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特許7430789吸入可能な製剤の粒子を収集するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】吸入可能な製剤の粒子を収集するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20240205BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20240205BHJP
   B01D 46/10 20060101ALI20240205BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20240205BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240205BHJP
   B01D 39/10 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G01N1/02 D
G01N1/22 B
B01D46/10 B
B01D39/20 B
B01D39/16 A
B01D39/16 C
B01D39/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022528063
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2019081543
(87)【国際公開番号】W WO2021093975
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】522188082
【氏名又は名称】ナノファーム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】プライス ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ダンソン アローン
(72)【発明者】
【氏名】ストルニシャ グレゴール
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051180(WO,A1)
【文献】特表2014-531601(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128324(JP,U)
【文献】実開平04-001433(JP,U)
【文献】特開2001-066229(JP,A)
【文献】特開2012-206215(JP,A)
【文献】登録実用新案第3065579(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能な医薬製剤のエアロゾル化された呼吸可能な粒子を収集するための装置と、クイックリリースシステム(100)とを含み、
前記装置は、エアロゾル化された用量の医薬製剤を受け取るための入口と、当該装置を通る空気流を生成するための吸引源と、前記入口から前記吸引源まで延びる経路を規定するチャネルと、当該装置を通る空気流の前記経路に配置されている用量収集セクションと、を含み、前記用量収集セクションは、空気透過性のフィルター(F)を有し、
前記フィルター(F)は、エアロゾル化された呼吸可能な粒子の経路を横切って延び、当該フィルター(F)上に粒子状物質を保持し、
前記用量収集セクションは、上部フィルター支持部材(40)および下部フィルター支持部材(50)と、フィルターユニットを受け入れる下部本体(70)とを含み、
前記上部フィルター支持部材(40)および前記下部フィルター支持部材(50)の間に前記フィルター(F)の周囲が保持されて、前記フィルターユニットが形成され、
前記下部本体(70)は、前記フィルターユニットの周りに配置された凹部(72)を含む上面を有し、
前記クイックリリースシステム(100)は、開位置と閉位置との間で移動可能なフックなどの固定手段(102)を含み、前記開位置にある前記固定手段(102)は、前記フィルターユニットの周りで前記凹部(72)に入ることができ、前記閉位置において前記固定手段(102)は、前記フィルターユニットを掴むことができ、したがって、前記フィルターユニットに人が接触することなく、前記フィルターユニットを前記下部本体(70)から取り外すことができることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記クイックリリースシステム(100)は、クランプベース(101)と、作動のトリガーに用いられるサムアクチュエータ(107)を有する作動ロッド(103)と、バネ(110)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記下部フィルター支持部材(50)は、外側リング(57)の下面から半径方向内側に延出している内フランジ(56)を含み、前記内フランジ(56)は、中央開口部を規定する内周縁(52)を有し、
前記中央開口部は、少なくとも2つの半径方向リブ(53)によって前記内周縁(52)に接続された中央支持構造(51)を有し、これにより複数の開口(54)が画定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記中央支持構造(51)は六角形であり、前記六角形の各頂点のそれぞれは、前記半径方向リブ(53)によって前記内周縁(52)に接続されており、これにより7つの前記開口部(54)が画定されていることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記上部フィルター支持部材(40)は、上部リング(41)と、前記上部リング(41)から軸方向下向きに延びる下部リング(42)とを備え、
前記上部リング(41)と前記下部リング(42)は、同じ内径を有し、前記上部リング(41)の外径は、前記下部リング(42)の外径よりも大きくなっており、前記フィルター(F)の外縁が、前記下部フィルター支持部材(50)の内フランジ(56)と前記上部フィルター支持部材(40)の前記下部リング(42)との間に保持されることを特徴とする請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記下部フィルター支持部材(50)は、前記外側リング(57)の外周から半径方向外向きに延びる、少なくとも1つの半径方向突起(55)を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記半径方向突起(55)の数が3つであることを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記下部本体(70)の前記上面は、前記下部フィルター支持部材(50)の前記半径方向突起(55)と協働して、前記下部本体(70)上の前記フィルターユニットの回転位置合わせを提供する第1の凹部(71)が設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記用量収集セクションは、入口オリフィスを含み、
