(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】運動用トップス及び運動用パンツ
(51)【国際特許分類】
A41D 27/28 20060101AFI20240205BHJP
A41D 27/10 20060101ALI20240205BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20240205BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20240205BHJP
A41D 3/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A41D27/28 C
A41D27/10 Z
A41D1/06 L
A41D1/02 Z
A41D3/00 Z
A41D1/06 501B
A41D1/06 502E
A41D1/06 502H
(21)【出願番号】P 2022502791
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008387
(87)【国際公開番号】W WO2021171573
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畠 誠
(72)【発明者】
【氏名】古閑 豊
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3162643(JP,U)
【文献】実公昭46-014497(JP,Y1)
【文献】実開昭56-129926(JP,U)
【文献】特開2005-240223(JP,A)
【文献】登録実用新案第3051984(JP,U)
【文献】登録実用新案第3226495(JP,U)
【文献】特表2010-534282(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207003(JP,U)
【文献】実開昭48-30008(JP,U)
【文献】実開昭63-78012(JP,U)
【文献】実公昭38-3146(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/28
A41D 27/10
A41D 1/06
A41D 1/02
A41D 3/00
A41D 13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の上
肢の先端から付け根にかけて上
肢を囲み、着用時に前記上
肢の先端付近を囲む一端部から前記付け根付近に対応する他端部まで延び、上
肢を通せるスリットが形成された筒部と、
前記スリットを開閉する開閉機構と
、
前記スリットの他端部側の延長線上において首回りから肩先まで前身頃と後身頃の接合部に沿って前記前身頃および前記後身頃の双方に取り付けられた帯状の補強部と、を備え
、
前記スリットは、その他端部側が前身頃の幅方向端の延長線よりも幅方向内側に位置するように正面側に設けられており、
前記補強部は、その一端が前記スリットの他端部側に隣接する、
運動用トップス。
【請求項2】
着用者の上肢の先端から付け根にかけて上肢を囲み、着用時に前記上肢の先端付近を囲む一端部から前記付け根付近に対応する他端部まで延び、上肢を通せるスリットが形成された筒部と、
前記スリットを開閉する開閉機構と
、
前記開閉機構が開いた状態の前記筒部を保持する保持部と、を備え、
前記スリットの他端部側は、前身頃の幅方向端の延長線よりも幅方向内側に位置
し、
前記保持部は、着用者が指を通した場合に前記開閉機構が開いた状態の前記筒部が伸びた状態で保持されるよう構成されるとともに、前記開閉機構が開いた状態の前記筒部を着用者の背面で纏められるよう構成された、前記筒部とは別部材の環状弾性部材である保持ストラップである、
運動用トップス。
【請求項3】
前記スリットは、正面側に設けられている、請求項2に記載の
運動用トップス。
【請求項4】
前記スリットの他端部側の延長線上において首回りから肩先まで前身頃と後身頃の接合部に沿って前記前身頃および前記後身頃の双方に取り付けられた帯状の補強部をさらに備え、
前記補強部は、その一端が前記スリットの他端部側に隣接す
る、請求項2
又は3に記載の
運動用トップス。
【請求項5】
着用者の下肢の先端から付け根にかけて下肢を囲み、着用時に前記下肢の先端付近を囲む一端部から前記付け根付近に対応する他端部まで延び、下肢を通せるスリットが形成された筒部と、
