IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

特許7430769エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉
<>
  • 特許-エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉 図1
  • 特許-エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉 図2
  • 特許-エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉 図3
  • 特許-エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉 図4
  • 特許-エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉 図5
  • 特許-エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉 図6
  • 特許-エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】エネルギー変換システムへの接続にプリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/02 20060101AFI20240205BHJP
   G21C 15/18 20060101ALI20240205BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20240205BHJP
   G21D 1/02 20060101ALI20240205BHJP
   G21C 15/247 20060101ALI20240205BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G21C1/02 230
G21C15/18 R
G21D1/00 Q
G21D1/02 A
G21C15/247
F28F3/08 301Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022193911
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2020518712の分割
【原出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2023027165
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】62/566,980
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/568,486
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ハークネス、アレクサンダー、ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】スタンスベリー、コーリー、エー
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-012348(JP,A)
【文献】特開平02-143192(JP,A)
【文献】特開平06-230170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0322121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/02
G21C 15/18
G21D 1/00
G21D 1/02
G21C 15/247
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上蓋を有する容器を具備する原子炉と共に使用可能なマイクロチャンネル熱交換器であって、当該容器には一次冷却材が備えられ、当該容器内で当該一次冷却材の自由表面が画定され、
当該マイクロチャンネル熱交換器は、
プレートを積み重ねて接合した構成の中核部であって、頂面、底面、第1の側面、および第2の側面を有する中核部と、
当該中核部内に画定される一次チャンネルであって、当該一次チャンネルが、当該第1の側面に画定される一次流入口から当該第2の側面に画定される一次流出口へ延びる、一次チャンネルと、
当該中核部内に画定される二次チャンネルであって、当該二次チャンネルが、当該一次チャンネルの間を、当該頂面に画定される二次流入口から当該頂面に画定される二次流出口へ延びる、二次チャンネルと
当該二次流入口から延びる流入口プレナムと、
当該二次流出口から延びる流出口プレナムと
を具備するものであり、