前記フィルター(F)は、前記入口オリフィスに対向して配置され、
前記入口オリフィスは、用量が収集されるべき前記フィルターの面積の75%以上の妨げられない領域を有するように寸法決定および構成されており、
前記吸引源は、前記フィルターユニットの下流の前記経路と連通しており、
前記下部フィルター支持部材(50)は、前記フィルターの中央領域を支持するための、前記入口オリフィスとは反対側の当該フィルターの面を通過する経路を横切って延びる複数の支持部材として、少なくとも2つの半径方向リブ(53)と、中央支持構造(51)とを有し、
前記下部フィルター支持部材(50)は、前記少なくとも2つの半径方向リブ(53)と前記中央支持構造(51)により、複数の開口部(54)を画定し、前記反対側の前記フィルターの面の表面積の80%以下を妨げることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記入口オリフィスは、用量が収集されるべき前記フィルターの面積の80%以上の出口面積を有するように寸法決定されて構成されていることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記出口面積が前記フィルターの面積の90%以上であることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記フィルター(F)は、織布、不織布、メッシュおよび空気透過性フィルムから選択されることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記フィルター(F)は、ガラスマイクロファイバー、合成セルロース系の材料、または、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニルおよびポリエーテルエーテルケトンから選択される高分子材料のフィラメントから形成された布を含むことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記フィルター(F)は、金属メッシュを含むことを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記フィルター(F)は、5μm以下の孔径を有することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記孔径は、3μm以下であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記フィルター(F)は、少なくとも1μmの孔径を有することを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記フィルター(F)は、フィルターがない場合と比較して、20%以下の流量の減少を生じさせるような空気透過性を有することを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記フィルターがない場合と比較したときの前記流量の減少の大きさが15%以下であることを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記フィルターがない場合と比較したときの前記流量の減少の大きさが10%以下であることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入可能な製剤の粒子を収集するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経口吸入可能な製剤は、経肺経路を介した薬物の投与に広く使用されている。そのような薬物は、一般に、肺の状態の治療または予防のために投与され、その最も一般的なものには、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患が含まれる。また、全身に使用するための薬は、適切な状況下で吸入によって投与される場合がある。
【0003】
吸入薬の有効性と全身曝露(肺のバイオアベイラビリティ)は、製剤の沈着部位と物理化学的特性に依存する。気道の末梢の非繊毛領域に沈着する薬物粒子は、代謝または肺膜を通過する輸送の前に溶解しなければならない。したがって、溶解は、肺を介した細胞の取り込みおよび/または吸収の前提条件になる。シミュレーションは、溶出速度が肺における薬物保持の主な推進力であることを示唆している。しかしながら、現在のところ、吸入製剤によって生じるエアロゾルのインビトロ(in vitro)溶出速度を決定するために存在する薬局方に収載されている方法はない。
【0004】
溶出試験は、多くの薬物の生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)を決定する上で重要なツールである。標準化された溶出試験方法は、錠剤やカプセルなどの固形剤形に利用できる。このような方法は、品質管理のため、およびインビボ(in vivo)放出特性との相関関係を決定するために広く使用されている。これらは、たとえば承認された製剤に対するジェネリック医薬品の生物学的同等性を実証する場合など、さまざまな製剤の生物学的同等性を実証する必要がある場合に特に重要なツールである。
【0005】
しかしながら、現在まで、吸入された有効成分剤形の溶出挙動を推定するための普遍的に受け入れられている方法はない。このことは、確実に生物学的に同等な製剤の開発に障害をもたらす。特に薬局方に収載された方法がないことは、既存の登録製品と新しい吸入可能なジェネリック医薬品との生物学的同等性を確実かつ再現可能に実証することへの障害を提示する。これにより、ほとんどの経口または注射可能な製剤の場合に比べて吸入可能な医薬品の認可の取得が困難になっている。
【0006】
研究は、総肺沈着のインビボベースの測定値と肺用量(lung dose)のインビトロ測定値との間に良好な相関関係があることを示した。したがって、溶解研究のために代表的な肺用量を収集する必要がある(例えば、エクスキャストドーズ(ex-cast dose)、インパクターステージマス、特定のインパクターステージ下の用量など)。報告されているすべてのフィルター収集システムでは、作動回数を変えることにより、特定の製剤の収集質量が増加するにつれて、溶出速度が遅くなるという関係がある。この効果は、用量収集時にフィルター上に生成されたin-situ凝集物の形成に起因すると考えられ、これは、より小さな面積/体積比の観点から、溶解中の溶解媒体への薬物の曝露を減少させる。溶解特性は、収集方法や作動回数に依存しないはずなので、溶出速度に一貫性がないのは、収集プロセスのアーティファクト(artefact)に起因すると考えられる。溶出挙動で観察される大きな変動は、感度を制限し、同じ製品の異なる微粒子質量を持つ製剤を比較するときに課題を生み出す。
【0007】