前記スリットを開閉する開閉機構と、
前記開閉機構が開いた状態の前記筒部を保持する保持部と
、を備え
、
前記保持部は、前記開閉機構が開いた状態の前記筒部を着用者の臀部を覆う部分である臀部被覆部の位置で纏められるように、着用者の左右の中臀筋
の位置に一端と他端が取り付けられることで前記臀部被覆部を横切るように延びる帯である、
運動用パンツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服、トップス及びパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定用途の衣服について、着用者の体温を調整するために通気性を調整することが行われている。このような衣服として、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1に記載された衣服よりもさらに通気性を高められる衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、着用者の上肢又は下肢の先端から付け根にかけて上肢又は下肢を囲み、着用時に上肢又は下肢の先端付近を囲む一端部から付け根付近に対応する他端部まで延び、上肢又は下肢を通せるスリットが形成された筒部と、スリットを開閉する開閉機構とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、衣服の着用者の身体を基準に方向を示す用語を使用することがある。正面、背面、上下のような方向を示す用語は、それぞれ着用者が手を下ろして直立しているときの方向を基準とする。幅方向とは着用者の肩幅方向を意味し、幅方向内側は身体の中心側を意味し、幅方向外側は身体の外側を意味する。衣服と着用者の身体の関係については、標準的な体型の着用者の身体の部分と衣服との関係に基づいて説明する。
【0008】
図1は、実施形態によるトップスの正面図である。トップス100は、例えばランニング、トレイルランのような運動時に着用される。トップス100は、正面側にメインスライドファスナ102を備えるフルジップ式のトップスである。トップス100は、前身頃104F及び後身頃104Bを備える身頃部104を備える。メインスライドファスナ102は前身頃104Fの上端から下端まで延びる。前身頃104Fはメインスライドファスナ102を挟んで左側前身頃104Lと右側前身頃104Rに分割され、左側前身頃104Lと右側前身頃104Rは幅方向両側に開く。トップス100は、着用者の頭部を覆うフード106を備える。トップス100はフード106を備えなくてもよい。メインスライドファスナ102は、面ファスナやフック等の他の係合機構に置き換え可能である。トップス100は、例えばナイロン生地を所定の形に縫い合わせたもの、スウェット生地を所定の形に縫い合わせたもの等、様々な生地で製造できる。またトップス100は、中綿等を含む防寒着であってもよい。
【0009】
トップス100は、前身頃104Fから幅方向に延び、上肢の手首から肩関節を覆う一対の筒部108を備える。筒部108とは、トップス100を形成する複数枚の布地の縫い目の位置に関わらず、上側が手首からネックライン110まで延び、かつ下側が手首から脇まで延びる筒形状を有する部分をいう。筒部108は、着用者の上肢を覆う部分に加えて、前身頃104Fの一部、及び後身頃104Bの一部を含む、ということもできる。筒部108の一端部108Aは着用時に着用者の上肢の先端付近(手首付近)に位置し、他端部108B(ネックライン側)はネックライン110付近に位置する。筒部108の一端部108Aは、着用者の手首付近を軽く締め付けるよう周方向に伸縮性を有する。筒部108の他端部108Bは、着用者の肩関節を覆う肩部SP付近で前身頃104Fに接合される。
【0010】
トップス100には、上肢を通せる一対のスリット112が形成される。一対のスリット112の各々は、それぞれの筒部108に形成される。スリット112は、トップス100の正面側、即ちトップス100を着用した状態で正面視したときにスリット112の全体が視認できる位置に形成される。スリット112は、トップス100の非着用状態で平坦な面上に置いたときにも、正面視したときに全体が視認できることが好ましい。スリット112の一端部112Aは、筒部108の一端部108Aに形成される。スリット112の他端部112Bは、筒部108の他端部108B付近、即ち着用者の上肢の付け根付近で終端する。スリット112は、開閉機構としてのサブスライドファスナ114によって開閉可能である。スリット112の両側には、一対のファスナエレメント116が縫い付けられている。サブスライドファスナ114は、一対のファスナエレメント116を噛み合わせ、又は開放するスライダ118を有する。スリット112は、スライダ118がスリット112の一端側にあるときに閉じられ、スリット112の他端側にあるときに開く。
