(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】インク、塗料、及び接着剤のための界面活性剤
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240205BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20240205BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240205BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20240205BHJP
C09D 9/04 20060101ALI20240205BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240205BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D11/54
C09D5/02
C09D7/47
C09D9/04
C09J201/00
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2022537393
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 US2020064687
(87)【国際公開番号】W WO2021126715
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213094
【氏名又は名称】アドバンシックス・レジンズ・アンド・ケミカルズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ADVANSIX RESINS & CHEMICALS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アシルバサム,エドワード
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-102320(JP,A)
【文献】特表2004-509188(JP,A)
【文献】特開2019-019315(JP,A)
【文献】特表2009-540040(JP,A)
【文献】特開2013-234157(JP,A)
【文献】特表2009-521546(JP,A)
【文献】特開2000-095917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C09J
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク定着液のための製剤であって、
式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【化1】
式中、R
1及びR
2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C
1~C
6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、前記C
1~C
6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、前記アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく、
nは、1~12の整数であり、
前記末端窒素は、R
3でさらに置換されていてもよく、この場合R
3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC
1~C
6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤、
所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、前記化合物に付随する対イオン、
定着剤、及び
水、
を含む、製剤。
【請求項2】
前記定着剤が、カルボン酸金属塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
吸湿剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
酸をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
水性ビヒクルをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
水性ビヒクル中に分散された着色剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
塗料のための製剤であって、
式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【化2】
式中、R
1及びR
2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C
1~C
6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、前記C
1~C
6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、前記アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく、
nは、1~12の整数であり、
前記末端窒素は、R
3でさらに置換されていてもよく、この場合R
3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC
1~C
6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤、
所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、前記化合物に付随する対イオン、
ラテックス及びバインダーのうちの少なくとも1つ、及び
水、
を含む、製剤。
【請求項8】
1又は複数のドライヤーをさらに含む、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
1又は複数の溶媒をさらに含む、請求項7に記載の製剤。
【請求項10】
1又は複数の顔料をさらに含む、請求項7に記載の製剤。
【請求項11】
接着剤のための製剤であって、
式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【化3】
式中、R
1及びR
2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C
1~C
6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、前記C
1~C
6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、前記アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく、
nは、1~12の整数であり、
前記末端窒素は、R
3でさらに置換されていてもよく、この場合R
3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC
1~C
6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤、
所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、前記化合物に付随する対イオン、
接着剤、
水、
を含む、製剤。
【請求項12】
充填剤をさらに含む、請求項11に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示内容が参照により本明細書に援用される2019年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/950,403号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本開示は、接着剤及び塗料における使用のための界面活性剤に関する。そのような界面活性剤は、表面活性特性を有するアミノ酸のシロキサン誘導体を含み得る。
【背景技術】
【0003】
界面活性剤(表面活性特性を有する分子)は、インク、塗料、接着剤、及び塗料剥離剤の商業的製剤に広く用いられている。界面活性剤は、乳化剤、湿潤剤、発泡剤、分散剤、及び/又は広がり性を改善する剤として含まれ得る。
【0004】
界面活性剤は、非イオン性、双性イオン性、カチオン性、又はアニオン性であり得る。原理上は、いかなる界面活性剤のクラス(例:カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性)も好適であるが、製剤は、2種類以上の界面活性剤クラスからの2つ以上の界面活性剤の組み合わせを含み得ることも可能である。
【0005】
多くの場合、界面活性剤は、相対的に非水溶性の疎水性「尾部」基及び相対的に水溶性の親水性「頭部」基を有する両親媒性分子である。これらの化合物は、2つの液体間、気液間、又は固液間の界面などの界面で吸着し得る。相対的に極性の成分と相対的に非極性の成分を含む系では、疎水性の尾部は、相対的に非極性の成分と選択的に相互作用し、一方親水性の頭部は、相対的に極性の成分と選択的に相互作用する。水と油との間の界面の場合、親水性の頭部基は、選択的に水中へ延び、一方疎水性の尾部は、選択的に油中へ延びる。気水界面に添加されると、親水性の頭部基は、選択的に水中へ延び、一方疎水性の尾部は、選択的に気体中へ延びる。界面活性剤が存在すると、水分子間の分子間相互作用の少なくとも一部が乱され、水分子間の相互作用の少なくとも一部が、水分子の少なくとも一部と界面活性剤との間の一般的にはより弱い相互作用に置き換わる。これは、表面張力を低下させる結果となり、界面を安定化させるようにも働き得る。
【0006】
充分に高い濃度では、界面活性剤は、疎水性の尾部が極性溶媒に曝露することを制限するように作用する凝集体を形成する可能性がある。1つのそのような凝集体は、ミセルである。典型的なミセルでは、分子は、界面活性剤の疎水性の尾部が選択的に球の内側に位置し、界面活性剤の親水性の頭部が選択的にミセルの外側に位置した状態の球状に配列され、この場合、頭部がより極性である溶媒と選択的に相互作用する。任意の化合物が表面張力に対して有する効果及びそれがミセルを形成する濃度は、界面活性剤を規定する特徴として有用であり得る。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、インク、塗料、接着剤、及び塗料剥離剤の製剤を提供する。これらの製品は、本明細書で開示する1又は複数種類の界面活性剤のクラスからの1又は複数の界面活性剤を含むように製剤され得る。界面活性剤は、乳化剤、湿潤剤、分散剤、及び/又は広がり性を改善する剤として用いられ得る。
【0008】
本開示は、表面活性特性を有するアミノ酸のシロキサン誘導体の形態である、塗料、インク、接着剤、及び塗料剥離剤のための界面活性剤を提供する。アミノ酸は、天然若しくは合成アミノ酸であってよい、又はカプロラクタムを例とするラクタムなどの分子の開環反応を介して得られてもよい。アミノ酸は、異なる種類のシロキサン基で官能化されて、表面活性特性を有する化合物が形成されてもよい。特徴的なことには、これらの化合物は、低い臨界ミセル濃度(CMC)及び/又は液体の表面張力を低下させる能力を有し得る。
【0009】
本開示は、インク定着液のための製剤を提供し、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0010】
【0011】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;1又は複数の吸湿剤、定着剤としてのカルボン酸金属塩、及び酸、を含む。製剤はまた、水性ビヒクル及びインクビヒクル中に分散された1又は複数の着色剤も含み得る。
【0012】
本開示はさらに、塗料のための製剤を提供し、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0013】
【0014】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;ラテックス、バインダー、1又は複数のドライヤー、1又は複数の顔料、1又は複数の溶媒、及び水、を含む。
【0015】
本開示はさらに、接着剤のための製剤を提供し、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0016】
【0017】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;樹脂、1又は複数のフィラー、及び溶媒、を含む。
【0018】