どの溶解方法でも、2つの重要なステップは、溶解すべき吸入可能な用量を収集するステップと、収集された用量を溶解する溶解ステップである。インビボで溶解される用量の信頼できる予測を提供するためには、溶解ステップで使用されるサンプルが、実際に吸入されるであろう用量を反映すべきある。いくつかの既知の収集方法では、吸入可能な用量は、慣性インパクターのフィルターに収集される。
【0008】
吸入された製品の溶出挙動を推定するための信頼できる方法には、多くの用途がある。これは、品質管理との関係で、材料の特性および有効成分の溶解に対する処理効果を評価するためのツールとして適用することができる。エアロゾル化された用量(例えば、エクスキャストドーズ、インパクターステージマスなど)の収集および溶解の研究に一般的に適用されるであろう。最も重要な潜在的なアプリケーションは、インビトロ-インビボ相関(IVIVC)技術を提供することである。
【0009】
IVIVC技術は、既存の認可された製品との比較可能性を示すことに基づいて評価されたものなど、ジェネリック版の経肺薬剤の溶出挙動の信頼できる評価を可能にし、したがって、例えば吸入可能な薬物のジェネリック版の満足のいく評価への現在の障害を減少させる可能性がある。
【0010】
従来のインパクターでは、粉末は慣性効果を使用して分離され、粒子は粒径による慣性挙動の変化により、粒径に応じて分離される。慣性分離技術は、粒径に応じた物理的分離を可能にし、それによって粒径で画分されたAPIの沈着位置を決定することを可能にするという点で有利である。肺内におけるAPIの沈着の有効性と分布は、それらの空気力学的粒子径の関数であるため、これは重要な場合がある。
【0011】
インパクターは、複数のノズルまたはジェットを備えたプレートでそれぞれ構成された一連の各ステージを有する。エアロゾル化された粉末を運ぶ空気はインパクター内に引き込まれ、各ステージを順番に流れる。ステージの段数とともにノズルの数は増加するが、ノズルのサイズと総ノズル面積はその段数とともに減少する。各粒子がノズルを通って加速するとき、ノズルの出口で偏向される空気流に乗ったまま各粒子が流れるか、または偏向された流れから各粒子が慣性によって分離されるかになる。この分離は収集表面に影響を与える。
【0012】
流れの方向が変わると、エアロゾル粒子は慣性を失うまで元の方向に移動し続ける。次に、各粒子が新しい空気の流れの方向に落ち着く(緩和時間)。元の流れに垂直な収集面を配置すると、緩和時間が不十分な粒子が衝突する。小さな粒子は、より速く緩和するので衝突しない。
【0013】
ノズルまたはジェットの数、それらの直径(W)、および衝突ステージ間隔(S)を制御することにより、有効なカットオフ空気力学的直径をさまざまな流量で制御できる。したがって、一定レベルの慣性を持つ粒子が収集され、残りの粒子は次のステージに進む。それゆえ、インパクターの各ステージは、カットオフ直径に関連付けられている。カットオフ直径は、インパクターデバイスのそのステージの収集面に保持される粒子のサイズを定義する数値になる。
【0014】
インパクターのステージの主な機能は、空気の流れと同伴粒子を運ぶノズルプレート、インパクションプレートおよびステージ壁である。ノズルプレートの設計とエンジニアリングは、収集パラメータにとって最も重要であり、ノズルまたはジェットの数(N)とそれらの直径(W)が主要な設計パラメータになる。NとWを変化させると、気流のレイノルズ数(Re)を設定された制限(通常は500<Re<3000)の間で制御できる。
インパクタータイプのデバイスにおけるレイノルズ数とインパクターの形状との関係は、当業者によってよく理解されている(例えば、著者マープルらのAtmospheric Environment、10、891-896ページ、1976を参照)。
【0015】
非呼吸可能な粒子の大まかな分離が達成される従来のインパクターのステージ1を除いて、既知のインパクターの各ノズルは、圧力差を生成するように寸法設定および構成され、この圧力差は、ノズルのすぐ上流のポイントとノズルのすぐ下流の領域間に空気流の加速を生じさせる。この加速は、その後の偏向点での分離プロセスに必要な慣性を発生させる上で重要である。例えば、60L/分の空気流で作動する従来のインパクターのステージ2では、各ノズルを通る空気流は、典型的には、空気流速が約890cm/秒になる多数のエアジェットとして現れるように加速され得る。
【0016】
特許文献1には、従来のインパクターの欠点を克服する装置が開示されている。この装置は、経路を横切って延在する用量収集セクションを有する。用量収集セクションは、フィルターの上流側においてフィルターに対向するオリフィスを有する。フィルターは、その全面において粒子の堆積が妨げられない領域の面積が75%以上になっている。より大きなオリフィスは、フィルターに空気流を送るのに妨げにならない経路を提供している。
【0017】
結果として、その装置のフィルターユニット(用量収集セクション)内の空気流は、より低い速度、例えば30cm/秒から250cm/秒までの範囲の大きさ、好ましくは60cm/秒から100cm/秒までの範囲の大きさを有する。典型的なインパクターのステージにおいて各ノズルを離れるときの個々の高速エアジェットとは対照的に、より低い流速と経路を横切る流れのより高い均一性との組み合わせにより、より均一な堆積が行われることが可能になるようである。これにより、フィルターに付着した材料の量に応じて変化しにくい、その材料の溶解特性を決定する際の信頼性と再現性が向上する。
【0018】
しかし、特許文献1に開示されている装置にも欠点がある。特に、上記の装置は、薬物が付いたフィルターの除去を面倒にし、一連のステップおよび高度の手動操作を必要とする(例えば、装置からフィルターを取り外すためにいくつかの六角レンチのネジを取り外すこと、および装置からフィルターを取り外し、溶出試験などのために二次支持アセンブリ上に移すためのピンセットを使用することである。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開第2017/051180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記の欠点を克服することを目的としている。
【0021】
特に、本発明は、その操作を最小限に抑え、収集されたエアロゾルサンプルを二次装置に移して、直接、人と接触することなく試験する(例えば、溶出試験、インビトロ放出試験、顕微鏡分析など)能力を支援しようとする。
【0022】
本発明はまた、製造および組み立てが簡単で安価であり、信頼できる方法で使い易い、そのような装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る装置は、吸入可能な医薬製剤のエアロゾル化された呼吸可能な粒子を収集するための装置であって、空気透過性のフィルターを有する用量収集セクションを含み、前記フィルターは、エアロゾル化された呼吸可能な粒子の経路を横切って延び、当該フィルター上に粒子状物質を保持し、前記用量収集セクションは、上部フィルター支持部材および下部フィルター支持部材と、フィルターユニットを受け入れる下部本体と、クイックリリースシステムとを含み、前記上部フィルター支持部材および前記下部フィルター支持部材の間に前記フィルターの周囲が保持されて、前記フィルターユニットが形成され、前記下部本体は、凹部を含む上面を有し、前記クイックリリースシステムは、開位置と閉位置との間で移動可能なフックなどの固定手段を含み、前記開位置にある前記固定手段は、前記フィルターユニットの周りで前記凹部に入ることができ、前記閉位置において前記固定手段は、前記フィルターユニットを掴むことができ、したがって、前記フィルターユニットに人が接触することなく、前記フィルターユニットを前記下部本体から取り外すことができることを特徴とする。
