シールド壁(外壁体)
501c 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9