本開示はさらに、塗料剥離剤のための製剤を提供し、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0019】
【0020】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;ジクロロエチレン;1又は複数の共溶媒;1又は複数の腐食防止剤;ワックス;所望に応じて含まれてよい増粘剤;及び水、を含む。
【0021】
本開示の上述の及び他の特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下の実施形態の記述を添付の図面と合わせて参照することによって、より明らかとなり、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、例1bで述べるように、界面活性剤2において塩化物イオンを対イオンとした場合のpH=7で測定した表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図2】
図2は、例2bで述べるように、界面活性剤3における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図3】
図3は、例2bで述べるように、界面活性剤3における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【
図4】
図4は、例3bで述べるように、界面活性剤4における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図5】
図5は、例3bで述べるように、界面活性剤4における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【
図6】
図6は、例4bで述べるように、界面活性剤5における表面張力対濃度のプロットを示す。
【
図7】
図7は、例4bで述べるように、界面活性剤5における時間に対する表面張力の変化としての動的表面張力のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で用いられる場合、「これらの終点を用いたいずれかの範囲内」の句は、文字通り、値が列挙の低い値の方にあるか、又は列挙の高い値の方にあるかに関わらず、その句の前に列挙された値のいずれか2つからのいずれの範囲が選択されてもよいことを意味する。例えば、値の対は、低い方の値2つ、高い方の値2つ、又は低い方の値及び高い方の値、から選択されてよい。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」の語は、いずれの飽和炭素鎖をも意味し、直鎖であっても又は分岐鎖であってもよい。
本明細書で用いられる場合、「表面活性」の句は、関連する化合物が、それが少なくとも部分的に溶解されている媒体の表面張力及び/又は他の相との界面張力を低下させることができ、したがって、気液界面及び/又は他の界面に少なくとも部分的に吸着し得ることを意味する。「界面活性剤」の用語は、そのような化合物に適用され得る。
【0025】
不正確さの用語に関して、「約」及び「およそ」の用語は、交換可能に用いられてよく、記載された測定値を含み、その記載された測定値に対して合理的に近いいずれの測定値も含む測定値を意味する。記載された測定値に対して合理的に近い測定値は、該当する技術分野の当業者によって理解され、容易に確認される合理的に小さい量の分、記載された測定値から逸脱している。そのような逸脱は、例えば、測定誤差又は性能を最適化するために成される少しの調整に起因すると考えられ得る。該当する技術分野の当業者が、そのような合理的に小さい差異に関する値が容易に確認されるものではないと判断する場合には、「約」及び「およそ」の用語は、記載された値のプラス又はマイナス10%を意味するものと理解されてよい。
【0026】
本開示は、インク、塗料、接着剤、及び塗料剥離剤の製剤を提供する。
I.インク
インクジェット印刷が様々な媒体表面上、特に紙に画像を記録する方法として普及してきたのには、いくつかの理由が存在する。これらの理由のうちのいくつかとしては、プリンターの音が小さいこと、高速の記録が可能であること、高品質のカラー記録が可能であること、が挙げられる。加えて、これらの利点は、消費者にとって比較的低価格で得ることができる。しかし、インクジェット印刷が大きく改善されてきたものの、この改善に付随して、例えばより高速、より高解像度、フルカラー画像形成、安定性向上、より恒久的な画像など、この分野での消費者による要求が増えている。
【0027】
カラーインクジェット印刷システムでは、インクジェットインクのセットが用いられる。インクセットは、多くの場合、複数の異なる色、一般的には4色、6色、又は8色(例:シアン、マジェンタ、イエロー、及び/又はブラックの1又は複数の色合い)の群のインクを含み、さらに、画像定着用液/定着液を含み得る。定着液は、多くの場合、インクが印刷媒体表面上に確立される前又はその後に適用される。定着液は、実質的に無色の液体であり、インクの着色剤及び/又はポリマー成分と相互作用することで印刷媒体表面上にインクを沈降させる又はそれ以外で定着させる。
【0028】
沈降した着色剤は、媒体の表面上に堆積し、その結果、光学密度及び彩度を例とする画像品質属性が向上する。耐水性及び蛍光マーカー滲み(highlighter smear)などの耐久性の属性も、そのような反応性インク化学の恩恵を受ける。定着液を含むいくつかの適切なインクセットが現在入手可能であるものの、インクを含有するプリンターヘッドを損傷することなく印刷媒体表面上により高品質の印刷画像を作成するものである耐久性及び信頼性のより高いインクを製剤するために、現行のインクセットに対する改善が望ましい。いかなる理論にも束縛されるものではないが、基材上において定着剤組成物がインクジェットインク組成物で刷り重ねられた後、言い換えると、インクと定着剤とが媒体表面上で接触した場合、インク着色剤の非常に効果的な衝突(crashing)が実現され、ほとんどすべての着色剤が、媒体に浸透して表面よりも下に堆積するのではなく、媒体の表面上に堆積するものと考えられる。同時に、定着剤ビヒクルは、インクビヒクルと混合されると、高い湿潤状態となり、混合されたビヒクルは、後に着色剤を残して素早く媒体に浸透する。
【0029】
そのようなインクジェット印刷法では、定着液とインクジェットインク組成物とを組み合わせた結果、高品質で耐久性のあるインクジェット画像プリントを提供するシステム及び方法が得られる。本開示の定着液を使用すると、光学密度、彩度、及び耐久性を例とする画像品質属性が向上する結果となる。さらに、定着液組成物は、インクジェット印刷システムに用いた場合、インクジェット構成の信頼性に有害な影響を与えることなく、良好な画像品質を提供する。実際、定着液は、それを含有するプリンターヘッドに対する損傷を呈さず、インクジェットシステム及びインクジェットペンに対する低い腐食性を呈することが見出された。
【0030】
本開示のインク製剤は、1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤、1又は複数の吸湿剤、定着剤としてのカルボン酸金属塩、及び組成物のpHを約5.0~約7.0に調節することを考慮した酸、を含むインクジェット定着剤組成物を含む。製剤はまた、水性ビヒクル及びインクビヒクル中に分散された1又は複数の着色剤でもあり得る。
【0031】
1.界面活性剤
本開示のインク製剤は、界面活性剤系とも称される1又は複数の界面活性剤を含む。界面活性剤は、表面張力及び界面張力を適切なレベルに維持する非常に優れた能力を有する。界面活性剤はまた、湿潤剤及び分散剤としても用いられ得る。本開示のインク製剤での使用に適する界面活性剤は、式Iの1又は複数の界面活性剤及び/又は共界面活性剤であって、
【0032】
【0033】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤及び/又は共界面活性剤;並びに所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン、を含む。
【0034】
特に、適切な界面活性剤又は共界面活性剤は、本明細書で述べる界面活性剤1~6のいずれか1つ以上を含み得る。
インク製剤中の界面活性剤系の量は、組成物の重量に対して、約0重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、又は約1.0重量%以下、約1.2重量%以下、約1.4重量%以下、約1.6重量%以下、約1.8重量%以下、約2.0重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0035】
2.吸湿剤
本開示のインク製剤は、吸湿剤を含む。「吸湿剤」としては、湿潤剤又は加湿剤として用いられるいずれの物質も意図している。いかなる理論にも束縛されるものではないが、吸湿剤は、定着剤の水分含有量を、湿度の変動に関わらず狭い範囲内に維持し、したがって、狭いインクジェットペンノズルの閉塞を防止する目的で添加されることが多い。
【0036】
吸湿剤は、高沸点の水混和性有機化合物であり、ポリオール、アミド、又はポリエーテルなどである。吸湿剤は、水溶性であり得る。この目的に適する適切な水溶性吸湿剤としては、限定されるものではないが、ヘテロ環式ケトン(例:2-ピロリドン、N-メチル-ピロリド-2-オン、1,3-ジメチル-イミダゾリド-2-オン、オクチル-ピロリドンなど);グリコール(例:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど);グリセロール;及びジオール(例:ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなど)が挙げられる。
【0037】
吸湿剤は、インク製剤中に、約1重量%以上、2重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、又は10重量%以下、12重量%以下、15重量%以下、18重量%以下、20重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0038】
3.定着剤
「定着用液」又は「定着液」は、水性ビヒクル及び有効量の1又は複数の定着剤を含有する。定着剤は、着色剤の溶解性又は安定性の変化を開始して、着色剤を印刷画像の正しい位置に定着させる原料成分である。定着剤の「有効量」は、定着されなかったプリントと比較して、裏抜け及びブリードの低減、光学密度(OD)、彩度、エッジ明瞭性の増加、並びにポタ落ち及び滲み堅牢性の改善を例とする印刷品質の改善を実現するのに有効な量である。定着液は、よく広がり、素早く浸透及び乾燥するように製剤され得る。表面張力は、約45mN/m未満であり得る。
【0039】
定着剤は、多価金属イオンとカルボン酸イオンとから構成される金属塩などのカルボン酸金属塩であり得る。
適切なカルボン酸金属塩としては、Ca2+、Mg2+、Cu2+などの二価金属イオン及びAl3+、La3+、又はFe3+などの三価金属イオンを含むカルボン酸多価金属塩が挙げられ得る。
【0040】
カルボン酸イオンは、1~6個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸であり得る。適切なカルボン酸イオンとしては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、及びヘキサン酸が挙げられる。
【0041】
定着剤は、定着液組成物中に、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、又は約10重量%以下、約11重量%以下、約12重量%以下、約13重量%以下、約14重量%以下、約15重量%以下、約16重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在する。
【0042】
4.酸
定着液は、酸を含み得る。適切ないかなる酸が選択されてもよい。例えば、強酸(すなわち、水中で完全にイオン化される酸)が、定着液組成物に添加され得る。そのような酸の限定されない例としては、メタンスルホン酸、塩酸、硝酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸、トリフルオロ酢酸、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
酸は、定着液組成物のpHを調節する補助となる。定着液組成物のpHは、約5.0以上、約5.5以上、約6.0以上、又は約6.5以下、約7.0以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0044】
いくつかの態様では、定着剤製剤は、組み合わせ時に酸の蒸気(揮発性有機酸)を形成しない、又は0.5%未満形成する。いくつかの他の態様では、定着液のpHは、定着液組成物が0.5重量%超の揮発性有機酸を含有することを回避するために、適切な範囲内に調節される。
【0045】
5.水性剤