【0024】
有利には、前記クイックリリースシステムは、クランプベースと、サムアクチュエータによって作動がトリガーされる作動ロッドと、バネをさらに備える。
【0025】
有利には、前記下部フィルター支持部材は、外側リングの下面から半径方向内側に延出している内フランジを含み、前記内フランジは、中央開口部を規定する内周縁を有し、前記中央開口部は、少なくとも2つの半径方向リブによって前記内周縁に接続された中央支持構造を有し、これにより複数の開口が画定されている。
【0026】
有利には、前記中央支持構造は六角形であり、前記六角形の各頂点のそれぞれは、前記半径方向リブによって前記内周縁に接続されており、これにより7つの前記開口部が画定されている。
【0027】
有利には、前記上部フィルター支持部材は、上部リングと、前記上部リングから軸方向下向きに延びる下部リングとを備え、前記上部リングと前記下部リングは、同じ内径を有し、前記上部リングの外径は、前記下部リングの外径よりも大きくなっており、前記フィルターの外縁が、前記下部フィルター支持部材の内フランジと前記上部フィルター支持部材の前記下部リングとの間に保持される。
【0028】
有利には、前記下部フィルター支持部材は、前記外側リングの外周から半径方向外向きに延びる、少なくとも1つ、好ましくは3つの半径方向突起を含む。
【0029】
有利には、前記下部本体の前記上面は、前記下部フィルター支持部材の前記半径方向突起と協働して、前記下部本体上の前記フィルターユニットの回転位置合わせを提供する第1の凹部が設けられている。
【0030】
有利には、エアロゾル化された用量の医薬製剤を受け取るための入口と、当該装置を通る空気流を生成するための吸引源と、前記入口から前記吸引源まで延びる経路を規定するチャネルと、を含み、前記用量収集セクションは、前記経路に配置され、入口オリフィスを含み、前記フィルターは、前記入口オリフィスに対向して配置され、前記入口オリフィスは、用量が収集されるべき前記フィルターの面積の75%以上の妨げられない領域を有するように寸法決定および構成されており、前記吸引源は、前記フィルターユニットの下流の前記経路と連通しており、前記フィルターユニットは、フィルターと、フィルターの中央領域を支持するための、前記入口オリフィスとは反対側の、当該フィルターの面を通過する経路を横切って延びる1つまたは複数の支持部材を含むフィルター支持体とを有し、前記フィルター支持体は、2つ以上の開口部を画定し、前記反対側の前記フィルターの面の表面積の80%以下を妨げる。
【0031】
有利には、前記入口オリフィスは、用量が収集されるべき前記フィルターの面積の80%以上、好ましくは90%以上の出口面積を有するように寸法決定されて構成されている。
【0032】
有利には、前記フィルターは、織布、不織布、メッシュおよび空気透過性フィルムから選択される。
【0033】
有利には、前記フィルターは、ガラスマイクロファイバー、または、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニルおよびポリエーテルエーテルケトンから選択される高分子材料のフィラメントから形成された布を含む。
【0034】
有利には、前記フィルターは、金属メッシュ、例えばステンレス鋼のメッシュを含む。
【0035】
有利には、前記フィルターは、5μm以下、好ましくは3μm以下の孔径を有する。
【0036】
有利には、前記フィルターは、少なくとも1μmの孔径を有する。
【0037】
有利には、前記フィルターは、フィルターがない場合と比較して、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下の流量の減少を生じさせるような空気透過性を有する。
〔定義〕
「吸入可能な医薬製剤」は、ヒトまたは動物の患者、好ましくはヒトの患者への投与に適した製剤であり、吸入による肺投与が可能な、ヒトまたは動物、特にヒトの疾患または状態の治療、予防または診断に有効な1つまたは複数の有効成分を含む吸入によるものを指すと理解されるべきである。本発明の吸入可能な製剤には、乾燥粉末吸入器で使用するための粉末、定量吸入器で使用するための製剤、および噴霧装置で使用するための溶液または懸濁液が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される「粉末製剤」は、粒子状固体を含む製剤を指し、本明細書において好ましくは、乾燥粉末吸入器で使用するための乾燥粉末製剤または定量吸入器で使用するための製剤である。
【0039】
本明細書における「有効成分」は、どの治療経路を通じても有効である成分を含むと理解されるべきである。誤解を避けるために、この用途の目的のための有効成分には、肺で実施される局所治療、予防または診断方法のために肺経路を介して投与され得る治療効果のある薬物、患者の身体の1つまたは複数の部分で実施される全身治療、予防または診断方法のために肺経路を介して投与され得る治療効果のある薬物、および肺サーファクタントの場合のように機械的または物理的経路によって肺で実施される局所治療、予防または診断方法のために肺経路を介して投与され得る有効成分が含まれる。局所効果のために肺経路によって投与される有効成分には、例えば、喘息、COPD、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症、および結核の治療に使用するための薬物が含まれる。肺経路を介して投与可能な全身薬には、例えば、インスリンおよび小ペプチド治療薬が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される「放出用量」は、吸入装置が作動されるときに放出される有効成分の理論上の用量を指す。これは、エアロゾル化される薬剤の理論上の総量に等しくなる可能性があるが、理論上の用量がすべて正常にエアロゾル化されていない場合は、それより少なくなる可能性がある。
【0041】
本明細書で使用される「粒子」は、他に示唆しない限り、一般に固体粒子を指す。
【0042】
本明細書で使用される「呼吸可能な画分(Respirable fraction)」は、ある用量の粉末製剤の吸入時に典型的な患者の肺に理論的に到達する粒子のその用量に対する%で示される画分を指すために使用される。その画分は、一般に、空気力学的直径が10μm未満である粉末製剤のエアロゾル化粒子の細画分(sub fraction)であると当業者によって理解されている。
【0043】