当該マイクロチャンネル熱交換器は、当該流入口プレナムと当該流出口プレナムを当該一次冷却材の当該自由表面よりも上方に残して、当該一次冷却材の当該自由表面よりも下方に沈む構成である
マイクロチャンネル熱交換器。
【請求項2】
前記流入口プレナムは前記二次流入口と流体連通関係にあ、前記頂面から前記上蓋を貫いて延びる請求項1のマイクロチャンネル熱交換器。
【請求項3】
前記流入口プレナムは、前記一次冷却材の前記自由表面よりも上方の場所で供給ヘッダに流体連結される構成の主流入口を具備する、請求項2のマイクロチャンネル熱交換器。
【請求項4】
前記流入口プレナムは、前記原子炉が収容される一次原子炉格納容器の外側の場所で供給ヘッダに流体連結される構成の主流入口を具備する、請求項2のマイクロチャンネル熱交換器。
【請求項5】
前記流出口プレナムは前記二次流出口と流体連通関係にあ、前記頂面から前記上蓋を貫いて延びる請求項2のマイクロチャンネル熱交換器。
【請求項6】
前記流出口プレナムは前記一次冷却材の前記自由表面よりも上方の場所で帰還ヘッダに流体連結される構成の主流出口を具備する、請求項5のマイクロチャンネル熱交換器。
【請求項7】
前記流出口プレナムは、前記原子炉が収容される一次原子炉格納容器の外側の場所で帰還ヘッダに流体連結される構成の主流出口を具備する、請求項5のマイクロチャンネル熱交換器。
【請求項8】
前記一次チャンネルによって画定される第1のサイズは、前記二次チャンネルによって画定される第2のサイズとは異なる、請求項1のマイクロチャンネル熱交換器。
【請求項9】
上蓋を有する容器を具備する原子炉であって、当該容器には一次冷却材が備えられ、当該一次冷却材は当該容器内に自由表面を有するものであり、
当該原子炉はさらマイクロチャンネル熱交換器を具備するものであり、
当該マイクロチャンネル熱交換器は、
プレートを積み重ねて接合した構成の中核部であって、頂面、当該頂面の反対側に位置する底面、当該頂面と当該底面との間を延びる第1の側面、および当該第1の側面の反対側に位置する第2の側面を有する中核部と、
当該中核部を貫いて、当該第1の側面の一次流入口から当該第2の側面の一次流出口へ延びる、一次チャンネルと、
当該中核部を貫いて、当該一次チャンネルの間を、当該頂面の二次流入口から当該頂面の二次流出口へ延びる、二次チャンネルと
当該二次流入口から延びる流入口プレナムと、
当該二次流出口から延びる流出口プレナムと
を具備するものであ
当該マイクロチャンネル熱交換器は、当該流入口プレナムと当該流出口プレナムを当該一次冷却材の当該自由表面よりも上方に残して、当該一次冷却材の当該自由表面よりも下方に沈む構成である
原子炉。
【請求項10】
前記流入口プレナムが、前記二次流入口と流体連通関係にあ、前記頂面から前記上蓋を貫いて延びる請求項9の原子炉。
【請求項11】
前記流入口プレナムは、前記一次冷却材の前記自由表面よりも上方の場所で供給ヘッダに流体連結される構成の主流入口を具備する、請求項10の原子炉。
【請求項12】
前記流入口プレナムは、前記原子炉が収容される一次原子炉格納容器の外側の場所で供給ヘッダに流体連結される構成の主流入口を具備する、請求項10の原子炉。
【請求項13】
前記流出口プレナムが、前記二次流出口と流体連通関係にあ、前記頂面から前記上蓋を貫いて延びる請求項10の原子炉。
【請求項14】
前記流出口プレナムは前記一次冷却材の前記自由表面よりも上方の場所で帰還ヘッダに流体連結される構成の主流出口を具備する、請求項13の原子炉。
【請求項15】
前記流出口プレナムは、前記原子炉が収容される一次原子炉格納容器の外側の場所で帰還ヘッダに流体連結される構成の主流出口を具備する、請求項13の原子炉。
【請求項16】
前記容器内に位置する炉心であって、当該炉心の下方に下部プレナムが画定され、当該炉心の上方に上部プレナムが画定される、炉心と、
当該容器内に画定される冷却材ポンプ流入口プレナムと、
当該冷却材ポンプ流入口プレナムから当該下部プレナムへ流体を移送するように構成された冷却材ポンプとをさらに具備し、
前記一次流入口は当該上部プレナムと流体連通し、前記一次流出口は当該冷却材ポンプ流入口プレナムと流体連通する、請求項9の原子炉。
【請求項17】
前記一次チャンネルによって画定される第1のサイズは、前記二次チャンネルによって画定される第2のサイズとは異なる、請求項9の原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、各々参照により本願に組み込まれる2017年10月2日出願の米国仮特許出願第62/566,980号および2017年10月5日出願の米国仮特許出願第62/568,486号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明はプール型液体金属高速スペクトル原子炉に関し、具体的には、プリント回路型熱交換器を用いるプール型液体金属高速スペクトル炉に関する。本発明はまた、プール型液体金属高速スペクトル炉に使用するプリント回路型熱交換器に関する。