本開示の定着液は、水性ビヒクルを含有し得る。「水性ビヒクル」の用語は、本明細書で定められる場合、定着剤が投入されて定着液を形成する水性混合物を意味する。適切な水性ビヒクル成分としては、限定されるものではないが、水、共溶媒、界面活性剤、添加剤(腐食防止剤、塩など)、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0046】
水性ビヒクルは、水溶性有機共溶媒、追加の界面活性剤、及び水を含み得る。水溶性有機共溶媒の限定されない例としては、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、グリセロールプロポキシレート、トリプロピレングリコール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノン、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
6.着色剤
本開示のインクジェットインクセットは、既に記載した定着液組成物及びインクビヒクル中に分散又は溶解された着色剤を有するインクのいくつかの態様を含み得る。インクジェットインクセットは、少なくとも、インクビヒクル中に分散された着色剤を含むインクジェットインク組成物、並びに1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤、1又は複数の吸湿剤、定着剤としてのカルボン酸金属塩、及び酸を含む定着液、を含み得る。
【0048】
いかなる数の着色インク組成物が定着剤と共にインクセット中に含まれていてもよいことは理解されたい。さらに、着色インクの望ましいいかなる組み合わせが用いられてもよい。例えば、着色インク組成物の各々が、異なる色であってよく、又はインクのうちの2つ以上が、同じ色の異なる色合いであってもよい(すなわち、明マジェンタインク及び暗マジェンタインク)。いくつかの態様では、インクジェットインクセットは、ブラックインク、イエローインク、シアンインク、及びマジェンタインクの異なる4色のインクを含む。他の態様では、インクジェットインクセットは、ブラックインク、イエローインク、シアンインク、マジェンタインク、オレンジインク、レッドインク、グリーンインク、及び/又はこれらの組み合わせから選択される望ましいいずれかの数のインクを含む。いくつかの態様では、インクジェットインクセットは、本明細書で述べるものなどの定着液を含み、並びにブラックインク、イエローインク、シアンインク、マジェンタインク、オレンジインク、レッドインク、及びグリーンインクから選択されるインクジェットインク組成物を含み、インクセットはさらに、ブラックインク、イエローインク、シアンインク、マジェンタインク、オレンジインク、レッドインク、及びグリーンインクから少なくとも1つの他のインクを含む。
【0049】
各インクのための着色剤は、顔料、染料、又はこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、インクは、着色剤として顔料を含有する。本明細書で用いられる場合、「顔料」とは、それが用いられる液体ビヒクル中において実質的に不溶性である着色剤粒子を意味する。顔料は、別個の分散剤を用いることで分散されてよく、又は分散剤を顔料の表面に結合させて自己分散されてもよい。本明細書で用いられる場合、「自己分散される」とは、一般に、顔料表面に分散剤を化学結合させることなどにより、分散剤で官能化された顔料を意味する。分散剤は、小分子又はポリマー又はオリゴマーであってよい。顔料は、自己分散顔料、並びに表面に共有結合されていない別個の分散剤によって分散された顔料を例とする分散顔料、の両方を含む。1つの例では、顔料は、自己分散性でなく、分散助剤がビヒクルに添加され得る。別の例では、顔料は、自己分散性であり、顔料に化学的に結合された少なくとも1つのポリマーを含むように修飾される。
【0050】
シアンインク及び/又はマジェンタインクのための着色剤は、顔料と染料との組み合わせであり得る。シアン及びマジェンタの着色剤のための顔料及び/又は染料は、いくつかの市販の顔料及び/又は染料から選択され得る。シアン着色剤に適する顔料の限定されない例としては、ピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、バットブルー4、及び/若しくはバットブルー6など、並びに/又はこれらの組み合わせが挙げられる。シアン着色剤に適する染料の例としては、限定されるものではないが、例えばアシッドブルー9及びアシッドブルー7などのトリフェニルメタン染料、例えばダイレクトブルー199などのフタロシアニン染料が挙げられる。マジェンタ着色剤に適する顔料の限定されない例としては、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド12、ピグメントレッド48、ピグメントレッド48、ピグメントレッド57、ピグメントレッド112、及び/若しくはピグメントレッド122、並びに/又はこれらの組み合わせが挙げられる。マジェンタ着色剤に適する染料の例としては、限定されるものではないが、例えばアシッドレッド52、アシッドレッド289などのキサンテン染料、γ-酸染料、H-酸染料、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
ブラックインク及び/又はイエローインクのための着色剤は、染料又は顔料であり得る。ブラック着色剤に適する染料の例としては、限定されるものではないが、リアクティブブラック31及びリアクティブブラック8などの水溶性金属錯体アゾ染料、ダイレクトブラック19、ダイレクトブラック195、及びダイレクトブラック168などの水溶性ポリアゾ染料、並びにソルビライズドサルファーブラック1(Solubilized Sulfur Black 1)などの水溶性硫黄染料が挙げられる。カーボンブラック又はカーボンブラックの誘導体などの材料は、ブラックインクに適する顔料の限定されない例である。
【0052】
イエロー着色剤に適する染料の例としては、限定されるものではないが、AY-17、AY-23、DY-132、Y-104、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。PY-74は、イエローインクに適する顔料の限定されない例である。
【0053】
インクセット中のインクのうちの1又は複数が、実質的に同じ着色剤及び/又は実質的に同じインクビヒクル製剤を含有してよいことは理解されたい。例えば、インクセットは、イエローインク、シアンインク、及びマジェンタインクを含み、これらの各々が、実質的に同じインクビヒクル製剤を有する。
【0054】
それぞれのインク組成物中に存在する着色剤の量は、約2.7重量%以上、約2.9重量%以上、約3.0重量%以上、約3.2重量%以上、約3.4重量%以上、又は約3.6重量%以下、約3.8重量%以下、約4.0重量%以下、約4.2重量%以下、約4.4重量%以下、約4.5重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内である。しかし、着色剤の充填量が、所望に応じてより多くても又はより少なくてもよいことは理解されたい。
【0055】
7.他の添加剤
1又は複数の添加剤が、定着剤組成物中に組み込まれてもよい。本明細書で用いられる場合、「添加剤」の用語は、液体の性能、環境効果、審美的効果、又は他の類似の特性を高めるように作用する液体の構成成分を意味する。適切な添加剤としては、殺生物剤、封鎖剤、キレート剤、腐食防止剤、及び/若しくはマーカー染料(例:可視、紫外、赤外、蛍光など)など、並びに/又はこれらの組み合わせが挙げられる。定着剤は、例えばPMC Specialties Group,Inc.から市販されているカルボキシベンゾトリアゾールであるCobratec(登録商標)CBTなどの腐食防止剤を含み得る。
【0056】
添加剤は、定着剤組成物中に、約0重量%以上、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、又は約0.5重量%以下、約0.6重量%以下、約0.7重量%以下、約0.8重量%以下、約0.9重量%以下、約1重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在する。存在する添加剤の量の上限が、少なくとも部分的に、用いられる添加剤、画像への影響、その溶解度、ペン機能への影響、及び/又はこれらの組み合わせに依存することは理解されたい。
【0057】
8.インクビヒクル
各々の着色剤又は着色剤の組み合わせは、それぞれの個々のインクビヒクルと組み合わされて、インクセットの1又は複数のインクを形成する。本明細書で定められる場合、「インクビヒクル」とは、着色剤が投入されてインクを形成するものであるビヒクルを意味する。広く様々なインクビヒクルが、本明細書で開示される実施形態に従うインク、インクセット、及び方法と共に用いられてよい。インクビヒクルに適する成分の限定されない例としては、水溶性ポリマー、アニオン性ポリマー、界面活性剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤、殺生物剤、封鎖剤、粘度調整剤、表面活性剤、キレート剤、樹脂、及び/若しくは水、並びに/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
インクビヒクルに適する溶媒としては、限定されるものではないが、グリセロールポリオキシエチルエーテル、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、Dantocol(登録商標)DHE(Lonza Inc.,Fairlawn N.J.)、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。定着剤と組み合わせて用いられるインクは、以下の溶媒:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、又は1-プロポキシ-2-プロパノール、のうちの1又は複数を含み得る。
【0059】
溶媒は、インクビヒクル中に、約1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、又は約15重量%以下、約20重量%以下、約25重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0060】
用いられる溶媒の量及び種類は、少なくとも部分的に、インクの望ましい特性に依存する。このため、量は、所望に応じて変動し得る。いくつかの態様では、着色インクのうちの1又は複数のインクビヒクル中に、単一の溶媒が用いられる。適切な溶媒としては、限定されるものではないが、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、又は1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンが挙げられる。他の態様では、インクは、上記で挙げた溶媒のうちの2つ以上の混合物を含む。
【0061】
限定されない例として、シアンインク、マジェンタインク、イエローインク、及びブラックインクは、Dantocol(登録商標)DHEと1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンとの混合物を含む。溶媒混合物の総重量パーセントの範囲は、約7重量%以上、約9重量%以上、約11重量%以上、約13重量%以上、約15重量%以上、又は約17重量%以下、約19重量%以下、約21重量%以下、約22重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0062】
適切な界面活性剤としては、本開示の界面活性剤、並びに/又はエトキシル化アルコール、フッ素化界面活性剤、2-ジグリコール界面活性剤、リン酸エステル界面活性剤、二リン酸エステル界面活性剤、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
1又は複数の界面活性剤は、インクビヒクル中に、約8重量%以下、約6重量%以下、約4重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、又は約0.1重量%以下の量で存在し得る。
【0064】
インクビヒクルは、少なくとも1つのポリマーを含み得る。インクビヒクルのためのポリマーは、一般に水溶性であり、スチレン-(メタ)アクリル酸コポリマーの塩、ポリスチレン-アクリルポリマー、ポリウレタン、及び/若しくは他の水溶性ポリマーバインダー、並びに/又はこれらの組み合わせのポリマーから選択され得る。適切なポリウレタンの限定されない例としては、日本の大阪にある大日本インキ化学工業(DIC)から市販されているポリウレタンが挙げられる。
【0065】
ポリマーは、インクビヒクル中に、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、又は約2重量%以下、約3重量%以下、約4重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0066】