「呼吸可能な用量」は、本明細書では、吸入可能な医薬製剤の用量の吸入時に典型的な患者の肺に理論的に到達する薬物の放出量を指すために使用される。呼吸可能な用量は、一般のインパクター(例えば、MSPの次世代インパクター)においてステージ2以降に収集された用量に対応する妥当な精度で推定することができ、一般にインパクターステージマス(「ISM」)とも呼ばれる。
【0044】
本明細書で使用される「微粒子用量」は、空気力学的直径が5μm未満のエアロゾル化された薬物粒子の用量を指す。インパクターから微粒子用量を決定するには、インパクターデータの補間または回帰ベースの分析をして、直径5μmの粒子の空気力学的カットオフに関連する用量を決定する必要がある。
【0045】
「空気力学的直径」は、対象の粒子と同じ沈降速度を持つ密度1000kg/m3の球体の直径として定義される。空気力学的直径は、当技術分野で慣習的に使用されている方法のいずれかによって確認することができる。ここで指定されている空気力学的直径の値は、カスケードインパクターを使用して決定されるものである。本明細書で言及される流量または速度は、任意の適切な流量計、例えば標準の流量または体積流量を決定するために使用できるCopley DFM 2000流量計(Copley Scientific社)を使用して測定可能である。
【0046】
「妨げられない領域」は、本明細書では、経路またはオリフィスに関して、その経路またはオリフィスがその領域を通る空気流を妨げるであろう構造を領域内に含まないことを意味し、そして、妨げられない領域を所定の割合で有する経路またはオリフィスへの言及は、オリフィスまたは経路内にオリフィスまたは経路の領域を通る空気流を妨げるであろうものが設けられた場合のいかなる構造からも自由であるオリフィスの面積または経路の断面積の割合であるものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明に係る特定の実施形態は、非限定的な例として与えられた添付の図面を参照して以下に説明される。
図1】本発明に係る有利な実施形態における用量収集装置の概略分解斜視図である。
図2図1に記載の装置の断面図である。
図3図2の細部D1の拡大図である。
図4図3に示すフィルターユニットを受け入れる溶解容器の断面図である。
図5図4に示す細部D2の拡大図である。
図6図5に示すフィルターユニットの分解斜視図である。
図7】下部フィルター支持部材の斜視図である。
図8図5に示す組み立てられたフィルターユニットの斜視図である。
図9図8に示す組み立てられたフィルターユニットの部分断面図である。
図10】下部本体の一部断面図である。
図11】下部本体の上面を示す平面図である。
図12】クランプ装置によって下部本体に組み付けられた上部本体の一部断面図である。
図13図12に示す細部D3の拡大図である。
図14】本発明に係る有利な実施形態におけるクイックリリースシステムの斜視図である。
図15図14に示すクイックリリースシステムの断面図である。
図16図14に示すクイックリリースシステムを取り扱う場合におけるあるステップを示す図である。
図17図14に示すクイックリリースシステムを取り扱う場合における、図16に示すステップの次のステップを示す図である。
図18図14に示すクイックリリースシステムを取り扱う場合における、図17に示すステップの次のステップを示す図である。
図19図14に示すクイックリリースシステムを使用して、図5に示すフィルターユニットを溶解容器に導入する様子を示す図である。
図20図19と同様の図であり、溶解容器内でフィルターユニットを解放する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、特許文献1に記載された装置を改良したものである。その既知の装置においてエアロゾル化された医薬製剤の用量が本発明の装置への入口で生成され、吸引装置が下流のアクセスポイントから装置を通して空気流を引き込む。装置を通る空気流の経路に用量収集セクションが設けられている。
【0049】
その装置の1つの特に有利な用途は、乾燥粉末吸入器および定量吸入器用の製剤に関するものである。エアロゾル化された吸入可能な医薬製剤の呼吸可能な画分は、用量収集セクションで収集可能である。これにより、典型的な患者の肺に実際に送られる製剤の有効成分の量を正確に予測することができる。
【0050】
特許文献1に記載の装置では、オリフィスは、用量が収集されるべきフィルターの面積の75%以上、有利には80%以上、例えば90%以上の大きさの妨げられない領域を有するように寸法決定および構成されている。対照的に、標準的なインパクターデバイスでは、経路の大部分が複数のノズルジェットを備えたノズルデバイスによって遮られ、各ノズルジェットがノズルデバイスの断面のごく一部を形成し、その結果、複数のノズルジェットを通過するそれぞれの空気流が加速されて比較的高い流量で複数の並列ジェットの形で各ノズルジェットから吐出される。
【0051】
上記の装置では、空気流が、ごくわずかな割合(オリフィスの面積の25%以下)で妨げられるオリフィスを通して流れる。これにより、空気流を、流れが妨げられない経路、または流れを妨げる構造でも25%以下しか妨げられない経路に沿ってフィルターに送ることができる。このように既知のインパクターとは対照的に、上記の装置は、エアロゾルが比較的均一で比較的遅い動きで送られ、全体の流れが収集フィルターに向けられる用量収集セクションを有する。この流れのパターンは、慣性分離を実現するために、既知のインパクターにおいて空気流を加速するノズル(「ジェット」とも称される)とは対照的である。
【0052】
いくつかの実施形態では、用量収集セクションのオリフィスの上流の経路に、10μm以上の粒径の粒子を除去するための第1の除去装置、および任意選択で、1つまたは複数の追加された粒径の画分を除去するための1つまたは複数のさらなる除去装置が存在し得る。所定の粒径の粒子を除去するための除去装置は、例えば、インパクターの1つまたは複数のステージ、特に特定の空気力学的直径を超える粒子を分離するように配置された慣性分離ステージであり得る。複数のさらなる除去装置が存在する場合、それらは、より小さい各粒径の粒子の画分を連続的に慣性分離するために直列に配置された2つ以上のインパクターステージを含み得る。
【0053】
したがって、誤解を避けるために特許文献1に記載の装置は、収集装置の上流の経路の一部に、例えば、用量収集セクションに到達する前にエアロゾル化された製剤から1つまたは複数の異なる粒径の画分を除去するために任意選択で存在する1つまたは複数の慣性除去装置内に、そのような複数のノズル構造をさらに含むことができる。
【0054】
呼吸可能な画分内にあると考えられる粒径の画分の除去は、例えば、平均的な成人患者よりも呼吸機能が低い患者、例えば呼吸機能に障害のある子供、新生児、または成人の呼吸可能な画分を複製しようとする場合に有用である可能性がある。除去装置として適切なのは、特に慣性除去装置である。
【0055】