【0003】
非限定的な例としての鉛冷却高速スペクトル炉のような液体金属原子炉では、これまで、スパイラル型またはバイオネット型の蒸気発生器の使用が提案されている。これらのタイプの蒸気発生器は嵩が大きいため、受け皿として直径がかなり大きい原子炉容器が必要であり、一次冷却材インベントリの有意な増加が避けられない。また、従来の構成は「ホットレグ」を内部に設ける必要があり、これが容器の高さを押し上げことになる。鉛冷却炉の場合、このような冷却材インベントリの有意な増加は、耐震支持による保護を必要とする原子力プラント安全関連機器の重量の有意な増加に直結する。また、従来の蒸気発生器は、熱伝達領域を形成するため直径が大きめの細管を多数使用する。これらの細管は、冷却材の封じ込めや多量のろ過を必要とする原子炉冷却系(RCS)の加圧事象およびこれらの細管のうちの1本以上の破断による偶発的な臨界事象を発生させる虞がある。細管破断後に蒸気または他の二次側流体が炉心内に引き込まれて、減速と中性子吸収に劇的な変化が生じ、局所的な臨界事象が発生する、というのが想定される典型的な結果である。付随して起きるこの事象の重大性は、有意な燃料損傷をもたらすに十分なものである。したがって、原子炉を冷却する仕組みの改良が必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施態様は、プリント回路型熱交換器(PCHE)のようなマイクロチャンネル熱交換器の固有の特性を活かして、プール型液体金属冷却高速スペクトル炉を有意に小型化する。それと同時に、かかる実施態様は、原子炉冷却系の唯一の加圧源と、一般的にこのタイプの原子炉に偶発的に起こる臨界事象の主要な要因を効果的に排除する。
【0005】
本発明の実施態様は、炉心上方の排出プレナムと一次冷却材ポンプ流入口との間に冷却材の流路が形成されるように、複数のプリント回路型熱交換器を展開させる。より高温の冷却材が熱交換器を半径方向に通り抜けて環状プレナムに向かい、当該環状プレナムが原子炉冷却材ポンプへの冷却材の供給を維持する。
【0006】
本発明の一局面において、プリント回路型熱交換器は、プレートを積み重ねて拡散接合した構成の中核部であって、頂面、当該頂面の反対側に位置する底面、当該頂面と当該底面との間を延びる第1の側面、および当該第1の側面の反対側に位置する第2の側面を有する中核部と、当該中核部内に画定される複数の一次チャンネルであって、各一次チャンネルが、当該第1の側面に画定される一次流入口から当該第2の側面に画定される一次流出口へ延びる複数の一次チャンネルと、当該中核部内に画定される複数の二次チャンネルであって、各二次チャンネルが、当該一次チャンネルの少なくとも一部の間を、当該頂面に画定される二次流入口から当該頂面に画定される二次流出口へ延びる複数の二次チャンネルとを有する。
【0007】
当該プリント回路型熱交換器は、当該二次流入口と流体連通関係にある第1の空間を画定する流入口プレナムと、当該二次流出口と流体連通関係にある第2の空間を画定する流出口プレナムとをさらに含んでよい。
【0008】
当該流入口プレナムは供給ヘッダに流体連結される構成の主流入口を含み、当該流出口プレナムは帰還ヘッダに流体連結される構成の主流出口を含むことができる。
【0009】
当該二次チャンネルの断面は半円形でよい。
【0010】
本発明の別の局面において、プール型液体金属高速スペクトル炉は、容器と、当該容器内に画定される下部プレナムと、当該容器内の当該下部プレナムの上方に位置する炉心と、当該容器内の当該炉心の上方に画定される上部プレナムと、当該容器内に画定される多数の冷却材ポンプ流入口プレナムと、多数の冷却材ポンプであって、各冷却材ポンプが、当該多数の冷却材ポンプ流入口プレナムのうちの1つから当該下部プレナムへ流体を移送するように構成された多数の冷却材ポンプと、各々が当該上部プレナムと当該多数の冷却材ポンプ流入口プレナムのうちの1つとの間に位置する多数のプリント回路型熱交換器とを具備し、各々のプリント回路型熱交換器は、プレートを積み重ねて拡散接合した構成の中核部であって、頂面、当該頂面の反対側に位置する底面、当該頂面と当該底面との間を延びる第1の側面、および当該第1の側面の反対側に位置する第2の側面を有する中核部と、当該中核部内に画定される複数の一次チャンネルであって、各一次チャンネルが、当該第1の側面に画定される一次流入口から当該第2の側面に画定される一次流出口へ延び、各一次流入口が当該上部プレナムと直接流体連通し、各一次流出口が当該多数の冷却材ポンプ流入口プレナムのうちの1つと直接流体連通する複数の一次チャンネルと、当該中核部内に画定される複数の二次チャンネルであって、各二次チャンネルが、当該一次チャンネルの少なくとも一部の間を、当該頂面に画定される二次流入口から当該頂面に画定される二次流出口へ延びる複数の二次チャンネルとを具備する。
【0011】