添加剤も、インクのためのインクビヒクルの実施形態に組み込まれ得る。限定されない例としては、Proxel(登録商標)GXLなどの殺菌剤が、インクを細菌の増殖から保護するためにインクに添加され得る。他の適切な添加剤としては、限定されるものではないが、緩衝剤、殺生物剤、封鎖剤、キレート剤など、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
インクビヒクルは、約0重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.3重量%以下、約0.4重量%以下、約0.5重量%以下の範囲内、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在する1又は複数の添加剤を含む。
【0068】
9,作製方法
インク製剤は、溶媒、界面活性剤、何らかの添加剤、及び水を組み合わせること、並びにpHを塩基性pHに調節すること、によって製造され得る。いくつかの態様では、着色インクのpHは、約8~約11の範囲内である。他の実施形態では、着色インクのpHは、約8.5~約9.5の範囲内である。次に、着色剤及びポリマーが添加されて、インク組成物が形成される。
【0069】
II.塗料
本開示は、塗料の製剤を、具体的には、セミグロス及びフラットのインテリア塗料組成物のためのラテックス組成物又は塗料ビヒクルを提供する。ラテックス塗料組成物は、有機溶媒タイプのものと比較していくつかの利点を有していることから、屋内用及び屋外用塗料市場の多くの部分を占めてきた。
【0070】
本開示の塗料製剤は、膜形成剤、バインダー、1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤、1又は複数のドライヤー、1又は複数の顔料、1又は複数の溶媒、及び水、を含み得る。
【0071】
1.膜形成剤
膜形成剤は、表面上に柔軟で密着した連続被覆を残す化学物質の群である。この膜は、強い親水性を有する。膜形成剤は、天然及び合成という広く2つの分類に分けられ得る化学物質の大きな群を含む。
【0072】
天然の膜形成剤は、油、ロジン、炭水化物、及び卵白を含む。そのような天然の膜形成剤としては、環状オリゴテルペン、ポリテルペン、シェラック、(デンプンなど、セルロース、などが挙げられ得る。
【0073】
合成の膜形成剤は、縮重合材料、付加重合材料、及びポリマー樹脂を含む。合成の膜形成剤としては、アルキッド樹脂、ポリエステル、ポリアミド/イミド、シリコーン樹脂、フェノール樹脂などの架橋材料、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリビニル樹脂、及びポリアクリル樹脂が挙げられ得る。
【0074】
ラテックス塗料は、以下でさらに考察されるように、多くの場合、ポリアクリレート樹脂及びアルキッド樹脂などの合成膜形成剤を含む。
a.ラテックスエマルジョン
ラテックス塗料を製剤するのに一般的に用いられる2種類のエマルジョンとしては、全アクリル系、例えば所望に応じてメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを少量のアクリル酸と共重合したものなどを用いた系、並びに2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、又はブチルアクリレートを例とする少量の低級アルキルアクリレートと通常は組み合わせた酢酸ビニル製剤、が挙げられる。これまでは、全アクリル系が高級品質塗料に用いられてきたが、それは、このエマルジョンが、良好な耐水性、所望されるレベリング性、膜硬さ、耐久性、耐洗浄性(scrubability)などを提供してきたからである。酢酸ビニル-アクリルコポリマー系は、インテリア用フラット及びセミグロス塗料並びにエクステリア用ハウス塗料の製剤に用いられており、酢酸ビニル-ブチルアクリレートラテックスは、非常に優れた靭性、耐洗浄性、及び耐久性を有する塗膜をもたらし、一方酢酸ビニル-マレイン酸ジブチルエマルジョンは、耐久性に加えて、良好な耐摩耗性及び柔軟性も有する。
【0075】
湿潤接着性、すなわち、既に塗装されエージングされた表面に湿潤又は湿気条件下で接着する性質が、アクリル系及び酢酸ビニル系のいずれに対しても、湿潤接着性モノマーをこのコポリマーに重合することによって付与されてきた。典型的には、これらのモノマーは、モノマーの一方の端部に末端オレフィン系不飽和を、他方の端部に末端ウレイド又はウレア官能基を有する。これらのモノマーは、既に塗装された膜に湿気条件下で接着するエマルジョンの能力を増加させるものの、これらのモノマーは、場合によっては、系に、特にアクリル系に重合させること、及び塗料の他の所望される特性を実現することが困難であり、したがって、塗料ビヒクルの湿潤接着性は、塗料ビヒクルに所望される全体としての特性、すなわち、耐久性、湿潤接着性、耐洗浄性、柔軟性、良好なレベリング性、耐摩耗性、靭性などを得るために、異なる種類のアクリルポリマーエマルジョンをブレンドすることによって付与される。
【0076】
適切なエマルジョンは、酢酸ビニルラテックスを含む。インテリア及びエクステリア用途の場合、酢酸ビニルは、それと共重合可能であるモノマーと、すなわち、低級アルキルアクリレート、例えば、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを含むアクリル酸及びメタクリル酸のC1~C6エステル;オレフィン、例えばエチレン;アルファ-ベータ不飽和ジカルボン酸のアルキルエステル、例えばマレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、イタコン酸ジブチル;塩化ビニル、ビニルエステル、例えば酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル;メチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル;並びに不飽和カルボン酸及びアミド、例えばアクリル及びメタクリル酸、アクリルアミド及びメタクリルアミド、と共重合され得る。
【0077】
エマルジョンに、ほとんどの塗料用途で必要とされる湿潤接着性を実現させるために、湿潤接着性モノマーが酢酸ビニルと共重合されて、酢酸ビニルターポリマーが形成され得る。それらはまた、他のモノマーと共重合され、酢酸ビニルコポリマーとブレンドされて、湿潤接着性が付与されてもよい。「湿潤接着性モノマー」は、本明細書で用いられる場合、分子の一方の部分にアリル又はアクリル不飽和を、他方の端部にペンダントウレア又はアシル及び環状ウレイド官能基を有するモノマーを意味するものと理解される。
【0078】
ラテックスは、製剤中に、全製剤のパーセントとして、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、又は約60重量%以下、約65重量%以下、約70重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0079】
酢酸ビニルは、コポリマー中に、ポリマー重量のパーセントとして、約25重量%以上、約35重量%以上、約45重量%以上、約55重量%以上、約65重量%以上、約75重量%以上、又は約80重量%以下、約85重量%以下、約90重量%以下、約95重量%以下、約98重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0080】
低級アルキルアクリレート又はオレフィンなどのコモノマーが、コポリマー中に存在し得る。コモノマーは、ポリマー重量のパーセントとして、約5重量%以上、約8重量%以上、約10重量%以上、又は約12重量%以下、約15重量%以下、約17重量%以下、約20重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0081】
分子の一方の部分にアリル又はアクリル不飽和を、他方の端部にペンダントウレア又はアシル及び環状ウレイド官能基を有するモノマーなどの湿潤接着性モノマーが、塗料製剤中に含まれ得る。湿潤接着性モノマーは、塗料製剤中に、ポリマー重量のパーセントとして、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.8重量%以上、約1.0重量%以上、約1.2重量%以上、又は約1.4重量%以下、約1.6重量%以下、約1.8重量%以下、約2.0重量%以下、約2.2重量%以下、約2.4重量%以下、約2.6重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0082】
テトラポリマーに関して、適切な組成は、塩化ビニル、酢酸ビニル、エチレン、及び湿潤接着性モノマーを含み得る。
塩化ビニルは、総ポリマー重量のパーセントとして、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、又は約50重量%以下、約55重量%以下、約60重量%以下、約65重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0083】
酢酸ビニルは、総ポリマー重量のパーセントとして、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、又は約50重量%以下、約55重量%以下、約60重量%以下、約65重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0084】
エチレンは、総ポリマー重量のパーセントとして、約10重量%以上、約11重量%以上、約12重量%以上、又は約13重量%以下、約14重量%以下、約15重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0085】
湿潤接着性モノマーは、ポリマー重量のパーセントとして、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.8重量%以上、約1.0重量%以上、約1.2重量%以上、又は約1.4重量%以下、約1.6重量%以下、約1.8重量%以下、約2.0重量%以下、約2.2重量%以下、約2.4重量%以下、約2.6重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0086】
b.アルキッド樹脂
塗料製剤は、1又は複数のバインダーを含み得る。適切なバインダーは、様々な種類のアルキッド樹脂を含む。例示的なアルキッド樹脂としては、短い、中程度の、長い、及び非常に長い油鎖を有するアルキッド樹脂が挙げられる。「アルキッド樹脂」の用語はまた、アクリル、エポキシ、フェノール系、ウレタン、ポリスチレン、シリコーン、ロジン、及びロジンエステルアルキッドなどの他の樹脂で修飾されたアルキッド、並びにポリエステルセグメントが再生可能な酸及びエステルに由来するSetal 900 SM-90などのバイオアルキッドも含む。
【0087】
塗料製剤は、組成物の総重量に基づいて、約1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、又は約35重量%以下、約40重量%以下、約50重量%以下、約60重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量でバインダーを含み得る。
【0088】
2.界面活性剤
本発明の塗料製剤は、界面活性剤系とも称される1又は複数の界面活性剤を含む。界面活性剤系は、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤であってよい少なくとも1つの界面活性剤、及び所望に応じて、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はこれらの組み合わせであってよい少なくとも1つの他の界面活性剤を含む。界面活性剤系は、エマルジョンの安定化を補助するために塗料製剤中に存在する。
【0089】
本開示の塗料製剤での使用に適する界面活性剤は、式Iの1又は複数の界面活性剤及び/又は共界面活性剤であって、
【0090】
【0091】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤及び/又は共界面活性剤;並びに所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン、を含む。
【0092】
特に、適切な界面活性剤又は共界面活性剤は、本明細書で述べる界面活性剤1~6のいずれか1つ以上を含み得る。
塗料製剤中の1又は複数の界面活性剤の総量は、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、又は約3重量%以下、約4重量%以下、約5重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0093】
3.ドライヤー