本発明で使用される慣性除去装置は、任意選択で、経路に偏向領域を含み得る。これにより、所定の空気力学的直径未満の粒子は、その偏向領域で空気流と一緒に偏向され、空気力学的直径が当該所定の空気力学的直径よりも大きい粒子は、慣性効果によってその経路から飛び出す。例えば、より大きな粒子を除去するのに適した「解剖学的喉(anatomical throats)」として知られている市販の装置がある。そのような装置は、喉を通過する用量がインビボ肺沈着研究において肺に入ったことが見出された用量とよく相関するように、吸入用量を濾過することが実証されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、除去装置と用量収集ユニットとの間の経路上に、空気流が用量収集ユニットに到達する前にその空気流から1つまたは複数のさらなる粒径の画分を排除するための1つまたは複数の慣性分離ユニットが設けられる。
【0057】
用量収集セクションは、オリフィスの下流に配置されたフィルターユニットを含み、フィルターユニットは、フィルターを含む。
【0058】
フィルター上に均一な堆積を達成するために必要な流動特性は、オリフィスの面積を適切に選択することによって達成できる。実際には、オリフィスは一般に円形であるため、以下では、円形のオリフィスを参照して説明する。しかし、オリフィスが必ずしも円形の構成である必要はなく、任意の適切な形状、例えば楕円形、正方形または長方形であっても良く、フィルターの構成は、好ましくはオリフィスの構成と類似または同一であるように選択されることが理解されるべきである。実際には、オリフィスの直径は、インパクターデバイスのノズルプレートで従来使用されているノズルの直径よりも大きくなるように選択される。例えば、オリフィスの直径は、少なくとも10mm、有利には少なくとも15mm、特に少なくとも20mmとするのが有利である。実際には、オリフィスの直径は、一般に50mm以下、例えば45mm以下、特に40mm以下であることが好ましい。
【0059】
実際には、オリフィスがテーパー部材で提供されることが好都合であり、テーパーは、その出口で上記のオリフィスの直径の値が定義されるものであることが判明している。テーパー部材を使用すると、乱流の影響を低減できることがわかっている。
【0060】
オリフィスを通ってフィルターに流れる空気流の妨げられない領域は、堆積が行われる当該フィルターの面積の75%以上になっている。フィルターの直径は、有利には、少なくとも10mm、好ましくは少なくとも15mm、例えば少なくとも20mmである。有利には、フィルターは、直径が約60mmを超えない、より有利には、約50mmを超えない、例えば、約45mmを超えない直径を有する。基本的には、より大きな寸法のフィルターを使用することが可能であることが理解される。その場合、オリフィスとフィルターの相対的な大きさを決定するためには、フィルターは、収集された材料の少なくとも90重量%が堆積される大きさの面積を有することが理解されるべきである。
【0061】
レイノルズ数は、慣性力と粘性力の比率であり、特定の状況で発生する流れのタイプを予測できる。インパクターのノズルの設計では、ノズルの数とジェットの幅を変えることにより、層流を維持するために設定された限度内で空気流れを制御することができる。通常、ジェットの数はレイノルズ数を制御するために選択される。層流をある流量範囲にわたって維持するには、Re(レイノルズ数)の限界を500~3000の間にするのが理想的である。
【0062】
実際には、円形のオリフィスの直径が2~5cm、好ましくは2.5~5cm、より好ましくは3~5cm、例えば3~4.5cmの範囲が適切であることが見出された。そのような寸法は、特に、以下の場合に有利であることが見出された。すなわち、使用時には、10~100L/分(min)、例えば15~100L/分、特に15~70L/分の流量、例えば30L/分または60L/分の流量が使用される。
【0063】
有利には経路は、オリフィスにつながる先細い部分を含む。
【0064】
一実施形態では、ノズルの直径は、ノズルセクションの頂部で4.5cmの内径を有し、オリフィスで3.9cmに減少する。直径を小さくすると、乱流を引き起こす可能性のある鋭利な角度の存在が減少するという点で有利である。フィルター、またはフィルターにおいて少なくとも堆積が発生する部分は、実質的に平面構成であることが好ましい。
【0065】
特許文献1に記載の装置は、上記のようにフィルターFを含む用量収集セクションを含む。そのフィルターは、オリフィスの下流において空気流の流れ方向に対して直交するように配置される。すでに述べたように、フィルターと空気流の衝突点において、比較的均一で低速の空気流であるという条件が望ましい。実際には、オリフィスの寸法を適切に選択し、オリフィスとフィルター間の間隔を適切に選択することによって達成できる可能性がある。オリフィスの直径は、14mm以上であることが好ましい。オリフィスとフィルター間の距離は、有利には、オリフィスの直径の3倍以下、例えばオリフィスの直径の2倍以下である。
【0066】
オリフィスとフィルター間の距離が大きい場合、壁上に材料が堆積した結果生じる干渉は、収集効率に悪影響を与える可能性がある。実際には、その分離距離がオリフィスの直径の3倍よりもかなり短いことが望ましい場合がある。例示として、いくつかの実施形態では、オリフィスとフィルター間の距離は、最大10cm、例えば1~10cmの範囲であり得る。オリフィスからフィルターまで延びる経路の部分は真っ直ぐであり、流れの均一性を実質的に妨害するであろう構造によって遮られないか、または実質的に遮られないことが好ましい。
【0067】
有利にはフィルターFは、オリフィスの下流の点における経路の少なくとも一部を妨げる。いくつかの実施形態では、フィルターは実質的に経路全体を妨げる。
【0068】
有利にはフィルター支持体は、フィルターを挟んでオリフィスとは反対側の、当該フィルターの面を通過する経路を横切って延びる、フィルターの中央領域を支持するための細長い支持部材を含み、そのフィルター支持体は、2~10個の開口を画定する。
【0069】
フィルターの下にかなりの面積の支持構造を設けることは、フィルター上への固体の堆積パターンに望ましくない影響を与えることが見出された。空気がフィルターを通過すると、必然的に流れの均一性がある程度乱れると考えられており、フィルターの下に支持構造を設けると、流れがフィルターの上流で破壊されて流れに大きな影響を与え、キャリア空気がフィルターを自由に通過できるポイントに凝集堆積の優先的な島を形成する。
【0070】
そのため、フィルターの下側の可能な限り、例えば少なくとも75%を完全に遮らないようにして、フィルターを通過する際の流れの均一性への過度の影響を回避することが好ましい。本発明の装置の特に有利な点は、エアロゾル化された粒子が、(特定の既知の装置のように)吐出ジェットの位置またはフィルターの下の経路を覆い隠す支持構造に関連して、明確に決まった位置に堆積するのではなく、フィルターの表面全体にわたって捕捉されることである。
【0071】
フィルターは、最大5μmまでの範囲、例えば、0.45μmから5μmの範囲の粒子を保持するのに適切な任意のフィルターとすることができる。例えば、孔径が最大3μmまでのフィルターを使用できる。