当該原子炉は、当該二次流入口と流体連通関係にある第1の空間を画定する流入口プレナムと、当該二次流出口と流体連通関係にある第2の空間を画定する流出口プレナムとをさらに具備する。
【0012】
当該容器は或る量の一次冷却材を収容し、当該或る量の一次冷却材は当該容器内に最高の液位を有し、当該流入口プレナムおよび当該流出口プレナムは当該最高の液位より上方に位置する。
【0013】
当該容器は上蓋を具備し、当該流入口プレナムおよび当該流出口プレナムは当該上蓋より上方に位置する。
【0014】
当該流入口プレナムは供給ヘッダに流体連結される構成の主流入口を含み、当該流出口プレナムは帰還ヘッダに流体連結される構成の主流出口を含んでよい。
【0015】
当該二次チャンネルの断面は半円形でよい。
【0016】
当該多数のプリント回路型熱交換器は複数の熱交換器より成り、当該多数の冷却材ポンプ流入口プレナムは複数の冷却材ポンプ流入口プレナムより成り、当該多数の冷却材ポンプは複数の冷却材ポンプより成り、当該複数のプリント回路型熱交換器および当該複数の冷却材ポンプはそれぞれ2つ一組で、当該炉心の上方外側に環状に配置することができる。
【0017】
当該複数のプリント回路型熱交換器は6つのプリント回路型熱交換器より成り、当該複数の冷却材ポンプは6つの冷却材ポンプより成る。
【0018】
当該プリント回路型熱交換器の各々は、当該上部プレナムを、対応する冷却材ポンプ流入口プレナムから分離する仕切りの少なくとも一部を構成してよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0020】
図1】本発明の一実施例に基づく原子炉の概略等角図である。
【0021】
図2】原子炉の蓋が透明なものとして原子炉容器内の構成機器の詳細な配置を示す、図1の原子炉の概略平面図である。
【0022】
図3】原子炉の蓋、容器および他の構成機器の一部が透明なものとして原子炉の内部機器を詳細に示す、図1の原子炉の別の概略等角図である。
【0023】
図4】一次冷却材の流れを示す、図1の原子炉の概略断面図である。
【0024】
図5】一次冷却材の流れを示す、図1の原子炉の概略平面図である。
【0025】
図6】内部の一次冷却材の流れを示す、本発明の一実施例に基づくプリント回路型熱交換器の概略立面図である。
【0026】
図7】内部の二次側冷却材の流れを示す、図6のプリント回路型熱交換器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下で、実施例を示す添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、本願に示す例に限定されると解釈するべきではない。これらの例はむしろ、本発明を詳細かつ完全に開示し、本発明の範囲を十分に当業者に伝えるために提供するものである。同じ参照番号は、本願を通して同じ構成要素を指している。
【0028】
本願に用いる用語「多数」は、ゼロでない任意の整数、すなわち1または1より大きい整数(すなわち複数)を意味する。
【0029】
プリント回路型熱交換器(PCHE)は、熱交換されるプロセス流体の各々に対して個別のマイクロチャンネルが形成されるように、化学エッチングを施したプレートを積み重ねて拡散接合したものである。この構成によると、小さな体積内に比較的大きな熱伝達領域を生成できる。本発明の一実施態様では、螺旋巻き管型熱交換器の代わりにPCHEを使用することにより、原子炉の直径が約11.5メートルから約8メートルに縮小し、必要となる冷却材の量が当初の約50%に減少する。鉛冷却炉の例では、冷却材の総重量が約7,500,000kgから約3,500,000kgに減少する結果、この重量を支えるために必要な耐震性を備えた構造体の費用が削減される。そのような冷却材質量の減少により、化学制御および腐食防止に関連する課題にも対処しやすくなる。
【0030】
従来のPCHEの構成とは異なり、本発明の二次側マイクロチャンネルはほぼU字形の構成であるため、二次側流体の供給ヘッダと帰還ヘッダを共にPCHEの一方の側に取り付けることができる。この構成は、供給ヘッダと帰還ヘッダならびに関連する配管が少なくとも一次冷却材の液位より上方に、好ましくは原子炉の蓋より上方に位置するようにPCHEをプール型原子炉内に配置するのを可能にする。この構成では、供給ヘッダ、帰還ヘッダおよび供給管に想定されるいかなる破断が起きても、二次側流体が一次冷却材に流れ込むことはないので、関連する臨界事象に伴うリスクが大幅に減少するかまたは排除される。また、この構成により、RCS内の唯一の加圧源がほぼなくなり、圧力を保持しながら封じ込めを行うために必要不可欠な装備や多量のろ過済み流体の排出口が不要になる。
【0031】
従来のPCHEからの別の変更点は、一次側流体のチャンネルを大きくしたことである。この「複合的」構成は、各作動流体の熱伝達特性、所望の熱水力性能および詰まりの回避を考慮して、各流体の流路の大きさと形状を最適化するのを可能にする。
【0032】