塗料製剤は、1又は複数のドライヤーを含み得る。ドライヤーは、乾燥プロセスを促進するために用いられる触媒である。適切なドライヤーは、コバルト又はマンガンの塩などの酸化触媒、ジルコニウム塩などの重合触媒、及び/又は膜形成を制御するカルシウム塩などの補助触媒を含み得る。ドライヤーは、塗料を、表面への適用後の3時間以内、2時間以内、又はそれ未満などの数時間以内に完全に乾燥させることができる。コバルト又はマンガンのエステルは、酸化プロセスを開始する役割を有する酸化触媒であり、C6~C19分岐鎖脂肪酸のエステルを含む。例としては、2-エチルヘキサン酸コバルト、プロピオン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、Umicoreから入手可能であるECOS ND15と称されるコバルトが埋め込まれたポリマー製品、オクタン酸マンガン、Huntsmanから入手可能であるNuodex Drycoatと称されるマンガン-アミン錯体である。
【0094】
ドライヤー組成物は、塗料製剤中に、約0.1重量%以上、約0.3重量%以上、約0.6重量%以上、又は約1.0重量%以下、約1.2重量%以下、約1.5重量%以下、約3.5重量%以下、約6.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で含まれ得る。
【0095】
4.顔料
水性塗料組成物に用いられる顔料は、典型的には、塗膜に不透明性又は隠蔽性を付与する不透明顔料を含む。本開示の塗料製剤は、組成物を着色するために、及び/又は組成物に不透明性を提供するために、1又は複数の顔料を含み得る。本明細書で用いられる場合、顔料は、無機金属酸化物及び有機着色顔料の両方を含む。適切な顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄などの金属酸化物、クロム酸亜鉛、酸化クロム、硫化カドミウム、アズライト(カオリン、炭酸ナトリウム、硫黄、及びカーボンから作られる)、リトポン(硫化亜鉛と硫酸バリウムとのブレンド)が挙げられる。有機着色顔料の例は、フタロシアニンブルー(アルファ及びベータ)、ジニトロアニリンオレンジ(PO-5)、ペリレンレッド、トルイジンレッド(PR-3)、ダイアリライドイエロー(PY-12、13)、及びキナクリドンレッド(PV-19)である。
【0096】
顔料は、塗料組成物中に、約0重量%以上、約1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、又は約15重量%以下、約20重量%以下、約25重量%以下、約30重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で含まれ得る。
【0097】
5.溶媒
塗料製剤は、ミネラルスピリッツ及びアルコールなどの1若しくは複数の水性又は有機溶媒を含み得る。適切な溶媒は、炭化水素溶媒又はそれらのブレンドを含む。炭化水素溶媒は、脂肪族溶媒又は芳香族溶媒であってよい。有機溶媒の例は、ペンタン、ヘキサン、石油ナフサ、ヘプタン、及び90 solvent(引火点140°Fの脂肪族溶媒)などの石油蒸留物である。芳香族溶媒としては、キシレン、トルエン、Aromatic 100、及び他の適切な芳香族溶媒が挙げられる。「ホワイトスピリッツ」としても知られる「ミネラルスピリッツ」の用語は、C7~C12脂肪族及び脂環式炭化水素の混合物を含む組成物を包含し、より詳細な実施形態では、組成物の総重量に基づいて15重量%~20重量%以下のC7~C12芳香族炭化水素を含む。ミネラルスピリッツは、パラフィン、シクロパラフィン、及び芳香族炭化水素の混合物又はブレンドを含む。典型的なミネラルスピリッツは、約150℃~220℃の沸点範囲を有し、一般的には無色透明の液体であり、化学的に安定で非腐食性であり、軽い臭気を持つ。例示的なミネラルスピリッツとしては、Shell Sol 15(CAS 64742-88-7)及びShell Sol H(CAS 64742-82-1)などのLow Aromatic White Spirit(LAWS)が挙げられる。「アルコール」の用語は、C1~C12直鎖及び分岐鎖アルコールを含むC1~C12アルコールを包含し、包含することを意図している。例示的なアルコールとしては、トリエチレングリコール(CAS 112-27-6)、及びジエチレングリコールエチルエーテル(CAS 111-90-0)が挙げられる。より詳細な実施形態では、コーティング組成物は、キシレン、ミネラルスピリッツ、アルコール、水、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される溶媒を含む。
【0098】
塗料製剤中の溶媒の量は、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約17重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、又は約30重量%以下、約40重量%以下、約60重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0099】
6.他の添加剤
塗料製剤は、充填剤、顔料、界面活性剤、安定剤、増粘剤、乳化剤、テクスチャ付与剤、接着促進剤、殺生物剤、流動促進剤、分散剤、及び粘度又は仕上がり外観を改変するための添加剤などの1又は複数の添加剤をさらに含み得る。
【0100】
添加剤は、塗料製剤中に、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、又は約2.0重量%以下、約5.0重量%以下、約10.0重量%以下、約20重量%以下、約25重量%以下、約30重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で含まれ得る。
【0101】
塗料製剤は、増粘し、組成物の体積を増加させるために、1又は複数の充填剤を含み得る。適切な充填剤としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレイ、及びタルクが挙げられる。
【0102】
塗料製剤は、界面活性剤、安定剤、増粘剤、乳化剤、テクスチャ付与剤、接着促進剤、殺生物剤、及び粘度又は仕上がり外観を改変するための添加剤から成る群より選択される1又は複数の添加剤を含み得る。
【0103】
7.作製方法
塗料製剤は、保護コロイド、界面活性剤、及び酸化剤の標準プレミックスから開始することによって合成され得る。その後、モノマーが、続いて追加の界面活性剤及び還元剤が添加され得る。
【0104】
保護コロイドとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、カゼイン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられ得る。
保護コロイドは、合成に用いられるモノマーの重量に対して、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、又は約2.5重量%以下、約3.0重量%以下、約3.5重量%以下、約4.0重量%以下、約4.5重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で添加され得る。
【0105】
重合を起こすために用いられるフリーラジカル開始触媒は、一般にレドックス触媒と称される。レドックス触媒は、公知のように、酸化剤と還元剤とを含む。酸化成分及び還元成分は、過酸化水素、過硫酸カリウム、t-ブチルペルオキシピバレートなど、酢酸ビニル乳化重合に従来から用いられる成分のいずれであってもよく、好ましい還元剤は、硫酸アンモニウム鉄(II)及びナトリウム又は亜鉛ホルムアルデヒドスルホキシレートである。
【0106】
プレミックスは、一次容器に水、ヒドロキシエチルセルロースを例とする保護コロイド、及びフリーラジカル開始酸化剤を従来の量で投入することによって形成され得る。次に、用いられる総界面活性剤の約0~70%が一次容器に投入され、そこで混合され得る。残りの界面活性剤は、二次容器中でモノマーと混合されるか、又は別個に添加される。いずれの場合であっても、それはある遅延時間の後に添加され得る。重合を誘導するために、モノマー及び還元剤が、一次容器中の未反応酢酸ビニルがエマルジョン又はラテックスの約3~5重量%に維持されるように、ある時間にわたって、及びある速度で、一次容器に添加され得る。すべてのモノマーが一次容器に添加された後、追加の酸化剤及び還元剤を添加することによって、残留酢酸ビニルが、続いて0.5%未満に減少される。重合の終了時、水酸化アンモニウムなどの塩基を添加することによって、pHが約5.5に調節され得る。
【0107】
重合手順に関して、保護コロイド、特にセルロースエーテルは、エマルジョンの安定性を維持するために用いられる。コロイドのレベルがより高いと、安定性を向上させ、さらに粒径を増加させる傾向にある。界面活性剤も、エマルジョンの安定性を提供する。しかし、コロイドとは対照的に、界面活性剤は、初期重合時に存在すると、粒径を減少させる傾向にあり、遅延させて添加した場合に、より良好な粒径効果を呈する傾向にある。保護コロイドと界面活性剤を一緒に働かせることによって、粒径の最適化を実現することができる。
【0108】
撹拌は、ポリマーエマルジョン中の粒径に影響を与え得る別の可変要素である。撹拌は、適切な熱移動を実現することができ、生成物の安定性が維持されるように、穏和であるべきである。激しい撹拌は避けるべきである。粒径制御に関して、より大きい粒子が所望される場合は、撹拌速度が低下されてよく、より小さい粒子が必要とされる場合は、撹拌の度合いが高められてよい。撹拌を改変することができない場合は、界面活性剤又は保護コロイドによる調節が成されてよい。
【0109】
III.接着剤製剤
本開示はさらに、接着剤の製剤を提供する。本開示の接着剤製剤は、合板、裏板、黒板、繊維板、OBS板、又は同等物などの木材をベースとする板の製造に用いられ得る。
【0110】
本開示の接着剤製剤は、樹脂、充填剤、溶媒、及び1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤を含み得る。
1.樹脂
樹脂は、接着剤自体として機能するために接着剤製剤中に存在する。適切な樹脂としては、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ウレア-ホルムアルデヒド樹脂、アミノ樹脂、又は他の対応する樹脂が挙げられ得る。実施形態では、用いられる樹脂は、UF(ウレア-ホルムアルデヒド樹脂)、MUF(メラミン ウレア-ホルムアルデヒド)、MUFP(修飾ウレア-ホルムアルデヒドポリマー)、PF(フェノール-ホルムアルデヒド)、又はこれらの誘導体若しくは混合物、又は同等物である。
【0111】
樹脂は、接着剤製剤中に、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、又は約60重量%以下、約65重量%以下、約70重量%以下、約75重量%以下、約80重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0112】
2.充填剤
本明細書で用いられる場合、「充填剤」とは、公知の充填剤若しくは硬化剤単独、又はこれらの混合物を意味する。硬化剤は、適用時に、すなわち木材をベースとする板の製造の過程において、多くの場合好ましくは圧縮熱と共に、接着剤の硬化を引き起こす。適切な充填剤としては、デンプン、小麦粉、チョーク、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、木粉、ケブラチョ、又はこれらの誘導体、又はこれらの混合物、又は同等物が挙げられ得る。ケブラチョとは、ある特定の南アメリカ産広葉樹の堅木材を意味する。本明細書で用いられる場合、「チョーク」とは、ゆるく構造化された軽量で崩れ易い石灰石を意味する。
【0113】
充填剤は、接着剤組成物中に、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、又は約20重量%以下、約25重量%以下、約30重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0114】
3.溶媒
接着剤製剤は、水などの溶媒を含み得る。水は、プロセスの外から得られてよく、又はそれは、プロセス内から循環された水、すなわち、プロセス洗浄水であってもよい。別の選択肢として、溶媒は、有機溶媒であってもよい。
【0115】
溶媒は、接着剤組成物中に、約0重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、又は約25重量%以下、約30重量%以下、約35重量%以下、約40重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0116】
4.界面活性剤
1又は複数の界面活性剤が、発泡を促進するという明示的な目的で、発泡剤として接着剤製剤中に含まれ得る。本開示の接着剤製剤での使用に適する界面活性剤は、式Iの1又は複数の界面活性剤及び/又は共界面活性剤であって、
【0117】