【0072】
有利には、フィルターは、フィルターがない場合の流量と比較して、20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下の流量の減少を生じさせるような空気透過性を有する。このようなフィルターは、必ずしもそうとは限らないが、少なくとも1μmの孔径を有する可能性がある。
【0073】
フィルターは、例えば、織布、不織布、メッシュおよび空気透過性フィルムから選択することができる。いくつかの実施形態では、フィルターは、ガラスマイクロファイバーから形成される布、または、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、アクリル、アクリルコポリマー、ポリ塩化ビニルおよびポリエーテルエーテルケトンから選択される高分子材料のフィラメントから形成される布を含む。適切なポリオレフィンには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび1つまたは複数の他のモノマーを有するエチレン、プロピレンのコポリマーが含まれる。フィルターはまた、合成セルロース系の材料、例えば酢酸セルロース、硝酸セルロースおよび混合セルロースエステル合成膜などを含むことができる。
【0074】
適切なガラスマイクロファイバーには、例えば、米国のポールコーポレーションからタイプA/Eとして市販されている、公称孔径1μmのガラス繊維フィルターなどのホウケイ酸ガラスが含まれる。適切なポリマーフィルターの実例としては、孔径が3μm以下のアクリルコポリマーフィルター、例えば、孔径が0.2、0.45、0.8、1.2および3μmのフィルターが含まれる。公称孔径が3μm以下のポリアミドまたはポリ塩化ビニルのポリマーフィルターも広く市販されている。これは、セルロース系の膜についても同様である。
【0075】
他の実施形態では、フィルターは、例えばステンレス鋼の金属メッシュを含み、これは、有利には3μm未満の孔径を有する。他の適切な材料には、例えば、適切なレベルの空気透過性を有するという条件で、ポリマーフィルムが含まれる。
【0076】
有利には、収集された粒子は溶出試験にかけられる。溶出試験は、当技術分野で広く実施されており、所与の製剤から収集された粒子のための適切な溶出媒体および方法の選択は、当技術分野の当業者にとって日常的な課題である。好都合に使用され得るそのような試験の1つが、パドルオーバーディスク溶出試験である(US Pharmocopeial Convention 2011, 711, Dissolution, Paddle over Disk Apparatus)。一般的に使用される溶出媒体には、界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、SDSなど)を添加した又は添加しないリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液が含まれる。溶液は、例えばHPLCによって化学的に分析され、収集された質量を決定することができる。
【0077】
本発明の装置における用量収集セクションの1つの有利な実施形態は、図1から図13に示されている。
【0078】
図1に示す用量収集装置は、図1の上から下に向かって、上部アダプタ要素10、第1のOリング20、上部本体30、上部フィルター支持部材40、下部フィルター支持部材50、第2のOリング60、下部本体70、およびクランプ装置80を含む。クランプ装置80は、上部本体と下部本体を一緒にクランプするために使用され、第2のOリング60を圧縮する。
【0079】
上部本体30は、入口オリフィス32を規定する漏斗31を備える。漏斗31は、乱流を誘発する可能性のある鋭いエッジの発生を低減するために先細り(tapered)になっており、流体の流れを、オリフィス32からフィルター収集装置に向かって下向きに延びる、妨げられない垂直経路に送るように配置されている。
【0080】
フィルターFは、上部フィルター支持部材40と下部フィルター支持部材50とを含むフィルターユニットによって支持されている。このフィルターFは、その周囲が上記の上部フィルター支持部材と下部フィルター支持部材との間に保持される。
【0081】
オリフィス32の面積は、堆積物が生じるフィルターFの露出面積と同様かまたはそれよりもわずかに小さい。
【0082】
図示されていない吸引源は、オリフィスから離れた側のフィルターの面と空気連通しており、オリフィス32を含む経路を通して空気を引き込み、図2図3においてフィルターFを下方向に引き込む働きをする。
【0083】
流量コントローラ(図示せず)は、吸引源と連係して、適切な流れ状態を維持する。
【0084】
下部フィルター支持部材50は、フィルターFとの接触が最小限になるように構成されている。適切なフィルターユニットが図6図9に示されている。
【0085】
下部フィルター支持部材50は、外側リング57の下面から半径方向内側に延出している内フランジ56を含み、内フランジ56は、中央開口部を規定する内周縁52を有する。
【0086】
下部フィルター支持部材50は、外側リング57の外周から半径方向外向きに延びる、少なくとも1つ、好ましくは3つの半径方向突起55を備える。
【0087】
半径方向突起55の1つの機能は、図4図5に見られるように、溶解研究用の溶解容器90内の適切な深さにフィルターユニットを正しく位置合わせすることである。溶解容器90は、エルヴェカ社の溶出装置(mini-Erweka dissolution apparatus)であることが好ましい。有利なことに、半径方向突起55は、それらの下面が先細りになっており、これにより、溶解容器90の丸みのある底部におけるフィルターユニットの位置決めが改善され、溶解容器90内でのアセンブリの迅速、正確かつ再現可能な位置決めが可能になる。また、溶解測定中にフィルターユニットがパドルスターラー(paddle stirrer)に直交した状態でフィルター表面とパドルの間の正しい距離が維持されることを保証する。
【0088】
この半径方向突起55の別の機能は、下部本体70との回転位置合わせを提供することである。これは、半自動または自動化された機器がフィルターユニットの位置を正しく登録できることを保証する。外側リング57は、上部本体30と下部本体70との同軸の心合わせを確実にし、内側フランジ56は、フィルターFのシールのための十分な接触面を有することを可能にする。
【0089】
図7に示すように、下部フィルター支持部材50の中央開口部は、有利には、開口の周囲が六角形をした支持構造51を有し、六角形51の各頂点は、それぞれの半径方向リブ53によって内周縁52に接続されている。これにより、7つの開口54が画定される。
【0090】
そのような六角形の中央構造51は、エアロゾル収集中のフィルターFの構造的支持を増強させながら、最大の表面積を提供する。もちろん、これは単なる例であり、多角形であっても丸みを帯びている、例えば円形であっても、任意の中央支持構造51と、任意の数の半径方向リブ53を想定することができる。中央支持構造51および半径方向リブ53は、本質的に三角形の断面構成を有していてもよく、それらの上側先端において、フィルターFとの狭い接触ラインを提供する一方で、強度の理由からリブの下部がより厚くなる可能性がある。