図1は、本発明の一実施例に基づく原子炉10の概略等角図である。原子炉10は、その一部を構成する外部容器12および蓋14によっておおむね画定される。原子炉10はまた、図示のように一部が蓋14から突出する、多数のプリント回路型熱交換器(PCHE)16および多数の一次冷却材ポンプ18を含む。本願に記述する実施例は、6つのPCHE16と6つの一次冷却材ポンプ18より成る構成を使用する。図2に示すように、PCHE16および冷却材ポンプ18はそれぞれ2つ一組で、炉心20の外側に環状に配置されている。また、図の実施例では、1つのポンプ18と1つのPCHE16が対を成す。各対のポンプ18とPCHE16には、両側の半径方向バッフル22により形成される専用の流路がある。専用流路を仕切ることにより、プラントの運転を継続しながら、単一または複数対のPCHE16とポンプ18を非稼働にすることができる。運転員は、保守点検または負荷追従出力調整のために、PCHE16を非稼働にすることができる。本発明の範囲から逸脱せずに、ポンプ18およびPCHE16の数および/または構成を変えた変形例が多数あることが分かる。
【0033】
図1~3は、本発明の一実施例における原子炉10および炉内構造物の概略配置図である。これらの図では、冷却材ポンプ18およびPCHE16が、それらの機器の物理特性および原子炉容器12内の位置をわかりやすくするように、支持構造物を透明なものとして示されている。原子炉10の平面図である図2は、炉心20が六角形であることを最もわかりやすく示している。この図では、炉心20は複数の六角形の燃料要素および中性子反射体要素より成り、炉心20の全体形状が六角形であることを想定している。これは、高速炉用として提案可能な多くの構成のうちの1つである。この場合、6対のポンプ18およびPCHE16は、想定される六角形の炉心20に対して良好に機能する。
【0034】
図2はまた、ポンプ18とPCHE16の対ごとに別個の流路を形成する半径方向バッフル22を最もわかりやすく示している。半径方向バッフル22は、2つ一組のPCHE16の間および2つ一組の冷却材ポンプ18の間を隔離するものであることがわかる。
【0035】
図3は、原子炉10内に収容され、内部構造(透明なものとして図示)によって支持される構成機器の等角図である。この実施例において、各ポンプ18は、原子炉炉内構造物の支持構造物26と一体的な円筒形バッフル24を使用したプロペラ式軸流ポンプであることを想定している。このタイプのポンプを使用すると、各ポンプ18の電動機28を、原子炉冷却材の自由表面より上方、本例では容器12より上方、すなわち原子炉10の本体の外側で高温環境から外れたところに配置することができる。本発明の範囲から逸脱せずに、これとは別のポンプ構成を使用することができる。
【0036】
図4は、本発明の好ましい実施態様の概略立面図である。この図において、実線の矢印(加熱された冷却材)および点線の矢印(冷却された冷却材)は、一次および二次冷却材の流れとその相対的な温度を示す。炉心20から出る一次冷却材の温度をThot、PCHE16から出る一次冷却材の温度をTcoldとすると、原子炉の一次冷却系は次のように説明できる。一次冷却材は温度Tcoldで一次冷却材ポンプ18に流入する。一次冷却材Pは、ポンプ18によって加圧され、原子炉下部プレナム30に入る。冷却材は次に、燃料集合体のチャンネルを通過し、炉心20内の核分裂反応によって加熱されてThotになり、上部プレナム32へ送り出される。一次冷却材は、上部プレナム32から半径方向(すなわち図4の長手軸34から外向き)に流れ、PCHE16のマイクロチャンネルを通って原子炉冷却材ポンプの流入口プレナム36に還流する。一次冷却材PはPCHE16を通過する際に二次側流体Sに熱を伝達するが、その過程で温度がTcoldに戻る。この熱伝達によって加熱された二次側流体Sを、エネルギー変換システム(図示せず)のタービン発電機セットが発電のために利用する。
【0037】
図5は、原子炉10の二次元概略上面図である。この図は、6つのPCHE16が、単一の供給ヘッダ40および単一の帰還ヘッダ42(供給ヘッダ40の直下にある)に接続される1つの可能な構成を示す。この図はまた、平面図の視点で一次冷却材Pの流路を示すが、実線矢印(加熱された冷却材)と点線矢印(冷却された冷却材)は相対的な温度を表している。
【0038】
例示の実施態様において、PCHEの供給ヘッダ40と帰還ヘッダ42は、原子炉10の外側で一次冷却材Pの自由表面44よりはるか上方に位置する(本発明の実施態様では、供給ヘッダと帰還ヘッダが一次原子炉格納容器の外側に位置することもわかる)。この構成において、ひとつのPCHE16の供給ヘッダまたは帰還ヘッダ、若しくは供給管および戻り管に想定される破断が起きても、原子炉10が加圧されたり、二次側流体Sが一次冷却材Pに流入することはない。一次冷却材Pの自由表面44の下方に沈んだ状態にあるのはPCHE16のマイクロチャンネル46(図7)だけなので、二次側システムに想定される破断が起きて偶発的な臨界事象が発生するリスクが有意に低下する。