【0118】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤及び/又は共界面活性剤;並びに所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン、を含む。
【0119】
特に、適切な界面活性剤又は共界面活性剤は、本明細書で述べる界面活性剤1~6のいずれか1つ以上を含み得る。
接着剤製剤は、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、又は約5重量%以下、約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で、1又は複数の界面活性剤を含み得る。
【0120】
5.他の添加剤
接着剤製剤は、1又は複数の追加の相溶性原料成分を含み得る。これらの追加の原料成分は、例えば、本開示の界面活性剤などのように発泡の目的のみを意図するものではない、1又は複数の追加の界面活性剤を含み得る。これらの追加の界面活性剤は、接着剤製剤中に、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、又は約1.0重量%以下、約1.5重量%以下、約2.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0121】
接着剤組成物は、触媒も含み得る。
6.作製方法
接着剤製剤は、エマルジョンとして製造され得る。エマルジョンを製造するために、液体成分が一緒に混合され得、この混合物が、比較的高い温度で加熱処理され得る(40℃超)。
【0122】
IV.塗料剥離製剤
本開示はまた、塗料剥離剤の製剤を提供する。本組成物は、接着剤、シーラント、及びエナメル、ワニス、若しくはラッカーなどの他の有機コーティング、又は他の有機コーティングを、アルミニウム及びアルミニウム合金などの金属基材を含む様々な基材から除去するために用いられ得る。概略的には、組成物が、ポリマーコーティングにブリスターを発生させるのに充分な時間にわたって表面と接触され、その時間の後に、ブリスターが発生したコーティングが、研磨材で除去され得る。別の選択肢として、コーティングは、ブリスターが発生したコーティングに水を噴霧してブリスターが発生したコーティングを表面から持ち上げることによって除去され得る。
【0123】
本開示の塗料剥離製剤は、ジクロロエチレン、1又は複数種類の界面活性剤クラスから選択される1又は複数の界面活性剤、1又は複数の共溶媒、腐食防止剤、ワックス、増粘剤、有機溶媒、及び水、を含み得る。
【0124】
1.ジクロロエチレン
剥離製剤は、ジクロロエチレン(1,1-ジクロロエチレン、cis-1,2-ジクロロエチレン、trans-1,2-ジクロロエチレン、又はこれらの混合物)を含み得る。
【0125】
ジクロロエチレンは、剥離製剤中に、約55重量%以上、約57重量%以上、約59重量%以上、又は約61重量%以下、約63重量%以下、約65重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0126】
2.界面活性剤
界面活性剤は、ある特定の成分の溶解度を高める目的で剥離製剤中に含まれ得る。
本開示の剥離製剤での使用に適する界面活性剤は、式Iの1又は複数の界面活性剤及び/又は共界面活性剤であって、
【0127】
【0128】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤及び/又は共界面活性剤;並びに所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン、を含む。
【0129】
特に、適切な界面活性剤又は共界面活性剤は、本明細書で述べる界面活性剤1~6のいずれか1つ以上を含み得る。
界面活性剤は、剥離製剤中に、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、又は約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0130】
3.共溶媒
共溶媒は、目的の塗料の膨潤を高めるために用いられ得る。本開示の剥離製剤は、そのような共溶媒を含み得る。適切な溶媒としては、ジフェノキシベンゼン、プロポキシベンゼン、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、シクロペンタノール、ナフタレノール、フェニルカルビナール(phenylcarbinal)、トリルアルコール、メリチルアルコール(mellityl alcohol)、及び芳香環の側鎖にヒドロキシル基を含有する他の芳香族アルコールなどの芳香族アルコール及び芳香族エーテルが挙げられ得る。他の適切な溶媒としては、脂肪族アルコール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、及び12個までの炭素を有するアルコールが挙げられ得る。そのような共溶媒は、一般に、環境にやさしく、無毒性であると見なされ、1,2-ジクロロエチレンを含む剥離製剤に対して追加の活性剤を必要としない有効な共溶媒であり得る。
【0131】
芳香族アルコール及び芳香族エーテルは、剥離製剤中に、約10重量%以上、約11重量%以上、約12重量%以上、約13重量%以上、約14重量%以上、約15重量%以上、又は約16重量%以下、約17重量%以下、約18重量%以下、約19重量%以下、約20重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0132】
脂肪族アルコールは、剥離製剤中に、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、又は約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0133】
4.腐食防止剤
本開示の剥離製剤は、腐食防止剤を含み得る。適切な腐食防止剤としては、ベンズイミダゾール、ベンズアゾール、ベンゾキサゾール、及びこれらの腐食防止剤の混合物、さらにはベンゾトリアゾール及びトリトリアゾールなどのトリアゾールが挙げられ得る。
【0134】
腐食防止剤は、剥離製剤中に、約0重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、又は約6重量%以下、約7重量%以下、約8重量%以下、約9重量%以下、約10重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の有効量で含まれ得る。
【0135】
5.ワックス
本開示の剥離製剤は、ワックスを含み得る。適切なワックスとしては、パラフィンワックスが挙げられる。剥離製剤の他の成分との混合を促進するために、ワックスは、他の成分と混合する前に溶媒中に溶解され得る。実質的に非極性又は親油性である溶媒が、この目的のために用いられ得る。適切な溶媒としては、芳香族及び脂肪族炭化水素が挙げられ、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、並びに同様の直鎖及び分岐鎖炭化水素、並びにこれらの混合物などである。石油ミネラルスピリッツの蒸留からの画分、及びこれらの溶媒の様々な混合物も挙げられる。
【0136】
ワックスは、剥離製剤中に、約1.0重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、又は3.0重量%以下、3.5重量%以下、4.0重量%以下、4.5重量%以下、若しくは5.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0137】
6.増粘剤
本開示の剥離製剤は、増粘剤を含み得る。垂直面がこの製剤で処理されるべきである用途では、コーティングをゆるめるのに充分な長い時間にわたって製剤をコーティング表面上に維持するために、増粘剤が用いられ得る。適切な増粘剤としては、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース、コロイダルシリカ、ベントナイトなどのクレイ、デンプン コロイダルアルミナ、又はアラビアゴムが挙げられ得る。
【0138】
増粘剤は、剥離製剤中に、0重量%以上、1.0重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、又は3.0重量%以下、3.5重量%以下、4.0重量%以下、4.5重量%以下、若しくは5.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0139】
7.溶媒
本開示の剥離製剤は、有機溶媒及び水などの追加の溶媒を含み得る。
有機溶媒は、剥離製剤中に、約1.0重量%以上、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、又は3.0重量%以下、3.5重量%以下、4.0重量%以下、4.5重量%以下、若しくは5.0重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0140】
水は、剥離製剤中に、約1重量%以上、約5重量%以上、約8重量%以上、約10重量%以上、又は約12重量%以下、約15重量%以下、約18重量%以下、約20重量%以下、又はこれらの終点を用いたいずれかの範囲内の量で存在し得る。
【0141】
8.使用方法
本開示の剥離製剤は、一般に、通常の方法で剥離されるべき表面に適用され、すなわち、組成物は、ブラシ又は他のアプリケータに適用され、続いて剥離されるべき表面に適用される。別の選択肢として、製剤は、垂直パネル上での製剤のチクソトロピー特性を利用したシステムなどの噴霧システムを用いて、表面上に噴霧されてもよい。
【0142】
VI.界面活性剤
本開示は、アミノ酸のシロキサン誘導体の形態である、インク、塗料、接着剤、及び塗料剥離剤で用いるための界面活性剤を提供する。アミノ酸は、天然若しくは合成であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から得られてもよい。本開示の化合物は、表面活性特性を有することが示されており、例えば界面活性剤及び湿潤剤として用いられ得る。特に、本開示は、以下に示される式Iの化合物を提供し:
【0143】
【0144】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基であり、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの1つ以上を含む置換基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;
nは、1~12の整数であり;
末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択されてよい。
【0145】
本開示は、さらに、式Iaの化合物を提供し:
【0146】
【0147】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;
mは、1~6の整数であり;
末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてもよく;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択されてよい。
【0148】
本開示は、さらに、式Ibの化合物を提供し:
【0149】
【0150】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;
pは、5であり;
末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、及びC1~C6アルキルから成る群より選択され、アルキル鎖は、カルボキシル、カルボキシレート、及びスルホネートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてもよく;並びに
所望に応じて存在してよい対イオンが、化合物に付随していてもよく、存在する場合、対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択されてよい。
【0151】
本開示によって提供される1つの具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミド(界面活性剤1)であり、以下の式を有する:
【0152】
【0153】
本開示によって提供される第二の具体的な化合物は、6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサミニウムクロリド(界面活性剤2)であり、以下の式を有する:
【0154】
【0155】
本開示によって提供される第三の具体的な化合物は、3 6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージド(界面活性剤3)であり、以下の式を有する:
【0156】
【0157】