【0011】
スライダ118には、スライダ118の操作時に着用者が掴むための開閉ストラップ120が取り付けられている。開閉ストラップ120は、メインスライドファスナ102に設けられる開閉ストラップ(図示せず)よりも大きいことが好ましい。これにより、走行中に開閉ストラップ120をつかみ易くなる。また、開閉ストラップ120を例えば布製にすることで、走っているときに開閉ストラップ120の揺れが気になり難くなる。
【0012】
図2は、筒部の他端部の拡大図である。スリット112の他端部112Bには、補強部122が設けられている。補強部122は、スリット112の延長線に沿ってネックライン付近まで延びる細長い生地の積層体である。補強部122は、スリット112の他端部112Bからネックライン110付近にかけて筒部108に縫い付けられている。補強部122は、前身頃104Fと後身頃104Bの接合部に沿って両者に縫い付けられている。補強部122を設けることにより、スライダ118をスリット112の他端部112Bに向けてスライドさせる際に筒部108又は前身頃104Fと、後身頃104Bとの接合部が破損するのを抑制できる。また、補強部122を設けることにより、特にスリット112を開いた状態で筒部108、又は前身頃104Fと後身頃104Bの接合部がスリット112の延長線に沿って前後方向に引き裂かれるのを抑制できる。補強部122の先端には、スライダ118を操作するときに把持する把持ストラップ124が形成されている。把持ストラップ124は、スリット112の他端部112Bに隣接してスリット112の一端部112A又は他端部112Bに向かって延びる自由端として形成される。この例では、把持ストラップ124は、補強部122を形成する生地の端部であり、補強部122と一体にされる。これに代えて、把持ストラップ124と補強部122を別部材とし、スリット112の他端部112B近傍に縫い付けてもよい。補強部122を細長い生地ではなく、着用者の肩を全体的に覆える大きさの生地で形成してもよい。また、身頃部104が前身頃104Fと後身頃104Bに分けられていない場合、補強部122を設けてもよいし設けなくてもよい。
【0013】
図3及び
図4は、筒部の一端部の拡大図である。筒部108の一端部108Aには、手首を締め付けるカフス126が形成されている。スリット112の一端部112Aは、カフス126と重複しないよう筒部108の一端部108Aから所定量だけ筒部108の軸に沿って他端部108B側にセットバックされる。スリット112の一端部112Aから筒部108の一端部108Aまでの距離は、約1~7cmであることが好ましい。
図4に示すように筒部108の一端部108Aにカフス126を設けず、筒部108の一端部108Aを筒内に折り込んで縫合してもよい。この場合もスリット112の一端部112Aから筒部108の一端部108Aまでの幅は、約1~7cmであることが好ましい。カフス126及びスリット112の一端部112Aから筒部108の一端部108Aまでの布は、スライダ118を閉じるときにスライダ118を把持していない方の手で筒部108をつかむための部分となる。
【0014】
図5及び
図6は、筒部の一端部の拡大図である。より具体的には
図5は、サブスライドファスナ114が開いた状態を示す。筒部108の一端部108Aには、サブスライドファスナ114を開くときに着用者が指を通すための保持ストラップ128(保持部に相当)が形成されている。保持ストラップ128は、例えばゴム紐などの弾性部材を環状形状にしたものである。保持ストラップ128は、筒部108の内側に縫い付けられているのが好ましい。筒部108が上肢を覆っている状態で、保持ストラップ128をフィンガーホールやサムホールとして利用してもよく、これにより、より確実に着用者の手首付近を筒部108で覆うことができる。サブスライドファスナ114を開くとき、