【0039】
前述の図4には、一次冷却材Pの自由表面の予想される相対的な液位44が示してある。運転時に、一次冷却材ポンプ18は、炉心排出プレナム32内の一次冷却材Pの自由表面の液位44を上昇させることにより、一次冷却材Pを押圧してPCHE16の一次側マイクロチャンネル48(図6)を通過させるに必要な駆動水頭を提供する。
【0040】
図6、7は、本発明の一実施例に基づくPCHE16の概略立面図である。PCHE16の内部の一次冷却材Pの流れを図6に、二次流体Sの流れを図7に略示する。PCHE16は、プレートを積み重ねて拡散接合した構成の中核部50を含む。中核部50は、頂面52、頂面52の反対側に位置する底面54、頂面52と底面54との間を延びる第1の側面56、および第1の側面56の反対側に位置する第2の側面58を含む。
【0041】
図6において、PCHE16の中核部50にはさらに、複数の一次チャンネル48(図6では5つのチャンネルを示す)が画定されている。一次チャンネル48の各々は、第1の側面56に画定される一次流入口62から第2の側面58に画定される一次流出口64へ延びている。各一次チャンネル48は、本発明の範囲から逸脱せずに、多種多様な形状または形態をとることができる。例えば、一次チャンネルは、本発明の範囲から逸脱せずに、機械加工、プレート形成または他の任意適当なプロセスによって形成することができる。
【0042】
図7において、PCHE16の中核部50にはさらに、複数の二次チャンネル46(そのうちの1つのみを例示する)が画定されている。二次チャンネル46の各々は、一次チャンネル48の少なくとも一部の間を、中核部50の頂面52に画定される二次流入口72から中核部50の頂面52に画定される二次流出口74へ延びている。二次チャンネル46の各々は、エッチングによって形成することができる。したがって、二次チャンネル46は一般的に、半円形、円形、または楕円形の断面である。ただし、本発明の範囲から逸脱せずに、二次チャンネル46の断面を他の形状にしてもよい。
【0043】
図6、7の両方に示すように、PCHE16にはさらに、二次流入口72と流体連通関係の第1の空間82を画定する流入口プレナム80と、二次流出口74と流体連通関係の第2の空間86を画定する流出口プレナム84とがある。流入口プレナム80は供給ヘッダに流体連結される構成の主流入口90を含み、流出口プレナム84は帰還ヘッダに流体連結される構成の主流出口92を含む。
【0044】
図示の一次チャンネル48および二次チャンネル46は、ほぼ直線状またはU字形であるが、本発明の範囲から逸脱せずに、さまざまな形状が可能である。また、一次チャンネル48と二次チャンネル46の一般的な相互位置関係は、本発明の範囲から逸脱せずに、さまざまな流れパターン(非限定的な例として、並流、向流、横流またはそれらの組み合わせ)となるようにすることができる。
【0045】
前述の例からわかるように、原子炉内のこの構成は、原子炉のサイズと所要の冷却材インベントリを減少させるコンパクトな設計と、それによる重量および化学制御困難性の低減とをもたらす。各PCHEの二次側のマイクロチャンネルは、一般的に従来の蒸気発生器につきものの細管破断による臨界事象発生リスクを排除する。PCHEの二次側のマイクロチャンネルは、RCS内の大きな加圧源に伴うリスクを排除することにより、高圧流体の封じ込めや多量の流体のろ過を不要にする。PCHEの一次側のマイクロチャンネルは、二次側のマイクロチャンネルとはサイズが異なる。それにより、性能が最適化され、各伝熱媒体に特化した設計目標が満足される。臨界リスクの排除を可能にする従来型PCHEの改良として、U字形の二次側流体マイクロチャンネルの導入および二次側流体の供給プレナムおよび帰還プレナムのPCHEの一方の側への接続と、二次側供給ヘッダおよび帰還ヘッダが一次冷却材の液位より高い位置(および原子炉の外側および/または一次原子炉格納容器の外側)にあるという点が含まれる。この構成により、制御棒のような反応度制御装置を炉心の直上に配置することができる。この構成は、一次冷却材ポンプの電源を喪失した場合、一次冷却材の自然循環を促進する。この構成では、炉心から冷却材に付与された熱は冷却材が原子炉容器の胴部に到達する前に除去されるので、原子炉容器の腐食リスクが低下する。この構成では、一次冷却材の温度が一次冷却材ポンププレナムに流入する前にPCHEによって引き下げられるので、原子炉冷却材ポンプのインペラの腐食リスクが低下する。プレナム領域が長くなることで自由表面より上方の質量が増えるため、鉛の中のPCHEの浮力が打ち消される。
【0046】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の配置構成は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7