本開示によって提供される第四の具体的な化合物は、6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシド(界面活性剤4)であり、以下の式を有する:
【0158】
【0159】
上記の構造において、「N→O」の表記は、窒素と酸素との間の非イオン性結合相互作用を意味することを意図している。
本開示によって提供される第五の具体的な化合物は、4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート(界面活性剤5)であり、以下の式を有する:
【0160】
【0161】
本開示によって提供される第六の具体的な化合物は、5-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ペンタン-1-スルホネート(界面活性剤6)であり、以下の式を有する:
【0162】
【0163】
これらの化合物は、様々な方法によって合成され得る。1つのそのような方法は、N-アルキル化又はN-アシル化アミノ酸などのアミノ酸をシロキサンと反応させて、アミノ酸C末端を所望されるシロキサン誘導体に変換することを含む。アミノ酸N末端が、さらにプロトン化、アルキル化、又は酸化されて、四級アミン又はN-オキシドが例えば得られてもよい。
【0164】
アミノ酸は、天然若しくは合成であってよい、又はカプロラクタムなどのラクタムの開環反応から誘導されてもよい。開環反応は、酸又はアルカリ触媒反応であってよく、酸触媒反応の例を以下のスキーム1に示す。
【0165】
【0166】
アミノ酸は、少なくは1個の又は多くは12個の炭素を、N末端とC末端との間に有し得る。アルキル鎖は、分岐鎖又は直鎖であってよい。アルキル鎖には、窒素、酸素、又は硫黄が介在していてもよい。アルキル鎖は、さらに、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてもよい。N末端窒素は、アシル化又は1若しくは複数のアルキル基でアルキル化されていてもよい。例えば、アミノ酸は、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸であってよい。
【0167】
シロキサンは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシなどの1又は複数のアルコキシ基で置換されていてもよい。シロキサンは、プロピルなどの1又は複数のアルキル基でさらに置換されていてもよく、この場合、アルキル基は、なおさらに、窒素などのアミノ酸へのシロキサンのカップリングを可能とするための適切な官能基で置換されていてもよい。例えば、シロキサンは、3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シランであってよい。
【0168】
アミノ酸のシロキサン誘導体は、以下のスキーム2に示されるように合成され得る。示されるように、6-アミノヘキサン酸が、還流下、ギ酸中でホルムアルデヒドで処理されて、6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸が得られる。次に、この遊離カルボン酸が、還流トルエン中で3-アミノプロピル(トリスメチルシロキシ)シランにカップリングされて、所望されるシロキサン誘導体が得られる。
【0169】
【0170】
N末端窒素は、水溶性及び表面活性特性を改変又は改善するために、さらに誘導体化されてもよい。サンプル合成スキームを、以下のスキーム3に示し、この場合、N末端窒素は、塩酸で処理されて、対応する塩酸塩が得られる。
【0171】
【0172】
N末端窒素は、アルキル化されてもよい。サンプル合成スキームを、以下に示し、この場合、N末端窒素は、ヨウ化メチルで処理されて、対応する四級アミン塩が得られる。
【0173】
【0174】
N末端窒素は、以下のサンプル合成スキームのスキーム5に示されるように、還流水中で過酸化水素で処理されて、対応するN-オキシドが得られてもよい。
【0175】
【0176】
本開示の化合物は、表面活性特性を呈する。これらの特性は、様々な方法によって測定し、表され得る。界面活性剤を表し得る1つの方法は、分子の臨界ミセル濃度(CMC)による。CMCは、ミセルを形成する界面活性剤の濃度として定義され得るものであり、それよりも高い濃度では、追加の界面活性剤はすべてミセルに取り込まれる。
【0177】
界面活性剤濃度が上昇するに従って、表面張力は低下する。表面が界面活性剤分子で完全に覆われると、ミセルが形成し始める。この時点が、CMC、さらには最小表面張力を表している。界面活性剤をさらに添加しても、表面張力にさらに影響を与えることはない。CMCは、したがって、界面活性剤濃度の関数として表面張力の変化を観察することによって測定され得る。この値を測定するためのそのような1つの方法は、ウィルヘルミープレート法である。ウィルヘルミープレートは、通常、ワイヤで天秤に取り付けられた薄いイリジウム-白金プレートであり、空気-液体界面に対して垂直に配置される。天秤を用いて、濡れによってプレートに働く力が測定される。次に、この値を用い、式1に従って表面張力(γ)が算出され:
式1:γ=F/l cosθ
式中、lは、濡れ周長(w及びdをそれぞれプレートの厚さ及び幅とした場合に、2w+2d)に等しく、cosθについては、液体とプレートとの間の接触角は、現存文献値がない場合は0と仮定する。
【0178】
界面活性剤の性能を評価するために用いられる別のパラメータは、動的表面張力である。動的表面張力は、特定の表面又は界面の経過時間に対する表面張力の値である。界面活性剤が添加された液体の場合、これは、平衡値と異なり得る。表面が生成された直後は、表面張力は、純液体の表面張力と等しい。上記で述べたように、界面活性剤は、表面張力を低下させるものであるため、表面張力は、平衡値に到達するまで低下する。平衡に到達するのに要する時間は、界面活性剤の拡散速度及び吸着速度に依存する。
【0179】
動的表面張力を測定する1つの方法は、最大泡圧式張力計によるものである。この装置は、キャピラリーによって液体中に形成された気泡の最大内圧を測定する。測定された値は、気泡形成の開始から最大圧力となるまでの時間である、ある特定の表面経過時間での表面張力に相当する。表面張力の表面経過時間に対する依存性は、気泡が生成される速度を変動させることによって測定することができる。
【0180】
表面活性化合物は、接触角によって測定される固体基材上での湿潤能力によっても評価され得る。液滴が、空気などの第三の媒体中で固体表面と接触する場合、液体、気体、及び固体間で三相線が形成される。三相線で役割を果たしており、液滴の接線である表面張力の単位ベクトルと、表面と、の間の角度が、接触角として表される。接触角(湿潤角としても知られる)は、液体による固体の濡れ性の尺度である。完全濡れの場合、液体は固体上に完全に拡がっており、接触角は0°である。濡れ特性は、典型的には、任意の化合物に対して1~100×CMCの濃度で測定されるが、濃度に依存する特性ではないことから、濡れ特性の測定値は、これよりも高い又は低い濃度で測定されてもよい。
【0181】
1つの方法では、光学接触角ゴニオメーターが、接触角の測定に用いられ得る。この装置は、デジタルカメラ及びソフトウェアを用いて、表面上の液体の静止液滴の輪郭形状を分析することによって接触角を求める。
【0182】
本開示の表面活性化合物に対する考え得る用途としては、シャンプー、ヘアコンディショナー、洗剤、スポットフリーリンス溶液、床及びカーペットクリーナー、落書き除去用の洗浄剤、作物保護用の湿潤剤、作物保護用の補助剤、並びにエアロゾルスプレーコーティング用の湿潤剤として用いるための製剤が挙げられる。
【0183】
当業者であれば、化合物間の少しの相違が、著しく異なる界面活性剤特性に繋がり得ることから、異なる基材、異なる用途においては、異なる化合物が用いられ得ることは理解される。
【0184】
以下の限定されない実施形態は、異なる界面活性剤の異なる特性を示すために提供される。以下の表1では、界面活性剤の略称と、それらの対応する化学構造との関連を示している。
【0185】
【0186】
5つの化合物の各々は、表面活性剤として有効であり、数ある用途の中でも、湿潤剤又は発泡剤、分散剤、乳化剤、及び洗剤用として有用である。
界面活性剤1及び2は、発泡剤又は湿潤剤として、様々な表面洗浄製品製剤及びパーソナルケア製品製剤に用いるための候補である。
【0187】
界面活性剤3は、カチオン性である。これらの界面活性剤は、上記で述べた用途、及び表面処理剤などの、パーソナルヘアケア製品などの、いくつかのさらなる特別な用途の両方に有用であり、また、撥水性表面を生成するために用いることもできる。
【0188】
界面活性剤4は、非イオン性であり、シャンプー、洗剤、硬質表面クリーナー、及び様々な他の表面洗浄製剤に用いることができる。
界面活性剤5は、双性イオン性である。これらの界面活性剤は、上記で述べた用途のすべてにおける共界面活性剤として有用である。
【0189】
製剤に用いられる本明細書で開示される化合物の量は、低くは約0.001重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、若しくは約5重量%、又は高くは約8重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、若しくは約25重量%、又は上記の値のいずれか2つを用いたいずれかの範囲内であり得る。
【0190】
実施例
核磁気共鳴(NMR)分光法は、Bruker 500MHz分光計で行った。臨界ミセル濃度(CMC)は、ウィルヘルミープレート法により、Pt-Irプレートを備えた張力計(DCAT 11,DataPhysics Instruments GmbH)を用いて23℃で特定した。動的表面張力は、最大泡圧式張力計(Kruss BP100,Kruss GmbH)を用いて23℃で特定した。接触角は、デジタルカメラを備えた光学接触角ゴニオメーター(OCA 15 Pro,DataPhysics GmbH)を用いて特定した。
【0191】
例1a:
6-(ジメチルアミノ)-N-(3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)ヘキサンアミド(界面活性剤1)及び6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウム塩(界面活性剤2)の合成
【0192】
【0193】
6-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸(2.00g、12.56mmol、1当量)を、Dean Starkトラップを取り付けた100mLの丸底沸騰フラスコ中のトルエン(50mL)に溶解し、続いて3-アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(5.48mL、13.81mmol、1.1当量)を添加した。反応容器を加熱し、Dean Stark管に水が分離されなくなるまで、24時間にわたって反応物を還流させた。溶媒を真空除去して、界面活性剤1を、黄色オイルとして94%の収率で得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ:0.09(s,27H),0.28-0.31(m,2H),1.12-1.26(m,2H),1.27-1.30(m,4H),1.38-1.41(m,2H),1.94(t,J=7.3Hz,2H),2.00(s,6H),2.06-2.03(m,2H),2.89(dd,J=12.9,6.8Hz,2H)。
【0194】
中性の形態では、界面活性剤1は、向水性物質又は他の界面活性剤の添加なしでは、純水に僅かに可溶性であるが、僅かな酸性条件でプロトン化すると、界面活性となる(界面活性剤2)。酸性条件は、pH範囲が4~7であるいずれの酸又は酸性緩衝剤の添加によって発生させてもよい。界面活性剤2は、非水性溶液中で調製されてもよく、例えば、界面活性剤1の存在下で、トルエン中に気体HClを注入することによる。
【0195】
例1b:
界面活性剤2の臨界ミセル濃度(CMC)の特定
界面活性剤2の臨界ミセル濃度(CMC)を、塩化物対イオンで試験し、約2mmolであると特定した。この界面活性剤で到達可能である最小表面張力のプラトー値は、約23mN/mである。
図1は、これらの結果のプロットであり、表面張力対濃度を示している。
【0196】
例2a:
6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N,N-トリメチル-6-オキソヘキサン-1-アミニウムヨージド(界面活性剤3)の合成
【0197】