図6に示すように着用者は保持ストラップ128を指に引っかけてもよい。この場合、サブスライドファスナ114を開きたい側の手とは異なる手でスライダ118又は開閉ストラップ120をつかみ、スライダ118を移動させる。保持ストラップ128に指を引っかけることで筒部108を真っ直ぐに伸ばせる。この状態でスライダ118を操作すれば、スライダ118の操作が容易に行える。
【0015】
図7乃至9は、前身頃の拡大図である。より具体的には
図7乃至9は、着用者の肩付近の拡大図であり、スリット112の他端部112Bの位置を説明するための図である。
【0016】
図7の例では、スリット112の他端部112Bは、着用者の肩峰130を覆う肩峰部SP及び着用者の肩鎖関節132を覆う肩関節部SJよりも幅方向内側に設けられる。この位置は、大凡、着用者の鎖骨134の外側端付近に対応する位置ということもできる。スリット112の他端部112Bは、前後方向においては着用者の肩の中心(鎖骨上)に対応する位置にある。
【0017】
図8の例では、スリット112の他端部112Bは、着用者の烏口突起136に対して着用者の小胸筋138が付着している窪み部分を覆う烏口突起部CPに対応する位置に設けられる。
図9の例では、スリット112の他端部112Bは、着用者の鎖骨134の幅方向中心付近の窪み部分を覆う鎖骨部ClPに設けられている。着用者の窪み部分は鎖骨134の幅方向外側の端から1~2cm程度内側に入った位置にある。
【0018】
何れの場合でもスリット112の他端部112Bは、前身頃の幅方向端の延長線140よりも幅方向内側、かつ正面側から視認できる位置にある。スリット112を開閉する場合、他方の手でスライダ118を操作することとなるが、
図7乃至
図9に示す位置にスリット112を配置することでスライダ118を他方の手で操作し易くなる。つまり、スライダ118を操作する作業を身体の正面だけで行え、他方の手を無理に延ばす必要がなくなる。
【0019】
特に
図7及び
図9に示すように、スリット112の他端部112Bを高い位置(着用者の鎖骨134付近)にすることで、筒部108を着用者の背中方向に纏めるときに布に加わる力を分散できる。この点については後述する。また、
図8及び
図9に示すように、スリット112の他端部112Bを窪みに位置決めすることでスライダ118を着用者の窪み内に入れられる。スライダ118を着用者の窪み内に入れると、例えばバックパック等を背負っているときにバックパックのストラップによりスライダ118が身体に押し付けられ難くなる。
【0020】
図10乃至
図12は、トップスの使用状態を示す。
図10は、サブスライドファスナ114を閉じた状態でトップス100を着用している状態を示す。この状態では、スリット112が閉じられている。着用者が、体温が上昇した等の理由により通気性を高める場合、着用者は片方の手の指でカフス126、若しくはスリット112の一端部112Aから筒部108の一端部108Aまでの布を把持する。保持ストラップ128に通して他方の手側のスライダ118をつかんでもよい。この状態で、着用者はスリット112を開ける方向に所望量だけスライドさせる。これによりスリット112が所望量だけ開き、通気性が向上する。さらに通気性を向上させるためには、スライダ118を、スリット112の他端部112Bまでスライドさせてスリット112を全て開く。さらに通気性を向上させるためには、カフス126から片方の手側の手首を抜き、さらに片方の手をスリット112から出す。他方の手も同様の作業でスリット112から出す。トップス100は
図11に示すように、着用者の胴部だけを覆い上肢を覆っていない状態になる。このような段階的な操作により、通気性を調整できる。これらの操作は、走りながら容易に行える。
【0021】
体温が十分に下がった場合には、
図11に示す状態から
図10に示す状態に戻せばよい。この場合、まず、片手で対応する筒部108のカフス126をつかむ。片方の手の指を対応する筒部108の保持ストラップ128に通してその指で把持ストラップ124を把持してもよい。その後、他方の手でスライダ118を一端部112A側にスライドさせてスリット112を閉じる。次いで、他方の筒部108についても同様にスリット112を閉じる。この操作も、走りながら容易に行える。
【0022】
図12は、トップスの背面を示す。上肢をスリット112から露出させると、筒部108の特に一端部108A側が自由になり運動を邪魔する可能性がある。この場合、