【0091】
上部フィルター支持部材40は、上部リング41と、この上部リング41から軸方向に下向きに延びる下部リング42とを含む。上部リング41と下部リング42は、同じ内径を有する。上部リング41の外径は、下部リング42の外径よりも大きくなっている。
【0092】
したがって、フィルターFの外縁は、図9に最もよく見られるように、下部フィルター支持部材50の内フランジ56と上部フィルター支持部材40の下部リング42との間に保持される。
【0093】
上部フィルター支持部材40の1つの機能は、フィルターFと下部フィルター支持部材50との間にシール要素を提供することである。また、上部フィルター支持部材40は、溶解研究中にフィルターFが下部フィルター支持部材50から持ち上げられたり分離したりするのを防ぐための適切な重量を提供する。
【0094】
上部フィルター支持部材40の下部リング42は、異なるフィルター厚さに対応するために、ある範囲の高さのものを作製することができる。この高さは、クランプ装置80で装置をクランプする際の圧縮力を増加/減少させるように変更することができる。
【0095】
本発明の装置で使用するのに適したフィルターFは、一般に、1μmから3μmの範囲の公称孔径を有するものである。本発明の装置では、フィルターFは、流路にインラインで提供されるので、適切なフィルターFは、空気流に乗る固形物の本質的にすべてを、好ましくは固形物の重量の90%以上、特に95%以上を捕捉するのに十分に小さい孔径を持ち、フィルターによって生じる空気流に対する抵抗が比較的小さいものが選択されることが好ましい。
【0096】
複数の研究によると、孔径が3μmのフィルターは、エアロゾルを捕捉するのに十分微細であることがわかっている。少なくとも1μmの孔径が好ましいが、実際には、本発明の装置におけるその適合性に影響を与えるのはフィルターの空気透過性であり、1μm未満の孔径を有するフィルターは、流れに対する抵抗を実質的に増加させない場合、例えばフィルターがない場合と比較して、15%以下、好ましくは10%以下の流量減少をもたらすような場合に使用される可能性がある。
【0097】
下部本体70は、その上面でフィルターユニットを受け入れる。図10図11に示されるように、下部本体70の上面には、クランプ時に装置の主要な空気経路のシールを提供する第2のOリング60が設けられている。その上面にはまた、下部フィルター支持部材50の半径方向突起55と協働して、下部本体70上のフィルターユニットの回転位置合わせを提供する第1の凹部71が設けられている。第2の凹部72は、クランプ装置80を解放する際に、下部本体70からのフィルターユニットの手動、半自動または自動の引き抜きを可能にするために設けられている。
【0098】
図12図13は、クランプ装置80によって組み立てられた上部本体30と下部本体70を示している。図13に示す破線Lは、圧縮力の経路である。これにより、クランプ時に制御された圧縮荷重がフィルターFに作用することが保証される。加えられる力は、フィルターを下部フィルター支持部材50に保持およびシールしながら、フィルター構造が損傷されないことを確実にするためにバランスがとられている。
【0099】
クランプ装置80は、有利には、ピン81によって互いに回転可能に接続された2つのクランプ半割部を備え、これらが閉鎖システムを提供する。この閉鎖システムは、適切なナット83と協働するねじ付きシャフト82を含むことができる。他のクランプ装置、特に他の閉鎖システムも使用することができる。
【0100】
フィルターユニットに収容されている、薬剤を含んだフィルターFは、手動、半自動または自動で下部本体70から取り外すことができる。これは、下部本体70の第2の凹部72によって促進される。
【0101】
次に、装填されたフィルターFを二次装置に移して試験することができる。図19図20は、溶解容器90への移送を示している。
【0102】
本発明の一態様によれば、下部本体70からのフィルターユニットの取り外しは、手動で作動するクイックリリースシステム100を用いて行うことができ、これにより人とフィルターユニットとの接触を回避することができる。
【0103】
クイックリリースシステムの例を図14図15に示す。
【0104】
クイックリリースシステム100は、クランプベース101と、好ましくはフック102によって形成され、より好ましくは3つのフック102を保持することによって形成される固定手段と、作動ロッド103と、リンクアーム104と、主支持体105を備える。作動ロッド103の作動は、フィンガアクチュエータ106とサムアクチュエータ107によってトリガーされる。このシステムは、さらにカムツリー108と、係止ピン109と、バネ110を備える。
【0105】
システムが動作中にどのように使用されるかを示す一連の図を図16図18に示す。
【0106】
サムアクチュエータ107が作動しておらず、バネ110が非圧縮であり、フック102が開いた状態のクイックリリースシステム100が、下部本体70の上面に位置するフィルターユニットに向かって移動される。開いたフック102は、第2の凹部72に入ることができ、フィルターユニットの周りに配置される。サムアクチュエータ107が作動すると、作動ロッド103が下向きに動き、これによりバネ110を圧縮し、各フック102を半径方向内側に動かして閉位置にし、各フック102がフィルターユニットと協働して、閉じた各フック102の内側にフィルターユニットが保持される。クランプベース101は、実質的に薄板によって形成され、フィルターFの上に位置して、外部環境からフィルターFを保護する。
【0107】
したがって、フィルターユニットを下部本体から安全に取り外し、図19図20に示すように溶解容器に移すことができる。サムアクチュエータ107の作動力が解放されると、圧縮されていたバネ110が伸びて、ロッド103がその静止位置に戻ることを可能にし、したがって各フック102が開いて溶解容器90内にフィルターユニットを解放することができる。
【0108】
前述の説明において、既知の、明白な、または予見可能な同等物を有する数または要素が言及されている場合、そのような同等物は、個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲を決定するための特許請求の範囲を参照されるべきであり、それは、そのような同等物を包含するように解釈されるべきである。また、好ましい、有利、便利などと記載されている本発明の数または特徴は任意であり、独立請求項の範囲を限定しないことも理解されたい。さらに、そのような任意の数または特徴は、本発明のいくつかの実施形態において可能な利益はあるものの、望ましくない可能性もあり、したがって、他の実施形態では存在しない可能性があることを理解されるべきである。
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