【0198】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中のアセトニトリル(10mL)に溶解した。次に、Na2CO3(0.26g、2.42mmol、1.2当量)を添加し、この混合物を10分間撹拌した。ヨウ化メチル(0.377mL、6.06mmol、3当量)を添加し、反応物を40℃で24時間加熱した。冷却した反応混合物をろ過し、溶媒を真空除去して、界面活性剤3を、僅かに黄色い固体として定量的収率で得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ0.09(s,27H),0.38-0.42(m,2H),1.23-1.26(m,2H),1.37-1.40(m,2H),1.52-1.55(m,2H),1.65-1.69(m,2H),2.08(t,J=7.4Hz,2H),2.99(dd,J=13,6.9Hz,2H),3.04(s,9H),),3.24-3.33(m,2H)。
【0199】
純生成物は、水に可溶性であり、界面活性剤特性を有する。ハロゲンアニオンは、N-アルキル化反応から直接得ることができ、他の所望される対アニオンは、アニオン交換によって得ることができる。
【0200】
例2b:
界面活性剤3の物理的特性の特定
界面活性剤3に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約1.6mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約20mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図2に示す。
【0201】
界面活性剤3の動的表面張力を、新たに作り出された空気-水界面の表面張力の経時での変化を測定する最大泡圧式張力計で特定した。
図3は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤3が、500ms未満で界面を完全に飽和させ、界面吸着という点で極めて高速としていることを示している。
【0202】
界面活性剤3の界面張力及び表面張力の両方を低下させる能力に加えて、界面活性剤のみを含有する製剤は、並外れた湿潤特性も有している。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材は、接触角0°の完全表面濡れを呈する。テフロン(登録商標)などの疎油性及び疎水性基材上では、測定した接触角は極めて低く、10.5°であった(表2)。
【0203】
【0204】
例3a:
6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-N,N-ジメチル-6-オキソヘキサン-1-アミンオキシド(界面活性剤4)の合成
【0205】
【0206】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中の蒸留水(80mL)に添加し、続いて50%の過酸化水素(1.15mL、20.2mmol、10当量)を添加した。反応物を12時間還流し、次に真空濃縮した。残渣をアセトンで3回洗浄して、99%の収率で界面活性剤4を得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ0.09(s,27H),0.38-0.44(m,2H),1.21-1.25(m,2H),1.35-1.42(m,2H),1.50-1.55(m,2H),1.71-1.75(m,2H),2.05-2.08(m,2H),2.97-3.00(m,2H),3.01(s,9H),3.11-3.14(m,2H)。
【0207】
例3b:
界面活性剤4の物理的特性の特定
界面活性剤4に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約0.49mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約20mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図4に示す。
【0208】
界面活性剤4の動的表面張力を、最大泡圧式張力計で特定した。
図5は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤4が、新たに作り出された空気-水界面を1秒以内で完全に飽和させ、界面吸着という点で高速としていることを示している。
【0209】
界面活性剤4の界面張力及び表面張力の両方を低下させる能力に加えて、1~100×CMCの濃度で界面活性剤4のみを含有する製剤は、並外れた湿潤特性も有している。例えば、10×CMCの濃度の界面活性剤4水溶液は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材上では0°の接触角を、テフロン(登録商標)などの疎油性及び疎水性基材上では10.6°の接触角を呈する。これらの接触角は、同じ基材上での水の接触角と比較して、極めて低い(表3)。
【0210】
【0211】
例4a:
4-((6-((3-(1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3-((トリメチルシリル)オキシ)トリシロキサン-3-イル)プロピル)アミノ)-6-オキソヘキシル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート(界面活性剤5)の合成
【0212】
【0213】
界面活性剤1(1.00g、2.02mmol、1当量)を、100mLの丸底フラスコ中の酢酸エチル(EtOAc)(30mL)に添加し、続いて1,2-ブタンスルトン(0.27mL、2.2mmol、1.1当量)を添加した。反応物を12時間還流し、その後、溶媒を除去し、得られた白色のワックス状固体をアセトンで洗浄して、50%の収率で界面活性剤5を得た。1H NMR(500MHz,DMSO)δ0.10(s,27H),0.38-0.46(m,2H),1.23-1.27(m,2H),1.37-1.68(m,10H),1.73-1.78(m,2H),2.45-2.48(m,2H),2.97-3.01(m,8H),3.18-3.21(m,2H),3.23-3.27(m,2H)。
【0214】
例4b:
界面活性剤5の物理的特性の特定
界面活性剤5に対する臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。水中での濃度と共に変化する表面張力から、CMCは、約0.39mmolであると特定した。この界面活性剤で到達することができる最小表面張力のプラトー値は、約21mN/mであり、この界面活性剤が顕著な界面活性を有することを示している。これらの結果を、表面張力対濃度としてプロットして
図6に示す。
【0215】
界面活性剤5の動的表面張力を、最大泡圧式張力計で特定した。
図7は、表面張力対時間としての結果のプロットを示し、界面活性剤5が、新たに作り出された空気-水界面を1秒以内で完全に飽和させ、界面吸着という点で高速としていることを示している。
【0216】
最後に、10×CMCの濃度の界面活性剤5水溶液は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどの疎水性基材上では0°の接触角を、テフロン(登録商標)などの疎油性及び疎水性基材上では10.2°の接触角を呈する。これらの接触角は、同じ基材上での水の接触角と比較して、極めて低い(表4)。
【0217】
【0218】
例5:
インク定着液のための製剤
この例では、インク定着液のための製剤を提供する。製剤の成分を以下の表5に示す。
【0219】
【0220】
例6:
塗料のための製剤
この例では、塗料として用いるための製剤を提供する。製剤を以下の表6に示す。
【0221】
【0222】
例7:
接着剤のための製剤
この例では、接着剤として用いるための製剤を提供する。製剤を以下の表7に示す。
【0223】
【0224】
例8:
塗料剥離剤のための製剤
この例では、殺虫剤として用いるための製剤を提供する。製剤を以下の表8に示す。
【0225】
【0226】
態様
態様1は、インク定着液のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0227】
【0228】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;定着剤;及び水、を含む。
【0229】
態様2は、定着剤が、カルボン酸金属塩である、態様1に記載の製剤である。
態様3は、吸湿剤をさらに含む、態様1又は態様2のいずれかに記載の製剤である。
態様4は、酸をさらに含む、態様1~3のいずれか1つに記載の製剤である。
【0230】
態様5は、水性ビヒクルをさらに含む、態様1~4のいずれか1つに記載の製剤である。
態様6は、水性ビヒクル中に分散された着色剤をさらに含む、態様1~5のいずれか1つに記載の製剤である。
【0231】
態様7は、塗料のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0232】
【0233】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;ラテックス;及び水、を含む。
【0234】
態様8は、1又は複数のドライヤーをさらに含む、態様7に記載の製剤である。
態様9は、1又は複数の溶媒をさらに含む、態様7又は態様8のいずれかに記載の製剤である。
【0235】
態様10は、1又は複数の顔料をさらに含む、態様7~9のいずれか1つに記載の製剤である。
態様11は、塗料のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0236】
【0237】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;バインダー;及び水、を含む。
【0238】
態様12は、1又は複数のドライヤーをさらに含む、態様11に記載の製剤である。
態様13は、1又は複数の溶媒をさらに含む、態様11又は態様12のいずれかに記載の製剤である。
【0239】
態様14は、1又は複数の顔料をさらに含む、態様11~13のいずれか1つに記載の製剤である。
態様15は、接着剤のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0240】
【0241】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;接着剤;水、を含む。
【0242】
態様16は、充填剤をさらに含む、態様15に記載の製剤である。
態様17は、塗料剥離剤のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0243】
【0244】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、R3でさらに置換されていてもよく、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;1,2-ジクロロエチレン;及び水、を含む。
【0245】
態様18は、ワックスをさらに含む、態様17に記載の製剤である。
態様19は、腐食防止剤をさらに含む、態様17又は態様18のいずれかに記載の製剤である。
【0246】
態様20は、有機溶媒をさらに含む、態様17~19のいずれか1つに記載の製剤である。
態様21は、増粘剤をさらに含む、態様17~20のいずれか1つに記載の製剤である。
【0247】
態様22は、少なくとも1つの共溶媒をさらに含む、態様17~21のいずれか1つに記載の製剤である。
態様23は、少なくとも1つの共溶媒が、芳香族アルコール、芳香族エーテル、及び脂肪族アルコールから選択される、態様22に記載の製剤である。
【0248】
態様24は、塗料剥離剤のための製剤であり、それは、式Iの少なくとも1つの界面活性剤であって、
【0249】
【0250】
式中、R1及びR2は、同じであっても又は異なっていてもよく、C1~C6アルキルから成る群より選択される少なくとも1つの基を含み、所望に応じて、C1~C6アルキルは、酸素、窒素、若しくは硫黄原子のうちの1つ以上、又はこれらの原子のうちの少なくとも1つを含む基を含んでよく、アルキル鎖は、所望に応じて、ヒドロキシル、アミノ、アミド、スルホニル、スルホネート、カルボニル、カルボキシル、及びカルボキシレートから成る群より選択される1又は複数の置換基で置換されていてよく;nは、1~12の整数であり;末端窒素は、所望に応じて、R3でさらに置換され、この場合R3は、水素、酸素、ヒドロキシル、及びC1~C6アルキルから成る群より選択される、界面活性剤;所望に応じて存在してよく、存在する場合、塩化物イオン、臭化物イオン、及びヨウ化物イオンから成る群より選択される、この化合物に付随する対イオン;1,2-ジクロロエチレン;1又は複数の共溶媒;及び水、を含む。
【0251】
態様25は、1又は複数の共溶媒が、芳香族アルコール、芳香族エーテル、及び脂肪族アルコールから選択される、態様24に記載の製剤である。
態様26は、ワックスをさらに含む、態様24又は態様25のいずれかに記載の製剤である。
【0252】
態様27は、腐食防止剤をさらに含む、態様24~26のいずれか1つに記載の製剤である。
態様28は、有機溶媒をさらに含む、態様24~27のいずれか1つに記載の製剤である。
【0253】
態様29は、増粘剤をさらに含む、態様24~28のいずれか1つに記載の製剤である。