図12に示すように筒部108を着用者の背面で纏めることができる。筒部108を纏めるときに保持ストラップ128を利用することができる。一方、筒部108を背面で結んで纏めることもできるが、この場合、スリット112の他端部112Bにはスリット112を開く方向に力が加わることがある。このような場合でも、補強部122を設けることにより、スリット112の他端部112B付近の布が破れるのを抑制できる。また、スリット112の他端部112Bの位置を鎖骨付近にすることで、筒部108を背面で結んだときにスリット112を定める布に加わる力をより均等に近付けられる。また、スリット112の他端部112Bを正面側に配置することで、筒部108を背面に引っ張ったときの肩の露出量が多くなる。
【0023】
通気性をさらに上げるために、メインスライドファスナ102を開き、左右の前身頃104R,104Lを筒部108と一緒に着用者の背面で纏めてもよい。前身頃104Fを筒部108と一緒に纏めれば、前身頃104Fと連続している後身頃104Bの一部も一緒に纏められる。これにより、トップス100を肩甲骨周りに纏められ、
図12に示すように身体の正面、背面の下側半分、及び上肢を全て露出させ、トップス100をノースリーブ状態にできる。トップス100の通気性を向上させる操作は、トップス100を完全に脱ぐことなく走りながらでも容易に行える。特にリュックサック等を背負っている場合でも、リュックサックを下ろすことなく操作できる。
【0024】
トップス100で再び上半身を覆う状態(
図10の状態)に戻すためには、纏められている筒部108をほどき、左右の前身頃104R,104Lを閉じてメインスライドファスナ102を閉じる。次いで片方の手の指を対応する筒部108のカフス126又はスリット112の一端部112Aから筒部108の一端部108Aまでの布を把持し、又は保持ストラップ128に通してその指で把持ストラップ124を把持する。その後、他方の手でスライダ118を一端部112A側にスライドさせてスリット112を閉じる。次いで、他方の筒部108についても同様にスリット112を閉じる。この操作も、走りながら容易に行える。
【0025】
以上のようにトップス100によれば、容易に通気性の調整を行える。このときトップス100を完全に脱ぐ必要がないため、走りながらでも容易に通気性を向上させられる。またスリット112の位置を正面側にし、スリット112の他端部112Bを特定位置に位置決めすることで、他方の手の自然の動作範囲内でスリット112の開閉を行える。
【0026】
図13及び
図14は、トップスの変形例を示す。
図13に示すように、トップス100の背面の一部を通気性のあるメッシュ素材142で形成してもよい。これにより、通気性を更に向上させられる。
図14に示すように、トップス100の筒部全体をメッシュ素材142で形成してもよい。このような構成により、季節に適合可能なウェアを提供できる。
【0027】
図15はトップスの更なる使用状態を示す。
図15では、明確性を向上させるために人体部分を破線で示す。
図15に示すように、スリット112を開けた状態でカフスを肘付近まで持ち上げ、二の腕付近で余った筒部108を纏めてもよい。この場合、筒部108の一部分(例えば肘付近)に余った筒部108を纏めるための伸縮性バンド、紐、クリップ、バックル又はアジャスターを設けても良い。
【0028】
図16及び
図17は、トップスのさらなる変形例を示す。
図16に示すように、スリット112を定める筒部108の開口部分の一方の側に沿って、筒部の内側にファスナガード144を付けてもよい。ファスナガード144を設けることにより、ファスナエレメント116が着用者の肌に接触するのを抑制できる。
図17に示すように、開口部分の両側に沿って、筒部の外側にファスナガード144を設けてもよい。
【0029】
図18及び
図19は、トップスのさらなる変形例を示す。
図18及び
図19に示すようにスリット112を2つのスライダ150,152で開閉できるようにしてもよい。一方のスライダ150は、スリット112の一端部112Aにむけてスライドすることでファスナエレメント114を開放し、他方のスライダ152は、スリット112の他端部112Bに向けてスライドすることでファスナエレメント114を開放する。2つのスライダ150,152を設けることにより、
図19に示すようにスリット112をスリット112の長手方向中央から部分的に開ける。これにより、通気性を段階的に調整できる。
【0030】
次に、トップス100と共に使用可能なパンツについて説明する。
【0031】
図20はパンツの側面図であり、
図21はパンツの背面図であり、
図22はパンツの側面図である。パンツ200は、例えばランニング、トレイルランのような運動時に着用される。パンツ200は、下肢を覆う一対の筒部202を備える。着用時には、筒部202の一端部202Aは足関節に対応する足関節部AP付近に位置する。筒部202の他端部202Bは、幅方向外側において足関節に対応する位置から腸骨を覆う腸骨部Il付近まで延び、幅方向内側において足関節に対応する位置から股関節を覆う股部分CrP付近まで延びる。
【0032】
パンツ200には、下肢を通せる一対のスリット204が形成される。各スリット204は、対応する筒部202に形成される。スリット204は、パンツ200の外側側面、即ちパンツ200を側面視したときに一方のスリット204が視認できる位置に形成される。スリット204は、筒部202の一端部202Aから着用者の腸骨の幅方向外側付近に対応する位置である他端部202Bまで延びる。
【0033】
スリット204の一端部204Aは、筒部202の一端部202Aまで延び筒部202の一端部202Aを前側部分と後側部分に分割する。スリット204の他端部204Bは、着用者の股関節に対応する部分よりも上に位置する。スリット204は、着用者の踝の後側から膝の外側を通って上前腸骨棘付近で終端するように形成されている。パンツ200の着用状態及び非着用状態において、パンツ200を側面から見たときに、スリット204全体が視認できる。スリット204の他端部204Bは、高さ方向において着用者の股関節とパンツのウェスト206との間のどの位置に設けられていてもよいが、股関節よりも約5cm以上、上側になるように配置されるのが好ましい。これにより、収納時にパンツ200を折りたたみやすくなる。スリット204は、開閉機構としてのスライドファスナ208によって開閉可能である。スリット204の両側には、一対のファスナエレメント210が縫い付けられている。スライドファスナ208は、一対のファスナエレメント210を噛み合わせ、又は開放するスライダ212を有する。スリット204は、スライダ212がスリット204の一端部204A側にあるときに閉じられ、スリット204の他端部204B側にあるときに開く。スライダ212には、スライダ212の操作時に着用者が掴むための開閉ストラップ214が取り付けられている。スライダ212を開くと、筒部202の前側部分202Fと後側部分202Rとを互いに分離できる(
図22参照)。パンツ200を側面視したときにスリット204が着用者の上前腸骨棘付近から踝の後側にかけて延びるように傾斜した形状をとることにより、スリット204を閉じて走行しているときにスリット204が着用者の下肢(特に大腿部付近)に過剰に接触し難くなる。また、スリット204を開いて筒部202を纏めたときに、筒部202の生地を下肢の外側、かつ後方側に集めやすくなり、走行時に筒部202同士がこすれあうといった不具合を抑制できる。
【0034】
スリット204の他端部204Bには、補強部216が設けられている。補強部216は、スリット204の延長線に沿ってウェスト206まで延びる細長い生地の積層体である。補強部216は、スリット204の他端部204Bからウェスト206にかけて筒部202に縫い付けられている。補強部216を設けることにより、筒部202がスリット204の延長線に沿って前後方向に引き裂かれるのを抑制できる。補強部216の先端には、スライダ212を操作するときに把持する把持ストラップ218が形成されている。把持ストラップ218は、スリット204の他端部204Bに隣接して一端部204A側又は他端部204B側に向かって延びる自由端として形成される。把持ストラップ218は、補強部216を形成する生地の端部であり、補強部216と一体にされる。これに代えて、把持ストラップ218と補強部216を別部材とし、スリット204の他端部204B近傍に縫い付けてもよい。
【0035】
パンツ200は、スライダ212を開いた状態の筒部202を保持するための保持部220を備える。保持部220は、スリット204の他端部204Bよりも上側に配置され、着用者の臀部を覆う部分である臀部被覆部BPを横切って延びる帯である。保持部220の端はそれぞれ着用者の左右の中臀筋付近に位置に取り付けられる。つまり、保持部220の端は、着用者の大殿筋を上下方向に横切るように筒部202に縫い付けられる。
【0036】
図23及び
図24は、パンツの使用状態を示す。
図23は、スライドファスナ208を閉じた状態でパンツ200を着用している状態を示す。この状態では、スリット204が閉じられている。着用者が、体温が上昇した等の理由により通気性を高める場合、スライドファスナ208のスライダ212をつかみ、スライダ212を他端部204B側に向けてスライドさせる。これによりスリット204が開く。次いで着用者は他方の筒部202のスリット204を同様の方法であける。
【0037】
下肢をスリット204から露出させると、筒部202の特に一端部202A側が自由になり運動を邪魔する可能性がある。この場合、
図24に示すように筒部202を保持部220と臀部被覆部BPの間に挟む。これにより、筒部202を臀部被覆部BP付近で纏められる。スリット204の他端部204Bを下肢の側面よりも僅かに前面側に配置することで、筒部202を後面側に折りやすくなる。筒部202を保持部220で保持している状態では、スリット204の他端部204Bにはスリット204を開く力が加わる。したがって補強部216によりスリットの他端部204Bを補強することで、スリットの他端部204B付近の布が破れるのを抑制できる。
【0038】
パンツ200で再び下肢を覆う状態(
図23の状態)に戻すためには、筒部202を保持部220と臀部被覆部BPとの間から引っ張り出す。次いで、筒部202で下肢を覆ってから一方の手でスライドファスナ208のスライダ212をつかみ、他方の手で把持ストラップ218をつかむ。その後、スライダ212を一端部204A側にスライドさせてスリット204を閉じる。次いで、他方の筒部202についても同様にスリット204を閉じる。
【0039】
以上のようにパンツ200においても容易に通気性の調整を行える。このときパンツ200を完全に脱ぐ必要がないため容易に通気性を向上させられる。またスリット204の位置を下肢の側面にし、スリット204の他端部204Bを特定位置に位置決めすることで、他方の手の自然の動作範囲内でスリット204の開閉を行える。
【0040】
また保持部220を設けることにより、筒部202が運動の邪魔をしないように筒部202を保持できる。
【0041】
本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、各構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0042】
上述したトップス100とパンツ200を同時に着用してもよい。これにより、上半身と下半身の通気性を調整できる。この場合、トップス100の筒部108を背面で纏めるかわりにパンツ200の保持部220と臀部被覆部BPとの間に挟んでもよい。
【0043】
開閉機構としてのメインスライドファスナ102、サブスライドファスナ114、又はスライドファスナ208に換えて、面ファスナ、スナップボタン、ボタン、マグネット、クリップ等を用いてもよい。
【0044】
トップス100の筒部108を保持するための保持部を設けてもよい。この場合、保持部としては、ポケット、帯、面ファスナ、ボタン、マグネット、クリップ等を用いてもよい。また、保持部をトップスとは別体に設けてもよい。この場合、保持部としてはバックパック、ベルトを用いることができる。また、トップス100の下に着用するインナーに保持部としてのポケットを設けてもよい。また、パンツ200の筒部202を保持するための保持部220としても、上述した各部材を用いることができる。
【0045】
上述した保持部220、補強部122,216、及び把持ストラップ124は、必須の構成ではなく、必要に応じて設ければよい。また、上述の例では前身頃104Fをフルジップ式のものとしたが、トップス100はメインスライドファスナ102を備えていなくてもよい。また、メインスライドファスナ102は、前身頃104Fの上端から縦方向中央付近まで延びるハーフジップ式であってもよい。
【0046】
衣服は筒部を一対備えている必要はなく、筒部が1つであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、衣服、トップス及びパンツの分野において産業上利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0048】
12 スリット、 100 トップス、 104 前身頃、 108 筒部、 112 スリット、 122 補強部、 140 延長線、 200 パンツ、 202 筒部、 204 スリット、 216 補強部、 220 保持部